植物細胞内で得られる組換えA型肝炎ウイルス抗原
本発明は、植物細胞中で得られる組換えA型肝炎ウイルス抗原に関する。より詳しくは、本発明は、キューバで単離されていたM2株を使用する、A型肝炎ウイルス(HAV)ゲノムの改変断片に基づく遺伝子構築物の生成に関する。適切な位置及び調節シグナルと融合した前記断片のヌクレオチド配列はトランスジェニック植物中で発現し、五量体及び/又は中空被覆物を含む組換えHAV抗原が生じ、これによって免疫応答を発生させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジーの一部門に関し、より具体的には、トランスジェニック植物細胞中での組換えタンパクの発現、及び抗原ワクチンとしてのその植物の使用に関する。具体的には、キューバで単離されたM2株由来HAVゲノムの改変断片の発現に由来する、トランスジェニック植物内で得られる組換えA型肝炎ウイルス抗原が示される。
【0002】
また、様々な方法で接種した後の動物における免疫応答を発生させるのにこの抗原が有用であることも実証される。
【背景技術】
【0003】
HAVゲノムは、極性が正であるシンプル鎖(simple strain)RNAである。これは、約7.5kbであり、253kDaのポリタンパクをコードしている(Cohenら、Journal of Virology(1987),61:3035−3039)。このポリタンパクは、翻訳プロセシングをも翻訳後プロセシングをも受け、成熟構造タンパク(VP1、VP2、VP3、VP4及び2A)及び非構造タンパク(2B、2C、3A、3B、3C及び3D)を作り出す。
【0004】
ウイルスポリタンパクのP3ドメインに存在するプロテアーゼ3C(Pro3C)は、HAVポリタンパクの切断に関係するプロテアーゼ(Martinら、J Virol.(1999),73(8):6220−7)であり、後にプロセシングを受ける中間生成物であるP1−2A、2BC及びP3を遊離させる。したがって、エンベロープの十分な形成及びHAVの複製には、HAVのタンパク分解プロセスが示差的に行われることが必要である。P3領域のプロセシング中に、3C/3D部位だけが効率よく切断される。3A/3B及び/又は3B/3C部位でのプロセシングは遅れて起こり、それによって、プロテアーゼ3Cに類似した効率でポリペプチドP1−2Aを切断する中間体ポリペプチド3ABCの蓄積が可能となる(Kusovら、Journal of Virology(1999),73:9867−9878)。このステップで、ペプタマー形成の効率がより高まる。ウイルスの特徴的な形態はこのウイルスタンパクの統合に由来し、その三次元構造は、保護的免疫応答の発生に重要である。HAVのウイルス粒子は、中和に対して免疫優性である抗原部位を示し、この部位は、様々な地域から単離されたHAV株の間で厳密に保存されている。それには5種の高次構造エピトープが配置され、そのうち3種は五量体であり、他の2種は、これらの五量体が集合してエンベロープを形成した後に作り出される。
【0005】
抗原部位の高次構造が変化することに起因して、又は五量体のアセンブリ中に五量体に存在するエピトープ断片が並列することに起因して、この最後のエピトープが形成されると考えられている。五量体もウイルス粒子も中和抗体を誘導し、したがって、これらはワクチン開発に有用である可能性がある(Stapletonら、Journal of Virology(1993),67:1080−1085)。HAVの完全なオープンリーディングフレームを含む組換えバキュロウイルスを用いて、HAVの巨大ポリタンパクが発現されている。昆虫細胞でのプロセシングの結果、他の中間体タンパクも発現されている(Stapletonら、The Journal of Infectious Diseases(1995),171:9−14)。さらに、哺乳動物細胞中でHAVの同じポリタンパクを発現する、組換えワクシニアウイルスが構築されている。これらの遺伝子構築物の感染細胞抽出物で、ポリタンパクの翻訳後プロセシングが行われてHAVのものと類似したキャプシドが生じることが判明した(Winokurら、Journal of Virology(1994),65:5029−5036)。1993年1月21日のWinokurらの国際特許出願公開WO 9301279、米国特許第5294548号(McLindenら、1994年3月)、国際特許出願公開WO 09844122(Probst,2002年8月27日)、国際特許出願公開WO 9111460、米国特許第5605692号(Thomasら、1997年2月25日)など、バキュロウイルス及びワクシニアウイルスシステム中で発現させる、HAVに対する組換えワクチンの変種を記載している特許があり、その中で、オープンリーディングフレーム(ORF)の配列が免疫原性キャプシド及び五量体の産生に使用され、シス、トランス並びにバイシストロン(bicistronic)構築物中で構造領域及びP3領域を発現させてHAVキャプシドを得る方法が保護されている。
【0006】
バイオリアクターとしてのトランスジェニック植物
根粒菌のアグロバクテリウムツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)による遺伝子移入から生じる最初のトランスジェニック植物は、1980年代初頭に作成された(Zambryskiら、EMBO J.1983,2:2143−2150)。この技術は初め、病原微生物(Powellら、Science 1986,232:738−743)、昆虫(Vaeckら、Nature 1987,328:33−37)、及び除草剤に対する(Of Blockら、1987,EMBO J.6:2513−2518)耐性を獲得する方法として使用されていた。しかし、植物(vegetable)細胞が、高度に複雑な構造の外来タンパクを正確に集合させることができることが実証されると、産業上及び生物薬剤上関心の高い組換えタンパクの実用的な生産を段階的に増大させる新しい戦略として、これに価値がある可能性があることが速やかに示唆された(Bartaら、Plant Mol.Biol 1986,6:347−357;Cramerら、Ann.N And Acad.Sci.1996,792:62−71;Staubら、Nature Biotechn.2001.18:333−338)。
【0007】
1992年に、サブユニットワクチン生産に関する新しい概念が導入された。これは、トランスジェニック植物がB型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)を発現することができることが実証されたことから生じた。この知見に基づいて、食品中にワクチンの候補を産生させ、この食品を摂取することだけで免疫感作を実現するのに植物を使用することができることが考えられた。これらの事実によって、「食用ワクチン」との名称が現れた(Arntzenら、Plants.Vaccine 1994,94:339−344)。その後に、HBsAgを含むトランスジェニックジャガイモを飼料として与えられたマウスが、市販のワクチンを単回腹腔内投与したときに得られたものと類似した一次免疫応答を示すことが実証された。これらの結果から、食用植物組織中での抗原の発現を、免疫感作の新しい経路とみなすことができることが示唆された(Richterら、Nature Biotechnology 2000,18:1167−1171)。
【0008】
米国特許第5484719号(Lamら、1996年1月16日);米国特許第5612487号(Lamら、1996年1月16日);米国特許第5612487号の分割出願で、国際特許出願PCT/US94/02332の一部継続出願である米国特許第5914123号(Arntzenら、1999年6月22日);米国特許第6136320号(Arntzenら、1999年6月22日);国際特許出願公開WO 9612801(Arntzenら、2002年5月28日);米国特許出願公開第2002006411号(Lamら、2002年6月4日)など、ワクチンの発現に植物を使用することについて記載している特許がいくつか存在する。
【0009】
前記に挙げた文献には、ワクチンとしての植物の使用、並びに植物中でのHBsAg発現が記載され、ある場合では、B型肝炎ウイルス(VHB)を指すのに「ウイルス性肝炎」という用語が使用されている。VHBは、A型肝炎ウイルスとかなり違い、その特徴も非常に異なっている。したがって、これらは、分類学的見地から異なる属に属している。免疫学的に重要な反応を引き起こすことができるHAVの組換えタンパクを得るには、このウイルスゲノムのいくつかのタンパクを発現させ、次いでそのような粒子を五量体又は中空キャプシドとして形成させることが必要である。免疫原性粒子のプロセシング及び形成は、ワクシニアウイルス及びバキュロウイルスシステムのような真核生物システムでしか実現していず、酵母などのより単純なシステムでは実現していない。トランスジェニック植物では、HAVのような複雑な抗原の発現は行われていなかった。VHBの場合、抗原は、タンパク1つだけで形成され、酵母などの単純な真核生物システムで効率よく粒子化される。前記で触れた議論により、植物において、HBsAgの発現は、HAVの五量体又は中空キャプシドの発現を含まないことが考えられる。他の特許出願では、2001年8月23日のSohnらの国際特許出願公開WO 0161022におけるヒト乳癌ウイルス抗原、2001年10月31日のZhongらの中国特許出願公開CN1319670における口蹄熱ウイルス抗原、2001年8月16日のReadsらの国際特許出願公開WO 0159070におけるロタウイルス(rotavirus)抗原、2001年12月27日のShacharらの国際特許出願公開WO 0197839におけるガムボロウイルス(gumboro virus)抗原など、様々なウイルス抗原の発現が具体的に記載されている。
【0010】
植物での組換えタンパク産生は、臨床医学で重要な薬剤化合物又はワクチンを生成するための多くの潜在的な利点を提供する。第1に、植物システムは、発酵システムで又はバイオリアクターで使用される産業基盤よりも経済的である。第2に、産業規模で植物及びその産物を採取し試験する技術はすでに利用可能である。第3に、組換えタンパクを含む植物を(食用ワクチンの場合と同様に)食物として使用すると、化合物を精製する必要性をなくすことができる。第4に、組換えタンパクを、ミトコンドリア、液胞、葉緑体、小胞体のような特定の細胞内区画を対象として発現させることもでき、それをこの区画で(例えば葉緑体で)直接発現させることもできる。第5に、組換え産物のヒト病原体による考えられる汚染に関する健康リスクは最小限である。最後に、製剤上重要な組換えタンパクの発現システムとしての植物は、小胞体レベルでのフォールディング、アセンブリ、糖鎖付加を含めた、分泌経路の多くのステップが哺乳動物細胞と類似しているというさらなる利点を有する(Ma y Hein,Plant Physiol.1995,109:341− 346;Rayonら、J.Exp.Bot.1998,49:1463−1472;Sanderfoot y Raikhel,Plant Cell.1999,11:629−641;Vitale及びDenecke、Plant Cell 1999,11:615−628;Lerougeら、Pharmaceutical Biotechnology 2000,1:347−354)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的の基本設計は、構造タンパクの様々な変種及び変異した非構造領域をコードする遺伝子の協調的発現を可能とする遺伝子構築物によって支持され、免疫応答を引き起こすことができる、トランスジェニック植物でのHAVの抗原五量体及びキャプシドの組換え発現を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
基本的に、本発明の新規性は、サイズが小さく、厳密に構造的な領域(最大でもタンパク2Aだけ)、及びタンパク3A/3Bと3B/3Cの間の切断部位が変異しているためにウイルスのプロテアーゼ3Cより大きいサイズを示す、ウイルスの改変プロテアーゼによって形成されるポリタンパクをコードする新規オープンリーディングフレームの高次構造に使用されるウイルスゲノム領域にある。特に使用するプロモーター及び調節シグナルの制御下で、トランスジェニック植物の細胞質ゾル及び小胞体中でのHAVウイルスキャプシドの発現が初めて実現する。構造領域とタンパク分解の原因領域の組合せ発現産物として、小胞体中で五量体及びキャプシドを形成させることから、HAVの場合など、この区画により複雑な構造を構築し保存することができる可能性が実証される。植物中での五量体及びキャプシド産生により、安価かつ確実なワクチンを得るバイオリアクターとしてこれを使用することができる可能性がもたらされる。
【0013】
本発明は、トランスジェニックタバコ、イネ及びニンジン植物を使用して、植物細胞中でウイルスの免疫原性キャプシド及び五量体が初めて得られた例によって実証される。本発明の結果得られるHAVのキャプシド及び五量体は、抗原ワクチンとして使用することができ、HAV検出のための診断法に使用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
遺伝子構築物
HAVのcDNA取得
キューバで単離されたHAVのM2株RNAから、逆転写技術ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を用いて、このウイルスのオープンリーディングフレーム(ORF)をコードするヌクレオチド配列を増幅した。この断片をプラスミド中でクローン化し、そのヌクレオチド配列を決定した。これは、報告されている配列に比べて11アミノ酸残基の変異が生じる違いを示している。配列分析から、アメリカ株のほとんどすべてが属するサブ遺伝子型IAの一部としてM2株を分類することができる。この株のゲノムから、改変断片を設計し、構築し、次いで本発明の対象である様々な遺伝子構築物中で使用した。
【0015】
トランスジェニック植物中でキャプシド及び五量体を発現させるためのベクター遺伝子構築物
HAVの組換えプロテアーゼ
ウイルスキャプシドの形成を可能にするには、ポリタンパクのタンパク分解プロセシングが示差的に起こり、ウイルスタンパクを順序通りに放出させることが必要である。キャプシド形成の効率は、タンパク3ABと膜及びウイルスタンパクの疎水性相互作用のために中間体3ABCが存在するときに増大する。プロテアーゼ3Cを放出せず、HAVの五量体及びキャプシドの形成に必要なそのタンパク分解能を保持するポリペプチド3ABCを得るために、タンパク3A/3Bと3A/3Cの間にあるプロテアーゼ3Cの切断部位に変異を生じさせた。3A/3B間ではグルタミン酸をバリンで、3B/3C間ではセリンをロイシンで置き換えた。免疫原性キャプシド及び五量体を形成するHAVタンパク発現についての新規のかつ様々な戦略の設計に、このポリペプチドを使用した。
【0016】
植物細胞の細胞質ゾル中でのキャプシド及び五量体発現のための組換えHAV
