説明

植物生育設備

【課題】光源と植物とを近づけて植物育成のための十分な光量を効率的に確保するとともに良好な通気性を確保して、植物に好適な生育環境を与えることが可能な植物生育設備を提供する。
【解決手段】植物生育室1内に設けられ、植物を載置する複数の棚部32と、各棚部32の上方にそれぞれ設けられ、植物に生育用の光を照射する光源331と、光源331を取り囲んで設けられ、光を透過可能な透明壁である植物対面壁3321に複数の通気孔332xを形成したカバー332と、カバー332内の空間に開口しその空間内の空気を吸込むための空気口31aと、空気口31aから吸込んだ前記空気を冷却し植物生育室1内に吹き出す循環用系路L1とを具備するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好適な植物生育環境を実現できる植物生育設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光を植物に照射して植物の成長を促進するようにした植物栽培施設が知られている。
【0003】
具体的に、この種の植物栽培施設は、複数の柱材が支持する栽培棚に栽培ベッドを載置し、この栽培ベッドに培養液を循環させるとともに、各栽培棚の下面に取り付けた照明等で植物に光を照射することで、植物の成長を促すことができるように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−021064
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところがこのような従来の構成では、大きな光量を得たり栽培密度を高めたりするために、光源を植物に近づけると、その光源近傍の温められた空気によって植物がダメージを受けてしまうといった不具合が発生してしまう。また、栽培密度を高めるために植物同士を単に近接させると、通気性が悪化して、植物が生育不良等を起こすといった不具合が生じてしまう。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、主たる目的は、光源と植物とを近づけて植物育成のための十分な光量を効率的に確保するとともに良好な通気性を確保して、植物に好適な生育環境を与えることが可能な植物生育設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明にかかる植物生育設備は、室内に設けられ、植物を載置する複数の棚部と、前記各棚部の上方にそれぞれ設けられ、前記植物に生育用の光を照射する光源と、前記光源を取り囲んで設けられ、複数の通気孔を備えるとともに少なくとも一部を前記光を透過可能な透明壁にしているカバーと、前記カバー内の空間に開口し、その空間内の空気を吸込むための空気口と、前記空気口から吸込んだ前記空気を冷却し前記室内に吹き出す循環用系路とを具備することを特徴とする。
【0007】
ここで、透明壁は、所定光量以上の光を透過できるものであればよく、例えば半透明のものも含む概念である。
【0008】
このようなものであれば、光源により温められたカバー内の空気は、空気口から循環用系路へと吸込まれ冷却される。そして、この循環用系路で冷却された新たな空気は、例えば室内全体に行き渡った後、通気孔からカバー内に取り込まれる。したがって、光源近傍の温められた空気によって、植物がダメージを受けてしまうといった不具合を防止できる。また、カバー内の空気を、空気口から循環用系路へと吸込む、吸込み方式としているため、冷却された空気は、比較的緩やかな流れで植物に当たりながら、通気孔からカバー内に取り込まれるようになる。このため、空気の流れが植物のストレスとなって生育不良を招くといった不具合を防止することができる。また、植物を密集させても、植物近傍の空気を効率的に交換できるため、植物に酸素不足や二酸化炭素不足等が生じたり蒸れが生じたりすることを防止することができる。
【0009】
