説明

植物成長補助剤

【課題】植物に対して優れた成長促進効果を有する植物成長補助剤を提供する。
【解決手段】ニコチン酸アミド、下記式で示される二価三価鉄塩、及び動物の尿その他の液状肥料を含有することを特徴とする。本発明の植物成長補助剤は、前記各成分を所定の濃度及び割合で含む水溶液の形態として植物に適用される。
Fe+2 Fe+3 Cl2m+3n(式中m及びnは正の整数を示す)
【効果】植物成長補助剤中に含まれている各成分のそれぞれが有する作用と相乗効果により植物の成長促進に有効な作用を発揮し、また、前記補助剤中に含まれている前記二価三価鉄塩の有する作用によりニコチン酸アミド及び動物の尿その他の液状肥料の植物成長効果を増強させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の成長を促進する植物成長補助剤に関する。さらに特定的には、ニコチン酸アミドを有効成分として含む植物成長補助剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年においては健康食品ブーム等も反映し、人体に対して安全性の高い植物成長補助剤の開発が進められている。その一例としてビタミン類を利用する試みがなされている。植物に対するビタミン類の添加効果については、例えばニコチン酸アミド、塩化コリン、ビタミンK塩等が植物成長調節剤として報告されている。また、特開平6−340506号公報にはニコチンアミドを伴うメナジオン亜硫酸水素塩付加物を含んでなる植物の成長の刺激及び制御のための組成物が開示されている(特許文献1参照)。前記組成物を使用することにより、植物の成長を刺激し、かつ、制御する効果を示すことが報告されている。
さらに特開平8−143406号公報では、グリチルリチンとニコチン酸アミドその他の特定のビタミンを有効成分として含有する植物成長促進剤が提案されている(特許文献2参照)。そして、この植物成長促進剤を植物に対して使用することにより、これまで公知となっている種々の漢方生薬あるいはビタミン類を使用する場合よりも、さらに優れた植物成長効果を示すことが報告されている。
【0003】
上記したように、ニコチン酸アミドは植物成長促進効果を奏する成分を有する物質であることは明らかにされている。
【0004】
そこで、本発明者は上記の事実に着目し、ニコチン酸アミドと二価三価鉄塩を有効成分とする植物成長補助剤を開発した(特許文献3参照)。この植物成長補助剤を植物に対して使用することにより、植物の成長促進に有効な作用を発揮することが判明した。
【特許文献1】特開平6−340306号公報
【特許文献2】特開平8−143406号公報
【特許文献3】特開2004−217611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ニコチン酸アミドを有効成分として利用し、上述した発明、特に特許文献3に記載の発明の特性を活用し、植物の成長促進効果をさらに向上し得る性能を有する植物成長補助剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために研究、実験を続けた結果、その目的を達成したので、ここにその発明を提供する。
【0007】
即ち、本発明のうち1つの発明(第1の発明)は、ニコチン酸アミド、二価三価鉄塩、及び動物の尿その他の液状肥料を含有してなり、前記二価三価鉄塩は、式、Fe+2 Fe+3 Cl2m+3n(式中m及びnは正の整数を示す)で示される化合物であることを特徴とする。なお、この明細書において「成長」とは「生長」の意味も含む広い概念として用いられている。
【0008】
前記ニコチン酸アミドはビタミンB複合体の一つで、このニコチン酸アミドは液体化(ニコチン酸アミド溶液)又は粉末化した形態で市販されている。本発明においては、上記形態の市販のニコチン酸アミドを任意に選択して使用することができる。
【0009】
前記式で示される二価三価鉄塩は近年開発された活性物質で、この活性物質(二価三価鉄塩)は二価鉄と三価鉄との中間の性質を示す単一の化合物、或いは二価鉄と三価鉄が共存する単一の化合物であると思われる。この二価三価鉄塩は現在工業的に生産可能である(例えば、特公平3−63593号公報、特公平4−27171号公報参照)。
【0010】