HAVにおいて、ポリペプチドP1−2Aは、ウイルスキャプシド形成において重要な機能を有する。このポリペプチド中に、キャプシド形成を調節する2つのサインが存在する。そのカルボキシル末端ドメイン中にタンパク2Aが認められ、これは、キャプシドアセンブリの第1段階で五量体の形成に必要である。この五量体は、ポリペプチドP1−2Aのうちプロセシングを受けない分子を5つ組み合わせて形成される。タンパクVP4は、第2段階で五量体の会合及びキャプシド形成に必要である。
【0017】
植物細胞の細胞質ゾル中で改変ポリタンパクを発現させるために、改変オープンリーディングフレーム(ORFm)配列を含むベクターを構築した。この構築物は、(元のHAVポリタンパクと比べて)サイズがかなり小さいポリタンパクをコードしている。この配列は、P1−2Aポリペプチドコード配列と変異プロテアーゼ3ABCをコードする配列を融合させた結果得られる。
【0018】
A.ツメファシエンス(A.tumefaciens)を用いて植物を形質転換するのに使用されるプラスミドベクターは、植物中でタンパク発現を調節するシグナルをコードするヌクレオチド配列と融合したHAVのタンパクをコードするDNA配列を含んでいる。この場合、タンパクをコードする配列は、植物細胞の分泌経路を越えて輸送するためのいずれの特定のシグナルとも融合せず、そのためこれは細胞の細胞質ゾル中で発現される。
【0019】
植物細胞の細胞質ゾル中における五量体の排他的発現のための組換えHAV
自己プロセシングによって、排他的に免疫原性のウイルス五量体が形成される。キャプシドに比べて五量体のサイズが小さいと、より小さいものの発現が誘発されるので発現レベルをより高くすることができる。前記で記載したように、ポリペプチドVP0の一部であるタンパクVP4は、五量体の会合及びウイルスキャプシド形成に必要である。
【0020】
ポリタンパクORFmをコードするヌクレオチド配列から、タンパクVP4をコードする断片を除去して、ΔORFmと称される配列とした。植物細胞の細胞質ゾル中でのその発現を調節する配列と融合したポリタンパクΔORFmを発現させるためのプラスミドベクターを構築した。これを、タバコ、イネ及びニンジンの葉にA.ツメファシエンスを感染させて、トランスジェニック植物を得るのに使用した。この遺伝子構築物から発現したポリタンパクは、サイズがかなり小さく、植物細胞中で代謝による変化を起こすことができる。得られた産物は、ワクチン開発のための免疫原のように使用することもできる。
【0021】
植物細胞の小胞体中でのキャプシド及び五量体発現のための組換えHAV
分泌経路に、したがって小胞体にタンパクを向かわせる配列を使用し、この小器官中に保持させるシグナルも使用することにより、植物において小胞体中に異種のタンパクが蓄積される。
【0022】
シグナルペプチドとして、サツマイモスポラミンのN末端ペプチドをコードする配列を使用した。小胞体中にタンパクを保持させるシグナルとして、このタンパクのカルボキシル末端に位置するペプチドKDELをコードする配列を使用した。
【0023】
サツマイモスポラミンのシグナルペプチドをP1−2Aヌクレオチドコード配列の5’領域と融合させ、KDELコード配列と融合させたスペーサーペプチド配列を3’領域に挿入した。得られたDNA断片をバイナリー(binary)ベクターの植物発現シグナルの調節下に置いた。このベクターは、その5’末端でサツマイモシグナルペプチドと、その3’末端でKDELコード配列と融合した変異ポリペプチド3ABCコード配列を含んでいた。この成分もすべて植物発現シグナルの調節下に置いた。どちらのポリペプチドも小胞体中に位置し、プロテアーゼ3ABCは、ポリペプチドP1−2Aをプロセシングし、効率よく粒子を形成することができる。
【0024】
植物細胞の小胞体中で五量体を排他的に発現させるための組換えHAV
P1−2Aポリペプチドコード配列からVP4ヌクレオチドコード配列を除去することにより、ポリペプチドΔP1−2Aを得た。この配列をその5’末端でサツマイモスポラミンシグナルペプチドと、その3’末端で、KDELコード配列と結合したスペーサーペプチドをコードする配列と融合させた。同様に、同じバイナリーベクター中で、変異ポリペプチド3ABCをコードする配列を、その5’末端でサツマイモスポラミンシグナルペプチドと、その3’末端でKDELコード配列と融合させた。すべての成分を植物における発現調節サイン下に置いた。
【0025】
この2つのポリペプチドは、小胞体中に位置し、プロテアーゼ3ABCは、ポリペプチドΔP1−2Aをプロセシングし、排他的に五量体を発現させることができる。この植物は、より高レベルの発現、並びにより良好な成長及び発達を示し、これによって、より多くのバイオマスが得られる。
【0026】
改変HAVの遺伝子産物を発現するトランスジェニック植物の同定
A.ツメファシエンスを各バイナリーベクターで形質転換し、このプラスミドを含む細菌コロニーを得た。異なる遺伝子構築物をそれぞれ独立に有するA.ツメファシエンスを使用して植物を形質転換し、最終的に、選択マーカーであるカナマイシンに耐性の植物を得た。サザンブロット及びPCR技術を使用して、外来DNAが植物中に組み込まれていることを確認した。
【0027】
特定のタンパク抽出緩衝液中でトランスジェニック植物の葉を液体窒素で粉砕して、その葉から可溶性タンパクの抽出を行った。HAV特異的抗血清及びモノクローナル中和抗体を使用して、キャプシド及び五量体を同定した。ウェスタンブロット、ELISA、免疫顕微鏡法(immunomicroscopy)などの免疫学的方法を行い、これより、トランスジェニック植物が、ポリタンパク、又は場合によっては予想されたポリペプチドを発現することが実証され、これらがプロセシングを受け五量体又はキャプシド中に集合することも実証された。
【0028】
高レベルの組換えタンパクを発現する植物を、モノクローナル中和抗体を用いるキャプシド及び五量体の精製に使用した。
【0029】
精製キャプシド及び五量体の免疫原性の決定
タバコ及びイネの植物の葉から精製した産物で免疫感作させたマウスの免疫応答により、HAVキャプシド及び五量体の免疫力を決定した。HAV抗原を発現するトランスジェニックニンジンを飼料として与えたマウスにおける免疫力も評価した。抗原を導入する方法として、経口経路及び非経口経路を用いた。ELISA技術を用いて動物の抗血清のHAVに対する反応性、及びHAV感染をin vitroで中和する免疫血清の中和能について決定することにより、免疫応答を調節し確認した。
【0030】
本発明の利点
本発明が提供する最も重要な利点は、本発明者らの構築物の発現産物であるエンベロープ及び精製五量体と元のウイルスの間に抗原類似性があること;本発明者らの構築物の発現産物として得られるポリタンパクのサイズが元のウイルスのサイズよりかなり小さいので、本発明者らが特許請求する構築物の産物であるエンベロープ及び五量体の植物での発現レベルが、HAVオープンリーディングフレームを発現させたとき、又はP1−2A領域及びP3領域を同時に発現させたときに得られるレベルより高いこと;ポリペプチド3ABCが専らタンパク3A、3B及び3Cによって構成され、タンパク3A/3Bと3B/3Cの間の自己プロセシング部位が変異し、それによってこのポリペプチドのプロセシングが回避され、したがってより効率のよいこのポリペプチド自体によるポリタンパクのタンパク分解能が想定されること;植物細胞の小胞体中での五量体及びHAVウイルスエンベロープの発現レベルが細胞質中より高いこと;植物細胞中での五量体の排他的発現が、この粒子のサイズがより小さいために、より効率よく行われ、より良好な植物の成長及び発達を可能にすること;植物から薬剤タンパクをスケールアップし産生させることが大量の抗原の産生に適していること;現在使用され、当分野の最先端で述べられている他のシステムと比べて生産コストが低下すること;植物でのHAV抗原の発現により、ヒトに影響を及ぼす病原体の混入リスクが低下すること;産物を精製することを必要とせずに植物を使用できる可能性があるために、HAVに対しての経口免疫感作が、免疫感作にかかるコストを下げるのにかなり貢献することである。
【0031】
微生物の寄託
微生物の寄託に関するブダペスト条約(Budapest Treatment for Microorganism Deposit)の規則に従って、ベルギー微生物保存機関(Belgian Coordinated collection of Microorganisms)BCCM、LMBP−COLLECTIONに、プラスミドpBVHARE、pBΔVHARE、pBMLAm及びpBΔMLAmを寄託し、これらは、それぞれ受託番号LMBP4721、LMBP4722、LMBP4723及びLMBP4724で2003年5月19日に寄託された。
【実施例1】
【0032】
HAVキューバ株M2のORFのクローン化
プラスミドpMLA1の当該の配列を図1(A)に示す。キューバで単離され特徴付けられたHAV株M2からRNAを精製し、HAVの以前に報告された他の配列に特異的なオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO 1及び2)を使用し、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)技術を用いて6.7kbのDNA断片を増幅した。このバンドを予めSmaIエンドヌクレアーゼで消化したベクターBlueScript(KS+)中にクローン化した。得られたプラスミドをpMLA1と名付け、HAVキューバM2株のORFの配列決定に使用した。DNA配列(SEQ ID NO 3)は、報告されているものに比べて変化を示している。これは、異なるアミノ酸が11個生じる変化が認められる。この配列分析から、アメリカ株のほとんどすべてが属するサブ遺伝子型IAに、M2株を分類することができる。実際にキューバ株M2が以前から報告されているものと異なるHAV株であることが、この配列から確認された。
【実施例2】
【0033】
植物細胞の細胞質ゾル中でキャプシド及び五量体を発現させるための遺伝子構築物
プラスミドpP1−2Aの当該の配列を図1(B)に示す。プラスミドpMLA1に由来するタンパクVP4をコードする配列の5’領域及びタンパク2Aをコードする配列の3’領域にそれぞれ相補的な特異的オリゴヌクレオチド(SEQ ID NO 4)を用いて、構造タンパク(P1−2A)をコードする配列をPCRで増幅することによって、このプラスミドを得た。2.5kbの増幅バンド(SEQ ID NO 6)をSmaI消化ベクターBlueScript(KS+)中にクローン化した。
【0034】
プラスミドp3ABCの当該の配列を図1(C)に示すが、このプラスミドを得るために、この遺伝子の5’及び3’領域に相補的なオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO 7及び8)を用いて、タンパク3Aをコードする0.2kbの領域をPCRで増幅した。これをBamHI/EcoRV消化ベクターBlue Script(KS+)中にクローン化した。その後、同じベクターであるがEcoRV/XbaI部位の間の領域中に、タンパク3Bをコードする合成ヌクレオチド配列(SEQ ID NO 9及び10)をクローン化した。得られたプラスミドをp3ABと名付けた。その一方で、プラスミドpMLA1から、オリゴヌクレオチドSEQ ID NO 11及び12を用いて、タンパク3Cをコードする0.65kbの配列をPCRで増幅した。このバンドをベクターP3ABのXbaI/HindIII部位の間にクローン化した。その結果得られた配列を3ABC(SEQ ID NO 13)と名付けた。
【0035】
これは、タンパク分解活性があるが自己プロセシングを起こし得ないポリタンパクをコードしている。TをCで、GをCでそれぞれヌクレオチド置換することにより、タンパク3A/B及び3B/C間の切断部位に変異が生じているからである。
【0036】
プラスミドpMLAmの当該の配列を図1(D)に示す。これを得るために、プラスミドpP1−2AをEcoRI及びClaIで消化した。変異ポリペプチド3ABCをコードする1kbのバンドをEcoRI/ClaI消化によって切り出し、予め消化したpP1−2Aの適切な部位にクローン化した。プラスミドpMLAmは、元のポリタンパクと比べてかなり軽量のHAVポリタンパクをコードする改変配列(SEQ ID NO 14)を含んでいる。
【0037】
ベクターpKTPL−2でSmaI/ClaI消化した3.4kbのORFmのバンドをクローン化することにより、プラスミドpKMLAmを得た。このベクターは、プロモーターである2X 35S CaMVプロモーター配列、TEVのリーダー配列及び35S CaMVの転写終結配列を含んでいる。ORFmバンドをクローン化するために、プラスミドpKTPL−2をNcoIで消化し、その後DNA PolIのクレノー断片で平滑化し、最後にClaIで消化した。
【0038】
バイナリープラスミドpBMLAmの当該の配列を図1(F)に示す。プラスミドpKMLAmをSphIで消化し、続いてマングビーン(Mung Bean)ヌクレアーゼで処理し、4.7kbのバンドを、予めSmaIで消化したバイナリーベクターpBin19中にクローン化して、このプラスミドを得た。
【0039】
得られたプラスミドpBMLAmは、カナマイシン耐性をもたらす選択マーカーとして働くネオマイシンホスホトランスフェラーゼII遺伝子(NPTII)、改変HAVポリタンパクをコードし、2X 35S CaMVプロモーター配列及びTEVのリーダー配列並びにCaMVの転写終結配列によって調節されるORFm遺伝子を含む。これはまた、植物ゲノムへのこの移入を促進するT−DNAの境界配列をも含む。
【実施例3】
【0040】
植物細胞の細胞質ゾル中で五量体を発現させるための遺伝子構築物
プラスミドpΔMLAmの当該の配列を図2(A)に示す。タンパクVP4を除去しこのプラスミドを得るために、酵素SmaI/PstIで切断してプラスミドpMLAmから114bpの断片を除去し、それを合成ヌクレオチド配列(SEQ ID NO 15及び16)で置き換えて、タンパクVP2をコードする遺伝子の起始部を回復させた。領域ΔORFmの配列は、SEQ ID NO 17に一致する。SmaI/ClaI消化したΔORFmのバンド(3.46kb)を、予めNcoI/クレノー/ClaIで消化したプラスミドpKTPL−2中にクローン化して、プラスミドpKΔMLAmを得た。
【0041】
バイナリープラスミドpBΔMLAmの当該の配列を図2(B)に示す。Bin19を酵素SmaIで消化して、このバイナリープラスミドを得た。酵素SphIでプラスミドpKMLAmを消化して4.6kbのDNA断片を得、これをマングビーンヌクレアーゼで処理し、次いでクローン化した。
【0042】
得られたプラスミドpBΔMLAmは、カナマイシン耐性をもたらす選択マーカーとして機能するネオマイシンホスホトランスフェラーゼII遺伝子(NPTII)、HAV改変ポリタンパクをコードし、プロモーターである配列2X 35S CaMV及びTEVリーダー配列並びに35S CaMVの転写終結配列によって調節されるORFm遺伝子を含む。これはまた、植物ゲノムに移入される右側及び左側の境界配列をも含む。
