説明

梳き鋏

【課題】切り損じがなくなるばかりでなく、一つの梳き動作により二段切りないし数段切りとなるために、梳き作業効率が良くなると同時に、巧みにソフト感を出し得る梳き鋏を提供する。
【解決手段】歯部片11が列設される櫛身刃1と、それと差し合う直身刃2とが軸で枢着される梳き鋏において、櫛身刃の歯部片の上端両側または一側に、先端の主切縁13から滑り落ちる髪の毛を受けて切る凹切縁15を主切縁と連続して設けた。また、歯部片が列設される櫛身刃と、それと差し合う直身刃とが軸で枢着される梳き鋏において、歯部片の両側または一側に、先端の主切縁から段落をおいて、主切縁から滑り落ちる髪の毛を受けて切る段差切縁を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、理容・美容において主として散髪の仕上げに使用する梳き鋏に関する。
【背景技術】
【0002】
梳き鋏は、刈った髪が自然な形になるように整えるために主に仕上げに用いる鋏であって、これには、短く刈った髪が混在するように、一方の刃、一般的には動刃に櫛歯状に多数の歯部片が間隔おきに形成されたもので、この間隔の空間では髪が刈られなく、歯部片の先端縁では刈られることになるために、理髪の仕上げにおいて使用することにより、髪の量が少なくなくなるように梳くことができ、これによってソフト感が出ることになる。
【0003】
理髪用の鋏の構造は、この発明の実施形態を示す例えば図1について説明すると、それぞれ柄4,5を有する櫛身刃1と、直身刃2とが軸3により枢着されたもので、直身刃2の柄5には薬指が嵌まるリング7と小指掛け9が形成され、櫛身刃1の柄4には親指が嵌まるリング6が形成され、親指が掛かる側が動刃として使用され、小指掛け9を有する側が静刃として使用される。そして、主に親指の反復動作に伴う櫛身刃1の運動により開閉がなされるが、直身刃2の運動による逆の場合もあり、また、両柄4,5に小指掛け9,9を設けていずれも動刃と静刃とに使用できる梳き鋏も使用されている。なお、この発明は、いずれの形態の梳き鋏にも適用されるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の梳き鋏であると、歯部片11の先の主切縁の形状について、平たい形状であると髪の毛が外れて切り損じるので、横に滑り落ちないようにギザギザに形成されていることが多い。しかし、このような梳き鋏であると、使用中に髪の毛がギザギザに引っ掛かって操作の抵抗となり、また、使い古すと引っ掛かりがなく滑り落ちが生じ切り損じいらだつ程に作業が捗らないことになることがあった。
【0005】
また、いずれにしても、歯部片11の先端でのみ髪の毛を切るために、一か所で切る量の多い一段切りとなり、ソフト感を出そうとする意に反して段差が大きくなるという問題もあった。
【0006】
この発明は、上記のような実情に鑑みて、切り損じがなくなるばかりでなく、一つの梳き動作により二段切りないし数段切りとなるために、梳き作業効率が良くなると同時に、巧みにソフト感を出し得る梳き鋏を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、第1発明は、歯部片が列設される櫛身刃と、それと差し合う直身刃とが軸で枢着される梳き鋏において、櫛身刃の歯部片の上端両側または一側に、先端の主切縁から滑り落ちる髪の毛を受けて切る凹切縁を主切縁と連続して設けたことを特徴とする梳き鋏を提供する。
【0008】
また、第2発明は、歯部片が列設される櫛身刃と、それと差し合う直身刃とが軸で枢着される梳き鋏において、歯部片の両側または一側に、先端の主切縁から段落をおいて、主切縁から滑り落ちる髪の毛を受けて切る段差切縁を形成したことを特徴とする梳き鋏を提供する。
【0009】
