説明

植物栽培装置の灌水装置

【課題】植物栽培装置の構成部材への栽培水の付着を抑制することおよび栽培トレーの植物に栽培水を噴霧することにより、植物栽培装置のメンテナンス性の向上が可能で、かつ栽培水の消費量と植物の生産コストとを削減可能な植物栽培装置の潅水装置を提供する。
【解決手段】植物栽培装置100は、栽培トレー101が格納される栽培棚106を有する栽培庫105と、灌水装置Wと、潅水される栽培トレー101が載置される入出庫棚120とを備える。灌水装置Wは、植物Pに栽培水を噴霧する噴霧ノズル145と、噴霧ノズル145から噴霧された栽培水の拡散を防止するカバー130とを有する。潅水室Riを形成するカバー130は、平面視で植物Pの全体を覆うとともに、カバーの側壁132の下端部が平面視で植物Pの全体を囲むように、天井壁131から栽培トレー101に向かって下方に延びている。噴霧ノズル145は潅水室Ri内で栽培水を噴霧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培対象である植物が植えられている栽培トレーが格納される複数の栽培棚を有する栽培庫を備える植物栽培装置において、植物に栽培水を灌水するための灌水装置に関する。そして、前記植物は、例えば苔植物である。
【背景技術】
【0002】
植物栽培装置が、栽培対象である植物が植えられている栽培トレーが格納される複数の栽培棚を有する栽培庫を備え、さらに、栽培トレーの植物に栽培水を灌水するための灌水装置を備えるものは知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、室内での観賞用に、苔を栽培する栽培装置が、苔に散水する噴霧ノズルと、容器に植えられた苔の全体を水平方向(または、側方)から囲むカバーとを備えるものもは知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−209970号公報(段落0042、図1、図3)
【特許文献2】特開2009−296928号公報(段落0022−0032、図1−図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、栽培トレーが格納される複数の栽培棚を有する栽培庫を備える植物栽培装置において、栽培トレーに植えられた植物に潅水が行われる場合に、栽培トレーに収容されて植物が植えられている用土に上方から潅水するだけでは、栽培トレーのすべての植物を均一に潅水することは困難であるために、生育にバラツキが生じるという問題があった。
【0005】
そこで、すべての植物に均一に潅水するために、栽培水の水量を多くすると、栽培トレーから栽培水が溢れ出たり、用土や植物が栽培水とともに流出してしまうという問題、流出した用土や植物により排水路が詰まるという問題、これらの問題に起因して植物栽培装置のメンテナンス作業に手間がかかるという問題、さらに栽培液の消費量が増加して、育成される植物のコストが増加するという問題があった。
【0006】
また、すべての植物に対して上方から栽培水の噴霧によって潅水が行われる場合には、植物を側方から覆うカバーだけでは、噴霧された栽培水の拡散または飛散(以下、「飛散」を含めて単に「拡散」という。)を十分に抑制することができないために、植物に対する効率的な潅水が困難であり、栽培液の消費量が増加するという問題があった。
【0007】
また、自動倉庫型の植物栽培装置においては、噴霧された栽培水が拡散または飛散すると、拡散した栽培水が栽培トレーの移送装置や栽培庫などに付着して、植物栽培装置の構成部材に悪影響(例えば、錆の発生)を与える虞があるため、さらには衛生上の観点から、該構成部材に付着した栽培液を除去することが必要になって、植物栽培装置のメンテナンス作業に手間がかかるという問題があった。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、植物栽培装置の構成部材への栽培水の付着を抑制することおよび栽培トレーの植物に栽培水を噴霧することにより、植物栽培装置のメンテナンス性を向上させること、および、栽培水の消費量と栽培された植物の生産コストとを削減する植物栽培装置の潅水装置を提供することである。
また、本発明の他の目的は、さらに、吸気ポンプおよび給水ポンプを有する潅水装置の小型化およびコスト削減が可能な植物栽培装置の潅水装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
まず、請求項1に係る発明は、栽培対象である植物が植えられている栽培トレーが格納される複数の栽培棚を有する栽培庫を備える植物栽培装置に備えられて、前記栽培トレーの前記植物に栽培水を灌水するための灌水装置において、前記植物に栽培水を噴霧する噴霧ノズルと、前記噴霧ノズルから噴霧された栽培水の拡散を防止するカバーとを有し、前記植物栽培装置が、前記栽培棚とは別個に、前記栽培トレーが灌水対象トレーとして載置されるトレー載置部を備え、前記カバーが、平面視で前記灌水対象トレーの前記植物の全体を覆うとともに、下端部が平面視で前記灌水対象トレーの前記植物の全体を囲むように、頂部から前記灌水対象トレーに向かって下方に延びていることにより、前記各栽培棚から隔離された空間であって、前記灌水対象トレーの前記植物が前記噴霧ノズルからの栽培水により灌水される灌水室を形成し、前記噴霧ノズルが、前記灌水室内において栽培水を噴霧することにより、前述した課題を解決したものである。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の構成に加えて、前記トレー載置部が、前記栽培庫に対する前記栽培トレーの入出庫のための入出庫部であり、前記カバーが、前記入出庫部に着脱可能に設けられていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に係る発明の構成に加えて、前記灌水室内の空気圧を前記カバーの外側空間の外気圧よりも低圧にするために前記灌水室内の室内空気を吸引する吸気ポンプを有することにより、前述した課題を解決したものである。