説明

椅子型マッサージ機に備えられた背揉み装置及びこの背揉み装置を備えた椅子型マッサージ機

【課題】椅子型マッサージ機において、背揉み装置のマッサージ機構を前方へ突出させたり元の通常位置へ戻したりできる構成を採用にするに際し、マッサージ効果を低下させることがなく、前後動作が迅速且つ十分量の動作量で実行できるものとし、更に機構的な大型化や複雑化も防止できるようにする。
【解決手段】本発明の椅子型マッサージ機1に関し、背もたれ部3に設けられた背揉み装置4は、左右一対のマッサージ部材17と両マッサージ部材17にマッサージ動作を伝動する駆動部18とを有するマッサージ機構10と、マッサージ機構10の下端部を揺動枢支部11で支持することで当該マッサージ機構10を前後揺動自在に保持するベース部材12と、ベース部材12を背もたれ部3内で上下方向に移動可能にする上下移動機構13と、ベース部材12に対してマッサージ機構10の上端部を前後動させる出退動作機構14とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子型マッサージ機に備えられた背揉み装置、及び背揉み装置を備えた椅子型マッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
椅子型マッサージ機の背もたれ部に関し、その内部に、左右一対のマッサージ部材をマッサージ動作させるマッサージ機構が装備されたものは周知である。
このマッサージ機構は、座部に座った使用者の背筋に沿わせて移動させる必要があり、この移動のための上下移動機構が設けられており、このマッサージ機構と上下移動機構とで背揉み装置が構成される。
この種の背揉み装置には、必要に応じて又は使用者の好みに応じて、マッサージ部材を通常のマッサージ位置よりも前方へ突出させたり、元の通常位置へ戻したりできるようにした出退動作機構を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この出退動作機構では、上下移動機構により背もたれ部内で上下移動する支持フレームをマッサージ機構とは別に設けておき、この支持フレームに対して、下部枢支点を介してマッサージ機構をその上端側が前後揺動するように支持してある。そして、そのうえで支持フレームとマッサージ機構との上部相互間を前後方向で接離動作(前後駆動)させるようにしてあった。
この接離動作を行わせる駆動方式としては、エアの出し入れで膨張と収縮を切り換えるエアセルを用いた所謂[エア方式]と、上下方向で正ネジ部と逆ネジ部とが区画形成されたネジ軸に対して上下の各ネジ部にそれぞれ雌ねじ体を螺合させ、上下の雌ねじ体間を一対のリンクでトグル機構のように連結した所謂[リンク方式]と、偏心カムをベアリング入りの支持体内に嵌合させた状態にして回動させる所謂[カム方式]と、ウオームギヤとネジ歯車(ピニオンギヤ)との噛合でリンク(揺動レバー)を揺動させる所謂[レバー方式]と、の4種が例示されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−102798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の背揉み装置付き椅子型マッサージ機において、出退動作機構に例示された4種の駆動方式にはそれぞれに難点があり、いずれも実用において不都合を生じるものであった。
例えば、エア方式では、エアセルを膨張させてマッサージ機構を前方へ突出させたとき、使用者による後向きの押圧力(もたれ掛かり荷重)にエアセルの膨張力が屈して、マッサージ機構が押し戻されてしまう問題があった。この問題はマッサージ機構による指圧力(マッサージ効果)の低下や指圧位置のズレにも繋がる。またエア流や排気音などによる騒音の問題もあった。
【0006】
リンク方式では、一対のリンクが必要であることがネックとなり、正ネジ部と逆ネジ部とを有するネジ軸が必須不可欠であるから、これによってパーツとしての高コスト化が生じる問題があった。のみならず、このネジ軸が長くなり、背揉み装置全体としての大型化を招来する問題もあった。
カム方式では、カムの偏心量を大きく確保できないことから、マッサージ機構の前後動ストロークを大きくできないという根本的な問題があった。なお、前後動ストロークを大きくするためにカムの偏心量を大きくしたとすると、背揉み装置としてだけでなく、椅子型マッサージ機の背もたれ部までもを大型化する(分厚くなる)ことになり、採用できない。また、カムと支持部材とがベアリグを介した嵌合関係になっていることから、マッサージ機構の前方突出時に使用者による後向きの押圧力(もたれ掛かり荷重)が作用すると、カムと支持部材とがスリップ回転してしまい、エアセルの場合と同様、マッサージ機構が押し戻されてしまう問題があった。
