植物SNF1関連タンパク質キナーゼ遺伝子
本発明は、植物体のSnf1関連タンパク質キナーゼ(SnRK)遺伝子およびSnRK遺伝子産物の単離、精製、特徴づけ、および使用に関する。本発明は、単離および精製されたSnRK DNAを包含し、該遺伝子を用いて、水分喪失量および植物体の乾燥耐性、スクロース含量、デンプン含量、種子油含量、脂肪酸合成量、種子油のアシル組成、種子のサイズ/重量、生物ストレスに対する抵抗性/耐性、根のバイオマスの増大、ならびに/または他の種子成分内、植物体への炭素フラックスを制御する方法、ならびに、該遺伝子により形質転換された組織および植物体に関する。本発明はまた、導入された本発明のDNA配列を含有するゲノムを有する、トランスジェニック植物体、植物組織、および植物種子、ならびにこのような植物体および植物種子を作製する方法にも関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、「植物SNF1関連タンパク質キナーゼ遺伝子」について、2009年4月10日に出願された、米国特許仮出願第61/168,532号の出願日の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は一般に、植物の特徴を遺伝子操作するのに有用な植物の遺伝子に関する。より具体的には、本発明は、例えば、商用植物または作物植物における、植物体の水分喪失量および植物体の乾燥耐性、スクロース含量、デンプン含量、種子油含量、脂肪酸合成量、種子油のアシル組成、種子のサイズ/重量、生物ストレスに対する抵抗性/耐性、根のバイオマスの増大、ならびに/または他の種子成分への炭素フラックスを改変するために、有用なSnf1関連タンパク質キナーゼ(SnRK)遺伝子の同定、単離、および導入に関する。
【背景技術】
【0003】
Snf1関連タンパク質キナーゼが、酵母細胞および哺乳動物細胞における栄養ストレスおよび環境ストレスに応答して、基礎的な代謝経路を調節する重要な制御物質として機能することは、多くの証拠により裏付けられている(Hardie、2007;HardieおよびCarling、1997;HedbackerおよびCarlson、2008)。酵母である出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)において、スクロース非発酵キナーゼであるSnf1は、グルコース抑制遺伝子の転写を抑制解除させるのに必要とされる、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼである。Snf1はまた、糖新生、グリコーゲンの蓄積、ミトコンドリアおよびペルオキシソームの生合成、ならびに胞子形成にも関与する。哺乳動物における酵母Snf1のオーソログは、アデノシン一リン酸(AMP)活性化タンパク質キナーゼ(AMPK)である。
【0004】
細胞によりストレス応答がなされてATPが枯渇すると、AMPKが活性化し、これにより、コレステロールおよび脂肪酸の生合成に関与する酵素がリン酸化および阻害される。AMPKは、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリール−CoA(HMG−CoA)レダクターゼ(コレステロールならびに他のイソプレノイド化合物が合成される際に重要となる制御酵素)、アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)(マロニルCoAの合成における律速酵素)、およびホルモン感受性リパーゼも同様に不活化しうることが十分に立証されている。同時に、AMPKは、脂肪酸異化経路を誘発し、ATP生成も促進する。例えば、AMPKは、マロニルCoAの分解に関与する酵素である、マロニル−CoAデカルボキシラーゼ(MCD)をリン酸化および活性化する。より近年において、哺乳動物細胞では、グリセロール−3−リン酸アシルトランスフェラーゼを不活化する際のAMPKの役割もまた示唆されている。したがって、AMPKは、トリグリセリドおよびコレステリルエステルの合成および分解を制御する可能性を有する。
【0005】
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)ゲノムおよびイネゲノムの全配列についてのバイオインフォマティックス研究により、植物には、酵母に由来する古典的なSnf1型のキナーゼと関連する、大きな一群のキナーゼが存在することが明らかとなった。シロイヌナズナ属(Arabidopsis)では、Snf1関連キナーゼ(SnRK)は、5つの染色体すべてにおいて見られ、38のメンバーからなる。配列類似性により、これらのキナーゼを、3つの亜群:SnRK1(3のメンバー)、SnRK2(10のメンバー)、およびSnRK3(25のメンバー)に類別することができる(E.M.Hrabakら、Plant Physiol.2003、132、666〜680)。個々のキナーゼの構造は、キナーゼドメインおよび制御ドメインを含む。これらのキナーゼは、N末端のキナーゼ触媒ドメインにおいて比較的高度の類似性を示すが、C末端におけるそれらの制御ドメインは、高度に多様であり、これらは、タンパク質間相互作用において機能するか、またはキナーゼ活性を制御すると考えられている(E.M.Hrabakら、Plant Physiol.2003、132、666〜680)。このことは、各キナーゼの複雑な機能性を強調する。
【0006】
SnRK1キナーゼは、配列類似性に基づいて、酵母Snf1キナーゼおよび哺乳動物AMPKに最も近い相同体である。SnRK1キナーゼは、ライムギ、シロイヌナズナ属、タバコ、オオムギ、イネ、テンサイ、およびバレイショを含めた多様な種から単離されている。ライムギ遺伝子およびタバコ遺伝子が、酵母におけるSnf1の突然変異を相補しうるという知見により、Snf1に対する植物SnRK1遺伝子の機能的な類似性が予測される。したがって、糖代謝における植物SnRK1の役割が示唆されている。バレイショにおいてSnRK1のアンチセンスを発現させたところ、糖誘導性のスクロースシンターゼの発現が結果として失われた(Purcellら、Plant Journal 1998、14:195〜202)。これらのアンチセンス系統についてのさらなる研究により、デンプンの生合成において重要な制御ステップである、ADPグルコースピロホスホリラーゼの翻訳後修飾を調節することを介して炭素フローに影響を及ぼす、SnRK1キナーゼの潜在的な役割が示されている(Tiessenら、Plant Journal 2003、35:490〜500)。オオムギにおいてSnRK1のアンチセンスを発現させたところ、花粉粒内にほとんどまたはまったくデンプンが蓄積されず、雄の不妊が結果として引き起こされたという知見(Y.Zhengら、Plant Journal 2001、28:431〜441)から、さらに支持する証拠が得られた。
【0007】
SnRK1群と異なり、動物および真菌においてSnRK2群およびSnRK3群を代表するものは見出されておらず、植物におけるこれらの細胞応答の独特の制御が予測される。近年、CIPK(CBL相互作用型タンパク質キナーゼ)とも称する、SnRK3キナーゼが、カルシニューリンB様タンパク質(CBL)と称する植物カルシウムセンサーの新規のファミリーと相互作用しうることが示されている(Kudlaら、1999;Shiら、1999;Kimら、2000)。シロイヌナズナ属では、CBLファミリーに10のメンバーが存在し、各メンバーは、カルシウムに結合する3つのEFハンドを含有する(Kolukisaogluら、2004)。ストレス条件下では、カルシウムシグネチャーにより、異なるCBLメンバーとSnRK3(CIPK)メンバーとの特異的相互作用が変化し、これが解読され、下流における遺伝子の発現が変化し、その後、特異的な生理学的応答がもたらされる。例えば、CBL1が、CIPK7およびCIPK9と相互作用して、乾燥に対する応答を促進するのに対し、CBL9は、CIPK3を活性化して、寒冷に対する応答を増強する。CBL−SnRK3(CIPK)ネットワークは、ストレス応答におけるその中心的な役割のためにストレスホルモンと称される植物ホルモンである、アブシジン酸(ABA)と主として相互作用することが留意される。この機構を裏付ける証拠には、(i)ストレス条件下におけるのと同様に、ABAは、CBL1遺伝子およびCIPK3遺伝子の発現を誘導しうること、(ii)cbl9突然変異体およびcipk3突然変異体は、ABAに対して感受性過剰であること、ならびに(iii)シロイヌナズナ属において、SnRK3群のメンバー(PKS18と称し、注釈つきのAt5g45820に対応する)を過剰発現させたところ、種子発芽時においてABAに感受性過剰が付与される一方、該遺伝子をサイレンシングさせたところ、ABAの感受性喪失が結果としてもたらされたこと(D.Gongら、J.Biol.Chem.2003、277:42088〜42096)が含まれる。
【0008】
キナーゼC末端ドメインの配列類似性が低いため、SnRK2群は、2つの亜群、すなわち、SnRK2aおよびSnRK2bへとさらに類別することができる(M.Boudsocqら、J.Biol.Chem.2004、279:41758〜66;T.Umezawaら、PNAS 2004、101:17306〜17311)。SnRK2aは、SnRK2.2、SnRK2.3、SnRK2.6、SnRK2.7、およびSnRK2.8からなる。他の5つのメンバーであるSnRK2.1、SnRK2.4、SnRK2.5、SnRK2.9、およびSnRK2.10は、SnRK2b亜群に属する(Umezawaら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.2004、101:17306〜11)。複数の研究は、SnRK2亜群における個々のキナーゼが、生物学的プロセスにおいて異なる役割を有しうることを示している。例えば、SnRK2.2と、SnRK2.3とは、配列類似性に基づいて、SnRK2.6と最も密接に関連する2つのタンパク質キナーゼである(Hrabakら、2003)が、それらは、SnRK2.6と極めて異なる形で機能する。SnRK2.2およびSnRK2.3は、種子の発芽時および苗の成長時において、ABAシグナル伝達を媒介する重要なタンパク質キナーゼであることが示されている。しかし、ABAシグナル伝達の正の制御物質としてのSnRK2.6が、ABAを介する気孔開度の制御に関与する一方、シロイヌナズナ属のSnRK2.6突然変異体でも、種子の休眠および発芽が損なわれることはない(Mustilliら、2002;Yoshidaら、2006)。
【0009】
SnRK2亜群の各キナーゼに関する特別な機能性を強調する、少なくとも3つの因子が存在すると考えられている。第一に、個々のキナーゼは、時間的および空間的に異なる発現を示しうる。例えば、SnRK2−8の発現は、根では高度であるが、葉および長角果では低度であり(Umezawaら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.2004、101:17306〜11)、SnRK2−6は主に、シロイヌナズナ属の孔辺細胞および脈管組織において発現し(Mustilliら、2002)、SnRK2−2およびSnRK2−3はいずれも、各種の組織において広範な発現を示すが、SnRK2−3は、根の先端部において特に高度に発現する(Fujiiら、Plant Cell、2007、19:485〜494)。第二に、C末端における制御ドメインは、異なるSnRK2キナーゼ間で高度に多様であるが、キナーゼドメインはよく保存されている。例えば、SnRK2−4キナーゼと、SnRK2−6キナーゼとの全体的な配列類似性が70%であるのに対し、C末端ドメインで見られる同一性は、30%に過ぎない。これは、SnRK2−6による他のシグナル伝達構成要素との相互作用が、SnRK2−4による相互作用とは異なりうることを示唆し、これにより、これらの2つのキナーゼにより付与される機能は異なることが予測される。支持する証拠は、これらの2つのキナーゼが異なる環境要因に応答するという知見から得られた(M.Boudsocqら、J.Biol.Chem.2004、279:41758〜66)。加えて、該キナーゼの生理学的機能の制御におけるC末端ドメインの役割が、実験的に検証された(Belinら、2006;Yoshidaら、2006)。最後に、該キナーゼの構造がわずかに異なれば、異なる細胞内局在をもたらしうる。各キナーゼがどのように機能するかを理解するためには、それが生細胞内のどこに局在するかを理解することが必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態は、植物体、植物種子、またはその後代を作製するプロセスであって、Snf1関連タンパク質キナーゼタンパク質をコードする核酸配列により、植物細胞を形質転換するステップと、植物体が種子をつけるまで、前記植物細胞から植物体を生育させるステップと、前記植物体から種子を採取するステップとを含むプロセスを対象とする。本発明の別の実施形態は、前記植物体を作製するプロセスにより作製される植物体から採取される種子を包含する。また、そのゲノム中に組み込まれたSnf1関連タンパク質キナーゼタンパク質をコードする核酸配列を有する植物体、植物種子、またはその後代も包含される。
【0011】
本発明の別の態様は、植物体、植物体の貯蔵器官、または植物種子の油含量、糖含量、またはデンプン含量を変化させる方法を包含し、そのプロセスは、センスまたはアンチセンスの核酸構築物を植物体形質転換ベクター中に導入して、改変植物体形質転換ベクターを作製するステップであって、前記センスまたはアンチセンスの核酸構築物が、シロイヌナズナ属のSnf1関連タンパク質キナーゼ(SnRK)タンパク質をコードする単離核酸配列、精製核酸配列、または組換え核酸配列を含むステップを包含する。植物体、植物体の貯蔵器官、または植物種子のゲノムは、前記改変植物体形質転換ベクターにより形質転換される。この植物体、植物体の貯蔵器官、または植物種子を生育させ、次いで、油または生体高分子が抽出される。このベクターにより形質転換されているゲノムを有する、遺伝子形質転換植物体および植物種子もまた、本発明のさらなる態様として包含される。このような植物体および植物種子は、同じ遺伝子型の遺伝子改変されていない植物体と比較して、呼吸速度の変化、種子油含量の変化、脂肪酸組成の変化、バイオマスの増大、生体高分子を蓄積する能力の増強、根の成長の増大を示すものとして特徴づけることができる。
【0012】
特定の実施形態では、植物体におけるSnf1関連タンパク質キナーゼタンパク質レベルを調節する方法が、プロモーターに作動可能に連結された、植物体のSnf1関連タンパク質キナーゼポリヌクレオチドにより、植物細胞を安定に形質転換するステップであって、前記ポリヌクレオチドが、センス配向またはアンチセンス配向であるステップと、前記植物細胞を、植物生育条件下において生育させて、植物体におけるSnf1関連タンパク質キナーゼタンパク質を調節するのに十分な時間にわたり前記ポリヌクレオチドを発現することが可能な再生植物体をもたらすステップとを包含する。
【0013】
別の実施形態は、トランスジェニック種子から油を抽出するプロセスであって、Snf1関連タンパク質キナーゼタンパク質をコードする手段により、植物細胞を形質転換するステップと、植物体が種子をつけるまで、前記植物細胞から植物体を生育させるステップと、前記植物体から種子を採取するステップと、採取された種子から油を抽出するステップとを含むプロセスを対象とする。このプロセスのプロセスにより生成される油もまた、包含される。
【0014】
さらに別の実施形態は、植物細胞を形質転換するためのベクターであって、配列番号1もしくは配列番号3、または配列番号1もしくは配列番号3の一部、あるいは配列番号1もしくは配列番号3と実質的に相同な配列によるデオキシリボ核酸配列を含有することを特徴とするベクターを対象とする。また、配列番号1もしくは配列番号3、または配列番号1もしくは配列番号3の一部、あるいは配列番号1もしくは配列番号3と実質的に相同な配列の導入ヌクレオチド配列を含有することを特徴とするゲノムを有する植物体または植物種子も、実施形態として包含される。同様に、トランスジェニック植物体のゲノム中にヌクレオチド配列を導入することにより前記植物体を作製する方法であって、前記ゲノム中に導入される前記ヌクレオチド配列が、配列番号1もしくは配列番号3、または配列番号1もしくは配列番号3の一部、あるいは配列番号1もしくは配列番号3、または配列番号1もしくは配列番号3の一部と実質的に相同な配列を包含することを特徴とする方法も、特定の実施形態に包含される。
【0015】
本発明の別の態様は、センスまたはアンチセンスの核酸構築物を、植物体形質転換ベクター中に導入し、該ベクターを用いて植物体または植物種子のゲノムを形質転換し、次いで、該植物体または植物種子を生育させ、該植物種子から油を抽出することにより、該植物体の油含量、脂肪酸組成、または種子収量を変化させる方法であって、前記核酸配列が、配列番号1もしくは配列番号3、または配列番号1もしくは配列番号3の一部、あるいは配列番号1もしくは配列番号3と実質的に相同な配列であることを特徴とする方法を包含する。本発明のさらに別の態様は、プロモーターと機能的に関連している、植物材料の油含量を改変するためのSnf1関連タンパク質キナーゼ手段を含むベクターによりさらに形質転換される植物体、植物種子、または植物体の後代を包含する。
【0016】
本発明のさらに別の実施形態は、植物体の乾燥耐性を改変する方法であって、Snf1関連タンパク質キナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、配列番号1および配列番号3からなる群から選択される核酸配列を含む核酸構築物を、植物体形質転換ベクター中に導入するステップと、前記植物体形質転換ベクターにより、植物体または植物種子のゲノムを形質転換するステップと、前記核酸配列を発現させるステップと、前記植物体または植物種子を生育させるステップと、同一の条件下で生育させた植物体と同じ遺伝子型であるが前記導入核酸配列は有さない、統計学的に有意な数の植物体の平均乾燥耐性と比較して、乾燥耐性の変化を有する形質転換植物体を選択するステップとを包含する方法を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】34日齢のシロイヌナズナの、野生型(wt)系統の茎における側枝数と、340293、340318、340367、340378、および340397と称するSnRK2−6トランスジェニック系統の茎における側枝数との比較を示すグラフである。誤差バーは、±SDである。
【図2】27日齢のシロイヌナズナの、野生型(wt)系統およびトランスジェニック系統の切断した地上部における水分喪失量を示すプロットである。データ点の各々は、シロイヌナズナの5つの個別のトランスジェニック系統の平均を表わす。水分喪失量は、地上部を植物体から切断した0〜6時間後における、初期の新鮮時重量に対する百分率として報告される。wt系統と、トランスジェニック系統との間における水分喪失量の有意差を、P<0.004(t検定)により示す。
【図3】27日齢のシロイヌナズナのSALK_008068株におけるT−DNA挿入について、ホモ接合(ノックアウト)およびヌル(ヌル)の切断した地上部における水分喪失量を示すプロットである。水分喪失量は、地上部を植物体から切断した0〜6時間後における、初期の新鮮時重量に対する百分率として報告される。wt系統と、トランスジェニック系統との間における水分喪失量の有意差を、P<0.004(t検定)により示す。
【図4】30日齢のシロイヌナズナの、野生型(wt)系統およびT3 SnRK2−6トランスジェニック系統(340293、340318、340367、340378、および340397)に由来する葉における可溶性糖含量(ナノモル/g単位のグルコース、フルクトース、およびスクロース)を示すグラフである。データ点の各々は、シロイヌナズナの5つの個別のSnRK2−6トランスジェニック系統(340293、340318、340367、340378、および340397)の平均を表わす。誤差バーは、±SDである(試料採取した各系統につき、n=8または10ずつの植物体)。
【図5】30日齢のシロイヌナズナの、野生型(wt)系統、ならびに5つの個別のSnRK2−6トランスジェニック系統に由来する葉におけるデンプン含量を示すグラフである。データ点の各々は、シロイヌナズナの5つの個別のSnRK2−6トランスジェニック系統(340293、340318、340367、340378、および340397)の平均を表わす。デンプン含量は、各系統に由来する葉の、ナノモル/g単位の総デンプン含量として報告される。誤差バーは、±SDである(試料採取した各系統につき、n=8または10ずつの植物体)。
【図6】シロイヌナズナの、野生型(wt)系統に由来する葉の脂肪酸組成と、SnRK2−6トランスジェニック系統に由来する葉の脂肪酸組成との比較を示すグラフである。データ点の各々は、シロイヌナズナの5つの個別のSnRK2−6トランスジェニック系統(340293、340318、340367、340378、および340397)の平均を表わす。脂肪酸の比率は、各系統に由来する葉の全組成に対するモル%として報告される。誤差バーは、±SDである(試料採取した各系統につき、n=10ずつの植物体)。
【図7】シロイヌナズナの、野生型(wt)系統における植物体1株当たりの種子収量と、SnRK2−6トランスジェニック系統における植物体1株当たりの種子収量との比較を示すグラフである。より具体的には、通常の乾燥生育条件下、穏やかな乾燥生育条件下、ならびに厳しい乾燥生育条件下における種子収量の比較である。「通常」条件下で生育させた植物体には、全生育期間中において、十分に施水した。「穏やかな」乾燥条件下で生育させた植物体では、開花期の6日間にわたり灌漑を停止した。「厳しい」乾燥条件下で生育させた植物体では、栄養成長期の16日間にわたり灌漑を停止した。誤差バーは、±SDである(試料採取した各系統につき、n=30ずつの植物体)。wt系統と、トランスジェニック系統との間における種子収量の有意差を、P<0.001(t検定)により示す。
【図8】34日齢のヌル分離個体(ヌル)およびSnRK2−6トランスジェニック系統のトウモロコシ植物体(トランスジェニック)の切断葉部分における水分喪失量を示すプロットである。データ点の各々は、トウモロコシ植物体の8つの個別のトランスジェニック系統の平均を表わす。それらのすべてが極めて類似のサイズを示す、各個別の系統に由来する5株ずつのヌル分離個体、ならびに5株ずつのキナーゼ含有植物体を用いた。各植物体について、頸領が目に見える頂端部の葉を切り取り、アッセイで用いた。水分喪失量は、地上部を植物体から切断した0分〜180分後における、初期の新鮮時重量に対する百分率として報告される。ヌル系統と、トランスジェニック系統との間における水分喪失量の有意差を、P<0.003(t検定)により示す。
