植物の出芽および生長を増強するためのシュードモナス・アゾトフォルマンス(PSEUDOMONASAZOTOFORMANS)種の新規蛍光シュードモナス菌
本発明は、シュードモナス・アゾトフォルマンス種、F30A株の蛍光シュードモナス菌の単離株を記載する。該単離株は、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHに受託されており、受託番号DSM22077が割り当てられており、該単離株で処理された種子の発芽、実生の確立、植物の出芽、植物の生長および/または作物の収量を増強できる。したがって、本発明は、植物の出芽および生長を増強するためのこのシュードモナス菌の使用、および該シュードモナス菌を含む農業用組成物をさらに含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物出芽および植物生長の促進の分野に向けられている。より詳細には、本発明は、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHに受託されており、受託番号DSM22077が割り当てられている、F30Aと示されるシュードモナス・アゾトフォルマンス(Pseudomonas azotoformans)の新規株、植物出芽および植物生長の促進剤としてのその使用、ならびにそのような使用のための組成物および方法に向けられている。
【背景技術】
【0002】
植物生長に対して有益な効果を有する根圏の細菌(根圏細菌)は、しばしばPGPR(植物生長促進根圏細菌)と呼ばれ、播種/植付けから収穫までの作物の生長の様々な段階で、それに恩恵を与える。土壌および根圏中の蛍光シュードモナス菌は、数々の研究において、いくつかの農作物において植物生長促進効果を発揮する(Kloepperら、1980、a、b、Brisbaneら、1989、DeFreitasおよびGermida、1991)、また、植物病を抑制する(Hemning、1990、O'SullivanおよびO'Gara、1992、Weller、1988、Hokebergら、1997)ことが実証されている。
【0003】
実験的条件下で、いくつかの蛍光シュードモナス菌が、コムギ(Kroppら、1996)、マスタード(Deshwalら、2006)、テンサイ(SuslowおよびSchroth、1982)、ジャガイモ(Kloepperら、1980、HowieおよびEchandi、1983)、ダイコン(KloepperおよびSchroth、1978、DaviesおよびWhitbread、1989)ならびにホウレンソウ(Urashimaら、2006)などの農作物の出芽および収量を増加させるための潜在的な薬剤として立証されている。その植物生長促進活性に連結しているいくつかの機構が、十分に研究および記載されている。これらには、とりわけ、根定着能力(Benizriら、2001)、広範囲の酵素およびホルモン(Vivekananthanら、2004、Lucyら、2004、PattenおよびGlick、1996、Garcia de Salamoneら、2001)、ならびにしばしば抗微生物活性を有する他の代謝物(LoperおよびBuyer、1991、DowlingおよびO'Gara、1994)を産生する能力が含まれる。また、その活性の様々な領域を網羅する特許/特許出願の例も入手可能であり、主に生物的防除特性を有する株/単離株を含む。植物生長促進特性を有する蛍光シュードモナス菌に関する特許/特許出願は、ほとんどの場合、本発明の活性成分(細菌株)を、所望の単離株を選択するために必要なスクリーニングおよび試験の方法の説明と組み合わせて網羅する。本明細書によって組み込まれる以下の特許出願は、植物生長促進および/または生物的防除の特性を有する蛍光シュードモナス菌を網羅する、本発明の一部の例を提供する:WO/1987/000194、US1996/5503652、WO0051435、US1996/5503651、US2002/6447770、およびUS2002/6495362。
【0004】
上述の文献および特許/特許出願にもかかわらず、数年間の圃場実験の間に多くの重要な農作物の出芽、生長および収量を一貫して改善させることができると示されかつ証明された、シュードモナス・アゾトフォルマンスの種に属する単離株は、現在までに他に存在しない。反対に、以前に研究されたシュードモナス・アゾトフォルマンスの土壌起源の単離株は、コメを用いた実験においていかなる有意な生長促進効果も示さなかった(Piaoら、2005)。ハンガリーのベレンツェ湖(Lake Velencei)の健康なアシの群落(stand)の根茎関連の細菌集団に関する、シュードモナス・アゾトフォルマンスの単離株の植物生長促進特性に関する唯一の手短な情報(Micsinaiら、2003)は、その植物生長促進特性を確認するどのような実験データにも基づいていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO/1987/000194
【特許文献2】US1996/5503652
【特許文献3】WO0051435
【特許文献4】US1996/5503651
【特許文献5】US2002/6447770
【特許文献6】US2002/6495362
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、農業上重要ないくつかの作物において植物出芽および/または植物生長促進を発現する、蛍光シュードモナス菌の新規株を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、F30A株と示される、シュードモナス・アゾトフォルマンス種からの蛍光シュードモナス菌の例外的な単離株によって得られる。シュードモナス・アゾトフォルマンスの株は、植物生長促進特性について以前に報告されたことがない。この単離株は、温室および圃場の条件下の両方で栽培した様々な作物に施用した後に、有意な植物の出芽および生長促進を提供する。さらに、入手可能な文献データに基づいて、その効果は、以前に文書化されている他のどの植物生長促進微生物剤よりも一貫して安定かつ再現可能である。シュードモナス・アゾトフォルマンス、F30A株の生物学的に純粋な株は、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHに受託されており、受託番号DSM22077が割り当てられている。
【0008】
したがって、本発明は、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHに受託されており、受託番号DSM22077が割り当てられている、シュードモナス・アゾトフォルマンス、F30A株の生物学的に純粋な株に向けられている。また、本発明は、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHに受託されており、受託番号DSM22077が割り当てられている、シュードモナス・アゾトフォルマンス、F30A株の生物学的に純粋な株の培養物から得られた上清にも向けられている。
【0009】
また、本発明は、種子発芽、植物出芽および/または植物生長を増強するための、シュードモナス・アゾトフォルマンス、F30A株の生物学的に純粋な株、またはその上清の使用にも向けられている。前記種子および/または植物は、たとえば双子葉または単子葉であり得る。
【0010】
また、本発明は、シュードモナス・アゾトフォルマンス、F30A株の生物学的に純粋な株の発酵産物にも向けられている。
【0011】
また、本発明は、シュードモナス・アゾトフォルマンス、F30A株の生物学的に純粋な株、またはその上清を、任意選択で1つまたは複数の液体および/または固体の担体と組み合わせて含む、農業用組成物にも向けられている。農業用組成物は、1つまたは複数の追加の植物生長促進微生物、生物的防除微生物、有機肥料および/または農薬をさらに含み得る。
【0012】
本発明は、本明細書中に定義した発酵産物または農業用組成物を、種子、植物および/または前記種子もしくは植物を取り囲む環境に施用するステップを含む、種子発芽、植物出芽および/または植物生長を増強するための方法にさらに向けられている。施用は、たとえば植物の根に行い得る。施用は、植物根の出芽の前および/または後に行い得る。あるいは、発酵産物または農業用組成物は、植物栄養繁殖単位に施用し得る。また、発酵産物または農業用組成物は、植物栄養繁殖単位または種子および/もしくは植物を取り囲む植物生長培地にも施用し得る。植物は単子葉植物もしくは双子葉植物であり得るか、または種子がそれへと発生し得る。
【0013】
また、本発明は、前記シュードモナス・アゾトフォルマンス、F30A株、または前記上清を、1つまたは複数の液体または固体の担体、ならびに任意選択で1つまたは複数の追加の植物生長促進微生物、生物的防除微生物、有機肥料および/または農薬と混合するステップを含む、本明細書中に定義した農業用組成物を調製する方法にも向けられている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】16SのrDNAの1390個のヌクレオチドのアラインメントに基づいて、単離株F30Aの分類学上の位置を、シュードモナス属(Pseudomonas)の25個の様々な種を表す株および1つの大腸菌(E.coli)(Gene Bank受託番号J01695)の参照株と比較して示す図である。
【図2】種子に様々な濃度のF30A発酵産物およびその上清を施用した後の、春コムギ(感染させていない種子ロット)の出芽(A)および乾重量(B)を示す図である。温室実験。四角はCFU/mlを示す。エラーバーは標準誤差を表す(n=4)。
【図3】種子に様々な濃度のF30A発酵産物および生理食塩水中に懸濁させたF30A細胞を施用した後の、春コムギ(感染させていない種子ロット)の出芽(A)および乾重量(B)を示す図である。温室実験。四角はCFU/mlを示す。エラーバーは標準誤差を表す(n=4)。
【図4】種子に様々な濃度のF30A発酵産物、水道水中に懸濁させたF30A細胞、および単離株の上清を施用した後の、ホウレンソウの出芽を示す図である。2つの異なる発酵産物バッチ:バッチFOM115(A)およびバッチFOM139(B)からの結果。温室実験。四角はCFU/mlを示す。エラーバーは標準誤差を表す(n=4)。
【図5】根/土壌に様々な濃度のF30A発酵産物を施用した後およびその上清を施用した後の、アイスバーグレタスのグリーンマス収量を示す図である。2つの異なる発酵産物バッチ:バッチFOM173(A)およびバッチFOM176(B)を使用した。(A)および(B)は2つの独立した温室実験を表す。四角はCFU/mlを示す。エラーバーは標準誤差を表す(n=12)。
【図6】根/土壌にF30Aの保管した発酵産物バッチを施用した後の、アイスバーグレタスのグリーンマス収量を示す図である。バッチFOM203は4℃で2週間保管し、バッチFOM196は6週間、バッチFOM192は14週間であった。温室実験。四角はCFU/mlを示す。エラーバーは標準誤差を表す(n=12)。
【図7】根/土壌に様々な濃度のF30A発酵産物(バッチFOM076)を施用した後の、コショウの果実収量を示す図である。温室実験。四角はCFU/mlを示す。エラーバーは標準誤差を表す(n=8)。
【図8】アイスバーグレタスの土壌/根の処理。左の鉢:水対照、右の鉢:F30A発酵産物。
【図9】圃場実験における、種子にF30A発酵産物(バッチFOM233)を施用した後のホウレンソウの出芽を示す図である。出芽は3回の別々の機会に記録した。処理していない対照と比較した、出芽のパーセント増加/減少を図中に示す。エラーバーは標準誤差を表す(n=4)。
【図10】圃場実験における、種子にF30A発酵産物(バッチFOM233)を施用した後のホウレンソウの収量を示す図である。収量は2つの異なる時点に測定した。エラーバーは標準誤差を表す(n=4)。
【図11】圃場実験における、種子にF30A発酵産物(バッチFOM154)を施用した後の、2回の機会および出芽(四角)でのロケットの収量(バー)を示す図である。エラーバーは標準誤差を表す(n=12)。
【図12】圃場実験における、種子にF30A発酵産物(バッチFOM150)を施用した後のつる豆(vining pea)の収量を示す図である。エラーバーは標準誤差を表す(n=4)。
【図13】圃場実験における、種子にF30A発酵産物(バッチFOM076)を施用した後のニンジンの収量を示す図である。エラーバーは標準誤差を表す(非処理:n=9、水:n=12、F30A:n=6)。
【図14】圃場実験における、根/土壌にF30A発酵産物(バッチFOM233)を施用した後のアイスバーグレタスの収量を示す図である。エラーバーは標準誤差を表す(n=5)。
【図15】圃場実験における、根/土壌にF30A発酵産物(バッチFOM095およびFOM147)を施用した後のイチゴの花の数を示す図である。暗色バー:F30A、淡色バー:水で処理した対照。エラーバーは標準誤差を表す(n=4)。
【図16】圃場実験における、根/土壌にF30A発酵産物(バッチFOM095およびFOM147)を施用した後のイチゴの収量を示す図である。暗色バー:F30A、淡色バー:水で処理した対照。エラーバーは標準誤差を表す(n=4)。
【図17】圃場実験における、根/土壌にF30A発酵産物(バッチFOM076)を施用した後のブロッコリーの収量を示す図である。暗色バー:F30A、淡色バー:水で処理した対照。エラーバーは標準誤差を表す(n=5)。
【図18】圃場実験における、根/土壌にF30A発酵産物を施用した後の夏キャベツの収量を示す図である。暗色バー:F30A、淡色バー:水で処理した対照、四角:販売可能な収量の百分率(>350グラム)。エラーバーは標準誤差を表す(n=50)。
【図19】圃場実験における、塊茎にF30A発酵産物を施用した後の、新ジャガイモの植物発生および塊茎収量を示す図である。異なる文字を有する平均は、ダンカンの多重範囲検定によって有意に異なる(p=0.05)。
【図20】塊茎にF30A発酵産物および単離株の湿配合物を施用した後の、1つの新ジャガイモおよび1つの後期ジャガイモ(late potato)の栽培品種の相対的塊茎収量を示す図である。圃場実験からのデータ。異なる文字を有する平均は、ダンカンの多重範囲検定によって有意に異なる(p=0.05)。
【図21】単離株F30Aの発酵産物(右側)で処理した後の、処理していない小植物(左側)と比較した、オウシュウアカマツの10週齢の小植物の根および苗条生長の増強を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の植物生長促進剤
本発明は、2008年12月3日に、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(Inhoffenstraβe 7B、D-38124、Braunschweig、ドイツ)に受託され、受託番号DSM22077が割り当てられているシュードモナス・アゾトフォルマンスの新規株、F30A株に向けられている。受託者はLantmannen BioAgri AB(私書箱914、751 09、Uppsala、スウェーデン)である。本発明のF30A株は生物学的に純粋な株である。
【0016】
シュードモナス・アゾトフォルマンスの新規株、F30A株は、以下において「単離株」、「薬剤(agent)」またはシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aとしても示す。シュードモナス・アゾトフォルマンスは以下においてP.アゾトフォルマンスと省略し得る。また、シュードモナス・アゾトフォルマンスF30A株は、「F30A」としても示し得る。
【0017】
植物生長を促進させる本発明のシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aは、以下の具体的な同定特徴を有する、蛍光シュードモナス菌の生物学的に純粋な株を含む:(i)単離株は、根関連のグラム陰性細菌、蛍光菌(P.fluorescens)の系統(lingae)メンバーであり、最も近い類縁体と明確に異なる特異的なBiolog GM利用プロフィールを有しており、選択および同定の特徴を以下に示す、(ii)単離株は、以下に示す他の独特な形態学的、生化学的および代謝的特徴、ならびに窒素固定、リン可溶化および硫黄可溶化/酸化の能力を有する、(iii)単離株は、少なくともヒユ科、アブラナ科、ナス科、キク科(Astraceae)、セリ科、マメ科、バラ科、ウリ科、シソ科、ネギ科(Aliaceae)の植物科に属する農作物の種子発芽、植物生長および/または収量を増強する、ならびに植物苗床中の樹木の小植物の根形成および生長を増強する。そのような効果の詳細な例を以下に記載する。
【0018】
本発明の単離株は、以下の追加の同定特徴を有する:活発に増殖中の単離株の存在下では、強い濃緑色からほぼ黒色の色素が有機培養培地(PF寒天、基本基質としてダイズペプトン、コムギペプトンおよび他の植物ペプトンを有する液体培地)中に蓄積される、ならびに/または青緑色の色素がグリセロールを添加した鉱物培養培地(たとえばレムナ(Lemna)培地)中に蓄積される(MaengおよびKhudairi、1973)。この色素の蓄積は、他のどのような既知のシュードモナス菌でも報告されていない。さらに、単離株は、Biolog GNシステムによって試験して、シュードモナス・アゾトフォルマンスの基準株および他の最も近く関連する蛍光シュードモナス菌のそれとは異なる、特異的な炭水化物利用プロフィールを有する独特な生化学的特徴を有する。
【0019】
本発明の単離株の選択は、根を含めた全植物試料を採取することによって始まった。試料の希釈液を根の小片から抽出し、細菌の単離に適した培地上にプレートした。様々な形態学的特徴を有する細菌コロニーを採取し、-80℃のストックとして維持した。適切な微生物基質上での液体培養物をストックから導き、植物生長促進特性の選択は、個々の単離株を接種したコムギおよびテンサイの種子を用いた温室バイオアッセイによって行った。発芽および植物生長を増強する単離株を選択し、同定し、より大スケールの温室および圃場実験におけるその実現可能性を確認するために安全性の一次評価を行った。
【0020】
形態学的、生化学的および遺伝学的特徴の組に基づいて、本発明の選択された単離株は、シュードモナス・アゾトフォルマンスの種として同定された、グラム陰性の鞭毛を有する細菌であり、蛍光菌系統(lingae)のメンバーである(図1)。しかし、これは、シュードモナス・アゾトフォルマンスの基準株IAM1603および他の近く関連するシュードモナス属の種と比較して、Biolog GNシステムの独特な利用プロフィールを有する(Table 1(表1))。Table 1(表1)に記載の形質と組み合わせて、以下の特長が本発明の株に非常に特異的である:これはスクロースおよびセバシン酸を利用する一方で、3つの最も近く関連する種のメンバーは利用せず、また、これは3つの最も近く関連する種のメンバーによって利用されているキシリトールおよびプトレシンを利用しない。
【0021】
【表1】
【0022】
本発明の単離株の同定を可能にする他の有用な特徴は、VPA-植物性ペプトン寒天(1000mlの蒸留/脱イオン水中に10gの植物性ペプトンブロス(Oxoid Ltd.)、15gの顆粒寒天(Difco Ltd))、PF寒天(1000mlの蒸留/脱イオン水中にDifco Ltd、38gのPFレディーミックス培地、10gのグリセロール)などの一般的な細菌学的培養培地上における特定のコロニー形態、既に記載した独特な色素の蓄積である。
【0023】
本発明の単離株の特徴的なコロニー外見は、30℃の温度で24時間のインキュベート、次いで室温(約20〜22℃)でさらに24〜48時間のインキュベートの後に最も明白である。VPA上で増殖させた場合、コロニーの縁は通常は不均一であり、コロニーは中央がわずかにより高く高密度である。コロニーは、コンパクトであり、透明であり、粘性でなく、中央がより高密度かつ茶色っぽく、縁がより淡い青みがかった色であり、シェル様構造に似た典型的な形状を有する。
【0024】
また、本発明の単離株を蛍光シュードモナス菌の他の単離株から区別する独特なコロニー特徴は、室温で5〜8日間のインキュベート後にPF寒天上でも観察される。コロニーは白色-灰色がかっており、中央に非常に透明な黄色-茶色の小さなチップがあり、縁はある程度規則的である。
【0025】
本発明の単離株をPF寒天上で培養中、強い緑色からほぼ黒色の色素が寒天中に蓄積される。
【0026】
研究室のアッセイでは、本発明の単離株は、利用可能な窒素をまったく含まないが、2%の適切な炭素源(たとえばグリセロール)を添加したシュードモナス属用の改変液体鉱物培地(Stanierら、1966)中で増殖し、これは、その大気窒素固定の能力を示している。液体培地に白金耳1杯の本発明の単離株の終夜増殖させた細菌細胞を接種するか、または細胞を0.01Mの硫酸マグネシウムに懸濁させ、細胞懸濁液(0.1ml/5mlの液体培地)を鉱物培地に加える。増殖は、光学密度の測定値(600nm)によって、接種の5日後まで監視する。5日後の光学密度は、それぞれ、培養開始時の0.069と比較して0.108(白金耳接種)および培養開始時の0.046と比較して0.087(細胞懸濁液)である。測定値は、窒素の非存在下で増殖を遅延させる単離株の能力を示しており、立ち代って、これは本発明の単離株が窒素固定の能力を有することを示している。
