説明

植付機

【課題】的確に種球を植付つけるとともに、操作性及び作業性に優れた植付機を提供する。
【解決手段】種球を植付ける植付部7と、植付機1の運転および植付部7の操作を行う運転操作部5と、前記植付部7と運転操作部5を搭載して畝を跨いで走行する走行部4と、植付部7および走行部4の駆動力を発生させる駆動部3とを有し、走行しながら所定間隔をおいて種球の植付けを行う植付機1であって、前記走行部4の前部に植付部7を配置し、後部に駆動部3を配置し、該植付部7と駆動部3の間に運転操作部5と植付部7の昇降リンク機構21とを配置するとともに、前記運転操作部5の側部に、機体側方へと突出する操作位置と、機体側部に沿う収納位置とに位置変更可能な操作コラム52を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植付機の技術、特にマルチシートが被覆された土壌に種球を植付ける植付機の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ニンニク等の種球は、種球の芽が上に、種球の根が下になるように植付けなければ、発芽不良等を起因とする収量の減少および等級の低下等に繋がっていた。よって、高品質の作物を収穫するには、種球の手植えをせざるを得なかった。
【0003】
しかし、商品作物を対象とする場合、作付面積の拡大等により、手作業では作業者に大きな負担が掛かっていた。そのため、種球を圃場に植付ける数々の植付機が提示されている。
例えば、特許文献1に示すように、植え付けホルダと押し込み体より成る種球ホルダユニットが周回移動機構に取付けられ、その周回移動機構が回動すると共に、種球ホルダユニットが回動する。植付けホルダはニンニク等の球根を保持し、周回移動機構によって、植付け位置に移動した状態で、押し込み体によって球根を圃場に押し当てて植え付けるように構成されている。植え付けホルダに球根が挿入される挿入位置(補給位置)では、植え付けホルダは種球ホルダユニットの上部に位置し、植付け位置では、植え付けホルダは下部に位置する植付機の技術は公知となっている。したがって、挿入位置と植付け位置とでは、球根の向きが上下逆になってしまっていた。
【0004】
従来の植付機においては、ホルダに挿入する時に、手作業と同じ種球の姿勢で挿入できない場合があり手による植付を行っていた作業者は、慣れるまで時間がかかる場合があった。つまり、初心者や高齢者等では、無理なく的確に、種球の植付けを行うことは難しかった。
【0005】
また、従来技術の構成では、四条を前後二列一度に植え付けホルダに球根を保持させた後に、下方へ回転させて、停止して四条二列を一度に圃場に植え付けるため、球根を保持させるための時間と、下方へ回転させるための時間がそれぞれ必要となるため、連続作業を行うことは難しく、植付速度を速めることは難しかった。また、植え付けホルダユニットは鉛直方向に向けた状態で球根を保持させる作業を行うため、作業姿勢が悪く、作業時の疲労が大きかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−131877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の状況に鑑み、的確に種球を植付つけるとともに、操作性及び作業性に優れた植付機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、種球を植付ける植付部と、植付機の運転および植付部の操作を行う運転操作部と、前記植付部と運転操作部を搭載して畝を跨いで走行する走行部と、植付部および走行部の駆動力を発生させる駆動部とを有し、走行しながら所定間隔をおいて種球の植付けを行う植付機であって、前記走行部の前部に植付部を配置し、後部に駆動部を配置し、該植付部と駆動部の間に運転操作部と植付部の昇降リンク機構とを配置するとともに、前記運転操作部の側部に、機体側方へと突出する操作位置と、機体側部に沿う収納位置とに位置変更可能な操作コラムを設けたものである。
【0010】
請求項2においては、前記植付部は、側面視多角形状に回転するように左右一対配置される無端体と、前記左右の無端体間に架設され、回転方向に所定間隔毎に取付けられる保持開孔手段と、前記左右の無端体間に配置され、保持開孔手段が最下部の植付位置を通過するときに種球を押付けて圃場面に植付ける押出し装置とを備え、前記植付部の後上部を前高後低の所定角度に傾斜した補給位置を形成したものである。
【0011】
請求項3においては、前記植付部の最下部に、保持開孔手段が圃場面と平行に後方へ移動する植付位置を形成したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1においては、植付機の前後重量バランスが向上して、運転操作部において、安定した姿勢で種球を植付部に補給することができるようになる。また、操作コラムは側方に突出させて、側方から植付作業者とは別の操縦者により操作したり、操作コラムを収納位置に変更して運転操作部から直接操作したりすることが可能となり、作業状態や作業人数に合わせて操作することが可能となる。また、格納時には操作コラムを収納位置としてコンパクトに収納できる。
【0014】
請求項2においては、作業者は種球を植付部の補給位置に容易に挿入することができるようになり、作業者の疲労を軽減し、作業スピードもアップできて作業効率を向上することができる。
【0015】
請求項3においては、種球は圃場面と平行に移動するため、種球の姿勢が傾斜することなく安定した状態で確実に植え付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る植付機の全体的な構成を示した側面図。
【図2】同じく植付部および運転操作部の構成を示した側面図。
【図3】同じく動力伝達機構の構成を模式的に示した側面図。
【図4】動力伝達機構の構成を模式的に示した平面図。
【図5】同じく操作コラムの周辺の構成を示した平面図。
【図6】ホルダの構成を示した斜視図。
【図7】保持開孔手段の状態を示した斜視図。
【図8】本発明の実施形態の開閉体が閉じた状態の開閉駆動部の状態を示した平面図。
