椅子
【課題】着座者の上体の移動に容易かつ確実に対応させ得る椅子を提供する。
【解決手段】背アウターシェルと、この背アウターシェルの内面に添設される背インナーシェル81とを備えてなる椅子であって、背インナーシェル81にヘッドレスト取付部を設け、このヘッドレスト取付部に、着座者の頭部を支持するためのヘッドレスト本体823と、背インナーシェル取付部に取り付けるためのベース821と、ヘッドレスト本体823とベース821との間を側面視屈曲させた屈曲部822とを有したヘッドレスト82を取り付け、背インナーシェル81により直接に支持し得るように構成した。
【解決手段】背アウターシェルと、この背アウターシェルの内面に添設される背インナーシェル81とを備えてなる椅子であって、背インナーシェル81にヘッドレスト取付部を設け、このヘッドレスト取付部に、着座者の頭部を支持するためのヘッドレスト本体823と、背インナーシェル取付部に取り付けるためのベース821と、ヘッドレスト本体823とベース821との間を側面視屈曲させた屈曲部822とを有したヘッドレスト82を取り付け、背インナーシェル81により直接に支持し得るように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドレストを具備する椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドレストを設けた椅子が種々提案されている。これらのようなものは、一般に背の外形を構成する背フレームや背アウターシェルに強固に取り付けられたものとなっている。そしてこれらのヘッドレストを備えた椅子は、前記背フレームや背アウターシェルに対して着脱可能に構成されたものとして着座者の使用目的によってヘッドレストの有無を選択し得るようなものや、背フレームやアウターシェルに対する相対角度を調整し得る機能が付与されることによって、着座者個人の姿勢に応じて頭部を支持することができる椅子も提案されている。
【0003】
また同文献に記載の椅子は、着座者の上体の姿勢変更に応じ易くするための構成として、背の外形を構成する背アウターシェルの内側に、当該背アウターシェルよりも柔らかいと思われる素材により構成した背インナーシェルを設け、当該背インナーシェルを着座者の背の形や姿勢変更に追従させる態様とすることにより、着座者の上体を腰から背に亘って背インナーシェルに支持させるとともに、着座者の頭部は背アウターシェルに取り付けられたヘッドレストによって支持させているものとなっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−265264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1の通り従来のヘッドレストは、上述の通り背の外形を構成する背フレームや背アウターシェルに取り付けられているため、例えば前記特許文献2の椅子のように背インナーシェルによって好適に着座者の上体の移動に応じ得る態様としても、ヘッドレストの位置は背アウターシェルによって決められているために、ヘッドレストは背インナーシェルの動作すなわち上体の動作に応じて着座者の頭部に追従し得ていないのが現状である。
【0006】
また、ヘッドレストを背インナーシェルの動作或いは変形にともなう頭部の動きに対応させるものとするためには、背フレームや背アウターシェルに対するヘッドレストの取付構造をより複雑なものとしなければならない。しかしながら、そのような態様を採用したとしても、ヘッドレストは着座者の頭部の動作を介した動作となるため、着座者の頭部には動作に伴って起こる摩擦や圧迫による違和感を多かれ少なかれ与えてしまっているのが現状である。
【0007】
本発明は、このような不具合に着目したものであり、着座者の上体の移動に容易かつ確実に対応させ得る椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0009】
すなわち本発明に係る椅子は背アウターシェルと、この背アウターシェルの内面に添設される背インナーシェルとを備えてなる椅子であって、前記背インナーシェルにヘッドレストを直接に支持させていることを特徴とする。
【0010】
ここで、直接に支持させるとは、一体としている構成も含まれる概念である。
【0011】
また、本発明に係る椅子は、背アウターシェルと、この背アウターシェルの内面に添設される背インナーシェルとを備えてなる椅子であって、前記背インナーシェルにヘッドレスト取付部を設け、このヘッドレスト取付部に取り付けられたヘッドレストを前記背インナーシェルにより直接に支持し得るように構成したことを特徴とする。
【0012】
このようなものであれば、ヘッドレストは背インナーシェルに直接に支持されているため、着座者の上体の細やかな移動に対して、着座者の頭部を介させることなく背インナーシェルの動きにヘッドレストの動きを細やか且つ速やかに対応させることが可能となる。そうすることにより、背インナーシェルに背を預けた着座者の座り心地を損なうことなく好適に頭部を支持し得るヘッドレストを具備した椅子を提供することが可能となる。
【0013】
背インナーシェルの動作を損なうことを有効に回避し得るヘッドレストの取付を実現するためには、ヘッドレストを、着座者の頭部を支持するためのヘッドレスト本体と、前記背インナーシェル取付部に取り付けるためのベースと、前記ヘッドレスト本体と前記ベースとの間を側面視屈曲させた屈曲部とを有したものとすることが望ましい。
【0014】
そして屈曲部が、当該屈曲部において側面視凹ませた前面側にクッションの引き込み部を有したものとすれば、ヘッドレストにも背インナーシェル同様のクッションを簡単な構造で適用することができる。
【0015】
特に、張り地やクッションを好適に取付け得る具体的な構成として、引き込み部が、前記クッションを押える為のワイヤを位置付けるためのワイヤ溝と、当該ワイヤを引っ張る紐を挿通させるための紐挿通孔とを有したものを挙げることができる。
【0016】
ヘッドレストの背インナーシェルに対する取り付け並びに位置決めを速やか且つ確実に行い得るものとするためには、前記屈曲部が、当該屈曲部の背面側に前記背インナーシェルの上縁に載置するための側面視突出させた載置段部を有し、前記背インナーシェルとヘッドレストとの背面側の表面を連続させて形成しておくことが好ましい。
【0017】
また、背インナーシェルに対する着座感を損なわずにヘッドレストを取り付けるための構成として、ベースが背インナーシェル取付部に密着し得る板状をなしたものであるものを挙げることができる。
【0018】
前記ヘッドレスト本体と前記ベースとを一体に形成した際に、当該ヘッドレスト本体並びにベースの強度を有効に担保するためには、ヘッドレスト本体を側面視湾曲させた形状とするとともに前記ベースを平面視湾曲させた形状とすることが望ましい。
【0019】
そして、ヘッドレストを適用した場合における椅子の組付けを速やかに行ない得るものとするためには、背インナーシェルに前記ヘッドレストを支持させた状態でクッションを添設させ、しかる後に当該背インナーシェル、ヘッドレスト及びクッションを張り地で覆うことにより、前記背アウターシェルに取り付け得る背ユニットを構成する態様を適用することが好ましい。
【0020】
そして、背ユニットが着座者の上体に応じた動きを成し得るようにするためには、背ユニットの上端を背アウターシェルに対して当該背アウターシェルの面方向の動作を許容した状態で取り付けておくことが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ヘッドレストは背インナーシェルに直接に支持されているため、着座者の上体の細やかな移動に対して、着座者の頭部を介させることなく背インナーシェルの動きにヘッドレストの動きを細やか且つ速やかに対応させることが可能となるので、着座者の座り心地を損なうことなく好適に頭部を支持し得るヘッドレストを具備した椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態を示す全体斜視図。
【図2】同実施形態の背凭れの前面側を示す分解斜視図。
【図3】同実施形態の背凭れの前面側を示す分解斜視図。
【図4】同実施形態の背ユニットの背面側を示す分解斜視図。
【図5】同実施形態の背凭れの一部を示す分解斜視図。
【図6】同実施形態における背ユニットの一部を示す部分拡大斜視図。
【図7】同実施形態における背ユニットの要部拡大斜視図。
【図8】同実施形態における背ユニットの要部拡大正面図。
【図9】図8におけるX−X線断面図。
【図10】図8におけるY−Y線断面図。
