説明

椅子型マッサージ機。

【課題】 所望の角度にリクライニングしている座部、及び脚部について、初期位置に復帰させる場合に、不自然な姿勢になって不快感を与えたり、脚部と床面との間に物が挟まったりすることのない椅子型マッサージ機を提供する
【解決手段】 座部20、背凭れ部30、脚部40を夫々揺動する座部揺動手段24、背凭れ部揺動手段34及び脚部揺動手段44は、夫々制御手段50によって制御され、操作部60は、座部、背凭れ部及び脚部を夫々予め設定された初期角度に戻すための初期位置ボタン64を具え、初期位置ボタンを操作したときに、制御手段は、座部、背凭れ部及び脚部が傾いている状態から、予め設定された初期角度に復帰させる際に、座部の揺動角度と、脚部の揺動角度に基づいて、脚部を初期角度に復帰させるタイミングを変える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座部、背凭れ部及び脚部を揺動可能な椅子型マッサージ機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子型マッサージ機は、座部、背凭れ部及び脚部を夫々揺動可能に具え、座部、背凭れ部及び脚部に被施療者の患部をマッサージするマッサージ手段を内蔵している。
【0003】
マッサージ機には、夫々座部、背凭れ部及び脚部を揺動する揺動手段を具え、被施療者による操作部の操作に基づいて、座部、背凭れ部及び脚部を所望の角度に揺動させたり、予め設定されたリクライニング角度まで自動的に座部、背凭れ部及び脚部を揺動させている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−344316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、座部、背凭れ部及び脚部が揺動した状態から、初期位置まで座部等を戻す場合に、座部、背凭れ部及び脚部の揺動角度に無関係に揺動手段を作動させたときに、不自然な姿勢になって、被施療者が不快感を感じることがある。
本発明の目的は、所望の角度にリクライニングしている座部、及び脚部について、初期位置に復帰させる場合に、不自然な姿勢になって不快感を与えたり、脚部と床面との間に物が挟まったりすることのない椅子型マッサージ機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明の椅子型マッサージ機は、
床面に載置されるベースと、該ベースに揺動可能に支持され被施療者の腰掛ける座部と、該座部の後端側に揺動可能に支持され被施療者の背中が当たる背凭れ部と、座部の前端側に揺動可能に支持され被施療者のふくらはぎが当たる脚部と、座部を揺動させる座部揺動手段と、背凭れ部を揺動させる背凭れ部揺動手段と、脚部を揺動させる脚部揺動手段と、座部揺動手段、背凭れ部揺動手段及び脚部揺動手段を制御する制御手段と、該制御手段に電気的に接続され座部揺動手段、背凭れ部揺動手段及び脚部揺動手段を操作する操作部とを具え、
座部揺動手段、背凭れ部揺動手段及び脚部揺動手段は、夫々制御手段によって制御される独立した駆動手段を具え、
操作部は、座部、背凭れ部及び脚部を夫々予め設定された初期角度に戻すための初期位置ボタンを具え、
該初期位置ボタンを操作したときに、制御手段は、座部、背凭れ部及び脚部が傾いている状態から、予め設定された初期角度に復帰させる際に、座部の揺動角度と、脚部の揺動角度に基づいて、脚部を初期角度に復帰させるタイミングを変えるものである。
【0006】
具体的には、制御手段は、座部が初期角度まで復帰した後、脚部を初期角度まで復帰するよう駆動手段を制御する。
【0007】
また、制御手段は、脚部の初期角度に対する揺動角度が、座部の初期角度に対する揺動角度に比べて、所定値以上小さい場合には、脚部揺動手段の駆動手段を作動させて、一旦初期角度に向かう方向とは逆の方向に揺動させた後、脚部を初期角度に揺動させるようにする。
【0008】