【図9】本発明の実施形態の開閉体が開いた状態の開閉駆動部の状態を示した平面図。
【図10】本発明の実施形態に係る左右揺動手段の周辺を示した後面図。
【図11】同じく平面図。
【図12】植付部を支持する手段を示した制御ブロック図。
【図13】ホルダへの種球挿入形態を示した平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、発明の実施の形態を説明する。
なお、本実施形態の植付機1によって移植される対象をニンニク等の種球として説明するが、これに特に限定するものではない。また、畝上にマルチシートを被覆した状態での移植と想定して説明するが、これに特に限定するものではなく、略平坦な圃場に移植する場合としてもよい。
【0018】
以下では、図1から図5を参照して、植付機1の全体的な構成について説明する。
説明において、図1に示した矢印Aの方向を植付機1の進行方向、つまり前方向として、矢印Aを向いた状態で前後左右方向を規定するものとする。
【0019】
植付機1は、畝上にマルチシート9を被覆した状態で種球を移植するために使用される植付機である。
図1および図3に示すように、植付機1は、主に機体フレーム2、駆動部3、走行部4、運転操作部5、動力伝達機構6、植付部7等を備える。
【0020】
機体フレーム2は、植付機1の骨格を成す構造体であって、上下方向に延設される左右複数の支柱フレームと、該支柱フレームに横設され前後方向に延設される左右の複数の前後フレームと、該前後フレームの間に左右方向に横設される左右フレームを連結固定して形成される。機体フレーム2の前後略中央には作業者が植付機1に乗り降りする際のステップが形成され、該ステップの左右中央には動力伝達機構6や後述する昇降リンク機構21等を収容する保護ケース15が前後方向に配置される。ステップの後部には、左右一対の座席51・51が設けられている。座席51・51は、その前方の植付部7に種球を補給(挿入)し易いように、前方に傾斜可能に構成される(図2参照)。
【0021】
走行部4は、左右一対のクローラ41・41等で構成され、駆動部3からの動力がミッションケース62を介して伝達されて、植付機1を走行可能とするものである。
【0022】
前記駆動部3は、動力源であるエンジン31や発電機34等で構成され、植付機1の走行部4と植付部7に動力を伝達して駆動するためのものであり、機体フレーム2の後部上に搭載され、前後方向の重量バランスが取れるようにしている。該駆動部3の上方には、種球を収納したカゴ54等を載せる載置部55が配設されている。
【0023】
運転操作部5は、機体フレーム2の前後中央部に配設され、作業者によって走行部4および植付部7の操縦が行われる。運転操作部5は主に、作業者が着座する座席51、走行部4および植付部7の操縦を行うための複数の操作コラム52、補給ボックス53等が備えられる。
【0024】
座席51はエンジン31の前方の機体フレーム2上の左右両側に設置され、更に、補助座席51a(図5参照)が右機体外方に突出可能に配置される。操作コラム52は、座席51の周囲または補助座席51a近傍に配置されるが、本実施例では機体右外側の座席51前方に配置される。該操作コラム52の操作によって走行部4への動力の断接や変速操作、および、植付部7への動力の断接操作ができるように構成される。
【0025】
また、補給ボックス53は、座席51の前方の機体フレーム2に取付けられ、植付部7の補給位置7aの下後部に配設されている。該補給ボックス53上方を開放した樋状に形成して左右方向に延設され、機体左右幅ないに納まるように設けられる。該補給ボックス53内に種球を入れて作業者が手で取り出して、保持開孔手段72に挿入する。なお、補給ボックス53は左右連通した構成としているため、左右一側の作業者の前方の種球がなくなった場合には、左右他側の前方の補給ボックス53内の種球を一側へ不足分容易に移動させることができる。そして、補給ボックス53内の種球がなくなれば、座席51後方の載置部55上に載置されるカゴ54から種球を補給ボックス53に補給するのである。
【0026】
図5に示すように、操作コラム52は、箱状に構成して、その上面に変速レバーや主クラッチレバーやサイドクラッチレバーやエンジン停止スイッチ等を備える。該操作コラム52の側面(左側面)が回動軸152に支持される。該回動軸152は機体フレーム2上から上方に延設される。該回動軸152の上端に操作コラム52が前後回動可能に軸支されている。本実施形態では、操作コラム52は、回動軸152を中心に、機体側方へと突出する操作位置と、機体側部に配置する収納位置(図中二点鎖線で表示)とに回動可能に構成される。
【0027】
ただし、任意回動位置で保持することも可能であり、補助座席51aを設けずに、作業者が操作コラム52上の操作レバー等を操作する場合には、斜めに操作コラム52を保持してもよい。なお、操作コラム52を回動軸152に対して保持させる回動軸152と操作コラム52のために、ピンを回動軸152と操作コラム52の取付部に嵌挿して固定したり、回動軸152と操作コラム52の取付部の間にデテント機構を設けたりすることができ、操作コラム52を回動軸152に対して保持させる構成は限定するものではない。
【0028】
従って、操作コラム52を操作位置に回動した状態では、補助座席51aを右機体外方に突出させ、該補助座席51aに作業者(操縦者)が着座して、操作コラム52上の操作レバー等を操作することが可能となる。
また、植付作業が終了したり、格納したりした場合には、補助座席51aを機体内方へと収納し、操作コラム52を回動軸152を中心に後方に回動させ、機体右側部に沿う収納位置に配置する。よって、操作コラム52が邪魔とならずに植付機1を収納することができる。
【0029】
また、補助座席51aを使用せずに、作業者が右側の座席51に着座し、操作コラム52を収納位置に配置した状態で、操作コラム52を操作することも可能である。
【0030】
動力伝達機構6は、走行部4および植付部7へとエンジン31の駆動力を伝達するものである。動力伝達機構6は、本実施例ではベルトとプーリ、チェーンとスプロケットおよび伝動軸やギヤ等で構成としているが、限定するものではない。
