説明

椅子の背もたれのロック機構

【課題】製造コストの軽減に適した椅子の背もたれのロック機構を提供する。
【解決手段】脚1に支持されたベース部材2と当該ベース部材2に後傾可能に支持された背支持部材3との間に設けられた椅子の背もたれ7のロック機構であって、ベース部材2と背支持部材3とのいずれか一方に設けられた係止部4と、ベース部材2と背支持部材3とのいずれか他方に揺動可能に設けられ、ロック位置では係止部4を受け止めて背支持部材3の後傾可能角度を制限する突っ張り部材5と、突っ張り部材5を係止部4に当たらないロック解除位置に揺動させる操作手段6とを備え、突っ張り部材5は係止部4から受ける反力Fの方向の逆方向又は当該逆方向とほぼ同じ方向に係止部4を突っ張って受け止めるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脚に支持されたベース部材と当該ベース部材に後傾可能に支持された背支持部材との間に設けられ、背支持部材を後傾させることができる角度(後傾可能角度)を制限する椅子の背もたれのロック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
椅子の背もたれのロック機構として、例えば特開2007−130266号公報に開示されたものがある。このロック機構は、例えば図10に示すように、背もたれが取り付けられた背支桿と一体的に揺動する受け部材101に複数の係合溝102を設け、背もたれを所望角度まで後傾させた状態で脚に支持されるベース部材に設けたロック部材103を各係合溝102のいずれか1つに係合することで、背もたれをその角度でロックするものである。
【0003】
各係合溝102は受け部材101の揺動に対してほぼ直交する方向に形成されており、受け部材101の揺動に対してほぼ直交する方向からロック部材103を係合溝102に挿入している。そのため、背もたれをロックした状態、即ちロック部材103を係合溝102に挿入した状態で着座者が背もたれに凭り掛かると、ロック部材103及び受け部材101の隣り合う2つの係合溝102間の壁104に大きな剪断力fsが作用することになり、ロック部材103及び受け部材101として十分な大きさの部品強度を確保する必要がある。ここで、各係合溝102は所定の狭い間隔で設けられているので、隣り合う2つの係合溝102間の壁104の厚さは薄くなり、また、ロック部材103の厚さもあまり厚くすることはできない。そのため、受け部材101やロック部材103を金属製にして必要な部品強度を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−130266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のロック機構では、受け部材101及びロック部材103として高価な金属部品を使用しているので、製造コストが高くなる。また、複数の係合溝102の中から1つの係合溝102を選択してロック部材103を挿入する構造であり、構造をシンプルにし難く、製造コストの軽減に不向きである。
【0006】
本発明は、製造コストの軽減に適した椅子の背もたれのロック機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、請求項1記載の発明は、脚に支持されたベース部材と当該ベース部材に後傾可能に支持された背支持部材との間に設けられた椅子の背もたれのロック機構において、ベース部材と背支持部材とのいずれか一方に設けられた係止部と、ベース部材と背支持部材とのいずれか他方に揺動可能に設けられ、ロック位置では係止部を受け止めて背支持部材の後傾可能角度を制限する突っ張り部材と、突っ張り部材を係止部に当たらないロック解除位置に揺動させる操作手段とを備え、突っ張り部材は係止部から受ける反力の方向の逆方向又は当該逆方向とほぼ同じ方向に係止部を突っ張って受け止めるものである。
【0008】
したがって、ロック位置では、突っ張り部材が係止部を受け止め、背支持部材を後傾させる(背もたれを後ろに倒す)ことができる角度を制限する。ここで、背支持部材が後傾していない場合に突っ張り部材が係止部を受け止めるようにしても良いし、背支持部材が所定角度θだけ後傾した場合に突っ張り部材が係止部に当たりこれを受け止めるようにしても良い。前者では、背支持部材の後傾可能角度が0度になり、背支持部材を初期位置(後傾させていない状態)にロックすることができる(初期位置ロック)。また、後者では、背支持部材の後傾可能角度がθになり、背支持部材をθまで後傾させることができる。
