椅子用弾力装置及び椅子
【課題】固定部材と可動部材の間に介装され使用者から受ける荷重によって可動部材が傾動した場合に弾力を作用させる椅子用弾力装置であって、固定部材に片持ち梁状に支持されると共に自由端側で可動部材を付勢する板バネと、板バネが弾性変形する際の支点となり且つ板バネが初期位置にある状態で板バネに沿って移動可能な変動支点部材とを有し、変動支点部材を移動させて板バネの支点と可動部材との接触点までの距離を増減させることにより、板バネの弾力を調節し得るようにしたものがあるが、前記変動支点部材の移動距離が限定されるため、板バネの弾力の調節可能範囲が狭い、という問題があった。
【解決手段】前記椅子用弾力装置10Bにおいて、板バネ14の前記変動支点部材15の移動範囲内に幅及び/又は厚さを自由端側14aより固定端側14bを小さくするための変断面部14eを設けるようにした。
【解決手段】前記椅子用弾力装置10Bにおいて、板バネ14の前記変動支点部材15の移動範囲内に幅及び/又は厚さを自由端側14aより固定端側14bを小さくするための変断面部14eを設けるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定部材とその固定部材に傾動可能に軸着した可動部材とを有する椅子に使用され、前記可動部材の動きに弾力を付与するための椅子用弾力装置に関し、また、その弾力装置を備えた椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
支脚の頂部に固着した座台を固定部材とし、一方、その座台に傾動可能に軸着した座部を可動部材とし、前記座台と座部の間に介装して座部の動きに弾力を付与する弾力装置を備えた椅子が、例えば特許文献1に記載されている。
【特許文献1】実公平4−36675号公報
【0003】
この特許文献1の椅子は、図12に示したように、支脚1の頂部に固着した座台2と、その座台2の前端に揺動軸3で後傾可能に軸着した座部4(正確には、座板4aの底に一体に固着される支持金具4b)と、座部4の後端に取り付けられる背凭れ(図示せず)と、前記座部4に弾力を付与する椅子用弾力装置100と、から概略構成される。
【0004】
前記椅子用弾力装置100は、座台2の前端に一端を固定して片持ち梁状に支持されさらに自由端101a側で前記座部4の後端を上向きに付勢する等幅帯板状の板バネ101と、前記板バネ101が弾性変形する際の支点となり且つその板バネ101が使用者からの荷重を受けない初期位置にある図12の状態で板バネ101沿いに移動可能な枕状の変動支点部材102とを有し、その変動支点部材102を図12矢示Xのように移動させて板バネ101の支点と座部4との接触点までの距離を変化させ、もって前記板バネ101の弾力の強弱を調節するようにしたものである。
【0005】
上記椅子用弾力装置100を模式図にして簡単に現したのが図13(a)〜(c)である。同図において、δ=撓み、W=使用者からの荷重、L=支点から荷重の作用点までの距離、b=板バネの幅、h=板バネの厚さである。図13(c)のように板バネ101の自由端に使用者による荷重Wを受けた場合の撓みδは、図13(b)のように変動支点部材102を移動させることにより調節でき、その撓みδの大きさは、変動支点部材102が図13(a)にある位置から図13(b)の位置に近づくほど小さく、つまり板バネ101の弾力が強くなって座部4の動きが固くなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の椅子用弾力装置100は、その大きさが座部4の大きさの範囲内に限られ、必然的に図13(a),(b)の距離L1と距離L2の差が限定されるから、板バネ101の弾力の調節可能範囲が非常に狭い、という問題がある。このことは、対応可能な体重の範囲が限定されることを意味するから、量産品としては致命的な問題である。
また、背凭れを揺動自在にして可動部材とする椅子に前記椅子用弾力装置を組み込んだものもあるが、その場合でも事情は同じである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載したように、固定部材と、該固定部材に傾動可能に軸着される可動部材との間に介装され、使用者から受ける荷重によって前記可動部材が傾動した場合にその傾動を妨げる向きに弾力を作用させる椅子用弾力装置であって、
前記固定部材に一端を固定して片持ち梁状に支持されると共に自由端側で前記可動部材を付勢する板バネと、
前記板バネが弾性変形する際の支点となり且つ該板バネが使用者からの荷重を受けない初期位置にある状態で板バネに沿って移動可能な変動支点部材とを有し、
前記変動支点部材を移動させて板バネの支点と可動部材との接触点までの距離を増減させることにより、前記板バネの弾力を調節し得るようにした椅子用弾力装置において、
少なくとも前記板バネの前記変動支点部材の移動範囲内に、幅及び/又は厚さを自由端側より固定端側を小さくするための変断面部を設けた椅子用弾力装置を提供する。
【0008】
また、請求項2に記載したように、前記板バネの自由端から前記変動支点部材までの間に、板バネと変動支点部材の間の接触圧を軽減させるか又は両者の間にクリアランスが形成される向きに力を付与する弾性手段を設け、
その弾性手段は、使用者からの荷重を受けない初期状態の板バネに対し可動部材自体から受ける荷重に対抗して板バネが所定の姿勢を保ち得るように力を付与し、一方、着座した使用者からの荷重を前記板バネを介して受けた場合に板バネと共に弾性変形するものである請求項1記載の椅子用弾力装置を提供する。
【0009】
また、請求項3に記載したように、前記板バネの固定端から前記変動支点部材の区間に対応させて曲がり止め部材を設け、その曲がり止め部材によって前記板バネの自由端側の撓みに伴い生じ得る前記区間の変形を抑制するようにした請求項1又は2記載の椅子用弾力装置を提供する。
【0010】
また、請求項4に記載したように、前記請求項1乃至3の何れか1項に記載の椅子用弾力装置を備え、前記固定部材が支脚と一体の座台であり、一方、前記可動部材が前記座台に対し揺動自在に取り付けられた背凭れである椅子を提供する。
【0011】
また、請求項5に記載したように、前記請求項1乃至3の何れか1項に記載の椅子用弾力装置を備え、前記固定部材が支脚と一体の座台であり、一方、前記可動部材が前記座台に対し揺動自在に取り付けられた座部である椅子を提供する。
【発明の効果】
【0012】
変動支点部材を変断面部で自由端側から固定端側に向けて移動させると、板バネは、図1(a)〜(c)のように、前記距離がL1→L2→L3へと増加し、同時に幅がb1→b2→b3へと減少し、その両変化が相乗的に作用し合うから、板バネの自由端の撓みδが劇的に増加する。このように板バネの弾力の調節範囲が従来に比べて格段に広がるため、幅広い体重の使用者に対応できる。
【0013】