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明の構成に加えて、前記噴霧ノズルに栽培水を供給する給水ポンプを有し、前記吸気ポンプおよび前記給水ポンプが、ツインヘッド型の1つのポンプにより構成されることにより、前述した課題を解決したものである。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項3または請求項4に係る発明の構成に加えて、前記給水ポンプが吸入する栽培水が貯留されているタンクと、前記吸気ポンプにより吸引された室内空気に含まれている栽培水を前記タンクに導く栽培水戻し部材とを有することにより、前述した課題を解決したものである。
【0014】
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5のいずれか1つに係る発明の構成に加えて、前記植物栽培装置が、前記栽培棚に対する前記栽培トレーの搬入出を自動的に行う移送装置を備える立体倉庫型の植物栽培装置であり、前記移送装置が、前記栽培トレーを前記栽培棚と前記トレー載置部との間で自動的に移送することにより、前述した課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の潅水装置は、栽培対象である植物が植えられている栽培トレーが格納される複数の栽培棚を有する栽培庫を備える植物栽培装置に備えられることにより、植物栽培装置の栽培庫の栽培棚に格納される栽培トレーに植えられた植物に栽培水を潅水することができることができるばかりでなく、以下のような本発明に特有の効果を奏する。
【0016】
すなわち、請求項1に係る本発明の潅水装置によれば、植物に栽培水を噴霧する噴霧ノズルと噴霧ノズルから噴霧された栽培水の拡散を防止するカバーとを有し、植物栽培装置が栽培棚とは別個に栽培トレーが灌水対象トレーとして載置されるトレー載置部を備え、カバーが平面視で灌水対象トレーの植物の全体を覆うとともに、下端部が平面視で灌水対象トレーの植物の全体を囲むように、頂部から栽培トレーに向かって下方に延びていることにより、各栽培棚から隔離された空間であって、灌水対象トレーの植物が噴霧ノズルからの栽培水により灌水される灌水室を形成し、噴霧ノズルが灌水室内において栽培水を噴霧することにより、噴霧ノズルから噴霧された栽培水の拡散を防止するカバーが平面視で灌水対象トレーの植物の全体を覆うとともに、下端部が平面視で灌水対象トレーの植物の全体を囲むように、頂部から潅水対象トレーに向かって下方に延びていることにより潅水室を形成するため、カバーにより植物栽培装置の構成部材への栽培水の付着が抑制されるので、植物栽培装置のメンテナンス作業が軽減されて、植物栽培装置のメンテナンス性を向上させることができる。
【0017】
しかも、栽培水は潅水室内において噴霧されて、栽培トレーの植物への潅水が行われるので、栽培トレーのすべての植物に均一化された状態で潅水することができるため、栽培トレー毎の植物の生育状態を均一化することができ、しかも均一化された潅水を実現するために、多量の栽培水で栽培トレーの一部に集中的に潅水することに起因する栽培トレーからの栽培水の溢水および培地や植物の流出、さらに栽培トレーから流出した用土や植物による排水路の閉塞の発生が防止されるため、植物栽培装置のメンテナンス作業が軽減されて、植物栽培装置のメンテナンス性を向上させることができる。
また、潅水室を上方から覆うカバーにより、噴霧ノズルから噴霧された栽培水の拡散が防止されるので、栽培水が栽培トレーの植物に効率よく潅水されるため、栽培水の消費量を削減することができ、栽培された植物の生産コストを削減することができる。
【0018】
請求項2に係る本発明の潅水装置によれば、請求項1に係る発明が奏する効果に加えて、次の効果が奏される。
トレー載置部が、栽培庫に対する栽培トレーの入出庫のための入出庫部であり、カバーが、入出庫部に着脱可能に設けられていることにより、植物栽培装置が備える入出庫部を利用することで、潅水作業用の専用のトレー載置部を備える必要がないため、栽培される植物の生産コストを削減することができ、さらに、カバーが着脱可能であることにより、既存の植物栽培装置に、カバーを備える灌水装置を容易に設置することができる。
【0019】
請求項3に係る本発明の潅水装置によれば、請求項1または請求項2に係る発明が奏す
る効果に加えて、次の効果が奏される。
灌水室内の空気圧をカバーの外側空間の外気圧よりも低圧にするために灌水室内の室内空気を吸引する吸気ポンプを有することにより、吸気ポンプにより潅水室内が負圧状態になるので、潅水室から外側空間への栽培水の拡散や漏出を効果的に抑制することができ、栽培水が植物栽培装置の構成部材に付着することを一層抑制することができる。
【0020】
請求項4に係る本発明の潅水装置によれば、請求項3に係る発明が奏する効果に加えて、次の効果が奏される。
噴霧ノズルに栽培水を供給する給水ポンプを有し、吸気ポンプおよび給水ポンプが、ツインヘッド型の1つのポンプにより構成されることにより、吸気ポンプおよび給水ポンプが1つの一体化されたポンプに備えられるので、吸気ポンプおよび給水ポンプが別々のポンプにより構成される場合に比べて、潅水装置を小型化することができ、さらに潅水装置のコストを削減することができる。
【0021】
請求項5に係る本発明の潅水装置によれば、請求項3または請求項4に係る発明が奏する効果に加えて、次の効果が奏される。