【実施例4】
【0043】
植物細胞の小胞体中でキャプシド及び五量体を発現させるための遺伝子構築物
プラスミドpBVHAREの当該の配列を図3Bに示す。このプラスミドを得るために、KDEL保持シグナルをコードする合成断片(SEQ ID NO 18及び19)をベクターBS(+)のEcoRV/ClaI部位にクローン化した。その一方で、プラスミドpP1−2AのStyI/EcoRI部位に、タンパク2Aの3’末端を改変し、この領域中のプロテアーゼ切断部位を除去し、かつ遺伝子の結合部とKDELシグナルをコードする配列との間に間隔を空けるバーとして働く配列を導入する合成断片(SEQ ID NO 20及び21)をクローン化した。その後、この配列(2.5kb)を酵素SmaI/EcoRVで切り出し、ベクター BS−KDEL中にクローン化し、プラスミドpP1−2ARE(図3A、SEQ ID NO 22)を得た。p3ABCプラスミドを酵素XhoI/クレノー/EcoRIで消化し、3ABC配列をEcoRI/EcoRV部位にクローン化して、プラスミドp3ABCREを得た(図3A、SEQ ID NO 23)。
【0044】
対象とする遺伝子に植物発現調節シグナルを供給するために、酵素SmaI/ClaIでプラスミドpP1−2AREから切り出した構造領域P1−2A−KDEL(2.5kb)を、NcoI/クレノー/ClaIで消化したプラスミドpKTPL−2中にクローン化した。得られたプラスミドをpKP1−2AREと名付けた。プラスミドp3ABCREから酵素NcoI/ClaIで1kbの領域3ABC−KDELを切り出し、同じ酵素で消化したプラスミドpKTPL−2中にクローン化した。得られたプラスミドは、pK3ABCREであった。
【0045】
最後に、A.ツメファシエンスを用いる植物の形質転換のためのプラスミドを得るために、プラスミドpK3ABCREから酵素SalIで切り出した2kbの配列を、同じ酵素で予め消化したバイナリーベクターpBin 19中にクローン化した。得られたプラスミドをpB3ABCREと名付けた。その後、同じベクターのSphI部位に、SphI消化でプラスミドpKP1−2AREから切り出した配列P1−2A−KDELに相当する発現カセットをクローン化した。得られたプラスミドpBVHAREは、構造領域もプロテアーゼの機能を有する領域も別個に有し、これらは、植物発現調節シグナルの存在下で小胞体保持シグナルと融合している。またこのプラスミドは、選択マーカーとしてネオマイシンホスホトランスフェラーゼII遺伝子(NPTII)を有する。
【実施例5】
【0046】
植物細胞の小胞体中で五量体を発現させるための遺伝子構築物
プラスミドpBΔVHAREの当該の配列を図4(B)に示す。このプラスミドを得るために、酵素SmaI/PstIでプラスミドpP1−2AREを切断して、その断片を合成ヌクレオチド配列(SEQ ID NO 15及び16)で置き換えて、タンパクVP2をコードする遺伝子の起始部を回復させた。得られたプラスミドpΔP1−2ARE(図4A、SEQ ID NO 24)をSmaI/ClaIで消化し、2.4kbのバンドを、NcoI/クレノー/ClaIで消化したベクターpKTPL−2中にクローン化して、プラスミドpKΔP1−2AREを得た。酵素SphIで消化した発現カセットをプラスミドpB3ABCRE(3ABC−KDELを含むバイナリープラスミド)中にクローン化した。
【0047】
得られたバイナリープラスミドは、植物発現シグナルの存在下でKDELペプチドと融合した、タンパクVP4をコードする配列を有さない構造領域、同じシグナルの存在下の3ABC−KDEL領域、及び選択マーカーであるネオマイシンホスホトランスフェラーゼII遺伝子(NPTII)を含む。
【実施例6】
【0048】
タバコ(Nicotina tabacum)トランスジェニック植物中でのHAVのキャプシド及び五量体の獲得
タバコ(Nicotiana tabacum)植物の遺伝的形質転換をZambryskiら(1983)の方法に従って実施した。
【0049】
A.ツメファシエンス株At2260(Deblaereら、1985)を、液体窒素法(Hofgen及びWillmitzer、1988)により、開発したバイナリープラスミド(PBΔVHARE、PBVHARE、PBΔMLAm、PBMLAm)で形質転換した。「in vitro」で培養しているプチハバナ(Petit Havana)MR1種のタバコ植物の葉原基を、組換えアグロバクテリウム(Agrobacterium)で形質転換した。カナマイシン(100mg/L)を選択マーカーとして使用した。
【0050】
サザンブロット、ウェスタンブロット、ELISA、免疫顕微鏡法などいくつかの手順を実施して、タバコ植物ゲノム中に対象とする遺伝子が存在し発現しているかどうか、並びにウイルスエンベロープ又は五量体が形成されているかどうかを検出した。
【実施例7】
【0051】
トランスジェニックニンジン植物(Daucus carota L.)中でのHAVのキャプシド及び五量体の獲得
バイナリープラスミド(PBΔVHARE、PBVHARE、PBΔMLAm、PBMLAm)で形質転換したA.ツメファシエンス株At2260を植物の形質転換に使用した。新クロダ(NEW KURODA)種の3週齢の発芽した胚軸を、1cmの区分に切断し、BAN−9培地(Murashige及びSkoog、1962(MS)、NAAを0.5mg/L補充)に植え、3日間培養した。その後、前記に記載の構築物の各1つを含むAt懸濁液とともにこれを30分間インキュベートした。外植片をBAN−9培地に再び移して72時間培養した。この期間の後、カナマイシン(100mg/l)を補充した再生培地にこれを植えた。3週間後に苗条が現れ、これを個別化し、やはりカナマイシンを100mg/L補充したMS培地に植えた。遺伝子が組み込まれたことを、PCR産物のサザンブロットで確認した(図6)。ポリタンパク発現、そのプロセシング及びウイルスキャプシド及び五量体の形成を、ELISA(図8)及びウェスタンブロット(図7)で実証した。
【実施例8】
【0052】
トランスジェニックイネ植物(Oryza sativa L.)中でのHAVのキャプシド及び五量体の獲得
Hieiら(1994)が使用した方法に従って、イネ植物の遺伝的形質転換を実施した。A.ツメファシエンス株At2260を、液体窒素法を用いて、開発したバイナリープラスミド(pBΔVHARE、pBVHARE、pBΔMLAm、pBMLAm)で形質転換した。イネの胚盤から得られたカルスを組換えA.ツメファシエンスで形質転換した。カナマイシン(100mg/L)を選択マーカーとして用いた。
【0053】
イネ植物ゲノム中に対象とする遺伝子が存在し発現していること、並びにウイルスキャプシド又は五量体が形成されていることを確認するために、下記に記載する様々な手順を実施した。
【実施例9】
【0054】
トランスジェニック植物の分子的免疫化学的特徴付け
サザンブロットによる分析
Dellaportaら(1983)により記載の方法を使用して、タバコ、ニンジン及びイネ植物から、サザンブロット用の染色体DNAを得た。サンプルとして、選択マーカーに対して耐性を示す前述の構築物を有する形質転換植物の葉を使用した。非形質転換植物の葉を陰性対照として用いた。
【0055】
全DNA消化、アガロースゲル電気泳動、Hybond N膜へのトランスファー及びハイブリダイゼーションを標準的手順(Sambrookら、1989)で行った。タンパクVP1をコードする遺伝子を含む1.2kbのDNA断片を、Primer−a−Gene Labeling System(Promega Corp、米国)を用いて32Pで標識し、放射活性プローブとして用いた。同じ断片を陽性対照として用いた。
【0056】
図5は、細胞質中でHAVのキャプシドと五量体をどちらも発現する構築物PBΔMLAm及びPBMLAmで形質転換したトランスジェニックタバコ植物のサザンブロットを示している。SmaI及びClaIでのDNA消化によって、3.4kbのバンドが得られる。小胞体中で発現する構築物PBΔVHARE及びPBVHAREで形質転換したトランスジェニック植物由来の全DNAをSmaIとI−EcoRIで消化して、2.4kbのバンドを得た。図5に示す結果は、植物がそのゲノム中に構造タンパクをコードする配列を含むことを実証するものである。
【0057】
トランスジェニックニンジンとイネ植物の両方で、SEQ ID NO 4及び5の配列に相当するオリゴヌクレオチドを用いて、PCR増幅産物にサザンブロットを行った。図6に示すように、タンパクVP1をコードする放射活性標識配列は、構造タンパクをコードする配列の予想サイズに相当する2.5kbのバンドと相補的に結合している。
【0058】
ウェスタンブロットによる分析
ウェスタンブロットの結果を図7に示す。Towbinら(1979)により記載の方法に従って、組換え分子を免疫学的に検出するウェスタンブロット法を実施した。ウェスタンブロットのサンプルは、五量体しか発現しない構築物で形質転換したトランスジェニックタバコ、ニンジン及びイネ植物から抽出した全可溶性タンパクからなるものであり、タバコ5、ニンジン7及びイネ3のクローンは、小胞体中で五量体を発現させる構築物pBΔVHAREで形質転換したもの、タバコ25及びニンジン10のクローンは、細胞質中で五量体の発現を可能にする構築物pBΔMLAmで形質転換したものであった。陰性対照として、非形質転換タバコの葉から抽出したタンパクを使用した。陽性対照として、VP1タンパクを大腸菌(E.coli)中で発現させた。非常に薄い粉塵を得るまで、葉を液体窒素で粉砕した。Schoutenら(1997)の報告の通りに、葉1g当たりにタンパク抽出緩衝液[pH6.8の61mMトリス−HCl、0.1%トライトン(Triton)、12.5%グリセロール、及び1mMフェニルメチルスルホニルフロリド(PMSF)]1mLを加えた。13000rpmで遠心分離することによって、不溶性物質を除去した。
【0059】
SDS−PAGEを行った全タンパクをニトロセルロース膜に移し、酵素アルカリホスファターゼ(PhoA)と結合した抗VP1ポリクローナル抗体を用いて、対象とするタンパクを同定した。比色反応を用いて、この酵素の検出を行った。
【0060】
図7において、すべての培養物中にVP1タンパクと同じサイズのタンパクバンドが存在すること、並びにポリタンパクの不完全なプロセシングから他の中間産物が得られることを観察することができる。
【0061】
免疫酵素検定(ELISA)
ELISAの結果を図8に示す。「サンドイッチ」法を行った。モノクローナル抗体7E7の10mg/mL炭酸緩衝液(0.015M Na2CO3、0.028M NaHCO3、pH9.6)溶液で、プレート(Maxisorp、Nunc)をカバーし37℃で4時間置いた。ミルクの5%PBS(100mM NaCl、80mM Na2PO4、20mM NaH2PO4、pH7.4)溶液で、ブロッキングを37℃で2時間実施した。その後、形質転換及び非形質転換タバコ、ニンジン及びイネ植物に対応する(ウェスタンブロットについて記載されたのと同様に調製した)サンプル100μLを加えた。プレートを4℃で1晩インキュベートした。PBSで洗浄後、1/1000に希釈した(ミルクを0.5%含むPBS中で1mg/mL)アルカリホスファターゼ結合モノクローナル抗体7E7を100μL加えた。プレートを37℃で1時間インキュベートした。0.1%ジエタノールアミン中で調製した4−ニトロフェニルホスフェート(酵素の基質)を加えることによって、反応を生じさせた。色が現れるかどうかを60分間追跡して調べた。分光光度計で、波長405nmでの吸光度を読み取った。ELISAのあらゆる段階において、トゥイーン(Tween)20を0.1%含むPBSでプレートの洗浄を3回行った。
【0062】
免疫電子顕微鏡法による分析
免疫顕微鏡法の結果を図9に示す。プラスミドpBMLAmで形質転換したタバコ及び非形質転換植物の、どちらも組織培養由来のサンプルを4%ホルムアルデヒド溶液で、その後0.2%グルタルアルデヒドで固定した。これをエタノールで脱水し、次いでLowicryl K 4M(Chemische Werke Lowi,Waldkraiburg)溶液中でインキュベートした。超薄切片をニッケル網に置き、モノクローナル抗体7E7とともにインキュベートした。このステップの後、15nmの金コロイド粒子で標識した抗マウスIgGポリクローナル抗体(British Bio−Cell International)とともにインキュベートした。酢酸ウランで5分間、その後クエン酸鉛で7分間処理して、免疫標識切片に対比染色を行った後、透過型電子顕微鏡(Jeol−Jem 2000EX、日本)で検鏡した。その結果、構築物pBMLAmで形質転換したタバコ植物でのみ直径約27nmの粒子が見られ、これによって、このタンパクが細胞の細胞質中に発現していることが示された。
【実施例10】
【0063】
トランスジェニックタバコ及びイネ植物からのキャプシド及び五量体の精製
キャプシド及び五量体を精製するために、粒子及び免疫原性五量体を専ら認識する、CIGB研究所で得られた抗HAVモノクローナル抗体を使用した。ウェスタンブロット分析で説明したプロトコールを用いて、植物細胞タンパクを抽出した。遠心分離から得られた上清を、0.5M塩化ナトリウムに溶解し、抗体を付けた親和性ゲル(Bio−rad Laboratories,Richmond,CA)と混合した。この混合物を4℃で16時間インキュベートした。このゲルを10倍量のPBS(100mM NaCl、80mM Na2PO4、20mM NaH2PO4、pH7.4)で洗浄し、その後、pH2.5の0.2Mグリシンで、対象とするタンパクを溶出させた。この溶出物を塩基性トリスで中和し、PBSに対して透析した。HAVウイルスキャプシド及び五量体の認識用の特異的な、市販の7E7モノクローナル抗体(Mediagnost)を用いて、この葉抽出物由来のHAV粒子及び五量体が存在するかどうかを、ELISAで検出した。
【実施例11】
【0064】
腹腔内投与による、トランスジェニック植物から精製したキャプシド及び五量体の免疫原性の決定
トランスジェニックタバコ及びイネ植物から精製したキャプシド及び五量体750EL.Uを2回投与して、14週齢の白色ICRマウスを免疫感作させた。同様に、一群のマウスに市販のHAV抗原(Mediagnost)を接種し、これを陽性対照として使用した。他群にPBSを接種し、これを陰性対照として用いた。接種から0日後、15日後、30日後、50日後及び70日後に血液サンプルを採集した。
【0065】