【0027】
また、本発明の単離株は、リンを可溶化させる、およびチオスルフェートを酸化させ、元素状硫黄を可溶化させる。アッセイは、不溶性リン(Ca3(PO4)2)またはチオスルフェート/元素状硫黄を添加した寒天プレート上の本発明の単離株を接種することによって行う。不溶性元素の可溶化/酸化の効果として、透明な区域が本発明の単離株のコロニーの周りに形成される。
【0028】
蛍光菌の種の単離株を使用する代わりにシュードモナス・アゾトフォルマンスの種に属する本発明のPGPR単離株を施用する利点は、P.アゾトフォルマンス種のメンバーは、これまでに可能性があるヒト病原体として報告されたことが一度もないことである。これとは反対に、人間に対する蛍光菌の病原性に関する報告は入手可能である(たとえば、Franzettiら、1992、Hsuehら、1998、Weiら、2002を参照)。
【0029】
本発明の単離株の増殖および維持
本発明の蛍光シュードモナス菌単離株(シュードモナス・アゾトフォルマンスF30A)は、任意の一般的な適切な細菌学的培地(固体および液体の両方)上で増殖させることができる。適切な固体培地の一部の例は、植物性ペプトン寒天(VPA)およびシュードモナス属F寒天(PF寒天)である。液体培地の例は、植物性ペプトンブロスおよび主要な有機炭素源としてダイズペプトンを含むすべての培地である。研究室条件下では、本発明の単離株は、典型的な環境蛍光シュードモナス菌に適した任意の温度、すなわち15℃〜30℃、好ましくは23〜27℃の温度範囲で良好に増殖する。その増殖は、37℃の温度で90%を超えて遅延される。栄養素培地のpHは、好ましくはpH7.0〜7.5の範囲で中性である。
【0030】
いくつかの有機基質、たとえば、トリプシンダイズブロス、植物性ペプトンブロスならびに植物ペプトン、コムギペプトンおよびダイズペプトンブロスは、優れた有効性および本発明の単離株の高いバイオマスを支援する。2つのバイオアッセイ系、根/土壌への施用(アイスバーグレタス)および種子への施用(ホウレンソウ)を用いて行った温室試験により、MPSO基質の選択が可能となり(Levenforsら、2008)、これは、これらの様々な農業系での施用において最も柔軟であった。しかし、本発明の単離株には、発酵時間40〜48時間であり、それよりも短いべきではない。本発明の単離株の生物活性を検出するためには、他の有機基質もその発酵に適切であるが、本発明の単離株をロータリー振盪器上で培養してもよい(120rpm、40〜48時間、室温)。しかし、満足できる有効性を得るために、本発明の単離株の生物活性のある産物の発酵は、7.0〜7.5のpH範囲で、約15〜30℃の温度範囲、たとえば20〜28℃、最も好ましくは約23〜27℃で行われることが推奨される。
【0031】
有効性試験には、本発明の単離株の発酵産物は、通常、発酵のプロセス全体中、標準の発酵プロトコル(pH7.0、20℃)に従って、または最適化した発酵プロトコル(pH7.25および25℃)に従って発酵させる(それぞれのプロトコルには実験セクションを参照)。さらに、本発明の単離株の標準または最適化した発酵産物の遠心分離(8000rpm、15分間)によって得られ、その後に適切な無機または有機の農業上適合性のある担体中で配合した細菌細胞も、選択した試験において試験した。発酵産物の調製物のこれらの種類すべてが、種子発芽または植物生長の増強および本発明の方法における使用に適している。
【0032】
本発明の単離株が安定に保たれることを確実にするために、これは、20%のVPBおよび30%のグリセロールの混合物中の、凍結乾燥したストック培養物または-80℃のストック培養物の深凍結物として維持し得る。発酵のために、かつ液体培養を開始させるために、一般に、約100μlの深凍結ストック培養物を、100mlの細菌増殖に適した任意の50%強度の有機液体培地、すなわち50%強度のTSB内に移し、ロータリー振盪器上で増殖させる(120rpm、22〜25℃、最長24時間)。他の実験目的には、少量の単離株F30Aの深凍結ストック培養物を、細菌増殖に適した任意の固体有機基質培地上にプレートし、2週間以下の期間の間、+4℃で保管してもよい。
【0033】
植物生長促進活性
本発明の生物学的に純粋なシュードモナス・アゾトフォルマンスF30A単離株は、種子の発芽、植物の出芽および確立を増強する、花の確立および形成を促進する、ならびに/または植物の生長を増強させ、それによって作物の収量を増加させる能力を有する。したがって、本発明の一態様は、種子発芽、植物出芽および/または植物生長を増強するための、本発明の単離株の使用に関する。植物は単子葉もしくは双子葉の植物であり得る、または、種子はこれら2種類の植物のどちらかへと発生することができ得る。
【0034】
本発明の単離株は、上述の農作物において、約4%から50%を超える範囲で発芽、出芽、開花を増強する、ならびに/または生長および収量を改善させる。
【0035】
以下に提示する実施例は、本発明のシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aの植物生長促進活性を実証する。Table 2(表2)は、4回の連続した生長期中にスウェーデンで行った圃場または商業的温室試験の範囲で、対象作物において種子、根/土壌(移植物)または塊茎の処理のいずれかとして本発明の単離株を施用した後の、要約した平均収量増加の圃場試験データを示す。実施例1〜18は、感染させていない植物系内に種子、塊茎、根および土壌/灌注処理として施用した場合の、商業的圃場/温室試験または生長チャンバ実験(コムギ、イネ科)における、本発明の単離株の例外的な植物生長を促進する潜在性を明らかに示す。さらに、本発明の単離株の植物生長促進効果は、種子媒介性の病原体、たとえばコムギにおけるフザリウム属(Fusarium)spp.を寄生させた種子に施用した後に観察される(実施例1)。そのような効果は、種子の発芽および新しく出芽した実生の生長を刺激することによる、感染からの回避の結果であり得る。それによって、植物の感受性のある時期がより迅速に乗り越えられ、感染を回避することができる。さらに、本発明の単離株の広範囲の植物生長促進活性は、土壌の種類(圃場および温室試験はすべて、様々な種類の土壌および温室基層土中で行った)によっても、また、気候などの環境条件(本発明の単離株は、様々な温度および降水量のパターンを有する数回の生長期中に、広範囲の作物における植物生長の促進に有効であることが確認された)によっても影響を受けない。
【0036】
Table 2(表2)。
処理していない対照区画から得られた収量と比較した、いくつかの野菜作物においてシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aを施用した後の収量増加。商業的要件に適応させた様々な処理方法を使用して単離株F30Aを施用した。実験は、4回の連続した生長期中の圃場または商業的温室試験として行った。平均収量増加データは、行った圃場試験の数からの平均である。
【0037】
【表2】
【0038】
また、本発明の単離株の上清(遠心分離(8000rpm以上、20分間以上)およびさらなる滅菌濾過(0.2μm)後に得られた、P.アゾトフォルマンスF30Aの無細胞発酵産物)は、発芽、出芽、植物生長および/または収量を増強する。
【0039】
実施例1、2および4は、春コムギおよびホウレンソウの出芽ならびに春コムギおよびアイスバーグレタスの収量を有意に増強する、本発明の単離株の上清の潜在性を示す。
【0040】
本発明の単離株の施用および施用の仕様
さらに、本発明の1つの目的は、種子、栄養繁殖単位、根、土壌および/もしくは他の植物生長培地の処理として、ならびに/または灌注として施用した場合に、農業上重要な作物の種子発芽を増強することおよび/もしくは植物生長および/または収量を改善させることに有効な、本発明のシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aおよび/またはその上清を含む有効な調製物/配合物を利用可能にすることである。したがって、本発明は、植物生長を促進させる本発明のシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aおよび/またはその上清を、任意選択で1つまたは複数の本発明の単離株の液体配合物を可能にする農業上適合性のある担体または本発明の単離株の乾燥もしくは固体調製物/配合物を可能にする農業上適合性のある担体と組み合わせて含む、農業用組成物も提供する。
【0041】
本発明の単離株は、たとえば以下の植物科からの温室および圃場の双子葉および単子葉の農作物の、種子発芽および植物出芽を増強すること、作物群落の密度を改善させること、植物開花および植物生長を促進すること、ならびに収量を改善させることに有用である:ヒユ科(すなわちテンサイ、ホウレンソウ、飼料ビート)、ナス科(すなわちジャガイモ、コショウ)、マメ科(すなわちエンドウマメ)、アブラナ科(すなわちルッコラ、ブロッコリー、様々なキャベツ品種、スウェーデンカブ、アブラナ)、キク科(Astraceae)(すなわち様々なレタス品種)、セリ科(すなわちニンジン)、バラ科(すなわちイチゴ)およびイネ科(すなわちコムギ)、ウリ科(すなわちキュウリ)、シソ科(すなわちオレガノ)、ネギ科(Aliaceae)(すなわちチャイブ)。また、本発明の単離株は、様々な植物苗床(すなわちマツ科のオウシュウアカマツ)中の樹木の小植物の根形成および/または植物生長を改善させるためにも有用である。
【0042】
種子発芽および/もしくは植物出芽を増強する、作物群落の密度を改善させる、植物の開花および/もしくは生長を促進する、ならびに/または最終的に収量を改善させるために、作物は、定義された量の本発明の植物生長を促進させる単離株、すなわちシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aの存在下で生長させ、定義された量の植物生長を促進させる単離株とは、処理していない対照と比較した場合に、有意に、種子発芽を増強する、作物群落の密度を改善させる、植物の開花および生長を促進する、ならびに最終的に収量を改善させる、単離株の量として記載されている。所望の効果を得るために必要な本発明の単離株の量は作物間で異なり、本発明の単離株の施用方法(種蒔きした双子葉および単子葉の作物の種子の処理、ジャガイモおよび他の栄養繁殖した作物における栄養繁殖単位(塊茎、鱗茎、根茎など)の処理、ならびに野菜移植および他の作物の小植物の土壌/根/灌注処理)に依存する。10〜100mlのシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aの産物(7.5×108〜7.5×109コロニー形成単位/ml)/1キログラムの種子、10〜20ml/それぞれの移植した小植物(根/土壌/灌注)および100μl〜1ml/それぞれの栄養繁殖単位、たとえばジャガイモ塊茎が、所望の植物生長促進の効果を得るために通常推奨される。しかし、本発明の単離株の量は、好ましくは、様々な作物/施用方法の組合せについて個々別々に決定されるべきである。
【0043】
任意選択で、10〜100mlのシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aの無細胞上清/1キログラムの種子、10〜20ml/それぞれの移植した小植物(根/土壌/灌注)および100μl〜1ml/それぞれの栄養繁殖単位、たとえばジャガイモ塊茎が、所望の植物生長促進の効果を得るために通常推奨される。しかし、本発明の単離株の量は、好ましくは、様々な作物/施用方法の組合せについて個々別々に決定されるべきである。
【0044】
本発明シュードモナス・アゾトフォルマンスF30A細胞は、種子発芽および/または植物生長を増強するために、発酵産物の形態または農業用組成物の形態で、種子、植物および/または種子もしくは植物を取り囲む環境(たとえば土壌)に施用し得る。
【0045】
したがって、本発明の一態様は、シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aの生物学的に純粋な株の発酵産物(すなわち細菌細胞およびその使用されている生長培地を一緒に)に向けられている。
【0046】
本発明の別の態様は、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHに受託されており、受託番号DSM22077が割り当てられている、シュードモナス・アゾトフォルマンス、F30A株の生物学的に純粋な株の培養物から得られた上清に向けられている。そのような上清は、本発明のすべての態様において、細菌細胞または細胞の発酵産物の代わりに使用し得る。
【0047】
したがって、本発明のさらに別の態様は、任意選択で1つまたは複数の液体および/または固体の担体と組み合わせた、シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aの生物学的に純粋な株、またはその上清もしくは培養物からなる農業用組成物に向けられている。農業用組成物とは、活性成分の生物学的効果を損なわせずに、農業系における実用的な施用および使用を可能にする組成物である。本発明の農業用組成物は、単離株の活性および施用する作物の生長に負の影響を与えない任意の適切な農業上許容される液体および/もしくは固体の担体と共に任意選択で配合した、シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aの純粋な培養物/発酵産物、その細胞(たとえば、培養培地を遠心分離によって除去し、任意選択で細胞をたとえば適切な緩衝液で洗浄することによって調製する)および/またはその無細胞上清を含む。そのような農業用組成物のさらなる任意選択の構成成分は、本明細書中の他の箇所に例示されている。
【0048】
また、生長培地をシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aの細菌培養物からたとえば遠心分離によって除去し、細菌細胞を、植物、種子または土壌に施用する前に、水または当分野で知られている他の液体培地もしくは緩衝液中に再懸濁させてもよい。上清自体がシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aによって産生された活性物質を含むため、本発明のすべての態様において上清を細菌細胞の代わりに使用してもよい。
【0049】
本発明のさらに別の態様は、前記シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aまたはその培養物から得られた上清を、1つまたは複数の液体および/または固体の担体、ならびに任意選択で1つまたは複数の追加の植物生長促進微生物、生物的防除微生物、有機肥料および/または農薬と混合するステップを含む、シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aを含む農業用組成物を調製する方法に向けられている。当業者は、適切なそのような薬剤を十分に認識しているであろう。
【0050】
また、シュードモナス・アゾトフォルマンスF30A細胞は、凍結乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥または流動床乾燥細胞などの乾燥細胞の形態で、種子、植物および/または種子もしくは植物を取り囲む環境(たとえば土壌)に提供してもよい。そのような組成物は、1つまたは複数の適切な担体をさらに含み得る。
【0051】
また、シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aまたはその培養上清を含む農業用組成物は、農業用組成物の性能をさらに増強するために、生物的防除微生物などのさらなる微生物、添加剤および/またはたとえば植物生長促進、植物保護(すなわち生物的防除)もしくは技術的に有益な効果を有するアジュバントも含み得る。
【0052】
本発明のシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aの純粋な培養物/発酵産物/上清は、処理する作物の種子、塊茎もしくは小植物および/または種子もしくは植物を取り囲む環境(たとえば土壌)に直接施用してよく、また、これは上記指定した施用に適した農業用組成物の一部を構成してもよい。
【0053】
シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aの純粋な培養物/発酵産物、その細胞(たとえば、培養培地を遠心分離によって除去し、任意選択で細胞をたとえば適切な緩衝液で洗浄することによって調製する)またはその無細胞上清は、単離株の活性および施用する作物の生長に負の影響を与えない任意の適切な農業上許容される担体と共に任意選択で混合および配合し得る。適切な担体の例は、生理的な塩、メチルセルロース、デキストリンおよび鉱物と混合した、ダイズペプトンまたは他の適切な化合物に基づく有機物である。細菌を植物に施用するための、農業的使用に適した担体は当業者に知られている。シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aを懸濁液または乳濁液の形態で施用する場合、この懸濁液または乳濁液は、界面活性剤、湿潤剤などの1つまたは複数の市販の添加剤も含み得る。また、シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aは、好ましくは、他の植物生長促進剤(たとえば、適切な植物生長促進剤にはLugtenbergおよびKamilova、2009を参照)、生物的防除剤(たとえば、適切な生物的防除剤にはCompantら、2005を参照)、有機肥料および/または農薬と一緒に使用し得る。したがって、本発明のさらなる態様は、1つまたは複数の追加の植物生長促進微生物、生物的防除微生物および/または農薬をさらに含む、シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aを含む農業用組成物に向けられている。
【0054】
生物的防除剤および農薬は、たとえば、殺真菌、殺菌、殺線虫、殺昆虫、除草または鳥忌避の効果を有することができる。また、農薬は、植物肥料または植物調節物質であることもできる。本発明の単離株と一部の選択された農薬、有機肥料および生物的防除剤との間の完全な適合性の例は、以下の実施例18に示す。
【0055】
本発明の単離株の施用領域、施用の使用および定義された有効量の例を以下に示す。具体的な施用および具体的な農作物に有効な本発明の単離株の量は、好ましくは個々別々に決定される。
【0056】
種子施用には、好ましくは、細菌細胞、シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aを含む発酵産物(すなわち細菌細胞およびその使用されている増殖培地を一緒に)または農業用組成物(たとえば約107〜1010コロニー形成単位ml-1を含む)を、市販の種子処理機器によって、作物に応じた適切な投与量で施用する。種子のコーティング中およびその後に配合物の効果、接着、貯蔵安定性および技術的性能を改善させるために、適切な担体、添加剤および/またはアジュバント(これらは当業者に周知である)を適切な濃度で加え得る。さらに、固体調製物を得るために、シュードモナス・アゾトフォルマンスF30A細胞を、慣習的に利用可能な方法によって担体または担体の組合せと共に配合し得る。その後、そのような調製物を液体担体中に懸濁させて、約107〜1010コロニー形成単位/mlの細胞濃度がもたらされる。
【0057】
土壌、芝生もしくは他の植物増殖培地または移植物/小植物の根/土壌処理への施用には、シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aを所望の場所に分布させるために移植棚の散水、噴霧または灌注を使用し得る。また、細菌は、商業的温室作物の処理に使用する場合は、散水、噴霧または栄養素供給システムによって分布させ得る。シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aを含む純粋な培養物もしくは発酵産物、またはこれらのうちの任意のものの希釈液、あるいは農業用組成物(好ましくは約106〜1010コロニー形成単位ml-1)は、それぞれの作物および施用技法に適した投与量で施用する。たとえば植物根への細菌の接着を改善させるために、適切な担体を適切な濃度で加え得る。
【0058】
様々な塊茎、鱗茎などへの施用には、慣用の機構を用いた噴霧コーティング(分別時の集中型コーティング)または植付け前のもしくは植付け現場での塊茎/鱗茎などの灌注が適用可能である。シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aの純粋な培養物または発酵産物(好ましくは約109〜1010コロニー形成単位ml-1)は、約0.1〜10ml/1個の塊茎の投与量で施用する。たとえば塊茎への細菌の接着を改善させるために、適切な担体を適切な濃度で加え得る。