【0031】
具体的には、図1、図3および図4に示すように、機体の後部に配置されたエンジン(駆動源)31から、機体内方へと出力軸32aが突出され、該出力軸32a上にエンジンプーリ32が固定されている。
座席51下方の機体フレーム2に入力軸60が、左右方向に回動自在に支持されている。該入力軸60上のエンジンプーリ32の前方に第一プーリ61が固設され、入力軸60の左端には、植付部7へと動力を伝達する第四プーリ63が固設される。入力軸60の右端には、走行部4へと動力を伝達する第二プーリ62aが固設される。
【0032】
そして、エンジンプーリ32と第一プーリ61の間には、無端のベルト65が巻回されている。よって、エンジン31の駆動力は、入力軸60を介して、第二プーリ62aおよび第四プーリ63に伝達される。
【0033】
前記ミッションケース62より突出した入力軸62c上には、第三プーリ62bが固設され、第二プーリ62aの下方に位置している。
第二プーリ62aと第三プーリ62bは、無端のベルト65に巻回されており、よって動力は、第二プーリ62aよりベルト65を介して、第三プーリ62bへと伝達され、入力軸62cを介してミッションケース62へと伝達される。
【0034】
ミッションケース62の後部(図3においては作図上、前後を逆に記載)には、機体左右後方に出力軸62d・62dが突出しており、該出力軸62d・62dの外端は、走行スプロケット62e・62eを固設している。走行スプロケット62e・62eの下方には走行部4の一部である駆動輪62f・62fが配置される。走行スプロケット62eと駆動輪62fには、無端の伝動チェーン80が巻回される。
【0035】
従って、動力は、ミッションケース62により変速され、左右の出力軸62d・62dおよび走行スプロケット62e・62eへと伝達され、さらに動力は伝動チェーン80・80を介して駆動輪62f・62fへと伝達され、走行部4を走行駆動させる。
【0036】
一方、第四プーリ63の前方には、一端を機体フレーム2に取り付けられたギヤケース67aより突出した伝達軸67が、入力軸60と互いに略平行に配設される。
該伝達軸67の左端部上には、第五プーリ64が固設される。第四プーリ63と第五プーリ64には、無端のベルト65が巻回される。
伝達軸67の右端には、機体略中央の機体フレーム2に支持されたギヤケース67a内でベベルギア67bが固設されている。該ベベルギア67bは、ギヤケース67a内のベベルギア67cと噛合され、該ベベルギア67cは伝達軸68の一端に固設されている。該伝達軸68は、前後方向を長手方向として保護ケース15に内装される。つまり、伝達軸68は、伝達軸67に対し略直角に前方へ延設して配設される。伝達軸68の他端は、植付部7の後部の略中央に支持されたギヤケース68a内に挿入され、該ギヤケース68a内の伝達軸68上にベベルギア68bが固設されている。該ベベルギア68bはギヤケース68a内のベベルギア68cと噛合され、該ベベルギア68cは植付入力軸66の右端部に固設される。こうして、動力伝達方向を変換している。
【0037】
ただし、前記伝達軸67・68は、それらの中途部に自在継手などを有した構成としており、植付部7が昇降しても無理なく動力伝達方向を変換させるように構成している。
【0038】
こうして、動力は、入力軸60の左端上の第四プーリ63から無端のベルト65を介して第五プーリ64に伝達される。第五プーリ64には、伝達軸67・68を介して、動力伝達方向を変換させながら植付入力軸66へと動力を伝達させる。
【0039】
植付入力軸66は、ギヤケース68aより左側方へ突出され、運転操作部5の前部で植付部7の植付フレーム29の後部に回動自在に支持される。
植付入力軸66の動力は、その前方に配置された第一植付伝達機構8aを介して、植付フレーム29の前部上に配置された押出し駆動軸33に伝達され、後述する押出し装置77を駆動する。
【0040】
植付入力軸66の動力は同時に、その前方に配置された第一植付伝達機構8aの中途部より第二植付伝達機構8bの一部である植付駆動軸25に伝達される。該植付駆動軸25からは、チェーンなどで構成され、後述する複数の種球ホルダユニット73と開孔ユニット74とを取付けた無端体71に動力が伝達される。
【0041】
第一植付伝達機構8aは、主として駆動スプロケット81、第一従動スプロケット82、補助スプロケット82a、押出し駆動スプロケット86、入出力軸85、補助回転軸82b、押出し駆動軸33、伝動チェーン80を備えている。
植付入力軸66の左端は、駆動スプロケット81が固設されている。植付入力軸66の前方の左側部に配設された植付フレーム29内には、入出力軸85が回動自在に横設されている。さらに入出力軸85の前上方には押出し駆動軸33が、植付フレーム29の機体両側部に回動自在に支持される。入出力軸85と押出し駆動軸33の上下方向中途部には、補助回転軸82bが植付フレーム29に回動自在に支持される。
【0042】
入出力軸85の右端(図3においては作図上、左右を逆に記載)には、第一従動スプロケット82が固設され、押出し駆動軸33の左端には、押出し駆動スプロケット86が固設されている。補助回転軸82b上には、補助スプロケット82aが固設されている。
そして、駆動スプロケット81、第一従動スプロケット82、および押出し駆動スプロケット86には、無端の伝動チェーン80が巻回されており、該伝動チェーン80の外周に係合するように補助スプロケット82aが配置される。
【0043】
よって、植付入力軸66から伝動チェーン80、第一従動スプロケット82および押出し駆動スプロケット86を介して押出し駆動軸33に動力が伝えられる。
また、駆動軸33に伝えられた動力は、押出し装置77を作動させるが詳細は後述する。
【0044】
第二植付伝達機構8bは、主として入出力軸85、第三従動スプロケット83、無端体駆動スプロケット84、植付駆動軸25、伝動チェーン80を備えている。
前述した第一植付伝達機構8aでもある入出力軸85の上方には、植付駆動軸25が植付フレーム29の機体両側面に回動自在に支持される。