そして、光源の光は、透明壁を通過して植物に到達するため、例えば光合成などに必要な良好な日照環境を実現することができる。また、上下の棚部の間隔を可及的に小さくすることにより、光源と植物とを近づけることができるため、植物育成のための十分な光量を効率よく確保して、植物に良好な光合成を行わせることができるようになる。このように光源と植物とを近づけても、光源はカバーで囲まれているため、植物が光源に直接触れて葉焼を起こすといった不具合は生じない。
【0010】
すなわち、光源と植物とを可及的に近づけて植物育成のための十分な光量を効率よく確保するとともに、棚部の上下方向の栽培密度を高めながらも、温められた空気によって植物がダメージを受ける等といった不具合を生じず、また、良好な通気性の確保と蒸れの防止を実現して、植物に好適な生育環境を与えることができるといった植物生育設備を提供することができる。
【0011】
また、本発明の植物生育設備の他の態様としては、この植物生育設備が、室内に設けられ、植物を載置する複数の棚部と、前記各棚部の上方にそれぞれ設けられ、前記植物に生育用の光を照射する光源であるLEDと、前記LEDを植物側に向けた状態で支持する基板と、前記基板のLED搭載面の裏面を取り囲む囲繞部とを備え、複数の通気孔を前記基板又は前記囲繞部に形成したカバーと、前記カバー内の空間に開口し、その空間内の空気を吸込むための空気口と、前記空気口から吸込んだ前記空気を冷却し前記室内に吹き出す循環用系路とを具備するものが挙げられる。
【0012】
このようなものであれば、基板のLED搭載面の裏面から発生する熱により温められたカバー内の空気は、空気口から循環用系路へと吸込まれ冷却される。そして、この循環用系路で冷却された新たな空気は、例えば室内全体に行き渡った後、通気孔からカバー内に取り込まれる。したがって、基板のLED搭載面の裏面から発生する熱により温められたカバー内の空気によって、植物がダメージを受けてしまうといった不具合を防止できる。また、カバー内の空気を、空気口から循環用系路へと吸込む、吸込み方式としているため、冷却された空気は、比較的緩やかな流れで植物に当たりながら、通気孔からカバー内に取り込まれるようになる。このため、空気の流れが植物のストレスとなって生育不良を招くといった不具合を防止することができる。また、植物を密集させても、植物近傍の空気を効率的に交換できるため、植物に酸素不足や二酸化炭素不足等が生じたり蒸れが生じたりすることを防止することができる。
【0013】
そして、光源であるLEDの光は、植物に直接到達するため、例えば光合成などに必要な良好な日照環境を実現することができる。また、上下の棚部の間隔を可及的に小さくすることにより、LEDと植物とを近づけることができるため、植物育成のための十分な光量を効率よく確保して、植物に良好な光合成を行わせることができるようになる。このようにLEDと植物とを近づけても、例えば砲弾型LEDのようにLEDはLED素子を透明樹脂でモールドしているため、その表面すなわちLEDの植物側の面は殆ど発熱せず、植物がLEDに直接触れても、葉焼を起こすといった不具合は生じない。
【0014】
前記カバーの植物側の面の略全面に前記通気孔を設けているのであれば、棚部の両端を支持する支柱の支柱間隔にかかわらず、棚部全体に亘って植物近傍にある空気を通気孔から取り込んで循環させることができるため、棚部や支柱等の設計上の制約条件が減るといった効果を得られる。
【0015】
本発明の望ましい態様としては、前記光源の点灯又は消灯状態に対応させて、前記カバー内の空気を前記空気口から前記循環用系路に吸込む空気吸込み状態と、前記循環用系路内の空気を前記空気口から前記カバー内に吹出す空気吹出し状態とに切り替える空気流入出方向切替部を具備しているものがが挙げられる。
【0016】
このようなものであれば、例えば、光源を消灯状態にしたときに、循環用系路で冷却された空気を、空気口を介して通気孔から植物に供給することができる。すなわち、夜のような日照環境で且つ冷えた状態では植物が糖分を生成するといった生育環境を好適に実現して、同じ設備を利用しながらも、より多くの糖分を含む植物を生産できるようになる。しかも、冷却された空気を、通気孔から植物に直接且つスポット的に供給することができるため、省電力化を図れ、大きな冷却設備も要しない。