【図9A】34日齢の、3つの個別の系統に由来するヌル分離個体(ヌル)、ならびにSnRK2−6を含有するトウモロコシ植物体(トランスジェニック)の切断葉における水分喪失量を示すプロットである。データ点の各々は、同じ系統に由来する5株ずつの個別のトウモロコシ植物体の平均を表わす。各植物体について、頸領が目に見える頂端部の葉を切り取り、アッセイで用いた。水分喪失量は、地上部を植物体から切断した0分〜90分後における、初期の新鮮時重量に対する百分率として報告される。
【図9B】34日齢の、3つの個別の系統に由来するヌル分離個体(ヌル)、ならびにSnRK2−6を含有するトウモロコシ植物体(トランスジェニック)の切断葉における水分喪失量を示すプロットである。データ点の各々は、同じ系統に由来する5株ずつの個別のトウモロコシ植物体の平均を表わす。各植物体について、頸領が目に見える頂端部の葉を切り取り、アッセイで用いた。水分喪失量は、地上部を植物体から切断した0分〜90分後における、初期の新鮮時重量に対する百分率として報告される。
【図9C】34日齢の、3つの個別の系統に由来するヌル分離個体(ヌル)、ならびにSnRK2−6を含有するトウモロコシ植物体(トランスジェニック)の切断葉における水分喪失量を示すプロットである。データ点の各々は、同じ系統に由来する5株ずつの個別のトウモロコシ植物体の平均を表わす。各植物体について、頸領が目に見える頂端部の葉を切り取り、アッセイで用いた。水分喪失量は、地上部を植物体から切断した0分〜90分後における、初期の新鮮時重量に対する百分率として報告される。
【図10】2280(1)006.006R.011R、2280(2)015.006R.008R、2280(2)016.004R.017R、および2280(3)025.006R.007Rと称する4つの個別の系統に由来する、ヌル分離個体(ヌル)における根のバイオマスと、SnRK2−6を含有するトウモロコシ植物体(トランスジェニック)における根のバイオマスとの比較を示すグラフである。地上部を切り取り、土壌を除去することにより根を回収し、次いで、7日間にわたり温室内で乾燥させて、異なる試料間における水分のばらつきを排除した。
【図11】ベクターとして用いうるプラスミドであるpDAB4504のマップである。該ベクターは、本発明において植物体を形質転換するための以下の顕著な特色:CsVMVプロモーター、SnRK2−6、およびAtuORF24 3’−UTRを含有する。
【図12】ベクターとして用いうるプラスミドであるpDAB7702のマップである。該ベクターは、本発明において植物体を形質転換するための以下の顕著な特色:Ubi1プロモーター、SnRK2−6hv、およびZmPer5 3’UTRを含有する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態は、商用植物油の収量を増大させる目的、またはそれらの組成を改変して、植物体および植物製品の特定の商用の改善を達成する目的で植物体内のトリアシルグリセロールの自然形成を改変するために用いうる遺伝子エレメントの同定、単離、およびクローニングを対象とする。
【0019】
本発明の別の実施形態は、シロイヌナズナ属種に由来するSnf1関連タンパク質キナーゼ(SnRK)遺伝子配列およびSnRK cDNA配列を単離および特徴づけし、植物体の遺伝子操作においてこれらの配列を用いることに関する。
【0020】
本発明のさらに別の実施形態は、プロモーター(例えば、CsVMVまたはUbi1)の制御下にある、センス配向のシロイヌナズナ属に由来する全長SnRKコード配列またはSnRK配列の大部分を含有するベクターを提供し、これをシロイヌナズナ属種中に再導入するか、または他の植物体中に導入することである。本発明の代替的な実施形態では、それ自身の5’側上流の制御配列の制御下にある、シロイヌナズナ属種に由来する全長SnRK遺伝子またはSnRK配列の大部分からなる、シロイヌナズナ属に由来するゲノム断片を含有するベクターが提供され、これがシロイヌナズナ属種中に再導入されるか、または他の植物体中に導入される。
【0021】
また、プロモーターの制御下にある、アンチセンス配向のシロイヌナズナ属に由来する全長SnRK配列またはSnRK配列の大部分を含有するベクターを構築し、これをシロイヌナズナ属種中に再導入するか、または他の植物体中に導入する方法も包含される。別の具体的な方法は、シロイヌナズナ属および他の植物体を改変して、それらの種子油含量、それらの脂肪酸組成、それらの平均種子重量もしくは平均種子サイズ、ならびに/またはそれらの水分喪失量および植物体の乾燥耐性を改変するステップを包含する。本発明の他の方法は、シロイヌナズナ属および他の植物体を改変して、根のバイオマスを増大させるなど、生育および成長を促進するか、またはそれらの光合成活性を改変して、これにより、糖含量およびデンプン含量を増大させるステップを包含する。
【0022】
本発明の別の態様によれば、配列番号1(pSnRK cDNA)の、単離および精製されたデオキシリボ核酸(cDNA)を、センス配向で植物細胞中に導入するための、該cDNAを含有するベクターが提供される。本発明の別の態様によれば、配列番号3(pSnRK2−6hv5遺伝子)の、単離および精製された植物最適化デオキシリボ核酸(DNA)を、センス配向で植物細胞中に導入するための、該遺伝子を含有するベクターが提供される。本発明のさらに別の態様によれば、配列番号1もしくはその一部、または配列番号3もしくはその一部を、アンチセンス配向で植物細胞中に導入するための、該遺伝子または部分遺伝子を含有するベクターを調製する方法が提供される。
【0023】
別の実施形態は、シロイヌナズナの突然変異体の種子系統を提供するステップを包含する。該突然変異体の種子系統は、SnRK遺伝子内に挿入突然変異を有し(下記の表1に示される)、SnRK活性が増大しており、その結果、葉のサイズおよび側枝数が増大し、水分喪失量が減少し、糖含量およびデンプン含量が増大し、種子中の脂肪アシル組成が改変され、種子収量が増大し、根のバイオマスが増大する植物体をもたらす。SnRK2−6のcDNA配列を配列番号1に示し、その植物最適化DNA配列を配列番号3に示し、SnRK2−6の翻訳されたタンパク質配列を配列番号2に示す。
【0024】
本発明はまた、導入された配列番号1または配列番号3のDNA配列を含有するゲノムを有する、トランスジェニック植物体およびトランスジェニック植物種子、ならびにこのような植物体および植物種子を作製する方法にも関する。
【0025】
本発明は、当業者により理解される通り、配列番号1または配列番号3の配列情報を用いて、既知の方法により単離および/または特徴づけされる、25%以上のアミノ酸配列の推定同一性、ならびに50%以上のアミノ酸配列の推定類似性を有する植物体に由来する、実質的に相同的なDNA配列と、アンチセンス適用または共抑制(JorgensenおよびNapoli、1994)適用で用いることにより、遺伝子発現の阻害剤としてなおも機能しうる、長さが短縮された部分とにさらに関する。特定の遺伝子配列におけるヌクレオチドの同一性のわずかな変化により、その遺伝子の有効性が結果として低減または増強される場合があり、一部の適用(例えば、アンチセンス適用または共抑制適用)では、部分配列が、しばしば全長形と同様に有効に作用することは、当業者により理解されるであろう。改変遺伝子の有効性を調べる方法と同様、遺伝子配列を変異または短縮させうる方法も、当業者にはよく知られている。したがって、このような遺伝子の変異型のすべては、本発明の一部として特許請求される。
【0026】
葉のサイズ、側枝数、水分喪失量、または糖、デンプン、もしくは油の含量もしくは組成の改変を考慮する場合は、本発明による、統計学的に有意な数の植物体または種子の平均から得られた結果を、同一の条件下で同時に生育させた、統計学的に有意な数の、形質転換されていない(対照の)、同じ遺伝子型の植物体または種子の平均から得られた結果と比較することが最善である。特に、このような植物体を異なる条件下で生育させる場合は、遺伝子型が同じ個別の植物体のばらつきが許容される。必要とされる平均を成すのに用いられる植物体または種子の実際の数は変化しうるが、このような数を選択するいかなる場合でも一般に、一定の平均をもたらすのに十分な数であるものとする。一般に、この数は、少なくとも10であり、少なくとも20、30、50、または100であることがより好ましい。
【0027】
本発明のSnRKは、植物体におけるSnRK活性、ならびに水分喪失量、乾燥耐性、炭素同化量、植物体の生育および成長、脂肪酸バイオアセンブリー、ならびに根の成長を操作するのに有用である。例えば、プロモーター(例えば、CsVMVまたはUbi1)の制御下において、センス配向でSnRK遺伝子を含有する構築物により植物体を形質転換することにより、SnRK cDNAの発現および乾燥耐性を向上させることができ、該植物体の組成を改変することができる。これは、乾燥耐性、および根の作物中のデンプン/油比を改変するのに特に有利でありうる。一部の実施形態では、SnRK遺伝子を含有する構築物により形質転換した植物体はまた、これらの植物体における水分喪失に対する抵抗性、乾燥耐性、炭素同化量、植物体の生育および成長、脂肪酸バイオアセンブリー、ならびに根の成長をさらに向上させる、さらなる異種遺伝子または改変遺伝子も包含しうる。
【0028】
代替的に、アンチセンス現象または共抑制(トランスイッチ(Transwitch))現象(De Langeら、1995;Molら、1990;JorgensenおよびNapoli、1994;Kinney、1995;Vaucheretら、1998;Taylor、1998)によりある程度までは、SnRKの発現をサイレンシングすることもできる。例えば、種子特異的な形でSnRKをサイレンシングする結果として、SnRKの蓄積を低下させることができる。これは、種子根作物中のデンプン、糖、および/または油の含量または比率を低下させて、貯蔵期間中の安定性を向上させることに適用されうるであろう。
【0029】
SnRK遺伝子またはその一部を用いて可能となる操作および成果物の一部には、以下の油含量を増加または減少させた種子、含有する糖含量またはデンプン含量を増加または減少させた葉、脂肪酸組成が改変された種子油、水分喪失量が減少している植物体、他の貯蔵器官(例えば、塊茎、根、および葉)内の貯蔵化合物の蓄積能が増強または改変されている植物体、ならびに根の成長および根のバイオマスが増大している植物体が含まれるがこれらに限定されない。
【0030】
複数のSnRK2キナーゼおよびSnRK3キナーゼが、ABAシグナル伝達カスケードを介し、非生物的ストレスに応答して極めて重要な役割を果たすことが示されている。植物の脂質代謝におけるABAの極めて重要な役割を踏まえるなら、これは、一部のSnRKキナーゼが、この代謝の制御物質として機能しうる可能性を示唆する。種子の発芽期間において、ABAは、貯蔵脂質であるトリアシルグリセロールをスクロースへと転換するのに不可欠な経路である、脂肪酸ベータ酸化回路およびグリオキシル酸回路に関与する遺伝子の転写を低下させる(S.L.Pritchardら、Plant J.2002、31:639〜647)。他方、ABAは、胚発生期間において、トリアシルグリセロール合成を増大させ、その正の制御物質としてふるまう。種子特異的な免疫調節によりABAを抑制すると、タバコ種子油の生成が結果として減少することが示されている(J.Phillipsら、EMBO J.1997、16:4489〜4496)。逆に、ABA(4μM)で未成熟トウモロコシ胚を処理したところ、脂肪酸アシルトランスフェラーゼ活性が上昇し、これにより、油収量が増大した(F.Pacheco−Moisesら、Plant Physiol.1997、114:1095〜1101)。この効果は、シロイヌナズナ属、アブラナ属(Brassica)(アブラナ(Brassica napus)、カラシナ(Brassica juncea)、およびハクサイ(Brassica rape))、ラッカセイ(peanut)、ニンジン、コムギ、トウヒ、アーモンド、およびラッカセイ(ground-nut)(Arachis hypogaea)を含めた他の多くの種からも観察されている。にもかかわらず、SnRKキナーゼが、種子油合成に対するABAによる制御を媒介するかどうかは、今なお知られていない。
【0031】
種子油の生成に関与するこれらの重要なキナーゼを同定しようと試みる中で、逆遺伝学的手法が用いられた。これは、遺伝子内へのSALK T−DNA挿入についてスクリーニングした後で、種子油含量および種子収量に対する遺伝子ノックアウトの影響を判定することに基づく。大規模なスクリーニングの後、種子油生成におけるSnRK2−6遺伝子(At4g33950)の役割が明らかとなった。OST1(OPEN STOMATA 1)遺伝子とも称するこの遺伝子は、かつて、カルシウム依存性タンパク質セリン/トレオニンキナーゼ活性を保有するタンパク質をコードし、ABA媒介性気孔開度を制御することが示された(Mustilliら、2002)。T−DNA挿入によりこの遺伝子を不活化したところ、脱水条件下において、種子収量が24%〜50%結果として減少した。加えて、ノックアウト株であるSALK_008068株では、種子油含量の7%〜25%の減少が検出された。しかし、この挿入についてホモ接合である植物体におけるタンパク質含量(21.3%)と、ヌル分離個体におけるタンパク質含量(20.9%)とでほとんど変化が示されなかったことから、SnRK2a亜群のメンバーであるSnRK2−6が、種子油生成に対して正の制御物質として作用することが示唆される。
【0032】
SnRK2−6は、かつて、シロイヌナズナ属における気孔組織および脈管組織において優先的に発現する、ABA媒介性気孔伝導度の制御物質として同定された(Mustilliら、2002;Fujiiら、Plant Cell、2007、19:485〜494)。本発明における逆遺伝学的研究は、種子油生成におけるその役割を明らかにした。
【0033】
SnRK2−6は、シロイヌナズナ属において、構成的プロモーターであるCsVMV下で異所性発現させた。SnRK2−6を、CsVMVにより強制的に異所性発現させると、天然プロモーターにより駆動されるSnRK2−6発現の、空間的に高度に局在化されたパターンを破壊することから、正常なパターンとは異なるパターンがもたらされる可能性がある。このような撹乱は、植物体の生育および代謝に影響を及ぼしうる。
【0034】
図1を参照すると、シロイヌナズナ属においてSnRK2−6を過剰発現させたところ、葉の成長が促進され、側枝数がさらに増大することが示された。加えて、切り取ったトランスジェニック植物体では、野生型植物体と比較して、水分喪失量が実質的に減少することが示されたことから、SnRK2−6の過剰発現が、植物体地上部の蒸散率を低下させうることが裏付けられた。これに対し、図3に示す通り、この遺伝子をノックアウトしたところ、水分喪失が加速化された。
【0035】
図4に示す通り、トランスジェニックのシロイヌナズナ属植物体において炭素同化量が増大したことは、SnRK2−6の過剰発現が、植物体の生育を促進しうることを裏付けうる。より具体的に述べると、SnRK2−6を過剰発現するトランスジェニックのシロイヌナズナ属植物体は、通常の温室条件下にあるトランスジェニックの葉内の、フルクトース、グルコース、およびスクロースの含量を劇的に増大させた。トランスジェニックの葉内の全糖含量は、野生型の葉内の全糖含量の2倍であった。トランスジェニック植物体のデンプン含量は、野生型レベルの実に156%であった。図4および5を参照すると、SnRK2−6をノックアウトしても、可溶性糖含量または可溶性デンプン含量には大きな影響が及ばなかった。まとめると、これらの結果は、SnRK2−6導入遺伝子(transgene)を構成的に発現させると、葉の光合成活性が上昇することから、炭素同化量が増大しうることを示唆する。
【0036】
図6は、トランスジェニック葉において、脂肪酸組成が劇的に変化することを示す。トランスジェニック植物体の葉の2つのトリエン脂肪酸である16:3および18:3が、野生型と比べて、それぞれ、81%および26%増大したことから、導入遺伝子により、不飽和プロセスが強化されることが示唆される。
【0037】
葉の光合成活性の増大と一致して、トランスジェニック植物体において種子収量の大幅な増大が検出された。野生型の植物体と比較したところ、トランスジェニック植物体は、通常条件下、穏やかな乾燥条件下、ならびに厳しい乾燥条件下において、種子収量がそれぞれ、24%、16%、および35%増大した(図7)。結果は、導入遺伝子が、植物体の乾燥耐性を増強するだけでなく、他の生理学的プロセスも改変することから、通常の生育条件下における種子生成も増大させることを示唆する。
【0038】
種子油についての解析は、CsVMVにより促進されるSnRK2−6の発現が、種子油含量の大幅な変化を結果としてもたらさないことを示した。しかし、導入遺伝子によって種子収量が増大したために、全種子油生成量も増大した。
【0039】
まとめると、シロイヌナズナ属の葉内において、SnRK2−6を構成的に過剰発現させたところ、可溶性の糖およびデンプンの含量が大幅に増大し、脂質の生合成が改変された。この結果さらに、通常条件下および乾燥条件下の両方において、種子収量が大幅に増大した。
【0040】
図10に示す通り、トランスジェニックのトウモロコシ植物体において根のバイオマスが増大したことは、SnRK2−6の過剰発現が根の成長を促進しうることを裏付けうる。SnRK2−6を過剰発現するトランスジェニックのトウモロコシ植物体は、ヌル植物体と比較して、根のバイオマスを劇的に増大させた(すなわち、11%、25%、92%、および15%)。これらの結果は、SnRK2−6キナーゼが根の成長を促進しうることを示唆する。このような機構は、トウモロコシの乾燥耐性の増大と関連しうる。
【0041】
本発明による改変に特に好ましい植物には、シロイヌナズナ、ルリジサ(Borago属種)、キャノーラ、トウゴマ(Ricinus communis)、カカオ豆(Theobroma cacao)、トウモロコシ(Zea mays)、ワタ(Gossypium属種)、ハマナ属種(Crambe)、タバコソウ属種(Cuphea)、アマ(Linum属種)、レスケレーラ属種(Lesquerella)およびリムナンテス属種(Limnanthes)、リノーラ、ノウゼンハレン(Tropaeolum属種)、マツヨイグサ(Oenothera属種)、オリーブ(Olea属種)、アブラヤシ(Elaeis属種)、ラッカセイ(Arachis属種)、ナタネ、ベニバナ(Carthamus属種)、ダイズ(Glycine属種およびSoja亜属種)、ヒマワリ(Helianthus属種)、タバコ(Nicotiana属種)、ショウジョウハグマ(Vernonia属種)、コムギ(Triticum属種)、オオムギ(Hordeum属種)、イネ(Oryza属種)、カラスムギ(Avena属種)、モロコシ(Sorghum属種)、ライムギ(Secale属種)、ならびにイネ(Gramineae)科の他のメンバーが含まれる。
【0042】
本発明は、油糧種子作物から生成される油糧種子の収量または組成を改変するのに用いられる場合に、特に有用である。油糧種子作物とは、食用油または産業において有用な油を商業的に有意な収量で生成することが可能な植物種であり、上記で列挙した植物種の多くを包含する。このような油糧種子作物は、当業者によく知られている。
【0043】
SnRK2−6遺伝子は、植物体に所望の形質を付与する1または複数の他の遺伝子と共に導入することができる。例えば、場合によって、ストレス耐性遺伝子または乾燥耐性遺伝子を、SnRK2−6遺伝子と組み合わせて導入することができる。
【0044】
以下の例示的な実施例を用いて、本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0045】
[実施例1]
PCRによる、シロイヌナズナ属SnRK遺伝子内へのT−DNA挿入の同定
配列の類似性により、シロイヌナズナ属のSnRKキナーゼを、3つの亜群であるSnRK1、SnRK2、およびSnRK3へと類別することができる。SnRK1亜群は、それぞれ、At3g01090、At3g29160、およびAt5g39440によりコードされる3つのキナーゼを包含する。SnRK2亜群は、それぞれ、遺伝子At4g40010、At2g23030、At1g60940、At1g10940、At5g63650、At5g08590、At1g78290、At3g50500、At5g66880、およびAt4g33950に対応する10のメンバーからなる。SnRK3は、遺伝子、すなわち、At5g57630、At3g17510、At1g48260、At4g24400、At5g35410、At2g26980、At1g30270、At1g01140、At4g14580、At3g23000、At2g38490、At5g01820、At2g30360、At2g34180、At1g29230、At5g45810、At4g18700、At4g30960、At5g45820、At5g58380、At5g07070、At5g01810、At2g25090、At5g25110、およびAt5g10930によりコードされる25のメンバーを伴う最大の亜群である。
【0046】
表1および2に示す通り、SnRK遺伝子中にT−DNAを挿入したSALK株において、PCRにより、この挿入についてホモ接合、ヘテロ接合、およびヌルの植物体をスクリーニングした。PCR反応で用いたゲノムDNAは、シロイヌナズナ属の葉から単離した。例として述べると、GSP108プライマーおよびLBa1プライマーを用いて、SALK_008068株のSnRK2−6(At4g33950)遺伝子へのT−DNA挿入を保有する植物体についてスクリーニングした。他方、At4g33950遺伝子の2つの遺伝子特異的プライマーである、GSP108およびGSP124を用いて、該遺伝子の野生型コピーが、SALK_008068株の分離個体内に存在するかどうかを判定した。
【0047】
【表1−1】
【表1−2】
【0048】
【表2】
【0049】
種子油生成における各キナーゼの機能を確定するため、ガスクロマトグラフィーにより、該キナーゼ遺伝子への該挿入を保有するSALK株の種子における油プロファイルを決定した。該キナーゼ遺伝子の破壊により引き起こされる影響をよりよく評価するため、同じ株に由来するヌルの同胞種を対照として用いた。理論的に述べると、ヌルの同胞種は、該挿入についてホモ接合およびヘテロ接合である他の分離個体との遺伝子バックグラウンドの類似性が、野生型の場合と比較して高度である。
[実施例2]
【0050】
シロイヌナズナ属種子の脂肪酸メチルエステルの解析
シロイヌナズナ属種子の抽出および誘導
