説明

植物性高分子澱粉による生分解性樹脂組成物およびその製造方法

【課題】 品質の安定した生分解性樹脂組成物ならびにその製造方法を提供する。
【解決手段】 生分解性天然樹脂成分(A)と脂肪族ポリエステル樹脂である生分解性合成樹脂成分(B)とが均質に溶融混練されたペレット状生分解性樹脂組成物において、前記生分解性天然樹脂成分(A)と生分解性合成樹脂成分(B)との質量比がA:B=20〜90:80〜10である生分解性樹脂組成物である。該生分解性樹脂組成物を製造するために、成分(B)および(A)それぞれの原材料供給手段1、2および1'、2'を備え、シリンダC、モーターMによって駆動される二軸スクリューS、ノズルNを主要素とする二軸押出機により溶融混練されて押し出されるストランドを冷却水槽3により冷却固化し水切りを行った後、切断装置(ペレタイザー)5によって切断してペレットとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インディカ米、トウモロコシ、小麦、ジャガイモなどの植物性高分子澱粉を利用することにより、安価で生分解性に優れ、かつ防虫効果ならびに抗菌性の付与された生分解性樹脂組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中、屋外、堆肥化装置内、水中などの高湿潤環境下にある期間放置することにより自然に分解される生分解性樹脂組成物は、環境にやさしいプラスチックとして期待されている。このような生分解性プラスチックによるボトル、箱、袋などの各種容器は、自然界に放置される間に微生物によって分解されることから環境破壊を防ぐ素材として注目を集めている。例えば、脂肪族ポリエステルは、比較的生分解性に優れている樹脂であることが知られている。この脂肪族ポリエステルの分解のメカニズムは、自然環境下において最初にエステル結合部分に加水分解が生じて比較的低分子量の物質となり、次いで微生物によりさらに低分子量物質に分解され、最終的には水と炭酸ガスに分解される。しかし、このような分解過程を経る生分解作用はかなりの長期間を要し、環境保全の分野において期待される生分解性としては不十分である。また、従来知られているポリ乳酸のような生分解性樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニール樹脂などの汎用樹脂に比較して高価であるという欠点があり、十分に普及するには至っていない。また、この種の生分解性樹脂では、ポリスチレンをはじめとする既存の合成樹脂において確立されているビーズ発泡成形用発泡ビーズ、すなわちブタンガスや二酸化炭素ガスのような発泡ガスを含浸させた発泡性ビーズ状球体を形成することは困難であった。
【0003】
以上の問題点を解決する方法として、特許文献1(特開2003−192928号公報)には、生分解性合成樹脂に成分(A)として澱粉、キチン、キトサン、アルギン酸、グルテン、コラーゲン等の高い生分解性を示す天然の高分子物質を、成分(B)である生分解性合成樹脂に添加することにより得られる生分解性樹脂組成物が開示され、さらにその製造方法が開示されている。しかし、このような製造方法ならびにこの方法によって得られる生分解性樹脂組成物は、澱粉等の天然物質の添加量に限界があり、限度以上の澱粉を合成樹脂中に均質に混練することが困難である欠点があった。その最大の理由は、成分(B)である合成樹脂の溶融温度は160℃前後、一方、成分(A)の天然樹脂である澱粉等の溶融温度が100℃前後、であるように両者の溶融温度差が大きいことに由来する。すなわち、澱粉等天然高分子樹脂の量が組成物の50質量%を超えた状態で、組成物を160℃前後に加熱すると、澱粉が分解し、得られる組成物は変色や、不所望な着色を生ずることがある上、得られる樹脂組成物の物性が極端に低下する。一方、澱粉等が分解しない温度では、合成樹脂成分が溶融せず、澱粉等と合成樹脂が均質に混合しない。
【特許文献1】特許2003−192928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、自然界の微生物の作用により自然に分解される生分解性樹脂組成物およびその製造方法を提供することであり、特にその原料としてインディカ米、トウモロコシ、小麦、ジャガイモなどの植物性高分子澱粉を利用することを主たる課題とする。さらに、本発明は、かかる生分解性樹脂組成物によるビーズ発泡成形に適する発泡性のペレット(ビーズ状球体)としての成形に適する生分解性樹脂組成物およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、生分解性天然樹脂成分(A)と脂肪族ポリエステル樹脂である生分解性合成樹脂成分(B)とが均質に溶融混練されたペレット状生分解性樹脂組成物において、前記生分解性天然樹脂成分(A)と生分解性合成樹脂成分(B)との質量比がA:B=20〜90:80〜10であることを特徴としている。