【図11】図実施形態におけるヘッドレストの中央側端面並びに平端面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明をシンクロチルト式の事務用回転椅子に適用した場合の一実施形態につき、図面を参照して説明する。
【0024】
この椅子は、図1に示すように、脚部1と、この脚部1の上部に支持され水平旋回可能な支持基部2と、この支持基部2の上に配された座受け3と、この座受け3に保持された座4と、前記座受け3下方から左右上方に延びて設けられた肘掛け9と、前記支持基部2に後傾動作可能に設けられた背支桿5と、この背支桿5に取り付けられた背凭れ6とを具備してなる。
【0025】
脚部1は、図1に示すように、キャスタを有した脚羽根タイプの脚ベース11と、この脚ベース11の中心部に立設した脚支柱12とを具備してなる。前記脚支柱12は、ガススプリングを主体に構成された通常のもので、この脚支柱12の上端部に前記支持基部2が取り付けられている。
【0026】
支持基部2は、図1に示すように、前記脚部1によって水平旋回可能に支持されたもので、前記脚支柱12に装着されたハウジング21と、このハウジング21に貫装される背凭れ支持用の主軸22と、この主軸22に力を付与して前記背凭れ6の後傾動作に対して弾性反発力を発生させる図示しない傾動反力発生機構とを具備してなる。前記傾動反力発生機構は、図示しないコイルスプリングやガススプリング等を用いて前記主軸22に回転方向の弾性反発力を付与し得るように構成されたものであるが、通常のものであるため説明を省略する。
【0027】
座受け3は、図1に示すように、上面に座4を支持する盤状のもので、その前端側が前記支持基部2に前後動自在に支持されているとともに、後端側が前記背支桿5の基端近傍部分に相対回動可能に支持されている。この構成によって、この座受け3上に配される座4が、前記背凭れ6の後傾動作に対して一定の角度比率をもって沈み込む動作、換言すれば、シンクロチルト動作が実現されるようになっている。
【0028】
肘掛け9は、図1に示すように、基端部を前記座受け3に取り付けられた肘支柱91と、この肘支柱91に支持された肘当て92とを具備してなる。左右の肘掛け9は、左右対称形状をなしている。
【0029】
背支桿5は、図1に示すように、全体が側面視ほぼL字型であり、基端部を前記支持基部2の主軸22に後傾動作可能に取り付けられた下部背フレーム52と、この下部背フレーム52の先端に支軸53を介して後傾動作可能に取り付けられた上部背フレーム51とを備えている。前記下部背フレーム52は、金属製のもので、その外側がカバー521により覆われている。そのカバー521の外面は、前記上部背フレーム51の外面に連続する位置から座4の下面に至るまで前方に延びて設けられている。上部背フレーム51は、合成樹脂により一体に成型され、背凭れ6が起立状態の場合にほぼ垂直に延び、この上端部で背凭れ6上部を支持している。すなわち、本実施形態では、背凭れ6の下方部位を下部背フレーム52に固定する一方、背凭れ6の上方部位を上部背フレーム51に上下方向スライド可能に支持させている。その上で、上部背フレーム51を下部背フレーム52とは独立に一定の角度範囲内で傾倒可能とし、前記上部背フレーム51が下部背フレーム52に対して傾動動作可能に構成されている。そしてこの上部背フレーム51は、前記下部背フレーム52に対して図示しないスプリングにより前傾方向に弾性付勢されている。この実施形態では、下部背フレーム52と支持基部2との間に図示しない傾動禁止機構を設け、下部背フレーム52の支持基部2に対する傾動を許容するフリーロッキング状態、または、下部背フレーム52を所望の角度で傾動を禁止する任意位置固定状態を取り得るようになっている。傾動禁止機構の構造については、通常のものであるため説明を省略する。
【0030】
背凭れ6は、図1乃至図6に示すように、背アウターシェル7の前面に背ユニット8を装着してなる。
【0031】
背アウターシェル7は、図1乃至図3及び図5に示すように、合成樹脂製の一体成形品であり、上下方向中間部に最も前方に突出させた突出頂部を有し、その突出頂部から後方に湾曲した形状をなすシェル本体70を主体に構成されており、このシェル本体70の背面側に当該背アウターシェル7を背支桿5に取り付けるための下側取付部71及び上側取付部72を備えている。下側取付部71は前記シェル本体70の下部から後方に突出してなるものであり、前記下部背フレーム52の上端部にビス等の止着具を用いて固定される。上側取付部72はスライド係合機構Cを収容するための凹陥状のもので、この上側取付部72に装着された図示しないスライド係合機構Cを介して背アウターシェル7と背支桿5の上部背フレーム51の上端部とが上下方向に相対移動可能に接続される。
【0032】
背アウターシェル7の前面側には、前記背ユニット8を取り付けるための上端取付部73と、下端取付部74とが設けられている。上端取付部73は、前記シェル本体70の上部に複数の掛爪731を左右方向に間隔をあけて突出させたものである。下端取付部74は、前記シェル本体70の下部中央に突出させた二股部分を有する中央突出部741と、前記シェル本体70の下部両端に設けられた爪受部742とからなる。
【0033】
背ユニット8は、図2乃至図4に示すように、背インナーシェル81と、この背インナーシェル81の直接に支持されたヘッドレスト82と、これらヘッドレスト82及び背インナーシェル81をくるむ袋状の外装材83とを具備してなる。
【0034】
背インナーシェル81は、図3乃至図6に示すように、前記背アウターシェル7と略同じ外形をなした合成樹脂製の一体成形品であり、上下方向中間部に最も前方に突出させた突出頂部を有し、その突出頂部から後方に湾曲した形状をなすシェル本体810を主体として構成される。このシェル本体810には、背インナーシェル81を含む背ユニット8を前記背アウターシェル7に取り付けるための上端取付部811及び下端取付部812を設けている。上端取付部811は、前記シェル本体810の上部に設けられた複数の爪掛孔813を前記掛爪731に対応させて形成してなるもので、これら各爪掛孔813に前記掛爪731を上下方向に相対変位可能に掛け止めることにより、この背インナーシェル81の上部を前記背アウターシェル7の上部に上下方向に相対変位可能に取り付けている。下端取付部812は、前記シェル本体810の下部中央部に設けられた中央挿入部814と、前記シェル本体810の下部両側部に設けられた爪部815とを具備してなる。中央挿入部814は、窓816の中間位置に横架材817を配設したもので、その窓816に挿入された背アウターシェル7の中央突出部741の二股部分を前記横架材817に係合させることによって、背インナーシェル81の下端部中央を背アウターシェル7の下端部に、若干の回動や撓み以外の動作を禁止しながら、換言すれば、面方向並びに厚み方向においては相対移動不能に取り付けるようにしている。また、爪部815は、その先端が外側方に屈曲したもので、その爪部815を背インナーシェル81の一時的な弾性変形を利用して背アウターシェル7の爪受部742に係わり合わせることにより、背インナーシェル81の下端部両端を背アウターシェル7の下端部に、若干の回動や撓み以外の動作を禁止しながら、換言すれば、面方向並びに厚み方向においては相対移動不能に取り付けるようにしている。
【0035】
ここで、本実施形態に係る椅子は、以上のようにしてなる背インナーシェル81にヘッドレスト82を直接支持させていることを特徴としている。具体的には、背インナーシェル81におけるシェル本体810に、別体であるヘッドレスト82を直接支持させていることを特徴としているものである。
【0036】
以下本実施形態に係るヘッドレストの構成について、詳述する。
【0037】
ヘッドレスト82は、図3乃至図8並びに図11に示すように、合成樹脂製の一体成型品であり、ヘッドレスト本体823と、このヘッドレスト本体823の下端縁から側面視屈曲させた屈曲部822を介して板状に設けられたベース821とを具備してなる。
【0038】
ヘッドレスト本体823は、側面視において中央部が前方に突出し、かつ、平面視において中央部が凹陥するように湾曲させたもので、水平なスリット825を複数本平行に備えている。そしてスリットは、その開口端から背面側にそれぞれスリット825aを突出させて設けている。
【0039】
