説明

椅子

【課題】本発明は、正しい着座姿勢を実際に体験し認識することで、着座者が、着座時における自らの骨の状態を認識し、正しい着座姿勢を心がけることができるとともに、理想的な着座姿勢を指導するための教具としても使用することが可能な椅子を提供することを課題とする。
【解決手段】上記課題を解決すべく、本発明の請求項1記載の発明は、座板と背板とを有するとともに、左右少なくとも一側に、着座者の着座姿勢と比較できる着座姿勢を示す人体モデルを描写した側面パネルを設けたことを特徴とする椅子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座板と背板とを有するとともに、左右少なくとも一側に、着座者の着座姿勢と比較できる着座姿勢を示す人体モデルを描写した側面パネルを設けた椅子に関し、着座時における理想的な着座姿勢を指導するため教具として使用することが可能な椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、着座時の正しい姿勢は、座面の体圧分布や体型の個人差など種々の条件から導き出されるが、その中の1つに、男性と女性の平均身長から、理想とされる着座姿勢を図式化したプロトタイプと呼ばれる標準が示されており、このプロトタイプによると、背板に腰をしっかり密着させるとともに背中をまっすぐ伸ばして、背骨をS字カーブに保つ姿勢が理想的な着座姿勢であり、着座者は意識して正しい姿勢での着座を心がけることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、着座時における理想的な着座姿勢を実際に体験する適切な教具がなく、着座者は、自らの正しい着座姿勢および骨の状態を認識することが困難である。そのために、椅子に座って執務等を行う多くの着座者は上記プロトタイプによる正しい着座姿勢を意識せずに誤った無理な姿勢をとり続けることで疲労の原因ともなった。
【0004】
本発明は、正しい着座姿勢を実際に体験し認識することで、着座者が、着座時における自らの骨の状態を認識し、正しい着座姿勢を心がけることができるとともに、理想的な着座姿勢を指導するための教具としても使用することが可能な椅子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく、本発明の請求項1記載の発明は座板と背板とを有するとともに、左右少なくとも一側に、着座者の着座姿勢と比較できる着座姿勢を示す人体モデルを描写した側面パネルを設けたことを特徴とする椅子である。
【0006】
また、請求項2記載の発明は、前記人体モデルは、骨盤および背骨の曲がり具合が視認できる人体の透過図である椅子である。
【0007】
また、請求項3記載の発明は、前記側面パネルは、着座者と人体モデルの着座姿勢とを、側面パネルの外側面から視認して比較できる透明のパネルである椅子である。
【0008】
また、請求項4記載の発明は、前記人体モデルは、側面パネルに入射された光源によって発光するように描写されている椅子である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1記載の発明は、座板と背板とを有するとともに、左右少なくとも一側に、着座者の着座姿勢と比較できる着座姿勢を示す人体モデルを描写した側面パネルを設けたことを特徴とするから、着座者が正しい着座姿勢を知ることができるとともに、着座時の自らの骨の状態(着座姿勢)を認識することで、意識してプロトタイプによる正しい姿勢での着座を心がけることが可能な効果がある。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、前記人体モデルは、骨盤および背骨の曲がり具合が視認できる人体の透過図であるから、正しい着座姿勢時の自らの骨の状態を認識することが可能である。
【0011】
また、請求項3記載の発明は、前記側面パネルは、着座者と人体モデルの着座姿勢とを、側面パネルの外側面から視認して比較できる透明のパネルであるから、第三者が、透明のパネルの他方側から、着座者の着座姿勢と人体モデルとを比較して、着座者に正しい着座姿勢を教示することが可能であり、理想的な着座姿勢を教示するため教具として使用することが可能である。
【0012】
また、請求項4記載の発明は、前記人体モデルは、側面パネルに入射された光源によって発光するように描写されていることを特徴とするから、人体モデルをより確実に視認することが可能であり、さらには、教具として使用するときに演出効果の高い椅子を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の椅子を示す正面斜視図である。
【図2】本発明の椅子を示す分解正面斜視図である。
【図3】本発明の椅子を示す(a)正面図(b)側面図である。
【図4】本発明の椅子を示す図である。(a)正面斜視図を示す図である。(b)背面斜視図を示す図である。
【図5】本発明の椅子を示す正面斜視図である。
【図6】本発明の椅子の別の例を示す(a)正面図(b)側面図である。
【図7】本発明の椅子の別の例を示す図である。(a)正面斜視図(b)背面斜視図である。
【図8】本発明の椅子のさらに別の例を示す(a)正面図(b)側面図である。
