説明

植物除草剤としてのヒノキチオール

本発明は、植物病原菌の駆除に有効な天然殺虫剤としての、β−ツヤプリシンとしても知られている天然トロポロン化合物であるヒノキチオールを開示している。特に、ヒノキチオールおよび/またはその塩は、非エルウィニア属の植物病原菌の感染を調整または非エルウィニア属の抗微生物剤の調合に用いられてもよい。また、ヒノキチオールを、雑草の発芽および成長を制御するための天然除草剤として用いてもよい。本発明で用いられる配合物は、上記ヒノキチオールを安定させるために、キレート剤、pH調整剤およびUV保護剤を有効な量含んでいてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分としてヒノキチオール(βツヤプリシン)を含む化合物を用いた、植物病を制御するための組成物および方法、特に植物病原性バクテリア、菌類そして/または雑草を制御するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
病気や害虫の大発生は、植物で一般に観察される。菌類感染および除草剤食害は、特に懸念される2つのタイプの植物病である。
【0003】
植物病駆除
近年、細菌、細菌代謝物および他の天然物を用いた植物病原菌の生物学的制御が重要になっている。植物病原性真菌を制御するための多くの微生物製品が既に市販されている(Mycostop(登録商標)、Serenade(登録商標)、Sonata(登録商標)、Aspire(登録商標)、Primastop(登録商標))。しかし、有機農法のための天然の抗菌化合物、すなわち使用者や環境の両方にとって安全な製品はまだ必要とされている。
【0004】
有機栽培生産者は、コーングルテンミール(コーンスターチの製造における副産物)が効果的な発芽前除草剤として機能することを発見した。コーングルテンミールは種子を発芽させることだけに影響するため、成熟したまたは定着した植物の周囲で使用しても安全である。除草剤「ソープ」および植物の抽出物は、有機発芽後除草剤として機能する。これらの製品は、低毒性の化合物を含み、一般に環境下で素早く分解される。商業上利用される発芽後除草剤としては、レモングラスオイルおよびd−リモネンが挙げられる。
【0005】
ヒノキチオール
また、β−ツヤプリシンとしても知られているヒノキチオール(4−イソプロピルトロポロン、MW164.2)は、重要なトロポロン化合物である。ヒノキチオールは、強い抗微生物作用を示すことがよく知られている。しかし、ヒノキチオールは、光、熱および/またはそれらの組み合わせのほとんど全ての環境条件下において非常に不安定である。また、ヒノキチオールは、水への溶解度が限られている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、植物病、特に植物病原性真菌に対する生物防御剤として、および/または雑草に対する発芽前および発芽後除草剤として、ヒノキチオールの使用を開示している。それは、現在市販されている合成殺菌剤に対する、より安全な代替手段として役立つ。本発明の一つの目的は、植物病原性真菌に対する有効成分としてヒノキチオールを含む新規の抗菌性組成物を提供することである。本発明の別の目的は、安全な、食品用の、無毒性の抗微生物性の、特に抗菌性の組成物および環境を害しない方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、広葉雑草および牧草雑草の両方に対する有効成分としてヒノキチオールを含む新規組成物を提供することである。本発明の別の目的は、安全な、食品用の、無毒性の、除草用組成物および環境を害しない方法を提供することである。上述した目的および他の目的は、本発明により達成される。
【0007】
詳細な実施形態では、本発明は、ヒノキチオールおよび/またはその塩、酸性キレート剤、キャリヤーおよび/または希釈剤ならびに任意のUV吸収剤、塩基性pH安定剤および/または非植物毒性表面活性剤を含む組成物に向けられている。詳細な実施形態では、当該組成物におけるヒノキチオールは、脂肪族カルボン酸等の有機溶媒を含む希釈剤で溶解され、この有機溶媒としては、C1−10カルボン酸(例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸)が挙げられるがこれに限定されない脂肪族カルボン酸、脂肪族アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール)または脂肪族ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)が挙げられる。当該組成物は、さらに1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のジオールを含んでいてもよい。
【0008】
本発明の組成物および方法におけるヒノキチオール塩は、除草剤と抗微生物剤(例えば、殺菌薬または抗菌物質)配合物の両方のために、ナトリウム、マグネシウム、銅、カルシウム、バリウム、亜鉛、カルシウム、スズ、コバルト、チタニウムおよびバナジウムを含んでいるが、これらに限定されるものではない。
【0009】
本発明の組成物は、乳剤(EC)、マイクロエマルジョン(ME)、可溶性液体(SL)、水中油型エマルジョン(EW)、濃厚懸濁液(SC)、顆粒水和剤(WG)、水和剤(WP)またはマイクロカプセルに入った懸濁液の形状であってもよい。
【0010】
詳細な実施形態において、本発明は、植物における非エルウィニア属の微生物の感染を調整すること、または単子葉雑草または双子葉雑草の発生または成長を調整することに用いるための、ヒノキチオールおよび/またはその塩およびキャリヤーおよび/または希釈剤ならびに任意の酸性キレート剤、UV吸収剤、塩基性pH安定剤および/または非植物毒性表面活性剤を含む組成物に向けられている。ある実施形態において、当該組成物は、上記植物、上記単子葉雑草、上記双子葉雑草または上記植物を育てるために用いられる基質に用いられる。詳細な実施形態では、成長基質は土である。別の詳細な実施形態では、当該組成物は上記植物を収穫する前に用いられる。さらに別の詳細な実施形態では、雑草は広葉雑草および/または牧草雑草である。
【0011】