屈曲部822は、ヘッドレスト本体823とベース821との境界部分に形成されたもので、前面側が側面視くの字形に凹むように屈曲した形状をなしている。そして屈曲部822の背面側の湾曲形状は、背インナーシェル81の上縁の湾曲形状に合致させてある。具体的には屈曲部は、側面視凹ませた前面側に位置付けたクッションの引き込み部824と、背面側に位置付けられ背インナーシェル81の上縁の上側に載置するための載置段部828とを有している。引き込み部824は、外装材83を取り付ける際にクッション831を張り地832ごと押えて境界833を形成するためのワイヤ83wを位置付けるためのワイヤ溝826と、当該ワイヤ83wを引っ張る紐83tを挿通させるための紐挿通孔827とを有している。そして載置段部828は、屈曲部822の背面側において側面視突出させた形状をなす。そうすることにより、当該載置段部828を背インナーシェル81の上側に載せ置いた状態では、背インナーシェル81にヘッドレスト82を直接的に支持させた際の背面側の表面外形が、張り地832が無理なく収まるようになめらかに連続するような外形を形成している。
【0040】
ベース821は、背インナーシェル81の前面に添設し得る板状のもので、複数のボルトbを用いて背インナーシェル81のシェル本体810に密着させた状態で取り付けられている。具体的には、ベース821の複数箇所に取り付けたナットNにインナーシェル81の背面側から貫通させたボルトbを螺着することによって、このベース821が前記背インナーシェル81に固定されるようになっている。
【0041】
しかして本実施形態では、ヘッドレスト82の具体的な形状を図5、図6及び図11等に示すように設定することによって、以下に示す種々の作用を奏するものとしている。
【0042】
すなわち同図に示すように、ヘッドレスト本体823を側面視湾曲させた形状とするとともにベース821を背インナーシェル81のシェル本体810に密着するように平面視湾曲させた形状としている。そうすることにより、ヘッドレスト82は屈曲部822を介して一体に形成しているので、特に平面視湾曲させたベース821を薄肉に形成しても、当該ベース821は上方が側面視湾曲させたヘッドレスト本体823に連続しているので、合成樹脂の厚み以上に平面視において撓み難いものに仕上がっている。
【0043】
他方、ヘッドレスト本体823は、具体的には図11(a)に示すように側面視湾曲させるとともに、平面視においても同図(b)のように湾曲させることによって、ヘッドレスト本体823単体として撓みがたい形状を実現している。そして特に同図(a)に示すように、ヘッドレスト本体823の外形をなす前面823aと後面823bとで、その曲率を異ならせて形成している。具体的には、前面823a側においては曲率を相対的に大きく形成するとともに、上下方向中間からやや上側に亘る領域の曲率を大きく設定することにより、ヘッドレスト本体823への前斜め上方からの荷重を好適に受けやすくしている。そしてヘッドレスト本体823の樹脂の厚みは全領域に亘って略一定としながらも、後面823b側にはスリット825周囲からリブ825aを、上側から下へ向かうに従って大きく突出させることによって後面823bの外形がなす曲率が小さくなるように設定している。そうすることにより、外装材83をくるんだ際の張り地832が「だぶつき」や弛みなく張られる。加えて、後面823b下半分のリブ825bが大きく突出することによって側面視の厚みが実質大きく設定されていることとなる。そのため、スリット825による肉盗みによって樹脂の使用量を抑えた構成としつつ、前面825aの斜め上方から受ける荷重を受けるに足る以上剛性を担保している。さらにヘッドレスト本体823の上側はリブ825aの突出寸法が小さい為、着座者の荷重に応じて部分的に撓みやすく、着座者頭部に対し好適な感触を外装材83とともに提供し得るものとなっている。
【0044】
そして実施形態においては、前記ベース821を背インナーシェル81に直接的に支持させるための取付部分を可及的に薄くするために、以下の部品取付構造Aを採用している。この部品取付構造Aは、図7、図8及び図9に示すように、ベース821に被取付部品であるナットNを取り付けるためのものであって、前記ベース821に、主凹部A11と副凹部A12とを隔壁A13を介して隣設するとともに、前記主凹部A11に挿入されるナットNを該隔壁A13の弾性変形を利用して係合させる部品保持用の爪A15を設けたものである。すなわち、前記ナットNは、軸状をなすナット本体N1の一端に鍔部N2を設けてなるいわゆるT型ナットタイプのものである。前記主凹部A11は、前記鍔部N2を嵌合させ得る有底のもので、その底壁A14中央部に前記ナット本体N1をベース821裏面側に貫通させるための貫通部A14aを有している。前記副凹部A12は、前記主凹部A11の両側においてベース821の裏面側に貫通させて設けた一対の長孔状のものである。前記隔壁A13は、前記主凹部A11と前記対をなす副凹部A12、A12との間にそれぞれ形成されたもので、厚み方向に弾性変形可能な厚みに設定されており、これら両隔壁A13にベース821の前面側に突出する爪A15を設けている。これらの爪A15は、前記ナットNが前記主凹部A11に挿入される際に、隔壁A13の一時的な弾性変形を利用して前記鍔部N2の外面側に係合して、ナットNを主凹部A11内に保持し得るようになっている。
【0045】
このようにして相互に一体化された背インナーシェル81とヘッドレスト82に外装材83が装着される。
【0046】
外装材83は、図1乃至図4に示すように、モールドウレタン等により作られたクッション831と、このクッション831の表面側を覆う張地832とを具備してなる。この外装材83は、前記ヘッドレスト82の屈曲部822において前記背インナーシェル81側に引き込まれており、ヘッドレスト本体領域と背インナーシェル領域とを区画する境界833が形成されている。前記外装材83の引き込み部824に対応する箇所の構成を具体的に説明すれば次の通りである。すなわち、この外装材83は、背ユニット8の前面を覆うための前面部83Fと背ユニット8の背面を覆うための背面部83Bとを備えて成る袋状のもので、ヘッドレスト82及び背インナーシェル81を上側からくるむことができるように下側が開放されている。背面部83Bには、上端取付部73、811に対応する上部開口部83B1と、下端取付部74、812に対応する下部開口部83B2と、後述する係合機構Cに対応する中間開口部83B3とが穿設されている。
【0047】
しかして本実施形態では、前面部83Fの前記境界833に対応する部位には、引き込み用のワイヤ83wが縫い込まれており、このワイヤ83wを利用して前面部83Fの境界833対応部位を前記屈曲部822内に引き込むことができるようにしている。またこのワイヤ溝の中間2箇所にはワイヤ83をワイヤ溝内へと引き込むための紐83tを結びつけるなどして取り付けている。
【0048】
以上のようにしてなる椅子において、背インナーシェル81の上部と下部との中間に位置する部位を背アウターシェル7に、面方向の相対移動を許容しつつ厚み方向の相対離間を制限する浮き上がり制限用の係合機構Cを介して支持させている。前記係合機構Cは、背インナーシェル81側に設けられ厚み方向に弾性変形可能な複数枚の片持弾性片C11を截頭錐形状に配列させてなる受け部C1と、背アウターシェル7側に設けられ前記片持弾性片C11の自由端縁C111により形成される係合孔C12に前記片持弾性片C11の弾性変形を利用して係わり合う突起C2とを具備してなる。具体的には、前記受け部C1は、背インナーシェル81に移動不能に取り付けられたヘッドレスト82のベース821に一体に形成されたもので、基端縁よりも自由端縁C111側が前方にくるように傾斜させた複数枚の片持弾性片C11を、前方に膨出する截頭円錐形状に配列させてなる。また、前記背インナーシェル81及び前記外装材83の背面部83Bにおける前記受け部C1に対応する部位には、この受け部C1を背ユニット8の背面側に開放するための孔をそれぞれ設けており、これらの孔を通して挿入された突起C2を前記受け部C1に係わり合わせるようにしている。突起C2は、背アウターシェル7の前面側に突設されたもので、前記係合孔C12の内径よりも若干小径な軸部C21と、この軸部C21の先端に設けられ前記係合孔C12の内径よりも大きな抜け止め鍔部C22とを具備してなる。この突起C2は、前記背アウターシェル7に一体に設けたものであってもよいし、別体に設けたものであってもよい。
【0049】
以上のようにしてなる椅子は、前記背インナーシェル81にヘッドレスト82を取り付けた上で、これら背インナーシェル81及びヘッドレスト82を外装材83によりくるみ、外装材83の境界833を屈曲部822に引き込んで背ユニット8を完成させる。
【0050】
