説明

梳き鋏

【課題】毛髪カットの際に、毛量調節から仕上げの工程までの一連のカットを、一本の鋏で行なえるようにして、複数の鋏を使い分ける必要がなく、斬新なヘアースタイルを容易に演出できるようにすることを課題とする。
【解決手段】本発明の梳き鋏1は、一対の鋏部材2,3を交差させ、この交差部5を枢軸6で連結し、一方の鋏部材2は切り刃部22を備え、他方の鋏部材3は、幅の狭い刃部34と溝35とが交互に設けられた櫛刃部32を備えている。そして、前記他方の鋏部材3の櫛刃部32よりも先端側には、適宜長さに設定された切り刃部22が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、理美容分野で使用される梳き鋏に関する。
【背景技術】
【0002】
理美容分野で使用される梳き鋏は、毛髪の一部のみを切断する鋏で、一対の鋏部材を交差させ、この交差部を枢軸で連結し、一方の鋏部材は切り刃部が設けられ、他方の鋏部材は、幅の狭い刃部と溝とが交互に設けられた櫛刃部を備えているものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、毛髪切断に際して、櫛刃部の溝に侵入した毛髪は切断されず、一方の鋏部材は切り刃部と、他方の鋏部材の櫛刃部の刃先部とで挟まれた毛髪が切断される。
【特許文献1】特開2002−292160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近、印象が強いスポーツ&カジュアル志向のヘアスタイルが注目されている。かかるヘアスタイルを演出する毛髪カットの手順は、1,両刃を有する通常の鋏により毛髪を適宜長さに切断するベースカットと、2,毛量調節と、3,毛の質感に変化を与えるマテリアルカットと、4,仕上げとの順で行なう。前記それぞれのカット工程において、機能の異なる複数種類の鋏を使用するのが一般的である。そのため、使用者は、必要に応じて複数種類の鋏を使い分けており、非常に面倒であった。
【0005】
また、各カット工程において鋏を使い分けて毛髪をカットするには、熟練を要するという問題もあった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、毛髪カットの際に、毛量調節から仕上げの工程までの一連のカットを、一本の鋏で行なえるようにして、複数の鋏を使い分ける必要がなく、斬新なヘアースタイルを容易に演出できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、一対の鋏部材を交差させ、この交差部を枢軸で連結し、一方の鋏部材は切り刃部を備え、他方の鋏部材は、幅の狭い刃部と溝とが交互に設けられた櫛刃部を備えている梳き鋏において、前記他方の鋏部材の櫛刃部よりも先端側には、切り刃部が設けられたことにある。
【0008】
本発明の梳き鋏は、一方の鋏部材の切り刃部と、他方の鋏部材の櫛刃部との協働により、毛髪を適宜梳くことができる。また、一方の鋏部材の切り刃部と、他方の鋏部材の切り刃部とにより、毛髪を100%切断することができる。
【0009】
本発明の梳き鋏の前記溝は、前記櫛刃部の溝は、刃先側に開口する入口部と、この入口部と連通し且つ入口部よりも幅が大きな膨出部とを有し、前記溝は、入口部から膨出部に向けて他方の鋏部材の先端側に傾斜するように設けられているのか好ましい。
【0010】
本発明の梳き鋏の前記他方の鋏部材に設けられた切り刃部の長さは、15mm〜20mmの範囲に設定されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、毛髪カットの際に、毛量調節から仕上げの工程までを一本の鋏で行なえ、複数の鋏を使い分ける必要がなく、容易且つ迅速にカットできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1〜図9は、本実施の形態の梳き鋏を示す。図1〜図5に示すように、本実施の形態にかかる梳き鋏1は、一対の鋏部材2,3を略中央部で交差させ、互いに開閉できるように、この交差部5を枢軸6で連結してなるものである。一方の鋏部材2は、一端側に指孔部21が設けられると共に、他方側(先端側)に普通の切り刃部22が設けられている。この切り刃部22は、交差部5の近傍から一方の鋏部材2の先端まで連続して設けられている。一方の鋏部材2は、指孔部21に指掛け片23が設けられており、静刃側とされている。
【0014】
他方の鋏部材3は、一端側に指孔部31が設けられると共に、他方側(先端側)に櫛刃部32と切り刃部33とが設けられている。なお、他方の鋏部材3は、動刃側とされている。櫛刃部32は、刃に多数の溝(櫛刃間隙)35を設けることにより、幅の狭い刃部34と溝35とが交互に設けられた構成である。
【0015】
各溝35は、図4に示すように刃先34aに開口する入口部36と、この入口部36と連通し且つ入口部36よりも幅が大きな膨出部37を有している。また、各溝35は、入口部36から膨出部37(刃先34aから峰34b)に向けて他方の鋏部材3の先端側に傾斜するように設けられている。櫛刃部32の長さLlは、50mm〜65mmの範囲に設定されており、好ましくは、55mm〜60mmの範囲に設定される。
【0016】
切り刃部33は、櫛刃部32よりも他方の鋏部材3の先端側に位置するように設けられている。この切り刃部33は、全長にわたって連続する刃先を有し、その長さL2は、前記櫛刃部32の長さLlよりも小さくなるように、15mm〜20mmに設定されており、好ましくは、略18mmに設定される。切り刃部33の長さL2が、15mmよりも小さいと、切断される毛髪の量が少なくなり、20mmよりも大きいと、櫛刃部32で毛髪を梳く量に比し、切断される毛髪の量が多くなり過ぎる。従って、切り刃部33の長さL2を、このように設定することにより、切り刃部33と櫛刃部32との使い分けを適切に行なうことが可能となる。
【0017】