本発明はまた、植物における非エルウィニア属の植物微生物の感染を調整する方法であって、本発明は、上記植物における非エルウィニア属の植物微生物の感染を調整するために有効な、ある量のヒノキチオールおよび/またはその塩または本発明の組成物を、上記植物および/またはその種子および/または上記植物の成長のために用いられる基質に用いる工程を含む方法に向けられている。「調整する」という用語は、非エルウィニア属の植物微生物の感染量または微生物の感染の広がる割合を変えることを意味するために使用される。詳細な実施形態では、ヒノキチオールは約0.005mg/ml〜約1.5mg/mlの量で用いられる。より詳細な実施形態では、ヒノキチオールは約0.01mg/ml〜約1.0mg/mlの量で用いられる。また、より詳細な実施形態では、ヒノキチオールは約0.1mg/ml〜約1.0mg/mlの量で用いられる。ある詳細な実施形態では、植物病原菌は真菌であり、別の詳細な実施形態では、植物病原菌は非エルウィニア属の細菌である。最も詳細な実施形態では、真菌はフザリウム属(Fusarium sp.)、ボトリチス属(Botrytis sp.)、モニリニア属(Monilinia sp.)、コレトトリカム属(Colletotrichum sp.)、バーティシリウム属(Verticillium sp.)、マクロフォミナ属(Microphomina sp.)およびフィトフトラ属(Phytophtora sp.)、ムコール属(Mucor)、リゾクトニア属(Rhizoctonia)、ゲオトリクム属(Geotrichum)、フォーマ属およびペニシリウム属(Penicillium)である。別の最も詳細な実施形態では、細菌はザントモナス属(Xanthomonas)である。
【0012】
本発明は、非エルウィニア属植物抗微生物剤として用いるための組成物を調製するための、ヒノキチオールの使用に向けられている。非エルウィニア属植物抗微生物剤は、例えば、他の抗微生物剤および/または化学殺菌剤と組み合わせて用いられる植物病原菌を駆除するための生物除草剤または非エルウィニア属植物抗菌剤がある。それらには、アゾキシストロビン、アゾキシストロビン配合物、ボスカリド、枯草菌、硫酸銅、クロロタロニル、水酸化銅、シモキサニル、ジメトモルフ、ジクロロプロペン、ホセチルアルミニウム、フルジオキソニル、フェンアミドン、イプロジオン、メフェノキサム、マンコゼブ、メタラキシル、メタムナトリウム、炭酸水素カリウム、ピラクロストロビン、プロピコナゾール、プロピコナカーブ(propicocarb)、チラーム、チアベンダゾール、チオファネートメチル、トリプロキシストロビン、ビンクロゾリン、硫黄およびジラムのような殺菌剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。詳細な実施形態では、ヒノキチオールは収穫前生物殺菌剤として用いられる。それらにはストレプトマイシンやオキシテトラサイクリンのような抗菌剤も含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
さらに別の実施形態では、本発明は、単子葉雑草または双子葉雑草の成長を調整するための方法であって、上記雑草の成長の調整を行うのに有効な、ある量のヒノキチオールおよび/またはその塩または本発明の組成物を上記雑草に用いる工程を含む方法に向けられている。詳細な実施形態では、ヒノキチオールは1mg/mlから約50mg/mlまたは約75mg/mlの範囲の量で用いられる。より詳細な実施形態では、ヒノキチオールは約2.0mg/ml〜約10mg/mlの範囲の量で用いられる。詳細な実施形態では、ヒノキチオールは上記雑草の葉、茎、花、木の葉および/または根に用いられる。また、より詳細な実施形態では、本発明の方法で用いられるヒノキチオールまたはその塩は、本発明の組成物に調合される。
【0014】
本発明はさらに、単独または他の生物除草剤および/または化学除草剤との組み合わせのいずれかで用いられ、アセトン、エタノールまたは蟻酸のような溶剤ベースの溶液で任意に用いられる、単子葉雑草または双子葉雑草(例えば、広葉雑草または牧草雑草)を駆除するための発芽前または発芽後除草剤として使用するための組成物を調製するためのヒノキチオールの使用に向けられている。当該除草剤としては、レモングラスオイル、d−リモネン、ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)、2,4−D配合物、アクロレイン、アミトロール、ブロマシル、ブロモキシニル、クロルスルフロン、クレトジム、クロピラリド、銅錯体、ジカンバ、ジクロベニル、ジクワット剤、ジウロン、DSMA、エンドタール、フルアジホップ−P−ブチル、フルリドン、ホサミン、グルホシネート、グリホサート、成長抑制剤染料、ヘキサジノン、イマザピル、イソキサベン、メトスルフロンメチル、ノルフラゾン、パラコート、ペンジメタリン、ピクロラム、プロメトン、シマジン、スルホメツロンメチル、テブチウロン、トリクロピルのような除草剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ある範囲の値が提供されたところでは、その範囲の下限と上限の間に介在するそれぞれの値(文脈で別のことを明らかに指示していない限り、その下限のユニットの1/10まで)およびあらゆる他の示された範囲またはその示された範囲の中に介在する値は、発明に包含されていると理解される。これらのより小さな範囲の上下限は、定まった範囲内において明確に除かれた限度を条件として、本発明に包含されたより小さな範囲に個々に含まれていてもよい。また、定まった範囲が限界値の一方または両方を含んでいるところでは、両方の限界値のいずれかを除く範囲も本発明に含まれる。
【0016】
別に定義されていない限り、本願明細書で用いられている全ての技術用語および学術用語は、この発明の属する分野における当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。また、本願明細書中で説明されたものと同様のまたは同等のどんな方法および材料も本発明の実施や試験で用いることができるが、好ましい方法および材料をここで説明する。
【0017】
本願明細書で使用する場合、また添付の特許請求の範囲において使用する場合、単数形(「a」)、「および」および「その、それらの、当該(the)」は、文脈で別のことを明らかに指示していない限り、複数の物を含むことに注意しなければならない。
【0018】