抑制ELISAを用いて、抗体レベルを測定した。モノクローナル抗体7E7 5μgでプレートをカバーし、次いで4時間インキュベートした。その後、それを0.1%トゥイーン入りPBSで1回洗浄した。0.1%トゥイーン入りPBS中にミルクを5%加えてブロッキングを行い、37℃で2時間インキュベートした。このプレートを0.1%トゥイーン入りPBSで3回洗浄した。HAV抗原(Mediagnoct)とともに37℃で20分間予めインキュベートしていた免疫感作マウス血清を加えた。このプレートを16℃で12時間インキュベートし、0.1%トゥイーン入りPBSで5回洗浄した。最後に、ミルクを0.5%含むPBSで1/1000に希釈したアルカリホスファターゼ結合モノクローナル抗体7E7を100μL加えた。37℃で1時間インキュベーションを実施した。ジエタノールアミンで調製した4−ニトロフェニルホスフェート(酵素の基質)を加えることによって、反応を生じさせた。色が現れるかどうかを60分間追跡して調べた。分光光度計で、波長405nmでの吸光度を読み取った。図10に、タバコ及びイネ植物によって産生された五量体を接種したマウスの血液中で検出された、トランスジェニック植物から精製した抗原を接種したマウス血清の抑制の平均レベルを示す。同様にして、キャプシド及び五量体の発現を可能にする構築物で形質転換したタバコ及びイネ植物で産生された抗原で免疫感作させたマウスで類似した抗体レベルが認められた。
【実施例12】
【0066】
経口投与による、トランスジェニック植物から精製したキャプシド及び五量体の免疫原性の決定
精製抗原を使用する経路と、抗原を発現しているニンジンを動物に飼料として与える経路の2つの経路で、抗原の経口投与を行った。
【0067】
経口投与した精製キャプシド及び五量体の抗原性を決定するために、8週齢のBalb/cマウスに五量体及びキャプシド7500EL.U.を4回投与した。接種から0日後、15日後、30日後、50日後及び70日後に血液200μLを採集して、抑制ELISAにより抗HAV抗体が存在するかどうかを検出した。
【0068】
実施例11で前述した手順を用いて、抑制ELISAを行った。
【0069】
図11に示された結果によれば、トランスジェニック植物中で発現したHAVの五量体の経口投与によって免疫応答が生じ、このことは、この実験に使用したマウス血清の平均抑制レベルによって示されている。経口投与したマウス血清の平均抑制レベルは、腹腔内投与後に得られたものと比べて低かった。植物を介する五量体の経口投与を実施し、(五量体のみを産生するように特別に設計された構築物pBΔMLAmで形質転換した)生ニンジン5gを週1回4週間与えた。非形質転換ニンジンを飼料として与えたマウス血清を、陰性対照として用いた。この植物が免疫反応を引き起こすことができることが、図12に示す抑制ELISAによって実証された。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】植物植物細胞の細胞質ゾル中でエンベロープ及び五量体を発現させるための遺伝子構築物を示す図である。A)は、HAVのM2株のORFの概略図である。B)は、構造タンパク(P1−2A)をコードする配列の概略図である。C)は、3ABC領域をコードする配列の概略図である。D)は、HAVのORFmの概略図である。E)は、植物発現のためのバイナリーベクター中にクローン化された当該の挿入配列の概略図である。
【図2】植物細胞の細胞質ゾル中で五量体を発現させるための遺伝子構築物を示す図である。A)は、VP4をコードする配列を含まないΔORFmの概略図である。B)は、ΔORFmを植物で発現させるためのバイナリーベクター中にクローン化された当該の挿入配列の概略図である。
【図3】植物細胞の小胞体中でエンベロープ及び五量体を発現させるための遺伝子構築物を示す図である。A)は、KDEL配列と融合したP1−2A配列の概略図である。B)は、小胞体中で発現させるためのバイナリーベクター中にクローン化された当該の挿入配列の概略図である。Eはスペーサー、KはKDELを示す。
【図4】植物細胞の小胞体中で五量体を発現させるための遺伝子構築物を示す図である。A)は、KDEL配列と融合した、VP4配列を含まないP1−2A配列の概略図である。B)は、植物発現のためのバイナリーベクター中にクローン化された当該の挿入配列の概略図である。Eはスペーサー、KはKDELを示す。
【図5】トランスジェニック植物のゲノムDNAのサザンブロットを示す図である。
【図6】ニンジン及びイネトランスジェニック植物のPCR産物のサザンブロットを示す図である。
【図7】エンベロープ及び五量体を細胞質ゾル中で発現させるための遺伝子構築物で形質転換したトランスジェニックタバコ、ニンジン及びイネの植物タンパクのウェスタンブロットを示す図である。
【図8】HAVエンベロープ及び五量体を細胞質ゾル中で発現させるための遺伝子構築物で形質転換したタバコ、ニンジン及びイネ植物に行った免疫酵素検定(ELISA)を示す図である。
【図9】構築物pBMLAmで形質転換した、あるタバコ植物の免疫電子顕微鏡法の結果を示す図である。A)は、非形質転換植物である。B)は、形質転換植物である。C)は、形質転換植物である。
【図10】腹腔内経路によってHAVで免疫感作させたマウスの血清の抑制ELISAを示す図である。
【図11】イネ及びタバコ植物から精製したHAV五量体で経口免疫感作させたマウスの血清の抑制ELISAを示す図である。
【図12】HAV五量体を発現している植物から採集したニンジンを飼料として与えることによって経口免疫感作させたマウスの血清の抑制ELISAを示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジーの一部門に関し、より具体的には、トランスジェニック植物細胞中での組換えタンパクの発現、及び抗原ワクチンとしてのその植物の使用に関する。具体的には、キューバで単離されたM2株由来HAVゲノムの改変断片の発現に由来する、トランスジェニック植物内で得られる組換えA型肝炎ウイルス抗原が示される。
【0002】
また、様々な方法で接種した後の動物における免疫応答を発生させるのにこの抗原が有用であることも実証される。
【背景技術】
【0003】
HAVゲノムは、極性が正であるシンプル鎖(simple strain)RNAである。これは、約7.5kbであり、253kDaのポリタンパクをコードしている(Cohenら、Journal of Virology(1987),61:3035−3039)。このポリタンパクは、翻訳プロセシングをも翻訳後プロセシングをも受け、成熟構造タンパク(VP1、VP2、VP3、VP4及び2A)及び非構造タンパク(2B、2C、3A、3B、3C及び3D)を作り出す。
【0004】
ウイルスポリタンパクのP3ドメインに存在するプロテアーゼ3C(Pro3C)は、HAVポリタンパクの切断に関係するプロテアーゼ(Martinら、J Virol.(1999),73(8):6220−7)であり、後にプロセシングを受ける中間生成物であるP1−2A、2BC及びP3を遊離させる。したがって、エンベロープの十分な形成及びHAVの複製には、HAVのタンパク分解プロセスが示差的に行われることが必要である。P3領域のプロセシング中に、3C/3D部位だけが効率よく切断される。3A/3B及び/又は3B/3C部位でのプロセシングは遅れて起こり、それによって、プロテアーゼ3Cに類似した効率でポリペプチドP1−2Aを切断する中間体ポリペプチド3ABCの蓄積が可能となる(Kusovら、Journal of Virology(1999),73:9867−9878)。このステップで、ペプタマー形成の効率がより高まる。ウイルスの特徴的な形態はこのウイルスタンパクの統合に由来し、その三次元構造は、保護的免疫応答の発生に重要である。HAVのウイルス粒子は、中和に対して免疫優性である抗原部位を示し、この部位は、様々な地域から単離されたHAV株の間で厳密に保存されている。それには5種の高次構造エピトープが配置され、そのうち3種は五量体であり、他の2種は、これらの五量体が集合してエンベロープを形成した後に作り出される。
【0005】
抗原部位の高次構造が変化することに起因して、又は五量体のアセンブリ中に五量体に存在するエピトープ断片が並列することに起因して、この最後のエピトープが形成されると考えられている。五量体もウイルス粒子も中和抗体を誘導し、したがって、これらはワクチン開発に有用である可能性がある(Stapletonら、Journal of Virology(1993),67:1080−1085)。HAVの完全なオープンリーディングフレームを含む組換えバキュロウイルスを用いて、HAVの巨大ポリタンパクが発現されている。昆虫細胞でのプロセシングの結果、他の中間体タンパクも発現されている(Stapletonら、The Journal of Infectious Diseases(1995),171:9−14)。さらに、哺乳動物細胞中でHAVの同じポリタンパクを発現する、組換えワクシニアウイルスが構築されている。これらの遺伝子構築物の感染細胞抽出物で、ポリタンパクの翻訳後プロセシングが行われてHAVのものと類似したキャプシドが生じることが判明した(Winokurら、Journal of Virology(1994),65:5029−5036)。1993年1月21日のWinokurらの国際特許出願公開WO 9301279、米国特許第5294548号(McLindenら、1994年3月)、国際特許出願公開WO 09844122(Probst,2002年8月27日)、国際特許出願公開WO 9111460、米国特許第5605692号(Thomasら、1997年2月25日)など、バキュロウイルス及びワクシニアウイルスシステム中で発現させる、HAVに対する組換えワクチンの変種を記載している特許があり、その中で、オープンリーディングフレーム(ORF)の配列が免疫原性キャプシド及び五量体の産生に使用され、シス、トランス並びにバイシストロン(bicistronic)構築物中で構造領域及びP3領域を発現させてHAVキャプシドを得る方法が保護されている。
【0006】
バイオリアクターとしてのトランスジェニック植物
根粒菌のアグロバクテリウムツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)による遺伝子移入から生じる最初のトランスジェニック植物は、1980年代初頭に作成された(Zambryskiら、EMBO J.1983,2:2143−2150)。この技術は初め、病原微生物(Powellら、Science 1986,232:738−743)、昆虫(Vaeckら、Nature 1987,328:33−37)、及び除草剤に対する(Of Blockら、1987,EMBO J.6:2513−2518)耐性を獲得する方法として使用されていた。しかし、植物(vegetable)細胞が、高度に複雑な構造の外来タンパクを正確に集合させることができることが実証されると、産業上及び生物薬剤上関心の高い組換えタンパクの実用的な生産を段階的に増大させる新しい戦略として、これに価値がある可能性があることが速やかに示唆された(Bartaら、Plant Mol.Biol 1986,6:347−357;Cramerら、Ann.N And Acad.Sci.1996,792:62−71;Staubら、Nature Biotechn.2001.18:333−338)。
【0007】
1992年に、サブユニットワクチン生産に関する新しい概念が導入された。これは、トランスジェニック植物がB型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)を発現することができることが実証されたことから生じた。この知見に基づいて、食品中にワクチンの候補を産生させ、この食品を摂取することだけで免疫感作を実現するのに植物を使用することができることが考えられた。これらの事実によって、「食用ワクチン」との名称が現れた(Arntzenら、Plants.Vaccine 1994,94:339−344)。その後に、HBsAgを含むトランスジェニックジャガイモを飼料として与えられたマウスが、市販のワクチンを単回腹腔内投与したときに得られたものと類似した一次免疫応答を示すことが実証された。これらの結果から、食用植物組織中での抗原の発現を、免疫感作の新しい経路とみなすことができることが示唆された(Richterら、Nature Biotechnology 2000,18:1167−1171)。
【0008】
米国特許第5484719号(Lamら、1996年1月16日);米国特許第5612487号(Lamら、1996年1月16日);米国特許第5612487号の分割出願で、国際特許出願PCT/US94/02332の一部継続出願である米国特許第5914123号(Arntzenら、1999年6月22日);米国特許第6136320号(Arntzenら、1999年6月22日);国際特許出願公開WO 9612801(Arntzenら、2002年5月28日);米国特許出願公開第2002006411号(Lamら、2002年6月4日)など、ワクチンの発現に植物を使用することについて記載している特許がいくつか存在する。
【0009】
前記に挙げた文献には、ワクチンとしての植物の使用、並びに植物中でのHBsAg発現が記載され、ある場合では、B型肝炎ウイルス(VHB)を指すのに「ウイルス性肝炎」という用語が使用されている。VHBは、A型肝炎ウイルスとかなり違い、その特徴も非常に異なっている。したがって、これらは、分類学的見地から異なる属に属している。免疫学的に重要な反応を引き起こすことができるHAVの組換えタンパクを得るには、このウイルスゲノムのいくつかのタンパクを発現させ、次いでそのような粒子を五量体又は中空キャプシドとして形成させることが必要である。免疫原性粒子のプロセシング及び形成は、ワクシニアウイルス及びバキュロウイルスシステムのような真核生物システムでしか実現していず、酵母などのより単純なシステムでは実現していない。トランスジェニック植物では、HAVのような複雑な抗原の発現は行われていなかった。VHBの場合、抗原は、タンパク1つだけで形成され、酵母などの単純な真核生物システムで効率よく粒子化される。前記で触れた議論により、植物において、HBsAgの発現は、HAVの五量体又は中空キャプシドの発現を含まないことが考えられる。他の特許出願では、2001年8月23日のSohnらの国際特許出願公開WO 0161022におけるヒト乳癌ウイルス抗原、2001年10月31日のZhongらの中国特許出願公開CN1319670における口蹄熱ウイルス抗原、2001年8月16日のReadsらの国際特許出願公開WO 0159070におけるロタウイルス(rotavirus)抗原、2001年12月27日のShacharらの国際特許出願公開WO 0197839におけるガムボロウイルス(gumboro virus)抗原など、様々なウイルス抗原の発現が具体的に記載されている。
【0010】
