説明

植物の周年栽培育成装置

【課題】熱交換効率が良く十分な温調効果が得られると共に、栽培範囲の増減に容易かつ迅速に対応可能な植物の周年栽培育成装置を提供する。
【解決手段】植物の苗が植えられる平面視細長状の育成容器1を備え、育成容器1の長手方向Lに温調媒体を流す流路空間部11を、長手壁部10に形成し、長手壁部10の長手方向一端側に温調媒体用の流入口12を設けると共に、長手方向他端側に温調媒体用の排出口13を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の周年栽培育成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、旬の季節をずらして野菜や果物を育成させるために、ビニールハウス等の栽培室の室内全体を温度管理する温調装置や、植物が植えられた土に配管部材を埋設して、土の温度調節をおこなう栽培装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平01−171415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、栽培室内全体を温度管理するには、多大なエネルギーが必要になるといった問題があった。また、土に温調用配管を埋設しても、熱交換効率が悪く十分な温調効果を得ることができないといった問題や、温調配管の埋設に多大な労力と時間が費やされてしまうといった問題があった。また、温調配管を一度付設してしまうと、栽培範囲の拡張や縮小といった増減や、移設等に容易かつ迅速に対応できないといった問題もあった。
【0005】
そこで、本発明は、熱交換効率が良く十分な温調効果が得られると共に、育成範囲の増減に容易かつ迅速に対応可能な植物の周年栽培育成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の植物の周年栽培育成装置は、植物の苗が植えられる平面視細長状の育成容器を備え、上記育成容器の長手方向に温調媒体を流す流路空間部を、長手壁部に形成し、上記長手壁部の長手方向一端側に温調媒体用の流入口を設けると共に、長手方向他端側に温調媒体用の排出口を設けたものである。
また、上記流入口及び排出口の一方に継手ユニットの雄接続継手を設け、他方に雌接続継手を設け、複数の上記育成容器を、順次、上記長手方向に直列状に連結自在としたものである。
【0007】
また、植物の苗が植えられる平面視長方形状の育成容器を備え、上記育成容器の長手方向に温調媒体を流す流路空間部を、左右一対の側壁部の夫々に形成し、一方の上記側壁部は、上記育成容器の長手方向一端側に、一方の上記側壁部に形成された一方の上記流路空間部に連通する継手ユニットの雄接続継手が突設され、上記育成容器の長手方向他端側に、一方の上記流路空間部に連通する雌接続継手が突設され、他方の上記側壁部は、上記育成容器の長手方向一端側に、他方の上記側壁部に形成された他方の上記流路空間部に連通する上記雌接続継手が突設され、上記育成容器の長手方向他端側に、他方の上記流路空間部に連通する雄接続継手が突設され、複数の上記育成容器を、順次、上記長手方向に直列状に連結自在としたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の植物の周年栽培育成装置によれば、苗が植えられる土等の苗床材と温調媒体が効率よく熱交換でき、エネルギーの消費を軽減できる。また、苗の根及び茎を冷し、又は、逆に暖めることで、苗の季節外れの育成を確実にコントロール可能となる。このように、十分な温調効果が得られ、周年で(旬をずらして季節外れに)植物を確実に育成できる。土に埋設や敷設する配管が必要なく、容易かつ迅速に、栽培範囲の増減や移設に対応できる。育成容器内の苗床材に集中的に効率良く熱交換でき、エネルギーの消費を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の植物の周年栽培育成装置に用いる育成容器の第1例を示す平面図である。