本発明で用いるヒノキチオールは、通常の供給源から得てもよい。供給源としては、例えば、台湾ヒノキ(Chamaecyparis taiwanensis)および青森ヒバ(Thujopsis dolabrata)のエッセンシャルオイルから得た天然産物や、化学合成により得た合成産物(例えば、米国特許第6,183,748号、同第6,310,255号および同第6,391,347号を参照)が挙げられ、または商業的な供給源から購入することもできる。
【0019】
ある実施形態において、本発明は組成物、特に適切なキャリヤーと任意の適切な表面活性成分との混合物として有効成分であるヒノキチオールを含む生物微生物剤(bioantimicrobial)組成物、さらに特には生物抗菌物質、生物殺菌剤または生物除草剤組成物を提供する。詳細な実施形態では、有効成分であるヒノキチオールは、約0.001重量%〜約70重量%、より好ましくは1〜50重量%の量で本発明の組成物中に含まれている。当該組成物は、ヒノキチオールおよび/またはヒノキチオール塩を含んでもよい。
【0020】
本発明の組成物を植物に噴霧してもよい。代わりに、植物をヒノキチオールおよび/またはその塩を含む液剤に浸してもよいし、配合物に浸してもよい。本発明の組成物は、植物を育てるための基質に用いてもよい。その基質は、土、ピートモス、砂、寒天懸濁液を含むが、これらに限定されるものではない。詳細な実施形態を下記の実施例で説明する。これらの組成物は、粉末、目の粗い粉末、マイクロ顆粒、顆粒、水和剤、乳剤、液体配合物、濃厚懸濁液、水分解性顆粒またはオイル懸濁液の形状であってもよい。特定の実施形態では、当該組成物は固体の顆粒形状である。
【0021】
本発明の組成物は、1以上のキレート剤を含んでいてもよい。これらには、EPAリスト4Aおよび4B(Http://www.epa.gov/opprd001/inerts/oldlists.html)の酸性キレート剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。これらには、クエン酸、クエン酸二ナトリウム塩、EDTA二ナトリウム塩、亜鉛や、銅や、鉄や、カルシウムや、マグネシウムや、バリウムや、スズや、コバルトや、チタニウムや、バナジウムのような金属イオン、ホスホン酸塩、アミノホスホン酸塩、アスコルビン酸およびこれらのいくつかの組み合わせが含まれるが、これらに限定されるものではない。ヒノキチオールに対するキレート剤の比率は、5:1〜1:5の範囲である。好ましい比率はキレート剤に依存するが、比率は2:1と1:2の間である。キレート剤は上記ヒノキチオールおよび/またはその塩を安定させるために有効な量含まれている。本願明細書で定義される「安定させる」とは、少なくとも14日間、太陽光および/または温度が4℃および54℃の下でヒノキチオールの分解を防ぐことを意味する。
【0022】
本発明の組成物は、さらにEPAリストAまたはBから1つ以上のUV保護剤を含んでいてもよい。UV保護剤の含有量は、0.1%〜30%であり、好ましい含有量は0.1%〜20%である。UV吸収剤は、5時間より長く太陽光に暴露された後に、50%を超えるヒノキチオールの分解を防ぐために有効な量で存在している。UV保護剤には、L−アスコルビン酸、フミン酸およびオキシリグニンのナトリウム塩またはリグニンスルホン酸カルシウムが含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
本発明の組成物は、さらに塩基性pH安定剤を含んでいてもよい。本願明細書で定義される塩基性pH安定剤とは、本発明の組成物のpHを7〜10の間で維持する物質である。pH安定剤としてはEPAリスト4Aおよび4Bに記載された金属塩およびアルカリ性水酸化物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらには、炭酸水素ナトリウム/炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム/炭酸カリウム、水酸化ナトリウム/水酸化カリウム、酢酸ナトリウム/酢酸カリウム、クエン酸ナトリウム/クエン酸カリウムが含まれるが、これに限定されるものではない。
【0024】
本発明の組成物は、キャリヤーおよび/または希釈剤を含む。本願明細書で用いられる「キャリヤー」という用語は、不活性な有機材料または無機材料であって、処理される土、種子、苗あるいは他の物への散布または保存、輸送および/または取り扱いを容易にするために有効成分と混合または調合される材料を意味する。成長基質に施用するときに用いられるキャリヤー媒体の例としては、活性炭、コーングルテンミール、大豆粉、バーミキュライト、ベントナイト、カオリナイト、小麦麦芽、アーモンドの殻、綿実粉、漂布土、オレンジ果肉、籾殻、おがくず、アラビアゴム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。もし望むなら、シナモン、クローブ、タイム(有効成分としてのオイゲノール)、冬緑油、大豆油メチルエステル(soy methyl ester)、シトロネラ、松根油、柑橘類油(有効成分としての1−リモネン)等のような植物性エッセンシャルオイルを、顆粒の中に含むこともできる。上述したように、有効成分は、単独またはキャリヤー媒体の存在下で、例えば水、またはエタノール、蟻酸またはエタノールのような有機溶媒に溶解してもよい。当該組成物はさらに、枯草菌、ミクロブタニル、フェンヘキサミド、アゾキシストロビン、アゾキシストロビン配合物、ボスカリド、枯草菌、硫酸銅、クロロタロニル、水酸化銅、シモキサニル、ジメトモルフ、ジクロロプロペン、ホセチルアルミニウム、フルジオキソニル、フェンアミドン、イプロジオン、メフェノキサム、マンコゼブ、メタラキシル、メタムナトリウム、炭酸水素カリウム、ピラクロストロビン、プロピコナゾール、プロピコナカーブ(propicocarb)、チラーム、チアベンダゾール、チオファネートメチル、トリプロキシストロビン、ビンクロゾリン、硫黄およびジラムのような付加的な殺菌剤を含んでいてもよい。
【0025】
