説明

植物系材料の成形方法及びその成形体

【課題】植物系材料を成形して成形体を製造する方法及びその成形体を提供する。
【解決手段】植物系材料を圧力を加えることにより深底構造等の成形体を製造する方法であって、植物系材料を金型に供給して加圧し、金型内の所定の自由空間に構成細胞を移動させて構成細胞間に剪断力を作用させて該細胞の相互位置関係を変化させて変形させ、金型内の上記空間に充填し、圧縮力を加えて賦形して一体化することにより所望の深底構造等を有する成形体とすることを特徴とする該深底構造等を有する成形体の製造方法、及びその成形体製品。
【効果】植物系材料を用いて、金型を利用して、成形体の熱分解を抑え、原材料の風合いを成形体に反映させて、深底構造等を有する成形体を製造し、提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物系材料の成形方法及びその成形体に関するものであり、更に詳しくは、植物系材料を型に供給して加圧し、型内に形成された所定の自由空間に構成細胞を移動させて構成細胞に剪断力を作用させて相互位置関係を変化させて変形させ、型内の上記空間に充填し、圧縮力を加えて賦形、一体化することにより所望の成形体とする該成形体の成形方法及びその製品に関するものである。本発明は、再生産可能な資源としてその活用が高く期待されている木材や竹等の植物系材料を、化学薬品等を使用することなく、簡便な装置及び工程により、三次元形状に成形する植物系材料の新規成形技術を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
木材や竹等の植物系材料は、再生産が可能であり、埋蔵資源である石油を原料として作られるプラスチックに替わる材料として、最近注目されている材料である。該植物系材料を所望する三次元形状に成形するために、先行技術として、例えば、圧縮成形木材及びそれを用いた電子機器の外装材に関して、板状の木材を金型で加圧して成形する方法(特許文献1)や、圧縮木材の成形方法として、棒状の木材を金型で加圧して成形する方法(特許文献2)、また、木質系の熱硬化性樹脂成形材料の成形方法として、粉末化した木材に樹脂を混入して流動性を持たせ、これを金型に流し込み、冷却・固化させる方法(特許文献3)、等が提案されている。
【0003】
しかし、上記した板状や棒状の木材を金型で加圧して成形する方法では、材料を構成する細胞が加圧により圧縮されることを利用して変形させるため、その変形量に制約があり、製作可能な形状が限定されるという問題がある。また、上記した木材粉末を原料とする方法では、木材の粉末化に多大な時間とエネルギーを要し、更に、混入する樹脂の使用によって環境負荷が増大するという問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開2006−076055号公報
【特許文献2】特開2004−009567号公報
【特許文献3】特開2002−146195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上記従来技術の諸問題を確実に解決し得るとともに、木材や竹等の植物系材料から、特殊な装置及び工程、又は化学薬品等を用いることなく、簡便の手段及び方法で、効率よく所望の形状に成形することを可能とする新しい植物系材料の成形技術を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、植物系材料を金型に供給してプレス手段で加圧し、金型内の所定の自由空間に構成細胞を移動させて構成細胞間に剪断力を作用させて細胞の相互位置関係を変化させて変形させ、金型内の上記空間に充填し、圧縮力を加えて賦形して一体化することにより、例えば、深底構造等を有する成形体とすることで、簡便な装置及び工程により、三次元形状の所望の形状に成形できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、竹、木材等の植物系材料の新規成形体の製造方法及びその成形体を提供することを目的とするものである。また、本発明は、上記成形体の製造方法で作製した深底構造等を有し、木材、竹等の植物系材料の本来の風合いを成形体に反映させた成形体製品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)植物系材料を圧力を加えることにより成形して成形体を製造する方法であって、植物系材料を金型に供給してプレス手段で加圧し、金型内で所定の自由空間に構成細胞を移動させて構成細胞間に剪断力を作用させて該細胞の相互位置関係を変化させて変形させ、金型内の上記空間に充填し、圧縮力を加えて賦形して一体化することにより所望の成形体とすることを特徴とする成形体の製造方法。