植物での組換えタンパク産生は、臨床医学で重要な薬剤化合物又はワクチンを生成するための多くの潜在的な利点を提供する。第1に、植物システムは、発酵システムで又はバイオリアクターで使用される産業基盤よりも経済的である。第2に、産業規模で植物及びその産物を採取し試験する技術はすでに利用可能である。第3に、組換えタンパクを含む植物を(食用ワクチンの場合と同様に)食物として使用すると、化合物を精製する必要性をなくすことができる。第4に、組換えタンパクを、ミトコンドリア、液胞、葉緑体、小胞体のような特定の細胞内区画を対象として発現させることもでき、それをこの区画で(例えば葉緑体で)直接発現させることもできる。第5に、組換え産物のヒト病原体による考えられる汚染に関する健康リスクは最小限である。最後に、製剤上重要な組換えタンパクの発現システムとしての植物は、小胞体レベルでのフォールディング、アセンブリ、糖鎖付加を含めた、分泌経路の多くのステップが哺乳動物細胞と類似しているというさらなる利点を有する(Ma y Hein,Plant Physiol.1995,109:341− 346;Rayonら、J.Exp.Bot.1998,49:1463−1472;Sanderfoot y Raikhel,Plant Cell.1999,11:629−641;Vitale及びDenecke、Plant Cell 1999,11:615−628;Lerougeら、Pharmaceutical Biotechnology 2000,1:347−354)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的の基本設計は、構造タンパクの様々な変種及び変異した非構造領域をコードする遺伝子の協調的発現を可能とする遺伝子構築物によって支持され、免疫応答を引き起こすことができる、トランスジェニック植物でのHAVの抗原五量体及びキャプシドの組換え発現を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
基本的に、本発明の新規性は、サイズが小さく、厳密に構造的な領域(最大でもタンパク2Aだけ)、及びタンパク3A/3Bと3B/3Cの間の切断部位が変異しているためにウイルスのプロテアーゼ3Cより大きいサイズを示す、ウイルスの改変プロテアーゼによって形成されるポリタンパクをコードする新規オープンリーディングフレームの高次構造に使用されるウイルスゲノム領域にある。特に使用するプロモーター及び調節シグナルの制御下で、トランスジェニック植物の細胞質ゾル及び小胞体中でのHAVウイルスキャプシドの発現が初めて実現する。構造領域とタンパク分解の原因領域の組合せ発現産物として、小胞体中で五量体及びキャプシドを形成させることから、HAVの場合など、この区画により複雑な構造を構築し保存することができる可能性が実証される。植物中での五量体及びキャプシド産生により、安価かつ確実なワクチンを得るバイオリアクターとしてこれを使用することができる可能性がもたらされる。
【0013】
本発明は、トランスジェニックタバコ、イネ及びニンジン植物を使用して、植物細胞中でウイルスの免疫原性キャプシド及び五量体が初めて得られた例によって実証される。本発明の結果得られるHAVのキャプシド及び五量体は、抗原ワクチンとして使用することができ、HAV検出のための診断法に使用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
遺伝子構築物
HAVのcDNA取得
キューバで単離されたHAVのM2株RNAから、逆転写技術ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を用いて、このウイルスのオープンリーディングフレーム(ORF)をコードするヌクレオチド配列を増幅した。この断片をプラスミド中でクローン化し、そのヌクレオチド配列を決定した。これは、報告されている配列に比べて11アミノ酸残基の変異が生じる違いを示している。配列分析から、アメリカ株のほとんどすべてが属するサブ遺伝子型IAの一部としてM2株を分類することができる。この株のゲノムから、改変断片を設計し、構築し、次いで本発明の対象である様々な遺伝子構築物中で使用した。
【0015】
トランスジェニック植物中でキャプシド及び五量体を発現させるためのベクター遺伝子構築物
HAVの組換えプロテアーゼ
ウイルスキャプシドの形成を可能にするには、ポリタンパクのタンパク分解プロセシングが示差的に起こり、ウイルスタンパクを順序通りに放出させることが必要である。キャプシド形成の効率は、タンパク3ABと膜及びウイルスタンパクの疎水性相互作用のために中間体3ABCが存在するときに増大する。プロテアーゼ3Cを放出せず、HAVの五量体及びキャプシドの形成に必要なそのタンパク分解能を保持するポリペプチド3ABCを得るために、タンパク3A/3Bと3A/3Cの間にあるプロテアーゼ3Cの切断部位に変異を生じさせた。3A/3B間ではグルタミン酸をバリンで、3B/3C間ではセリンをロイシンで置き換えた。免疫原性キャプシド及び五量体を形成するHAVタンパク発現についての新規のかつ様々な戦略の設計に、このポリペプチドを使用した。
【0016】
植物細胞の細胞質ゾル中でのキャプシド及び五量体発現のための組換えHAV
HAVにおいて、ポリペプチドP1−2Aは、ウイルスキャプシド形成において重要な機能を有する。このポリペプチド中に、キャプシド形成を調節する2つのサインが存在する。そのカルボキシル末端ドメイン中にタンパク2Aが認められ、これは、キャプシドアセンブリの第1段階で五量体の形成に必要である。この五量体は、ポリペプチドP1−2Aのうちプロセシングを受けない分子を5つ組み合わせて形成される。タンパクVP4は、第2段階で五量体の会合及びキャプシド形成に必要である。
【0017】
植物細胞の細胞質ゾル中で改変ポリタンパクを発現させるために、改変オープンリーディングフレーム(ORFm)配列を含むベクターを構築した。この構築物は、(元のHAVポリタンパクと比べて)サイズがかなり小さいポリタンパクをコードしている。この配列は、P1−2Aポリペプチドコード配列と変異プロテアーゼ3ABCをコードする配列を融合させた結果得られる。
【0018】
A.ツメファシエンス(A.tumefaciens)を用いて植物を形質転換するのに使用されるプラスミドベクターは、植物中でタンパク発現を調節するシグナルをコードするヌクレオチド配列と融合したHAVのタンパクをコードするDNA配列を含んでいる。この場合、タンパクをコードする配列は、植物細胞の分泌経路を越えて輸送するためのいずれの特定のシグナルとも融合せず、そのためこれは細胞の細胞質ゾル中で発現される。
【0019】
植物細胞の細胞質ゾル中における五量体の排他的発現のための組換えHAV
自己プロセシングによって、排他的に免疫原性のウイルス五量体が形成される。キャプシドに比べて五量体のサイズが小さいと、より小さいものの発現が誘発されるので発現レベルをより高くすることができる。前記で記載したように、ポリペプチドVP0の一部であるタンパクVP4は、五量体の会合及びウイルスキャプシド形成に必要である。
【0020】
ポリタンパクORFmをコードするヌクレオチド配列から、タンパクVP4をコードする断片を除去して、ΔORFmと称される配列とした。植物細胞の細胞質ゾル中でのその発現を調節する配列と融合したポリタンパクΔORFmを発現させるためのプラスミドベクターを構築した。これを、タバコ、イネ及びニンジンの葉にA.ツメファシエンスを感染させて、トランスジェニック植物を得るのに使用した。この遺伝子構築物から発現したポリタンパクは、サイズがかなり小さく、植物細胞中で代謝による変化を起こすことができる。得られた産物は、ワクチン開発のための免疫原のように使用することもできる。
【0021】
植物細胞の小胞体中でのキャプシド及び五量体発現のための組換えHAV
分泌経路に、したがって小胞体にタンパクを向かわせる配列を使用し、この小器官中に保持させるシグナルも使用することにより、植物において小胞体中に異種のタンパクが蓄積される。
【0022】
シグナルペプチドとして、サツマイモスポラミンのN末端ペプチドをコードする配列を使用した。小胞体中にタンパクを保持させるシグナルとして、このタンパクのカルボキシル末端に位置するペプチドKDELをコードする配列を使用した。
【0023】
サツマイモスポラミンのシグナルペプチドをP1−2Aヌクレオチドコード配列の5’領域と融合させ、KDELコード配列と融合させたスペーサーペプチド配列を3’領域に挿入した。得られたDNA断片をバイナリー(binary)ベクターの植物発現シグナルの調節下に置いた。このベクターは、その5’末端でサツマイモシグナルペプチドと、その3’末端でKDELコード配列と融合した変異ポリペプチド3ABCコード配列を含んでいた。この成分もすべて植物発現シグナルの調節下に置いた。どちらのポリペプチドも小胞体中に位置し、プロテアーゼ3ABCは、ポリペプチドP1−2Aをプロセシングし、効率よく粒子を形成することができる。
【0024】
植物細胞の小胞体中で五量体を排他的に発現させるための組換えHAV
P1−2Aポリペプチドコード配列からVP4ヌクレオチドコード配列を除去することにより、ポリペプチドΔP1−2Aを得た。この配列をその5’末端でサツマイモスポラミンシグナルペプチドと、その3’末端で、KDELコード配列と結合したスペーサーペプチドをコードする配列と融合させた。同様に、同じバイナリーベクター中で、変異ポリペプチド3ABCをコードする配列を、その5’末端でサツマイモスポラミンシグナルペプチドと、その3’末端でKDELコード配列と融合させた。すべての成分を植物における発現調節サイン下に置いた。
【0025】
この2つのポリペプチドは、小胞体中に位置し、プロテアーゼ3ABCは、ポリペプチドΔP1−2Aをプロセシングし、排他的に五量体を発現させることができる。この植物は、より高レベルの発現、並びにより良好な成長及び発達を示し、これによって、より多くのバイオマスが得られる。
【0026】
改変HAVの遺伝子産物を発現するトランスジェニック植物の同定
A.ツメファシエンスを各バイナリーベクターで形質転換し、このプラスミドを含む細菌コロニーを得た。異なる遺伝子構築物をそれぞれ独立に有するA.ツメファシエンスを使用して植物を形質転換し、最終的に、選択マーカーであるカナマイシンに耐性の植物を得た。サザンブロット及びPCR技術を使用して、外来DNAが植物中に組み込まれていることを確認した。
【0027】
特定のタンパク抽出緩衝液中でトランスジェニック植物の葉を液体窒素で粉砕して、その葉から可溶性タンパクの抽出を行った。HAV特異的抗血清及びモノクローナル中和抗体を使用して、キャプシド及び五量体を同定した。ウェスタンブロット、ELISA、免疫顕微鏡法(immunomicroscopy)などの免疫学的方法を行い、これより、トランスジェニック植物が、ポリタンパク、又は場合によっては予想されたポリペプチドを発現することが実証され、これらがプロセシングを受け五量体又はキャプシド中に集合することも実証された。
【0028】
高レベルの組換えタンパクを発現する植物を、モノクローナル中和抗体を用いるキャプシド及び五量体の精製に使用した。
【0029】
精製キャプシド及び五量体の免疫原性の決定
タバコ及びイネの植物の葉から精製した産物で免疫感作させたマウスの免疫応答により、HAVキャプシド及び五量体の免疫力を決定した。HAV抗原を発現するトランスジェニックニンジンを飼料として与えたマウスにおける免疫力も評価した。抗原を導入する方法として、経口経路及び非経口経路を用いた。ELISA技術を用いて動物の抗血清のHAVに対する反応性、及びHAV感染をin vitroで中和する免疫血清の中和能について決定することにより、免疫応答を調節し確認した。
【0030】
本発明の利点
本発明が提供する最も重要な利点は、本発明者らの構築物の発現産物であるエンベロープ及び精製五量体と元のウイルスの間に抗原類似性があること;本発明者らの構築物の発現産物として得られるポリタンパクのサイズが元のウイルスのサイズよりかなり小さいので、本発明者らが特許請求する構築物の産物であるエンベロープ及び五量体の植物での発現レベルが、HAVオープンリーディングフレームを発現させたとき、又はP1−2A領域及びP3領域を同時に発現させたときに得られるレベルより高いこと;ポリペプチド3ABCが専らタンパク3A、3B及び3Cによって構成され、タンパク3A/3Bと3B/3Cの間の自己プロセシング部位が変異し、それによってこのポリペプチドのプロセシングが回避され、したがってより効率のよいこのポリペプチド自体によるポリタンパクのタンパク分解能が想定されること;植物細胞の小胞体中での五量体及びHAVウイルスエンベロープの発現レベルが細胞質中より高いこと;植物細胞中での五量体の排他的発現が、この粒子のサイズがより小さいために、より効率よく行われ、より良好な植物の成長及び発達を可能にすること;植物から薬剤タンパクをスケールアップし産生させることが大量の抗原の産生に適していること;現在使用され、当分野の最先端で述べられている他のシステムと比べて生産コストが低下すること;植物でのHAV抗原の発現により、ヒトに影響を及ぼす病原体の混入リスクが低下すること;産物を精製することを必要とせずに植物を使用できる可能性があるために、HAVに対しての経口免疫感作が、免疫感作にかかるコストを下げるのにかなり貢献することである。
【0031】
微生物の寄託
微生物の寄託に関するブダペスト条約(Budapest Treatment for Microorganism Deposit)の規則に従って、ベルギー微生物保存機関(Belgian Coordinated collection of Microorganisms)BCCM、LMBP−COLLECTIONに、プラスミドpBVHARE、pBΔVHARE、pBMLAm及びpBΔMLAmを寄託し、これらは、それぞれ受託番号LMBP4721、LMBP4722、LMBP4723及びLMBP4724で2003年5月19日に寄託された。
【実施例1】
【0032】
HAVキューバ株M2のORFのクローン化
プラスミドpMLA1の当該の配列を図1(A)に示す。キューバで単離され特徴付けられたHAV株M2からRNAを精製し、HAVの以前に報告された他の配列に特異的なオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO 1及び2)を使用し、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)技術を用いて6.7kbのDNA断片を増幅した。このバンドを予めSmaIエンドヌクレアーゼで消化したベクターBlueScript(KS+)中にクローン化した。得られたプラスミドをpMLA1と名付け、HAVキューバM2株のORFの配列決定に使用した。DNA配列(SEQ ID NO 3)は、報告されているものに比べて変化を示している。これは、異なるアミノ酸が11個生じる変化が認められる。この配列分析から、アメリカ株のほとんどすべてが属するサブ遺伝子型IAに、M2株を分類することができる。実際にキューバ株M2が以前から報告されているものと異なるHAV株であることが、この配列から確認された。
【実施例2】
【0033】
植物細胞の細胞質ゾル中でキャプシド及び五量体を発現させるための遺伝子構築物
プラスミドpP1−2Aの当該の配列を図1(B)に示す。プラスミドpMLA1に由来するタンパクVP4をコードする配列の5’領域及びタンパク2Aをコードする配列の3’領域にそれぞれ相補的な特異的オリゴヌクレオチド(SEQ ID NO 4)を用いて、構造タンパク(P1−2A)をコードする配列をPCRで増幅することによって、このプラスミドを得た。2.5kbの増幅バンド(SEQ ID NO 6)をSmaI消化ベクターBlueScript(KS+)中にクローン化した。
【0034】