次に、前記構成からなる梳き鋏1を使用する場合について説明する。なお、かかる梳き鋏1を使用する以前に、通常の鋏によりベースカットが施されている。
【0018】
ベースカット後の毛量調節に際しては、開いた梳き鋏1を閉じて、通常の梳き鋏と同様に、一方の鋏部材2の切り刃部22と、他方の鋏部材3の櫛刃部32との協働により、毛髪を梳くことができる。また、このとき、必要に応じて一方の鋏部材2の切り刃部22と、他方の鋏部材3の切り刃部33との協働により、毛髪の根元部分を切断することも可能である。
【0019】
マテリアルカットを行なう際には、例えば、図7および図8に示すように、梳き鋏1を適宜傾斜させ、梳き工程(セニング工程)と切断工程(例えば、ぶつ切りに間引きするブリックカット)を同時に行なう。すなわち、梳き鋏1の刃先側は、切り刃部22、33により100%切断できるため、刃先側つまり毛髪Hの根元側H1に強い切れ込みが生じ、切り刃部22と櫛刃部32とで切断した部分H2は梳いた状態となる。
【0020】
毛髪Hは、梳いた部分から曲がり易くなる性質があるので、毛髪の根元近くできることにより、通常よりも激しく毛髪を曲げることが可能となる。毛髪Hの部分H2は、根元側H1から曲がるのであるが、図7に示すように、所定の束の状態であるため、立体的な状態となる。
【0021】
また、かかるマテリアルカットは、梳き鋏1を下方に移動させながら行なう場合がある。このとき、図6(a)に示すように、櫛刃部32の溝35の入口部36に入った毛髪Hは、入口部36から膨出部37に逃げようとする。溝35は傾斜して設けられているため、図6(b)に示すように、梳き鋏1を下方(矢印方向)に移動させると、かかる毛髪Hは、膨出部37の傾斜する縁37aに沿って入口側のCからBを経て最終的には切り刃部22と接触しないA(膨出部37の底部37a)に向かうこととなる。このため、切断されずに溝35に入った毛髪Hが、一方の鋏部材2の切り刃部22と不用意に接触するのを防止し、客に不安感や不快感を与えることことなく安全に梳き鋏1を毛髪の先端側に移動させて抜くことができる。
【0022】
なお、図7において、右側の毛髪Hは、梳き鋏1を上から使用した場合を、左側の毛髪Hは、梳き鋏1を下から使用した場合をそれぞれ示す。
【0023】
仮に、櫛刃部32の溝35が、図10に示すように傾斜していない場合には、同図(a)のように溝35に入った毛髪Hは、同図(b)に示すように、梳き鋏1を矢印方向に移動させると、膨出部37の縁37aに沿ってCからAに移動し難く、切り刃部22と接触することとなり、切り刃部22と膨出部37の縁37aとで毛髪Hを引っ張ってしまうので不快感は大きい。
【0024】
なお、マテリアルカットの際にも、毛先側の毛量調節も同時に行なうことができ、しかも、毛束感を出す場合には、レーザーでカットしたような毛束感も簡単に作ることができる。
【0025】
仕上げ工程の場合には、図9に示すように、梳き鋏1は先端に普通の刃(切り刃部22、33)があるため、毛髪Hの裾部分H3を揃える等の切断が可能である。
【0026】
以上のように、本実施の形態の梳き鋏1は、毛先の毛量調整や、レザーカットによる毛束感の演出も行えるうえ、裾回りのネックラインや刈上げ部分あるいは毛先を揃えたりするとときも有効である。したがて、これ一本で、例えばセニングまたはブリックカットの各カットや、両者同時のカットを適宜行なえることから、毛量調整から、マテリアルカット、仕上げまでの幅広い範囲で容易に使用できる。
【0027】
本発明は、前記の実施例に限定されるものではなく、例えば、一方の鋏部材2を動刃側とし、他方の鋏部材3を静刃側とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る梳き鋏の正面図である。
【図2】同梳き鋏の背面図である。
【図3】同梳き鋏を開いた状態の正面図である。
【図4】同梳き鋏の刃の部分を示す正面図である。
【図5】同梳き鋏の側面図である。
【図6】(a)および(b)は、同梳き鋏の要部を示す正面図である。
【図7】同梳き鋏の使用状態を示す図である。
【図8】(a)は同梳き鋏によりカットした毛髪の概略斜視図、(b)は同梳き鋏の使用状態を示す図である。
【図9】同梳き鋏の使用状態を示す図である。
【図10】図6に対応する比較例を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
1 梳き鋏
2 一方の鋏部材
3 他方の鋏部材
32 櫛刃部
33 切り刃部
34 幅の狭い刃部
35 溝
36 入口部
37 膨出部
H 毛髪
Ll 櫛刃部の長さ
L2 切り刃部の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の鋏部材を交差させ、この交差部を枢軸で連結し、一方の鋏部材は切り刃部を備え、他方の鋏部材は、幅の狭い刃部と溝とが交互に設けられた櫛刃部を備えている梳き鋏において、前記他方の鋏部材の櫛刃部よりも先端側には、切り刃部が設けられたことを特徴とする梳き鋏。
【請求項2】
前記櫛刃部の溝は、刃先側に開口する入口部と、この入口部と連通し且つ入口部よりも幅が大きな膨出部とを有し、前記溝は、入口部から膨出部に向けて他方の鋏部材の先端側に傾斜するように設けられている請求項1に記載の梳き鋏。
【請求項3】
前記他方の鋏部材に設けられた切り刃部の長さは、15mm〜20mmの範囲に設定されている請求項1または2に記載の梳き鋏。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−215686(P2007−215686A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38346(P2006−38346)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(504436055)株式会社ビービーシー (1)
【Fターム(参考)】