【0009】
また、操作手段によって突っ張り部材をロック解除位置に揺動させると、背支持部材を後傾させても突っ張り部材は係止部に当たらないので、背支持部材を最後まで後傾させることが可能になる。
【0010】
また、請求項2記載の椅子の背もたれのロック機構は、係止部を背支持部材に設け、突っ張り部材及び操作手段をベース部材に設けている。
【0011】
また、請求項3記載の椅子の背もたれのロック機構は、係止部がベース部材と背支持部材との間に設けられた反力機構の背支持部材側支持シャフトである。
【0012】
また、請求項4記載の椅子の背もたれのロック機構は、突っ張り部材がロック位置では背支持部材が後傾していない状態で係止部を受け止めるものである。
【0013】
また、請求項5記載の椅子の背もたれのロック機構は、操作手段が、突っ張り部材に連結された操作力伝達部材と、操作力伝達部材を操作する操作レバーを備えるものである。
【0014】
さらに、請求項6記載の椅子の背もたれのロック機構は、突っ張り部材が背支持部材の後傾可能角度が異なる複数のロック位置を有している。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の椅子の背もたれのロック機構では、突っ張り部材は係止部からの反力を受ける方向に係止部を突っ張るので、係止部からの反力を効率良く受け止めることができると共に、突っ張り部材に剪断力が作用するのを防止することができる。そのため、突っ張り部材として、金属部品以外の部品、例えば樹脂部品を採用することが可能となり、製造コストを下げることができる。また、係止部に突っ張り部材を度当たりさせて突っ張ることで背支持部材の後傾を制限するので、凹部に凸部を挿入して背支持部材のロックを行う場合に比べて構造がシンプルになり、製造コストの軽減に適したものとなる。
【0016】
請求項2記載の椅子の背もたれのロック機構では、揺動する突っ張り部材を動きのない部材であるベース部材に設け、それ自身は動かない係止部を後傾する背支持部材に設けているので、部材の取付関係が動きのある部材と動きのない部材との組み合わせとなり、シンプルにし易い構造である。また、突っ張り部材とこれを操作する操作手段とを同じ部材側に設けているので、この点からもシンプルにし易い構造になる。
【0017】
請求項3記載の椅子の背もたれのロック機構では、係止部として背支持部材側にもともと存在する部材を利用することができるので、専用の部品を設ける必要がなくなり、部品点数を減らすことができ、製造コストを更に下げることができる。
【0018】
請求項4記載の椅子の背もたれのロック機構では、ロック位置では突っ張り部材が背支持部材が後傾していない状態で係止部を受け止めるので、背支持部材の後傾可能角度が0度になり、背支持部材を初期位置(後傾させていない状態)にロックすることができる(初期位置ロック)。
【0019】
請求項5記載の椅子の背もたれのロック機構では、操作レバーの動作を操作力伝達部材によって突っ張り部材に伝えることができるので、操作レバーを設ける位置の選択の自由度が向上し、背もたれのロック機構をより使い易くすることができる。
【0020】
請求項6記載の椅子の背もたれのロック機構では、突っ張り部材が背支持部材の後傾可能角度が異なる複数のロック位置を有しているので、着座者が背もたれに凭り掛かって後ろに倒すことができる角度を使用状況等に応じて選択することができ、更に椅子の使い勝手が良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の椅子の背もたれのロック機構の第1の実施形態を示し、(A)は突っ張り部材がロック位置に揺動している状態の断面図、(B)は突っ張り部材がロック解除位置に揺動している状態の断面図である。
【図2】同ロック機構を適用した椅子を示す側面図である。
【図3】同ロック機構を適用した椅子の要部を示し、ベース部材と背支持部材とロック機構を示す平面図である。
【図4】操作手段を示し、(A)は突っ張り部材がロック位置に揺動している状態の断面図、(B)は突っ張り部材をロック解除位置に揺動させる状態の断面図である。
【図5】本発明の椅子の背もたれのロック機構の第2の実施形態を示し、(A)は突っ張り部材がロック位置に揺動している状態の断面図、(B)は突っ張り部材がロック解除位置に揺動している状態の断面図である。