【0006】
この場合、前記生分解性天然樹脂成分(A)に対して、粒度400メッシュ(37μm)以下の天然無機化合物(A')を質量比20〜50%添加することを特徴とす。この天然無機化合物としては、シリカ(SiO2)および/または酸化チタン(TiO2)とすると好結果が得られ、さらに前記シリカ(SiO2)が、籾殻から抽出精製されたバイオマスシリカであり、前記酸化チタンが鉱物から採取された物質であると良好な結果が得られる。
【0007】
また、前記生分解性天然樹脂成分(A)が、東南アジア及び南方亜熱帯地方で生産される長粒種のインディカ米、ジャガイモの加工残渣、ドングリ、アマランサス、キャッサバ、タピオカ、の中から選ばれた1種ないし復数種の成分であることを特徴としており、特に前記インディカ米には、タイ、インドネシア、ベトナム、カンボジア、インド、ミャンマー、ボルネオ、バングラディシュ、スリランカ、フィリピン、台湾、中国等を原産地とするものが適している。
【0008】
更に、生分解性樹脂組成物を製造するに際して、前記生分解性合成樹脂成分(B)をその融点以上に加熱しながら混練押出機中において溶融混練する間に、この混練物中に前記生分解性天然樹脂成分(A)を両成分の質量比がA:B=20〜90:80〜10の範囲の比率となるように供給し、均質に混練後、ペレット状に造粒することを特徴としている。
【0009】
加えて、生分解性樹脂組成物を製造するに際して、前記生分解性合成樹脂成分(B)を主体として混練を行う間に、押出機のシリンダーの途中から前記生分解性天然樹脂成分(A)を供給して溶融および混練を行い、この混練物を押出機ノズルから連続的に押し出しながら水冷し、次いで切断および乾燥してペレット化することを特徴としている。
【0010】
また、前記生分解性樹脂組成物の製造質量に対し、ワサビ、ショウガ、唐辛子、ステビア、ニーム、イグサ、洋辛子、ヤシガラの微粉末(400から1000メッシュ)又はその抽出エキス、ピレトリン(除虫菊の花からの抽出油)、シオネール(ユーカリの葉からの抽出油)、シトロネールまたはグラニオール(共にゼラニュームの葉からの抽出油)の中から選ばれた1種ないし復数種を1/1000〜1/10000の割合で混入し、これらを混練することにより、前記生分解性天然樹脂成分(A)の原料であるインディカ米をはじめとする植物性高分子澱粉成分に害を及ぼす穀象虫その他害虫に対する防虫効果および/または防黴・抗菌作用を付与する生分解性樹脂組成物の製造方法を特徴としている。
【0011】
更に、前記ステップにおいて、鉱物であるゼオライト、ホヤ貝殻、ホタテ貝殻等の微粉末(400〜1000メッシュ)とし、該微粉末又はゼオライトから抽出した抗菌エキスを重量比で1/500〜1/5000となるように混入して混練することにより、抗菌性を付与することを特徴としている。
【0012】
前記生分解性天然樹脂成分(A)と脂肪族ポリエステル樹脂である前記生分解性合成樹脂成分(B)とが均質に溶融混練される発泡性樹脂ペレットの造粒に際して、前記生分解性天然樹脂成分(A)の組成成分を、インディカ米の微粉末、キャッサバの微粉末、ドングリの微粉末、アマランサスの微粉末の中から選択された1種ないし複数種の混合物とし、溶融混練過程において発泡剤が含浸されることを特徴とする。
【0013】
前記生分解性天然樹脂成分(A)と脂肪族ポリエステル樹脂である前記生分解性合成樹脂成分(B)とが均質に溶融混練される発泡性樹脂ペレットの造粒に際して、前記生分解性天然樹脂成分(A)に対して所定量の天然無機化合物(A')を添加し、そして前記生分解性天然樹脂成分(A)の組成成分を、インディカ米の微粉末、キャッサバの微粉末、ドングリの微粉末、アマランサスの微粉末の中から選択された1種ないし複数種の混合物とし、溶融混練過程において発泡剤が含浸されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる生分解性樹脂組成物によれば、自然界の地中や水中等に存在する微生物によって容易に分解される生分解性天然樹脂成分(A)とプラスチック本来の特質である靭性、柔軟性、気密性、透光性等を発揮する生分解性合成樹脂成分(B)とが均質となるように混練されることにより、優れた生分解性を発揮する生分解性樹脂組成物が得られ、ボトル状、箱状、袋状、トレイ(皿)状等の各種収納、包装容器類等成形品のための成形材料として好適かつ有用なものを提供できる。