給水ポンプが吸入する栽培水が貯留されているタンクと、吸気ポンプにより吸引された室内空気に含まれている栽培水をタンクに導く栽培水戻し部材とを有することにより、吸気ポンプに吸引された潅水室内の室内空気は、栽培水を含んだ状態でそのまま外気の放出されることなく、室内空気に含まれている栽培水が栽培水戻し部材によりタンクに回収されるので、栽培水の消費量を削減することができ、しかも室内空気と一緒に外気中に放出される栽培水が植物栽培装置の構成部材に付着することを抑制することができる。
【0022】
請求項6に係る本発明の潅水装置によれば、請求項1から請求項5のいずれか1つに係る発明が奏する効果に加えて、次の効果が奏される。
植物栽培装置が、栽培棚に対する栽培トレーの搬入出を自動的に行う移送装置を備える立体倉庫型の植物栽培装置であることにより、潅水装置による潅水作業での栽培水が移送装置に付着することが防止されるので、自動的に作動する移送装置のメンテナンス作業が軽減されて、自動化された立体倉庫型植物栽培装置のメンテナンス性を向上させることができる。
しかも、移送装置が、栽培トレーを栽培棚とトレー載置部との間で自動的に移送することにより、潅水作業を開始前に、栽培棚から、潅水作業が行われるトレー載置部までの栽培トレーの移送、および、潅水作業の完了後に、トレー載置部から栽培棚までの栽培トレーの移送が自動的に行われるので、噴霧ノズルから噴霧された栽培水の拡散を防止するカバーを有する潅水装置による潅水作業のための栽培トレーの移送工程を無人化することができ、大量の植物を低コストで生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例である潅水装置を備える植物栽培装置の要部斜視図。
【図2】図1の潅水装置のカバーの平面図の模式図およびカバー以外の構成部材の模式図と、植物栽培装置の搬送装置の平面図の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の潅水装置は、栽培対象である植物が植えられている栽培トレーが格納される複数の栽培棚を有する栽培庫を備える植物栽培装置に備えられ、栽培トレーの植物に栽培水を灌水するために、植物に栽培水を噴霧する噴霧ノズルと噴霧ノズルから噴霧された栽培水の拡散を防止するカバーとを有し、植物栽培装置が栽培棚とは別個に栽培トレーが灌水対象トレーとして載置されるトレー載置部を備え、前記カバーが平面視で灌水対象トレーの植物の全体を覆うとともに、下端部が平面視で灌水対象トレーの植物の全体を囲むように頂部から灌水対象トレーに向かって下方に延びていることにより、各栽培棚から隔離された空間であって、灌水対象トレーの植物が噴霧ノズルからの栽培水により灌水される灌水室を形成し、噴霧ノズルが灌水室内において栽培水を噴霧することにより、植物栽培装置の構成部材への栽培水の付着を抑制することおよび栽培トレーの植物に栽培水を噴霧することにより、植物栽培装置のメンテナンス性を向上させること、および、栽培水の消費量と栽培された植物の生産コストとを削減することができるものであれば、その具体的な態様は如何なるものであっても構わない。
【0025】
例えば、栽培トレーは、植えられている植物を生育させるための容器であり、いかなる形状および構造を有するものでもよい。
潅水装置は、既存の植物栽培装置に後付けされるもの、潅水装置付きの植物栽培装置として製造されたもの、いずれでもよい。
植物栽培装置は、自動式および非自動式のもの、また立体倉庫型のもの、および、立体倉庫型以外のもの、いずれでもよい。
カバーの形状は、四角筒状のもの、および、四角形状以外の形状(例えば、四角以外の角筒状、円筒状またはドーム状)のもの、いずれでもよい。
栽培トレーに植えられる植物は、苔植物、苔植物以外の背丈の低い植物など、潅水室に収容可能な植物であればよい。
【実施例】
【0026】
以下、本発明の実施例を、図1,図2を参照して説明する。
図1を参照すると、本発明の実施例である灌水装置Wを備える植物栽培装置100は、立体倉庫型の植物栽培装置であり、該灌水装置Wのほかに、栽培対象である植物P(本実施例では、苔植物である。)が植えられている栽培トレー101と、該栽培トレー101が格納される複数の栽培棚106を有する栽培庫105と、栽培トレー101を自動的に搬送するとともに各栽培棚106に対して自動的に搬入出を行う移送装置110(図2参照)と、該移送装置110により栽培庫105に対して入出庫される栽培トレー101が一時的に載置される作業ステーションを構成する入出庫棚120と、各栽培棚106に格納された栽培トレー101の植物Pを生育させるための栽培環境を設定する栽培環境設定装置(図示されず)と、移送装置110を制御するための各種検出手段171および灌水装置Wからの入力信号に応じて移送装置110を制御する制御装置170とを備える。
【0027】
図2を併せて参照すると、栽培トレー101は、植物Pが植えられる培地としての用土を収容するプランター104を介して収容しており、この用土に植物Pが植えられている。別の例として、栽培トレー101は用土を直接収容していてもよい。
栽培庫105は、栽培トレー101を格納するために使用される複数の栽培棚106と、それら栽培棚106を支持する支持フレーム107とを有する。上下方向に1列に並んで配置された複数の栽培棚106は多段棚108を構成する。
そして、栽培庫105は、複数の前記多段棚108が配列方向としての左右方向に配列された1以上の、本実施例では複数の棚ブロックを有する。なお、図1には、1つの棚ブロックが示されている。
【0028】
本実施例では、栽培庫105は、栽培トレー101を格納するために使用されない棚である1以上の非栽培棚109、ここでは複数の非栽培棚109を有する。該非栽培棚109には、灌水装置Wを構成するポンプA、タンク141、制御盤160が配置されている。