【図6】本発明の椅子の背もたれのロック機構の第3の実施形態を示し、突っ張り部材がロック位置に揺動している状態の断面図である。
【図7】本発明の椅子の背もたれのロック機構の第4の実施形態を示し、突っ張り部材がロック位置に揺動している状態の断面図である。
【図8】本発明の椅子の背もたれのロック機構の第5の実施形態を示し、(A)は突っ張り部材が1段目のロック位置に揺動している状態の断面図、(B)は突っ張り部材が2段目のロック位置に揺動している状態の断面図、(C)は突っ張り部材が3段目のロック位置に揺動している状態の断面図、(D)は突っ張り部材が4段目のロック位置に揺動している状態の断面図である。
【図9】同ロック機構を適用した椅子の要部を示し、ベース部材と背支持部材とロック機構を示す平面図である。
【図10】従来の椅子の背もたれのロック機構を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の構成を図面に示す形態に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1〜図4に、本発明の椅子の背もたれのロック機構の実施形態の一例を示す。椅子の背もたれのロック機構(以下、単にロック機構という)は、脚1に支持されたベース部材2と当該ベース部材2に後傾可能に支持された背支持部材3との間に設けられたものであって、ベース部材2と背支持部材3とのいずれか一方に設けられた係止部4と、ベース部材2と背支持部材3とのいずれか他方に揺動可能に設けられ、ロック位置(図1(A)の位置)では係止部4を受け止めて背支持部材3の後傾可能角度を制限する突っ張り部材5と、突っ張り部材5を係止部4に当たらないロック解除位置(図1(B)の位置)に揺動させる操作手段6とを備えている。本実施形態では、係止部4を背支持部材3に設け、突っ張り部材5及び操作手段6をベース部材2に設けている。
【0024】
本実施形態の椅子は、脚1と、脚1に支持されたベース部材2と、背もたれ7が取り付けられた背支持部材3と、座8が取り付けられた座支持部材10とを有し、ベース部材2に対して背支持部材3を第1の回転軸9によって後傾可能に連結する一方、ベース部材2に対して座支持部材10の前部をリンク11を介して連結すると共に、座支持部材10の中央と背支持部材3の前部とを連結ピン12で回転自在に連結し、背支持部材3の第1の回転軸9を中心とする後傾動作によって背支持部材3の前部を座支持部材10の中央を後ろ上斜め方向へ持ち上げるように回転させて、リンク11によって座支持部材10の前方を持ち上げる体重対応式反力機構を構成している。また、この椅子は、後述するようにコイルばね16を有する反力機構15を備えている。即ち、体重対応式反力機構とコイルばね16を有する反力機構15とを併用している。
【0025】
ただし、本発明が適用可能な椅子は体重対応式反力機構とコイルばね16を有する反力機構15とを併用するものに限られず、体重対応式反力機構とコイルばね16を有する反力機構15とのいずれか一方のみを有する椅子等でも良く、少なくともベース部材2と当該ベース部材2に後傾可能に支持された背支持部材3とを備える椅子であれば適用可能である。例えば、背支持部材3の後傾動作に連動して座支持部材10を後ろ下斜め方向に引き込む所謂シンクロロッキングタイプの椅子にも適用可能である。
【0026】
ベース部材2は上から見た状態で枠状を成している。また、背支持部材3として左右一対のものが設けられている。ベース部材2の両脇に左右の背支持部材3が配置され、左右の背支持部材3はベース部材2を左右方向に貫通する1本の第1の回転軸9によってベース部材2に後傾可能に連結されている。ベース部材2には背支持部材3の後傾を制限するストッパ13が設けられており、背支持部材3をストッパ13に当たるまで後傾させることができる。ベース部材2の下はカバー14によって覆われている。
【0027】
ベース部材2と背支持部材3との間には、背支持部材3が後傾すると圧縮されて背支持部材3を起立させようとする反力を発生させる反力機構15が設けられている。本実施形態の反力機構15は、同軸上に配置されたばねマウント17とコイルばね16より構成され、ベース部材2の内側に配置されている。反力機構15の前端はベース部材側支持シャフト18によってベース部材2に連結され、反力機構15の後端は背支持部材側支持シャフト19によって背支持部材3に連結されている。
