説明

棒状体の評価方法および棒状体の評価システム

【課題】振動減衰を容易にかつ高い精度で評価できる棒状体の評価方法および棒状体の評価システムを提供する。
【解決手段】棒状体の一端部を固定し、他端側を振動させて上下方向の振動と左右方向の振動を同時に計測し、上下方向のおよび左右方向の振動の時系列データを取得する。この上下方向動および左右方向の振動の時系列データについて、それぞれ山側と谷側のピークのピーク時間およびピークレベルを求める。この上下方向の振動の時系列データにおけるピーク値の絶対値をUpとし、左右方向の振動の時系列データにおけるピーク値の絶対値をLpとする。各ピーク値の絶対値Upを基準として各ピーク値の絶対値Upに最も近いピーク時間の左右方向のピーク値の絶対値Lpを抽出する。ピーク値の絶対値Upと抽出されたピーク値の絶対値Lpとの自乗平方根の値Vpを求める。この値Vpを用いて減衰率を算出し、この減衰率に基づいて損失係数を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状体の振動減衰性能等の振動特性を評価する評価方法およびその棒状体の評価システムに関し、特に、ゴルフクラブシャフト、釣り竿、アイスホッケーのスティック、グランドホッケーのスティック等について振動減衰性能等の振動特性を評価する評価方法および棒状体の評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ゴルフクラブシャフトとして、金属により形成された金属製のゴルフクラブシャフトと、繊維強化複合材(FRP)で形成されたFRP製のゴルフクラブシャフトがある。金属製のゴルフクラブシャフトのうち、特に、スチール製のものはスチールシャフトと呼ばれ、FRP製のゴルフクラブシャフトのうち、カーボン繊維強化複合材(CFRP)で形成されたゴルフクラブシャフトはカーボンシャフトと呼ばれている。
このFRP製のゴルフクラブシャフトは、例えば、シートワインディング法、フィラメントワインディング法、3軸ブレーディング法等の製造方法によって製造されている。
FRP製のゴルフクラブシャフトにおいては、シャフトの周方向における変形特性が異なることが知られている。この変形特性の異方性は、上記製造方法、またはもともとFRP自体に異方性があることによるものである。
また、FRP製のゴルフクラブシャフトは、強化繊維の配向方向、積層数などを変えることにより、その長手方向の剛性分布、振動減衰等の振動特性を調整することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
FRP製のゴルフクラブシャフトについて、振動特性が設計された通りになっているかを確認するために振動特性を評価することがなされる。この振動特性の評価のために、ゴルフクラブシャフトの一端を固定して、他端を上下に振動させると、上述のシャフトの周方向における変形特性の異方性により、ゴルフクラブシャフトが左右にも振動してしまい、振動特性を正確に評価できないという問題点がある。更には、製造されたFRP製のゴルフクラブシャフトの振動減衰等の振動特性についての評価方法に特に決まったものがないのが現状である。
【0004】
本発明の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、振動減衰を容易にかつ高い精度で評価できる棒状体の評価方法および棒状体の評価システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、棒状体の一端部を固定し、他端側を振動させ、前記他端部の上下方向の振動と左右方向の振動とを同時に所定の時間計測し、上下方向の振動の時系列データおよび左右方向の振動の時系列データを取得する工程と、前記計測された上下方向の振動の時系列データおよび前記左右方向の振動の時系列データについて、それぞれ、高速フーリエ変換し、振動の周波数に対する振動の振幅レベルを示す振幅特性データと、前記振動の周波数に対する振動の位相を示す位相特性データをそれぞれ作成する工程と、前記上下方向の振動と前記左右方向の振動に対して、前記各振幅特性データから、それぞれ少なくとも1次共振周波数を求める工程と、前記求められた各1次共振周波数を中心周波数としたバンドパスフィルタを設定する工程と、前記各バンドパスフィルタを、それぞれ前記各振幅特性データにかけた後、それぞれ逆高速フーリエ変換し、1次共振周波数における時間波形データを、それぞれ求める工程と、前記1次共振周波数の時間波形データについて、山側と谷側のピークのピーク時間およびピークレベルを求める工程と、前記上下方向の前記1次共振周波数の時間波形データにおけるピーク値の絶対値をUpとし、前記左右方向の前記1次共振周波数の時間波形データにおけるピーク値の絶対値をLpとし、前記各ピーク値の絶対値Upを基準として、各ピーク値の絶対値Upに最も近いピーク時間の左右方向のピーク値の絶対値Lpを、それぞれ抽出する工程と、前記ピーク値の絶対値Upと前記抽出されたピーク値の絶対値Lpとの自乗平方根の値Vpを求める工程と、前記求められた値Vpを用いて減衰率を算出し、前記減衰率に基づいて損失係数を算出する工程とを有することを特徴とする棒状体の評価方法を提供するものである。
本発明において、上下方向および左右方向の振動の時系列データは、例えば、上下方向および左右方向の加速度の時系列データである。
【0006】
また、本発明は、棒状体の一端部を固定し、他端側を振動させ、前記他端部の上下方向の振動と左右方向の振動とを同時に所定の時間計測し、上下方向の振動の時系列データおよび左右方向の振動の時系列データを取得する工程と、前記上下方向の振動の時系列データおよび前記左右方向の振動の時系列データについて、それぞれ山側と谷側のピークのピーク時間およびピークレベルを求める工程と、前記上下方向の振動の時系列データにおけるピーク値の絶対値をUpとし、前記左右方向の振動の時系列データにおけるピーク値の絶対値をLpとし、前記各ピーク値の絶対値Upを基準として、各ピーク値の絶対値Upに最も近いピーク時間の左右方向のピーク値の絶対値Lpを、それぞれ抽出する工程と、前記ピーク値の絶対値Upと前記抽出されたピーク値の絶対値Lpとの自乗平方根の値Vpを求める工程と、前記求められた値Vpを用いて減衰率を算出し、前記減衰率に基づいて損失係数を算出する工程とを有することを特徴とする棒状体の評価方法を提供するものである。
本発明において、上下方向および左右方向の振動の時系列データは、例えば、上下方向および左右方向の変位の時系列データである。
【0007】
本発明において、前記各振幅特性データから求める共振周波数は、1次共振周波数、2次共振周波数および3次共振周波数であることが好ましい。
また、本発明において、前記バンドパスフィルタは、1/3オクターブバンドパスフィルタであることが好ましい。
さらに、本発明において、前記減衰率は、例えば、対数減衰率である。
さらにまた、本発明において、前記棒状体は、例えば、ゴルフクラブシャフトである。