【0017】
ところで、前記循環用系路上に、前記空気を自然冷却するための自然冷却部を設けているのであれば、自然冷却部(例えば地中)自体の温度が、前記空気を自然冷却することでは変動せず、温度の高い空気の熱を効率よく奪うことができるといった性質を利用して、効率的且つ低コストな冷却を実現することができる。ここで、前記自然冷却部の具体的態様としては、この自然冷却部が、空気を地中に通過させて冷やす直列又は並列接続した複数の冷却パイプを備え、前記各冷却パイプを、鉛直状態で地中の所定深さまで埋め込んでいるものが挙げられる。このようなものであれば、地中は極めて大きな熱容量を有しており、冷却パイプを通過させる空気の温度が高ければ高いほど効率よく冷却することができる。例えば、冷却パイプを地中5m以上埋め込むことで、地中5mの位置での温度が16度程度であることを利用して、前記空気を確実に16度まで冷却することができる。
【0018】
冷却パイプの望ましい態様としては、この冷却パイプが、中央の内部流路とその外側の内部流路とを有する二重管構造のものであり、該冷却パイプ内に取り込んだ空気が、前記外側の内部流路、前記中央の内部流路の順に流れるようにしているものが挙げられる。
【0019】
このようなものであれば、地中深くで冷やされた空気が、地表に戻ってきたときに温まってしまうことを防止することができ、植物に適度に冷やされた空気を与えることができる。
【0020】
本発明の望ましい態様としては、前記室内から取り込んだ空気を強制冷却し、その強制冷却した空気を植物に供給する強制冷却空気供給用系路と、前記空気口に連絡する系路を、前記循環用系路又は前記強制冷却空気供給用系路に切り替える系路切替部と、を具備しているものが挙げられる。
【0021】
このようなものであれば、カバー内の温められた空気を空気口から循環用経路へ吸い込んだり、強制冷却した空気を空気口及び通気孔を介して植物に供給したりすることが、系路切替部の切り替えだけで簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
このように本発明に係る植物生育設備は、光源と植物とを可及的に近づけて植物育成のための十分な光量を効率よく確保するとともに、棚部の上下方向の栽培密度を高めながらも、温められた空気によって植物がダメージを受ける等といった不具合を生じず、また、良好な通気性の確保と蒸れの防止とを実現して、植物に好適な生育環境を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0024】
本実施形態に係る植物生育設備Zは、図1などに示すように、建物内の植物生育用の植物生育室1と、この植物生育室1外に設けた循環用系路L1及び強制冷却空気供給用系路L2を具備してなるものである。
【0025】
植物生育室1は、図1、図3、図4に示すように、植物生育用の棚部32などを備えた複数の棚ユニット3と、棚ユニット3内の空気A1を循環用系路L1へ吸い込む空気口31aと、空気口31aに連絡する系路を、循環用系路L1又は強制冷却空気供給用系路L2に個別に切り替える系路切替部6と、肥料を供給する肥料供給装置(図示せず)とを具備して成るものである。以下、各部を具体的に説明する。
【0026】
棚ユニット3は、図1、図2、図3、図4に示すように、植物生育室1の床面(図示せず)と天井面12との間に立設した複数の棚支柱31と、この棚支柱31に支持させた植物生育用の棚部32と、棚部32で生育する植物に光を照射するための光照射装置33と、を具備するものである。
【0027】
棚支柱31は、断面視略矩形状のものであって、各側壁で囲まれる内部空間を、気体が流れる内部流路としている。そして本実施形態では、対を成す棚支柱31によって10段の棚部32を支持するように構成している。なお、棚支柱31が支持する棚部32の数は適宜変更することができる。
【0028】
