説明

植物細胞培養培地で混合糖処理による二次代謝産物の量産方法

本発明は植物細胞培養を用いて二次代謝産物を高収率で生産する方法及び二次代謝産物生産用培地に関する。より具体的には、本発明の方法は、培養培地に混合糖を炭素源として添加して二次代謝産物の生産性を向上させることにより、植物細胞培養を行うことを特徴とする。例えば、本発明は、植物細胞培養においてグルコースと果糖の混合物を用いることによって二次代謝産物の生産性を向上させ、培養期間を短縮する方法を確立し、それにより、植物細胞培養を用いて有用な二次代謝産物を産業的スケールで産生するのに寄与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物細胞培養を用いて二次代謝産物を量産する方法及びこれに使用される培地に関する。より具体的には、本発明は、植物細胞培養用培地を少なくとも2種の糖類の混合糖を用いて処理して、植物細胞の成長を促進し、二次代謝産物の生産性を向上させることを特徴とする植物細胞培養を利用した二次代謝産物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物は医薬品、農薬、香辛料、色素、食品添加物、化粧品などとして使用される幅広い二次代謝産物を生産する有用な資源である。しかし、多様な産業分野で二次代謝産物に対する需要が増加する傾向にある反面、植物からの抽出により生産される二次代謝産物の供給は制限があるために、このような植物起源二次代謝産物を植物細胞培養技術を利用して産業的に量産しようとする試みがなされている(Stockigt et al., Plant Cell Tissue Org.Cult.43: 914−920, 1995参照)。
【0003】
植物細胞培養による二次代謝産物の量産は培養細胞株の不安定性、低い生産性、遅い成長と大量培養などの問題のために依然として難しい。
【0004】
植物細胞培養の低い生産性を克服するために様々な努力が試みられ、このような試みには1)糖、硝酸塩、燐酸塩、成長調節剤、前駆体の添加などのような培養培地中の栄養源の調整;2)培養温度、照明、培地のpH、振盪及び通気条件などのような培養環境の最適化;3)生産性を増加させるための誘導剤での処理;4)二次代謝産物の効率的回収のための細胞膜の透過化と二相培養;および5)二次代謝産物の生合成に関与する遺伝子を修飾したり外来遺伝子を導入して二次代謝産物の生産性を増加させる代謝工学などの方法がある。
【0005】
しかし、このような試みは特定植物細胞或いは特定二次代謝産物にのみ有効であり、殆どの植物細胞培養と二次代謝産物に一般に適用できる方法はまだ確立されていない。
【0006】
一般に、植物細胞は植物細胞の成長に必須の各種栄養物質を含む強化培地で培養される。二次代謝産物生産に必要な糖、硝酸塩、燐酸塩、成長調節剤および前駆体などの栄養物質の操作によって二次代謝産物の生産性を向上することができる。
【0007】
植物組織培養及び細胞培養には炭水化物の供給が必要である。最も頻繁に使用される炭素源は蔗糖とグルコースである。また、果糖、乳糖、麦芽糖、ガラクトース及び澱粉も利用される。バラ科(Rosaceae)に属する植物とリンゴの木由来の植物細胞の培養にはソルビトールがよく、リンゴ台木であるM9とデンドロビウムの培養には果糖が用いられ、そして小麦の葯培養にはグルコースが適している。蔗糖は一般的に濃度は2〜3%で用いられ、場合によっては5〜12%の濃度で使用することもできる。単子葉植物の植物細胞を培養する場合にはグルコースが多く利用される(Plant tissue culture and technique, HyangMunSa, 1987)。
【0008】
植物の種あるいは培養される組織または植物培養細胞の種類に応じて好ましい炭素源は異なる。特に、二次代謝産物生産のための植物細胞培養の場合には、炭素源が細胞の成長及び二次代謝産物の生産性に影響を与える。
【0009】
植物起源二次代謝産物を植物細胞培養技術を利用して量産しようとする多くの試みがなされてきた。しかし、殆どの植物細胞培養と二次代謝産物産生に広く一般に適用できる、混合糖の炭素源としての使用により二次代謝産物を量産する方法についての報告はない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、少なくとも2種の糖類の混合糖を用いて処理する工程を含む、植物細胞培養において二次代謝産物の生産性を増加させる方法を提供することにある。
【0011】
また、本発明の目的は、少なくとも2種の糖類の混合糖を含む、植物細胞の成長用培地及び二次代謝産物生産用培地を提供することにある。
【0012】
図面の簡単な説明
図1Aは、実施例1によって蔗糖、果糖、麦芽糖またはグルコースを用いて処理することにより培養した中国イチイ細胞株SYG−1の乾燥細胞重量の変化を示す。図1Bは、実施例1によって蔗糖、果糖、麦芽糖またはグルコースを用いて処理することにより培養した中国イチイ細胞株SYG−1のパクリタキセルの生産パターンを示す。
【0013】
図2Aは、実施例2によってグルコースと果糖の混合物を用いて処理することにより培養した中国イチイ細胞株SYG−1の乾燥細胞重量の変化を示す。図2Bは、実施例2によってグルコースと果糖の混合物を用いて処理することにより培養した中国イチイ細胞株SYG−1の乾燥細胞重量のパクリタキセルの生産パターンを示す。
