説明

植物栽培施設用の換気装置

【課題】室外から室内へ取り込む空気の汚染防止対策。
【解決手段】植物栽培施設用の換気装置(10)は、室外空気の吸込口(12)と空気の吹出口(13)とが形成されたケーシング(11)と送風ファン(15)とを備え、室外空気をケーシング(11)内に取り込み、取込空気を処理して処理空気を吹出口(13)から植物栽培施設用のハウス(1)内に供給するものであって、ケーシング(11)内に設けられ、取込空気中の塵埃を除去する集塵装置(20)と、水を貯留する貯水タンク(61)、貯水タンク(61)の水中でストリーマ放電を生起する電極対(64,65)、及び電極対(64,65)に直流電圧を印加する電源部(70)を有し、ストリーマ放電によって貯水タンク(61)の水中に過酸化水素を生成する放電装置(60)と、貯水タンク(61)内の過酸化水素を含む水を集塵部(25)に供給する噴霧ユニット(30)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培施設用の換気装置に関し、特に、植物栽培施設室内へ給気する空気の除菌手段に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ビニール製のハウス等の栽培室内に植物(作物)等の栽培床を設けて栽培を行う栽培手段が知られている。このような栽培手段に用いられるハウスは、植物(作物)等の効率的な栽培を目的として換気装置によってハウス内に室外空気を取り込んでいる(特許文献1)。しかしながら、このような室外空気には、塵埃等が含まれている場合がある。
【0003】
このような問題に対しては、室外空気の取込口等にフィルタを取り付けて、塵埃を捕集・除去する方法が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−247312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の換気装置においては、塵埃が捕集されたフィルタにおいて、菌が残留、又は繁殖することがあり、このような菌が、新たに取り込んだ室外空気に再度付着して室内へ侵入するという問題があった。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、集塵装置を備えた植物栽培施設用の換気装置において、取込空気への菌の付着を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、室外空気の吸込口(12)と空気の吹出口(13)とが形成されたケーシング(11)と、該ケーシング(11)内に収容される吸込ファン(15,82a)とを備え、上記吸込ファン(15,82a)によって上記室外空気を上記吸込口(12)からケーシング(11)内に取り込み、該取込空気を処理して処理空気を吹出口(13)から植物栽培施設用のハウス(1)内に供給する換気装置であって、上記ケーシング(11)内に設けられ、上記取込空気中の塵埃を除去する集塵装置(20)と、水を貯留する貯水タンク(61)、該貯水タンク(61)の水中でストリーマ放電を生起する電極対(64,65)、及び該電極対(64,65)に直流電圧を印加する直流電源(70)を有し、該ストリーマ放電によって上記貯水タンク(61)の水中に過酸化水素を生成する放電装置(60)と、上記貯水タンク(61)内の過酸化水素を含む水を上記集塵装置(20)に供給する供給装置(30)とを備えている。
【0008】
上記第1の発明では、吸込ファン(15,82a)を駆動すると、室外空気が吸込口(12)からケーシング(11)内に吸い込まれる。そして、上記ケーシング(11)内において、集塵装置(20)は取込空気中の塵埃を捕集する。集塵装置(20)で塵埃が除去された取込空気は処理空気として室内へ供給される。
【0009】
放電装置(60)では、直流電源(70)から電極対(64,65)に直流電圧が印加される。これにより、貯水タンク(61)の水中では、ストリーマ放電が生起する。このストリーマ放電に伴って貯水タンク(61)の水中では、過酸化水素が生成される。過酸化水素は、比較的高温の条件下においても、水中に残留し易い。具体的に、過酸化水素は、水温が約40℃以上の条件下で、約1時間経過したとしても、約4%程度の濃度しか分解されない。従って、本発明の換気装置では、貯水タンク(61)の水温が比較的高温であっても、過酸化水素を含む水によって集塵装置(20)の殺菌・浄化を充分に行うことができる。
【0010】
また、水中では、ストリーマ放電の発生に伴い、水酸ラジカル等の活性種も生成される。このため、水中に含まれる有害物質(例えば硫黄系化合物)は、活性種によって酸化分解されて除去される。
【0011】
また、本発明では、直流電源(70)を用いてストリーマ放電を行っているので、例えばパルス電源と比較して、電源部の簡素化、低コスト化、小型化を図ることができる。また、パルス電源を用いると、放電に伴って水中で発生する衝撃波や騒音が大きくなってしまう。これに対し、直流電源(70)を用いると、このような衝撃波や騒音も低減できる。
【0012】
供給装置(30)は、貯水タンク(61)内の過酸化水素を含む水を集塵装置(20)に供給する。これにより、集塵装置(20)が殺菌・浄化される。
【0013】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記ケーシング(11)は、室内空気を取り込む排気吸込口(83)と上記室内空気を排気する排気吹出口(84)とが形成される一方、上記排気吸込口(83)から取り込んだ室内空気を上記排気吹出口(84)から排気させる排気ファン(82b)を内部に収容し、上記吸込ファン(15,82a)及び排気ファン(82b)は、室外空気の取込量が上記室内空気の排気量よりも大きくなるように構成されている。
【0014】
