説明

植物栽培用ラック

【課題】植物栽培用コンテナを多数使用して室内などで植物栽培を行なう場合に好適なラックを提案する。
【解決手段】間口方向に複数の栽培用コンテナ1を奥行き方向出し入れ自在に載置する棚11を備えたラックであって、棚11の上側の間口方向に長い植物栽培用空間の少なくとも上部領域を囲う、内面が光反射面である囲い手段23が配設され、この囲い手段23は、前記植物栽培用空間の天井部をカバーする天井側光反射板18と、前記植物栽培用空間の奥行き方向の前後両側をカバーする前後両垂直光反射板20を有し、この囲い手段23の内側に照明器具17の光源17aが配設されると共に、当該囲い手段23で囲まれる前記植物栽培用空間の間口方向の一端に、当該植物栽培用空間の間口方向の他端側に向かって送風する送風用ファン24が配設され、前後両垂直光反射板20の内、栽培用コンテナ1の出し入れ側にある垂直光反射板は、開閉自在とした構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培用コンテナを使用して植物栽培が簡単に行える植物栽培用ラックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラックの棚に植物栽培用コンテナを立体的に支持して植物栽培を行う場合、当該コンテナ内に植え込まれた植物に対して効率良く照明する必要がある。即ち、この種の植物栽培用ラックには、照明器具を組み込まなければならないが、従来周知のこの種のラックは、例えば特許文献1に記載されるように、ラックの棚の上側に、それぞれ光反射板を備えた照明器具を適当な配置で配設するか又は、照明器具それぞれには光反射板を設けずに複数の照明器具に共通の大きな光反射板を設け、この光反射板の下側に照明器具を取り付けるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−245554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の植物栽培用ラックでは、棚上に載置された植物栽培用コンテナの上側の植物栽培空間に対する照明効果を高めるためには、照明器具上側に光反射板を配設するだけでなく、植物栽培用空間を光反射板が囲むような囲い手段を設けて、この囲い手段の内側に照明器具の光源を配置しなければならない。しかしながら、照明器具の光源として発熱量の少ない蛍光灯形式のもの利用しても、前記囲い手段の内側の温度上昇は避けられず、栽培植物に対する熱的悪影響が生じる。又、栽培植物を囲む雰囲気が静止することも植物の生育に悪影響を及ぼす結果になる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできる植物栽培用ラックを提案するものであって、請求項1に記載の本発明に係る植物栽培用ラックは、後述する実施例の説明において使用した参照符号を付して示すと、間口方向に複数の栽培用コンテナ1を奥行き方向出し入れ自在に載置する棚11を備えたラックであって、前記棚11の上側の間口方向に長い植物栽培用空間の少なくとも上部領域を囲う、内面が光反射面である囲い手段23が配設され、この囲い手段23は、前記植物栽培用空間の天井部をカバーする天井側光反射板18と、前記植物栽培用空間の奥行き方向の前後両側をカバーする前後両垂直光反射板19,20を有し、この囲い手段23の内側に照明器具17の光源(蛍光管17a)が配設されると共に、当該囲い手段23で囲まれる前記植物栽培用空間の間口方向の一端に、当該植物栽培用空間の間口方向の他端側に向かって送風する送風用ファン24が配設され、前記前後両垂直光反射板19,20の内、栽培用コンテナ1の出し入れ側にある垂直光反射板19は、開閉自在に構成されたものである。
【0006】
