説明

植物成長抑制組成物並びにそれからなるシート及び充填材

【課題】目的とする範囲において効果的に植物の成長を抑制することができ、しかも周辺環境への悪影響の少ない植物成長抑制組成物を提供すること。
【解決手段】耐水性ベースポリマー、遮光剤及び水溶性アルミニウム塩を含有する植物成長抑制組成物とする。そして、当該植物成長抑制組成物からなる層を少なくとも1層有し、地面の上に配置される植物成長抑制シートを地面の上に敷設する。また、当該植物成長抑制組成物からなる充填材で、地面を覆う部材の間隙を封止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性アルミニウム塩を含有する植物成長抑制組成物に関する。また、そのような植物成長抑制組成物からなる層を有する植物成長抑制シートに関する。さらに、そのような植物成長抑制組成物からなる充填材に関する。
【背景技術】
【0002】
道路の法面、路肩あるいは中央分離帯などの雑草は、景観を悪化させるのみならず、道路の幅員を狭めたり、運転者の視界を悪化させたりして交通の安全を損なうおそれがあるため、除草作業が行われる。また、火災発生のおそれや、害虫の発生など、近隣に対して悪影響を与えるおそれもあり、その点からも除草作業は重要である。
【0003】
このような除草作業の具体的方法としては、一般的には、人手による草刈りや除草剤の散布が行われている。しかしながら、草刈りは重労働であるため、近年の人手不足や作業者の高齢化等によって、作業員の確保が困難であるという問題を有している。また、道路の中央分離帯などの草刈りの作業には危険を伴うため、丁寧な除草を行うことが容易ではない。さらに、除草剤の散布については、その安全性等の問題から使用範囲が限られているのが現状である。
【0004】
以上のような問題を解決するために、ソイルカバー又はマルチング材といわれるマットやシートなどを地表面に敷いて日光を遮断することにより、雑草の成長を抑制する方法が知られている。
【0005】
このようなマルチング材としては、例えば、耐水性と遮光性を有する合成樹脂シートやゴムシートが用いられている(例えば、特許文献1、2)。しかしながら、地表に到達する日光を完全に遮断することは困難であり、漏れてくる光によって雑草が発生することが避けられなかった。
【0006】
特許文献3には、植物繊維などを主原料とする基材に対して、水溶性のアルミニウム塩又はその水溶液が付与されているマルチング材が記載されている。水溶性のアルミニウム塩は植物の種子の発芽を抑制することが知られており、その効果を利用したものである。特許文献3記載のマルチング材では、マルチング材の上に飛来した種子の発芽を効果的に抑制できるとされている。
【0007】
また、土壌に含まれるアルミニウムイオンは、植物の根の生育を抑制することが知られている。しかしながら、特許文献3記載のマルチング材においてアルミニウム塩を用いるのは、マルチング材の上に飛来した種子の発芽を抑制するためであって、マルチング材の下の地面における雑草の成長を抑制するためではない。当該マルチング材は、アルミニウム塩を植物繊維の表面などに付着させただけのものなので、雨水などによるアルミニウムイオンの流失が避けられない。その結果、マルチング材の下の土壌にもアルミニウムイオンが供給されることになるが、雨水によって容易に流されてしまう。
【0008】
例えば、道路の路肩やその近傍の法面における雑草の成長は好ましくないが、法面全体としてみれば、斜面の土壌の流失防止のためには植物の生育は欠かせない。したがって、多量のアルミニウムイオンが雨水とともに周辺の土壌中に浸透するのは必ずしも好ましいことではない。また、雑草の根は比較的地面に近い位置にあり、樹木等の植栽物の根は比較的深い位置にあるので、地面に近い部分にだけアルミニウムイオンを供給できることが好ましい。しかしながら、特許文献3に記載されているようなマルチング材では、マルチング材を敷設した直下の土壌に供給されたアルミニウムイオンが、雨水とともに容易に流出し、土壌中に浸透することが避けられず、マルチング材の下の地面での雑草防止効果は不十分になるし、その一方で地表から深い位置の土壌や周辺の土壌に対して悪影響を与えるおそれがある。