【図2】育成容器の第1例の使用状態正面断面図である。
【図3】育成容器の第2例の正面断面図である。
【図4】育成容器の第3例の平面図である。
【図5】育成容器の第3例の正面断面図である。
【図6】育成容器の第4例の正面断面図である。
【図7】育成容器の第5例の正面断面図である。
【図8】育成容器の第6例の正面平面図である。
【図9】育成容器の第6例の正面断面図である。
【図10】育成容器の第7例の正面断面図である。
【図11】育成容器同士の連結を説明する要部平面図である。
【図12】本発明の植物の周年栽培育成装置の実施の一形態を示す平面図である。
【図13】本発明の植物の周年栽培育成装置の他の実施形態を示す平面図である。
【図14】作用を説明する比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
先ず、本発明の植物の周年栽培育成装置に用いる育成容器1について説明する。
図1に示すように、育成容器1は平面視細長状に形成され、野菜や果物、園芸用の草花等の植物の苗が植えられると共に、育成(栽培)用の土や肥料、ロックウール等の苗床材Gが収容可能な収容空間2を有する上方開口箱型である。
【0011】
図1及び図2に於て、育成容器1は、平面視長方形状に形成されている。複数の長手壁部10及び幅方向壁部20を有している。複数の長手壁部10とは、育成容器1の長手方向Lに平行状に配設された壁部であって、左右一対の側壁部10A,10Bと、底壁部10Cと、である。複数の幅方向壁部20とは、育成容器1の左右幅方向Wに平行状に配設された壁部であって、育成容器1の長手方向Lの一端側に配設される一端壁部20Aと、育成容器1の長手方向Lの他端側に配設される他端壁部20Bと、収容空間2を長手方向Lに区切る分割壁部20Cである。
【0012】
また、分割壁部20Cによって、収容空間2は、長手方向Lに複数に分割され、複数の分割収容空間2aが形成されている。この分割収容空間2aに苗が植えられると共に苗床材Gが収容される。即ち、1つの育成容器1で複数の苗を育成可能に設けている。底壁部10Cには、苗床材Gを通過した水や肥料液が貯まるのを防止する排水孔19を貫設している。排水孔19は、各分割収容空間2aに対応するように貫設されている。なお、図示省略したが、育成容器1の外周面(左右一対の側壁部10A,10Bと、底壁部10Cと、一端壁部20Aと、他端壁部20Bと、の外方側面)は、断熱材にて包囲するのが望ましい。例えば、断面U字型の断熱部材の凹溝内に、育成容器1全体を収納するのが良い。
【0013】
そして、左右一対の側壁部10A,10Bを中空状(中空壁部)とし、育成容器1の長手方向Lに水(液体)や冷却ガス(気体)等の温調用媒体を流す流路空間部11を、夫々形成している。この左右一対の側壁部10A,10Bに形成された流路空間部11を、左右一対の側方流路空間部11A,11Bと呼ぶ場合もある。つまり、一方の側壁部10Aに一方の側方流路空間部11Aが形成され、他方の側壁部10Bに他方の側方流路空間部11Bが形成されている。
【0014】
左右一対の側壁部10A,10Bには、着脱自在かつ流体が送流可能なクイック(ワンタッチ)カプラ等の継手ユニット3の雄接続継手3A及び雌接続継手3Bがエルボ配管等の屈曲部4を介して突設されている。突設した位置から長手方向Lの外方に各先端面31,32が向き、かつ、継手軸心が長手方向Lに平行に配設している。なお、説明を容易にするために、雄接続継手3A及び雌接続継手3Bを接続継手と呼ぶ場合もある。
【0015】
一方の側壁部10Aの長手方向一端側に温調媒体用の流入口12を設けると共に、一方の側壁部10Aの長手方向他端側に温調媒体用の排出口13を設けている。そして、流入口12及び排出口13の一方に、一方の側方流路空間部11Aと連通する雄接続継手3Aを設け、他方に一方の側方流路空間部11Aと連通する雌接続継手3Bを設けている。具体的には、一方の側壁部10Aは、育成容器1の長手方向一端側に雄接続継手3Aが突設されると共にその他端側に雌接続継手3Bが突設されている。