また、制御手段は、脚部の先端の床面に対する高さに基づいて、脚部を初期角度に復帰させるタイミングを変えるようにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の椅子型マッサージ機によれば、座部の揺動角度と、脚部の揺動角度に基づいて、脚部を初期角度に復帰させるタイミングを変えることにより、初期位置に復帰させる場合に、不自然な姿勢になって不快感を与えたり、脚部と床面との間に物が挟まったりすることを防止できる。
【0010】
例えば、座部が初期角度まで復帰した後、脚部を初期角度まで復帰するようにすれば、不自然な姿勢になって、被施療者が不快感を感じることがないようにでき、また、脚部の初期角度に対する揺動角度が、座部の初期角度に対する揺動角度に比べて、所定値以上小さい場合には、脚部を一旦初期角度に向かう方向とは逆の方向に揺動させた後、初期角度に戻すことにより、脚部と床面との間に物が挟まれることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の椅子型マッサージ機(10)を側面から見た図である。なお、説明をわかり易くするために、手前側の肘当てを取り外した状態を示している。
【0012】
図に示すように、椅子型マッサージ機(10)は、床面(90)に載置されるベース(12)に被施療者の腰掛ける座部(20)が設けられ、該座部(20)の後端には背凭れ部(30)、座部(20)の前端には脚部(40)が設けられている。
【0013】
座部(20)は、クッション等が取り付けられた座部フレーム(22)の後端側がベースフレーム(14)に対して揺動可能に支持されており、前端側が、モータやアクチュエータを駆動手段とする座部揺動手段(24)に連繋されている。図示の実施例は、モータを駆動手段としたものである。座部(20)は、座部揺動手段(24)を作動させることで、ベース(12)に対して揺動可能となっている。座部(20)には、エアバッグ等のマッサージ手段(28)が配備されている。
【0014】
背凭れ部(30)は、モータやアクチュエータを駆動手段とする背凭れ部揺動手段(34)によって、座部(20)又はベース(12)に対して揺動可能となっている。図示の実施例は、モータを駆動手段としたものである。
【0015】
図示の実施例では、背凭れ部フレーム(32)は、座部フレーム(22)と共通の軸(16)によって、ベース(12)に枢支されている。背凭れ部揺動手段(34)は、一端が背凭れ部フレーム(32)の下端に連繋され、他端が座部フレーム(22)の前端に連繋されている。従って、座部(20)を揺動したときには、背凭れ部(30)は、座部(20)と一体に揺動する。このため、背凭れ部(30)を揺動させることなく、座部(20)のみを揺動させるには、座部(20)の揺動方向に対して逆向きに背凭れ部(30)を揺動させる必要がある。
【0016】
背凭れ部(30)をベース(12)に揺動可能に支持し、且つ、背凭れ部揺動手段(34)も他端側がベース(12)側に連繋された構成とすることもでき、この場合、背凭れ部(30)は座部(20)に対して独立して揺動可能となる。背凭れ部(30)を座部(20)と一体に揺動させるには、座部(20)の揺動方向と同じ方向に背凭れ部(30)を揺動させればよい。背凭れ部(30)には、施療指等の公知のマッサージ手段(38)が昇降可能に配備されている。
【0017】
脚部(40)は、座部(20)の先端に直接支持される。脚部(40)には、エアバッグ等のマッサージ手段(48)が配備されている。
【0018】
脚部(40)を揺動させる脚部揺動手段(44)は、モータやアクチュエータ等の駆動手段を座部(20)に配備してもよいし、脚部(40)を座部(20)に軸支し、座部(20)の重量化を防ぐために、脚部揺動手段(44)の駆動手段をベース(12)に配備してもよい。
【0019】
図示の実施例では、脚部揺動手段(44)は、モータを駆動手段とするもので、座部(20)の前端下面から後方に向けて延びるフレーム(18)に、アクチュエータ(45)を前後方向に平行な面内で揺動可能に支持しており、該アクチュエータ(45)の先端は、座部(20)の前方下面に枢支された押上げフレーム(46)に連結されている。押上げフレーム(46)の先端には、ローラ(47)が軸支されており、該ローラ(47)には、脚部(40)のフレーム(42)が接触可能となっている。
