説明

植物検疫能を有する出芽酵母株

本発明は、2008年3月4日にCNCMで受託された株No.I-3936、2008年3月4日にCNCMで受託された株No.I-3937、2008年3月4日にCNCMで受託された株No.I-3938および2008年3月4日にCNCMで受託された株No.I-3939から選択されることを特徴とする出芽酵母(Saccharomyces cerevisae)株に関する。
本発明はまた、植物検疫用組成物および前記株を用いて病原体によって引き起こされる疾患から植物を処置または保護する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、多様な病原体、特に真菌から植物を保護するための微生物拮抗剤として有用な、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)に関する。本発明は多様な植物の処置に適用される。
【背景技術】
【0002】
背景技術
植物の病原体のなかでも、真菌病または隠花植物の疾患に関与する真菌は、最も大きな経済的影響を有するものである。各植物種は、その頑健性、成長および最終的にはその収穫物の量および/または質を低下させ得る、1または数種の主な疾患に感受性である。
【0003】
様々なパラメーター、例えば土壌の状態および肥料、植物の感受性および栽培方法(回転、耕作、ヘクタールあたりの植物または苗の数、枝刈りシステムなど)または気候条件が、疾患発症に影響する。しかし、これらのパラメーターのいくつかについての操作は、一般に、疾患によって引き起こされる損害を限定するのに十分ではない。また、これに対する保護として、収穫量を最大化し、確実にすることを望む実施者は、耕作物を適時に植物検疫用品、しばしば予防用品で処理する。ほとんどの場合、この使用される製品は化学製品であり、ほとんどが極めて有効であるが、それを操作するヒトに健康上の危険を有し、そして土壌および水中に処理した製品の残留物を生じ得る。さらに、同じ代謝部位に作用する特定の静菌活性物質の反復使用は、その静菌剤に耐性である菌を選択する。
【0004】
これの解決手段を見出そうとするためには、同じファミリーの化学物質の年間使用数を制限し、異なる作用形態を有する化学物質ファミリーに変更し、そして病原体に好ましくないあらゆる他の手段を用いる必要がある。したがって、植物疾患に対する別の解決手段に対する現実的かつ重要な必要性が存在する。
【0005】
理想的には、この解決手段は、既存の化学的静菌剤とは異なる様式で作用し、収穫物および環境中に化学的残留物を生じず、そして取扱者に安全かつ健康であるべきである。このような処置は、単独で、あるいは既存の化学的処置または植物に対する病原体およびそれらの耐性株の発生を予防しまたは発症を限定するためのあらゆる他の処置に代えてそして/またはそれらと組み合わせて使用するべきであり、ヒトおよび環境に対する危険を制限する。
【0006】
これに関連して、どのように植物に病原体に対する微生物拮抗剤を投与するかは知られている。例えば、これまで微生物拮抗剤として提案されている微生物には、細菌:枯草菌(Bacillus subtilis)、真菌:トリコデルマ・ハルジャナム(Trichoderma harzanium)、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)、コニオチリウム・ミニタンス(Coniothyrium minitans)、ストレプトマイセス・グリセオビリディス(Streptomyces griseoviridis)、酵母:黒酵母(Aureobasidium pullulans)、メッシュニコビア・フルクチコラ(Metschnikowia fructicola)、カンジダ・オレオフィラ(Candida oleophila)が含まれる。El Ghaouth et al.による文献“Biological control of post harvest diseases of fruits and vegetable” (Applied Mycology and Biotechnology, Vol.2, Agriculture and food production, Elsevier Science B.V., p.219-238) は、果実に対する病原体の生物学的コントロールについて知られていることの概説を提案し、そして微生物拮抗剤の作用形態についていくつかの可能性の説明を提案している。
【0007】
微生物拮抗剤としての出芽酵母の使用も考慮されている。しかし、一般に、これらの酵母の有効性は、他の微生物のものよりも低いか、あるいはある場合には、全くないと予測されていた。例えば、A.B. Filonowによる文献“Role of competition for sugars in yeasts in the biocontrol if gray mold in apples”, (Biocontrol Science and Technology, 8:243-256, 1998) を参照されたい。この文献は、クリプトコッカス・ラウレンティ(Cryptococcus laurentii)およびスポロボロミセス・ロゼウス(Sporobolomyces roseus)とは異なり、出芽酵母が灰色カビ病によるリンゴの感染を低減するのに不充分であると教示している。
【0008】
本発明において、通常最も有効なものと考えられる微生物拮抗剤は、しばしば天然環境から単離され、十分に知られておらず、その開発または使用中に、結果的に望ましくない特徴を発現することがある。次に、工業上の困難性またはヒトもしくは環境に対する欠点にすら直面する。
【0009】
したがって、工業的な観点からより信頼性があり、健康および環境の観点からより安全であり、そして植物において病原体によって引き起こされる疾患の制御に有効な、微生物拮抗性の新規菌株を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0010】
発明の概要
本発明はまず、2008年3月4日にCNCM(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes, Institut Pasteur, 25 rue du Docteur Roux, 75724 Paris Cedex 15, France)で受託された株No.I-3936、2008年3月4日にCNCMで受託された株No.I-3937、2008年3月4日にCNCMで受託された株No.I-3938および2008年3月4日にCNCMで受託された株No.I-3939から選択されることを特徴とする出芽酵母(Saccharomyces cerevisae)株に関する。
【0011】
本発明はまた、2008年3月4日にCNCMで受託された株No.I-3936、2008年3月4日にCNCMで受託された株No.I-3937、2008年3月4日にCNCMで受託された株No.I-3938および2008年3月4日にCNCMで受託された株No.I-3939ならびにそれらの混合物から選択される出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)株を含む、植物検疫用組成物。
【0012】
ある態様において、植物検疫用組成物は、1種以上の賦形剤および/または少なくとも1種のさらなる活性アジュバントを含む。
ある態様において、植物検疫用組成物は、固体または液体乾燥形態の濃縮植物検疫用組成物である。
ある態様において、植物検疫用組成物は、乾燥または液体、好ましくは液体形態の即時使用可能な植物検疫用組成物である。
ある態様において、植物検疫用組成物は、104〜1011 cfu/mL、好ましくは105〜1010 cfu/mL、より好ましくは5×105〜5×109 cfu/mLの量の出芽酵母を含む。
【0013】
