説明

植物用養分補給剤及びその製造方法

【課題】
本発明は、植物に必要な養分の補給を容易且つ確実に行うことができる植物用養分補給剤及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明の植物用養分補給剤は、ヒドロキシプロピル基の置換モル数が0.1〜0.3のハイドロキシプロピルメチルセルロースと、クエン酸カルシウムと、アスパラギン酸カルシウムと、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム及びクエン酸ナトリウムの混合物と、多糖類とが配合されており、養分補給を目的とする植物の実や葉に直接散布されて使用される。また、ソルビタン脂肪酸エステルがさらに配合されていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物用養分補給剤及びその製造方法に関し、特に、植物の実や葉の表皮から糖や酸などの養分を吸収させる植物用養分補給剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、野菜や果物等の植物の美味しさは、その糖度と酸味によってほとんどが決まる。植物は、成長過程においてそれぞれの植物に適応する養分が十分に補給されて初めてそれぞれの植物の味、風味等が得られる。
【0003】
植物が植えられている土壌には必要な養分が含まれており、土壌から必要な養分が植物に吸収されていた(以下、従来例1という)。
【0004】
また、ミネラル成分等の養分を植物の葉の表皮に散布して、表皮から直接的に養分を補給し、吸収させる方法が知られている(以下、従来例2という 特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−203832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来例1では、連作、土地環境の劣化、ハウス栽培の増加等の影響に伴い、十分な栄養分の供給が困難になってきており、有機肥料を使っても長年の連作により土壌には養分が不足するようになってきている。そのため、野菜や果物の味に風味や甘味が乏しくなってきているという課題がある。
【0006】
従来例2では、葉の表皮からの養分の吸収が容易でなく、降雨により流されてしまう。そのため、雨が上がる度に、散布を繰り返し行わなければならず、煩雑であり、工数がかかり、使用コストが高くなるという課題がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、植物に必要な養分の補給を容易且つ確実に行うことができる植物用養分補給剤及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の植物用養分補給剤は、ヒドロキシプロピル基の置換モル数が0.1〜0.3のハイドロキシプロピルメチルセルロースと、クエン酸カルシウムと、アスパラギン酸カルシウムと、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム及びクエン酸ナトリウムの混合物と、多糖類とが配合されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の植物用養分補給剤は、ソルビタン脂肪酸エステルがさらに配合されていてもよい。
【0010】
本発明の第1の植物用養分補給剤の製造方法は、
ヒドロキシプロピル基の置換モル数が0.1〜0.3のハイドロキシプロピルメチルセルロースの0.2%水溶液からなる第1の水溶液を用意するステップと、
クエン酸カルシウムの0.1%水溶液からなる第2の水溶液を用意するステップと、
アスパラギン酸カルシウムの0.2%水溶液からなる第3の水溶液を用意するステップと、
塩化マグネシウム60%、塩化ナトリウム35%及びクエン酸ナトリウム5%の混合物の0.4%水溶液からなる第4の水溶液を用意するステップと、
多糖類を用意するステップと、
前記第2の水溶液、第3の水溶液及び第4の水溶液をそれぞれ20±5%、40±5%、40±5%の割合で混合した第5の水溶液を作るステップと、
前記第1の水溶液と、第5の水溶液と、多糖類とを、それぞれ50〜60%、3〜5%、33〜40%の割合で配合するステップと、
からなることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の第2の植物用養分補給剤の製造方法は、
ヒドロキシプロピル基の置換モル数が0.1〜0.3のハイドロキシプロピルメチルセルロースの0.2%水溶液からなる第1の水溶液を用意するステップと、
クエン酸カルシウムの0.1%水溶液からなる第2の水溶液を用意するステップと、
アスパラギン酸カルシウムの0.2%水溶液からなる第3の水溶液を用意するステップと、
塩化マグネシウム60%、塩化ナトリウム35%及びクエン酸ナトリウム5%の混合物の0.4%水溶液からなる第4の水溶液を用意するステップと、
多糖類を用意するステップと、