上記第2の発明では、吸込ファン(15,82a)を駆動すると、室外空気が吸込口(12)からケーシング(11)内に吸い込まれる。そして、上記ケーシング(11)内において、集塵装置(20)は取込空気中の塵埃を捕集する。集塵装置(20)で塵埃が除去された取込空気は処理空気として室内へ供給される。また、排気ファン(82b)を駆動させると、室内空気が排気吸込口(83)からケーシング(11)内に吸い込まれ、排気吹出口(84)から室外へ排気される。
【0015】
本発明では、例えば、吸込ファン(15,82a)の容量を排気ファン(82b)の容量よりも大きくして室外空気の取込量が室内空気の排気量よりも大きくすることができる。こうすることで、室内空気圧が外気圧よりも高くなるため、部屋の隙間等から室内への室外空気の流入を防止できる。これにより、室外空気に含まれる塵埃等の室内への侵入を防止することができる。
【0016】
尚、制御器等を用いて、室外空気の取込量が室内空気の排気量よりも大きくなるように吸込ファン(15,82a)、又は排気ファン(82b)を制御してもよい。これによると、室内空気圧が外気圧よりも高くなるため、隙間等から室内への室外空気の流入を防止できる。これにより、室外空気に含まれる塵埃等の室内への侵入を防止することができる。
【0017】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記ケーシング(11)内に設けられ、取り込んだ室内空気と室外空気とを熱交換させる熱交換器(87)を備えている。
【0018】
上記第3の発明では、熱交換器(87)は、吸込口(12)から取り込んだ室外空気と排気吸込口(83)から取り込んだ室内空気とを熱交換する。これにより、室外空気の温度が室内空気の温度よりも高ければ、室外空気は冷却されて処理空気となり、吹出口(13)から室内へ吹き出される。一方、室外空気の温度が室内空気の温度よりも低ければ、室外空気は加熱されて処理空気となり、吹出口(13)から室内へ吹き出される。
【0019】
第4の発明は、上記第1〜第3の発明の何れか1つにおいて、上記集塵装置(20)は、上記取込空気中の塵埃を帯電させる荷電部(22)と、該荷電部(22)で帯電した塵埃を電気的に捕集する集塵部(25)とを備え、上記供給装置(30)は、上記集塵部(25)に対して過酸化水素を含む水を供給するよう構成されている。
【0020】
上記第4の発明では、荷電部(22)において取込空気中の塵埃が正又は負の電荷に帯電する。荷電部(22)で帯電した塵埃は、集塵部(25)に誘引されて電気的に捕捉される。これにより、取込空気中の塵埃が除去される。供給装置(30)は、貯水タンク(61)内の過酸化水素を含む水を集塵部(25)に供給する。これにより、塵埃が捕集された集塵部(25)が殺菌・浄化される。
【0021】
第5の発明は、上記第1〜第3の発明の何れか1つにおいて、上記集塵装置(20)は、上記取込空気中の塵埃を捕捉するフィルタ部材(81)を備え、上記供給装置(30)は、上記フィルタ部材(81)に対して過酸化水素を含む水を供給するよう構成されている。
【0022】
上記第5の発明では、取込空気がフィルタ部材(81)を通過すると、該取込空気中の塵埃がフィルタ部材(81)に捕捉される。供給装置(30)は、放電装置(60)で生成された過酸化水素を含む水をフィルタ部材(81)に供給する。これにより、塵埃が捕集されたフィルタ部材(81)が殺菌・浄化される。
【発明の効果】
【0023】
上記第1の発明によれば、集塵装置(20)に過酸化水素を含む水を供給するようにしたため、集塵装置(20)を殺菌・浄化することができる。つまり、塵埃が捕集された集塵装置(20)において、菌が残留、又は繁殖することがあり、この菌が、取り込んだ室外空気に再度付着する可能性がある。しかしながら、本発明では、集塵装置(20)を殺菌・浄化するため、集塵装置(20)における菌の残留、又は繁殖を確実に防止することができる。これにより、室内へ供給する処理空気に菌が付着するのを防止できる。この結果、室内への菌の侵入を防止することができる。
【0024】
また、本発明では、ストリーマ放電を行い過酸化水素を生成するようにしている。過酸化水素は、次亜塩素酸と比較して、水温が上昇しても分解されにくい。このため、集塵装置(20)へ供給する水を過酸化水素によって充分に殺菌・浄化しつつ、集塵装置(20)を確実に殺菌・浄化することができる。また、ストリーマ放電では、水中において多量の活性種が生成するため、この活性種により水中の有害物質を効果的に除去しつつ、集塵装置(20)を確実に殺菌・浄化することができる。
【0025】
上記第2の発明によれば、室外空気の取込量が室内空気の排気量よりも大きくなるようにしたため、室内の空気圧を外気圧よりも高くすることができる。これにより、室外空気が部屋の隙間等から室内へ侵入するのを防止できるため、室外空気中の塵埃が室内へ侵入するのを防止することができる。
【0026】
上記第3の発明によれば、熱交換器(87)を設けたため、室外空気と室内空気とを熱交換させることができる。これにより、室内空気を利用して取込空気を加熱、又は冷却することができる。この結果、室内の温度を調節することができる。
【0027】
上記第4の発明によれば、荷電部(22)と集塵部(25)とを備えた集塵装置(20)を用いたため、例えばフィルタと比較して長期の運転に伴う集塵性能の低下を防止でき、更には目詰まり等に起因する圧力損失の増加も防止することができる。また、過酸化水素を含む水を集塵部(25)に供給するようにしたため、塵埃を捕集した集塵部(25)を殺菌・浄化することができる。
【0028】
上記第5の発明によれば、フィルタ部材(81)を備えた集塵装置(20)を用いたため、集塵装置(20)を簡易、且つ安価に形成することができる。また、過酸化水素を含む水をフィルタ部材(81)に供給するようにしたため、塵埃を捕集したフィルタ部材(81)を殺菌・浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態1に係るハウスと換気装置を示す概略図である。
【図2】本実施形態1に係る換気装置を示す概略の断面図である。
【図3】本実施形態1に係る放電装置の全体構成図であり、過酸化水素の生成動作を開始する前の状態を示すものである。