本発明のラックとしては、棚11に間口方向に沿って奥行き方向一列に栽培用コンテナ1が載置されるラックや、棚11に間口方向に沿って奥行き方向前後二列に栽培用コンテナ1が載置されるラックが含まれるが、何れの場合も、棚11の奥行き方向の前後何れか片側においてのみ栽培用コンテナ1が出し入れ自在に構成されるか又は、棚11の奥行き方向の前後何れ側においても栽培用コンテナ1が出し入れ自在に構成される。従って、棚11の奥行き方向の前後何れか片側においてのみ栽培用コンテナ1が出し入れ自在に構成される場合は、請求項2に記載のように、前記前後両垂直光反射板19,20の内、栽培用コンテナ出し入れ側とは反対側の垂直光反射板20は、固定しておくことができるし、棚11の奥行き方向の前後何れ側においても栽培用コンテナ1が出し入れ自在に構成される場合は、請求項3に記載のように、前記前後両垂直光反射板19,20は、何れも開閉自在に構成すれば良い。又、棚11に間口方向に沿って奥行き方向前後二列に栽培用コンテナ1が載置されるラックであって、請求項3に記載のように、前記前後両垂直光反射板19,20が何れも開閉自在に構成されるときには、奥行き方向前後二列の栽培用コンテナ1の載置領域の中間を仕切るように、固定の垂直光反射板を追加することも可能である。
【0007】
上記請求項1〜3に記載の本発明を実施する場合、請求項4に記載のように、前記囲い手段23には、前記植物栽培用空間の間口方向両端をカバーする横側垂直光反射板21,22を設けることができる。この横側垂直光反射板21,22を設ける場合、請求項5に記載のように、当該横側垂直光反射板21,22の内、前記送風用ファン24の送風方向側の垂直光反射板22には、空気流通口25を設けることができる。更に、請求項6に記載のように、前記空気流通口25は横長スリット状として、その上側辺から、囲い手段23の内側で斜め下向きに延出するフラップ25aを突設することができる。
【0008】
又、請求項7に記載のように、前記囲い手段23は、前記植物栽培空間の上部領域のみを囲う、下側周囲が開放したものとすることができる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1〜3に記載の本発明の構成によれば、棚に載置された栽培用コンテナにおける栽培植物は、その上方の照明器具の光源からの直接光線によって照らされるだけでなく、囲い手段が備える天井側光反射板及び垂直光反射板から反射した反射光線によっても照らされるので、栽培用コンテナ上における照度を大幅に高めて、効率よく植物を栽培することができる。しかも、前記囲い手段による囲み空間を深くして照明効率を高めるように構成しても、当該囲い手段で囲まれた棚間口方向に長い空間内には、その一端側の送風用ファンにより他端側に向かって流れる気流を発生させることができるので、光源が内蔵される前記囲い手段による囲み空間内の雰囲気温度が高くなることを予防すると共にこの温度が高くなった雰囲気が静止することを予防し、良好に生育させることができる。勿論、棚に対して栽培用コンテナを出し入れする際には、その出し入れ側の垂直光反射板を開句ことができるので、栽培用コンテナの出し入れを支障なく行える。
【0010】
尚、請求項4に記載の構成によれば、棚の上側の間口方向に長い植物栽培用空間の少なくとも上部領域の全周囲を完全に囲って、より一層照明効率を高めて照明による栽培効果を一段と高めることができる。このとき請求項5に記載の構成によれば、前記囲い手段で全周囲を完全に囲まれた棚間口方向に長い空間内において送風用ファンによって発生させる気流を末端まで完全に流動させ、末端部で空気が滞留することによる悪影響を防止できる。更に、請求項6に記載の構成によれば、空気流通口を備えた横側垂直光反射板の反射効率が空気流通口の存在で低下するのを防止することができる。
【0011】
尚、空調された室内に本発明によるラックを設置して植物栽培を行うような場合、請求項7に記載の構成によれば、前記囲い手段で囲まれた空間内での送風用ファンによる気流の発生に伴わせて、ラック周囲の空調された室内雰囲気を栽培用コンテナの上側の植物栽培空間内に流入させることができ、当該植物栽培空間を完全に密閉された空間とする場合よりも、栽培植物の生育を良好にすることができる。又、垂直光反射板の有る無しに関係なく、棚の全周囲からいつでも栽培植物の様子をある程度観察できるので、管理にも好都合である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】A図は本発明に係るラックに使用される土耕栽培用コンテナの平面図、B図は同縦断正面図である。
【図2】同上の土耕栽培用コンテナの縦断側面図である。
【図3】同上の土耕栽培用コンテナを用土充填前の状態で示す平面図である。