【0028】
本実施形態では、反力機構15の背支持部材側支持シャフト19を係止部4として利用している。即ち、突っ張り部材5が背支持部材側支持シャフト19を受け止めて突っ張るようにしている。ただし、必ずしも係止部4が背支持部材側支持シャフト19である必要はなく、背支持部材3と一体的に揺動し且つ突っ張り部材5によって受け止められて背支持部材3の揺動を制限できるものであれば良く、背支持部材側支持シャフト19以外の部材を係止部4として利用しても良いし、あるいは、係止部4として専用の部品を設けても良い。
【0029】
突っ張り部材5は係止部4から受ける反力Fの方向の逆方向又は当該逆方向とほぼ同じ方向に係止部4を突っ張って受け止めるもので、第3の回転軸20によってベース部材2に揺動可能に連結されている。突っ張り部材5の先端には受け止めた係止部4を外れ難くするための受け止め凹部5aが形成されている。また、突っ張り部材5には操作手段6を連結するための入力部5bが形成されている。突っ張り部材5は例えば樹脂によって形成されている。本実施形態では、突っ張り部材5を形成する樹脂としてガラス繊維入りナイロンを使用しているが、これに限るものではなく、例えばポリアセタール(POM),ポリプロピレン(PP),ナイロン等のポリアミド系樹脂等の使用も可能である。また、樹脂以外の材料、例えば鉄,アルミ,亜鉛等の使用も可能である。
【0030】
ここで、突っ張り部材5が係止部4から受ける反力Fの方向の逆方向とは、反力Fと作用・反作用の関係にある力の方向をいう。また、反力Fの方向の逆方向とほぼ同じ方向とは、反力Fの方向の逆方向と正確には同一方向ではないがほぼ同じ方向であって、係止部4の受け止めが突っ張りになる場合のその突っ張りの方向をいう。換言すると、係止部4を受け止めた突っ張り部材5に剪断力を発生させないか又は剪断力が発生したとしても突っ張り部材5を破損させない程度の小さな剪断力に抑えることができる場合の突っ張りの方向をいう。例えば、反力Fの方向の逆方向に対して、±10度以内の方向である。この範囲であれば、突っ張り部材5を樹脂部品にしても破損防止を図ることができる。
【0031】
本実施形態では、突っ張り部材5は、ロック位置では背支持部材3が後傾していない状態で係止部4を受け止めるようにしている。即ち、背支持部材3の後傾可能角度を0度にしている。そのため、係止部4の脇に突っ張り部材5の先端を進入させることができるように、突っ張り部材5先端の受け止め凹部5aの係止部4側部位は反対側部位よりも低くなっている。
【0032】
突っ張り部材5は付勢手段21によってロック位置に向けて常時付勢されている。付勢手段21は例えばねじりコイルばねであり、第3の回転軸20まわりに配置され、ベース部材2に設けられたばね受け部2aと片方の突っ張り部材5に設けられたばね受け部5cとの間に所定の予荷重をかけた状態で設けられている。ただし、付勢手段21は、ねじりコイルばねに限られず、突っ張り部材5をロック位置に向けて付勢できるものであれば、いずれの弾性体も使用可能である。また、弾性体以外の手段、例えば突っ張り部材5自体の重さを利用してロック位置に移動させる等、突っ張り部材5をロック位置に向けて付勢できるものであればいずれの手段でも構わない。突っ張り部材5は、付勢手段21によって付勢されて図示しないストッパに度当たりすることでロック位置に位置決めされる。
【0033】
本実施形態では、突っ張り部材5を反力機構15の両脇にそれぞれ設けている。左右の突っ張り部材5は円筒部22によって連結され、一体となって揺動する。左右の突っ張り部材5には円筒部22内に通じる軸孔5dが設けられており、各軸孔5dと円筒部22内を第3の回転軸20が貫通している。また、円筒部22は反力機構15の上方の空間に配置されており、左右一対の突っ張り部材5は反力機構15と干渉せずに第3の回転軸20を中心に揺動可能となっている。ただし、必ずしも左右一対の突っ張り部材5を設ける必要はなく、左右のいずれか一方にのみ突っ張り部材5を設けるようにしても良く、あるいはその他の反力機構15に干渉しない位置に1つ又は2つ又は3つ以上の突っ張り部材5を設けるようにしても良い。
【0034】
なお、本実施形態は1つの付勢手段21によって左右の突っ張り部材5をロック位置に向けて付勢する構成であり、片方の突っ張り部材5にのみばね受け部5cが設けられている。ただし、付勢手段21を2つ設けて左右両方の突っ張り部材5を各付勢手段21によって付勢するようにしても良い。
