植物用の芳香片、ならびに、芳香片を備えた鉢植え
【課題】植物の鉢植えは、花の最盛期の前に出荷されることが多く、店頭においては植物の魅力である香りによって需要者への購買意欲を刺激することが困難であった。また、植物に付着する害虫は、植物の鉢植えの購買者に購買意欲を減退させ、鉢植えの売上げに影響することもあった。
【解決手段】虫除け剤を添加した香料を含浸させた芳香片1eを植物4の植木鉢2の土3に挿し込むか、植物4の枝や茎に取り付けることにより、芳香効果と虫除け効果を同時に得る。また、店頭においては、芳香片1eから漂う香りが購買者の嗅覚を刺激し、嗅覚を通じて植物の魅力を伝達する。その結果、植物の鉢植え20eに対する購買者の購買意欲を高めることができる。
【解決手段】虫除け剤を添加した香料を含浸させた芳香片1eを植物4の植木鉢2の土3に挿し込むか、植物4の枝や茎に取り付けることにより、芳香効果と虫除け効果を同時に得る。また、店頭においては、芳香片1eから漂う香りが購買者の嗅覚を刺激し、嗅覚を通じて植物の魅力を伝達する。その結果、植物の鉢植え20eに対する購買者の購買意欲を高めることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物に付して使用される芳香片に関し、特に店頭における観賞用植物の鉢植え販売に利用可能な芳香片に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のアロマテラピーなどの流行により、市場においては植物から放出される香りが植物の魅力の一つとして注目されている。このような状況において、需要者が植物の鉢植えを購入する際には、その植物の種類、見た目、育成方法のみならず、その植物がどのような香りを有するかという点が重要な購買基準となってきている。
そのため、今日の鉢植えの市場においては、視覚のみならず嗅覚において需要者を魅了する商品が求められるようになってきている。
【0003】
しかし、植物は生物であるため、常に生長し変化する。植物の鉢植えの生産者は需要者の手元に鉢植えが届く時期を計算し、植物が最も美しく魅力的になる直前、又は、その初期の段階にその植物の鉢植えが店頭に並ぶように出荷する。
このため、店頭において販売される鉢植えの中には、花の咲き始めのものや育成中のものも少なくない。
【0004】
このような状況において、植物の魅力を伝えるための手段は、植物が成長した状態の写真を添付した解説付きのタグが一般的であった。
しかしながら、このような視覚による確認のみでは、その植物の匂いや鉢植えのテーマ、イメージを購買者に十分に伝達することが困難であった。
【0005】
また、植物の鉢植えの売上げを妨げる原因としては、植物に害虫が付くことにより、購買者が不快な思いをすることが挙げられる。店頭に並んだ鉢植えの植物に害虫が付いているようなことがあれば、その植物がどんなに魅力的であっても、購買者は即座に購買意欲を失うことになる。このような害虫を除去するためには、植物への防虫剤の撒布が必要となる。
しかし、害虫を駆除するための防虫剤や殺虫剤には、有機リン系農薬が使用されることが多く、その撒布作業においては農薬による中毒を回避するための対策が必要となる。
また、これらの農薬の匂いは、人間にとって不快なものが多い。このため、農薬の撒布作業において発生する匂いは植物の生産者や販売者を煩わせていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3158174号公報
【特許文献2】実開平5−82443号公報
【特許文献3】特開平6−54625号公報
【特許文献4】実用新案登録第3060280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願に係る発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、店頭における植物の鉢植えの販売において、購買者の視覚のみならず嗅覚を刺激することによって、鉢植えの顧客吸引力を向上させる簡易な手段を提供することにある。
また、本出願のその他の目的とするところは、虫除け効果のある物質を発散させることにより、植物の鉢植えに害虫が付着することを防止し、生産者及び販売者の害虫駆除作業を減少させる簡易な手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本出願に係る第1の発明は、芳香と虫が嫌いな香りを放出する芳香片であって、該芳香片を土に埋め込むための埋没部、または、該芳香片を植物に引っ掛けるための掛止部、の少なくとも何れか一方を有することを特徴とする芳香片である。
【0009】
また、本出願に係る第2の発明は、芳香を放出する芳香片であって、前記芳香片を土に埋め込むための埋没部、または、前記芳香片を植物に引っ掛けるための掛止部、の少なくとも何れか一方を有し、
前記芳香は、前記芳香片の形状のモチーフとなった元の物が通常有する香りと同一または類似する香りであることを特徴とする芳香片である。
【0010】
さらに、本出願に係る第3の発明は、芳香を放出する芳香片であって、前記芳香片を土に埋め込むための埋没部、または、前記芳香片を植物に引っ掛けるための掛止部、の少なくとも何れか一方を有し、
前記芳香片には、植物の名称、写真、説明の少なくとも何れか1つが掲載されており、
前記芳香は、前記植物の花が通常有する香りと同一または類似する香りであることを特徴とする芳香片である。
【0011】
また、本出願に係る第4の発明は、土が充填された植木鉢に植物が植えられた鉢植えにおいて、上記第1〜3の発明の何れか1つに記載の芳香片を備えた鉢植えである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、植物の鉢植えの販売において、芳香片から発散される芳香が購買者の嗅覚を刺激する。その結果、嗅覚を通じて、植物の匂いや鉢植えのテーマ、イメージなどを購買者に伝達することができ、植物の鉢植えに対する購買意欲を高めることができる。
【0013】
また、芳香片を備えた鉢植えから漂う香りは、商品の陳列棚等の障害物に阻害されずに広い範囲に漂う。このため、購買者は、鉢植えを視覚で確認できない位置にいても、嗅覚によってその存在に気づくことができる。よって、本発明は、店頭における鉢植えの宣伝・広告効果を高める効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本出願の実施例1に係る芳香片を示した斜視図である。
【図2】本出願の実施例1に係る芳香片の使用状態を示した概念図である。
【図3】ショートケーキに似せた鉢植えに実施例1の芳香片を取り付けた状態を表す斜視図である。
【図4】本出願の実施例2に係る芳香片を示した斜視図である。
【図5】本出願の実施例3に係る芳香片を示した斜視図である。
【図6】本出願の実施例3に係る芳香片の使用状態を示した概念図である。
【図7】図6の一部を拡大して示した拡大図である。
【図8】本出願の実施例4に係る芳香片を示した斜視図である。
【図9】本出願の実施例4に係る芳香片の変形例1を示した斜視図である。
【図10】本出願の実施例4に係る芳香片の変形例2を示した斜視図である。
【図11】本出願の実施例5に係る芳香片を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0015】
図1は本発明の芳香片の斜視図である。
同図に示すように芳香片1aは長方形の薄い平板状をなす紙片である。その形状や大きさは特に限定されるものではないが、本実施例では長さ100mm、幅20mmの長方形に形成した、厚さ2mm程度の厚紙を使用する。材質としては吸水性に富むものが良く、コースターなどに利用される厚紙を使用するのが良い。
本発明の芳香片は吸水性ないしは吸油性素材からなれば良く、紙に限定されるものではない。例えば、紙以外にも液体を含浸させることができる素材として、布、不織布、木材、素焼きの陶器、天然樹脂、合成樹脂などを使用することもできる。
【0016】
芳香片1aは香料を含浸しており、芳香片1aから空気中に向かって芳香が放出される。
香料には種々のものを用いることができ、例えば、天然香料や合成香料を用いる。香料は、芳香片に浸透可能であれば水溶性香料及び脂溶性香料のいずれも使用可能であり、また、細かな芳香性微粒子を含んだ液体香料でも良い。
【0017】
図2は、芳香片を鉢植えに挿し込んだ状態を表す斜視図である。植木鉢2には土3が充填され、土3には植物4が植えてある。
植木鉢2の形状は、三角形、四角形等の多角形や楕円形でも良く、円形に限らず種々の形状のものを使用できる。また、植木鉢2の素材は、素焼製、プラスチック製、金属製、ガラス製など種々の素材が考えられる。さらに、植木鉢2の代わりに、ビニールポットやプランター容器のような園芸用容器を使用してもよく、本願ではそれらを総称して植木鉢2として説明する。
