説明

植物栽培用ハウスの自動運転制御システム

【課題】ハウス内の植物の栽培に必要な熱量の過不足を抑え、コージェネレーション設備の熱効率を高める。
【解決手段】本発明は、ガス燃料を使用して熱及び電力を発生するコージェネレーション設備1と、該コージェネレーション設備1で発生した熱及び電力を使用して、ハウス2内の培地7を植物6の栽培に適した温度にするための蓄熱槽12とを備える。この蓄熱槽12の運転はコンピュータ3により制御する。又、コンピュータ3は、インターネット20から取得した天気予報データに基づき、蓄熱槽12に必要な一定時間内の熱量を予測して、蓄熱温度、蓄熱時間、発電時間などを制御することにより、気象の変化に対応した熱量が常に安定して確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物栽培用ハウスの自動運転制御システムに関するものであり、特に、ハウス内の植物に適した環境に調整して植物を効率的に育成するための植物栽培用ハウスの自動運転制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、此種植物栽培用ハウスは、コージェネレーション設備でガス等を燃焼して熱及び電力を発生させ、該コージェネレーション設備で発生した熱及び電力を使用して、ハウス内を植物の栽培に適した環境に調整し、植物の育成を効率的に行うようにした植物栽培用ハウスの自動運転制御システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−295307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来技術ではコージェネレーション設備を運転し、該コージェネレーション設備で発生した熱及び電力をハウス内の培地に供給しているが、該培地に供給する熱量は気温などの気象データによって大きく変化する。従って、当日の気象データの変化に応じた適正な熱量を培地に供給する必要があり、適正な熱量が供給されない場合は、熱量の過不足を生じて熱エネルギー損失を招くという問題がある。
【0004】
上記問題を解決するためには、コージェネレーション設備を最新の気象データを随時取り込んでコージェネレーション設備を運転することが考えられるが、この場合、気象データの変化に応じてコージェネレーション設備(ガスエンジン等)の運転負荷を変更すると、運転負荷が一定である定格運転時に比べて、熱効率が大幅に低下するという問題がある。又、熱効率の向上を図るために、コージェネレーション設備の運転時に発生する排熱を利用することも考えられるが、この場合は、午前と午後とで気象データの変化が大きいので、適正な熱量を培地及び室内に供給することが困難になる。
【0005】
そこで、気象の変化が大きい場合でも植物の栽培に必要な熱量を常に過不足なく供給でき、且つ、コージェネレーション設備の熱効率の低下を防止するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、燃料を燃焼させて熱及び電力を発生させるコージェネレーション設備を具備し、該発生した熱又は電力を用いて、ハウス内の培地及びハウス内を植物の栽培に適した培地及びハウス内温度に加温する植物栽培用ハウスの自動運転制御システムにおいて、該ハウス内に前記コージェネレーション設備の運転時に発生する排熱が蓄えられ、且つ、夜間に前記培地及びハウス内に必要な熱量を供給するための蓄熱槽を設置すると共に、該蓄熱槽及びコージェネレーション設備の運転を制御するコンピュータを設け、該コンピュータは、インターネットを介してウェッブブラウザ上で制御・データの閲覧が可能で、気温等の天気予報データに基づいて前記蓄熱槽に必要な翌日の熱量を予測する機能を有し、該予測した熱量が前記蓄熱槽に蓄えられるように制御する植物栽培用ハウスの自動運転制御システムを提供する。
【0007】
この構成によれば、気温等の天気予報データに基づいて、蓄熱槽に必要な翌日の熱量を予測し、該予測した熱量を蓄熱槽に蓄えるので、気温等の変化に対応した所要の熱量がハウス内の培地に安定して供給される。
【0008】
請求項2記載の発明は、上記コンピュータは上記ハウスとインターフェースを介してインターネットあるいはLANで接続されており、ブラウザにより蓄積データの閲覧及び上記コージェネレーション設備の制御を行うことを特徴とする請求項1記載の植物栽培用ハウスの自動運転制御システムを提供する。