用いられるキャリヤーは、発芽前または発芽後除草剤に用いられるかどうかに依存してもよい。液体キャリヤーは、発芽前および発芽後施用の両方に用いられる。発芽前除草剤のためのキャリヤー媒体の例としては、活性炭、コーングルテンミール、大豆粉、バーミキュライト、ベントナイト、カオリナイト、小麦麦芽、アーモンドの殻、綿実粉、漂布土、オレンジ果肉、籾殻、おがくず、アラビアゴム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。もし望むなら、シナモン、クローブ、タイム(有効成分としてのオイゲノール)、冬緑油、シトロネラ、松根油等のような植物性エッセンシャルオイルを、ヒノキチオールの発芽前および発芽後の効果を改善するため、顆粒の中に含むこともできる。発芽後除草剤のための希釈剤またはキャリヤーの例としては、水、ミルク、エタノール、鉱油、グリセロールおよび他の有機酸、特に蟻酸、酢酸またはプロピオン酸のような脂肪族カルボン酸(例えば、C1−C10カルボン酸)が挙げられるが、これがに限定されるものではない。
【0026】
当該組成物は、乳化、分散、湿潤、広がり、統合、分解制御、有効成分の安定化および流動性またはサビ抑制の改善の目的のために用いられる表面活性剤を付加的に含んでいてもよい。詳細な実施形態では、表面活性剤は非植物毒性の非イオン性表面活性剤である。好ましくは、EPAリスト4Bに属するものである。詳細な実施形態では、非イオン性表面活性剤はポリオキシエチレン(20)モノラウレートである。表面活性剤の濃度は、配合物全体の0.1〜35%の間の範囲、好ましくは5〜25%の間の範囲であってもよい。非イオン性、陰イオン性、両性および陽イオン性分散剤と乳化剤等のような、分散剤および乳化剤の選択および用いられる量は、本発明の除草用組成物の分散を容易にするために、当該組成物の性質および薬剤の能力によって決められる。詳細な実施形態では、当該組成物はアミン含有表面活性剤を含まない。
【0027】
発芽前乾燥配合物のキャリヤーの顆粒サイズは、通常1〜2mm(直径)であるが、必要な土地の範囲に依存してより小さいまたはより大きくてもよい。顆粒は、多孔性または非多孔質粒子を含んでいてもよい。
【0028】
発芽後配合物に使用される配合物成分は、スメクタイト粘土、アタパルジャイト粘土および同様の膨潤粘土、キサンタンガム、アラビアガムおよび他の増粘多糖類等の増粘剤、ならびに非イオン性表面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン(20)モノラウレート)のような分散安定剤を含んでいてもよい。表面活性剤の濃度は、配合物全体の0〜25%の間の範囲であってもよい。粘土の濃度は、配合物全体の0〜2.5%(重量/重量)の間で変化してもよい。また、増粘多糖類は、配合物全体の0〜0.5%(重量/重量)の間に及んでいてもよい。また、表面活性剤は、配合物全体の0〜5%(重量/重量)の間に及んでいてもよい。詳細な実施形態では、配合物は約17.0〜19.0%の分散剤、26.0〜30.0%の水、0.005〜1.5%の乳化剤、53%のヒノキチオール(プロピオン酸中の60%)を含んでいてもよい。
【0029】
本発明の組成物および方法は、さらに以下の実施例で説明されるが、それらの実施例に限定されるものではない。それら実施例は様々な実施形態の実例であるにすぎず、本願明細書に列挙された材料、条件、重量比、プロセスパラメータ等に関し、請求項に係る発明を限定するものではない。
【実施例】
【0030】
本発明の組成物および方法は、さらに以下の実施例で説明されるが、それらの実施例に限定されるものではない。それら実施例は様々な実施形態の実例であるにすぎず、本願明細書に列挙された材料、条件、重量比、プロセスパラメータ等に関し、請求項に係る発明を限定するものではない。
【0031】
実施例1
スパイラル勾配希釈法(Foerster,H.、Kanetis,L.、Adaskaveg,J.E.2004.スパイラル勾配希釈、真菌−殺菌剤相互作用における成長反応および50%有効濃度値を決定するための迅速な方法(Spiral gradient dilution, a rapid method for determining growth responses and 50% effective concentration values in fungus − fungicide interactions)、Phytopathology 94:163−170)を、様々な植物病原性真菌の菌糸体成長および胞子/分生子発生を抑制するためのヒノキチオールの50%有効濃度(EC50値)の決定のために用いた。この方法では、スパイラルプレーターによりポテトデキストロース寒天(PDA)培地で試験液を培養した。スパイラルプレーターは、連続した放射状の濃度勾配で2.5ログ希釈した成分を用いる。それから、2回の反復実験における菌の接種物を、その勾配にわたって放射線状のラインに沿って置く。20℃で1日インキュベーションした後、胞子の発芽の抑制をプレートで観察した。そして、次の日、異なる菌類−ヒノキチオール相互作用における異なる成長形状を観察するため測定を行った。EC50値を、これらの測定値に基づいて計算した。評価した菌類は、Anamorphic Phyllachoraceae(多犯性植物炭疽病菌)、Anamorphic Sclerotiniaceae(灰色カビ病菌)、栄養胞子形成菌(Verticillium dahliae、Microphomina sp.)およびOomycota(Phytophtora capsici)の科のメンバーである。ヒノキチオール(5mg/ml)はアセトンに溶解した。アセトン単独も、非特異的抑制がないかどうか確認するために対照として用いた。
【0032】
灰色カビ病菌(B.cinerea)を接種したヒノキチオールのプレートを光学顕微鏡の10倍対物レンズ下で観察したとき、5〜0.05mg/mlの濃度のヒノキチオールは胞子の発芽を100%抑制していることが分かった。成長測定値に基づいて算出したEC50値を、表Iに記載する。
【0033】
【表1】

【0034】
これらの結果は、ヒノキチオールが植物病原性真菌を駆除することが可能な生物殺菌剤であり、非常に低い濃度で有効であることを示している。
【0035】
実施例2
上述したように調製したもう1セットのヒノキチオールのスパイラルPDAプレートには、ムコール属、リゾクトニア属、ゲオトリクム属、フォーマ属およびペニシリウム属からの植物病原性真菌を接種した。2日間インキュベーションした後、アセトン単独で処理したプレートだけで成長を観測した。これは、試験した菌類がヒノキチオールによって完全に抑制されることを示す。
【0036】
実施例3