【0009】
【特許文献1】特開2006−177122号公報
【特許文献2】実開平7−5375号公報
【特許文献3】特開2003−192512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、目的とする範囲において効果的に植物の成長を抑制することができ、しかも周辺環境への悪影響の少ない植物成長抑制組成物を提供することを目的とするものである。また、そのような植物成長抑制組成物を用いた植物成長抑制シート及び充填材を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、耐水性ベースポリマー、遮光剤及び水溶性アルミニウム塩を含有する植物成長抑制組成物を提供することによって解決される。このとき、水と接触することによって組成物中の水溶性アルミニウム塩が水中に溶出することが好ましい。耐水性ベースポリマー100重量部に対して、水溶性アルミニウム塩を10〜600重量部含有することも好ましい。また、耐水性ベースポリマーの50重量%以上がゴムからなることも好ましい。
【0012】
好適な実施態様は、前記植物成長抑制組成物からなる層を少なくとも1層有し、地面の上に配置される植物成長抑制シートである。このとき、地面側に前記植物成長抑制組成物からなる層が配置され、大気側に耐水性ベースポリマー及び遮光剤を含み水溶性アルミニウム塩を含まない組成物からなる層が配置された多層構造体であることが好ましい。また、さらに少なくとも1層の補強層を有することも好ましい。
【0013】
他の好適な実施態様は、前記植物成長抑制組成物からなり、地面を覆う部材の間隙を封止するための充填材である。このとき、前記間隙に挿入される紐状の成形品であることが好ましい。また、前記間隙に注入される不定形物であることも好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の植物成長抑制組成物は、目的とする範囲において効果的に植物の成長を抑制することができ、しかも周辺環境への悪影響が少ない。したがって、道路の法面、路肩あるいは中央分離帯など、様々な場所の雑草の生育を抑制することができる。そのような植物成長抑制組成物は、植物成長抑制シート及び充填材として好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の植物成長抑制組成物は、耐水性ベースポリマー、遮光剤及び水溶性アルミニウム塩を含有するものである。
【0016】
本発明で用いられる耐水性ベースポリマーは、ベースポリマー単独でシートにしたときに水を透過させないポリマーであればよく、特に限定されない。水溶性ポリマー、水膨潤性ポリマー、水崩壊性ポリマーなどは本発明に用いることができない。具体的には、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニルなどの樹脂や、天然ゴム(イソプレンゴム)、ブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどのゴムを用いることができる。
【0017】
樹脂としては、コストや耐水性の面からポリオレフィンが好ましい。ポリオレフィンとしては、耐候性や柔軟性の面からポリエチレンやエチレン−酢酸ビニル共重合体などのエチレン系共重合体が好適に用いられる。
【0018】
また、地面の凹凸にうまく沿わせるためには、ゴムであることが好ましい。このとき、耐水性ベースポリマーの50重量%以上、より好適には70重量%以上がゴムからなることが好ましい。中でも、耐候性、耐熱性、柔軟性、コストなどの点からはブチルゴム(イソブチレンとイソプレンの共重合体)が好適に用いられる。反発弾性が小さく、地面の凹凸に沿わせやすく、コストも安いことから、非架橋のゴムであることが好ましい。
【0019】