【0007】
レバー方式では、ウオームギヤとネジ歯車とによる減速比が原理的・宿命的に大きくなることから、出退動作機構としての動きは非常に緩慢なものとなり、結果、マッサージ機構の前後動が低速となる問題があった。このため例えば、椅子型マッサージ機全体として、一連のマッサージ動作を行うときなどにあって、サイクルタイムが徒に長くなってしまうといった不都合に繋がっていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、マッサージ機構を前方へ突出させたり元の通常位置へ戻したりできる構成を採用するに際し、マッサージ効果を低下させてしまうようなことはなく、前後動作が迅速且つ十分量の動作量で実行できるものであり、しかも機構的な大型化や複雑化を招来することもない、椅子型マッサージ機に備えられた背揉み装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明の背揉み装置は、椅子型マッサージ機の背もたれ部に配設された背揉み装置であって、左右一対のマッサージ部材とこのマッサージ部材にマッサージ動作を伝動する駆動部とを有するマッサージ機構と、このマッサージ機構の下端部を揺動枢支部で支持することで当該マッサージ機構を前後揺動自在に保持するベース部材と、このベース部材を前記背もたれ部内で上下方向に移動可能にする上下移動機構と、前記ベース部材に対して、マッサージ機構の上端部を前後方向に出退させる出退動作機構と、を有していることを特徴とする。
【0009】
前記出退動作機構は、前記ベース部材に対して上下移動自在に設けられたスライダーと、このスライダーを上下移動させるスライド機構と、前記マッサージ機構の上端部及び前記スライダーに対してそれぞれ回動自在に枢支され且つ前記スライダーとマッサージ機構とを連結する伝動アームと、前記ベース部材からマッサージ機構の側部に沿って前方へ延び出す状態で設けられたレール部と、前記マッサージ機構からレール部へ向けて突出状に設けられて前記レール部に沿って移動自在となるように係合する摺動部材とを有したものとすればよい。
【0010】
この場合、前記レール部は、前記揺動枢支部を中心とする上膨らみ形の円弧カーブで形成するのが好適である。
また、前記マッサージ機構に対して摺動部材が設けられる位置と、前記伝動アームがマッサージ機構に枢支される枢支軸とが、この枢支軸の軸心上で同軸配置とされているものとするのが好適である。
また、前記スライド機構は、前記スライダーに設けられた上下方向に貫通する雌ねじ部と、この雌ねじ部に螺合する送りネジ軸と、この送りネジ軸を駆動回転する電動モータとを有しているのが好適である。
【0011】
一方、本発明の椅子型マッサージ機は、座部と、座部の後部に設けられ且つ上記した背揉み装置を内蔵した背もたれ部と、使用者の体部位を検出可能なセンサと、有する椅子型マッサージ機において、前記センサで検出した結果を基に、前記背揉み装置の出退動作機構を作動させる制御部を備えていることを特徴とする。
好ましくは、前記制御部は、前記センサにより検出された使用者の肩位置を基に、使用者の肩の位置にあっては、マッサージ機構の上端部を前方向に突出させ、使用者の腰の位置にあっては、マッサージ機構の上端部を後方向に退行させるよう構成されているとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る背揉み装置では、マッサージ機構を前方へ突出させたり元の通常位置へ戻したりできる構成を採用するに際し、マッサージ効果を低下させてしまうようなことはなく、前後動作が迅速且つ十分量の動作量で実行できるものであり、しかも機構的な大型化や複雑化を招来することもない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図3に対応する概略側断面図(断面位置は図5のB−B線位置とした)である。
【図2】図4に対応する概略側断面図(断面位置は図5のB−B線位置とした)である。
【図3】図6から背揉み装置を抽出して示した斜視図である。
【図4】図3の状態からマッサージ機構を前方突出させて示した斜視図である。
【図5】図4のA−A線断面図である。
【図6】本発明に係る背揉み装置付き椅子型マッサージ機の第1実施形態を示した斜視図である。
【図7】出退動作機構の第2実施形態を示した概略側断面図(断面位置は図9のC−C線位置とした)である。
【図8】図3の状態からマッサージ機構を前方突出させて示した概略側断面図(断面位置は図9のC−C線位置とした)である。