成熟シロイヌナズナ属種子を採取し、種子以外のすべての植物材料を除去した。採取した全種子から、約10mgずつのアリコートを採取し、1ml容量の96ウェルプレートへと分注した。精度が±2μgである分析用秤を用いることにより、正確な重量測定値を得、これらを記録した。使用前に、ウェルプレートをヘキサンですすぎ、直径4mmのステンレス鋼製ホモジナイズ用ビーズ2個を各ウェル内に入れた。試料を分注した後で、75ppmのヘプタデカン酸メチルおよび0.5Mナトリウムメトキシド0.2mlを含有する0.4mlヘキサンを、各ウェルへと分注した。次いで、各ウェルにキャップをはめ、バーティカルシェーカーに入れて1分間当たり500ストロークで2分間にわたり振とうし、次いで、1分間当たり250ストロークで58分間に変更した。次いで、振とうが完了したら、5600rcfで5分間にわたり、ウェルプレートを遠心分離にかけた。遠心分離後、上部のヘキサン抽出物層を採取し、別の96ウェルプレートに入れた。0.4mlヘキサンによりさらに2回にわたり抽出を実施し、後続の各抽出物を、第1の抽出物と混合した。第2および第3の抽出では、垂直振とう条件を、1回の抽出につき、1分間当たり250ストロークで30分間ずつに変更した。混合した1.2mlのヘキサン抽出物を10倍に希釈して、別の96ウェルプレートに入れ、GC−FIDにより解析した。
【0051】
脂肪酸メチルエステル(FAME)の解析
結果として得られる脂肪酸メチルエステルである、シロイヌナズナ属種子脂質を、1ml/分の水素をキャリアガスとして、3種類の傾きによる温度勾配を用いる(1.34分間にわたり60℃を維持し、41.3℃/分で150℃とし、9.1℃/分で180℃とし、41.3℃/分で220℃として、1.86分間にわたり維持する)SGE製BPX70型キャピラリーカラム(15m、内径0.22、膜厚0.25)において分解した。投入温度は230℃であり、水素炎イオン化検出器の温度は240℃であった。貯留時間によるFAME解析の同定および定量化は、75ppmのヘプタデカン酸メチルを伴うナタネ油基準物質(Matreya製)により達成した。
[実施例3]
【0052】
シロイヌナズナ属葉の脂肪酸メチルエステルの解析
シロイヌナズナ属葉脂質の抽出および誘導
凍結させたシロイヌナズナ属葉を、液体窒素下で、乳鉢および乳棒により微粉へとすりつぶした。この粉末から、約50mgずつのアリコートを採取し、1ml容量の96ウェルプレートへと分注した。使用前に、ウェルプレートをヘキサンですすぎ、直径4mmのステンレス鋼製ホモジナイズ用ビーズを各ウェル内に入れた。試料を分注した後で、0.5mlヘキサンおよび0.5Mナトリウムメトキシド0.25mlを、各ウェルへと分注した。次いで、各ウェルにキャップをはめ、バーティカルシェーカーに入れて1分間当たり250ストロークで30分間にわたり振とうした。次いで、5600rcfで5分間にわたり、ウェルプレートを遠心分離にかけた。遠心分離後、上部のヘキサン抽出物層を採取し、別の96ウェルプレートに入れ、ガスクロマトグラフ水素炎イオン化により解析した。
【0053】
FAMEの解析
結果として得られる脂肪酸メチルエステルである、シロイヌナズナ属葉脂質を、1ml/分の水素をキャリアガスとして、3種類の傾きによる温度勾配を用いる(1.34分間にわたり60℃を維持し、41.3℃/分で150℃とし、9.1℃/分で180℃とし、41.3℃/分で220℃として、1.86分間にわたり維持する)SGE製BPX70型キャピラリーカラム(15m、内径0.22、膜厚0.25)において分解した。投入温度は230℃であり、水素炎イオン化検出器の温度は240℃であった。FAME解析の、貯留時間によるFAMEの同定は、ナタネ油基準物質(Matreya製)により達成した。
[実施例4]
【0054】
シロイヌナズナ属種子の全タンパク質の解析
シロイヌナズナ属種子の酸による消化(タンパク質の加水分解)
成熟シロイヌナズナ属種子を採取し、種子以外のすべての植物材料を除去した。採取した全種子から、約20mgずつのアリコートを採取し、ゴム製のO字型環状ネジ式キャップを伴う、オートクレーブ処理可能な2mlの遠心管へと分注した。精度が±2μgである分析用秤を用いることにより、正確な重量測定値を得、これらを記録した。使用前に、酸で洗浄した4mmのガラス製ビーズ10個ずつを、各遠心管へと添加した。試料を分注した後で、遠心管をバーティカルシェーカーに取り付け、1分間当たり500ストロークで5分間にわたり振とうした。次いで、0.1%フェノールおよび1%2−メルカプトエタノールを伴う6Nの塩酸1.4mlを、各試料に添加した。次いで、遠心管を、再度バーティカルシェーカーに取り付け、1分間当たり500ストロークで15分間にわたり垂直振とうした。垂直振とうが完了したら、遠心管を加熱ブロックへと取り付け、100℃で24時間にわたり加熱して消化を完了させた。消化プロセスが終了したら、遠心管を室温まで冷却し、0.4μmのガラス製フィルターにより、消化物を濾過した。濾過された消化物のうちの0.1mlを、0.3mlの2N水酸化ナトリウム、0.6mlの水、および高速液体クロマトグラフィー蛍光検出による解析のための内部基準物質として1000ピコモル/μlのノルバリンを含む0.1mlの水を含む1.5mlのガラス製注入用バイアル内で希釈した。
【0055】
アミノ酸残基の誘導
一級アミノ酸は、o−フタルアルデヒド(OPA)により誘導した。二級アミノ酸は、9−フルオレニルメチルクロロホルメート(FMOC)により誘導した。いずれの誘導反応も、カラム処理前に、HPLC注入用ループを用いて達成した。試料はまず、10.2pHの0.4Nホウ酸緩衝液により緩衝処理し(1μlの試料に対して4μlの緩衝液)、次いで、OPAおよびFMOC(1μlのOPAおよび1μlのFMOCの順序で)と混合した。次いで、試料を注入し、解析した。
【0056】
HPLC−FLDによるアミノ酸残基の解析
誘導したアミノ酸残基は、40℃で2種類の溶出勾配を用いる、150×3.0mmの5μmC18(2)逆相カラム上で分解した。水相(溶出物A)は、7.8pHの40mMリン酸ナトリウム緩衝液からなり、有機相(溶出物B)は、アセトニトリル:メタノール:水(45:45:10のv/v/v)からなった。溶媒の勾配系は、0〜1.9分A/B(%)=100:0;1.9〜18.1分A/B(%)=43:57;18.1〜18.6分A/B(%)=0:100;18.6〜22.3分A/B(%)=0:100;22.3〜23.2分A/B(%)=100:0;23.2〜26A/B(%)=100:0であった。流速は、2ml/分で一定であった。
【0057】
蛍光検出器のパラメータは、解析の最初の15分間にわたり、340nmの励起波長、および450nmの発光波長に設定した。次いで、残りの解析時間にわたり、検出器を、266nmの励起波長、ならびに305nmの発光波長へと切り替えた。解析の最初の15分間は、OPAによる誘導残基を検出するのに最適化させ、残り時間は、FMOCによる誘導残基を検出するために最適化させた。
【0058】
アミノ酸残基の同定および定量化は、90.9ピコモル/μlのノルバリン内部基準物質を含有するアミノ酸基準混合物(Agilent Technologiesから購入)により較正した。定量化された残基は、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、ヒスチジン、グリシン、トレオニン、アルギニン、アラニン、チロシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、リシン、およびプロリンであった。各残基の回収質量を計算し、合計して、おおおその全タンパク質質量を求め、次いで、各シロイヌナズナ属種子試料について、タンパク質の比率を計算した。
[実施例5]
【0059】
新鮮なシロイヌナズナ属の全デンプンの解析
新鮮なシロイヌナズナ属葉を、液体窒素下で、乳鉢および乳棒で組織を砕くことにより微粉へとすりつぶした。デンプンについての解析を行う前に、80%エタノールにより、試料を脱糖化した。デンプンの消化は、それぞれ、α−アミラーゼおよびアミログルコシダーゼにより実施した。放出されたグルコースは、グルコースオキシダーゼベースの酵素アッセイおよびペルオキシダーゼベースの酵素アッセイにより検出した。デンプン含量は、遊離グルコースをデンプンへと補正した、放出グルコースに基づいて計算した。
[実施例6]
【0060】
LC/MSMSによる代謝物の解析
液体窒素ならびに乳鉢および乳棒を伴う手作業により、シロイヌナズナ属葉組織をすりつぶし、極微粉試料を得た。細かくすりつぶした葉組織約100mgを、80:20のメタノール;0.1N HCl溶液により抽出し、十分に混合し、350mg/mLの抽出物を結果として得た。試料をペレット状の微粒子へと遠心分離し、抽出された代謝物を含有する上清アリコートを除去し、内部基準物質としての、グルコースの安定的同位体を含有する80:20のアセトニトリル:水により1:10に希釈し、タンデム質量分析による検出を伴う液体クロマトグラフィー(LC−MS/MS)により解析した。
【0061】
LC−MS/MSは、種子組織抽出物などの複雑な生物学的マトリックス中の一次代謝物および二次代謝物の定量的な解析に適する選択性および感度をもたらす。MS/MSによる定量化を行う前に、液体クロマトグラフィーにより分離することは、対象の化合物のイオン化/応答を阻害しうるマトリックス成分から、対象の化合物を分離するのに望ましい。分析物をイオン化するには、陽(+)イオンまたは陰(−)イオンによるエレクトロスプレーイオン化(ESI)、ならびに陽イオン/陰イオンによる大気化学イオン化(APCI)を含めた、複数の技法が利用可能である。MS/MSによる化合物の解析は、本質的に4ステップ、すなわち、1)対象の化合物に特異的な分子イオンの形成、2)分子イオンの選択、3)化合物特異的なフラグメントイオンの形成、4)化合物特異的なフラグメントイオンの検出によるプロセスである。LCカラムからの溶出物をMSへと導入すると、MSにより、この4ステップによるプロセスがミリ秒の時間枠で連続的に実行される。
【0062】
本研究におけるLC−MSMS解析は、TurboIon(商標)Sprayによる注入部を装備する、Applied Biosystems製Sciex(商標)3000型三連式四重極タンデム質量分析器とインターフェース接続した、Agilent製1100型液体クロマトグラフ上で実施した。種子組織抽出物についてLC−MS/MS解析を行う前に、以下のパラメータ、すなわち、
Q1:+/−の分子イオンのm/z
DP:最大の分子イオン形成についてのデクラスタリングポテンシャル
Q3:分子イオンから生成される生成物イオンのm/z
CE:最大の生成物イオン形成についての衝突エネルギー
CXP:細胞脱出ポテンシャル
を確定する目的で、個々の二次代謝物の基準物質(約10μg/mL)を、質量分析器中に注入した。
【0063】
以下の表3のQ1欄に示す通り、本研究においてモニタリングされたシロイヌナズナ属代謝物は、陰イオンモードのESIを用いて予測される[M−H]−分子イオンを形成することが判明した。代謝物の各々を定量化するのに用いたフラグメントイオンを、以下の表のQ3欄に列挙する。以下の表は、代謝物の各々を定量化するのに用いたMSMSパラメータを列挙する(G1P=グルコース−1−ホスフェート、G6P=グルコース−6−ホスフェート、ADP−g=アデノシンジホスフェート−グルコース、GDP−g=グアノシン5’−ジホスフェート−グルコース、UDP−g=ウリジン5’−ジホスフェート−グルコース)。
【0064】
【表3】
【0065】
対象のシロイヌナズナ属代謝物は極性が強いため、HILIC相用液体クロマトグラフィーカラム(TOSOH Biosciences LLC製;TSKゲルアミド80;100×2mm、5μM)を用いて分離した。流速500μL/分で4分間にわたり、0:100のHPLC水:アセトニトリルに始まり、100:0の水:アセトニトリルへと至る直線勾配を用いた。化合物のイオン化を増強するため、HPLC水を、10mMの酢酸アンモニウムで緩衝した。
【0066】
標的代謝物ごとに較正曲線を作製し、各抽出物に対して線形回帰分析を用いることにより、定量化を達成した。抽出物中で見出される濃度に希釈係数(10倍)を乗じることにより、試料中の全濃度をナノモルg−1単位で得た。提示されるすべてのデータは、6連の平均であり、このうち3連は解析のための多連であり、2連は温室内での多連である。
[実施例7]
【0067】
シロイヌナズナ属を形質転換するための、SnRK2−6発現ベクターの構築
シロイヌナズナ属SnRK2−6遺伝子を増幅するため、Oligo dT20をプライマー(Invitrogen製SuperScriptIII RTキット)として用いて一本鎖cDNAを合成するのに、シロイヌナズナ属葉から単離した全RNA(900ng)を用いた。それらのいずれもがNco I部位(下線を付した)を包含するプライマー対である5’−TAA TTT CCA TGG ATC GAC CAG CAG TGA GT−3’および5’−TTT TTT CCA TGG ATC ACA TTG CGT ACA CAA TCT CT−3’を用いて、このsscDNAをさらに増幅した。次いで、増幅されたSnRK2−6遺伝子を、NcoIにより消化し、ゲートウェイエントリーベクターであるpDAB3731中に挿入した。挿入の方向は、シーケンシングすることにより決定した。結果として得られる、CsVMV、SnRK2−6、およびAtuORF24 3’−UTRを含む植物転写単位(PTU)を、ゲートウェイLR反応を用いて、バイナリーゲートウェイデスティネーションベクターであるpDAB3725中にクローニングした。結果として得られる、pDAB4504と称するプラスミド(図11)を用いて、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)を形質転換した。
[実施例8]
【0068】
合成による、SnRK2−6の植物最適化コード領域
トランスジェニックの双子葉植物および単子葉植物(例えば、トウモロコシ)において、SnRK2−6タンパク質を生成することが可能となるように、シロイヌナズナSnRK2−6遺伝子のコード配列合成形をデザインした。出発塩基配列は、配列番号1に開示されるタンパク質コード領域を含み、配列番号2に開示されるタンパク質配列をコードする、Genbank受託番号At4g33950であった。
【0069】
SnRK2−6タンパク質をコードする植物最適化DNA配列をもたらすため、特定の宿主植物(トウモロコシおよび双子葉植物)において見出される遺伝子のタンパク質コード配列からまとめたコドンバイアス表から確定される冗長遺伝子コードを用いてタンパク質のアミノ酸配列をコードするように、DNA配列をデザインした。706のトウモロコシ遺伝子のタンパク質コード領域は、米国国立医学図書館、国立バイオテクノロジー情報センター(メリーランド州、ベセスダ)から入手可能なGenbank配列から抽出し、コドン組成は、ウィスコンシン大学、Genetics Computer Group(ウィスコンシン州、マジソン)から入手可能なWisconsin Sequence Analysis PackageのCodonFrequency関数を用いて計算した。タバコ(Nicotiana tabacum;453,797コドン)、ワタ(Gossypium hirsutum;62,111コドン)、ダイズ(Glycine max;362,096コドン)、およびキャノーラ(Brassica napus;195,005コドン)についてのコドン使用表は、かずさDNA研究所(日本)から入所可能である。
【0070】
【表4A】
【0071】
【表4B】
【0072】
トウモロコシ遺伝子の天然遺伝子コドン使用を、表4Aおよび4BのE欄に示し、双子葉植物遺伝子の天然遺伝子コドン使用を、表4Aおよび4BのG〜J欄に示す。E欄およびG〜J欄の値は、各アミノ酸の同義コドンの分布(%による、そのアミノ酸に対するすべてのコドンの使用の分布)を示す。各植物種類に最も好ましいコドンを太字で示し、複数の選択が存在する場合は、第2選択、第3選択、または第4選択などのコドンを同定することができる。双子葉植物遺伝子において、一部のアミノ酸に対する一部の同義コドン(例えば、CGGおよびTCG)がごくまれにしか見出されないことは、明らかである。また、一部の双子葉植物は、特定のアミノ酸に対するコドンの選択性(例えば、アスパラギンコドンおよびフェニルアラニンコドン)においても幾分か異なる。また、植物タンパク質コード領域では、一部のアミノ酸に対する一部の同義コドン(例えば、CGAおよびCTA)がごくまれにしか見出されないことも明らかである。さらに、トウモロコシと双子葉植物とは、コドンの使用が異なる(例えば、アラニンのコドンであるGCCが、双子葉植物遺伝子より、トウモロコシ遺伝子でより頻繁に生じるのに対し、アラニンのコドンであるGCTは、トウモロコシ遺伝子より双子葉植物遺伝子でより多く用いられる)。したがって、1つの植物群の遺伝子に最適なコドン組成を反映するようにデザインされたタンパク質コード領域が、別の植物群で発現するには準最適なコドン組成を有する可能性がある。トウモロコシおよび双子葉植物に共通して最もよく用いられるコドンを含む、バイアスをかけたコドンセットを導出するため、表4Aおよび4BのF欄に示す双子葉植物のデータセットについて、各コドンの平均を計算した。
【0073】
表4Aおよび4BのE欄およびF欄のデータから、トウモロコシ遺伝子および双子葉植物遺伝子における各コドンの%による平均分布値を計算したが、これを、表4Aおよび4BのD欄の「植物平均」として示す。通常、用いられるのがまれであると考えられる(すなわち、トウモロコシ植物体または双子葉植物体の遺伝子における関連アミノ酸をコードする回数の約10%以下で表わされる)コドンの%による使用値は、解析に含めなかった。表4Aおよび4BのD欄では、これらのコドン値を、DNU(使用なし(Do Not Use))により示す。これらの場合には、個々のアミノ酸の%による全コドン使用値が、表4Aおよび4BのD欄の合計で100%とならない。
【0074】
これらのアミノ酸の残りのコドン選択の分布を補正するため、式:
C1の加重平均%=1/(%C1+%C2+%C3+その他)×%C1×100
[式中、C1は、問題となるコドンであり、%C2、%C3、その他は、表4Aおよび4BのD欄で示す、残りの同義コドンに対する、%による植物平均を表わす]
を用いて、各コドンの加重平均についての%表示を計算した。
【0075】
トウモロコシ遺伝子および双子葉植物遺伝子について計算された%によるコドン分布の植物加重平均を、表4Aおよび4BのC欄に示す。したがって、C欄の%による分布値と共に考え合わせたB欄のコドン同一性は、トウモロコシ、ワタ、キャノーラ、タバコ、およびダイズの遺伝子から計算された植物最適化コドンバイアス表を含む。植物最適化遺伝子は、表4Aおよび4BのC欄のコドン分布と類似する全コドン分布を有するように決定される。
【0076】
SnRK2−6タンパク質をコードする植物最適化配列を操作するために、双子葉植物およびトウモロコシのタンパク質コード配列からまとめた冗長植物最適化コドンバイアス表を用いて、該タンパク質のアミノ酸配列をコードするように、DNA配列をデザインした。天然のSnRK2−6 DNA配列(配列番号1)を、SnRK2−6タンパク質の推定アミノ酸配列(配列番号2)に翻訳し、次いで、Ocimum Biosolutions(インディアナ州、インディアナポリス)から市販されている、OptGene(商標)プログラムを用いて、該タンパク質配列を、植物最適化DNA配列へと逆翻訳した。植物細胞における、望ましくない制限酵素認識部位、潜在的な植物イントロンスプライス部位、A/T残基またはC/G残基のロングラン、ならびにコード領域のRNAの安定性、転写、または翻訳に干渉しうる他のモチーフを除去するように、配列をさらに洗練させた。所望の制限酵素認識部位を導入し、内部の長いオープンリーディングフレーム(+1以外のフレーム)、ならびに安定的であることがまれなステムループ構造を除去するように、他の変化を作成した。これらの変化はすべて、上記で説明した、植物最適化バイアスをかけたコドン組成を保持する制限範囲内で作成した。SnRK2−6タンパク質をコードする植物最適化配列を、SnRK2−6hv5と称し、配列番号2をコードする該配列を、配列番号3として開示する。
【0077】
表5は、植物最適化SnRK2−6hv5コード領域のコドン組成を、植物最適化コドンバイアス表と比較し、これにより、最適化プロセスの結果を示すものである。
【0078】
【表5−1】
【表5−2】
【0079】
デザインを完結させるため、3つのトップ鎖のリーディングフレーム内のすべてに翻訳終止コドンを含有し、Bbs I制限酵素に対する認識配列で始まる5’側の非翻訳配列を、SnRK2−6hv5配列の5’端に付加した。加えて、6つのオープンリーディングフレーム内のすべてに翻訳終止コドンを含有し、SacI制限酵素に対する認識配列で終結する3’側の非翻訳配列を、SnRK2−6hv5配列の3’端に付加した。SnRK2−6hv6と称するこの配列を、配列番号4として開示する。デザインされたSnRK2−6hv6配列の合成は、テキサス州、ヒューストンのPicoScriptに依頼した。
[実施例9]
【0080】
トウモロコシを形質転換するためのSnRK2−6発現ベクターの構築
トウモロコシのSnRK2−6遺伝子を異種発現させるため、そのオープンリーディングフレーム配列を、ヘミコットにおけるコドン使用に従いコドン最適化し、これを、SnRK2−6hvと称した。加えて、「3つのフレーム終止コドン」および「トウモロコシのコンセンサス配列」に対応するヌクレオチド配列を、SnRK2−6hv遺伝子の5’末端に導入し、「6つのフレーム内の終止コドン」を、その3’末端へと導入した。後続のクローニングを容易にするため、2つの制限部位である、BbsIおよびSacIを、該配列の5’端および3’端へと付加した。次いで、全配列を合成したが、これを、以下でさらに詳細に説明する。
【0081】
BbsIおよびSacIで消化した上記の合成断片を、Acc65IおよびSacIで消化したpDAB4005へと挿入した。これにより、トウモロコシのUbi1プロモーター、SnRK2−6hv、およびZmPer5 3’UTRを含有する植物転写単位(PTU)を作製した。NotIで消化することにより、組換えpDAB4005からこのPTUを切り出し、デスティネーションベクターであるpDAB3878へと挿入した。pDAB7702と称し、図12に示す、結果として得られるプラスミドの配向性および完全性は、シーケンシングすることにより判定した。
[実施例10]
【0082】
アグロバクテリウム属およびシロイヌナズナ属の形質転換
形質転換は、WeigelおよびGlazebrook(2002)により説明されている通りに実施した。
【0083】
シロイヌナズナの生育条件
採取した新鮮な種子を、乾燥剤の存在下において、室温で7日間にわたり乾燥させた。種子を、Sigma Chemical Co.(ミズーリ州、セントルイス)から市販されている、0.1%アガロース溶液中に懸濁させた。懸濁させた種子を、4℃で2日間にわたり保管して休眠要件を満たし、種子の同調発芽(層別化)を確保した。
【0084】
Sun Gro Horticulture Inc.(ワシントン州、ベルビュー)から市販されているSunshine Mix LP5を、微粒のバーミキュライトにより覆い、湿潤するまで、ホーグランド液により地下灌漑した。該土壌混合物を、24時間にわたり排水した。層別化された種子を、バーミキュライト上へと播種し、5〜7日間にわたり、KORD Products(カナダ、オンタリオ州、ブラマリー)から市販されている保湿ドームなどの保湿ドームにより覆った。