また資源保護の観点やコストの面からは、再生ゴムを用いることが好ましい。再生ゴムは、多くの場合既にカーボンブラックやプロセスオイルなどを含んでいるので、それらを除いた重量が耐水性ベースポリマーの重量となる。なかでも、コスト、性能、資源保護の観点から特に好適に用いられるのが、再生ブチルゴムである。再生ブチルゴムは空気透過性が低く、水密性が高く、耐候性もよいことから、建築屋上屋根の防水材として長年使用されていて、屋外の長期使用に耐えうる素材である。しかも、再生ゴムは、通常既にカーボンブラックを含んでおり、特に遮光剤を別途添加しなくても紫外線及び可視光線の吸収性が良好である。植物の成長を妨げるためには水の浸入と光の透過を防ぐことが重要であるから、再生ブチルゴムは本発明の耐水性ベースポリマーとして、特に好適に用いられるものである。しかも環境に優しいリサイクル品であり、安価である。
【0020】
ゴムに対して少量のポリオレフィンを配合することによって、押出成形性を良好にすることができる。したがって、肉薄のシートを成形する場合などにはベースポリマー全体に対して1〜30重量%のポリオレフィンを配合することが好ましい。また、複数のゴムを併用しても構わない。
【0021】
本発明で用いられる遮光剤は、組成物中に含有されて植物の生育に必要な光を遮断できるものであればよい。用途に応じて様々な色の顔料を用いることができるが、カーボンブラックがとくに好適である。カーボンブラックはゴムの物性向上に寄与する上に、黒色であるために日射によって熱を吸収しやすく、後に説明するように日中に地面が温められやすいので好都合である。遮光剤の含有量は、植物の生育に必要な光を十分に遮断できるだけの量であればよい。カーボンブラックであれば耐水性ベースポリマー100重量部に対して、5〜80重量部程度である。
【0022】
本発明で用いられる水溶性アルミニウム塩は、特に限定されず、水に可溶の塩であればよい。ここで、水への溶解度は、20℃の水に対して0.1g/100g以上であることが好ましく、1g/100g以上であることがより好ましい。塩化アルミニウムなどの塩酸塩は揮発性の酸を発生することがあるため、好ましくない場合がある。また、硝酸塩、リン酸塩、有機酸塩などは、周辺の植物生育環境に悪影響を与えることがあるため、好ましくない場合がある。したがって、そのような問題を有さない硫酸塩が好適に用いられる。アルミニウムの硫酸塩としては、硫酸アルミニウム(無水物の水に対する溶解度が25℃で38.6g/100g)、硫酸アルミニウムカリウム(カリウムミョウバン:無水物の水に対する溶解度が0℃で2.95g/100g、30℃で8.35g/100g)、硫酸アルミニウムアンモニウム(アンモニウムミョウバン:12水塩の20℃の水に溶解度が6.6g/100g)が好適なものとして例示される。中でも、硫酸アルミニウムカリウムは食用でもあり、土壌への影響も少ないので特に好ましい。
【0023】
水溶性アルミニウム塩の含有量は、耐水性ベースポリマー100重量部に対して10〜600重量部であることが好ましい。水溶性アルミニウム塩の含有量が10重量部未満である場合、植物成長抑制組成物から水中に抽出される水溶性アルミニウム塩の量が少なくなってしまう。また、水溶性アルミニウム塩の隣接する粒子同士が全く接触していなければ、組成物中の最表面の水溶性アルミニウム塩しか水に溶解しにくくなるので、水溶性アルミニウム塩の供給が十分でなくなる。組成物中において、水溶性アルミニウム塩の粒子同士が相互に接触していれば、粒子が溶解することによって水の通り道ができるので、内部の水溶性アルミニウム塩も溶解させることができ、結果として多くの水溶性アルミニウム塩を抽出することができる。水溶性アルミニウム塩の含有量は、より好適には20重量部以上であり、さらに好適には40重量部以上である。一方、水溶性アルミニウム塩の含有量が600重量部を超えると、成形が困難になるとともに、組成物自体の強度も低下するおそれがある。水溶性アルミニウム塩の含有量は、より好適には300重量部以下である。
【0024】