図2に示すように芳香片1aは、芳香片1aの一部を埋没部として土3に挿し込んで固定して使用する。芳香片1aは、芳香片から空気中に芳香を漂わせる芳香部と、芳香片を土中に挿し込むための埋没部が確保できる長さ及び大きさがあればよい。図1に示す芳香片1aでは、埋没部と芳香部の構造に区別はなく、芳香片1aの全体が芳香を発する構造であり、芳香片1aの一端を土3の中に挿し込めば、土中に埋まっている範囲が埋没部となる。
芳香片1aの硬さは、芳香片1aを土3に挿し込む際に、折れずにその形状を維持することが可能な硬さであることが望ましい。
また、プランター容器のように、容器縁に植物のネームプレートを挿し込む穴が設けられている植木鉢の場合には、芳香片1aを土3ではなく、ネームプレート用の穴に挿し込んで固定しても良い。
【0018】
香料の香りの種類としては、バラ、キンモクセイ、梅、ラベンダー、クチナシ等の花の香りを使用する。
特に、植木鉢2に植えられている植物4の種類と一致する花の香料を使用するのが良い。芳香片1aを土3に挿し込むと、購買者は、あたかも植物4から花の匂いがしているかのように錯覚する。そして、その花の匂いに誘われて、購買者はその鉢植え20aに惹きつけられて、鉢植えを手に取り購入する。
1つの使用例としては、苗や花が咲く前の植物を植えた鉢植え20aに、本発明の芳香片1aを使用する。一般に花が咲いた鉢植えからは花の香りが漂うが、葉・枝・茎・蕾からは花の香りがしない。しかし、花が咲く前の植物であっても、その花の香りがする芳香片を使用すれば、購買者に対し、その植物に将来どのような香りの花が咲くのかを伝えることができる。
例えば、クチナシを植えた鉢植え20aには、クチナシの花の香料を用いた芳香片1aを使用することにより、花が咲く前の状態であっても、購買者にクチナシの花の香りを伝えることができる。
【0019】
また他の例として、花が咲いてもその芳香が弱い植物4に対して、芳香片1aを利用してもよい。
例えば、鈴蘭の花の香りは、花に鼻を近づけなければ認識できないほどの弱い香りしかしない。そのため、鈴蘭の花の香りを濃縮させて匂いを強めた香料を芳香片1aに吸収させ、その芳香片1aを鈴蘭の鉢植え20aに挿し込む。
その結果、芳香片1aからは強められた鈴蘭の花の香りが漂うため、購買者は鈴蘭の花に鼻を近づけなくてもその香りを認識することができる。
購買者がその香りをよい香りだと認識すれば、その花の香りを楽しむために鉢植え20aを購入する。このように、本発明の芳香片1aは、鉢植え20aに対する購買者の購買意欲を高める効果がある。
【0020】
以上の例では、鉢植え20aに植えられた植物4と同種の花の香料を用いた場合を示したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
当然のことながら、鉢植え20aに植えられた植物とは異なる植物の花の香料を用いることもできる。
例えば、菊を植えた鉢植え20aに対して、バラの香りがする芳香片1aを挿し込んでも良い。また、金のなる木のように一般に殆ど花が咲かないと認識されている植物に対して、花の香りがする芳香片1aを使用しても良い。
【0021】
鉢植え20aに使用する香りは、植物の花の香りに限る必要はない。
例えば、オレンジ、レモン、グレープフルーツ等の柑橘類、ミント、バジル、シナモン、ローズマリー、ヒノキ等のハーブ類、バニラ、チョコレート、イチゴ、メロン、グレープ、コーヒー等の食品香料等を利用することも可能である。
これらの香りは、人によっては心地のよい香りである。これらの香料を含んだ芳香片1aを鉢植え20aに挿し込めば、購買者はその香りの発生元を確認したいという衝動にかられ、植物の鉢植え20aの陳列場所まで引き寄せられる。
特に店頭や店舗内においては、陳列棚や通路が複雑に配置されていることが多い。このため、購買者が商品を視覚で捉えるためには、その商品の陳列場所から1〜2mほどの距離に近づかなければならない。
しかしながら、本発明の芳香片1aを備えた鉢植え20aは、陳列棚などの障害物に関係なく、芳香を広い範囲に漂わせることができる。その結果、購買者は、視覚において鉢植え20aを確認していなくても、嗅覚によってその存在に気づくことができる。
このように、本発明には、店頭や店舗内における鉢植えの顧客吸引力を高める効果がある。
【0022】
また、アロマテラピーのように部屋の中に芳香が欲しい場合には、好みの芳香がする芳香片1aを挿し込んだ鉢植え20aを室内に置けば良い。芳香を好む人は、従来はアロマオイルやアロマキャンドルを焚いていたが、芳香片1aを備えた鉢植え20aを販売することにより、それらの人々がアロマ用品として鉢植え20aを購入する動機にもなる。
さらに、商品の販売店や飲食店などに鉢植えを置く場合にも利用することができる。
例えば、コーヒーショップのコーヒーの香り、雑貨店におけるラベンダーの香り、家具店におけるヒノキの香り、ケーキ店におけるバニラの香りなどは、その香りが店内において充満していることが好ましい香りである。
そこで、商品の販売店や飲食店においては、その店の香りに相応しい芳香を発する芳香片1aを挿し込んだ鉢植え20aを購入する動機となる。コーヒーショップにはコーヒーの香りの芳香片1aを備えた鉢植え20aを置き、家具店にはヒノキの香りの芳香片1aを備えた鉢植え20aを置けば、店舗にとっては天然のインテリアでありながら顧客に覚られずに芳香効果を発揮することができる。また、これらの芳香片の各種の香りにより、各種飲食店や小売店における取扱商品の販売促進効果もある。
【0023】
その鉢植えのテーマにあわせて香料を選択することも可能である。
図3に示す鉢植え20bは、芳香片の使用態様の一例を示したものであり、ショートケーキを模した鉢植えである。この鉢植え20bは、中心角が約45度の扇形の底板を有する植木鉢5に背の低い植物6を植えている。植木鉢5の周囲には、ケーキ菓子の包装用として使用される可愛いらしい図柄や模様が描かれたプラスチックフィルム7を巻き、ケーキ皿16を受け皿にする。
このような鉢植え20bに、バニラの香料を浸透させた芳香片1aを挿し込むことにより、その外形と相俟って、購買者に本物のショートケーキをより強くイメージさせることができる。
【0024】
さらに、香料に虫除け剤を添加しても良い。
コバエ、ハエ、ゴキブリ等の虫は、食物の匂いや甘い香りに引き寄せられる性質がある。このため、香料のみを含浸させた芳香片であれば、その芳香に惹き寄せられて、コバエ等が植物の鉢植えに集まる可能性がある。
ところが、このような虫が鉢植えに近づくようであれば、購買者は不快な思いをすることになり、鉢植えの購買意欲を失ってしまう。
そこで、コバエなどの虫が嫌う匂いを発する物質を、虫除け剤として香料に添加する。虫除け剤を添加することにより、芳香片からは芳香と共に虫が嫌いな匂いも放出されるため、鉢植えにコバエ等が寄り付かなくなる。
【0025】
本発明の虫除け剤としては、ニームオイルを使用することができる。
ニームとは、インドにある樹木、センダンの一種である。ニームには、防虫効果のある有効成分「アザディラクチン」が豊富に含まれており、インドでは古来から農業に欠かせないものとされてきた木である。
ニームの種子から生成されたニームオイルは古来より、インドの伝統医学アーユルべーダの治療薬として使われており、インドでは肝臓薬、中国では鎮痛剤、整腸剤、米国では鎮痛剤、血液効果剤の原料として用いられてきた。
ほかにも、葉や実を砕いたものを下に敷いて食料の貯蔵用として、枝は歯磨き用として使われている。
このように、ニームは、人体に安全な天然素材である。しかもニームは、益虫には無害で害虫にのみに強力に忌避効果を発揮する。まさにニームは天然素材の安全な「農薬」といえる。
また、ニームには下記の特徴があることが判明している。
・無毒性、生分解性だから環境にやさしい。
・神経毒作用(殺す)ではなく害虫忌避、摂食障害による防除である。
・害虫の産卵、孵化を阻害する。
・益虫を殺さないので、天敵が残る。
・害虫に耐性がつかない。
以上の利点があることから、欧米の農業先進国における害虫対策はすでにニームが主流になっている。欧米農業先進国ではニームの実を絞って製造したニームオイルは葉面散布剤として、その絞りカスであるニーム顆粒を土壌散布剤として活用している。
なお、日本農業新聞(1999.4.20付)は、(ニームの)「アザチラクチンという成分が家畜につくダニやイナゴ、ゴキブリなど多くの昆虫を殺虫、又は幼虫期にホルモンに作用して脱皮時に死亡させる。ネマトーダ(土壌センチュウ)に対しても有効」と報じている。
【0026】