【0085】
種子を発芽させ、Controlled Environments Limited(カナダ、マニトバ州、ウィニペッグ)から市販されているConviron(CMP4030型およびCMP3244型)内において、約22℃の一定温度下、ならびに約40%〜約50%の範囲内の湿度下で、光強度が約120マイクロモル/m2秒〜約150マイクロモル/m2秒の範囲にある長日条件(16時間の明期/8時間の暗期)下で、植物体を生育させた。まず、ホーグランド液により、その後、DI水により植物体に施水し、土壌を保湿はするが、湿潤はさせないようにする。
【0086】
アグロバクテリウム属の形質転換
WeigelおよびGlazebrook(2002)によるプロトコールを用いて、エレクトロコンピテントのアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)(Z797S株)細胞を調製した。WeigelおよびGlazebrook(2002)による電気穿孔法の変法を用いて、コンピテントのアグロバクテリウム属細胞を形質転換した。50μlのコンピテントアグロバクテリウム属細胞を氷上で解凍し、約10nm〜約25ngのプラスミドpDAB4504を細胞に添加した。DNAと細胞との混合物を、あらかじめ冷却した2mmの電気穿孔用キュベットに添加した。Eppendorf AG(ドイツ、ハンブルグ)から市販されているEppendorf Electoroporator2510を用いて、以下の条件:電圧:2.4kV、パルス長:5ミリ秒で形質転換した。電気穿孔後、1mLのYEP培養液をキュベットに添加し、細胞−YEP懸濁液を、15mlの培養試験管に移した。一定に振とうしている水浴中28℃で4時間にわたり、細胞をインキュベートした。インキュベーション後、Sigma Chemical Co.(ミズーリ州、セントルイス)から市販されている、スペクチノマイシン(100mg/L)およびストレプトマイシン(250mg/L)を含むYEP+寒天を含むプレートに培養物を播種した。28℃で2〜4日間にわたり、プレートをインキュベートした。スペクチノマイシン(100mg/L)およびストレプトマイシン(250mg/L)を含む新鮮なYEP+寒天プレート上においてコロニーを選択し、画線し、約28℃で1〜3日間にわたりインキュベートした。ベクター特異的な制限消化酵素を用いることにより制限消化解析を行い、遺伝子挿入の存在を検証する目的で、コロニーを選択した。製造元の指示書に従い実施される、Qiagen High Speed Maxi Prepsを用いて、選択されたアグロバクテリウム属コロニーから、プラスミドDNAを精製した。アグロバクテリウム属の形質転換で用いたバイナリーベクターに由来するプラスミドDNAを、対照として組み入れた。0.5〜1μgのDNAを用いて、4つの個別の消化反応を行った。約4時間〜約5時間にわたり反応を進め、0.65%アガロースゲル電気泳動によりこれを解析し、臭化エチジウム染色により可視化した。すべての酵素についてのその消化が、プラスミド対照と同一であるコロニーを選択した。
【0087】
シロイヌナズナ属の形質転換
フローラルディップ法を用いて、シロイヌナズナ属を形質転換した。選択されたコロニーを用いて、スペクチノマイシン(100mg/L)およびストレプトマイシン(250mg/L)を含有するYEP培養液による、15mLずつの1または複数の前培養物に接種した。220rpmで一定に振とうしながら、約28℃で一晩にわたり、培養物(複数可)をインキュベートした。各前培養物を用いて、スペクチノマイシン(100mg/L)およびストレプトマイシン(250mg/L)を含有するYEP培養液による500mlの培養物2つずつに接種し、該培養物を、一定に振とうしながら、約28℃で一晩にわたりインキュベートした。次いで、室温(すなわち、約24℃)、約8700×gで約10分間にわたって、細胞をペレット化させ、結果として得られる上清を廃棄した。この細胞ペレットを、1/2倍濃度のムラシゲおよびスクーグ塩ならびにガムボルグのB5ビタミン、10%(w/v)スクロース、0.044μMベンジルアミノプリン(DMSO中に1mg/mlの原液10μl/リットル)、ならびに、Helena Chemical Company(テネシー州、コリアービル)から市販されているSILWET L−77 300μl/リットルを含有する、500mLの浸潤用培地中に静かに再懸濁させた。約5週齢の植物体を、約15秒間にわたり培地内に浸漬し、最新の花序を浸漬したことを確認する。次いで、植物体を横向きに寝かせ、約24時間にわたり覆い(透明または不透明の覆いで)、次いで、水で洗浄し、直立させる。約22℃で16時間の明期/8時間の暗期により、植物体を生育させた。浸漬の約4週間後、種子を採取した。
【0088】
形質転換した植物体の選択
説明される通り、T.O.Plastics Inc.(ミネソタ州、クリアウォーター)から市販されている、10.5インチ×21インチの発芽用トレー上に、T1種子を播種し、概説される条件下でこれを生育させた。播種後5〜6日間にわたり、ドームを取り外した。播種の5日後において、ならびに、播種の10日後に再度、同胞体に、DeVilbiss(イリノイ州、グレンデールハイツ)製圧縮空気散布チップを用いて、トレー1枚当たり約10mlの散布容量(703L/ha)で、Bayer Cropscienceから市販されているグルホシネート除草剤の0.20%溶液(脱イオン化水中20μl/10mL)を散布して、1回の適用当たり280g/haの有効散布率でグルホシネートを送達した。リバティーの調製量は、以下の通りに計算した:(703L/haの散布量=280GPA)。(280gの有効成分/ha)×(1ha/703L)×(1L/グルホシネートの有効成分200g)=0.20%溶液(すなわち、20μl/10ml)。各トレーにつき10mLずつの溶液を、20mLのシンチレーションバイアル内にピペットで注入し、散布した。散布は、水平および垂直の適用パターンを用いて送達した。各散布の後、除草剤名、適用率、および適用日を記した散布ラベルを、各選択トレーに添付した。2回目の散布の4〜7日後に、除草剤抵抗性植物体を同定し、Sunshine mix LP5により調製したポット中に移植した。移植された植物体を、上述の生育条件でConviron内に入れた。
[実施例11]
【0089】
スーパーバイナリーベクター用のアグロバクテリウム属の形質転換
形質転換用に調製するため、2つの異なる大腸菌(E. coli)株(pSB11前駆体(この場合、pDAB7702またはpDAB3878)およびpRK2013を含有するDH5α)を、37℃で一晩にわたり増殖させた。DH5α菌株は、LB培地(500mlの脱イオン化水中に5gのBactoトリプトン、2.5gのBacto酵母抽出物、5gのNaCl、7.5gの寒天)+スペクチノマイシン(100μg/ml)を含有するペトリプレート上で増殖させ、pRK2013菌株は、LB+カナマイシン(50μg/ml)培地を含有するペトリプレート上で増殖させた。インキュベーション後、プレートを約4℃で静置し、アグロバクテリウム属が適用可能となるまで待機した。
【0090】
pSB1を含有するアグロバクテリウム属LBA4404株(日本たばこ産業株式会社製)を、ストレプトマイシン(250μg/ml)およびテトラサイクリン(10μg/ml)を含む、AB培地(900mlの脱イオン化水中に5gのグルコース、15gの寒天)を含有するペトリプレート上で、28℃で3日間にわたり増殖させた。アグロバクテリウム属が準備できた後、抗生剤を含まないLBプレート上において、各細菌につき1つずつの接種用ループ(pDAB7702またはpDAB3878、pRK2013、およびLBA4404+pSB1)を混合することにより、形質転換プレートを準備した。このプレートを、28℃で一晩にわたりインキュベートした。インキュベーション後、0.9%のNaCl(500mlの脱イオン化水中に4.5gのNaCl)溶液1mlを交配プレートに添加し、細胞を溶液中に混合した。次いで、混合物を、Becton Dickinson and Co.(ニュージャージー州、フランクリンレーク)から市販されているFalcon2059など、滅菌表示つき試験管中に移した。
【0091】
1mlの0.9%NaClをプレートに添加し、残りの細胞を溶液中に混合した。次いで、この混合物を、上記と同じ表示付き試験管へと移した。100μlの細菌「ストック」液を、表示つきFalcon2059試験管に入れ、次いで、900μlの0.9%NaClを添加することにより、101〜104個の範囲にある細菌細胞の希釈系列を作製した。次いで、選択を確認するため、100μlの希釈液を、別個のAB+スペクチノマイシン(100μg/ml)/ストレプトマイシン(250μg/ml)/テトラサイクリン(10μg/ml)培地プレートに入れ、28℃で4日間にわたりインキュベートした。次いで、コロニーを、AB+スペクチノマイシン/ストレプトマイシン/テトラサイクリンプレート、およびラクトース培地(500mlのDI H2O中に0.5gの酵母抽出物、5gのD−ラクトース一水和物、7.5gの寒天)プレート上に「パッチ」で植え、インキュベーター内に入れて28℃で2日間にわたり静置した。ベネディクト液(500mlの脱イオン化水中に、86.5gの一塩基性クエン酸ナトリウム、50gのNa2CO3、9gのCuSO45水和物)でプレートを満たし、アグロバクテリウム属コロニーを黄色に変色させることにより、ラクトース培地上におけるコロニーに対するケト−ラクトース試験を実施した。次いで、黄色となった(アグロバクテリウム属について陽性の)すべてのコロニーをパッチプレートから採取し、28℃で2日間にわたり、AB+スペクチノマイシン/ストレプトマイシン/テトラサイクリン培地プレート上に画線して、単一コロニーを単離した。AB+スペクチノマイシン/ストレプトマイシン/テトラサイクリン培地上において第2ラウンドの単一コロニー単離を行うため、プレート1枚につき1つのコロニーを採取し、これを反復して全3ラウンドの単一コロニー単離を行った。単離後、プレート1枚につき1つずつのコロニーを採取し、これを用いて、スペクチノマイシン(100μg/ml)、ストレプトマイシン(250μg/ml)、およびテトラサイクリン(10μg/ml)を含有する、別個のYEP(500mlの脱イオン化水中に5gの酵母抽出物、5gのペプトン、2.5gのNaCl)液体培養物3mlに接種した。次いで、200rpmのドラム式インキュベーター内28℃で一晩にわたり、これらの液体培養物を増殖させた。
【0092】
次いで、2mlの接種培養物を、75mlのYEP+スペクチノマイシン/ストレプトマイシン/テトラサイクリン培養物を含有する、250mlのディスポーザブルフラスコへと移すことにより、検証培養物とした。次いで、これらを、200rpmで振とうしながら、28℃で一晩にわたり増殖させた。次いで、Qiagen(登録商標)プロトコールに従い、細菌培養物上において、Qiagen(カリフォルニア州、バレンシア)から市販されているHi−Speed maxi−prepsを実施し、プラスミドDNAを作製した。次いで、500μlの溶出DNAを、1.5mlの表示つきの清浄な試験管2本へと移し、Edge BioSystems(メリーランド州、ゲイサーズバーグ)から市販されているQuick−Precip Plus(登録商標)プロトコールを実施した。沈殿させた後、pH8.0の10mMトリスHClと1mMエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)との混合物を含めた、総容量100μlのTE中に、DNAを再懸濁させた。5μlのプラスミドDNAを、Invitrogen(カリフォルニア州、カールスバード)から市販されている化学的にコンピテントなDH5α大腸菌(E. coli)細胞50μlに添加し、これと共に静かに混合した。
【0093】
次いで、この混合物を、冷却した表示つきFalcon2059試験管へと移した。反応物を氷上において約30分間にわたりインキュベートし、次いで、約45秒間にわたり温度を約42℃まで上昇させることにより、「熱ショック」を与えた。反応物を氷中に戻して約2分間にわたり静置し、次いで、Invitrogen(カリフォルニア州、カールスバード)から市販されているSOC培地450μlを試験管に添加した。次いで、反応物を、200rpmで振とうしながら、37℃で1時間にわたりインキュベートした。次いで、細胞を、LB+スペクチノマイシン/ストレプトマイシン/テトラサイクリン(50μlおよび100μlずつ用いる)培地プレートに入れ、37℃で一晩にわたりインキュベートした。プレート1枚につき3つまたは4つのコロニーを採取し、これを用いて、スペクチノマイシン(100μg/ml)、ストレプトマイシン(250μg/ml)、およびテトラサイクリン(10μg/ml)を含有する、別個のLB(500mlのDI H2O中に5gのBactoトリプトン、2.5gのBacto酵母抽出物、5gのNaCl)液体培養物3mlに接種した。次いで、200rpmのドラム式インキュベーター内37℃で一晩にわたり、これらの液体培養物を増殖させた。次いで、Qiagen(登録商標)プロトコールに従い、細菌培養物上においてmini−preps(カリフォルニア州、バレンシア、Qiagen製)を実施し、プラスミドDNAを作製した。次いで、37℃で1時間にわたり、HindIII酵素およびSalI酵素(マサチューセッツ州、ビバリー、New England Biolabs製)を用いる個別の反応により、5μlのプラスミドDNAを消化した後、1%アガロースゲル(メイン州、ロックランド、Camrex Bio Science Rocland,Inc)上で泳動させた。次いで、適正なバンド形成パターンを示す培養物を用いて、500μlの培養物を、500μlの滅菌グリセロール(ミズーリ州、セントルイス、Sigma Chemical Co.)に添加し、反転させて混合することにより、グリセロール原液を作製した。次いで、混合物をドライアイス上で凍結させ、必要となるまで−80℃で保管した。
[実施例12]
【0094】
アグロバクテリウム属を介する、トウモロコシ植物材料の形質転換
95%Metro−Mix 360無土壌生育培地(ワシントン州、ベルビュー、Sun Gro Horticulture製)および5%粘土/ローム土壌による混合物を含有する、5ガロン(19リットル)のポット内に、High II F1交配(Armstrongら、1991)による種子を播いた。高圧ハロゲン化ナトリウムランプおよび高圧ハロゲン化金属ランプの組合せを用いて、16時間:8時間の明暗期を伴う温室内において植物体を生育させた。形質転換用の未成熟F2胚を得るため、調節同胞受粉を実施した。受粉の8〜10日後に未成熟胚を単離したが、このとき、胚のサイズは、約1.0〜2.0mmであった。
【0095】
感染および共培養
トウモロコシの穂を、液体石鹸で洗浄し、2分間にわたり70%エタノール中に浸漬し、次いで、30分間にわたり20%の市販漂白剤(0.1%次亜塩素酸ナトリウム)中に浸漬した後、滅菌水ですすぐことにより表面殺菌した。28℃で2〜3日間にわたり、100mg/Lのスペクチノマイシン、10mg/Lのテトラサイクリン、および250mg/Lのストレプトマイシンを含有するYEP培地(40g/Lのペプトン、40g/Lの酵母抽出物、20g/LのNaCl、15g/LのBacto寒天)上で増殖させた1〜2ループの細菌を、100μMのアセトシリンゴンを含有する5mLの液体感染培地(LS塩基性培地(LinsmaierおよびSkoog、1965)、N6ビタミン培地(Chuら、1965)、1.5mg/Lの2,4−D、68.5g/Lのスクロース、36.0g/Lのグルコース、6mMのL−プロリン、pH5.2)中へと移すことにより、アグロバクテリウム属懸濁液を調製した。均一な懸濁が達成されるまで、溶液をボルテックスし、紫色のフィルターを用いるクレット−サマーソンによる比色計を用いて、200クレット単位の最終密度へと濃度を調整した。2mLの感染培地を含有するマイクロ遠心管中に、未成熟胚を直接単離した。3〜5秒間にわたり遠心管をボルテックスにかけ、次いで、液体培地を除去し、新鮮な培地に置き換えて、再度ボルテックスにかけた。培地を三回除去し、密度が200クレット単位のアグロバクテリウム属液1mLで置き換えた。アグロバクテリウム属および胚による溶液を、最高速度で30秒間にわたりボルテックスにかけ、次いで、室温で5分間にわたりインキュベートした後、共培養培地(LS塩基性培地、N6ビタミン培地、1.5mg/Lの2,4−D、30.0g/Lのスクロース、6mMのL−プロリン、0.85mg/LのAgNO3、100μMのアセトシリンゴン、3.0g/Lのゲランガム培地、pH5.8)へと移し、25℃の暗所条件下で5日間にわたり静置した。
【0096】
共培養後、胚に2ステップの選択スキームを経過させ、その後、約8週間をかけて、形質転換された単離物を得た。選択では、LSベースの培地(LS塩基性培地、N6ビタミン培地、1.5mg/Lの2,4−D、0.5g/LのMES、30.0g/Lのスクロース、6mMのL−プロリン、1.0mg/LのAgNO3、250mg/Lのセフォタキシム、2.5g/Lのゲランガム培地、pH5.7)を、複数の選択レベルのR−ハロキシホップ酸と共に用いた。胚を、100nMのR−ハロキシホップを含有する選択培地へと移して14日間にわたり静置し、次いで、胚形成性単離物が得られるまで、2週間間隔でさらに約3回にわたり、500nM R−ハロキシホップへと移した。2週間間隔で新鮮な選択培地へと移すことにより回収されたすべての単離物を一緒にして、再生およびさらなる解析に用いた。
【0097】
再生および種子の生成
再生のためには、培養物を、「28」誘導培地(MS塩培地およびビタミン培地、30g/Lのスクロース、5mg/Lのベンジルアミノプリン、0.25mg/Lの2,4−D、100nMのR−ハロキシホップ酸、250mg/Lのセフォタキシム、2.5g/Lのゲランガム培地、pH5.7)へと移し、低光度条件(14μEm−2秒−1)下で1週間にわたり静置し、次いで、高光度条件(約89μEm−2秒−1)下で1週間にわたり静置した。その後、組織を、「36」再生培地(植物生育制御物質を欠くことを除き、誘導培地と同じ)へと移した。小植物体を3〜5cmの長さまで生育させたら、これらを、SHGA培地(SchenkおよびHildebrandtの塩およびビタミン(1972))、1.0g/Lのミオイノシトール、10g/Lのスクロース、および2.0g/Lのゲランガム、pH5.8)を含有するガラス製培養試験管へと移し、芽および根をさらに生育および成長させた。植物体を、本明細書の前出で説明した混合物と同じ土壌混合物へと移植し、温室内で開花するまで生育させた。調節受粉を実施して、種子を生成させた。
[実施例13]
【0098】
SnRK2−6トランスジェニックシロイヌナズナ属の分子的特徴づけ
SnRK2−6の転写単位を保有するトランスジェニックシロイヌナズナ属植物体をスクリーニングするため、それぞれ、SnRK2−6のT−DNA左側境界近傍の配列、ならびにSnRK2−6の3’端配列によりデザインしたプライマー対である5’−TGA GGT CTA CAG GCC AAA TTC GCT CTT AGC−3’ および5’−ATC ACA TTG CGT ACA CAA TCT CT−3’により、PCRを実施した。T2トランスジェニック植物体の遺伝的分離は、PATインベーダーアッセイおよび除草剤散布を用いて決定した。3:1の分離に適合するトランスジェニック系統は、単一の挿入を保有する可能性が極めて高いので、これらの系統だけを、生化学的研究および生理学的研究のために選択した。
[実施例14]
【0099】
SnRK2−6hvトランスジェニックトウモロコシの分子的特徴づけ
SnRK2−6hvの転写単位を保有するトランスジェニックトウモロコシ植物体をスクリーニングするため、それぞれ、ZmUbi1プロモーターおよびZmPer5 3’UTRによりデザインしたプライマー対である5’−GTG ACC CGG TCG TGC CCC TCT CTA GA−3’および5’−CCG TGG ATA TAT GCC GTG AAC AAT TG−3’により、PCRを実施した。
[実施例15]
【0100】
ウェスタンブロット解析
ポリクローナル抗体の調製
2つのポリペプチドである「CHRDLKLENTLLDGSPAPRLKICDFGYSKS」(30アミノ酸)および「MNDNTMTTQFDESDQPGQSIEE」(22アミノ酸)のそれぞれに対して、2つの異なる種類のポリクローナル抗体を調製した。第1のポリペプチドは、SnRK2−6タンパク質のキナーゼドメイン内の137〜166のアミノ酸位置にあり、第2のペプチドは、SnRK2−6タンパク質の制御ドメイン内の286〜307のアミノ酸位置にある。これらの2つのポリペプチドを合成し、キャリアタンパク質としてのスカシガイヘモシアニン(KLH)にコンジュゲートさせた。結果として得られる2つの異なるペプチド−KLHコンジュゲートを用いて、ウサギを免疫化し、2つの異なる種類のポリクローナル抗体を生成させた。これらの抗体を精製するため、ペプチドをウシ血清アルブミン(BSA)にコンジュゲートさせ、これらのコンジュゲートを用いて、アフィニティークロマトグラフィーを行った。
【0101】
試料の調製
SNF1キナーゼを形質転換した植物体および対照植物体に由来するトウモロコシの葉を、ドライアイスと共に試料採取し、液体窒素と共に、極微粉へとすりつぶした。抽出緩衝液(pH8.0の50mMトリス、50mM NaCl、5mM EDTA、5mM DTT、0.05% Triton X−100)1mL中に約200mgの葉粉末を添加することにより、SNF1キナーゼを含めたタンパク質を抽出した。Bio−Radタンパク質アッセイにより、抽出物のタンパク質濃度を測定したところ、3.2〜3.8mg/mLまで異なっていた。
【0102】
ウェスタンブロット
タンパク質は、MOPSランニングバッファーと共に、Invitrogen、型番NP0301Box(カリフォルニア州、カールスバード)から市販されているNupage 10%ビス−トリスゲルを用いるSDS−PAGEにより分離した。次いで、それらを、トリス/グリシン緩衝液と共に、ニトロセルロース膜上へと移し、100Vで1時間にわたり泳動させた。3%脱脂粉乳を含有するPBST緩衝液中において、室温(RT)で1時間にわたり膜をブロッキングした。ミルク溶液を捨て、ウサギ抗SnRK2−6ポリクローナル抗体を含有する新鮮な緩衝液を添加した。RTで1時間にわたり膜をインキュベートし、次いで、PBSTにより3回にわたり洗浄した。洗浄後、ヤギ抗ウサギIgG−西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートを含有する、新鮮なPBST/ミルク溶液を、膜へと添加した。既に説明した通り、RTで1時間にわたりインキュベートした後に、膜を洗浄した。現像するために、PBST液から膜を取り出し、調製したばかりのECL検出試薬(PIERCE製;検出試薬1:過酸化物溶液;型番1859701、ならびに検出試薬2:ルミノール増強剤溶液;型番1859698)中に浸漬した。化学発光フィルム(CL−Xposureフィルム;PIERCE製、型番31460)を、処理された膜に曝露し、Konica SR−Xフィルム現像剤により現像した。