【図9】第2実施形態の出退動作機構が装備された背揉み装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図を基に説明する。
[第1実施形態]
図1乃至図6は、本発明に係る背揉み装置付き椅子型マッサージ機1の第1実施形態を示している。
図6に示すように、この椅子型マッサージ機1は、使用者の臀部を下方から支持するに十分な広さの座部2と、この座部2の後部に設けられた背もたれ部3とを有しており、背もたれ部3の内部に、背揉み装置4が設けられている。
【0015】
座部2の下部には、この椅子型マッサージ機1を床面へ設置するための脚フレーム6が設けられており、この脚フレーム6によって座部2が所定高さに支持されるようになっている。
なお、以下の説明において、背もたれ部3及び背揉み装置4に関しては、当該背もたれ部3の高さ方向(背もたれ部3にもたれ掛かった使用者の身長方向)を上下方向とおき、これを基準に左右方向や前後方向を決めて構造の説明をする(背もたれ部3がリクライニングによって傾いた状態を除外して説明する)。
【0016】
例えば図1や図2ではそれらの上下方向を実際の装置における上下方向と呼ぶ。また、図1や図2ではそれらの紙面貫通方向を実際の装置での左右方向又は幅方向と呼び、図1や図2の左右方向を実際の装置での前後方向と呼ぶ。
背もたれ部3は、その下端部が座部2の後部又は脚フレーム6の後部に対して枢支され、前後揺動自在な状態に保持されている。この背もたれ部3は、脚フレーム6内に配設されたリニアアクチュエータ機構などのリクライニング機構により、リクライニング可能となっている。また、座部2の前部には足揉み装置5が設けられ、座部2の左右両側には肘掛け部7が設けられたものとしてある。ただこれらは、椅子型マッサージ機1における装備の一例であり、その有無や細部機構が限定されるものではない。
【0017】
図1乃至図5に示すように、背揉み装置4は、マッサージ機構10と、このマッサージ機構10の下端部を揺動枢支部11を介して支持するベース部材12と、このベース部材12を背もたれ部3内で上下方向に移動可能にする上下移動機構13と、ベース部材12に対してマッサージ機構10の上端部を前後動させる出退動作機構14とを有している。
まず、主に図4を用いてマッサージ機構10を説明する。マッサージ機構10は、左右一対のマッサージ部材17と、これら左右のマッサージ部材17に適宜マッサージ動作を行わせる駆動部18とを有している。
【0018】
本実施形態においてマッサージ部材17は、上方及び下方の斜め前方へ先端部を突出させたブーメラン形の支持アーム20と、この支持アーム20の両先端部に設けられた肉厚な円盤型の揉み玉21とを有したものとしてある。揉み玉21は、例えば樹脂や硬質ゴムなどによって形成することができる。
また駆動部18は、左右のマッサージ部材17を相互近接離反動作させる揉み駆動部23と、左右のマッサージ部材17に対して交互の叩き動作を行わせる叩き駆動部24とを有したものとしてある。
【0019】
揉み駆動部23は、マッサージ部材17の支持アーム20に対してその中央屈曲部に埋め込み状態で設けられた傾斜回転部材25と、この傾斜回転部材25を貫通するように軸心を左右方向へ向けて架設された第1回転軸26と、この第1回転軸26を回転駆動する揉みモータ27と、支持アーム20における中央屈曲部の後部に設けられてこの支持アーム20が第1回転軸26に伴って連れ回りすることを規制する振れ止め機構28とを有している。この触れ止め機構28には例えばボールジョイントやユニバーサルジョイント等の自在継ぎ手を採用可能である。
【0020】
傾斜回転部材25は、第1回転軸26に同心で且つ傾斜状態で設けられた取付ボス部に対し、そのまわりにベアリング等を介して回転自在に取り付けられている。従って、揉みモータ27の駆動によって第1回転軸26を回転させると、その回転中心を軸として傾斜回転部材25がゆらぎ状の回転ブレを起こすようになり、この回転ブレが支持アーム20を介して揉み玉21へと伝えられるようになる。
支持アーム20は、触れ止め機構28によって第1回転軸26と供回りしない状態に保持されるが、前後方向・左右方向及び上下方向に沿った所定範囲の動作は許容されている。また、左右の支持アーム20間において、傾斜回転部材25の傾斜方向は第1回転軸26まわりで180°の位相差に保持されている。
【0021】
このようなことから、この揉み駆動部23において左右の支持アーム20は、上部の揉み玉21同士、及び下部の揉み玉21同士が、相互近接及び離反を繰り返すように動作することになり、これがマッサージ部材17としての揉み動作を発生させるものとなる。