プラスミドp3ABCの当該の配列を図1(C)に示すが、このプラスミドを得るために、この遺伝子の5’及び3’領域に相補的なオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO 7及び8)を用いて、タンパク3Aをコードする0.2kbの領域をPCRで増幅した。これをBamHI/EcoRV消化ベクターBlue Script(KS+)中にクローン化した。その後、同じベクターであるがEcoRV/XbaI部位の間の領域中に、タンパク3Bをコードする合成ヌクレオチド配列(SEQ ID NO 9及び10)をクローン化した。得られたプラスミドをp3ABと名付けた。その一方で、プラスミドpMLA1から、オリゴヌクレオチドSEQ ID NO 11及び12を用いて、タンパク3Cをコードする0.65kbの配列をPCRで増幅した。このバンドをベクターP3ABのXbaI/HindIII部位の間にクローン化した。その結果得られた配列を3ABC(SEQ ID NO 13)と名付けた。
【0035】
これは、タンパク分解活性があるが自己プロセシングを起こし得ないポリタンパクをコードしている。TをCで、GをCでそれぞれヌクレオチド置換することにより、タンパク3A/B及び3B/C間の切断部位に変異が生じているからである。
【0036】
プラスミドpMLAmの当該の配列を図1(D)に示す。これを得るために、プラスミドpP1−2AをEcoRI及びClaIで消化した。変異ポリペプチド3ABCをコードする1kbのバンドをEcoRI/ClaI消化によって切り出し、予め消化したpP1−2Aの適切な部位にクローン化した。プラスミドpMLAmは、元のポリタンパクと比べてかなり軽量のHAVポリタンパクをコードする改変配列(SEQ ID NO 14)を含んでいる。
【0037】
ベクターpKTPL−2でSmaI/ClaI消化した3.4kbのORFmのバンドをクローン化することにより、プラスミドpKMLAmを得た。このベクターは、プロモーターである2X 35S CaMVプロモーター配列、TEVのリーダー配列及び35S CaMVの転写終結配列を含んでいる。ORFmバンドをクローン化するために、プラスミドpKTPL−2をNcoIで消化し、その後DNA PolIのクレノー断片で平滑化し、最後にClaIで消化した。
【0038】
バイナリープラスミドpBMLAmの当該の配列を図1(F)に示す。プラスミドpKMLAmをSphIで消化し、続いてマングビーン(Mung Bean)ヌクレアーゼで処理し、4.7kbのバンドを、予めSmaIで消化したバイナリーベクターpBin19中にクローン化して、このプラスミドを得た。
【0039】
得られたプラスミドpBMLAmは、カナマイシン耐性をもたらす選択マーカーとして働くネオマイシンホスホトランスフェラーゼII遺伝子(NPTII)、改変HAVポリタンパクをコードし、2X 35S CaMVプロモーター配列及びTEVのリーダー配列並びにCaMVの転写終結配列によって調節されるORFm遺伝子を含む。これはまた、植物ゲノムへのこの移入を促進するT−DNAの境界配列をも含む。
【実施例3】
【0040】
植物細胞の細胞質ゾル中で五量体を発現させるための遺伝子構築物
プラスミドpΔMLAmの当該の配列を図2(A)に示す。タンパクVP4を除去しこのプラスミドを得るために、酵素SmaI/PstIで切断してプラスミドpMLAmから114bpの断片を除去し、それを合成ヌクレオチド配列(SEQ ID NO 15及び16)で置き換えて、タンパクVP2をコードする遺伝子の起始部を回復させた。領域ΔORFmの配列は、SEQ ID NO 17に一致する。SmaI/ClaI消化したΔORFmのバンド(3.46kb)を、予めNcoI/クレノー/ClaIで消化したプラスミドpKTPL−2中にクローン化して、プラスミドpKΔMLAmを得た。
【0041】
バイナリープラスミドpBΔMLAmの当該の配列を図2(B)に示す。Bin19を酵素SmaIで消化して、このバイナリープラスミドを得た。酵素SphIでプラスミドpKMLAmを消化して4.6kbのDNA断片を得、これをマングビーンヌクレアーゼで処理し、次いでクローン化した。
【0042】
得られたプラスミドpBΔMLAmは、カナマイシン耐性をもたらす選択マーカーとして機能するネオマイシンホスホトランスフェラーゼII遺伝子(NPTII)、HAV改変ポリタンパクをコードし、プロモーターである配列2X 35S CaMV及びTEVリーダー配列並びに35S CaMVの転写終結配列によって調節されるORFm遺伝子を含む。これはまた、植物ゲノムに移入される右側及び左側の境界配列をも含む。
【実施例4】
【0043】
植物細胞の小胞体中でキャプシド及び五量体を発現させるための遺伝子構築物
プラスミドpBVHAREの当該の配列を図3Bに示す。このプラスミドを得るために、KDEL保持シグナルをコードする合成断片(SEQ ID NO 18及び19)をベクターBS(+)のEcoRV/ClaI部位にクローン化した。その一方で、プラスミドpP1−2AのStyI/EcoRI部位に、タンパク2Aの3’末端を改変し、この領域中のプロテアーゼ切断部位を除去し、かつ遺伝子の結合部とKDELシグナルをコードする配列との間に間隔を空けるバーとして働く配列を導入する合成断片(SEQ ID NO 20及び21)をクローン化した。その後、この配列(2.5kb)を酵素SmaI/EcoRVで切り出し、ベクター BS−KDEL中にクローン化し、プラスミドpP1−2ARE(図3A、SEQ ID NO 22)を得た。p3ABCプラスミドを酵素XhoI/クレノー/EcoRIで消化し、3ABC配列をEcoRI/EcoRV部位にクローン化して、プラスミドp3ABCREを得た(図3A、SEQ ID NO 23)。
【0044】
対象とする遺伝子に植物発現調節シグナルを供給するために、酵素SmaI/ClaIでプラスミドpP1−2AREから切り出した構造領域P1−2A−KDEL(2.5kb)を、NcoI/クレノー/ClaIで消化したプラスミドpKTPL−2中にクローン化した。得られたプラスミドをpKP1−2AREと名付けた。プラスミドp3ABCREから酵素NcoI/ClaIで1kbの領域3ABC−KDELを切り出し、同じ酵素で消化したプラスミドpKTPL−2中にクローン化した。得られたプラスミドは、pK3ABCREであった。
【0045】
最後に、A.ツメファシエンスを用いる植物の形質転換のためのプラスミドを得るために、プラスミドpK3ABCREから酵素SalIで切り出した2kbの配列を、同じ酵素で予め消化したバイナリーベクターpBin 19中にクローン化した。得られたプラスミドをpB3ABCREと名付けた。その後、同じベクターのSphI部位に、SphI消化でプラスミドpKP1−2AREから切り出した配列P1−2A−KDELに相当する発現カセットをクローン化した。得られたプラスミドpBVHAREは、構造領域もプロテアーゼの機能を有する領域も別個に有し、これらは、植物発現調節シグナルの存在下で小胞体保持シグナルと融合している。またこのプラスミドは、選択マーカーとしてネオマイシンホスホトランスフェラーゼII遺伝子(NPTII)を有する。
【実施例5】
【0046】
植物細胞の小胞体中で五量体を発現させるための遺伝子構築物
プラスミドpBΔVHAREの当該の配列を図4(B)に示す。このプラスミドを得るために、酵素SmaI/PstIでプラスミドpP1−2AREを切断して、その断片を合成ヌクレオチド配列(SEQ ID NO 15及び16)で置き換えて、タンパクVP2をコードする遺伝子の起始部を回復させた。得られたプラスミドpΔP1−2ARE(図4A、SEQ ID NO 24)をSmaI/ClaIで消化し、2.4kbのバンドを、NcoI/クレノー/ClaIで消化したベクターpKTPL−2中にクローン化して、プラスミドpKΔP1−2AREを得た。酵素SphIで消化した発現カセットをプラスミドpB3ABCRE(3ABC−KDELを含むバイナリープラスミド)中にクローン化した。
【0047】
得られたバイナリープラスミドは、植物発現シグナルの存在下でKDELペプチドと融合した、タンパクVP4をコードする配列を有さない構造領域、同じシグナルの存在下の3ABC−KDEL領域、及び選択マーカーであるネオマイシンホスホトランスフェラーゼII遺伝子(NPTII)を含む。
【実施例6】
【0048】
タバコ(Nicotina tabacum)トランスジェニック植物中でのHAVのキャプシド及び五量体の獲得
タバコ(Nicotiana tabacum)植物の遺伝的形質転換をZambryskiら(1983)の方法に従って実施した。
【0049】
A.ツメファシエンス株At2260(Deblaereら、1985)を、液体窒素法(Hofgen及びWillmitzer、1988)により、開発したバイナリープラスミド(PBΔVHARE、PBVHARE、PBΔMLAm、PBMLAm)で形質転換した。「in vitro」で培養しているプチハバナ(Petit Havana)MR1種のタバコ植物の葉原基を、組換えアグロバクテリウム(Agrobacterium)で形質転換した。カナマイシン(100mg/L)を選択マーカーとして使用した。
【0050】
サザンブロット、ウェスタンブロット、ELISA、免疫顕微鏡法などいくつかの手順を実施して、タバコ植物ゲノム中に対象とする遺伝子が存在し発現しているかどうか、並びにウイルスエンベロープ又は五量体が形成されているかどうかを検出した。
【実施例7】
【0051】
トランスジェニックニンジン植物(Daucus carota L.)中でのHAVのキャプシド及び五量体の獲得
バイナリープラスミド(PBΔVHARE、PBVHARE、PBΔMLAm、PBMLAm)で形質転換したA.ツメファシエンス株At2260を植物の形質転換に使用した。新クロダ(NEW KURODA)種の3週齢の発芽した胚軸を、1cmの区分に切断し、BAN−9培地(Murashige及びSkoog、1962(MS)、NAAを0.5mg/L補充)に植え、3日間培養した。その後、前記に記載の構築物の各1つを含むAt懸濁液とともにこれを30分間インキュベートした。外植片をBAN−9培地に再び移して72時間培養した。この期間の後、カナマイシン(100mg/l)を補充した再生培地にこれを植えた。3週間後に苗条が現れ、これを個別化し、やはりカナマイシンを100mg/L補充したMS培地に植えた。遺伝子が組み込まれたことを、PCR産物のサザンブロットで確認した(図6)。ポリタンパク発現、そのプロセシング及びウイルスキャプシド及び五量体の形成を、ELISA(図8)及びウェスタンブロット(図7)で実証した。
【実施例8】
【0052】
トランスジェニックイネ植物(Oryza sativa L.)中でのHAVのキャプシド及び五量体の獲得
Hieiら(1994)が使用した方法に従って、イネ植物の遺伝的形質転換を実施した。A.ツメファシエンス株At2260を、液体窒素法を用いて、開発したバイナリープラスミド(pBΔVHARE、pBVHARE、pBΔMLAm、pBMLAm)で形質転換した。イネの胚盤から得られたカルスを組換えA.ツメファシエンスで形質転換した。カナマイシン(100mg/L)を選択マーカーとして用いた。
【0053】
イネ植物ゲノム中に対象とする遺伝子が存在し発現していること、並びにウイルスキャプシド又は五量体が形成されていることを確認するために、下記に記載する様々な手順を実施した。
【実施例9】
【0054】
トランスジェニック植物の分子的免疫化学的特徴付け
サザンブロットによる分析
Dellaportaら(1983)により記載の方法を使用して、タバコ、ニンジン及びイネ植物から、サザンブロット用の染色体DNAを得た。サンプルとして、選択マーカーに対して耐性を示す前述の構築物を有する形質転換植物の葉を使用した。非形質転換植物の葉を陰性対照として用いた。
【0055】
全DNA消化、アガロースゲル電気泳動、Hybond N膜へのトランスファー及びハイブリダイゼーションを標準的手順(Sambrookら、1989)で行った。タンパクVP1をコードする遺伝子を含む1.2kbのDNA断片を、Primer−a−Gene Labeling System(Promega Corp、米国)を用いて32Pで標識し、放射活性プローブとして用いた。同じ断片を陽性対照として用いた。
【0056】
図5は、細胞質中でHAVのキャプシドと五量体をどちらも発現する構築物PBΔMLAm及びPBMLAmで形質転換したトランスジェニックタバコ植物のサザンブロットを示している。SmaI及びClaIでのDNA消化によって、3.4kbのバンドが得られる。小胞体中で発現する構築物PBΔVHARE及びPBVHAREで形質転換したトランスジェニック植物由来の全DNAをSmaIとI−EcoRIで消化して、2.4kbのバンドを得た。図5に示す結果は、植物がそのゲノム中に構造タンパクをコードする配列を含むことを実証するものである。
【0057】
トランスジェニックニンジンとイネ植物の両方で、SEQ ID NO 4及び5の配列に相当するオリゴヌクレオチドを用いて、PCR増幅産物にサザンブロットを行った。図6に示すように、タンパクVP1をコードする放射活性標識配列は、構造タンパクをコードする配列の予想サイズに相当する2.5kbのバンドと相補的に結合している。
【0058】
ウェスタンブロットによる分析
ウェスタンブロットの結果を図7に示す。Towbinら(1979)により記載の方法に従って、組換え分子を免疫学的に検出するウェスタンブロット法を実施した。ウェスタンブロットのサンプルは、五量体しか発現しない構築物で形質転換したトランスジェニックタバコ、ニンジン及びイネ植物から抽出した全可溶性タンパクからなるものであり、タバコ5、ニンジン7及びイネ3のクローンは、小胞体中で五量体を発現させる構築物pBΔVHAREで形質転換したもの、タバコ25及びニンジン10のクローンは、細胞質中で五量体の発現を可能にする構築物pBΔMLAmで形質転換したものであった。陰性対照として、非形質転換タバコの葉から抽出したタンパクを使用した。陽性対照として、VP1タンパクを大腸菌(E.coli)中で発現させた。非常に薄い粉塵を得るまで、葉を液体窒素で粉砕した。Schoutenら(1997)の報告の通りに、葉1g当たりにタンパク抽出緩衝液[pH6.8の61mMトリス−HCl、0.1%トライトン(Triton)、12.5%グリセロール、及び1mMフェニルメチルスルホニルフロリド(PMSF)]1mLを加えた。13000rpmで遠心分離することによって、不溶性物質を除去した。
【0059】
SDS−PAGEを行った全タンパクをニトロセルロース膜に移し、酵素アルカリホスファターゼ(PhoA)と結合した抗VP1ポリクローナル抗体を用いて、対象とするタンパクを同定した。比色反応を用いて、この酵素の検出を行った。
【0060】
図7において、すべての培養物中にVP1タンパクと同じサイズのタンパクバンドが存在すること、並びにポリタンパクの不完全なプロセシングから他の中間産物が得られることを観察することができる。
【0061】
免疫酵素検定(ELISA)