本発明はまた、病原体によって引き起こされる疾患から植物を処置または保護する方法であって、2008年3月4日にCNCMで受託された株No.I-3936、2008年3月4日にCNCMで受託された株No.I-3937、2008年3月4日にCNCMで受託された株No.I-3938および2008年3月4日にCNCMで受託された株No.I-3939ならびにそれらの混合物から選択される出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)株を植物に接触させることを含む方法に関する。
ある態様において、病原体は、真菌、ウイルス、細菌、マイコプラズマ、スピロプラズマ、ウイロイドおよびそれらの組合せ、好ましくは真菌から選択される。
【0014】
ある態様において、病原体は、以下のものから選択される:
アルテルナリア(Alternaria spp.)属菌種、特にアルテルナリア・ソラニ(Alternaria solani)およびアルテルナリア・アルテルナータ(Alternaria alternata)、アスコチタ属菌種(Ascochyta spp.)、特にアスコチタ・ファバエ(Ascochyta fabae)またはアスコチタ・ピノデラ(Ascochyta pinodella)、アスペルギルス属菌種(Aspergillus spp.)、特にクロコウジカビ(Aspergillus niger)およびアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、ボトリチス属菌種(Botrytis spp.)、特に灰色カビ病菌(Botrytis cinerea)、ブレミア属菌種(Bremia spp.)、特にブレミア・ラクツカエ(Bremia lactucae)、セルコスポラ属菌種(Cercospora spp.)、特にセルコスポラ・ベチコラ(Cercospora beticola)、クラドスポリウム属菌種(Cladosporium spp.)、特にクラドスポリウム・アリイ−セパエ(Cladosporium allii-cepae)、コレトトリチューム属菌種(Colletotrichum spp.)、特にコレトトリチューム・グラミニコラ(Colletotrichum graminicola)、クリプトスポリオプシス属菌種(Cryptosporiopsis spp.)、特にクリプトスポリオプシス・マリコルチシス(Cryptosporiopsis malicorticis)、エリシフェ属菌種(Erysiphe spp.)、特にエリシフェ・グラミニス(Erysiphe graminis)またはネカトル(necator)、フサリウム属菌種(Fusarium spp.)、特にフサリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)およびフサリウム・ロゼウム(Fusarium roseum)、グロエオスポリウム属菌種(Gloeosporium spp.)、特にグロエオスポリウム・フルクチゲナム(Gloeosporium fructigenum)、グイニャーディア属菌種(Guignardia spp.)、特にグイニャーディア・ビドウェリ(Guignardia bidwellii)、ヘルミントスポリウム属菌種(Helminthosporium spp.)、特にヘルミントスポリウム・トリチシ−レペンチス(Helminthosporium tritici-repentis)、マルソニア属菌種(Marssonina spp.)、特にマルソニア・ロサエ(Marssonina rosae)、モニリア属菌種(Monilia spp.)、特にモニリア・フルクチゲナ(Monilia fructigena)、ミコスファエレラ属菌種(Mycosphaerella spp.)、特にミコスファエレラ・ブラシチコラ(Mycosphaerella brassicicola)、ペニシリウム属菌種(Penicillium spp.)、特にペニシリウム・エクスパンサム(Penicillium expansum)またはペニシリウム・ジキタータム(Penicillium digitatum)、ペロノスポラ属菌種(Peronospora spp.)、特にペロノスポラ・パラシチカ(Peronospora parasitica)、ペジキュラ属菌種(Pezicula spp.)、特にペジキュラ・マリコルチシス(Pezicula malicorticis)、フラグミジウム属菌種(Phragmidium spp.)、特にフラグミジウム・ルビ−イダエイ(Phragmidium rubi-idaei)、フィトフトラ属菌種(Phytophtora spp.)、特にフィトフトラ・インフェスタンス(Phytophtora infestans)、プラスモパラ属菌種(Plasmopara spp.)、特にプラスモパラ・ビチコラ(Plasmopara viticola)、ポドスファエラ属菌種(Podosphaera spp.)、特にポドスファエラ・レウコトリカ(Podosphaera leucotricha)、シュードセロスポレラ属菌種(Pseudocercosporella spp.)、例えばシュードセロスポレラ・ブラシカエ(Pseudocercosporella brassicae)、シュードペロノスポラ属菌種(Pseudoperonospora spp.)、特にシュードペロノスポラ・クベンシス(Pseudoperonospora cubensis)、シュードペジザ属菌種(Pseudopeziza spp.)、特にシュードペジザ・メディカギニス(Pseudopeziza medicaginis)、プチニア属菌種(Puccinia spp.)、特にプチニア・グラミニス(Puccinia graminis)、ピチウム属菌種(Pythium spp.)、ラムラリア属菌種(Ramularia spp.)、特にラムラリア・ベタエ(Ramularia betae)、リゾクトニア属菌種(Rhizoctonia spp.)、特にリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)、リゾプス属菌種(Rhizopus spp.)、特にリゾプス・ニグリカンス(Rhizopus nigricans)およびリゾプス・ストロニフェル(Rhizopus stolonifer)、リンコスポリウム属菌種(Rynchosporium spp.)、特にリンコスポリウム・セカリス(Rynchosporium secalis)、スクレロチニア属菌種(Sclerotinia spp.)特にスクレロチニア・スクレロチオルム(Sclerotinia sclerotiorum)、セプトリア属菌種(Septoria spp.)、特にセプトリア・ノドルム(Septoria nodorum)またはセプトリア・トリチシ(Septoria tritici)、スファエロテカ属菌種(Sphaerotheca spp.)、特にスファエロテカ・マクラリス(Sphaerotheca macularis)、スピロカエア属菌種(Spilocaea spp.)、特にスピロカエア・ポミ(Spilocaea pomi)、タフリナ属菌種(Taphrina spp.)、特にタフリナ・プルニ(Taphrina pruni)、トリコテシウム属菌種(Trichothecium spp.)、特にロセウム(roseum)、ウンシヌラ属菌種(Uncinula spp.)、特にウンシヌラ・ネカトル(Uncinula necator)、ウスチラゴ属菌種(Ustilago spp.)、特にウスチラゴ・トリチシ(Ustilago tritici)、ベンツリア属菌種(Venturia spp.)、特にベンツリア・イナエクアリス(Venturia inaequalis)ならびにこれらの組合せ(前記病原体は、好ましくは、ペニシリウム・ジキタータム(Penicillium digitatum)、ペニシリウム・エクスパンサム(Penicillium expansum)、灰色カビ病菌(Botrytis cinerea)およびそれらの組合せから選択される)。
【0015】
ある態様において、植物は以下のものから選択される:
イネ科植物、双子葉植物、一年生植物、二年生植物および多年生植物、野菜類の苗もしくは収穫された野菜類、果樹もしくは収穫された果実、観花植物もしくは採取された花、穀草類、油性植物、タンパク性植物、木質性植物、装飾植物、特にジャガイモ、ビートの根、サトウキビ、タバコ、ブドウ、コムギ、ナタネ、オオムギ、コメ、トウモロコシ、モロコシ、キビ、ダイズ、マメ、トマト、キュウリ、レタス、イチゴ、リンゴ、ナシ、柑橘類、バナナ、パイナップル、モモ、アプリコット、チェリー、クルミおよびヘーゼルナッツから選択されるもの。
【0016】
ある態様において、上記方法は以下の工程を含む:
− 上記即時使用可能な植物検疫用組成物を植物の全体または一部に適用する;または
− 上記濃縮植物検疫用組成物を賦形剤と混合して最終植物検疫用組成物を調製し、次いでこの最終植物検疫用組成物を植物の全体または一部に適用する。
【0017】
ある態様において、植物の全体または一部への植物検疫用組成物の適用が、好ましくはスプレーにより、植物の葉、茎、花、果実、幹および/または根またはその一部への適用であり、好ましくは、根への適用が、地面へのスプレー、機械的混入、肥料もしくは栄養補助剤との混合またはプレミックスによって行われる。
【0018】
本発明は、従来技術の欠点を克服することが可能である。より具体的には、工業的な視点からより信頼性があり、健康的および環境的な視点からより安全であり、そして病原体によって引き起こされる植物の疾患を制御するために効果的な、拮抗微生物の新規菌株を提供する。
【0019】
本発明は、極めて優れた植物検疫能を有する出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)の新規菌株を発明者らが開発したことに基づく。出芽酵母は既知の酵母種であり、工業規模を含むパンまたはアルコールを生産するためにヒトによって数世紀にわたって探索されているため、拮抗微生物としてのその使用は特に有利である。
【0020】
したがって、植物の病原体およびそれらが引き起こす疾患に対する効果的な制御が可能となり、そしてヒトおよび環境に全くまたはほとんど害なくこれが行われ、工業規模での製造が用意である。
【0021】
具体的な態様によると、本発明はまた、1個または好ましくは数個の下記利点を有する:
− 本発明は、長期間の植物保護(例えば1週間、2週間または1ヶ月以上)および複数の病原体に対する多価作用が可能である;
− 本発明は特に生物学的農学の分野に適用可能である;
− 本発明は、感染レベルを低下させ、および/または寛解摂取量を低下させることによって、植物保護の全体的効率を向上させることが可能である;
− 本発明は、栽培または植物の処置の間、消費産物、土壌および水中の農薬の残留量を制限することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の態様の説明
本発明をより詳細に、非限定的に、以下に説明する。
【0023】
処置のタイプ(治療的または予防的)
上記の通り、本発明は、植物の病原体を予防的または治療的に制御するための方法および製品に関する。
【0024】
関係する植物は、あらゆるタイプの植物、特にイネ科植物、双子葉植物、一年生植物、二年生植物および多年生植物、野菜、コムギ、オオムギおよびコメを含む穀草類、トウモロコシ、ソルガム、キビ、油性植物、タンパク性植物、ジャガイモ、ビートルート、トウキビ、タバコ、木質性植物、果樹または非果実性樹木、ブドウまたは装飾植物であってよい。
具体的な態様において、植物は果樹、例えば種子型果樹であり、特にリンゴ果樹、ナシ果樹および柑橘類の果樹から選択される。
別の態様において、植物は、ブドウ、穀草類(特にコムギ)、ナタネ、ビートルート、ジャガイモ、豆類、トマト、キュウリ、レタスまたはイチゴから選択される。
本明細書において使用される用語「植物」は、植物それ自体(例えば果樹)および単離されたこれらの植物の一部、例えば収穫された果実または花、穀類または種(植物増殖物質)の両方を含む。
具体的な態様において、植物は果実、例えばリンゴ、ナシまたは柑橘類である。
【0025】
以下において植物を組成物と接触させると記載したとき、この接触は、植物の全体または表面の一部のみに実行してよいと理解するべきである。例えば、植物が完全な植物であるとき、接触は植物の全体または後者の一部もしくはそれ以上のみ、例えば葉、茎、花、果実、幹および/または根の表面またはこれらの葉、茎、花、果実、幹および/または根の表面の一部のみに実行してよい。
【0026】
本発明の製品は、1ヶ月以上または植物を冷温条件下に保てば数ヶ月以上であってもよい顕著な期間にわたって、病原体から植物を効果的に保護することが可能である。当然、使用者によって定義される間隔で反復使用が意図されてもよい。
【0027】
本発明は、あらゆるタイプの病原体、特に真菌、ウイルス、細菌、マイコプラズマ、スピロプラズマまたはウイロイドの制御に使用可能である。真菌の制御が本発明によって特に効果的に行われる。
【0028】
病原体の具体的な例として、特に以下のものを挙げることができる:
アルテルナリア(Alternaria spp.)属菌種、例えばアルテルナリア・ソラニ(Alternaria solani)およびアルテルナリア・アルテルナータ(Alternaria alternata)、アスコチタ属菌種(Ascochyta spp.)、特にアスコチタ・ファバエ(Ascochyta fabae)またはアスコチタ・ピノデラ(Ascochyta pinodella)、アスペルギルス属菌種(Aspergillus spp.)、特にクロコウジカビ(Aspergillus niger)およびアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、ボトリチス属菌種(Botrytis spp.)、例えば灰色カビ病菌(Botrytis cinerea)、ブレミア属菌種(Bremia spp.)、特にブレミア・ラクツカエ(Bremia lactucae)、セルコスポラ属菌種(Cercospora spp.)、例えばセルコスポラ・ベチコラ(Cercospora beticola)、クラドスポリウム属菌種(Cladosporium spp.)、例えばクラドスポリウム・アリイ−セパエ(Cladosporium allii-cepae)、コレトトリチューム属菌種(Colletotrichum spp.)、特にコレトトリチューム・グラミニコラ(Colletotrichum graminicola)、クリプトスポリオプシス属菌種(Cryptosporiopsis spp.)、特にクリプトスポリオプシス・マリコルチシス(Cryptosporiopsis malicorticis)、エリシフェ属菌種(Erysiphe spp.)、特にエリシフェ・グラミニス(Erysiphe graminis)またはエリシフェ・ネカトル(Erysiphe necator)、フサリウム属菌種(Fusarium spp.)、例えばフサリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)およびフサリウム・ロゼウム(Fusarium roseum)、グロエオスポリウム属菌種(Gloeosporium spp.)、例えばグロエオスポリウム・フルクチゲナム(Gloeosporium fructigenum)、グイニャーディア属菌種(Guignardia spp.)、例えばグイニャーディア・ビドウェリ(Guignardia bidwellii)、ヘルミントスポリウム属菌種(Helminthosporium spp.)、例えばヘルミントスポリウム・トリチシ−レペンチス(Helminthosporium tritici-repentis)、マルソニア属菌種(Marssonina spp.)、例えばマルソニア・ロサエ(Marssonina rosae)、モニリア属菌種(Monilia spp.)、例えばモニリア・フルクチゲナ(Monilia fructigena)、ミコスファエレラ属菌種(Mycosphaerella spp.)、例えばミコスファエレラ・ブラシチコラ(Mycosphaerella brassicicola)、ペニシリウム属菌種(Penicillium spp.)