【0016】
また、他方の側壁部10Bの長手方向一端側に温調媒体用の流入口12を設けると共に、他方の側壁部10Bの長手方向他端側に温調媒体用の排出口13を設けている。そして、流入口12及び排出口13の一方に雄接続継手3Aを設け、他方に雌接続継手3Bを設けている。具体的には、他方の側壁部10Bは、育成容器1の長手方向一端側に、雌接続継手3Bが突設され、育成容器1の長手方向他端側に、雄接続継手3Aが突設されている。
【0017】
長手壁部10の長手方向一端側と他端側で雌雄が相違するように雄接続継手3A及び雌接続継手3Bを配設し、平面視で育成容器1の中心点Pに関して互いの略点対称位置(略対角位置)では、雄と雄が対応し、かつ、雌と雌が対応している。
【0018】
育成容器1の長手方向一端側に配設される雄接続継手3A及び雌接続継手3Bと、育成容器1の長手方向他端側に配設される雄接続継手3A及び雌接続継手3Bとは、平面視で育成容器1の中心点Pに対して回転対称に配設されている。つまり、育成容器1は、長手方向一端側の形状と他端側の形状とを中心点Pに対して回転対称形状としている。
【0019】
また、図11(a)に示すように、育成容器1及び別の育成容器1’を長手方向Lに対面状に配設した場合に、育成容器1の一端側と、別の育成容器1’の他端側は、平面視で接続継手の雄と雌が各々対応する。
【0020】
つまり、図11(b)に示すように、育成容器1の雄接続継手3Aが別の育成容器1’の雌接続継手3Bと対応すると共に、育成容器1の雌接続継手3Bが別の育成容器1’の雄接続継手3Aと対応し、育成容器1の一端壁部20Aと別の育成容器1’の他端壁部20Bを接近乃至接触させると、長手方向Lに直列状に連結し、育成容器連結体9を形成する。
【0021】
また、図11(a)に於て、雄接続継手3Aの先端面31を、育成容器1の長手方向同側に配設される雌接続継手3Bの先端面32より、所定寸法Sだけ突設させて設けている。
図11(b)に於て、雄接続継手3A及び雌接続継手3Bが機械的に接続し流体の送流が可能となった連結完了の際に、雌接続継手3Bの先端面32から雄接続継手3Aの先端面31までの寸法を接続完了差込寸法Kとすると、所定寸法Sを接続完了差込寸法Kと同寸法に設定している。
また。雌接続継手3Bの先端面32は、配設される側の端壁(一端壁部20A或いは他端壁部20B)の外方側面と同一平面状、又は、その外方側面より長手方向Lに僅かに突出しているのが望ましい。そうすることで、雄接続継手3Aを長手方向Lに端壁から可能な限り突出させず、かつ、育成容器1と別の育成容器1’の端壁を可能な限り接近させて連結させることが可能となる。
【0022】
次に、図3に示すように、育成容器1の第2例は、第1例と同様の構成を有し、さらに、底壁部10Cを中空状として、流路空間部11を形成している。底壁部10Cに形成された流路空間部11を底流路空間部11Cと呼ぶ場合がある。底流路空間部11Cによって、一方側の側方流路空間部11Aと他方側の流路空間部11Bは連通している。
【0023】
次に、図4及び図5に示すように、育成容器1の第3例は、第1例と同様の構成を有し、さらに、長手方向Lに平行に配設されると共に収容空間2を幅方向Wに区切る仕切壁部10Dを有している。仕切壁部10Dは流路空間部11の無い長手壁部10とも言える。分割壁部20Cと仕切壁部10Dによって、収容空間2は、格子状に区切られ、第1例よりも多くの分割収容空間2aを形成し、苗を左右2列に配設可能としたものである。
【0024】
次に、図6に示すように、育成容器1の第4例は、第3例(図4及び図5参照)と同様の構成を有し、さらに、底流路空間部11Cを形成したものである。底流路空間部11Cによって、一方側の側方流路空間部11Aと他方側の流路空間部11Bは連通している。