(2)成形前の植物系材料が、単一又は複数のバルク体として金型に供給される、前記(1)に記載の成形体の製造方法。
(3)成形前の植物系材料の配置を調整することにより、得られる成形体の繊維配向を制御する、前記(1)に記載の成形体の製造方法。
(4)成形時の材料の流れを制御することにより、得られる成形体の組織配向を制御する、前記(1)に記載の成形体の製造方法。
(5)植物系材料を常温又は加熱下で加圧する、前記(1)に記載の成形体の製造方法。
(6)成形の温度、圧力、時間及び原料含水率を調整することにより、成形体の熱分解を抑え、原料の風合いを成形体に反映させる、前記(1)に記載の成形体の製造方法。
(7)植物系材料が、竹、又は木材である、前記(1)に記載の成形体の製造方法。
(8)カップ状の深底構造を有する成形体を作製する、前記(1)に記載の成形体の製造方法。
(9)金型を冷却することなく金型から成形体を取り出す、前記(1)に記載の成形体の製造方法。
(10)植物系材料を原料に用いて成形された深底構造の成形体であって、1)原料の熱分解が抑えられている、2)原料の風合いが成形体に反映されている、3)カップ状の深底構造を有している、ことを特徴とする成形体。
(11)植物系材料が、竹、又は木材である、前記(10)に記載の成形体。
【0008】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、植物系材料を圧力を加えることにより成形して深底構造等の成形体を製造する方法であって、植物系材料を金型に供給してプレス手段で加圧し、金型内で所定の自由空間に構成細胞を移動させて構成細胞に剪断力を作用させて該細胞の相互位置関係を変化させて変形させ、金型内の上記空間に充填し、圧縮力を加えて賦形して一体化することにより所望の成形体とすることを特徴とするものである。本発明では、成形前の植物系材料が、単一又は複数のバルク体として金型に供給されること、成形前の植物系材料の配置を調整することにより、得られる成形体の繊維配向を制御すること、を好ましい実施の態様としている。
【0009】
また、本発明では、成形時の材料の流れを制御することにより、得られる成形体の繊維配向を制御すること、植物系材料を常温又は加熱下で加圧すること、成形の温度、圧力、時間及び原料含水率を調整することにより、成形体の熱分解を抑え、原料の風合いを成形体に反映させること、植物系材料が、竹、又は木材であること、カップ状の深底構造を有する成形体を作製すること、更に、金型を冷却することなく金型から成形体を取り出すこと、を好ましい実施の態様としている。
【0010】
本発明は、上述のように、上記植物系材料を金型に供給してプレス手段で加圧し、金型内で所定の自由空間に構成細胞を移動させて構成細胞に剪断力を作用させて該細胞の相互位置関係を変化させることにより全体形状を大きく変形させて、金型内の上記空間に充填し、圧縮力を加えて賦形して一体化することにより所望の形状の成形体とすることを特徴とするものである。本発明では、植物系材料を圧力を加えることにより成形して深底構造等の成形体とするが、この場合、成形法としては、材料を型に押し込む成形法であれば全て適用可能であり、例えば、材料を加圧方向と反対の方向へと変形させて成形する後方押し出し成形法、材料を加圧方向と同一方向へ移動させて成形する前方押し出し成形法が例示されるが、これに制限されるものではなく、これらと同等ないし類似の成形法や、その他深底成形等が可能な成形法であれば同様に使用することができる。ここで、構成細胞に剪断力を作用させて該細胞の相互位置関係を変化させるとは、細胞間に剪断力を加え、細胞と細胞をその界面でずらし、細胞間の位置関係を変化させ、全体として大きな変形を与えることを意味する。
【0011】
本発明において、植物系材料とは、太陽エネルギーと水、土、及び空気を使って植物が合成した再生可能な有機性資源を意味する。本発明の原料である、植物系材料としては、特に限定されることはなく、本発明は、植物系材料全般に対して適用可能であるが、具体的には、例えば、木材、竹、草本、農業廃棄物が特に好適な材料として例示される。
【0012】
本発明の成形体の製造方法によると、金型内で所定の自由空間に材料を構成する細胞を移動させて該細胞の相互位置関係を変化させて変形させるため、材料は金型に投入できる大きさであれば、その形状は特に制限されるものではない。また、成形前の植物系材料が、複数に分割、分離していても、成形過程で材料が細胞レベルで乖離し、成形後には一体化するため、成形前の植物系材料は、単一又は複数のバルク体として金型に供給することが可能であり、該植物系材料が単一である場合も複数に分割、分離している場合も、本発明の成形体の製造方法では同様に適用可能である。
【0013】