ELISAの結果を図8に示す。「サンドイッチ」法を行った。モノクローナル抗体7E7の10mg/mL炭酸緩衝液(0.015M Na2CO3、0.028M NaHCO3、pH9.6)溶液で、プレート(Maxisorp、Nunc)をカバーし37℃で4時間置いた。ミルクの5%PBS(100mM NaCl、80mM Na2PO4、20mM NaH2PO4、pH7.4)溶液で、ブロッキングを37℃で2時間実施した。その後、形質転換及び非形質転換タバコ、ニンジン及びイネ植物に対応する(ウェスタンブロットについて記載されたのと同様に調製した)サンプル100μLを加えた。プレートを4℃で1晩インキュベートした。PBSで洗浄後、1/1000に希釈した(ミルクを0.5%含むPBS中で1mg/mL)アルカリホスファターゼ結合モノクローナル抗体7E7を100μL加えた。プレートを37℃で1時間インキュベートした。0.1%ジエタノールアミン中で調製した4−ニトロフェニルホスフェート(酵素の基質)を加えることによって、反応を生じさせた。色が現れるかどうかを60分間追跡して調べた。分光光度計で、波長405nmでの吸光度を読み取った。ELISAのあらゆる段階において、トゥイーン(Tween)20を0.1%含むPBSでプレートの洗浄を3回行った。
【0062】
免疫電子顕微鏡法による分析
免疫顕微鏡法の結果を図9に示す。プラスミドpBMLAmで形質転換したタバコ及び非形質転換植物の、どちらも組織培養由来のサンプルを4%ホルムアルデヒド溶液で、その後0.2%グルタルアルデヒドで固定した。これをエタノールで脱水し、次いでLowicryl K 4M(Chemische Werke Lowi,Waldkraiburg)溶液中でインキュベートした。超薄切片をニッケル網に置き、モノクローナル抗体7E7とともにインキュベートした。このステップの後、15nmの金コロイド粒子で標識した抗マウスIgGポリクローナル抗体(British Bio−Cell International)とともにインキュベートした。酢酸ウランで5分間、その後クエン酸鉛で7分間処理して、免疫標識切片に対比染色を行った後、透過型電子顕微鏡(Jeol−Jem 2000EX、日本)で検鏡した。その結果、構築物pBMLAmで形質転換したタバコ植物でのみ直径約27nmの粒子が見られ、これによって、このタンパクが細胞の細胞質中に発現していることが示された。
【実施例10】
【0063】
トランスジェニックタバコ及びイネ植物からのキャプシド及び五量体の精製
キャプシド及び五量体を精製するために、粒子及び免疫原性五量体を専ら認識する、CIGB研究所で得られた抗HAVモノクローナル抗体を使用した。ウェスタンブロット分析で説明したプロトコールを用いて、植物細胞タンパクを抽出した。遠心分離から得られた上清を、0.5M塩化ナトリウムに溶解し、抗体を付けた親和性ゲル(Bio−rad Laboratories,Richmond,CA)と混合した。この混合物を4℃で16時間インキュベートした。このゲルを10倍量のPBS(100mM NaCl、80mM Na2PO4、20mM NaH2PO4、pH7.4)で洗浄し、その後、pH2.5の0.2Mグリシンで、対象とするタンパクを溶出させた。この溶出物を塩基性トリスで中和し、PBSに対して透析した。HAVウイルスキャプシド及び五量体の認識用の特異的な、市販の7E7モノクローナル抗体(Mediagnost)を用いて、この葉抽出物由来のHAV粒子及び五量体が存在するかどうかを、ELISAで検出した。
【実施例11】
【0064】
腹腔内投与による、トランスジェニック植物から精製したキャプシド及び五量体の免疫原性の決定
トランスジェニックタバコ及びイネ植物から精製したキャプシド及び五量体750EL.Uを2回投与して、14週齢の白色ICRマウスを免疫感作させた。同様に、一群のマウスに市販のHAV抗原(Mediagnost)を接種し、これを陽性対照として使用した。他群にPBSを接種し、これを陰性対照として用いた。接種から0日後、15日後、30日後、50日後及び70日後に血液サンプルを採集した。
【0065】
抑制ELISAを用いて、抗体レベルを測定した。モノクローナル抗体7E7 5μgでプレートをカバーし、次いで4時間インキュベートした。その後、それを0.1%トゥイーン入りPBSで1回洗浄した。0.1%トゥイーン入りPBS中にミルクを5%加えてブロッキングを行い、37℃で2時間インキュベートした。このプレートを0.1%トゥイーン入りPBSで3回洗浄した。HAV抗原(Mediagnoct)とともに37℃で20分間予めインキュベートしていた免疫感作マウス血清を加えた。このプレートを16℃で12時間インキュベートし、0.1%トゥイーン入りPBSで5回洗浄した。最後に、ミルクを0.5%含むPBSで1/1000に希釈したアルカリホスファターゼ結合モノクローナル抗体7E7を100μL加えた。37℃で1時間インキュベーションを実施した。ジエタノールアミンで調製した4−ニトロフェニルホスフェート(酵素の基質)を加えることによって、反応を生じさせた。色が現れるかどうかを60分間追跡して調べた。分光光度計で、波長405nmでの吸光度を読み取った。図10に、タバコ及びイネ植物によって産生された五量体を接種したマウスの血液中で検出された、トランスジェニック植物から精製した抗原を接種したマウス血清の抑制の平均レベルを示す。同様にして、キャプシド及び五量体の発現を可能にする構築物で形質転換したタバコ及びイネ植物で産生された抗原で免疫感作させたマウスで類似した抗体レベルが認められた。
【実施例12】
【0066】
経口投与による、トランスジェニック植物から精製したキャプシド及び五量体の免疫原性の決定
精製抗原を使用する経路と、抗原を発現しているニンジンを動物に飼料として与える経路の2つの経路で、抗原の経口投与を行った。
【0067】
経口投与した精製キャプシド及び五量体の抗原性を決定するために、8週齢のBalb/cマウスに五量体及びキャプシド7500EL.U.を4回投与した。接種から0日後、15日後、30日後、50日後及び70日後に血液200μLを採集して、抑制ELISAにより抗HAV抗体が存在するかどうかを検出した。
【0068】
実施例11で前述した手順を用いて、抑制ELISAを行った。
【0069】
図11に示された結果によれば、トランスジェニック植物中で発現したHAVの五量体の経口投与によって免疫応答が生じ、このことは、この実験に使用したマウス血清の平均抑制レベルによって示されている。経口投与したマウス血清の平均抑制レベルは、腹腔内投与後に得られたものと比べて低かった。植物を介する五量体の経口投与を実施し、(五量体のみを産生するように特別に設計された構築物pBΔMLAmで形質転換した)生ニンジン5gを週1回4週間与えた。非形質転換ニンジンを飼料として与えたマウス血清を、陰性対照として用いた。この植物が免疫反応を引き起こすことができることが、図12に示す抑制ELISAによって実証された。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】植物植物細胞の細胞質ゾル中でエンベロープ及び五量体を発現させるための遺伝子構築物を示す図である。A)は、HAVのM2株のORFの概略図である。B)は、構造タンパク(P1−2A)をコードする配列の概略図である。C)は、3ABC領域をコードする配列の概略図である。D)は、HAVのORFmの概略図である。E)は、植物発現のためのバイナリーベクター中にクローン化された当該の挿入配列の概略図である。
【図2】植物細胞の細胞質ゾル中で五量体を発現させるための遺伝子構築物を示す図である。A)は、VP4をコードする配列を含まないΔORFmの概略図である。B)は、ΔORFmを植物で発現させるためのバイナリーベクター中にクローン化された当該の挿入配列の概略図である。
【図3】植物細胞の小胞体中でエンベロープ及び五量体を発現させるための遺伝子構築物を示す図である。A)は、KDEL配列と融合したP1−2A配列の概略図である。B)は、小胞体中で発現させるためのバイナリーベクター中にクローン化された当該の挿入配列の概略図である。Eはスペーサー、KはKDELを示す。
【図4】植物細胞の小胞体中で五量体を発現させるための遺伝子構築物を示す図である。A)は、KDEL配列と融合した、VP4配列を含まないP1−2A配列の概略図である。B)は、植物発現のためのバイナリーベクター中にクローン化された当該の挿入配列の概略図である。Eはスペーサー、KはKDELを示す。
【図5】トランスジェニック植物のゲノムDNAのサザンブロットを示す図である。
【図6】ニンジン及びイネトランスジェニック植物のPCR産物のサザンブロットを示す図である。
【図7】エンベロープ及び五量体を細胞質ゾル中で発現させるための遺伝子構築物で形質転換したトランスジェニックタバコ、ニンジン及びイネの植物タンパクのウェスタンブロットを示す図である。
【図8】HAVエンベロープ及び五量体を細胞質ゾル中で発現させるための遺伝子構築物で形質転換したタバコ、ニンジン及びイネ植物に行った免疫酵素検定(ELISA)を示す図である。
【図9】構築物pBMLAmで形質転換した、あるタバコ植物の免疫電子顕微鏡法の結果を示す図である。A)は、非形質転換植物である。B)は、形質転換植物である。C)は、形質転換植物である。
【図10】腹腔内経路によってHAVで免疫感作させたマウスの血清の抑制ELISAを示す図である。
【図11】イネ及びタバコ植物から精製したHAV五量体で経口免疫感作させたマウスの血清の抑制ELISAを示す図である。
【図12】HAV五量体を発現している植物から採集したニンジンを飼料として与えることによって経口免疫感作させたマウスの血清の抑制ELISAを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HAVゲノム(SEQ ID NO 3)の改変断片に基づくキメラHAV遺伝子を含む遺伝子構築物で形質転換した植物細胞中で得られるA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項2】
前記抗原が五量体のみを含むことを特徴とする、請求項1に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項3】
前記抗原が、以下の成分
a.タンパクVP2、VP3、VP1及び2Aをコードするヌクレオチド配列(SEQ ID NO 25)と、
b.タンパク3A、3B、3Cをコードするヌクレオチド配列(SEQ ID NO 13)との融合物を含むSEQ ID NO 17に記載のキメラ遺伝子の発現から得られることを特徴とする、請求項1及び2に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項4】
前記キメラ遺伝子が適当なプロモーター及び転写終結シグナルによって調節されている植物細胞中で発現される、請求項3に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項5】
前記抗原が、植物細胞の細胞質中で得られることを特徴とする、請求項4に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項6】
前記抗原が、双子葉植物中で発現されることを特徴とする、請求項5に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項7】
前記抗原が、タバコ、ニンジン、及び食用植物の果実中で発現されることを特徴とする、請求項6に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項8】
前記抗原が、単子葉植物中で発現されることを特徴とする、請求項5に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項9】
前記抗原が、イネ、及び食用植物の果実中で発現されることを特徴とする、請求項8に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項10】
前記抗原が、五量体及び中空キャプシドを含むことを特徴とする、請求項1に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項11】
前記抗原が、以下の2つの成分
a.タンパクVP4、VP2、VP3、VP1及び2AをコードするSEQ ID NO 6に記載のヌクレオチド配列と、
b.請求項3bに記載のタンパク3A、3B及び3Cをコードするヌクレオチド配列との融合物を含むキメラ遺伝子の発現から得られることを特徴とする、請求項10に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項12】
前記キメラ遺伝子が適当なプロモーター及び転写終結シグナルによって調節されている植物細胞中で発現される、請求項11に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項13】
前記抗原が、植物細胞の細胞質中で得られることを特徴とする、請求項12に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項14】
前記抗原が、双子葉植物中で得られることを特徴とする、請求項13に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項15】
前記抗原が、タバコ、ニンジン、及び食用植物の果実中で発現されることを特徴とする、請求項14に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項16】
前記抗原が、単子葉植物中で得られることを特徴とする、請求項13に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項17】
前記抗原が、イネ、及び食用植物の果実中で発現されることを特徴とする、請求項16に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項18】
前記抗原が、2つのキメラ遺伝子
a.その5’末端でシグナル配列と、その3’末端でスペーサー配列、それに続いてKDELペプチドをコードする配列と融合した、タンパクVP2、VP3、VP1及び2Aをコードする配列ID NO.24に記載のヌクレオチド配列と、
b.その5’末端でシグナル配列と、その3’末端でスペーサー配列、それに続いてKDELペプチドをコードする配列と融合した、請求項3Bで言及したタンパク3A、3B、3Cをコードする配列ID NO.23に記載のヌクレオチド配列との協調的発現から得られる、請求項2に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項19】
キメラ遺伝子が、適当なプロモーター及び転写終結シグナルによって調節されている植物細胞中で発現される、請求項18に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項20】
前記抗原が植物細胞の小胞体中で得られる、請求項18及び19に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項21】
前記抗原が、双子葉植物中で得られることを特徴とする、請求項20に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項22】