【0008】
本発明は、棒状体の一端部を固定し、他端側を振動させたときの前記他端部の上下方向の振動と左右方向の振動とを同時に所定の時間計測する計測装置と、前記計測装置で計測された上下方向の振動の時系列データおよび左右方向の振動の時系列データを取得するデータ取得装置と、前記計測された上下方向の振動の時系列データおよび前記左右方向の振動の時系列データについて、それぞれ、高速フーリエ変換し、振動の周波数に対する振動の振幅レベルを示す振幅特性データと、前記振動の周波数に対する振動の位相を示す位相特性データをそれぞれ作成し、前記上下方向の振動と前記左右方向の振動に対して、前記各振幅特性データから、それぞれ少なくとも1次共振周波数を求め、前記求められた各1次共振周波数を中心周波数としたバンドパスフィルタを設定し、前記各バンドパスフィルタを、それぞれ前記各振幅特性データにかけた後、それぞれ逆高速フーリエ変換し、1次共振周波数における時間波形データを、それぞれ求め、前記1次共振周波数の時間波形データについて、山側と谷側のピークのピーク時間およびピークレベルを求め、前記上下方向の前記1次共振周波数の時間波形データにおけるピーク値の絶対値をUpとし、前記左右方向の前記1次共振周波数の時間波形データにおけるピーク値の絶対値をLpとし、前記各ピーク値の絶対値Upを基準として、各ピーク値の絶対値Upに最も近いピーク時間の左右方向のピーク値の絶対値Lpを、それぞれ抽出し、前記ピーク値の絶対値Upと前記抽出されたピーク値の絶対値Lpとの自乗平方根の値Vpを求め、前記求められた値Vpを用いて減衰率を算出し、前記減衰率に基づいて損失係数を算出する処理装置とを有することを特徴とする棒状体の評価システムを提供するものである。
【0009】
本発明においては、前記計測装置は、前記他端部の上下方向の加速度および左右方向の加速度を計測する加速度センサを有することが好ましい。
【0010】
本発明は、棒状体の一端部を固定し、他端側を振動させたときの前記他端部の上下方向の振動と左右方向の振動とを同時に所定の時間計測する計測装置と、前記計測装置で計測された上下方向の振動の時系列データおよび左右方向の振動の時系列データを取得するデータ取得装置と、前記上下方向の振動の時系列データおよび前記左右方向の振動の時系列データについて、それぞれ山側と谷側のピークのピーク時間およびピークレベルを求め、前記上下方向の振動の時系列データにおけるピーク値の絶対値をUpとし、前記左右方向の振動の時系列データにおけるピーク値の絶対値をLpとし、前記各ピーク値の絶対値Upを基準として、各ピーク値の絶対値Upに最も近いピーク時間の左右方向のピーク値の絶対値Lpを、それぞれ抽出し、前記ピーク値の絶対値Upと前記抽出されたピーク値の絶対値Lpとの自乗平方根の値Vpを求め、前記求められた値Vpを用いて減衰率を算出し、前記減衰率に基づいて損失係数を算出する処理装置とを有することを特徴とする棒状体の評価システムを提供するものである。
本発明においては、前記計測装置は、前記他端部の上下方向の変位および左右方向の変位を計測するレーザ変位計を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、振動減衰を容易に評価することができる。しかも、棒状体を上下方向に振動させた場合、左右方向にも振動してしまうものであっても、高い精度で振動減衰を評価することができる。
このため、本発明によれば、例えば、ゴルフクラブシャフトの振動減衰の評価を、容易かつ高い精度でできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は、本発明の第1の実施形態の棒状体の評価方法に用いられる評価システムを示す模式図であり、(b)は、図1(a)に示す評価システムにおける第1の加速度センサ、および第2の加速度センサの取り付け位置を拡大して示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の棒状体の評価方法によるゴルフクラブシャフトの評価方法を工程順に示すフローチャートである。
【図3】(a)は、縦軸に加速度をとり、横軸に時間をとって、ゴルフクラブシャフトの上下方向の加速度の時系列データを示すグラフであり、(b)は、縦軸に加速度をとり、横軸に時間をとって、ゴルフクラブシャフトの左右方向の加速度の時系列データを示すグラフである。
【図4】縦軸にパワースペクトルをとり、横軸に周波数をとって、振幅特性データを示すグラフである。
【図5】縦軸にフィルタ値をとり、横軸に周波数をとって、本実施形態で用いたバンドパスフィルタを説明するためのグラフである。
【図6】縦軸に振動ピークレベルをとり、横軸に時間をとって、1次共振周波数における減衰率を説明するためのグラフである。
【図7】縦軸に振動ピークレベルをとり、横軸に時間をとって、2次共振周波数における減衰率を説明するためのグラフである。
【図8】縦軸に振動ピークレベルをとり、横軸に時間をとって、3次共振周波数における減衰率を説明するためのグラフである。
【図9】縦軸に損失係数をとり、横軸に周波数をとって、各共振周波数における損失係数の結果を示すグラフである。
【図10】本発明の第2の実施形態の棒状体の評価方法に用いられる評価システムを示す模式的斜視図である。
【図11】本発明の第2の実施形態の棒状体の評価方法によるゴルフクラブシャフトの評価方法を工程順に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の棒状体の評価方法および棒状体の評価システムを詳細に説明する。
図1は、(a)は、本発明の第1の実施形態の棒状体の評価方法に用いられる評価システムを示す模式図であり、(b)は、図1(a)に示す評価システムにおける第1の加速度センサ、および第2の加速度センサの取り付け位置を拡大して示す模式図である。
【0014】
図1に示す評価システム10は、棒状体として、例えば、ゴルフクラブシャフト30の減衰性能などの振動特性を評価するものである。
図1に示すように、評価システム10は、ゴルフクラブシャフト30を固定する固定部12と、ゴルフクラブシャフト22の振動を検出する第1の加速度センサ14および第2の加速度センサ16と、チャージアンプ18と、FFTアナライザ20と、コンピュータ(以下、PCという)22とを有する。
また、第1の加速度センサ14および第2の加速度センサ16は、チャージアンプ18を介してFFTアナライザ20に接続されている。FFTアナライザ20は、PC22により制御される。
【0015】
固定部12は、ゴルフクラブシャフト30の後端部32aを固定するものである。この固定部12は、例えば、水平面Bの上に設けられている。固定部12にゴルフクラブシャフト30が固定された場合、ゴルフクラブシャフト30の中心軸Cが水平面Bと平行になる。この固定部12におけるゴルフクラブシャフト30の後端部32aの固定長さLは、例えば、170mmである。
なお、固定部12のゴルフクラブシャフト30の固定方法は、特に限定されるものではない。