【0025】
次に、図7に示すように、育成容器1の第5例は、第3例(図4及び図5参照)と同様の構成を有し、さらに、底流路空間部11Cを形成し、かつ、仕切壁部10Dを中空状として流路空間部11を形成したものである。仕切壁部10Dに形成された流路空間部11を仕切流路空間部11Dと呼ぶ場合がある。側方流路空間部11A,11Bと、底流路空間部11Cと、仕切流路空間部11Dは、連通している。
【0026】
次に、図8及び図9に示すように、育成容器1の第6例は、第3例(図4及び図5参照)と同様の構成を有し、さらに、仕切流路空間部11Dを形成したものである。また、育成容器1の長手方向一端側に、仕切流路空間部11Dに温調媒体用の流入口12を設けると共に、その長手方向他端側に排出口13を設けている。そして、流入口12及び排出口13の一方に雄接続継手3Aが突設され、他方に雌接続継手3Bが突設されている。仕切流路空間部11Dに連通した雄接続継手3A及び雌接続継手3B以外は、中心点Pに対して回転対称形状である。なお、図示省略するが、仕切流路空間部11Dに連通する雄接続継手3A及び雌接続継手3Bを、底壁部10Cから下方へ突出させた後に、屈曲部4をもって、継手軸心を長手方向Lに平行となるように配設し、雌接続継手3Bの先端面32が、配設される側の端壁の外方側面と同一平面状、又は、その外方側面より長手方向Lに僅かに突出するように設けても良い。
【0027】
次に、育成容器1の第7例は、第3例(図4及び図5参照)と同様の構成を有し、さらに、左右一対の側壁部10A,10Bを中実状(板壁型)として、側方流路空間部11A,11Bを省略し、かつ、仕切流路空間部11Dを形成したものである。つまり、図10に示すように、育成容器1の長手方向Lに温調媒体を流す流路空間部11を、仕切壁部10Dに形成した仕切流路空間部11Dのみとしたものである。そして、図示省略するが、第6例のように、仕切流路空間部11Dに連通した雄接続継手3A及び雌接続継手3Bを設けている。
【0028】
また、図示省略するが、育成容器1の第8例は、育成容器1の長手方向Lに温調媒体を流す流路空間部11を、底流路空間部11Cのみとしたものである。そして、育成容器1の長手方向一端側に、底流路空間部11Cに流入口12を設けると共に、その長手方向他端側に排出口13を設けている。そして、流入口12及び排出口13の一方に雄接続継手3Aが突設され、他方に雌接続継手3Bが突設している。
また、図示省略するが、育成容器1の第9例は、育成容器1の長手方向Lに温調媒体を流す流路空間部11を、左右一対の側壁部10A,10Bの内どちらか一方のみに形成したものである。
【0029】
そして、図12及び図13に示すように、本発明の植物の周年栽培育成装置は、複数の育成容器1,1が順次連結した長方形状の育成容器連結体9と、温調媒体を冷却又は昇温可能な熱交換機器と送流ポンプを内有する温調機6と、温調媒体が送流する複数の配管部材40と、を備えている。なお、説明を容易にするための、第1例の育成容器1で説明するが、上述した育成容器1のいずれかが用いられれば良い。
【0030】
先ず、図12に示す実施の一形態は、育成容器連結体9の長手方向L’の一端側に配設され、他の育成容器1と連結していない雄接続継手3A及び雌接続継手3Bを、温調機6の供給口部6aに接続された供給配管41に接続している。また、育成容器連結体9の長手方向L’の他端側に配設され、他の育成容器1と連結していない雄接続継手3A及び雌接続継手3Bを、温調機6の戻り口部6bに接続された戻り配管42に接続している。
つまり、温調媒体が矢印Yで示すように、育成容器連結体9の長手方向L’(育成容器1の長手方向L)の一端側から他端側に向かって流れ、その後、温調機6に戻るように構成している。
【0031】