【0014】
図3は、実施例3によって培養中に炭素源として単一の糖をさらに添加したときのパクリタキセルの生産パターンを示す。
【0015】
図4は、実施例4によって培養中に炭素源として異なる糖の混合物を用いてさらに処理することにより、中国イチイ細胞株SYG−1を培養したときのパクリタキセルの生産パターンを示す。
【0016】
図5は、実施例5によって植物細胞成長期と二次代謝産物生産期に炭素源として相異なる混合糖を用いて処理することにより、中国イチイ細胞株SYG−1を培養したときのパクリタキセルの生産パターンを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の例となる実施態様は、添付の図面を参照して以下で詳細に説明される。
【0018】
本発明は単糖類、二糖類、多糖類及び糖アルコールからなる群より選択される少なくとも2種の糖類の混合糖が炭素源として添加された植物細胞培養用培地において植物細胞を培養して、二次代謝産物の生産性を増加させる段階を含む、植物細胞培養による二次代謝産物の生産方法に関するものである。また、本発明は単糖類、二糖類、多糖類及び糖アルコールからなる群より選択される少なくとも2種の糖類を炭素源として含む植物細胞の成長用培地及び植物細胞における二次産物生産用培地に関するものである。
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0019】
本発明者らは、多様な植物細胞培養に一般に適用できる効率的な二次代謝産物の生産性向上方法を見出すために、少なくとも2種の糖類の混合物を含む培地を用いて植物細胞培養を実施した。
【0020】
植物は一般に細胞の成長と関係なく二次代謝産物を生産し、細胞培養の場合は細胞の成長に依存的または関係なく二次代謝産物を生産する。しかし、細胞の成長速度と関係なく二次代謝産物を生産するが、細胞の成長が植物細胞の代謝に影響を与え得るという事実に基づき、本発明者らは、培養培地に炭素源として少なくとも2種の糖類の混合物を添加して植物細胞を培養した。その結果、本発明者らは、細胞の成長が促進され、二次代謝産物の生産性が増大することを発見した。また、本発明者らは、植物細胞培養用培地に炭素源として少なくとも2種の糖類の混合物を添加する場合、炭素源として蔗糖のみを添加する場合より培養期間が短縮されることを見出した。
【0021】
本発明者らは、意図して、細胞の成長及び生産性に適した、炭素源として用いられる少なくとも2種の糖類の最適な組み合わせおよびそれらの混合比率を調べた。前記目的を達成するために、本発明において、少なくとも2種の糖類の組み合わせおよび混合比率を調節することで二次代謝産物の生産を増大さる。
【0022】
したがって、本発明は炭素源として少なくとも2種以上の糖類の混合糖が添加された植物細胞培養用培地において植物細胞を培養して、二次代謝産物の収量を向上させることを特徴とする、植物細胞培養による二次代謝産物の量産方法に関するものである。
【0023】
本発明の二次代謝産物の量産方法において、前記炭素源として添加された混合糖は単糖類、二糖類、多糖類及び糖アルコールからなる群より選択される少なくとも2種の糖類の混合物であってもよい。本発明において炭素源として使用され得る糖類を下記表1に示すが、これはただ説明のためであり、用いられる糖類がこれらに限定されるわけではない。
【0024】
【表1】

【0025】
本発明の実施態様において、少なくとも2種の糖類を含む混合糖は、グルコース及び果糖の混合物または蔗糖及び果糖の混合物であってもよい。前記グルコースと果糖の重量混合比(グルコース:果糖)は1:5から5:1、好ましくは1:2から1:1であってもよい。培地に添加される果糖の量がグルコースのものより過剰に多い場合には、培地中で培養された細胞は加速された細胞成長を有する。しかしながら、過剰に加速された細胞成長により、二次代謝産物の生産性が増加する前に、細胞死(壊死)が不都合に生じる。
【0026】
別の実施態様において、中国イチイ(Taxus chinensis)由来植物細胞を培養してパクリタキセル及びタキサン化合物を生産する場合、炭素源としてグルコースと果糖の混合物を使用することができ、そしてグルコースと果糖の重量混合比率(グルコース:果糖)は1:5から5:1、好ましくは1:2から1:1であり、より好ましくは1:2である。
【0027】
なお別の実施態様において、前記グルコースと果糖の混合物を用いる場合、前記グルコースの全てまたは一部を、細胞培地中1:1の比のグルコースと果糖に分解される蔗糖に置き換えることが可能であるかもしれない。この場合、グルコースと果糖の比がそれらの上記範囲内になるように、蔗糖から分解されたグルコースと果糖の比率を考慮して、蔗糖と果糖の混合物における蔗糖の量が適当に決定され得る。例えば、蔗糖と果糖の重量混合比率(蔗糖:果糖)は1:4から4:1、好ましくは1:2から2:1質量比、より好ましくは2:1であり得る。
【0028】