[実施例16]
【0103】
SnRK2−6の異種発現は、トウモロコシの乾燥耐性を増大させる
SnRK2−6キナーゼが、異種染色体バックグラウンドにおける生物学的プロセスに影響を及ぼしうるかどうかを調べるため、本発明者らは、トウモロコシにおいてSnRK2−6遺伝子を発現させた。その機能を確定するため、ヘミコットにおけるコドン使用により、遺伝子配列のコドンを最適化し、次いで、トウモロコシUbi1プロモーターの制御下において、これをHi IIトウモロコシへと導入した。トウモロコシのトランスジェニック系統におけるSnRK2−6の発現は、SnRK2−6ペプチドに対するポリクローナル抗体に基づくウェスタンブロットを用いて決定した。発現したタンパク質は、予測されるサイズ(42kD)を有し、大半の系統において、ウェスタンブロットにより容易に検出可能なレベルを示した。対照としての、非形質転換体であるHi II植物体が、検出可能なレベルのタンパク質を42kDで示すことはなかった(データは示さない)。
【0104】
T0 Hi IIトランスジェニックのトウモロコシ植物体を、近親交配系統である5XH751と逆交配させて、T1種子を生成させた。結果として得られるT1分離集団をPCRによりスクリーニングして、ヌルの分離個体と、導入遺伝子を保有する植物体とを分離した。乾燥耐性について調べる目的でデザインした実験では、同じ集団から分離されたトランスジェニック植物体のゲノムバックグラウンドが、互いに極めて類似するため、ヌルの分離個体を、これらのトランスジェニック植物体の対照として用いた。
【0105】
ゲノムバックグラウンドの差違から生じる効果を取り除くため、8つの個別のトランスジェニック系統を用いて、トウモロコシの乾燥耐性における導入遺伝子の役割を評価した。転写速度との関連で、ヌルの分離個体およびSnRK2−6トランスジェニック植物体の切断葉における水分喪失量を、葉の切断時に測定した。図8および9に示す通り、トランスジェニック植物体は、ヌルの分離個体と比較して、水分喪失速度が低下した。
【0106】
目視観察によれば、トランスジェニックのトウモロコシ植物体は、乾燥ストレスに対する耐性が大きいと考えられた。30日齢のトウモロコシ植物体に、6日間にわたり灌漑を施さずにおいたところ、ヌルの分離個体は、トランスジェニックの植物体より深刻な立ち枯れを示した。加えて、トランスジェニックの植物体は、ヌルの分離個体よりはるかに迅速に水分を再吸収した。表6に示す通り、その前の9日間にわたり植物体に灌漑を施さずにおいた再施水の8日後において、64日齢のトランスジェニックトウモロコシ植物体上部のバイオマスが、ヌルの分離個体の112%〜150%であったことは、このことと符合する。表6では、トランスジェニック植物体のバイオマスを、100として定義するヌルの分離個体に対する百分率として表わす。
【0107】
【表6】
【0108】
テキサス州、ハーフウェイで実施された圃場試験では、登熟期における乾燥条件下、ならびに十分な施水条件下において、3つの個別のトランスジェニックトウモロコシイベントが、SnRK2−6導入遺伝子を有さない(ヌルの)それらの同胞体と比較して、穀粒収量を増大させた(表7)。
【0109】
【表7】
【0110】
まとめると、上記の結果は、SnRK2−6の構成的発現が、トウモロコシの乾燥耐性を増大させうることを裏付ける。SnRK2−6の構成的発現は、トウモロコシ植物体を乾燥に対して十分に保護することが可能であり、これにより、乾燥条件下における収量喪失を軽減しうる。
[実施例16]
【0111】
ストレス耐性遺伝子
植物体にストレス耐性を付与する1または複数の遺伝子と組み合わせて、SnRK2−6を植物体に導入することができる。適切なストレス耐性遺伝子の例を、表8に示す。
【0112】
【表8】
[実施例17]
【0113】
乾燥耐性遺伝子
植物体に乾燥耐性を付与する1または複数の遺伝子と組み合わせて、SnRK2−6を植物体に導入することができる。適切な乾燥耐性遺伝子の例を、表9に示す。
【0114】
【表9−1】
【表9−2】
【0115】
本発明を、特定の実施例の実施形態において説明してきたが、本発明は、本開示の精神および範囲内において、さらに改変することができる。したがって、本出願は、その一般原則を用いる、本発明の任意の変化形、使用、または適応を対象とすることを意図する。さらに、本出願は、本発明が関与し、付属の特許請求の範囲の限度内に収まる、当技術分野における既知または一般的な実践の範囲内に含められる、本開示からの逸脱を対象とすることを意図する。
【0116】
本明細書で引用され、論じられる刊行物、特許、および特許出願を含めたすべての参考文献は、それらが、本特許出願の出願日以前に開示されたことだけのために示される。本明細書におけるいずれの内容も、本発明者らが、先行発明のためにそのような開示に先行する権利を有さないことの承認としては解釈されないものとする。
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、「植物SNF1関連タンパク質キナーゼ遺伝子」について、2009年4月10日に出願された、米国特許仮出願第61/168,532号の出願日の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は一般に、植物の特徴を遺伝子操作するのに有用な植物の遺伝子に関する。より具体的には、本発明は、例えば、商用植物または作物植物における、植物体の水分喪失量および植物体の乾燥耐性、スクロース含量、デンプン含量、種子油含量、脂肪酸合成量、種子油のアシル組成、種子のサイズ/重量、生物ストレスに対する抵抗性/耐性、根のバイオマスの増大、ならびに/または他の種子成分への炭素フラックスを改変するために、有用なSnf1関連タンパク質キナーゼ(SnRK)遺伝子の同定、単離、および導入に関する。
【背景技術】
【0003】
Snf1関連タンパク質キナーゼが、酵母細胞および哺乳動物細胞における栄養ストレスおよび環境ストレスに応答して、基礎的な代謝経路を調節する重要な制御物質として機能することは、多くの証拠により裏付けられている(Hardie、2007;HardieおよびCarling、1997;HedbackerおよびCarlson、2008)。酵母である出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)において、スクロース非発酵キナーゼであるSnf1は、グルコース抑制遺伝子の転写を抑制解除させるのに必要とされる、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼである。Snf1はまた、糖新生、グリコーゲンの蓄積、ミトコンドリアおよびペルオキシソームの生合成、ならびに胞子形成にも関与する。哺乳動物における酵母Snf1のオーソログは、アデノシン一リン酸(AMP)活性化タンパク質キナーゼ(AMPK)である。
【0004】
細胞によりストレス応答がなされてATPが枯渇すると、AMPKが活性化し、これにより、コレステロールおよび脂肪酸の生合成に関与する酵素がリン酸化および阻害される。AMPKは、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリール−CoA(HMG−CoA)レダクターゼ(コレステロールならびに他のイソプレノイド化合物が合成される際に重要となる制御酵素)、アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)(マロニルCoAの合成における律速酵素)、およびホルモン感受性リパーゼも同様に不活化しうることが十分に立証されている。同時に、AMPKは、脂肪酸異化経路を誘発し、ATP生成も促進する。例えば、AMPKは、マロニルCoAの分解に関与する酵素である、マロニル−CoAデカルボキシラーゼ(MCD)をリン酸化および活性化する。より近年において、哺乳動物細胞では、グリセロール−3−リン酸アシルトランスフェラーゼを不活化する際のAMPKの役割もまた示唆されている。したがって、AMPKは、トリグリセリドおよびコレステリルエステルの合成および分解を制御する可能性を有する。
【0005】
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)ゲノムおよびイネゲノムの全配列についてのバイオインフォマティックス研究により、植物には、酵母に由来する古典的なSnf1型のキナーゼと関連する、大きな一群のキナーゼが存在することが明らかとなった。シロイヌナズナ属(Arabidopsis)では、Snf1関連キナーゼ(SnRK)は、5つの染色体すべてにおいて見られ、38のメンバーからなる。配列類似性により、これらのキナーゼを、3つの亜群:SnRK1(3のメンバー)、SnRK2(10のメンバー)、およびSnRK3(25のメンバー)に類別することができる(E.M.Hrabakら、Plant Physiol.2003、132、666〜680)。個々のキナーゼの構造は、キナーゼドメインおよび制御ドメインを含む。これらのキナーゼは、N末端のキナーゼ触媒ドメインにおいて比較的高度の類似性を示すが、C末端におけるそれらの制御ドメインは、高度に多様であり、これらは、タンパク質間相互作用において機能するか、またはキナーゼ活性を制御すると考えられている(E.M.Hrabakら、Plant Physiol.2003、132、666〜680)。このことは、各キナーゼの複雑な機能性を強調する。
【0006】
SnRK1キナーゼは、配列類似性に基づいて、酵母Snf1キナーゼおよび哺乳動物AMPKに最も近い相同体である。SnRK1キナーゼは、ライムギ、シロイヌナズナ属、タバコ、オオムギ、イネ、テンサイ、およびバレイショを含めた多様な種から単離されている。ライムギ遺伝子およびタバコ遺伝子が、酵母におけるSnf1の突然変異を相補しうるという知見により、Snf1に対する植物SnRK1遺伝子の機能的な類似性が予測される。したがって、糖代謝における植物SnRK1の役割が示唆されている。バレイショにおいてSnRK1のアンチセンスを発現させたところ、糖誘導性のスクロースシンターゼの発現が結果として失われた(Purcellら、Plant Journal 1998、14:195〜202)。これらのアンチセンス系統についてのさらなる研究により、デンプンの生合成において重要な制御ステップである、ADPグルコースピロホスホリラーゼの翻訳後修飾を調節することを介して炭素フローに影響を及ぼす、SnRK1キナーゼの潜在的な役割が示されている(Tiessenら、Plant Journal 2003、35:490〜500)。オオムギにおいてSnRK1のアンチセンスを発現させたところ、花粉粒内にほとんどまたはまったくデンプンが蓄積されず、雄の不妊が結果として引き起こされたという知見(Y.Zhengら、Plant Journal 2001、28:431〜441)から、さらに支持する証拠が得られた。
【0007】
SnRK1群と異なり、動物および真菌においてSnRK2群およびSnRK3群を代表するものは見出されておらず、植物におけるこれらの細胞応答の独特の制御が予測される。近年、CIPK(CBL相互作用型タンパク質キナーゼ)とも称する、SnRK3キナーゼが、カルシニューリンB様タンパク質(CBL)と称する植物カルシウムセンサーの新規のファミリーと相互作用しうることが示されている(Kudlaら、1999;Shiら、1999;Kimら、2000)。シロイヌナズナ属では、CBLファミリーに10のメンバーが存在し、各メンバーは、カルシウムに結合する3つのEFハンドを含有する(Kolukisaogluら、2004)。ストレス条件下では、カルシウムシグネチャーにより、異なるCBLメンバーとSnRK3(CIPK)メンバーとの特異的相互作用が変化し、これが解読され、下流における遺伝子の発現が変化し、その後、特異的な生理学的応答がもたらされる。例えば、CBL1が、CIPK7およびCIPK9と相互作用して、乾燥に対する応答を促進するのに対し、CBL9は、CIPK3を活性化して、寒冷に対する応答を増強する。CBL−SnRK3(CIPK)ネットワークは、ストレス応答におけるその中心的な役割のためにストレスホルモンと称される植物ホルモンである、アブシジン酸(ABA)と主として相互作用することが留意される。この機構を裏付ける証拠には、(i)ストレス条件下におけるのと同様に、ABAは、CBL1遺伝子およびCIPK3遺伝子の発現を誘導しうること、(ii)cbl9突然変異体およびcipk3突然変異体は、ABAに対して感受性過剰であること、ならびに(iii)シロイヌナズナ属において、SnRK3群のメンバー(PKS18と称し、注釈つきのAt5g45820に対応する)を過剰発現させたところ、種子発芽時においてABAに感受性過剰が付与される一方、該遺伝子をサイレンシングさせたところ、ABAの感受性喪失が結果としてもたらされたこと(D.Gongら、J.Biol.Chem.2003、277:42088〜42096)が含まれる。
【0008】
キナーゼC末端ドメインの配列類似性が低いため、SnRK2群は、2つの亜群、すなわち、SnRK2aおよびSnRK2bへとさらに類別することができる(M.Boudsocqら、J.Biol.Chem.2004、279:41758〜66;T.Umezawaら、PNAS 2004、101:17306〜17311)。SnRK2aは、SnRK2.2、SnRK2.3、SnRK2.6、SnRK2.7、およびSnRK2.8からなる。他の5つのメンバーであるSnRK2.1、SnRK2.4、SnRK2.5、SnRK2.9、およびSnRK2.10は、SnRK2b亜群に属する(Umezawaら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.2004、101:17306〜11)。複数の研究は、SnRK2亜群における個々のキナーゼが、生物学的プロセスにおいて異なる役割を有しうることを示している。例えば、SnRK2.2と、SnRK2.3とは、配列類似性に基づいて、SnRK2.6と最も密接に関連する2つのタンパク質キナーゼである(Hrabakら、2003)が、それらは、SnRK2.6と極めて異なる形で機能する。SnRK2.2およびSnRK2.3は、種子の発芽時および苗の成長時において、ABAシグナル伝達を媒介する重要なタンパク質キナーゼであることが示されている。しかし、ABAシグナル伝達の正の制御物質としてのSnRK2.6が、ABAを介する気孔開度の制御に関与する一方、シロイヌナズナ属のSnRK2.6突然変異体でも、種子の休眠および発芽が損なわれることはない(Mustilliら、2002;Yoshidaら、2006)。
【0009】
SnRK2亜群の各キナーゼに関する特別な機能性を強調する、少なくとも3つの因子が存在すると考えられている。第一に、個々のキナーゼは、時間的および空間的に異なる発現を示しうる。例えば、SnRK2−8の発現は、根では高度であるが、葉および長角果では低度であり(Umezawaら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.2004、101:17306〜11)、SnRK2−6は主に、シロイヌナズナ属の孔辺細胞および脈管組織において発現し(Mustilliら、2002)、SnRK2−2およびSnRK2−3はいずれも、各種の組織において広範な発現を示すが、SnRK2−3は、根の先端部において特に高度に発現する(Fujiiら、Plant Cell、2007、19:485〜494)。第二に、C末端における制御ドメインは、異なるSnRK2キナーゼ間で高度に多様であるが、キナーゼドメインはよく保存されている。例えば、SnRK2−4キナーゼと、SnRK2−6キナーゼとの全体的な配列類似性が70%であるのに対し、C末端ドメインで見られる同一性は、30%に過ぎない。これは、SnRK2−6による他のシグナル伝達構成要素との相互作用が、SnRK2−4による相互作用とは異なりうることを示唆し、これにより、これらの2つのキナーゼにより付与される機能は異なることが予測される。支持する証拠は、これらの2つのキナーゼが異なる環境要因に応答するという知見から得られた(M.Boudsocqら、J.Biol.Chem.2004、279:41758〜66)。加えて、該キナーゼの生理学的機能の制御におけるC末端ドメインの役割が、実験的に検証された(Belinら、2006;Yoshidaら、2006)。最後に、該キナーゼの構造がわずかに異なれば、異なる細胞内局在をもたらしうる。各キナーゼがどのように機能するかを理解するためには、それが生細胞内のどこに局在するかを理解することが必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態は、植物体、植物種子、またはその後代を作製するプロセスであって、Snf1関連タンパク質キナーゼタンパク質をコードする核酸配列により、植物細胞を形質転換するステップと、植物体が種子をつけるまで、前記植物細胞から植物体を生育させるステップと、前記植物体から種子を採取するステップとを含むプロセスを対象とする。本発明の別の実施形態は、前記植物体を作製するプロセスにより作製される植物体から採取される種子を包含する。また、そのゲノム中に組み込まれたSnf1関連タンパク質キナーゼタンパク質をコードする核酸配列を有する植物体、植物種子、またはその後代も包含される。
【0011】
本発明の別の態様は、植物体、植物体の貯蔵器官、または植物種子の油含量、糖含量、またはデンプン含量を変化させる方法を包含し、そのプロセスは、センスまたはアンチセンスの核酸構築物を植物体形質転換ベクター中に導入して、改変植物体形質転換ベクターを作製するステップであって、前記センスまたはアンチセンスの核酸構築物が、シロイヌナズナ属のSnf1関連タンパク質キナーゼ(SnRK)タンパク質をコードする単離核酸配列、精製核酸配列、または組換え核酸配列を含むステップを包含する。植物体、植物体の貯蔵器官、または植物種子のゲノムは、前記改変植物体形質転換ベクターにより形質転換される。この植物体、植物体の貯蔵器官、または植物種子を生育させ、次いで、油または生体高分子が抽出される。このベクターにより形質転換されているゲノムを有する、遺伝子形質転換植物体および植物種子もまた、本発明のさらなる態様として包含される。このような植物体および植物種子は、同じ遺伝子型の遺伝子改変されていない植物体と比較して、呼吸速度の変化、種子油含量の変化、脂肪酸組成の変化、バイオマスの増大、生体高分子を蓄積する能力の増強、根の成長の増大を示すものとして特徴づけることができる。
【0012】
特定の実施形態では、植物体におけるSnf1関連タンパク質キナーゼタンパク質レベルを調節する方法が、プロモーターに作動可能に連結された、植物体のSnf1関連タンパク質キナーゼポリヌクレオチドにより、植物細胞を安定に形質転換するステップであって、前記ポリヌクレオチドが、センス配向またはアンチセンス配向であるステップと、前記植物細胞を、植物生育条件下において生育させて、植物体におけるSnf1関連タンパク質キナーゼタンパク質を調節するのに十分な時間にわたり前記ポリヌクレオチドを発現することが可能な再生植物体をもたらすステップとを包含する。
【0013】
別の実施形態は、トランスジェニック種子から油を抽出するプロセスであって、Snf1関連タンパク質キナーゼタンパク質をコードする手段により、植物細胞を形質転換するステップと、植物体が種子をつけるまで、前記植物細胞から植物体を生育させるステップと、前記植物体から種子を採取するステップと、採取された種子から油を抽出するステップとを含むプロセスを対象とする。このプロセスのプロセスにより生成される油もまた、包含される。
【0014】
さらに別の実施形態は、植物細胞を形質転換するためのベクターであって、配列番号1もしくは配列番号3、または配列番号1もしくは配列番号3の一部、あるいは配列番号1もしくは配列番号3と実質的に相同な配列によるデオキシリボ核酸配列を含有することを特徴とするベクターを対象とする。また、配列番号1もしくは配列番号3、または配列番号1もしくは配列番号3の一部、あるいは配列番号1もしくは配列番号3と実質的に相同な配列の導入ヌクレオチド配列を含有することを特徴とするゲノムを有する植物体または植物種子も、実施形態として包含される。同様に、トランスジェニック植物体のゲノム中にヌクレオチド配列を導入することにより前記植物体を作製する方法であって、前記ゲノム中に導入される前記ヌクレオチド配列が、配列番号1もしくは配列番号3、または配列番号1もしくは配列番号3の一部、あるいは配列番号1もしくは配列番号3、または配列番号1もしくは配列番号3の一部と実質的に相同な配列を包含することを特徴とする方法も、特定の実施形態に包含される。
【0015】
本発明の別の態様は、センスまたはアンチセンスの核酸構築物を、植物体形質転換ベクター中に導入し、該ベクターを用いて植物体または植物種子のゲノムを形質転換し、次いで、該植物体または植物種子を生育させ、該植物種子から油を抽出することにより、該植物体の油含量、脂肪酸組成、または種子収量を変化させる方法であって、前記核酸配列が、配列番号1もしくは配列番号3、または配列番号1もしくは配列番号3の一部、あるいは配列番号1もしくは配列番号3と実質的に相同な配列であることを特徴とする方法を包含する。本発明のさらに別の態様は、プロモーターと機能的に関連している、植物材料の油含量を改変するためのSnf1関連タンパク質キナーゼ手段を含むベクターによりさらに形質転換される植物体、植物種子、または植物体の後代を包含する。
【0016】
本発明のさらに別の実施形態は、植物体の乾燥耐性を改変する方法であって、Snf1関連タンパク質キナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、配列番号1および配列番号3からなる群から選択される核酸配列を含む核酸構築物を、植物体形質転換ベクター中に導入するステップと、前記植物体形質転換ベクターにより、植物体または植物種子のゲノムを形質転換するステップと、前記核酸配列を発現させるステップと、前記植物体または植物種子を生育させるステップと、同一の条件下で生育させた植物体と同じ遺伝子型であるが前記導入核酸配列は有さない、統計学的に有意な数の植物体の平均乾燥耐性と比較して、乾燥耐性の変化を有する形質転換植物体を選択するステップとを包含する方法を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】34日齢のシロイヌナズナの、野生型(wt)系統の茎における側枝数と、340293、340318、340367、340378、および340397と称するSnRK2−6トランスジェニック系統の茎における側枝数との比較を示すグラフである。誤差バーは、±SDである。