【0016】
ここで、ゴルフクラブシャフト30の後端部32aとは、ゴルフクラブシャフト30をゴルフクラブヘッド(図示せず)に取り付け、ゴルフクラブ(図示せず)とする場合、グリップ(図示せず)が取り付けられる側の端部のことである。
また、ゴルフクラブシャフト30の先端部32bとは、ゴルフクラブヘッド(図示せず)を取り付ける側の端部のことである。
【0017】
本実施形態においては、ゴルフクラブシャフト30は、単体であっても、ゴルフクラブヘッドが取り付けられた状態であってもよい。ゴルフクラブヘッドが取り付けられている場合、グリップ側の端部を、例えば、固定長さ170mmで固定する。
また、本実施形態においては、後述するように、ゴルフクラブシャフト30の評価には、例えば、評価するゴルフクラブシャフト30の後端部32aを固定し、先端部32bを振動させて、ゴルフクラブシャフト30の振動特性を測定して評価する。
【0018】
第1の加速度センサ14は、ゴルフクラブシャフト22の長手方向Lと直交する上下方向Vにおけるゴルフクラブシャフト22の先端部24bの振動を測定するものである。なお、上下方向Vは、水平面Bに対して垂直な方向である。
この第1の加速度センサ14は、例えば、ゴルフクラブシャフト22の先端22aから後端部24a側に距離L、離れた位置で、かつゴルフクラブシャフト22の周面22bにおいて、水平面Bから上記上下方向Vにおける距離が最も離れた位置に設けられている。換言すれば、第1の加速度センサ14は、ゴルフクラブシャフト22の先端22aから後端部24a側にL離れた位置で、かつゴルフクラブシャフト22の周面22bにおいて、ゴルフクラブシャフト22の中心軸Cを通り上記上下方向Vと平行な線Y上に設けられている。この第1の加速度センサ14が設けられる位置を第1の取付位置αという。この距離Lは、例えば、100mmである。
【0019】
第2の加速度センサ16は、ゴルフクラブシャフト22の長手方向Lおよび上下方向Vと直交する左右方向Hにおけるゴルフクラブシャフト22の先端部24bの振動を測定するものである。
この第2の加速度センサ16は、第1の加速度センサ14を、ゴルフクラブシャフト22の中心軸Cを回転中心にして90°回転させた位置に設けられている。換言すれば、第2の加速度センサ16は、ゴルフクラブシャフト22の先端22aから後端部24a側にL離れた位置で、かつゴルフクラブシャフト22の周面22bにおいて、ゴルフクラブシャフト22の中心軸Cを通り長手方向Lおよび上下方向Vと直交する左右方向Hと平行な線X上に設けられている。この第2の加速度センサ16が設けられる位置を第2の取付位置βという。
第1の加速度センサ14および第2の加速度センサ16には、例えば、軽量加速度ピックアップが用いられる。この軽量加速度ピックアップは、加速度信号を電荷の形態で、出力する。なお、加速度ピックアップは超軽量のものが好ましい。例えば、質量が0.6gのものを用いるとよい。これは、質量が大きいと共振周波数への影響が大きくなるためである。
【0020】
本実施形態においては、ゴルフクラブシャフト22の先端22aに、水平面Bに向う下方向Vに、例えば、20mmの変位を与えてゴルフクラブシャフト22を自由減衰振動させる。このとき、第1の加速度センサ14により、上下方向Vのゴルフクラブシャフト22の自由減衰振動が加速度として測定され、第2の加速度センサ16により、左右方向Hのゴルフクラブシャフト22の自由減衰振動が加速度として測定される。
【0021】
チャージアンプ18は、第1の加速度センサ14および第2の加速度センサ16に接続されている。このチャージアンプ18には、第1の加速度センサ14および第2の加速度センサ16のそれぞれから得られた加速度信号が、例えば、電荷の形態で入力される。チャージアンプ18は、その電荷の形態で入力された各加速度信号を、それぞれ電圧に変換してFFTアナライザ20に加速度信号として出力する。
【0022】
FFTアナライザ20は、チャージアンプ18に接続されており、このチャージアンプ18から電圧の形態で出力される第1の加速度センサ14の加速度信号および第2の加速度センサ16の加速度信号を時系列で取り込み、PC22に出力するものである。
このFFTアナライザ20においては、例えば、第1の加速度センサ14の加速度信号、および第2の加速度センサ16の加速度信号について、それぞれ振動を開始してから例えば、約1ミリ秒のサンプリング周期(4秒/4096間隔)で4秒間(サンプリング時間)取り込む。FFTアナライザ20により、第1の加速度センサ14による上下方向Vの加速度の時系列データ(時間波形)が得られ、第2の加速度センサ16による左右方向Hの加速度の時系列データ(時間波形)が得られる。
【0023】
なお、FFTアナライザ20による加速度信号についてのサンプリング周期は、約1ミリ秒に限定されるものではなく、要求される振動の測定精度に応じて適宜変更可能である。さらには、FFTアナライザ20による変位についての取り込み時間(サンプリング時間)も、4秒に限定されるものではなく、ゴルフクラブシャフト30の特性、要求される振動の測定精度に応じて適宜変更可能である。
【0024】
PC22は、処理装置であって、一般的なパーソナルコンピュータと同様の構成を有するものであり、CPU(図示せず)、メモリ(図示せず)を備え、キーボード、マウスなどのコンピュータの入力に用いられる入力部(図示せず)と、入力部からの入力情報およびCPUで情報処理された情報を表示するLCDなどのモニタ24とを有する。
【0025】
PC22は、FFTアナライザ20から出力された第1の加速度センサ14による上下方向Vの加速度の時系列データ(時間波形)、第2の加速度センサ16による左右方向Hの加速度の時系列データ(時間波形)がメモリ(図示せず)に記憶される。
PC22は、上下方向Vの加速度波形のデータ、左右方向Hの加速度波形のデータについて、FFT(高速フーリエ変換)をする機能を有する。
【0026】
また、PC22は、1次共振周波数、2次共振周波数および3次共振周波数等の共振周波数を算出する機能、例えば、各共振周波数を中心にした1/3オクターブバンドフィルタ等のバンドパスフィルタの設定する機能を有する。
また、PC22は、1/3オクターブバンドパスフィルタを用いた共振周波数別の振幅特性データを算出する機能、各共振周波数の振幅特性データに対して逆FFTを行い、加速度波形のデータを作成する機能を有する。
【0027】
また、PC22は、波形のデータについて、山側および谷側のピークを抽出し、かつそのピークの時間を求める機能を有する。
さらには、PC22は、各共振周波数における減衰率、および損失係数を求める機能を有する。
【0028】
なお、PC22においては、得られたデータの数値についての四則演算の機能を有することは言うまでもなく、更には上記機能を発揮する段階で作成された各種のデータについては、適宜メモリに記憶させるとともに、モニタ24に、グラフ、数値等の形態で表示させる機能を有する。