本発明者らの知見によると、培地中で炭素源として蔗糖が単独で用いられる場合、蔗糖から分解されたグルコースの消費後、果糖が用いられ始めるとき、二次代謝産物の生産性が停滞する。培地中の炭素源としてグルコースまたは果糖などの単糖類が単独で使用される場合、かかる生産性の停滞は培養中盤に起こらなかいが、蔗糖を使用した場合のものより二次代謝産物の生産性が低い。したがって、適当な混合比率のグルコース及び/または果糖の混合物が培地に添加されると、それは、炭素源として用いられる単糖類の遷移時間を変え、それにより二次代謝産物の生産性にも影響を与え得る。本発明は、植物細胞培養により二次代謝産物を産生する際に、蔗糖の代わりに、単糖類混合物、例えばグルコースと果糖または果糖と蔗糖の混合物を炭素源として用いて、グルコースと果糖、または果糖と蔗糖の混合比率を最適な比率に制御することにより、二次代謝産物の量産が達成され得るという認識に基づくものである。
【0029】
植物から生産できる二次代謝産物の種類は非常に広範囲であり、二次代謝産物を生産するための植物種、およびそれから生産される二次代謝産物の特徴に応じて、二次代謝産物の生産に適用される技術は変動する。本発明の植物細胞培養で二次代謝産物を量産する方法は、二次代謝産物を生産することができる全ての植物細胞に適用することができる。好ましくは、低い二次代謝産物の生産性を示す様々な植物細胞、特に、治療抵抗性卵巣癌及び乳癌の治療において有効であることが示されているパクリタキセルの生産のために利用されるイチイ(Taxus)属細胞などに本発明を適用して、二次代謝産物の生産性を大きく向上させることができ、パクリタキセルの工業規模での生産が達成され得る。したがって、好ましい実施態様において、本発明の植物細胞培養より二次代謝産物を量産する方法は、イチイ属に属する多様な種のイチイ種の細胞に適用されて、これらの二次代謝産物の生産性を大きく向上させることができる。本発明の方法は、植物細胞により産生される任意の二次代謝産物の産生に適用され、それは、例えば、パクリタキセルまたはタキサン化合物であるが、これらに限定されない。前記パクリタキセル及びタキサン化合物はイチイ種植物に由来する植物細胞により生産され得る。
【0030】
植物細胞培養法及び植物細胞の培養用培地は任意の植物細胞に適用でき、それは制限されない。例えば、前記植物細胞は、セイヨウイチイ(Taxus bacata)、タイヘイヨウイチイ(Taxus brevifolia)、カナダイチイ(Taxus canadensis)、中国イチイ(Taxus chinensis)、イチイ・クスピダタ(Taxus cuspidata)、フロリダイチイ(Taxus floridana)、メキシコイチイ(Taxus globosa)、タキサス・メディア(Taxus media)、インドイチイ(Taxus wallichiana)及びイチイ・ユンナネンシス(Taxus yunnanensis)からなる群より選択される植物に由来する。
【0031】
本発明において、当該技術分野において知られている任意の植物細胞培養用培地を使用することができ、これに含まれる炭素源を前記のような混合糖で置き換えることができる。植物細胞培養の分野で周知のとおり、植物細胞培養用培地は、栄養分及び炭素源、窒素源、塩及びビタミンなどの細胞成長の維持に必要な他の因子を含有するものであり得る。植物細胞培養において広く用いられる培養培地が本発明において用いられてもよく、必要に応じて、種々の添加剤がそれに添加されてもよく、あるいはいくつかの成分が省かれてもよい。本発明において用いられる植物細胞培養用培地は、アンダーソンシャクナゲ培地(Anderson rhododendron medium)、CHU(N6)培地、CLC/イポメア(CLC/Ipomoea)培地、チー&プール(C2D)ビティス(Chee & Pool(C2D)vitis)培地、デグレーフ&ヤコブス(De greef & jacobs)培地、DKW/JUNGLANS培地、エリクソン(Eriksson(er))培地、ガンボーグB5(Gamborg B5)培地、グレショフ&ドイ(DBM2)(Gresshof & doy(DBM2))培地、ヘラー(Hellers)培地、カオミカイルック(kaomichayluk)培地、ヌドソンコーキド(knudson corchid)培地、リンデマンオーキド(Lindemann Orchid)培地、リトベイ(Litvay)培地、リンスマイヤー&スクーグ(Linsmaier & Skoog)培地、エムシーコーン植物(McCowns woody plant)培地、ムラシゲ&スクーグ(Murashige & Skoog)培地、ムラシゲ&ミラー(murashige & Miller)培地、ニッチ(nitsch)培地、NLN培地、オルキマックス(orchimax)培地、コワラン&ルポワブル(quoirin & Lepoivre)培地、ルギニオリーブ(rugini olive)培地、シェンク&ヒルデブラント(schenk & hildebrandt)培地、S培地、ヴァシン・ウェント(vacin and went)培地、ホワイト培地またはウェストベーコWV3(westvaco WV3)培地およびそれらの修飾培地などからなる群より非限定的に制限され得る。ゆえに、用語「通常の植物細胞培養用培地」は前記に列挙した培地を含むことが意図される。
【0032】