【図2】27日齢のシロイヌナズナの、野生型(wt)系統およびトランスジェニック系統の切断した地上部における水分喪失量を示すプロットである。データ点の各々は、シロイヌナズナの5つの個別のトランスジェニック系統の平均を表わす。水分喪失量は、地上部を植物体から切断した0〜6時間後における、初期の新鮮時重量に対する百分率として報告される。wt系統と、トランスジェニック系統との間における水分喪失量の有意差を、P<0.004(t検定)により示す。
【図3】27日齢のシロイヌナズナのSALK_008068株におけるT−DNA挿入について、ホモ接合(ノックアウト)およびヌル(ヌル)の切断した地上部における水分喪失量を示すプロットである。水分喪失量は、地上部を植物体から切断した0〜6時間後における、初期の新鮮時重量に対する百分率として報告される。wt系統と、トランスジェニック系統との間における水分喪失量の有意差を、P<0.004(t検定)により示す。
【図4】30日齢のシロイヌナズナの、野生型(wt)系統およびT3 SnRK2−6トランスジェニック系統(340293、340318、340367、340378、および340397)に由来する葉における可溶性糖含量(ナノモル/g単位のグルコース、フルクトース、およびスクロース)を示すグラフである。データ点の各々は、シロイヌナズナの5つの個別のSnRK2−6トランスジェニック系統(340293、340318、340367、340378、および340397)の平均を表わす。誤差バーは、±SDである(試料採取した各系統につき、n=8または10ずつの植物体)。
【図5】30日齢のシロイヌナズナの、野生型(wt)系統、ならびに5つの個別のSnRK2−6トランスジェニック系統に由来する葉におけるデンプン含量を示すグラフである。データ点の各々は、シロイヌナズナの5つの個別のSnRK2−6トランスジェニック系統(340293、340318、340367、340378、および340397)の平均を表わす。デンプン含量は、各系統に由来する葉の、ナノモル/g単位の総デンプン含量として報告される。誤差バーは、±SDである(試料採取した各系統につき、n=8または10ずつの植物体)。
【図6】シロイヌナズナの、野生型(wt)系統に由来する葉の脂肪酸組成と、SnRK2−6トランスジェニック系統に由来する葉の脂肪酸組成との比較を示すグラフである。データ点の各々は、シロイヌナズナの5つの個別のSnRK2−6トランスジェニック系統(340293、340318、340367、340378、および340397)の平均を表わす。脂肪酸の比率は、各系統に由来する葉の全組成に対するモル%として報告される。誤差バーは、±SDである(試料採取した各系統につき、n=10ずつの植物体)。
【図7】シロイヌナズナの、野生型(wt)系統における植物体1株当たりの種子収量と、SnRK2−6トランスジェニック系統における植物体1株当たりの種子収量との比較を示すグラフである。より具体的には、通常の乾燥生育条件下、穏やかな乾燥生育条件下、ならびに厳しい乾燥生育条件下における種子収量の比較である。「通常」条件下で生育させた植物体には、全生育期間中において、十分に施水した。「穏やかな」乾燥条件下で生育させた植物体では、開花期の6日間にわたり灌漑を停止した。「厳しい」乾燥条件下で生育させた植物体では、栄養成長期の16日間にわたり灌漑を停止した。誤差バーは、±SDである(試料採取した各系統につき、n=30ずつの植物体)。wt系統と、トランスジェニック系統との間における種子収量の有意差を、P<0.001(t検定)により示す。
【図8】34日齢のヌル分離個体(ヌル)およびSnRK2−6トランスジェニック系統のトウモロコシ植物体(トランスジェニック)の切断葉部分における水分喪失量を示すプロットである。データ点の各々は、トウモロコシ植物体の8つの個別のトランスジェニック系統の平均を表わす。それらのすべてが極めて類似のサイズを示す、各個別の系統に由来する5株ずつのヌル分離個体、ならびに5株ずつのキナーゼ含有植物体を用いた。各植物体について、頸領が目に見える頂端部の葉を切り取り、アッセイで用いた。水分喪失量は、地上部を植物体から切断した0分〜180分後における、初期の新鮮時重量に対する百分率として報告される。ヌル系統と、トランスジェニック系統との間における水分喪失量の有意差を、P<0.003(t検定)により示す。
【図9A】34日齢の、3つの個別の系統に由来するヌル分離個体(ヌル)、ならびにSnRK2−6を含有するトウモロコシ植物体(トランスジェニック)の切断葉における水分喪失量を示すプロットである。データ点の各々は、同じ系統に由来する5株ずつの個別のトウモロコシ植物体の平均を表わす。各植物体について、頸領が目に見える頂端部の葉を切り取り、アッセイで用いた。水分喪失量は、地上部を植物体から切断した0分〜90分後における、初期の新鮮時重量に対する百分率として報告される。
【図9B】34日齢の、3つの個別の系統に由来するヌル分離個体(ヌル)、ならびにSnRK2−6を含有するトウモロコシ植物体(トランスジェニック)の切断葉における水分喪失量を示すプロットである。データ点の各々は、同じ系統に由来する5株ずつの個別のトウモロコシ植物体の平均を表わす。各植物体について、頸領が目に見える頂端部の葉を切り取り、アッセイで用いた。水分喪失量は、地上部を植物体から切断した0分〜90分後における、初期の新鮮時重量に対する百分率として報告される。
【図9C】34日齢の、3つの個別の系統に由来するヌル分離個体(ヌル)、ならびにSnRK2−6を含有するトウモロコシ植物体(トランスジェニック)の切断葉における水分喪失量を示すプロットである。データ点の各々は、同じ系統に由来する5株ずつの個別のトウモロコシ植物体の平均を表わす。各植物体について、頸領が目に見える頂端部の葉を切り取り、アッセイで用いた。水分喪失量は、地上部を植物体から切断した0分〜90分後における、初期の新鮮時重量に対する百分率として報告される。
【図10】2280(1)006.006R.011R、2280(2)015.006R.008R、2280(2)016.004R.017R、および2280(3)025.006R.007Rと称する4つの個別の系統に由来する、ヌル分離個体(ヌル)における根のバイオマスと、SnRK2−6を含有するトウモロコシ植物体(トランスジェニック)における根のバイオマスとの比較を示すグラフである。地上部を切り取り、土壌を除去することにより根を回収し、次いで、7日間にわたり温室内で乾燥させて、異なる試料間における水分のばらつきを排除した。
【図11】ベクターとして用いうるプラスミドであるpDAB4504のマップである。該ベクターは、本発明において植物体を形質転換するための以下の顕著な特色:CsVMVプロモーター、SnRK2−6、およびAtuORF24 3’−UTRを含有する。
【図12】ベクターとして用いうるプラスミドであるpDAB7702のマップである。該ベクターは、本発明において植物体を形質転換するための以下の顕著な特色:Ubi1プロモーター、SnRK2−6hv、およびZmPer5 3’UTRを含有する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態は、商用植物油の収量を増大させる目的、またはそれらの組成を改変して、植物体および植物製品の特定の商用の改善を達成する目的で植物体内のトリアシルグリセロールの自然形成を改変するために用いうる遺伝子エレメントの同定、単離、およびクローニングを対象とする。
【0019】
本発明の別の実施形態は、シロイヌナズナ属種に由来するSnf1関連タンパク質キナーゼ(SnRK)遺伝子配列およびSnRK cDNA配列を単離および特徴づけし、植物体の遺伝子操作においてこれらの配列を用いることに関する。
【0020】
本発明のさらに別の実施形態は、プロモーター(例えば、CsVMVまたはUbi1)の制御下にある、センス配向のシロイヌナズナ属に由来する全長SnRKコード配列またはSnRK配列の大部分を含有するベクターを提供し、これをシロイヌナズナ属種中に再導入するか、または他の植物体中に導入することである。本発明の代替的な実施形態では、それ自身の5’側上流の制御配列の制御下にある、シロイヌナズナ属種に由来する全長SnRK遺伝子またはSnRK配列の大部分からなる、シロイヌナズナ属に由来するゲノム断片を含有するベクターが提供され、これがシロイヌナズナ属種中に再導入されるか、または他の植物体中に導入される。
【0021】
また、プロモーターの制御下にある、アンチセンス配向のシロイヌナズナ属に由来する全長SnRK配列またはSnRK配列の大部分を含有するベクターを構築し、これをシロイヌナズナ属種中に再導入するか、または他の植物体中に導入する方法も包含される。別の具体的な方法は、シロイヌナズナ属および他の植物体を改変して、それらの種子油含量、それらの脂肪酸組成、それらの平均種子重量もしくは平均種子サイズ、ならびに/またはそれらの水分喪失量および植物体の乾燥耐性を改変するステップを包含する。本発明の他の方法は、シロイヌナズナ属および他の植物体を改変して、根のバイオマスを増大させるなど、生育および成長を促進するか、またはそれらの光合成活性を改変して、これにより、糖含量およびデンプン含量を増大させるステップを包含する。
【0022】
本発明の別の態様によれば、配列番号1(pSnRK cDNA)の、単離および精製されたデオキシリボ核酸(cDNA)を、センス配向で植物細胞中に導入するための、該cDNAを含有するベクターが提供される。本発明の別の態様によれば、配列番号3(pSnRK2−6hv5遺伝子)の、単離および精製された植物最適化デオキシリボ核酸(DNA)を、センス配向で植物細胞中に導入するための、該遺伝子を含有するベクターが提供される。本発明のさらに別の態様によれば、配列番号1もしくはその一部、または配列番号3もしくはその一部を、アンチセンス配向で植物細胞中に導入するための、該遺伝子または部分遺伝子を含有するベクターを調製する方法が提供される。
【0023】
別の実施形態は、シロイヌナズナの突然変異体の種子系統を提供するステップを包含する。該突然変異体の種子系統は、SnRK遺伝子内に挿入突然変異を有し(下記の表1に示される)、SnRK活性が増大しており、その結果、葉のサイズおよび側枝数が増大し、水分喪失量が減少し、糖含量およびデンプン含量が増大し、種子中の脂肪アシル組成が改変され、種子収量が増大し、根のバイオマスが増大する植物体をもたらす。SnRK2−6のcDNA配列を配列番号1に示し、その植物最適化DNA配列を配列番号3に示し、SnRK2−6の翻訳されたタンパク質配列を配列番号2に示す。
【0024】
本発明はまた、導入された配列番号1または配列番号3のDNA配列を含有するゲノムを有する、トランスジェニック植物体およびトランスジェニック植物種子、ならびにこのような植物体および植物種子を作製する方法にも関する。
【0025】
本発明は、当業者により理解される通り、配列番号1または配列番号3の配列情報を用いて、既知の方法により単離および/または特徴づけされる、25%以上のアミノ酸配列の推定同一性、ならびに50%以上のアミノ酸配列の推定類似性を有する植物体に由来する、実質的に相同的なDNA配列と、アンチセンス適用または共抑制(JorgensenおよびNapoli、1994)適用で用いることにより、遺伝子発現の阻害剤としてなおも機能しうる、長さが短縮された部分とにさらに関する。特定の遺伝子配列におけるヌクレオチドの同一性のわずかな変化により、その遺伝子の有効性が結果として低減または増強される場合があり、一部の適用(例えば、アンチセンス適用または共抑制適用)では、部分配列が、しばしば全長形と同様に有効に作用することは、当業者により理解されるであろう。改変遺伝子の有効性を調べる方法と同様、遺伝子配列を変異または短縮させうる方法も、当業者にはよく知られている。したがって、このような遺伝子の変異型のすべては、本発明の一部として特許請求される。
【0026】
葉のサイズ、側枝数、水分喪失量、または糖、デンプン、もしくは油の含量もしくは組成の改変を考慮する場合は、本発明による、統計学的に有意な数の植物体または種子の平均から得られた結果を、同一の条件下で同時に生育させた、統計学的に有意な数の、形質転換されていない(対照の)、同じ遺伝子型の植物体または種子の平均から得られた結果と比較することが最善である。特に、このような植物体を異なる条件下で生育させる場合は、遺伝子型が同じ個別の植物体のばらつきが許容される。必要とされる平均を成すのに用いられる植物体または種子の実際の数は変化しうるが、このような数を選択するいかなる場合でも一般に、一定の平均をもたらすのに十分な数であるものとする。一般に、この数は、少なくとも10であり、少なくとも20、30、50、または100であることがより好ましい。
【0027】
本発明のSnRKは、植物体におけるSnRK活性、ならびに水分喪失量、乾燥耐性、炭素同化量、植物体の生育および成長、脂肪酸バイオアセンブリー、ならびに根の成長を操作するのに有用である。例えば、プロモーター(例えば、CsVMVまたはUbi1)の制御下において、センス配向でSnRK遺伝子を含有する構築物により植物体を形質転換することにより、SnRK cDNAの発現および乾燥耐性を向上させることができ、該植物体の組成を改変することができる。これは、乾燥耐性、および根の作物中のデンプン/油比を改変するのに特に有利でありうる。一部の実施形態では、SnRK遺伝子を含有する構築物により形質転換した植物体はまた、これらの植物体における水分喪失に対する抵抗性、乾燥耐性、炭素同化量、植物体の生育および成長、脂肪酸バイオアセンブリー、ならびに根の成長をさらに向上させる、さらなる異種遺伝子または改変遺伝子も包含しうる。
【0028】
代替的に、アンチセンス現象または共抑制(トランスイッチ(Transwitch))現象(De Langeら、1995;Molら、1990;JorgensenおよびNapoli、1994;Kinney、1995;Vaucheretら、1998;Taylor、1998)によりある程度までは、SnRKの発現をサイレンシングすることもできる。例えば、種子特異的な形でSnRKをサイレンシングする結果として、SnRKの蓄積を低下させることができる。これは、種子根作物中のデンプン、糖、および/または油の含量または比率を低下させて、貯蔵期間中の安定性を向上させることに適用されうるであろう。
【0029】
SnRK遺伝子またはその一部を用いて可能となる操作および成果物の一部には、以下の油含量を増加または減少させた種子、含有する糖含量またはデンプン含量を増加または減少させた葉、脂肪酸組成が改変された種子油、水分喪失量が減少している植物体、他の貯蔵器官(例えば、塊茎、根、および葉)内の貯蔵化合物の蓄積能が増強または改変されている植物体、ならびに根の成長および根のバイオマスが増大している植物体が含まれるがこれらに限定されない。
【0030】
複数のSnRK2キナーゼおよびSnRK3キナーゼが、ABAシグナル伝達カスケードを介し、非生物的ストレスに応答して極めて重要な役割を果たすことが示されている。植物の脂質代謝におけるABAの極めて重要な役割を踏まえるなら、これは、一部のSnRKキナーゼが、この代謝の制御物質として機能しうる可能性を示唆する。種子の発芽期間において、ABAは、貯蔵脂質であるトリアシルグリセロールをスクロースへと転換するのに不可欠な経路である、脂肪酸ベータ酸化回路およびグリオキシル酸回路に関与する遺伝子の転写を低下させる(S.L.Pritchardら、Plant J.2002、31:639〜647)。他方、ABAは、胚発生期間において、トリアシルグリセロール合成を増大させ、その正の制御物質としてふるまう。種子特異的な免疫調節によりABAを抑制すると、タバコ種子油の生成が結果として減少することが示されている(J.Phillipsら、EMBO J.1997、16:4489〜4496)。逆に、ABA(4μM)で未成熟トウモロコシ胚を処理したところ、脂肪酸アシルトランスフェラーゼ活性が上昇し、これにより、油収量が増大した(F.Pacheco−Moisesら、Plant Physiol.1997、114:1095〜1101)。この効果は、シロイヌナズナ属、アブラナ属(Brassica)(アブラナ(Brassica napus)、カラシナ(Brassica juncea)、およびハクサイ(Brassica rape))、ラッカセイ(peanut)、ニンジン、コムギ、トウヒ、アーモンド、およびラッカセイ(ground-nut)(Arachis hypogaea)を含めた他の多くの種からも観察されている。にもかかわらず、SnRKキナーゼが、種子油合成に対するABAによる制御を媒介するかどうかは、今なお知られていない。
【0031】
種子油の生成に関与するこれらの重要なキナーゼを同定しようと試みる中で、逆遺伝学的手法が用いられた。これは、遺伝子内へのSALK T−DNA挿入についてスクリーニングした後で、種子油含量および種子収量に対する遺伝子ノックアウトの影響を判定することに基づく。大規模なスクリーニングの後、種子油生成におけるSnRK2−6遺伝子(At4g33950)の役割が明らかとなった。OST1(OPEN STOMATA 1)遺伝子とも称するこの遺伝子は、かつて、カルシウム依存性タンパク質セリン/トレオニンキナーゼ活性を保有するタンパク質をコードし、ABA媒介性気孔開度を制御することが示された(Mustilliら、2002)。T−DNA挿入によりこの遺伝子を不活化したところ、脱水条件下において、種子収量が24%〜50%結果として減少した。加えて、ノックアウト株であるSALK_008068株では、種子油含量の7%〜25%の減少が検出された。しかし、この挿入についてホモ接合である植物体におけるタンパク質含量(21.3%)と、ヌル分離個体におけるタンパク質含量(20.9%)とでほとんど変化が示されなかったことから、SnRK2a亜群のメンバーであるSnRK2−6が、種子油生成に対して正の制御物質として作用することが示唆される。
【0032】
SnRK2−6は、かつて、シロイヌナズナ属における気孔組織および脈管組織において優先的に発現する、ABA媒介性気孔伝導度の制御物質として同定された(Mustilliら、2002;Fujiiら、Plant Cell、2007、19:485〜494)。本発明における逆遺伝学的研究は、種子油生成におけるその役割を明らかにした。
【0033】
SnRK2−6は、シロイヌナズナ属において、構成的プロモーターであるCsVMV下で異所性発現させた。SnRK2−6を、CsVMVにより強制的に異所性発現させると、天然プロモーターにより駆動されるSnRK2−6発現の、空間的に高度に局在化されたパターンを破壊することから、正常なパターンとは異なるパターンがもたらされる可能性がある。このような撹乱は、植物体の生育および代謝に影響を及ぼしうる。
【0034】
図1を参照すると、シロイヌナズナ属においてSnRK2−6を過剰発現させたところ、葉の成長が促進され、側枝数がさらに増大することが示された。加えて、切り取ったトランスジェニック植物体では、野生型植物体と比較して、水分喪失量が実質的に減少することが示されたことから、SnRK2−6の過剰発現が、植物体地上部の蒸散率を低下させうることが裏付けられた。これに対し、図3に示す通り、この遺伝子をノックアウトしたところ、水分喪失が加速化された。
【0035】
図4に示す通り、トランスジェニックのシロイヌナズナ属植物体において炭素同化量が増大したことは、SnRK2−6の過剰発現が、植物体の生育を促進しうることを裏付けうる。より具体的に述べると、SnRK2−6を過剰発現するトランスジェニックのシロイヌナズナ属植物体は、通常の温室条件下にあるトランスジェニックの葉内の、フルクトース、グルコース、およびスクロースの含量を劇的に増大させた。トランスジェニックの葉内の全糖含量は、野生型の葉内の全糖含量の2倍であった。トランスジェニック植物体のデンプン含量は、野生型レベルの実に156%であった。図4および5を参照すると、SnRK2−6をノックアウトしても、可溶性糖含量または可溶性デンプン含量には大きな影響が及ばなかった。まとめると、これらの結果は、SnRK2−6導入遺伝子(transgene)を構成的に発現させると、葉の光合成活性が上昇することから、炭素同化量が増大しうることを示唆する。
【0036】
図6は、トランスジェニック葉において、脂肪酸組成が劇的に変化することを示す。トランスジェニック植物体の葉の2つのトリエン脂肪酸である16:3および18:3が、野生型と比べて、それぞれ、81%および26%増大したことから、導入遺伝子により、不飽和プロセスが強化されることが示唆される。
【0037】
葉の光合成活性の増大と一致して、トランスジェニック植物体において種子収量の大幅な増大が検出された。野生型の植物体と比較したところ、トランスジェニック植物体は、通常条件下、穏やかな乾燥条件下、ならびに厳しい乾燥条件下において、種子収量がそれぞれ、24%、16%、および35%増大した(図7)。結果は、導入遺伝子が、植物体の乾燥耐性を増強するだけでなく、他の生理学的プロセスも改変することから、通常の生育条件下における種子生成も増大させることを示唆する。
【0038】
種子油についての解析は、CsVMVにより促進されるSnRK2−6の発現が、種子油含量の大幅な変化を結果としてもたらさないことを示した。しかし、導入遺伝子によって種子収量が増大したために、全種子油生成量も増大した。
【0039】
まとめると、シロイヌナズナ属の葉内において、SnRK2−6を構成的に過剰発現させたところ、可溶性の糖およびデンプンの含量が大幅に増大し、脂質の生合成が改変された。この結果さらに、通常条件下および乾燥条件下の両方において、種子収量が大幅に増大した。
【0040】
図10に示す通り、トランスジェニックのトウモロコシ植物体において根のバイオマスが増大したことは、SnRK2−6の過剰発現が根の成長を促進しうることを裏付けうる。SnRK2−6を過剰発現するトランスジェニックのトウモロコシ植物体は、ヌル植物体と比較して、根のバイオマスを劇的に増大させた(すなわち、11%、25%、92%、および15%)。これらの結果は、SnRK2−6キナーゼが根の成長を促進しうることを示唆する。このような機構は、トウモロコシの乾燥耐性の増大と関連しうる。
【0041】
本発明による改変に特に好ましい植物には、シロイヌナズナ、ルリジサ(Borago属種)、キャノーラ、トウゴマ(Ricinus communis)、カカオ豆(Theobroma cacao)、トウモロコシ(Zea mays)、ワタ(Gossypium属種)、ハマナ属種(Crambe)、タバコソウ属種(Cuphea)、アマ(Linum属種)、レスケレーラ属種(Lesquerella)およびリムナンテス属種(Limnanthes)、リノーラ、ノウゼンハレン(Tropaeolum属種)、マツヨイグサ(Oenothera属種)、オリーブ(Olea属種)、アブラヤシ(Elaeis属種)、ラッカセイ(Arachis属種)、ナタネ、ベニバナ(Carthamus属種)、ダイズ(Glycine属種およびSoja亜属種)、ヒマワリ(Helianthus属種)、タバコ(Nicotiana属種)、ショウジョウハグマ(Vernonia属種)、コムギ(Triticum属種)、オオムギ(Hordeum属種)、イネ(Oryza属種)、カラスムギ(Avena属種)、モロコシ(Sorghum属種)、ライムギ(Secale属種)、ならびにイネ(Gramineae)科の他のメンバーが含まれる。