前記二価三価鉄塩は、例えば塩化第二鉄を水酸化ナトリウム,水酸化カルシウム,水酸化カリウム,水酸化リチウム等の強アルカリの水溶液に投入して原子価変換を起こさせた場合の遷移形態等として得られる(第1の方法)。この第1の方法による具体的製造方法として、例えば次の工程により得たものを例示する。即ち、塩化第二鉄を強アルカリの水溶液に溶解させる工程、この溶液を中和する工程、この中和した溶液を濃縮する工程、とを含んで製造する。
【0011】
また、前記二価三価鉄塩は、三価の鉄塩と二価の金属塩とを混合した溶液によっても得られる。具体的には、例えば三価の鉄塩及び二価の金属塩を所定の比率で含有する所定濃度の希薄水溶液に、第二鉄塩を添加して溶解させ、得られた溶液を濃縮して製造することができる(第2の方法)。前記第二鉄塩としては、例えば塩化第二鉄,硫酸第二鉄,硝酸第二鉄を用いることができる。前記二価の金属塩としては、例えば塩化カルシウム,塩化マグネシウム,塩化亜鉛,硫酸マグネシウム,硝酸カルシウム,硝酸マグネシウム,硝酸亜鉛を用いることができる。
【0012】
前記二価三価鉄塩の前記式中のm:nの比は前記化合物製造に用いる物質の種類等により特定の数値をとる。
【0013】
前記二価三価鉄塩の活性物質は水と接触することにより、種々の作用を有する。即ち、通常の水に前記活性物質を超微量(例えば、濃度2×10−12モルないし2×10−18モル)混入することにより、この水溶液(以下、この水溶液を便宜上「パイウォーター」という)は水分子の構造変化,脱イオン反応,PHの安定効果等の特性をもつことが判明している。
【0014】
前記肥料は特に限定するものではなく、公知の有機質肥料及び無機質肥料を任意に選択して採用することができる。なお、前記肥料の特に好ましい代表的な一例として、例えば牛や豚の尿その他の動物の尿を挙げることができる。
【0015】
そして、本願の第1の発明による植物成長補助剤は、上記したように、ニコチン酸アミド、前記二価三価鉄塩、及び動物の尿その他の液状肥料を含有してなるものである。この植物成長補助剤は、前記各成分を所定の割合で含む水溶液の形態として植物に適用される。
前記水溶液中の前記各成分の濃度及び配合比については追って説明する。また、本発明においては、前記第1及び第2の方法で製造した二価三価鉄塩を純水や蒸留水等の水に溶解して所定の濃度に調整した二価三価鉄塩水溶液(前記二価三価鉄塩の原液)を製造し、この原液を使用することができる。この点については後述する各発明においても同様である。なお、前記原液の具体的製造例については追って説明する。
【0016】
本発明の植物成長補助剤(後述する各発明においても同様)は、特に限定するものではないが、例えば、葉面散布処理、土壌灌注処理、種子や挿し木への処理、或いは水耕栽培等により植物に適用できる。適用対象となる植物としては特に限定するものではないが、例えば、イネ,小麦,トウモロコシ等の穀物類、カイワレダイコン,ダイコン,ニンジン,トマト,コマツナ,ハクサイ等の野菜類、ブドウ,モモ,ミカン等の果樹類、菊,チューリップ等の花類、エンドウ,大豆,ソラ豆等の豆類、ジャガイモ,サツマイモ等のイモ類、コウライ芝その他の芝類、ネギ,ラッキョウ,タマネギ等のネギ類、或いは牧草類や樹木等が挙げられる。
【0017】
上記第1の発明によれば、植物成長補助剤中に含まれている各成分のそれぞれが有する作用と相乗効果により植物の成長促進にきわめて有効な作用を発揮する。また、前記補助剤中に含まれている前記二価三価鉄塩の有する作用によりニコチン酸アミド及び動物の尿その他の液状肥料の植物成長効果を増強させる。
【0018】
本発明のうち他の1つの発明(第2の発明)は、第1の発明の植物成長補助剤において、二価三価鉄塩は前記式で示される化合物に代え、磁性を帯びた二価三価鉄塩であることを特徴とする。この磁性を帯びた二価三価鉄塩は、電磁気処理による特性と化学処理による特性の両方を同時に兼ね備えた活性物質で、例えば、磁鉄鉱を化学処理して得られる。前記磁性を帯びた二価三価鉄塩としては、例えば磁鉄鉱を濃塩酸に溶解させた後、この溶液を中和し、この中和した溶液を濃縮して結晶化し、この結晶を、磁鉄鉱を濃塩酸に半溶解させた溶液に加える工程を含んで得られる化合物で構成することができる。
【0019】