【図4】本実施形態1に係る絶縁ケーシングの斜視図である。
【図5】本実施形態1に係る放電装置の全体構成図であり、過酸化水素の生成動作を開始して気泡が形成された状態を示すものである。
【図6】本実施形態1の変形例に係る放電装置の全体構成図である。
【図7】本実施形態1の変形例に係る絶縁ケーシングの斜視図である。
【図8】本実施形態2に係る放電装置の全体構成図であり、過酸化水素の生成動作を開始する前の状態を示すものである。
【図9】本実施形態2に係る放電装置の全体構成図であり、過酸化水素の生成動作を開始して気泡が形成された状態を示すものである。
【図10】本実施形態2の変形例に係る絶縁ケーシングの蓋部の平面図である。
【図11】本実施形態3に係るハウスと換気装置を示す概略図である。
【図12】本実施形態3に係る換気装置を示す概略の断面図である。
【図13】本実施形態4に係る換気装置を示す模式図である。
【図14】本実施形態4に係る換気装置を示す概略の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0031】
〈発明の実施形態1〉
図1及び図2に示すように、本実施形態1に係る換気装置(10)は、植物栽培施設用のハウス(1)の換気を行うものである。尚、以下の説明において、「室内」とは「ハウス(1)の内部」をいい、「室外」とは「ハウス(1)の外部」をいうものとする。この換気装置(10)は、ケーシング(11)と送風ファン(15)と集塵ユニット(20)と放電装置(60)と噴霧ユニット(30)とを備えている。
【0032】
上記ケーシング(11)は、縦長の矩形状の箱体に形成され、ハウス(1)の側面近傍に設置されている。そして、ケーシング(11)は、その背面がハウス(1)の側面と対向するように設置されている。ケーシング(11)は、前面の下部に外気(室外空気)を取り込む吸込口(12)が形成され、背面の上部に吸込口(12)から取り込んだ室外空気(以下、取込空気)をハウス(1)内へ供給する吹出口(13)が形成されている。尚、ハウス(1)における上記吹出口(13)の対向面には、処理空気を流入させるための空気口が形成されている(図示省略)。
【0033】
上記ケーシング(11)の内部は、吸込口(12)から吹出口(13)に向かって空気が流れる流通路(14)に構成されている。そして、ケーシング(11)の内部の流通路(14)には、送風ファン(15)と集塵ユニット(20)とが空気の流れに沿って配置されている。
【0034】
上記送風ファン(15)は、ケーシング(11)内に取り込んだ取込空気を室内へ供給するためのものであって、本発明に係る吸込ファンを構成している。送風ファン(15)は、取込空気のファンユニットを構成し、ケーシング(11)の概ね上部に配置されている。
【0035】
上記集塵ユニット(20)は、ケーシング(11)内の流通路(14)を通過する空気中の塵埃を除去するものであって、本発明に係る集塵装置を構成している。集塵ユニット(20)は、ケーシング(11)内の流通路(14)において、吸込口(12)と送風ファン(15)との間に設けられている。そして、集塵ユニット(20)は、プレフィルタ(21)と荷電部(22)と集塵部(25)とが空気の上流側に向かって順に配置され、電気式の集塵装置を構成している。
【0036】
上記プレフィルタ(21)は、ケーシング(11)内に取り込まれた取込空気に含まれる比較的大きな塵埃を捕集するためのフィルタを構成している。
【0037】
上記荷電部(22)は、上記プレフィルタ(21)を通過した比較的小さな塵埃を帯電させるものである。上記荷電部(22)は、複数の放電電極(23)と複数の対向電極(24)から構成され、該放電電極(23)と対向電極(24)との間に直流電圧が印加され、取込空気中の塵埃を帯電させるように構成されている。
【0038】
上記放電電極(23)は、イオン化線で構成され、荷電部(22)の左右両端に亘って設けられ、奥行き方向に複数本が平行に配置されている。上記対向電極(24)は、荷電部(22)の左右両端に亘って設けられ、奥行き方向に複数本が平行に配置されている。そして、上記放電電極(23)は、2本の対向電極(24)の間に配置されている。したがって、上記荷電部(22)における放電電極(23)と対向電極(24)との間は、上記吸込口(12)から吹出口(13)へ向かうケーシング(11)内の空気流れに沿った方向に延びる空気通路に構成されている。つまり、上記放電電極(23)と対向電極(24)との間は、ケーシング(11)内の流通路(14)と平行な空気通路となる。
【0039】
上記集塵部(25)は、上記荷電部(22)で帯電した塵埃を吸着して捕集するものであり、アース電極である集塵電極(26)を備えている。この集塵電極(26)は、集塵部(25)の左右両端に亘って設けられ、奥行き方向に複数本が平行に配置されている。尚、集塵部(25)は、高圧電極と集塵電極とを備え、両者間に直流電圧を印加して電界を生起させ、帯電した塵埃を集塵電極に吸着させるような構成でもよい。
【0040】
上記噴霧ユニット(30)は、後述する放電装置(60)で生成した過酸化水素を含む水を上記集塵部(25)に対して噴霧するものであって、本発明に係る供給装置を構成している。噴霧ユニット(30)は、噴霧部(31)とポンプ(32)とを備えている。この噴霧ユニット(30)は、後述する貯水タンク(61)の過酸化水素を含む水をポンプ(32)によって吸い上げて、噴霧部(31)から集塵部(25)に向けて噴霧するよう構成されている。
【0041】
〈放電装置の詳細構造〉
上記換気装置(10)は、放電装置(60)を備えている。放電装置(60)は、水中でのストリーマ放電によって水中に過酸化水素等の浄化成分を生成し、過酸化水素を含んだ水(以下、過酸化水素を含む水)を生成するものである。放電装置(60)は、貯水タンク(61)と放電ユニット(62)とを有している(図3を参照)。
【0042】