、例えばペニシリウム・エクスパンサム(Penicillium expansum)またはペニシリウム・ジキタータム(Penicillium digitatum)、ペロノスポラ属菌種(Peronospora spp.)、例えばペロノスポラ・パラシチカ(Peronospora parasitica)、ペジキュラ属菌種(Pezicula spp.)、例えばペジキュラ・マリコルチシス(Pezicula malicorticis)、フラグミジウム属菌種(Phragmidium spp.)、例えばフラグミジウム・ルビ−イダエイ(Phragmidium rubi-idaei)、フィトフトラ属菌種(Phytophtora spp.)、例えばフィトフトラ・インフェスタンス(Phytophtora infestans)、プラスモパラ属菌種(Plasmopara spp.)、例えばプラスモパラ・ビチコラ(Plasmopara viticola)、ポドスファエラ属菌種(Podosphaera spp.)、例えばポドスファエラ・レウコトリカ(Podosphaera leucotricha)、シュードセロスポレラ属菌種(Pseudocercosporella spp.)、例えばシュードセロスポレラ・ブラシカエ(Pseudocercosporella brassicae)、シュードペロノスポラ属菌種(Pseudoperonospora spp.)、例えばシュードペロノスポラ・クベンシス(Pseudoperonospora cubensis)、シュードペジザ属菌種(Pseudopeziza spp.)、例えばシュードペジザ・メディカギニス(Pseudopeziza medicaginis)、プチニア属菌種(Puccinia spp.)、例えばプチニア・グラミニス(Puccinia graminis)、ピチウム属菌種(Pythium spp.)、ラムラリア属菌種(Ramularia spp.)、例えばラムラリア・ベタエ(Ramularia betae)、リゾクトニア属菌種(Rhizoctonia spp.)、例えばリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)、リゾプス属菌種(Rhizopus spp.)、例えばリゾプス・ニグリカンス(Rhizopus nigricans)およびリゾプス・ストロニフェル(Rhizopus stolonifer)、リンコスポリウム属菌種(Rynchosporium spp.)、例えばリンコスポリウム・セカリス(Rynchosporium secalis)、スクレロチニア属菌種(Sclerotinia spp.)、例えばスクレロチニア・スクレロチオルム(Sclerotinia sclerotiorum)、セプトリア属菌種(Septoria spp.)、例えばセプトリア・ノドルム(Septoria nodorum)またはセプトリア・トリチシ(Septoria tritici)、スファエロテカ属菌種(Sphaerotheca spp.)、例えばスファエロテカ・マクラリス(Sphaerotheca macularis)、スピロカエア属菌種(Spilocaea spp.)、特にスピロカエア・ポミ(Spilocaea pomi)、タフリナ属菌種(Taphrina spp.)、例えばタフリナ・プルニ(Taphrina pruni)、トリコテシウム属菌種(Trichothecium spp.)、例えばトリコテシウム・ロセウム(Trichothecium roseum)、ウンシヌラ属菌種(Uncinula spp.)、例えばウンシヌラ・ネカトル(Uncinula necator)、ウスチラゴ属菌種(Ustilago spp.)、例えばウスチラゴ・トリチシ(Ustilago tritici)、ベンツリア属菌種(Venturia spp.)、例えばベンツリア・イナエクアリス(Venturia inaequalis)。上記病原体の組合せも本発明の手段によって制御され得る。
【0029】
ペニシリウム・ジキタータム(Penicillium digitatum)、ペニシリウム・エクスパンサム(Penicillium expansum)、灰色カビ病菌(Botrytis cinerea)は、本発明が特に有効な種である。
【0030】
特に栽培に影響する細菌の例は、コリネバクテリア(Corynebacterium)、クラビバクテリア(Clavibacter)、クルトバクテリア(Curtobacterium)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、シュードモナス(Pseudomonas)、キサントモナス(Xanthomonas)、エルウィニア属(Erwinia spp.)、特にエルウィニア・アミロボラ(Erwinia amylovora)、エルウィニア・カロトボラ(Erwinia carotovora)、エルウィニア・クリサンセミ(Erwinia chrysanthemi)を含む。
栽培に影響するウイルスの例は、例えば、タバコモザイクウイルスまたはジャガイモYウイルスである。
【0031】
本発明は、上記病原体によって引き起こされる疾患、例えば灰色カビ病から植物を処置および/または保護するための方法を提供する。後者はこれらの疾患の発生の遅延もしくは防止、それらの撲滅またはこれらの疾患の規模、程度もしくは影響の限定もしくは減少目的とする治療的または予防的方法のいずれかを含む。
【0032】
拮抗微生物としての出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)
本発明の範囲において、「拮抗微生物」とは、病原体、特に植物に疾患を引き起こす可能性のある病原体(特に上記の病原体)のアンタゴニストである微生物を意味する。
【0033】
本発明は、拮抗微生物として有用な出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)の4種の株、すなわち:
− CNCMで2008年3月4日に受託された株No.I-3936;
− CNCMで2008年3月4日に受託された株No.I-3937;
− CNCMで2008年3月4日に受託された株No.I-3938;および
− CNCMで2008年3月4日に受託された株No.I-3939
を提供する。
【0034】
本発明の出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)株の使用
本発明は、病原体によって引き起こされる疾患から植物を保護または処置するための、上記出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)株の使用を提供する。
特に、これを行うために、本発明は、1種の上記出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)株(または複数のこれらの株の混合物)を含む植物検疫用組成物を提供する。
【0035】
本発明の範囲において、「植物検疫用組成物」とは、1種または複数の病原体から植物を保護することができ、そして/または1種以上の病原体に感染した植物を処置することができる組成物を意味する。
本発明の植物検疫用組成物は、濃縮形態または即時使用形態であってよい。前記植物検疫用組成物は、乾燥形態、例えば粉末もしくは顆粒、または液体形態、特に水性形態、例えば懸濁液、分散液、ゲル、クリーム、ペーストまたは固体形態であってよい。即時使用形態組成物の場合、スプレーに適応するため、水性液体形態が好ましい。
【0036】
乾燥形態の場合、上記酵母株は、好ましくは脱水、凍結乾燥および/または被包形態であることが好ましい。
即時使用形態の植物検疫用組成物において、活性物質(上記出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)株)は、植物に使用するのに好適な方法で既に製剤されている。したがって、活性物質は、例えば許容される担体、例えばスプレー型の噴霧器に充填される液体、肥料、温室用栽培物質と、混合される。即時使用形態組成物は、粉末形態であってもよいが、液体形態が好ましい。