本発明の別の実施態様において、カゼイン分解産物を含む修飾ガンボーグB5培地(Gamborg et al., Can. J. Biochem., 46: 417−421(1968)、本明細書に参照として取り込まれる)を植物細胞培養において使用することができ、二次代謝産物を生産のためには表2に記載されるような修飾ガンボーグB5培地が好ましい。
【0033】
【表2】

【0034】
本発明の実施態様において、前記表2の培地を基本培地として使用し、炭素源を本発明の混合糖に変えて培地を使用する。
【0035】
本発明の実施態様において、前記糖類混合物は、通常の植物細胞培養用培地に含まれる炭素源と実質的に同じ量で添加することができる。既知の植物細胞培養用培地の量と一致するように、培養培地中の混合糖の量は、2から12%(w/v)、好ましくは4から8%(w/v)、より好ましくは6%(w/v)である。以下、単位「%」は別途の言及がない限り、「%(w/v)」を意味する。
【0036】
I)本発明の一態様において、植物細胞培養は、炭素源を前記のような混合糖に代替した修飾培地を培養開始期から使用して行ってもよい。
【0037】
II)本発明の別の態様において、植物細胞培養は、炭素源を前記のような混合糖に代替した修飾培地を培養開始期から使用し、最初に培地に含まれていた炭素源が使い尽くされたときに、前記表1に記載された糖類からなる群より選択される1種類以上の糖を添加して培養を続行することにより、行われてもよい。
【0038】
III)本発明の別の態様において、植物細胞培養は、通常の植物細胞培養用培地を使用して植物細胞を成長させ、最初に培地に含まれていた炭素源が使い尽くされたときに、表1に記載された糖類からなる群より選択される少なくとも2種類の糖類を炭素源として添加して、培養を続行することにより、行われてもよい。
【0039】
IV)本発明の別の態様において、植物細胞培養は、細胞成長期または二次代謝産物生産期または両方で前記混合糖を炭素源として添加することにより、行われてもよい。2つの期で用いられる培地は、同じ、または互いに異なっていてもよく、これら培地のうちのいずれか一方または両方が混合糖を含むように修飾されていてもよい。
【0040】
前記のように、二次代謝産物の生産を向上させるために培養中に炭素源を添加する場合(例えば、前記方法IIまたはIII)、さらなる炭素源の追加時期は、初期培地に含まれる炭素源が使い尽くされたときであり、用いられる培地および植物細胞の種類に依存して変動する。好ましくは、培養中の糖濃度が2%以下であるが、完全には使い尽くされていないとき、さらなる炭素源を培地に添加する。培地中の糖濃度が6%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは4%以下となるよう、炭素源は培地に添加され得る。例えば、さらなる炭素源を追加する時期は、培養開始の7日またはそれより後、好ましくは14日またはそれより後であってもよい。また、さらに添加される炭素源の糖濃度は、0.1%から6%、好ましくは1%から6%の範囲であってもよい。さらに添加される炭素源は表1に記載されているものから選択される1種類以上の糖類であってもよい。
【0041】
本発明において、前記さらに添加される炭素源は、好ましくは蔗糖単独、果糖単独、グルコースと果糖の混合糖または蔗糖と果糖の混合糖であってもよい。前記混合糖を使用する場合、組成及びその含有量は前記のようにした方が良い。培養開始時に用いられる炭素供給源、および培養中盤にさらに用いられる炭素源の両方が混合糖である場合、前記2種類の混合糖は同じ、または互いに異なっていてもよい。パクリタキセルの生産に本発明の方法が適用される場合、前記追加的に添加される混合糖中の果糖の含有量が高いほど、得られるパクリタキセルの収量が増加することが実験的に示される。したがって、パクリタキセルの生産において、果糖を単独で使用したり、果糖の含有量が50%以上であるグルコースと果糖の混合物または蔗糖と果糖の混合物を培養中盤にさらに追加される炭素源として使用するのが好ましいかもしれない。
【0042】
当該技術分野で既知の任意の植物細胞培養方法が、本発明において利用され得る。例えば、植物細胞培養は、バッチ培養、連続培養、流加培養、半連続バッチ培養、固定培養、二相培養等を含む。植物細胞培養中に植物培養培地に少なくとも2種の糖類の混合糖を炭素源として添加することにより、二次代謝産物の量産を実現することができる。培養されるべき植物細胞の特性と産生されるべき二次代謝産物の特性に応じて、植物細胞の培養方法を適宜選択することができる。
【0043】
混合糖の添加について以外の本発明における植物細胞培養条件は、通常の植物細胞培養方法におけるものと同じであってもよい。さらに、特定の植物細胞に特化した培養条件を本発明に適用してもよい。培養されるべき植物細胞の特性を考慮して具体的に確立されている特異的な条件を本発明に適用してもよい。
【0044】
本発明の1つの実施態様において、植物細胞がイチイ属に由来するとき、二次代謝産物の量産方法は、
(i)イチイ属由来植物細胞を本発明による炭素源として混合糖を含む培地に接種し、植物細胞を20℃から25℃の温度で培養し、
(ii)培養温度を26℃から32℃の範囲に変えて、植物細胞を継続して培養する工程を含む。
【0045】