また、水溶性アルミニウム塩に加えて、ケイ酸アルミニウム、特にカオリナイトを配合することも好ましい。ケイ酸アルミニウムは中性の水には不溶であるけれども、酸性の水にはアルミニウムイオンを発生して溶解するものである。例えば、アルミニウムの硫酸塩は一般に酸性を呈するので、両者を併用することでカオリナイト由来のアルミニウムイオンを発生させることができる。水に溶解しない鉱物から少しずつアルミニウムイオンを抽出することができるので、徐々にアルミニウムイオンを供給することが可能となり、長期間の植物成長抑制効果が期待できる。また、ケイ酸アルミニウム塩に加えて、水溶性アルミニウム塩以外の酸性化合物をさらに配合することもできる。ケイ酸アルミニウムの好適な配合量は、水溶性アルミニウム塩に対して重量比で0.05〜4倍である。
【0025】
その他、樹脂やゴムに配合される各種の添加剤を配合することもできる。例えば、無機及び有機のフィラー、可塑剤、プロセスオイル(軟化剤)、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、加工助剤などを目的に応じて適宜配合することができる。
【0026】
以上のような処方で配合される植物成長抑制組成物の製造方法は特に限定されず、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、押出機などを用いる公知の混練方法を採用することができる。混練された組成物は必要に応じて圧延成形または押出成形される。本発明の好適な実施態様は、シート及び充填材である。シートは通常カレンダー圧延によって成形される。また、充填材は、紐状の成形品や不定形物として使用される。紐状の成形品の場合、通常押出成形によって成形される。
【0027】
まず、植物成長抑制シートについて説明する。このシートは、植物成長抑制組成物からなる層を少なくとも1層有し、地面の上に配置されるものである。本発明の植物成長抑制シートは遮光剤を含有するものなので、植物の生育に必要な光線を遮断して植物の成長を抑制することができる。また、本発明の植物成長抑制シートは、耐水性ベースポリマーを含むものなので、雨水がシートを透過しない。したがって、降雨時に多量の雨水が直接シートの下側の地表面上に流れ込むのを抑制することができるし、水蒸気が透過することも容易ではない。
【0028】
本発明の植物成長抑制シートで地面を覆った場合、日中はシートが日射によって加熱されて大気温よりも高温になり、地表面もそれによって暖められる。そして、夜中に大気温が低下しても、地表面の温度及び地表面とシートの間の空間の温度はそれよりは高温に保たれる。したがって、暖かい地表面から蒸発する水蒸気が冷たいシート下面で凝縮する。すなわち、温度差によってシートの下面に結露が生じることになるのである。
【0029】
植物成長抑制シートの下面に発生した結露は、シート中の水溶性アルミニウム塩を抽出して溶解させる。そして、結露が地面に滴下することによって地表面にアルミニウムイオンが供給されることになる。少量の水に溶け込んだアルミニウムイオンが供給されるので、主として地表面付近に対してのみアルミニウムイオンが供給され、土壌の深い部分や、シートの外側には移動しにくい。また、耐水性のベースポリマー中に分散している水溶性アルミニウム塩の結晶を少量の水で溶解させるので、一度に大量に抽出されるのではなく、徐々にアルミニウムイオンを供給することが可能である。しかも、シートは非透水性なので、地表面付近に存在するアルミニウムイオンが雨水によって流されにくく、シートの下側の地表面付近の土壌が、長期間にわたってアルミニウムイオンを保持することが可能である。
【0030】
これによって、シートの周辺の土壌にアルミニウム塩が流出して周辺の植生に悪影響を与えることを抑制することができる。また、雑草の根は比較的地面に近い位置にあり、樹木等の植栽物の根は比較的深い位置にあるので、雑草に対してだけ成長の抑制効果を発揮し、植栽物の成長を妨げないようにすることができる。すなわち、本発明の植物成長抑制シートは、シートの下側の雑草に対して選択的にアルミニウムイオンによる成長抑制効果を発揮できるものである。
【0031】
シートの構成は、前記植物成長抑制組成物のみからなる単層のシートであっても構わないけれども、多層構造にすることが好ましい。中でも好適な実施態様は、地面側に前記植物成長抑制組成物からなる層が配置され、大気側に耐水性ベースポリマー及び遮光剤を含み水溶性アルミニウム塩を含まない組成物からなる層が配置された多層構造体である。地面側に植物成長抑制組成物層を配置して、アルミニウムイオンが抽出されるようにする一方で、大気側の層には水溶性アルミニウム塩を含有させない。これによって、大気側で水溶性アルミニウム塩が抽出されることがなく、外観が悪化することを防ぐことができるし、耐摩耗性や強度の低下を防ぐこともできる。