【0020】
脚部揺動手段(44)であるアクチュエータ(45)を伸び方向に作動させると、押上げフレーム(46)は、前方上向きに揺動し、脚部(40)を前方に押し上げる。アクチュエータ(45)を縮み方向に作動させると、押上げフレーム(46)は後退して、脚部(40)を押し下げる。脚部フレーム(42)は、ローラ(47)に対して自重によって当接しているのみであるため、脚部(40)が押し下げられるときに、脚部(40)の通路上に物品等の障害物が介在している場合には、ローラ(47)が脚部フレーム(42)から離間して、脚部(40)がそれ以上後退することはない。
【0021】
上記揺動手段(24)(34)(44)やマッサージ手段(28)(38)(48)は、マッサージ機(10)の適所に配置された制御手段(50)に駆動回路(52)(52)(52)を介して電気的に接続され、制御手段(50)からの命令を受けて作動する。図5に示すように、制御手段(50)には、CPUや各揺動手段(24)(34)(44)の制御回路、記憶部等を具える。
【0022】
図6は、マッサージ機(10)の各種操作を行なう操作部(60)を示している。操作部(60)は、制御手段(50)に電気的に接続されており、操作部(60)に配備された複数のボタン(61)〜(68)等によって、マッサージ手段(28)(38)(48)の各種制御や、座部(20)、背凭れ部(30)及び脚部(40)の揺動角度(リクライニング角度)を適宜調整することができる。なお、マッサージ手段(28)(38)(48)の操作方法、動作の種類等については説明を省略する。
【0023】
操作部(60)のリクライニング選択ボタン(61)(62)(63)は、各ボタン毎に制御手段(50)の記憶部に記憶された「予め設定されたリクライニング角度」に座部(20)、背凭れ部(30)及び脚部(40)を揺動させるように、各揺動手段(24)(34)(44)を作動させるボタンである。また、操作ボタン(64)は、予め設定された「初期角度(ホームポジション)」にリクライニング角度を戻す初期位置ボタンである。
【0024】
制御手段(50)は、リクライニング選択ボタン(61)(62)(63)又は初期位置ボタン(64)が操作されると、各揺動手段(24)(34)(44)を作動させ、予め設定された角度まで座部(20)、背凭れ部(30)及び脚部(40)を揺動させる。座部(20)、背凭れ部(30)及び脚部(40)の角度は、リミットスイッチ、エンコーダ等により検知することができる。
【0025】
初期角度として、図1や、図7中「ホームポジション」で示すように、座部(20)が床面に対して略水平であり、背凭れ部(30)及び脚部(40)が、座部(20)に対してほぼ垂直な状態を例示することができる。初期角度は、予め制御手段(50)の記憶部に記憶しておく。初期角度は、被施療者が椅子に腰掛け、また、立ち上がりやすい角度であり、初期角度に座部(20)等を戻すには、初期位置ボタン(64)を操作する。
【0026】
予め設定されたリクライニング角度として、図7中「ポジション1」(POS1)で示すように、床面(90)に対する座部(20)の形成角度がZ20〜40度、望ましくは約30度、座部(20)と背凭れ部(30)との形成角度Lが100〜120度、望ましくは約110度、座部(20)と脚部(40)との形成角度Kが100〜120度、望ましくは約110度であるリクライニング角度を例示できる(図2参照)。ここで、形成角度Z、L、Kの方向は図7のとおりである。即ち、Zは座部(20)の前端が床面に対して高くなる方向の角度であり、Lは座部(20)と背凭れ部(30)の表側がなす角度であり、Kは座部(20)と脚部(40)の裏側がなす角度である。このポジション1は、被施療者が腰掛けた状態で、最も筋肉への負担が少なく、全身がリラックスできる楽な姿勢である。身体の表側と裏側の筋肉が弛緩し、この状態でマッサージ手段(28)(38)(48)を作動させることで、効果的なマッサージ効果を得ることができる。ポジション1に座部(20)等を動かすには、リクライニング選択ボタン(61)(POS1)を操作する。