【図4】本発明に係るラックの要部を示す一部縦断正面図である。
【図5】同上のラックを示す横断平面図である。
【図6】同上のラックに組み込まれた給水手段を示す縦断正面図である。
【図7】同上のラックの要部を示す一部縦断側面図である。
【図8】図4のA部の拡大図である。
【図9】本発明に係るラックに対して取り付けられる囲い手段の基本構成の概略を示す要部の分解斜視図である。
【図10】本発明の別実施例の概略を示す要部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
先ず、本発明のラックに使用される土耕栽培用コンテナを図1〜図3に基づいて説明すると、当該土耕栽培用コンテナ1は、平面形状が長方形のコンテナ本体2、このコンテナ本体2の内側底面2a上に載置した灌水用パイプ3、この灌水用パイプ3の上からコンテナ本体2内に所要量充填した用土から成る植物栽培用土層4、及びこの植物栽培用土層4に植え付けられた栽培植物苗5の周囲で植物栽培用土層4の表面を覆う複数枚の光反射シート5から構成されている。
【0014】
前記コンテナ本体2としては、物品収納用或いは輸送用などの合成樹脂製コンテナをそのまま活用することができ、特にサイズが限定されるわけではないが、後述するようにラックを利用して植物栽培環境を室内に構成する場合に鑑み、長辺方向長さ:700mm程度、短辺方向長さ:460mm程度、高さ:120mm程度(内側底面2aからの高さ:112mm程度)のものを採用した。灌水用パイプ3としては、例えば多孔質ゴム製で表面全体から水が滲み出るタイプの透水性可撓パイプを使用することができ、このような灌水用パイプ3をコンテナ本体2の内側底面2a上に、コンテナ本体2の周壁から略一定距離だけ離れるように一巻き環状に曲げて載置し、当該灌水用パイプ3の一端部を、コンテナ本体2の1つのコーナー部に導くと共に上方に曲げて、コンテナ本体2より上方に垂直に突出する受水端3aを形成し、コンテナ本体2の内側底面2a上に位置する他端開口は、キャップ3bを外嵌固定して閉じている。植物栽培用土層4を構成する用土としては、例えば土壌改良材として一般的な「ピートモス」に「ベントナイト」をコーティングしたような、ノンケミカルの土壌用環境資材として知られる用土を使用することができ、このような用土を、コンテナ本体2の内側底面2aから植物栽培用土層4の表面(図示のように畝を形成する前の平坦な表面)までのセットアップ高:80mm程度となるように充填した。光反射シート5には、例えば超微細発泡ポリエチレンテレフタレートから成る光反射シートが利用できる。
【0015】
図示例では、植物栽培用土層4の表面に、コンテナ本体短辺方向と平行な畝4aをコンテナ本体長辺方向に適当間隔おきに複数列形成し、この各畝4aに畝長さ方向に適当間隔おきに栽培植物(小型の葉物野菜)の苗6を植え付け、各畝4a間と両端の畝4aの外側に、コンテナ本体短辺方向に長い帯状で最小畝間の間隔より適当に狭い幅の規定サイズの帯状に裁断した複数枚の光反射シート5を、植物栽培用土層4の表面を覆うように光反射面を上にして敷いている。栽培植物の種類によっては、形成される畝4aの並列数は少なくなって畝4a間の間隔が広まるので、上記の規定サイズの光反射シート5のみを使用する場合には、畝4a間に2枚の光反射シート5を一部重ねるようにして敷くことができる。勿論、実際の植え付けに際して、そのときの畝4a間の間隔に合わせて裁断した光反射シート5を使用することもできる。尚、畝4aは、栽培植物に合わせて形成すれば良く、畝4aが不要なときは、植物栽培用土層4の表面を平坦に仕上げれば良い。
【0016】
次に上記の土耕栽培用コンテナ1を支持する本発明の栽培用ラックについて、図4〜図8に基づいて説明すると、図はラック10の中間2段の棚11のみを示しており、3段以上の棚を有するラックの場合でも各段の棚の構成は図示のものと同一である。ラック10は、その四隅に、下端部及び上端部が連結フレームにより互いに連結された支柱部材12を備えており、各段の棚11は、ラック奥行き方向前後一対の支柱部材12間に架設された左右一対の棚受け13により支持されたもので、図示の棚11は、ラック間口方向と平行なビーム材14を、ラック奥行き方向適当間隔おきに複数本(図示例では4本)並列させたもので、各ビーム材14は、その両端が前記棚受け13に形成されたビーム材嵌合支持部に各別に支持されている。勿論、棚11は上記構成のものに限定されるものではなく、全面が1枚の板材で構成されるものや、ラック奥行き方向前後複数枚の帯状板から構成されるもの、ラック間口方向と平行な前後一対のビーム材間にラック奥行き方向と平行なサブビーム材をラック間口方向適当間隔おきに架設して成るもの、などの従来周知の各種の棚が利用できる。