【0032】
また、シートが補強材を含むことも好ましい。これによって、薄くても強度の高い植物成長抑制シートとすることができる。特に、金具で固定する部分などでの強度の確保が容易となる。補強材は、織布、編地、不織布などの布帛などを用いることができ、シートの大気側あるいは地面側に貼り付けても構わないが、好適には、中間層として用いる。したがって、地面側に前記植物成長抑制組成物からなる層が配置され、大気側に耐水性ベースポリマー及び遮光剤を含み水溶性アルミニウム塩を含まない組成物からなる層が配置され、かつそれらの層の中間に補強材層を有する層構成が、特に好適である。
【0033】
本発明の植物成長抑制シートの厚みは特に限定されないが、全体厚みとして0.1〜5mm程度である。シート厚みが0.1mm未満では、シート全体の強度が不十分になるおそれがあるとともに、アルミニウムイオンの供給量も不足するおそれがある。シート厚みは、より好適には0.3mm以上であり、さらに好適には0.6mm以上である。一方、シート厚みが5mmを超えると、コストが高くなる上に、使用後の廃棄物の量も増大してしまう。シート厚みは、より好適には3mm以下であり、さらに好適には2mm以下である。シートの形状は特に限定されないが、0.5〜2m程度の幅の長尺品が好ましく、ロール形態で輸送することができる。
【0034】
また、植物成長抑制シートの大気側の表面に凹凸を形成することも好ましい。例えば、本発明の植物成長抑制シートを道路の路肩や中央分離帯に使用する場合、表面が平滑である場合には、太陽光が反射して運転者の目に入るおそれがあるので、表面に凹凸を形成して光を散乱させることが好ましい。シートの表面に凹凸を形成する方法は特に限定されず、エンボスロールなどを用いて表面にエンボスを形成してもよいし、不織布など、凹凸のある素材をラミネートしても構わない。
【0035】
以上説明した植物成長抑制シートは、雑草を成長させたくない地面の上に敷設される。道路や鉄道の路肩、中央分離帯、歩道、公園など、様々な場所で使用することができる。使用に際しては、ステープルや釘など、シートを貫通する留め具を使って地面に固定することが多い。この場合、留め具との隙間から光が漏れやすいので、本発明の植物成長抑制シートを用いる利益が大きい。ステープルや釘などの止め具を、遮光性を有するシートを貼り付けることによって覆ってもよい。また、シート同士のつなぎ目に対して、遮光性シートを貼り付けて覆ってもよい。また、後述する充填材を詰めてもよい。
【0036】
以上、植物成長抑制シートについて説明したが、本発明の植物成長抑制組成物の他の好適な実施態様は充填材である。すなわち、本発明の充填材は、上記植物成長抑制組成物からなり、地面を覆う部材の間隙を封止するためのものである。ここで、土壌を覆う部材とは、代表的には、舗装、縁石、ブロック、レンガ、タイル、木製板、金属板などの土壌を覆う部材のことをいい、ガードレール、交通標識、信号機、街灯、電柱、建築物、塀、擁壁などのように地面の一部を占拠して設置される構造物も含む。これらの部材の間にできた間隙に対して、本発明の植物成長抑制組成物を充填し、間隙から雑草が生えてくるのを抑制する。
【0037】
植物の成長抑制効果を奏するメカニズムについては、概ね前記シートの場合と同様である。地面を覆う部材の間隙を封止することで、その下の内部空間から揮発する水蒸気が夜間に充填材下面で凝縮し、水溶性アルミニウム塩が抽出されると考えられる。
【0038】
本発明の充填材の好適な実施態様の一つは、地面を覆う部材の間隙に挿入される紐状の成形品である。この場合、紐状の成形品を部材の間隙に挿入し、加圧して変形させて部材の間隙を密封することができる。したがって、植物成長抑制組成物は塑性変形が可能であることが好ましく、非架橋のゴムであることが特に好ましい。そして、プロセスオイルなどを比較的多量に配合して塑性変形を容易にすることが好ましい。
