説明

椅子

【課題】背板等を切欠くことなく把手を形成し、見栄えのよい椅子を提供する。【解決手段】 座8を支持する脚フレーム1の後端の両側部より起立する左右1対の背凭れ支持杆4の上端同士を、横連結杆5により連結して形成した背フレーム2に、背板11を、前記横連結杆5の前面を覆うようにして取付け、前記横連結杆5の中央部を、前記背板11の上端部後面より後方に離間させることにより、この部分を把手27とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背凭れの上部に把手を有する椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の椅子としては、例えば図8に示すように、背凭れ(a)を構成する背板または背当てクッション(b)の上端の中央部をほぼU字状に切欠いて開口させ、この切欠き(c)の上方における下向きU字状の背フレーム(d)の中央部を把手(e)として、椅子を持ち運べるようにしたものがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような従来の椅子では、背板または背当てクッション(b)の上端を切欠いて開口しているため、背板または背当てクッションの見栄えが悪いだけでなく、把手(e)が露呈しているため、背凭れ全体の体裁も悪い。
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、背板等を切欠くことなく把手を形成しうるとともに、把手が背凭れの前方から露見されないようにすることにより、背凭れの見栄えを向上させうるようにした椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1) 座を支持する脚フレームの後端の両側部より起立する左右1対の背凭れ支持杆の上端同士を、横連結杆により連結して形成した背フレームに、背板を、前記横連結杆の前面を覆うようにして取付け、前記横連結杆の中央部を、前記背板の上端部後面より後方に離間させることにより、この部分を把手とする。
【0006】
(2) 上記(1)項において、背板の少なくとも上端部を、後方に向かって平面視円弧状に湾曲させるとともに、横連結杆を、左右両端から中央部に向かって漸次背板の後面から離間するように後方に湾曲させる。
【0007】
(3) 上記(2)項において、背板の上端部における中央部を除いた左右両側の後面に、後端が横連結杆の両側部前面に当接するカバー片を後向きに突設し、背板と横連結杆との間に形成される隙間を閉塞する。
【0008】
(4) 上記(3)項において、横連結杆を丸棒材よりなるものとし、その前面のほぼ中央部に、背板の上端よりもやや下方に突設したカバー片の後端を当接させる。
【0009】
(5) 上記(3)または(4)項において、カバー片の下方における横連結杆の前面に、側面視倒立L字状をなす取付金具の上片の後端を固着し、この上片の前端より垂下する下向片を、背板の後面にねじ止めする。
【0010】
(6) 上記(5)項において、下向片の周囲を、カバー片に連設された筒状カバーにより覆うとともに、この筒状カバーの後面開口部にキャップを止着することにより、ねじの頭部を覆う。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、背板の上端を切欠いたりすることなく把手を形成しうるので、背凭れの見栄えが向上する。
また、把手は、背板の上端部の後方に形成されているので、背凭れの前方から把手が露見されることがなくなり、見栄えがより向上する。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、背板の上端部と横連結杆とが、平面視において流線形をなして対向しているので、横連結杆の中央部に把手を形成しても違和感はなく、美観がよくなる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、背板と横連結杆との間の隙間が、中央部の把手を除いてカバー片により閉塞されているので、上方からの見栄えが向上する。
また、カバー片は、横連結杆の前面に当接しているので、背板の上端部が補強され、後方に大きく撓む恐れがなくなる。
さらに、カバー片は、背板の後面に一体的に突設されているので、別部材としてのカバーは不要となり、かつ、背板を背フレームに取付けるだけで、横連結杆との間の隙間を容易に閉塞することができる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、把手が握り易くなるとともに、背板の上端と横連結杆とが、平面視において曲線的に調和するので、美観が増す。
また、カバー片は、背板の上端よりもやや下方に突設されているので、重厚感はない。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、背板の上端部を、横連結杆に、それらの間に手掛け用の隙間を形成した状態で安定的に取付けることができる。
また、取付金具は、カバー片の下方に位置しているので、上方より取付金具が露見されることはなく、見栄えもよい。
【0016】
請求項6記載の発明によれば、下向片及びねじの頭部も、筒状カバーとキャップにより覆われ、外部に露呈することがないので、見栄えがさらによくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の椅子の側面図、図2は、同じく平面図、図3は、同じく分解斜視図である。