香料に添加するニームオイルの量は、芳香片に含浸させる液体の1%〜10%である。香料の種類にもよるが、ニームオイルの匂いを人間に感じさせずに虫除けの効果を得るのに好ましい配合は、香料95〜98%、ニームオイル2〜5%である。
本発明の芳香片1aは、ニームオイルの効果により、アブラムシ、ハダニなどの植物に対する害虫も寄せ付けない。さらにニームオイルは、害虫の産卵、孵化を阻害する効果を有し、土壌に含まれる害虫の産卵、孵化を防止する効果がある。
よって、本発明の芳香片1aは、植物自体に影響を与える害虫が植物に付着することも防止できる。
香料に添加する虫除け剤はニームオイルに限られるものではなく、コバエ、ハエ、ゴキブリや、植物に対する害虫が嫌いな臭いを発する物質であれば使用可能であり、ニームオイル以外にユーカリレモンやシトロネラ、ゼラニウムなどのハーブ類も使用することができる。
【0027】
さらに、香料にエタノール等の揮発性物質を添加すると良い。エタノールは、その揮発効果により香料及び虫除け剤の発散を促進する。
その結果、揮発性物質を添加した芳香片は、加えていない場合よりも、短期的に且つより多くの香料及び虫除け剤を空気中に発散させることができる。このように揮発性物質を加えた芳香片は、店頭のように開放的で広い空間であっても、広範囲にわたって継続的に芳香の効果を及ぼすことができる。
一般に植物の鉢植えが店頭において商品価値を維持することができる期間は、植物の鉢植えを入荷してから5〜7日間である。
このことを考慮すると、香料に添加するエタノールの量は、10日間程度の期間にわたって芳香の力を増進させる量が適切である。このような芳香を実現するための香料、ニームオイル、エタノールの配合割合は、香料68〜70%、ニームオイル2〜3パーセント、エタノール28〜30パーセントである。
【0028】
本発明の芳香片1aは、香料、虫除け剤、揮発性物質を混合した香料混合液に、吸水性ないしは吸油性素材からなる紙片を浸し、紙片に香料混合液を吸収させることにより製造する。
上記の通り、紙片以外に、布、不織布、木材、素焼きの陶器、天然樹脂、合成樹脂などを使用することもできる。また、香料は水溶性香料でも脂溶性香料でも良く、天然香料でも合成香料でも良い。
【0029】
芳香片1aは、芳香片全体に香料混合液を含浸させても良いが、土3に挿し込まれる埋没部には香料混合液を含浸させず、空気中に晒されて芳香を漂わせる芳香部のみに香料混合液を含浸させても良い。
芳香片の製造過程において、芳香片の土に挿し込む埋没部には脂溶性香料を含浸させ、空気中に晒される芳香部には水溶性の香料を含浸させても良い。もしくは、埋没部にはプラスチックなどの合成樹脂を含浸させ、芳香部にだけ水溶性や脂溶性の香料を含浸させても良い。
このように、土に挿し込む埋没部を非水溶性に構成することによって、芳香片から土中に香料が流出するのを防ぐことができる。
【0030】
芳香片1aの芳香が弱まったら、再度、香料混合液に浸すことによって、芳香片1aの芳香を回復させることができる。
本実施例では芳香片1aを吸水性ないしは吸油性素材から構成し、その芳香片1aに香料を含浸させているが、芳香片自体を芳香性の素材で形成しても良い。
【0031】
従来は、花の香りは香りを有する花でも開花の一時期しか楽しめなかった。また、多くの花は香り自体を感じることができない。
しかし、芳香片を花苗ポッドあるいは花苗鉢に添付することにより、花苗の生育過程全般において香り(嗅覚)、花が育っていく姿(視覚)、手を触れることによる触感(触覚)の三感覚をつうじて、植物の鉢植えの購入者に鎮静効果、覚醒効果を提供することが可能となる。
【0032】
〔花売り場において〕
さらに本発明によれば、植物の鉢植を販売する売り場において、芳香片1aから発散される芳香が購買者の嗅覚を刺激する。その結果、嗅覚を通じて植物の匂いや鉢植えのテーマ、イメージ等を購買者に伝達することができ、植物の鉢植えに対する購買意欲を高めることができる。
また、芳香片1aを備えた鉢植え20aから漂う香りは、商品の陳列棚等の障害物に阻害されずに広い範囲に漂う。このため、鉢植え20aを視覚で確認できない位置に購買者がいたとしても、嗅覚によってその存在に気づくことができる。よって、本発明は、店頭における鉢植えの宣伝・広告効果を高めることができる。
本発明によれば、上記のように甘いスィーツ等の香りが花売り場に漂い集客力を高め、植物の鉢植えの消費拡大を図り、売り場での購買数を向上させる働きがある。
さらに、人間の臭覚では感知できない微量のニームの香りが、ゴキブリ、蚊、ハエ、アブラムシ、ハダニ、スリップスなど200種類以上の害虫に対して忌虫効果を生じ、害虫を寄せ付けないため、売り場の清潔感を保つこともできる。
【0033】
〔植物の生産・育成現場において〕
本発明は、植物の鉢植えの出荷時のみならず、植物の生産・育成時期においても利用できる。芳香片1aの取り付け作業は、芳香片1aを植木鉢2の土3に差し込むだけの簡単なものである。このため、本発明はこれまでの生産者における殺虫剤・防虫剤の撒布作業の手間を大幅に減少することができる。
花の栽培においては、植物を植え込んでから花が咲く出荷時期までに2カ月から3カ月の栽培期間を要するが、ニームオイルと芳香の効果は2カ月以上持続する。そのため、芳香片を用いることにより、植物への農薬の散布回数を5回から1回に減らす減農薬栽培が可能となる。また、環境にも優しい花栽培が可能となる。
さらに、スィーツの香料の香りが植物を栽培する温室内に充満する。この香りは植物を生産する生産者・作業者に対し「アロマコロジー」を生じさせて気分を落ち着かせる効果がある。その結果、作業者の作業効率を向上させる。なお、「生活空間に香りを取り入れて豊かな生活を」ということを「アロマコロジー」という。
【0034】
上記の通り、実施例1に係る発明は、芳香と虫が嫌いな香りを放出する芳香片であって、該芳香片を土に埋め込むための埋没部、または、該芳香片を植物に引っ掛けるための掛止部、の少なくとも何れか一方を有することを特徴とする芳香片である。
【実施例2】
【0035】
図4(a)(b)は、図1に示した芳香片1aとは異なる形状の芳香片を示す斜視図である。図4(a)(b)に示す芳香片1c,1dは、実施例1の芳香片1aと同様な素材からなり、形状以外に芳香片1aと異なる点は無い。
芳香片1c,1dは、芳香片1aに比べて、埋没部8の先端部分を土に刺さりやすいように、尖らせた形状にしたことに特徴を有する。
芳香片1c,1dの形は任意の形状でよいが、取扱上、板状であることが望ましい。
図4(a)に示す芳香片1cは、芳香片1cを土に埋没させやすくするために、芳香片1c本体の一端を尖らせて、挿し込み用の埋没部8を形成している。また、図4(b)に示す芳香片1dは、芳香片1d本体の一部を突出させて埋没部8を設け、さらに土に挿し込みやすいように埋没部8の先端を尖らせて形成している。
このように埋没部8の先端を尖らせることにより、より少ない力で、芳香片1c,1dを容易に土に差し込むことができる。
【実施例3】
【0036】
図5は、図1に示した芳香片1aとは異なる形状の芳香片を示す斜視図である。図5に示す芳香片1eは、実施例1の芳香片1aと同様な素材からなり、形状以外に芳香片1aと異なる点は無い。
図5に示すように、芳香片1eは芳香片1aと同様に100mm×20mmの長方形で厚さ2mm程度の薄い平板状をなし、長手方向の一端寄りに孔10を有する。さらに、芳香片1eの外周から孔10に向かって、切り込み11を設けている。孔10の直径が5〜15mmであるのに対し、切り込み11の幅は孔10の直径の半分以下であることが望ましい。切り込み11は長方形状の芳香片1eの長辺または短辺の何れから切り込んでも良い。特に、図5に示すように長辺の斜め下方向から斜め上方向に、孔10に向かって切り込むのが良い。また、孔10自体を芳香片1eの長辺または短辺の何れかに接触させて、一部を開放することにより、切り込み11としても良い。
【0037】
図6は芳香片1eを植物に取り付けた状態を示す斜視図であり、図7は取り付け部を拡大して示す拡大図である。図7に示すように芳香片1eは、芳香片1eの孔10の中に植物4の枝や茎を配置し、孔10の内周面が植物4の枝や茎に載置されて引っ掛かることにより、植物4自体に備え付けられる。
芳香片1eを植物4に取り付ける方法は極めて簡単で、芳香片1eの切り込み11から植物4の枝や茎を挿入し、枝や茎が孔10の中に配置されるまで移動させるだけである。特に図5に示すように、芳香片1eの長辺側外周から孔10に向かって、斜め下から斜め上方向に設けた切り込み11の場合には、枝や茎が切り込み11から抜け難いという利点を有する。