棚部32は、内部に液肥を保持できる略箱体状の液肥パレット3Q、及び、この液肥パレット3Qに載置される複数の栽培用パレット3Pを、棚状にして支持するものである。本実施形態では、この棚部32を板状としているが、例えば、複数のパイプを水平方向に並べたものとすることもできる。また、栽培用パレット3Pでは、1度に複数個の植物V(例えばレタス)を栽培できるようにしている。
【0029】
光照射装置33は、各棚部32の下面にそれぞれ設けたものであって、光源331と、この光源331を取り囲むカバー332とを具備してなるものである。
【0030】
より具体的に、光源331には、例えば白色の光を発光する蛍光灯を用いている。そして、本実施形態では、光源331の点灯時間などを、図示しない生育制御用主装置で制御し得るように構成してある。これにより、光照射装置33によって、例えば、光源331を点灯状態にして昼サイクルの日照環境を与えたり、光源331を消灯状態にして夜サイクルの日照環境を与えたりできるなど、所望の日照環境を、棚部32で生育中の植物に与えることができるようにしている。なお、本実施形態では、光源331を、直上の棚部32の底面に取り付けているが、取付態様は実施態様に応じて適宜変更可能である。
【0031】
カバー332は、植物側の面である平面視略矩形状の植物対面壁3321と、この植物対面壁3321の側縁をそれぞれ起立させたカバー側壁3322とを具備する断面視略上向きコ字状のものである。そして、本実施形態では、各壁には、光源331の光を略そのまま透過できる透明壁(例えばアクリル透明板など)を用いている。また、植物対面壁3321の略全面に複数の通気孔332xを設けている。さらに、空気を、通気孔332xからカバー332内部に取り込み又は吹出して、空気口31aから排気又は吸気することが効果的に行えるように、植物対面壁3321及びカバー側壁3322のそれぞれの端縁を棚支柱31に密着させて取り付けるとともに、植物対面壁3321及びカバー側壁3322の上端縁を直上の棚部32の底面に密着させて取り付けている。
【0032】
空気口31aは、棚ユニット3の棚支柱31の側壁に形成した貫通孔である。本実施形態では、空気口31aを、棚支柱31の側壁の各カバー332で囲まれる位置ごとに、それぞれ3個ずつ並べて設けている。各空気口31aの開口形状は、略矩形状としているがこれに限られるものではない。
【0033】
系路切替部6は、図1等に示すように、各棚ユニット3の空気口31aに個別に連絡する個別系路L3上に設けたバルブ6Vを備えるものであって、各バルブ6Vを切替制御装置(図示せず)により個別に制御することで、各個別系路L3を、循環用系路L1又は強制冷却空気供給用系路L2と選択的に連絡できるようにしている。
【0034】
肥料供給装置は、詳細は図示していないが、例えば、各種栄養素を水に適宜混合して得た液肥を、肥料供給口(図示せず)から棚部32内に供給するようにしたものである。
【0035】
循環用系路L1は、図1等に示すように、植物生育室1外(例えば天井裏など)に配した空気吸込みダクトL11、植物生育室1の床下に設けた自然冷却部L12、及び植物生育室1外(例えば天井裏など)に配したダクトL13を備えるものである。以下、各部を具体的に説明する。
【0036】
空気吸込みダクトL11は、棚ユニット3内の空気を該空気吸込みダクトL11内部に吸込み、吸込んだ空気を自然冷却部L12に向けて送るファン(図示せず)を備えるものである。なお、空気口31aから循環用系路L1へ吸い込む吸込みスピードが、自然冷却部L12の容量との関係で速すぎると良好な冷却効果を得られない場合もあるため、実施態様に応じて、このダクトL11内のファンの調節により吸込みスピードを適宜変更できるようにしている。また、本実施形態では、図示しない空気流入出方向切替部により、このファンと後述するダクトL13のファンとを、ともに逆回転させることで、循環用系路L1内の空気を空気口31aからカバー332内に吹出す「空気吹出し状態」にすることができる。
【0037】