上記貯水タンク(61)は、水が溜められた矩形状の箱体のタンクである。本実施形態1の貯水タンク(61)は、密閉型の容器状に形成され、図示はしないが、空気穴が形成されている。尚、貯水タンク(61)の内部の一部を、銅部材で構成してもよい。銅部材から銅イオンを生成することで、貯水タンク(61)に銅イオンを供給することができる。
【0043】
上記放電ユニット(62)は、放電電極(64)及び対向電極(65)とからなる電極対(64,65)と、この電極対(64,65)に電圧を印加する電源部(70)と、放電電極(64)を内部に収容する絶縁ケーシング(71)とを備えている。
【0044】
上記電極対(64,65)は、水中でストリーマ放電を生起するためのものである。放電電極(64)は、絶縁ケーシング(71)の内部に配置されている。放電電極(64)は、上下に扁平な板状に形成されている。放電電極(64)は、電源部(70)の正極側に接続されている。放電電極(64)は、例えばステンレス、銅等の導電性の金属材料で構成されている。
【0045】
上記対向電極(65)は、絶縁ケーシング(71)の外部に配置されている。対向電極(65)は、放電電極(64)の上方に設けられている。対向電極(65)は、上下に扁平な板状であって、且つ上下に複数の貫通孔(66)を有するメッシュ形状ないしパンチングメタル形状に構成されている。対向電極(65)は、放電電極(64)と略平行に配設されている。対向電極(65)は、電源部(70)の負極側に接続されている。対向電極(65)は、例えばステンレス、真鍮等の導電性の金属材料で構成されている。
【0046】
上記電源部(70)は、電極対(64,65)に所定の直流電圧を印加する直流電源で構成されている。即ち、電源部(70)は、電極対(64,65)に対して瞬時的に高電圧を繰り返し印加するようなパルス電源ではなく、電極対(64,65)に対して常に数キロボルトの直流電圧を印加する。電源部(70)のうち、対向電極(65)が接続される負極側は、アースと接続されている。また、電源部(70)には、電極対(64,65)の放電電力を一定に制御する定電力制御部が設けられている(図示省略)。
【0047】
上記絶縁ケーシング(71)は、貯水タンク(61)の底部に設置されている。絶縁ケーシング(71)は、例えばセラミックス等の絶縁材料で構成されている。絶縁ケーシング(71)は、一面(上面)が開放された容器状のケース本体(72)と、該ケース本体(72)の上方の開放部を閉塞する板状の蓋部(73)とを有している。
【0048】
上記ケース本体(72)は、角型筒状の側壁部(72a)と、該側壁部(72a)の底面を閉塞する底部(72b)とを有している。放電電極(64)は、底部(72b)の上側に敷設されている。絶縁ケーシング(71)では、蓋部(73)と底部(72b)との間の上下方向の距離が、放電電極(64)の厚さよりも長くなっている。つまり、放電電極(64)と蓋部(73)との間には、所定の間隔が確保されている。これにより、絶縁ケーシング(71)の内部では、放電電極(64)とケース本体(72)と蓋部(73)との間に空間(S)が形成される。
【0049】
図3及び図4に示すように、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)には、該蓋部(73)を厚さ方向に貫通する1つの開口(74)が形成されている。この開口(74)により、放電電極(64)と対向電極(65)との間の電界の形成が許容されている。蓋部(73)の開口(74)の内径は、0.02mm以上0.5mm以下であることが好ましい。以上のような開口(74)は、電極対(64,65)の間の電流経路の電流密度を上昇させる電流密度集中部を構成する。
【0050】
以上のように、絶縁ケーシング(71)は、電極対(64,65)のうちの一方の電極(放電電極(64))のみを内部に収容し、且つ電流密度集中部としての開口(74)を有する絶縁部材を構成している。
【0051】
加えて、絶縁ケーシング(71)の開口(74)内では、電流経路の電流密度が上昇することで、水がジュール熱によって気化して気泡(B)が形成される。つまり、絶縁ケーシング(71)の開口(74)は、該開口(74)に気相部としての気泡(B)を形成する気相形成部として機能する。
【0052】
−運転動作−
次に、上述した換気装置(10)の換気動作について説明する。
【0053】
先ず、送風ファン(15)を駆動すると、室外空気が吸込口(12)よりケーシング(11)内に吸い込まれる。ケーシング(11)内に取り込まれた取込空気は、流通路(14)を通じて集塵ユニット(20)の方に流れる。上記集塵ユニット(20)は、荷電部(22)の放電電極(23)と対向電極(24)との間に直流電圧が印加されている。
【0054】
上記取込空気は、上記プレフィルタ(21)を通り、取込空気に含まれる比較的大きな塵埃が捕集される。上記プレフィルタ(21)を通過した取込空気は、荷電部(22)に流れる。この荷電部(22)において、上記プレフィルタ(21)を通過した比較的小さな塵埃が帯電され、例えば、塵埃が正極に帯電し、この帯電した塵埃が下流側に流れる。
【0055】
帯電した塵埃は、集塵部(25)に流れ、アース電極となっている集塵部(25)に正極に帯電した塵埃が集塵部(25)の表面に吸着する。
【0056】
上記取込空気から塵埃が除去されると、清浄な処理空気となって送風ファン(15)を流れ、吹出口(13)から室内へ吹き出される。
【0057】
−放電装置の運転動作−
本実施形態の換気装置(10)では、放電装置(60)が運転されることで、貯水タンク(61)で過酸化水素を含む水が発生する。このような放電装置(60)の運転動作について詳細に説明する。
【0058】
放電装置(60)の運転の開始時には、図3に示すように、絶縁ケーシング(71)内の空間(S)が浸水した状態となっている。電源部(70)から電極対(64,65)に所定の直流電圧(例えば1kV)が印加されると、電極対(64,65)の間に電界が形成される。放電電極(64)の周囲は、絶縁ケーシング(71)で覆われている。このため、電極対(64,65)の間での漏れ電流が抑制されとともに、開口(74)内の電流経路の電流密度が上昇した状態となる。