図6に示すように、芳香片1eは孔10と切り込み11からなる掛止部を有することにより、植物4に直接引っ掛けることができるため、芳香片1eの全面を空気中に晒すことが可能となる。そのため、芳香片1eを備えた鉢植え20eは、芳香片1aのように芳香片の一部を土3に挿し込む場合よりも、多くの芳香を空気中に放出させることができる。さらに、芳香片1eの全体に香料を含浸させ、全面を芳香部として構成することにより、芳香片1eの全面から、より多くの芳香を放出することができる。
【実施例4】
【0038】
図8(a)(b)は、図1に示した芳香片1aとは異なる形状の芳香片を示す斜視図である。図8(a)(b)に示す芳香片1f,1gは、実施例1の芳香片1aと同様な素材からなり、含浸させる香料等や製造方法については特に芳香片1aと異なる点は無い。芳香片1f,1gは、芳香片を特定のデザインの形状にして、芳香片の任意の場所に紐13を取り付けた点に特徴がある。
図8(a)に示す芳香片1fは、星型にデザインした芳香片である。芳香片1fは芳香片1aと同様に薄板状の素材からなり、外形を星の形に成形している。星型の天辺に孔12を設け、その孔12に輪状の紐13を取り付けている。紐13は伸縮可能なゴム紐でも良い。
一方、図8(b)の芳香片1gは、ハート型にデザインした芳香片である。芳香片1gも芳香片1fと同様に薄板状の素材からなり、外形をハートの形に成形している。芳香片1gでは、ハート型の天辺に輪状の掛け具14を設け、その掛け具14に輪状の紐13を取り付けている。掛け具14は輪部を有するねじ込み式のフックで、ねじ部分を芳香片1g本体にねじ込んで取り付ける。
【0039】
芳香片1f,1gは、紐13からなる掛止部を植物の枝や茎に引っ掛けることにより植物自体に取り付ける。
このように芳香片にデザインを施すことにより、購買者の視覚を魅了し、より購買意欲を高めることができる。また、植物を芳香片1f,1gによって装飾することも可能である。
芳香片1f,1gの形状は本実施例に限定されるものではなく、また、芳香片1f,1gに色彩を施すことにより、より購買者の視覚を魅了することもできる。
なお、図8(a)(b)では平板状の芳香片を例に示しているが、図11(b)に示す芳香片1bのように立体形状であっても良い。
【0040】
〔変形例1〕
図9(a)(b)は、図8に示した芳香片の変形例を示す斜視図である。芳香片1f,1gと同様な構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図9(a)(b)に示す芳香片1h,1iは、芳香片のデザインに関連のある香りを付けたことに特徴がある。例えば、図9(a)に示すようにバナナの形をした芳香片1hにはバナナの香りを使用する。また、図9(b)に示すようにみかんの形をした芳香片1iにはオレンジの香りを使用する。バナナの香りやオレンジの香りは、元の果実から抽出した天然香料をそのまま用いることもできるし、また人工的に作り上げた果実に似た人工香料であっても良い。
植物への取り付け方法は、芳香片1f,1gの場合と同様である。
芳香片1h,1iを植物に飾れば、鉢植えの植物に実が成っているような演出をすることができる。
【0041】
上記の通り変形例1に係る発明は、芳香を放出する芳香片であって、前記芳香片を土に埋め込むための埋没部、または、前記芳香片を植物に引っ掛けるための掛止部、の少なくとも何れか一方を有し、
前記芳香は、前記芳香片の形状のモチーフとなった元の物が通常有する香りと同一または類似する香りであることを特徴とする芳香片である。
【0042】
〔変形例2〕
図10は、図8に示した芳香片の変形例を示す斜視図である。芳香片1f,1gと同様な構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
芳香片1jはいわゆるネームプレートであり、名称部17、写真部18、説明部19を有する。名称部17には植物の名称を記載し、写真部18には植物の写真を掲載する。説明部19にはその植物の育成方法などの説明を記載する。ネームプレート型芳香片1jには、名称部17、写真部18、説明部19の全てを設ける必要はなく、少なくとも何れか1つを有していれば良い。
芳香片1jは、掲載した名称、写真、説明の植物の花が通常有する香りと同一または類似する香料を含浸している。香料は、植物の花から抽出した天然香料をそのまま用いることもできるし、また当該植物の花の香りに似せて人工的に作り上げた人工香料であっても良い。
芳香片1jはネームプレートであるため、通常は掲載された名称、写真、説明と対応する植物に備え付ける。芳香片1jの植物への取り付け方法は、芳香片1f,1gの場合と同様である。
植物の説明等を記載した芳香片1jを植物に取り付けることにより、その植物の説明と香りを同時に購買者に宣伝することができる。
【0043】
上記の通り変形例2に係る発明は、芳香を放出する芳香片であって、前記芳香片を土に埋め込むための埋没部、または、前記芳香片を植物に引っ掛けるための掛止部、の少なくとも何れか一方を有し、
前記芳香片には、植物の名称、写真、説明の少なくとも何れか1つが掲載されており、
前記芳香は、前記植物の花が通常有する香りと同一または類似する香りであることを特徴とする芳香片である。
【0044】
実施例3では孔と切り込みからなる掛止部を示し、実施例4では紐13からなる掛止部を示したが、掛止部の構造はこれらに限られるものではない。掛止部は、掛止部によって植物の枝や茎に芳香片を取り付けられる構造であれば良く、切り込みだけからなる掛止部や、紐の代わりに針金からなる掛止部でも良い。
【実施例5】
【0045】
図11(a)(b)は、図1に示した芳香片1aとは異なる形状の芳香片を示す斜視図である。図11(a)(b)に示す芳香片1k,1bは、実施例1の芳香片1aと同様な素材からなり、含浸させる香料等や製造方法については特に芳香片1aと異なる点は無い。芳香片1k,1bは、芳香片を特定のデザインの形状にして、棒状の埋没部15を設けた点に特徴がある。
埋没部15は、プラスチック棒やたけひごのような細い棒からなり、その上端に芳香片本体が取り付けられる。埋没部15は芳香片本体を支える支持部としても機能し、下端を土に挿し込むことにより、芳香片1k,1bを鉢植えに固定する。芳香片1k,1bを土に挿し込む作業者は、埋没部15を持って作業をすることができる。芳香片1k,1bによれば、作業者の手が芳香片本体に直接触れることがないため、香料が作業者の手に付着することがない。
また、埋没部15の長さや埋没量を適宜調整することにより、購買者の好みの高さに芳香片本体を固定することができる。
【0046】
なお、実施例1〜5を適宜組み合わせて使用できることは言うまでもない。例えば、実施例4の図10に示す芳香片11jに図4(b)に示す芳香片1dの概念を組み合わせ、芳香片11jに埋没部を設けることにより、土に挿し込む構造にしても良い。また、芳香片は、各実施例に示した掛止部と埋没部の少なくとも何れか一方を備えていれば良く、両方備えていても良い。
以上に説明した通り、本発明によれば、芳香片を土に挿し込んだり植物や植木鉢に取り付けたりして、芳香片を鉢植えに備え付けることにより、鉢植えの顧客吸引力を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
特殊なスティックに防虫液や甘い香りを吸収させることにより、花の生産段階における減農薬栽培が可能となり、また、花売り場において虫を寄せ付けずにスィーツの甘い香りで客を魅惑し、ニーズを広げ、集客力を高め消費拡大を図る。
【符号の説明】
【0048】
1a〜1k…芳香片
2…植木鉢
3…土
4…植物
5…植木鉢
6…植物
7…プラスチックフィルム
8…埋没部
10…孔
11…切り込み
12…孔
13…紐
14…掛け具
15…埋没部
16…ケーキ皿
17…名称部
18…写真部
19…説明部
20a,20b,20e…鉢植え。
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物に付して使用される芳香片に関し、特に店頭における観賞用植物の鉢植え販売に利用可能な芳香片に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のアロマテラピーなどの流行により、市場においては植物から放出される香りが植物の魅力の一つとして注目されている。このような状況において、需要者が植物の鉢植えを購入する際には、その植物の種類、見た目、育成方法のみならず、その植物がどのような香りを有するかという点が重要な購買基準となってきている。
そのため、今日の鉢植えの市場においては、視覚のみならず嗅覚において需要者を魅了する商品が求められるようになってきている。
【0003】
しかし、植物は生物であるため、常に生長し変化する。植物の鉢植えの生産者は需要者の手元に鉢植えが届く時期を計算し、植物が最も美しく魅力的になる直前、又は、その初期の段階にその植物の鉢植えが店頭に並ぶように出荷する。