自然冷却部L12は、図1、図5などに示すように、地中の温度を利用して、具体的には、例えば地中5mの位置での温度が恒常的に16度程度であることを利用して、光照射装置33などによって温められた空気A1を冷却するものである。本実施形態では、この自然冷却部L12を、直列又は並列接続した複数の冷却パイプLpを、鉛直状態で地中5m以上の深さまで埋め込むことにより実現している。冷却パイプLpは、二重管構造のものを用いている。具体的には、図6、図7に示すように、冷却パイプLpが、中央パイプLpxと、外側パイプLpyと、中央パイプLpxから外側パイプLpyに向けて放射線状に伸びて成り両パイプ間の空間を間仕切る複数の隔壁Lpzとを具備し、これら中央パイプLpx、外側パイプLpy及び複数の隔壁Lpzによって形成される複数の内部流路を有するようにしている。より具体的には、中央パイプLpxの内部に形成される中央内部流路Lp1と、中央パイプLpx、外側パイプLpy及び隔壁Lpzにより囲まれた複数の分流路から成る外側内部流路Lp2と、各流路の一端側(下端側)を連絡する連絡内部流路Lp3とを有するようにしている。しかして本実施形態では、空気A1が、外側内部流路Lp2の開口から流入し、該外側内部流路Lp2、連絡内部流路Lp3、中央内部流路Lp1の順に流れた後、該中央内部流路Lp1の開口から外部に流出するようにしているとともに、中央パイプLpxを断熱性の塩ビパイプ、外側パイプLpy及び隔壁Lpzを金属製とすることで、地中深くで冷やされた空気が、地表に戻ってきたときに温まってしまうことを防止している。
【0038】
ダクトL13は、自然冷却部L12からの空気を該ダクトL13内部に吸込み、吸込んだ空気を、植物生育室1の天井等の壁面に開口する空気出入口L13aから植物生育室1内へと吹き出すファン(図示せず)を備えるものである。
【0039】
しかして、この循環用系路L1によって、後述する棚ユニット3内の空気A1を、空気口31aから空気吸込みダクトL11へ吸込み、自然冷却部L12、ダクトL13の順に通した後、空気出入口L13aから植物生育室1内に吹き出して、循環することができる。
【0040】
加えて、本実施形態では、ダクトL13の途中には、エアコンL13x及びエアフィルタL13yを設けている。このエアコンL13xは、基本的には動作させないが、例えば、自然冷却部L12だけでは十分な冷却効果を得られていない場合には、空気出入口L13aの近傍に設けた温度センサ(図示せず)の出力値に基づいて、該エアコンL13xを動作させるようにしている。具体的には、例えば空気出入口L13aから吹き出される空気A2の温度が設定値以上であれば、その温度が低下するようにエアコンL13xを動作させている。なお、前記温度センサの代わりにエアコンL13xに内蔵している温度センサを用いて温度制御を行うようにしてもよい。
【0041】
強制冷却空気供給用系路L2は、図1等に示すように、植物生育室1外(例えば天井裏など)に配したダクトL21及びこのダクトL21の途中に設けた強制冷却部であるエアコンL22を備えるものである。そして、ダクトL21のエアコンL22より上流側を、循環用系路L1における自然冷却部L12とバルブ6Vとの間に接続している一方、下流側を、分岐して各バルブ6Vに接続している。
【0042】
以上のように構成される植物生育設備Zについて、その使用方法を以下に述べる。
【0043】
(1)通常時(空気口31aに連絡する系路が循環用系路L1の場合)
系路切替部6により、図8に太線で示すように、各バルブ6Vが前記個別系路L3と循環用系路L1とを連絡するようにした上で、図示しない空気流入出方向切替部により、昼サイクルでは空気吸込み状態、夜サイクルでは空気吹出し状態にする。
【0044】
昼サイクルでは、植物に光を照射している光源331により、カバー332内の空気が温められる。カバー332内の温められた空気A1は、空気口31aから循環用系路L1へと吸い込まれる。そして、循環用系路L1の途中に設けた自然冷却部L12によって空気A1は冷却されたのち、ダクトL13の空気出入口L13aから、植物生育室1内へ吹き出され、新たな空気として、通気孔332xからカバー332内に取り込まれる。なお、本実施形態では、自然冷却部L12で最大20数度程度の冷却効果を得ることができる。