次に、図13に示す他の実施形態は、一方の側壁部10Aから突設し、かつ、育成容器連結体9の長手方向L’の一端側に配設され他の育成容器1と連結していない雄接続継手3Aに、供給配管41が接続されている。また、他方の側壁部10Bから突設し、かつ、育成容器連結体9の長手方向L’の一端側に配設され他の育成容器1と連結していない雌接続継手3Bに、戻り配管42に接続している。そして、育成容器連結体9の長手方向L’の他端側に配設され、他の育成容器1と連結していない雄接続継手3A及び雌接続継手3B同士を、U字状の折り返し配管43にて接続している。
つまり、温調媒体が矢印Yで示すように、複数の育成容器1の一方の側方流路空間部11Aを流れ、折り返し配管43にてUターンし、複数の育成容器1の他方の側方流路空間部11Bを流れて、温調機6に戻るように構成している。なお、図13に示した実施形態は、左右一対の側方流路空間部11A,11Bを有し、かつ、側方流路空間部11A,11B同士が連通していない場合の育成容器1を用いる。
【0032】
次の本発明の植物の周年栽培育成装置の使用方法(作用)について説明する。
2つの育成容器1,1を長手方向Lに相互に接近させると、育成容器1と別の育成容器1’が連結する。育成容器1,1同士が直接的に連結(直結)し、苗の育成可能範囲の広い細長状の育成容器連結体9が形成される。雄接続継手3Aと雌接続継手3Bは、隣合う育成容器1同士の流路空間部11を連通するための配管部材と、複数の育成容器1を育成容器連結体9として保持する連結保持部材とに、併用されている。育成容器1,1同士の端壁が接近乃至接触して、設置空間を無駄なく、苗の育成空間として使用可能にする。
また、雄接続継手3Aと雌接続継手3Bの接続を解除(分離)させることで、育成容器1,1同士の連結は容易かつスムーズに解除される。つまり、育成容器1,1の連結する個数、即ち、苗の育成可能な場所(範囲)を増減可能とする。
【0033】
そして、育成容器1の複数の分割収容空間2aに、苗床材Gを入れて、苗を植える。温調機6によって冷水又は温水等の温調媒体が流路空間部11に供給され、苗床材Gと熱交換する。
例えば、苗が苺や小ネギである場合に、温調媒体で冷水することで、収穫を、自然栽培での本来の収穫時期(旬)である春ではなく、夏に行うことを可能にする。また、旬が夏であるピーマン、トマト、キュウリであれば、温調媒体を温水とし、暖めることで、冬に収穫を可能にする。このように、収穫したい時期に、果物や野菜の実、或いは、園芸用の花が蕾乃至開花状態に成長するように、温調媒体で冷却又は暖めることで、苗の育成を制御し周年(通年)栽培を可能にする。
【0034】
また、流路空間部11が形成されている長手壁部10には、長手方向Lに沿って広範囲に苗床材Gに面状接触するため、効率よく、苗床材G及び苗と、温調媒体と、が熱交換する。
例えば、図14(a)に示すように育成容器1の第1例を用いた場合を実施例とし、図14(b)に示したように流路空間部11を有さない収容容器Jに、横断面蒲鉾型のチューブP1を苗床材Gに埋設したものを第1比較例とし、図14(c)に示したように横断面円形のチューブP2を苗床材Gに埋設したものを第2比較例とすると、熱交換すべき苗床材Gと接触する面積は、断面視で苗床材Gに接する線(接触線)の寸法と、長手方向Lの長さ寸法の積である。長手方向Lの長さ寸法を、実施例及び第1・第2比較例を同じ値に設定すると、熱交換に有効な面積は、接触線の長さに比例すると言える。
【0035】
実施例の接触線の寸法は、左右一対の側壁10A,10Bの上下方向長さ寸法Hの2倍であり、具体的には、182mmである。第1比較例の接触線の寸法は、円弧線分寸法Rと弦線分寸法Tの和であり、70mmである。また、第2比較例は、円周長寸法であり、直径寸法Dが10mmの場合約31mmである。従って、実施例は、第1比較例の2.6倍、第2比較例の約6倍の熱交換有効面積を得ている。十分に効率良く温調効果が得られると言える。