【0059】
開口(74)内の電流密度が上昇すると、開口(74)内のジュール熱が大きくなる。その結果、絶縁ケーシング(71)では、開口(74)の近傍において、水の気化が促進されて気泡(B)が形成される。この気泡(B)は、図5に示すように、開口(74)のほぼ全域を覆う状態となり、対向電極(65)に導通する負極側の水と、正極側の放電電極(64)との間に気泡(B)が介在する。従って、この状態では、気泡(B)が、放電電極(64)と対向電極(65)との間での水を介した導電を阻止する抵抗として機能する。これにより、放電電極(64)と対向電極(65)との間の漏れ電流が抑制され、電極対(64,65)間では、所望とする電位差が保たれることになる。すると、気泡(B)内では、絶縁破壊に伴いストリーマ放電が発生する。
【0060】
以上のようにして、気泡(B)でストリーマ放電が行われると、貯水タンク(61)内の水中では、水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素等が生成される。水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素は、ストリーマ放電に伴う熱によって貯水タンク(61)内を対流する。これにより、水中での活性種や過酸化水素の拡散が促される。また、気泡(B)でストリーマ放電が行われると、このストリーマ放電に伴ってこの気泡(B)でイオン風を生成し易くなる。よって、貯水タンク(61)内では、このイオン風を利用して、活性種や過酸化水素の拡散効果を更に向上できる。
【0061】
また、上述したように、貯水タンク(61)の一部を銅部材で構成すると、銅部材から溶出した銅イオンが供給される。過酸化水素と銅イオンの存在下では、フェントン反応により、銅イオンが触媒的に作用して水酸ラジカルの生成が促進される。これにより、水酸ラジカルによる水や集塵部(25)の浄化効率が向上する。加えて、銅イオンは菌の繁殖を抑制する効果があるため、水中や集塵部(25)での殺菌作用も高くなる。
【0062】
以上のようにして、水中に拡散した水酸ラジカル等の活性種は、水中に含まれる被処理成分(例えばアンモニア等)を酸化分解して水の浄化に利用される。また、水中に拡散した過酸化水素は、水の殺菌に利用される。また、過酸化水素が生成された水(過酸化水素を含む水)が噴霧ユニット(30)のポンプ(32)に吸い上げられて噴霧部(31)から集塵部(25)に噴霧される。これにより、塵埃を捕集した集塵部(25)に対して過酸化水素を含む水が付与されるため、集塵部(25)が殺菌されて菌の繁殖が抑制される。
【0063】
−実施形態1の効果−
上記本実施形態1によれば、集塵部(25)に過酸化水素を含む水を供給するようにしたため、集塵部(25)を殺菌・浄化することができる。つまり、塵埃が捕集された集塵部(25)において、菌が残留、又は繁殖することがあり、この菌が取込空気に再度付着する可能性がある。しかしながら、本実施形態1では、集塵部(25)を殺菌・浄化するため、菌の残留、又は繁殖を防止することができる。これにより、ハウス(1)内へ供給する処理空気に菌が付着するのを防止できる。この結果、ハウス(1)内への菌の侵入を防止することができる。
【0064】
また、本実施形態1では、ストリーマ放電を行い過酸化水素を生成するようにしている。過酸化水素は、次亜塩素酸と比較して、水温が上昇しても分解されにくい。このため、集塵部(25)へ供給する水を過酸化水素によって充分に殺菌・浄化しつつ、集塵部(25)を確実に殺菌・浄化することができる。また、ストリーマ放電では、水中において多量の活性種が生成するため、この活性種により水中の有害物質を効果的に除去しつつ、集塵部(25)の殺菌・浄化をすることができる。
【0065】
また、荷電部(22)と集塵部(25)とを備えた集塵ユニット(20)を用いたため、例えばフィルタと比較して長期の運転に伴う集塵性能の低下を防止でき、更には目詰まり等に起因する圧力損失の増加も防止することができる。
【0066】
〈実施形態1の変形例〉
上記実施形態1では、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)に1つの開口(74)が形成されている。しかしながら、例えば図6及び図7に示すように、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)に複数の開口(74)を形成してもよい。この変形例では、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)が、略正方形板状に形成され、この蓋部(73)に複数の開口(74)が等間隔を置きながら碁盤目状に配列されている。一方、放電電極(64)及び対向電極(65)は、全ての開口(74)に跨るような正方形板状に形成されている。
【0067】
この変形例においても、各開口(74)が、電流密度集中部、及び気相形成部として機能する。これにより、電源部(70)から電極対(64,65)に直流電圧が印加されると、各開口(74)の電流密度が上昇し、各開口(74)で気泡(B)が形成される。その結果、各気泡(B)でそれぞれストリーマ放電が生起され、水酸ラジカル等の活性種や、過酸化水素が生成される。
【0068】
〈発明の実施形態2〉
実施形態2に係る換気装置(10)は、上述した実施形態1と放電ユニット(62)の構成が異なるものである。以下には、上記実施形態1と異なる点を主として説明する。
【0069】
図8に示すように、実施形態2の放電ユニット(62)は、貯水タンク(61)の外側から内部に向かって挿入されて固定される、いわゆるフランジユニット式に構成されている。また、実施形態2の放電ユニット(62)は、放電電極(64)と対向電極(65)と絶縁ケーシング(71)とが一体的に組立てられている。
【0070】
実施形態2の絶縁ケーシング(71)は、大略の外形が円筒状に形成されている。絶縁ケーシング(71)は、ケース本体(72)と蓋部(73)とを有している。
【0071】