【0009】
この構成によれば、上記制御システムは1台のサーバに対して不特定の端末PCの対応が可能となるため、システムの集約化によるコストの軽減およびシステムの遠隔操作が可能になる。
【0010】
請求項3記載の発明は、上記コンピュータは上記天気予報データをインターネットから取り込む機能を有する請求項1記載の植物栽培用ハウスの自動運転制御システムを提供する。
【0011】
この構成によれば、上記天気予報データはインターネットを介してコンピュータに自動的に取り込めるので、前記天気予報データを人手により収集して入力する手間が不要になる。
【0012】
請求項4記載の発明は、上記コンピュータは上記天気予報データと培地及びハウス温度との関係を示す履歴情報を記憶する機能を有し、該履歴情報を参照して上記予測した熱量を演算しつつ履歴情報を補正することを特徴とする請求項1,2又は3記載の植物栽培用ハウスの自動運転制御システムを提供する。
【0013】
この構成によれば、天気予報データと培地及びハウス内温度との関係を示す履歴情報及びハウス外気温度、培地温度、ハウス内温度、蓄熱槽温度等の温度データを参照して、上記予測した熱量を補正するので、蓄熱槽に蓄えられる熱量がより正確に設定される。
【0014】
請求項5記載の発明は、上記コージェネレーション設備は上記ハウス外側に設置した補助熱源ユニットを介して上記蓄熱槽に熱量を蓄える請求項1記載の植物栽培用ハウスの自動運転制御システムを提供する。
【0015】
この構成によれば、コージェネレーション設備と蓄熱槽の間には補助熱源ユニットが設置されているので、該補助熱源ユニットの温度を所要温度に予め設定しておくことにより、蓄熱運転時に蓄熱槽は所定の蓄熱温度に迅速に立ち上げられる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明は、翌日の気温等に応じた必要な熱量を蓄熱槽に蓄えて、ハウス内の培地に安定供給できるので、植物の栽培に適した培地及びハウス温度を常に確保でき、栽培に必要な熱量の過不足を最小限に抑えることができる。
【0017】
請求項2記載の発明は、農場にインターフェースを設置することでインターネット及びLANを介して複数の農場を1台のサーバで管理することが可能で、不特定のPC端末でサーバに接続することでデータの閲覧及びシステムの制御を行うことも出来、システムの汎用性、経済性が向上する。
【0018】
請求項3記載の発明は、天気予報データを人手により収集してコンピュータに入力する必要がないので、請求項1又は2記載の発明の効果に加えて、天気予報データの収集・入力作業の無人化が可能になる。
【0019】
請求項4記載の発明は、天気予報データと培地温度との関係を示す履歴情報および外気温度、培地温度、ハウス内温度、蓄熱槽温度等を考慮することにより、蓄熱槽に蓄える熱量を補正できるので、請求項1、2又は3記載の発明の効果に加えて、植物の栽培に適した培地温度に正確に加温することができる。
【0020】
請求項5記載の発明は、コージェネレーション設備と蓄熱槽の間に設定した補助熱源ユニットを予め所要温度に設定できるので、請求項1記載の発明の効果に加えて、蓄熱槽を短時間で蓄熱温度に制御できると共に、補助熱源ユニットはコージェネレーション設備のバックアップ手段の役目を果たすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明はハウス内の植物の栽培に必要な熱量を気象の変化に応じて過不足なく供給でき、且つ、コージェネレーション設備の熱効率の低下を防止するという目的を達成するために、燃料を燃焼させて熱及び電力を発生させるコージェネレーション設備を具備し、該発生した熱又は電力を用いて、ハウス内の培地を植物の栽培に適した培地温度に加温する植物栽培用ハウスの自動運転制御システムにおいて、該ハウス内に前記コージェネレーション設備の運転時に発生する排熱が蓄えられ、且つ、夜間に前記培地に必要な熱量を供給するための蓄熱槽を設置すると共に、該蓄熱槽及びコージェネレーション設備の運転を制御するコンピュータを設け、さらに該コンピュータとハウス内に設置したセンサ及びコージェネレーション設備との接続機構を設け、該コンピュータは、気温等の天気予報データに基づいて前記蓄熱槽に必要な翌日の熱量を予測する機能を有し、該予測した熱量が前記蓄熱槽に蓄えられるように制御することにより実現した。