灰色カビ病菌(Botrytis cinerea)へのヒノキチオールの抑制効果をさらに実験するため、緑ピーマン(Capsicum annuum)の生体内の試験を温室で行った。6本葉の成長段階の緑ピーマンの苗に、50%エタノールに溶解したヒノキチオールを噴霧した。原液(5mg/ml)を97%のエタノールで調製し、濃度0、0.01、0.1mg/mlに希釈した。アルコールフリーの溶液におけるヒノキチオールの効力を比較するために、この研究では0.1mg/mlヒノキチオール水溶液での処理を含めた。処理していない緑ピーマンの苗を対照として用いた。全ての処理は3回実験を行った。ヒノキチオールによる処理後、葉の表面を成長ライト下で乾燥させた。その後、1ml当たり2×10個の胞子を含む灰色カビ病菌胞子液を苗に接種した。接種した苗を、蓋付きの平箱の中の暗闇において22℃でインキュベートした。病気の兆候を観察するため、苗を処理後2、3、7日に観察した。兆候は0〜5の段階で評価した。0は葉に病変がないことを示し、5は苗が著しく腐敗/死滅したことを示す。
【0037】
この生体内での試験結果を、以下の表II、表IIIに記載する。
【0038】
【表2】

【0039】
【表3】


縦列内に同一の文字で示された平均(平均値)には、最小有意差(LSD)検定に従い、P=0.05で有意な差はない。異なる文字で示された平均は、統計的に異なっている。
【0040】
灰色カビ病菌の発生は、未処理の対照の緑ピーマンの苗よりも、ヒノキチオール(0.1mg/ml水)で処理した苗の方が著しく低かった。有機溶媒(エタノール)に0.01および0.1mg/mlで溶解したヒノキチオールは、病気の発生を延期したが、最終的な病気の発生は未処理の対照と大きくは異ならなかった。
【0041】
実施例4
多数の天然化合物を、双子葉植物(広葉雑草)の種子の発芽を抑制するそれらの能力についてスクリーニングした。レタス(Lactuca sativa)の種子を、96ウェルプレートの各ウェルに1つずつ置き、続いて25%から0%まで連続して段階的に希釈(5倍)した各化合物の溶液50μlを入れた。発芽を毎日モニターした。このスクリーニング検査により、ヒノキチオールが種子の発芽を抑制する閾値は0.32mg/lであることが分かった。
【0042】
実施例5
高処理量の96ウェル分析評価を、発芽後の非選択的除草剤としてのヒノキチオールの効力を試験するために用いた。レタス(Lactuca sativa)の苗を、連続光下の96ウェルプレートで生育させた。ヒノキチオールを、1週間目の苗に1〜0mg/mlまで連続して5倍希釈して加えた。そして、次の日、苗を枯らすために必要な最小限の濃度を記録した。結果によると、40mg/lの濃度のヒノキチオールはレタスの苗を枯らすことができたが、8mg/lの濃度のヒノキチオールは植物にとって有害ではなかった。
【0043】
実施例6
植木鉢での研究を、広葉雑草および牧草雑草の両方においてヒノキチオールの植物毒性を試験するために行った。はこべ(Stellaria media)または1年生植物のイチゴツナギ(Poa annua)のいずれかの10個の種子を、ポッティングミックスで満たしたプラスチックポットに植えた。室温の成長ライト(12時間 明/12時間 暗)下で育てた2インチ(約5.1cm)の高さの植物に、50%エタノール中に0.5、1.0、2.0、3.0、4.0および5.0mg/mLのヒノキチオールを含んだヒノキチオール溶液を噴霧した。ヒノキチオールを含んでいない50%エタノールの溶液も、対照処理として使用した。植物を室温の成長ライト下で保ち、植物毒性の視覚的な兆候や雑草駆除%について、処理後4日と14日の2つの時間ポイントで観察した。
【0044】
植物毒性の兆候は、高濃度のヒノキチオール溶液で処理した植物では、処理後1日で目で見えた。異なる濃度のヒノキチオールで得られた雑草駆除%を、下記の表IVに記載する。
【0045】
【表4】

【0046】
実施例7
この実施例では、緑ピーマンに影響を与えるボトリチス灰色カビ病の駆除におけるヒノキチオールの効力を測定する。
【0047】
緑ピーマンの苗(California Wonder Bell Pepper)を、接種前3時間と接種後24時間(それぞれ感染前および感染後)に、3.2%ヒノキチオール配合物により処理した。3.2%ヒノキチオール配合物は、プロピレングリコール、非植物毒性のエトキシレート脂肪酸エステル、ブタノール、EDTA、UV保護剤、15%水酸化ナトリウム溶液1%、および水を含んでいた。感染前散布におけるヒノキチオール濃度は1.0%(体積/体積)であり、感染後散布のためのヒノキチオール濃度は2.0%(体積/体積)であった。感染前散布で3つの苗を処理し、感染後散布で18の苗を処理した。用いた配合物は、3.2%の有効成分を含んでいた。接種は、75%PDB(ポテトデキストロース培地)1ml当たり1.8×10分生子を含む分生子懸濁液を用いて行った。評価の段階は、0=感染なし、1=小さな点在した病変、2=葉表面の50%以上を覆う点在した大きな病変または小さな病変、3=半分の苗が死滅、4=75%の苗が死滅、5=全ての苗が死滅、である。評価は接種後3日目に行った。
【0048】
その結果を、以下の表Vおよび表VIに示す。表Vは、材料および方法で説明した重症度の段階に基づく病気の強度を示している。接種の3時間前にヒノキチオール(0.32mg/ml)を用いた。そして、表VIは、接種の24時間後にヒノキチオール(0.64mg/ml)で処理した後のボトリチス灰色カビ病に感染させた緑ピーマンの苗の数を示している。
【0049】
【表5】

【0050】
【表6】

【0051】
表Vに示すように、1%(0.32mg/ml)に希釈したヒノキチオール配合物により処理した緑ピーマンの苗は、病気または植物毒性の可視的な兆候を示さなかった。この配合物は、1%(100希釈)の散布量で、接種された灰色カビに対して効果的に戦うことができる。治療目的のためには、表VIに示すように、2%(0.64mg/ml)濃度が1%溶液よりもより良い効力を与える。
【0052】
実施例8
この実施例では、野外調査においてヒノキチオールの除草効果を測定する。32.4重量%のヒノキチオールを含むヒノキチオール配合物を、野外調査で試験した。この配合物は、分散剤、水および乳化剤も含んでいた。5%と0.5%のヒノキチオール(重量/重量)を含む2つの濃度が試験され、噴霧量は1エーカー(約4047m)当たり100ガロン(379リットル)であった。1平方フィート(約929cm)の3つの小区画に適切な溶液を噴霧し、各小区画で駆除された雑草の%を処理後3、7、14、20日に記録した。この研究に用いた主な雑草は、トウダイグサ、シロツメクサ、1年生植物のイチゴツナギおよびメヒシバである。結果を以下の表VIIに示す。