実施形態2のケース本体(72)は、ガラス質又は樹脂製の絶縁材料で構成されている。ケース本体(72)は、円筒状の基部(76)と、該基部(76)から貯水タンク(61)側に向かって突出する筒状壁部(77)と、該筒状壁部(77)の外縁部から更に貯水タンク(61)側に向かって突出する環状凸部(78)とを有している。また、ケース本体(72)には、環状凸部(78)の先端側に先端筒部(79)が一体に形成されている。基部(76)の軸心部には、円柱状の挿入口(76a)が軸方向に延びて貫通形成されている。筒状壁部(77)の内側には、挿入口(76a)と同軸となり、且つ挿入口(76a)よりも大径となる円柱状の空間(S)が形成されている。
【0072】
実施形態2の蓋部(73)は、略円板状に形成されて環状凸部(78)の内側に嵌合している。蓋部(73)は、セラミックス材料で構成されている。蓋部(73)の軸心には、実施形態1と同様、蓋部(73)を上下に貫通する円形状の1つの開口(74)が形成されている。
【0073】
放電電極(64)は、軸直角断面が円形状となる縦長の棒状の電極で構成されている。放電電極(64)は、基部(76)の挿入口(76a)に嵌合している。これにより、放電電極(64)は、絶縁ケーシング(71)の内部に収容されている。実施形態2では、放電電極(64)のうち貯水タンク(61)とは反対側の端部が、貯水タンク(61)の外部に露出される状態となる。このため、貯水タンク(61)の外部に配置される電源部(70)と、放電電極(64)とを電気配線によって容易に接続することができる。
【0074】
放電電極(64)のうち貯水タンク(61)側の端部(64a)は、絶縁ケーシング(71)の内部の空間(S)に臨んでいる。なお、図8に示す例では、放電電極(64)の端部(64a)が、挿入口(76a)の開口面よりも上側(貯水タンク(61)側)に突出しているが、この端部(64a)の先端面を挿入口(76a)の開口面と略面一としてもよいし、端部(64a)を挿入口(76a)の開口面よりも下側に陥没させてもよい。また、放電電極(64)は、実施形態1と同様、開口(74)を有する蓋部(73)との間に所定の間隔が確保されている。
【0075】
対向電極(65)は、円筒状の電極本体(65a)と、該電極本体(65a)から径方向外方へ突出する鍔部(65b)とを有している。電極本体(65a)は、絶縁ケーシング(71)のケース本体(72)に外嵌している。鍔部(65b)は、貯水タンク(61)の壁部に固定されて放電ユニット(62)を保持する固定部を構成している。放電ユニット(62)が貯水タンク(61)に固定された状態では、対向電極(65)の電極本体(65a)の一部が浸水された状態となる。
【0076】
対向電極(65)は、電極本体(65a)よりも小径の内側筒部(65c)と、該内側筒部(65c)と電極本体(65a)との間に亘って形成される連接部(65d)とを有している。内側筒部(65c)及び連接部(65d)は、貯水タンク(61)内の水中に浸漬している。内側筒部(65c)は、その内部に円柱空間(67)を形成している。内側筒部(65c)の軸方向の一端は、蓋部(73)と当接して該蓋部(73)を保持する保持部を構成している。また、電極本体(65a)と内側筒部(65c)と連接部(65d)の間には、ケース本体(72)の先端筒部(79)が内嵌している。内側筒部(65c)の軸方向の他端側には、円柱空間(67)を覆うようにメッシュ状の漏電防止材(68)が設けられている。この漏電防止材(68)は、対向電極(65)と接触することで、実質的にアースされている。これにより、漏電防止材(68)は、貯水タンク(61)の内部の空間(水中)のうち、円柱空間(67)の内側から外側への漏電を防止している。
【0077】
対向電極(65)は、電極本体(65a)の一部が貯水タンク(61)の外部に露出される状態となる。このため、電源部(70)と対向電極(65)とを電気配線によって容易に接続することができる。
【0078】
−放電装置の運転動作−
実施形態2の換気装置(10)においても、放電装置(60)が運転されることで、貯水タンク(61)内で過酸化水素を含む水の生成がなされる。
【0079】
上記放電装置(60)の運転の開始時には、図8に示すように、絶縁ケーシング(71)の内の空間(S)が浸水した状態となっている。電源部(70)から電極対(64,65)に所定の直流電圧(例えば1kV)が印加されると、開口(74)の内部の電流密度が上昇していく。
【0080】
図8に示す状態から、電極対(64,65)へ更に直流電圧が継続して印加されると、開口(74)内の水が気化されて気泡(B)が形成される(図9を参照)。この状態では、気泡(B)が開口(74)のほぼ全域を覆う状態となり、円柱空間(67)内の負極側の水と、放電電極(64)との間に気泡(B)による抵抗が付与される。これにより、放電電極(64)と対向電極(65)との間の電位差が保たれ、気泡(B)でストリーマ放電が発生する。その結果、水中では、水酸ラジカルや過酸化水素を生成され、これらの成分が水の浄化や、集塵部(25)での殺菌・浄化に利用される。
【0081】
〈実施形態2の変形例〉
上記実施形態2では、円板状の蓋部(73)の軸心に1つの開口(74)を形成しているが、この蓋部(73)に複数の開口(74)を形成してもよい。図10に示す例では、蓋部(73)の軸心を中心とする仮想ピッチ円上に、5つの開口(74)が等間隔置きに配列されている。このように蓋部(73)に複数の開口(74)を形成することで、各開口(74)の近傍でそれぞれストリーマ放電を生起させることができる。
【0082】
〈発明の実施形態3〉
次に、本発明の実施形態3について説明する。実施形態3は、図11及び図12に示すように、実施形態1とは、ケーシング(11)の配置と集塵ユニット(20)の構成が異なるものである。
【0083】