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の好適な実施例を図1乃至図3に従って説明する。本実施例は、コージェネレーション設備の運転時に発生する廃熱が蓄えられる蓄熱槽をハウス内に設置し、該蓄熱槽に必要な翌日の熱量を天気予報データに基づいて予測し、夜間に蓄熱を放出して培地に供給することにより、気象の変化に関わらず、植物の栽培に適した培地温度を常に確保でき、熱量の過不足を最小限に抑制できるように構成したものである。
【0023】
更に、本実施例は、燃料を燃焼して熱及び電力を発生するコージェネレーション設備と、該コージェネレーション設備で発生した熱及び電力を使用して、ハウス内の培地を植物の栽培に適した環境に改善する手段と、コージェネレーション設備で発生した電力を使用して培地に向けて電気照明(人工的な日長反応制御)を行う手段と、コージェネレーション設備で排出された二酸化炭素ガスをハウス内に供給して植物の代謝を活性化させる手段と、ハウス内のセンサならびにコージェネレーション設備をインターネットと接続する手段等を具備することにより、培地の管理と植物の育成が効率的に実行される。尚、本実施例は、比較的小規模の農業施設又は家庭施設に好適に設置される植物栽培用ハウスの自動運転制御システムに適用したものであるが、中規模若しくは大規模農業施設又は家庭施設にも適用可能である。
【0024】
図1は本実施例に係る植物栽培用ハウスの自動運転制御システムを示す概略図である。本発明の自動運転制御システムは、燃料を燃焼してコージェネレーション設備1を運転することにより電力と熱を発生させ、発生した電力と熱をハウス2内の各種機器設備に供給すべく構成されている。尚、システム全体は、農場とインターネット又はLANを介して接続したコンピュータ3により自動運転制御される。
【0025】
コージェネレーション設備1は公知の熱機関、例えば、ガスエンジン、ガスタービン、或いは、燃料電池、発電機、ヒートポンプ、吸収式冷温水発生機等により駆動される。又、コージェネレーション設備1で使用される燃料としては、例えば、ガス供給設備4から供給される都市ガス、LPG(液化石油ガス)又は化石燃料などが使用される。該燃料の燃焼等によってコージェネレーション設備1内に二酸化炭素ガス(排気ガス)が生じ、生じた二酸化炭素ガスは、CO2 供給ダクト5を介してハウス2内に供給される。
【0026】
ハウス2内への二酸化炭素ガスの供給は、CO2 制御装置(図示せず)により所定の二酸化炭素ガス濃度に調整して供給される。また、二酸化炭素ガスの供給時間帯は、予めCO2 制御装置によりプログラムされており、植物6が二酸化炭素ガスを吸収する時間帯と対応している。更に、ハウス2内には植物6を栽培するための培地7が設けられている。該培地7はイチゴ、メロン、ニラ等の農作物や花類などの植物6を栽培する為に調整された液状又は固形の培養基となるものであり、土壌栽培又は水耕栽培のいずれにも適用可能である。
【0027】
又、培地7の周囲には培養液供給手段8、培地加温手段9及び電照制御手段10が配設されている。培養液供給手段8は、培養液タンク(図示せず)内に貯蔵されている液化肥料等の培養液を培地7に供給するものである。又、培地加温手段9は、コージェネレーション設備1で発生した熱(排熱を含む)により、培地7の温度を植物の栽培に適した温度に加温するものである。
【0028】
培地加温手段9は、コージェネレーション設備1の運転時に発生する熱が蓄えられ、且つ、夜間に前記培地7に必要な熱量を供給するための蓄熱槽12と、該蓄熱槽12に蓄えられた熱を培地7内部に送り込む培地加温用パイプ13と、該培地加温用パイプ13の途中に設置された調整バルブ14とを備え、前記蓄熱槽12はハウス2内に配置されている。又、調整バルブ14の弁開度をコンピュータ3によって制御することにより、培地7に供給される熱量を任意に調整変更することができる。
【0029】