このように、栽培庫105が有する棚の一部に灌水装置Wの構成部材が格納されることにより、栽培庫105を備える既存の植物栽培装置に後付けされた灌水装置Wを備える植物栽培装置100をコンパクト化することができる。
【0029】
移送装置110(図2参照)は、栽培トレー101を栽培庫105の各栽培棚106に対して自動的に搬入出する移載機111と、移載機111を搭載している搬送機112とを有する。
移載機111は、この移載機111と栽培棚106との間で栽培トレー101を移載するための可動係合部を有し、可動係合部は栽培トレー101のフック102に係合可能である。
搬送機112は、棚ブロックの前方に配置された案内レール113と、水平方向としての左右方向(図1参照)に延びている案内レール113に案内されて水平方向に自動的に移動可能である水平可動台114と、水平可動台114に上下方向(図1参照)に延びて設けられた垂直ガイド115と、該垂直ガイド115に沿って上下方向に自動的に移動可能な垂直可動台116とを有する。
【0030】
ここで、水平方向である前後方向は、各栽培棚106に対して栽培トレー101が搬入出される搬入出方向であり、前方は栽培トレー101が栽培棚106から搬出される搬出方向、後方は栽培トレー101が栽培棚106に搬入される搬入方向である。
【0031】
水平可動台114と、移載機111が搭載されている垂直可動台116とは、制御装置170により制御されて、移載機111が各栽培棚106の前方である搬入出位置を占める位置と移載機111が入出庫棚120の前方である入出庫位置との間および異なる搬入出位置の間を移動し、搬入出位置および該入出庫位置で停止する。
移載機111は、制御装置170により制御されて、搬入出位置において、前後方向で対向する栽培棚106との間で栽培トレー101を移載し、入出庫位置において、前後方向で対向する入出庫棚120との間で栽培トレー101を移載する。
【0032】
栽培庫105に対する栽培トレー101の入出庫のための入出庫部である入出庫棚120は、栽培棚106とは別個の設けられていて、植物Pが植えられた栽培トレー101が灌水対象トレー101Aとして載置されるトレー載置部を構成する。
入出庫棚120は、棚部121および該棚部121を支持する支持部122を有し、栽培庫105において左右方向での端部に位置する端部多段棚108Aの栽培棚106に隣接して配置されている。
支持部122の一部は、栽培庫105の支持フレーム107により構成されることで、入出庫棚120は栽培庫105と一体化されている。
ここで、栽培庫105および入出庫棚120は、棚ユニットを構成する。
【0033】
制御装置170により制御される前記栽培環境設定装置には、各栽培棚106に格納された栽培トレー101の植物Pに光を照射する照明装置(図示されず)、温度や湿度を調整するととともに送風機能を有する空調装置(図示されず)が含まれる。
【0034】
栽培トレー101の植物Pに栽培水を灌水するための灌水装置Wは、その構成部材として、灌水対象トレー101A(すなわち、入出庫棚120に載置されている栽培トレー101)の植物Pの全体(すなわち、栽培トレー101のすべての植物P)に栽培水を噴霧する噴霧ノズル145を有する給水装置140と、噴霧ノズル145により散水された栽培水の外側空間Roへの拡散(前述したように、栽培水の飛散を含む。)を防止するカバー130と、カバー130が形成している潅水用空間である潅水室Riの内側の空気(以下、「室内空気」という。)を吸引する空気吸引装置150と、灌水装置Wによる潅水作業状態を検出する潅水作業状態検出手段161と、給水装置140および空気吸引装置150を制御する潅水用制御盤160と、を有する。
ここで、栽培水は、培養液のほかに、肥料を含有していない水などを含み、植物Pの生育に必要な液体を意味する。
また、外側空間Roは、カバー130の内側の空間である潅水室Riに対して、カバー130の外側の空間である。
【0035】
カバー130は、平面視で灌水対象トレー101Aの植物Pの全体を覆うとともに、カバー130の下端部130eが平面視で灌水対象トレー101Aの植物Pの全体を囲むように、カバー130の頂部としての天井壁131から潅水対象トレー101Aに向かって下方に延びていることにより、各栽培棚106から隔離されている空間であって、灌水対象トレー101Aの植物Pの全体が噴霧ノズル145からの栽培水により灌水される潅水室Riを形成する。この潅水室Riは、灌水対象トレー101Aの上方に形成されるとともに潅水室Riの上部がカバー130により閉じた空間である。
本実施例では、カバー130は、平面視で灌水対象トレー101Aの内側のほぼ全体および植物Pの植付け領域であるプランター104の全体を覆っており、下端部130eが平面視で灌水対象トレー101Aの内側のほぼ全体およびプランター104の全体を囲んでいる。
ここで、平面視は、上下方向から見ることを意味する。
【0036】
より具体的には、カバー130は、入出庫棚120に載置されている灌水対象トレー101Aよりも上方に配置されるとともに、下方に向かって開放している箱状または四角筒状の部材であり、天井壁131と、平面視で矩形状の天井壁131の四辺から下方に向かって延びている側壁132と、棚ユニットの入出庫棚120にカバー130を取り付けるための取付部137とを有する。
カバー130は、取付部137において、入出庫棚120の支持部122に、固定および固定解除可能な結合具(例えば、ボルト)により取り付けられることで、入出庫棚120に着脱可能に設けられている。
【0037】
天井壁131および側壁132は、いずれも平板状の板材により構成され、該平板状の板材は、好ましくは、カバー130の外側から潅水用空間内の様子が観測できるように、透明な部材により構成され、例えば合成樹脂により形成されている。