ここで提供される生分解性樹脂組成物は、天然樹脂成分として各種植物の澱粉類を構成成分としているが、これら成分に対する害虫や黴等の害を防止するために、同様に天然素材の害虫忌避成分や抗菌成分を添加している。これら天然素材の成分は人畜には害のないものとして従来より認められており、自然界に与える影響も極めて軽微で、地中・水中・大気中等への残留成分も問題にはならない。また、生分解性天然樹脂組成物成分(A)に対して適量の無機質化合物(A')、例えば、シリカ(SiO2)、酸化チタン(TiO2)等を添加することにより、生分解性樹脂組成物による成形品の強度、発色、耐熱等の物性を始め、耐薬品性、抗菌性等を大幅に改善することができ、従来の生分解性樹脂組成物による用途開発の可能性を拡張することができる。
【0015】
また、本発明にかかる生分解性樹脂組成物の製造法によれば、前述のような生分解性樹脂組成物を、ビーズ発泡成形に適する発泡性ペレット、すなわちブタンガスや二酸化炭素ガスなどの発泡剤を内包するペレット(ビーズ状球体)として形成することができ、各種緩衝材、パッキング材等の発泡成形体の製造に適するペレットを工業的規模において効率よく製造することが可能となる。本発明によって得られた生分解性樹脂組成物を使用し、射出成形、シート成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出成形、ビーズ発泡成形その他の良く知られた成形方法によりさまざまな用途に適する新しい樹脂製品を作り出すことができる。さらに、ラミネーション用、T−ダイキャストフィルム用などの用途にも適する生分解性樹脂組成物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施する際の好ましい実施態様を挙げて、さらに詳細に開示する。本発明において使用に適する生分解性天然樹脂成分(A)としては、インディカ種の米、小麦、大麦、トウモロコシ、ジャガイモの加工残滓、ドングリ等の澱粉、アマランサスの澱粉、キャッサバ、キャッサバの澱粉(タピオカ)等の植物性高分子澱粉が挙げられる。なお、上記インディカ種の米の原産地としては、タイ、インドネシア、ベトナム、ミャンマー、ラオス、ボルネオ、バングラディシュ、スリランカ、フィリピン、台湾、中国、アメリカ、中南米が知られている。
【0017】
米に含まれる澱粉は、アミロースとアミロペクチンとの2種類から成り立っているとされている。これらのうち、インディカ米は、日本産のジャポニカ米やイタリア等におけるジャワニカ米に比して澱粉中のアミロースの含有量が高くなっていることが知られている。このように、日本産のジャポニカ米、イタリア等を産地とするジャワニカ米は、インディカ米に比してアミロースが少なく(ジャポニカ米は18.1%、ジャワニカ米は19.6%)、アミロペクチンが多いため、澱粉の粘性が高くなり、生分解性合成樹脂成分(B)と混練し、植物性高分子澱粉による生分解性樹脂組成物を得た場合、その品質にバラツキが大きくなり易い問題がある。したがって、アミロースが多く(23〜26%)、そしてアミロペクチンが少ないインディカ米を、生分解性天然樹脂成分(A)の主原料として用い、生分解性合成樹脂成分(B)と混練することにより、製品加工に際して安定した品質を具有する生分解性樹脂組成物を得ることが可能になる。このように、含有澱粉の組成が異なるインディカ米の使用が、本発明にかかる生分解性樹脂成分を得る目的に合致するものと考えられる。また、上述のドングリやアマランサスの澱粉は高分子の澱粉でグルテンが非常に強い特徴があり、更に前記アマランサスやキャッサバなどは東南アジア熱帯地域においては年間2〜3回の収穫が可能であることから、資源の有効利用ならびに原料コストの低減に資する効果がある。
【0018】
前述の生分解性天然樹脂成分(A)に対しては、さらに天然の無機化合物(A')を重量比で25〜50%添加することにより、生分解性合成樹脂成分(B)との溶融混練度を改善することができ、均質で良好な成形体外観をえることができる。このような無機化合物としては、例えばシリカ(二酸化珪素:SiO2)や酸化チタン(二酸化チタン:TiO2)が適している。この場合のシリカとしては籾殻から抽出精製された、いわゆるバイオマスシリカが利用可能である。バイオマスシリカは純度が、99.8%でその粒度が微細(サブミクロン:1・1000mm)であり、生分解性天然樹脂成分(A)のみならず生分解性合成樹脂成分(B)との相性もよいため、溶融混練用素材として優れた生分解性樹脂組成物の添加物として適している。バイオマスシリカは、例えばバイオマス発電で利用された籾殻の廃棄物を原料としてカーボンと共に安価に得ることができる。なお、新たな籾殻を原料としてもバイオマスシリカを抽出精製することができる。このようなバイオマスシリカには、ナノメートル単位の微細孔が連続的な網目状に形成されている。また、非結晶質でけい肺症や毒性のおそれも無いことが確認されており、ポリオレフィン等衛生協議会(略称:ポリ衛協)の合成樹脂製食器容器包装等に関するポジティブリストにも登録済みである。したがって、生分解性樹脂組成物による製品が使用後に自然分解された後において土壌汚染、大気中への飛散などの懸念も無用である。