本発明の成形体の製造方法を、繊維構造を持つ植物系材料に適用した場合、成形過程で繊維がほとんど破壊することがないため、成形体に繊維構造を持たせることが可能である。また、成形前の材料の配置が成形後の繊維配向に影響を与えるため、成形前の材料配置により成形体の繊維配向を制御することができる。
【0014】
繊維は、流れの方向に配向し易いため、成形時の金型内での材料の流れ(流れる方向)を制御することにより、得られる成形体の繊維配向を制御することができる。例えば、繊維を縦に配向させたい場合は、材料を成形体の右から左に充填して成形するのではなく、材料を上から下に充填させることにより繊維を縦に配向させることができる。この場合、例えば、金型に、成形時の材料の流れ方を制御する突條等の任意の制御手段を配置することによって実現することができる。
【0015】
次に、本発明における植物系材料の成形体の製造方法について説明する。本発明では、植物系材料を金型に供給してプレス手段で植物系材料に常温又は加熱下で圧力を加えることにより、金型内で所定の自由空間に構成細胞を移動させて構成細胞に剪断力を作用させて該細胞の相互位置関係を変化させて変形させ、金型内の上記自由空間に充填し、圧縮力を加えて賦形して一体化することにより所望の形状の成形体とすることを最大の特徴としている。
【0016】
本発明の成形体の製造方法による場合、材料の変形は、細胞の圧縮に加え、細胞を移動させて構成細胞間に剪断力を加え、細胞と細胞をその界面でずらし、細胞間の位置関係を変化させることによっても引き起こされるため、従来、通常の板状木材、棒状木材で行われていた、細胞の圧縮のみを利用した成形法に比べ、非常に大きな変形が可能となる。
【0017】
植物系材料として、例えば、竹を用いて成形を行うには、例えば、図1に示されるシリンダーと、該シリンダー内に挿入される所定の自由空間を形成した段付ポンチにスペーサーをセットした金型を使用して、竹を200℃に加熱した金型に投入し、200MPaで加圧する方法が例示される。圧力を受けた竹は、構成細胞の相互位置関係を変化させて変形し、金型内の所定の自由空間に充填される。充填が完了したら、解圧して成形体を取り出す(図1)。
【0018】
図2に、材料の竹が金型内で変形し、最終的に金型内の所定の空間に充填され、所望の形状に成形される様子を示す。成形に際して、細胞の圧縮による変形のみならず、構成細胞の相互位置関係が変化することによる変形が起こっている様子が分かる。また、2個の原材料バルク体が、段階的に賦形され、金型内で最終的に一体化して深底構造が形成されることが分かる。
【0019】
本発明の成形体の製造方法は、成形温度、成形圧力、原料含水率、成形時間を設定することにより、成形体の性状等を任意に制御することができる。例えば、低温、高荷重、短時間の成形では、成形体の熱分解を抑え、植物系材料の持つ原材料の本来の風合いを成形体に反映させることができる。一方、本発明では、高温での成形条件で、材料をある程度熱分解させることにより材料を軟化させ、成形に必要な荷重を低減することも適宜可能である。
【0020】
従来の植物系材料の成形法では、竹、木材等の植物系材料を金型に供給して、熱分解を抑制して、原材料の風合いを成形体に反映させて、深底構造を有する成形体に成形加工することは困難であった。これに対し、本発明は、植物系材料を加圧して圧縮(プレス)するだけではなく、植物系材料の構成細胞の相互位置関係を変化させて変形させ、金型体の所定の自由空間に充填し、圧縮圧を加えて賦形して一体化することで、成形体の熱分解を抑え、原料の風合いを成形体に反映させて、深底構造等の所望の形状を有する成形体を製造し、提供することを可能とするものである。
【0021】
本発明では、植物系材料を圧力を加えることにより、例えば、深底構造を有する構造体を製造するため、好適には、図1に示されるシリンダーと該シリンダー内に、挿入して材料を加圧するための任意の成形用の自由空間を形成した段付ポンチで構成される成形手段と、これに付属する加圧手段及び加熱手段を配設した装置が用いられるが、これらの大きさ、具体的な形状、構造及び成形用の自由空間の形状等は、その目的製品に応じて任意に設計することができる。
【0022】
また、本発明では、植物系材料の種類、成形金型に供給する原料バルク体の形状及び大きさ、その含水率、成形の圧力、温度時間等の成形条件は、植物系材料の種類、成形体の形状及び構造、深底の種類、要求される原料の風合い等に応じて任意に設定することができる。本発明では、例えば、図2に示されるような深底構造を有する成形体は、180〜200℃の加熱、200MPaの圧力条件で、熱分解を抑制して、3〜5秒の単時間で成形体を製造することが可能であり、本発明は、従来法と比べて、高品質の深底構造等を有する成形体をきわめて短時間で製造することができる利点を有する。