【0018】
椅子のフレームは、側面視ほぼ口形をなすように結合された左右1対の脚フレーム(1)(1)と、それらの後部の縦フレーム(1a)の上端に連設された背フレーム(2)とを備えている。
【0019】
左右の脚フレーム(1)における後部の縦フレーム(1a)と、前部の縦フレーム(1b)の上端部同士は、それらの対向面に固着された横フレーム(3)(3)により結合されている。脚フレーム(1)は、扁平な方形角筒状断面をなすステンレス材等よりなっている。
【0020】
前部の縦フレーム(1b)の下端及びその上端に連設された水平フレーム(1c)の後端は、それぞれベースフレーム(1d)の前端の内側面と、後部の縦フレーム(1a)の内側面に結合されている。これにより、図2に示すように、前部の縦フレーム(1b)と水平フレーム(1c)の側端間の左右寸法は、後部の縦フレーム(1a)とベースフレーム(1d)の左右寸法よりも小さくなり、椅子をスタッキングする際に、上下の脚フレーム(1)同士が干渉するのが防止される。
【0021】
背フレーム(2)は、左右の脚フレーム(1)の後部の縦フレーム(1a)の上端より、側面視ほぼくの字状をなして一体的に起立する左右1対の背凭れ支持杆(4)(4)と、それらの上端の対向面に結合された横連結杆(5)とからなっている。
【0022】
横連結杆(5)は、ステンレス等の丸棒材よりなり、その両側端部を除いた中央部は、平面視において後向きに突出するように円弧状に湾曲させてある。
【0023】
横連結杆(5)は、その両側端に形成されためねじ孔(6)に、背凭れ支持杆(4)の上端の筒状取付部(4a)の外側方より挿入したボルト(7)を螺合することにより、両背凭れ支持杆(4)の対向面に固着されている。
【0024】
左右の脚フレーム(1)における水平フレーム(1c)と後部の横フレーム(3)の上面には、前端部が前部の縦フレーム(1b)の上部前面に沿って下向き円弧状に湾曲する合成樹脂製の座板(8)が載置されている。
【0025】
座板(8)の前後の下面は、左右の脚フレーム(1)における水平フレーム(1c)の対向面に固着された左右方向を向く支持板(9)(9)により支持され、かつ両支持板(9)の下方より座板(8)の下面に螺押した複数のねじ(10)により固定されている(図2参照)。
【0026】
背フレーム(2)の前面には、合成樹脂よりなる背板(11)が取付けられ、これら背フレーム(2)と背板(11)とにより、背凭れを形成している。
【0027】
背板(11)は、その中央部が後方に向かってなだらかな円弧状に湾曲するとともに、両側端部の後面には、図4に示すように(左右対称につき、右方のみ図示する)、扁平な方形角筒状断面をなす左右の背凭れ支持杆(4)の内側面に当接する突条片(12)と、それよりも外側方において背凭れ支持杆(4)の側端部の前面に当接又は近接する短寸のリブ(13)とが、互いに平行をなして上下方向に沿って後向きに突設されている。
【0028】
突条片(12)は、後面視ほぼ上向きコ字状をなして、背板(11)の下端部の後面にも連続して形成されている。
【0029】
左右の突条片(12)を、左右の背凭れ支持杆(4)の内側面間に嵌め込むことにより、座板(11)の左右方向の位置決めがなされるとともに、左右方向に動くのも防止される。
【0030】
突条片(12)とリブ(13)とにより形成される凹部(14)と、それと対向する背凭れ支持杆(4)の前面とには、上下方向に所要長さの1対の面ファスナ(15)(16)が接着されており、背板(11)を背フレーム(2)に取付ける際、面ファスナ(15)(16)同士が互いに掛着して、背板(11)の両側端部が背凭れ支持杆(4)の前面に密着されるようになっている。
【0031】
左右の突条片(12)の下端には、図3及び図5に示すように、左右方向を向くととともに、外側面と下方に開口する上向凹状の保持溝(17)が形成されている。
【0032】
左右の保持溝(17)は、背板(11)の取付け時において、左右の背凭れ支持杆(4)の下端部における互いに対向する内側面に内向きに突設した支持軸(18)(18)に、上方より落とし込んで嵌合されるようになっている。従って、背フレーム(2)の横連結杆(5)を予め固定しておいても、背板(11)の下部を容易に背フレーム(2)に取付けることができる。
【0033】
背板(11)の上端部後面の中央部付近には、図3、図6及び図7に示すように、左右2個の取付ボス部(19)(19)が後向きに突設され、それらの周囲は、背板(11)に一体成形された、後面が開口する筒状カバー(20)により覆われている。筒状カバー(20)の上端の側縁には、水平をなすカバー片(21)(21)が、背板(11)の外側方に向かって一体的に形成されている。
【0034】
左右のカバー片(21)は、外端部側の前後寸法を小として、内端に向かうにしたがって漸次広幅とされ、かつ後端面は、図2に示すように、背フレーム(2)に背板(11)を取付けた際に、横連結杆(5)の前面と当接するように、その折曲形状に合う曲面とされている。
【0035】
左右の取付ボス部(19)の後方において、横連結杆(5)の中央部寄りの前面には、側面視ほぼ倒立L字状断面をなす取付金具(22)の上片(22a)の後端が、前方を向くようにして溶接により固着されている。
【0036】
背フレーム(2)に背板(11)を取付けて背凭れを形成するには、まず左右の背凭れ支持杆(4)の対向面間に背板(11)の後面の両突条片(12)を嵌め込み、背板(11)の両側部下端の保持溝(17)を、背凭れ支持杆(4)の下端に突設した支持軸(18)に上方より嵌合する。