【0035】
また、本実施形態では、左右の突っ張り部材5が一体となって揺動するので、片方の突っ張り部材5にのみ入力部5bを設けている。ただし、左右両方の突っ張り部材5に入力部5bを設けて左右両方の突っ張り部材5に操作手段6からの操作力を伝えるようにしても良い。
【0036】
操作手段6は、突っ張り部材5に連結された操作力伝達部材23と、操作力伝達部材23を操作する操作レバー24とを備えている。操作レバー24はカバー14内に収容され、第4の回転軸25によってカバー14に揺動自在に取り付けられている。操作レバー24は着座者が操作し易い位置に配置され、操作部24aをカバー14に設けられた窓孔14aから外に延出させている。操作レバー24の動作を操作力伝達部材23によって突っ張り部材5に伝達するので、操作レバー24を設ける位置の選択の自由度を向上させることができ、操作レバー24を操作し易い位置に配置するのは容易である。操作レバー24には連動用凸部24bが設けられており、連動用凸部24bは揺動体26の連動用凹部26aに嵌め込まれている。揺動体26はカバー14内面に設けられた支持部14cに第5の回転軸27によって揺動自在に支持されており、連動用凹部26aが設けられている側の端と反対側の端には、操作力伝達部材23の一端が接続されている。本実施形態の操作力伝達部材23はワイヤであり、保護チューブ28内に通されて引き回されている。操作力伝達部材23の反対側の端は突っ張り部材5の入力部5bに連結されている。操作力伝達部材23としてワイヤを使用することで操作力伝達部材23を部材間の狭い空きスペースを利用して配置することが可能になり、この点からも操作レバー24を設ける位置の選択の自由度を向上させることができる。
【0037】
操作レバー24を図4(A)に示す作動位置に揺動させると、連動用凸部24bが揺動体26の連動用凹部26a奥側に移動して揺動体26を操作力伝達部材23を緩める方向に揺動可能になるので、突っ張り部材5が付勢手段21によってロック位置に揺動される(図1(A))。この状態では、付勢手段21が操作力伝達部材23を引っ張り、操作レバー24を作動位置に向けて付勢しているので、着座者が操作レバー24から手を離しても操作レバー24は作動位置から動かない。
【0038】
一方、操作レバー24を図4(B)に示す解除位置に揺動させると、連動用凸部24bが揺動体26の連動用凹部26a入口側に移動して揺動体26を操作力伝達部材23を引っ張る方向に揺動するので、付勢手段21の付勢力に抗して突っ張り部材5がロック解除位置に揺動される(図1(B))。この状態では、揺動体26の連動用凹部26aに設けられた山部26bが連動用凸部24bを連動用凹部26a入口側に係止しているので、着座者が操作レバー24から手を離しても操作レバー24は解除位置から動かない。
【0039】
そして、この状態から、着座者が操作レバー24を作動位置に向けて再度操作すると、操作レバー24の連動用凸部24bは揺動体26の連動用凹部26aの山部26bを乗り越えて連動用凹部26a奥側に移動する。即ち、操作レバー24は着座者に操作されることで作動位置と解除位置との間で揺動するが、操作されなければ揺動しない。
【0040】
次に、ロック機構の作動について説明する。背支持部材3を後傾させていない状態で操作レバー24を作動位置に揺動すると、突っ張り部材5がロック位置に揺動し、係止部4を受け止める(図1(A))。これにより、背支持部材3が後傾できなくなり、背支持部材3が初期位置(後傾させていない状態)にロックされる。即ち、初期位置ロックを行うことができる。
【0041】
この状態で操作レバー24を操作して突っ張り部材5をロック解除位置に揺動させると、突っ張り部材5が係止部4から外れるので、背支持部材3の後傾が可能になる(図1(B))。この状態で着座者が背もたれ7に凭り掛かると、背支持部材3が反力機構15を圧縮しながら後傾し、背もたれ7が後ろに倒れる。背支持部材3はストッパ13に当たるまで後傾する。
【0042】
本発明では、突っ張り部材5が係止部4から受ける反力Fの方向の逆方向又は当該逆方向とほぼ同じ方向に係止部4を突っ張って受け止めるので、突っ張り部材5によって反力Fを効率良く受け止めることができると共に、突っ張り部材5に剪断力が作用するのを防止することができる。そのため、突っ張り部材5として、金属部品以外の部品、例えば樹脂部品を採用することが可能となり、製造コストを下げることができる。また、係止部4に突っ張り部材5を度当たりさせて突っ張ることで背支持部材3の後傾を制限するので、凹部に凸部を挿入して背支持部材3をロックする場合に比べて構造がシンプルになり、製造コストの軽減に有利である。