また、PC22における上記各種の機能は、FFTアナライザを利用した周波数解析をするときになされる各種の信号処理をする際に用いられる市販のソフトウェアによる実現できるものである。
【0029】
なお、PC22は、FFTアナライザ20を介することなく、第1の加速度センサ14の加速度信号、および第2の加速度センサ16の加速度信号をチャージアンプ18から直接、取り込むこともできる。この場合、第1の加速度センサ14の加速度信号、および第2の加速度センサ16の加速度信号をAD変換するAD変換ボードをPC22に組み込み、チャージアンプ18と接続し、各加速度信号をコンピュータ20に直接取り込む構成としてもよい。
【0030】
本発明の評価方法および評価システムにおいては、評価対象は、棒状体のものであれば、断面形状が円、矩形であってもよく、特に限定されるものではない。また、ゴルフクラブシャフト30に限定されるものではなく、釣り竿、アイスホッケーのスティック、グランドホッケーのスティック等についても、振動減衰等の振動特性を評価することができる。
【0031】
次に、本実施形態のゴルフクラブシャフトの評価方法について、ゴルフクラブシャフト30として、長さが1170mmのカーボンシャフトを例にして説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態の棒状体の評価方法によるゴルフクラブシャフトの評価方法を工程順に示すフローチャートである。
【0032】
先ず、図1に示す評価システム10の固定部12にゴルフクラブシャフト30の後端部32aを、例えば、170mmの固定長さで固定する。この固定部12によるゴルフクラブシャフト30の固定圧力は、例えば、19.6N(2kgf)である。
【0033】
次に、第1の加速度センサ14を、距離Lが100mmの第1の取付位置αに取り付ける。第2の加速度センサ16を、第2の取付位置βに取り付ける。
第1の加速度センサ14および第2の加速度センサ16は、チャージアンプ18に接続される。
【0034】
次に、ゴルフクラブシャフト30の先端30aを下方向Vに20mm変位させた後、先端30aを解放する。これにより、ゴルフクラブシャフト30の先端部32bが振動する(ステップS10)。
このとき、第1の加速度センサ14による左右方向Hの加速度の計測と、第2の加速度センサ16による上下方向Vの加速度の計測とが同時にされて、第1の加速度センサ14による左右方向Hの加速度信号がチャージアンプ18に入力されて変換された後、加速度信号がFFTアナライザ20に取り込まれる。また、第2の加速度センサ16による上下方向Vの加速度信号もチャージアンプ18に入力された後、チャージアンプ18の出力信号がFFTアナライザ20に取り込まれる。
【0035】
本実施形態においては、FFTアナライザ20には、先端30aを解放した後、例えば、約1ミリ秒のサンプリング周期(4秒/4096間隔)で4秒間(サンプリング時間)の加速度信号が取得される。これにより、図3(a)に示すように、上下方向Vの加速度の時系列データ40a、および図3(b)に示すように、左右方向Hの加速度の時系列データ40bが得られる(ステップS12)。
図3(a)に示すように上下方向Vの加速度は、1.4秒位まで減少していき、その後、変位がまた大きくなっている。図3(b)に示す左右方向Hの加速度は、0.5秒位から1.5秒位まで減少している。
上下方向Vの加速度の時系列データ40a、および左右方向Hの加速度の時系列データ40bがFFTアナライザ20からPC22に出力されて、PC22のメモリに記憶される。
【0036】
次に、PC22において、上下方向Vの加速度の時系列データ40a、および左右方向Hの加速度の時系列データ40bについて、FFT(高速フーリエ変換)を行う(ステップS14)。これにより、上下方向Vの加速度の時系列データ40aから、例えば、図4に示すような振幅特性データ42が得られる。図4の縦軸のパワースペクトル(dB)は、振動の振幅の大きさを示すものである。
なお、左右方向Hの加速度の時系列データ40bについてもFFTを行うため、図示はしないが、時系列データ40aと同様に図4に示すような振幅特性データ42が得られる。
【0037】
ここで、FFTをして得られるフーリエ変換データは、振動の周波数に対する振動の振幅レベルを示す振幅特性データと、振動の周波数に対する振動の位相を示す位相特性データとを含むものである。
高速フーリエ変換の処理自体は、公知の方法であるため、その詳細な説明を省略する。この高速フーリエ変換は、例えば、振動の時間波形データである変位の時系列データからフーリエ係数を求め、このフーリエ係数を演算することで周波数毎に振幅と位相を求めるものである。周波数と振幅との関係を表すものが、振動の周波数に対する振動の振幅レベルを示す振幅特性データとなる。
【0038】
次に、上述の振幅特性データに基づいて、PC22は、ゴルフクラブシャフト30の上下方向Vおよび左右方向Hにおける1次共振周波数、2次共振周波数、および3次共振周波数を含む複数の共振周波数を求める(ステップS16)。
例えば、PC22において、図4に示す振幅特性データ42について、周波数解析を行い、振幅特性データ42に含まれる複数のピーク42a、42b、42cの値に対応する周波数の値を、それぞれ求めることにより、1次共振周波数f、2次共振周波数f、3次共振数波数fを得ることができる。
また、図4では、振幅特性データ42を1つだけ示しているが、本実施形態においては、左右方向Hの振幅特性データについても、上下方向Vと同様に、1次共振周波数〜3次共振周波数を求め、合計6個の共振周波数を求める。
【0039】
また、本実施形態の評価方法においては、1次共振周波数が少なくとも求めることができればよいため、振幅特性データ42から、2次共振周波数および3次共振周波数を、必ずしも求める必要はない。
本実施形態においては、振動特性に与える影響が大きい1次共振周波数〜3次共振周波数f、f、fについて求めることが好ましい。なお、何次の共振周波数まで求めるかについては、特に限定されるものではない。
【0040】
次に、PC22は、ステップS18で求めた合計6個の1次共振周波数〜3次共振周波数f、f、fのそれぞれに対応して、各共振周波数を中心周波数とするバンドパスフィルタを設定する(ステップS18)。
ここで、図5は、縦軸にフィルタ値をとり、横軸に周波数をとって、本実施形態で用いたバンドパスフィルタを説明するためのグラフである。
図5の縦軸のフィルタ値とは、ゲインに相当するものであり、例えば、フィルタ値が0ならば入力信号が100%阻止され、フィルタ値が0.5ならば入力信号が50%通過され、フィルタ値が1ならば入力信号が100%通過される。
【0041】
図5に示すように、バンドパスフィルタの特性は、中心周波数fcと、下限遮断周波数fと、上限遮断周波数fとによって規定される。