【0023】
本発明の方法では、原材料を金型内に供給してプレス手段で加圧するが、この場合、通常のプレス成形では、金型内で原材料に対してプレス手段を直接的に当接させてプレス付加を行う方式が採用され、原材料は、金型及びプレス手段の間で直接的に加圧及び圧縮されて成形される。これに対して、本発明では、金型及び/又はプレス手段に原材料が逃げる(移動できる)所定の自由空間を形成しておくことで、金型及びプレス手段の間の直接的な加圧及び圧縮作用と、上記所定の自由空間における間接的な上記原料を構成する細胞の移動及び圧縮作用が働くので、金型及びプレス手段による原材料の直接的な加圧及び圧縮と、上記所定の自由空間における原材料細胞の移動及び圧縮による成形が同時的又は段階的に行われる。
【0024】
このように、本発明では、金型及びプレス手段による原材料の直接的な加圧及び圧縮作用による成形と、上記所定の自由空間における間接的な加圧による原材料の移動及び圧縮作用による成形とが一体的に行われるため、金型及び/又はプレス手段に予め所望の形状及び構造の自由空間を形成しておくことで、その形状及び構造に一体成形された成形体を作製することが可能となる。
【0025】
本発明の方法は、成形手法としては、従来、材料の塑性変形を利用した成形方法として知られている手法であるが、該方法は、例えば、樹脂等の可塑性の高い材料や流動性の高い材料に適用される成形手法であって、竹や木材のような植物系材料に対しては適用し得ないと考えられていた成形手法であり、本発明者らは、成形の圧力、温度、原料含水率、処理時間等の条件を種々検討した結果、これらの植物系材料であっても、過度の熱分解を抑制して、原材料の風合いを付与した形で任意の形態に成形体を製造できることを見出し、植物系材料の新しい成形技術として確立されるに至ったものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)植物系材料を簡便な手法で効率よく成形する方法及びその成形体を提供することができる。
(2)成形前の植物系材料が、単一であっても複数に分割、分離していても成形過程で一体化させることができる。
(3)成形前の植物系材料配置により、得られる成形体の繊維配向を制御することができる。
(4)本発明で使用する植物系材料は、循環型資源である植物系材料のみを原料としているため、資源問題、廃棄物問題に対する根本的な解決策となり得る。
(5)植物系材料を原料に用いて成形された、原料の風合いが反映されている深底成形体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0028】
竹の棹部から、直径29mm、厚さ約15mmの材料を切り出して気乾状態(含水率約15%)として実験に供した。成形には所定の自由空間を形成した段付ポンチ、シリンダー、及びスペーサーから構成される金型による後方押し出し成形法を用いた(図1)。180℃に加熱したシリンダー内に材料1個を投入し、上記段付ポンチにより150MPaで加圧し変形させた。その後、金型を冷却せずに成形体を取り出してカップ状の成形体を得た。なお、成形に要した時間は約3秒であった。また、得られた成形体は、ほとんど変色せず、竹の風合いを保っていた。
【実施例2】
【0029】
竹の棹部から、直径29mm、厚さ約10mmの材料を切り出して気乾状態(含水率約15%)とし、粉末化することなく実験に供した。成形には所定の自由空間を形成した段付ポンチ、シリンダー、及びスペーサーから構成される金型による後方押し出し成形法を用いた(図1)。180℃に加熱したシリンダー内に材料2個を重ねて投入し、上記段付ポンチにより150MPaで加圧し変形させた。その後、金型を冷却せずに成形体を取り出した。2個の材料は一体化し、カップ状の成形体を得た。なお、成形に要した時間は約3秒であった。また、得られた成形体は、ほとんど変色せず、竹の風合いを保っていた。
【実施例3】
【0030】
竹の棹部から、直径29mm、厚さ約10mmの材料を切り出して気乾状態(含水率約15%)とし、粉末化することなく実験に供した。成形には所定の自由空間を形成した段付ポンチ、シリンダー、及びスペーサーから構成される金型による後方押し出し成形法を用いた。180℃に加熱したシリンダー内に材料2個を、繊維方向が直行するように重ねて投入し、上記段付ポンチにより150MPaで加圧し変形させた。その後、金型を冷却せずに成形体を取り出した。2個の材料は一体化し、カップ状の成形体を得た。なお、成形に要した時間は約3秒であった。また、材料投入時の繊維方向が、得られた成形体内の繊維の配向に影響を及ぼしている様子が観察された(図3)。成形体は、ほとんど変色せず、竹の風合いを保っていた。
【実施例4】
【0031】