また、請求項2のように、前記板バネの自由端から前記変動支点部材までの間に、板バネと変動支点部材の間の接触圧を軽減させるか又はクリアランスが形成される向きに力を付与する弾性手段を設け、使用者からの荷重を受けない初期状態の板バネに対し可動部材自体から受ける荷重に対抗して板バネが所定の姿勢を保ち得るように力を付与するようにしたため、板バネと変動支点部材の間の摩擦抵抗を零か又は非常に小さくすることができる。従って、変動支点部材の移動が軽やかに行える。一方、板バネが使用者からの荷重を受けた場合には、板バネと共に弾性手段が弾性変形するため、板バネの機能は損なわれない。また、板バネの曲がりは変動支点部材を支点にするため、その際加わる力によって変動支点部材に大きな摩擦抵抗が作用する。従って、使用者が座部に座って可動部材に荷重を加えている間、変動支点部材が動いて使用中自然に可動部材の弾力が変わってしまう、という不具合が殆ど生じない。
【0014】
また、請求項3のように、板バネの固定端から前記変動支点部材の区間に対応させて曲がり止め部材を設け、その曲がり止め部材によって前記板バネの自由端側の撓みに伴い生じ得る前記区間の変形を抑制するようにした場合には、変動支点部材の位置を変えたことによる板バネの撓みの変化が確実に現れる。ちなみに曲がり止め部材のない特許文献1のような弾力装置では、板バネの自由端側の撓みに伴い板バネの固定端から変動支点部材の区間がアーチ形に曲がるため、変動支点部材の位置を変えても板バネの撓みの変化が現れにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[実施形態1]
以下に本発明の実施形態1を図1,図2に基づき説明する。なお、図1(a)〜(c)は椅子用弾力装置の斜視図、図2(a)〜(c)は板バネを示す斜視図である。
【0016】
実施形態1の椅子は、椅子用弾力装置10Aを除いて図12と同様であるため、説明を省略する。
【0017】
[椅子用弾力装置]
実施形態1の椅子用弾力装置10Aは、図1(a)〜(c)に示したように、平板状の横板11とその横板11の一端に直角上向きに突設した縦板12とからなる正面視略L字形の固定部材13に対し、その固定部材13の前記縦板12の高さの途中に一端を固定して片持ち梁状に支持されると共に自由端14a側で可動部材たる前記座部4を前記横板11から離れる方向に付勢する板バネ14と、前記板バネ14が弾性変形する際の支点となり且つその板バネ14が使用者からの荷重を受けない初期位置にある図1(a)〜(c)の状態で前記横板11上を摺動して板バネ14沿いに移動可能な変動支点部材15と、その変動支点部材15の上部に形成される曲がり止め部材16と、から概略構成される。
【0018】
[板バネ]
前記板バネ14は、厚さ一様で、図2(a)に示したように固定端14b側を小さい幅の小幅部14cとし、自由端14a側を大きい幅の大幅部14dとし、さらに小幅部14cと大幅部14dの間をテーパ状の変断面部14eとし、全体として略羽子板形状になっている。
【0019】
[変動支点部材と曲がり止め部材]
前記変動支点部材15と曲がり止め部材16は一体構造であり、両者の境界部に形成した横長の貫通穴17に前記板バネ14が通されている。この貫通穴17は、板バネ14の大幅部14dとほぼ同じ横幅である。また、この貫通穴17は、板バネ14の板厚より若干大きい縦幅に形成されていて、板バネ14の上下両面に対して適度なクリアランスが出来るようになっている。従って、板バネ14が使用者からの荷重を受けない初期位置にある図1の状態で板バネ14と貫通穴17は接することがなく、よって板バネ14が前記初期位置にある状態において変動支点部材15の移動はスムーズである。なお、変動支点部材15の移動は、例えば後述する実施形態2のように変動支点部材15に回動自在な操作レバー18を係合させて行ったり、或は変動支点部材15の上面にラックギヤを形成し、そのラックギヤに噛合させたピニオンギヤをハンドルで回転させて行う。
【0020】
[使用方法]
次に、実施形態1の椅子の使用方法について説明する。なお、椅子用弾力装置10Aの変動支点部材15の位置は、図1(a)の位置にあるものとする。
【0021】
まず、使用者が椅子の座部4に座ると、その座部4が揺動軸3を中心に後傾する。そうすると、座部4の後側が椅子用弾力装置10Aの板バネ14の自由端14a側を押圧して弾性変形させる。このとき板バネ14は、変動支点部材15の貫通穴17の自由端14a側の端を支点に曲がる。一方、この板バネ14の自由端14a側の曲がりの反動で、板バネ14の固定端14bから前記支点までの間には、同部位をアーチ形に変形させる成分の応力が作用するが、実施形態1では変動支点部材15の直上に設けた曲がり止め部材16が、板バネ14のアーチ形の変形を抑制するため、変動支点部材15から固定端14bの間において板バネ14は殆ど変形しない。従って、板バネ14の実質的な固定端は変動支点部材15の貫通穴17の端と考えることができるから、図1(a)の状態で板バネ14の強さは最大であり、座部4の弾力は重い体重の使用者に適する。
【0022】
次に、前記使用者より軽い体重の使用者が座部4に座る場合は、座部4に座らない状態、すなわち板バネ14に使用者の荷重を加えない初期状態で変動支点部材15を図1(b)の位置に滑らせて移動させる。そうすると変動支点部材15の自由端14a側の端(支点)から荷重の作用点までの距離がL1からL2に増加し、一方、変動支点部材15の端の板バネ14の幅がb1からb2に減少し、前記距離のL1からL2への増加と、幅のb1からb2への減少が相乗的に作用し合うから、板バネ14のしなりやすさが劇的に増大し、軽い体重の使用者に適合した柔らかな弾力が得られる。
【0023】
もちろんさらに軽い体重の使用者の場合は、変動支点部材15を図1(b)の位置から図1(c)の位置へと摺動させればよい。なお、図1(c)の状態において板バネ14の強さは最小であり、座部4の弾力は軽い体重の使用者に適する。
【0024】
以上、変動支点部材15の位置を図1(a),(b),(c)の3段階に分けて説明したが、実施形態1の変断面部14eはテーパ状であって変動支点部材15の位置に応じて連続的に変化するため、変動支点部材15をどの位置に止めても座部4の弾力の変化が実感できる。
【0025】
また、実施形態1では板バネ14を羽子板形状にした例を示したが、その他にも、図2(b)に示したように変断面部14eの端から自由端14aに向けて平面視三角形に形成し、全体として平面視略菱形に形成すると共にそのうちの鋭角をなす一つの角部側を固定端14bにする、というようにしてもよい。かかる形状である図2(b)の板バネ14は、図2(a)のように自由端14e側が等幅である板バネ14に比べて撓みやすさが増すため、全長を短くコンパクトにすることができる。
【0026】
[実施形態2]
図3〜図9は、本発明の実施の形態2を示すものである。なお、図3は座部を省略した椅子要部の斜視図、図4は図3の分解斜視図、図5は要部の縦断面図、図6は要部の横断平面図、図7(a),(b)は板バネの斜視図、図8(a),(b)は弾力を最大にした状態を示す要部の縦断面図と横断平面図、図9(a),(b)は弾力を最小にした状態を示す要部の縦断面図と横断平面図である。