したがって、ステップS18で求めた各共振周波数f、f、fに対応して、図5に示すように、中心周波数fc=fのバンドパスフィルタ44aと、中心周波数fc=fのバンドパスフィルタ44bと、中心周波数fc=fのバンドパスフィルタとを設定する。なお、図5において、3次共振周波数fのバンドパスフィルタの中心周波数fcと、下限遮断周波数fと、上限遮断周波数fとが周波数の表示範囲を超えているため、その図示を省略している。
【0042】
本実施形態において、バンドパスフィルタとして、例えば、1/3オクターブバンドパスフィルタを用いる。この1/3オクターブバンドパスフィルタにおける下限遮断周波数f、上限遮断周波数fについては、下記(1)式と(2)式により求めることができる。
【0043】
=fc・2(−1/6) (1)
=fc・2(1/6) (2)
【0044】
本実施形態における1/3オクターブバンドパスフィルタは、JIS C1513に規定されている1/3オクターブの規格の考え方と同様である。ただし、上記JIS規格では、中心周波数fcが予め決定されているのに対して、本実施形態では、中心周波数fcがステップS18で求められた各共振周波数である点が異なる。
【0045】
なお、本実施形態においては、バンドパスフィルタに1/3オクターブバンドパスフィルタを用いたが、これに限定されるものではない。バンドパスフィルタとしては、例えば、図4に示す振幅特性データ42から、目的とする共振周波数成分の振動波形を正確に分離することができればよく、バンドパスフィルタの下限遮断周波数f、上限遮断周波数fをどのように設定するかは、特に限定されるものではない。
【0046】
次に、PC22は、図4に示す振幅特性データ42を、ステップS20で設定した3つのバンドパスフィルタにそれぞれかける(ステップS20)。これにより、各バンドパスフィルタから3つの共振周波数(1次共振周波数f、2次共振周波数f、3次共振周波数f)のそれぞれに対応した3つの共振周波数別振幅特性データが得られる。
なお、左右方向Hの振幅特性データ(図示せず)についても、3つの共振周波数(1次共振周波数f、2次共振周波数f、3次共振周波数f)のそれぞれに対応した3つの共振周波数別振幅特性データが得られる。
【0047】
次に、PC22は、ステップS20で得られた3つの共振周波数別振幅特性データのそれぞれと、ステップS14で求めた位相特性データとに基づいて逆FFT(高速フーリエ変換)を行う(ステップS22)。
これにより、3つの共振周波数(1次共振周波数f、2次共振周波数f、3次共振周波数f)のそれぞれに対応した共振周波数別の時間波形データを得る(ステップS24)。この場合、上下方向および左右方向について、それぞれ、図3(a)に示すような時系列データおよび図3(b)に示すような時系列データが得られる。このようにして、ステップS24においては、各共振周波数別に分離された時間波形データが得られる。
【0048】
次に、ステップS24で得られた各共振周波数毎の時間波形データについて、0クロス点を利用して、0点を境にプラス側のピークについてその時間とピークレベルを求め、更にはマイナス側のピークについてその時間とピークレベルを求める(ステップS26)。
【0049】
各共振周波数において、上下方向Vにおける時間波形データのピーク値の絶対値をUpとし、左右方向Hにおける時間波形データのピーク値の絶対値をLpとするとき、時間波形データのピーク値の絶対値Upを基準として、このピーク値の絶対値Upに、最も近いピーク時間の左右方向のピーク値の絶対値Lpを抽出する。
次に、基準となるピーク値の絶対値Upと、抽出されたピーク値の絶対値Lpとの自乗平方根の値Vpを求める(ステップS28)。なお、自乗平方根の値Vpとは、以下の式により表されるものである。Vp=(Up+Lp1/2
【0050】
次に、1次共振周波数、2次共振周波数、3次共振周波数毎に、減衰率を求める(ステップS30)。本実施形態において、減衰率に、例えば、対数減衰率を用いる。
この場合、図6に示すように、例えば、縦軸に振動ピークレベルをとり、横軸に時間をとって、1次共振周波数について得られたVpの値を二乗して常用対数に変換した後、10倍した数値をプロットする。これをプロット群50aとして図6に示す。このプロット群50aの各数値は、10logVpにより求められる。
そして、このプロット群50aについて、例えば、最小自乗法を用いて直線近似し、近似直線52aを求める。この近似直線52aの傾きが減衰率D(dB/秒)である。
【0051】
図6には、上下方向のピーク値Upを二乗して常用対数に変換した後、10倍した数値をプロットしたプロット群54aを示している。
このプロット群54aの数値は、10logUpにより求められる。
さらに、図6には、左右方向のピーク値Lpも二乗して常用対数に変換した後、10倍した数値をプロットしたプロット群56aを示している。
このプロット群56aの数値は、10logLpにより求められる。
図6に示すように、自乗平方根の値Vpに比して、上下方向のピーク値Upおよび左右方向のピーク値Lpは直線性が劣っている。
【0052】
また、図7に示すように、例えば、縦軸に振動ピークレベルをとり、横軸に時間をとって、2次共振周波数について得られたVpの値を二乗して常用対数に変換した後、10倍した数値をプロットする。これをプロット群50bとして図7に示す。
そして、このプロット群50bについて、例えば、最小自乗法を用いて直線近似し、近似直線52bを求める。この近似直線52bの傾きが減衰率D(dB/秒)である。
図7には、上下方向のピーク値Upを二乗して常用対数に変換した後、10倍した数値をプロットしたプロット群54bを示すとともに、左右方向のピーク値Lpも二乗して常用対数に変換した後、10倍した数値をプロットしたプロット群56bを示している。
2次共振周波数においても、図7に示すように、自乗平方根の値Vpに比して、上下方向のピーク値Upおよび左右方向のピーク値Lpは直線性が劣っている。
【0053】
また、図8に示すように、例えば、縦軸に振動ピークレベルをとり、横軸に時間をとって、3次共振周波数について得られたVpの値を二乗して常用対数に変換した後、10倍した数値をプロットする。これをプロット群50cとして図8に示す。
そして、このプロット群50cについて、例えば、最小自乗法を用いて直線近似し、近似直線52cを求める。この近似直線の傾き52cが減衰率D(dB/秒)である。
図8には、上下方向のピーク値Upを二乗して常用対数に変換した後、10倍した数値をプロットしたプロット群54cを示すとともに、左右方向のピーク値Lpも二乗して常用対数に変換した後、10倍した数値をプロットしたプロット群56cを示している。
3次共振周波数においても、図8に示すように、自乗平方根の値Vpに比して、上下方向のピーク値Upおよび左右方向のピーク値Lpは直線性が劣っている。
【0054】
PC22においては、上記図6に示す近似直線52a、図7に示す近似直線52b、図8に示す近似直線52cを求める。各近似直線52a、近似直線52bおよび近似直線52cの傾きを求め、減衰率Dを得る(ステップS30)。
そして、各共振周波数における減衰率Dから、各共振周波数について、損失係数ηを求める(ステップS32)。