【0053】
【表7】

【0054】
表VIIに示すように、噴霧後1週間で、5%(重量/重量)ヒノキチオールを含むヒノキチオール配合物は全ての雑草の90%以上を駆除した。しかし、10倍低濃度の同一の液体の除草効果は、雑草にわずかな影響しか与えなかった。
【0055】
実施例9
この実施例では、ヒノキチオール配合物の調製と、ヒノキチオール配合物の様々な成分の試験を説明する。
【0056】
非イオン性表面活性剤
エトキシル化脂肪酸エステル(例えば、ポリエチレン20ソルビタンモノオレアート、ポリエチレン20ソルビタンモノラウレート)、エトキシル化アルコール(例えば、Genapol UD−80、UD 110、O−100およびO−200、Clariant Corporation)を、この研究における植物毒素のスクリーニングのために選んだ。それらはEPAリスト4Bに属している。試験された全ての配合物は、共溶媒(15%)、水(55%)および表面活性剤(30%)を含んでいた。これらの配合物を水道水により100倍希釈し、次に2週間目のきゅうりの苗に噴霧した。結果は、全てのエトキシル化アルコールの表面活性剤が植物毒性を示すことを示した。2つのエトキシル化脂肪酸エステルの間では、ポリエチレン20ソルビタンモノオレアートは明らかな植物毒性を示さなかったが、ポリエチレン20ソルビタンモノラウレートは植物毒性を示した。
【0057】
キレート剤
この研究では、クエン酸(リスト4A)、クエン酸二ナトリウム塩(リスト4A)およびEDTA二ナトリウム塩(リスト4B)を試験のため選んだ。
【0058】
配合物組成:
全ての配合物は、3.2%ヒノキチオール、2%プロピレングリコール、20%ポリエチレン20ソルビタンモノオレアート、0.5%4−ヒロドキシ安息香酸プロピル、2%1−ブタノール、所定量のキレート剤および全体を100%にするための水を含む。クエン酸、クエン酸二ナトリウム塩およびEDTA二ナトリウム塩の%濃度は、それぞれ3.2%、3.2%、1.6%であった。各配合物の総重量は50グラムであった。
【0059】
調製手順:
ステップ1:温水浴下において、1−ブタノール、プロピレングリコールおよびポリエチレン20ソルビタンモノオレアートの混合物にヒノキチオールおよび4−ヒドロキシ安息香酸プロピルを溶解した。ステップ2:水中油型のマイクロエマルジョンを形成するために、激しく撹拌した水にこの混合物を加えた。完成品は透明な溶液である。ステップ3:保存試験のため各配合物を均等に3つのグループに分けた。
【0060】
保存手順:
いくつかの修正を加えて標準の加速保存試験(CIPAC)を適用した。手短に言えば、配合物を20mlのガラス閃光瓶に入れた。蓋は黒い粘着性バンドで封をした。このガラス瓶を4℃の冷蔵庫と54℃のインキュベーターに別々に保存した。配合物が入ったガラス瓶を取り出し、できるだけ早く目視観測を行った。
【0061】
HPLC分析:
HPLCシステムは、オートサンプラーを備えたWaters 2695分離モジュールと、Waters 2996フォトダイオードアレイ検出器と、Masslynxソフトウェアと、Sunfire(商標) C18カラム(5μm、4.6×150mm)とを含んでいた。移動相は溶剤A(0.5%クエン酸水溶液)および溶剤B(アセトニトリル中の0.1%トリフルオロ酢酸)を含んでいた。勾配移動相を採用した。溶剤Bは、最初の4分では20%に留まり、次の4分で20%から80%まで増加し、4分間80%で維持した後、8分で20%まで減少した。クエン酸とのヒノキチオール複合体は320nmでモニターした。カラム温度は実験の間30℃に保った。
【0062】
太陽暴露実験:
0.5mlのサンプルを3mlのガラス瓶に加え、蓋をした。このガラス瓶をラックに置いた。ラックは、各ガラス瓶が確実に同じ太陽暴露を受けられるように、太陽光下に置いた(ガラス瓶は30〜50度の角度でラックにもたれていた)。太陽光暴露の後、すぐにラックおよびガラス瓶を4℃で保存し、またはHPLC分析のためにサブサンプルを取り出した。目視観測はサブサンプルを取る前に記録した。サブサンプルを取る前に、ガラス瓶を十分にボルテックスにかけた。各サンプルで同じ実験を3回行った。特記しない限り、この研究において、全ての太陽光露光量が同一であった。この研究における温度は全て、75〜95°F(約24℃〜35℃)の間であった。
【0063】
結果を表VIIIに示す。結果は、実験した全てのキレート剤が、4〜54℃で2週間ヒノキチオールを安定させたことを示している。それは、加速保存試験(CIPAC法)に基づく本発明者らの目標を達成したことを示す。これらのキレート剤の中には、ヒノキチオールの安定性が著しく異なるものはなかった。
【0064】
【表8】

【0065】
UV保護剤
多くのUV保護剤が論文や特許において報告されている。例えば、有機UV吸収剤と高分子UV吸収剤は、国際公開第2007077259号に開示されている。有機UV吸収剤は、4−アミノ安息香酸および誘導体、サリチル酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体、ジフェニルアクリル酸、3−イミダゾール−4−イル−アクリル酸およびそれらのエステル、ベンゾフラン誘導体、ベンジリデンマロン酸誘導体から成る。高分子UV吸収剤は、1以上の有機珪素ラジカル化合物、桂皮酸誘導体、ショウノウ誘導体、トリアニリノ−s−トリアジン誘導体、2−ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール誘導体、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸誘導体およびその塩、アントラニル酸メチルエステル、ベンゾトリアゾール誘導体、インドール誘導体を含んでいる。しかし、これらのいずれも米国EPAリスト4Aおよび4Bには記載されていない。そのため、全てEPAリスト4Aおよび4Bに記載されている化合物を、この研究のために選んだ。それらは酸化亜鉛、二酸化チタン、L−アスコルビン酸、フミン酸、ベントナイト、オキシリグニンのナトリウム塩およびリグニンスルホン酸カルシウムから成っていた。
【0066】
配合物組成
全ての配合物は、3.2%ヒノキチオール、2%プロピレングリコール、20%ポリエチレン20ソルビタンモノオレアート、2%1−ブタノール、1.6%EDTA二ナトリウム塩、所定量のUV保護剤および全体を100%とするための水を含んでいた。それぞれの配合物の総重量は20グラムであった。