入出力軸85の左端(図3においては作図上、左右を逆に記載)には、第三従動スプロケット83が固設されている。植付駆動軸25の両端には、無端体駆動スプロケット84・84が固設される。また、第三従動スプロケット83は、左の無端体駆動スプロケット84の直下に位置する。第三従動スプロケット83と左の無端体駆動スプロケット84には、無端の伝動チェーン80が巻回される。
従って、動力は、第一植付伝達機構8aである入出力軸85より第三従動スプロケット83、伝動チェーン80を介して左の無端体駆動スプロケット84、植付駆動軸25および右の無端体駆動スプロケット84に伝達される。
【0045】
さらに、無端体駆動スプロケット84・84は、植付従動スプロケット83a・83b・・・83eとともに、側面視において所定空間が形成されるように、無端のチェーン等で構成された無端体71・71によって巻回される。無端体71は左右対称に配置されるので、以下、左側について説明する。
【0046】
植付従動スプロケット83a・83b・・・83eは、植付フレーム29の上部に配置した上植付従動スプロケット83aと、該上植付従動スプロケット83aの下方であって、植付フレーム29の下部に所定間隔をおいて前後に配置した下植付従動スプロケット83b・83cと、上植付従動スプロケット83aと下植付従動スプロケット83bとの間の前方に所定間隔をおいて上下に配置した前植付従動スプロケット83d・83eを有する。
よって、動力は、無端体駆動スプロケット84より、第三従動スプロケット83を従動させながら、無端体71を回動させる。
【0047】
こうして、エンジン31からの動力は、入力軸60から、一方は第二プーリ62aよりベルト65等を介してミッションケース62へと伝達され、他方、第四プーリ63より無端のベルト65等を介して植付入力軸66へと伝達され、植付部7は、走行部4に同期して駆動されて畝上に被覆されたマルチシートに所定間隔をおいて開孔し、その開孔部下の畝に種球を植付けることができる。
【0048】
前記第三従動スプロケット83は、その径(歯数)を変更することで、種球の植付間隔(株間)を変更することができる。つまり、第三従動スプロケット83の径が大きく(歯数が多く)なれば、株間は短くなり、その径が小さく(歯数が少なく)なれば株間は長くなる。よって、作業者は所望の株間を選択することが可能となる。ただし、第三従動スプロケット83と無端体駆動スプロケット84との間に、有段または無段の変速機構を配置する構成とすることもでき、該有段または無段の変速機構はレバー等の操作具で容易に変速操作できることが好ましい。
【0049】
図1、図2または図7に示すように、植付部7は、運転操作部5前方の機体フレーム2の前部に配置される。植付部7は、植付フレーム29、無端体71、保持開孔手段72(種球ホルダユニット73、開孔ユニット74、上部取付フレーム95、下部取付フレーム96)、開閉駆動部76、押出し装置77等を備える。前記植付フレーム29は、機体フレーム2の後部から昇降リンク機構21を介して前端部に取付けられる。
【0050】
無端体71は、前述したように無端のチェーン等で構成され側面視で多角形に張設されている。つまり、無端体71は左右一対で植付フレーム29の左右両側に配設された無端体駆動スプロケット84、植付従動スプロケット83a・83b・・・83eに巻回される。左右の無端体71の全周上には、回転方向に所定間隔をおいて保持開孔手段72(種球ホルダユニット73と開孔ユニット74)が左右方向に横架して取付けられる。無端体71は左右対称に配置されるので、以下、左側について説明する。
【0051】
植付部7は、側面視において、後上部に補給位置7aを設け、最下部位置に植付位置7bが設けられ、無端体71の内側の前後中途部に押出し装置77が配置され、左右一側に開閉駆動部76と動力伝達部が配置され、後部に昇降リンク機構21の連結部が形成されている。
そして、運転操作部5の前方で種球を容易に補給(ホルダ78に挿入)できるように、補給位置7aは前高後低の所定角度に傾斜して形成される。すなわち、植付部7の前後中央部の最上部に上植付従動スプロケット83aが配置され、該上植付従動スプロケット83aは植付作業時において、前方視界を確保できるように目の高さよりも低く、膝よりも高く、肩の高さ程度としている。
該上植付従動スプロケット83aの後下方に配設される無端体駆動スプロケット84は、その高さがステップよりも高く作業者の胸よりも低い、座席51の座面の高さ程度としている。こうして、上植付従動スプロケット83aと無端体駆動スプロケット84との間に張設された無端体71は前高後低に傾斜して配設され、補給位置7aを構成することができる。
【0052】
前記補給位置7aは、座席51前方で、座席51に着座した作業者の手の届く範囲に配置されており、詳しくは、上植付従動スプロケット83aと無端体駆動スプロケット84との間で、無端体71が前高後低に所定角度傾斜するように配置され、その水平に対する所定の傾斜角度は、作業者の疲労が少なくやや前傾した姿勢で作業できる角度であり、約30度〜60度程度としている。この角度を保ちながら保持開孔手段72が斜め前上方へ移動するように、ガイド部材71aが植付フレーム29に配設されている。すなわち、上植付従動スプロケット83aと無端体駆動スプロケット84との間の無端体71の傾斜部の下方には、前後方向を長手方向とする板状のガイド部材71aが無端体71と平行となるように植付フレーム29に固設されている。該ガイド部材71aは、無端体71が垂れ下がらないようにするとともに、保持開孔手段72の両側に設けた後述するローラ95eがその上面を転動してガイドされ、種球ホルダユニット73の上面が作業者側を向くように斜めを向いたまま上方へ移動する構成にしている。この補給位置7aでは、保持開孔手段72が複数(本実施形態では3〜4)列平行に配置されるようにし、補給時間に多少の余裕があり、補給に失敗しても容易に修正できるようにしている。
こうして、作業者は種球を後述する保持開孔手段72(種球ホルダユニット73)に供給し易い姿勢で作業できるようになり、疲労を軽減し、作業効率を向上できる。
【0053】