【0027】
[椅子]
実施形態2の椅子は、支脚1の頂部に固着した座台2と、その座台2の上面に固着した座板4aと、前記座台2の後端に支軸5で揺動自在に取り付けた背凭れ6と、該背凭れ6に弾力を付与する椅子用弾力装置10Bと、から概略構成される。
【0028】
[座台(固定部材)]
前記座台2は、実施形態2において固定部材を構成するものであり、長方形の底板2aと、その底板2aの上面に固着された逆さ凹字形のバネ取付部材2bと、底板2aの両側に立ち上げた側板2c,2cと、さらにその側板2c,2cの上縁を外向きに屈曲させた座板取付片2d,2dと、底板2a上に突設した弾性ストッパー2eと、を有する。
【0029】
[背凭れ(可動部材)]
前記背凭れ6は、実施形態2において可動部材を構成するものであり、側面視略L字形である左右2本の背凭れパイプ6a,6aの先端に支軸5を通し、その支軸5の両端を前記座台2の側板2c,2cに回動自在に挿通させ、そうして全体を支軸5を中心に揺動させ得るようにしたものである。なお、左右2本の背凭れパイプ6a,6aの間には、前記支軸5と平行に下横杆6bと上横杆6cが固着されている。
【0030】
[椅子用弾力装置]
前記椅子用弾力装置10Bは、前記座台2のバネ取付部材2bに対し、そのバネ取付部材2bの天井板2f内面に一端を固定して片持ち梁状に支持されると共に自由端14a側で前記背凭れ6を付勢する板バネ14と、前記板バネ14が弾性変形する際の支点となり且つその板バネ14が使用者からの荷重を受けない初期状態にある状態で前記底板2a上を摺動して板バネ14沿いに移動可能な変動支点部材15と、前記座台2の一つの側板2cを貫く状態で底板2a上に回動自在に軸着される変動支点部材15用の操作レバー18と、板バネ14と変動支点部材15の間に適度なクリアランスを設けるための弾性手段19と、から概略構成される。
【0031】
[板バネ]
実施形態2の板バネ14は、図7(a)に示したように、固定端14b側を、外幅一定で内部に割口14fを設けた二股部14gとし、一方、自由端14a側を、先細りの三角部14hとし、さらに二股部14gの先端から三角部14hの起点までの間を、テーパ状に切り欠いた三角切欠14iによって形成される変断面部14eとしたものである。
この板バネ14は、固定端14b側が前記バネ取付部材2bの天井板2fの内側に整合する形状になっており、そのバネ取付部材2bの天井板2fに二股部14gを嵌めてボルト締めし、もってバネ取付部材2bを介して固定部材たる座台2に固着される。また、バネ取付部材2bに取り付いた状態で板バネ14は、二股部14gと変断面部14eがバネ取付部材2bの天井板2fで覆われる。
また、板バネ14の自由端14a側の端部は、前記背凭れ6の下横杆6bの下に当接し、一方、弾性変形したとき座台2の前記弾性ストッパー2eに当たるようになっている。
【0032】
[変動支点部材]
前記変動支点部材15は、図4に示したように、横長直方体形状で前記バネ取付部材2bの内部に横断状に収まる枕部材15aと、その枕部材15aの後方に突設した連結片15bと、枕部材15aと連結片15bの上面に突設したガイド部15cと、前記枕部材15aの前方に固着したL字形のバネ台座15dとで構成される。
【0033】
変動支点部材15の前記連結片15bは、その後端部に上下方向に貫く長孔15eを有し、その長孔15eに前記操作レバー18の端部に上向きに植設した連結ピン18aが遊嵌されている。
一方、変動支点部材15の前記ガイド部15cは、前記板バネ14のほぼ板厚相当分の高さを有すると共に、板バネ14の前記割口14fと変断面部14eの三角切欠14iにほぼ合致する平面視略五角形状のものであり、板バネ14の割口14fに摺動可能な程度の嵌め合いでぴったり収まることにより、変動支点部材15の動きを直線運動に規制する。従って、図6のように座台2の横に突出する操作レバー18を回動操作すると、その力が連結ピン18aと長孔15eを介して連結片15bに伝達され、その力を受けた変動支点部材15がガイド部15cに案内されて直線方向に移動する。
【0034】
なお、上記のように、板バネ14に二股部14gを形成し、その二股部14gに対して変動支点部材15の上面に突設したガイド部15cを嵌め、そうして変動支点部材15の動きを真っ直ぐ規制するようにした構成は、板バネ14に変断面部14eを形成する上で必要な二股部14gと、変動支点部材15と操作レバー18とを連結する上で必要な連結片15bとを有効に利用し、これらにガイド部15cを付加するだけでよいから、簡単で無駄がなく低コストにできる優位性がある。
【0035】
[弾性手段]
前記弾性手段19は、前記枕部材15aの前面に固着したバネ台座15dの先端にコイルバネ19aを固着し、さらにそのコイルバネ19aの上端に頂部が球面である接触子19bを取り付け、コイルバネ19aの弾性で板バネ14の自由端14a側にその板バネ14を持ち上げる向きの力を付与するようにしたものであり、これにより使用者からの荷重を受けない初期位置にある板バネ14が、背凭れ6自体の荷重で撓まないように支えることができる。従って、板バネ14と変動支点部材15の間に適度なクリアランスを設けてそれを維持することができるから、変動支点部材15が板バネ14に擦れて動きにくくなる、というおそれがない。また、板バネ14と変動支点部材15の間にクリアランスがない場合でも、弾性手段19によって両者の接触圧を軽減させることができるから、変動支点部材15に作用する摩擦抵抗を低減させることが可能である。
【0036】
[曲がり止め部材]
前記のように板バネ14の固定端14bから変断面部14eまでの区間はバネ取付部材2bの天井板2fによって覆われている。従って板バネ14は、自由端14a側が変動支点部材15の枕部材15aを支点に撓んでも、バネ取付部材2bで覆われた部分では天井板2fに当たって曲がり得ない。よって実施形態2のバネ取付部材2bは、板バネ14の自由端14a側の撓みに伴い生じ得る前記区間の変形を抑止する曲がり止め部材としても機能する。
【0037】
[使用方法]
次に、実施形態2の椅子の使用方法について説明する。なお、椅子用弾力装置10Bの変動支点部材15の位置は、図8に示した最も自由端14a側にあるものとする。
【0038】
実施形態2の椅子は、使用者が座部4に着座し、背凭れ6に寄りかかって体重を掛けると背凭れ6が支軸5を中心に後傾する。そうすると図5想像線のように、背凭れパイプ6aの下横杆6bが椅子用弾力装置10Bの板バネ14の自由端14a側を押圧して弾性変形させる。このとき板バネ14は、変動支点部材15の枕部材15aの上コーナー部を支点に曲がる。一方、この板バネ14の自由端14a側の曲がりの反動で、板バネ14の固定端14bから前記支点までの間には、同部位をアーチ形に変形させる成分の応力が作用するが、実施形態2ではバネ取付部材2bの天井板2fが、板バネ14のアーチ形の変形を抑制するため、変動支点部材15から固定端14bの間において板バネ14は殆ど変形しない。従って、板バネ14の実質的な固定端は変動支点部材15の端と考えることができるから、図8の状態において板バネ14の強さは最大であり、背凭れ6の弾力は重い体重の使用者或は背凭れ6の動きを重くしたい使用者に適する。