【0043】
また、本実施形態では、揺動する突っ張り部材5を動きのない部材であるベース部材2に設け、それ自身は動かない係止部4を後傾する背支持部材3に設けているので、部材の取付関係が動きのある部材と動きのない部材との組み合わせとなり、シンプルにし易い構造にすることができる。また、突っ張り部材5とこれを操作する操作手段6とを同じ部材側に設けているので、この点からもシンプルにし易い構造になる。
【0044】
また、係止部4として反力機構15の背支持部材側支持シャフト19を利用しているので、専用の部品を設ける必要がなくなり、部品点数の増加を抑えることができ、製造コストを更に下げることができる。
【0045】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【0046】
例えば、上述の説明では、係止部4を背支持部材3に設け、突っ張り部材5をベース部材2に設けているが、係止部4をベース部材2に設け、突っ張り部材5を背支持部材3に設けても良い。また、上述の説明では、操作手段6をベース部材2に設けているが、操作手段6を背支持部材3に設けても良い。係止部4をベース部材2に設け、突っ張り部材5及び操作手段6を背支持部材3に設けた実施形態を図5に示す。この場合にも、図1に示すロック機構と同様に、突っ張り部材5が係止部4から受ける反力Fの方向の逆方向又は当該逆方向とほぼ同じ方向に係止部4を突っ張って受け止めることができる。
【0047】
また、上述の説明では、突っ張り部材5とは別に付勢手段21を設けていたが、突っ張り部材5に付勢手段21を設けても良い。この場合の実施形態を図6に示す。付勢手段21として、突っ張り部材5に弾性変形可能なばね部が形成されている。突っ張り部材5は樹脂製であり、弾性変形可能なばね部を一体成形することは容易である。この場合には部品点数を更に減らすことができるので、部品管理と組み付け作業を更に容易にすることができ、製造コストを更に軽減することができる。
【0048】
また、上述の説明では、背支持部材3を初期位置にロックする、即ち後傾可能角度を0度にしていたが、例えば図7に示すように、突っ張り部材5をロック位置に揺動させた場合に、背支持部材3を角度θだけ揺動させると支持部14cが突っ張り部材5に当たるようにしても良い(揺動可能角度:θ)。
【0049】
また、上述の説明では、操作手段6の操作力伝達部材23としてワイヤを使用していたが、操作レバー24の動きを突っ張り部材5に伝えて揺動させることができるものであれば、ワイヤ以外のものを使用しても良い。この様なものとして、例えばシャフト、リンク、ベルト等がある。
【0050】
また、上述の操作手段6は操作レバー24の動きを操作力伝達部材23によって突っ張り部材5に伝える構成であったが、必ずしもこれに限るものではなく、例えば、突っ張り部材5を揺動させる電動モータを設け、所定位置に設けたスイッチの操作によって突っ張り部材5を揺動させるようにしても良い。
【0051】
また、上述の説明では、突っ張り部材5のロック位置は1つだけであったが、背支持部材3の後傾可能角度が異なる複数のロック位置を設けてロック機構を多段ロックにしても良い。この場合の例を図8及び図9に示す。多段ロック用の突っ張り部材5の先端には、各ロック位置に対応して複数の受け止め凹部5aが設けられている。各受け止め凹部5aは突っ張り部材5の揺動方向に間隔をあけて設けられている。なお、本実施形態でも左右一対の突っ張り部材5を設けており、各突っ張り部材5は円筒部22によって連結され一体となって揺動する。左右の突っ張り部材5には円筒部22内に通じる軸孔5dが設けられている。また、片方の突っ張り部材5の基端には、各受け止め凹部5aを係止部4を受け止める位置、即ち各段のロック位置に位置決めするための複数の位置決め凹部5eが突っ張り部材5の揺動方向に間隔をあけて設けられている。一方、ベース部材2の位置決め凹部5eに対向する位置には位置決め用の凸部29が設けられている。
【0052】