【0017】
各段の棚11には、上記構成の土耕栽培用コンテナ1が、そのコンテナ本体長辺方向がラック奥行き方向と平行になる向きで、ラック間口方向に複数台(図示例では3台)並列支持される。このとき、各コンテナ本体2の長辺方向前後両端が、ラック10を横から見たときにラック奥行き方向前後一対の支柱部材12間に納まるサイズにラック10が構成されると共に、当該棚11を構成する複数本の前記ビーム材14の内、奥行き方向前後両端のビーム材14は、支持する前記コンテナ1の長辺方向前後両端より少し内側に入るように構成されている。而して各段の棚11には、その正面側(コンテナ1を出し入れする側)にガイドローラー15が設けられると共に、背面側にはコンテナ落下防止用ストッパー16が設けられている。ガイドローラー15は、ラック10の前側左右一対の支柱部材12間に配置された、ラック間口方向と平行な向きのローラーであって、その両端の軸受け部材が左右一対の棚受け13に取り付けられている。而してこのガイドローラー15は、棚11に支持される前記コンテナ1の前端より少し前方に突出すると共に、棚11のコンテナ支持高さ(ビーム材14の上面高さ)よりも若干上方にも突出して、コンテナ本体2の正面側への滑り出しを阻止できるように構成している。コンテナ落下防止用ストッパー16は、ラック10の後ろ側左右一対の支柱部材12間に配置された、ラック間口方向と平行な向きの棒状部材から成り、棚11のコンテナ支持高さよりも高い位置でその両端が左右一対の棚受け13に取り付けられている。
【0018】
各段の棚11に支持される土耕栽培用コンテナ1の上方には、当該土耕栽培用コンテナ1の真上に位置する棚11又はラック10の天井フレームを利用して照明器具17が取り付けられている。この照明器具17は、棒状や環状の蛍光灯、電球形蛍光灯、その他如何なるものでも良いが、特に植物栽培に特化された蛍光照明器具が望ましい。この図示例では、照明器具17として植物栽培用の棒状蛍光灯が使用されており、ラック奥行き方向に並列する複数の照明器具17が、その蛍光管17aがラック間口方向と平行向きで且つ下側の土耕栽培用コンテナ1に植え付けられている栽培植物を照明するように、棚11(又は天井フレーム)の下側に取り付けられている。具体的には、上記構成の棚11の下側に取り付けられる照明器具17は、棚11を構成するビーム材14の下側に当該照明器具17の本体17bを取り付けている。
【0019】
上記のように取り付けられた各照明器具17の本体17bと蛍光管17aとの間を通るように天井側光反射板18が水平に張設されている。この天井側光反射板18は、そのラック奥行き方向の幅がラック10の奥行き方向の幅(前後一対の支柱部材12の外側面間の間隔)と略同一で、そのラック間口方向の幅は、ラック10の間口方向左右一対の支柱部材12の内側面間の間隔と略同一であって、光反射面を下にして各照明器具17の本体17bに取り付けられている。更にこの天井側光反射板18の前後両側辺と左右両側辺とには、それぞれ垂直に垂れ下がる前側垂直光反射板19、後側垂直光反射板20、及び横側光反射板21,22が、光反射面が互いに対面する向きで連設され、各棚11に支持される前記コンテナ1の上側の植物栽培空間、即ち、収穫時の栽培植物の高さより高い植物栽培空間の上部領域(略上半部)を、前記光反射板18〜22により形成された、内側全面が光反射面である囲い手段23で覆った構造となっている。従って、全ての照明器具17の蛍光管17aは、前記囲い手段23の内側で天井側光反射板18の直下に配置されている。
【0020】