【0045】
したがって、光源331近傍の温められた空気A1によって植物がダメージを受けてしまうといった不具合を防止できる。また、空気交換は、緩やかな風量で行えばよいので、空気の流れが植物のストレスとなり生育不良を招くといった不具合も生じない。また、植物を密集させても、植物近傍の空気を効率的に交換できるため、植物に酸素や二酸化炭素不足が生じたり蒸れが生じたりすることを防止することができる。
【0046】
そして、光源331の光は、透明な植物対面壁3321を通過して植物に到達するため、例えば光合成などに必要な良好な日照環境を実現することができる。また、上下の棚部の間隔を可及的に小さくすることにより、光源331と植物とを近づけることができるため、植物育成のための十分な光量を効率よく確保して、植物に良好な光合成を行わせることができるようになる。このように光源331と植物とを近づけても、光源331はカバー332で囲まれているため、植物が光源331に直接触れて葉焼を起こすといった不具合は生じない。
【0047】
夜サイクルでは、図示しない空気流入出方向切替部により「空気吹出し状態」にする。このとき、自然冷却部L12の冷却性能を可及的に利用することができるよう、エアコンL13xによる冷却は行わない。この「空気吹出し状態」では、空気出入口L13aから取り込まれた空気A3は、自然冷却部L12で冷却され、自然冷却された空気A4は、空気口31a等を経てカバー332内に導入された後、カバー332の通気孔332xから、直接的に植物に対して供給される。このように、夜のような日照環境で且つ冷えた状態では植物が糖分を生成するといった生育環境を好適に実現して、同じ設備を利用しながらも、より多くの糖分を含む植物を生産できるようになる。
【0048】
(2)強制冷却時(空気口31aに連絡する系路が強制冷却空気供給用系路L2の場合)
前述した昼サイクル又は夜サイクルにかかわらず、棚ユニット3内の強制冷却を行うこともできる。この場合、系路切替部6により、強制冷却を行う棚ユニット3に接続している個別系路L3と、強制冷却空気供給用系路L2とを連絡すればよい。具体的には、個別系路L3と、強制冷却空気供給用系路L2とを連絡した状態で、エアコンL22のみ動作させる(エアコンL13xは原則動作させない。)。すると、室内の空気A5は、空気出入口L13aからダクトL13内に取り込まれ、エアフィルタL13y及び自然冷却部L12を順に経て冷却された後、ダクトL21上に設けたエアコンL22でさらに強制冷却される。このようにして強制冷却された空気A6は、個別系路L3及び空気口31aを経てカバー332内に導入され、その後、カバー332の通気孔332xから、直接的に植物に対して供給される。なお、同時に複数の棚ユニット3について、強制冷却を行うこともできる。また、図9に太線で示すように、循環用系路L1及び強制冷却空気供給用系路L2の両方の系路を使って空気を全ての棚ユニット3に供給することもできる。さらに、エアコンL22に加えエアコンL13xを動作させることもできる。
【0049】
このように本実施形態にかかる植物生育設備Zによれば、光源331と植物とを可及的に近づけて植物育成のための十分な光量を効率よく確保するとともに、棚部32の上下方向の栽培密度を高めながらも、温められた空気によって植物がダメージを受ける等といった不具合を生じず、植物に好適な生育環境を与えることができるといった植物生育設備Zを提供することができる。
【0050】
また、空気流入出方向切替部により、夜サイクルで冷えた空気をカバー332内に吹出して、植物が糖分を生成する生育環境を実現できるため、同じ設備を利用しながらも、より多くの糖分を含む植物を生産できるようになる。なお、このような夜サイクルで植物に空気を吹出しても、その空気は、消灯した光源331によって温められることはない。したがって、空気の吹出しによって、植物が熱によるダメージを受けるといった不具合は生じない。
【0051】