カバー130において水平方向から潅水室Riを囲んでいる側壁132は、移載機111による搬入出の方向が行われる側に面する前壁133と、該前壁133と前後方向で対向する後壁134と、左右方向で互いに対向する左壁135および右壁136とから構成される。
そして、カバー130は、天井壁131および側壁132により、噴霧ノズル145から噴霧された栽培水が、上方および水平方向へ拡散することを防止している。
【0038】
前壁133は、上下方向に分割された上壁133aと下壁133bとから構成される。上壁133aはカバー130において不動の固定壁であり、下壁133bは上壁133aに対して上下方向にスライド移動可能な可動壁である。
そして、下壁133bが上方に移動させられて、前壁133の下部に開口が形成された状態が保たれるように、下壁133bの上部には、天井壁131に設けられた係止部133cに係合可能な係合部133dが設けられている。
【0039】
カバー130の下端部130eを構成する側壁132の下端部133e〜136e(図2参照)と灌水対象トレー101Aとの間には、入出庫棚120に対する移載機111による栽培トレー101の搬入出を可能とするための隙間が形成されている。
そして、四角形状の環状の該隙間により、カバー130の内側空間である潅水室Riとカバー130の外側空間Roとの通気口139が構成される。
上下方向での通気口139の幅は、栽培トレー101の上下方向幅よりも小さく、好ましくは該上下方向幅の1/2以下である。
【0040】
また、潅水室Ri内で噴霧された栽培水が外側空間Roに拡散することを抑制する観点から、カバー130において、天井壁131と側壁132との合わせ部および側壁132を構成する壁133〜136同士の合わせ部は、必要な場合にはシール部材を使用することにより、それら合わせ部に、隙間が形成されないか、または噴霧された栽培水が外側空間Roに実質的に漏出する隙間が形成されないにように構成されていことが好ましい。
そして、外側空間Roに存在する空気である外気は、空気吸引装置150により後述する負圧状態になる潅水室Riは、通気口139および後述する給水ホース144が貫通するための貫通孔138を通じて潅水室Riに流入可能である。
【0041】
給水装置140は、栽培水が貯留されているタンク141と、潅水室Ri内において栽培水を噴霧する噴霧ノズル145と、タンク141内の栽培水を吸引して噴霧ノズル145に圧送する給水ポンプ143と、給水ポンプ143およびタンク141に接続されてタンク141内の栽培水を給水ポンプ143に導く吸水路を形成する吸水ホース142と、給水ポンプ143および噴霧ノズル145に接続されて給水ポンプ143から吐出された栽培水を噴霧ノズル145に導く給水路を形成する給水ホース144とを有する。
【0042】
1以上の、本実施例では1つの噴霧ノズル145には、潅水室Ri内で開口して、栽培水を植物Pに向けて噴霧する1以上の、本実施例では複数の噴口146が設けられる。
別の例として、複数の噴霧ノズル145が設けられてもよく、また、複数の噴口146が潅水室Ri内で点在するように、噴霧ノズル145が配置されてもよい。
噴霧ノズル145は、潅水室Ri内において、灌水対象トレー101Aに植えられた植物Pよりも上方であって、潅水室Riの上部、本実施例では上端部に配置されており、天井壁131に取り付けられて、天井壁131付近から栽培水を噴霧して植物Pに散水する。
給水ポンプ143は、ツインヘッド型のポンプAの第1ポンプ部である液体用ポンプ部により構成される。ポンプAは、制御盤160により、その作動が制御される電動ポンプである。
【0043】
空気吸引装置150は、潅水室Ri内の空気圧を外側空間Roの空気圧である外気圧よりも低圧の状態である負圧状態に維持するために室内空気を吸引する吸気ポンプ152と、吸気ポンプ152およびカバー130に接続されて室内空気を吸気ポンプ152に導く吸引路を形成する吸気ホース151と、吸気ポンプ152に接続されて、吸気ポンプ152により吸引された室内空気をタンク141内に排出する排出路を形成する排気ホース153とを有する。
吸気ホース151とカバー130との接続部は、シール部材により密封されることが好ましい。
【0044】
前記負圧状態は、吸気ポンプ152により吸引される室内空気の吸引流量と、通気口139および貫通孔138から潅水室Riに流入する外気の流入流量とに応じて設定され、潅水室Ri内が、潅水室Ri内で噴霧ノズル145から噴霧された栽培液が潅水室Riから外側空間Roに漏出しない程度で、かつ噴霧ノズル145で噴霧された栽培水による灌水が外気の流入により妨げられない程度の空気圧となる圧力状態である。なお、貫通孔138と給水ホース144との間は、シール部材により密封されることが好ましい。
【0045】
排気ホース153は、タンク141内を外気と連通させるためのタンク141の給水口141aから、タンク141内に挿入されていて、タンク141内で栽培液の液面に向けて空気を排出する。
これにより、吸気ポンプ152により吸引された室内空気に混入している栽培水がタンク141に戻される。したがって、排気ホース153は、吸気ポンプ152により吸引された室内空気に含まれている栽培水をタンク141に導く栽培水戻し部材である。
吸気ポンプ152は、ポンプAの第2ポンプ部である気体用ポンプ部により構成される。
【0046】
制御盤160は、潅水作業状態検出手段161により検出される潅水作業状態に基づいて、給水ポンプ143および吸気ポンプ152の運転および停止、すなわちポンプAの運転および停止を制御する。