前記磁性を帯びた二価三価鉄塩の活性物質は水と接触することにより、次のような作用を有する特性をもつことが判明している。即ち、通常の水に前記活性物質を超微量(例えば濃度2×10−12モルないし2×10−18モル)混入することにより、この水溶液は、上述したパイウォーターのもつ特性に加え、電磁気処理した活性水と同様な特性をもち、特にこの活性物質は水に溶解して共存するので、外部から磁場をかけた活性水に比べて水に強く、かつ効果的に作用する。
【0020】
上記第2の発明の植物成長補助剤によっても第1の発明と同様に優れた植物成長促進効果を発揮し、また、前記補助剤中に含まれている磁性を帯びた二価三価鉄塩の有する作用によりニコチン酸アミド及び動物の尿その他の液状肥料の植物成長効果を増強させる。
【0021】
本発明のうち他の1つの発明(第3の発明)は、第1及び第2の発明の植物成長補助剤において、植物成長補助剤を構成する成分として、さらに苦汁(にがり)を含有してなることを特徴とする。
【0022】
前記苦汁としては、塩化マグネシウム(合成塩化マグネシウム)、及び海水を濃縮して塩分(NaCl)を除去した液体(天然苦汁)が一般に知られている。また、天然苦汁は海洋深層水を濃縮して塩分(NaCl)を除去することによっても製造することができる。前記天然苦汁中には多種のミネラルが多く含まれている。前記天然苦汁の中でも海洋深層水から得られた苦汁は海水から得られた苦汁に比べてミネラルの含有量が多い。このミネラルは植物の成長を促進する作用がある。本発明においては苦汁として、塩化マグネシウムを使用することもできるが、天然苦汁、即ち、海水及び海洋深層水から得られた苦汁を採用する方がより好ましい。
【0023】
上記したように、苦汁、その中でも天然苦汁中には多種のミネラルが多く含まれている。そして、第3の発明による植物成長補助剤は、上記したように、成分として、さらに苦汁を含有している。したがって、第3の発明の植物成長補助剤によれば、植物の成長を一層促進させる。なお、第3の発明において、植物成長補助剤中の苦汁の濃度及び前記各成分との配合比は特に限定するものではない。この点については追って説明する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、植物成長剤に含まれている各成分のそれぞれが有する作用と相乗効果により植物成長促進に有効な作用を発揮し、また、前記補助剤中に含まれている前記二価三価鉄塩の作用により前記ニコチン酸アミド及び動物の尿その他の液状肥料の植物成長効果を増強させる。
本願の第3の発明によれば、植物成長剤に含まれている苦汁の有する作用により植物の成長を一層促進させる。また、前記補助剤中に含まれている前記二価三価鉄塩の作用により苦汁の有する植物成長効果を向上させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態の一例を説明する。
【0026】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1による植物成長補助剤は、ニコチン酸アミドと、式、Fe+2 Fe+3 Cl2m+3n(式中m及びnは正の整数を示す)で示される二価三価鉄塩、及び動物の尿その他の液状肥料を含有して製造される。
【0027】
実施の形態1において、前記ニコチン酸アミドは市販のものを採用(以下に説明する実施の形態においても同様)している。また、前記二価三価鉄塩は後述する方法により製造した二価三価鉄塩水溶液(二価三価鉄塩の原液)を採用している。以下、前記原液の具体的製造方法の一例について説明する。
【0028】
(二価三価鉄塩の原液の製造例1)
1.0mgの塩化第二鉄を100mlの0.5Nカセイソーダ水溶液に入れ、攪拌溶解させて24時間静置する。前記溶液中に生じた不溶性物質を除去し、この溶液を塩酸で中和した後、減圧濃縮してデシケーター中で乾燥結晶化する。得られた結晶に50mlのイソプロピルアルコール80重量%水溶液を加えて再溶解し、減圧濃縮して溶媒を除去、乾燥させ、この再溶解,濃縮,乾燥を数回繰り返すことにより0.25mgの結晶(二価三価鉄塩)を得た。この結晶を蒸留水又は純水に溶解して約100倍〜約10000倍に希釈した水溶液、即ち、前記二価三価鉄塩約0.01%〜約1%水溶液(二価三価鉄塩の原液A)とする。
【0029】