本実施例では、コージェネレーション設備1と蓄熱槽12の間には、所定温度の温水を発生させて貯湯タンク(図示せず)に貯めるためのガス燃焼式補助熱源ユニットであるバックアップ用ボイラー15が設けられ、該バックアップ用ボイラー15の運転はコンピュータ3によって制御される。バックアップ用ボイラー15は、蓄熱槽12の設定温度よりも所定値だけ高い設定温度を維持するように運転される。例えば、蓄熱槽12の設定温度が15℃の場合、バックアップ用ボイラー15の運転温度は20℃に設定することが好ましい。
【0030】
また、電照制御手段10は、栽培中の植物6に人口照明を行うものであり、複数の照明器具16を有している。この電照制御手段10は、コンピュータ3により設定された時間だけ植物6に人口光を照射し、該植物6に対して花卉分化等の日長反応の制御を行う。
【0031】
インターネット接続用インターフェース27は、ハウス2内の各種センサ22〜26及びコージェネレーション設備1の制御機能部とコンピュータ3とをインターネットを介して接続する機能を持つ。このインターネット接続用インターフェース27により、各種センサ22〜26の信号ならびにコージェネレーション設備1の制御信号と、コンピュータ3における信号を変換する。
【0032】
このように、上記自動運転制御システムによれば、コージェネレーション設備1にてガス燃料を燃焼して電力と熱を発生させる。そして、該発生した電力は、配線19を介してハウス2内に送られ、該ハウス2内の電照制御手段10や培養液供給手段8等により電気エネルギー若しくは駆動エネルギーとして使用される。尚、本実施例の自動運転制御システムでは、必要により、コージェネレーション設備1に接続された系統連系制御装置17によって商用電源18を共用することができる。従って、電照制御手段10により植物6に対して人口照明を行い、日長を人為的に調整して栽培することにより、植物6の育成を効率的に行うことができる。
【0033】
又、コージェネレーション設備1で発生した熱は、培地加温用パイプ13を通して培地7に送り込まれる。而して、該培地7を植物6の育成に適した温度に調整することができる。
【0034】
更に、コージェネレーション設備1で発生した熱は、培地7内に存在する雑菌を殺菌するための熱源として使用でき、併せて、病原性微生物の繁殖を抑制するための熱源としても使用できる。
【0035】
更に又、コージェネレーション設備1で燃料の燃焼によって発生した二酸化炭素ガスは、CO2 供給ダクト5を通してハウス2内に供給される。従って、二酸化炭素ガスの大気中への放出量が低減し、且つ、ハウス2内に放出された二酸化炭素ガスは、コンピュータ3の制御により所要の時間帯に適正量だけ自動的に供給される。
【0036】
上記コンピュータ3及びその周辺機器の構成例を図2に示す。このコンピュータ3は、各種センサー類からの検出データ(二酸化炭素濃度データを含む)の信号を変換する機能部、該データを記憶・表示する機能部を備えると共に、ハウス2内外の気温、培地温度、蓄熱槽温度、並びにハウス2内のCO2 濃度及び各種の運転時間を自動制御する機能部を備えている。
【0037】
更に、コンピュータ3は、インターネット20から天気予報データを自動で取り込む機能部(気象データ取込み部)と、該取り込んだ天気予報データに基づいて、翌日(又は数時間後)の蓄熱槽12に必要な熱量を予測する機能部と、その予測結果に応じて蓄熱槽12に対して蓄熱運転して、蓄熱時間又は蓄熱温度などをコントロールする機能部とから成る予測制御ユニットを備えている。
【0038】
コンピュータ3は、前記予測制御ユニットにて予測した熱量(以下、「予測熱量」という)に応じた動作信号を生成して、該動作信号をインターネット接続用インターフェース27に送信することにより、予測熱量が蓄熱槽12に蓄えられるようにポンプ、バルブ類等の各種動作部21を制御する。本実施例に係るコンピュータ3は、蓄熱槽12、バックアップ用ボイラー15、調整バルブ14等を運転制御する際に、各種センサー類22〜27から送られる検出データを参照して、上記予測熱量を補正することができる。
【0039】
図2に示すように、コンピュータ3には、インターネット接続用インターフェース27を介して各種センサー類22〜26が接続され、これらの出力信号がコンピュータ3に自動的に送信される。該センサー類22〜26には、外気温度センサー22、培地温度センサー23、ハウス温度センサー24、蓄熱槽温度センサー25などの温度検出器、並びに、CO2 センサー26が含まれる。