このため、店頭において販売される鉢植えの中には、花の咲き始めのものや育成中のものも少なくない。
【0004】
このような状況において、植物の魅力を伝えるための手段は、植物が成長した状態の写真を添付した解説付きのタグが一般的であった。
しかしながら、このような視覚による確認のみでは、その植物の匂いや鉢植えのテーマ、イメージを購買者に十分に伝達することが困難であった。
【0005】
また、植物の鉢植えの売上げを妨げる原因としては、植物に害虫が付くことにより、購買者が不快な思いをすることが挙げられる。店頭に並んだ鉢植えの植物に害虫が付いているようなことがあれば、その植物がどんなに魅力的であっても、購買者は即座に購買意欲を失うことになる。このような害虫を除去するためには、植物への防虫剤の撒布が必要となる。
しかし、害虫を駆除するための防虫剤や殺虫剤には、有機リン系農薬が使用されることが多く、その撒布作業においては農薬による中毒を回避するための対策が必要となる。
また、これらの農薬の匂いは、人間にとって不快なものが多い。このため、農薬の撒布作業において発生する匂いは植物の生産者や販売者を煩わせていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3158174号公報
【特許文献2】実開平5−82443号公報
【特許文献3】特開平6−54625号公報
【特許文献4】実用新案登録第3060280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願に係る発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、店頭における植物の鉢植えの販売において、購買者の視覚のみならず嗅覚を刺激することによって、鉢植えの顧客吸引力を向上させる簡易な手段を提供することにある。
また、本出願のその他の目的とするところは、虫除け効果のある物質を発散させることにより、植物の鉢植えに害虫が付着することを防止し、生産者及び販売者の害虫駆除作業を減少させる簡易な手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本出願に係る第1の発明は、芳香と虫が嫌いな香りを放出する芳香片であって、該芳香片を土に埋め込むための埋没部、または、該芳香片を植物に引っ掛けるための掛止部、の少なくとも何れか一方を有することを特徴とする芳香片である。
【0009】
また、本出願に係る第2の発明は、芳香を放出する芳香片であって、前記芳香片を土に埋め込むための埋没部、または、前記芳香片を植物に引っ掛けるための掛止部、の少なくとも何れか一方を有し、
前記芳香は、前記芳香片の形状のモチーフとなった元の物が通常有する香りと同一または類似する香りであることを特徴とする芳香片である。
【0010】
さらに、本出願に係る第3の発明は、芳香を放出する芳香片であって、前記芳香片を土に埋め込むための埋没部、または、前記芳香片を植物に引っ掛けるための掛止部、の少なくとも何れか一方を有し、
前記芳香片には、植物の名称、写真、説明の少なくとも何れか1つが掲載されており、
前記芳香は、前記植物の花が通常有する香りと同一または類似する香りであることを特徴とする芳香片である。
【0011】
また、本出願に係る第4の発明は、土が充填された植木鉢に植物が植えられた鉢植えにおいて、上記第1〜3の発明の何れか1つに記載の芳香片を備えた鉢植えである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、植物の鉢植えの販売において、芳香片から発散される芳香が購買者の嗅覚を刺激する。その結果、嗅覚を通じて、植物の匂いや鉢植えのテーマ、イメージなどを購買者に伝達することができ、植物の鉢植えに対する購買意欲を高めることができる。
【0013】
また、芳香片を備えた鉢植えから漂う香りは、商品の陳列棚等の障害物に阻害されずに広い範囲に漂う。このため、購買者は、鉢植えを視覚で確認できない位置にいても、嗅覚によってその存在に気づくことができる。よって、本発明は、店頭における鉢植えの宣伝・広告効果を高める効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本出願の実施例1に係る芳香片を示した斜視図である。
【図2】本出願の実施例1に係る芳香片の使用状態を示した概念図である。
【図3】ショートケーキに似せた鉢植えに実施例1の芳香片を取り付けた状態を表す斜視図である。
【図4】本出願の実施例2に係る芳香片を示した斜視図である。
【図5】本出願の実施例3に係る芳香片を示した斜視図である。
【図6】本出願の実施例3に係る芳香片の使用状態を示した概念図である。
【図7】図6の一部を拡大して示した拡大図である。
【図8】本出願の実施例4に係る芳香片を示した斜視図である。
【図9】本出願の実施例4に係る芳香片の変形例1を示した斜視図である。
【図10】本出願の実施例4に係る芳香片の変形例2を示した斜視図である。
【図11】本出願の実施例5に係る芳香片を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0015】
図1は本発明の芳香片の斜視図である。
同図に示すように芳香片1aは長方形の薄い平板状をなす紙片である。その形状や大きさは特に限定されるものではないが、本実施例では長さ100mm、幅20mmの長方形に形成した、厚さ2mm程度の厚紙を使用する。材質としては吸水性に富むものが良く、コースターなどに利用される厚紙を使用するのが良い。
本発明の芳香片は吸水性ないしは吸油性素材からなれば良く、紙に限定されるものではない。例えば、紙以外にも液体を含浸させることができる素材として、布、不織布、木材、素焼きの陶器、天然樹脂、合成樹脂などを使用することもできる。
【0016】
芳香片1aは香料を含浸しており、芳香片1aから空気中に向かって芳香が放出される。
香料には種々のものを用いることができ、例えば、天然香料や合成香料を用いる。香料は、芳香片に浸透可能であれば水溶性香料及び脂溶性香料のいずれも使用可能であり、また、細かな芳香性微粒子を含んだ液体香料でも良い。
【0017】
図2は、芳香片を鉢植えに挿し込んだ状態を表す斜視図である。植木鉢2には土3が充填され、土3には植物4が植えてある。
植木鉢2の形状は、三角形、四角形等の多角形や楕円形でも良く、円形に限らず種々の形状のものを使用できる。また、植木鉢2の素材は、素焼製、プラスチック製、金属製、ガラス製など種々の素材が考えられる。さらに、植木鉢2の代わりに、ビニールポットやプランター容器のような園芸用容器を使用してもよく、本願ではそれらを総称して植木鉢2として説明する。
図2に示すように芳香片1aは、芳香片1aの一部を埋没部として土3に挿し込んで固定して使用する。芳香片1aは、芳香片から空気中に芳香を漂わせる芳香部と、芳香片を土中に挿し込むための埋没部が確保できる長さ及び大きさがあればよい。図1に示す芳香片1aでは、埋没部と芳香部の構造に区別はなく、芳香片1aの全体が芳香を発する構造であり、芳香片1aの一端を土3の中に挿し込めば、土中に埋まっている範囲が埋没部となる。
芳香片1aの硬さは、芳香片1aを土3に挿し込む際に、折れずにその形状を維持することが可能な硬さであることが望ましい。
また、プランター容器のように、容器縁に植物のネームプレートを挿し込む穴が設けられている植木鉢の場合には、芳香片1aを土3ではなく、ネームプレート用の穴に挿し込んで固定しても良い。
【0018】
香料の香りの種類としては、バラ、キンモクセイ、梅、ラベンダー、クチナシ等の花の香りを使用する。
特に、植木鉢2に植えられている植物4の種類と一致する花の香料を使用するのが良い。芳香片1aを土3に挿し込むと、購買者は、あたかも植物4から花の匂いがしているかのように錯覚する。そして、その花の匂いに誘われて、購買者はその鉢植え20aに惹きつけられて、鉢植えを手に取り購入する。
1つの使用例としては、苗や花が咲く前の植物を植えた鉢植え20aに、本発明の芳香片1aを使用する。一般に花が咲いた鉢植えからは花の香りが漂うが、葉・枝・茎・蕾からは花の香りがしない。しかし、花が咲く前の植物であっても、その花の香りがする芳香片を使用すれば、購買者に対し、その植物に将来どのような香りの花が咲くのかを伝えることができる。
例えば、クチナシを植えた鉢植え20aには、クチナシの花の香料を用いた芳香片1aを使用することにより、花が咲く前の状態であっても、購買者にクチナシの花の香りを伝えることができる。
【0019】
また他の例として、花が咲いてもその芳香が弱い植物4に対して、芳香片1aを利用してもよい。