【図9】本発明の椅子のさらに別の例を示す正面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の椅子1の一例としては、図1に示すように、背板2、座板3、左側面パネル5、右側面パネル6からなり、特に、前記左側面パネル5には、前記椅子1の正常着座時の人体モデル7が描写されている。この人体モデル7は、人体の透過図を示し、正しい着座時の背骨の曲がり具合や骨盤の状態を示すものである。また、右側面パネル6は、座板3の上方および背板2の前方が開放したL字形状であり、椅子1の側面方から容易に着座可能に、また、人体モデル7を視認し易いように構成されている。
【0015】
前記座板3および背板2は、図2に示すように、左右の側面パネル5,6間に、取付ネジ9により螺着され取付けられた複数本の筒体からなる支持部材4へと、ブラケット8を介して取付けられている。すなわち、前記筒状の支持部材4は、その両端に雌ネジ孔14が形成されており、該雌ネジ孔14へと、前記左右の側面パネル5,6に形成された貫通孔15を介して、側面パネル5,6の外方から取付ネジ9を用いて取り付けられている。
【0016】
前記支持部材4には、座板3および背板2を取り付けるための平面部分(取付面P)を有するブラケット8が、筒状の支持部材4に挿通されるとともに、前記支持部材4の左右両側部において固着されている。そして、前記座板3を取り付けるための前記ブラケット8は、その取付面Pが上方を向いており、他方、背板3を取り付けるための前記ブラケット8は、その取付面Pが前方を向いている。そして、該ブラケット8の取付面Pと前記座板3の下面とを、図示しないネジ等で螺着し固定している。同様に、前記ブラケット8の取付面Pと前記背板2の背面とを、図示しないネジ等で螺着し固定している。
【0017】
また、前記座板3および背板2は、図3(a)(b)に示すように、右側面パネル6のL字部分に沿って取り付けられており、さらには、座板3と背板2の右側端部が、右側面パネル6より外方へと突出して取り付けられている。これにより、椅子の側方から容易に座り込むことが可能であり、複数の椅子1が展示されている場合も、様々な椅子1で着座姿勢を試みることができ、また、右側面視で、左側面パネル5に描かれた人体モデル7を容易に視認することができる。
【0018】
また、正しい着座姿勢を示す人体モデル7が、左側面パネル5における座板3と背板2に対応する箇所(着座箇所)に描写されており、前記座板3および背板2へと着座した際に、側面パネル5の人体モデル7と、着座者の姿勢とを比べて、正しい着座姿勢および着座者の骨盤および背骨の曲がり具合を容易に認識することが可能である。
【0019】
例えば、図示のような基本的な着座姿勢を示す人体モデル7が描かれた椅子1の場合、腰を支点としたとき、普通に腰掛けた角度θ(大腿部と体幹の成す角度)が90°前後であり、この姿勢がプロトタイプモデルによる理想的な着座姿勢であることを容易に認識することが可能である。
【0020】
特に、図4(a)(b)に示すように、透明の左側面パネル5(例えば、アクリルパネル)に人体モデル7が描写されており、第三者が、着座者の着座姿勢と左側面パネル5の人体モデル7とを比較して、着座者に正しい着座姿勢を教示することが可能であり、着座者は、正しい着座姿勢を実際に体験することが可能である。
【0021】
また、本発明の椅子1は、側面パネル5の前記人体モデル7を光らせる構成であってもよく、例えば、図5に示すように、前記透明パネル5の底部分の窪みBへと、LED照明10を取り付けることで、側面パネル5(例えば、アクリルパネル)の縁部分Fから入射した光が、アクリルパネル5の内部を反射を繰り返しながら進み人体モデル7で反射・拡散することで、人体モデル7および側面パネルの縁部分Fを光らせることが可能である。これにより、側面パネルの人体モデル7を目立たせるだけでなく、さらには、側面パネル5の周囲も光らせて、例えば、実験研究室や科学博物館等の暗い場所において演出効果を高めることが可能である。
【0022】
このように、本発明の椅子1は、座板3と背板2とを有するとともに、左右少なくとも一側に、着座者の着座姿勢と比較できる着座姿勢を示す人体モデル7を描写した側面パネル5を設けたことを特徴とするから、着座時における理想的な着座姿勢を指導するため教具として使用することが可能であり、着座者が正しい着座姿勢を知ることができるとともに、着座時の自らの骨の状態(着座姿勢)を認識することで、意識して正しい姿勢での着座を心がけることが可能な効果がある。
【0023】
また、前記人体モデル7は、骨盤および背骨の曲がり具合が視認できる人体の透過図であるから、正しい着座姿勢時の自らの骨の状態を認識することが可能である。
【0024】
また、前記側面パネル5は、着座者と人体モデル7の着座姿勢とを、側面パネル5の外側面から視認して比較できる透明のパネル5であるから、第三者が、透明のパネル5の他方側から、着座者の着座姿勢と人体モデル7とを比較して、着座者に正しい着座姿勢を教示することが可能である。
【0025】
また、前記人体モデル7は、側面パネル5に入射された光源によって発光するように描写されていることを特徴とするから、人体モデル7をより確実に視認することが可能であり、さらには、演出効果の高い椅子1を提供することが可能である。
【0026】
本発明の椅子1は、上記基本姿勢における正しい着座姿勢を示した椅子に限らず、座板3と背板2との角度が異なる種々椅子1における、より理想的な着座姿勢と、着座時の人体の骨形状とを容易に認識することが可能な椅子であってもよい。