具体的には、図5にも模式的に示すように、外装材をヘッドレストの上方から被せた際にワイヤ83wとワイヤ溝826とを位置決めするとともに、紐を前方から一対の孔である前記紐挿通孔にそれぞれ通し、屈曲部後方すなわち載置段部828の位置で結ぶなどすることによって、ワイヤ83wは幅方向略全域に亘って張り地及びクッションを引き込むことによって、外装材の境界833が形成されることとなる。
【0051】
しかる後に、その背ユニット8を背アウターシェル7の前面に取り付ける。背ユニット8を背アウターシェル7に取り付けるにあたっては、まず、背インナーシェル81の上端取付部811に背アウターシェル7の上端取付部73を係わり合わせるとともに、背インナーシェル81の下端取付部812に背アウターシェル7の下端取付部74を係わり合わせる。この状態で背ユニット8の中間部を背アウターシェル7方向に押圧し、前記係合機構Cの受け部C1に突起C2を係合させる。
【0052】
次いで、この椅子の作動を説明する。図示しない傾動禁止機構を操作してフリーロッキング状態にセットすると、背凭れ6に荷重をかけることにより、背支桿5全体が支持基部2に対して傾動反力発生機構の付勢力に抗して後傾し得ることになる。また、座4もこれに伴ってシンクロチルト動作を行う。一方、傾動禁止機構を操作して任意位置固定状態にセットすると、背凭れ6に荷重をかけることにより、下部背フレーム52が支持基部2に対して固定され、上部背フレーム51のみが下部背フレーム52に対して傾動を許容された状態となる。
【0053】
このように種々の態様に切換えて使用することができる椅子においては、背凭れ6の背アウターシェル7及び背インナーシェル81に様々な荷重が作用することになる。特に、本実施形態においては、一本の背支桿5によって背凭れ6を支持しているので、背アウターシェル7及び背インナーシェル81にねじれ方向の荷重等も作用することがある。しかしこの椅子においては、背アウターシェル7及び背インナーシェル81を上端部及び下端部において接続しているため、両シェル7、81を完全に一体化した場合に比べて、背アウターシェル7及び背インナーシェル81の変形自由度を高めることができる。すなわち、前後の曲げに対しては、両シェル7、81が協働して対抗するが、左右のねじれに対しては、両シェル7、81が面方向に相対的にずれ動いてしなやかな変形を実現する等、背凭れ6に多様な変形特性を付与することが可能になる。しかも、この椅子では、両シェル7、81の中間部において前記係合機構Cを用いて係わり合わせているので、面方向の相対移動を許容しつつ前後方向の相対離間を制限するため、多様な変形を実現できるにもかかわらず中間部の浮き上がりを防止することができる。また、受け部C1が截頭円錐形をなしているので、背インナーシェル81を背アウターシェル7に取り付ける際に、受け部C1の中心と突起C2の中心とに多少の位置ずれがあっても、両者を押しつけることにより、突起C2の先端が受け部C1の係合孔C12に案内され係合を完了させることができる。そのため、係合機構Cを目視できない状態でも、押しつけ動作のみで容易に取り付けることができる。
【0054】
以上のような構成とすることにより、本実施形態に係る椅子は、ヘッドレスト82を背インナーシェル81に直接に支持させているため、着座者の上体の細やかな移動に対して、自ずとヘッドレスト82の動きを細やか且つ速やかに対応させることが可能となっている。そうすることにより、背インナーシェル81に背を預けた着座者の座り心地を損なうことなく好適に頭部を支持し得るヘッドレスト82付きの椅子を実現している。
【0055】
背インナーシェル81の動作を損なうことを有効に回避し得るヘッドレスト82の取付を実現するために本実施形態では、ヘッドレスト82をシェル本体810に取り付けるためのベース821に取り付けたものとしている。
【0056】
そしてヘッドレスト82にも背インナーシェル81同様のクッション831を簡単な構造で適用するために本実施形態では、屈曲部822に、当該屈曲部822において側面視凹ませた前面側にクッション831の引き込み部824を設けている。そして特に、引き込み部824が、前記クッション831並びに張り地832を押える為のワイヤ83wを位置付けるためのワイヤ溝826と、当該ワイヤ83wを引っ張る紐83tを挿通させるための紐挿通孔827とを設けて、張り地832やクッション831を速やか且つ確実に取り付け得るものとなっている。
【0057】
そして本実施形態では、屈曲部822の背面側に背インナーシェル81の上縁に載置するための側面視突出させた載置段部828を設けることによって、ヘッドレスト82の背インナーシェル81に対する取り付け並びに位置決めを速やか且つ確実に行い得るものとなっている。
【0058】
また本実施形態ではベース821がシェル本体810に密着し得る板状のものとしているので、背インナーシェル81に対する着座感を損なわずにヘッドレスト82を取り付け得るものとなっている。
【0059】
そして本実施形態では、樹脂の一体成型であるヘッドレスト82の形状を、ヘッドレスト本体823を側面視湾曲させた形状とするとともに前記ベース821を平面視湾曲させた形状とすることにより、ヘッドレスト本体823並びにベース821の強度を有効に担保している。
【0060】
そして、背ユニット8に含まれる背インナーシェル81が着座者の上体に忠実に応じた動きを成し得るようにするために本実施形態では、背ユニット8すなわち背インナーシェル81の上端を背アウターシェル7に対して当該背アウターシェル7に対する面方向の動作を許容した状態で取り付けている。そうすることにより、背ユニット8の上端に位置付けられるヘッドレスト82が着座者の上体の動作に応じた細やかな動作が可能となっている。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0062】
例えば、上記実施形態ではヘッドレストが背インナーシェルに対して別体である態様を開示したが、勿論、ヘッドレストと背インナーシェルとが一体となっていることによって「直接に支持させ」たものであってもよい。またヘッドレスト本体や屈曲部、外装材等の具体的な態様は上記実施形態のものに限定されることはなく、既存のものを含め、種々の態様のものを適用することができる。
【0063】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0064】
7…背アウターシェル
81…背インナーシェル
82…ヘッドレスト
821…ベース
822…屈曲部
823…ヘッドレスト本体
824…引き込み部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドレストを具備する椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドレストを設けた椅子が種々提案されている。これらのようなものは、一般に背の外形を構成する背フレームや背アウターシェルに強固に取り付けられたものとなっている。そしてこれらのヘッドレストを備えた椅子は、前記背フレームや背アウターシェルに対して着脱可能に構成されたものとして着座者の使用目的によってヘッドレストの有無を選択し得るようなものや、背フレームやアウターシェルに対する相対角度を調整し得る機能が付与されることによって、着座者個人の姿勢に応じて頭部を支持することができる椅子も提案されている。
【0003】
また同文献に記載の椅子は、着座者の上体の姿勢変更に応じ易くするための構成として、背の外形を構成する背アウターシェルの内側に、当該背アウターシェルよりも柔らかいと思われる素材により構成した背インナーシェルを設け、当該背インナーシェルを着座者の背の形や姿勢変更に追従させる態様とすることにより、着座者の上体を腰から背に亘って背インナーシェルに支持させるとともに、着座者の頭部は背アウターシェルに取り付けられたヘッドレストによって支持させているものとなっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−265264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1の通り従来のヘッドレストは、上述の通り背の外形を構成する背フレームや背アウターシェルに取り付けられているため、例えば前記特許文献2の椅子のように背インナーシェルによって好適に着座者の上体の移動に応じ得る態様としても、ヘッドレストの位置は背アウターシェルによって決められているために、ヘッドレストは背インナーシェルの動作すなわち上体の動作に応じて着座者の頭部に追従し得ていないのが現状である。
【0006】