【0042】
本発明は、油糧種子作物から生成される油糧種子の収量または組成を改変するのに用いられる場合に、特に有用である。油糧種子作物とは、食用油または産業において有用な油を商業的に有意な収量で生成することが可能な植物種であり、上記で列挙した植物種の多くを包含する。このような油糧種子作物は、当業者によく知られている。
【0043】
SnRK2−6遺伝子は、植物体に所望の形質を付与する1または複数の他の遺伝子と共に導入することができる。例えば、場合によって、ストレス耐性遺伝子または乾燥耐性遺伝子を、SnRK2−6遺伝子と組み合わせて導入することができる。
【0044】
以下の例示的な実施例を用いて、本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0045】
[実施例1]
PCRによる、シロイヌナズナ属SnRK遺伝子内へのT−DNA挿入の同定
配列の類似性により、シロイヌナズナ属のSnRKキナーゼを、3つの亜群であるSnRK1、SnRK2、およびSnRK3へと類別することができる。SnRK1亜群は、それぞれ、At3g01090、At3g29160、およびAt5g39440によりコードされる3つのキナーゼを包含する。SnRK2亜群は、それぞれ、遺伝子At4g40010、At2g23030、At1g60940、At1g10940、At5g63650、At5g08590、At1g78290、At3g50500、At5g66880、およびAt4g33950に対応する10のメンバーからなる。SnRK3は、遺伝子、すなわち、At5g57630、At3g17510、At1g48260、At4g24400、At5g35410、At2g26980、At1g30270、At1g01140、At4g14580、At3g23000、At2g38490、At5g01820、At2g30360、At2g34180、At1g29230、At5g45810、At4g18700、At4g30960、At5g45820、At5g58380、At5g07070、At5g01810、At2g25090、At5g25110、およびAt5g10930によりコードされる25のメンバーを伴う最大の亜群である。
【0046】
表1および2に示す通り、SnRK遺伝子中にT−DNAを挿入したSALK株において、PCRにより、この挿入についてホモ接合、ヘテロ接合、およびヌルの植物体をスクリーニングした。PCR反応で用いたゲノムDNAは、シロイヌナズナ属の葉から単離した。例として述べると、GSP108プライマーおよびLBa1プライマーを用いて、SALK_008068株のSnRK2−6(At4g33950)遺伝子へのT−DNA挿入を保有する植物体についてスクリーニングした。他方、At4g33950遺伝子の2つの遺伝子特異的プライマーである、GSP108およびGSP124を用いて、該遺伝子の野生型コピーが、SALK_008068株の分離個体内に存在するかどうかを判定した。
【0047】
【表1−1】
【表1−2】
【0048】
【表2】
【0049】
種子油生成における各キナーゼの機能を確定するため、ガスクロマトグラフィーにより、該キナーゼ遺伝子への該挿入を保有するSALK株の種子における油プロファイルを決定した。該キナーゼ遺伝子の破壊により引き起こされる影響をよりよく評価するため、同じ株に由来するヌルの同胞種を対照として用いた。理論的に述べると、ヌルの同胞種は、該挿入についてホモ接合およびヘテロ接合である他の分離個体との遺伝子バックグラウンドの類似性が、野生型の場合と比較して高度である。
[実施例2]
【0050】
シロイヌナズナ属種子の脂肪酸メチルエステルの解析
シロイヌナズナ属種子の抽出および誘導
成熟シロイヌナズナ属種子を採取し、種子以外のすべての植物材料を除去した。採取した全種子から、約10mgずつのアリコートを採取し、1ml容量の96ウェルプレートへと分注した。精度が±2μgである分析用秤を用いることにより、正確な重量測定値を得、これらを記録した。使用前に、ウェルプレートをヘキサンですすぎ、直径4mmのステンレス鋼製ホモジナイズ用ビーズ2個を各ウェル内に入れた。試料を分注した後で、75ppmのヘプタデカン酸メチルおよび0.5Mナトリウムメトキシド0.2mlを含有する0.4mlヘキサンを、各ウェルへと分注した。次いで、各ウェルにキャップをはめ、バーティカルシェーカーに入れて1分間当たり500ストロークで2分間にわたり振とうし、次いで、1分間当たり250ストロークで58分間に変更した。次いで、振とうが完了したら、5600rcfで5分間にわたり、ウェルプレートを遠心分離にかけた。遠心分離後、上部のヘキサン抽出物層を採取し、別の96ウェルプレートに入れた。0.4mlヘキサンによりさらに2回にわたり抽出を実施し、後続の各抽出物を、第1の抽出物と混合した。第2および第3の抽出では、垂直振とう条件を、1回の抽出につき、1分間当たり250ストロークで30分間ずつに変更した。混合した1.2mlのヘキサン抽出物を10倍に希釈して、別の96ウェルプレートに入れ、GC−FIDにより解析した。
【0051】
脂肪酸メチルエステル(FAME)の解析
結果として得られる脂肪酸メチルエステルである、シロイヌナズナ属種子脂質を、1ml/分の水素をキャリアガスとして、3種類の傾きによる温度勾配を用いる(1.34分間にわたり60℃を維持し、41.3℃/分で150℃とし、9.1℃/分で180℃とし、41.3℃/分で220℃として、1.86分間にわたり維持する)SGE製BPX70型キャピラリーカラム(15m、内径0.22、膜厚0.25)において分解した。投入温度は230℃であり、水素炎イオン化検出器の温度は240℃であった。貯留時間によるFAME解析の同定および定量化は、75ppmのヘプタデカン酸メチルを伴うナタネ油基準物質(Matreya製)により達成した。
[実施例3]
【0052】
シロイヌナズナ属葉の脂肪酸メチルエステルの解析
シロイヌナズナ属葉脂質の抽出および誘導
凍結させたシロイヌナズナ属葉を、液体窒素下で、乳鉢および乳棒により微粉へとすりつぶした。この粉末から、約50mgずつのアリコートを採取し、1ml容量の96ウェルプレートへと分注した。使用前に、ウェルプレートをヘキサンですすぎ、直径4mmのステンレス鋼製ホモジナイズ用ビーズを各ウェル内に入れた。試料を分注した後で、0.5mlヘキサンおよび0.5Mナトリウムメトキシド0.25mlを、各ウェルへと分注した。次いで、各ウェルにキャップをはめ、バーティカルシェーカーに入れて1分間当たり250ストロークで30分間にわたり振とうした。次いで、5600rcfで5分間にわたり、ウェルプレートを遠心分離にかけた。遠心分離後、上部のヘキサン抽出物層を採取し、別の96ウェルプレートに入れ、ガスクロマトグラフ水素炎イオン化により解析した。
【0053】
FAMEの解析
結果として得られる脂肪酸メチルエステルである、シロイヌナズナ属葉脂質を、1ml/分の水素をキャリアガスとして、3種類の傾きによる温度勾配を用いる(1.34分間にわたり60℃を維持し、41.3℃/分で150℃とし、9.1℃/分で180℃とし、41.3℃/分で220℃として、1.86分間にわたり維持する)SGE製BPX70型キャピラリーカラム(15m、内径0.22、膜厚0.25)において分解した。投入温度は230℃であり、水素炎イオン化検出器の温度は240℃であった。FAME解析の、貯留時間によるFAMEの同定は、ナタネ油基準物質(Matreya製)により達成した。
[実施例4]
【0054】
シロイヌナズナ属種子の全タンパク質の解析
シロイヌナズナ属種子の酸による消化(タンパク質の加水分解)
成熟シロイヌナズナ属種子を採取し、種子以外のすべての植物材料を除去した。採取した全種子から、約20mgずつのアリコートを採取し、ゴム製のO字型環状ネジ式キャップを伴う、オートクレーブ処理可能な2mlの遠心管へと分注した。精度が±2μgである分析用秤を用いることにより、正確な重量測定値を得、これらを記録した。使用前に、酸で洗浄した4mmのガラス製ビーズ10個ずつを、各遠心管へと添加した。試料を分注した後で、遠心管をバーティカルシェーカーに取り付け、1分間当たり500ストロークで5分間にわたり振とうした。次いで、0.1%フェノールおよび1%2−メルカプトエタノールを伴う6Nの塩酸1.4mlを、各試料に添加した。次いで、遠心管を、再度バーティカルシェーカーに取り付け、1分間当たり500ストロークで15分間にわたり垂直振とうした。垂直振とうが完了したら、遠心管を加熱ブロックへと取り付け、100℃で24時間にわたり加熱して消化を完了させた。消化プロセスが終了したら、遠心管を室温まで冷却し、0.4μmのガラス製フィルターにより、消化物を濾過した。濾過された消化物のうちの0.1mlを、0.3mlの2N水酸化ナトリウム、0.6mlの水、および高速液体クロマトグラフィー蛍光検出による解析のための内部基準物質として1000ピコモル/μlのノルバリンを含む0.1mlの水を含む1.5mlのガラス製注入用バイアル内で希釈した。
【0055】
アミノ酸残基の誘導
一級アミノ酸は、o−フタルアルデヒド(OPA)により誘導した。二級アミノ酸は、9−フルオレニルメチルクロロホルメート(FMOC)により誘導した。いずれの誘導反応も、カラム処理前に、HPLC注入用ループを用いて達成した。試料はまず、10.2pHの0.4Nホウ酸緩衝液により緩衝処理し(1μlの試料に対して4μlの緩衝液)、次いで、OPAおよびFMOC(1μlのOPAおよび1μlのFMOCの順序で)と混合した。次いで、試料を注入し、解析した。
【0056】
HPLC−FLDによるアミノ酸残基の解析
誘導したアミノ酸残基は、40℃で2種類の溶出勾配を用いる、150×3.0mmの5μmC18(2)逆相カラム上で分解した。水相(溶出物A)は、7.8pHの40mMリン酸ナトリウム緩衝液からなり、有機相(溶出物B)は、アセトニトリル:メタノール:水(45:45:10のv/v/v)からなった。溶媒の勾配系は、0〜1.9分A/B(%)=100:0;1.9〜18.1分A/B(%)=43:57;18.1〜18.6分A/B(%)=0:100;18.6〜22.3分A/B(%)=0:100;22.3〜23.2分A/B(%)=100:0;23.2〜26A/B(%)=100:0であった。流速は、2ml/分で一定であった。
【0057】
蛍光検出器のパラメータは、解析の最初の15分間にわたり、340nmの励起波長、および450nmの発光波長に設定した。次いで、残りの解析時間にわたり、検出器を、266nmの励起波長、ならびに305nmの発光波長へと切り替えた。解析の最初の15分間は、OPAによる誘導残基を検出するのに最適化させ、残り時間は、FMOCによる誘導残基を検出するために最適化させた。
【0058】
アミノ酸残基の同定および定量化は、90.9ピコモル/μlのノルバリン内部基準物質を含有するアミノ酸基準混合物(Agilent Technologiesから購入)により較正した。定量化された残基は、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、ヒスチジン、グリシン、トレオニン、アルギニン、アラニン、チロシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、リシン、およびプロリンであった。各残基の回収質量を計算し、合計して、おおおその全タンパク質質量を求め、次いで、各シロイヌナズナ属種子試料について、タンパク質の比率を計算した。
[実施例5]
【0059】
新鮮なシロイヌナズナ属の全デンプンの解析
新鮮なシロイヌナズナ属葉を、液体窒素下で、乳鉢および乳棒で組織を砕くことにより微粉へとすりつぶした。デンプンについての解析を行う前に、80%エタノールにより、試料を脱糖化した。デンプンの消化は、それぞれ、α−アミラーゼおよびアミログルコシダーゼにより実施した。放出されたグルコースは、グルコースオキシダーゼベースの酵素アッセイおよびペルオキシダーゼベースの酵素アッセイにより検出した。デンプン含量は、遊離グルコースをデンプンへと補正した、放出グルコースに基づいて計算した。
[実施例6]
【0060】
LC/MSMSによる代謝物の解析
液体窒素ならびに乳鉢および乳棒を伴う手作業により、シロイヌナズナ属葉組織をすりつぶし、極微粉試料を得た。細かくすりつぶした葉組織約100mgを、80:20のメタノール;0.1N HCl溶液により抽出し、十分に混合し、350mg/mLの抽出物を結果として得た。試料をペレット状の微粒子へと遠心分離し、抽出された代謝物を含有する上清アリコートを除去し、内部基準物質としての、グルコースの安定的同位体を含有する80:20のアセトニトリル:水により1:10に希釈し、タンデム質量分析による検出を伴う液体クロマトグラフィー(LC−MS/MS)により解析した。
【0061】
LC−MS/MSは、種子組織抽出物などの複雑な生物学的マトリックス中の一次代謝物および二次代謝物の定量的な解析に適する選択性および感度をもたらす。MS/MSによる定量化を行う前に、液体クロマトグラフィーにより分離することは、対象の化合物のイオン化/応答を阻害しうるマトリックス成分から、対象の化合物を分離するのに望ましい。分析物をイオン化するには、陽(+)イオンまたは陰(−)イオンによるエレクトロスプレーイオン化(ESI)、ならびに陽イオン/陰イオンによる大気化学イオン化(APCI)を含めた、複数の技法が利用可能である。MS/MSによる化合物の解析は、本質的に4ステップ、すなわち、1)対象の化合物に特異的な分子イオンの形成、2)分子イオンの選択、3)化合物特異的なフラグメントイオンの形成、4)化合物特異的なフラグメントイオンの検出によるプロセスである。LCカラムからの溶出物をMSへと導入すると、MSにより、この4ステップによるプロセスがミリ秒の時間枠で連続的に実行される。
【0062】
本研究におけるLC−MSMS解析は、TurboIon(商標)Sprayによる注入部を装備する、Applied Biosystems製Sciex(商標)3000型三連式四重極タンデム質量分析器とインターフェース接続した、Agilent製1100型液体クロマトグラフ上で実施した。種子組織抽出物についてLC−MS/MS解析を行う前に、以下のパラメータ、すなわち、
Q1:+/−の分子イオンのm/z
DP:最大の分子イオン形成についてのデクラスタリングポテンシャル
Q3:分子イオンから生成される生成物イオンのm/z
CE:最大の生成物イオン形成についての衝突エネルギー
CXP:細胞脱出ポテンシャル
を確定する目的で、個々の二次代謝物の基準物質(約10μg/mL)を、質量分析器中に注入した。
【0063】
以下の表3のQ1欄に示す通り、本研究においてモニタリングされたシロイヌナズナ属代謝物は、陰イオンモードのESIを用いて予測される[M−H]−分子イオンを形成することが判明した。代謝物の各々を定量化するのに用いたフラグメントイオンを、以下の表のQ3欄に列挙する。以下の表は、代謝物の各々を定量化するのに用いたMSMSパラメータを列挙する(G1P=グルコース−1−ホスフェート、G6P=グルコース−6−ホスフェート、ADP−g=アデノシンジホスフェート−グルコース、GDP−g=グアノシン5’−ジホスフェート−グルコース、UDP−g=ウリジン5’−ジホスフェート−グルコース)。
【0064】
【表3】
【0065】
対象のシロイヌナズナ属代謝物は極性が強いため、HILIC相用液体クロマトグラフィーカラム(TOSOH Biosciences LLC製;TSKゲルアミド80;100×2mm、5μM)を用いて分離した。流速500μL/分で4分間にわたり、0:100のHPLC水:アセトニトリルに始まり、100:0の水:アセトニトリルへと至る直線勾配を用いた。化合物のイオン化を増強するため、HPLC水を、10mMの酢酸アンモニウムで緩衝した。
【0066】
標的代謝物ごとに較正曲線を作製し、各抽出物に対して線形回帰分析を用いることにより、定量化を達成した。抽出物中で見出される濃度に希釈係数(10倍)を乗じることにより、試料中の全濃度をナノモルg−1単位で得た。提示されるすべてのデータは、6連の平均であり、このうち3連は解析のための多連であり、2連は温室内での多連である。
[実施例7]
【0067】
シロイヌナズナ属を形質転換するための、SnRK2−6発現ベクターの構築
シロイヌナズナ属SnRK2−6遺伝子を増幅するため、Oligo dT20をプライマー(Invitrogen製SuperScriptIII RTキット)として用いて一本鎖cDNAを合成するのに、シロイヌナズナ属葉から単離した全RNA(900ng)を用いた。それらのいずれもがNco I部位(下線を付した)を包含するプライマー対である5’−TAA TTT CCA TGG ATC GAC CAG CAG TGA GT−3’および5’−TTT TTT CCA TGG ATC ACA TTG CGT ACA CAA TCT CT−3’を用いて、このsscDNAをさらに増幅した。次いで、増幅されたSnRK2−6遺伝子を、NcoIにより消化し、ゲートウェイエントリーベクターであるpDAB3731中に挿入した。挿入の方向は、シーケンシングすることにより決定した。結果として得られる、CsVMV、SnRK2−6、およびAtuORF24 3’−UTRを含む植物転写単位(PTU)を、ゲートウェイLR反応を用いて、バイナリーゲートウェイデスティネーションベクターであるpDAB3725中にクローニングした。結果として得られる、pDAB4504と称するプラスミド(図11)を用いて、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)を形質転換した。
[実施例8]
【0068】
合成による、SnRK2−6の植物最適化コード領域
トランスジェニックの双子葉植物および単子葉植物(例えば、トウモロコシ)において、SnRK2−6タンパク質を生成することが可能となるように、シロイヌナズナSnRK2−6遺伝子のコード配列合成形をデザインした。出発塩基配列は、配列番号1に開示されるタンパク質コード領域を含み、配列番号2に開示されるタンパク質配列をコードする、Genbank受託番号At4g33950であった。
【0069】
SnRK2−6タンパク質をコードする植物最適化DNA配列をもたらすため、特定の宿主植物(トウモロコシおよび双子葉植物)において見出される遺伝子のタンパク質コード配列からまとめたコドンバイアス表から確定される冗長遺伝子コードを用いてタンパク質のアミノ酸配列をコードするように、DNA配列をデザインした。706のトウモロコシ遺伝子のタンパク質コード領域は、米国国立医学図書館、国立バイオテクノロジー情報センター(メリーランド州、ベセスダ)から入手可能なGenbank配列から抽出し、コドン組成は、ウィスコンシン大学、Genetics Computer Group(ウィスコンシン州、マジソン)から入手可能なWisconsin Sequence Analysis PackageのCodonFrequency関数を用いて計算した。タバコ(Nicotiana tabacum;453,797コドン)、ワタ(Gossypium hirsutum;62,111コドン)、ダイズ(Glycine max;362,096コドン)、およびキャノーラ(Brassica napus;195,005コドン)についてのコドン使用表は、かずさDNA研究所(日本)から入所可能である。
【0070】
【表4A】
【0071】
【表4B】
【0072】
トウモロコシ遺伝子の天然遺伝子コドン使用を、表4Aおよび4BのE欄に示し、双子葉植物遺伝子の天然遺伝子コドン使用を、表4Aおよび4BのG〜J欄に示す。E欄およびG〜J欄の値は、各アミノ酸の同義コドンの分布(%による、そのアミノ酸に対するすべてのコドンの使用の分布)を示す。各植物種類に最も好ましいコドンを太字で示し、複数の選択が存在する場合は、第2選択、第3選択、または第4選択などのコドンを同定することができる。双子葉植物遺伝子において、一部のアミノ酸に対する一部の同義コドン(例えば、CGGおよびTCG)がごくまれにしか見出されないことは、明らかである。また、一部の双子葉植物は、特定のアミノ酸に対するコドンの選択性(例えば、アスパラギンコドンおよびフェニルアラニンコドン)においても幾分か異なる。また、植物タンパク質コード領域では、一部のアミノ酸に対する一部の同義コドン(例えば、CGAおよびCTA)がごくまれにしか見出されないことも明らかである。さらに、トウモロコシと双子葉植物とは、コドンの使用が異なる(例えば、アラニンのコドンであるGCCが、双子葉植物遺伝子より、トウモロコシ遺伝子でより頻繁に生じるのに対し、アラニンのコドンであるGCTは、トウモロコシ遺伝子より双子葉植物遺伝子でより多く用いられる)。したがって、1つの植物群の遺伝子に最適なコドン組成を反映するようにデザインされたタンパク質コード領域が、別の植物群で発現するには準最適なコドン組成を有する可能性がある。トウモロコシおよび双子葉植物に共通して最もよく用いられるコドンを含む、バイアスをかけたコドンセットを導出するため、表4Aおよび4BのF欄に示す双子葉植物のデータセットについて、各コドンの平均を計算した。
【0073】
表4Aおよび4BのE欄およびF欄のデータから、トウモロコシ遺伝子および双子葉植物遺伝子における各コドンの%による平均分布値を計算したが、これを、表4Aおよび4BのD欄の「植物平均」として示す。通常、用いられるのがまれであると考えられる(すなわち、トウモロコシ植物体または双子葉植物体の遺伝子における関連アミノ酸をコードする回数の約10%以下で表わされる)コドンの%による使用値は、解析に含めなかった。表4Aおよび4BのD欄では、これらのコドン値を、DNU(使用なし(Do Not Use))により示す。これらの場合には、個々のアミノ酸の%による全コドン使用値が、表4Aおよび4BのD欄の合計で100%とならない。
【0074】
これらのアミノ酸の残りのコドン選択の分布を補正するため、式:
C1の加重平均%=1/(%C1+%C2+%C3+その他)×%C1×100
[式中、C1は、問題となるコドンであり、%C2、%C3、その他は、表4Aおよび4BのD欄で示す、残りの同義コドンに対する、%による植物平均を表わす]
を用いて、各コドンの加重平均についての%表示を計算した。
【0075】
トウモロコシ遺伝子および双子葉植物遺伝子について計算された%によるコドン分布の植物加重平均を、表4Aおよび4BのC欄に示す。したがって、C欄の%による分布値と共に考え合わせたB欄のコドン同一性は、トウモロコシ、ワタ、キャノーラ、タバコ、およびダイズの遺伝子から計算された植物最適化コドンバイアス表を含む。植物最適化遺伝子は、表4Aおよび4BのC欄のコドン分布と類似する全コドン分布を有するように決定される。
【0076】