言い換えると、第1比較例が実施例と同様の熱交換有効面積を得るためには、2.6本以上、つまり、3本は埋設する必要があり、第2比較例では、6本埋設する必要がある。根が発育する障害になると共に、施工が困難である。さらに、複数の収容容器Jを直列状に並べる際は、チューブP1,P2を、一度出し、再び、別の収容容器Jに埋設するため、熱効率及び美観が損なわれる。また、実施例は、埋設されるチューブP1,P2に比べ、温度に敏感な茎の根元(クラウン)に対しても効率良く熱を作用(伝達)でき、苗の育成をより確実かつ容易に制御可能としている。熱交換効率が良いので温調機6の設定(制御)が反映されやすく、より細かな温調制御(育成の制御)が可能となる。
【0036】
なお、本発明は設計変更可能であって、育成容器1の長手壁部10及び幅方向壁部20の材質は、金属、樹脂、陶器等自由である。また、分割壁部20Cを省略しても良い。また、育成容器1の第2例(図3参照)、第4例(図6参照)、第5例(図7)のように、左右一対の側方流路空間部11A,11Bが底流路空間部11Cによって連通している場合は、流入口12及び排出口13や、雄接続継手3A及び雌接続継手3Bは、左右一対の側壁部10A,10Bの内どちらか一方のみに設けても良い。また、底流路空間部11Cによって、左右一対の側方流路空間部11A,11Bを連通させずに、各流路空間部11を独立させても良い。また、図例では、継手ユニット3を介して接続している構造であるが、これをホースやフレキシブルチューブ等を介して、相互に配管しても良い(図示省略)。
【0037】
また、苗床材Gは、土や砂、肥料、ロックウール等、植物の苗が根を張るのに適しているものであれば良い。また、分割収容空間2aにコップ状のポットに植えられた苗を配置しても良い。また、温調媒体を送流するポンプは温調機6と別体として設けても良い。
【0038】
以上のように、本発明の植物の周年栽培(季節外れの植物)育成装置は、植物の苗が植えられる平面視細長状の育成容器1を備え、育成容器1の長手方向Lに温調媒体を流す流路空間部11を、長手壁部10に形成し、長手壁部10の長手方向一端側に温調媒体用の流入口12を設けると共に、長手方向他端側に温調媒体用の排出口13を設けたので、苗床材Gと温調媒体が効率よく熱交換でき、エネルギーの消費を軽減できる。育成容器1内の苗床材Gに集中的に効率良く熱交換でき、エネルギーの消費を軽減できる。また、十分な温調効果が得られ、周年で(旬をずらして季節外れに)植物を確実に育成できる。埋設や敷設する配管が必要なく、容易かつ迅速に栽培範囲の増減や移設に対応できる。ビニールハウス等のように室内全体の冷暖房管理を行う必要がなく、少ないエネルギーで確実な温調効果(環境温度の制御によって育成の成長を制御する効果)を得ることができる。特に、植物工場(野菜や果物育成工場)のような屋内での使用に好適である。
【0039】
また、流入口12及び排出口13の一方に継手ユニット3の雄接続継手3Aを設け、他方に雌接続継手3Bを設け、複数の育成容器1,1を、順次、長手方向Lに直列状に連結自在としたので、複数の育成容器1,1が細長状に連結した育成容器連結体9を容易に得ることができ、広範囲の植物を一括制御(管理)できる。育成容器1同士を連結する他部材が必要なく直接的に連結できる。育成容器1同士の連結・分離を容易に行え、迅速に栽培範囲の増減や移設ができる。つまり、連結する個数を継ぎ足し自在とすると共に育成容器連結体9を所望の長さに調節できる。
【0040】
また、植物の苗が植えられる平面視長方形状の育成容器1を備え、育成容器1の長手方向Lに温調媒体を流す流路空間部11,11を、左右一対の側壁部10A,10Bの夫々に形成し、一方の側壁部10Aは、育成容器1の長手方向一端側に、一方の側壁部10Aに形成された一方の流路空間部11に連通する継手ユニット3の雄接続継手3Aが突設され、育成容器1の長手方向他端側に、一方の流路空間部11に連通する雌接続継手3Bが突設され、他方の側壁部10Bは、育成容器1の長手方向一端側に、他方の側壁部10Bに形成された他方の流路空間部11に連通する雌接続継手3Bが突設され、育成容器1の長手方向他端側に、他方の流路空間部11に連通する雄接続継手3Aが突設され、複数の育成容器1,1を、順次、長手方向Lに直列状に連結自在としたので、苗床材Gと温調媒体が効率よく熱交換でき、エネルギーの消費を軽減できる。