例えば、鈴蘭の花の香りは、花に鼻を近づけなければ認識できないほどの弱い香りしかしない。そのため、鈴蘭の花の香りを濃縮させて匂いを強めた香料を芳香片1aに吸収させ、その芳香片1aを鈴蘭の鉢植え20aに挿し込む。
その結果、芳香片1aからは強められた鈴蘭の花の香りが漂うため、購買者は鈴蘭の花に鼻を近づけなくてもその香りを認識することができる。
購買者がその香りをよい香りだと認識すれば、その花の香りを楽しむために鉢植え20aを購入する。このように、本発明の芳香片1aは、鉢植え20aに対する購買者の購買意欲を高める効果がある。
【0020】
以上の例では、鉢植え20aに植えられた植物4と同種の花の香料を用いた場合を示したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
当然のことながら、鉢植え20aに植えられた植物とは異なる植物の花の香料を用いることもできる。
例えば、菊を植えた鉢植え20aに対して、バラの香りがする芳香片1aを挿し込んでも良い。また、金のなる木のように一般に殆ど花が咲かないと認識されている植物に対して、花の香りがする芳香片1aを使用しても良い。
【0021】
鉢植え20aに使用する香りは、植物の花の香りに限る必要はない。
例えば、オレンジ、レモン、グレープフルーツ等の柑橘類、ミント、バジル、シナモン、ローズマリー、ヒノキ等のハーブ類、バニラ、チョコレート、イチゴ、メロン、グレープ、コーヒー等の食品香料等を利用することも可能である。
これらの香りは、人によっては心地のよい香りである。これらの香料を含んだ芳香片1aを鉢植え20aに挿し込めば、購買者はその香りの発生元を確認したいという衝動にかられ、植物の鉢植え20aの陳列場所まで引き寄せられる。
特に店頭や店舗内においては、陳列棚や通路が複雑に配置されていることが多い。このため、購買者が商品を視覚で捉えるためには、その商品の陳列場所から1〜2mほどの距離に近づかなければならない。
しかしながら、本発明の芳香片1aを備えた鉢植え20aは、陳列棚などの障害物に関係なく、芳香を広い範囲に漂わせることができる。その結果、購買者は、視覚において鉢植え20aを確認していなくても、嗅覚によってその存在に気づくことができる。
このように、本発明には、店頭や店舗内における鉢植えの顧客吸引力を高める効果がある。
【0022】
また、アロマテラピーのように部屋の中に芳香が欲しい場合には、好みの芳香がする芳香片1aを挿し込んだ鉢植え20aを室内に置けば良い。芳香を好む人は、従来はアロマオイルやアロマキャンドルを焚いていたが、芳香片1aを備えた鉢植え20aを販売することにより、それらの人々がアロマ用品として鉢植え20aを購入する動機にもなる。
さらに、商品の販売店や飲食店などに鉢植えを置く場合にも利用することができる。
例えば、コーヒーショップのコーヒーの香り、雑貨店におけるラベンダーの香り、家具店におけるヒノキの香り、ケーキ店におけるバニラの香りなどは、その香りが店内において充満していることが好ましい香りである。
そこで、商品の販売店や飲食店においては、その店の香りに相応しい芳香を発する芳香片1aを挿し込んだ鉢植え20aを購入する動機となる。コーヒーショップにはコーヒーの香りの芳香片1aを備えた鉢植え20aを置き、家具店にはヒノキの香りの芳香片1aを備えた鉢植え20aを置けば、店舗にとっては天然のインテリアでありながら顧客に覚られずに芳香効果を発揮することができる。また、これらの芳香片の各種の香りにより、各種飲食店や小売店における取扱商品の販売促進効果もある。
【0023】
その鉢植えのテーマにあわせて香料を選択することも可能である。
図3に示す鉢植え20bは、芳香片の使用態様の一例を示したものであり、ショートケーキを模した鉢植えである。この鉢植え20bは、中心角が約45度の扇形の底板を有する植木鉢5に背の低い植物6を植えている。植木鉢5の周囲には、ケーキ菓子の包装用として使用される可愛いらしい図柄や模様が描かれたプラスチックフィルム7を巻き、ケーキ皿16を受け皿にする。
このような鉢植え20bに、バニラの香料を浸透させた芳香片1aを挿し込むことにより、その外形と相俟って、購買者に本物のショートケーキをより強くイメージさせることができる。
【0024】
さらに、香料に虫除け剤を添加しても良い。
コバエ、ハエ、ゴキブリ等の虫は、食物の匂いや甘い香りに引き寄せられる性質がある。このため、香料のみを含浸させた芳香片であれば、その芳香に惹き寄せられて、コバエ等が植物の鉢植えに集まる可能性がある。
ところが、このような虫が鉢植えに近づくようであれば、購買者は不快な思いをすることになり、鉢植えの購買意欲を失ってしまう。
そこで、コバエなどの虫が嫌う匂いを発する物質を、虫除け剤として香料に添加する。虫除け剤を添加することにより、芳香片からは芳香と共に虫が嫌いな匂いも放出されるため、鉢植えにコバエ等が寄り付かなくなる。
【0025】
本発明の虫除け剤としては、ニームオイルを使用することができる。
ニームとは、インドにある樹木、センダンの一種である。ニームには、防虫効果のある有効成分「アザディラクチン」が豊富に含まれており、インドでは古来から農業に欠かせないものとされてきた木である。
ニームの種子から生成されたニームオイルは古来より、インドの伝統医学アーユルべーダの治療薬として使われており、インドでは肝臓薬、中国では鎮痛剤、整腸剤、米国では鎮痛剤、血液効果剤の原料として用いられてきた。
ほかにも、葉や実を砕いたものを下に敷いて食料の貯蔵用として、枝は歯磨き用として使われている。
このように、ニームは、人体に安全な天然素材である。しかもニームは、益虫には無害で害虫にのみに強力に忌避効果を発揮する。まさにニームは天然素材の安全な「農薬」といえる。
また、ニームには下記の特徴があることが判明している。
・無毒性、生分解性だから環境にやさしい。
・神経毒作用(殺す)ではなく害虫忌避、摂食障害による防除である。
・害虫の産卵、孵化を阻害する。
・益虫を殺さないので、天敵が残る。
・害虫に耐性がつかない。
以上の利点があることから、欧米の農業先進国における害虫対策はすでにニームが主流になっている。欧米農業先進国ではニームの実を絞って製造したニームオイルは葉面散布剤として、その絞りカスであるニーム顆粒を土壌散布剤として活用している。
なお、日本農業新聞(1999.4.20付)は、(ニームの)「アザチラクチンという成分が家畜につくダニやイナゴ、ゴキブリなど多くの昆虫を殺虫、又は幼虫期にホルモンに作用して脱皮時に死亡させる。ネマトーダ(土壌センチュウ)に対しても有効」と報じている。
【0026】
香料に添加するニームオイルの量は、芳香片に含浸させる液体の1%〜10%である。香料の種類にもよるが、ニームオイルの匂いを人間に感じさせずに虫除けの効果を得るのに好ましい配合は、香料95〜98%、ニームオイル2〜5%である。
本発明の芳香片1aは、ニームオイルの効果により、アブラムシ、ハダニなどの植物に対する害虫も寄せ付けない。さらにニームオイルは、害虫の産卵、孵化を阻害する効果を有し、土壌に含まれる害虫の産卵、孵化を防止する効果がある。
よって、本発明の芳香片1aは、植物自体に影響を与える害虫が植物に付着することも防止できる。
香料に添加する虫除け剤はニームオイルに限られるものではなく、コバエ、ハエ、ゴキブリや、植物に対する害虫が嫌いな臭いを発する物質であれば使用可能であり、ニームオイル以外にユーカリレモンやシトロネラ、ゼラニウムなどのハーブ類も使用することができる。
【0027】
さらに、香料にエタノール等の揮発性物質を添加すると良い。エタノールは、その揮発効果により香料及び虫除け剤の発散を促進する。
その結果、揮発性物質を添加した芳香片は、加えていない場合よりも、短期的に且つより多くの香料及び虫除け剤を空気中に発散させることができる。このように揮発性物質を加えた芳香片は、店頭のように開放的で広い空間であっても、広範囲にわたって継続的に芳香の効果を及ぼすことができる。
一般に植物の鉢植えが店頭において商品価値を維持することができる期間は、植物の鉢植えを入荷してから5〜7日間である。
このことを考慮すると、香料に添加するエタノールの量は、10日間程度の期間にわたって芳香の力を増進させる量が適切である。このような芳香を実現するための香料、ニームオイル、エタノールの配合割合は、香料68〜70%、ニームオイル2〜3パーセント、エタノール28〜30パーセントである。
【0028】
本発明の芳香片1aは、香料、虫除け剤、揮発性物質を混合した香料混合液に、吸水性ないしは吸油性素材からなる紙片を浸し、紙片に香料混合液を吸収させることにより製造する。
上記の通り、紙片以外に、布、不織布、木材、素焼きの陶器、天然樹脂、合成樹脂などを使用することもできる。また、香料は水溶性香料でも脂溶性香料でも良く、天然香料でも合成香料でも良い。