囲い手段23を構成する光反射板の内、少なくとも土耕栽培用コンテナ1を出し入れする前側垂直光反射板19は、天井側光反射板18の前側辺に対して、ヒンジ又はこれに代わる布状連結材(ガムテープなど)を介して上下揺動開閉自在に取り付けられている。又、囲い手段23で囲まれる空間のラック間口方向両端の一方、例えば横側光反射板21の内側には送風用ファン24が配設され、反対側の横側光反射板22には、図1A部及び図8に示すように、内側へ斜め下向きに延出するフラップ25aを上側辺から連設された横長スリット状の空気流通口25が所要数設けられている。尚、フラップ25aは、図示とは逆に、外側へ斜め下向きに延出するものであっても良いし、フラップ25aを省いても良い。又、フラップ25aを図示のように内側へ斜め下向きに延出させる場合は、外側へ斜め下向きに延出させる場合よりも、空気流通口25の存在で光反射板22の内側への反射光量が減少するのを抑制することができる。
【0021】
更にラック10には、図6及び図7に示すように、各段の棚11ごとに独立した給水手段26が併設されている。各給水手段26は、各段の棚11の上方に設けられた囲い手段23の天井側光反射板18の下側で且つ前側辺近傍位置に水平に架設された給水管27、この給水管27の各土耕栽培用コンテナ1に対応する位置からそれぞれ直角下向きに分岐する分岐管28、この分岐管28に接続された止水栓29、一端が各止水栓29に着脱自在に接続され且つ他端が当該止水栓29の下方に位置する各土耕栽培用コンテナ1における灌水用パイプ3の受水端3aに着脱自在に接続される可撓パイプ30、及び給水管27の一端に流量調整弁31を介して接続された給水タンク32から構成されている。尚、給水管27の他端はキャップ33により閉じられている。
【0022】
給水タンク32は、給水管27より高い位置でラック10の間口方向一端外側に取り付けられたものであって、水補給時に給水管27との連結を解いてラック10から取り外しできるように構成しても良いが、上側を給水用に開放しておき(必要に応じて蓋を設けても良い)、給水タンク32内の水位が一定レベル以下に下がったとき、水道に接続されたホースなどにより手作業で水補給できるように構成することができる。勿論、上記構成のラック10が多数台設置されるような大規模な設備の場合、各給水タンク32に水位検出用センサーを取り付けると共に、各給水タンク32に対して水道に接続された水補給管を、自動開閉弁を介して接続し、水位検出用センサーが給水タンク32内の水位が下限レベル以下に下がったことを検出したとき、その給水タンク32に接続されている水補給管の自動開閉弁を開動させ、給水の結果、水位検出用センサーが給水タンク32内の水位が上限レベルに達したことを検出したとき、前記自動開閉弁を閉動させるように構成して、全ての給水タンク32に対する水補給を全自動で行なうように構成することも可能である。
【0023】
次に上記のように構成された土耕栽培装置の使用方法について説明すると、先に説明した要領で栽培植物の苗6を植え付けて完成させた土耕栽培用コンテナ1を、ラック10の各段の棚11上に、コンテナ本体長辺方向がラック奥行き方向と平行になるように、所定数を並列載置する。このとき、囲い手段23の前側垂直光反射板19は手前上方に開いておく。尚、この前側垂直光反射板19を開いた状態で保持する手段、例えばチエンや紐などの吊り具の先端フック部を前側垂直光反射板19の下側辺近傍に設けた被係止孔に係合させるような簡単な保持手段を併用するのが望ましい。
【0024】
一方、ラック10の各棚11に装備されている給水手段26の各止水栓29は閉じられ、給水タンク32には水が所要量補給されている。この状態で、各土耕栽培用コンテナ1における灌水用パイプ3の受水端3aに、当該土耕栽培用コンテナ1を載置した棚11が備える給水手段26の給水管27から垂れ下がる可撓パイプ30の先端を接続し、止水栓29を開く。この結果、給水タンク32内から土耕栽培用コンテナ1内の灌水用パイプ3に自動的に給水され、給水タンク32から灌水用パイプ3に至る給水路中の水量の位置水頭エネルギーにより灌水用パイプ3の表面全体から水が連続的に滲み出して、先に説明したように水分が灌水用パイプ3の周囲から植物栽培用土層4の全体に毛細管現象などにより広がり、当該植物栽培用土層4の全体を所要湿度の湿潤状態に維持させることができる。
【0025】