方法は、大韓民国特許第10−0266448号(本明細書に参照として取り込まれる)に詳しく記載されている。培養温度を変える時点は、細胞成長が十分に進み、二次代謝産物の生産が始まる時点であってもよく、一般には、植物細胞成長期における増殖期または指数関数期に対応する。培養温度を変える時点は、培養されるべき植物細胞、生産されるべき二次代謝産物、培養温度、培地組成などの種々の因子に応じて変わり得る。本発明の実施態様において、培養温度を変える時点は、培養開始の10日またはそれより後、好ましくは14日から28日後であってもよい。前記のように植物細胞を十分に、あるいは比較的低い温度である程度まで植物細胞を成長させ、前記のように温度を上昇させることによる、本発明の植物細胞培養において、パクリタキセルなどの二次代謝産物の収量が顕著に増大され得る。かかる結果は、変化させた培養温度がパクリタキセルなどの二次代謝産物の生合成に関与する酵素を新たに生成させるのに適当な温度であるか、または既に存在する二次代謝産物の生合成に関与する酵素の最適温度に近いかもしれないという理由から引き起こされると思われる。
【0046】
二次代謝産物の量産方法は、通常の方法により生産された二次代謝産物を回収する段階をさらに含んでいてもよい。
【0047】
本発明により提示されるように、少なくとも2種の糖類の混合糖を炭素源として用いて、二次代謝産物を産生するとき、二次代謝産物の収量は、蔗糖のみを用いる場合より少なくとも約30%、好ましくは約60%高い。例えば、中国イチイ由来の植物細胞を培養してパクリタキセル及びタキサン化合物を生産する場合、パクリタキセルの収量は約2倍増加する。
【0048】
また、本発明は、炭素源として本発明による混合糖を含み、二次代謝産物の生産性を向上させることができる植物細胞培養用培地に関する。前記植物細胞培養用培地は通常の植物細胞培養用培地であってもよく、炭素源の全てまたは一部が本発明による混合糖に代替されたものであり得る。前記混合糖の組成と各成分の含有量、植物細胞培養用培地の種類及び適用されるべき植物細胞の種類は前記のものと同じである。
【0049】
本発明を下記の実施例においてさらに詳しく説明するが、下記の実施例は本発明の範囲を制限するものと解されるべきではない。
【実施例】
【0050】
実施例1:二次代謝産物の生産性に対する単一炭素源の効果
本実施例において、パクリタキセル及びタキサン化合物を産生する中国イチイSYG−1細胞株(KCTC−0232BP)を植物細胞培養における二次代謝産物の生産に使用した。
【0051】
細胞の増殖のために250mlの三角フラスコに3%の蔗糖を含む修飾ガンボーグB5培地を入れた。次に、細胞密度が3g/Lとなるように、SYG−1細胞を培地に接種し、24℃の暗条件で150rpmで14日間培養した。
【0052】
パクリタキセルの生産のために250mlの三角フラスコに6%の蔗糖を含む修飾ガンボーグB5培地を入れ、ここに得られたSYG−1細胞の培養液50mlを入れた。細胞培養液を24℃の暗条件で150rpmで14日間培養した後、培養温度を29℃に上昇させて28日間さらに培養した。パクリタキセルの生産性を増加させるために、植物細胞培養における炭素源として蔗糖だけでなく次のような種々の糖を使用した。
【0053】
つまり、SYG−1細胞を蔗糖、グルコース、果糖及び麦芽糖から選択された6%の糖を含有する修飾ガンボーグB5培地において培養し、培養14、21、28、35、42日目に試料採取して、細胞成長とパクリタキセルの生産性を測定した。
【0054】
細胞成長は乾燥細胞重量(DCW)の観点で評価した。無作為に採取した植物細胞培養液をブフナー(Buchner)ろうとを用いてワットマン4番ろ紙を通して濾過し、濾過した細胞を60℃の乾燥オーブンで24時間乾燥させた後、乾燥細胞重量を細胞の重量として測定した。
【0055】
関連するテクノロジー分野に広く知られているパクリタキセル及びタキサン化合物の定量的分析方法(例えば、大韓民国特許第0266448号参照、本発細書に全体として参照として取り込まれる)により、パクリタキセルの生産性を決定した。
【0056】
1種類の炭素源を含む培地にて培養したSYG−1細胞から得られた細胞成長及びパクリタキセル生産性を、それぞれ図1Aと図1Bに示す。図1A及び1Bに示すように、蔗糖を含む培地にて培養した細胞は、グルコース、果糖または麦芽糖を含む培地にて培養した細胞より高いパクリタキセル生産性を示す。
【0057】
実施例2:炭素源としてグルコースと果糖の混合物を用いた処理によるパクリタキセルの生産性
炭素源として下記の表3に示す混合比率でグルコースと果糖を含む混合物を用いることを除き、実施例1と同様の方法でSYG−1細胞を培養した。培養の14、21、28、35および42日目に培養細胞を試料採取し、各試料の細胞成長とパクリタキセルの生産性を前記実施例1の方法によって決定した。
【0058】
得られた結果を図2Aおよび2B、ならびに表3に示す。図2Aはグルコースと果糖の混合比率に応じた乾燥細胞重量の変化を示す。図2Aに示すように、炭素源としての2%グルコースと4%果糖の混合糖、および3%グルコースと3%果糖の混合糖は、炭素源として6%の蔗糖のみを用いて処理した群の培養35日目におけるものと同等の細胞成長の加速を示し、炭素源として6%の蔗糖のみを用いて処理した群と比較して、それぞれ約67%及び約33%のパクリタキセルの生産性の増加も示した。前記結果から、単一の糖を用いて処理する場合と比較して、炭素源として混合糖を用いて処理することにより、パクリタキセルの生産性が増加することが示される。