【0029】
芳香片1aは、芳香片全体に香料混合液を含浸させても良いが、土3に挿し込まれる埋没部には香料混合液を含浸させず、空気中に晒されて芳香を漂わせる芳香部のみに香料混合液を含浸させても良い。
芳香片の製造過程において、芳香片の土に挿し込む埋没部には脂溶性香料を含浸させ、空気中に晒される芳香部には水溶性の香料を含浸させても良い。もしくは、埋没部にはプラスチックなどの合成樹脂を含浸させ、芳香部にだけ水溶性や脂溶性の香料を含浸させても良い。
このように、土に挿し込む埋没部を非水溶性に構成することによって、芳香片から土中に香料が流出するのを防ぐことができる。
【0030】
芳香片1aの芳香が弱まったら、再度、香料混合液に浸すことによって、芳香片1aの芳香を回復させることができる。
本実施例では芳香片1aを吸水性ないしは吸油性素材から構成し、その芳香片1aに香料を含浸させているが、芳香片自体を芳香性の素材で形成しても良い。
【0031】
従来は、花の香りは香りを有する花でも開花の一時期しか楽しめなかった。また、多くの花は香り自体を感じることができない。
しかし、芳香片を花苗ポッドあるいは花苗鉢に添付することにより、花苗の生育過程全般において香り(嗅覚)、花が育っていく姿(視覚)、手を触れることによる触感(触覚)の三感覚をつうじて、植物の鉢植えの購入者に鎮静効果、覚醒効果を提供することが可能となる。
【0032】
〔花売り場において〕
さらに本発明によれば、植物の鉢植を販売する売り場において、芳香片1aから発散される芳香が購買者の嗅覚を刺激する。その結果、嗅覚を通じて植物の匂いや鉢植えのテーマ、イメージ等を購買者に伝達することができ、植物の鉢植えに対する購買意欲を高めることができる。
また、芳香片1aを備えた鉢植え20aから漂う香りは、商品の陳列棚等の障害物に阻害されずに広い範囲に漂う。このため、鉢植え20aを視覚で確認できない位置に購買者がいたとしても、嗅覚によってその存在に気づくことができる。よって、本発明は、店頭における鉢植えの宣伝・広告効果を高めることができる。
本発明によれば、上記のように甘いスィーツ等の香りが花売り場に漂い集客力を高め、植物の鉢植えの消費拡大を図り、売り場での購買数を向上させる働きがある。
さらに、人間の臭覚では感知できない微量のニームの香りが、ゴキブリ、蚊、ハエ、アブラムシ、ハダニ、スリップスなど200種類以上の害虫に対して忌虫効果を生じ、害虫を寄せ付けないため、売り場の清潔感を保つこともできる。
【0033】
〔植物の生産・育成現場において〕
本発明は、植物の鉢植えの出荷時のみならず、植物の生産・育成時期においても利用できる。芳香片1aの取り付け作業は、芳香片1aを植木鉢2の土3に差し込むだけの簡単なものである。このため、本発明はこれまでの生産者における殺虫剤・防虫剤の撒布作業の手間を大幅に減少することができる。
花の栽培においては、植物を植え込んでから花が咲く出荷時期までに2カ月から3カ月の栽培期間を要するが、ニームオイルと芳香の効果は2カ月以上持続する。そのため、芳香片を用いることにより、植物への農薬の散布回数を5回から1回に減らす減農薬栽培が可能となる。また、環境にも優しい花栽培が可能となる。
さらに、スィーツの香料の香りが植物を栽培する温室内に充満する。この香りは植物を生産する生産者・作業者に対し「アロマコロジー」を生じさせて気分を落ち着かせる効果がある。その結果、作業者の作業効率を向上させる。なお、「生活空間に香りを取り入れて豊かな生活を」ということを「アロマコロジー」という。
【0034】
上記の通り、実施例1に係る発明は、芳香と虫が嫌いな香りを放出する芳香片であって、該芳香片を土に埋め込むための埋没部、または、該芳香片を植物に引っ掛けるための掛止部、の少なくとも何れか一方を有することを特徴とする芳香片である。
【実施例2】
【0035】
図4(a)(b)は、図1に示した芳香片1aとは異なる形状の芳香片を示す斜視図である。図4(a)(b)に示す芳香片1c,1dは、実施例1の芳香片1aと同様な素材からなり、形状以外に芳香片1aと異なる点は無い。
芳香片1c,1dは、芳香片1aに比べて、埋没部8の先端部分を土に刺さりやすいように、尖らせた形状にしたことに特徴を有する。
芳香片1c,1dの形は任意の形状でよいが、取扱上、板状であることが望ましい。
図4(a)に示す芳香片1cは、芳香片1cを土に埋没させやすくするために、芳香片1c本体の一端を尖らせて、挿し込み用の埋没部8を形成している。また、図4(b)に示す芳香片1dは、芳香片1d本体の一部を突出させて埋没部8を設け、さらに土に挿し込みやすいように埋没部8の先端を尖らせて形成している。
このように埋没部8の先端を尖らせることにより、より少ない力で、芳香片1c,1dを容易に土に差し込むことができる。
【実施例3】
【0036】
図5は、図1に示した芳香片1aとは異なる形状の芳香片を示す斜視図である。図5に示す芳香片1eは、実施例1の芳香片1aと同様な素材からなり、形状以外に芳香片1aと異なる点は無い。
図5に示すように、芳香片1eは芳香片1aと同様に100mm×20mmの長方形で厚さ2mm程度の薄い平板状をなし、長手方向の一端寄りに孔10を有する。さらに、芳香片1eの外周から孔10に向かって、切り込み11を設けている。孔10の直径が5〜15mmであるのに対し、切り込み11の幅は孔10の直径の半分以下であることが望ましい。切り込み11は長方形状の芳香片1eの長辺または短辺の何れから切り込んでも良い。特に、図5に示すように長辺の斜め下方向から斜め上方向に、孔10に向かって切り込むのが良い。また、孔10自体を芳香片1eの長辺または短辺の何れかに接触させて、一部を開放することにより、切り込み11としても良い。
【0037】
図6は芳香片1eを植物に取り付けた状態を示す斜視図であり、図7は取り付け部を拡大して示す拡大図である。図7に示すように芳香片1eは、芳香片1eの孔10の中に植物4の枝や茎を配置し、孔10の内周面が植物4の枝や茎に載置されて引っ掛かることにより、植物4自体に備え付けられる。
芳香片1eを植物4に取り付ける方法は極めて簡単で、芳香片1eの切り込み11から植物4の枝や茎を挿入し、枝や茎が孔10の中に配置されるまで移動させるだけである。特に図5に示すように、芳香片1eの長辺側外周から孔10に向かって、斜め下から斜め上方向に設けた切り込み11の場合には、枝や茎が切り込み11から抜け難いという利点を有する。
図6に示すように、芳香片1eは孔10と切り込み11からなる掛止部を有することにより、植物4に直接引っ掛けることができるため、芳香片1eの全面を空気中に晒すことが可能となる。そのため、芳香片1eを備えた鉢植え20eは、芳香片1aのように芳香片の一部を土3に挿し込む場合よりも、多くの芳香を空気中に放出させることができる。さらに、芳香片1eの全体に香料を含浸させ、全面を芳香部として構成することにより、芳香片1eの全面から、より多くの芳香を放出することができる。
【実施例4】
【0038】
図8(a)(b)は、図1に示した芳香片1aとは異なる形状の芳香片を示す斜視図である。図8(a)(b)に示す芳香片1f,1gは、実施例1の芳香片1aと同様な素材からなり、含浸させる香料等や製造方法については特に芳香片1aと異なる点は無い。芳香片1f,1gは、芳香片を特定のデザインの形状にして、芳香片の任意の場所に紐13を取り付けた点に特徴がある。
図8(a)に示す芳香片1fは、星型にデザインした芳香片である。芳香片1fは芳香片1aと同様に薄板状の素材からなり、外形を星の形に成形している。星型の天辺に孔12を設け、その孔12に輪状の紐13を取り付けている。紐13は伸縮可能なゴム紐でも良い。
一方、図8(b)の芳香片1gは、ハート型にデザインした芳香片である。芳香片1gも芳香片1fと同様に薄板状の素材からなり、外形をハートの形に成形している。芳香片1gでは、ハート型の天辺に輪状の掛け具14を設け、その掛け具14に輪状の紐13を取り付けている。掛け具14は輪部を有するねじ込み式のフックで、ねじ部分を芳香片1g本体にねじ込んで取り付ける。
【0039】
芳香片1f,1gは、紐13からなる掛止部を植物の枝や茎に引っ掛けることにより植物自体に取り付ける。
このように芳香片にデザインを施すことにより、購買者の視覚を魅了し、より購買意欲を高めることができる。また、植物を芳香片1f,1gによって装飾することも可能である。
芳香片1f,1gの形状は本実施例に限定されるものではなく、また、芳香片1f,1gに色彩を施すことにより、より購買者の視覚を魅了することもできる。
なお、図8(a)(b)では平板状の芳香片を例に示しているが、図11(b)に示す芳香片1bのように立体形状であっても良い。
【0040】
〔変形例1〕