このとき、植物栽培用土層4の表面は、苗6の根元周囲を除いて光反射シート5により覆われているので、植物栽培用土層4の表面からの水分の蒸散は極少ない。従って、経時的に植物栽培用土層4の湿度が漸増し、植物栽培用土層4の底部に水分が滞留し、そしてその水分の滞留量が漸増するようなことが無いように、灌水用パイプ3からの単位時間あたりの水分滲出量を、給水タンク32側の流量調整弁31により設定することができるが、基本的には、前記給水路中の水量の位置水頭エネルギーによって灌水用パイプ3からの単位時間あたりの水分滲出量が決まるので、給水タンク32の容量や給水管27に対する高さなどにより前記位置水頭エネルギーを予め設定することにより、前記のように植物栽培用土層4が湿度過多になるのを防止できる。
【0026】
上記のように給水手段26を作動させると共に、各棚11に装備されている照明器具17に通電し、蛍光管17aを点灯させる。この結果、囲い手段23の下側の栽培植物空間は、蛍光管17aからの直接光線の他に、囲い手段23の内側全面の光反射面(光反射板18〜22の光反射面)からの反射光線、及び植物栽培用土層4上を覆う光反射シート5からの反射光線によって照明される。即ち、栽培植物の苗6の葉裏側を含めて栽培植物の苗6の周囲全体を必要な照度で照明することができる。
【0027】
尚、囲い手段23の内側空間内では、当該内側空間が下側のみ開放していることと、当該内側空間の天井付近の多数の蛍光管17aが点灯することのより、滞留している空気の温度上昇が考えられる。しかしながら、送風用ファン24に通電し、囲い手段23の内側でそのラック間口方向(長手方向)の一端部から若干斜め上向きに極弱い風力で送風することにより、送風用ファン24とは反対側の空気流通口25の存在も関係して、囲い手段23の内側空間内にその長手方向の極弱い気流を生じさせることができ、この気流により、囲い手段23の内側空間と外側との間に空気の流通を発生させることができる。この結果、囲い手段23の内側空間に高温の空気が滞留して下側の栽培植物の苗6に熱的悪影響が及ぶのを防止することができると共に、栽培植物の苗6の周囲の雰囲気が静止するのを防止することができる。勿論、囲い手段23と土耕栽培用コンテナ1との間の栽培植物の苗6の周囲は開放されているので、このラック10が設置された植物栽培室内のエアコンにより温度調整された雰囲気も、前記囲い手段23の内側空間に発生する気流に伴って、土耕栽培用コンテナ1の上側の植物栽培空間内に流入するので、この点でも栽培植物の苗6の周囲の空気が静止滞留することはない。
【0028】
以上のように、植物栽培用土層4を構成させる用土の性状及び栽培植物の種類や成長度合いなどに応じて、植物栽培用土層4内を常時適当湿度の湿潤状態に維持すると共に、照明器具17の1日あたりの点灯時間や照度を設定し、更には送風用ファン24の1日あたりの通電時間や風力を設定して、各土耕栽培用コンテナ1の植物栽培用土層4に植え付けた栽培植物の苗6を生育させることにより、当該栽培植物の苗6を所要期間の間に良好に生育させて収穫期を迎えることができる。
【0029】
栽培植物を収穫するときは、その対象となる土耕栽培用コンテナ1の灌水用パイプ3に接続されている給水手段26の止水栓29を閉じて可撓パイプ30を灌水用パイプ3の受水端3aから外し、囲い手段23の前側垂直光反射板19を上に上げて開放した状態で、収穫対象の土耕栽培用コンテナ1を棚11の上から引き出すのであるが、このとき、手前にあるガイドローラー15が少し高いので、引き出す土耕栽培用コンテナ1の手前を持ち上げるようにして当該ガイドローラー15上に移載する。この状態で土耕栽培用コンテナ1を手前に引き出すことにより、ガイドローラー15の転動を利用して軽く円滑に収穫対象の土耕栽培用コンテナ1を棚11から取り出すことができる。又、棚11を構成するビーム材14の内、正面側のビーム材14は、その直下の棚11が備える囲い手段23の天井側光反射板18の前側辺より後退しているが、この囲い手段23の天井側光反射板18の前側辺の真上に前記ガイドローラー15が配置されていて、棚11に対して出し入れされる土耕栽培用コンテナ1が、直下の棚11が備える囲い手段23の天井側光反射板18の前側辺とぶつかるのを前記ガイドローラー15で防止できる。
【0030】