前記第2の水溶液、第3の水溶液及び第4の水溶液をそれぞれ20±5%、40±5%、40±5%の割合で混合した第5の水溶液を作るステップと、
ソルビタン脂肪酸エステルの30%水溶液からなる第6の水溶液を用意するステップと、
前記第1の水溶液と、第5の水溶液と、多糖類と、第6の水溶液とを、それぞれ50〜60%、3〜5%、33〜40%、1%の割合で配合するステップと、
からなることを特徴とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態例を説明する。
【0013】
本発明の実施形態例に係る植物用養分補給剤は、ヒドロキシプロピル基の置換モル数が0.1〜0.3のハイドロキシプロピルメチルセルロースと、クエン酸カルシウムと、アスパラギン酸カルシウムと、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム及びクエン酸ナトリウムの混合物と、多糖類とが配合されていることを特徴とするものである。
【0014】
多糖類としては、スクロース(ショ糖)、グルコース(ブドウ糖),フルクトース(果糖),胚芽糖,ソルビトール等が使用される。
【0015】
本発明の実施形態例に係る植物用養分補給剤は、養分補給を目的とする植物の実や葉に直接散布されて使用される。散布については、当該植物の収穫前に10日おきに2〜4回行うのが好ましい。
【0016】
通常、植物は収穣期に近づくと急激に糖分が増加していく。糖分としてスクロース(ショ糖),グルコース(ブドウ糖),フルクトース(果糖),胚芽糖,ソルビトール等であるが、植物が貯蔵中に組織が変化して果糖とブドウ糖が変化していく。酸味はリンゴ酸,クエン酸,酒石酸などの有機酸で、植物の呼吸に使われ、貯蔵中に減少する。
【0017】
本発明の実施形態例に係る植物用養分補給剤が植物の実や葉の表皮に付着すると、当該植物用養分補給剤に含まれるクエン酸により、植物の表皮細胞が活性化し柔らかくなり、呼吸しやすくなる。
【0018】
また、当該植物用養分補給剤に含まれるアルギン酸はアミノ酸の一種で多糖類と一緒に吸収しやすく、しかもショ糖を果糖に変えやすくする。
【0019】
また、当該植物用養分補給剤に含まれるマグネシウム,カルシウムは植物細胞の活性化,炭酸同化作用に必要な要素である。
【0020】
さらに、当該植物用養分補給剤に含まれる多糖類が果糖,ブドウ糖,ソルビトールに植物体内で、アルギン酸ミネラル,クエン酸の働きで容易に変化する。
【0021】
本発明の実施形態例に係る植物用養分補給剤を使用して養分を補給する植物としては、例えば、トマト,スイカ,メロン,シロウリ,イチゴ,ニンジン,カンキツ,温州ミカン,晩柑,ネーブル,ポンカン,タンカン,ハッサク,甘夏,ブンタン,ミカン,リンゴ,ナシ,西洋ナシ,モモ,ウメ,ブドウ,カキ,スモモ,アンズ,イチジク,サクランボ,ビワ,パイナップル,マンゴー,キウイ等である。
【0022】
本発明者は、本発明の実施形態例に係る植物用養分補給剤を使用して、植物の糖分を吸収させる実験を行い、次のような優れた効果があることがわかった。
【0023】
(1)トマトの糖度が5〜6度(光学糖度計による)が7〜8度になる。
【0024】
(2)柑橘類の糖度が6〜7度が8〜9度になる。
【0025】
(3)イチゴの糖度が11〜12度が13〜14度になる。
【0026】
(4)スイカ,メロン,サクランボなども2〜3度アップする。
【0027】
本発明の実施形態例に係る植物用養分補給剤は、次のようなステップ(工程)により製造される。
【0028】
まず、ヒドロキシプロピル基の置換モル数が0.1〜0.3のハイドロキシプロピルメチルセルロースの0.2%水溶液からなる第1の水溶液、クエン酸カルシウムの0.1%水溶液からなる第2の水溶液、アスパラギン酸カルシウムの0.2%水溶液からなる第3の水溶液、塩化マグネシウム60%、塩化ナトリウム35%及びクエン酸ナトリウム5%の混合物の0.4%水溶液からなる第4の水溶液、スクロース、グルコース等の多糖類をそれぞれ用意する。
【0029】
次いで、第2の水溶液、第3の水溶液及び第4の水溶液をそれぞれ20±5%、40±5%、40±5%の割合で混合した第5の水溶液を作る。
【0030】
最後に、第1の水溶液と、第5の水溶液と、多糖類とを、それぞれ50〜60%、3〜5%、33〜40%の割合で配合する。
【0031】
本発明の他の実施形態例として、ソルビタン脂肪酸エステルがさらに配合されていてもよい。ソルビタン脂肪酸エステルは界面活性剤であるので、植物の表皮に毛が生えていても、散布時に毛により弾かれることなく、付着することができる。また、ソルビタン脂肪酸エステルは、ハイドロキシプロピルメチルセルロースと分離することなく混合でき、人が食しても安全である。
【0032】
本発明の他の実施形態例に係る植物用養分補給剤を使用して養分を補給する植物としては、上記に例示したものに使用できるが、特に、表皮に毛が生えているモモ,スモモ,アンズ,イチジク,ビワ,マンゴー,キウイ等に使用するのが好ましい。
【0033】
本発明の他の実施形態例に係る植物用養分補給剤は、次のようなステップ(工程)により製造される。
【0034】