【0039】
次に、前記の使用者より軽い体重の使用者が使用する場合か、或は背凭れ6の弾力を柔らかく変更したいと使用者が希望する場合は、背凭れ6に寄りかからない姿勢で座り、板バネ14に使用者の荷重を加えない初期状態にして操作レバー18を回動させ、変動支点部材15を図9の位置に摺動させる。そうすると変動支点部材15の自由端14a側の端(支点)から荷重の作用点までの距離が増加し、一方、変動支点部材15の端(支点)に接する板バネ14の幅が減少し、前記距離の増加と幅の減少が相乗的に作用し合うから、板バネ14の強さが劇的に変化し、柔らかな弾力が得られる。
【0040】
なお、実施形態1でも説明したように、板バネ14の変断面部14eはテーパ状であって変動支点部材15の位置に応じてその幅が連続的に変化するため、変動支点部材15の位置調節は無段階に行える。
【0041】
また、実施形態2では板バネ14の自由端14a側を三角部14hにしたが、図7(b)のように自由端14a側を等幅帯板形態にしてももちろんよい。
【0042】
[実施形態3]
図10(a)〜(c)は、実施形態3の椅子用弾力装置10Cを示すものであり、板バネ14の厚さを段階的に変えるべく変断面部14eを階段状にした例である。この変断面部14eに対し、バネ取付部材2bの天井板2f(曲がり止め部材16)は内面が逆階段状になっており、従って板バネ14の変断面部14eと天井板2fは密着する。
この椅子用弾力装置10Cは、変動支点部材15を移動させることにより板バネ14の厚さを段階的に変えることができるため、実施形態1,2と同じく板バネ14の弾力を劇的に変化させることができる。
なお、図11に示したように変断面部14eを自由端14a側から固定端14b側に向けて薄くなるテーパ状にすれば、板バネ14の厚さを連続的に変えることもできる。
【0043】
以上本発明を実施形態1〜3について説明したが、もちろん本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、実施形態2,3の椅子用弾力装置10B,10Cで実施形態1のように座部4の弾力を調節したり、また、実施形態1の椅子用弾力装置10Aで背凭れ6の弾力を調節したりすることもできる。
【0044】
また、実施形態1〜3は、板バネ14の幅と厚さの何れか一方を変えるようにしたが、実施形態1+実施形態3や、実施形態2+実施形態3のようにして、板バネ14の幅と厚さを一緒に変化させるようにしてもよい。
また、実施形態1〜3では、板バネ14を長手方向の中心線に対して対称な形態にしたが、例えば図2(c)に示したように、板バネ14をほぼ同中心線から切断したような形態にしてもよい。そうすることにより座台2の内部に他の部品(例えば支脚1の高さ調節装置等)を設置するためのスペースが作りやすい。
【0045】
また、実施形態2の弾性手段19は、変動支点部材15と一体のバネ台座15dに設けて変動支点部材15と一緒に移動する構成にしたが、例えば座台2の底板2aに固定的に設けるようにしてもよい。また、弾性手段19のバネの種類もコイルバネに限定されない。
【0046】
また、実施形態1,2の変断面部14eは、直線的なテーパで構成したが、弧状のカーブで輪郭を構成したり、ぎざぎざの輪郭にするなどしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】(a)〜(c)は椅子用弾力装置の斜視図である。
【図2】(a)〜(c)は板バネを示す斜視図である。
【図3】座部を省略した椅子要部の斜視図である。
【図4】図3の分解斜視図である。
【図5】要部の縦断面図である。
【図6】要部の横断平面図である。
【図7】(a),(b)は板バネの斜視図である。
【図8】(a),(b)は弾力を最大にした状態を示す要部の縦断面図と横断平面図である。
【図9】(a),(b)は弾力を最小にした状態を示す要部の縦断面図と横断平面図である
【図10】(a)〜(c)は椅子用弾力装置の縦断面図である。
【図11】(a)〜(c)は椅子用弾力装置の縦断面図である。
【図12】従来の椅子を示す要部の縦断面図である。
【図13】(a)〜(c)は椅子用弾力装置を簡単にして示す斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
1 …支脚
2 …座台(固定部材)
2b …バネ取付部材(曲がり止め部材)
4 …座部(可動部材)
6 …背凭れ(可動部材)
10A,10B,10C …椅子用弾力装置
13 …固定部材
14 …板バネ
14a …自由端
14b …固定端
14e …変断面部
15 …変動支点部材
16 …曲がり止め部材
19 …弾性手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定部材とその固定部材に傾動可能に軸着した可動部材とを有する椅子に使用され、前記可動部材の動きに弾力を付与するための椅子用弾力装置に関し、また、その弾力装置を備えた椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
支脚の頂部に固着した座台を固定部材とし、一方、その座台に傾動可能に軸着した座部を可動部材とし、前記座台と座部の間に介装して座部の動きに弾力を付与する弾力装置を備えた椅子が、例えば特許文献1に記載されている。
【特許文献1】実公平4−36675号公報
【0003】
この特許文献1の椅子は、図12に示したように、支脚1の頂部に固着した座台2と、その座台2の前端に揺動軸3で後傾可能に軸着した座部4(正確には、座板4aの底に一体に固着される支持金具4b)と、座部4の後端に取り付けられる背凭れ(図示せず)と、前記座部4に弾力を付与する椅子用弾力装置100と、から概略構成される。
【0004】
前記椅子用弾力装置100は、座台2の前端に一端を固定して片持ち梁状に支持されさらに自由端101a側で前記座部4の後端を上向きに付勢する等幅帯板状の板バネ101と、前記板バネ101が弾性変形する際の支点となり且つその板バネ101が使用者からの荷重を受けない初期位置にある図12の状態で板バネ101沿いに移動可能な枕状の変動支点部材102とを有し、その変動支点部材102を図12矢示Xのように移動させて板バネ101の支点と座部4との接触点までの距離を変化させ、もって前記板バネ101の弾力の強弱を調節するようにしたものである。
【0005】