【0037】
植物にそれ自体を適用することを意図している即時使用形態の植物検疫用組成物とは異なり、濃縮植物検疫用組成物は、最終的な即時使用形態組成物を形成するために、使用者によって、賦形剤と混合されることを意図している。好ましくは、この賦形剤は、水または水溶液である。したがって、典型的には、使用者は水に顆粒(濃縮植物検疫用組成物)を溶解させるか、あるいは水で水性懸濁液または分散液(濃縮植物検疫用組成物)を希釈して、最終的な即時使用形態組成物を得る。
【0038】
酵母が濃縮植物検疫用組成物中の脱水形態であり、そして最終組成物が液体形態(典型的には水性形態)である場合、酵母を水で戻すための慣行の事前注意、例えば溶解/補水(典型的には水または水溶液)に適用される賦形剤の温度は有利には20〜25℃であることなどが見られるべきである。
【0039】
植物検疫用組成物が濃縮形態または即時使用形態のいずれであれ、それは、一般に、1種または複数の固体または液体賦形剤を含む。
賦形剤は、植物またはその一部に対する活性物質の輸送、貯蔵、取り扱い、適用および/または持続を促進または最適化することができる、あらゆる化合物またはあらゆる不活性物質から成っていてよい。かかる薬剤は、求める目標:活性物質の保存、貯蔵中または処置混合物の調製における使用中の活性物質の維持、消泡、粉塵防止、植物への接着、組織への浸透および他の目的のために、適合される。このまたはこれらの薬剤は、固体、液体、単独または組合せであってよい。
【0040】
賦形剤は、特に、界面活性剤、分散剤、保存剤、湿潤剤、乳化剤、粘着剤、pHバッファー、栄養剤のいずれか一つまたは混合物から選択されてよい。
【0041】
植物に適用される出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)の量は、特に処置する病原体または複数の病原体、植物のタイプ、使用する株および株の組合せに依存して、当業者によって定義される。適用される量は、好ましくは、病原体から植物を保護するか、あるいは存在する病原体の成長および影響を限定または抑制するために十分である。この量は、例えば実地試験(または、例えば植物が果実であるとき、研究室での試験または果実それ自体における果実包装所での試験)によって、決定されてよい。
【0042】
即時使用形態の植物検疫用組成物は、好ましくは、酵母の量として10〜1011 cfu/mL、好ましくは10〜1010 cfu/mL、より好ましくは5×10〜5×10 cfu/mLの上記株を含む。
【0043】
最終(即時使用)形態の上記植物検疫用組成物は、異なる方法で、異なる手法または処置プログラムに従って、植物に適用してよい。好ましい態様において、組成物は液体であり、スプレー、特に葉または土にスプレーして適用する。具体的な態様において、組成物は液体であり、収穫された花または果実にスプレーして適用される。
【0044】
あるいは、肥料、栽培補助物質、スプリンクラーの水または他の物質との混合物として、組成物を適用してもよい。したがって、組成物は、土へのスプレー、機械的導入、肥料もしくは富化剤とのプレミックスとしての混合、または他の手段によって、根に投与してもよい。
【0045】
他の可能性のある活性アジュバント
病原体によって引き起こされる疾患からの植物の予防的または治療的処置の範囲において、他の活性アジュバントを用いてもよい。「活性アジュバント」とは、病原体によって引き起こされる植物の疾患の予防もしくは処置に寄与し得るか、または病原体によって引き起こされる植物の疾患の予防もしくは処置において上記出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)株の効果を向上させることができる、あらゆる化合物(上記出芽酵母株以外)を意味する。
【0046】
ある態様において、これらの他の活性アジュバントは、本発明の植物検疫用組成物中に含まれていてもよい。
別の態様において、これらの他の活性アジュバントは、さらなる処置として別個に(連続的にまたは交互に)植物に投与してもよい。
【0047】
これらの他の関連した活性アジュバントは、特に次のものを含む:
1)上記出芽酵母株以外のあらゆる拮抗微生物。あらゆる既知の微生物を、1種以上の植物の病原体のアンタゴニストとして用いてよい。
好ましくは、拮抗微生物は、細菌、真菌および酵母、好ましくは酵母から選択される。
【0048】
拮抗微生物は、特に、下記群から選択されてよい:
アグロバクテリウム属(Agrobacterium spp.)、アンペロミセス属(Ampelomyces spp.)、アウレオバシジウム属(Aureobasidium spp.)、バチルス属(Bacillus spp.)、ブレロマイセス属(Bulleromyces spp.)、カンジダ属(Candida spp.)、ケトミウム属(Chaetomium spp.)、コニオチリウム属(Coniothyrium spp.)、クリプトコッカス属(Cryptococcus spp.)、デバリオマイセス属(Debaryomyces spp.)、デッケラ属(Dekkera spp.)、エルウィニア属(Erwinia spp.)、エクソフィリア属(Exophilia spp.)、グリオクラジウム属(Gliocladium spp.)、ハンセヌラ属(Hansenula spp.)、イサテンキア属(Issatchenkia spp.)、クルイベロマイセス属(Kluyveromyces spp.)、マリアナエア属(Mariannaea spp.)、メトシュニコビア属(Metschnikovia spp.)、ミクロドキウム属(Microdochium spp.)、パエシロマイセス属(Paecilomyces spp)、ペニシリウム属(Penicillium spp.)、フレビオプシス属(Phlebiopsis spp.)、ピキア属(Pichia spp.)、シュードモナス属(Pseudomonas spp.)、シュードジマ属(Pseudozyma spp.)、ピチウム属(Pythium spp.)、ロドトルラ属(Rhodotorula spp.)、サッカロマイセス属(Saccharomyces spp.)、サッカロミコプシス属(Saccharomycopsis spp.)、スポロボロマイセス属(Sporobolomyces spp.)、ストレプトマイセス属(Streptomyces spp.)、タラロマイセス属(Talaromyces spp.)、トリコデルマ属(Trichoderma spp.)、ウロクラジウム属(Ulocladium spp.)、ベルチシリウム属(Verticilium spp.)、ジゴサッカロマイセス属(Zygosaccharomyces spp.)およびそれらの混合物、より具体的には、アグロバクテリウム・ラジオバクター(Agrobacterium radiobacter)、アウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)、枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォニス(Bacillus lichenifonnis)、バチルス・プミリス(Bacillus pumilis)、カンジダ・オレオフィラ(Candida oleophila)、カンジダ・サイトアナ(Candida saitoana)、カンジダ・サケ(Candida sake)、カンジダ・テニウス(Candida tenius)、カンジダ・ユーティリス(Candida utilis)、カンジダ・ペリクロサ(Candida pelliculosa)、コニオチリウム・ミニタンス(Coniothyrium minitans)、クリプトコッカス・アルビダス(Cryptococcus albidus)、クリプトコッカス・ラウレンティ(Cryptococcus laurentii)、クリプトコッカス・フラベスセンス(Cryptococcus flavescens)、エルウィニア・カロトボラ(Erwinia