【0067】
全てのサンプルは、上述と同様の方法で準備した。各配合物を少なくとも一晩4℃か54℃で保存した後、サブサンプルを太陽光の暴露試験のために採取した(手順は上述のとおり)。各配合物の2番目のサンプル(0.5ml)をpH分析のために採取した。残りの配合物を2つの部分に均等に分け、さらに保存観測のために4℃と54℃で別々に保存した。pH分析は、標準の硬度の水(342ppm)によって100倍に希釈した後、pH/mV/温度計(IQ Scientific Instruments)によってモニターした。層、析出および/または結晶化の目視観測を、保存試験のために毎日記録した。
【0068】
以下の表IXに示す結果は、金属酸化物(例えば、ZnOとTiO)および金属錯体(例えば、ベントナイト)が0.1%でさえ配合物に溶解していなかったことを示す。有機酸(L−アスコルビン酸フミン酸)および塩(例えば、オキシリグニンのナトリウム塩およびリグニンスルホン酸カルシウム)は配合物に加えることができるが、配合物中のヒノキチオールの分解はフミン酸およびオキシリグニンのナトリウム塩において非常に遅くなった。
【0069】
【表9】

【0070】
pH調節
配合物組成
全ての配合物は、3.2%ヒノキチオール、2%プロピレングリコール、20%ポリエチレン20ソルビタンモノオレアート、2%1−ブタノール、1.6%EDTA二ナトリウム塩、20%オキシリグニン(ナトリウム塩)(または15%フミン酸)、所定量の水酸化ナトリウムおよび全体を100%とするための水を含んでいた。各配合物の総重量は20グラムであった。
【0071】
全てのサンプルは、上述と同様の方法で調製した。各配合物を少なくとも一晩4℃か54℃で保存した後、サブサンプルを太陽光の暴露試験のために採取した(手順は上述のとおり)。各配合物の2番目のサンプル(0.5ml)をpH分析のために採取した。残りの配合物を2つの部分に均等に分け、さらに保存観測のために4℃と54℃で別々に保存した。pH分析は、標準の硬水によって100倍に希釈した後、pH/mV/温度計(IQ Scientific Instruments)によってモニターした。層、析出および/または結晶化の視覚観測を、保存試験のために毎日記録した。
【0072】
結果(表X)は、pHがマイクロエマルジョンにおけるヒノキチオールの安定性にすばらしい役割を果たしたことを示唆している。析出は、pHが8.0に達したときオキシリグニン(ナトリウム塩)に生じ、それからpHにしたがって増加した。加えて、2週間目のキュウリの苗は、pHが8.7に達したとき、強い植物毒性を示した。対照的に、pH10のフミン酸の2週間目のキュウリの苗は、明らかな植物毒性を示さなかった。
【0073】
【表10】

【0074】
太陽光暴露後のサヤインゲンにおけるヒノキチオールの残留物の分析
この研究の目標は、太陽暴露後に、ガラス瓶に代わり、植物の葉でヒノキチオールの安定性を知ることであった。以下の手順を用いた。
1.プロピレングリコール、植物に無害なエトキシル化脂肪酸エステル、ブタノール、EDTA、UV保護剤、1%水酸化ナトリウムおよび全体を100%にするための水を含む3.2%のヒノキチオール配合物を用いた。各配合物の総重量は20グラムであった。
2.噴霧溶液:上述した配合物の100倍希釈の10ml。
3.サヤインゲンの苗:10〜15枚の葉を有した6つの苗。
4.2つの苗に、10mlの溶液を均等に噴霧した。
5.3つの苗は、暗闇のインキュベータ(25℃)に保存し、別の3つの苗は十分な太陽暴露(28〜35℃)のため駐車場に置いた。
6.6時間後に、葉を切断し、同一サイズの円板状切片に打ち抜いた(直径21mm)。太陽暴露したサヤインゲンと暗闇のサヤインゲンの切片は、それぞれ118枚と129枚であった。
7.切片を乳鉢の中ですり潰し、分離漏斗に移した。乳鉢と乳棒を、2N HClおよび酢酸エチルによって連続して洗った。ヒノキチオールは2N HCl(100ml)中から酢酸エチルによって3回抽出した(3×50ml)。有機相を無水硫酸ナトリウムにより乾燥した。濾過および蒸発後、有機相から残留物が抽出された。この残留物をエタノール(1.5ml)に溶解した。この溶液を、HPLC分析に直接用いた。注入量は10μlであった。
【0075】
計算のためのデータ
暗闇:葉片129
太陽光暴露:葉片118
暗闇:ピーク面積(AU):50463
太陽光暴露:ピーク面積(AU):13197
標準線:y=66.367X−52.019(R=0.9999、X=ヒノキチオール標準液のμg/ml、2μl注入量、y=ピーク面積)
HPLC注入液中のヒノキチオール濃度の計算
暗闇の[ヒノキチオール]=[(50463+52.019)/66.367]/(10/2)=152μg/ml
太陽光暴露の[ヒノキチオール]=[(13197+52.019)/66.367]/(10/2)=/40μg/ml
サヤインゲンの各切片におけるヒノキチオール濃度の計算
暗闇の[ヒノキチオール]=152μg/ml×1.5ml/129切片=1.77μg/切片
太陽光暴露の[ヒノキチオール]=40μg/ml×1.5ml/118切片=0.51μg/切片
相対安定性
太陽光暴露の[ヒノキチオール]/暗闇の[ヒノキチオール]=0.51/1.77=0.29。
【0076】
バックグラウンドノイズが標準と比較して高かったが、暗闇と太陽光暴露の両方のヒノキチオールのピークは、バックグラウンドノイズよりも3倍高かった。もちろん、この高いバックグラウンドは、ヒノキチオールの検出限界を減少させ、ヒノキチオールの実際の濃度にも影響した。さらに研究が必要であるなら、HPLC分析の前に掃除が行われる。
【0077】
しかし、28〜35℃での6時間の太陽光暴露の後、サヤインゲンの苗の単位面積(円板状切片)当たりのヒノキチオール濃度は、暗闇に25℃で保存されたものの29%であった。これは、この苗の残留物が少なくとも1日持続することを意味する。
【0078】
実施例10
この実施例は、灰星病菌(Monilinia fructicola、MON)、灰色カビ病菌(Botrytis cinerea、BOT)、フザリウム属(Fusarium sp、FUSM)、ザントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris、X−CAM)、斑点細菌病菌(Xanthomonas vesicatoria、X−VES)、Pseudomonas viridilivida(PSVI)および軟腐病菌(Erwinia carotovora、ERWC)の増殖においてアセトン中のヒノキチオールの効果の試験について説明する。