一方、叩き駆動部24は、傾斜回転部材25の第1回転軸26よりも上部位置でこれと平行するように軸心を左右方向へ向けて設けられた第2回転軸31(図5にのみ示す)と、この第2回転軸31を回転駆動する叩きモータ32と、第2回転軸31の左右両端部に対して180°の位相差で偏心して設けられた左右の偏心カム34と、これら左右の偏心カム34を回転自在に抱持するカムハウジング35に対して下方へ突出して設けられたリンクレバー36とを有している。
【0022】
偏心カム34は、ベアリングに対してその内輪側又は外輪側に偏心カラーを装着することによって、第2回転軸31とカムハウジング35との軸心を不一致にさせたものである。またリンクレバー36の先端部は、マッサージ部材17が有する支持アーム20の中央屈曲部に連結されているが、この連結部分は、上記した触れ止め機構28(ボールジョイント等)を形成したものとなっている。すなわち、リンクレバー36の先端部に触れ止め機構28が設けられ、この触れ止め機構28を介して支持アーム20の基端部が連結されていることになる。
【0023】
従ってこの叩き駆動部24では、叩きモータ32を駆動させると、偏心カム34の偏心回転を受けてカムハウジング35が円周移動するようにより、このカムハウジング35からリンクレバー36に対して上下方向の押引動作が伝えられるようになる。このようなことから、左右の支持アーム20は互いの揉み玉21を第1回転軸26のまわりで小刻みに揺動させることになることから、これがマッサージ部材17としての叩き動作を発生させることになる。
なお、左右の支持アーム20に生じる揺動は、左右の偏心カム34が180°の位相差で設けられていることから、交互に生じるようになっている。ただ、これは限定される事項ではなく、例えば左右の偏心カム34に対してそれらの位相差をゼロにさせるような適宜切換機構を設けておけば、左右の支持アーム20が同期して同じ向きに揺動するように、叩き動作の設定(叩きパターン)を変更可能にできることになる。
【0024】
なお、叩きモータ32は縦ガイドバー37に沿って上下動自在に保持されている。すなわち、マッサージ部材17は、振れ止め機構28によって第1回転軸26回りの連れ回りが制限されているが、マッサージ部材17に使用者の背中を押しつけたような場合には、振れ止め機構28と連結関係にある叩きモータ32が縦ガイドバー37によって上下動することによってマッサージ部材17の回動が許容されることになる。
そのため、揉み駆動部23や叩き駆動部24によるマッサージ動作に関係なく、マッサージ部材17が背中のS字カーブに応じて第1回転軸26回りに回動し、各揉み玉21がほぼ均等圧に背中に当接することになる。揉み駆動部23や叩き駆動部24は、いずれか一方だけ作動させたり、又は両方同時に作動させたりを切替可能にしておくことができる。
【0025】
このような構成を具備するマッサージ機構10は、その下端部が揺動枢支部11(図1及び図2参照)を介して前記したベース部材12に支持されている。揺動枢支部11は軸心を左右方向へ向けた枢軸40を有したものであって、マッサージ機構10は、この枢軸40を支点としつつその上端側がベース部材12に対して前後方向へ揺動自在に保持されている。
上下移動機構13は、ベース部材12ごと、マッサージ機構10を上下に移動させるようになっており、ベース部材12の上部及び下部の左右両側に、回転軸心を左右方向へ向けてガイドローラ45が設けられ、これらガイドローラ45が、背もたれ部3の内部に、長手方向を上下に向けて組み込まれた左右一対のガイドレール46に沿って上下動自在にガイドされるようになっている。
【0026】
そして、両ガイドレール46の相互間には昇降モータ47により回転駆動可能とされたネジ軸48が設けられ、ベース部材12には、このネジ軸48に螺合するナット部材49(図5にのみ示す)が固定されている。従って、昇降モータ47の作動でネジ軸48が回転駆動されることで、ベース部材12と共にマッサージ機構10が背もたれ部3内を上下動するようになっている。
これにより、座部2に座って背もたれ部3に背中を押しつけた使用者は、その後頭部から背中及び腰にわたる広い範囲でマッサージを受けられるものとなっている。
【0027】
次に、主として図1及び図2を用いて出退動作機構14を説明する。
出退動作機構14は、ベース部材12に対して上下移動自在に設けられたスライダー50と、このスライダー50を上下移動させるスライド機構51と、スライダー50とマッサージ機構10とを連結する伝動アーム52と、ベース部材12に設けられたレール部53と、マッサージ機構10からレール部53へ向けて突出状に設けられた摺動部材54とを有している。