なお、減衰率Dと損失係数ηとは式(3)で示される関係にある。このため、減衰率Dを求めることにより、損失係数ηを求めることができる。
η=D/(27.3・fx) (3) (fxは各共振周波数)
【0055】
共振周波数fxには、例えば、ステップS16で求めた上下方向V(加振方向)の各共振周波数が用いられる。
なお、共振周波数別振動波形の波数をNとし、この波数Nの発生時間をTとしたときに、共振周波数fnは、N/Tで求めることができる。このようにして得られた共振周波数の値を共振周波数fxとして用いてもよい。
【0056】
本実施形態において、ブレーディング法により形成されたゴルフクラブシャフトについて取付角度を0°、45°、90°、135°と変えて、それぞれ1次共振周波数〜3次共振周波数における損失係数を求めた。さらには、取付角度が0°、45°、90°、135°のうち、左右方向の振動が最も小さいものにおける上下方向の振動波形データだけを用いて損失係数を求めた。この結果を図9に示す。
なお、取付角度0°とは、計測の最初に取り付けた状態のことである。また、取付角度45°、90°、135°とは、取付角度0°を基準として、時計周りにゴルフクラブシャフトを回転させた角度のことである。
【0057】
図9には、1次共振周波数における損失係数をプロットしたプロット群60aと、2次共振周波数における損失係数をプロットしたプロット群60bと、3次共振周波数における損失係数をプロットしたプロット群60cとを示している。
本実施形態の評価方法によれば、図9に示すように、取付角度によらず、損失係数の値に差がない。また、左右方向の振動が最も小さいものにおける上下方向の振動波形データだけを用いて得られた損失係数と、本実施形態の評価方法による損失係数との差もない。
【0058】
本実施形態の評価システムおよび評価方法によれば、ゴルフクラブシャフト30について、取付角度に依存することなく、損失係数を求めることができる。しかも、上下方向Vと左右方向Hについて、振動を同時に計測するだけなので容易である。
【0059】
また、本実施形態の評価方法は、例えば、ゴルフクラブシャフトが設計した振動減衰能を有するかの等の品質管理に利用することができる。このとき、製造されたゴルフクラブ全品、または抜き取り検査する場合には、製造されたゴルフクラブシャフトのうち、適用に引き抜かれたものについて、損失係数を計測する。そして、ゴルフクラブシャフトが不良品で、剥離等が生じていると、全体の剛性が低下し、これにより共振周波数が低下する。また、剥離した箇所により内部摩擦が増え、損失係数が高くなる。このことから、図9に示すプロット群60aを良品とした場合、不良品のゴルフクラブシャフトは、符号62aで示すような位置にプロットされることになる。このようにして、不良品と良品とを区別することができる。
なお、2次共振周波数についても、図9に示すプロット群60bを良品とした場合、不良品のゴルフクラブシャフトは、符号62bで示すような位置にプロットされることになり、3次共振周波数についても、図9に示すプロット群60cを良品とした場合、不良品のゴルフクラブシャフトは、符号62cで示すような位置にプロットされることになる。
【0060】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図10は、本発明の第2の実施形態の棒状体の評価方法に用いられる評価システムを示す模式的斜視図である。
図11は、本発明の第2の実施形態の棒状体の評価方法によるゴルフクラブシャフトの評価方法を工程順に示すフローチャートである。
本実施形態においては、図1に示す第1の実施形態の評価システム10と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0061】
本実施形態の評価システム11は、第1の実施形態の評価システム10(図1参照)に比して、第1の加速度センサ14および第2の加速度センサ16にかえて第1のレーザ変位計14および第2のレーザ変位計16を用いている点、およびチャージアンプ18が設けられていない点が異なり、それ以外の構成は、第1の実施形態と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
【0062】
本実施形態の評価システム11において、第1のレーザ変位計70および第2のレーザ変位計74はFFTアナライザ20に接続されている。第1のレーザ変位計70、第2のレーザ変位計74およびFFTアナライザ20は、いずれもPC22により制御される。
【0063】
第1のレーザ変位計70は、左右方向Hにおけるゴルフクラブシャフト30の先端部32bの振動の変位を測定するものである。
第1のレーザ変位計70は、例えば、透過式のレーザ変位計であり、投光部70aと、受光部70bとを有し、投光部70aと、受光部70bとが上下方向Vに所定の間隔をあけて対向して配置されている。本実施形態においては、投光部70aと受光部70bとの間に評価対象物であるゴルフクラブシャフト30が配置される。
【0064】
第1のレーザ変位計70においては、投光部70aから帯状のレーザ光72が受光部70bに向けて照射され、レーザ光72の一部がゴルフクラブシャフト30で遮られて受光部70bで受光する。受光部70bは、受光したレーザ光72に基づいて、左右方向Hのゴルフクラブシャフト30の周面30bのエッジを検出する。この左右方向Hの周面30bのエッジの位置の時間変化を検出することにより、振動の際の左右方向Hの変位が得られる。第1のレーザ変位計70は、この検出された変位を、例えば、アナログ信号の形態で変位信号としてFFTアナライザ20に出力する。
【0065】
第2のレーザ変位計74は、第1のレーザ変位計70の投光部70aおよび受光部70bに対して90°回転させて配置されており、投光部74aと受光部74bとが左右方向Hに所定の間隔をあけて対向して配置されている。本実施形態においては、投光部74aと受光部74bとの間に評価対象物であるゴルフクラブシャフト30が配置される。
【0066】
なお、第2のレーザ変位計74の投光部74aと受光部74bとは、第1のレーザ変位計70の投光部70aおよび受光部70bと同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。第2のレーザ変位計74においては、周面30bの上下方向Vのエッジの位置の時間変化を検出することにより、振動の際の上下方向Vの変位が得られる。第2のレーザ変位計74は、この検出された変位を、例えば、アナログ信号の形態で変位信号としてFFTアナライザ20に出力する。
【0067】
この第1のレーザ変位計70は、第1の加速度センサ14が取り付けられる第1の位置αにレーザ光72を照射する。また、第2のレーザ変位計74は、第2の加速度センサ16が取り付けられる第2の位置βにレーザ光76を照射する。
第1のレーザ変位計70および第2のレーザ変位計74は、ゴルフクラブシャフト30の左右方向Hと上下方向Vの変位を同時に計測するものであり、計測タイミングなどはPC22により制御される。