【0059】
本発明のシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aは、温室および圃場の双子葉および/または単子葉の農作物の、種子および/もしくは塊茎/植物栄養繁殖単位の発芽を増強する、作物群落の密度を改善させる、植物生長を促進する、ならびに/または収量を有意に改善させる。さらに、生長を促進し、収量を改善させる能力は、土壌の種類および気候条件および植物栽培に使用する基質の種類によって影響を受けない。60件を超える圃場試験が、様々な気候条件を表す4年間の間に、様々な土壌(砂から粘土まで)上で行われている。さらに、ピートに基づく植付け土壌を使用して、10件の商業的温室試験および数々の他の温室実験が行われている。
【0060】
本発明は、具体的な同定特徴の説明をさらに含む。本発明の単離株の同定および特徴づけの結果を本明細書中に記載する。
【0061】
本発明のさらなる態様は、本発明の植物生長促進剤栽培に使用することができる様々な研究的および産業的な基質に適用可能な、具体的な発酵パラメータを含む。
【0062】
また、本発明は、シュードモナス・アゾトフォルマンスF30A細菌細胞、またはシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aを含む発酵産物もしくは農業用組成物を、種子、植物および/または種子もしくは植物を取り囲む環境に施用するステップを含む、種子発芽、植物出芽および/または植物生長を増強するための方法にも関する。シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aは、そのような方法において、たとえば植物の根に施用し得る。あるいは、シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aは、そのような方法において、植物根の出芽の前および/もしくは後の土壌または種子および/もしくは植物を取り囲む植物生長培地に施用し得る。あるいは、シュードモナス・アゾトフォルマンスF30A細菌細胞、またはシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aを含む発酵産物もしくは農業用組成物は、植物栄養繁殖単位または種子および/もしくは植物を取り囲む植物生長培地に施用し得る。もちろん、上記施用方法のうちの任意のものの組合せを使用し得る。シュードモナス・アゾトフォルマンスF30A細菌細胞、またはシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aを含む発酵産物もしくは農業用組成物で処理した種子または植物は、単子葉植物もしくは双子葉植物またはそのような植物へと発生する種子であり得る。
【0063】
本発明のさらなる目的および利点は、以下の発明の詳細な説明から、疑う余地なく明らかとなるであろう。しかし、詳細な説明および具体的な例は、本発明の好ましい実施形態を例示するためのみに与え、本発明の範囲内にある様々な変更および改変は、本発明の主題に関する問題に精通する技術者には明らかであろう。
【0064】
(実施例)
以下の実施例は本発明の利点をさらに例示するものであり、本発明の範囲は特許請求の範囲によって定義されるため、それを制限するべきではない。
【0065】
すべての記載した実施例における施用には、別段に指定しない限りは、本発明の単離株は、標準(pH7.0、20℃)または最適化した(pH7.25、25℃)発酵プロトコルのどちらかに従って、増殖基質としてMPSO培養培地(Levenforsら、2008)を用いて発酵させた。発酵の前に培養培地を滅菌する。適切な量の炭素源(たとえば、グリセロール、フルクトース、スクロース、グルコース)を加え、酸素およびpH電極を較正する。その後、発酵槽に、適切な量の、任意の適切な細菌液体基質中で増殖させた本発明の単離株の開始培養物を接種する。発酵パラメータ(酸素供給およびpH)は発酵手順全体にわたって制御する。必要に応じて適切な消泡基質を加える。測定された酸素消費により二次代謝のシフトが示された2〜3時間後に発酵産物を収穫する(一般に40〜48時間後)。好ましくは3カ月齢を超えない、非希釈または水道水で希釈した、MPSO培養培地中の単離株の細胞を含む発酵産物またはその無細胞上清を、試験した農業および園芸作物の種子、ジャガイモ塊茎または根/土壌に施用した。また、特定の試験は、その標準または最適化した発酵産物の遠心分離(8000rpm、15分間)によって得られ、その後に適切な無機または有機の農業上適合性のある担体中で配合した、本発明の単離株の非希釈または希釈した細菌細胞を用いて行った。
【0066】
最初の7件の実施例は、商業的試験を含めた温室/生長チャンバの試験を記載しており、本発明の単離株を施用した後の、コムギ、ホウレンソウおよびアブラナの種子発芽および植物出芽の増強、ならびにアイスバーグレタスのグリーンマスの収量増加、コショウの果実重量の増加、選択された鉢植えハーブの収量増加およびキュウリの収量増加を例示している。
【0067】
(実施例1)
植物出芽および植物生長の増強-春コムギの温室試験
播種の前に、春コムギ種子(30g)を、標準の発酵プロトコルに従って発酵させた本発明の単離株の発酵産物、水道水で希釈したその細菌細胞、または水道水で希釈した無細胞上清(300ml/1kgの種子)で処理し、次いで、種子を発酵産物/細菌細胞/上清と約2分間の間混合し、終夜乾燥させた。必要な場合は、その後、試験を設定する前に、2週間までの期間の間、種子を保管した。
【0068】
その後、それぞれの50個の種子を有する4つの鉢を、それぞれの処理について播種し、18〜20℃(感染させていない種子ロット)または10〜12℃(フザリウム属およびミクロドチウム属(Microdochium)の真菌に感染させた種子ロット)の温度および14時間の明期を有する生長チャンバに入れた。滅菌されていない市販のピート混合物「Enhetsjord」(Gerhardsonら、1985)をすべての試験で使用した。鉢を18〜20℃の温度に5〜6日間入れた後および10〜12℃で12〜14日間の後に、出芽した植物を計数した。さらに12〜18日後、植物を土壌表面から約0.5cmの距離で切断し、105℃で終夜乾燥させた後に苗条の乾重量を測定して、本発明の単離株で処理した後の植物質量の増加を推定した。
【0069】
図2および3は、様々な濃度の本発明の単離株で処理した後の春コムギの植物出芽の増強、ならびに春コムギの、それぞれ感染させていない(図2)および感染させた種子ロット(図3)を用いた生長チャンバ実験において試験したコムギの乾重量に対する、その施用の効果を示す。適切な濃度で、出芽は10〜15%(感染させていない種子ロット)および12〜35%(感染させた種子ロット)増強された。また、播種の約20日後に推定した乾重量も有意に増加し、13〜18%(感染させていない種子ロット)および10〜36%(感染させた種子ロット)であった。さらに、図2は、様々な濃度の本発明の単離株の上清を施用した後の、春コムギの出芽および乾重量の増強を示す。適切な濃度で、出芽は5〜10%、乾重量は8〜15%増強された。
【0070】
提示した結果により、単に植物生長促進剤としての、感染させていないおよび感染させた種子ロットの両方への施用における単離株の有用性が確認される。種子発芽および出芽を強力に増強する単離株F30Aの独特な特性は、病害からの回避のプロセスをもたらし、穀粒の生長および実験の期間(約20日間)にわたって生産された乾燥植物物質の量として表された全体的な植物状態を改善させる。
【0071】
(実施例2)
植物出芽の増強-ホウレンソウ温室試験
播種の前に、ホウレンソウ種子(3〜5g)を、標準のプロトコル(バッチ番号FOM115)または最適化したプロトコル(バッチ番号FOM139)に従って発酵させた本発明の単離株の発酵産物もしくはその無細胞上清または細菌細胞で処理し、これらはそれぞれの発酵産物から得られ、その後に水道水で再水和させたものである(300ml/1kgの種子)。その後、種子をそれぞれの細菌処理物と共に約2分間の間混合し、終夜乾燥させた。必要な場合は、その後、試験を設定する前に、2週間までの期間の間種子を保管した。
【0072】
その後、それぞれ25個の種子を有する4つの鉢を、それぞれの処理について播種し、12〜14℃の温度、14時間の明期を有する生長チャンバに入れた。滅菌されていない市販のピート混合物「Enhetsjord」(Gerhardsonら、1985)をすべての試験で使用した。播種の7日後から開始して、出芽したホウレンソウ植物を約8〜10日間の期間にわたって連続的に計数した。9日目に得られた植物計数をすべての以下の提示した結果に使用する。
【0073】
図4は、様々な濃度の本発明の単離株およびその上清で処理した後(図4A)ならびに単離株の選択された固体調製物で処理した後(図4B)の、ホウレンソウの出芽の増強を示す。適切な濃度で、発酵産物を用いた種子の処理は、35%までの出芽の増強をもたらした。非希釈の上清の施用は、処理していない対照と比較した場合に、13%より良好な出芽をもたらした。また、固体細胞調製物の施用も出芽の増強に有効であった。試験した濃度で、種子を生理食塩水で再水和させたこの調製物で処理した後に、15%までのより多くの植物が出芽した。
【0074】
温室試験からの例は、ホウレンソウの発芽および出芽を増強する本発明の株の顕著な能力を明白に示している。増強は、単離株の発酵産物の存在下、および生理食塩水もしくは水に懸濁させた細胞または生理食塩水で再水和させた乾燥細胞調製物の存在下で表される。記載した例によって示されるように、検出可能な出芽の増強は、通常は10〜40%の範囲であり、ホウレンソウ種子に施用した生成物の濃度に依存する。
【0075】
(実施例3)
植物出芽の増強-アブラナ温室試験
播種の前に、アブラナcv.ジョプリン(Joplin)の種子(10〜20g)を、改変したプロトコルに従って発酵させた本発明の単離株の発酵産物で処理し、終夜乾燥させた。種子を、4回の投与量(10、20、40および60ml/1kgの種子)の、それぞれ5.0×107、5.0×108および5.0×109cfuの本発明の単離株/mlを含有する発酵産物で処理した。
【0076】
その後、それぞれ25個の種子を有する6つの鉢を、それぞれの処理について播種し、12〜14℃の温度、14時間の明期を有する生長チャンバに入れた。滅菌されていない市販のピート混合物をすべての試験で使用した。
【0077】
播種の5日後から開始して、出芽したアブラナ植物を約4〜5日間の期間にわたって連続的に計数した。6日目に得られた植物計数を出芽の増強の推定に使用した。5.0×107/ml(0.5%)を有する発酵産物の施用が、投与量に依存せずにアブラナの出芽の最も均一が増強をもたらし、平均して31%の出芽の増強であった。投与量20、40および60ml/kgの発酵産物5.0×108/ml(5%)および5.0×109/ml(50%)を種子に施用した場合は、より大きな変動が検出された(Table 3(表3))。
【0078】
【表3】
【0079】
(実施例4)
アイスバーグレタスの収量の増強-根への施用、温室試験
トレイを温室/生長チャンバ(18℃および14時間の明期)に入れ、約2週間の期間の後、小植物を同じピートに基づく基質を有する鉢に移植した(1個の小植物/鉢)。鉢を温室/生長チャンバにさらに4〜6日間入れ、その後、10〜20mlの標準または最適化した発酵プロトコルに従って発酵させた本発明の単離株の発酵産物ならびにシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aを含む他の細菌溶液(たとえば、適切な無機や有機溶媒で再水和させた細菌細胞)およびその上清を根の付近に施用した。続く約2〜3週間の期間の間、鉢を温室/生長チャンバ中で保った。その後、レタス植物を土壌表面から約0.5cmの距離で切断し、秤量して、試験の期間中に生産されたグリーンマスを測定した。
【0080】
10mlの本発明の単離株の発酵産物または他の調製物(5×109〜4×1010コロニー形成単位(cfu)/ml)を、根/土壌の処理として、移植時にアイスバーグレタス小植物内に施用することで、処理していない対照小植物と比較した場合に、処理した植物のレタスの生長の例外的な増強および最終的にはより高いグリーンマスがもたらされた。
【0081】
図5は、どちらも最適化したプロトコルに従って発酵させた、本発明の単離株の2つの発酵産物およびその上清(バッチFOM173およびバッチFOM176)を用いた2つの別々の温室実験からの例を示す。アイスバーグレタスのグリーンマスの検出された増加は、19〜68%(発酵バッチ173を用いた温室試験)および3〜32%(発酵バッチ176を用いた温室試験)の範囲であった。上清の施用は、それぞれ56%(バッチ173)および36%(バッチ176)のグリーンマスの増加をもたらした。
【0082】
さらに、本発明の単離株の発酵産物は良好な貯蔵安定性を有する。14週間までの期間の間、4℃で保管した発酵産物の有効性は、生成物の貯蔵によって影響を受けなかった。すべて最適化したプロトコルに従って発酵させた、2、6および14週齢の本発明の単離株の発酵産物で処理したアイスバーグレタスの生長促進を実証する例示的な温室試験を、図6に示す。この温室試験では、発酵産物の熟成年齢とは独立して、本発明の単離株で処理した植物のグリーンマスは約40%増加した。さらに、6および2週齢の発酵産物中のそれぞれ1.3および1.5×1010cfu/mlと比較した場合に、14週齢の発酵産物中の生細胞計数は約1×1010cfu/mlであった。
【0083】
(実施例5)
コショウの収量の増強-根への施用、温室試験
移植物/小植物への根/土壌への施用後の生長促進効果を検出するために、コショウを追加の試験作物として使用した。コショウ種子を、市販のピートに基づく基質を有する鉢トレイ内に播種した。トレイを温室/生長チャンバ(25℃の日、20℃の夜および14時間の明期)中に入れ、約3週間の期間の後、小植物を同じピートに基づく基質を有する鉢に移植した(1個の小植物/鉢)。鉢を温室/生長チャンバにさらに4〜6日間入れ、その後、10mlの標準または最適化した発酵プロトコルに従って発酵させた本発明の単離株の発酵産物ならびにシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aを含む他の細菌溶液(たとえば、適切な無機および有機溶媒で再水和させた細菌細胞)を根の付近に施用した。続く4カ月間までの期間の間、鉢を温室/生長チャンバ中に保った。コショウ果実を2回の機会に収穫し、秤量して、それぞれの植物あたりの合計果実重量を推定した。
【0084】
10mlの本発明の単離株の発酵産物を3.5×107〜3.5×1010cfu/mlの様々な濃度で根/土壌の処理としてコショウ小植物のプラグ内にその移植時に施用することにより、処理していない対照植物と比較した場合に、より高い平均収量のコショウ果実がもたらされた。図7は、コショウ小植物を本発明の単離株の発酵産物バッチFOM076で処理した後の、コショウ果実の収量増加を示す。コショウ小植物の処理中の本発明の単離株の濃度に応じて、処理していない対照と比較した場合に6〜30%の収量増加が検出された。
【0085】
(実施例6)
飼料ビート、コリアンダー、オレガノおよびチャイブの収量の増強-土壌への施用、温室試験
飼料ビート、コリアンダー、オレガノおよびチャイブの鉢植えハーブを、市販の土壌基質を有する鉢中に、市販の播種システムを使用して播種した。その後、鉢(それぞれの鉢植えハーブあたり25個)中の土壌表面に、1リットルの土壌基質あたり10mlの本発明の単離株の発酵産物(約1〜3×109cfu/ml)を噴霧した。鉢を鉢植えハーブの栽培に使用される商業的温室中に入れ、生長条件は鉢植えハーブの栽培の通常のものであった。植物のグリーンマスを鉢植えハーブに応じて約1〜2カ月後に測定した。
【0086】
本発明の単離株で処理した鉢植えハーブのグリーンマスは、処理していない鉢から収穫されたハーブのグリーンマスよりも平均して約7%高かった(Table 4(表4))。さらに、植物はより緑色かつより丈夫に見えた。
【0087】
Table 4(表4).対応する処理していない対照のグリーンマスと比較した、本発明の単離株で処理した鉢植えハーブのグリーンマス、および平均収量増加のパーセント(n=25)。
【0088】
【表4】
【0089】
(実施例7)
キュウリの収量の増強-根/土壌への施用、商業的温室試験
本発明の単離株で処理する前に、キュウリ栽培の要件に従って、キュウリ移植物を4600m2の面積を有する商業的温室に植えた。その後、散水容器中で本発明の単離株の発酵培養物(20リットル、約2〜3×109cfu/ml)を80リットルの水と混合し、市販の散水システムを使用して植物を混合物で処理した。対照は、同じ型の温室、5400m2の栽培面積で栽培し、水で処理したキュウリであった。どちらの処理も同じ日に開始および終了し、すべての生長パラメータおよび受精などの他の必要な実用的な処置は、どちらの温室でも同じに保った。キュウリの収量はkg/1平方メートルの温室で測定し、収穫されたキュウリの数/平方メートルをさらに計数した。収穫期間中、水で処理した温室からの13.03kg/m2および326本のキュウリ/m2と比較して、13.75kg/m2および344本のキュウリ/m2が本発明の単離株で処理した温室から収穫された。数値は、本発明の単離株を施用した温室において5.5%/m2の収量増加に対応する。
【0090】
圃場試験
本発明の単離株を用いた商業的圃場および温室の試験は、種子発芽および植物出芽を増強する、ならびに天然条件下での植物被覆度、植物生長、開花および/または収量を改善させる、その潜在性を評価することを目的とする。一部のより大スケールの実験(1haまで)を含めた圃場実験(合計で82件の圃場試験/商業的温室試験)を、4回の生長期中に広範囲の農業上重要な双子葉作物で行い(Table 2(表2)を参照)、様々な測定パラメータを使用することによって植物生長促進特性を評価することに焦点を当てていた。本発明の単離株を用いた処理が有意な収量の改善をもたらした作物の平均収量増加データをTable 2(表2)中に提示する。
【0091】
本発明の単離株の標準および最適化した発酵産物は、膨大な数の圃場試験において使用した。3つの異なる施用方法を使用して、標的作物を単離株F30Aで処理した。これらは、種子の処理、種芋の処理(ジャガイモ)および移植物の根/土壌の処理であった。施用方法はそれぞれの作物に使用される慣例に依存かつ調節し、圃場試験のほとんどは、スウェーデンにおける野菜およびジャガイモの生産の主要地域である南スウェーデンに位置していた。さらに、すべての圃場実験において、本発明の単離株の施用の有用性を試験するために、一般的な農業の実施を、利益になる収穫を確実にするために行わなければならない他の必要な処置と組み合わせて使用した。ほとんどの試験は、4つ、または一部の実験では5つの複製を用いた完全にランダム化したブロック計画に従って実施した。データは、分散分析(ANOVA)およびSAS/Stat(Statistical Analyses System)中の一般線形回帰モデル(general linier model、GLM)によって分析した。出芽/植物の確立、花の数(イチゴ)および収量/販売可能な収量を試験においてスコア付けした。
【0092】
単離株F30Aを用いた様々な作物の種子の処理により、6〜19%の収量増加がもたらされた(Table 2(表2))。さらに、収量は、しばしば、標準の化合物を用いた処理の後に得られたものよりも有意に高かった、または高かった(実施例8のホウレンソウおよび実施例10のエンドウマメを参照)。植物出芽は、処理していない対照を有する区画上の植物出芽比較した場合に目に見えて増強されており、効果は収穫までの生長期全体にわたって維持された。40%までの収量の増強が一部の個々の圃場試験で測定された。また、灌注方法での単離株F30Aを用いた移植物の根/土壌の処理により、明らかに数日後に既に、処理した小植物の生長の迅速かつ目に見える増強がもたらされた(温室試験からのレタスの生長に対する効果の例を図8に示す)。
【0093】
これらの効果は生長期全体にわたって維持され、対照処理よりも早い収穫およびはるかに高い収量をもたらした。本発明の単離株を用いた根/土壌の処理後の収量増加は作物に依存し、平均して17〜52%であった(Table 2(表2))。ジャガイモ塊茎の処理は、4〜9%の収量の増強をもたらし(Table 2(表2))、25%までの最も高い相対的収量増加が、新ジャガイモを有する一部の個々の圃場試験で記録された。
【0094】
以下に提示する個別の実施例(実施例8〜18)は、様々な農業上重要な作物の収量を改善させるための、本発明の単離株の施用の有用性をさらに実証するであろう。他の作物に対する本発明の単離株の施用の効果は、現在試験されている、または後に評価されるであろう。したがって、本発明の範囲は特許請求の範囲によって定義されるため、提示した実施例は、それを制限することを意図しない。
【0095】
(実施例8)
植物の出芽および収量の増強-ホウレンソウ圃場試験からの一例。