スライダー50はベース部材12の前面に配置されており、左右方向に長い柱状ブロックとして形成されている(図5参照)。ベース部材12に対するスライダー50の上下動は、ベース部材12の前面上部から前方へ突出状に設けられた上部ブラケット57と、ベース部材12の前面下部から前方へ突出状に設けられた下部ブラケット58との上下間に架設されたガイドバー59(図例では2本としている)により、このスライダー50が串刺し状に貫通されることで、可能とされている。
【0028】
これに対し、スライド機構51は上部ブラケット57と下部ブラケット58との上下間で且つスライダー50用のガイドバー59に平行するようにして回転自在に架設された送りネジ軸63と、この送りネジ軸63を駆動回転する電動モータ64とを有している。送りネジ軸63はスライダー50を上下方向に貫通しており、スライダー50には、この送りネジ軸63と螺合する雌ねじ部65が設けられている。これら雌ねじ部65と送りネジ軸63との螺合構造は、ネジ推進力及びガタツキ防止性に優れた角ネジ、好ましくは台形ネジによって形成されている。
【0029】
レール部53は、ベース部材12の左右両側部から前方へ突出する側板部66に対し、それらが対向する内面に設けられている。本実施形態では、レール部53が溝として側板部66に凹設されたものを示してある。このレール部53は、ベース部材12がマッサージ機構10の下端部を揺動自在に支持する揺動枢支部11を中心として、上膨らみ形の円弧カーブを有して形成されている。
摺動部材54は、レール部53(溝)に対して摺動自在にな状態で係合(嵌合)する回転自在なローラにより形成されたものとしてある。従って、マッサージ機構10に対し、揺動枢支部11を中心とした揺動を起こすような外力が加えられたときに、この摺動部材54がレール部53に沿って円弧移動をし、マッサージ機構10の揺動を安定化させるようになっている。
【0030】
伝動アーム52は左右一対(2本)設けられており、それぞれ、マッサージ機構10及びスライダー50に対してそれらの左右両側に振り分けられるように配置されている。これら各伝動アーム52において、マッサージ機構10との連結部分には、軸心を左右方向へ向けた第1枢支軸67が設けられており、この第1枢支軸67を中心に揺動自在なリンク接合部68が形成されている。このリンク接合部68は、マッサージ機構10の上端部に配置されている。
なお、マッサージ機構10に対して摺動部材54が設けられる位置(ローラの回転中心)と、伝動アーム52におけるマッサージ機構10側のリンク接合部68とは、このリンク接合部68が有する第1枢支軸67の軸心上で一軸配置とされている。そのため、伝動アーム52を介してマッサージ機構10に伝達される押引力は、効率良く摺動部材54にも伝えられるようになり、結果、この摺動部材54が円滑にレール部53に沿った移動を生じ易くなっている。
【0031】
伝動アーム52におけるスライダー50との連結部分には、軸心を左右方向へ向けた第2枢支軸69(図2にのみ示す)が設けられており、この第2枢支軸69を中心に揺動自在なリンク接合部70が形成されている。
このような構成を具備した出退動作機構14では、スライド機構51の電動モータ64により送りネジ軸63を駆動回転させることで、この送りネジ軸63と螺合する雌ねじ部65を介してスライダー50に上方移動力又は下方移動力を生じさせ、もってスライダー50をスライド機構51のガイドバー59に沿って上方移動又は下方移動させることができる。
【0032】
スライダー50が上方移動するときには、伝動アーム52が摺動部材54をレール部53に沿って前方へ押し出すようになるので、これによってマッサージ機構10が揺動枢支部11を中心として前方へ突出するように揺動する。従って、左右のマッサージ部材17が前方へ迫り出すようになる。
スライド機構51の電動モータ64を上記とは逆転駆動させると、送りネジ軸63と螺合する雌ねじ部65を介してスライダー50が下方移動するようになる。このときは、伝動アーム52が摺動部材54をレール部53に沿って後方へ引き戻すようになるので、これによってマッサージ機構10が揺動枢支部11を中心として元の状態(後方へ)戻るように揺動する。従って、左右のマッサージ部材17も元の状態(後方)へ戻るようになる。
【0033】
以上詳説したところから明かなように、本発明の椅子型マッサージ機1では、座部2に着座した使用者が、背もたれ部3に背中を押しつけるようにしてもたれ掛かり、その状態で背揉み装置4を作動させることにより、マッサージ機構10の揉み駆動部23による揉みマッサージや叩き駆動部24による叩きマッサージを、左右のマッサージ部材17を介して受けることができる。