尚、上記実施例では、給水管27から分岐させた分岐管28に止水栓29が設けられているので、この止水栓29を止水状態に切り換えても、可撓パイプ30を灌水用パイプ3の受水端3aから外したときに当該可撓パイプ30内の水が流出することになる。又、当該可撓パイプ30を止水栓29側から外しても同じことである。従って、可撓パイプ30を灌水用パイプ3の受水端3aから外すことを前提にして、灌水用パイプ3の受水端3aに接続される可撓パイプ30の先端部に止水栓29を設けておくのが望ましい。止水栓29としては、手作業で止水操作する形式のものでも良いが、分岐管28の先端に止水栓29を設ける場合と可撓パイプ30の先端に止水栓29を設ける場合の何れにおいても、止水栓29と可撓パイプ30、又は可撓パイプ30と灌水用パイプ3の受水端3aとを着脱自在に接続する手段として、散水ホース接続用のワンタッチカップラーの一方(プラグ又はソケット)に、当該ワンタッチカップラーを離脱操作したときに自動的に止水動作する止水弁が内蔵された、止水弁内蔵のワンタッチカップラーを利用し、内蔵止水弁を分岐管28側にして分岐管28と可撓パイプ30とを接続するか又は、内蔵止水弁を可撓パイプ30側にして可撓パイプ30と灌水用パイプ3の受水端3aとを接続するのが最も望ましい実施形態である。
【0031】
上記実施例では、棚11の上側に配設される囲い手段23は、照明器具17の光源(蛍光管17a)より上側の天井側光反射板18の全周側辺から下向きに連設した垂直光反射板19〜22の上下方向の幅(高さ)を、棚11の上側(載置された土耕栽培用コンテナ1の上側)の植物栽培空間の上部領域のみを囲うサイズとしたが、当該囲い手段23で囲む空間の長さ方向一端に送風用ファン24を内装するものであるから、図9に示すように、各垂直光反射板19〜22の上下方向の幅(高さ)を、棚11の上側の空間(上段の棚11又はラック10の上端フレームとの間の空間)の高さ全体を囲うことができるサイズとすることもできる。この場合、開閉自在な前側垂直光反射板19を除く垂直光反射板20〜22は、上下複数段の棚間空間を連続して塞ぐように長尺のものを使用することができる。勿論、本発明において必須の光反射板は、天井側光反射板18と前後両垂直光反射板19,20であるから、横側垂直光反射板21,22を無くすことも可能である。
【0032】
更に、上記実施例では、棚11に間口方向に沿って奥行き方向一列に栽培用コンテナ1が載置されるラック10を示したが、上記実施例のラック10を背中合わせに2台重ねて一体化したようなラック、即ち、図10に示すように、前記棚11を奥行き方向二列に並設して構成される幅広の棚34を備えたラック35であって、当該棚34の上に、前記土耕栽培用コンテナ1を棚34の間口方向に沿って奥行き方向前後二列に載置できるように構成され、そして棚34の奥行き方向前後何れ側からも土耕栽培用コンテナ1を出し入れできるように構成されたラック35の場合には、当該幅広の棚34の上側に配設される囲い手段36は、当該幅広の棚34の上側の植物栽培用空間の天井部をカバーする幅広の天井側光反射板37と、当該植物栽培用空間の奥行き方向の前後両側をカバーする前後両垂直光反射板38,39、そして必要に応じて設けられる植物栽培用空間の間口方向両端をカバーする横側垂直光反射板40,41によって構成されるが、棚34の奥行き方向前後何れ側からも土耕栽培用コンテナ1が出し入れされるので、前後両垂直光反射板38,39の両方を、先の実施例で示した前側垂直光反射板19と同様に開閉自在に構成する必要がある。更にこの場合、棚34の間口方向に沿った奥行き方向前後二列の土耕栽培用コンテナ1の中間位置を仕切るように、間口方向に沿って中間垂直光反射板42を追加することもできる。
【0033】
勿論、上記のように棚34の間口方向に沿って奥行き方向前後二列に土耕栽培用コンテナ1を載置できるように構成されたラック35であっても、その奥行き方向前後二列に載置された土耕栽培用コンテナ1の全てを棚34の前側からのみ出し入れする場合には、前側の垂直光反射板38のみを開閉自在に構成し、後側の垂直光反射板39は固定することができる。又、この図10に示した実施例においても、各垂直光反射板38〜42の上下方向の幅(高さ)を、棚34の上側の空間(上段の棚34又はラック35の上端フレームとの間の空間)の高さ全体を囲うことができるサイズとすることもできる。