大スケールの試験を例外としたホウレンソウ圃場試験では、4〜5回の反復を用いたランダム化したブロック計画を使用して実験を設定した。種子を列で播種し、各区画は通常は15m2であった。収量は、0.25m2の代表的な区画を収穫した後の2回の機会に推定した。圃場試験を開始する前に、商業的に使用されているホウレンソウ品種の種子ロットを、標準または最適化した発酵プロトコルに従って発酵させた本発明の単離株の発酵産物で処理し、また、たとえば市販の殺真菌剤などの他の適切な処理も種子に施用した。本発明の単離株の2つの投与量を、圃場試験で通常使用した:300ml/1kgの種子または10ml/1kgの種子。投与量の調節は投与量-応答の温室実験の後に行い、産業的施用に適切である。播種の前に、種子は、慣例において使用される標準に従って最終的に保管することができる。植物出芽の増強および収量の改善を実証する、ここに提示する例示的な圃場試験は、南スウェーデンで行った。ホウレンソウ種子を、10ml/kgの本発明の単離株の発酵産物(バッチFOM233)の投与量で処理し、対照は、処理していない種子および化学的殺真菌剤Apronの標準の投与量で処理した種子であった。図9は植物出芽の増強に関するデータを示す。出芽の増強は、2つの最初の読取り機会に特に有意であり、それぞれ33および32%の出芽の増強が検出された(図9)。
【0096】
植物出芽の増強は、初期植物被覆度を目に見えて改善させ、これは、処理していない種子および標準の殺真菌剤Apronで処理した種子から得られた被覆度よりも明らかに良好であった。さらに、本発明の単離株で処理した後の植物は、処理していない種子またはApronで処理した種子から出芽するものよりも丈夫かつ大きかった。このことは、有意により高い収量をもたらした。図10は、収量がそれぞれ24%(初期収穫)および14%(最終収穫)増加した、実施例中に提示した収量増加を示す。
【0097】
(実施例9)
植物の出芽および収量の増強-ロケット圃場試験の一例。
ロケット圃場試験は、ホウレンソウの試験と同様の方法で行った。実験の設定は、試験現場での農耕学の実施に従って調節した。種子は6cmの間隔を有する列で播種し、約4m2の区画を標準として選択した。収量は、それぞれの処理に対応する列でロケットをランダムに収穫した後の2回の機会に推定した。55メートルまでの合計の列の長さのうちの2メートル(n=2またはn=4)の植物を採取および秤量した。種子の処理は、ホウレンソウと同様の様式で行った。2つの投与量の本発明の単離株を、圃場試験で通常使用した:300ml/1kgの種子または100ml/1kgの種子。植物出芽の増強およびロケット収量の改善を実証する例示的な圃場試験は、南スウェーデンで行った。この圃場試験では、ロケット種子を、最適化したプロトコルに従って発酵させた300ml/kgの本発明の単離株の発酵産物の投与量(バッチFOM154)で処理し、対照は処理していない種子であった。図11は、ロケットの植物出芽の増強に関するデータおよび本発明の単離株を施用した後の収量増加を示す。出芽は約13%増強され、これは収穫機会に応じて8〜18%の収量増加をもたらした(図11)。
【0098】
(実施例10)
植物出芽および収量の増強-エンドウマメ圃場試験の一例。
他の作物の種子の処理を用いた圃場試験と同じ原理を、エンドウマメを用いた実験で使用した。圃場試験は、つる豆を育てている南スウェーデンの商業的農場に定めた。1キログラムの種子あたり50mlの発酵産物を通常施用し、15m2の区画面積を最も頻繁に使用した。収量は、エンドウマメを10m2の区画面積から収穫した後に推定した。収量は、すべての収穫されたつる豆について同じ成熟段階を表す熟度測定器値100(T100)へと再計算した。植物出芽の増強およびエンドウマメ収量の改善を実証する例示的な圃場試験は、南スウェーデンで行った。エンドウマメ種子を、最適化したプロトコルに従って発酵させた50ml/kgの本発明の単離株の発酵産物の投与量(バッチFOM150、約9.25×109cfu/ml)で処理し、対照は、処理していない種子および化学的殺真菌剤Wakilで処理した種子であった。図12は、Wakilを施用した後よりもわずかに良好であり(3%)、処理していない対照と比較した場合に12%より良好であった、収量増加に関するデータを示す。また、植物出芽は、処理していない対照と比較した場合に4%増強されていた。
【0099】
(実施例11)
収量の増強-ニンジン圃場試験の一例。
他の作物の種子の処理を用いた圃場試験を同じ原理を、ニンジンを用いた実験で使用した。圃場試験は、ニンジンを育てている南スウェーデンの商業的農場に定めた。1キログラムの種子あたり300または100mlの発酵産物を通常施用し、区画面積は試験に応じて20〜30m2で異なった。収量は、ニンジンをそれぞれの処理からの0.5または1メートルの列ランダムに収穫した後に測定した(n=3)。それぞれの処理および反復からのニンジンを別々に採取、計数および秤量した。ニンジン収量の改善を実証する例示的な圃場試験は、南スウェーデンで行った。この圃場試験では、ニンジン種子を、300ml/kgの本発明の単離株の発酵産物の投与量(バッチFOM076、標準のプロトコルに従って発酵させた)で処理し、対照は、処理していない種子および水で処理した種子であった。図13は、本発明の単離株を施用した後の収量増加に関するデータを示す(対照と比較した場合に約19%)。
【0100】
(実施例12)
収量の増強-アイスバーグレタスの根/土壌の処理を用いた圃場試験からの一例。
アイスバーグレタスの根/土壌の処理を用いた圃場試験では、商業的に育てた小植物をそれぞれ、標準または最適化したプロトコルに従って発酵させた10mlの本発明の単離株の発酵産物で処理した。処理は通常、圃場への小植物の移植中に行った。処理する前に、発酵産物を通常は1部の発酵産物(発酵産物のバッチに応じて5.0×109〜1.0×1010cfu/ml)および1部の水道水の割合で希釈した。任意選択で、小植物は、適切な無機または有機の農業上適合性のある溶媒で再水和させた本発明の単離株の細菌細胞の様々な調製物で処理してもよい。移植する前に、小植物を有するトレイ(それぞれの処理あたり150〜300個の植物)に、適切な体積の発酵産物または対照と同じ体積の水を灌注し、その後、圃場に移植した。必要な場合は、小植物を移植の数日前に処理し、商業的な農業の実施に従って保管してもよい。移植中はアイスバーグレタスの圃場栽培に使用される標準(列間で30cmの間隔および植物間で27cmの間隔)に従った。レタスは一般的な農業の実施に従って収穫し、収量増加は、それぞれのアイスバーグ玉あたりの重量の増加のグラムで測定した。
【0101】
図14は、南スウェーデンで行った圃場実験からのデータを示す。この試験では、アイスバーグレタスの収量(1個のレタス玉あたりのg)は、水で処理した植物から得られた平均収量と比較して平均して41%増加した。
【0102】
(実施例13)
開花および収量の増強-イチゴの根/土壌の処理を用いた圃場試験からの一例。
イチゴの根/土壌の処理を用いた圃場試験では、商業的に育てた小植物をそれぞれ、10mlの本発明の単離株の発酵産物(バッチFOM095、標準のプロトコルに従って発酵、約1.2×1010cfu/ml)で、小植物を夏の間に圃場に移植する間に処理した。これに次いで、翌春中に20mlの発酵産物(バッチFOM147、最適化したプロトコルに従って発酵、約3.1×109cfu/ml)の植物散水として、第2の処理を行った。必要な場合は、水道水を用いた希釈によって適切な濃度の発酵産物への調節を行った。どちらの処理にも、同じ体積の水の施用を対照として使用した。商業的小植物を試験に使用し、これらはイチゴの圃場栽培に使用される標準(列間で90cmの間隔および植物間で30cmの間隔)に従って植えた。確立された花の数の測定を7回の別々の機会に行い、成熟したイチゴを6回の別々の機会に収穫して、収量を測定した。図15および16は、2回目の生長期中に検出された花の確立の改善および液果の収量の改善を示す。開花の改善および収量の改善はどちらも、液果の最初の収穫を例外としてすべての読取り機会中に明白であり、開花および収穫の季節の全体にわたって有意である。読取り機会に応じて、開花は20%(5月30日の読取り)から142%(5月12日の読取り)まで改善され、これを図15に示す。
【0103】
また、開花の改善は液果の収量の有意な増加ももたらした。収穫季節全体にわたる蓄積収量は、水で処理した対照植物から得られた液果の収量と比較した場合に、合計で43%高かった(図16)。
【0104】
(実施例14)
ブロッコリーの成熟およびその初期収量の改善-ブロッコリーの根/土壌の処理を用いた圃場試験からの一例。
ブロッコリーの根/土壌の処理を用いた圃場試験では、商業的に育てた小植物を、標準または最適化したプロトコルに従って発酵させた10ml/小植物の本発明の単離株の発酵産物で処理した。処理は通常、圃場への小植物の移植中に行った。処理する前に、細胞濃度を約2.5〜7.5×109cfu/mlに調節するために、発酵産物を水道水で希釈した。移植する前に、小植物を有するトレイに、適切な体積の発酵産物または対照と同じ体積の水を灌注し、その後、圃場に移植した。必要な場合は、小植物を移植の数日前に処理し、商業的な農業の実施に従って保管することもできる。移植中はブロッコリーの圃場栽培に使用される標準(列間で30cmの間隔および植物間で30cmの間隔または列間で50cmの間隔および植物間で50cmの間隔)に従った。ブロッコリーは、数回の機会に一般的な農業の実施に従って収穫する。収量増加は、最初はグラム/区画で記録し、20m2の区画を通常使用し、その後、キログラム/ヘクタール対応する収量へと再計算した。図17は、発酵産物バッチFOM076(標準のプロトコルに従って発酵、約6,5×109cfu/ml)を用いた、南スウェーデンで行った圃場実験中の5回の別々の機会に収穫したブロッコリーの蓄積収量に関するデータを示す。本発明の単離株の施用の効果は、特に収穫期間の初期に見事であった。成熟かつ収穫の準備ができたブロッコリーの量は、水で処理した対照小植物から得られた収量と比較した場合に、最初の収穫中に200%を越えて改善され、2回目および3回目の収穫中に20%を超えて改善された(図17)。収穫の改善は、収穫季節の終わりにはそれほど強力ではなかったが、本発明の単離株で処理した植物は、水で処理したものと比較した場合に平均して5日早く収穫することができるため、経済的には、改善された初期成熟は、潜在的なユーザ/農業家にとって例外的に重要である。
【0105】
(実施例15)
収量の増強およびキャベツ品質の改善-キャベツの根/土壌の処理を用いた圃場試験からの一例。
キャベツの根/土壌の処理を用いた圃場試験では、商業的に育てた小植物を、標準または最適化したプロトコルに従って発酵させた5〜10ml/小植物の本発明の単離株の発酵産物で処理し、処理は通常、圃場への小植物の移植中に行った。処理する前に、細胞濃度を約5.0〜7.0×109cfu/mlに調節するために、発酵産物を水道水で希釈した。移植する前に、小植物を有するトレイに、適切な体積の発酵産物または対照と同じ体積の水を灌注し、その後、圃場に移植した。必要な場合は、小植物を移植の数日前に処理し、商業的な農業の実施に従って保管することができる。移植中はキャベツの圃場栽培に使用される標準(列間で50cmの間隔および植物間で50cmの間隔)に従った。キャベツは一般的な農業の実施に従って収穫し、それぞれのキャベツ玉の重量を推定した。図18は、発酵産物バッチFOM154(5ml、最適化したプロトコルに従って発酵、約6.5×109cfu/ml)で処理した後の、初期夏キャベツの収量の改善に関するデータを示す(大スケールの試験、50個のキャベツ小植物/処理、5個のブロック)。この試験では、キャベツ玉の重量は、本発明の単離株を施用した後に53%増加した(図18)。さらに、収量の増加、キャベツの販売可能な画分(販売が許可されたもの)の顕著な改善も検出された(図18、水で処理した小植物と比較して+38%)。これは、潜在的なユーザ/農業家にとって経済的に顕著に重要である。
【0106】
(実施例16)
収量の増強および塊茎品質の改善-ジャガイモ塊茎の処理を用いた圃場試験からの一例。
1つの大スケールの試験を例外として、ジャガイモ圃場実験は、5回の反復を用いたランダム化したブロック計画で設定した。それぞれの処理のそれぞれの反復には、2列または3列で播種した60個の種芋が含まれていた。列および種子の距離は、ジャガイモ農業における慣用の実施に従った。ジャガイモ試験は、SkaneおよびUppland/Dalarna(スウェーデン中部)に位置していた。試験は、新および後期ジャガイモ栽培品種のどちらでも行った。新ジャガイモでは、通常の栽培の実施に従って、圃場試験全体を、植付け後に植物が完全に発生するまで覆った。最初の新ジャガイモ圃場実験のうちの1つには、覆わなかった処理を含めた。ジャガイモ塊茎は、植付けと直接関連づけて、または10日前までに処理した。一般に、塊茎の処理には、標準または最適化したプロトコルに従って発酵させた発酵産物を、通常の水道水を使用して50%強度まで希釈したが、10%強度の発酵産物の効果も評価した。塊茎をそれぞれの細菌調製物に20〜30分間浸漬し、その後、市販のジャガイモ植付け機を用いてこれらを植えた。処理を植付けの数日前に行った場合は、接種した塊茎を空気乾燥させた後にジャガイモ貯蔵に入れた。浸漬によって、それぞれのジャガイモ塊茎は約0.75〜1mlの細菌懸濁液を受けた。さらに、ジャガイモ塊茎の化学的処理に商業的に使用されている標準の噴霧装置を使用した、別の細菌施用方法を行った。この装置を使用して、塊茎に4リットルの細菌懸濁液/トンの投与量で噴霧し、これは、それぞれの塊茎が約0.2mlの懸濁液を受けたことを意味する。また、この接種方法の有効性は、塊茎を植付けの1〜3カ月前の様々な時点に噴霧することによっても評価した。ジャガイモ種芋上の細菌の付着を改善させ、その保護を増強するために、どちらも良好な環境プロフィールを有する農業上適合性のある粘着化合物および界面活性剤の組合せが含まれる湿配合物を開発した。この配合物を、浸漬および噴霧処理の両方の圃場実験に施用した。すべての圃場試験において、出芽/植物の確立、開花の時間、最終的な病害症状および収量/販売可能な収量をスコア付けおよび測定した。
【0107】
新ジャガイモ栽培品種「ロケット」における本発明の単離株の効果を図19に示す。細菌処理により、出芽した植物の発生が有意に改善され、最終収量が増加され、平均収量増加は24%であった。
【0108】
初期および後期ジャガイモ栽培品種における本発明の単離株の湿配合物の施用により、配合していない発酵産物を施用した後の対応する8%および3%の収量増加と比較して、最終塊茎収量が17%(新ジャガイモ)および4%(後期ジャガイモ)改善された(図20)。
【0109】
(実施例17)
植物苗床中の樹木の根および植物の生長の増強
植物苗床中の樹木の小植物の生長の改善に対する本発明の単離株の施用の効果を試験するために、最適化した発酵プロトコルに従って培養した本発明の単離株の発酵産物を使用して、新しく出芽したオウシュウアカマツの小植物を処理した。種子は、植物苗床に使用される商業的実施および方法に従って播種および処理した。小植物は、播種の9日後に1個の小植物あたり5mlの発酵産物(2〜3.5×109/ml)を散水し、対照は、同じ量の水で処理した小植物であった。小植物の生長を、処理の3、6および10週間後に視覚的に監視した。処理の13週間後、小植物の代表的な試料を採取した後に根および苗条の乾重量を測定した。Table 5(表5)中に要約した結果は、本発明の単離株の施用が、オウシュウアカマツ小植物の根および苗条のより高い乾重量をもたらすことを示しており、これは図21にも例示されている。水で処理した対照と比較した場合に、根の乾重量は14%まで、植物地上部の乾重量は31%まで高い。したがって、本発明の単離株で処理した小植物の合計重量は、水で処理した対照小植物の重量よりも25%まで高い。したがって、本発明のシュードモナス・アゾトフォルマンス、F30A株は、樹木および/または樹木の小植物の生長を改善させるためにも使用し得る。
【0110】
【表5】
【0111】
(実施例18)
農業製品との適合性。生物学的、有機的および化学的な農業製品からの活性成分と一緒にした本発明の単離株の増殖からの例。
【0112】
Table 6(表6).種子の処理に商業的に使用されている選択された合成化学的殺真菌剤および有機成分の、種子処理に推奨されるそれぞれの投与量に基づいた適合性限界値(μg ml-1)、およびP.アゾトフォルマンスF30A(3.3×108ml-1)の増殖が、試験した化合物の存在下で阻害されない適合性値(μg ml-1)。
【0113】
【表6】
【0114】
【表7】
【0115】
すべての上記実施例において、本発明の単離株は増殖障害の兆候をまったく示さず、したがって、種子の処理に推奨される濃度ですべての市販の活性成分と完全に適合性であった。
【0116】
【表8】
【0117】
【表9】
【0118】
【表10】
(参考文献)
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物出芽および植物生長の促進の分野に向けられている。より詳細には、本発明は、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHに受託されており、受託番号DSM22077が割り当てられている、F30Aと示されるシュードモナス・アゾトフォルマンス(Pseudomonas azotoformans)の新規株、植物出芽および植物生長の促進剤としてのその使用、ならびにそのような使用のための組成物および方法に向けられている。
【背景技術】
【0002】
植物生長に対して有益な効果を有する根圏の細菌(根圏細菌)は、しばしばPGPR(植物生長促進根圏細菌)と呼ばれ、播種/植付けから収穫までの作物の生長の様々な段階で、それに恩恵を与える。土壌および根圏中の蛍光シュードモナス菌は、数々の研究において、いくつかの農作物において植物生長促進効果を発揮する(Kloepperら、1980、a、b、Brisbaneら、1989、DeFreitasおよびGermida、1991)、また、植物病を抑制する(Hemning、1990、O'SullivanおよびO'Gara、1992、Weller、1988、Hokebergら、1997)ことが実証されている。
【0003】
実験的条件下で、いくつかの蛍光シュードモナス菌が、コムギ(Kroppら、1996)、マスタード(Deshwalら、2006)、テンサイ(SuslowおよびSchroth、1982)、ジャガイモ(Kloepperら、1980、HowieおよびEchandi、1983)、ダイコン(KloepperおよびSchroth、1978、DaviesおよびWhitbread、1989)ならびにホウレンソウ(Urashimaら、2006)などの農作物の出芽および収量を増加させるための潜在的な薬剤として立証されている。その植物生長促進活性に連結しているいくつかの機構が、十分に研究および記載されている。これらには、とりわけ、根定着能力(Benizriら、2001)、広範囲の酵素およびホルモン(Vivekananthanら、2004、Lucyら、2004、PattenおよびGlick、1996、Garcia de Salamoneら、2001)、ならびにしばしば抗微生物活性を有する他の代謝物(LoperおよびBuyer、1991、DowlingおよびO'Gara、1994)を産生する能力が含まれる。また、その活性の様々な領域を網羅する特許/特許出願の例も入手可能であり、主に生物的防除特性を有する株/単離株を含む。植物生長促進特性を有する蛍光シュードモナス菌に関する特許/特許出願は、ほとんどの場合、本発明の活性成分(細菌株)を、所望の単離株を選択するために必要なスクリーニングおよび試験の方法の説明と組み合わせて網羅する。本明細書によって組み込まれる以下の特許出願は、植物生長促進および/または生物的防除の特性を有する蛍光シュードモナス菌を網羅する、本発明の一部の例を提供する:WO/1987/000194、US1996/5503652、WO0051435、US1996/5503651、US2002/6447770、およびUS2002/6495362。
【0004】
上述の文献および特許/特許出願にもかかわらず、数年間の圃場実験の間に多くの重要な農作物の出芽、生長および収量を一貫して改善させることができると示されかつ証明された、シュードモナス・アゾトフォルマンスの種に属する単離株は、現在までに他に存在しない。反対に、以前に研究されたシュードモナス・アゾトフォルマンスの土壌起源の単離株は、コメを用いた実験においていかなる有意な生長促進効果も示さなかった(Piaoら、2005)。ハンガリーのベレンツェ湖(Lake Velencei)の健康なアシの群落(stand)の根茎関連の細菌集団に関する、シュードモナス・アゾトフォルマンスの単離株の植物生長促進特性に関する唯一の手短な情報(Micsinaiら、2003)は、その植物生長促進特性を確認するどのような実験データにも基づいていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO/1987/000194
【特許文献2】US1996/5503652