【0027】
上記とは異なるリクライニング角度として、図7中「ポジション2」(POS2)で示すように、床面(90)に対する座部(20)の形成角度Zが20〜40度、望ましくは約30度、座部(20)と背凭れ部(30)との形成角度Lが110〜130度、望ましくは約120度、座部(20)と脚部(40)との形成角度Kが130〜160度、望ましくは約140度であるリクライニング角度を例示できる(図3及び図4参照)。
【0028】
ポジション2は、図8に示すように、前記ポジション1よりも緩やかな姿勢でマッサージを受けることができるポジションである。ポジション2は、ポジション1に比べて足先を高くしているから、この状態で、マッサージ手段(28)(38)(48)を作動させることで、特に脚に効果的にマッサージを施すことができ、脚の疲れを取り除くことができる。ポジション2に座部(20)等を動かすには、リクライニング選択ボタン(62)(POS2)を操作する。なお、ポジション2において、足先をさらに高くして、心臓よりも上に位置させ、膝が心臓よりも下に位置する姿勢として、足の血流をさらに良好にすることもできる。
【0029】
ポジション2は、被施療者の脚をポジション1に比して高く持ち上げているから、初期角度から直ちに移動させるのではなく、一旦ポジション1を経由して、被施療者への負担を小さくすることが望ましい。
【0030】
ポジション2に座部(20)等を揺動させた後、ポジション2における被施療者の姿勢、即ち、脚の血流がよいという優位性を生かし、脚部(40)に配備されたマッサージ手段(48)によって、被施療者の脚をマッサージすると、効果的なマッサージ効果を得ることができる。この場合、例えば、操作部(60)に図6に示すように、マッサージ手段(48)を作動させる脚上げ下半身ボタン(65)を配備し、マッサージ機(10)がポジション2であるときのみに当該ボタン(65)が操作可能としておくことが望ましい。或いは、当該ボタン(65)を操作すれば、ポジション2へ自動的に移行するようにしておいてもよい。脚を高い位置に保持したまま、脚に重点的にマッサージを施すことで、脚の血流が向上するだけでなく、全身の血流も向上させることができる利点がある。
【0031】
さらに、図7中「フルフラット」で示すように、予め設定されたリクライニング角度の異なる例として、背凭れ部(30)及び脚部(40)が床面(90)に対してほぼ水平となり、座部(20)、背凭れ部(30)及び脚部(40)がほぼ平らな状態となる角度を例示できる。フルフラットに座部(20)等を動かすには、リクライニング選択ボタン(63)(フルフラット)を操作する。フルフラットは、椅子がベッドの如く平らになり、被施療者が寝転んだ状態でリラックスしてマッサージを受けることができる。
【0032】
ポジション1、ポジション2、フルフラットの位置へは、夫々に対応する複数のリクライニング選択ボタン(61)(62)(63)を操作することで移行するようにしているが、1つのリクライニング選択ボタンを押す毎に、ポジション1、ポジション2、フルフラットと切り替わるようにすることもできる。この場合、リクライニング選択ボタンを押してから、所定時間、例えば2秒以内に再びリクライニング選択ボタンが押されると、操作を受け付けて切り替わるようにして、2秒間は移動を開始しないようにすれば好都合である。
【0033】
上記したポジション1やポジション2、その他、座部(20)、背凭れ部(30)及び脚部(40)が揺動した状態から、初期角度まで座部(20)等を戻す場合に、座部(20)、背凭れ部(30)及び脚部(40)の揺動角度に無関係に揺動手段(24)(34)(44)を作動させたときに、不自然な姿勢になって、被施療者が不快感を感じることがある。
【0034】