【0034】
又、図10に示す幅広の棚34を備えたラック35は、幅の狭い棚11を備えたラック10を背中合わせに2台重ねて一体化して構成しているため、天井側光反射板37及び横側垂直光反射板40,41を、それぞれ棚34の奥行き方向2枚の光反射板37a,37b,40a,40b,41a,41bによって構成しているが、天井側光反射板37及び横側垂直光反射板40,41を、それぞれ棚34の幅に相当する幅広の1枚の光反射板で構成することもできる。勿論、先の実施例の棚11の奥行き方向の幅を2倍に広げて構成した、幅広の棚34を備えたラックに対しても、本発明を適用実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の植物栽培用ラックは、植物栽培用土を充填した土耕栽培用コンテナなどの植物栽培用コンテナを使用して、露地ではなく室内で比較的大規模な植物工場的に植物、特に比較的小型の葉物野菜を短期間のサイクルで栽培するときの手段として有効活用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 土耕栽培用コンテナ
2 コンテナ本体
3 灌水用パイプ
3a 受水端
4 植物栽培用土層
5 光反射シート
6 苗(栽培植物)
10,35 ラック
11,34 棚
12 支柱部材
13 棚受け
14 ビーム材
15 ガイドローラー
16 コンテナ落下防止用ストッパー
17 照明器具
17a 蛍光管
18〜22,37〜42 光反射板
23,36 囲い手段
24 送風用ファン
25 空気流通口
26 給水手段
27 給水管
28 分岐管
29 止水栓
30 可撓パイプ
31 流量調整弁
32 給水タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間口方向に複数の栽培用コンテナを奥行き方向出し入れ自在に載置する棚を備えたラックであって、前記棚の上側の間口方向に長い植物栽培用空間の少なくとも上部領域を囲う、内面が光反射面である囲い手段が配設され、この囲い手段は、前記植物栽培用空間の天井部をカバーする天井側光反射板と、前記植物栽培用空間の奥行き方向の前後両側をカバーする前後両垂直光反射板を有し、この囲い手段の内側に照明器具の光源が配設されると共に、当該囲い手段で囲まれる前記植物栽培用空間の間口方向の一端に、当該植物栽培用空間の間口方向の他端側に向かって送風する送風用ファンが配設され、前記前後両垂直光反射板の内、栽培用コンテナの出し入れ側にある垂直光反射板は、開閉自在に構成されている、植物栽培用ラック。
【請求項2】
前記棚は、奥行き方向の前後両側辺の内、片側のみが栽培用コンテナ出し入れ自在に構成され、前記前後両垂直光反射板の内、栽培用コンテナ出し入れ側とは反対側の垂直光反射板は、固定されている、請求項1に記載の植物栽培用ラック。
【請求項3】
前記棚は、奥行き方向の前後両側辺のそれぞれが栽培用コンテナ出し入れ自在に構成され、前記前後両垂直光反射板は、何れも開閉自在に構成されている、請求項1に記載の植物栽培用ラック。
【請求項4】
前記囲い手段は、前記植物栽培用空間の間口方向両端をカバーする横側垂直光反射板を備えている、請求項1〜3の何れか1項に記載の植物栽培用ラック。
【請求項5】
前記囲い手段の横側垂直光反射板の内、前記送風用ファンの送風方向側の垂直光反射板には、空気流通口が設けられている、請求項4に記載の植物栽培用ラック。
【請求項6】
前記空気流通口は横長スリット状であって、その上側辺から、囲い手段の内側で斜め下向きに延出するフラップが突設されている、請求項5に記載の植物栽培用ラック。
【請求項7】
前記囲い手段は、前記植物栽培空間の上部領域のみを囲う、下側周囲が開放したものである、請求項1〜6の何れか1項に記載の植物栽培用ラック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−78349(P2011−78349A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232989(P2009−232989)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】