上記椅子用弾力装置100を模式図にして簡単に現したのが図13(a)〜(c)である。同図において、δ=撓み、W=使用者からの荷重、L=支点から荷重の作用点までの距離、b=板バネの幅、h=板バネの厚さである。図13(c)のように板バネ101の自由端に使用者による荷重Wを受けた場合の撓みδは、図13(b)のように変動支点部材102を移動させることにより調節でき、その撓みδの大きさは、変動支点部材102が図13(a)にある位置から図13(b)の位置に近づくほど小さく、つまり板バネ101の弾力が強くなって座部4の動きが固くなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の椅子用弾力装置100は、その大きさが座部4の大きさの範囲内に限られ、必然的に図13(a),(b)の距離L1と距離L2の差が限定されるから、板バネ101の弾力の調節可能範囲が非常に狭い、という問題がある。このことは、対応可能な体重の範囲が限定されることを意味するから、量産品としては致命的な問題である。
また、背凭れを揺動自在にして可動部材とする椅子に前記椅子用弾力装置を組み込んだものもあるが、その場合でも事情は同じである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載したように、固定部材と、該固定部材に傾動可能に軸着される可動部材との間に介装され、使用者から受ける荷重によって前記可動部材が傾動した場合にその傾動を妨げる向きに弾力を作用させる椅子用弾力装置であって、
前記固定部材に一端を固定して片持ち梁状に支持されると共に自由端側で前記可動部材を付勢する板バネと、
前記板バネが弾性変形する際の支点となり且つ該板バネが使用者からの荷重を受けない初期位置にある状態で板バネに沿って移動可能な変動支点部材とを有し、
前記変動支点部材を移動させて板バネの支点と可動部材との接触点までの距離を増減させることにより、前記板バネの弾力を調節し得るようにした椅子用弾力装置において、
少なくとも前記板バネの前記変動支点部材の移動範囲内に、幅及び/又は厚さを自由端側より固定端側を小さくするための変断面部を設けた椅子用弾力装置を提供する。
【0008】
また、請求項2に記載したように、前記板バネの自由端から前記変動支点部材までの間に、板バネと変動支点部材の間の接触圧を軽減させるか又は両者の間にクリアランスが形成される向きに力を付与する弾性手段を設け、
その弾性手段は、使用者からの荷重を受けない初期状態の板バネに対し可動部材自体から受ける荷重に対抗して板バネが所定の姿勢を保ち得るように力を付与し、一方、着座した使用者からの荷重を前記板バネを介して受けた場合に板バネと共に弾性変形するものである請求項1記載の椅子用弾力装置を提供する。
【0009】
また、請求項3に記載したように、前記板バネの固定端から前記変動支点部材の区間に対応させて曲がり止め部材を設け、その曲がり止め部材によって前記板バネの自由端側の撓みに伴い生じ得る前記区間の変形を抑制するようにした請求項1又は2記載の椅子用弾力装置を提供する。
【0010】
また、請求項4に記載したように、前記請求項1乃至3の何れか1項に記載の椅子用弾力装置を備え、前記固定部材が支脚と一体の座台であり、一方、前記可動部材が前記座台に対し揺動自在に取り付けられた背凭れである椅子を提供する。
【0011】
また、請求項5に記載したように、前記請求項1乃至3の何れか1項に記載の椅子用弾力装置を備え、前記固定部材が支脚と一体の座台であり、一方、前記可動部材が前記座台に対し揺動自在に取り付けられた座部である椅子を提供する。
【発明の効果】
【0012】
変動支点部材を変断面部で自由端側から固定端側に向けて移動させると、板バネは、図1(a)〜(c)のように、前記距離がL1→L2→L3へと増加し、同時に幅がb1→b2→b3へと減少し、その両変化が相乗的に作用し合うから、板バネの自由端の撓みδが劇的に増加する。このように板バネの弾力の調節範囲が従来に比べて格段に広がるため、幅広い体重の使用者に対応できる。
【0013】
また、請求項2のように、前記板バネの自由端から前記変動支点部材までの間に、板バネと変動支点部材の間の接触圧を軽減させるか又はクリアランスが形成される向きに力を付与する弾性手段を設け、使用者からの荷重を受けない初期状態の板バネに対し可動部材自体から受ける荷重に対抗して板バネが所定の姿勢を保ち得るように力を付与するようにしたため、板バネと変動支点部材の間の摩擦抵抗を零か又は非常に小さくすることができる。従って、変動支点部材の移動が軽やかに行える。一方、板バネが使用者からの荷重を受けた場合には、板バネと共に弾性手段が弾性変形するため、板バネの機能は損なわれない。また、板バネの曲がりは変動支点部材を支点にするため、その際加わる力によって変動支点部材に大きな摩擦抵抗が作用する。従って、使用者が座部に座って可動部材に荷重を加えている間、変動支点部材が動いて使用中自然に可動部材の弾力が変わってしまう、という不具合が殆ど生じない。
【0014】
また、請求項3のように、板バネの固定端から前記変動支点部材の区間に対応させて曲がり止め部材を設け、その曲がり止め部材によって前記板バネの自由端側の撓みに伴い生じ得る前記区間の変形を抑制するようにした場合には、変動支点部材の位置を変えたことによる板バネの撓みの変化が確実に現れる。ちなみに曲がり止め部材のない特許文献1のような弾力装置では、板バネの自由端側の撓みに伴い板バネの固定端から変動支点部材の区間がアーチ形に曲がるため、変動支点部材の位置を変えても板バネの撓みの変化が現れにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[実施形態1]
以下に本発明の実施形態1を図1,図2に基づき説明する。なお、図1(a)〜(c)は椅子用弾力装置の斜視図、図2(a)〜(c)は板バネを示す斜視図である。
【0016】
実施形態1の椅子は、椅子用弾力装置10Aを除いて図12と同様であるため、説明を省略する。
【0017】
[椅子用弾力装置]
実施形態1の椅子用弾力装置10Aは、図1(a)〜(c)に示したように、平板状の横板11とその横板11の一端に直角上向きに突設した縦板12とからなる正面視略L字形の固定部材13に対し、その固定部材13の前記縦板12の高さの途中に一端を固定して片持ち梁状に支持されると共に自由端14a側で可動部材たる前記座部4を前記横板11から離れる方向に付勢する板バネ14と、前記板バネ14が弾性変形する際の支点となり且つその板バネ14が使用者からの荷重を受けない初期位置にある図1(a)〜(c)の状態で前記横板11上を摺動して板バネ14沿いに移動可能な変動支点部材15と、その変動支点部材15の上部に形成される曲がり止め部材16と、から概略構成される。
【0018】
[板バネ]
前記板バネ14は、厚さ一様で、図2(a)に示したように固定端14b側を小さい幅の小幅部14cとし、自由端14a側を大きい幅の大幅部14dとし、さらに小幅部14cと大幅部14dの間をテーパ状の変断面部14eとし、全体として略羽子板形状になっている。
【0019】
[変動支点部材と曲がり止め部材]