【特許文献3】WO0051435
【特許文献4】US1996/5503651
【特許文献5】US2002/6447770
【特許文献6】US2002/6495362
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、農業上重要ないくつかの作物において植物出芽および/または植物生長促進を発現する、蛍光シュードモナス菌の新規株を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、F30A株と示される、シュードモナス・アゾトフォルマンス種からの蛍光シュードモナス菌の例外的な単離株によって得られる。シュードモナス・アゾトフォルマンスの株は、植物生長促進特性について以前に報告されたことがない。この単離株は、温室および圃場の条件下の両方で栽培した様々な作物に施用した後に、有意な植物の出芽および生長促進を提供する。さらに、入手可能な文献データに基づいて、その効果は、以前に文書化されている他のどの植物生長促進微生物剤よりも一貫して安定かつ再現可能である。シュードモナス・アゾトフォルマンス、F30A株の生物学的に純粋な株は、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHに受託されており、受託番号DSM22077が割り当てられている。
【0008】
したがって、本発明は、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHに受託されており、受託番号DSM22077が割り当てられている、シュードモナス・アゾトフォルマンス、F30A株の生物学的に純粋な株に向けられている。また、本発明は、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHに受託されており、受託番号DSM22077が割り当てられている、シュードモナス・アゾトフォルマンス、F30A株の生物学的に純粋な株の培養物から得られた上清にも向けられている。
【0009】
また、本発明は、種子発芽、植物出芽および/または植物生長を増強するための、シュードモナス・アゾトフォルマンス、F30A株の生物学的に純粋な株、またはその上清の使用にも向けられている。前記種子および/または植物は、たとえば双子葉または単子葉であり得る。
【0010】
また、本発明は、シュードモナス・アゾトフォルマンス、F30A株の生物学的に純粋な株の発酵産物にも向けられている。
【0011】
また、本発明は、シュードモナス・アゾトフォルマンス、F30A株の生物学的に純粋な株、またはその上清を、任意選択で1つまたは複数の液体および/または固体の担体と組み合わせて含む、農業用組成物にも向けられている。農業用組成物は、1つまたは複数の追加の植物生長促進微生物、生物的防除微生物、有機肥料および/または農薬をさらに含み得る。
【0012】
本発明は、本明細書中に定義した発酵産物または農業用組成物を、種子、植物および/または前記種子もしくは植物を取り囲む環境に施用するステップを含む、種子発芽、植物出芽および/または植物生長を増強するための方法にさらに向けられている。施用は、たとえば植物の根に行い得る。施用は、植物根の出芽の前および/または後に行い得る。あるいは、発酵産物または農業用組成物は、植物栄養繁殖単位に施用し得る。また、発酵産物または農業用組成物は、植物栄養繁殖単位または種子および/もしくは植物を取り囲む植物生長培地にも施用し得る。植物は単子葉植物もしくは双子葉植物であり得るか、または種子がそれへと発生し得る。
【0013】
また、本発明は、前記シュードモナス・アゾトフォルマンス、F30A株、または前記上清を、1つまたは複数の液体または固体の担体、ならびに任意選択で1つまたは複数の追加の植物生長促進微生物、生物的防除微生物、有機肥料および/または農薬と混合するステップを含む、本明細書中に定義した農業用組成物を調製する方法にも向けられている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】16SのrDNAの1390個のヌクレオチドのアラインメントに基づいて、単離株F30Aの分類学上の位置を、シュードモナス属(Pseudomonas)の25個の様々な種を表す株および1つの大腸菌(E.coli)(Gene Bank受託番号J01695)の参照株と比較して示す図である。
【図2】種子に様々な濃度のF30A発酵産物およびその上清を施用した後の、春コムギ(感染させていない種子ロット)の出芽(A)および乾重量(B)を示す図である。温室実験。四角はCFU/mlを示す。エラーバーは標準誤差を表す(n=4)。
【図3】種子に様々な濃度のF30A発酵産物および生理食塩水中に懸濁させたF30A細胞を施用した後の、春コムギ(感染させていない種子ロット)の出芽(A)および乾重量(B)を示す図である。温室実験。四角はCFU/mlを示す。エラーバーは標準誤差を表す(n=4)。
【図4】種子に様々な濃度のF30A発酵産物、水道水中に懸濁させたF30A細胞、および単離株の上清を施用した後の、ホウレンソウの出芽を示す図である。2つの異なる発酵産物バッチ:バッチFOM115(A)およびバッチFOM139(B)からの結果。温室実験。四角はCFU/mlを示す。エラーバーは標準誤差を表す(n=4)。
【図5】根/土壌に様々な濃度のF30A発酵産物を施用した後およびその上清を施用した後の、アイスバーグレタスのグリーンマス収量を示す図である。2つの異なる発酵産物バッチ:バッチFOM173(A)およびバッチFOM176(B)を使用した。(A)および(B)は2つの独立した温室実験を表す。四角はCFU/mlを示す。エラーバーは標準誤差を表す(n=12)。
【図6】根/土壌にF30Aの保管した発酵産物バッチを施用した後の、アイスバーグレタスのグリーンマス収量を示す図である。バッチFOM203は4℃で2週間保管し、バッチFOM196は6週間、バッチFOM192は14週間であった。温室実験。四角はCFU/mlを示す。エラーバーは標準誤差を表す(n=12)。
【図7】根/土壌に様々な濃度のF30A発酵産物(バッチFOM076)を施用した後の、コショウの果実収量を示す図である。温室実験。四角はCFU/mlを示す。エラーバーは標準誤差を表す(n=8)。
【図8】アイスバーグレタスの土壌/根の処理。左の鉢:水対照、右の鉢:F30A発酵産物。
【図9】圃場実験における、種子にF30A発酵産物(バッチFOM233)を施用した後のホウレンソウの出芽を示す図である。出芽は3回の別々の機会に記録した。処理していない対照と比較した、出芽のパーセント増加/減少を図中に示す。エラーバーは標準誤差を表す(n=4)。
【図10】圃場実験における、種子にF30A発酵産物(バッチFOM233)を施用した後のホウレンソウの収量を示す図である。収量は2つの異なる時点に測定した。エラーバーは標準誤差を表す(n=4)。
【図11】圃場実験における、種子にF30A発酵産物(バッチFOM154)を施用した後の、2回の機会および出芽(四角)でのロケットの収量(バー)を示す図である。エラーバーは標準誤差を表す(n=12)。
【図12】圃場実験における、種子にF30A発酵産物(バッチFOM150)を施用した後のつる豆(vining pea)の収量を示す図である。エラーバーは標準誤差を表す(n=4)。
【図13】圃場実験における、種子にF30A発酵産物(バッチFOM076)を施用した後のニンジンの収量を示す図である。エラーバーは標準誤差を表す(非処理:n=9、水:n=12、F30A:n=6)。
【図14】圃場実験における、根/土壌にF30A発酵産物(バッチFOM233)を施用した後のアイスバーグレタスの収量を示す図である。エラーバーは標準誤差を表す(n=5)。
【図15】圃場実験における、根/土壌にF30A発酵産物(バッチFOM095およびFOM147)を施用した後のイチゴの花の数を示す図である。暗色バー:F30A、淡色バー:水で処理した対照。エラーバーは標準誤差を表す(n=4)。
【図16】圃場実験における、根/土壌にF30A発酵産物(バッチFOM095およびFOM147)を施用した後のイチゴの収量を示す図である。暗色バー:F30A、淡色バー:水で処理した対照。エラーバーは標準誤差を表す(n=4)。
【図17】圃場実験における、根/土壌にF30A発酵産物(バッチFOM076)を施用した後のブロッコリーの収量を示す図である。暗色バー:F30A、淡色バー:水で処理した対照。エラーバーは標準誤差を表す(n=5)。
【図18】圃場実験における、根/土壌にF30A発酵産物を施用した後の夏キャベツの収量を示す図である。暗色バー:F30A、淡色バー:水で処理した対照、四角:販売可能な収量の百分率(>350グラム)。エラーバーは標準誤差を表す(n=50)。
【図19】圃場実験における、塊茎にF30A発酵産物を施用した後の、新ジャガイモの植物発生および塊茎収量を示す図である。異なる文字を有する平均は、ダンカンの多重範囲検定によって有意に異なる(p=0.05)。
【図20】塊茎にF30A発酵産物および単離株の湿配合物を施用した後の、1つの新ジャガイモおよび1つの後期ジャガイモ(late potato)の栽培品種の相対的塊茎収量を示す図である。圃場実験からのデータ。異なる文字を有する平均は、ダンカンの多重範囲検定によって有意に異なる(p=0.05)。
【図21】単離株F30Aの発酵産物(右側)で処理した後の、処理していない小植物(左側)と比較した、オウシュウアカマツの10週齢の小植物の根および苗条生長の増強を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の植物生長促進剤
本発明は、2008年12月3日に、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(Inhoffenstraβe 7B、D-38124、Braunschweig、ドイツ)に受託され、受託番号DSM22077が割り当てられているシュードモナス・アゾトフォルマンスの新規株、F30A株に向けられている。受託者はLantmannen BioAgri AB(私書箱914、751 09、Uppsala、スウェーデン)である。本発明のF30A株は生物学的に純粋な株である。
【0016】
シュードモナス・アゾトフォルマンスの新規株、F30A株は、以下において「単離株」、「薬剤(agent)」またはシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aとしても示す。シュードモナス・アゾトフォルマンスは以下においてP.アゾトフォルマンスと省略し得る。また、シュードモナス・アゾトフォルマンスF30A株は、「F30A」としても示し得る。
【0017】
植物生長を促進させる本発明のシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aは、以下の具体的な同定特徴を有する、蛍光シュードモナス菌の生物学的に純粋な株を含む:(i)単離株は、根関連のグラム陰性細菌、蛍光菌(P.fluorescens)の系統(lingae)メンバーであり、最も近い類縁体と明確に異なる特異的なBiolog GM利用プロフィールを有しており、選択および同定の特徴を以下に示す、(ii)単離株は、以下に示す他の独特な形態学的、生化学的および代謝的特徴、ならびに窒素固定、リン可溶化および硫黄可溶化/酸化の能力を有する、(iii)単離株は、少なくともヒユ科、アブラナ科、ナス科、キク科(Astraceae)、セリ科、マメ科、バラ科、ウリ科、シソ科、ネギ科(Aliaceae)の植物科に属する農作物の種子発芽、植物生長および/または収量を増強する、ならびに植物苗床中の樹木の小植物の根形成および生長を増強する。そのような効果の詳細な例を以下に記載する。
【0018】
本発明の単離株は、以下の追加の同定特徴を有する:活発に増殖中の単離株の存在下では、強い濃緑色からほぼ黒色の色素が有機培養培地(PF寒天、基本基質としてダイズペプトン、コムギペプトンおよび他の植物ペプトンを有する液体培地)中に蓄積される、ならびに/または青緑色の色素がグリセロールを添加した鉱物培養培地(たとえばレムナ(Lemna)培地)中に蓄積される(MaengおよびKhudairi、1973)。この色素の蓄積は、他のどのような既知のシュードモナス菌でも報告されていない。さらに、単離株は、Biolog GNシステムによって試験して、シュードモナス・アゾトフォルマンスの基準株および他の最も近く関連する蛍光シュードモナス菌のそれとは異なる、特異的な炭水化物利用プロフィールを有する独特な生化学的特徴を有する。
【0019】
本発明の単離株の選択は、根を含めた全植物試料を採取することによって始まった。試料の希釈液を根の小片から抽出し、細菌の単離に適した培地上にプレートした。様々な形態学的特徴を有する細菌コロニーを採取し、-80℃のストックとして維持した。適切な微生物基質上での液体培養物をストックから導き、植物生長促進特性の選択は、個々の単離株を接種したコムギおよびテンサイの種子を用いた温室バイオアッセイによって行った。発芽および植物生長を増強する単離株を選択し、同定し、より大スケールの温室および圃場実験におけるその実現可能性を確認するために安全性の一次評価を行った。
【0020】
形態学的、生化学的および遺伝学的特徴の組に基づいて、本発明の選択された単離株は、シュードモナス・アゾトフォルマンスの種として同定された、グラム陰性の鞭毛を有する細菌であり、蛍光菌系統(lingae)のメンバーである(図1)。しかし、これは、シュードモナス・アゾトフォルマンスの基準株IAM1603および他の近く関連するシュードモナス属の種と比較して、Biolog GNシステムの独特な利用プロフィールを有する(Table 1(表1))。Table 1(表1)に記載の形質と組み合わせて、以下の特長が本発明の株に非常に特異的である:これはスクロースおよびセバシン酸を利用する一方で、3つの最も近く関連する種のメンバーは利用せず、また、これは3つの最も近く関連する種のメンバーによって利用されているキシリトールおよびプトレシンを利用しない。
【0021】
【表1】
【0022】
本発明の単離株の同定を可能にする他の有用な特徴は、VPA-植物性ペプトン寒天(1000mlの蒸留/脱イオン水中に10gの植物性ペプトンブロス(Oxoid Ltd.)、15gの顆粒寒天(Difco Ltd))、PF寒天(1000mlの蒸留/脱イオン水中にDifco Ltd、38gのPFレディーミックス培地、10gのグリセロール)などの一般的な細菌学的培養培地上における特定のコロニー形態、既に記載した独特な色素の蓄積である。
【0023】
本発明の単離株の特徴的なコロニー外見は、30℃の温度で24時間のインキュベート、次いで室温(約20〜22℃)でさらに24〜48時間のインキュベートの後に最も明白である。VPA上で増殖させた場合、コロニーの縁は通常は不均一であり、コロニーは中央がわずかにより高く高密度である。コロニーは、コンパクトであり、透明であり、粘性でなく、中央がより高密度かつ茶色っぽく、縁がより淡い青みがかった色であり、シェル様構造に似た典型的な形状を有する。
【0024】
また、本発明の単離株を蛍光シュードモナス菌の他の単離株から区別する独特なコロニー特徴は、室温で5〜8日間のインキュベート後にPF寒天上でも観察される。コロニーは白色-灰色がかっており、中央に非常に透明な黄色-茶色の小さなチップがあり、縁はある程度規則的である。
【0025】
本発明の単離株をPF寒天上で培養中、強い緑色からほぼ黒色の色素が寒天中に蓄積される。
【0026】
研究室のアッセイでは、本発明の単離株は、利用可能な窒素をまったく含まないが、2%の適切な炭素源(たとえばグリセロール)を添加したシュードモナス属用の改変液体鉱物培地(Stanierら、1966)中で増殖し、これは、その大気窒素固定の能力を示している。液体培地に白金耳1杯の本発明の単離株の終夜増殖させた細菌細胞を接種するか、または細胞を0.01Mの硫酸マグネシウムに懸濁させ、細胞懸濁液(0.1ml/5mlの液体培地)を鉱物培地に加える。増殖は、光学密度の測定値(600nm)によって、接種の5日後まで監視する。5日後の光学密度は、それぞれ、培養開始時の0.069と比較して0.108(白金耳接種)および培養開始時の0.046と比較して0.087(細胞懸濁液)である。測定値は、窒素の非存在下で増殖を遅延させる単離株の能力を示しており、立ち代って、これは本発明の単離株が窒素固定の能力を有することを示している。
【0027】
また、本発明の単離株は、リンを可溶化させる、およびチオスルフェートを酸化させ、元素状硫黄を可溶化させる。アッセイは、不溶性リン(Ca3(PO4)2)またはチオスルフェート/元素状硫黄を添加した寒天プレート上の本発明の単離株を接種することによって行う。不溶性元素の可溶化/酸化の効果として、透明な区域が本発明の単離株のコロニーの周りに形成される。
【0028】
蛍光菌の種の単離株を使用する代わりにシュードモナス・アゾトフォルマンスの種に属する本発明のPGPR単離株を施用する利点は、P.アゾトフォルマンス種のメンバーは、これまでに可能性があるヒト病原体として報告されたことが一度もないことである。これとは反対に、人間に対する蛍光菌の病原性に関する報告は入手可能である(たとえば、Franzettiら、1992、Hsuehら、1998、Weiら、2002を参照)。
【0029】
本発明の単離株の増殖および維持
本発明の蛍光シュードモナス菌単離株(シュードモナス・アゾトフォルマンスF30A)は、任意の一般的な適切な細菌学的培地(固体および液体の両方)上で増殖させることができる。適切な固体培地の一部の例は、植物性ペプトン寒天(VPA)およびシュードモナス属F寒天(PF寒天)である。液体培地の例は、植物性ペプトンブロスおよび主要な有機炭素源としてダイズペプトンを含むすべての培地である。研究室条件下では、本発明の単離株は、典型的な環境蛍光シュードモナス菌に適した任意の温度、すなわち15℃〜30℃、好ましくは23〜27℃の温度範囲で良好に増殖する。その増殖は、37℃の温度で90%を超えて遅延される。栄養素培地のpHは、好ましくはpH7.0〜7.5の範囲で中性である。
【0030】
いくつかの有機基質、たとえば、トリプシンダイズブロス、植物性ペプトンブロスならびに植物ペプトン、コムギペプトンおよびダイズペプトンブロスは、優れた有効性および本発明の単離株の高いバイオマスを支援する。2つのバイオアッセイ系、根/土壌への施用(アイスバーグレタス)および種子への施用(ホウレンソウ)を用いて行った温室試験により、MPSO基質の選択が可能となり(Levenforsら、2008)、これは、これらの様々な農業系での施用において最も柔軟であった。しかし、本発明の単離株には、発酵時間40〜48時間であり、それよりも短いべきではない。本発明の単離株の生物活性を検出するためには、他の有機基質もその発酵に適切であるが、本発明の単離株をロータリー振盪器上で培養してもよい(120rpm、40〜48時間、室温)。しかし、満足できる有効性を得るために、本発明の単離株の生物活性のある産物の発酵は、7.0〜7.5のpH範囲で、約15〜30℃の温度範囲、たとえば20〜28℃、最も好ましくは約23〜27℃で行われることが推奨される。
【0031】
有効性試験には、本発明の単離株の発酵産物は、通常、発酵のプロセス全体中、標準の発酵プロトコル(pH7.0、20℃)に従って、または最適化した発酵プロトコル(pH7.25および25℃)に従って発酵させる(それぞれのプロトコルには実験セクションを参照)。さらに、本発明の単離株の標準または最適化した発酵産物の遠心分離(8000rpm、15分間)によって得られ、その後に適切な無機または有機の農業上適合性のある担体中で配合した細菌細胞も、選択した試験において試験した。発酵産物の調製物のこれらの種類すべてが、種子発芽または植物生長の増強および本発明の方法における使用に適している。
【0032】
本発明の単離株が安定に保たれることを確実にするために、これは、20%のVPBおよび30%のグリセロールの混合物中の、凍結乾燥したストック培養物または-80℃のストック培養物の深凍結物として維持し得る。発酵のために、かつ液体培養を開始させるために、一般に、約100μlの深凍結ストック培養物を、100mlの細菌増殖に適した任意の50%強度の有機液体培地、すなわち50%強度のTSB内に移し、ロータリー振盪器上で増殖させる(120rpm、22〜25℃、最長24時間)。他の実験目的には、少量の単離株F30Aの深凍結ストック培養物を、細菌増殖に適した任意の固体有機基質培地上にプレートし、2週間以下の期間の間、+4℃で保管してもよい。
【0033】
植物生長促進活性
本発明の生物学的に純粋なシュードモナス・アゾトフォルマンスF30A単離株は、種子の発芽、植物の出芽および確立を増強する、花の確立および形成を促進する、ならびに/または植物の生長を増強させ、それによって作物の収量を増加させる能力を有する。したがって、本発明の一態様は、種子発芽、植物出芽および/または植物生長を増強するための、本発明の単離株の使用に関する。植物は単子葉もしくは双子葉の植物であり得る、または、種子はこれら2種類の植物のどちらかへと発生することができ得る。
【0034】