また、ヘッドレストを背インナーシェルの動作或いは変形にともなう頭部の動きに対応させるものとするためには、背フレームや背アウターシェルに対するヘッドレストの取付構造をより複雑なものとしなければならない。しかしながら、そのような態様を採用したとしても、ヘッドレストは着座者の頭部の動作を介した動作となるため、着座者の頭部には動作に伴って起こる摩擦や圧迫による違和感を多かれ少なかれ与えてしまっているのが現状である。
【0007】
本発明は、このような不具合に着目したものであり、着座者の上体の移動に容易かつ確実に対応させ得る椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0009】
すなわち本発明に係る椅子は背アウターシェルと、この背アウターシェルの内面に添設される背インナーシェルとを備えてなる椅子であって、前記背インナーシェルにヘッドレストを直接に支持させていることを特徴とする。
【0010】
ここで、直接に支持させるとは、一体としている構成も含まれる概念である。
【0011】
また、本発明に係る椅子は、背アウターシェルと、この背アウターシェルの内面に添設される背インナーシェルとを備えてなる椅子であって、前記背インナーシェルにヘッドレスト取付部を設け、このヘッドレスト取付部に取り付けられたヘッドレストを前記背インナーシェルにより直接に支持し得るように構成したことを特徴とする。
【0012】
このようなものであれば、ヘッドレストは背インナーシェルに直接に支持されているため、着座者の上体の細やかな移動に対して、着座者の頭部を介させることなく背インナーシェルの動きにヘッドレストの動きを細やか且つ速やかに対応させることが可能となる。そうすることにより、背インナーシェルに背を預けた着座者の座り心地を損なうことなく好適に頭部を支持し得るヘッドレストを具備した椅子を提供することが可能となる。
【0013】
背インナーシェルの動作を損なうことを有効に回避し得るヘッドレストの取付を実現するためには、ヘッドレストを、着座者の頭部を支持するためのヘッドレスト本体と、前記背インナーシェル取付部に取り付けるためのベースと、前記ヘッドレスト本体と前記ベースとの間を側面視屈曲させた屈曲部とを有したものとすることが望ましい。
【0014】
そして屈曲部が、当該屈曲部において側面視凹ませた前面側にクッションの引き込み部を有したものとすれば、ヘッドレストにも背インナーシェル同様のクッションを簡単な構造で適用することができる。
【0015】
特に、張り地やクッションを好適に取付け得る具体的な構成として、引き込み部が、前記クッションを押える為のワイヤを位置付けるためのワイヤ溝と、当該ワイヤを引っ張る紐を挿通させるための紐挿通孔とを有したものを挙げることができる。
【0016】
ヘッドレストの背インナーシェルに対する取り付け並びに位置決めを速やか且つ確実に行い得るものとするためには、前記屈曲部が、当該屈曲部の背面側に前記背インナーシェルの上縁に載置するための側面視突出させた載置段部を有し、前記背インナーシェルとヘッドレストとの背面側の表面を連続させて形成しておくことが好ましい。
【0017】
また、背インナーシェルに対する着座感を損なわずにヘッドレストを取り付けるための構成として、ベースが背インナーシェル取付部に密着し得る板状をなしたものであるものを挙げることができる。
【0018】
前記ヘッドレスト本体と前記ベースとを一体に形成した際に、当該ヘッドレスト本体並びにベースの強度を有効に担保するためには、ヘッドレスト本体を側面視湾曲させた形状とするとともに前記ベースを平面視湾曲させた形状とすることが望ましい。
【0019】
そして、ヘッドレストを適用した場合における椅子の組付けを速やかに行ない得るものとするためには、背インナーシェルに前記ヘッドレストを支持させた状態でクッションを添設させ、しかる後に当該背インナーシェル、ヘッドレスト及びクッションを張り地で覆うことにより、前記背アウターシェルに取り付け得る背ユニットを構成する態様を適用することが好ましい。
【0020】
そして、背ユニットが着座者の上体に応じた動きを成し得るようにするためには、背ユニットの上端を背アウターシェルに対して当該背アウターシェルの面方向の動作を許容した状態で取り付けておくことが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ヘッドレストは背インナーシェルに直接に支持されているため、着座者の上体の細やかな移動に対して、着座者の頭部を介させることなく背インナーシェルの動きにヘッドレストの動きを細やか且つ速やかに対応させることが可能となるので、着座者の座り心地を損なうことなく好適に頭部を支持し得るヘッドレストを具備した椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態を示す全体斜視図。
【図2】同実施形態の背凭れの前面側を示す分解斜視図。
【図3】同実施形態の背凭れの前面側を示す分解斜視図。
【図4】同実施形態の背ユニットの背面側を示す分解斜視図。
【図5】同実施形態の背凭れの一部を示す分解斜視図。
【図6】同実施形態における背ユニットの一部を示す部分拡大斜視図。
【図7】同実施形態における背ユニットの要部拡大斜視図。
【図8】同実施形態における背ユニットの要部拡大正面図。
【図9】図8におけるX−X線断面図。
【図10】図8におけるY−Y線断面図。
【図11】図実施形態におけるヘッドレストの中央側端面並びに平端面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明をシンクロチルト式の事務用回転椅子に適用した場合の一実施形態につき、図面を参照して説明する。
【0024】
この椅子は、図1に示すように、脚部1と、この脚部1の上部に支持され水平旋回可能な支持基部2と、この支持基部2の上に配された座受け3と、この座受け3に保持された座4と、前記座受け3下方から左右上方に延びて設けられた肘掛け9と、前記支持基部2に後傾動作可能に設けられた背支桿5と、この背支桿5に取り付けられた背凭れ6とを具備してなる。
【0025】
脚部1は、図1に示すように、キャスタを有した脚羽根タイプの脚ベース11と、この脚ベース11の中心部に立設した脚支柱12とを具備してなる。前記脚支柱12は、ガススプリングを主体に構成された通常のもので、この脚支柱12の上端部に前記支持基部2が取り付けられている。
【0026】
支持基部2は、図1に示すように、前記脚部1によって水平旋回可能に支持されたもので、前記脚支柱12に装着されたハウジング21と、このハウジング21に貫装される背凭れ支持用の主軸22と、この主軸22に力を付与して前記背凭れ6の後傾動作に対して弾性反発力を発生させる図示しない傾動反力発生機構とを具備してなる。前記傾動反力発生機構は、図示しないコイルスプリングやガススプリング等を用いて前記主軸22に回転方向の弾性反発力を付与し得るように構成されたものであるが、通常のものであるため説明を省略する。
【0027】
座受け3は、図1に示すように、上面に座4を支持する盤状のもので、その前端側が前記支持基部2に前後動自在に支持されているとともに、後端側が前記背支桿5の基端近傍部分に相対回動可能に支持されている。この構成によって、この座受け3上に配される座4が、前記背凭れ6の後傾動作に対して一定の角度比率をもって沈み込む動作、換言すれば、シンクロチルト動作が実現されるようになっている。
【0028】
肘掛け9は、図1に示すように、基端部を前記座受け3に取り付けられた肘支柱91と、この肘支柱91に支持された肘当て92とを具備してなる。左右の肘掛け9は、左右対称形状をなしている。
【0029】
背支桿5は、図1に示すように、全体が側面視ほぼL字型であり、基端部を前記支持基部2の主軸22に後傾動作可能に取り付けられた下部背フレーム52と、この下部背フレーム52の先端に支軸53を介して後傾動作可能に取り付けられた上部背フレーム51とを備えている。前記下部背フレーム52は、金属製のもので、その外側がカバー521により覆われている。そのカバー521の外面は、前記上部背フレーム51の外面に連続する位置から座4の下面に至るまで前方に延びて設けられている。上部背フレーム51は、合成樹脂により一体に成型され、背凭れ6が起立状態の場合にほぼ垂直に延び、この上端部で背凭れ6上部を支持している。すなわち、本実施形態では、背凭れ6の下方部位を下部背フレーム52に固定する一方、背凭れ6の上方部位を上部背フレーム51に上下方向スライド可能に支持させている。その上で、上部背フレーム51を下部背フレーム52とは独立に一定の角度範囲内で傾倒可能とし、前記上部背フレーム51が下部背フレーム52に対して傾動動作可能に構成されている。そしてこの上部背フレーム51は、前記下部背フレーム52に対して図示しないスプリングにより前傾方向に弾性付勢されている。この実施形態では、下部背フレーム52と支持基部2との間に図示しない傾動禁止機構を設け、下部背フレーム52の支持基部2に対する傾動を許容するフリーロッキング状態、または、下部背フレーム52を所望の角度で傾動を禁止する任意位置固定状態を取り得るようになっている。傾動禁止機構の構造については、通常のものであるため説明を省略する。