そして、使用者の体型やマッサージ位置に関する必要性又は使用者の好みに応じて出退動作機構14を作動させることにより、マッサージ機構10(マッサージ部材17)を通常のマッサージ位置よりも前方へ突出させたり、元の通常位置へ戻したりできる。
【0034】
ここにおいて、本発明の出退動作機構14は、エア方式を採用したものではないために、使用者による後向きの押圧力(もたれ掛かり荷重)にエアセルの膨張力が屈して、マッサージ機構10が押し戻されてしまう問題は起こらない。そのためマッサージ機構10による指圧力(マッサージ効果)の低下や指圧力の位置ズレには繋がらない。勿論、エア流や排気音などによる騒音の問題もない。
またリンク方式を採用したものでもないため、正ネジ部と逆ネジ部とを有する長大なネジ軸は不要であり、パーツとしての高コスト化や装置の大型化が生じる問題もない。
【0035】
また従来の単なるカム方式とは異なって伝動アーム52を具備するものであるから、マッサージ機構10の前後動ストロークを大きく確保できるものである。更に、従来のレバー方式とも異なっているために動作の迅速性が得られており、椅子型マッサージ機1の全体として、一連のマッサージ動作を行うときなどにあって、サイクルタイムを徒に長びかせるおそれもない。
[第2実施形態]
図7乃至図9は、出退動作機構14の第2実施形態を示している。
【0036】
第2実施形態の出退動作機構14は、軸心を左右方向へ向けた回転軸110で偏心カム111を偏心回転させ、このとき、偏心カム111に相対回転自在な状態で外嵌させたハウジング112から伝動アーム52に上下動成分を含んだ動作を起こさせる。
そして更に、この伝動アーム52の下端部に連結させたリンク機構(トグル機構)113により、当該伝動アーム52の上下動成分をリンク機構113の前後伸縮動作に変換させるようにしてある。リンク機構113は、ベース部材12に対して揺動自在に連結された基部リンク115と、マッサージ機構10に対して揺動自在に連結された押出リンク116とが、伝動アーム52の下端部に連結されたものである。基部リンク115及び押出リンク116は、伝動アーム52との連結位置が常に低位側となって傾斜するように、それらの連結位置が設定されている。
【0037】
すなわち、伝動アーム52が上方へ移動するとリンク機構113は前後方向で伸長し、伝動アーム52が下方へ移動するとリンク機構113は前後方向で収縮するようになる。このように、リンク機構113の前後伸縮動作に伴ってその前端部、即ち、押出リンク116とマッサージ機構10との連結位置が前後方向で出たり入ったりするので、このマッサージ機構10(マッサージ部材17)は前後動する。
本第2実施形態では、ベース部材12とマッサージ機構10とを揺動自在に連結する揺動支点部11が、ガイドレール46に沿ってベース部材12を上下移動させるために用いられるガイドローラ45のうち、下側に配置されるものと同じ位置(同一軸心位置)に設けられたものとしてある。従って、この下側のガイドローラ45の回転中心を支点としてマッサージ機構10の前後揺動が行われる。
【0038】
リンク機構113はトグル機構を利用したものであるため、前後方向で伸長すればするほど、マッサージ機構10を前方へ押し出す力が強くなり、使用者による後向きの押圧力(もたれ掛かり荷重)に屈してマッサージ機構10が押し戻されてしまう問題は、完全に払拭されているという利点がある。
なお、偏心カム111は、マッサージ機構10における上端部寄りの左右両側に各1個ずつ設けられており、これら両偏心カム111の相互間が1本の回転軸110で連結され、この回転軸110の中途部にウオームギヤを利用した減速機120が設けられ、この減速機120が正逆回転可能な電動モータ64によって駆動されるようになっている。言うまでもなく、左右の偏心カム111における偏心方向は同じになっており、これら偏心カム111は回転軸110と一体回転(偏心回転)する。
【0039】
第2実施形態の出退動作機構14でも、マッサージ機構10の前後動が円滑且つ安定して行われるように、ベース部材12に対し、マッサージ機構10の左右両脇部を挟持するような配置で前方へ突出するレール部を設けてもよい。
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は前記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、椅子型マッサージ機1としての細部構造(座部2及び背もたれ部3を具備する基本構成以外)や、マッサージ機構10の細部構造などは何ら限定されるものではない。