本発明の単離株は、上述の農作物において、約4%から50%を超える範囲で発芽、出芽、開花を増強する、ならびに/または生長および収量を改善させる。
【0035】
以下に提示する実施例は、本発明のシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aの植物生長促進活性を実証する。Table 2(表2)は、4回の連続した生長期中にスウェーデンで行った圃場または商業的温室試験の範囲で、対象作物において種子、根/土壌(移植物)または塊茎の処理のいずれかとして本発明の単離株を施用した後の、要約した平均収量増加の圃場試験データを示す。実施例1〜18は、感染させていない植物系内に種子、塊茎、根および土壌/灌注処理として施用した場合の、商業的圃場/温室試験または生長チャンバ実験(コムギ、イネ科)における、本発明の単離株の例外的な植物生長を促進する潜在性を明らかに示す。さらに、本発明の単離株の植物生長促進効果は、種子媒介性の病原体、たとえばコムギにおけるフザリウム属(Fusarium)spp.を寄生させた種子に施用した後に観察される(実施例1)。そのような効果は、種子の発芽および新しく出芽した実生の生長を刺激することによる、感染からの回避の結果であり得る。それによって、植物の感受性のある時期がより迅速に乗り越えられ、感染を回避することができる。さらに、本発明の単離株の広範囲の植物生長促進活性は、土壌の種類(圃場および温室試験はすべて、様々な種類の土壌および温室基層土中で行った)によっても、また、気候などの環境条件(本発明の単離株は、様々な温度および降水量のパターンを有する数回の生長期中に、広範囲の作物における植物生長の促進に有効であることが確認された)によっても影響を受けない。
【0036】
Table 2(表2)。
処理していない対照区画から得られた収量と比較した、いくつかの野菜作物においてシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aを施用した後の収量増加。商業的要件に適応させた様々な処理方法を使用して単離株F30Aを施用した。実験は、4回の連続した生長期中の圃場または商業的温室試験として行った。平均収量増加データは、行った圃場試験の数からの平均である。
【0037】
【表2】
【0038】
また、本発明の単離株の上清(遠心分離(8000rpm以上、20分間以上)およびさらなる滅菌濾過(0.2μm)後に得られた、P.アゾトフォルマンスF30Aの無細胞発酵産物)は、発芽、出芽、植物生長および/または収量を増強する。
【0039】
実施例1、2および4は、春コムギおよびホウレンソウの出芽ならびに春コムギおよびアイスバーグレタスの収量を有意に増強する、本発明の単離株の上清の潜在性を示す。
【0040】
本発明の単離株の施用および施用の仕様
さらに、本発明の1つの目的は、種子、栄養繁殖単位、根、土壌および/もしくは他の植物生長培地の処理として、ならびに/または灌注として施用した場合に、農業上重要な作物の種子発芽を増強することおよび/もしくは植物生長および/または収量を改善させることに有効な、本発明のシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aおよび/またはその上清を含む有効な調製物/配合物を利用可能にすることである。したがって、本発明は、植物生長を促進させる本発明のシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aおよび/またはその上清を、任意選択で1つまたは複数の本発明の単離株の液体配合物を可能にする農業上適合性のある担体または本発明の単離株の乾燥もしくは固体調製物/配合物を可能にする農業上適合性のある担体と組み合わせて含む、農業用組成物も提供する。
【0041】
本発明の単離株は、たとえば以下の植物科からの温室および圃場の双子葉および単子葉の農作物の、種子発芽および植物出芽を増強すること、作物群落の密度を改善させること、植物開花および植物生長を促進すること、ならびに収量を改善させることに有用である:ヒユ科(すなわちテンサイ、ホウレンソウ、飼料ビート)、ナス科(すなわちジャガイモ、コショウ)、マメ科(すなわちエンドウマメ)、アブラナ科(すなわちルッコラ、ブロッコリー、様々なキャベツ品種、スウェーデンカブ、アブラナ)、キク科(Astraceae)(すなわち様々なレタス品種)、セリ科(すなわちニンジン)、バラ科(すなわちイチゴ)およびイネ科(すなわちコムギ)、ウリ科(すなわちキュウリ)、シソ科(すなわちオレガノ)、ネギ科(Aliaceae)(すなわちチャイブ)。また、本発明の単離株は、様々な植物苗床(すなわちマツ科のオウシュウアカマツ)中の樹木の小植物の根形成および/または植物生長を改善させるためにも有用である。
【0042】
種子発芽および/もしくは植物出芽を増強する、作物群落の密度を改善させる、植物の開花および/もしくは生長を促進する、ならびに/または最終的に収量を改善させるために、作物は、定義された量の本発明の植物生長を促進させる単離株、すなわちシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aの存在下で生長させ、定義された量の植物生長を促進させる単離株とは、処理していない対照と比較した場合に、有意に、種子発芽を増強する、作物群落の密度を改善させる、植物の開花および生長を促進する、ならびに最終的に収量を改善させる、単離株の量として記載されている。所望の効果を得るために必要な本発明の単離株の量は作物間で異なり、本発明の単離株の施用方法(種蒔きした双子葉および単子葉の作物の種子の処理、ジャガイモおよび他の栄養繁殖した作物における栄養繁殖単位(塊茎、鱗茎、根茎など)の処理、ならびに野菜移植および他の作物の小植物の土壌/根/灌注処理)に依存する。10〜100mlのシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aの産物(7.5×108〜7.5×109コロニー形成単位/ml)/1キログラムの種子、10〜20ml/それぞれの移植した小植物(根/土壌/灌注)および100μl〜1ml/それぞれの栄養繁殖単位、たとえばジャガイモ塊茎が、所望の植物生長促進の効果を得るために通常推奨される。しかし、本発明の単離株の量は、好ましくは、様々な作物/施用方法の組合せについて個々別々に決定されるべきである。
【0043】
任意選択で、10〜100mlのシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aの無細胞上清/1キログラムの種子、10〜20ml/それぞれの移植した小植物(根/土壌/灌注)および100μl〜1ml/それぞれの栄養繁殖単位、たとえばジャガイモ塊茎が、所望の植物生長促進の効果を得るために通常推奨される。しかし、本発明の単離株の量は、好ましくは、様々な作物/施用方法の組合せについて個々別々に決定されるべきである。
【0044】
本発明シュードモナス・アゾトフォルマンスF30A細胞は、種子発芽および/または植物生長を増強するために、発酵産物の形態または農業用組成物の形態で、種子、植物および/または種子もしくは植物を取り囲む環境(たとえば土壌)に施用し得る。
【0045】
したがって、本発明の一態様は、シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aの生物学的に純粋な株の発酵産物(すなわち細菌細胞およびその使用されている生長培地を一緒に)に向けられている。
【0046】
本発明の別の態様は、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHに受託されており、受託番号DSM22077が割り当てられている、シュードモナス・アゾトフォルマンス、F30A株の生物学的に純粋な株の培養物から得られた上清に向けられている。そのような上清は、本発明のすべての態様において、細菌細胞または細胞の発酵産物の代わりに使用し得る。
【0047】
したがって、本発明のさらに別の態様は、任意選択で1つまたは複数の液体および/または固体の担体と組み合わせた、シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aの生物学的に純粋な株、またはその上清もしくは培養物からなる農業用組成物に向けられている。農業用組成物とは、活性成分の生物学的効果を損なわせずに、農業系における実用的な施用および使用を可能にする組成物である。本発明の農業用組成物は、単離株の活性および施用する作物の生長に負の影響を与えない任意の適切な農業上許容される液体および/もしくは固体の担体と共に任意選択で配合した、シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aの純粋な培養物/発酵産物、その細胞(たとえば、培養培地を遠心分離によって除去し、任意選択で細胞をたとえば適切な緩衝液で洗浄することによって調製する)および/またはその無細胞上清を含む。そのような農業用組成物のさらなる任意選択の構成成分は、本明細書中の他の箇所に例示されている。
【0048】
また、生長培地をシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aの細菌培養物からたとえば遠心分離によって除去し、細菌細胞を、植物、種子または土壌に施用する前に、水または当分野で知られている他の液体培地もしくは緩衝液中に再懸濁させてもよい。上清自体がシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aによって産生された活性物質を含むため、本発明のすべての態様において上清を細菌細胞の代わりに使用してもよい。
【0049】
本発明のさらに別の態様は、前記シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aまたはその培養物から得られた上清を、1つまたは複数の液体および/または固体の担体、ならびに任意選択で1つまたは複数の追加の植物生長促進微生物、生物的防除微生物、有機肥料および/または農薬と混合するステップを含む、シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aを含む農業用組成物を調製する方法に向けられている。当業者は、適切なそのような薬剤を十分に認識しているであろう。
【0050】
また、シュードモナス・アゾトフォルマンスF30A細胞は、凍結乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥または流動床乾燥細胞などの乾燥細胞の形態で、種子、植物および/または種子もしくは植物を取り囲む環境(たとえば土壌)に提供してもよい。そのような組成物は、1つまたは複数の適切な担体をさらに含み得る。
【0051】
また、シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aまたはその培養上清を含む農業用組成物は、農業用組成物の性能をさらに増強するために、生物的防除微生物などのさらなる微生物、添加剤および/またはたとえば植物生長促進、植物保護(すなわち生物的防除)もしくは技術的に有益な効果を有するアジュバントも含み得る。
【0052】
本発明のシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aの純粋な培養物/発酵産物/上清は、処理する作物の種子、塊茎もしくは小植物および/または種子もしくは植物を取り囲む環境(たとえば土壌)に直接施用してよく、また、これは上記指定した施用に適した農業用組成物の一部を構成してもよい。
【0053】
シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aの純粋な培養物/発酵産物、その細胞(たとえば、培養培地を遠心分離によって除去し、任意選択で細胞をたとえば適切な緩衝液で洗浄することによって調製する)またはその無細胞上清は、単離株の活性および施用する作物の生長に負の影響を与えない任意の適切な農業上許容される担体と共に任意選択で混合および配合し得る。適切な担体の例は、生理的な塩、メチルセルロース、デキストリンおよび鉱物と混合した、ダイズペプトンまたは他の適切な化合物に基づく有機物である。細菌を植物に施用するための、農業的使用に適した担体は当業者に知られている。シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aを懸濁液または乳濁液の形態で施用する場合、この懸濁液または乳濁液は、界面活性剤、湿潤剤などの1つまたは複数の市販の添加剤も含み得る。また、シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aは、好ましくは、他の植物生長促進剤(たとえば、適切な植物生長促進剤にはLugtenbergおよびKamilova、2009を参照)、生物的防除剤(たとえば、適切な生物的防除剤にはCompantら、2005を参照)、有機肥料および/または農薬と一緒に使用し得る。したがって、本発明のさらなる態様は、1つまたは複数の追加の植物生長促進微生物、生物的防除微生物および/または農薬をさらに含む、シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aを含む農業用組成物に向けられている。
【0054】
生物的防除剤および農薬は、たとえば、殺真菌、殺菌、殺線虫、殺昆虫、除草または鳥忌避の効果を有することができる。また、農薬は、植物肥料または植物調節物質であることもできる。本発明の単離株と一部の選択された農薬、有機肥料および生物的防除剤との間の完全な適合性の例は、以下の実施例18に示す。
【0055】
本発明の単離株の施用領域、施用の使用および定義された有効量の例を以下に示す。具体的な施用および具体的な農作物に有効な本発明の単離株の量は、好ましくは個々別々に決定される。
【0056】
種子施用には、好ましくは、細菌細胞、シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aを含む発酵産物(すなわち細菌細胞およびその使用されている増殖培地を一緒に)または農業用組成物(たとえば約107〜1010コロニー形成単位ml-1を含む)を、市販の種子処理機器によって、作物に応じた適切な投与量で施用する。種子のコーティング中およびその後に配合物の効果、接着、貯蔵安定性および技術的性能を改善させるために、適切な担体、添加剤および/またはアジュバント(これらは当業者に周知である)を適切な濃度で加え得る。さらに、固体調製物を得るために、シュードモナス・アゾトフォルマンスF30A細胞を、慣習的に利用可能な方法によって担体または担体の組合せと共に配合し得る。その後、そのような調製物を液体担体中に懸濁させて、約107〜1010コロニー形成単位/mlの細胞濃度がもたらされる。
【0057】
土壌、芝生もしくは他の植物増殖培地または移植物/小植物の根/土壌処理への施用には、シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aを所望の場所に分布させるために移植棚の散水、噴霧または灌注を使用し得る。また、細菌は、商業的温室作物の処理に使用する場合は、散水、噴霧または栄養素供給システムによって分布させ得る。シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aを含む純粋な培養物もしくは発酵産物、またはこれらのうちの任意のものの希釈液、あるいは農業用組成物(好ましくは約106〜1010コロニー形成単位ml-1)は、それぞれの作物および施用技法に適した投与量で施用する。たとえば植物根への細菌の接着を改善させるために、適切な担体を適切な濃度で加え得る。
【0058】
様々な塊茎、鱗茎などへの施用には、慣用の機構を用いた噴霧コーティング(分別時の集中型コーティング)または植付け前のもしくは植付け現場での塊茎/鱗茎などの灌注が適用可能である。シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aの純粋な培養物または発酵産物(好ましくは約109〜1010コロニー形成単位ml-1)は、約0.1〜10ml/1個の塊茎の投与量で施用する。たとえば塊茎への細菌の接着を改善させるために、適切な担体を適切な濃度で加え得る。
【0059】
本発明のシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aは、温室および圃場の双子葉および/または単子葉の農作物の、種子および/もしくは塊茎/植物栄養繁殖単位の発芽を増強する、作物群落の密度を改善させる、植物生長を促進する、ならびに/または収量を有意に改善させる。さらに、生長を促進し、収量を改善させる能力は、土壌の種類および気候条件および植物栽培に使用する基質の種類によって影響を受けない。60件を超える圃場試験が、様々な気候条件を表す4年間の間に、様々な土壌(砂から粘土まで)上で行われている。さらに、ピートに基づく植付け土壌を使用して、10件の商業的温室試験および数々の他の温室実験が行われている。
【0060】
本発明は、具体的な同定特徴の説明をさらに含む。本発明の単離株の同定および特徴づけの結果を本明細書中に記載する。
【0061】
本発明のさらなる態様は、本発明の植物生長促進剤栽培に使用することができる様々な研究的および産業的な基質に適用可能な、具体的な発酵パラメータを含む。
【0062】
また、本発明は、シュードモナス・アゾトフォルマンスF30A細菌細胞、またはシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aを含む発酵産物もしくは農業用組成物を、種子、植物および/または種子もしくは植物を取り囲む環境に施用するステップを含む、種子発芽、植物出芽および/または植物生長を増強するための方法にも関する。シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aは、そのような方法において、たとえば植物の根に施用し得る。あるいは、シュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aは、そのような方法において、植物根の出芽の前および/もしくは後の土壌または種子および/もしくは植物を取り囲む植物生長培地に施用し得る。あるいは、シュードモナス・アゾトフォルマンスF30A細菌細胞、またはシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aを含む発酵産物もしくは農業用組成物は、植物栄養繁殖単位または種子および/もしくは植物を取り囲む植物生長培地に施用し得る。もちろん、上記施用方法のうちの任意のものの組合せを使用し得る。シュードモナス・アゾトフォルマンスF30A細菌細胞、またはシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aを含む発酵産物もしくは農業用組成物で処理した種子または植物は、単子葉植物もしくは双子葉植物またはそのような植物へと発生する種子であり得る。
【0063】
本発明のさらなる目的および利点は、以下の発明の詳細な説明から、疑う余地なく明らかとなるであろう。しかし、詳細な説明および具体的な例は、本発明の好ましい実施形態を例示するためのみに与え、本発明の範囲内にある様々な変更および改変は、本発明の主題に関する問題に精通する技術者には明らかであろう。
【0064】
(実施例)
以下の実施例は本発明の利点をさらに例示するものであり、本発明の範囲は特許請求の範囲によって定義されるため、それを制限するべきではない。
【0065】
すべての記載した実施例における施用には、別段に指定しない限りは、本発明の単離株は、標準(pH7.0、20℃)または最適化した(pH7.25、25℃)発酵プロトコルのどちらかに従って、増殖基質としてMPSO培養培地(Levenforsら、2008)を用いて発酵させた。発酵の前に培養培地を滅菌する。適切な量の炭素源(たとえば、グリセロール、フルクトース、スクロース、グルコース)を加え、酸素およびpH電極を較正する。その後、発酵槽に、適切な量の、任意の適切な細菌液体基質中で増殖させた本発明の単離株の開始培養物を接種する。発酵パラメータ(酸素供給およびpH)は発酵手順全体にわたって制御する。必要に応じて適切な消泡基質を加える。測定された酸素消費により二次代謝のシフトが示された2〜3時間後に発酵産物を収穫する(一般に40〜48時間後)。好ましくは3カ月齢を超えない、非希釈または水道水で希釈した、MPSO培養培地中の単離株の細胞を含む発酵産物またはその無細胞上清を、試験した農業および園芸作物の種子、ジャガイモ塊茎または根/土壌に施用した。また、特定の試験は、その標準または最適化した発酵産物の遠心分離(8000rpm、15分間)によって得られ、その後に適切な無機または有機の農業上適合性のある担体中で配合した、本発明の単離株の非希釈または希釈した細菌細胞を用いて行った。
【0066】
最初の7件の実施例は、商業的試験を含めた温室/生長チャンバの試験を記載しており、本発明の単離株を施用した後の、コムギ、ホウレンソウおよびアブラナの種子発芽および植物出芽の増強、ならびにアイスバーグレタスのグリーンマスの収量増加、コショウの果実重量の増加、選択された鉢植えハーブの収量増加およびキュウリの収量増加を例示している。