本実施形態の操作手段6の操作力伝達部材23はシャフトであり、シャフト(操作力伝達部材)23の先端には操作レバー24が設けられている。シャフト23は左右の突っ張り部材5の軸孔5dと円筒部22内を貫通し、更にベース部材2も貫通することで、突っ張り部材5をベース部材2に揺動可能に取り付けている。シャフト23の各突っ張り部材5に対向する部位にはキー30が設けられており、シャフト23の回転と突っ張り部材5の揺動を一致させている。
【0053】
操作レバー24を操作し、シャフト23を回転させて突っ張り部材5を揺動させることで、背支持部材3の後傾による係止部4の移動軌跡上に各受け止め凹部5aを順次位置させることができる。各受け止め凹部5aの揺動中心からの距離は順次変化しているので、係止部4の移動軌跡上に位置する受け止め凹部5aを変えることで、即ちロック位置を変えることで、係止部4が突っ張り部材5に当たるまでの背支持部材3の後傾角度、即ち後傾可能角度を変化させることができる。したがって、着座者は操作レバー24を操作して突っ張り部材5の揺動角度を変化させることで、背支持部材3の後傾可能角度を変化させ、背もたれ7を後ろに倒すことができる角度を調節することができる。本実施形態では、突っ張り部材5に4つの位置決め凹部5eを形成して4つのロック位置を設け、背支持部材3の揺動可能角度を4段階に調節できるようにしている(4段ロック機構)。
【0054】
突っ張り部材5の各ロック位置では、位置決め凹部5eが位置決め用の凸部29に嵌り込んで係止されているので、着座者が操作レバー24から手を離してもロック状態が維持される。
【0055】
なお、複数のロック位置を設けて多段ロックにした場合、1つのロック位置以外のロック位置では突っ張り部材5が係止部4を突っ張る方向が係止部4から受ける反力Fの方向の逆方向からずれる虞があるが、ずれる場合であっても大きくずれることはなく、反力F方向の逆方向とほぼ同じ方向から突っ張るようにすることは可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 脚
2 ベース部材
3 背支持部材
4 係止部
5 突っ張り部材
6 操作手段
15 反力機構
19 背支持部材側支持シャフト
F 係止部4から受ける反力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚に支持されたベース部材と当該ベース部材に後傾可能に支持された背支持部材との間に設けられた椅子の背もたれのロック機構において、前記ベース部材と前記背支持部材とのいずれか一方に設けられた係止部と、前記ベース部材と前記背支持部材とのいずれか他方に揺動可能に設けられ、ロック位置では前記係止部を受け止めて前記背支持部材の後傾可能角度を制限する突っ張り部材と、前記突っ張り部材を前記係止部に当たらないロック解除位置に揺動させる操作手段とを備え、前記突っ張り部材は前記係止部から受ける反力の方向の逆方向又は当該逆方向とほぼ同じ方向に前記係止部を突っ張って受け止めることを特徴とする椅子の背もたれのロック機構。
【請求項2】
前記係止部は前記背支持部材に設けられ、前記突っ張り部材及び前記操作手段は前記ベース部材に設けられていることを特徴とする請求項1記載の椅子の背もたれのロック機構。
【請求項3】
前記係止部は前記ベース部材と前記背支持部材との間に設けられた反力機構の背支持部材側支持シャフトであることを特徴とする請求項2記載の椅子の背もたれのロック機構。
【請求項4】
前記突っ張り部材は、前記ロック位置では前記背支持部材が後傾していない状態で前記係止部を受け止めることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の椅子の背もたれのロック機構。
【請求項5】
前記操作手段は、前記突っ張り部材に連結された操作力伝達部材と、前記操作力伝達部材を操作する操作レバーを備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の椅子の背もたれのロック機構。
【請求項6】
前記突っ張り部材は、前記背支持部材の後傾可能角度が異なる複数のロック位置を有していることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の椅子の背もたれのロック機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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