【0059】
1%のグルコースと5%の果糖を含む培地で培養した細胞は、非常に高いレベルの細胞成長を示すが、低いパクリタキセルの生産性を示した。かかる結果は、過剰な細胞成長による細胞死から引き起こされるようである。
【0060】
【表3】

【0061】
実施例3:炭素源として果糖と蔗糖の混合物を用いた処理によるパクリタキセルの生産性
炭素源として表4に示す混合比率でグルコースと果糖または蔗糖と果糖の混合物を含む培地を用い、培地中の糖含有量が2%以下になった場合、培養28および49日目に蔗糖をさらに添加して56日間の拡大期間培養を続けることを除き、前記実施例1と同様の方法でSYG−1細胞を培養した。培養開始の14、21、28、35、49および56日後に培養細胞を無作為に試料採取し、各試料の細胞成長とパクリタキセルの生産性を前記実施例1の方法によって決定した。
【0062】
細胞成長の指標である乾燥細胞重量の結果から、炭素源としてグルコースと果糖または蔗糖と果糖の混合糖を用いて培養した細胞は、蔗糖のみを使用する場合と同等の細胞成長を示すことが明らかになった。
【0063】
得られたパクリタキセルの生産性の結果を図3及び表4に示す。図3に示されるように、炭素源として2%グルコースと4%果糖の混合物、および4%蔗糖と2%果糖の混合物を用いて処理した群は、炭素源として6%の蔗糖のみを用いて処理した群と比較して、それぞれパクリタキセルの生産性において約58%及び約30%の増加を示した。前記結果から、単一の糖を用いて処理する場合と比較して、炭素源として混合糖を用いて処理することにより、二次代謝産物の生産性が増加することが示される。
【0064】
【表4】

【0065】
実施例4:培養中にさらなる糖を添加することによるパクリタキセルの生産性
炭素源として4%グルコースと2%果糖の混合物を含む培地を用いることを除き、前記実施例1と同様の方法でSYG−1細胞を培養した。培地中の糖含有量が2%以下になる培養の21日及び35日後に下記の表5に示す追加炭素源を2.5%の濃度で添加して、培養を拡大した期間続けた。培養開始の14、21、28、35および49日後に培養細胞を無作為に試料採取し、次に、各試料のパクリタキセルの生産性を実施例1の方法によって決定した。
【0066】
炭素源として混合糖を添加している培養中に種々の炭素源をさらに添加したときの、パクリタキセルの生産性の結果を図4及び表5に示す。結果から、添加炭素源中の果糖含有量が高いほど、パクリタキセルの生産性は増大することが分かった。
【0067】
【表5】

【0068】
実施例5:細胞成長期及びパクリタキセル生産期において混合糖の違いを用いることによるパクリタキセルの生産性
細胞の増殖のために500mlの三角フラスコに3%の蔗糖あるいは2%蔗糖と1%果糖を含む修飾ガンボーグB5培地を入れた。細胞の密度が3g/Lになるように、SYG−1細胞を培地に接種して、24℃の暗条件で150rpmで14日間培養した。14日間培養した細胞50mlをそれぞれ6%の蔗糖あるいは4%蔗糖と2%果糖を含む修飾ガンボーグB5培地に入れた。細胞を24℃の暗条件で150rpmで14日間培養し、温度を29℃に上昇させて28日間さらに培養した。培養開始の14、21、28、35および42日後に培養細胞を試料採取し、各試料のパクリタキセルの生産性を前記実施例1の方法により測定した。
【0069】
細胞成長期及びパクリタキセル生産期の両方で混合糖を処理することにより得られたパクリタキセルの生産性結果を図5及び表6に示す。
【0070】
図5及び表6に示すように、成長時、パクリタキセル生産期、または両方の時期に本発明の混合糖を添加する場合、単一の糖である蔗糖を両方の時期に添加した場合と比較して、顕著に増加したパクリタキセルの生産性(それぞれ183%、67%及び286%)を示すことが見出された。加えて、2つの時期の両方で混合糖を添加したとき、パクリタキセルの生産性の増大を示す。
【0071】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0072】
上記のとおり、本発明の方法は、培地において混合糖を用いることにより、非常に低いと知られている植物細胞培養における二次代謝産物の生産性を大きく向上させ、かつ培養時間を短縮させることができる。ゆえに、本発明の方法は、パクリタキセルなどの産業上有用な植物細胞起源二次代謝産物の産業的スケールでの生産において非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1A】図1Aは、実施例1によって蔗糖、果糖、麦芽糖またはグルコースを用いて処理することにより培養した中国イチイ細胞株SYG−1の乾燥細胞重量の変化を示す。
【図1B】図1Bは、実施例1によって蔗糖、果糖、麦芽糖またはグルコースを用いて処理することにより培養した中国イチイ細胞株SYG−1のパクリタキセルの生産パターンを示す。