【0039】
また、本発明の充填材の好適な実施態様の他の一つは、地面を覆う部材の間隙に注入される不定形物である。この場合には、植物成長抑制組成物を特に成形せず、アプリケーターなどを用いて部材の間隙に注入し、部材の間隙を密封することが好ましい。いわゆる、コーキング材として使用されるものである。したがって、植物成長抑制組成物は流動が可能であることが好ましく、非架橋のゴムであることが特に好ましい。そして、プロセスオイルなどを多量に配合して流動を可能にすることが好ましい。このとき、粘着付与剤、チクソ剤、溶媒などを配合することも好ましい。
【0040】
上記紐状の成形体と不定形物とは、間隙の状況によって適宜使い分けられる。一般に間隙が比較的狭くて浅いとき、具体的には幅10mm以下で深さ20mm程度までのときであれば、不定形物が使用できる。間隙が広い場合や深い場合には、紐状の成形体が好適に使用される。紐状の成形体と不定形物の両者を併用することも可能である。また、間隙が深い場合には、他の部材を下に敷いてから充填することが好ましい。
【実施例】
【0041】
以下、実施例によって本発明をさらに説明する。
【0042】
実施例1
下記配合処方1の原料をバンバリーミキサーで混練してからカレンダー圧延成形して、厚さ0.5mmの植物成長抑制組成物からなるシートAを得た。また、下記配合処方2の原料を用いて同様にして、厚さ0.5mmのシートBを得た。目付け40g/mのポリエステル製不織布を中間に介して、前記シートAとシートBを積層して、厚さ1.2mm、幅1mの植物成長抑制シートを得た。ここで用いた再生ブチルゴムは、耐水性ベースポリマーを約50重量%、カーボンブラックを約30重量%、プロセスオイルを約11重量%含むものである。
【0043】
・配合処方1
再生ブチルゴム(早川ゴム株式会社製):170重量部
低密度ポリエチレン(住友化学株式会社製「エクセレンGMH」):15重量部
ステアリン酸:2重量部
プロセスオイル(出光興産株式会社製「ダイアナプロセスオイルNS−24」):2重量部
加工助剤(川口化学工業株式会社製「エクストンK−1」):3重量部
カリウムミョウバン(無水塩):200重量部
【0044】
・配合処方2
再生ブチルゴム(早川ゴム株式会社製):170重量部
低密度ポリエチレン(住友化学株式会社製「エクセレンGMH」):15重量部
ステアリン酸:2重量部
プロセスオイル(出光興産株式会社製「ダイアナプロセスオイルNS−24」):2重量部
加工助剤(川口化学工業株式会社製「エクストンK−1」):3重量部
軽質炭酸カルシウム(竹原化学工業株式会社製「赤玉」):200重量部
【0045】
こうして得られた植物成長抑制シートを1m×2mの大きさに切り出し、生育しているメヒシバの上に、植物成長抑制組成物からなる層が地面に対向する向きに敷設し、1ヶ月後に生育状況を調べた。その結果、枯れ具合が激しかった。
【0046】
実施例2
下記配合処方3の原料を用い、実施例1と同様にして、厚さ0.5mmの植物成長抑制組成物からなるシートCを得た。目付け40g/mのポリエステル製不織布を中間に介して、前記シートCと、実施例1で得たシートBを積層して、厚さ1.2mm、幅1mの植物成長抑制シートを得た。
【0047】
・配合処方3
再生ブチルゴム(早川ゴム株式会社製):170重量部
低密度ポリエチレン(住友化学株式会社製「エクセレンGMH」):15重量部
ステアリン酸:2重量部
プロセスオイル(出光興産株式会社製「ダイアナプロセスオイルNS−24」):2重量部
加工助剤(川口化学工業株式会社製「エクストンK−1」):3重量部
カリウムミョウバン(無水塩):100重量部
ケイ酸アルミニウム(竹原化学工業株式会社製焼成カオリナイト「グロマックスLL」):100重量部
【0048】
こうして得られた植物成長抑制シートを1m×2mの大きさに切り出し、生育しているメヒシバの上に、植物成長抑制組成物からなる層が地面に対向する向きに敷設し、1ヶ月後に生育状況を調べた。その結果、枯れ具合が激しかった。
【0049】
比較例1