【0040】
外気温度センサー22はハウス2外側の気温を検出し、培地温度センサー23はハウス2内の培地7の温度を検出する。又、ハウス温度センサー24はハウス2内部の気温を検出し、蓄熱槽温度センサー25は蓄熱槽12内の蓄熱温度を検出する。
【0041】
コンピュータ3は、翌日に蓄熱槽12に蓄えるべき所要の熱量を天気予報データに基づき予測(補正を含む)して、該予測熱量に対応した運転時間などの動作信号をインターネット接続用インターフェース27に送信する。そして、コントローラ21により蓄熱槽12、バックアップ用ボイラー15、調整バルブ14等の動作を制御することにより、植物6に適した培地温度に自動的に調整する。
【0042】
図示例では、インターネット接続用インターフェース27には、コンピュータ3に収集された各種センサー類22〜26の出力データ、並びに、天気予報データ等が自動的に入力される。
【0043】
更に、コンピュータ3は、蓄熱槽12に必要な熱量を供給するために、蓄熱槽12への熱量の供給時間(蓄熱時間)及び/又は蓄熱温度を調整変更する。又、コンピュータ3は、蓄熱温度が所定範囲の上限値以上になった時に、蓄熱槽12に対する蓄熱運転を停止し、且つ、蓄熱温度が所定範囲の下限値以下になった時に、蓄熱運転を再開するように制御する。
【0044】
更に又、コンピュータ3に内蔵された記憶部には、天気予報データ、蓄熱槽温度及び培地温度等の温度、並びに蓄熱運転の時間との関係を示す過去の履歴情報が記憶される。コンピュータ3は、該過去の履歴情報を参照して上記予測熱量を補正できるように構成されている。
【0045】
コンピュータ3に蓄積されたデータは、ウェブブラウザ28を介して閲覧することができる。また、ウェブブラウザ28ならびにコンピュータ3を介して、コージェネレーション設備1の制御が可能である。
【0046】
次に、本発明システムの運転方法について説明する。先ず、通常の暖房負荷運転のときは、図3(a)に示すように、朝方と夕方に各3時間だけ電照制御手段10の照明器具16を点灯する。又、午前7時から午後1時までの時間帯に二酸化炭素ガスをハウス2内に供給する。
【0047】
又、蓄熱運転は、図3(b)に示すように、午前6時から正午までの時間帯と、午後6時から夜12時までの時間帯に行う。蓄熱槽12に蓄えられた熱量は、培地加温用パイプ13により培地7内に供給される。この場合、該培地7に供給される熱量は、調整バルブ14の弁開度又は開弁時間をコンピュータ3にて変更することにより、植物6の栽培に適した培地温度になるように適宜調整される。
【0048】
以上説明した様に本実施例によれば、気温等の天気予報データに基づいて、蓄熱槽12に必要な翌日(又は数時間後)の熱量を予測し、該予測熱量を蓄熱槽12に蓄えるので、気温等の変化に対応した所要の熱量がハウス2内の培地7に安定して供給される。従って、植物6の栽培に適した培地温度を常時確保でき、栽培に必要な熱量の過不足を最小限に抑えることができる。
【0049】
この場合、天気予報データはインターネット20を介してコンピュータ3に自動的かつ定期的若しくは随時取り込むことができ、天気予報データの収集・入力作業の無人化が可能になる。
【0050】
本実施例では、ハウス外気温度、培地温度、ハウス内温度、蓄熱槽温度等の温度データを参照して、上記予測熱量を補正することができる。又、天気予報データと培地温度との関係を示す履歴情報を参照して、上記予測熱量を補正することもできる。斯くして、植物6の栽培に適した培地温度に一層正確に加温することができる。
【0051】
更に、蓄熱槽12の蓄熱温度及び蓄熱時間の双方または一方を調整することにより、コンピュータ3によって予測した熱量を蓄熱槽12に蓄えるので、予測熱量の大小に関わらず、コージェネレーション設備1は定格運転を維持して制御できる。従って、コージェネレーション設備(ガスエンジン)1の運転効率を常に最適状態に保持しつつ、蓄熱槽12に必要な熱量を確実に蓄積できる。
【0052】
更に又、蓄熱槽12の蓄熱温度が所定範囲以上になった時は蓄熱運転を停止し、且つ、該蓄熱温度が所定範囲以下になった時は蓄熱運転を再開するので、蓄熱運転中、蓄熱槽12の温度は所定範囲内に設定される。このため、蓄熱運転をオンオフ制御により容易に実行できると共に、蓄熱槽12を所定の温度範囲に常に維持することができる。