梳き鋏を上記のように構成したから、歯部片の先端の主切縁により髪の毛が切られ、歯部片と歯部片との間では切られないことによって、髪の毛が梳かれることになり、主切縁から滑り落ちた髪の毛は、凹切縁または段差切縁に引っ掛かってここでも切られることになり二段ないし数段切りとなるが、操作中には梳き鋏が押す引くの走る動作を伴うことから、主切縁から滑り落ちた髪の毛が、凹切縁又は段差切縁で切られる位置が、主切縁で切られる位置から離れていることになる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、この発明の梳き鋏によれば、歯部片の先端の主切縁で切られずに外れても、それが凹切縁又は段差切縁で受けられて切られるために、梳き作業効率が良くなり、また、髪の毛を距離を伴う二段切り又は数段切りとなるために、一段の切り厚が少なくなり全体としてなだらかなソフト感のある梳き方となる。さらに、梳き鋏を巧みに操りながら凹切縁又は段差切縁を利用し、客の要望に応えて見栄え良く整髪することができるという優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1ないし図3は、第1発明の一実施形態を示したもので、その梳き鋏は、櫛身刃1と直身刃2とが軸3によって枢着され、櫛身刃1が動刃となるようにその柄4にはリング6のみが形成され、直身刃2が静刃となるように、リング7の他に小指掛け9が形成されている。なお、動刃が直身刃2に、静刃が櫛身刃1となる場合もあり、さらに、両方が兼用されるように、両柄4,5に小指掛け9,9を設けることもある。
【0013】
歯部片11は、直立に形成したが一般的な梳き鋏に見られるように、先端が鋏元になびく弓形に形成することもある。また、歯部片11の先端においては、主切縁13が凸の円弧形に形成され、その両側において凹切縁15,15が連続的に形成される。
【0014】
整髪において、梳き鋏を平行移動のように押したり引いたりして走らせると、主切縁13で髪の毛が切られ、それから滑り落ちる髪の毛の一部は凹切縁15,15に落ち込んでそこで走る距離をおいて切られるために、段差が目立たない二段切りとなりこれでソフト感が出ることになる。また、梳き鋏を斜めに、縦にというように縦横無尽に操りながら、時には髪の毛を凹切縁15に掛けることにより多様な切り方をなすことができる。
【0015】
また、歯部片11の先端においては、直身刃2と擦れ合わない外側に、一対の細い突条17,17が、主切縁13に至るまで形成されている。梳き鋏の使用においては、髪の毛の中に櫛身刃1を一旦深く差し込むこともあるが、その際に歯部片11が皮膚に当たったとしても、この突条17,17が予め触れることによりそれが滑り止めとなるので、櫛身刃1により肌を切るおそれがなく安全に使用できる。また、髪の毛の滑り止めともなる。
【0016】
歯部片11の形状は様々となり、主切縁13を凸ではなく凹の円弧形に形成しても良い。さらに図4において、代表的な他の形状を示す。そのうち、(a)は、主切縁13を片側に傾斜させたものであり、(b)では両側へ山形に傾斜させてある。また、(c)では主切縁13がなだらかな凹凸に形成される。さらに、(d)では、傾斜する主切縁13の高い側の側面に二段に凹切縁15,15が設けられ、3段切りが可能となっている。
【0017】
図5および図6は、第1発明とともに第2発明を実施する形態を示したもので、その梳き鋏は、歯部片11の両側に主切縁13から段落をおいて段差切縁14,14を形成した。従来普通の梳き鋏であると、主切縁13から髪の毛が滑るために、梳き残される量が多く効率的ではなく、また、一段切りで段差が大きく付くが、同図実施形態のものでは、滑り落ちる髪の毛を段差切縁14,14でも切るため、段差が少なく目立たない追加切りとなるために、梳き残される量が少なくなる。そのため、作業の効率性とともに、ソフト感が得られやすい。ちなみに、これは第2発明によるもので、第1発明に係る凹切縁15,15は設けないこともある。
【0018】
しかし、この実施形態の場合であると、前記したように第1発明の実施として、歯部片11の先端の主切縁13の両側面に凹切縁15,15を設けてあるので、凹切縁15,15によっても髪の毛が切られ、主切縁13と凹切縁15,15で切られた残りの一部が段差切縁14,14により切られることになる。したがって、髪の毛がまず最初に主切縁13で、次に、凹切縁15,15で、最後に段差切縁14,14により順次切られ、残りが段差切縁14,14の間の凹所19で未切りに残ることになる。したがって、3段に分配して梳かれるためにソフト感が顕著となる。
【0019】