【0067】
(実施例1)
植物出芽および植物生長の増強-春コムギの温室試験
播種の前に、春コムギ種子(30g)を、標準の発酵プロトコルに従って発酵させた本発明の単離株の発酵産物、水道水で希釈したその細菌細胞、または水道水で希釈した無細胞上清(300ml/1kgの種子)で処理し、次いで、種子を発酵産物/細菌細胞/上清と約2分間の間混合し、終夜乾燥させた。必要な場合は、その後、試験を設定する前に、2週間までの期間の間、種子を保管した。
【0068】
その後、それぞれの50個の種子を有する4つの鉢を、それぞれの処理について播種し、18〜20℃(感染させていない種子ロット)または10〜12℃(フザリウム属およびミクロドチウム属(Microdochium)の真菌に感染させた種子ロット)の温度および14時間の明期を有する生長チャンバに入れた。滅菌されていない市販のピート混合物「Enhetsjord」(Gerhardsonら、1985)をすべての試験で使用した。鉢を18〜20℃の温度に5〜6日間入れた後および10〜12℃で12〜14日間の後に、出芽した植物を計数した。さらに12〜18日後、植物を土壌表面から約0.5cmの距離で切断し、105℃で終夜乾燥させた後に苗条の乾重量を測定して、本発明の単離株で処理した後の植物質量の増加を推定した。
【0069】
図2および3は、様々な濃度の本発明の単離株で処理した後の春コムギの植物出芽の増強、ならびに春コムギの、それぞれ感染させていない(図2)および感染させた種子ロット(図3)を用いた生長チャンバ実験において試験したコムギの乾重量に対する、その施用の効果を示す。適切な濃度で、出芽は10〜15%(感染させていない種子ロット)および12〜35%(感染させた種子ロット)増強された。また、播種の約20日後に推定した乾重量も有意に増加し、13〜18%(感染させていない種子ロット)および10〜36%(感染させた種子ロット)であった。さらに、図2は、様々な濃度の本発明の単離株の上清を施用した後の、春コムギの出芽および乾重量の増強を示す。適切な濃度で、出芽は5〜10%、乾重量は8〜15%増強された。
【0070】
提示した結果により、単に植物生長促進剤としての、感染させていないおよび感染させた種子ロットの両方への施用における単離株の有用性が確認される。種子発芽および出芽を強力に増強する単離株F30Aの独特な特性は、病害からの回避のプロセスをもたらし、穀粒の生長および実験の期間(約20日間)にわたって生産された乾燥植物物質の量として表された全体的な植物状態を改善させる。
【0071】
(実施例2)
植物出芽の増強-ホウレンソウ温室試験
播種の前に、ホウレンソウ種子(3〜5g)を、標準のプロトコル(バッチ番号FOM115)または最適化したプロトコル(バッチ番号FOM139)に従って発酵させた本発明の単離株の発酵産物もしくはその無細胞上清または細菌細胞で処理し、これらはそれぞれの発酵産物から得られ、その後に水道水で再水和させたものである(300ml/1kgの種子)。その後、種子をそれぞれの細菌処理物と共に約2分間の間混合し、終夜乾燥させた。必要な場合は、その後、試験を設定する前に、2週間までの期間の間種子を保管した。
【0072】
その後、それぞれ25個の種子を有する4つの鉢を、それぞれの処理について播種し、12〜14℃の温度、14時間の明期を有する生長チャンバに入れた。滅菌されていない市販のピート混合物「Enhetsjord」(Gerhardsonら、1985)をすべての試験で使用した。播種の7日後から開始して、出芽したホウレンソウ植物を約8〜10日間の期間にわたって連続的に計数した。9日目に得られた植物計数をすべての以下の提示した結果に使用する。
【0073】
図4は、様々な濃度の本発明の単離株およびその上清で処理した後(図4A)ならびに単離株の選択された固体調製物で処理した後(図4B)の、ホウレンソウの出芽の増強を示す。適切な濃度で、発酵産物を用いた種子の処理は、35%までの出芽の増強をもたらした。非希釈の上清の施用は、処理していない対照と比較した場合に、13%より良好な出芽をもたらした。また、固体細胞調製物の施用も出芽の増強に有効であった。試験した濃度で、種子を生理食塩水で再水和させたこの調製物で処理した後に、15%までのより多くの植物が出芽した。
【0074】
温室試験からの例は、ホウレンソウの発芽および出芽を増強する本発明の株の顕著な能力を明白に示している。増強は、単離株の発酵産物の存在下、および生理食塩水もしくは水に懸濁させた細胞または生理食塩水で再水和させた乾燥細胞調製物の存在下で表される。記載した例によって示されるように、検出可能な出芽の増強は、通常は10〜40%の範囲であり、ホウレンソウ種子に施用した生成物の濃度に依存する。
【0075】
(実施例3)
植物出芽の増強-アブラナ温室試験
播種の前に、アブラナcv.ジョプリン(Joplin)の種子(10〜20g)を、改変したプロトコルに従って発酵させた本発明の単離株の発酵産物で処理し、終夜乾燥させた。種子を、4回の投与量(10、20、40および60ml/1kgの種子)の、それぞれ5.0×107、5.0×108および5.0×109cfuの本発明の単離株/mlを含有する発酵産物で処理した。
【0076】
その後、それぞれ25個の種子を有する6つの鉢を、それぞれの処理について播種し、12〜14℃の温度、14時間の明期を有する生長チャンバに入れた。滅菌されていない市販のピート混合物をすべての試験で使用した。
【0077】
播種の5日後から開始して、出芽したアブラナ植物を約4〜5日間の期間にわたって連続的に計数した。6日目に得られた植物計数を出芽の増強の推定に使用した。5.0×107/ml(0.5%)を有する発酵産物の施用が、投与量に依存せずにアブラナの出芽の最も均一が増強をもたらし、平均して31%の出芽の増強であった。投与量20、40および60ml/kgの発酵産物5.0×108/ml(5%)および5.0×109/ml(50%)を種子に施用した場合は、より大きな変動が検出された(Table 3(表3))。
【0078】
【表3】
【0079】
(実施例4)
アイスバーグレタスの収量の増強-根への施用、温室試験
トレイを温室/生長チャンバ(18℃および14時間の明期)に入れ、約2週間の期間の後、小植物を同じピートに基づく基質を有する鉢に移植した(1個の小植物/鉢)。鉢を温室/生長チャンバにさらに4〜6日間入れ、その後、10〜20mlの標準または最適化した発酵プロトコルに従って発酵させた本発明の単離株の発酵産物ならびにシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aを含む他の細菌溶液(たとえば、適切な無機や有機溶媒で再水和させた細菌細胞)およびその上清を根の付近に施用した。続く約2〜3週間の期間の間、鉢を温室/生長チャンバ中で保った。その後、レタス植物を土壌表面から約0.5cmの距離で切断し、秤量して、試験の期間中に生産されたグリーンマスを測定した。
【0080】
10mlの本発明の単離株の発酵産物または他の調製物(5×109〜4×1010コロニー形成単位(cfu)/ml)を、根/土壌の処理として、移植時にアイスバーグレタス小植物内に施用することで、処理していない対照小植物と比較した場合に、処理した植物のレタスの生長の例外的な増強および最終的にはより高いグリーンマスがもたらされた。
【0081】
図5は、どちらも最適化したプロトコルに従って発酵させた、本発明の単離株の2つの発酵産物およびその上清(バッチFOM173およびバッチFOM176)を用いた2つの別々の温室実験からの例を示す。アイスバーグレタスのグリーンマスの検出された増加は、19〜68%(発酵バッチ173を用いた温室試験)および3〜32%(発酵バッチ176を用いた温室試験)の範囲であった。上清の施用は、それぞれ56%(バッチ173)および36%(バッチ176)のグリーンマスの増加をもたらした。
【0082】
さらに、本発明の単離株の発酵産物は良好な貯蔵安定性を有する。14週間までの期間の間、4℃で保管した発酵産物の有効性は、生成物の貯蔵によって影響を受けなかった。すべて最適化したプロトコルに従って発酵させた、2、6および14週齢の本発明の単離株の発酵産物で処理したアイスバーグレタスの生長促進を実証する例示的な温室試験を、図6に示す。この温室試験では、発酵産物の熟成年齢とは独立して、本発明の単離株で処理した植物のグリーンマスは約40%増加した。さらに、6および2週齢の発酵産物中のそれぞれ1.3および1.5×1010cfu/mlと比較した場合に、14週齢の発酵産物中の生細胞計数は約1×1010cfu/mlであった。
【0083】
(実施例5)
コショウの収量の増強-根への施用、温室試験
移植物/小植物への根/土壌への施用後の生長促進効果を検出するために、コショウを追加の試験作物として使用した。コショウ種子を、市販のピートに基づく基質を有する鉢トレイ内に播種した。トレイを温室/生長チャンバ(25℃の日、20℃の夜および14時間の明期)中に入れ、約3週間の期間の後、小植物を同じピートに基づく基質を有する鉢に移植した(1個の小植物/鉢)。鉢を温室/生長チャンバにさらに4〜6日間入れ、その後、10mlの標準または最適化した発酵プロトコルに従って発酵させた本発明の単離株の発酵産物ならびにシュードモナス・アゾトフォルマンスF30Aを含む他の細菌溶液(たとえば、適切な無機および有機溶媒で再水和させた細菌細胞)を根の付近に施用した。続く4カ月間までの期間の間、鉢を温室/生長チャンバ中に保った。コショウ果実を2回の機会に収穫し、秤量して、それぞれの植物あたりの合計果実重量を推定した。
【0084】
10mlの本発明の単離株の発酵産物を3.5×107〜3.5×1010cfu/mlの様々な濃度で根/土壌の処理としてコショウ小植物のプラグ内にその移植時に施用することにより、処理していない対照植物と比較した場合に、より高い平均収量のコショウ果実がもたらされた。図7は、コショウ小植物を本発明の単離株の発酵産物バッチFOM076で処理した後の、コショウ果実の収量増加を示す。コショウ小植物の処理中の本発明の単離株の濃度に応じて、処理していない対照と比較した場合に6〜30%の収量増加が検出された。
【0085】
(実施例6)
飼料ビート、コリアンダー、オレガノおよびチャイブの収量の増強-土壌への施用、温室試験
飼料ビート、コリアンダー、オレガノおよびチャイブの鉢植えハーブを、市販の土壌基質を有する鉢中に、市販の播種システムを使用して播種した。その後、鉢(それぞれの鉢植えハーブあたり25個)中の土壌表面に、1リットルの土壌基質あたり10mlの本発明の単離株の発酵産物(約1〜3×109cfu/ml)を噴霧した。鉢を鉢植えハーブの栽培に使用される商業的温室中に入れ、生長条件は鉢植えハーブの栽培の通常のものであった。植物のグリーンマスを鉢植えハーブに応じて約1〜2カ月後に測定した。
【0086】
本発明の単離株で処理した鉢植えハーブのグリーンマスは、処理していない鉢から収穫されたハーブのグリーンマスよりも平均して約7%高かった(Table 4(表4))。さらに、植物はより緑色かつより丈夫に見えた。
【0087】
Table 4(表4).対応する処理していない対照のグリーンマスと比較した、本発明の単離株で処理した鉢植えハーブのグリーンマス、および平均収量増加のパーセント(n=25)。
【0088】
【表4】
【0089】
(実施例7)
キュウリの収量の増強-根/土壌への施用、商業的温室試験
本発明の単離株で処理する前に、キュウリ栽培の要件に従って、キュウリ移植物を4600m2の面積を有する商業的温室に植えた。その後、散水容器中で本発明の単離株の発酵培養物(20リットル、約2〜3×109cfu/ml)を80リットルの水と混合し、市販の散水システムを使用して植物を混合物で処理した。対照は、同じ型の温室、5400m2の栽培面積で栽培し、水で処理したキュウリであった。どちらの処理も同じ日に開始および終了し、すべての生長パラメータおよび受精などの他の必要な実用的な処置は、どちらの温室でも同じに保った。キュウリの収量はkg/1平方メートルの温室で測定し、収穫されたキュウリの数/平方メートルをさらに計数した。収穫期間中、水で処理した温室からの13.03kg/m2および326本のキュウリ/m2と比較して、13.75kg/m2および344本のキュウリ/m2が本発明の単離株で処理した温室から収穫された。数値は、本発明の単離株を施用した温室において5.5%/m2の収量増加に対応する。
【0090】
圃場試験
本発明の単離株を用いた商業的圃場および温室の試験は、種子発芽および植物出芽を増強する、ならびに天然条件下での植物被覆度、植物生長、開花および/または収量を改善させる、その潜在性を評価することを目的とする。一部のより大スケールの実験(1haまで)を含めた圃場実験(合計で82件の圃場試験/商業的温室試験)を、4回の生長期中に広範囲の農業上重要な双子葉作物で行い(Table 2(表2)を参照)、様々な測定パラメータを使用することによって植物生長促進特性を評価することに焦点を当てていた。本発明の単離株を用いた処理が有意な収量の改善をもたらした作物の平均収量増加データをTable 2(表2)中に提示する。
【0091】
本発明の単離株の標準および最適化した発酵産物は、膨大な数の圃場試験において使用した。3つの異なる施用方法を使用して、標的作物を単離株F30Aで処理した。これらは、種子の処理、種芋の処理(ジャガイモ)および移植物の根/土壌の処理であった。施用方法はそれぞれの作物に使用される慣例に依存かつ調節し、圃場試験のほとんどは、スウェーデンにおける野菜およびジャガイモの生産の主要地域である南スウェーデンに位置していた。さらに、すべての圃場実験において、本発明の単離株の施用の有用性を試験するために、一般的な農業の実施を、利益になる収穫を確実にするために行わなければならない他の必要な処置と組み合わせて使用した。ほとんどの試験は、4つ、または一部の実験では5つの複製を用いた完全にランダム化したブロック計画に従って実施した。データは、分散分析(ANOVA)およびSAS/Stat(Statistical Analyses System)中の一般線形回帰モデル(general linier model、GLM)によって分析した。出芽/植物の確立、花の数(イチゴ)および収量/販売可能な収量を試験においてスコア付けした。
【0092】
単離株F30Aを用いた様々な作物の種子の処理により、6〜19%の収量増加がもたらされた(Table 2(表2))。さらに、収量は、しばしば、標準の化合物を用いた処理の後に得られたものよりも有意に高かった、または高かった(実施例8のホウレンソウおよび実施例10のエンドウマメを参照)。植物出芽は、処理していない対照を有する区画上の植物出芽比較した場合に目に見えて増強されており、効果は収穫までの生長期全体にわたって維持された。40%までの収量の増強が一部の個々の圃場試験で測定された。また、灌注方法での単離株F30Aを用いた移植物の根/土壌の処理により、明らかに数日後に既に、処理した小植物の生長の迅速かつ目に見える増強がもたらされた(温室試験からのレタスの生長に対する効果の例を図8に示す)。
【0093】
これらの効果は生長期全体にわたって維持され、対照処理よりも早い収穫およびはるかに高い収量をもたらした。本発明の単離株を用いた根/土壌の処理後の収量増加は作物に依存し、平均して17〜52%であった(Table 2(表2))。ジャガイモ塊茎の処理は、4〜9%の収量の増強をもたらし(Table 2(表2))、25%までの最も高い相対的収量増加が、新ジャガイモを有する一部の個々の圃場試験で記録された。
【0094】
以下に提示する個別の実施例(実施例8〜18)は、様々な農業上重要な作物の収量を改善させるための、本発明の単離株の施用の有用性をさらに実証するであろう。他の作物に対する本発明の単離株の施用の効果は、現在試験されている、または後に評価されるであろう。したがって、本発明の範囲は特許請求の範囲によって定義されるため、提示した実施例は、それを制限することを意図しない。
【0095】
(実施例8)
植物の出芽および収量の増強-ホウレンソウ圃場試験からの一例。
大スケールの試験を例外としたホウレンソウ圃場試験では、4〜5回の反復を用いたランダム化したブロック計画を使用して実験を設定した。種子を列で播種し、各区画は通常は15m2であった。収量は、0.25m2の代表的な区画を収穫した後の2回の機会に推定した。圃場試験を開始する前に、商業的に使用されているホウレンソウ品種の種子ロットを、標準または最適化した発酵プロトコルに従って発酵させた本発明の単離株の発酵産物で処理し、また、たとえば市販の殺真菌剤などの他の適切な処理も種子に施用した。本発明の単離株の2つの投与量を、圃場試験で通常使用した:300ml/1kgの種子または10ml/1kgの種子。投与量の調節は投与量-応答の温室実験の後に行い、産業的施用に適切である。播種の前に、種子は、慣例において使用される標準に従って最終的に保管することができる。植物出芽の増強および収量の改善を実証する、ここに提示する例示的な圃場試験は、南スウェーデンで行った。ホウレンソウ種子を、10ml/kgの本発明の単離株の発酵産物(バッチFOM233)の投与量で処理し、対照は、処理していない種子および化学的殺真菌剤Apronの標準の投与量で処理した種子であった。図9は植物出芽の増強に関するデータを示す。出芽の増強は、2つの最初の読取り機会に特に有意であり、それぞれ33および32%の出芽の増強が検出された(図9)。
【0096】
植物出芽の増強は、初期植物被覆度を目に見えて改善させ、これは、処理していない種子および標準の殺真菌剤Apronで処理した種子から得られた被覆度よりも明らかに良好であった。さらに、本発明の単離株で処理した後の植物は、処理していない種子またはApronで処理した種子から出芽するものよりも丈夫かつ大きかった。このことは、有意により高い収量をもたらした。図10は、収量がそれぞれ24%(初期収穫)および14%(最終収穫)増加した、実施例中に提示した収量増加を示す。
【0097】
(実施例9)
植物の出芽および収量の増強-ロケット圃場試験の一例。
ロケット圃場試験は、ホウレンソウの試験と同様の方法で行った。実験の設定は、試験現場での農耕学の実施に従って調節した。種子は6cmの間隔を有する列で播種し、約4m2の区画を標準として選択した。収量は、それぞれの処理に対応する列でロケットをランダムに収穫した後の2回の機会に推定した。55メートルまでの合計の列の長さのうちの2メートル(n=2またはn=4)の植物を採取および秤量した。種子の処理は、ホウレンソウと同様の様式で行った。2つの投与量の本発明の単離株を、圃場試験で通常使用した:300ml/1kgの種子または100ml/1kgの種子。植物出芽の増強およびロケット収量の改善を実証する例示的な圃場試験は、南スウェーデンで行った。この圃場試験では、ロケット種子を、最適化したプロトコルに従って発酵させた300ml/kgの本発明の単離株の発酵産物の投与量(バッチFOM154)で処理し、対照は処理していない種子であった。図11は、ロケットの植物出芽の増強に関するデータおよび本発明の単離株を施用した後の収量増加を示す。出芽は約13%増強され、これは収穫機会に応じて8〜18%の収量増加をもたらした(図11)。
【0098】
(実施例10)
植物出芽および収量の増強-エンドウマメ圃場試験の一例。
他の作物の種子の処理を用いた圃場試験と同じ原理を、エンドウマメを用いた実験で使用した。圃場試験は、つる豆を育てている南スウェーデンの商業的農場に定めた。1キログラムの種子あたり50mlの発酵産物を通常施用し、15m2の区画面積を最も頻繁に使用した。収量は、エンドウマメを10m2の区画面積から収穫した後に推定した。収量は、すべての収穫されたつる豆について同じ成熟段階を表す熟度測定器値100(T100)へと再計算した。植物出芽の増強およびエンドウマメ収量の改善を実証する例示的な圃場試験は、南スウェーデンで行った。エンドウマメ種子を、最適化したプロトコルに従って発酵させた50ml/kgの本発明の単離株の発酵産物の投与量(バッチFOM150、約9.25×109cfu/ml)で処理し、対照は、処理していない種子および化学的殺真菌剤Wakilで処理した種子であった。図12は、Wakilを施用した後よりもわずかに良好であり(3%)、処理していない対照と比較した場合に12%より良好であった、収量増加に関するデータを示す。また、植物出芽は、処理していない対照と比較した場合に4%増強されていた。
【0099】
(実施例11)
収量の増強-ニンジン圃場試験の一例。
他の作物の種子の処理を用いた圃場試験を同じ原理を、ニンジンを用いた実験で使用した。圃場試験は、ニンジンを育てている南スウェーデンの商業的農場に定めた。1キログラムの種子あたり300または100mlの発酵産物を通常施用し、区画面積は試験に応じて20〜30m2で異なった。収量は、ニンジンをそれぞれの処理からの0.5または1メートルの列ランダムに収穫した後に測定した(n=3)。それぞれの処理および反復からのニンジンを別々に採取、計数および秤量した。ニンジン収量の改善を実証する例示的な圃場試験は、南スウェーデンで行った。この圃場試験では、ニンジン種子を、300ml/kgの本発明の単離株の発酵産物の投与量(バッチFOM076、標準のプロトコルに従って発酵させた)で処理し、対照は、処理していない種子および水で処理した種子であった。図13は、本発明の単離株を施用した後の収量増加に関するデータを示す(対照と比較した場合に約19%)。