図9(a)(b)は、図8に示した芳香片の変形例を示す斜視図である。芳香片1f,1gと同様な構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図9(a)(b)に示す芳香片1h,1iは、芳香片のデザインに関連のある香りを付けたことに特徴がある。例えば、図9(a)に示すようにバナナの形をした芳香片1hにはバナナの香りを使用する。また、図9(b)に示すようにみかんの形をした芳香片1iにはオレンジの香りを使用する。バナナの香りやオレンジの香りは、元の果実から抽出した天然香料をそのまま用いることもできるし、また人工的に作り上げた果実に似た人工香料であっても良い。
植物への取り付け方法は、芳香片1f,1gの場合と同様である。
芳香片1h,1iを植物に飾れば、鉢植えの植物に実が成っているような演出をすることができる。
【0041】
上記の通り変形例1に係る発明は、芳香を放出する芳香片であって、前記芳香片を土に埋め込むための埋没部、または、前記芳香片を植物に引っ掛けるための掛止部、の少なくとも何れか一方を有し、
前記芳香は、前記芳香片の形状のモチーフとなった元の物が通常有する香りと同一または類似する香りであることを特徴とする芳香片である。
【0042】
〔変形例2〕
図10は、図8に示した芳香片の変形例を示す斜視図である。芳香片1f,1gと同様な構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
芳香片1jはいわゆるネームプレートであり、名称部17、写真部18、説明部19を有する。名称部17には植物の名称を記載し、写真部18には植物の写真を掲載する。説明部19にはその植物の育成方法などの説明を記載する。ネームプレート型芳香片1jには、名称部17、写真部18、説明部19の全てを設ける必要はなく、少なくとも何れか1つを有していれば良い。
芳香片1jは、掲載した名称、写真、説明の植物の花が通常有する香りと同一または類似する香料を含浸している。香料は、植物の花から抽出した天然香料をそのまま用いることもできるし、また当該植物の花の香りに似せて人工的に作り上げた人工香料であっても良い。
芳香片1jはネームプレートであるため、通常は掲載された名称、写真、説明と対応する植物に備え付ける。芳香片1jの植物への取り付け方法は、芳香片1f,1gの場合と同様である。
植物の説明等を記載した芳香片1jを植物に取り付けることにより、その植物の説明と香りを同時に購買者に宣伝することができる。
【0043】
上記の通り変形例2に係る発明は、芳香を放出する芳香片であって、前記芳香片を土に埋め込むための埋没部、または、前記芳香片を植物に引っ掛けるための掛止部、の少なくとも何れか一方を有し、
前記芳香片には、植物の名称、写真、説明の少なくとも何れか1つが掲載されており、
前記芳香は、前記植物の花が通常有する香りと同一または類似する香りであることを特徴とする芳香片である。
【0044】
実施例3では孔と切り込みからなる掛止部を示し、実施例4では紐13からなる掛止部を示したが、掛止部の構造はこれらに限られるものではない。掛止部は、掛止部によって植物の枝や茎に芳香片を取り付けられる構造であれば良く、切り込みだけからなる掛止部や、紐の代わりに針金からなる掛止部でも良い。
【実施例5】
【0045】
図11(a)(b)は、図1に示した芳香片1aとは異なる形状の芳香片を示す斜視図である。図11(a)(b)に示す芳香片1k,1bは、実施例1の芳香片1aと同様な素材からなり、含浸させる香料等や製造方法については特に芳香片1aと異なる点は無い。芳香片1k,1bは、芳香片を特定のデザインの形状にして、棒状の埋没部15を設けた点に特徴がある。
埋没部15は、プラスチック棒やたけひごのような細い棒からなり、その上端に芳香片本体が取り付けられる。埋没部15は芳香片本体を支える支持部としても機能し、下端を土に挿し込むことにより、芳香片1k,1bを鉢植えに固定する。芳香片1k,1bを土に挿し込む作業者は、埋没部15を持って作業をすることができる。芳香片1k,1bによれば、作業者の手が芳香片本体に直接触れることがないため、香料が作業者の手に付着することがない。
また、埋没部15の長さや埋没量を適宜調整することにより、購買者の好みの高さに芳香片本体を固定することができる。
【0046】
なお、実施例1〜5を適宜組み合わせて使用できることは言うまでもない。例えば、実施例4の図10に示す芳香片11jに図4(b)に示す芳香片1dの概念を組み合わせ、芳香片11jに埋没部を設けることにより、土に挿し込む構造にしても良い。また、芳香片は、各実施例に示した掛止部と埋没部の少なくとも何れか一方を備えていれば良く、両方備えていても良い。
以上に説明した通り、本発明によれば、芳香片を土に挿し込んだり植物や植木鉢に取り付けたりして、芳香片を鉢植えに備え付けることにより、鉢植えの顧客吸引力を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
特殊なスティックに防虫液や甘い香りを吸収させることにより、花の生産段階における減農薬栽培が可能となり、また、花売り場において虫を寄せ付けずにスィーツの甘い香りで客を魅惑し、ニーズを広げ、集客力を高め消費拡大を図る。
【符号の説明】
【0048】
1a〜1k…芳香片
2…植木鉢
3…土
4…植物
5…植木鉢
6…植物
7…プラスチックフィルム
8…埋没部
10…孔
11…切り込み
12…孔
13…紐
14…掛け具
15…埋没部
16…ケーキ皿
17…名称部
18…写真部
19…説明部
20a,20b,20e…鉢植え。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香と虫が嫌いな香りを放出する芳香片であって、該芳香片を土に埋め込むための埋没部、または、該芳香片を植物に引っ掛けるための掛止部、の少なくとも何れか一方を有することを特徴とする芳香片。
【請求項2】
芳香を放出する芳香片であって、前記芳香片を土に埋め込むための埋没部、または、前記芳香片を植物に引っ掛けるための掛止部、の少なくとも何れか一方を有し、
前記芳香は、前記芳香片の形状のモチーフとなった元の物が通常有する香りと同一または類似する香りであることを特徴とする芳香片。
【請求項3】
芳香を放出する芳香片であって、前記芳香片を土に埋め込むための埋没部、または、前記芳香片を植物に引っ掛けるための掛止部、の少なくとも何れか一方を有し、
前記芳香片には、植物の名称、写真、説明の少なくとも何れか1つが掲載されており、
前記芳香は、前記植物の花が通常有する香りと同一または類似する香りであることを特徴とする芳香片。
【請求項4】
土が充填された植木鉢に植物が植えられた鉢植えにおいて、前記請求項1〜3の何れか1つに記載の芳香片を備えたことを特徴とする鉢植え。
【請求項1】
芳香と虫が嫌いな香りを放出する芳香片であって、該芳香片を土に埋め込むための埋没部、または、該芳香片を植物に引っ掛けるための掛止部、の少なくとも何れか一方を有することを特徴とする芳香片。
【請求項2】
芳香を放出する芳香片であって、前記芳香片を土に埋め込むための埋没部、または、前記芳香片を植物に引っ掛けるための掛止部、の少なくとも何れか一方を有し、
前記芳香は、前記芳香片の形状のモチーフとなった元の物が通常有する香りと同一または類似する香りであることを特徴とする芳香片。
【請求項3】
芳香を放出する芳香片であって、前記芳香片を土に埋め込むための埋没部、または、前記芳香片を植物に引っ掛けるための掛止部、の少なくとも何れか一方を有し、
前記芳香片には、植物の名称、写真、説明の少なくとも何れか1つが掲載されており、
前記芳香は、前記植物の花が通常有する香りと同一または類似する香りであることを特徴とする芳香片。
【請求項4】
土が充填された植木鉢に植物が植えられた鉢植えにおいて、前記請求項1〜3の何れか1つに記載の芳香片を備えたことを特徴とする鉢植え。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−239723(P2011−239723A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114432(P2010−114432)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(505342830)株式会社ゲブラナガトヨ (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(505342830)株式会社ゲブラナガトヨ (1)
【Fターム(参考)】
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