【0079】
方法
スパイラルプレーティング法を、プレートの中心から端にかけて生成物濃度の急激な対数減少を有するPDAプレートおよびTSAプレートに殺菌剤を蓄積させるために用いた。プレートを4時間静止したままにし、菌類および細菌を接種した。プレート単位で同一の微生物について4回反復実験を行い、各プレートについて1回実験を行った。
【0080】
増殖の測定値を取る前に、プレートを3日間培養した。「阻害の距離」は、培地の中心から端まで測定し、増殖していない領域の長さを示す。「コロニーの幅比」は、ゼロ濃度で測定した増殖の幅と、最も高い濃度で測定した増殖の幅との比を示す。
【0081】
結果
・0mmの増殖阻害=全てが育ち、全く阻害されなかった。
・28mmの増殖阻害=最大限の阻害、まったく増殖しなかった。
・*は測定するコロニーがないことを意味する。
・阻害%は、阻害の距離の平均値を、100%の阻害(28mm)を示す距離で割って100倍することにより計算した。
結果を表XIに示す。
【0082】
【表11】

【0083】
ヒノキチオールは、83%のザントモナス・カンペストリス、62%の軟腐病菌、48%の灰星病菌、32%のフザリウム属の増殖を阻害した。ヒノキチオールは、P.viridilividaおよび灰色カビ病菌の増殖は阻害しなかった。また、軟腐病菌および灰星病菌では、真菌および細菌の水平方向増殖がヒノキチオールの濃度が増加するにつれて減少した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒノキチオールおよび/またはその塩、酸性キレート剤、キャリヤーおよび/または希釈剤および任意のUV吸着剤、塩基性pH安定剤および/または非植物毒性表面活性剤を含む組成物。
【請求項2】
前記ヒノキチオールおよび/もしくはその塩、またはそれらの組み合わせは有機溶媒に溶解されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ヒノキチオールおよび/もしくはその塩、またはそれらの組み合わせは、蟻酸、プロピオン酸、エタノール、ブタノールおよびアセトンから成る群から選択された有機溶媒に溶解されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、乳剤、マイクロエマルジョン、可溶性液体、水中油型エマルジョン、濃厚懸濁液、顆粒水和剤、水和剤の形状である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、さらに非ヒノキチオール抗微生物剤、例えば抗真菌剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、さらに非ヒノキチオール生物除草剤または非ヒノキチオール化学除草剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記キレート剤は、EDTA、クエン酸およびクエン酸塩から成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記pH安定剤を含む前記組成物は、pH7〜10を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記UV保護剤は、L―アスコルビン酸、フミン酸、ベントナイト、オキシリグニンのナトリウム塩およびリグニンスルホン酸カルシウムから成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記pH安定剤は金属水酸化物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
植物における非エルウィニア属の微生物の感染を調整すること、または単子葉雑草もしくは双子葉雑草の発生または成長を調整することに用いるための、ヒノキチオールおよび/またはその塩およびキャリヤーおよび/または希釈剤ならびに任意の酸性キレート剤、UV吸収剤、塩基性pH安定剤および/または非植物毒性表面活性剤を含む組成物。
【請求項12】
前記組成物は、前記植物、前記単子葉雑草または前記双子葉雑草、ならびに前記植物の成長のために用いられる基質に適用される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記成長基質は土である、請求項18に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物は前記植物の収穫前に用いられる、請求項18に記載の組成物。
【請求項15】
前記雑草は広葉雑草および/または牧草雑草である、請求項11に記載の組成物。
【請求項16】
他の抗微生物剤および/または化学殺菌剤および/または生物除草剤および/または化学除草剤と組み合わせて任意に用いられる、植物病原菌を駆除するための非エルウィニア属の植物抗微生物剤、例えば、生物殺菌剤または非エルウィニア属の抗菌剤として用いる組成物を調製するためのヒノキチオールの使用。
【請求項17】
前記ヒノキチオールは収穫前生物殺菌剤として用いられる、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
単子葉雑草または双子葉雑草(例えば、広葉雑草または牧草雑草)を駆除するための発芽前または発芽後除草剤として用いられ、単独または他の生物除草剤および/または化学除草剤との組み合わせのいずれかで用いられ、アセトン、エタノールまたは蟻酸のような溶剤ベースの溶液に任意に用いられる組成物を調製するためのヒノキチオールの使用。

【公表番号】特表2010−534675(P2010−534675A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518368(P2010−518368)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/070945
【国際公開番号】WO2009/015245
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(510022440)マローネ  バイオ イノベーションズ,インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】