前記変動支点部材15と曲がり止め部材16は一体構造であり、両者の境界部に形成した横長の貫通穴17に前記板バネ14が通されている。この貫通穴17は、板バネ14の大幅部14dとほぼ同じ横幅である。また、この貫通穴17は、板バネ14の板厚より若干大きい縦幅に形成されていて、板バネ14の上下両面に対して適度なクリアランスが出来るようになっている。従って、板バネ14が使用者からの荷重を受けない初期位置にある図1の状態で板バネ14と貫通穴17は接することがなく、よって板バネ14が前記初期位置にある状態において変動支点部材15の移動はスムーズである。なお、変動支点部材15の移動は、例えば後述する実施形態2のように変動支点部材15に回動自在な操作レバー18を係合させて行ったり、或は変動支点部材15の上面にラックギヤを形成し、そのラックギヤに噛合させたピニオンギヤをハンドルで回転させて行う。
【0020】
[使用方法]
次に、実施形態1の椅子の使用方法について説明する。なお、椅子用弾力装置10Aの変動支点部材15の位置は、図1(a)の位置にあるものとする。
【0021】
まず、使用者が椅子の座部4に座ると、その座部4が揺動軸3を中心に後傾する。そうすると、座部4の後側が椅子用弾力装置10Aの板バネ14の自由端14a側を押圧して弾性変形させる。このとき板バネ14は、変動支点部材15の貫通穴17の自由端14a側の端を支点に曲がる。一方、この板バネ14の自由端14a側の曲がりの反動で、板バネ14の固定端14bから前記支点までの間には、同部位をアーチ形に変形させる成分の応力が作用するが、実施形態1では変動支点部材15の直上に設けた曲がり止め部材16が、板バネ14のアーチ形の変形を抑制するため、変動支点部材15から固定端14bの間において板バネ14は殆ど変形しない。従って、板バネ14の実質的な固定端は変動支点部材15の貫通穴17の端と考えることができるから、図1(a)の状態で板バネ14の強さは最大であり、座部4の弾力は重い体重の使用者に適する。
【0022】
次に、前記使用者より軽い体重の使用者が座部4に座る場合は、座部4に座らない状態、すなわち板バネ14に使用者の荷重を加えない初期状態で変動支点部材15を図1(b)の位置に滑らせて移動させる。そうすると変動支点部材15の自由端14a側の端(支点)から荷重の作用点までの距離がL1からL2に増加し、一方、変動支点部材15の端の板バネ14の幅がb1からb2に減少し、前記距離のL1からL2への増加と、幅のb1からb2への減少が相乗的に作用し合うから、板バネ14のしなりやすさが劇的に増大し、軽い体重の使用者に適合した柔らかな弾力が得られる。
【0023】
もちろんさらに軽い体重の使用者の場合は、変動支点部材15を図1(b)の位置から図1(c)の位置へと摺動させればよい。なお、図1(c)の状態において板バネ14の強さは最小であり、座部4の弾力は軽い体重の使用者に適する。
【0024】
以上、変動支点部材15の位置を図1(a),(b),(c)の3段階に分けて説明したが、実施形態1の変断面部14eはテーパ状であって変動支点部材15の位置に応じて連続的に変化するため、変動支点部材15をどの位置に止めても座部4の弾力の変化が実感できる。
【0025】
また、実施形態1では板バネ14を羽子板形状にした例を示したが、その他にも、図2(b)に示したように変断面部14eの端から自由端14aに向けて平面視三角形に形成し、全体として平面視略菱形に形成すると共にそのうちの鋭角をなす一つの角部側を固定端14bにする、というようにしてもよい。かかる形状である図2(b)の板バネ14は、図2(a)のように自由端14e側が等幅である板バネ14に比べて撓みやすさが増すため、全長を短くコンパクトにすることができる。
【0026】
[実施形態2]
図3〜図9は、本発明の実施の形態2を示すものである。なお、図3は座部を省略した椅子要部の斜視図、図4は図3の分解斜視図、図5は要部の縦断面図、図6は要部の横断平面図、図7(a),(b)は板バネの斜視図、図8(a),(b)は弾力を最大にした状態を示す要部の縦断面図と横断平面図、図9(a),(b)は弾力を最小にした状態を示す要部の縦断面図と横断平面図である。
【0027】
[椅子]
実施形態2の椅子は、支脚1の頂部に固着した座台2と、その座台2の上面に固着した座板4aと、前記座台2の後端に支軸5で揺動自在に取り付けた背凭れ6と、該背凭れ6に弾力を付与する椅子用弾力装置10Bと、から概略構成される。
【0028】
[座台(固定部材)]
前記座台2は、実施形態2において固定部材を構成するものであり、長方形の底板2aと、その底板2aの上面に固着された逆さ凹字形のバネ取付部材2bと、底板2aの両側に立ち上げた側板2c,2cと、さらにその側板2c,2cの上縁を外向きに屈曲させた座板取付片2d,2dと、底板2a上に突設した弾性ストッパー2eと、を有する。
【0029】
[背凭れ(可動部材)]
前記背凭れ6は、実施形態2において可動部材を構成するものであり、側面視略L字形である左右2本の背凭れパイプ6a,6aの先端に支軸5を通し、その支軸5の両端を前記座台2の側板2c,2cに回動自在に挿通させ、そうして全体を支軸5を中心に揺動させ得るようにしたものである。なお、左右2本の背凭れパイプ6a,6aの間には、前記支軸5と平行に下横杆6bと上横杆6cが固着されている。
【0030】
[椅子用弾力装置]
前記椅子用弾力装置10Bは、前記座台2のバネ取付部材2bに対し、そのバネ取付部材2bの天井板2f内面に一端を固定して片持ち梁状に支持されると共に自由端14a側で前記背凭れ6を付勢する板バネ14と、前記板バネ14が弾性変形する際の支点となり且つその板バネ14が使用者からの荷重を受けない初期状態にある状態で前記底板2a上を摺動して板バネ14沿いに移動可能な変動支点部材15と、前記座台2の一つの側板2cを貫く状態で底板2a上に回動自在に軸着される変動支点部材15用の操作レバー18と、板バネ14と変動支点部材15の間に適度なクリアランスを設けるための弾性手段19と、から概略構成される。
【0031】
[板バネ]
実施形態2の板バネ14は、図7(a)に示したように、固定端14b側を、外幅一定で内部に割口14fを設けた二股部14gとし、一方、自由端14a側を、先細りの三角部14hとし、さらに二股部14gの先端から三角部14hの起点までの間を、テーパ状に切り欠いた三角切欠14iによって形成される変断面部14eとしたものである。
この板バネ14は、固定端14b側が前記バネ取付部材2bの天井板2fの内側に整合する形状になっており、そのバネ取付部材2bの天井板2fに二股部14gを嵌めてボルト締めし、もってバネ取付部材2bを介して固定部材たる座台2に固着される。また、バネ取付部材2bに取り付いた状態で板バネ14は、二股部14gと変断面部14eがバネ取付部材2bの天井板2fで覆われる。
また、板バネ14の自由端14a側の端部は、前記背凭れ6の下横杆6bの下に当接し、一方、弾性変形したとき座台2の前記弾性ストッパー2eに当たるようになっている。
【0032】
[変動支点部材]
前記変動支点部材15は、図4に示したように、横長直方体形状で前記バネ取付部材2bの内部に横断状に収まる枕部材15aと、その枕部材15aの後方に突設した連結片15bと、枕部材15aと連結片15bの上面に突設したガイド部15cと、前記枕部材15aの前方に固着したL字形のバネ台座15dとで構成される。
【0033】