また、植付部7の最下部に植付位置7bが配置され、下植付従動スプロケット83b・83cが側面視で前後水平方向に並べて配置され、更に、種球ホルダユニット73と開孔ユニット74が後方へ略水平に移動するように、ガイド部材(図示せず)が配置されている。該ガイド部材にはローラ95eがガイドされる構成としている。こうして、保持開孔手段72は植付時に圃場面と平行に走行と同期して移動し、植付姿勢を崩すことなく確実に植え付けられるようにしている。
こうして、補給位置7aと植付位置7bの間に無端体71が巻回され、保持開孔手段72は、補給位置7a以外では、挿入方向が鉛直方向を向いた状態で回転駆動される構成としている。よって、種球(保持開孔手段72)は大きく揺動されることがなく、振り落とされることもなく、確実に補給位置7aから植付位置7bに搬送することが可能となる。
【0054】
図1、図7、または図8に示すように、保持開孔手段72は、種球を保持しながら、植付位置7bに達した時に、マルチシート9を開孔して、その孔から圃場に種球を植え付ける手段である。保持開孔手段72は、主に種球ホルダユニット73と開孔ユニット74を備える。
【0055】
種球ホルダユニット73は、複数(本実施形態では4条であるため4個)のホルダ78・78・・・と、該ホルダを取り付ける上部取付フレーム95とを備え、該上部取付フレーム95は板材を側面視逆凹状に折り曲げられて形成され、その上面に、左右方向に所定間隔をおいて、ホルダ78の位置に合わせて複数の挿入孔95a・95a・・・が開孔される。該挿入孔95aの下部内に、種球を保持するためのホルダ78がボルト等によって固定される。本実施例では、長ボルト78cと短ボルト78dによってホルダ78が上部取付フレーム95に取付けられ、該長ボルト78cは更に種球ホルダユニット73の下方に配置する開孔ユニット74の下部取付フレーム96を一体的に固定している。
【0056】
前記ホルダ78は、図6および図13に示すように、複数の保持板178と複数の開孔板179よりなり、中心及び方向を一致させて保持板178と開孔板179とを上下交互に貼り合わせて形成している。
開孔板179は、ウレタン等の弾性体板で構成され、その略中央には円形の種球より大径の開孔部179aが開孔される。開孔板179はその四隅にボルト孔180が開孔され、前記長ボルト78cおよび短ボルト78dが挿入される。保持板178は、ゴム等の弾性体板で構成され、開孔板179と張り合わせた状態で、前記ボルト孔180と平面視で一致することが可能な位置にボルト孔180が形成される。保持板178は、その略中央に種球より小径の円孔78aが開孔される。該円孔78aから半径方向外方に、つまり、放射状に切れ目78bが設けられ、その切れ目78bと切れ目78bの間に保持部材78eが形成される。この切れ目78bは直径方向に等角度で三本(半径方向で六本)設けられ、すべての保持板178の切れ目78bの数及び方向は一致させている。こうして種球は、円孔78aに挿入され、保持部材78eと開孔部179aによって挿入し易く適度に保持されることができる。
【0057】
また、ホルダ78を種球ホルダユニット73に取付ける際は、前記切れ目78bの一つは長手方向を進行方向Aと平行に設置する。こうして、種球がニンニク10の場合、作業者がニンニク10をホルダ78に挿入する時には、ニンニク10の方向を一方向に容易に合わせることができる。つまり、図13に示すように、ニンニク10の種球は根側を下とした時に平面視で略二等辺三角状となっており、植付進行方向に対して、底辺が直角となるように植え付けることで、葉の出る方向を揃えることができて、効率よく葉が広がり延いては作物の収穫量が向上することとなるので、ニンニク10をホルダ78に挿入する時に、頂点となる出芽箇所10bを上方にして、収穫時に他のニンニクの鱗片と接していた接触部10a・10aが斜め前方となる方向となるようにする。このとき、切れ目78bの一つが前後方向を向き、他の切れ目78bが120°ずれているため、その切れ目78bに合わせて、保持部材78eを押し広げることができて、ニンニク10をホルダ78に方向を一致させて保持させることができる。なお、ニンニク10の方向は前後逆でも同様に容易に挿入して保持させることができる。
【0058】
図1、図7、または図8に示すように、前記上部取付フレーム95の左右両側には、側面視において略三角形状の側板95b・95bが前後方向に向けて固設されている。該側板95b・95bは左右対称に構成されているので、左右一側について説明する。側板95bの上部側面に支持軸95cが側方に突設するよう回転自在に支持され、該支持軸95cの外周に側面視L字状の取付板95dが固設される。該取付板95dが前記無端体71・71の外周上に取付けられる。
こうして、保持開孔手段72は補給位置7aと植付位置7b以外の位置では、支持軸95cを中心に揺動自在に支持され、その自重によりホルダ78の挿入軸心は鉛直方向を向いたまま搬送(移動)されることとなるため、種球は安定した姿勢のまま補給位置7aから植付位置7bまで搬送されることになり、確実に植え付けることができるようになる。更に、搬送姿勢が安定しているため、植付速度を速めることも可能となる。
【0059】
前記側板95bの下部外側面には、所定間隔をおいてローラ95e・95eが回転自在に突出され、前記補給位置7aと植付位置7bにおいて、無端体71と平行に配置されたガイド部材71aと図示しないガイド部材によりガイドされる。つまり、種球ホルダユニット73と開孔ユニット74が、補給位置7aでは所定角度傾斜した状態で搬送され、植付位置では圃場面と平行に搬送される。
また、前記種球ホルダユニット73の下部に開孔ユニット74が取付けられる。詳細には、種球ホルダユニット73の上部取付フレーム95の下部に、所定間隔H(図7参照)をあけて、開孔ユニット74を収容した下部取付フレーム96が、平行に配置される。上部取付フレーム95と下部取付フレーム96は、長ボルト78c・78c・・・等により固定される。
【0060】
図7から図9のいずれかに示すように、開孔ユニット74は、下部取付フレーム96、開孔体79、該開孔体79を開閉駆動するための開閉駆動部76等を備える。