【0037】
この状態で背板(11)を後方に強く押圧すると、面ファスナ(15)(16)同士が掛着して仮固定されるので、背板(11)が前方に倒れることはない。
【0038】
また、背板(11)の両側部が成形後の熱ひずみ等により変形し、背凭れ支持杆(4)の前面との間に隙間が形成されるなどしても、面ファスナ(15)(16)が双方を密着させて隙間をなくすので、見栄えがよくなるとともに、背板(11)が前後にがた付いたり、浮いたりすることはない。
【0039】
ついで、図6に示すように、横連結杆(5)に固着した左右2個の取付金具(22)の下向片(22b)を、背板(11)の左右の取付ボス部(19)の後面に当接し、下向片(22b)の通孔(23)より挿入したねじ(24)を、取付ボス部(19)に形成しためねじ(25)に螺合させて締付ける。
【0040】
これにより、背板(11)の上端部の後面が、横連結杆(5)の前方に離間した形態の背凭れが形成され、図2に示すように、左右のカバー片(21)の後端が横連結杆(5)の前面に当接して、背板(11)の左右両側部後面と横連結杆(5)との間に形成される隙間が閉塞される。
【0041】
また、左右のカバー片(21)の対向面間と、横連結杆(5)の中央部前面と背板(11)の中央部後面との対向面間には、手の挿入が可能な手掛け空間(26)が形成され、かつ横連結杆(5)の中央部を把手(27)とすることにより、椅子を持ち運ぶことができる。
【0042】
把手(27)は、背板(11)の後方に位置しており、椅子の前方からは見えないので、体裁がよく、また、従来のように、背板(11)の上端を切欠いて把手を形成する必要がないので、背凭れの見栄えもよくなる。
【0043】
背板(11)固定用のねじ(24)の頭部と取付金具(22)の下向片(22b)は、図7に詳細を示すように、ほぼ前向コ字状断面をなす合成樹脂製のキャップ(28)を、筒状カバー(20)内に挿入し、左右両側片(28a)の前端に形成された内向の係止爪(28b)を、取付金具(22)の下向片(22b)の両側端の前縁に弾性係合させることにより、体裁よく覆われている。
【0044】
また、取付金具(22)の上片(22a)も、図6に示すように、左右の水平なカバー片(21)により上方から覆われ、外部に露呈しないようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の椅子の側面図である。
【図2】同じく、一部切欠き平面図である。
【図3】同じく、分解斜視図である。
【図4】図1のIV−IV線拡大横断平面図である。
【図5】同じく、V−V線拡大横断平面図である。
【図6】図2のVI−VI線拡大縦断側面図である。
【図7】図6のVII−VII線横断平面図である。
【図8】従来の椅子の要部の斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
(1)脚フレーム
(1a)(1b)縦フレーム
(1c)水平フレーム
(1d)ベースフレーム
(2)背フレーム
(3)横フレーム
(4)背凭れ支持杆
(4a)筒状取付部
(5)横連結杆
(6)めねじ孔
(7)ボルト
(8)座板
(9)支持板
(10)ねじ
(11)背板
(12)突条片
(13)リブ
(14)凹部
(15)(16)面ファスナ
(17)保持溝
(18)支持軸
(19)取付ボス部
(20)筒状カバー
(21)カバー片
(22)取付金具
(22a)上片
(22b)下向片
(23)通孔
(24)ねじ
(25)めねじ
(26)手掛け空間
(27)把手
(28)キャップ
(28a)側片
(28b)係止爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座を支持する脚フレームの後端の両側部より起立する左右1対の背凭れ支持杆の上端同士を、横連結杆により連結して形成した背フレームに、背板を、前記横連結杆の前面を覆うようにして取付け、前記横連結杆の中央部を、前記背板の上端部後面より後方に離間させることにより、この部分を把手としたことを特徴とする椅子。
【請求項2】
背板の少なくとも上端部を、後方に向かって平面視円弧状に湾曲させるとともに、横連結杆を、左右両端から中央部に向かって漸次背板の後面から離間するように後方に湾曲させてなる請求項1記載の椅子。
【請求項3】
背板の上端部における中央部を除いた左右両側の後面に、後端が横連結杆の両側部前面に当接するカバー片を後向きに突設し、背板と横連結杆との間に形成される隙間を閉塞してなる請求項2記載の椅子。
【請求項4】
横連結杆を丸棒材よりなるものとし、その前面のほぼ中央部に、背板の上端よりもやや下方に突設したカバー片の後端を当接させてなる請求項3記載の椅子。
【請求項5】
カバー片の下方における横連結杆の前面に、側面視倒立L字状をなす取付金具の上片の後端を固着し、この上片の前端より垂下する下向片を、背板の後面にねじ止めしてなる請求項3または4記載の椅子。
【請求項6】
下向片の周囲を、カバー片に連設された筒状カバーにより覆うとともに、この筒状カバーの後面開口部にキャップを止着することにより、ねじの頭部を覆ってなる請求項5記載の椅子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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