carotovora)、グリオクラジウム・カテナラタム(Gliocladium catenalatum)、グリオクラジウム・ビレンス(Gliocladium virens)、ハンセニアスポラ・ウバルム(Hanseniaspora uvarum)、クルイベロマイセス・セルモトレランス(Kluyveromyces thermotolerance)、メトシュニコビア・フルクチコラ(Metschnikovia fructicola)、メトシュニコビア・プルケリマ(Metschnikowia pulcherrima)、メトシュニコビア・レウカフィ(Metschnikowia reukafii)、ミクロドキウム・ジメルム(Microdochium dimerum)、パエシロマイセス・フモソロセウス(Paecilomyces fumosoroseus)、ペニシリウム・オキサリカム(Penicillium oxalicum)、フレビオプシス・ギガンテアン(Phlebiopsis gigantean)、ピキア・アノマラ(Pichia anomala)、ピキア・グイリエルモンディ(Pichia guilliermondii)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)、シュードモナス・クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・シリンガエ(Pseudomonas syringae)、シュードジマ・フロクロサ(Pseudozyma flocullosa)、ロドトルラ・グルチニス(Rhodotorula glutinis)、ピチウム・オリガンドラム(Pythium oligandrum)、ロドトルラ・ムシラギノサ(Rhodotorula mucilaginosa)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミコプシス・ショエニ(Saccharomycopsis schoeni)、ストレプトマイセス・グリセオビリディス(Streptomyces griseoviridis)、タラロマイセス・フラバス(Talaromyces flavus)、トリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)、トリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・ポリスポラム(Trichoderma polysporum)、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)、トリコデルマ・アスペレラム(Trichoderma asperellum)、トリコデルマ・ガムシ(Trichoderma gamsi)、ウロクラジウム・アトラム(Ulocladium atrum)、ベルチシリウム・アルボ−アトラム(Verticilium albo-atrum)およびそれらの混合物。
【0049】
2)カルシウム、カリウムまたはナトリウムの塩。
活性アジュバントとして特に有効な塩は、WO 2006/032530に詳細に記載されている(これを参照する)。
【0050】
特に、クロライド、プロピオネート、スルフェート、ホスフェート、カルボネート、ビカルボネート、アセテート、エタノエート、グリセレート、グルタメート、エリスロネート、テオネート、リボネート、アラビオネート、キシロネート、リキソネート、アロネート、アルトロネート、グルコネート、マンノエート、グロネート、イドネート、ガラクトネート、タロネート、アロヘプトネート、アルトロヘプトネート、グルコヘプトネート、マンノヘプトネート、グロヘプトネート、イドヘプトネート、ガラクトヘプトネート、タロヘプトネート、タルトロネート、マレート、タータレート、シトレート、サッカレート、ムケート、ラクテート、ラクトグルコネート、アスコルベート、イソシトレートおよびシトラマレートの、ナトリウムまたはカルシウムまたはカリウム(好ましくはカルシウム)塩が好ましい。それらは無水物でも水和形態でもよい。
カルシウムラクテートが特に好ましい。上記塩の混合物も可能である。
【0051】
3)ウロン酸、マンナン、β−1,3−グルカン、混合物および誘導体(塩、水和物等)からなる群から選択される刺激剤。
ウロン酸類のなかでも、ガラクツロン酸およびグルコロン酸が好ましい。
【0052】
4)殺真菌抗ウイルスおよび/または抗細菌農薬物質。
殺真菌物質は、例えば有機農薬殺真菌剤または硫黄および/もしくは銅ベースの無機金属殺真菌剤から選択されてよい。
【0053】
本発明に利用可能な有機農薬殺真菌剤の例は、特に、クロロニトリル類、例えばクロロタロニル、カルバメート類、例えばマンコゼブのようなジチオカルバメート、フタルイミド類、例えばカプタン、スルファミド類、グアニジン類、キノン類、キノリン類、チアジアジン類、アニリド類、ヒドロキシアニリド類およびフェニルアミド類、イミダゾリノン類、オキサゾリジンジオン類、ストロビルリン類、シアノイミダゾール類、フルアジナム、ジノカップ、シチオファム、ジカルボキシイミド類、フルジオキソニル、有機リン化合物、塩酸プロパモカルブ、ジフェニルアミン、ピリジルアミン類、ステロールの生合成阻害剤(IBS)、例えばイミダゾール類、ピリミジン類、ヒドロキシピリミジン類、アニリノピリミジン類、トリアゾール類、スピロキサミン、モルホリン類およびピペリジン類、フェンヘキサミド、ヒメキサゾール、ゾキサミド、ジエトフェンカルボ、ベンズイミダゾール、ペンシクロン、キノキシフェン、イプロバリカルボ、シモキサニル、ジメトモルフ、ホスホネート類、トリアジン類である。
【0054】
本発明はまた、植物に防御を誘発する1種以上の化合物、例えばb−アミノ酪酸、2,6−ジクロロイソニコチン酸、アシベンゾラ−s−メチルまたは特定の藻類抽出物に代えて、関連してまたは組み合わせて用いることができる。かかる化合物の例は、特にラミナリンおよびウルバンス(ulvans)である。
【0055】
これに関して、本発明はまた、殺真菌剤のファミリーに抵抗性である真菌株の成長を予防または遅延する方法であって、当該殺真菌剤のファミリーに耐性な株の選択圧を低下させるために、植物を上記出芽酵母株で上記の通り処理することを特徴とするか、あるいは、当該殺真菌剤のファミリー由来の物質での植物の処置を、上記のとおりの上記出芽酵母株での植物の処置に代えるかまたはそれと組み合わせる方法を提供する。
【0056】
本発明はまた、抗細菌剤のファミリーに抵抗性である細菌株の成長を予防または遅延する方法であって、当該抗細菌剤のファミリーに耐性な株の選択圧を低下させるために、植物を上記出芽酵母株で上記の通り処理することを特徴とするか、あるいは、当該抗細菌剤のファミリー由来の物質での植物の処置を、上記のとおりの上記出芽酵母株での植物の処置に代えるかまたはそれと組み合わせる方法を提供する。
【0057】
しかし、具体的な態様において、本発明の植物検疫用組成物は、出芽酵母に毒性であるあらゆる殺真菌剤、抗ウイルス剤および/または抗細菌物質を含まない。具体的な態様において、適切な待機時間が観察される場合を除き、上記出芽酵母株による処置の前には、出芽酵母に毒性である用量でのあらゆる殺真菌、抗ウイルスおよび/または抗細菌農薬物質による処置を適用しない。
【実施例】
【0058】
実施例
下記実施例は、本発明を説明するが、それを限定しない。
【0059】
実施例1
本発明の有効性を、下記の方法で、収穫後の真菌疾患に対して試験する。
グレープフルーツに、1個の果実につき3箇所の傷を付ける。植物検疫用組成物を各傷に適用し、静置して乾燥させ、次いで病原体を含む組成物を接種する。
用いる病原体は濃度5×10胞子/mLのペニシリウム・ジギタータム(Penicillium digitatum)である。
20℃で4または5日インキュベーションした後、病変の平均直径を測定する。
【0060】
様々な微生物の濃度で、下記4つのタイプの植物検疫用組成物(微生物の培養物から滅菌蒸留水での連続希釈によって得た)を用いた:
A:2008年3月4日にCNCMで受託された株No. I-3936を含む組成物。
B:2008年3月4日にCNCMで受託された株No. I-3937を含む組成物。
C:2008年3月4日にCNCMで受託された株No. I-3938を含む組成物。
D:2008年3月4日にCNCMで受託された株No. I-3939を含む組成物。
【0061】
酵母株はLesaffre International (France)由来である。
病原体は、腐ったグレープフルーツから単離して得る;デキストロース−ポテトの傾斜寒天上で4℃で保存;デキストロース−ポテトの傾斜寒天ディッシュ上で25℃で培養;2〜3週間培養物の胞子形成周辺部の胞子の除去;滅菌蒸留水への懸濁および血球計で胞子濃度を調節。
【0062】
各試験は、10個以上の果実について平均する。
異なる予防処置の有効性を、処置なしのコントロールに対して測定し、結果を下記表1に示す。病変の直径は、アスタリスク(*)で印を付けた結果(これは5日目に得る)を除き、4日目に測定する。
【0063】
【表1】

【0064】
実施例2
実施例1と同じタイプの実験を反復する。ただし、グレープフルーツに代えてリンゴを用い、灰色カビ病菌(Botrytis cinerea)(濃度10胞子/mLの胞子懸濁液)およびペニシリウム・エクスパンサム(Penicillium expansum)(濃度10胞子/mLの胞子懸濁液)を病原体として用いる。病変の評価は接種後6日目に行い、結果は各時点で15個の果実の平均である。
灰色カビ病菌について得た結果を下記表2aおよび2bに示し、ペニシリウム・エクスパンサムについて得た結果を下記表3aおよび3bに示す。
【0065】
【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【0066】
実施例3
実施例1と同じタイプの実験を反復する。ただし、グレープフルーツに代えてブドウを用い、灰色カビ病菌(Botrytis cinerea)を病原体として用いる。さらに、酵母による保護の有効性を、病原体接種後7日目に、房あたりの感染したブドウ粒の数を数えて評価することによって、房を4つのカテゴリー:(1)健常房;(2)約10%感染している房;(3)約25%感染している房;(4)約50%以上感染している房に分類する。スコア0をカテゴリー(1)に、0.1をカテゴリー(2)に、0.25をカテゴリー(3)に、そして0.6をカテゴリー(4)に割り当てて、平均損傷を計算する。
損傷のないブドウの房について得られた結果を下記表4に移し、損傷のあるブドウの房について得られた結果を下記表5に示す。
【0067】
【表6】

【表7】

【0068】
実施例4
この実験は、屋外および果実包装所において現実の条件下で実施した。Fantasia亜種のネクタリン果樹園において、10本の樹を同定し、番号を振り、5本は処置せず、5本を処置した。
乾燥酵母顆粒を速やかに20℃の水に分散させて、濃度25 g/Lの処置混合物(即時使用形態の植物検疫用組成物)を調製した。これらの顆粒を作成するために用いた株は、株Aであった。
【0069】
収穫の前日、腐った果実を除いた後、果実を樹上で処理した。収穫に際して、トレイを樹木の番号でマークし、冷蔵庫に入れた。
果実を1週間冷温条件下(4℃)に保ち、次いで疾患の進行を促進させるために、3日間常温(約25℃)に保った。次いで採点を行った。各観察した果実について、モニリア・フルクチゲナ(monilia fructigena)または灰色カビ病菌(botrytis cinerea)のスポットが存在するとき、それらの数と直径(mm)を記録した。
【0070】
最後に、健常果実の数、スポットがある果実の数、健常果実とスポットがある果実の割合、果実1個あたりの平均スポット数、スポットの平均径を計算した。Abottによる有効性を、スポットがある果実の割合、平均スポット数およびスポットの平均径に基づいて、計算した。結果を下記表6に示す。
【0071】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2008年3月4日にCNCMで受託された株No.I-3936、2008年3月4日にCNCMで受託された株No.I-3937、2008年3月4日にCNCMで受託された株No.I-3938および2008年3月4日にCNCMで受託された株No.I-3939から選択されることを特徴とする、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)株。
【請求項2】
2008年3月4日にCNCMで受託された株No.I-3936、2008年3月4日にCNCMで受託された株No.I-3937、2008年3月4日にCNCMで受託された株No.I-3938および2008年3月4日にCNCMで受託された株No.I-3939ならびにそれらの混合物から選択される出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)株を含む、植物検疫用組成物。
【請求項3】
1種以上の賦形剤および/または少なくとも1種のさらなる活性アジュバントも含む、請求項2に記載の植物検疫用組成物。
【請求項4】
固体または液体乾燥形態の濃縮植物検疫用組成物である、請求項2または3に記載の植物検疫用組成物。
【請求項5】
乾燥または液体、好ましくは液体形態の即時使用可能な植物検疫用組成物である、請求項2または3に記載の植物検疫用組成物。
【請求項6】
含まれる出芽酵母の量が104〜1011 cfu/mL、好ましくは105〜1010 cfu/mL、より好ましくは5×105〜5×109 cfu/mLである、請求項5に記載の植物検疫用組成物。
【請求項7】
病原体によって引き起こされる疾患から植物を処置または保護する方法であって、2008年3月4日にCNCMで受託された株No.I-3936、2008年3月4日にCNCMで受託された株No.I-3937、2008年3月4日にCNCMで受託された株No.I-3938および2008年3月4日にCNCMで受託された株No.I-3939ならびにそれらの混合物から選択される出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)株を植物に接触させることを含む方法。
【請求項8】
病原体が真菌、ウイルス、細菌、マイコプラズマ、スピロプラズマ、ウイロイドおよびそれらの組合せ、好ましくは真菌から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
病原体が以下のものから選択される、請求項7に記載の方法:
アルテルナリア(Alternaria spp.)属菌種、特にアルテルナリア・ソラニ(Alternaria solani)およびアルテルナリア・アルテルナータ(Alternaria alternata)、アスコチタ属菌種(Ascochyta spp.)、特にアスコチタ・ファバエ(Ascochyta fabae)またはアスコチタ・ピノデラ(Ascochyta pinodella)、アスペルギルス属菌種(Aspergillus spp.)、特にクロコウジカビ(Aspergillus niger)およびアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、ボトリチス属菌種(Botrytis spp.)、特に灰色カビ病菌(Botrytis cinerea)、ブレミア属菌種(Bremia spp.)、特にブレミア・ラクツカエ(Bremia lactucae)、セルコスポラ属菌種(Cercospora spp.)、特にセルコスポラ・ベチコラ(Cercospora beticola)、クラドスポリウム属菌種(Cladosporium spp.)、特にクラドスポリウム・アリイ−セパエ(Cladosporium allii-cepae)、コレトトリチューム属菌種(Colletotrichum spp.)、特にコレトトリチューム・グラミニコラ(Colletotrichum graminicola)、クリプトスポリオプシス属菌種(Cryptosporiopsis spp.)