また、植物対面壁3321の略全面に通気孔332xを設けているため、、棚支柱31の支柱間隔にかかわらず、棚部32全体に亘って植物近傍にある空気を通気孔332xから取り込んで循環させることができるため、棚部32や棚支柱31等の設計上の制約条件が少なくなる。
【0052】
循環用系路L1上に、空気を自然冷却するための自然冷却部L12を設けているため、温度の高い空気の熱を効率よく奪うことができるといった自然冷却の性質を利用して、効率的且つ低コストな冷却を実現することができる。
【0053】
自然冷却部L12が、直列又は並列接続した複数の冷却パイプLpを、鉛直状態で地中5m以上埋め込んだものとしているため、地中5mの位置での温度が16度程度であることを利用して、前記空気を好適に冷却することができる。
【0054】
また、冷却パイプLpに、中央内部流路Lp1とその外側の外側内部流路Lp2とを有する二重管構造のものを用いるとともに、該冷却パイプ内に取り込んだ空気が、外側内部流路Lp2、中央内部流路Lp1の順に流れるようにしているため、地中深くで冷やされた空気が、地表に戻ってきたときに温まってしまうことを防止することができ、植物に適度に冷やされた空気を与えることができる。
【0055】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0056】
例えば、強制冷却空気供給用系路L2は、必ずしも必要ではない。
【0057】
また、棚ユニット3の構成も本実施形態に限られるものではない。
【0058】
また、自然冷却部L12の構成も本実施形態に限られるものではない。
【0059】
また、光照射装置33の光源331に蛍光灯を用いているが、LED等のその他の光源331を用いることもできる。
【0060】
光源にLEDを用いる場合には、例えば図10に示すように、カバー332が、LED331を植物側に向けた状態で支持するとともに複数の通気孔332xを設けたLED用の基板である植物対面壁3321と、植物対面壁3321のLED搭載面の裏面3321aを取り囲む囲繞部であるカバー側壁3322とを備え、空気口31aをカバー332内の空間に開口するようにすればよい。
【0061】
このようなものであれば、植物対面壁3321のLED搭載面の裏面3321aから発生する熱により温められたカバー332内の空気は、空気口31aから循環用系路L1へと吸込まれて冷却され、この循環用系路L1で冷却された新たな空気は、例えば室内全体に行き渡った後、通気孔332xからカバー332内に取り込まれるため、前記実施形態と同様の効果を得られる。すなわち、LED331と植物とを可及的に近づけて植物育成のための十分な光量を効率よく確保するとともに、棚部32の上下方向の栽培密度を高めながらも、温められた空気によって植物がダメージを受ける等といった不具合を生じず、また、良好な通気性の確保と蒸れの防止を実現して、植物に好適な生育環境を与えることができるといった植物生育設備を提供することができる。なお、LED331と植物とを近づけても、LED331の植物側の面は殆ど発熱しないため、植物がLED331に直接触れても、葉焼を起こすといった不具合は生じない。
【0062】
また、通気孔332xを、カバー332の植物対面壁3321に設けているが、カバー側壁3322に設けることもできる。
【0063】
また、生育環境制御部が制御する装置は、上述した各装置に限られない。例えば、霧を発生させる霧発生装置や、風を起こす風発生装置などのように、自然現象として現れる現象を起こさせる装置であればよい。ただし、自然環境を実現するようなコントロールであるか否かを問わない。
【0064】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態における植物生育設備における系路切替部や循環用系路などを示すブロック図。
【図2】同実施形態における棚部部分を拡大して模式的に示す斜視図。
【図3】同実施形態における棚部などを拡大して示す正面図。
【図4】同実施形態における棚部などを拡大して示す側面図。
【図5】同実施形態における自然冷却部を拡大して示す図。
【図6】同実施形態における冷却パイプの横断面図。
【図7】同側断面図