潅水作業状態検出手段161は、噴霧ノズル145からの栽培水の噴霧を開始する潅水開始時期を検出する潅水開始時期検出手段162と、噴霧ノズル145からの栽培水の噴霧を完了する潅水完了時期を検出する潅水完了時期検出手段163とを含む。
【0047】
潅水開始時期検出手段162は、移載機111により入出庫棚120に移載された灌水対象トレー101Aが、入出庫棚120において所定位置に載置されたことを検出するトレー載置検出手段(例えば、リミットスイッチである。)により構成される。
このトレー載置検出手段は、灌水装置Wによる潅水の準備が完了したことを検出する潅水準備完了検出手段でもある。
また、潅水完了時期検出手段163は、噴霧ノズル145からの栽培水の噴霧が開始された時点からの経過時間を計測するタイマにより構成される。
別の例として、潅水完了時期検出手段163は、給水ポンプ143により供給される栽培水の供給量が所定値に達したことを検出する栽培水供給量検出手段により構成されてもよい。
【0048】
制御盤160は、潅水開始時期検出手段162により潅水開始時期が検出されたときに、給水ポンプ143を作動させて、噴霧ノズル145による栽培水の噴霧を開始させ、潅水完了時期検出手段163により潅水完了時期が検出されたときに、給水ポンプ143を停止して、噴霧ノズル145による栽培水の噴霧を停止する。
そして、制御盤160は、潅水開始時期が検出されたときに、給水ポンプ143の作動開始と同時に吸気ポンプ152を作動させて、室内空気を吸引して、潅水期間中、潅水室Riを前記負圧状態に保つ。
また、制御盤160は、潅水完了時期が検出されたときに、給水ポンプ143の停止と同時または所定の遅れ時間が経過した後に吸気ポンプ152を停止して、潅水室Riの前記負圧状態を解消する。
なお、前記所定の遅れ時間は、噴霧ノズル145による栽培水の噴霧完了後において、潅水室Ri内に浮遊している霧状の栽培水が、通気口139を通じて外側空間Roに拡散することを抑制する観点から適宜設定される。
【0049】
そして、制御盤160は、潅水完了時期が検出されたとき、または給水ポンプ143および吸気ポンプ152が停止したとき、潅水完了信号を制御装置170に出力する。
制御装置170は、該潅水完了信号に基づいて、移載機111および搬送機112を以下のように制御する。
前記入出庫位置に待機していた移載機111が作動して、入出庫棚120から潅水が完了した灌水対象トレー101Aを搬出し、移載機111に載置する。搬送機112は、該灌水対象トレー101Aであった栽培トレー101を、栽培庫105の所定の栽培棚106に搬入出位置まで移載機111とともに搬送し、次いで、移載機111が潅水完了後の該栽培トレー101を潅水作業前に格納されていた元の栽培棚106A(図1参照)に移載し、該栽培棚106Aに格納する。
【0050】
次いで、潅水が必要な栽培トレー101を特定するトレー特定信号(例えば、植物P栽培装置100の操作者の指示信号)が制御装置170に入力されたとき、トレー特定信号に基づいて制御装置170が制御する移載機111および搬送機112により、トレー特定信号により特定された栽培トレー101が、栽培棚106から入出庫棚120まで移送されて、灌水対象トレー101Aとして入出庫棚120に載置される。
その後、前述したことと同様の潅水作業が行われ、この潅水作業の完了後、移載機111および搬送機112により、入出庫棚120から元の栽培棚106に戻される。
以下、灌水装置Wを備える植物栽培装置100において、潅水作業に関して、同様の動作が繰り返される。
【0051】
次に、前述のように構成された実施形態の作用および効果について説明する。
灌水装置Wは、苔植物である植物Pが植えられている栽培トレー101が格納される複数の栽培棚106を有する栽培庫105を備える植物栽培装置100に備えられることにより、植物栽培装置100の栽培庫105の栽培棚106に格納される栽培トレー101に植えられた植物Pに栽培水を潅水することができる。
【0052】
灌水装置Wは、植物Pに栽培水を噴霧する噴霧ノズル145と、噴霧ノズル145から噴霧された栽培水の拡散を防止するカバー130とを有し、植物栽培装置100が、栽培トレー101が灌水対象トレー101Aとして載置されるトレー載置部としての入出庫棚120を備え、潅水室Riを形成するカバー130が、平面視で灌水対象トレー101Aの植物Pの全体を覆うとともに、水平方向から潅水室Riを囲んでいる側壁132の下端部133e〜136eが平面視で灌水対象トレー101Aの植物Pの全体を囲むように、側壁132が天井壁131から潅水対象トレー101Aに向かって下方に延びており、噴霧ノズル145が潅水室Ri内において栽培水を噴霧する。
この構成により、噴霧ノズル145から噴霧された栽培水の拡散を防止するカバー130が、平面視で灌水対象トレー101Aの植物Pの全体を覆うとともに、下端部133e〜136eが平面視で灌水対象トレー101Aの植物Pの全体を囲むように、天井壁131から潅水対象トレー101Aに向かって下方に延びていることにより潅水室Riを形成することで、カバー130により、植物栽培装置100の構成部材、すなわち栽培庫105、移送装置110の移載機111および搬送機112、入出庫棚120、制御装置170、および、灌水装置Wのカバー130、給水装置140、空気吸引装置150および制御盤160などへの栽培水の付着が抑制されるので、植物栽培装置100のメンテナンス作業が軽減されて、植物栽培装置100のメンテナンス性を向上させることができる。
しかも、栽培水は潅水室Ri内において噴霧されて、栽培トレー101の植物Pへの潅水が行われるので、栽培トレー101のすべての植物Pに均一化された状態で潅水することができるため、栽培トレー101毎の植物Pの生育状態を均一化することができ、しかも均一化された潅水を実現するために、多量の栽培水で栽培トレー101の一部に集中的に潅水することに起因する栽培トレー101からの栽培水の溢水および培地や植物Pの流出、さらに栽培トレー101から流出した用土や植物Pによる排水路の閉塞の発生が防止されるため、植物栽培装置100のメンテナンス作業が軽減されて、植物栽培装置100のメンテナンス性を向上させることができる。