育成容器1内の苗床材Gに集中的に効率良く熱交換でき、エネルギーの消費を軽減できる。また、十分な温調効果が得られ、周年で(旬をずらして季節外れに)植物を確実に育成できる。埋設や敷設する配管が必要なく、容易かつ迅速に栽培範囲の増減や移設に対応できる。ビニールハウス等のように室内全体の冷暖房管理を行う必要がなく、少ないエネルギーで確実な温調効果を得ることができる。特に、植物工場(野菜や果物育成工場)のような屋内での使用に好適である。また、複数の育成容器1,1が細長状に連結した育成容器連結体9を容易に得ることができ、広範囲の植物を一括制御(管理)できる。育成容器1同士を連結する他部材が必要なく、容易かつスムーズに直接的に連結できる。育成容器1同士の連結・分離を容易に行え、迅速に栽培範囲の増減や移設ができる。つまり、連結する個数を継ぎ足し自在とすると共に育成容器連結体9を所望の長さに調節できる。さらに、育成容器1が平面視で中心点Pに対して回転対称形状となって、別の育成容器1’と接続する際に、継手ユニット3の雌雄を対応させるように向きを検討する必要がなく、連結作業の時間が削減でき作業効率を向上できる。
【符号の説明】
【0041】
1 育成容器
3 継手ユニット
3A 雄接続継手
3B 雌接続継手
10 長手壁部
10A,10B 左右一対の側壁部
11 流路空間部
12 流入口
13 排出口
L 育成容器の長手方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の苗が植えられる平面視細長状の育成容器(1)を備え、
上記育成容器(1)の長手方向(L)に温調媒体を流す流路空間部(11)を、長手壁部(10)に形成し、
上記長手壁部(10)の長手方向一端側に温調媒体用の流入口(12)を設けると共に、長手方向他端側に温調媒体用の排出口(13)を設けたことを特徴とする植物の周年栽培育成装置。
【請求項2】
上記流入口(12)及び排出口(13)の一方に継手ユニット(3)の雄接続継手(3A)を設け、他方に雌接続継手(3B)を設け、複数の上記育成容器(1)(1)を、順次、上記長手方向(L)に直列状に連結自在とした請求項1記載の植物の周年栽培育成装置。
【請求項3】
植物の苗が植えられる平面視長方形状の育成容器(1)を備え、
上記育成容器(1)の長手方向(L)に温調媒体を流す流路空間部(11)(11)を、左右一対の側壁部(10A)(10B)の夫々に形成し、
一方の上記側壁部(10A)は、上記育成容器(1)の長手方向一端側に、一方の上記側壁部(10A)に形成された一方の上記流路空間部(11)に連通する継手ユニット(3)の雄接続継手(3A)が突設され、上記育成容器(1)の長手方向他端側に、一方の上記流路空間部(11)に連通する雌接続継手(3B)が突設され、
他方の上記側壁部(10B)は、上記育成容器(1)の長手方向一端側に、他方の上記側壁部(10B)に形成された他方の上記流路空間部(11)に連通する上記雌接続継手(3B)が突設され、上記育成容器(1)の長手方向他端側に、他方の上記流路空間部(11)に連通する雄接続継手(3A)が突設され、
複数の上記育成容器(1)(1’)を、順次、上記長手方向(L)に直列状に連結自在としたことを特徴とする植物の周年栽培育成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2011−115105(P2011−115105A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276761(P2009−276761)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(393027729)株式会社カンネツ (8)
【Fターム(参考)】