【0040】
また、椅子型マッサージ機1は、背もたれ部3の内部に、光電センサなどからなる「体部位検出センサ」を有していてもよい。このセンサにより、例えば、使用者の肩位置を検出し、検出された使用者の肩位置を基に、使用者の肩の位置にあっては、マッサージ機構10の上端部(揉み玉21)を前方向に突出させ、使用者の腰の位置(肩位置より所定距離だけ下方部位)にあっては、マッサージ機構10の上端部(揉み玉21)を後方向に退行させるよう制御してもよい。かかる制御は、椅子型マッサージ機1に設けられた制御部により行うとよい。
【符号の説明】
【0041】
1 椅子型マッサージ機
2 座部
3 背もたれ部
4 背揉み装置
10 マッサージ機構
11 揺動枢支部
12 ベース部材
13 上下移動機構
14 出退動作機構
17 マッサージ部材
18 駆動部
50 スライダー
51 スライド機構
52 伝動アーム
53 レール部
54 摺動部材
63 送りネジ軸
64 モータ
65 雌ねじ部
67 枢支軸(第1枢支軸)
68 リンク接合部
70 リンク接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
椅子型マッサージ機の背もたれ部に配設された背揉み装置であって、
左右一対のマッサージ部材とこのマッサージ部材にマッサージ動作を伝動する駆動部とを有するマッサージ機構と、
このマッサージ機構の下端部を揺動枢支部で支持することで当該マッサージ機構を前後揺動自在に保持するベース部材と、
このベース部材を前記背もたれ部内で上下方向に移動可能にする上下移動機構と、
前記ベース部材に対して、マッサージ機構の上端部を前後方向に出退させる出退動作機構と、
を有していることを特徴とする椅子型マッサージ機に備えられた背揉み装置。
【請求項2】
前記出退動作機構は、前記ベース部材に対して上下移動自在に設けられたスライダーと、このスライダーを上下移動させるスライド機構と、
前記マッサージ機構の上端部及び前記スライダーに対してそれぞれ回動自在に枢支され且つ前記スライダーとマッサージ機構とを連結する伝動アームと、
前記ベース部材からマッサージ機構の側部に沿って前方へ延び出す状態で設けられたレール部と、
前記マッサージ機構からレール部へ向けて突出状に設けられて前記レール部に沿って移動自在となるように係合する摺動部材と、
を有していることを特徴とする請求項1に記載の椅子型マッサージ機に備えられた背揉み装置。
【請求項3】
前記レール部は、前記揺動枢支部を中心とする上膨らみ形の円弧カーブで形成されていることを特徴とする請求項2に記載の椅子型マッサージ機に備えられた背揉み装置。
【請求項4】
前記マッサージ機構に対して摺動部材が設けられる位置と、前記伝動アームがマッサージ機構に枢支される枢支軸とが、この枢支軸の軸心上で同軸配置とされていることを特徴とする請求項2又は3に記載の椅子型マッサージ機に備えられた背揉み装置。
【請求項5】
前記スライド機構は、前記スライダーに設けられた上下方向に貫通する雌ねじ部と、この雌ねじ部に螺合する送りネジ軸と、この送りネジ軸を駆動回転する電動モータとを有していることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の椅子型マッサージ機に備えられた背揉み装置。
【請求項6】
座部と、座部の後部に設けられ且つ請求項1〜5のいずれか1項に記載された背揉み装置を内蔵した背もたれ部と、使用者の体部位を検出可能なセンサと、有する椅子型マッサージ機において、
前記センサで検出した結果を基に、前記背揉み装置の出退動作機構を作動させる制御部を備えていることを特徴とする椅子型マッサージ機。
【請求項7】
前記制御部は、前記センサにより検出された使用者の肩位置を基に、使用者の肩の位置にあっては、マッサージ機構の上端部を前方向に突出させ、使用者の腰の位置にあっては、マッサージ機構の上端部を後方向に退行させるよう構成されていることを特徴とする請求項6に記載の椅子型マッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−252905(P2010−252905A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104003(P2009−104003)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(592009214)大東電機工業株式会社 (106)
【出願人】(508360604)エムテック株式会社 (7)
【Fターム(参考)】