(二価三価鉄塩の原液の製造例2)
濃度10ミリモルの塩化カルシウム水溶液100mlに、塩化第二鉄270mgを添加して溶解させた。この溶液を水(蒸留水又は純水)で希釈して、濃度10−10ミリモルの希薄溶液を調製した。この希薄溶液20mlに結晶状態の塩化第二鉄1gを溶解させた後、これを磁器製等の蒸発皿に入れ、湯煎で徐々に蒸発させて濃縮した。得られた固溶状の濃縮物をデシケーター中で乾燥して結晶(二価三価鉄塩)を得た。この結晶を蒸留水又は純水に溶解して約100倍〜約10000倍に希釈した水溶液、即ち、前記二価三価鉄塩約0.01%〜約1%水溶液(二価三価鉄塩の原液B)とする。
【0030】
実施の形態1の植物成長補助剤は、水道水や井戸水等の水にニコチン酸アミドと、前記二価三価鉄塩の原液A又はB、及び動物の尿その他の液状肥料を所定の濃度になるように添加して調製した水溶液の形態として植物に適用される。
【0031】
前記水に対するニコチン酸アミド、前記原液A又はB、及び前記肥料の濃度(添加量)は特に限定されないが、例えばニコチン酸アミドについては約1×10−4mg/リットル(濃度約100ppm)〜約1×10−10mg/リットル(濃度約0.1ppb)、また、前記原液については約10−6mg/リットル(濃度約1ppm)〜約1×10−13mg/リットル(濃度約0.0001ppb)、さらに動物の尿その他の液状肥料については前記水溶液(植物成長補助剤)の全体容量に対して約0.1/10000%〜約20/10000%の容量濃度程度の範囲を挙げることができる。
また、ニコチン酸アミド、前記二価三価鉄塩、及び前記肥料の配合比は、前記水溶液(植物成長補助剤)中の前記各成分の濃度(添加量)により容易に理解される。
【0032】
なお、上記の場合において、前記水に対する前記各成分の濃度(添加量)を前記例示した濃度より所望の倍率(例えば約100〜約1万倍)で増量(但し、各成分の倍率は同じ)した組成物(濃縮水溶液)を製造する。そして、所要時に前記組成物を水道水や井戸水等の水で所定の倍率に希釈して植物に適用するように構成してもよい。通常はこの方法を採用することが多い。この点については後述する各実施の形態においても同様である。
【0033】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2による植物成長補助剤は、実施の形態1の植物成長補助剤において、二価三価鉄塩を前記式で示される化合物に代え、磁性を帯びた二価三価鉄塩を採用したことを特徴とするものである。
【0034】
前記磁性を帯びた二価三価鉄塩は上述したように、電磁気処理による特性と化学処理による特性の両方を同時に兼ね備えた活性物質で、この物質としては例えば磁鉄鉱を化学処理したものが例示でき、この物質の具体的製造方法として、次の工程により得たものを例示する。即ち、磁鉄鉱を濃塩酸に溶解させる工程、この溶液を水酸化ナトリウム,水酸化カルシウム,水酸化カリウム,水酸化リチウム等の強アルカリで中和する工程、この中和した溶液を濃縮して結晶を得る工程、この結晶を、磁鉄鉱を濃塩酸に半溶解させた溶液に加える工程とを含んで製造する。
【0035】
実施の形態2において、前記磁性を帯びた二価三価鉄塩は後述する方法により製造した二価三価鉄塩水溶液(二価三価鉄塩の原液)を採用している。以下、前記原液の具体的製造方法の一例について説明する。
【0036】
(二価三価鉄塩の原液の製造例3)
0.1gの磁鉄鉱を10mlの濃塩酸に入れ、攪拌溶解させて24時間静置する。この溶液に25mlの2N水酸化ナトリウム水溶液を加えて24時間静置して、中和する。この溶液を減圧濃縮して結晶を析出し、空気乾燥器中で結晶を乾燥する。この結晶を10mlのエチルアルコールに入れて洗浄する。この洗浄操作を数回繰り返して結晶を精製し、活性物質(結晶)を得る。この際の収率は0.88gであった。次いで、5gの磁鉄鉱を10mlの濃塩酸に入れ、攪拌して半溶解させた後、上記工程で得られた活性物質結晶を0.1g加え良く攪拌して24時間静置する。この上澄み液をデカンテーション法により不溶の磁鉄鉱と分離し、活性物質溶液(磁性を帯びた二価三価鉄塩)を得た。この活性物質溶液を蒸留水又は純水に溶解して約100倍〜約10000倍に希釈した水溶液、即ち、前記二価三価鉄塩約0.01%〜約1%水溶液(二価三価鉄塩の原液C)とする。