このため、予め、座部(20)と脚部(40)との位置関係を検出し、脚部(40)が座部(20)よりも先に初期角度に戻らないように調整することが望ましい。例えば、予め、座部(20)が初期角度まで戻った後に、脚部(40)を初期角度に戻すようにすることが望ましい。
【0035】
脚部(40)が座部(20)に対して初期角度やそれに近い角度を維持している状態であれば、一旦、脚部(40)を本来の動作方向とは逆方向に揺動させた(持ち上げた)後、座部(20)を初期角度に向けて揺動させつつ、再度、脚部(40)を初期角度に向けて揺動させるように制御してもよい。
【0036】
さらに、図9に示すように、座部(20)の床面に対する角度Zと、脚部(40)の座部(20)に対する角度Kに基づいて、脚部(40)を初期角度に戻すタイミングを変えるようにしてもいい。
【0037】
具体的には、被施療者が、初期位置ボタン(64)を操作すると、座部(20)、背凭れ部(30)及び脚部(40)の各揺動手段(24)(34)(44)が作動し、これらを初期角度に復帰させる。 このとき、フローチャート図10に示すように、座部(20)及び背凭れ部(30)の揺動手段(24)(34)は、座部(20)及び背凭れ部(30)が初期角度まで復帰する方向に作動して停止する(ステップ10〜13及びステップ14〜17)。一方、脚部(40)は、フローチャート図10に示すように、脚部(40)の高さと、床面(90)及び座部(20)に対する形成角度に基づいて、揺動手段(44)を作動させる。
【0038】
フローチャート図10に示すように、制御手段(50)は、まず、脚部(40)の先端から床面(90)までの高さH(図9参照)を座部(20)の角度Zと脚部(40)の角度Kに基づいて算出する(ステップ1)。算出された高さHが、例えば10cmよりも低くなっている場合には(ステップ2)、脚部(40)と床面(90)との間に物が挟まる可能性が低いため、そのまま脚部(40)を下げるように揺動手段(44)を作動させ(ステップ6)、初期角度に到達すると(ステップ7)、揺動手段(44)を停止させ(ステップ8)、動作を終了する(ステップ9)。
【0039】
一方、脚部(40)の高さHが10cm以上の場合(ステップ2)、脚部(40)の角度K(図9
参照)が例えば120度以下であれば(ステップ3)、脚部(40)と座部(20)との角度がきつ
いため、一旦、脚部(40)の揺動手段(44)を初期角度とは逆方向に作動させ、脚部(40)と座部(20)との形成角度Kが大きくなるように揺動させる(ステップ4)。
【0040】
ステップ3にて、脚部(40)の角度Kが120度より大きい場合又はステップ4の後揺動手段(44)を脚部(40)と座部(20)の形成角度Kが大きくなるように作動させた状態で、角度Kと角度Zとの差を算出し、これらの差が例えば120度を越えるまで、揺動手段(44)を作動させ続ける(ステップ5)。
【0041】
角度Kと角度Zとの差が120度を超えると(ステップ5)、脚部(40)を下げるように揺動手段(44)を作動させ(ステップ6)、初期角度に到達すると(ステップ7)、揺動手段(44)を停止させ(ステップ8)、動作を終了する(ステップ9)。
【0042】
上記フローチャート図のように、脚部(40)の床面に対する揺動角度等に基づいて、脚部(40)を初期角度に復帰させるタイミングを変えることで、脚部(40)の先端が高い位置にある状態から、座部(20)よりも先に初期角度に戻ることはない。従って、脚部(40)と床面(90)との間に物が挟まれることを防止できる。
【0043】
上記実施例では、脚部(40)は、座部(20)との形成角度Kと、脚部(40)の先端の高さHに基づいて、脚部(40)を初期角度に復帰させるタイミングを変えるようにしているが、何れか一方に基づいて、復帰タイミングを変えるようにしてもよい。
【0044】
リクライニング選択スイッチ(61)〜(63)等により自動的に背凭れ部(30)が倒れる場合は、背凭れ部(30)は、倒す方向の揺動速度を起こす方向の揺動速度よりも遅くするよう制御することが望ましい。
【0045】