【0019】
もう一方の添加成分である二酸化チタン(単に酸化チタンと呼称されることも多い)は、光の照射を受けると光のエネルギーによって各種有機物や汚染物質を水と二酸化炭素に分解する、いわゆる光触媒としての機能を発揮することが知られている。二酸化チタンは単なる消臭効果のみならずレジオネラ菌、大腸菌、院内感染の原因菌とされるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バイコマイシン耐性腸球菌(VRE)などの各種菌類に対しても滅菌、抗菌の効果があることが報告されている。その一方で、二酸化チタンは古くから白色顔料、化粧品の原料、食品添加物等として多用されていることから明らかなように、人体にとっての安全性は確認されているものである。
【0020】
生分解性合成樹脂成分(B)としては、例えば、脂肪族ポリエステル樹脂であるポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸、ポリラクチド酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシブチレート・バリレート共重合体、アセチルセルロース、ポリビニルアルコールなどを挙げることができる。
【0021】
本発明は、上記生分解性天然樹脂成分(A)と生分解性合成樹脂成分(B)とを、樹脂成分(A)と樹脂成分(B)の合計を100質量%とした場合、両成分の質量比がA:B=20〜90:80〜10になるような割合で均質に溶融混錬した後、ペレット状に造粒したものである。ここでペレット状とは、径および長さ共に数mm程度、ほぼ小豆粒程度の大きさの円柱状、角柱状、球状その他の形状で、各種成形法に適する小粒状体をさす。このような形状は、各種成形工程における取扱い上の便宜、各種成形装置の円滑な作動のために適するものである。生分解性天然樹脂成分(A)が20質量%未満であると、得られる生分解性樹脂組成物のコストが十分に低下せず、また、優れた生分解性が得られない。一方、生分解性天然樹脂成分(A)が90質量%を超えると、得られるペレット状組成物から形成される成形品の強度その他の物性が不十分となるおそれがある。
【0022】
本発明によって得られるペレット状樹脂組成物は、上記(A)および(B)の2樹脂成分を必須成分とするが、その他、本発明の目的が達成される範囲において、前記以外の合成樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、染料または顔料等の着色剤、充填剤、安定剤、難燃剤、離型剤など、樹脂分野において通常使用されている各種添加剤を含むことができる。
【0023】
次に、添付図面に即して本発明の好適な実施例を説明する。図1を参照すると、生分解性天然樹脂成分(A)と生分解性合成樹脂成分(B)とを混練する前に、生分解性天然樹脂成分(A)を超微粉末に粉砕する。この微粉末化装置としては、古河機械金属株式会社製の「超微粉末製造機」(商品名:ドリームミル)が好適である。この超微粉末製造機によれば、生分解性天然樹脂成分(A)を3〜5ミクロン程度に微粉末化することが可能である。したがって、従来のように物性の低下を招くこともなく、均質な生分解性樹脂組成物を得ることが可能となる。なお、この装置に限定されるものではなく、同様の目的で使用されるその他の微粉末化装置を使用することも可能である。
【0024】
次に、好適な混練機である2軸押出機を用いて本発明の製造方法を説明する。2軸押出機は、モーターMによって駆動される2本のスクリューSと、これら2本のスクリューSを受容するための、横向き8字形断面の貫通開口を有し周囲にヒーター(図示していない)が装備されたシリンダーCと、シリンダーCの先端に取り付けられたノズルNとから構成される。シリンダーCの上流には、第1の原材料供給ホッパー1および定量供給装置としてのフィーダー2、さらにシリンダーCの下流側には第2の原料供給ホッパー1'およびフィーダー2'からなる2組の原材料供給装置が設けられる。なお、第2のフィーダー2'はサイドフィーダーとも呼ばれる。フィーダーとしては、スクリューフィーダー、テーブルフィーダー、容積形フィーダーなど各種形式のものが採用可能であるが、形状が小形で制御が容易であるスクリューフィーダーが好適に採用可能である。このような混練押出装置による生分解性樹脂組成物のペレット製造は、概略以下のように行われる。