【0037】
実施の形態2の植物成長補助剤は、水道水や井戸水等の水にニコチン酸アミドと、前記二価三価鉄塩の原液C、及び動物の尿その他の液状肥料を所定の濃度になるように添加して調製した水溶液の形態として植物に適用される。前記水に対するニコチン酸アミド、前記原液C、及び前記肥料の濃度については実施の形態1と同様である。
【0038】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3による植物成長補助剤は、実施の形態1又は2の植物成長補助剤において、成分として、さらに苦汁を含有して製造される。
即ち、具体的には、水道水や井戸水等の水にニコチン酸アミドと、苦汁と、前記二価三価鉄塩の原液A又はB、及び動物の尿その他の液状肥料を所定の濃度になるように添加して調製した水溶液の形態として植物に適用される。前記水に対する苦汁の濃度(添加量)は特に限定されないが、例えば約1×10−4mg/リットル(濃度約100ppm)〜約1×10−8mg/リットル(濃度約0.01ppm)程度の範囲を挙げることができる。
或いは、前記水にニコチン酸アミドと、苦汁と、前記二価三価鉄塩の原液C、及び前記肥料を所定の濃度になるように添加して調製した水溶液の形態として植物に適用される。前記水に対する苦汁の濃度については前記と同様である。
実施の形態3において、前記水に対するニコチン酸アミド、前記原液A又はB又はC、及び前記肥料の濃度については実施の形態1と同様である。また、前記水に対する前記各成分の濃度(添加量)を所望の倍率で増量した組成物(濃縮水溶液)を製造し、所要時に前記組成物を水道水や井戸水等の水で所定の倍率に希釈して植物に適用するように構成できることについても実施の形態1と同様である。
【0039】
次に本発明の実施例を説明する。下記の実施例はその一例として開示したもので、本発明はこれらに限定されるものではないこと勿論である。
【0040】
以下に示す実施例では、ニコチン酸アミドとして和光純薬工業株式会社製の特級試薬を採用している。また、水として水道水、苦汁として天然苦汁を使用している。
さらに、以下に示す実施例では、前記原液Aとして、実施の形態1の二価三価鉄塩の原液の製造例1により製造した約1000倍希釈の水溶液、即ち、前記製造例1の前記二価三価鉄塩約0.1%水溶液を採用した。
また、前記原液Bとして、実施の形態1の二価三価鉄塩の原液の製造例2により製造した約1000倍希釈の水溶液、即ち、前記製造例2の前記二価三価鉄塩約0.1%水溶液を採用した。
さらにまた、前記原液Cとして、実施の形態2の二価三価鉄塩の原液の製造例3により製造した約1000倍希釈の水溶液、即ち、前記製造例3の前記二価三価鉄塩約0.1%水溶液を採用した。
さらにまた、以下に示す各実施例の植物成長補助剤は、これをそのままの状態で植物に適用する水溶液の形態として製造(調製)されている。さらにまた、動物の尿その他の液状肥料の濃度の数値(%)については植物成長補助剤の全体容量に対する容量濃度として開示されている。
【0041】
(実施例1)
前記水にニコチン酸アミドを約1×10−6mg/リットル(濃度約1.00ppm)、前記二価三価鉄塩の原液Aを約1×10−9mg/リットル(濃度約1.00ppb)、及び牛の尿を約5/10000%添加して植物成長補助剤を得た。
【0042】
(実施例2)
前記水にニコチン酸アミドを約1×10−7mg/リットル(濃度約0.1ppm)、前記原液Aを約1×10−10mg/リットル(濃度約0.1ppb)、及び牛の尿を約5/10000%添加して植物成長補助剤を得た。
【0043】
(実施例3)
前記水にニコチン酸アミドを約1×10−8mg/リットル(濃度約0.01ppm)、前記原液Aを約1×10−11mg/リットル(濃度約0.01ppb)、及び牛の尿を約5/10000%添加して植物成長補助剤を得た。
【0044】
上記実施例1〜3の各植物成長補助剤をイネ種子等の植物に使用したところ、前記水にニコチン酸アミド及び前記原液Aのみを添加して製造した植物成長補助剤を使用した場合に比べ、植物を活性して成長促進作用を向上することが判明した。
【0045】
(実施例4)
前記水にニコチン酸アミドを約1×10−6mg/リットル、前記二価三価鉄塩の原液Bを約1×10−9mg/リットル、及び牛の尿を約5/10000%添加して植物成長補助剤を得た。