背凭れ部(30)を倒す方向の速度を速くすると、被施療者は後ろ向きに倒れることにより、恐怖感を感じてしまうことがある。従って、背凭れ部(30)を倒す方向の速度は遅くする方が望ましい。しかしながら、背凭れ部(30)を起こす方向に揺動させる場合には、被施療者は前向きに起き上がることとなるから、背凭れ部(30)を倒す場合に比べて恐怖心はなく、また、背凭れ部(30)が倒れた状態から、被施療者が早急に立ち上がりたいときに、背凭れ部(30)を起こす方向の揺動速度が遅いと、被施療者がいらだちを感じたり、煩わしいと感じることがある。
【0046】
そこで、背凭れ部(30)は、倒す方向の揺動速度を起こす方向の揺動速度よりも遅くするよう制御する。背凭れ部(30)の起倒の速度は、背凭れ部(30)の揺動手段(34)のモータの回転速度を変えることで調整することができる。
【0047】
また、座部(20)が起きる(水平方向へ向かう動き)速さよりも、背凭れ部(30)が倒れる速さを遅くすることで、例えば、座部(20)が最も倒れている状態から、座部(20)を起こしながら、背凭れ部(30)を倒すような動作を行なったときに(例えばフルフラットへの移行時)、背凭れ部(30)が床面(90)に接触したり、リミットスイッチがチャタリングを起こすことを防止できる。
【0048】
詳述すると、例えば、図7のポジション1やポジション2からフルフラットへの移行時に、背凭れ部(30)の倒れる速度が速いと、座部(20)が略水平になるより早く、背凭れ部(30)が床面に到達してしまうので、床面に到達する前にリミットスイッチを働かせて、背凭れ部(30)の倒れ動作を停止させるようにしている。背凭れ部(30)の倒れ動作が停止している間も、座部(20)は起き上がる方向へ回動し続け、座部(20)のこの動きと一体となって、背凭れ部(30)が再び起き上がり、リミットスイッチが解除する。リミットスイッチの解除により、再び、背凭れ部(30)が揺動手段(34)により倒れ方向に駆動させられ、再びリミットスイッチが作動するというチャタリングを繰り返すことになるが、背凭れ部(30)の倒れ速度を遅くすることにより、このような事態になることを防止できる。また、リミットスイッチのない場合は、背凭れ部(30)が床面に到達することを防止できる。
【0049】
さらに、上記の如く、背凭れ部(30)を倒す際の揺動速度が速いと、被施療者は恐怖感を感じてしまうことがあるが、リクライニングボタン(68)を操作することによる手動操作により、背凭れ部(30)を倒す場合には、被施療者は、予め背凭れ部(30)が倒れることを予測できる。従って、手動操作による場合には、背凭れ部(30)の後傾速度を、自動、即ち、ポジション1、ポジション2等への揺動動作よりも速くするようにしてもよい。
【0050】
ところで、図1〜図4のような実施形態、即ち、座部(20)を揺動したとき、背凭れ部(30)も座部(20)と一体に揺動するものにおいては、座部(20)の揺動手段(24)と背凭れ部(30)の揺動手段(34)を同時に作動させると、背凭れ部(30)の床面に対する速度は、「床面に対する座部の速度」+「床面に対する背凭れ部の速度」となり、速度が速くなる。そのため、背凭れ部(30)が倒れるときには恐怖感を与え、又、背凭れ部(30)が起き上がるときには不快感を与えかねない。
【0051】
そこで、背凭れ部(30)が倒れる際に被施療者に与える恐怖心を少なくするために、上記ポジション1やポジション2、フルフラットに座部(20)及び背凭れ部(30)を揺動させる場合や、初期角度(ホームポジション)に座部(20)及び背凭れ部(30)を揺動させるときに、座部(20)と背凭れ部(30)の揺動手段(24)(34)を同時に作動させるのではなく、図11に示すように、先に座部(20)の揺動手段(24)を作動させて、座部(20)を所望の角度まで揺動させた後、次に、背凭れ部(30)の揺動手段(34)を作動させて、背凭れ部(30)を所望の角度まで揺動させることが望ましい。また、その逆として、図12に示すように、先に、背凭れ部(30)の揺動手段(34)を作動させて、背凭れ部(30)を所望の角度まで揺動させた後、次に、座部(20)の揺動手段(24)を作動させて、座部(20)を所望の角度まで揺動させるようにしてもよい。