【0053】
又、コージェネレーション設備1と蓄熱槽12間におけるハウス2の外側にバックアップ用ボイラー15を設置し、該バックアップ用ボイラー15は、蓄熱温度(例えば15℃)よりも高い運転温度(例えば20℃)に設定される。従って、該バックアップ用ボイラー15を介して蓄熱槽12に熱量を供給することにより、蓄熱槽12を目的の蓄熱温度に迅速に加熱制御できる。さらに、バックアップ用ボイラー15は、非常時にはコージェネレーション設備1のバックアップ手段として機能することができる。
【0054】
尚、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施例を示し、植物栽培用ハウスの自動運転制御システムの概略構成図。
【図2】一実施例に係るコンピュータ及びコントローラ等を説明するブロック図。
【図3】一実施例に係る自動運転制御システムの運転方法を示すグラフであり、図3(a)は通常暖房負荷運転時の運転方法を説明するグラフ、図3(b)は蓄熱運転時の運転方法を説明するグラフ。
【符号の説明】
【0056】
1 コージェネレーション設備
2 ハウス
3 コンピュータ
4 ガス供給設備
5 CO2供給ダクト
6 植物
7 培地
8 培養液供給手段
9 培地加温手段
10 電照制御手段
12 蓄熱槽
13 培地加温用パイプ
14 調整バルブ
15 バックアップ用ボイラー(ガス式補助熱源ユニット)
16 照明器具
17 系統連結制御装置
18 商用電源
19 電力配線
20 インターネット
21 各種動作部
22 外気温度センサー
23 培地温度センサー
24 ハウス温度センサー
25 蓄熱槽温度センサー
26 CO2濃度センサ
27 インターネット接続用インターフェース
28 ウェッブブラウザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼させて熱及び電力を発生させるコージェネレーション設備を具備し、該発生した熱又は電力を用いて、ハウス内の培地を植物の栽培に適した培地温度に加温する植物栽培用ハウスの自動運転制御システムにおいて、該ハウス内に前記コージェネレーション設備の運転時に発生する熱が蓄えられ、且つ、夜間に前記培地に必要な熱量を供給するための蓄熱層を設置すると共に、該蓄熱槽及びコージェネレーション設備の運転を制御するコンピュータ、さらに該コンピュータとハウス内に設置したセンサ及びコージェネレーション設備との接続機構を設け、該コンピュータは、気温等の天気予報データに基づいて前記蓄熱槽に必要な翌日の熱量を予測する機能を有し、該予測した熱量が前記蓄熱槽に蓄えられるように制御することを特徴とする植物栽培用ハウスの自動運転制御システム。
【請求項2】
上記コンピュータは上記ハウスとインターフェースを介してインターネットあるいはLANで接続されており、ウェッブブラウザにより蓄積データの閲覧及び上記コージェネレーション設備の制御を行うことを特徴とする請求項1記載の植物栽培用ハウスの自動運転制御システム。
【請求項3】
上記コンピュータは上記天気予報データをインターネットから取り込む機能を有することを特徴とする請求項1又は2記載の植物栽培用ハウスの自動運転制御システム。
【請求項4】
上記コンピュータは上記天気予報データと暖房熱量との関係を示す履歴情報を記憶する機能を有し、該履歴情報を参照して予測熱量を演算し、履歴情報を補正しつつ、蓄熱温度、蓄熱時間、発電時間等を調整することにより、上記予測された熱量を該蓄熱槽に蓄えることを特徴とする請求項1,2又は3記載の植物栽培用ハウスの自動運転制御システム。
【請求項5】
上記コージェネレーション設備は上記ハウスに設置した補助熱源ユニットを介して上記蓄熱槽に熱量を蓄えることを特徴とする請求項1記載の植物栽培用ハウスの自動運転制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−50174(P2009−50174A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217586(P2007−217586)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000161998)京葉瓦斯株式会社 (46)
【Fターム(参考)】