、特にクリプトスポリオプシス・マリコルチシス(Cryptosporiopsis malicorticis)、エリシフェ属菌種(Erysiphe spp.)、特にエリシフェ・グラミニス(Erysiphe graminis)またはネカトル(necator)、フサリウム属菌種(Fusarium spp.)、特にフサリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)およびフサリウム・ロゼウム(Fusarium roseum)、グロエオスポリウム属菌種(Gloeosporium spp.)、特にグロエオスポリウム・フルクチゲナム(Gloeosporium fructigenum)、グイニャーディア属菌種(Guignardia spp.)、特にグイニャーディア・ビドウェリ(Guignardia bidwellii)、ヘルミントスポリウム属菌種(Helminthosporium spp.)、特にヘルミントスポリウム・トリチシ−レペンチス(Helminthosporium tritici-repentis)、マルソニア属菌種(Marssonina spp.)、特にマルソニア・ロサエ(Marssonina rosae)、モニリア属菌種(Monilia spp.)、特にモニリア・フルクチゲナ(Monilia fructigena)、ミコスファエレラ属菌種(Mycosphaerella spp.)、特にミコスファエレラ・ブラシチコラ(Mycosphaerella brassicicola)、ペニシリウム属菌種(Penicillium spp.)、特にペニシリウム・エクスパンサム(Penicillium expansum)またはペニシリウム・ジキタータム(Penicillium digitatum)、ペロノスポラ属菌種(Peronospora spp.)、特にペロノスポラ・パラシチカ(Peronospora parasitica)、ペジキュラ属菌種(Pezicula spp.)、特にペジキュラ・マリコルチシス(Pezicula malicorticis)、フラグミジウム属菌種(Phragmidium spp.)、特にフラグミジウム・ルビ−イダエイ(Phragmidium rubi-idaei)、フィトフトラ属菌種(Phytophtora spp.)、特にフィトフトラ・インフェスタンス(Phytophtora infestans)、プラスモパラ属菌種(Plasmopara spp.)、特にプラスモパラ・ビチコラ(Plasmopara viticola)、ポドスファエラ属菌種(Podosphaera spp.)、特にポドスファエラ・レウコトリカ(Podosphaera leucotricha)、シュードセロスポレラ属菌種(Pseudocercosporella spp.)、例えばシュードセロスポレラ・ブラシカエ(Pseudocercosporella brassicae)、シュードペロノスポラ属菌種(Pseudoperonospora spp.)、特にシュードペロノスポラ・クベンシス(Pseudoperonospora cubensis)、シュードペジザ属菌種(Pseudopeziza spp.)、特にシュードペジザ・メディカギニス(Pseudopeziza medicaginis)、プチニア属菌種(Puccinia spp.)、特にプチニア・グラミニス(Puccinia graminis)、ピチウム属菌種(Pythium spp.)、ラムラリア属菌種(Ramularia spp.)、特にラムラリア・ベタエ(Ramularia betae)、リゾクトニア属菌種(Rhizoctonia spp.)、特にリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)、リゾプス属菌種(Rhizopus spp.)、特にリゾプス・ニグリカンス(Rhizopus nigricans)およびリゾプス・ストロニフェル(Rhizopus stolonifer)、リンコスポリウム属菌種(Rynchosporium spp.)、特にリンコスポリウム・セカリス(Rynchosporium secalis)、スクレロチニア属菌種(Sclerotinia spp.)特にスクレロチニア・スクレロチオルム(Sclerotinia sclerotiorum)、セプトリア属菌種(Septoria spp.)、特にセプトリア・ノドルム(Septoria nodorum)またはセプトリア・トリチシ(Septoria tritici)、スファエロテカ属菌種(Sphaerotheca spp.)、特にスファエロテカ・マクラリス(Sphaerotheca macularis)、スピロカエア属菌種(Spilocaea spp.)、特にスピロカエア・ポミ(Spilocaea pomi)、タフリナ属菌種(Taphrina spp.)、特にタフリナ・プルニ(Taphrina pruni)、トリコテシウム属菌種(Trichothecium spp.)、特にロセウム(roseum)、ウンシヌラ属菌種(Uncinula spp.)、特にウンシヌラ・ネカトル(Uncinula necator)、ウスチラゴ属菌種(Ustilago spp.)、特にウスチラゴ・トリチシ(Ustilago tritici)、ベンツリア属菌種(Venturia spp.)、特にベンツリア・イナエクアリス(Venturia inaequalis)ならびにこれらの組合せ(前記病原体は、好ましくは、ペニシリウム・ジキタータム(Penicillium digitatum)、ペニシリウム・エクスパンサム(Penicillium expansum)、灰色カビ病菌(Botrytis cinerea)およびそれらの組合せから選択される)。
【請求項10】
植物が以下のものから選択される、請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法:
イネ科植物、双子葉植物、一年生植物、二年生植物および多年生植物、野菜類の苗もしくは収穫された野菜類、果樹もしくは収穫された果実、観花植物もしくは採取された花、穀草類、油性植物、タンパク性植物、木質性植物、装飾植物、特にジャガイモ、ビートの根、サトウキビ、タバコ、ブドウ、コムギ、ナタネ、オオムギ、コメ、トウモロコシ、モロコシ、キビ、ダイズ、マメ、トマト、キュウリ、レタス、イチゴ、リンゴ、ナシ、柑橘類、バナナ、パイナップル、モモ、アプリコット、チェリー、クルミおよびヘーゼルナッツから選択されるもの。
【請求項11】
以下の工程を含む、請求項7〜10のいずれか1項に記載の方法:
− 請求項5または6に記載の即時使用可能な植物検疫用組成物を植物の全体または一部に適用する;または
− 請求項4に記載の濃縮植物検疫用組成物を賦形剤と混合して最終植物検疫用組成物を調製し、次いでこの最終植物検疫用組成物を植物の全体または一部に適用する。
【請求項12】
植物の全体または一部への植物検疫用組成物の適用が、好ましくはスプレーにより、植物の葉、茎、花、果実、幹および/または根またはその一部への適用であり、好ましくは、根への適用が、地面へのスプレー、機械的混入、肥料もしくは栄養補助剤との混合またはプレミックスによって行われる、請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2012−515546(P2012−515546A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−547036(P2011−547036)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【国際出願番号】PCT/IB2010/050336
【国際公開番号】WO2010/086790
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(506261567)ルサッフル・エ・コンパニー (7)
【氏名又は名称原語表記】LESAFFRE ET COMPAGNIE
【Fターム(参考)】