【0030】
背凭れ6は、図1乃至図6に示すように、背アウターシェル7の前面に背ユニット8を装着してなる。
【0031】
背アウターシェル7は、図1乃至図3及び図5に示すように、合成樹脂製の一体成形品であり、上下方向中間部に最も前方に突出させた突出頂部を有し、その突出頂部から後方に湾曲した形状をなすシェル本体70を主体に構成されており、このシェル本体70の背面側に当該背アウターシェル7を背支桿5に取り付けるための下側取付部71及び上側取付部72を備えている。下側取付部71は前記シェル本体70の下部から後方に突出してなるものであり、前記下部背フレーム52の上端部にビス等の止着具を用いて固定される。上側取付部72はスライド係合機構Cを収容するための凹陥状のもので、この上側取付部72に装着された図示しないスライド係合機構Cを介して背アウターシェル7と背支桿5の上部背フレーム51の上端部とが上下方向に相対移動可能に接続される。
【0032】
背アウターシェル7の前面側には、前記背ユニット8を取り付けるための上端取付部73と、下端取付部74とが設けられている。上端取付部73は、前記シェル本体70の上部に複数の掛爪731を左右方向に間隔をあけて突出させたものである。下端取付部74は、前記シェル本体70の下部中央に突出させた二股部分を有する中央突出部741と、前記シェル本体70の下部両端に設けられた爪受部742とからなる。
【0033】
背ユニット8は、図2乃至図4に示すように、背インナーシェル81と、この背インナーシェル81の直接に支持されたヘッドレスト82と、これらヘッドレスト82及び背インナーシェル81をくるむ袋状の外装材83とを具備してなる。
【0034】
背インナーシェル81は、図3乃至図6に示すように、前記背アウターシェル7と略同じ外形をなした合成樹脂製の一体成形品であり、上下方向中間部に最も前方に突出させた突出頂部を有し、その突出頂部から後方に湾曲した形状をなすシェル本体810を主体として構成される。このシェル本体810には、背インナーシェル81を含む背ユニット8を前記背アウターシェル7に取り付けるための上端取付部811及び下端取付部812を設けている。上端取付部811は、前記シェル本体810の上部に設けられた複数の爪掛孔813を前記掛爪731に対応させて形成してなるもので、これら各爪掛孔813に前記掛爪731を上下方向に相対変位可能に掛け止めることにより、この背インナーシェル81の上部を前記背アウターシェル7の上部に上下方向に相対変位可能に取り付けている。下端取付部812は、前記シェル本体810の下部中央部に設けられた中央挿入部814と、前記シェル本体810の下部両側部に設けられた爪部815とを具備してなる。中央挿入部814は、窓816の中間位置に横架材817を配設したもので、その窓816に挿入された背アウターシェル7の中央突出部741の二股部分を前記横架材817に係合させることによって、背インナーシェル81の下端部中央を背アウターシェル7の下端部に、若干の回動や撓み以外の動作を禁止しながら、換言すれば、面方向並びに厚み方向においては相対移動不能に取り付けるようにしている。また、爪部815は、その先端が外側方に屈曲したもので、その爪部815を背インナーシェル81の一時的な弾性変形を利用して背アウターシェル7の爪受部742に係わり合わせることにより、背インナーシェル81の下端部両端を背アウターシェル7の下端部に、若干の回動や撓み以外の動作を禁止しながら、換言すれば、面方向並びに厚み方向においては相対移動不能に取り付けるようにしている。
【0035】
ここで、本実施形態に係る椅子は、以上のようにしてなる背インナーシェル81にヘッドレスト82を直接支持させていることを特徴としている。具体的には、背インナーシェル81におけるシェル本体810に、別体であるヘッドレスト82を直接支持させていることを特徴としているものである。
【0036】
以下本実施形態に係るヘッドレストの構成について、詳述する。
【0037】
ヘッドレスト82は、図3乃至図8並びに図11に示すように、合成樹脂製の一体成型品であり、ヘッドレスト本体823と、このヘッドレスト本体823の下端縁から側面視屈曲させた屈曲部822を介して板状に設けられたベース821とを具備してなる。
【0038】
ヘッドレスト本体823は、側面視において中央部が前方に突出し、かつ、平面視において中央部が凹陥するように湾曲させたもので、水平なスリット825を複数本平行に備えている。そしてスリットは、その開口端から背面側にそれぞれスリット825aを突出させて設けている。
【0039】
屈曲部822は、ヘッドレスト本体823とベース821との境界部分に形成されたもので、前面側が側面視くの字形に凹むように屈曲した形状をなしている。そして屈曲部822の背面側の湾曲形状は、背インナーシェル81の上縁の湾曲形状に合致させてある。具体的には屈曲部は、側面視凹ませた前面側に位置付けたクッションの引き込み部824と、背面側に位置付けられ背インナーシェル81の上縁の上側に載置するための載置段部828とを有している。引き込み部824は、外装材83を取り付ける際にクッション831を張り地832ごと押えて境界833を形成するためのワイヤ83wを位置付けるためのワイヤ溝826と、当該ワイヤ83wを引っ張る紐83tを挿通させるための紐挿通孔827とを有している。そして載置段部828は、屈曲部822の背面側において側面視突出させた形状をなす。そうすることにより、当該載置段部828を背インナーシェル81の上側に載せ置いた状態では、背インナーシェル81にヘッドレスト82を直接的に支持させた際の背面側の表面外形が、張り地832が無理なく収まるようになめらかに連続するような外形を形成している。
【0040】
ベース821は、背インナーシェル81の前面に添設し得る板状のもので、複数のボルトbを用いて背インナーシェル81のシェル本体810に密着させた状態で取り付けられている。具体的には、ベース821の複数箇所に取り付けたナットNにインナーシェル81の背面側から貫通させたボルトbを螺着することによって、このベース821が前記背インナーシェル81に固定されるようになっている。
【0041】
しかして本実施形態では、ヘッドレスト82の具体的な形状を図5、図6及び図11等に示すように設定することによって、以下に示す種々の作用を奏するものとしている。
【0042】
すなわち同図に示すように、ヘッドレスト本体823を側面視湾曲させた形状とするとともにベース821を背インナーシェル81のシェル本体810に密着するように平面視湾曲させた形状としている。そうすることにより、ヘッドレスト82は屈曲部822を介して一体に形成しているので、特に平面視湾曲させたベース821を薄肉に形成しても、当該ベース821は上方が側面視湾曲させたヘッドレスト本体823に連続しているので、合成樹脂の厚み以上に平面視において撓み難いものに仕上がっている。
【0043】
他方、ヘッドレスト本体823は、具体的には図11(a)に示すように側面視湾曲させるとともに、平面視においても同図(b)のように湾曲させることによって、ヘッドレスト本体823単体として撓みがたい形状を実現している。そして特に同図(a)に示すように、ヘッドレスト本体823の外形をなす前面823aと後面823bとで、その曲率を異ならせて形成している。具体的には、前面823a側においては曲率を相対的に大きく形成するとともに、上下方向中間からやや上側に亘る領域の曲率を大きく設定することにより、ヘッドレスト本体823への前斜め上方からの荷重を好適に受けやすくしている。そしてヘッドレスト本体823の樹脂の厚みは全領域に亘って略一定としながらも、後面823b側にはスリット825周囲からリブ825aを、上側から下へ向かうに従って大きく突出させることによって後面823bの外形がなす曲率が小さくなるように設定している。そうすることにより、外装材83をくるんだ際の張り地832が「だぶつき」や弛みなく張られる。加えて、後面823b下半分のリブ825bが大きく突出することによって側面視の厚みが実質大きく設定されていることとなる。そのため、スリット825による肉盗みによって樹脂の使用量を抑えた構成としつつ、前面825aの斜め上方から受ける荷重を受けるに足る以上剛性を担保している。さらにヘッドレスト本体823の上側はリブ825aの突出寸法が小さい為、着座者の荷重に応じて部分的に撓みやすく、着座者頭部に対し好適な感触を外装材83とともに提供し得るものとなっている。