段差切縁14,14は、一段とは限らなく2段、数段に形成することもある。また、歯部片11の形状については、前記したように様々な形状になり、また、円弧形とすることもある。なお、円弧形については、従来一般的に、歯部片11の上端が鋏元(軸3や柄4,5の方向)へなびく形状であった。したがって、円弧形にするとすれば、原則的に、鋏元へのなびき形として実施することになる(図示省略)。
【0020】
しかし、図7は、歯部片11の円弧形の形状について、それとは逆に鋏先(軸3や柄4,5の反対側)へのなびき形とした場合を示したものである。こうすれば、歯部片11と歯部片11との間に梳かれた髪が円弧形において逃げることになり、髪の毛が抜けやすくなるので、凹切縁15,15や段差切縁14,14を巧妙に利用するために、梳き鋏を自由自在に操りやすい。
【0021】
また、刃を閉じると各歯部片11,11,・・が直身刃2を受ける(日本刀等の)太刀体勢となるため、特に鋏元側の凹切縁15や段差切縁14で比較的切れ味が良好となることから、この点を操作に利用することもできる特異性がある鋏である。また、梳く率が多様となるように、それらの歯部片11と歯部片11との間隔a,b,cが先端に行くにつれて広く3段階の群Wa,Wb,Wcに形成され、また、動刃1の基端の鋏元21は櫛歯のない直刃に形成され、ここでは直に髪を切ることができるようになっている。この歯部片11と歯部片11との間隔の違いを図8において概略的に示した。また、図9に概略的に示すように、歯部片11の幅e,fを群別に違わせて配列しても同じような効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1発明の梳き鋏を示す正面図であって、一部を円内に引出し拡大して見た説明図である。
【図2】同梳き鋏の歯部片の先端部を拡大して示す背面図である。
【図3】図2のA−A線矢視の断面図である。
【図4】歯部片の他の実施形態として(a)〜(d)の4種を代表的に示す図2に対応する背面図である。
【図5】第1および第2発明としての梳き鋏を示す正面図であって、一部を円内に引出し拡大して見た説明図である。
【図6】同梳き鋏の一部背面図である。
【図7】第1および第2発明としての梳き鋏を示す斜視図であって、一部を円内に引出し拡大して見た説明図である。
【図8】この発明に係る櫛身刃において歯部片の間隔の違いの配列のみを示すための説明図である。
【図9】この発明に係る櫛身刃において歯部片の幅違いの配列のみを示すための説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1 櫛身刃
2 直身刃
3 軸
11 歯部片
13 主切縁
14 段差切縁
15 凹切縁
17 突条
a,b,c 歯部片の間隔
e,f 歯部片の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯部片が列設される櫛身刃と、それと差し合う直身刃とが軸で枢着される梳き鋏において、櫛身刃の歯部片の上端両側または一側に、先端の主切縁から滑り落ちる髪の毛を受けて切る凹切縁を主切縁と連続して設けたことを特徴とする梳き鋏。
【請求項2】
歯部片が列設される櫛身刃と、それと差し合う直身刃とが軸で枢着される梳き鋏において、歯部片の両側または一側に、先端の主切縁から段落をおいて、主切縁から滑り落ちる髪の毛を受けて切る段差切縁を形成したことを特徴とする梳き鋏。
【請求項3】
歯部片の上端部に主切縁に至る細い突条を形成したことを特徴とする請求項1または2記載の梳き鋏。
【請求項4】
歯部片を先端が鋏先になびく円弧形に形成したことを特徴とする請求項1,2又は3記載の梳き鋏。
【請求項5】
歯部片の配列について、歯部片の配列間隔の大小違いによる群又は/及び主切縁の幅の大小の違いによる群からなることを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の梳き鋏。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−296258(P2007−296258A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−128855(P2006−128855)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【出願人】(302049655)
【Fターム(参考)】