【0027】
例えば、図6(a)(b)に示すように、リラックス時の着座姿勢を示す椅子であってもよく、左右の側面パネル5,6間に、取付ネジ9により取付けられた複数の支持部材4へとブラケット8を介して座板3および背板2取付けられ、前記座板3と前記背板2とのなす角度θがおよそ120度ほどの後傾姿勢からなるリクライニング時の正しい着座姿勢を認識可能な椅子1であってもよい。
【0028】
この場合、図7(a)(b)に示すように、着座者が座板に深く座った状態で背板2に寄りかかると、人体モデル7と一致した姿勢となり120度ほどの後傾姿勢となる。そして、この120度の後継姿勢が、リラックスして着座する際の理想的な背骨のカーブであることを容易に認識することが可能である。
【0029】
また、前記人体モデル7としては、より詳細な着座状態を数値化したプロトタイプであってもよく、例えば、図8(a)(b)に示すように、座高や背面高、背面傾斜角、座面奥行きなどを示した人体モデルであってもよい。これにより、着座者および第三者が、着座時の姿勢とプロトタイプの人体モデルとを比較して、正しい着座姿勢を具体的に認識することが可能である。
【0030】
また、前記側面パネルは、左右少なくとも一側に、着座者の着座姿勢と比較できる着座姿勢を示す人体モデルを描写した側面パネル5を設ければよく、図9に示すように、椅子の左側に人体モデルを描写した側面パネル5を設け、座板3と背板2と頭部支持板11との一端を側面パネル5で支持し、他方、椅子の右側は、側面パネルを設けることなく、矩形状の水平フレーム12の一部分から立設した垂直方向のフレーム13が座板3の下部を支持することにより、椅子の右方が開放しており、着座者が、椅子の側方(右方向)より容易に着座することが可能である。
【0031】
以上のように、本発明の椅子1は、座板3と背板2とを有するとともに、左右少なくとも一側に、着座者の着座姿勢と比較できる着座姿勢を示す人体モデル7を描写した側面パネル5を設けたことを特徴とするから、着座時における理想的な着座姿勢を指導するため教具として使用することが可能であり、着座者が正しい着座姿勢を知ることができるとともに、着座時の自らの骨の状態(着座姿勢)を認識することで、意識してプロトタイプによる正しい姿勢での着座を心がけることが可能な効果がある。
【0032】
また、前記人体モデル7は、骨盤および背骨の曲がり具合が視認できる人体の透過図であるから、正しい着座姿勢時の自らの骨の状態を認識することが可能である。
【0033】
また、前記側面パネル5は、着座者と人体モデル7の着座姿勢とを、側面パネル5の外側面から視認して比較できる透明のパネル5であるから、第三者が、透明のパネル5の他方側から、着座者の着座姿勢と人体モデル7とを比較して、着座者に正しい着座姿勢を教示することが可能である。
【0034】
また、前記人体モデル7は、側面パネル5に入射された光源によって発光するように描写されていることを特徴とするから、人体モデル7をより確実に視認することが可能であり、さらには、教具として使用するときに演出効果の高い椅子1を提供することが可能である。
【0035】
何れにせよ、本発明の椅子1は、座板3と背板2とを有し、座板3と背板2との側面パネル5に、人体モデル7が描写される構成であって、着座者の着座姿勢と側面パネル5の人体モデル7とを比較して、着座者がその椅子1における最適な着座姿勢を知ることが可能な構成であればよく、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 椅子
2 背板
3 座板
4 支持部材
5 左側面パネル(側面パネル)
6 右側面パネル(側面パネル)
7 人体モデル
8 ブラケット
9 取付ネジ
10 LED照明(照明)
11 頭部支持板
12 水平フレーム(フレーム)
13 垂直フレーム(フレーム)
14 雌ネジ孔
15 貫通孔
P 取付面
B 窪み
F 縁部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座板と背板とを有するとともに、左右少なくとも一側に、着座者の着座姿勢と比較できる着座姿勢を示す人体モデルを描写した側面パネルを設けたことを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記人体モデルは、骨盤および背骨の曲がり具合が視認できる人体の透過図である請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前記側面パネルは、着座者と人体モデルの着座姿勢とを、側面パネルの外側面から視認して比較できる透明のパネルである請求項1乃至2記載の椅子。
【請求項4】
前記人体モデルは、側面パネルに入射された光源によって発光するように描写されている請求項1乃至3記載の椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−220788(P2010−220788A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71059(P2009−71059)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】