【図8】同実施形態における植物生育設備の動作を説明するための図(空気吸込み状態)。
【図9】同実施形態における植物生育設備の動作を説明するための図(強制冷却状態)。
【図10】本発明の他の実施形態における植物生育設備における棚部部分を拡大して示す要部拡大図。
【符号の説明】
【0066】
A1・・・・・・空気
L1・・・・・・循環用系路
L2・・・・・・強制冷却空気供給用系路
L3・・・・・・個別系路
L12・・・・・自然冷却部
Lp・・・・・・冷却パイプ
Lp1・・・・・中央の内部流路(中央内部流路)
Lp2・・・・・外側の内部流路(外側内部流路)
V・・・・・・・植物
Z・・・・・・・植物生育設備
1・・・・・・・室(植物生育室)
6・・・・・・・系路切替部
31・・・・・・棚支柱
31a・・・・・空気口
32・・・・・・棚部
33・・・・・・光照射装置
331・・・・・光源(蛍光灯又はLED)
332・・・・・カバー
3321・・・・植物側の面(植物対面壁)
3321a・・・LED搭載面の裏面
332x・・・・通気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内に設けられ、植物を載置する複数の棚部と、
前記各棚部の上方にそれぞれ設けられ、前記植物に生育用の光を照射する光源と、
前記光源を取り囲んで設けられ、複数の通気孔を備えるとともに少なくとも一部を前記光を透過可能な透明壁にしているカバーと、
前記カバー内の空間に開口し、その空間内の空気を吸込むための空気口と、
前記空気口から吸込んだ前記空気を冷却し前記室内に吹き出す循環用系路とを具備する植物生育設備。
【請求項2】
室内に設けられ、植物を載置する複数の棚部と、
前記各棚部の上方にそれぞれ設けられ、前記植物に生育用の光を照射する光源であるLEDと、
前記LEDを植物側に向けた状態で支持する基板と、前記基板のLED搭載面の裏面を取り囲む囲繞部とを備え、複数の通気孔を前記基板又は前記囲繞部に形成したカバーと、
前記カバー内の空間に開口し、その空間内の空気を吸込むための空気口と、
前記空気口から吸込んだ前記空気を冷却し前記室内に吹き出す循環用系路とを具備する植物生育設備。
【請求項3】
前記カバーの植物側の面の略全面に前記通気孔を設けている請求項1又は2記載の植物生育設備。
【請求項4】
前記光源の点灯又は消灯状態に対応させて、前記カバー内の空気を前記空気口から前記循環用系路に吸込む空気吸込み状態と、前記循環用系路内の空気を前記空気口から前記カバー内に吹出す空気吹出し状態とに切り替える空気流入出方向切替部を具備している請求項1乃至3いずれか記載の植物生育設備。
【請求項5】
前記循環用系路上に、前記空気を自然冷却するための自然冷却部を設けている請求項1乃至4いずれか記載の植物生育設備。
【請求項6】
前記自然冷却部は、直列又は並列接続した複数の冷却パイプを備え、
前記各冷却パイプを、鉛直状態で地中の所定深さまで埋め込んでいる請求項5記載の植物生育設備。
【請求項7】
前記冷却パイプは、中央の内部流路とその外側の内部流路とを有する二重管構造のものであり、該冷却パイプ内に取り込んだ空気が、前記外側の内部流路、前記中央の内部流路の順に流れるようにしている請求項6記載の植物生育設備。
【請求項8】
前記室内から取り込んだ空気を強制冷却し、その強制冷却した空気を植物に供給する強制冷却空気供給用系路と、
前記空気口に連絡する系路を、前記循環用系路又は前記強制冷却空気供給用系路に切り替える系路切替部と、を具備している請求項1乃至7いずれか記載の植物生育設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−81919(P2010−81919A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257817(P2008−257817)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(505302502)株式会社フェアリーエンジェル (11)
【Fターム(参考)】