前記下部取付フレーム96は、左右方向を長手とする略板状の部材で構成され、種球を排出できるようにするための開口部96aが、所定間隔をあけて左右方向に設けられる。つまり、開口部96aは、前記挿入孔95aの位置に合わせて、挿入孔95aの下方にそれぞれ開口され、該開口部96aは開孔爪79aの数に合わせた多角形、本実施例では平面視正方形状に開口されている。
【0061】
以下に、開孔体79及び開閉駆動部76について説明する。
前記各開口部96aの周囲上には、マルチシート9(図1参照)の所定位置に孔を開ける開孔体79が設けられ、ホルダ78の下部に配置される。
該開孔体79は、複数(実施例では四本)の開孔爪79aと、開孔体ブラケット79bとを備える。
【0062】
開孔爪79aは、棒材を側面視逆「L」字状に屈曲し、その一端を下方に突出させて、先端を容易に突き刺せるように尖状に形成させ、他端は開孔体ブラケット79bに固設されている。
開孔体ブラケット79bは、開孔爪79aを固定して開閉駆動部76の下面に取付けるための板状の部材である。開孔体ブラケット79bの一端は、下部取付フレーム96に開孔体軸79cを介して、回転自在に支持され、該開孔体軸79c近傍に開孔爪79aの他端が固定される。開孔体ブラケット79bの他端は、後述する開閉駆動部76の第一リンク161にリンク軸79dを介して回動自在に支持されている。
【0063】
開孔体79を開閉駆動するための開閉駆動部76は、前記種球ホルダユニット73と開孔ユニット74との間に配置される。
開閉駆動部76は、主に第一リンク161、第二リンク162、駆動アーム165、カム体165d等を備える。
【0064】
第一リンク161・161は、下部取付フレーム96の左右方向の幅と略同じ長さの細長い板材であって、下部取付フレーム96の前側上と後側上にそれぞれ下部取付フレーム96の前辺及び後辺に沿うように配置される。つまり、開口部96aの前後両側に配置される。
前述したように、第一リンク161と開孔体ブラケット79bとが、リンク軸79dを介して回動自在に連動連結される。
【0065】
一方、第二リンク162は、前後方向に長く下部取付フレーム96の前後方向の長さよりも若干短い板材であって、その両端に連結軸162a・162aを介して、前後の第一リンク161・161と回転自在に連動連結される。そして、第二リンク162の前後略中央に、枢支軸162bを介して、下部取付フレーム96上に回動自在に取付けられている。該第二リンク162は本実施例では開口部96aと開口部96aの間の三カ所に配置しているが、左右両側に配置する構成であってもよく、少なくとも前後の第一リンク161・161を連結する構成であればよく、その数と配置位置は限定するものではない。
こうして、第一リンク161・161と第二リンク162が回転自在に連動連結され、第一リンク161・161と第二リンク162・162・162とにより囲まれる空間内にホルダ78が配設されることになる。
【0066】
駆動アーム165は、平面視において略三角形状に形成され、前後中央部が上部取付フレーム95の左右一端から下方に突設した回転支持軸165aに枢支される。該駆動アーム165の一端には、枢支軸165bを介して回転自在に第一リンク161の一端が連動連結される。駆動アーム165の他端には、ローラ165cが回転自在に支持されている。そして、該ローラ165cは、下部取付フレーム96よりも外側に突出するように配設される。該駆動アーム165と連動連結された第一リンク161と下部取付フレーム96との間には、弾性体としてバネ166が介装され、駆動アーム165のローラ165cが突出する方向、つまり、図9における第二リンク162が時計回りに回転するように付勢されている。但し、バネ166の取付位置は、開閉駆動部76(第一リンク161または第二リンク162または駆動アーム165)と下部取付フレーム96または上部取付フレーム95との間に介装する構成であればよく限定するものではない。
【0067】
また、植付フレーム29(図1参照)の下部内側の前記駆動アーム165の配設された側には、カム体165dが前後方向に設けられ、該カム体165dに前記ローラ165cが当接可能に構成される。カム体165dは、開孔体79がマルチシート9を開孔する予定位置付近において、内側に突出するように形成される。
【0068】
このような構成において、カム体165dと駆動アーム165が当接していない時、図8に示すように、開孔爪79aの先端は、開口部96aの略中心に位置するように配設される。
そして、図1、図8または図9に示すように、無端体71が回動され、種球ホルダユニット73と開孔ユニット74が、下方位置の下植付従動スプロケット83bから後方の下植付従動スプロケット83c(植付位置7b)へ移動する。この時、カム体165dに駆動アーム165のローラ165cが当接して、駆動アーム165が、回転支持軸165aを中心として反時計回りに回動される。すると、後側の第一リンク161が、駆動アーム165側へ引っ張られて移動し、該第一リンク161に連結されている第二リンク162は、枢支軸162bを中心に反時計回りに回動される。よって、前側の第一リンク161と後側の第一リンク161とは、左右逆の方向に移動される。
【0069】
この開閉駆動部76の一連の動きに伴い、開閉駆動部76と係合している開孔体ブラケット79bが、開孔体軸79cを中心反時計方向に回動される。図9に示すように、該開孔体ブラケット79bに取付けられている開孔体79も反時計方向に回動することになり、開孔爪79aは開口部96aの頂点(角部)に当たった状態で停止する。該開口部96aの頂点は開孔爪79aが開いた時の位置決め部ともなる。
つまり、マルチシート9に刺さり込んだ四本の開孔体79の下端が、開口部96aの中心部より外方へ回動することにより、マルチシート9を開孔させることができる。
【0070】
図1から図3のいずれかに示すように、押出し装置77は、前記種球ホルダユニット73と前記開孔ユニット74が最下端に位置して植付位置7bを移動する時に、開孔体79によって、マルチシート9が開孔された後、種球を下方に押付けて圃場面に植付ける部材である。
押出し装置77は、主に回動アーム77a、連結ロッド77b、押付体77c等を備える。押出し装置77は左右の無端体71・71の間の空間内に配設され、一つの種球ホルダユニット73の左右方向に配設されるホルダ78と同数の押付体77c・77c・・・を有する。