【0044】
そして実施形態においては、前記ベース821を背インナーシェル81に直接的に支持させるための取付部分を可及的に薄くするために、以下の部品取付構造Aを採用している。この部品取付構造Aは、図7、図8及び図9に示すように、ベース821に被取付部品であるナットNを取り付けるためのものであって、前記ベース821に、主凹部A11と副凹部A12とを隔壁A13を介して隣設するとともに、前記主凹部A11に挿入されるナットNを該隔壁A13の弾性変形を利用して係合させる部品保持用の爪A15を設けたものである。すなわち、前記ナットNは、軸状をなすナット本体N1の一端に鍔部N2を設けてなるいわゆるT型ナットタイプのものである。前記主凹部A11は、前記鍔部N2を嵌合させ得る有底のもので、その底壁A14中央部に前記ナット本体N1をベース821裏面側に貫通させるための貫通部A14aを有している。前記副凹部A12は、前記主凹部A11の両側においてベース821の裏面側に貫通させて設けた一対の長孔状のものである。前記隔壁A13は、前記主凹部A11と前記対をなす副凹部A12、A12との間にそれぞれ形成されたもので、厚み方向に弾性変形可能な厚みに設定されており、これら両隔壁A13にベース821の前面側に突出する爪A15を設けている。これらの爪A15は、前記ナットNが前記主凹部A11に挿入される際に、隔壁A13の一時的な弾性変形を利用して前記鍔部N2の外面側に係合して、ナットNを主凹部A11内に保持し得るようになっている。
【0045】
このようにして相互に一体化された背インナーシェル81とヘッドレスト82に外装材83が装着される。
【0046】
外装材83は、図1乃至図4に示すように、モールドウレタン等により作られたクッション831と、このクッション831の表面側を覆う張地832とを具備してなる。この外装材83は、前記ヘッドレスト82の屈曲部822において前記背インナーシェル81側に引き込まれており、ヘッドレスト本体領域と背インナーシェル領域とを区画する境界833が形成されている。前記外装材83の引き込み部824に対応する箇所の構成を具体的に説明すれば次の通りである。すなわち、この外装材83は、背ユニット8の前面を覆うための前面部83Fと背ユニット8の背面を覆うための背面部83Bとを備えて成る袋状のもので、ヘッドレスト82及び背インナーシェル81を上側からくるむことができるように下側が開放されている。背面部83Bには、上端取付部73、811に対応する上部開口部83B1と、下端取付部74、812に対応する下部開口部83B2と、後述する係合機構Cに対応する中間開口部83B3とが穿設されている。
【0047】
しかして本実施形態では、前面部83Fの前記境界833に対応する部位には、引き込み用のワイヤ83wが縫い込まれており、このワイヤ83wを利用して前面部83Fの境界833対応部位を前記屈曲部822内に引き込むことができるようにしている。またこのワイヤ溝の中間2箇所にはワイヤ83をワイヤ溝内へと引き込むための紐83tを結びつけるなどして取り付けている。
【0048】
以上のようにしてなる椅子において、背インナーシェル81の上部と下部との中間に位置する部位を背アウターシェル7に、面方向の相対移動を許容しつつ厚み方向の相対離間を制限する浮き上がり制限用の係合機構Cを介して支持させている。前記係合機構Cは、背インナーシェル81側に設けられ厚み方向に弾性変形可能な複数枚の片持弾性片C11を截頭錐形状に配列させてなる受け部C1と、背アウターシェル7側に設けられ前記片持弾性片C11の自由端縁C111により形成される係合孔C12に前記片持弾性片C11の弾性変形を利用して係わり合う突起C2とを具備してなる。具体的には、前記受け部C1は、背インナーシェル81に移動不能に取り付けられたヘッドレスト82のベース821に一体に形成されたもので、基端縁よりも自由端縁C111側が前方にくるように傾斜させた複数枚の片持弾性片C11を、前方に膨出する截頭円錐形状に配列させてなる。また、前記背インナーシェル81及び前記外装材83の背面部83Bにおける前記受け部C1に対応する部位には、この受け部C1を背ユニット8の背面側に開放するための孔をそれぞれ設けており、これらの孔を通して挿入された突起C2を前記受け部C1に係わり合わせるようにしている。突起C2は、背アウターシェル7の前面側に突設されたもので、前記係合孔C12の内径よりも若干小径な軸部C21と、この軸部C21の先端に設けられ前記係合孔C12の内径よりも大きな抜け止め鍔部C22とを具備してなる。この突起C2は、前記背アウターシェル7に一体に設けたものであってもよいし、別体に設けたものであってもよい。
【0049】
以上のようにしてなる椅子は、前記背インナーシェル81にヘッドレスト82を取り付けた上で、これら背インナーシェル81及びヘッドレスト82を外装材83によりくるみ、外装材83の境界833を屈曲部822に引き込んで背ユニット8を完成させる。
【0050】
具体的には、図5にも模式的に示すように、外装材をヘッドレストの上方から被せた際にワイヤ83wとワイヤ溝826とを位置決めするとともに、紐を前方から一対の孔である前記紐挿通孔にそれぞれ通し、屈曲部後方すなわち載置段部828の位置で結ぶなどすることによって、ワイヤ83wは幅方向略全域に亘って張り地及びクッションを引き込むことによって、外装材の境界833が形成されることとなる。
【0051】
しかる後に、その背ユニット8を背アウターシェル7の前面に取り付ける。背ユニット8を背アウターシェル7に取り付けるにあたっては、まず、背インナーシェル81の上端取付部811に背アウターシェル7の上端取付部73を係わり合わせるとともに、背インナーシェル81の下端取付部812に背アウターシェル7の下端取付部74を係わり合わせる。この状態で背ユニット8の中間部を背アウターシェル7方向に押圧し、前記係合機構Cの受け部C1に突起C2を係合させる。
【0052】
次いで、この椅子の作動を説明する。図示しない傾動禁止機構を操作してフリーロッキング状態にセットすると、背凭れ6に荷重をかけることにより、背支桿5全体が支持基部2に対して傾動反力発生機構の付勢力に抗して後傾し得ることになる。また、座4もこれに伴ってシンクロチルト動作を行う。一方、傾動禁止機構を操作して任意位置固定状態にセットすると、背凭れ6に荷重をかけることにより、下部背フレーム52が支持基部2に対して固定され、上部背フレーム51のみが下部背フレーム52に対して傾動を許容された状態となる。
【0053】
このように種々の態様に切換えて使用することができる椅子においては、背凭れ6の背アウターシェル7及び背インナーシェル81に様々な荷重が作用することになる。特に、本実施形態においては、一本の背支桿5によって背凭れ6を支持しているので、背アウターシェル7及び背インナーシェル81にねじれ方向の荷重等も作用することがある。しかしこの椅子においては、背アウターシェル7及び背インナーシェル81を上端部及び下端部において接続しているため、両シェル7、81を完全に一体化した場合に比べて、背アウターシェル7及び背インナーシェル81の変形自由度を高めることができる。すなわち、前後の曲げに対しては、両シェル7、81が協働して対抗するが、左右のねじれに対しては、両シェル7、81が面方向に相対的にずれ動いてしなやかな変形を実現する等、背凭れ6に多様な変形特性を付与することが可能になる。しかも、この椅子では、両シェル7、81の中間部において前記係合機構Cを用いて係わり合わせているので、面方向の相対移動を許容しつつ前後方向の相対離間を制限するため、多様な変形を実現できるにもかかわらず中間部の浮き上がりを防止することができる。また、受け部C1が截頭円錐形をなしているので、背インナーシェル81を背アウターシェル7に取り付ける際に、受け部C1の中心と突起C2の中心とに多少の位置ずれがあっても、両者を押しつけることにより、突起C2の先端が受け部C1の係合孔C12に案内され係合を完了させることができる。そのため、係合機構Cを目視できない状態でも、押しつけ動作のみで容易に取り付けることができる。
【0054】
以上のような構成とすることにより、本実施形態に係る椅子は、ヘッドレスト82を背インナーシェル81に直接に支持させているため、着座者の上体の細やかな移動に対して、自ずとヘッドレスト82の動きを細やか且つ速やかに対応させることが可能となっている。そうすることにより、背インナーシェル81に背を預けた着座者の座り心地を損なうことなく好適に頭部を支持し得るヘッドレスト82付きの椅子を実現している。
【0055】