【0025】
まず、ホッパー1に生分解性合成樹脂成分(B)が投入される。この生分解性合成樹脂成分(B)の融点以上、例えば、130〜180℃、好適には、160℃±5℃に加熱されているフィーダー2を経由して供給される生分解性合成樹脂成分(B)の規定量が、ヒーターによって加熱されたシリンダーCに供給され、スクリューSによって混練されながらシリンダーC内を右方向に移動せしめられる間に加熱されつつ溶融混錬される。
【0026】
この混練作業の途中で、シリンダーCの下流側に設置された第2のホッパー1'とフィーダー2'から規定量の生分解性天然樹脂成分(A)が、いわゆるサイドフィードにより供給される。この前記ホッパ1'に平均粒径が数μm程度となるように超微粉末化された生分解性天然樹脂成分(A)が投入され、生分解性天然樹脂成分(A)の融点以上、例えば、90〜120℃、好適には、100℃±5℃に加熱されているフィーダー2'を経由してシリンダーCに供給され、加熱溶融されている生分解性合成樹脂成分(B)と混合される。この混合物はスクリューSによって均質に混練されつつ強制的に右方向に移動せしめられ、シリンダーC先端に設けられた多数のノズルNからストランド(溶融樹脂による紐状体)として押し出される。なお、シリンダーCに対する第2のホッパー1'とフィーダー2'の設置位置は、十分な混練に重点を置く場合は上流側が適しており、被生産樹脂組成物の熱劣化防止を重視する場合ば下流側が適している。したがって、ここから定量供給される生分解性天然樹脂成分(A)の配合割合に応じて、熱劣化の影響を最小限に抑制しながら十分均質な混練状態が得られる最適な部位に調節すればよい。この場合、必要に応じて酸化チタン(TiO2)、シリカ(SiO2)等の天然無機化合物(A')を添加することができる。
【0027】
前記のように押し出された生分解性天然樹脂成分(A)(加えられた場合は、さらに無機化合物(A'))と生分解性合成樹脂成分(B)との混合物ストランドは、冷却水槽3を通過する間に冷却されて固化し、水切り装置4によって混合物ストランド周囲の水分が除去される。この時、前記した従来例(特開2003−192928)では、空冷によるホットカットが行われているが、本発明によれば、生分解性合成樹脂成分(B)が生分解性天然樹脂成分(A)を包みこんだ状態で固化し、安定した混合物ストランドが形成される。その後、水切り装置4を通過するに水切りされた混合物ストランドは、ペレタイザー5によって所望の長さに切断された後、選別機および圧送ブロワ6によって不純物が除去され、製品タンク7に貯蔵される。そして、最後に計量・袋詰め装置8により所定重量となるように計量をして袋詰めされる。
【0028】
本発明の特徴とするところは、微粉末化された生分解性天然樹脂成分(A)が生分解性合成樹脂成分(B)に対して良好に混合せしめられる結果、特性の安定した生分解性樹脂組成物のペレットが得られることである。また、生分解性天然樹脂成分(A)にインディカ米を使用しているので、ワサビ、ショウガ、唐辛子、ステビア、ニーム、イグサ、洋辛子、ヤシ殻の微粉末(400から1000メッシュ)又はそれらの抽出エキス、ピレトリン(除虫菊の花からの抽出油)、シオネール(ユーカリの葉からの抽出油)、シトロネールまたはグラニオール(共にゼラニュームの葉からの抽出油)の中から選ばれた1種または複数種を生分解性樹脂組成物の製造質量に対し、1/1000〜1/10000の割合で添加して混練することにより、高分子生分解性樹脂成分(A)の原料であるインディカ米その他植物性澱粉の原材料に含まれる可能性のある穀象虫その他の害虫防除に効果がある。ワサビ、ショウガ、唐辛子、ステビア等の微粉末化は、前述の超微粉末製造機によって実施可能である。また、除虫菊の花からのピレトリン、ユーカリの葉からのシオネール、ゼラニュームの葉からのシトロネールまたはグラニオール等の抽出は、圧搾、蒸留等の周知手段によって行われる。
【0029】
さらに、本発明では、前記した害虫防除のステップ段階で、請求項7記載の工程で抗菌性を与えるため、鉱物のゼオライト、ホヤ貝の貝殻、ホタテ貝の貝殻等の微粉末(400〜1000メッシュ)又はゼオライトから抽出した抗菌エキスを1/1000〜1/10000の割合で混入、混練し、樹脂組成物に抗菌性を付与したことを特徴としている。この微粉末化は前述したと同様の市販の超微粉末製造機によって行うことができる。
【0030】