【0071】
回動アーム77aは、その一端が前記押出し駆動軸33の一端に固設され、他端に連結ロッド77bの上端部が枢支される。なお、押出し駆動軸33と無端体駆動スプロケット84との間には電磁クラッチ77fが配設され、保持開孔手段72が植付位置7bに至るとセンサがONして電磁クラッチ77fが作動して動力が伝達され、回動アーム77aが一周(上方を向く位置)すると、電磁クラッチ77fが切れる構成としている。連結ロッド77bの下端は押付体ホルダ77dの一端に連結されている。該押付体ホルダ77dは左右方向に横設され、該押付体ホルダ77dに押付体77c・77c・・・の上部がバネ等の弾性体を介して連結される。該押付体77c・77c・・・は棒状に構成されて、上部が押付体ホルダ77dに支持されて、下部が板状の連結体77eに支持されている。そして、押付体ホルダ77dの両側は植付フレーム29に枢支され、連結体77eを介して押付体77c・77c・・・の下部が前後揺動自在に支持されている。該連結体77eはバネ等の弾性体により前方へ回動するように付勢され、該連結体77eの両側からは規制ピンが側方に突出され、図示しない植付フレーム29に形成したガイド孔に挿入されている。該ガイド孔は略L字状に構成され、前記規制ピンは前記取付板95dと当接可能に配設されている。
【0072】
このような構成により、無端体71が回動されると、植付位置7bにおいて、規制ピンが取付板95dに当接して、種球ホルダユニット73と開孔ユニット74が、後方への移動と同期して連結体77eが後方へ押される。そして同時に、押出し駆動軸33が回動されることにより回動アーム77aが回動して連結ロッド77bが下方へ押し下げられ、連結体77eを介して押付体77c・77c・・・を下げて、開孔ユニット74によりマルチシートに孔を開けた空間に、種球ホルダユニット73のホルダ78・78・・・に保持した種球を押付体77c・77c・・・により下方へ押付けて圃場に植え付けるのである。
そして、更に、種球ホルダユニット73と開孔ユニット74が後方へ移動すると、押付体77c・77c・・・は上昇を開始し、種球ホルダユニット73から抜けてから規制ピンがガイド孔にガイドされて上方へ持ち上げられ、取付板95dから外れて、弾性体の付勢力により連結体77eは前方に戻されるのである。この動作が繰り返されて、植付作業が行われるのである。
【0073】
次に、植付部7を支持するための構成について、図1より説明する。
機体フレーム2の後部の左右中央に支持フレーム2aが立設され、該支持フレーム2aと植付フレーム29の間に、昇降リンク機構21が配設される。該昇降リンク機構21は動力伝達機構6とともに、互いに干渉しないように左右の座席51の間にある保護ケース15内に配設される。
該昇降リンク機構21は、植付面9と植付位置7bとを所定距離に保つために、植付部7を昇降する機構であって、主に、トップリンク22、ロワーリンク23、昇降アクチュエータ24(図1中図示省略、図12参照)等を備える。
【0074】
前記トップリンク22の後端は、支点軸22bを介して支持フレーム2aの上部に上下回転自在に支持される。トップリンク22の前端は、支点軸22aを介して植付フレーム29の後部の左右略中央に後述する左右揺動手段30を介して立設した支持柱29bの上部に上下回転自在に支持される。
トップリンク22の下方に平行に配置されたロワーリンク23の後端は、支点軸23bを介して支持フレーム2aの下部に上下回転自在に支持される。ロワーリンク23の前端は、支点軸23aを介して前記支持柱29bの下部に上下回転自在に支持される。こうして、トップリンク22とロワーリンク23とにより平行リンクが形成され、植付部7を平行に昇降できる構成としている。
昇降アクチュエータ24は、油圧シリンダまたは電動シリンダ等で構成され、座席51の前側部の位置で、トップリンク22の前部と機体フレーム2の間に介装される。本実施例では、電動シリンダ(昇降アクチュエータ24)のピストンロッド先端をトップリンク22に回動軸を介して回動自在に連結される。昇降アクチュエータ24の他端は、機体フレーム2に枢支される。
【0075】
図1または図12に示すように、前記昇降アクチュエータ24は、制御手段19と接続され、該制御手段19には、植付位置7bと後述する植付面9との距離を検知するための植付高さ検知手段28(検知部28c)と高さ設定手段18が接続されている。
【0076】
前記植付高さ検知手段28は、主に支持部28a、回転軸28d、回転体28b、検知部28cによって構成され、植付フレーム29前下部から前方に突出して配設される。
支持部28aの一端(後端)は、植付フレーム29の前側部に上下回動自在に連結され、該支持部28aの上下回動角度を検知する検知部28cが配設される。該検知部28cはポテンショメータやロータリエンコーダ等の角度検知センサーにより構成され、制御手段19と接続されている。前記支持部28aの他端(前端)は、回転軸28dを回転自在に支持している。回転体28bは回転軸28dの左右略中央に軸支される。
【0077】
よって、植付機1が作業走行中に、回転体28bは植付面9に接触しながら転動し、該回転体28bに回転軸28dを介して連結された支持部28aは、植付面9に追従して上下方向に回動(昇降)される。その昇降量を検知部28cで検知して、その検知した値は、制御手段19に出力される。
【0078】
制御手段19は、高さ設定手段18により設定された値と、検知部28cで検知した値とを比較演算し、その差が0となるように昇降アクチュエータ24を上下方向に伸縮駆動させる。
よって、植付面9に追従して、植付部7は、所定の高さを維持して種球の植付を行うことができ、安定した種球の植付けができる。
【0079】
次に、前記植付部7の左右揺動手段30について説明する。
図1または図10、図11に示すように、植付部7の植付フレーム29の後部に左右揺動手段30を介して昇降リンク機構21が連結され、機体フレーム2に対して左右に傾斜可能に構成される。詳しくは、図10に示すように、植付フレーム29の後部略左右中央に取付ブラケット29cが固設され、該取付ブラケット29cの略中央には、前後方向を軸心とする左右傾倒支持部30aが後方に突設され、該左右傾倒支持部30aに前記支持柱29bが回転自在に支持される。該支持柱29bには、前述したように昇降リンク機構21が取付けられる。