また、潅水室Riを上方から覆う天井壁131を有するとともに、潅水室Riの上部を閉塞しているカバー130により、天井壁131に取り付けられた噴霧ノズル145から噴霧された栽培水の拡散が防止されるので、栽培水が栽培トレー101の植物Pに効率よく潅水されるため、栽培水の消費量を削減することができ、その分、栽培された植物Pの生産コストを削減することができる。
【0053】
灌水対象トレー101Aが載置されるトレー載置部が、栽培庫105に対する栽培トレー101の入出庫のための入出庫棚120であり、カバー130が、入出庫棚120に着脱可能に設けられていることにより、植物栽培装置100が備える入出庫棚120を利用することで、潅水作業用の専用のトレー載置部を備える必要がないため、栽培される植物Pの生産コストを削減することができる。
さらに、カバー130が着脱可能であることにより、既存の植物栽培装置に、該カバー130を備える灌水装置Wを容易に設置することができる。
【0054】
潅水室Ri内の空気圧をカバー130の外側空間Roの外気圧よりも低圧にするために潅水室Ri内の室内空気を吸引する吸気ポンプ152を有することにより、吸気ポンプ152により潅水室Ri内が前記負圧状態になるので、潅水室Riから外側空間Roへの栽培水の拡散や漏出を効果的に抑制することができ、栽培水が植物栽培装置100の構成部材に付着することを一層抑制することができる。
【0055】
灌水装置Wが噴霧ノズル145に栽培水を供給する給水ポンプ143を有し、吸気ポンプ152および給水ポンプ143が、ツインヘッド型の1つのポンプAにより構成されることにより、吸気ポンプ152および給水ポンプ143が1つの一体化されたポンプAに備えられるので、吸気ポンプ152および給水ポンプ143が別々のポンプにより構成される場合に比べて、灌水装置Wを小型化することができ、さらに灌水装置Wのコストを削減することができる。
【0056】
灌水装置Wが、給水ポンプ143が吸入する栽培水が貯留されているタンク141と、吸気ポンプ152により吸引された室内空気に含まれている栽培水をタンク141に導く栽培水戻し部材としての排気ホース153とを有する。
この構成により、吸気ポンプ152に吸引された潅水室Ri内の室内空気は、栽培水を含んだ状態でそのまま外気の放出されることなく、該室内空気に含まれている栽培水が排気ホース153によりタンク141に回収されるので、栽培水の消費量を削減することができ、しかも室内空気と一緒に外気中に放出される栽培水が植物栽培装置100の構成部材に付着することを抑制することができる。
【0057】
植物栽培装置100は、栽培棚106に対する栽培トレー101の搬入出を自動的に行う移送装置110を構成する移載機111および搬送機112を備える立体倉庫型の植物栽培装置100であることにより、灌水装置Wによる潅水作業での栽培水が移載機111および搬送機112に付着することが防止されるので、自動的に作動する移送装置110のメンテナンス作業が軽減されて、自動化された立体倉庫型植物栽培装置100のメンテナンス性を向上させることができる。
しかも、移載機111および搬送機112が、栽培トレー101を栽培棚106と入出庫棚120との間で自動的に移送することにより、潅水作業を開始前に、栽培棚106から、潅水作業が行われる入出庫棚120までの栽培トレー101の移送、および、潅水作業の完了後に、入出庫棚120から栽培棚106までの栽培トレー101の移送が自動的に行われるので、噴霧ノズル145から噴霧された栽培水の拡散を防止するカバー130を有する灌水装置Wによる潅水作業のための栽培トレー101の移送工程を無人化することができ、大量の植物Pを低コストで生産することができる。このため、屋上緑化のために大量に使用される苔植物を低コストで供給することができる。
【0058】
カバー130において、前後方向で移載機111に対向する側壁132である前壁133の下壁133bが、前壁133の下部を開放するように移動可能であることにより、下壁133bを上昇させて前壁133の下部を開放することで、移載機111が入出庫棚120との間で栽培トレー101を移載するための、潅水室Riに対する栽培トレー101の出入口が形成されるので、潅水室Riを前記負圧状態に維持する観点、または、吸気ポンプ152が運転されないために潅水室Riが前記負圧状態にならない場合に、噴霧された栽培水が通気口139を通じて外側空間Roに拡散することを抑制する観点から、通気口139の上下方向での幅が小さく設定される場合にも、入出庫棚120に対する栽培トレー101の搬入出を容易にすることができ、灌水作業の準備作業の効率を向上させることができる。
【0059】
以下、前述した実施形態の一部の構成を変更した実施形態について、変更した構成に関して説明する。
給水ポンプ143および吸気ポンプ152は、別々のポンプにより構成されてもよい。
プランター104が使用されない場合、カバー130は、平面視で植物Pの植付け領域の全体を覆っており、下端部130eが平面視で該植付け領域の全体を囲んでいる。
灌水対象トレー101Aが載置されるトレー載置部が、入出庫棚120の代わりに、栽培庫105の一部の棚であって、栽培棚106とは別個の非栽培棚109により構成されてもよい。入庫棚および出庫棚を別々である場合、そのいずれか一方がトレー載置部を構成してもよい。
トレー載置部は、灌水対象トレー101Aを上下方向に移動可能とする機構を備えていてもよく、この場合、通気口139を構成するカバー130と灌水対象トレー101Aとの隙間は、水平方向での隙間であってもよい。