前記抗原が、タバコ、ニンジン、及び食用植物の果実中で得られることを特徴とする、請求項21に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項23】
前記抗原が、単子葉植物中で得られることを特徴とする、請求項20に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項24】
前記抗原が、イネ、及び食用植物の果実中で得られることを特徴とする、請求項23に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項25】
前記抗原が、2つのキメラ遺伝子
a.その5’末端でシグナル配列と、その3’末端でスペーサー配列、それに続いてKDELペプチドをコードする配列と融合した、タンパクVP4、VP2、VP3、VP1及び2Aをコードする配列ID NO.22に記載のヌクレオチド配列と、
b.請求項18bに記載のヌクレオチド配列との協調的発現から得られる、請求項10に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項26】
キメラ遺伝子が、適当なプロモーター及び転写終結シグナルによって調節されている植物細胞中で発現されることを特徴とする、請求項25に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項27】
前記抗原が植物細胞の小胞体中で得られることを特徴とする、請求項25及び26に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項28】
前記抗原が、双子葉植物中で得られることを特徴とする、請求項27に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項29】
前記抗原が、タバコ、ニンジン、及び食用植物の果実中で得られることを特徴とする、請求項28に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項30】
前記抗原が、単子葉植物中で得られることを特徴とする、請求項27に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項31】
前記抗原が、イネ、及び食用植物の果実中で得られることを特徴とする、請求項30に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項32】
精製して非経口投与することができる、請求項1、3、11、18及び25に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項33】
他のウイルス抗原と組み合わせて投与することができる、請求項32に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項34】
経口投与することができる、請求項1、3、11、18及び25に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項35】
凍結乾燥抽出剤、丸剤又はカプセル剤として投与することができる、請求項34に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項36】
ジュースの形で投与することができる、請求項1、3、11、18及び25に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項37】
免疫原性があり、A型肝炎ウイルスに対して保護的免疫応答を引き起こす、請求項1、3、11、18及び25に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項38】
A型肝炎診断キットの一部として使用することができる、請求項32に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項39】
単一及び混合ワクチンを調製するための、請求項1から38までに記載の抗原の使用。
【請求項1】
HAVゲノム(SEQ ID NO 3)の改変断片に基づくキメラHAV遺伝子を含む遺伝子構築物で形質転換した植物細胞中で得られるA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項2】
前記抗原が五量体のみを含むことを特徴とする、請求項1に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項3】
前記抗原が、以下の成分
a.タンパクVP2、VP3、VP1及び2Aをコードするヌクレオチド配列(SEQ ID NO 25)と、
b.タンパク3A、3B、3Cをコードするヌクレオチド配列(SEQ ID NO 13)との融合物を含むSEQ ID NO 17に記載のキメラ遺伝子の発現から得られることを特徴とする、請求項1及び2に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項4】
前記キメラ遺伝子が適当なプロモーター及び転写終結シグナルによって調節されている植物細胞中で発現される、請求項3に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項5】
前記抗原が、植物細胞の細胞質中で得られることを特徴とする、請求項4に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項6】
前記抗原が、双子葉植物中で発現されることを特徴とする、請求項5に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項7】
前記抗原が、タバコ、ニンジン、及び食用植物の果実中で発現されることを特徴とする、請求項6に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項8】
前記抗原が、単子葉植物中で発現されることを特徴とする、請求項5に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項9】
前記抗原が、イネ、及び食用植物の果実中で発現されることを特徴とする、請求項8に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項10】
前記抗原が、五量体及び中空キャプシドを含むことを特徴とする、請求項1に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項11】
前記抗原が、以下の2つの成分
a.タンパクVP4、VP2、VP3、VP1及び2AをコードするSEQ ID NO 6に記載のヌクレオチド配列と、
b.請求項3bに記載のタンパク3A、3B及び3Cをコードするヌクレオチド配列との融合物を含むキメラ遺伝子の発現から得られることを特徴とする、請求項10に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項12】
前記キメラ遺伝子が適当なプロモーター及び転写終結シグナルによって調節されている植物細胞中で発現される、請求項11に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項13】
前記抗原が、植物細胞の細胞質中で得られることを特徴とする、請求項12に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項14】
前記抗原が、双子葉植物中で得られることを特徴とする、請求項13に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項15】
前記抗原が、タバコ、ニンジン、及び食用植物の果実中で発現されることを特徴とする、請求項14に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項16】
前記抗原が、単子葉植物中で得られることを特徴とする、請求項13に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項17】
前記抗原が、イネ、及び食用植物の果実中で発現されることを特徴とする、請求項16に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項18】
前記抗原が、2つのキメラ遺伝子
a.その5’末端でシグナル配列と、その3’末端でスペーサー配列、それに続いてKDELペプチドをコードする配列と融合した、タンパクVP2、VP3、VP1及び2Aをコードする配列ID NO.24に記載のヌクレオチド配列と、
b.その5’末端でシグナル配列と、その3’末端でスペーサー配列、それに続いてKDELペプチドをコードする配列と融合した、請求項3Bで言及したタンパク3A、3B、3Cをコードする配列ID NO.23に記載のヌクレオチド配列との協調的発現から得られる、請求項2に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項19】
キメラ遺伝子が、適当なプロモーター及び転写終結シグナルによって調節されている植物細胞中で発現される、請求項18に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項20】
前記抗原が植物細胞の小胞体中で得られる、請求項18及び19に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項21】
前記抗原が、双子葉植物中で得られることを特徴とする、請求項20に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項22】
前記抗原が、タバコ、ニンジン、及び食用植物の果実中で得られることを特徴とする、請求項21に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項23】
前記抗原が、単子葉植物中で得られることを特徴とする、請求項20に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項24】
前記抗原が、イネ、及び食用植物の果実中で得られることを特徴とする、請求項23に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項25】
前記抗原が、2つのキメラ遺伝子
a.その5’末端でシグナル配列と、その3’末端でスペーサー配列、それに続いてKDELペプチドをコードする配列と融合した、タンパクVP4、VP2、VP3、VP1及び2Aをコードする配列ID NO.22に記載のヌクレオチド配列と、
b.請求項18bに記載のヌクレオチド配列との協調的発現から得られる、請求項10に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項26】
キメラ遺伝子が、適当なプロモーター及び転写終結シグナルによって調節されている植物細胞中で発現されることを特徴とする、請求項25に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項27】
前記抗原が植物細胞の小胞体中で得られることを特徴とする、請求項25及び26に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項28】
前記抗原が、双子葉植物中で得られることを特徴とする、請求項27に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項29】
前記抗原が、タバコ、ニンジン、及び食用植物の果実中で得られることを特徴とする、請求項28に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項30】
前記抗原が、単子葉植物中で得られることを特徴とする、請求項27に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項31】
前記抗原が、イネ、及び食用植物の果実中で得られることを特徴とする、請求項30に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項32】
精製して非経口投与することができる、請求項1、3、11、18及び25に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項33】
他のウイルス抗原と組み合わせて投与することができる、請求項32に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項34】
経口投与することができる、請求項1、3、11、18及び25に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項35】
凍結乾燥抽出剤、丸剤又はカプセル剤として投与することができる、請求項34に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項36】
ジュースの形で投与することができる、請求項1、3、11、18及び25に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項37】
免疫原性があり、A型肝炎ウイルスに対して保護的免疫応答を引き起こす、請求項1、3、11、18及び25に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項38】
A型肝炎診断キットの一部として使用することができる、請求項32に記載のA型肝炎ウイルス組換え抗原。
【請求項39】
単一及び混合ワクチンを調製するための、請求項1から38までに記載の抗原の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2006−514078(P2006−514078A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−567234(P2004−567234)
【出願日】平成15年12月19日(2003.12.19)
【国際出願番号】PCT/CU2003/000017
【国際公開番号】WO2004/067747
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(304012895)セントロ デ インジエニエリア ジエネテイカ イ バイオテクノロジア (46)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年12月19日(2003.12.19)
【国際出願番号】PCT/CU2003/000017
【国際公開番号】WO2004/067747
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(304012895)セントロ デ インジエニエリア ジエネテイカ イ バイオテクノロジア (46)
【Fターム(参考)】
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