背インナーシェル81の動作を損なうことを有効に回避し得るヘッドレスト82の取付を実現するために本実施形態では、ヘッドレスト82をシェル本体810に取り付けるためのベース821に取り付けたものとしている。
【0056】
そしてヘッドレスト82にも背インナーシェル81同様のクッション831を簡単な構造で適用するために本実施形態では、屈曲部822に、当該屈曲部822において側面視凹ませた前面側にクッション831の引き込み部824を設けている。そして特に、引き込み部824が、前記クッション831並びに張り地832を押える為のワイヤ83wを位置付けるためのワイヤ溝826と、当該ワイヤ83wを引っ張る紐83tを挿通させるための紐挿通孔827とを設けて、張り地832やクッション831を速やか且つ確実に取り付け得るものとなっている。
【0057】
そして本実施形態では、屈曲部822の背面側に背インナーシェル81の上縁に載置するための側面視突出させた載置段部828を設けることによって、ヘッドレスト82の背インナーシェル81に対する取り付け並びに位置決めを速やか且つ確実に行い得るものとなっている。
【0058】
また本実施形態ではベース821がシェル本体810に密着し得る板状のものとしているので、背インナーシェル81に対する着座感を損なわずにヘッドレスト82を取り付け得るものとなっている。
【0059】
そして本実施形態では、樹脂の一体成型であるヘッドレスト82の形状を、ヘッドレスト本体823を側面視湾曲させた形状とするとともに前記ベース821を平面視湾曲させた形状とすることにより、ヘッドレスト本体823並びにベース821の強度を有効に担保している。
【0060】
そして、背ユニット8に含まれる背インナーシェル81が着座者の上体に忠実に応じた動きを成し得るようにするために本実施形態では、背ユニット8すなわち背インナーシェル81の上端を背アウターシェル7に対して当該背アウターシェル7に対する面方向の動作を許容した状態で取り付けている。そうすることにより、背ユニット8の上端に位置付けられるヘッドレスト82が着座者の上体の動作に応じた細やかな動作が可能となっている。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0062】
例えば、上記実施形態ではヘッドレストが背インナーシェルに対して別体である態様を開示したが、勿論、ヘッドレストと背インナーシェルとが一体となっていることによって「直接に支持させ」たものであってもよい。またヘッドレスト本体や屈曲部、外装材等の具体的な態様は上記実施形態のものに限定されることはなく、既存のものを含め、種々の態様のものを適用することができる。
【0063】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0064】
7…背アウターシェル
81…背インナーシェル
82…ヘッドレスト
821…ベース
822…屈曲部
823…ヘッドレスト本体
824…引き込み部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背アウターシェルと、この背アウターシェルの内面に添設される背インナーシェルとを備えてなる椅子であって、
前記背インナーシェルにヘッドレストを直接に支持させていることを特徴とする椅子。
【請求項2】
背アウターシェルと、この背アウターシェルの内面に添設される背インナーシェルとを備えてなる椅子であって、
前記背インナーシェルにヘッドレスト取付部を設け、このヘッドレスト取付部に取り付けられたヘッドレストを前記背インナーシェルにより直接に支持し得るように構成したことを特徴とする椅子。
【請求項3】
ヘッドレストが、着座者の頭部を支持するためのヘッドレスト本体と、前記背インナーシェル取付部に取り付けるためのベースと、前記ヘッドレスト本体と前記ベースとの間を側面視屈曲させた屈曲部を有している請求項2記載の椅子。
【請求項4】
前記屈曲部が、当該屈曲部において側面視凹ませた前面側にクッションの引き込み部を有している請求項3記載の椅子。
【請求項5】
前記引き込み部が、前記クッションを押える為のワイヤを位置付けるためのワイヤ溝と、当該ワイヤを引っ張る紐を挿通させるための紐挿通孔とを有している請求項4記載の椅子。
【請求項6】
前記屈曲部が、当該屈曲部の背面側に前記背インナーシェルの上縁に載置するための側面視突出させた載置段部を有し、前記背インナーシェルとヘッドレストとの背面側の表面を連続させて形成している請求項3、4又は5記載の椅子。
【請求項7】
前記ベースが前記背インナーシェル取付部に密着し得る板状をなしたものである請求項3、4、5又は6記載の椅子。
【請求項8】
前記ヘッドレスト本体と前記ベースとを一体に形成し、ヘッドレスト本体を側面視湾曲させた形状とするとともに前記ベースを平面視湾曲させた形状としている請求項3、4、5、6又は7記載の椅子。
【請求項9】
前記背インナーシェルに前記ヘッドレストを支持させた状態でクッションを添設させ、しかる後に当該背インナーシェル、ヘッドレスト及びクッションを張り地で覆うことにより、前記背アウターシェルに取り付け得る背ユニットを構成している請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の椅子。
【請求項10】
背ユニットの上端を背アウターシェルに対して当該背アウターシェルの面方向の動作を許容した状態で取り付けている請求項9記載の椅子。
【請求項1】
背アウターシェルと、この背アウターシェルの内面に添設される背インナーシェルとを備えてなる椅子であって、
前記背インナーシェルにヘッドレストを直接に支持させていることを特徴とする椅子。
【請求項2】
背アウターシェルと、この背アウターシェルの内面に添設される背インナーシェルとを備えてなる椅子であって、
前記背インナーシェルにヘッドレスト取付部を設け、このヘッドレスト取付部に取り付けられたヘッドレストを前記背インナーシェルにより直接に支持し得るように構成したことを特徴とする椅子。
【請求項3】
ヘッドレストが、着座者の頭部を支持するためのヘッドレスト本体と、前記背インナーシェル取付部に取り付けるためのベースと、前記ヘッドレスト本体と前記ベースとの間を側面視屈曲させた屈曲部を有している請求項2記載の椅子。
【請求項4】
前記屈曲部が、当該屈曲部において側面視凹ませた前面側にクッションの引き込み部を有している請求項3記載の椅子。
【請求項5】
前記引き込み部が、前記クッションを押える為のワイヤを位置付けるためのワイヤ溝と、当該ワイヤを引っ張る紐を挿通させるための紐挿通孔とを有している請求項4記載の椅子。
【請求項6】
前記屈曲部が、当該屈曲部の背面側に前記背インナーシェルの上縁に載置するための側面視突出させた載置段部を有し、前記背インナーシェルとヘッドレストとの背面側の表面を連続させて形成している請求項3、4又は5記載の椅子。
【請求項7】
前記ベースが前記背インナーシェル取付部に密着し得る板状をなしたものである請求項3、4、5又は6記載の椅子。
【請求項8】
前記ヘッドレスト本体と前記ベースとを一体に形成し、ヘッドレスト本体を側面視湾曲させた形状とするとともに前記ベースを平面視湾曲させた形状としている請求項3、4、5、6又は7記載の椅子。
【請求項9】
前記背インナーシェルに前記ヘッドレストを支持させた状態でクッションを添設させ、しかる後に当該背インナーシェル、ヘッドレスト及びクッションを張り地で覆うことにより、前記背アウターシェルに取り付け得る背ユニットを構成している請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の椅子。
【請求項10】
背ユニットの上端を背アウターシェルに対して当該背アウターシェルの面方向の動作を許容した状態で取り付けている請求項9記載の椅子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−15824(P2011−15824A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162513(P2009−162513)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【出願人】(000108627)タカノ株式会社 (250)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【出願人】(000108627)タカノ株式会社 (250)
【Fターム(参考)】
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