変動支点部材15の前記連結片15bは、その後端部に上下方向に貫く長孔15eを有し、その長孔15eに前記操作レバー18の端部に上向きに植設した連結ピン18aが遊嵌されている。
一方、変動支点部材15の前記ガイド部15cは、前記板バネ14のほぼ板厚相当分の高さを有すると共に、板バネ14の前記割口14fと変断面部14eの三角切欠14iにほぼ合致する平面視略五角形状のものであり、板バネ14の割口14fに摺動可能な程度の嵌め合いでぴったり収まることにより、変動支点部材15の動きを直線運動に規制する。従って、図6のように座台2の横に突出する操作レバー18を回動操作すると、その力が連結ピン18aと長孔15eを介して連結片15bに伝達され、その力を受けた変動支点部材15がガイド部15cに案内されて直線方向に移動する。
【0034】
なお、上記のように、板バネ14に二股部14gを形成し、その二股部14gに対して変動支点部材15の上面に突設したガイド部15cを嵌め、そうして変動支点部材15の動きを真っ直ぐ規制するようにした構成は、板バネ14に変断面部14eを形成する上で必要な二股部14gと、変動支点部材15と操作レバー18とを連結する上で必要な連結片15bとを有効に利用し、これらにガイド部15cを付加するだけでよいから、簡単で無駄がなく低コストにできる優位性がある。
【0035】
[弾性手段]
前記弾性手段19は、前記枕部材15aの前面に固着したバネ台座15dの先端にコイルバネ19aを固着し、さらにそのコイルバネ19aの上端に頂部が球面である接触子19bを取り付け、コイルバネ19aの弾性で板バネ14の自由端14a側にその板バネ14を持ち上げる向きの力を付与するようにしたものであり、これにより使用者からの荷重を受けない初期位置にある板バネ14が、背凭れ6自体の荷重で撓まないように支えることができる。従って、板バネ14と変動支点部材15の間に適度なクリアランスを設けてそれを維持することができるから、変動支点部材15が板バネ14に擦れて動きにくくなる、というおそれがない。また、板バネ14と変動支点部材15の間にクリアランスがない場合でも、弾性手段19によって両者の接触圧を軽減させることができるから、変動支点部材15に作用する摩擦抵抗を低減させることが可能である。
【0036】
[曲がり止め部材]
前記のように板バネ14の固定端14bから変断面部14eまでの区間はバネ取付部材2bの天井板2fによって覆われている。従って板バネ14は、自由端14a側が変動支点部材15の枕部材15aを支点に撓んでも、バネ取付部材2bで覆われた部分では天井板2fに当たって曲がり得ない。よって実施形態2のバネ取付部材2bは、板バネ14の自由端14a側の撓みに伴い生じ得る前記区間の変形を抑止する曲がり止め部材としても機能する。
【0037】
[使用方法]
次に、実施形態2の椅子の使用方法について説明する。なお、椅子用弾力装置10Bの変動支点部材15の位置は、図8に示した最も自由端14a側にあるものとする。
【0038】
実施形態2の椅子は、使用者が座部4に着座し、背凭れ6に寄りかかって体重を掛けると背凭れ6が支軸5を中心に後傾する。そうすると図5想像線のように、背凭れパイプ6aの下横杆6bが椅子用弾力装置10Bの板バネ14の自由端14a側を押圧して弾性変形させる。このとき板バネ14は、変動支点部材15の枕部材15aの上コーナー部を支点に曲がる。一方、この板バネ14の自由端14a側の曲がりの反動で、板バネ14の固定端14bから前記支点までの間には、同部位をアーチ形に変形させる成分の応力が作用するが、実施形態2ではバネ取付部材2bの天井板2fが、板バネ14のアーチ形の変形を抑制するため、変動支点部材15から固定端14bの間において板バネ14は殆ど変形しない。従って、板バネ14の実質的な固定端は変動支点部材15の端と考えることができるから、図8の状態において板バネ14の強さは最大であり、背凭れ6の弾力は重い体重の使用者或は背凭れ6の動きを重くしたい使用者に適する。
【0039】
次に、前記の使用者より軽い体重の使用者が使用する場合か、或は背凭れ6の弾力を柔らかく変更したいと使用者が希望する場合は、背凭れ6に寄りかからない姿勢で座り、板バネ14に使用者の荷重を加えない初期状態にして操作レバー18を回動させ、変動支点部材15を図9の位置に摺動させる。そうすると変動支点部材15の自由端14a側の端(支点)から荷重の作用点までの距離が増加し、一方、変動支点部材15の端(支点)に接する板バネ14の幅が減少し、前記距離の増加と幅の減少が相乗的に作用し合うから、板バネ14の強さが劇的に変化し、柔らかな弾力が得られる。
【0040】
なお、実施形態1でも説明したように、板バネ14の変断面部14eはテーパ状であって変動支点部材15の位置に応じてその幅が連続的に変化するため、変動支点部材15の位置調節は無段階に行える。
【0041】
また、実施形態2では板バネ14の自由端14a側を三角部14hにしたが、図7(b)のように自由端14a側を等幅帯板形態にしてももちろんよい。
【0042】
[実施形態3]
図10(a)〜(c)は、実施形態3の椅子用弾力装置10Cを示すものであり、板バネ14の厚さを段階的に変えるべく変断面部14eを階段状にした例である。この変断面部14eに対し、バネ取付部材2bの天井板2f(曲がり止め部材16)は内面が逆階段状になっており、従って板バネ14の変断面部14eと天井板2fは密着する。
この椅子用弾力装置10Cは、変動支点部材15を移動させることにより板バネ14の厚さを段階的に変えることができるため、実施形態1,2と同じく板バネ14の弾力を劇的に変化させることができる。
なお、図11に示したように変断面部14eを自由端14a側から固定端14b側に向けて薄くなるテーパ状にすれば、板バネ14の厚さを連続的に変えることもできる。
【0043】
以上本発明を実施形態1〜3について説明したが、もちろん本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、実施形態2,3の椅子用弾力装置10B,10Cで実施形態1のように座部4の弾力を調節したり、また、実施形態1の椅子用弾力装置10Aで背凭れ6の弾力を調節したりすることもできる。
【0044】
また、実施形態1〜3は、板バネ14の幅と厚さの何れか一方を変えるようにしたが、実施形態1+実施形態3や、実施形態2+実施形態3のようにして、板バネ14の幅と厚さを一緒に変化させるようにしてもよい。
また、実施形態1〜3では、板バネ14を長手方向の中心線に対して対称な形態にしたが、例えば図2(c)に示したように、板バネ14をほぼ同中心線から切断したような形態にしてもよい。そうすることにより座台2の内部に他の部品(例えば支脚1の高さ調節装置等)を設置するためのスペースが作りやすい。
【0045】
また、実施形態2の弾性手段19は、変動支点部材15と一体のバネ台座15dに設けて変動支点部材15と一緒に移動する構成にしたが、例えば座台2の底板2aに固定的に設けるようにしてもよい。また、弾性手段19のバネの種類もコイルバネに限定されない。