【0080】
また、左右揺動手段30には、傾斜角度調整手段220が設けられており、該傾斜角度調整手段220は、支持ステー221、保持体222、調整ハンドル223、ネジ軸224、ナット体225等を備える。支持ステー221は、前記支持柱29bより側方に突設され、該支持ステー221の先端に保持体222が固設される。該保持体222は、調整ハンドル223が回転自在に支持され、該調整ハンドル223の下部はネジ軸224として下方に延設されている。該ネジ軸224には、ナット体225が螺装され、該ナット体225は植付フレーム29より後方に突設した取付体29dに固設されている。
このような構成において、調整ハンドル223を回動することによりナット体225が上方または下方に移動され、該ナット体225に連結されている植付フレーム29が左右傾倒支持部30aを中心に回動して植付部7が傾斜されることになるのである。
但し、傾斜角度調整手段220の構成は前記構成に限定されるものではなく、シリンダやモータにより傾斜させ、スイッチ等で操作する構成とすることも可能である。
【0081】
このような構成とすることで、種球の植付を行う時に、作業者(運転者)は、植付の状況や植付面9に対する植付部7の傾斜状態を見ながら、調整ハンドル223を回動することにより植付部7を傾斜させて植付面の傾斜に合わせ、植付姿勢を調整することができる。こうして植付精度を向上することが可能となる。
【0082】
以上の如く、本実施形態の植付機1は、種球を植付ける植付部7と、植付機1の運転および植付部7の操作を行う運転操作部5と、前記植付部7と運転操作部5を搭載して畝を跨いで走行する走行部4と、植付部7および走行部4の駆動力を発生させる駆動部3とを有し、走行しながら所定間隔をおいて種球の植付けを行う植付機1であって、前記走行部4の前部に植付部7を配置し、後部に駆動部3を配置し、該植付部7と駆動部3の間に運転操作部5と植付部7の昇降リンク機構21とを配置するとともに、前記運転操作部5の側部に、機体側方へと突出する操作位置と、機体側部に沿う収納位置とに位置変更可能な操作コラム52を設けたものである。
【0083】
このように構成することにより、植付機1の前後重量バランスが向上して、運転操作部5において、安定した姿勢で種球を植付部に補給することができるようになる。また、操作コラム52は側方に突出させて、側方から植付作業者とは別の操縦者により操作したり、操作コラム52を収納位置に変更して運転操作部から直接操作したりすることが可能となり、作業状態や作業人数に合わせて操作することが可能となる。また、格納時には操作コラム52を収納位置としてコンパクトに収納できる。
【0084】
本実施形態の前記植付部7は、側面視多角形状に回転するように左右一対配置される無端体71と、前記左右の無端体71間に架設され、回転方向に所定間隔毎に取付けられる保持開孔手段72と、前記左右の無端体71間に配置され、前記保持開孔手段72が最下部の植付位置7bを通過するときに種球を押付けて圃場面に植付ける押出し装置77とを備え、前記植付部7の後上部を前高後低の所定角度に傾斜した補給位置7aを形成したものである。
【0085】
このように構成することにより、作業者は種球を植付部の補給位置に容易に挿入することができるようになり、作業者の疲労を軽減し、作業スピードもアップできて作業効率を向上することができる。
【0086】
本実施形態の植付機1は、前記植付部7の最下部に、保持開孔手段72が圃場面と平行に後方へ移動する植付位置7bを形成したものである。
このように構成することにより、種球は圃場面と平行に移動するため、種球の姿勢が傾斜することなく安定した状態で確実に植え付けることができる。
【0087】
1 植付機
3 駆動部
4 走行部
5 運転操作部
7 植付部
7a 補給位置
7b 植付位置
21 昇降リンク機構
52 操作コラム
71 無端体
72 保持開孔手段
77 押出し装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種球を植付ける植付部と、
植付機の運転および植付部の操作を行う運転操作部と、
前記植付部と運転操作部を搭載して畝を跨いで走行する走行部と、
植付部および走行部の駆動力を発生させる駆動部とを有し、
走行しながら所定間隔をおいて種球の植付けを行う植付機であって、
前記走行部の前部に植付部を配置し、後部に駆動部を配置し、該植付部と駆動部の間に運転操作部と植付部の昇降リンク機構とを配置するとともに、
前記運転操作部の側部に、機体側方へと突出する操作位置と、機体側部に沿う収納位置とに位置変更可能な操作コラムを設けたことを特徴とする植付機。
【請求項2】
前記植付部は、側面視多角形状に回転するように左右一対配置される無端体と、
前記左右の無端体間に架設され、回転方向に所定間隔毎に取付けられる保持開孔手段と、
前記左右の無端体間に配置され、保持開孔手段が最下部の植付位置を通過するときに種球を押付けて圃場面に植付ける押出し装置とを備え、
前記植付部の後上部を前高後低の所定角度に傾斜した補給位置を形成した
ことを特徴とする請求項1に記載の植付機。
【請求項3】
前記植付部の最下部に、保持開孔手段が圃場面と平行に後方へ移動する植付位置を形成したことを特徴とする請求項2に記載の植付機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−200698(P2010−200698A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51242(P2009−51242)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(391025914)八鹿鉄工株式会社 (131)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】