なお、上述の生分解性樹脂組成物を発泡性ビーズにするには、ビーズ造粒の過程において、ブタンガス、二酸化炭素ガス等のような発泡剤の存在下において溶融混練しながら、造粒作業を行うことによって得られる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、各種成形品の原料として、例えば、射出成形、ブロー成形、T−ダイによる押出成形、インフレーション成形、押出成形、フィルム成形、シート成形等の原料として有用であり、さらに低湿度下にあってはプラスチック本来の機能を発揮する一方、所要環境下にあっては生分解性に優れた生分解性樹脂組成物ならびにその製造方法を提供することができる。また、本発明にかかる生分解性樹脂組成物は、一方の成分である生分解性天然樹脂成分(A)としてグルテンの強い植物性高分子澱粉を使用する結果、ブタンガス、二酸化炭素ガス等の発泡剤を含浸させた発泡ビーズを形成することが可能であるため、発泡ビーズ成形が可能となり、生分解性に優れたパッキング材や各種製品に対する緩衝材等を製造することができる。さらに、必要に応じて酸化チタン(TiO2)、シリカ(SiO2)等の天然無機化合物(A')を添加することにより、生分解性樹脂組成物の物性を向上せしめ、得られる成形品の強度、発色、耐熱、耐薬品性、抗菌性等を向上させることが可能であり、用途の拡大が期待される。このようにして得られる生分解性樹脂組成物による各種成形品は、石油化学技術を応用して製造された在来の合成樹脂製品と異なり、所定環境下、例えば地中や湿潤雰囲気下等において比較的短期間で分解されるため、各種容器をはじめとする幅広いプラスチック成形品の廃棄物に起因する環境破壊ないし環境汚染を防止しまたは大幅に低減することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の製造工程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
A 生分解性天然樹脂成分
A' 天然無機化合物
B 生分解性合成樹脂成分
M モーター
S スクリュー
C シリンダー
N ノズル
1、1' ホッパー
2、2' フィーダー
3 冷却水槽
4 水切り装置
5 ペレタイザー
6 選別機・圧送ブロワ
7 製品タンク
8 計量袋詰め装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性天然樹脂成分(A)と脂肪族ポリエステル樹脂である生分解性合成樹脂成分(B)とが均質に溶融混練された生分解性樹脂組成物において、
前記生分解性天然樹脂成分(A)と生分解性合成樹脂成分(B)との質量比がA:B=20〜90:80〜10であることを特徴とする生分解性樹脂組成物。
【請求項2】
前記生分解性天然樹脂成分(A)に対して粒度400メッシュ(37μm)以下の天然無機化合物(A')を質量比20〜50%添加したことを特徴とする、請求項1記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項3】
前記天然無機化合物(A')が、シリカ(SiO2)および/または酸化チタン(TiO2)であることを特徴とする、請求項2に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項4】
前記シリカ(SiO2)が、籾殻から抽出精製されたバイオマスシリカであり、前記酸化チタン(TiO2)が鉱物より採取されたものであることを特徴とする、請求項3に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項5】
前記生分解性天然樹脂成分(A)が、東南アジア及び南方亜熱帯地方で生産される長粒種のインディカ米、ジャガイモの加工残渣、ドングリ、アマランサス、キャッサバ、タピオカ等の植物性高分子澱粉の中から選ばれた1種ないし複数種の成分である、請求項1ないし4のいずれかに記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項6】
前記インディカ米が、タイ、インドネシア、ベトナム、カンボジア、インド、ミャンマー、ボルネオ、バングラディシュ、スリランカ、フィリピン、台湾、中国のいずれかで生産されたインディカ米である、請求項5記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項7】