【0068】
第1のレーザ変位計70および第2のレーザ変位計74は、いずれも、投光部70a、74aと受光部70b、74bとの間の距離を変えることができるとともに、投光部70a、74aおよび受光部70b、74bは、ゴルフクラブシャフト30の長手方向Lにおける位置も適宜調整することができる。
【0069】
本実施形態において、FFTアナライザ20は、例えば、約1ミリ秒のサンプリング周期で4秒間、第1のレーザ変位計70からアナログ信号の形態で出力された左右方向Hの変位信号と、第2のレーザ変位計74からアナログ信号の形態で出力された上下方向Vの変位信号とを取り込む。
【0070】
FFTアナライザ20により、第1のレーザ変位計70によるゴルフクラブシャフト30の左右方向Hの変位の時系列データ(時間波形)、すなわち、左右方向Hの振動の時系列データが得られる。さらには、FFTアナライザ20により、第2のレーザ変位計74によるゴルフクラブシャフト30の上下方向Vの変位の時系列データ(時間波形)、すなわち、上下方向Vの振動の時系列データが得られる。
このようにして、ゴルフクラブシャフト30を振動させたときの上下方向Vの変位の時系列データ(以下、振動波形データともいう)および左右方向Hの変位の時系列データ(振動波形データ)が得られる。
これらの上下方向Vの振動の時系列データおよび左右方向Hの振動の時系列データがPC22に出力される。
【0071】
なお、FFTアナライザ20による変位についてのサンプリング周期は、約1ミリ秒に限定されるものではなく、要求される振動の測定精度に応じて適宜変更可能である。
さらには、FFTアナライザ20による変位についての取り込み時間(サンプリング時間)も、4秒に限定されるものではなく、ゴルフクラブシャフト30の特性、要求される振動の測定精度に応じて適宜変更可能である。
【0072】
本実施形態において、PC22は、FFTアナライザ20から出力された第1のレーザ変位計70で得られた左右方向Hの変位の時系列データ(振動波形データ)、第2のレーザ変位計74で得られた上下方向Vの変位の時系列データ(振動波形データ)がメモリ(図示せず)に記憶される。PC22は、振動波形のデータについて、山側および谷側のピークを抽出し、かつそのピークの時間を求める機能を有する。
【0073】
なお、PC22は、FFTアナライザ20による第1のレーザ変位計70の変位信号、および第2のレーザ変位計74の変位信号を直接取り込むこともできる。この場合、第1のレーザ変位計70の変位信号、および第2のレーザ変位計74の変位信号をA/D変換するA/D変換ボードをPC22に組み込み、各変位信号をコンピュータ20に直接取り込む。
【0074】
本実施形態において、第1のレーザ変位計70および第2のレーザ変位計74は、透過式のレーザ変位計としたが、これに限定されるものではない。例えば、第1のレーザ変位計70および第2のレーザ変位計74は、反射型のレーザ変位計であっても、レーザーフォーカス型のレーザ変位計でもよい。
【0075】
次に、本実施形態のゴルフクラブシャフトの評価方法について、図11に示すフローチャートを参照して説明する。
本実施形態のように、第1のレーザ変位計70および第2のレーザ変位計74を用いた場合、得られる振動波形のデータは、1次共振周波数が支配的であり、高次の振動が小さい。このため、以下のようにして、上下方向の振動波形データと、左右方向の振動波形データとについて、FFTなどの信号処理を加えることなく、上下方向の振動波形データおよび左右方向の振動波形データについて、ピーク値の絶対値Up、Lpを求めて、上記Vpを求めて、損失係数を求めることができる。
【0076】
本実施形態のゴルフクラブシャフトの評価方法は、図2に示す第1の実施形態の評価方法と加振する工程(S40)が第1の実施形態のステップS10と同じ工程である。
【0077】
ステップS40において、先端30aを解放した後、例えば、約1ミリ秒のサンプリング周期(4秒/4096間隔)で4秒間(サンプリング時間)の変位信号が取得される。これにより、上下方向Vの変位の時系列データ、および左右方向Hの変位の時系列データが得られる(ステップS42)。
上下方向Vの変位の時系列データ(図示せず)および左右方向Hの変位の時系列データ(図示せず)がFFTアナライザ20からPC22に出力されて、PC22のメモリに記憶される。
【0078】
次に、PC22において、上下方向Vの変位の時系列データおよび左右方向Hの変位の時系列データについて、0クロス点を利用して、0点を境にプラス側のピークについてその時間とピークレベルを求め、更にはマイナス側のピークについてその時間とピークレベルを求める(ステップS44)。
【0079】
次に、上下方向Vにおける時間波形データのピーク値の絶対値をUpとし、左右方向Hにおける時間波形データのピーク値の絶対値をLpとするとき、時間波形データのピーク値の絶対値Upを基準として、このピーク値の絶対値Upに、最も近いピーク時間の左右方向のピーク値の絶対値Lpを抽出する。
次に、基準となるピーク値の絶対値Upと、抽出されたピーク値の絶対値Lpとの自乗平方根の値Vpを求める(ステップS46)。なお、自乗平方根の値Vpは、第1の実施形態と同じ式で求める。
【0080】
次に、減衰率を求める(ステップS48)。本実施形態においては、減衰率に、例えば、対数減衰率を用いる。
この場合、図示はしないが、例えば、縦軸に振動ピークレベルをとり、横軸に時間をとって、得られたVpの値を二乗して常用対数に変換した後、10倍した数値をプロットする。これらの各数値は、10logVpにより求められる。
そして、PC22においては、例えば、最小自乗法を用いて直線近似し、近似直線を求める。この近似直線の傾きを求める。この傾きが減衰率D(dB/秒)である。
そして、共振周波数における減衰率Dから、損失係数ηを求める(ステップS50)。この損失係数ηは、上記式(3)により求められる。
なお、共振周波数fxは、上下方向Vの振動波形の波数をNとし、この波数Nの発生時間をTとしたときに、N/Tで求められるものである。
【0081】
このように、本実施形態の評価方法においては、第1の実施形態と同様に、振動減衰等の振動特性について、容易かつ高い精度で評価することができる。
しかも、本実施形態においては、レーザ変位計を用いた場合、非接触としているため、センサを取り付ける手間がなく、更に容易に評価することができる。
なお、上述のいずれの実施形態においても、減衰率に、対数減衰率を用いているが、特にこれに限定されるものではなく、また、減衰率を求める方法も、特に限定されるものではない。
【0082】
本発明は、基本的に以上のようなものである。以上、本発明の棒状体の評価方法および棒状体の評価システムについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0083】
10 評価システム
12 固定部
14 第1の加速度センサ