【0060】
吸気ポンプ152に吸引された室内空気に含まれている栽培液をタンク141に戻すために、排気ホース153の途中、吸気ホース151の途中、または、排気ホース153の出口に、気液分離器(例えば、霧状の栽培水が付着する邪魔板を有する気液分離器、室内空気を冷却する冷却手段を有する気液分離器)が設けられてもよい。
この場合、該気液分離器で分離された栽培液が、タンク141に戻され、栽培水が分離された後の室内空気は、タンク141に戻されることなく外側空間Roに排出される。
この場合、前記気液分離器は、吸気ポンプ152により吸引された室内空気に含まれている栽培水をタンク141に導く栽培水戻し部材である。
【0061】
灌水装置Wは、空気吸引装置150を有していなくてもよい。この場合、潅水室Ri内で噴霧された栽培水が外側空間Roに拡散することを抑制する観点から、カバー130において、天井壁131と各側壁132との合わせ部、側壁132同士の合わせ部に加えて、ホースなどの部材がカバー130を貫通する貫通部は、シール部材を使用することにより、カバー130は、カバー130自体に隙間が形成されないか、または噴霧された栽培水が外側空間Roに実質的に漏出する隙間が形成されないにように構成される。
このため、カバー130は、栽培液に対して密封状態またはほぼ密封状態で潅水室Riを形成している。
【0062】
通気口139にビニール等の可撓性素材で構成したカーテンを設けることで、外側空間Roへの栽培水の拡散を一層抑制できる。
このカーテンは、潅水対象トレー101Aの縁よりも低い位置まで垂れ下がっていてもよい。この場合、潅水対象トレー101Aは、可撓性のカーテンを押し退けながら、入出庫棚120に対して搬入出される。
カバー130の天井壁131および各側壁132は、形成材料(例えば、合成樹脂)により一体成形されてもよい。
植物栽培装置100は、移載機111および搬送機112の少なくとも一方が自動式でないものであってもよく、また立体倉庫型以外のものであってもよい。
【符号の説明】
【0063】
100・・・植物栽培装置
101・・・栽培トレー
101A・・・灌水対象トレー
105・・・栽培庫
106・・・栽培棚
110・・・移送装置
111・・・移載機
112・・・搬送機
120・・・入出庫棚
130・・・カバー
130e・・・下端部
131・・・天井壁
132・・・側壁
140・・・給水装置
141・・・タンク
143・・・給水ポンプ
145・・・噴霧ノズル
150・・・空気吸引装置
152・・・吸気ポンプ
153・・・排気ホース
P ・・・植物
W ・・・灌水装置
Ri・・・潅水室
A ・・・ツインヘッド型ポンプ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培対象である植物が植えられている栽培トレーが格納される複数の栽培棚を有する栽培庫を備える植物栽培装置に備えられて、前記栽培トレーの前記植物に栽培水を灌水するための灌水装置において、
前記植物に栽培水を噴霧する噴霧ノズルと、前記噴霧ノズルから噴霧された栽培水の拡散を防止するカバーとを有し、
前記植物栽培装置が、前記栽培棚とは別個に、前記栽培トレーが灌水対象トレーとして載置されるトレー載置部を備え、
前記カバーが、平面視で前記灌水対象トレーの前記植物の全体を覆うとともに、下端部が平面視で前記灌水対象トレーの前記植物の全体を囲むように、頂部から前記灌水対象トレーに向かって下方に延びていることにより、前記各栽培棚から隔離された空間であって、前記灌水対象トレーの前記植物が前記噴霧ノズルからの栽培水により灌水される灌水室を形成し、
前記噴霧ノズルが、前記灌水室内において栽培水を噴霧することを特徴とする植物栽培装置。
【請求項2】
前記トレー載置部が、前記栽培庫に対する前記栽培トレーの入出庫のための入出庫部であり、
前記カバーが、前記入出庫部に着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の灌水装置。
【請求項3】
前記灌水室内の空気圧を前記カバーの外側空間の外気圧よりも低圧にするために前記灌水室内の室内空気を吸引する吸気ポンプを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の灌水装置。
【請求項4】
前記噴霧ノズルに栽培水を供給する給水ポンプを有し、
前記吸気ポンプおよび前記給水ポンプが、ツインヘッド型の1つのポンプにより構成されることを特徴とする請求項3に記載の灌水装置。
【請求項5】
前記給水ポンプが吸入する栽培水が貯留されているタンクと、前記吸気ポンプにより吸引された室内空気に含まれている栽培水を前記タンクに導く栽培水戻し部材とを有することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の灌水装置。
【請求項6】
前記植物栽培装置が、前記栽培棚に対する前記栽培トレーの搬入出を自動的に行う移送装置を備える立体倉庫型の植物栽培装置であり、
前記移送装置が、前記栽培トレーを前記栽培棚と前記トレー載置部との間で自動的に移送することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の灌水装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−34393(P2013−34393A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170553(P2011−170553)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】