生分解性合成樹脂成分(B)をその融点以上に加熱しながら混練押出機中において溶融混練する間に、この混練物中に生分解性天然樹脂成分(A)を両成分の質量比がA:B=20〜90:80〜10の範囲の比率となるように供給し、均質に混練後、ペレット状に造粒することを特徴とする生分解性樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記生分解性天然樹脂成分(A)に対して質量比20〜50%の無機化合物(A')を添加することを特徴とする、請求項7記載の生分解性樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
前記無機化合物(A')が、シリカ(SiO2)および/または酸化チタン(TiO2)であることを特徴とする、請求項8に記載の生分解性樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
前記生分解性合成樹脂成分(B)を主体として混練を行う間に、押出機のシリンダーの途中から前記生分解性天然樹脂成分(A)を供給して溶融および混練を行い、この混練物を押出機ノズルから連続的に押し出しながら冷却し、次いでペレット状に切断することを特徴とする、請求項7ないし9のいずれかに記載の生分解性樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
前記生分解性合成樹脂成分(B)を主体として混練を行う間に、押出機のシリンダーの途中から前記生分解性天然樹脂成分(A)ならびに前記無機化合物(A')を供給して溶融および混練を行い、この混練物を押出機ノズルから連続的に押し出しながら冷却し、次いでペレット状に切断することを特徴とする、請求項7ないし9のいずれかに記載の生分解性樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
前記ペレット状生分解性樹脂組成物の製造質量に対し、ワサビ、ショウガ、唐辛子、ステビア、ニーム、イグサ、洋辛子、ヤシガラの微粉末(400から1000メッシュ)又はその抽出エキス、ピレトリン(除虫菊の花からの抽出油)、シオネール(ユーカリの葉からの抽出油)、シトロネールまたはグラニオール(共にゼラニュームの葉からの抽出油)の中から選ばれた1種ないし複数種を1/1000〜1/10000の割合で混入し、これらを混練することにより、前記生分解性天然樹脂成分(A)の原料である植物性高分子澱粉成分に害を及ぼす穀象虫その他害虫に対する防虫効果および/または防黴・抗菌作用を付与することを特徴とする、請求項7ないし11のいずれかに記載の生分解性樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
鉱物であるゼオライト、ホヤ貝殻、ホタテ貝殻等を微粉末(400〜1000メッシュ)とし、該微粉末又はゼオライトから抽出した抗菌エキスを重量比で1/500〜1/5000となるように混入して混練することにより、抗菌作用を付与することを特徴とする、請求項12記載の生分解性樹脂組成物の製造方法。
【請求項14】
前記生分解性天然樹脂成分(A)と脂肪族ポリエステル樹脂である前記生分解性合成樹脂成分(B)とが均質に溶融混練される発泡性樹脂ペレットの造粒に際して、前記生分解性天然樹脂成分(A)の組成成分を、インディカ米の微粉末、キャッサバの微粉末、ドングリの微粉末、アマランサスの微粉末の中から選択された1種ないし複数種の混合物とし、溶融混練過程において発泡剤が含浸されることを特徴とする、請求項7ないし13のいずれかに記載のペレット状生分解性樹脂組成物の製造方法。
【請求項15】
前記生分解性天然樹脂成分(A)と脂肪族ポリエステル樹脂である前記生分解性合成樹脂成分(B)とが均質に溶融混練される発泡性樹脂ペレットの造粒に際して、前記生分解性天然樹脂成分(A)に対して所定量の天然無機化合物(A')を添加し、そして前記生分解性天然樹脂成分(A)の組成成分を、インディカ米の微粉末、キャッサバの微粉末、ドングリの微粉末、アマランサスの微粉末の中から選択された1種ないし複数種の混合物とし、溶融混練過程において発泡剤が含浸されることを特徴とする、請求項7ないし13のいずれかに記載のペレット状生分解性樹脂組成物の製造方法。




【図1】
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【公開番号】特開2006−63301(P2006−63301A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−374442(P2004−374442)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(503090795)
【出願人】(503090810)松原商事株式会社 (1)
【Fターム(参考)】