具体的には、本実施形態3のケーシング(11)は、横長の矩形状の箱体に形成され、ハウス(1)の天井の幅方向の側面近傍に配置されている。ケーシング(11)は、前面に外気(室外空気)を取り込む吸込口(12)が形成され、背面に吸込口(12)から取り込んだ室外空気(以下、取込空気)をハウス(1)内へ供給する吹出口(13)が形成されている。尚、ハウス(1)における吹出口(13)との対向面には、処理空気を流入させるための空気口が形成されている(図示省略)。上記吹出口(13)は、複数のダクト(13a)を介してハウス(1)内と繋がっている。
【0084】
ケーシング(11)の内部は、吸込口(12)から吹出口(13)に向かって空気が流れる流通路(14)に構成されている。そして、ケーシング(11)の内部の流通路(14)には、送風ファン(15)と集塵ユニット(20)とが空気の流れに沿って配置されている。
【0085】
上記集塵ユニット(20)は、フィルタ(81)を備えて構成されている。フィルタ(81)は、ケーシング(11)内の送風ファン(15)と吸込口(12)との間に、流通路(14)を覆うように配設されている。そして、ケーシング(11)内の流通路(14)を通過する取込空気に含まれる塵埃を捕集・除去するよう構成されている。そして、噴霧ユニット(30)は、放電装置(60)で生成した過酸化水素を含む水をフィルタ(81)に向けて噴霧する。これにより、塵埃が捕集されたフィルタ(81)において菌の残留、又は繁殖を抑制することができる。
【0086】
本実施形態3によれば、集塵ユニット(20)をフィルタ(81)で構成したため、安価、且つ簡易的な構成で塵埃を捕集・除去することができる。その他の構成、作用・効果は実施形態1と同様である。
【0087】
〈発明の実施形態4〉
次に、本発明の実施形態4について説明する。本実施形態4は、図13及び図14に示すように、実施形態3の構成に全熱交換器(87)を追加した構成である。
【0088】
具体的には、本実施形態4に係る換気装置(10)は、ケーシング(11)と遠心ファン(82)と集塵ユニット(20)と全熱交換器(87)とを備えている。尚、集塵ユニット(20)の構成は実施形態3と同様なので、説明は省略する。
【0089】
上記ケーシング(11)は、横長の矩形状の箱体に形成され、ハウス(1)の天井の幅方向の側面近傍に配置されている。ケーシング(11)は、前面の下部に外気(室外空気)を取り込む吸込口(12)が形成され、背面に吸込口(12)から取り込んだ室外空気(以下、取込空気)をハウス(1)内へ供給する吹出口(13)が形成されている。また、ケーシング(11)は、底面の略中央に室内空気を取り込む排気吸込口(83)と、前面の上部に取り込んだ排気空気を排気する排気吹出口(84)とが形成されている。尚、ハウス(1)におけるケーシング(11)の吹出口(13)との対向面には、処理空気を流入させるための空気口が形成されている(図示省略)。
【0090】
ケーシング(11)の内部には、中央部に全熱交換器(87)が配置され、全熱交換器(87)と吹出口(13)との間に遠心ファン(82)が配置されている。したがって、上記ケーシング(11)の内部は、吸込口(12)から全熱交換器(87)、及び遠心ファン(82)の上部を介して吹出口(13)に向かって空気が流れる流通路(14)に構成される一方、排気吸込口(83)から全熱交換器(87)、及び遠心ファン(82)の下部を介して排気吹出口(84)に向かって空気が流れる排気通路(85)に構成されている。
【0091】
上記遠心ファン(82)は、上側ファン(82a)と下側ファン(82b)とで構成され、全熱交換器(87)と吹出口(13)との間に配置されている。上側ファン(82a)は本発明に係る吸込ファンを構成し、下側ファン(82b)は本発明に係る排気ファンを構成している。そして、上側ファン(82a)は、下側ファン(82b)よりフィン外径が大きく形成され、下側ファン(82b)よりも送風量が大きくなるように構成されている。これにより、ハウス(1)内へ供給する空気量が排気量よりも大きくなるため、ハウス(1)内の空気圧が外気圧よりも高くなる。これにより、ハウス(1)内への外気の侵入を防止することができる。尚、本発明の吸込ファンと排気ファンとを別々のシロッコファン等で構成し、コントローラによって各ファンの送風量を制御することで、ハウス(1)内へ供給する空気量が排気量よりも多くなるようにしてもよい。
【0092】
上記全熱交換器(87)は、取込空気と排気空気とを熱交換させるものであって、本発明に係る熱交換器を構成している。全熱交換器(87)は、室外から流通路(14)へ取り込んだ取込空気が流通可能な通気孔と、室内から排気通路(85)へ取り込んだ排気空気が流通可能な通気孔とが区画されている。そして、全熱交換器(87)では、取込空気と室内からの排気空気との顕熱及び潜熱の双方が熱交換する。つまり、全熱交換器(87)は、取込空気の温度と湿度の双方を調節するための空気調和手段を構成している。
【0093】
−運転動作−
換気装置(10)が運転されると、遠心ファン(82)が駆動される。これにより、室外空気がケーシング(11)内の流通路(14)に取り込まれる一方、室内空気(排気空気)が排気通路(85)に取り込まれる。取込空気は、集塵ユニット(20)を通過した後、全熱交換器(87)を通過する。例えば、夏季においては、全熱交換器(87)を流れる取込空気が、排気通路(85)側の排気空気によって冷却される。また、取込空気中の水分が排気通路(85)側の排気空気へ付与される。その結果、比較的低温且つ低湿の取込空気を処理空気としてハウス(1)内へ供給することができる。また、例えば冬季においては、全熱交換器(87)を流れる取込空気が、排気通路(85)側の排気空気によって加熱される。また、排気通路(85)側の排気空気中の水分が取込空気へ付与される。その結果、比較的高温且つ高湿の取込空気を処理空気としてハウス(1)内へ供給することができる。
【0094】
そして、噴霧ユニット(30)は、放電装置(60)で生成した過酸化水素を含む水をフィルタ(81)に向けて噴霧する。これにより、塵埃が捕集されたフィルタ(81)において菌の残留、又は繁殖を抑制することができる。
【0095】
−実施形態4の効果−