【0052】
このように、座部(20)と背凭れ部(30)を同時に揺動させないようにすることで、被施療者は、身体が全体として急速に後傾したり前傾することがないから、恐怖心や不快感を感じにくくなる。また、上記のように、揺動手段(24)(34)を同時に作動させないようにすることで、揺動手段(24)(34)の瞬間消費電力を抑えることができる利点がある。
【0053】
ポジション1、ポジション2及びフルフラットへのリクライニング選択ボタン(61)(62)(63)と、ホームポジションへの初期位置ボタン(64)について、何れかのボタンが操作され、各揺動手段(24)(34)(44)が作動している状態で、何れかのリクライニング選択ボタン(61)(62)(63)、初期位置ボタン(64)、その他のリクライニングに関するボタン(手動リクライニングボタン(68)等)や、或いは、すべての操作ボタンの何れか一つの操作ボタンが操作された場合には、座部(20)、背凭れ部(30)及び脚部(40)の揺動手段(24)(34)(44)の作動を停止するようにすることが望ましい。このように、揺動手段(24)(34)(44)が作動している状態で、何れかのボタンを操作したときに、揺動手段(24)(34)(44)を停止させることで、安全性を高めることができる。
【0054】
さらに、背凭れ部(30)及び/又は座部(20)に、制御手段(50)に電気的に接続され、被施療者の有無を検知するセンサ(58)(図5参照)を配備して、被施療者がマッサージ機(10)に座っているか否かを判断し、被施療者無しと判断した場合には、リクライニングの何れのリクライニング選択ボタン(61)(62)(63)や初期位置ボタン(64)等が操作されても、揺動手段(24)(34)(44)を作動させないように制御することが望ましい。センサ(58)として、圧力センサや電極を用いたスイッチを例示することができる。
【0055】
上記の如く、被施療者の有無によって、揺動手段(24)(34)(44)の作動を制限することで、誤作動を防止し、安全性を向上させることができる。
【0056】
また、被施療者が、マッサージ手段(28)(38)(48)による施療中に、座部(20)、背凭れ部(30)及び脚部(40)をホームポジションに移動させる初期位置ボタン(64)が操作されたときに、制御手段(50)は、マッサージ手段(28)(38)(48)の作動を停止した後、揺動手段(24)(34)(44)を作動させるように制御することが望ましい。
【0057】
被施療者が初期位置ボタン(64)を操作するのは、通常、マッサージ終了を希望する場合であるから、座部(20)、背凭れ部(30)及び脚部(40)をホームポジションに移動させるまでの間に、マッサージ手段(28)(38)(48)の作動を停止することで、違和感なくマッサージを終了することができ、座部(20)等がホームポジションに移動した際に被施療者は、スムーズに立ち上がることができる。
【0058】
また、図6の運転入/切スイッチ(67)が、「切」の状態では、リクライニング選択ボタン(61)〜(63)や、手動リクライニングボタン(68)等の操作ボタンは受け付けないが、初期位置ボタン(64)のみは受け付けるようにして、ホームポジションに戻るようにしておけば好都合である。
【0059】
操作部(60)は、図6に示した多数のボタン(61)〜(68)等を具えるものに加えて、図13に示すように、大きさの異なる補助操作部(70)を具えることが望ましい。補助操作部(70)は、制御手段(50)に電気的に接続され、例えば、座部(20)、背凭れ部(30)及び脚部(40)を使用頻度の多いポジション1の位置まで起倒する操作ボタン(71)と、マッサージ開始用のボタン(72)、停止ボタン(73)、座部(20)、背凭れ部(30)及び脚部(40)を初期角度(ホームポジション)に戻す初期位置ボタン(74)のみを具えるような構成とすることができる。
【0060】