【0046】
また、実施形態1,2の変断面部14eは、直線的なテーパで構成したが、弧状のカーブで輪郭を構成したり、ぎざぎざの輪郭にするなどしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】(a)〜(c)は椅子用弾力装置の斜視図である。
【図2】(a)〜(c)は板バネを示す斜視図である。
【図3】座部を省略した椅子要部の斜視図である。
【図4】図3の分解斜視図である。
【図5】要部の縦断面図である。
【図6】要部の横断平面図である。
【図7】(a),(b)は板バネの斜視図である。
【図8】(a),(b)は弾力を最大にした状態を示す要部の縦断面図と横断平面図である。
【図9】(a),(b)は弾力を最小にした状態を示す要部の縦断面図と横断平面図である
【図10】(a)〜(c)は椅子用弾力装置の縦断面図である。
【図11】(a)〜(c)は椅子用弾力装置の縦断面図である。
【図12】従来の椅子を示す要部の縦断面図である。
【図13】(a)〜(c)は椅子用弾力装置を簡単にして示す斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
1 …支脚
2 …座台(固定部材)
2b …バネ取付部材(曲がり止め部材)
4 …座部(可動部材)
6 …背凭れ(可動部材)
10A,10B,10C …椅子用弾力装置
13 …固定部材
14 …板バネ
14a …自由端
14b …固定端
14e …変断面部
15 …変動支点部材
16 …曲がり止め部材
19 …弾性手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材と、該固定部材に傾動可能に軸着される可動部材との間に介装され、使用者から受ける荷重によって前記可動部材が傾動した場合にその傾動を妨げる向きに弾力を作用させる椅子用弾力装置であって、
前記固定部材に一端を固定して片持ち梁状に支持されると共に自由端側で前記可動部材を付勢する板バネと、
前記板バネが弾性変形する際の支点となり且つ該板バネが使用者からの荷重を受けない初期位置にある状態で板バネに沿って移動可能な変動支点部材とを有し、
前記変動支点部材を移動させて板バネの支点と可動部材との接触点までの距離を増減させることにより、前記板バネの弾力を調節し得るようにした椅子用弾力装置において、
少なくとも前記板バネの前記変動支点部材の移動範囲内に、幅及び/又は厚さを自由端側より固定端側を小さくするための変断面部を設けたことを特徴とする椅子用弾力装置。
【請求項2】
前記板バネの自由端から前記変動支点部材までの間に、板バネと変動支点部材の間の接触圧を軽減させるか又は両者の間にクリアランスが形成される向きに力を付与する弾性手段を設け、
その弾性手段は、使用者からの荷重を受けない初期状態の板バネに対し可動部材自体から受ける荷重に対抗して板バネが所定の姿勢を保ち得るように力を付与し、一方、着座した使用者からの荷重を前記板バネを介して受けた場合に板バネと共に弾性変形するものであることを特徴とする請求項1記載の椅子用弾力装置。
【請求項3】
前記板バネの固定端から前記変動支点部材の区間に対応させて曲がり止め部材を設け、その曲がり止め部材によって前記板バネの自由端側の撓みに伴い生じ得る前記区間の変形を抑制するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の椅子用弾力装置。
【請求項4】
前記請求項1乃至3の何れか1項に記載の椅子用弾力装置を備え、前記固定部材が支脚と一体の座台であり、一方、前記可動部材が前記座台に対し揺動自在に取り付けられた背凭れであることを特徴とする椅子。
【請求項5】
前記請求項1乃至3の何れか1項に記載の椅子用弾力装置を備え、前記固定部材が支脚と一体の座台であり、一方、前記可動部材が前記座台に対し揺動自在に取り付けられた座部であることを特徴とする椅子。
【請求項1】
固定部材と、該固定部材に傾動可能に軸着される可動部材との間に介装され、使用者から受ける荷重によって前記可動部材が傾動した場合にその傾動を妨げる向きに弾力を作用させる椅子用弾力装置であって、
前記固定部材に一端を固定して片持ち梁状に支持されると共に自由端側で前記可動部材を付勢する板バネと、
前記板バネが弾性変形する際の支点となり且つ該板バネが使用者からの荷重を受けない初期位置にある状態で板バネに沿って移動可能な変動支点部材とを有し、
前記変動支点部材を移動させて板バネの支点と可動部材との接触点までの距離を増減させることにより、前記板バネの弾力を調節し得るようにした椅子用弾力装置において、
少なくとも前記板バネの前記変動支点部材の移動範囲内に、幅及び/又は厚さを自由端側より固定端側を小さくするための変断面部を設けたことを特徴とする椅子用弾力装置。
【請求項2】
前記板バネの自由端から前記変動支点部材までの間に、板バネと変動支点部材の間の接触圧を軽減させるか又は両者の間にクリアランスが形成される向きに力を付与する弾性手段を設け、
その弾性手段は、使用者からの荷重を受けない初期状態の板バネに対し可動部材自体から受ける荷重に対抗して板バネが所定の姿勢を保ち得るように力を付与し、一方、着座した使用者からの荷重を前記板バネを介して受けた場合に板バネと共に弾性変形するものであることを特徴とする請求項1記載の椅子用弾力装置。
【請求項3】
前記板バネの固定端から前記変動支点部材の区間に対応させて曲がり止め部材を設け、その曲がり止め部材によって前記板バネの自由端側の撓みに伴い生じ得る前記区間の変形を抑制するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の椅子用弾力装置。
【請求項4】
前記請求項1乃至3の何れか1項に記載の椅子用弾力装置を備え、前記固定部材が支脚と一体の座台であり、一方、前記可動部材が前記座台に対し揺動自在に取り付けられた背凭れであることを特徴とする椅子。
【請求項5】
前記請求項1乃至3の何れか1項に記載の椅子用弾力装置を備え、前記固定部材が支脚と一体の座台であり、一方、前記可動部材が前記座台に対し揺動自在に取り付けられた座部であることを特徴とする椅子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−254514(P2009−254514A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105845(P2008−105845)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(390034544)トヨセット株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(390034544)トヨセット株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
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