本実施形態4によれば、上側ファン(82a)の容量を下側ファン(82b)よりも大きくして室外空気の取込量が室内空気の排気量よりも大きくなるようにした。このため、ハウス(1)内の空気圧が外気圧よりも高い気圧になるため、隙間等からハウス(1)内への外気を防止できる。これにより、外気に含まれる塵埃等の室内への侵入を防止することができる。
【0096】
また、全熱交換器(87)を設けたため、室外空気と室内空気とを熱交換させると同時に湿度の調節をすることができる。これにより、ハウス(1)内の温湿度を調節することができる。その他の構成、作用・効果は実施形態3と同様である。
【0097】
〈その他の実施形態〉
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0098】
〈放電ユニットの構成>
上述した各実施形態の電源部(70)には、ストリーマ放電の放電電力を一定に制御する定電力制御部を用いている。しかしながら、定電力制御部に代えて、ストリーマ放電時の放電電流を一定に制御する定電流制御部を設けることもできる。この定電流制御を行うと、水の導電率によらず放電が安定するため、スパークの発生も未然に回避できる。
【0099】
また、上述した各実施形態では、電源部(70)の正極に放電電極(64)を接続し、電源部(70)の負極に対向電極(65)を接続している。しかしながら、電源部(70)の負極に放電電極(64)を接続し、電源部(70)の正極に対向電極(65)を接続することで、電極対(64,65)の間で、いわゆるマイナス放電を行うようにしてもよい。
【0100】
〈イオン供給部の構成〉
上述した各実施形態では、貯水タンク(61)の一部を銅部材とすることで銅イオンを供給することができる。しかしながら、例えば鉄イオンを生成する鉄製の部材を用いることもできる。鉄イオンも銅イオンと同様、過酸化水素の存在下でフェントン反応を促進させるため、水酸ラジカルの生成量を増大できる。また、例えば銅片や鉄片を貯水タンク(61)内に浸漬することで、これらによってイオンを供給することもできる。
【0101】
また、上記実施形態では、供給装置として噴霧ユニット(30)を用いたが、本発明の供給装置はこれに限られず、その他の供給装置についても適用することができる。
【0102】
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0103】
以上説明したように、本発明は、植物栽培施設用の換気装置について有用である。
【符号の説明】
【0104】
1 ハウス
11 ケーシング
12 吸込口
13 吹出口
15 送風ファン
20 集塵ユニット
22 荷電部
25 集塵部
30 噴霧ユニット
61 貯水タンク
64,65 電極対
64 放電電極
65 対向電極
70 電源部
81 フィルタ
82 遠心ファン
82a 上側ファン
82b 下側ファン
83 排気吸込口
84 排気吹出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外空気の吸込口(12)と空気の吹出口(13)とが形成されたケーシング(11)と、該ケーシング(11)内に収容される吸込ファン(15,82a)とを備え、
上記吸込ファン(15,82a)によって上記室外空気を上記吸込口(12)からケーシング(11)内に取り込み、該取込空気を処理して処理空気を吹出口(13)から室内に供給する植物栽培施設用の換気装置であって、
上記ケーシング(11)内に設けられ、上記取込空気中の塵埃を除去する集塵装置(20)と、
水を貯留する貯水タンク(61)、該貯水タンク(61)の水中でストリーマ放電を生起する電極対(64,65)、及び該電極対(64,65)に直流電圧を印加する直流電源(70)を有し、該ストリーマ放電によって上記貯水タンク(61)の水中に過酸化水素を生成する放電装置(60)と、
上記貯水タンク(61)内の過酸化水素を含む水を上記集塵装置(20)に供給する供給装置(30)とを備えている
ことを特徴とする植物栽培施設用の換気装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記ケーシング(11)は、室内空気を取り込む排気吸込口(83)と上記室内空気を排気する排気吹出口(84)とが形成される一方、上記排気吸込口(83)から取り込んだ室内空気を上記排気吹出口(84)から排気させる排気ファン(82b)を内部に収容し、
上記吸込ファン(15,82a)及び排気ファン(82b)は、室外空気の取込量が上記室内空気の排気量よりも大きくなるように構成されている
ことを特徴とする植物栽培施設用の換気装置。
【請求項3】
請求項2において、
上記ケーシング(11)内に設けられ、取り込んだ室内空気と室外空気とを熱交換させる熱交換器(87)を備えている
ことを特徴とする植物栽培施設用の換気装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1つにおいて、
上記集塵装置(20)は、上記取込空気中の塵埃を帯電させる荷電部(22)と、該荷電部(22)で帯電した塵埃を電気的に捕集する集塵部(25)とを備え、
上記供給装置(30)は、上記集塵部(25)に対して過酸化水素を含む水を供給するよう構成されている
ことを特徴とする植物栽培施設用の換気装置。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか1つにおいて、
上記集塵装置(20)は、上記取込空気中の塵埃を補足するフィルタ部材(81)を備え、
上記供給装置(30)は、上記フィルタ部材(81)に対して過酸化水素を含む水を供給するよう構成されている
ことを特徴とする植物栽培施設用の換気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−75331(P2012−75331A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220477(P2010−220477)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】