【図2A】図2Aは、実施例2によってグルコースと果糖の混合物を用いて処理することにより培養した中国イチイ細胞株SYG−1の乾燥細胞重量の変化を示す。
【図2B】図2Bは、実施例2によってグルコースと果糖の混合物を用いて処理することにより培養した中国イチイ細胞株SYG−1の乾燥細胞重量のパクリタキセルの生産パターンを示す。
【図3】図3は、実施例3によって培養中に炭素源として単一の糖をさらに添加したときのパクリタキセルの生産パターンを示す。
【図4】図4は、実施例4によって培養中に炭素源として異なる糖の混合物を用いてさらに処理することにより、中国イチイ細胞株SYG−1を培養したときのパクリタキセルの生産パターンを示す。
【図5】図5は、実施例5によって植物細胞成長期と二次代謝産物生産期に炭素源として相異なる混合糖を用いて処理することにより、中国イチイ細胞株SYG−1を培養したときのパクリタキセルの生産パターンを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコース、果糖、マンノース、リボース、アラビノース、キシロース、ガラクトース、蔗糖、メリビオース、トレハロース、セロビオース、ラクトース、ラフィノース、アミラーゼ、澱粉、ソルビトール及びグリセロールからなる群より選択される少なくとも2種の糖類の混合糖を炭素源として含む植物細胞培養用培地において植物細胞を培養して、二次代謝産物の生産性を向上させることを特徴とする、植物細胞培養を用いた二次代謝産物の生成方法。
【請求項2】
前記混合糖の含有量が2から12%(w/v)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合糖がグルコースと果糖を1:5から5:1の重量混合比率で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記混合糖が蔗糖と果糖を1:4から4:1の重量混合比率で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記培地が、アンダーソシャクナゲ(Anderson rhododendron medium)培地、CHU(N6)培地、CLC/イポメア(CLC/Ipomoea)培地、チー&プール(C2D)ビティス(Chee & Pool(C2D)vitis)培地、デグレーフ&ヤコブス(De greef & jacobs)培地、DKW/JUNGLANS培地、エリクソン(Eriksson(er))培地、ガンボーグB5(Gamborg B5)培地、グレショフ&ドイ(DBM2)(Gresshof & doy(DBM2))培地、ヘラー(Hellers)培地、カオミカイルック(kao michayluk)培地、クヌードソンコーキド(knudson corchid)培地、リンデマンオーキド(Lindemann Orchid)培地、リトベイ(Litvay)培地、リンスマイヤー&スクーグ(Linsmaier & Skoog)培地、エムシーコーン植物(McCowns woody plant)培地、ムラシゲ&スクーグ(Murashige & Skoog)培地、ムラシゲ&ミラー(murashige & Miller)培地、ニッチ(nitsch)培地、NLN培地、オルキマックス(orchimax)培地、コワラン&ルポワブル(quoirin & Lepoivre)培地、ルギニオリーブ(rugini olive)培地、シェンク&ヒルデブラント(schenk & hildebrandt)培地、S培地、ヴァシン・ウェント(vacin and went)培地、ホワイト培地、ウェストベーコWV3(westvaco WV3)培地及びそれらの修飾培地からなる群より選択され、
最初の炭素源がそこから排除され、そして
混合糖が、グルコース、果糖、マンノース、リボース、アラビノース、キシロース、ガラクトース、蔗糖、メリビオース、トレハロース、セロビオース、ラクトース、ラフィノース、アミラーゼ、澱粉、ソルビトール及びグリセロールからなる群より選択される少なくとも2種の糖類を炭素源として全培地に対して2から12%(w/v)の量で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記植物細胞が、セイヨウイチイ(Taxus bacata)、タイヘイヨウイチイ(Taxus brevifolia)、カナダイチイ(Taxus canadensis)、中国イチイ(Taxus chinensis)、イチイ・クスピダタ(Taxus cuspidata)、フロリダイチイ(Taxus floridana)、メキシコイチイ(Taxus globosa)、タキサス・メディア(Taxus media)、インドイチイ(Taxus wallichiana)及びイチイ・ユンナネンシス(Taxus yunnanensis)からなる群より選択される植物に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記二次代謝産物がパクリタキセル及びタキサンからなる群より選択される1種以上の化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記植物細胞の培養は、バッチ培養、連続培養、流加培養、半連続バッチ培養、固定培養、二相培養及び二段階培養からなる群より選択される方法によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記植物細胞の培養が、