上記のように、最小限の操作を行なうための小型の補助操作部(70)を具えることで、マッサージ中に手探りでも所望の操作を選択することができ、マッサージの妨げになることはない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の椅子型マッサージ機(ホームポジション)の側面図である。
【図2】本発明の椅子型マッサージ機(ポジション1)の側面図である。
【図3】本発明の椅子型マッサージ機(ポジション2)の側面図である。
【図4】図3の椅子型マッサージ機について、主要構成となるフレーム等のみを示す図である。
【図5】制御手段のブロック図である。
【図6】操作部の平面図である。
【図7】本発明の椅子型マッサージ機の座部、背凭れ部及び脚部の状態変化を示す図である。
【図8】ポジション2における被施療者の姿勢を示す図である。
【図9】座部の床面に対する角度Zと、脚部の座部に対する角度K、脚部の高さHを説明する図である。
【図10】本発明の椅子型マッサージ機のリクライニングの制御の一例を示すフローチャート図である。
【図11】座部を背凭れ部よりも先に揺動させる状態を示す図である。
【図12】背凭れ部を座部よりも先に揺動させる状態を示す図である。
【図13】補助操作部の斜視図である。
【符号の説明】
【0062】
(12) ベース
(20) 座部
(30) 背凭れ部
(40) 脚部
(24) 座部揺動手段
(34) 背凭れ部揺動手段
(44) 脚部揺動手段
(50) 制御手段
(60) 操作部
(64) 初期位置ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に載置されるベースと、該ベースに揺動可能に支持され被施療者の腰掛ける座部と、該座部の後端側に揺動可能に支持され被施療者の背中が当たる背凭れ部と、座部の前端側に揺動可能に支持され被施療者のふくらはぎが当たる脚部と、座部を揺動させる座部揺動手段と、背凭れ部を揺動させる背凭れ部揺動手段と、脚部を揺動させる脚部揺動手段と、座部揺動手段、背凭れ部揺動手段及び脚部揺動手段を制御する制御手段と、該制御手段に電気的に接続され座部揺動手段、背凭れ部揺動手段及び脚部揺動手段を操作する操作部とを具え、
座部揺動手段、背凭れ部揺動手段及び脚部揺動手段は、夫々制御手段によって制御される独立した駆動手段を具え、
操作部は、座部、背凭れ部及び脚部を夫々予め設定された初期角度に戻すための初期位置ボタンを具え、
該初期位置ボタンを操作したときに、制御手段は、座部、背凭れ部及び脚部が傾いている状態から、予め設定された初期角度に復帰させる際に、座部の揺動角度と、脚部の揺動角度に基づいて、脚部を初期角度に復帰させるタイミングを変える椅子型マッサージ機。
【請求項2】
制御手段は、座部が初期角度まで復帰した後、脚部を初期角度まで復帰するよう駆動手段を制御する請求項1に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項3】
制御手段は、脚部の初期角度に対する揺動角度が、座部の初期角度に対する揺動角度に比べて、所定値以上小さい場合には、脚部揺動手段の駆動手段を作動させて、一旦初期角度に向かう方向とは逆の方向に揺動させた後、脚部を初期角度に揺動させる請求項1又は請求項2に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項4】
制御手段は、脚部の先端の床面に対する高さに基づいて、脚部を初期角度に復帰させるタイミングを変える請求項1に記載の椅子型マッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−28556(P2009−28556A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281209(P2008−281209)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【分割の表示】特願2006−209539(P2006−209539)の分割
【原出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】