16 第2の加速度センサ
18 FFTアナライザ
20 コンピュータ(PC)
22 モニタ
30 ゴルフクラブシャフト
30a 先端
30b 周面
32a 後端部
32b先端部
42 振幅特性データ
42a、42b、42c ピーク
70 第1のレーザ変位計
74 第2のレーザ変位計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状体の一端部を固定し、他端側を振動させ、前記他端部の上下方向の振動と左右方向の振動とを同時に所定の時間計測し、上下方向の振動の時系列データおよび左右方向の振動の時系列データを取得する工程と、
前記計測された上下方向の振動の時系列データおよび前記左右方向の振動の時系列データについて、それぞれ、高速フーリエ変換し、振動の周波数に対する振動の振幅レベルを示す振幅特性データと、前記振動の周波数に対する振動の位相を示す位相特性データをそれぞれ作成する工程と、
前記上下方向の振動と前記左右方向の振動に対して、前記各振幅特性データから、それぞれ少なくとも1次共振周波数を求める工程と、
前記求められた各1次共振周波数を中心周波数としたバンドパスフィルタを設定する工程と、
前記各バンドパスフィルタを、それぞれ前記各振幅特性データにかけた後、それぞれ逆高速フーリエ変換し、1次共振周波数における時間波形データを、それぞれ求める工程と、
前記1次共振周波数の時間波形データについて、山側と谷側のピークのピーク時間およびピークレベルを求める工程と、
前記上下方向の前記1次共振周波数の時間波形データにおけるピーク値の絶対値をUpとし、前記左右方向の前記1次共振周波数の時間波形データにおけるピーク値の絶対値をLpとし、前記各ピーク値の絶対値Upを基準として、各ピーク値の絶対値Upに最も近いピーク時間の左右方向のピーク値の絶対値Lpを、それぞれ抽出する工程と、
前記ピーク値の絶対値Upと前記抽出されたピーク値の絶対値Lpとの自乗平方根の値Vpを求める工程と、
前記求められた値Vpを用いて減衰率を算出し、前記減衰率に基づいて損失係数を算出する工程とを有することを特徴とする棒状体の評価方法。
【請求項2】
棒状体の一端部を固定し、他端側を振動させ、前記他端部の上下方向の振動と左右方向の振動とを同時に所定の時間計測し、上下方向の振動の時系列データおよび左右方向の振動の時系列データを取得する工程と、
前記上下方向の振動の時系列データおよび前記左右方向の振動の時系列データについて、それぞれ山側と谷側のピークのピーク時間およびピークレベルを求める工程と、
前記上下方向の振動の時系列データにおけるピーク値の絶対値をUpとし、前記左右方向の振動の時系列データにおけるピーク値の絶対値をLpとし、前記各ピーク値の絶対値Upを基準として、各ピーク値の絶対値Upに最も近いピーク時間の左右方向のピーク値の絶対値Lpを、それぞれ抽出する工程と、
前記ピーク値の絶対値Upと前記抽出されたピーク値の絶対値Lpとの自乗平方根の値Vpを求める工程と、
前記求められた値Vpを用いて減衰率を算出し、前記減衰率に基づいて損失係数を算出する工程とを有することを特徴とする棒状体の評価方法。
【請求項3】
前記各振幅特性データから求める共振周波数は、1次共振周波数、2次共振周波数および3次共振周波数である請求項1に記載の棒状体の評価方法。
【請求項4】
前記バンドパスフィルタは、1/3オクターブバンドパスフィルタである請求項1または3に記載の棒状体の評価方法。
【請求項5】
前記減衰率は、対数減衰率である請求項1〜4のいずれか1項に棒状体の評価方法。
【請求項6】
前記棒状体は、ゴルフクラブシャフトである請求項1〜5のいずれか1項に記載の棒状体の評価方法。
【請求項7】
棒状体の一端部を固定し、他端側を振動させたときの前記他端部の上下方向の振動と左右方向の振動とを同時に所定の時間計測する計測装置と、
前記計測装置で計測された上下方向の振動の時系列データおよび左右方向の振動の時系列データを取得するデータ取得装置と、
前記計測された上下方向の振動の時系列データおよび前記左右方向の振動の時系列データについて、それぞれ、高速フーリエ変換し、振動の周波数に対する振動の振幅レベルを示す振幅特性データと、前記振動の周波数に対する振動の位相を示す位相特性データをそれぞれ作成し、
前記上下方向の振動と前記左右方向の振動に対して、前記各振幅特性データから、それぞれ少なくとも1次共振周波数を求め、
前記求められた各1次共振周波数を中心周波数としたバンドパスフィルタを設定し、
前記各バンドパスフィルタを、それぞれ前記各振幅特性データにかけた後、それぞれ逆高速フーリエ変換し、1次共振周波数における時間波形データを、それぞれ求め、
前記1次共振周波数の時間波形データについて、山側と谷側のピークのピーク時間およびピークレベルを求め、
前記上下方向の前記1次共振周波数の時間波形データにおけるピーク値の絶対値をUpとし、前記左右方向の前記1次共振周波数の時間波形データにおけるピーク値の絶対値をLpとし、前記各ピーク値の絶対値Upを基準として、各ピーク値の絶対値Upに最も近いピーク時間の左右方向のピーク値の絶対値Lpを、それぞれ抽出し、
前記ピーク値の絶対値Upと前記抽出されたピーク値の絶対値Lpとの自乗平方根の値Vpを求め、
前記求められた値Vpを用いて減衰率を算出し、前記減衰率に基づいて損失係数を算出する処理装置とを有することを特徴とする棒状体の評価システム。
【請求項8】
棒状体の一端部を固定し、他端側を振動させたときの前記他端部の上下方向の振動と左右方向の振動とを同時に所定の時間計測する計測装置と、
前記計測装置で計測された上下方向の振動の時系列データおよび左右方向の振動の時系列データを取得するデータ取得装置と、
前記上下方向の振動の時系列データ、および前記左右方向の振動の時系列データについて、それぞれ山側と谷側のピークのピーク時間およびピークレベルを求め、
前記上下方向の振動の時系列データにおけるピーク値の絶対値をUpとし、前記左右方向の振動の時系列データにおけるピーク値の絶対値をLpとし、前記各ピーク値の絶対値Upを基準として、各ピーク値の絶対値Upに最も近いピーク時間の左右方向のピーク値の絶対値Lpを、それぞれ抽出し、
前記ピーク値の絶対値Upと前記抽出されたピーク値の絶対値Lpとの自乗平方根の値Vpを求め、
前記求められた値Vpを用いて減衰率を算出し、前記減衰率に基づいて損失係数を算出する処理装置とを有することを特徴とする棒状体の評価システム。
【請求項9】
前記計測装置は、前記他端部の上下方向の加速度および左右方向の加速度を計測する加速度センサを有する請求項7に記載の棒状体の評価システム。
【請求項10】
前記計測装置は、前記他端部の上下方向の変位および左右方向の変位を計測するレーザ変位計を有する請求項8に記載の棒状体の評価システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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