【0046】
(実施例5)
前記水にニコチン酸アミドを約1×10−7mg/リットル、前記原液Bを約1×10−10mg/リットル、及び牛の尿を約5/10000%添加して植物成長補助剤を得た。
【0047】
(実施例6)
前記水にニコチン酸アミドを約1×10−8mg/リットル、前記原液Bを約1×10−11mg/リットル、及び牛の尿を約5/10000%添加して植物成長補助剤を得た。
【0048】
(実施例7)
前記水にニコチン酸アミドを約1×10−6mg/リットル、前記二価三価鉄塩の原液Cを約1×10−9mg/リットル、及び牛の尿を約5/10000%添加して植物成長補助剤を得た。
【0049】
(実施例8)
前記水にニコチン酸アミドを約1×10−7mg/リットル、前記原液Cを約1×10−10mg/リットル、及び牛の尿を約5/10000%添加して植物成長補助剤を得た。
【0050】
(実施例9)
前記水にニコチン酸アミドを約1×10−8mg/リットル、前記原液Cを約1×10−11mg/リットル、及び牛の尿を約5/10000%添加して植物成長補助剤を得た。
【0051】
上記実施例4〜9の各植物成長補助剤について前記と同様の方法で実験したところ、実施例1〜3と同様の結果が得られることが判明した。
【0052】
(実施例10)
前記水に対し、苦汁を約1×10−6mg/リットル(濃度約1.00ppm)添加する。それ以外は実施例1と全く同様の方法で調製して植物成長補助剤を得た。
【0053】
(実施例11〜実施例18)
前記水に対し、苦汁を約1×10−6mg/リットル(濃度約1.00ppm)添加する。それ以外は実施例2〜実施例9の各植物成長補助剤と全く同様の方法で調製して植物成長補助剤を得た。
【0054】
上記実施例10〜18の各植物成長補助剤について前記と同様の方法で実験したところ、実施例10〜18の各植物成長補助剤は、実施例1〜9の各植物成長補助剤に比べ、植物の成長を一層増進させることが判明した。
【0055】
なお、上記実施例1〜18は液状肥料として牛の尿を採用した例を開示したが、牛の尿に代え、豚の尿その他の動物の尿、或いはその他の液状肥料を採用できること勿論である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニコチン酸アミド、二価三価鉄塩、及び動物の尿その他の液状肥料を含有してなり、
前記二価三価鉄塩は、式、
Fe+2 Fe+3 Cl2m+3n(式中m及びnは正の整数を示す)
で示される化合物であることを特徴とする、
植物成長補助剤。
【請求項2】
請求項1記載の植物成長補助剤において、二価三価鉄塩は前記式で示される化合物に代え、磁性を帯びた二価三価鉄塩であることを特徴とする、植物成長補助剤。
【請求項3】
磁性を帯びた二価三価鉄塩は、磁鉄鉱を濃塩酸に溶解させた後、この溶液を中和し、この中和した溶液を濃縮して結晶化し、この結晶を、磁鉄鉱を濃塩酸に半溶解させた溶液に加える工程を含んで得られる化合物であることを特徴とする、請求項2記載の植物成長補助剤。
【請求項4】
ニコチン酸アミドを約1×10−4〜約1×10−10mg/リットルの濃度、前記二価三価鉄塩約0.01%〜約1%水溶液を約1×10−6〜約1×10−13mg/リットルの濃度、及び動物の尿その他の液状肥料を植物成長補助剤の全体容量に対して約0.1/10000%〜約20/10000%の容量濃度でそれぞれ含む水溶液の形態として植物に適用することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の植物成長補助剤。
【請求項5】
植物成長補助剤は、さらに苦汁を含有していることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の植物成長補助剤。

【公開番号】特開2007−137780(P2007−137780A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−329745(P2005−329745)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(592170259)
【Fターム(参考)】