まず、ヒドロキシプロピル基の置換モル数が0.1〜0.3のハイドロキシプロピルメチルセルロースの0.2%水溶液からなる第1の水溶液、クエン酸カルシウムの0.1%水溶液からなる第2の水溶液、アスパラギン酸カルシウムの0.2%水溶液からなる第3の水溶液、塩化マグネシウム60%、塩化ナトリウム35%及びクエン酸ナトリウム5%の混合物の0.4%水溶液からなる第4の水溶液、スクロース、グルコース等の多糖類、ソルビタン脂肪酸エステルの30%水溶液からなる第6の水溶液をそれぞれ用意する。
【0035】
次いで、第2の水溶液、第3の水溶液及び第4の水溶液をそれぞれ20±5%、40±5%、40±5%の割合で混合した第5の水溶液を作る。
【0036】
最後に、第1の水溶液と、第5の水溶液と、多糖類と、第6の水溶液とを、それぞれ50〜60%、3〜5%、33〜40%、1%の割合で配合する。
【0037】
以上のように、本発明の実施形態例に係る植物用養分補給剤によれば、次のような効果や利点を奏する。
【0038】
(1)植物の実や葉に直接散布することにより、植物に必要な養分の補給を容易且つ確実に行うことができる。
【0039】
(2)特殊肥料の葉面散布剤として、肥料取締法の第22条第1項、同法第23条の規定に抵触することなく、使用できる。
【0040】
(3)雨が降っても流れ落ちにくいので、露地で使用しても持続性がある。
【0041】
(4)従来の植物は、色は良好であるが美味しさに欠けているものが多いが、本発明を使用することにより、美味しさが増し消費者に喜ばれる。
【0042】
(5)従来のように土壌から吸収させて糖度アップを図る場合に比べ、より早く確実に、かつ安価に糖度アップを図ることができる。
【0043】
(6)本発明は、人が食しても安全・無害である。
【0044】
本発明は、上記実施の形態に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内において、種々の変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシプロピル基の置換モル数が0.1〜0.3のハイドロキシプロピルメチルセルロースと、クエン酸カルシウムと、アスパラギン酸カルシウムと、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム及びクエン酸ナトリウムの混合物と、多糖類とが配合されていることを特徴とする植物用養分補給剤。
【請求項2】
ソルビタン脂肪酸エステルがさらに配合されていることを特徴とする請求項1に記載の植物用養分補給剤。
【請求項3】
ヒドロキシプロピル基の置換モル数が0.1〜0.3のハイドロキシプロピルメチルセルロースの0.2%水溶液からなる第1の水溶液を用意するステップと、
クエン酸カルシウムの0.1%水溶液からなる第2の水溶液を用意するステップと、
アスパラギン酸カルシウムの0.2%水溶液からなる第3の水溶液を用意するステップと、
塩化マグネシウム60%、塩化ナトリウム35%及びクエン酸ナトリウム5%の混合物の0.4%水溶液からなる第4の水溶液を用意するステップと、
多糖類を用意するステップと、
前記第2の水溶液、第3の水溶液及び第4の水溶液をそれぞれ20±5%、40±5%、40±5%の割合で混合した第5の水溶液を作るステップと、
前記第1の水溶液と、第5の水溶液と、多糖類とを、それぞれ50〜60%、3〜5%、33〜40%の割合で配合するステップと、
からなることを特徴とする植物用養分補給剤の製造方法。
【請求項4】
ヒドロキシプロピル基の置換モル数が0.1〜0.3のハイドロキシプロピルメチルセルロースの0.2%水溶液からなる第1の水溶液を用意するステップと、
クエン酸カルシウムの0.1%水溶液からなる第2の水溶液を用意するステップと、
アスパラギン酸カルシウムの0.2%水溶液からなる第3の水溶液を用意するステップと、
塩化マグネシウム60%、塩化ナトリウム35%及びクエン酸ナトリウム5%の混合物の0.4%水溶液からなる第4の水溶液を用意するステップと、
多糖類を用意するステップと、
前記第2の水溶液、第3の水溶液及び第4の水溶液をそれぞれ20±5%、40±5%、40±5%の割合で混合した第5の水溶液を作るステップと、
ソルビタン脂肪酸エステルの30%水溶液からなる第6の水溶液を用意するステップと、
前記第1の水溶液と、第5の水溶液と、多糖類と、第6の水溶液とを、それぞれ50〜60%、3〜5%、33〜40%、1%の割合で配合するステップと、
からなることを特徴とする植物用養分補給剤の製造方法。

【公開番号】特開2006−193498(P2006−193498A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−9605(P2005−9605)
【出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【出願人】(598028936)カラーケミカル工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】