スギの辺材から得られた鋸屑10gを気乾状態(含水率約15%)とした。成形には所定の自由空間を形成した段付ポンチ、シリンダー、及びスペーサーから構成される金型による後方押し出し成形法を用いた(図1)。200℃に加熱したシリンダー内に鋸屑を投入し、上記段付ポンチにより200MPaで加圧し変形させた。その後、金型を冷却せずに成形体を取り出した。粉末は一体化し、カップ状の成形体を得た。なお、成形に要した時間は約5秒であった。また、得られた成形体は、ほとんど変色せず、木材の風合いを保っていた。
【実施例5】
【0032】
スギの辺材から、直径29mm、厚さ20mmの材料を切り出して気乾状態(含水率約15%)とし、粉末化することなく実験に供した。成形には所定の自由空間を形成した段付ポンチ、シリンダー、及びスペーサーから構成される金型による後方押し出し成形法を用いた。200℃に加熱したシリンダー内に材料2個を重ねて投入し、上記段付ポンチにより200MPaで加圧し変形させた。その後、金型を冷却せずに成形体を取り出した。なお、成形に要した時間は約5秒であった。また、2個の材料は一体化し、カップ状の成形体を得た。得られた成形体は、ほとんど変色せず、木材の風合いを保っていた。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上詳述したように、本発明は、植物系材料の成形体の製造方法及びその成形体に係るものであり、植物系材料を型に供給して加圧して変形させ、型内の所定の自由空間に構成細胞を移動させて充填し、圧縮力を加えて賦形して一体化することにより、複雑な三次元形状を付与した所望の深底構造等を有する成形体を製造し、提供することができる。本発明は、植物系材料を原料として、特に、深底構造を有し、原料の風合いを反映させた成形体を製造し、提供することを可能とするものである。本発明により、石油を原料として作られるプラスチック製品に代替することができる、環境・資源問題に対応した、新しい植物系材料の成形体の製造技術及びその製品を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の成形体の製造方法の一例を示す。
【図2】材料が構成細胞の相互位置関係を変化させながら変形して成形品になる過程の一例を示す。
【図3】原料の繊維配向が、成形体の繊維配向に影響を与えている様子を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物系材料を圧力を加えることにより成形して成形体を製造する方法であって、植物系材料を金型に供給してプレス手段で加圧し、金型内で所定の自由空間に構成細胞を移動させて構成細胞間に剪断力を作用させて該細胞の相互位置関係を変化させて変形させ、金型内の上記空間に充填し、圧縮力を加えて賦形して一体化することにより所望の成形体とすることを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項2】
成形前の植物系材料が、単一又は複数のバルク体として金型に供給される、請求項1に記載の成形体の製造方法。
【請求項3】
成形前の植物系材料の配置を調整することにより、得られる成形体の繊維配向を制御する、請求項1に記載の成形体の製造方法。
【請求項4】
成形時の材料の流れを制御することにより、得られる成形体の組織配向を制御する、請求項1に記載の成形体の製造方法。
【請求項5】
植物系材料を常温又は加熱下で加圧する、請求項1に記載の成形体の製造方法。
【請求項6】
成形の温度、圧力、時間及び原料含水率を調整することにより、成形体の熱分解を抑え、原料の風合いを成形体に反映させる、請求項1に記載の成形体の製造方法。
【請求項7】
植物系材料が、竹、又は木材である、請求項1に記載の成形体の製造方法。
【請求項8】
カップ状の深底構造を有する成形体を作製する、請求項1に記載の成形体の製造方法。
【請求項9】
金型を冷却することなく金型から成形体を取り出す、請求項1に記載の成形体の製造方法。
【請求項10】
植物系材料を原料に用いて成形された深底構造の成形体であって、(1)原料の熱分解が抑えられている、(2)原料の風合いが成形体に反映されている、(3)カップ状の深底構造を有している、ことを特徴とする成形体。
【請求項11】
植物系材料が、竹、又は木材である、請求項10に記載の成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−36941(P2008−36941A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213305(P2006−213305)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】