【0100】
(実施例12)
収量の増強-アイスバーグレタスの根/土壌の処理を用いた圃場試験からの一例。
アイスバーグレタスの根/土壌の処理を用いた圃場試験では、商業的に育てた小植物をそれぞれ、標準または最適化したプロトコルに従って発酵させた10mlの本発明の単離株の発酵産物で処理した。処理は通常、圃場への小植物の移植中に行った。処理する前に、発酵産物を通常は1部の発酵産物(発酵産物のバッチに応じて5.0×109〜1.0×1010cfu/ml)および1部の水道水の割合で希釈した。任意選択で、小植物は、適切な無機または有機の農業上適合性のある溶媒で再水和させた本発明の単離株の細菌細胞の様々な調製物で処理してもよい。移植する前に、小植物を有するトレイ(それぞれの処理あたり150〜300個の植物)に、適切な体積の発酵産物または対照と同じ体積の水を灌注し、その後、圃場に移植した。必要な場合は、小植物を移植の数日前に処理し、商業的な農業の実施に従って保管してもよい。移植中はアイスバーグレタスの圃場栽培に使用される標準(列間で30cmの間隔および植物間で27cmの間隔)に従った。レタスは一般的な農業の実施に従って収穫し、収量増加は、それぞれのアイスバーグ玉あたりの重量の増加のグラムで測定した。
【0101】
図14は、南スウェーデンで行った圃場実験からのデータを示す。この試験では、アイスバーグレタスの収量(1個のレタス玉あたりのg)は、水で処理した植物から得られた平均収量と比較して平均して41%増加した。
【0102】
(実施例13)
開花および収量の増強-イチゴの根/土壌の処理を用いた圃場試験からの一例。
イチゴの根/土壌の処理を用いた圃場試験では、商業的に育てた小植物をそれぞれ、10mlの本発明の単離株の発酵産物(バッチFOM095、標準のプロトコルに従って発酵、約1.2×1010cfu/ml)で、小植物を夏の間に圃場に移植する間に処理した。これに次いで、翌春中に20mlの発酵産物(バッチFOM147、最適化したプロトコルに従って発酵、約3.1×109cfu/ml)の植物散水として、第2の処理を行った。必要な場合は、水道水を用いた希釈によって適切な濃度の発酵産物への調節を行った。どちらの処理にも、同じ体積の水の施用を対照として使用した。商業的小植物を試験に使用し、これらはイチゴの圃場栽培に使用される標準(列間で90cmの間隔および植物間で30cmの間隔)に従って植えた。確立された花の数の測定を7回の別々の機会に行い、成熟したイチゴを6回の別々の機会に収穫して、収量を測定した。図15および16は、2回目の生長期中に検出された花の確立の改善および液果の収量の改善を示す。開花の改善および収量の改善はどちらも、液果の最初の収穫を例外としてすべての読取り機会中に明白であり、開花および収穫の季節の全体にわたって有意である。読取り機会に応じて、開花は20%(5月30日の読取り)から142%(5月12日の読取り)まで改善され、これを図15に示す。
【0103】
また、開花の改善は液果の収量の有意な増加ももたらした。収穫季節全体にわたる蓄積収量は、水で処理した対照植物から得られた液果の収量と比較した場合に、合計で43%高かった(図16)。
【0104】
(実施例14)
ブロッコリーの成熟およびその初期収量の改善-ブロッコリーの根/土壌の処理を用いた圃場試験からの一例。
ブロッコリーの根/土壌の処理を用いた圃場試験では、商業的に育てた小植物を、標準または最適化したプロトコルに従って発酵させた10ml/小植物の本発明の単離株の発酵産物で処理した。処理は通常、圃場への小植物の移植中に行った。処理する前に、細胞濃度を約2.5〜7.5×109cfu/mlに調節するために、発酵産物を水道水で希釈した。移植する前に、小植物を有するトレイに、適切な体積の発酵産物または対照と同じ体積の水を灌注し、その後、圃場に移植した。必要な場合は、小植物を移植の数日前に処理し、商業的な農業の実施に従って保管することもできる。移植中はブロッコリーの圃場栽培に使用される標準(列間で30cmの間隔および植物間で30cmの間隔または列間で50cmの間隔および植物間で50cmの間隔)に従った。ブロッコリーは、数回の機会に一般的な農業の実施に従って収穫する。収量増加は、最初はグラム/区画で記録し、20m2の区画を通常使用し、その後、キログラム/ヘクタール対応する収量へと再計算した。図17は、発酵産物バッチFOM076(標準のプロトコルに従って発酵、約6,5×109cfu/ml)を用いた、南スウェーデンで行った圃場実験中の5回の別々の機会に収穫したブロッコリーの蓄積収量に関するデータを示す。本発明の単離株の施用の効果は、特に収穫期間の初期に見事であった。成熟かつ収穫の準備ができたブロッコリーの量は、水で処理した対照小植物から得られた収量と比較した場合に、最初の収穫中に200%を越えて改善され、2回目および3回目の収穫中に20%を超えて改善された(図17)。収穫の改善は、収穫季節の終わりにはそれほど強力ではなかったが、本発明の単離株で処理した植物は、水で処理したものと比較した場合に平均して5日早く収穫することができるため、経済的には、改善された初期成熟は、潜在的なユーザ/農業家にとって例外的に重要である。
【0105】
(実施例15)
収量の増強およびキャベツ品質の改善-キャベツの根/土壌の処理を用いた圃場試験からの一例。
キャベツの根/土壌の処理を用いた圃場試験では、商業的に育てた小植物を、標準または最適化したプロトコルに従って発酵させた5〜10ml/小植物の本発明の単離株の発酵産物で処理し、処理は通常、圃場への小植物の移植中に行った。処理する前に、細胞濃度を約5.0〜7.0×109cfu/mlに調節するために、発酵産物を水道水で希釈した。移植する前に、小植物を有するトレイに、適切な体積の発酵産物または対照と同じ体積の水を灌注し、その後、圃場に移植した。必要な場合は、小植物を移植の数日前に処理し、商業的な農業の実施に従って保管することができる。移植中はキャベツの圃場栽培に使用される標準(列間で50cmの間隔および植物間で50cmの間隔)に従った。キャベツは一般的な農業の実施に従って収穫し、それぞれのキャベツ玉の重量を推定した。図18は、発酵産物バッチFOM154(5ml、最適化したプロトコルに従って発酵、約6.5×109cfu/ml)で処理した後の、初期夏キャベツの収量の改善に関するデータを示す(大スケールの試験、50個のキャベツ小植物/処理、5個のブロック)。この試験では、キャベツ玉の重量は、本発明の単離株を施用した後に53%増加した(図18)。さらに、収量の増加、キャベツの販売可能な画分(販売が許可されたもの)の顕著な改善も検出された(図18、水で処理した小植物と比較して+38%)。これは、潜在的なユーザ/農業家にとって経済的に顕著に重要である。
【0106】
(実施例16)
収量の増強および塊茎品質の改善-ジャガイモ塊茎の処理を用いた圃場試験からの一例。
1つの大スケールの試験を例外として、ジャガイモ圃場実験は、5回の反復を用いたランダム化したブロック計画で設定した。それぞれの処理のそれぞれの反復には、2列または3列で播種した60個の種芋が含まれていた。列および種子の距離は、ジャガイモ農業における慣用の実施に従った。ジャガイモ試験は、SkaneおよびUppland/Dalarna(スウェーデン中部)に位置していた。試験は、新および後期ジャガイモ栽培品種のどちらでも行った。新ジャガイモでは、通常の栽培の実施に従って、圃場試験全体を、植付け後に植物が完全に発生するまで覆った。最初の新ジャガイモ圃場実験のうちの1つには、覆わなかった処理を含めた。ジャガイモ塊茎は、植付けと直接関連づけて、または10日前までに処理した。一般に、塊茎の処理には、標準または最適化したプロトコルに従って発酵させた発酵産物を、通常の水道水を使用して50%強度まで希釈したが、10%強度の発酵産物の効果も評価した。塊茎をそれぞれの細菌調製物に20〜30分間浸漬し、その後、市販のジャガイモ植付け機を用いてこれらを植えた。処理を植付けの数日前に行った場合は、接種した塊茎を空気乾燥させた後にジャガイモ貯蔵に入れた。浸漬によって、それぞれのジャガイモ塊茎は約0.75〜1mlの細菌懸濁液を受けた。さらに、ジャガイモ塊茎の化学的処理に商業的に使用されている標準の噴霧装置を使用した、別の細菌施用方法を行った。この装置を使用して、塊茎に4リットルの細菌懸濁液/トンの投与量で噴霧し、これは、それぞれの塊茎が約0.2mlの懸濁液を受けたことを意味する。また、この接種方法の有効性は、塊茎を植付けの1〜3カ月前の様々な時点に噴霧することによっても評価した。ジャガイモ種芋上の細菌の付着を改善させ、その保護を増強するために、どちらも良好な環境プロフィールを有する農業上適合性のある粘着化合物および界面活性剤の組合せが含まれる湿配合物を開発した。この配合物を、浸漬および噴霧処理の両方の圃場実験に施用した。すべての圃場試験において、出芽/植物の確立、開花の時間、最終的な病害症状および収量/販売可能な収量をスコア付けおよび測定した。
【0107】
新ジャガイモ栽培品種「ロケット」における本発明の単離株の効果を図19に示す。細菌処理により、出芽した植物の発生が有意に改善され、最終収量が増加され、平均収量増加は24%であった。
【0108】
初期および後期ジャガイモ栽培品種における本発明の単離株の湿配合物の施用により、配合していない発酵産物を施用した後の対応する8%および3%の収量増加と比較して、最終塊茎収量が17%(新ジャガイモ)および4%(後期ジャガイモ)改善された(図20)。
【0109】
(実施例17)
植物苗床中の樹木の根および植物の生長の増強
植物苗床中の樹木の小植物の生長の改善に対する本発明の単離株の施用の効果を試験するために、最適化した発酵プロトコルに従って培養した本発明の単離株の発酵産物を使用して、新しく出芽したオウシュウアカマツの小植物を処理した。種子は、植物苗床に使用される商業的実施および方法に従って播種および処理した。小植物は、播種の9日後に1個の小植物あたり5mlの発酵産物(2〜3.5×109/ml)を散水し、対照は、同じ量の水で処理した小植物であった。小植物の生長を、処理の3、6および10週間後に視覚的に監視した。処理の13週間後、小植物の代表的な試料を採取した後に根および苗条の乾重量を測定した。Table 5(表5)中に要約した結果は、本発明の単離株の施用が、オウシュウアカマツ小植物の根および苗条のより高い乾重量をもたらすことを示しており、これは図21にも例示されている。水で処理した対照と比較した場合に、根の乾重量は14%まで、植物地上部の乾重量は31%まで高い。したがって、本発明の単離株で処理した小植物の合計重量は、水で処理した対照小植物の重量よりも25%まで高い。したがって、本発明のシュードモナス・アゾトフォルマンス、F30A株は、樹木および/または樹木の小植物の生長を改善させるためにも使用し得る。
【0110】
【表5】
【0111】
(実施例18)
農業製品との適合性。生物学的、有機的および化学的な農業製品からの活性成分と一緒にした本発明の単離株の増殖からの例。
【0112】
Table 6(表6).種子の処理に商業的に使用されている選択された合成化学的殺真菌剤および有機成分の、種子処理に推奨されるそれぞれの投与量に基づいた適合性限界値(μg ml-1)、およびP.アゾトフォルマンスF30A(3.3×108ml-1)の増殖が、試験した化合物の存在下で阻害されない適合性値(μg ml-1)。
【0113】
【表6】
【0114】
【表7】
【0115】
すべての上記実施例において、本発明の単離株は増殖障害の兆候をまったく示さず、したがって、種子の処理に推奨される濃度ですべての市販の活性成分と完全に適合性であった。
【0116】
【表8】
【0117】
【表9】
【0118】
【表10】
(参考文献)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHに受託されており、受託番号DSM22077が割り当てられている、シュードモナス・アゾトフォルマンス(Pseudomonas azotoformans)、F30A株の生物学的に純粋な株。
【請求項2】
Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHに受託されており、受託番号DSM22077が割り当てられている、シュードモナス・アゾトフォルマンス、F30A株の生物学的に純粋な株の培養物から得られた上清。
【請求項3】
種子発芽、植物出芽および/または植物生長を増強するための、請求項1に記載のシュードモナス・アゾトフォルマンス、F30A株の生物学的に純粋な株、または請求項2に記載の上清の使用。
【請求項4】
前記種子および/または植物が双子葉である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記種子および/または植物が単子葉である、請求項3に記載の使用。
【請求項6】
請求項1に記載のシュードモナス・アゾトフォルマンス、F30A株の生物学的に純粋な株の発酵産物。
【請求項7】
請求項1に記載のシュードモナス・アゾトフォルマンス、F30A株の生物学的に純粋な株、または請求項2に記載の上清を、任意選択で1つまたは複数の液体および/または固体の担体と組み合わせて含む、農業用組成物。
【請求項8】
1つまたは複数の追加の植物生長促進微生物、生物的防除微生物、有機肥料および/または農薬をさらに含む、請求項7に記載の農業用組成物。
【請求項9】
請求項6に記載の発酵産物または請求項7もしくは8のいずれか一項に記載の農業用組成物を、種子、植物および/または前記種子もしくは植物を取り囲む環境に施用するステップを含む、種子発芽、植物出芽および/または植物生長を増強するための方法。
【請求項10】
請求項6に記載の発酵産物または請求項7もしくは8のいずれか一項に記載の農業用組成物を植物の根に施用する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項6に記載の発酵産物または請求項7もしくは8のいずれか一項に記載の農業用組成物を、土壌に、植物根の出芽の前および/または後に施用する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
請求項6に記載の発酵産物または請求項7もしくは8のいずれか一項に記載の農業用組成物を植物栄養繁殖単位に施用する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
請求項6に記載の発酵産物または請求項7もしくは8のいずれか一項に記載の農業用組成物を、種子および/または植物を取り囲む植物生長培地に施用する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
植物が単子葉植物である、または種子がそれへと発生する、請求項9から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
植物が双子葉植物である、または種子がそれへと発生する、請求項9から13のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記シュードモナス・アゾトフォルマンス、F30A株、または前記上清を、1つまたは複数の液体または固体の担体、ならびに任意選択で1つまたは複数の追加の植物生長促進微生物、生物的防除微生物、有機肥料および/または農薬と混合するステップを含む、請求項7または8のいずれか一項に記載の農業用組成物を調製する方法。
【請求項1】
Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHに受託されており、受託番号DSM22077が割り当てられている、シュードモナス・アゾトフォルマンス(Pseudomonas azotoformans)、F30A株の生物学的に純粋な株。
【請求項2】
Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHに受託されており、受託番号DSM22077が割り当てられている、シュードモナス・アゾトフォルマンス、F30A株の生物学的に純粋な株の培養物から得られた上清。
【請求項3】
種子発芽、植物出芽および/または植物生長を増強するための、請求項1に記載のシュードモナス・アゾトフォルマンス、F30A株の生物学的に純粋な株、または請求項2に記載の上清の使用。
【請求項4】
前記種子および/または植物が双子葉である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記種子および/または植物が単子葉である、請求項3に記載の使用。
【請求項6】
請求項1に記載のシュードモナス・アゾトフォルマンス、F30A株の生物学的に純粋な株の発酵産物。
【請求項7】
請求項1に記載のシュードモナス・アゾトフォルマンス、F30A株の生物学的に純粋な株、または請求項2に記載の上清を、任意選択で1つまたは複数の液体および/または固体の担体と組み合わせて含む、農業用組成物。
【請求項8】
1つまたは複数の追加の植物生長促進微生物、生物的防除微生物、有機肥料および/または農薬をさらに含む、請求項7に記載の農業用組成物。
【請求項9】
請求項6に記載の発酵産物または請求項7もしくは8のいずれか一項に記載の農業用組成物を、種子、植物および/または前記種子もしくは植物を取り囲む環境に施用するステップを含む、種子発芽、植物出芽および/または植物生長を増強するための方法。
【請求項10】
請求項6に記載の発酵産物または請求項7もしくは8のいずれか一項に記載の農業用組成物を植物の根に施用する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項6に記載の発酵産物または請求項7もしくは8のいずれか一項に記載の農業用組成物を、土壌に、植物根の出芽の前および/または後に施用する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
請求項6に記載の発酵産物または請求項7もしくは8のいずれか一項に記載の農業用組成物を植物栄養繁殖単位に施用する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
請求項6に記載の発酵産物または請求項7もしくは8のいずれか一項に記載の農業用組成物を、種子および/または植物を取り囲む植物生長培地に施用する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
植物が単子葉植物である、または種子がそれへと発生する、請求項9から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
植物が双子葉植物である、または種子がそれへと発生する、請求項9から13のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記シュードモナス・アゾトフォルマンス、F30A株、または前記上清を、1つまたは複数の液体または固体の担体、ならびに任意選択で1つまたは複数の追加の植物生長促進微生物、生物的防除微生物、有機肥料および/または農薬と混合するステップを含む、請求項7または8のいずれか一項に記載の農業用組成物を調製する方法。
【図8】
【図21】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
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【図6】
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【図10】
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【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2013−514805(P2013−514805A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545907(P2012−545907)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【国際出願番号】PCT/SE2010/051468
【国際公開番号】WO2011/078783
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(512163635)ラントメネン・バイオアグリ・アーベー (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【国際出願番号】PCT/SE2010/051468
【国際公開番号】WO2011/078783
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(512163635)ラントメネン・バイオアグリ・アーベー (1)
【Fターム(参考)】
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