目付け40g/mのポリエステル製不織布を中間に介して、実施例1で得た2枚のシートBを積層して、厚さ1.2mm、幅1mの植物成長抑制シートを得た。こうして得られた植物成長抑制シートを1m×2mの大きさに切り出し、生育しているメヒシバの上に敷設し、1ヶ月後に生育状況を調べた。その結果、メヒシバは黄変して弱っていた。
【0050】
実施例3
下記配合処方4の原料を加圧ニーダーで混練してから押出成形して、厚さ10mm、幅20mmの植物成長抑制組成物からなる紐状の成形体を得た。得られた成形体を舗装と縁石との幅約20mmの間隙に押し込んで加圧することによって当該間隙を封止した。
【0051】
・配合処方4
再生ブチルゴム(早川ゴム株式会社製):170重量部
EPDMゴム(三井化学株式会社製「EPT−1070」):15重量部
ステアリン酸:2重量部
プロセスオイル(出光興産株式会社製「ダイアナプロセスオイルPS−32」):30重量部
カリウムミョウバン(無水塩):170重量部
シリカ(日本シリカ株式会社製「ニップシールVN3」):30重量部
【0052】
実施例4
下記配合処方5の原料をオープンニーダーで混練して、植物成長抑制組成物を得た。得られた組成物を、コーキングガンを用いて、縁石と縁石との幅10mmの間隙に注入することによって当該間隙を封止した。
【0053】
・配合処方5
再生ブチルゴム(早川ゴム株式会社製):170重量部
EPDMゴム(三井化学株式会社製「EPT−1070」):15重量部
ステアリン酸:2重量部
プロセスオイル(出光興産株式会社製「ダイアナプロセスオイルPS−32」):120重量部
カリウムミョウバン(無水塩):160重量部
シリカ(日本シリカ株式会社製「ニップシールVN3」):10重量部
軽質炭酸カルシウム(竹原化学工業株式会社製「赤玉」):140重量部
タルク(竹原化学工業株式会社製「タルクSW」):80重量部
粘着付与剤(ヤスハラケミカル株式会社製「YSレジンPX−800」):300重量部
チクソ剤(株式会社ノザワ製「ニューテーリング」):480重量部
トルエン:300重量部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐水性ベースポリマー、遮光剤及び水溶性アルミニウム塩を含有する植物成長抑制組成物。
【請求項2】
水と接触することによって組成物中の水溶性アルミニウム塩が水中に溶出する請求項1記載の植物成長抑制組成物。
【請求項3】
耐水性ベースポリマー100重量部に対して、水溶性アルミニウム塩を10〜600重量部含有する請求項1又は2記載の植物成長抑制組成物。
【請求項4】
耐水性ベースポリマーの50重量%以上がゴムからなる請求項1〜3のいずれか記載の植物成長抑制組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載の植物成長抑制組成物からなる層を少なくとも1層有し、地面の上に配置される植物成長抑制シート。
【請求項6】
地面側に前記植物成長抑制組成物からなる層が配置され、大気側に耐水性ベースポリマー及び遮光剤を含み水溶性アルミニウム塩を含まない組成物からなる層が配置された多層構造体である請求項5記載の植物成長抑制シート。
【請求項7】
さらに少なくとも1層の補強層を有する請求項5又は6記載の植物成長抑制シート。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか記載の植物成長抑制組成物からなり、地面を覆う部材の間隙を封止するための充填材。
【請求項9】
前記間隙に挿入される紐状の成形品である請求項8記載の充填材。
【請求項10】
前記間隙に注入される不定形物である請求項8記載の充填材。

【公開番号】特開2009−196910(P2009−196910A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38137(P2008−38137)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(501497264)西日本高速道路エンジニアリング四国株式会社 (17)
【出願人】(591000506)早川ゴム株式会社 (110)
【Fターム(参考)】