(i)植物細胞を前記混合糖を含む植物培養用培地で20℃から25℃の温度下で培養し、
(ii)培養温度を26℃から32℃の範囲に変えて植物細胞の培養を続けることにより行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記炭素源として混合糖を含む植物細胞培養用培地を培養開始から使用して植物細胞培養を行う、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記炭素源として混合糖を含む植物細胞培養用培養培地を培養開始から使用し、前記培地中の糖含有量が2%以下であるとき、グルコース、果糖、マンノース、リボース、アラビノース、キシロース、ガラクトース、蔗糖、メリビオース、トレハロース、セロビオース、ラクトース、ラフィノース、アミラーゼ、澱粉、ソルビトール、マンニトール及びグリセロールからなる群より選択される少なくとも1種の糖類を培地中の糖濃度が6%以下になるように炭素源として添加して培養を続けることにより、植物細胞培養が行われる、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
混合糖以外の炭素源を含む植物細胞培養用培地を培養開始時に使用して、前記培地中の糖含有量が2%以下であるとき、前記混合糖を添加して培養を続けることにより、植物細胞培養が行われる、請求項1から9のいずれに記載の方法。
【請求項13】
植物細胞成長期または二次代謝産物生産期または植物細胞成長期と二次代謝産物生産期の両方で前記混合糖を添加することにより、植物細胞培養が行われる、請求項1から9のいずれに記載の方法。
【請求項14】
前記混合糖が植物細胞成長期と二次代謝産物生産期の両方で添加されるとき、前記2つの時期に添加される混合糖が互いに異なる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
グルコース、果糖、マンノース、リボース、アラビノース、キシロース、ガラクトース、蔗糖、メリビオース、トレハロース、セロビオース、ラクトース、ラフィノース、アミラーゼ、澱粉、ソルビトール及びグリセロールからなる群より選択される少なくとも2種の糖類の混合糖を炭素源として全培地に対して2から12%(w/v)の量で含む、植物細胞における二次代謝産物生産用培地。
【請求項16】
下記の培地:アンダーソンシャクナゲ培地、CHU(N6)培地、CLC/イポメア培地、チー&プール(C2D)ビティス培地、デグレーフ&ヤコブス培地、DKW/JUNGLANS培地、エリクソン培地、ガンボーグB5培地、グレショフ&ドイ(DBM2)培地、ヘラー培地、カオミカイルック培地、ヌドソンコーキド培地、リンデマンオーキド培地、リトベイ培地、リンスマイヤー&スクーグ培地、エムシーコーン植物培地、ムラシゲ&スクーグ培地、ムラシゲ&ミラー培地、ニッチ培地、NLN培地、オルキマックス培地、コワラン&ルポワブル培地、ルギニオリーブ培地、シェンク&ヒルデブラント培地、S培地、ヴァシン・ウェント培地、ホワイト培地またはウェストベーコWV3培地及びそれらの修飾培地からなる群より選択され、
最初の炭素源が前記培地から除去され、そして、グルコース、果糖、マンノース、リボース、アラビノース、キシロース、ガラクトース、蔗糖、メリビオース、トレハロース、セロビオース、ラクトース、ラフィノース、アミラーゼ、澱粉、ソルビトール及びグリセロールからなる群より選択される少なくとも2種の糖類の混合糖が、除去された最初の炭素源に取って変わっている、請求項15に記載の培地。
【請求項17】
前記混合糖がグルコースと果糖を1:5から5:1の混合比率で含む、請求項15に記載の培地。
【請求項18】
前記混合糖が蔗糖と果糖を1:4から4:1の混合比率で含む、請求項15に記載の培地。
【請求項19】
前記植物細胞が、セイヨウイチイ、タイヘイヨウイチイ、カナダイチイ、中国イチイ、イチイ・クスピダタ、フロリダイチイ、メキシコイチイ、タキサス・メディア、インドイチイ、イチイ・ユンナネンシスからなる群より選択される植物に由来する、請求項15に記載の培地。
【請求項20】
前記二次代謝産物がパクリタキセル及びタキサンからなる群より選択される1種以上の化合物である、請求項15に記載の培地。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−541755(P2008−541755A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514560(P2008−514560)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【国際出願番号】PCT/KR2006/002141
【国際公開番号】WO2006/129988
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(599167412)サムヤン ジェネックス コーポレイション (4)
【Fターム(参考)】