SnRK2−6タンパク質をコードする植物最適化配列を操作するために、双子葉植物およびトウモロコシのタンパク質コード配列からまとめた冗長植物最適化コドンバイアス表を用いて、該タンパク質のアミノ酸配列をコードするように、DNA配列をデザインした。天然のSnRK2−6 DNA配列(配列番号1)を、SnRK2−6タンパク質の推定アミノ酸配列(配列番号2)に翻訳し、次いで、Ocimum Biosolutions(インディアナ州、インディアナポリス)から市販されている、OptGene(商標)プログラムを用いて、該タンパク質配列を、植物最適化DNA配列へと逆翻訳した。植物細胞における、望ましくない制限酵素認識部位、潜在的な植物イントロンスプライス部位、A/T残基またはC/G残基のロングラン、ならびにコード領域のRNAの安定性、転写、または翻訳に干渉しうる他のモチーフを除去するように、配列をさらに洗練させた。所望の制限酵素認識部位を導入し、内部の長いオープンリーディングフレーム(+1以外のフレーム)、ならびに安定的であることがまれなステムループ構造を除去するように、他の変化を作成した。これらの変化はすべて、上記で説明した、植物最適化バイアスをかけたコドン組成を保持する制限範囲内で作成した。SnRK2−6タンパク質をコードする植物最適化配列を、SnRK2−6hv5と称し、配列番号2をコードする該配列を、配列番号3として開示する。
【0077】
表5は、植物最適化SnRK2−6hv5コード領域のコドン組成を、植物最適化コドンバイアス表と比較し、これにより、最適化プロセスの結果を示すものである。
【0078】
【表5−1】
【表5−2】
【0079】
デザインを完結させるため、3つのトップ鎖のリーディングフレーム内のすべてに翻訳終止コドンを含有し、Bbs I制限酵素に対する認識配列で始まる5’側の非翻訳配列を、SnRK2−6hv5配列の5’端に付加した。加えて、6つのオープンリーディングフレーム内のすべてに翻訳終止コドンを含有し、SacI制限酵素に対する認識配列で終結する3’側の非翻訳配列を、SnRK2−6hv5配列の3’端に付加した。SnRK2−6hv6と称するこの配列を、配列番号4として開示する。デザインされたSnRK2−6hv6配列の合成は、テキサス州、ヒューストンのPicoScriptに依頼した。
[実施例9]
【0080】
トウモロコシを形質転換するためのSnRK2−6発現ベクターの構築
トウモロコシのSnRK2−6遺伝子を異種発現させるため、そのオープンリーディングフレーム配列を、ヘミコットにおけるコドン使用に従いコドン最適化し、これを、SnRK2−6hvと称した。加えて、「3つのフレーム終止コドン」および「トウモロコシのコンセンサス配列」に対応するヌクレオチド配列を、SnRK2−6hv遺伝子の5’末端に導入し、「6つのフレーム内の終止コドン」を、その3’末端へと導入した。後続のクローニングを容易にするため、2つの制限部位である、BbsIおよびSacIを、該配列の5’端および3’端へと付加した。次いで、全配列を合成したが、これを、以下でさらに詳細に説明する。
【0081】
BbsIおよびSacIで消化した上記の合成断片を、Acc65IおよびSacIで消化したpDAB4005へと挿入した。これにより、トウモロコシのUbi1プロモーター、SnRK2−6hv、およびZmPer5 3’UTRを含有する植物転写単位(PTU)を作製した。NotIで消化することにより、組換えpDAB4005からこのPTUを切り出し、デスティネーションベクターであるpDAB3878へと挿入した。pDAB7702と称し、図12に示す、結果として得られるプラスミドの配向性および完全性は、シーケンシングすることにより判定した。
[実施例10]
【0082】
アグロバクテリウム属およびシロイヌナズナ属の形質転換
形質転換は、WeigelおよびGlazebrook(2002)により説明されている通りに実施した。
【0083】
シロイヌナズナの生育条件
採取した新鮮な種子を、乾燥剤の存在下において、室温で7日間にわたり乾燥させた。種子を、Sigma Chemical Co.(ミズーリ州、セントルイス)から市販されている、0.1%アガロース溶液中に懸濁させた。懸濁させた種子を、4℃で2日間にわたり保管して休眠要件を満たし、種子の同調発芽(層別化)を確保した。
【0084】
Sun Gro Horticulture Inc.(ワシントン州、ベルビュー)から市販されているSunshine Mix LP5を、微粒のバーミキュライトにより覆い、湿潤するまで、ホーグランド液により地下灌漑した。該土壌混合物を、24時間にわたり排水した。層別化された種子を、バーミキュライト上へと播種し、5〜7日間にわたり、KORD Products(カナダ、オンタリオ州、ブラマリー)から市販されている保湿ドームなどの保湿ドームにより覆った。
【0085】
種子を発芽させ、Controlled Environments Limited(カナダ、マニトバ州、ウィニペッグ)から市販されているConviron(CMP4030型およびCMP3244型)内において、約22℃の一定温度下、ならびに約40%〜約50%の範囲内の湿度下で、光強度が約120マイクロモル/m2秒〜約150マイクロモル/m2秒の範囲にある長日条件(16時間の明期/8時間の暗期)下で、植物体を生育させた。まず、ホーグランド液により、その後、DI水により植物体に施水し、土壌を保湿はするが、湿潤はさせないようにする。
【0086】
アグロバクテリウム属の形質転換
WeigelおよびGlazebrook(2002)によるプロトコールを用いて、エレクトロコンピテントのアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)(Z797S株)細胞を調製した。WeigelおよびGlazebrook(2002)による電気穿孔法の変法を用いて、コンピテントのアグロバクテリウム属細胞を形質転換した。50μlのコンピテントアグロバクテリウム属細胞を氷上で解凍し、約10nm〜約25ngのプラスミドpDAB4504を細胞に添加した。DNAと細胞との混合物を、あらかじめ冷却した2mmの電気穿孔用キュベットに添加した。Eppendorf AG(ドイツ、ハンブルグ)から市販されているEppendorf Electoroporator2510を用いて、以下の条件:電圧:2.4kV、パルス長:5ミリ秒で形質転換した。電気穿孔後、1mLのYEP培養液をキュベットに添加し、細胞−YEP懸濁液を、15mlの培養試験管に移した。一定に振とうしている水浴中28℃で4時間にわたり、細胞をインキュベートした。インキュベーション後、Sigma Chemical Co.(ミズーリ州、セントルイス)から市販されている、スペクチノマイシン(100mg/L)およびストレプトマイシン(250mg/L)を含むYEP+寒天を含むプレートに培養物を播種した。28℃で2〜4日間にわたり、プレートをインキュベートした。スペクチノマイシン(100mg/L)およびストレプトマイシン(250mg/L)を含む新鮮なYEP+寒天プレート上においてコロニーを選択し、画線し、約28℃で1〜3日間にわたりインキュベートした。ベクター特異的な制限消化酵素を用いることにより制限消化解析を行い、遺伝子挿入の存在を検証する目的で、コロニーを選択した。製造元の指示書に従い実施される、Qiagen High Speed Maxi Prepsを用いて、選択されたアグロバクテリウム属コロニーから、プラスミドDNAを精製した。アグロバクテリウム属の形質転換で用いたバイナリーベクターに由来するプラスミドDNAを、対照として組み入れた。0.5〜1μgのDNAを用いて、4つの個別の消化反応を行った。約4時間〜約5時間にわたり反応を進め、0.65%アガロースゲル電気泳動によりこれを解析し、臭化エチジウム染色により可視化した。すべての酵素についてのその消化が、プラスミド対照と同一であるコロニーを選択した。
【0087】
シロイヌナズナ属の形質転換
フローラルディップ法を用いて、シロイヌナズナ属を形質転換した。選択されたコロニーを用いて、スペクチノマイシン(100mg/L)およびストレプトマイシン(250mg/L)を含有するYEP培養液による、15mLずつの1または複数の前培養物に接種した。220rpmで一定に振とうしながら、約28℃で一晩にわたり、培養物(複数可)をインキュベートした。各前培養物を用いて、スペクチノマイシン(100mg/L)およびストレプトマイシン(250mg/L)を含有するYEP培養液による500mlの培養物2つずつに接種し、該培養物を、一定に振とうしながら、約28℃で一晩にわたりインキュベートした。次いで、室温(すなわち、約24℃)、約8700×gで約10分間にわたって、細胞をペレット化させ、結果として得られる上清を廃棄した。この細胞ペレットを、1/2倍濃度のムラシゲおよびスクーグ塩ならびにガムボルグのB5ビタミン、10%(w/v)スクロース、0.044μMベンジルアミノプリン(DMSO中に1mg/mlの原液10μl/リットル)、ならびに、Helena Chemical Company(テネシー州、コリアービル)から市販されているSILWET L−77 300μl/リットルを含有する、500mLの浸潤用培地中に静かに再懸濁させた。約5週齢の植物体を、約15秒間にわたり培地内に浸漬し、最新の花序を浸漬したことを確認する。次いで、植物体を横向きに寝かせ、約24時間にわたり覆い(透明または不透明の覆いで)、次いで、水で洗浄し、直立させる。約22℃で16時間の明期/8時間の暗期により、植物体を生育させた。浸漬の約4週間後、種子を採取した。
【0088】
形質転換した植物体の選択
説明される通り、T.O.Plastics Inc.(ミネソタ州、クリアウォーター)から市販されている、10.5インチ×21インチの発芽用トレー上に、T1種子を播種し、概説される条件下でこれを生育させた。播種後5〜6日間にわたり、ドームを取り外した。播種の5日後において、ならびに、播種の10日後に再度、同胞体に、DeVilbiss(イリノイ州、グレンデールハイツ)製圧縮空気散布チップを用いて、トレー1枚当たり約10mlの散布容量(703L/ha)で、Bayer Cropscienceから市販されているグルホシネート除草剤の0.20%溶液(脱イオン化水中20μl/10mL)を散布して、1回の適用当たり280g/haの有効散布率でグルホシネートを送達した。リバティーの調製量は、以下の通りに計算した:(703L/haの散布量=280GPA)。(280gの有効成分/ha)×(1ha/703L)×(1L/グルホシネートの有効成分200g)=0.20%溶液(すなわち、20μl/10ml)。各トレーにつき10mLずつの溶液を、20mLのシンチレーションバイアル内にピペットで注入し、散布した。散布は、水平および垂直の適用パターンを用いて送達した。各散布の後、除草剤名、適用率、および適用日を記した散布ラベルを、各選択トレーに添付した。2回目の散布の4〜7日後に、除草剤抵抗性植物体を同定し、Sunshine mix LP5により調製したポット中に移植した。移植された植物体を、上述の生育条件でConviron内に入れた。
[実施例11]
【0089】
スーパーバイナリーベクター用のアグロバクテリウム属の形質転換
形質転換用に調製するため、2つの異なる大腸菌(E. coli)株(pSB11前駆体(この場合、pDAB7702またはpDAB3878)およびpRK2013を含有するDH5α)を、37℃で一晩にわたり増殖させた。DH5α菌株は、LB培地(500mlの脱イオン化水中に5gのBactoトリプトン、2.5gのBacto酵母抽出物、5gのNaCl、7.5gの寒天)+スペクチノマイシン(100μg/ml)を含有するペトリプレート上で増殖させ、pRK2013菌株は、LB+カナマイシン(50μg/ml)培地を含有するペトリプレート上で増殖させた。インキュベーション後、プレートを約4℃で静置し、アグロバクテリウム属が適用可能となるまで待機した。
【0090】
pSB1を含有するアグロバクテリウム属LBA4404株(日本たばこ産業株式会社製)を、ストレプトマイシン(250μg/ml)およびテトラサイクリン(10μg/ml)を含む、AB培地(900mlの脱イオン化水中に5gのグルコース、15gの寒天)を含有するペトリプレート上で、28℃で3日間にわたり増殖させた。アグロバクテリウム属が準備できた後、抗生剤を含まないLBプレート上において、各細菌につき1つずつの接種用ループ(pDAB7702またはpDAB3878、pRK2013、およびLBA4404+pSB1)を混合することにより、形質転換プレートを準備した。このプレートを、28℃で一晩にわたりインキュベートした。インキュベーション後、0.9%のNaCl(500mlの脱イオン化水中に4.5gのNaCl)溶液1mlを交配プレートに添加し、細胞を溶液中に混合した。次いで、混合物を、Becton Dickinson and Co.(ニュージャージー州、フランクリンレーク)から市販されているFalcon2059など、滅菌表示つき試験管中に移した。
【0091】
1mlの0.9%NaClをプレートに添加し、残りの細胞を溶液中に混合した。次いで、この混合物を、上記と同じ表示付き試験管へと移した。100μlの細菌「ストック」液を、表示つきFalcon2059試験管に入れ、次いで、900μlの0.9%NaClを添加することにより、101〜104個の範囲にある細菌細胞の希釈系列を作製した。次いで、選択を確認するため、100μlの希釈液を、別個のAB+スペクチノマイシン(100μg/ml)/ストレプトマイシン(250μg/ml)/テトラサイクリン(10μg/ml)培地プレートに入れ、28℃で4日間にわたりインキュベートした。次いで、コロニーを、AB+スペクチノマイシン/ストレプトマイシン/テトラサイクリンプレート、およびラクトース培地(500mlのDI H2O中に0.5gの酵母抽出物、5gのD−ラクトース一水和物、7.5gの寒天)プレート上に「パッチ」で植え、インキュベーター内に入れて28℃で2日間にわたり静置した。ベネディクト液(500mlの脱イオン化水中に、86.5gの一塩基性クエン酸ナトリウム、50gのNa2CO3、9gのCuSO45水和物)でプレートを満たし、アグロバクテリウム属コロニーを黄色に変色させることにより、ラクトース培地上におけるコロニーに対するケト−ラクトース試験を実施した。次いで、黄色となった(アグロバクテリウム属について陽性の)すべてのコロニーをパッチプレートから採取し、28℃で2日間にわたり、AB+スペクチノマイシン/ストレプトマイシン/テトラサイクリン培地プレート上に画線して、単一コロニーを単離した。AB+スペクチノマイシン/ストレプトマイシン/テトラサイクリン培地上において第2ラウンドの単一コロニー単離を行うため、プレート1枚につき1つのコロニーを採取し、これを反復して全3ラウンドの単一コロニー単離を行った。単離後、プレート1枚につき1つずつのコロニーを採取し、これを用いて、スペクチノマイシン(100μg/ml)、ストレプトマイシン(250μg/ml)、およびテトラサイクリン(10μg/ml)を含有する、別個のYEP(500mlの脱イオン化水中に5gの酵母抽出物、5gのペプトン、2.5gのNaCl)液体培養物3mlに接種した。次いで、200rpmのドラム式インキュベーター内28℃で一晩にわたり、これらの液体培養物を増殖させた。
【0092】
次いで、2mlの接種培養物を、75mlのYEP+スペクチノマイシン/ストレプトマイシン/テトラサイクリン培養物を含有する、250mlのディスポーザブルフラスコへと移すことにより、検証培養物とした。次いで、これらを、200rpmで振とうしながら、28℃で一晩にわたり増殖させた。次いで、Qiagen(登録商標)プロトコールに従い、細菌培養物上において、Qiagen(カリフォルニア州、バレンシア)から市販されているHi−Speed maxi−prepsを実施し、プラスミドDNAを作製した。次いで、500μlの溶出DNAを、1.5mlの表示つきの清浄な試験管2本へと移し、Edge BioSystems(メリーランド州、ゲイサーズバーグ)から市販されているQuick−Precip Plus(登録商標)プロトコールを実施した。沈殿させた後、pH8.0の10mMトリスHClと1mMエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)との混合物を含めた、総容量100μlのTE中に、DNAを再懸濁させた。5μlのプラスミドDNAを、Invitrogen(カリフォルニア州、カールスバード)から市販されている化学的にコンピテントなDH5α大腸菌(E. coli)細胞50μlに添加し、これと共に静かに混合した。
【0093】
次いで、この混合物を、冷却した表示つきFalcon2059試験管へと移した。反応物を氷上において約30分間にわたりインキュベートし、次いで、約45秒間にわたり温度を約42℃まで上昇させることにより、「熱ショック」を与えた。反応物を氷中に戻して約2分間にわたり静置し、次いで、Invitrogen(カリフォルニア州、カールスバード)から市販されているSOC培地450μlを試験管に添加した。次いで、反応物を、200rpmで振とうしながら、37℃で1時間にわたりインキュベートした。次いで、細胞を、LB+スペクチノマイシン/ストレプトマイシン/テトラサイクリン(50μlおよび100μlずつ用いる)培地プレートに入れ、37℃で一晩にわたりインキュベートした。プレート1枚につき3つまたは4つのコロニーを採取し、これを用いて、スペクチノマイシン(100μg/ml)、ストレプトマイシン(250μg/ml)、およびテトラサイクリン(10μg/ml)を含有する、別個のLB(500mlのDI H2O中に5gのBactoトリプトン、2.5gのBacto酵母抽出物、5gのNaCl)液体培養物3mlに接種した。次いで、200rpmのドラム式インキュベーター内37℃で一晩にわたり、これらの液体培養物を増殖させた。次いで、Qiagen(登録商標)プロトコールに従い、細菌培養物上においてmini−preps(カリフォルニア州、バレンシア、Qiagen製)を実施し、プラスミドDNAを作製した。次いで、37℃で1時間にわたり、HindIII酵素およびSalI酵素(マサチューセッツ州、ビバリー、New England Biolabs製)を用いる個別の反応により、5μlのプラスミドDNAを消化した後、1%アガロースゲル(メイン州、ロックランド、Camrex Bio Science Rocland,Inc)上で泳動させた。次いで、適正なバンド形成パターンを示す培養物を用いて、500μlの培養物を、500μlの滅菌グリセロール(ミズーリ州、セントルイス、Sigma Chemical Co.)に添加し、反転させて混合することにより、グリセロール原液を作製した。次いで、混合物をドライアイス上で凍結させ、必要となるまで−80℃で保管した。
[実施例12]
【0094】
アグロバクテリウム属を介する、トウモロコシ植物材料の形質転換
95%Metro−Mix 360無土壌生育培地(ワシントン州、ベルビュー、Sun Gro Horticulture製)および5%粘土/ローム土壌による混合物を含有する、5ガロン(19リットル)のポット内に、High II F1交配(Armstrongら、1991)による種子を播いた。高圧ハロゲン化ナトリウムランプおよび高圧ハロゲン化金属ランプの組合せを用いて、16時間:8時間の明暗期を伴う温室内において植物体を生育させた。形質転換用の未成熟F2胚を得るため、調節同胞受粉を実施した。受粉の8〜10日後に未成熟胚を単離したが、このとき、胚のサイズは、約1.0〜2.0mmであった。
【0095】
感染および共培養
トウモロコシの穂を、液体石鹸で洗浄し、2分間にわたり70%エタノール中に浸漬し、次いで、30分間にわたり20%の市販漂白剤(0.1%次亜塩素酸ナトリウム)中に浸漬した後、滅菌水ですすぐことにより表面殺菌した。28℃で2〜3日間にわたり、100mg/Lのスペクチノマイシン、10mg/Lのテトラサイクリン、および250mg/Lのストレプトマイシンを含有するYEP培地(40g/Lのペプトン、40g/Lの酵母抽出物、20g/LのNaCl、15g/LのBacto寒天)上で増殖させた1〜2ループの細菌を、100μMのアセトシリンゴンを含有する5mLの液体感染培地(LS塩基性培地(LinsmaierおよびSkoog、1965)、N6ビタミン培地(Chuら、1965)、1.5mg/Lの2,4−D、68.5g/Lのスクロース、36.0g/Lのグルコース、6mMのL−プロリン、pH5.2)中へと移すことにより、アグロバクテリウム属懸濁液を調製した。均一な懸濁が達成されるまで、溶液をボルテックスし、紫色のフィルターを用いるクレット−サマーソンによる比色計を用いて、200クレット単位の最終密度へと濃度を調整した。2mLの感染培地を含有するマイクロ遠心管中に、未成熟胚を直接単離した。3〜5秒間にわたり遠心管をボルテックスにかけ、次いで、液体培地を除去し、新鮮な培地に置き換えて、再度ボルテックスにかけた。培地を三回除去し、密度が200クレット単位のアグロバクテリウム属液1mLで置き換えた。アグロバクテリウム属および胚による溶液を、最高速度で30秒間にわたりボルテックスにかけ、次いで、室温で5分間にわたりインキュベートした後、共培養培地(LS塩基性培地、N6ビタミン培地、1.5mg/Lの2,4−D、30.0g/Lのスクロース、6mMのL−プロリン、0.85mg/LのAgNO3、100μMのアセトシリンゴン、3.0g/Lのゲランガム培地、pH5.8)へと移し、25℃の暗所条件下で5日間にわたり静置した。
【0096】
共培養後、胚に2ステップの選択スキームを経過させ、その後、約8週間をかけて、形質転換された単離物を得た。選択では、LSベースの培地(LS塩基性培地、N6ビタミン培地、1.5mg/Lの2,4−D、0.5g/LのMES、30.0g/Lのスクロース、6mMのL−プロリン、1.0mg/LのAgNO3、250mg/Lのセフォタキシム、2.5g/Lのゲランガム培地、pH5.7)を、複数の選択レベルのR−ハロキシホップ酸と共に用いた。胚を、100nMのR−ハロキシホップを含有する選択培地へと移して14日間にわたり静置し、次いで、胚形成性単離物が得られるまで、2週間間隔でさらに約3回にわたり、500nM R−ハロキシホップへと移した。2週間間隔で新鮮な選択培地へと移すことにより回収されたすべての単離物を一緒にして、再生およびさらなる解析に用いた。
【0097】
再生および種子の生成
再生のためには、培養物を、「28」誘導培地(MS塩培地およびビタミン培地、30g/Lのスクロース、5mg/Lのベンジルアミノプリン、0.25mg/Lの2,4−D、100nMのR−ハロキシホップ酸、250mg/Lのセフォタキシム、2.5g/Lのゲランガム培地、pH5.7)へと移し、低光度条件(14μEm−2秒−1)下で1週間にわたり静置し、次いで、高光度条件(約89μEm−2秒−1)下で1週間にわたり静置した。その後、組織を、「36」再生培地(植物生育制御物質を欠くことを除き、誘導培地と同じ)へと移した。小植物体を3〜5cmの長さまで生育させたら、これらを、SHGA培地(SchenkおよびHildebrandtの塩およびビタミン(1972))、1.0g/Lのミオイノシトール、10g/Lのスクロース、および2.0g/Lのゲランガム、pH5.8)を含有するガラス製培養試験管へと移し、芽および根をさらに生育および成長させた。植物体を、本明細書の前出で説明した混合物と同じ土壌混合物へと移植し、温室内で開花するまで生育させた。調節受粉を実施して、種子を生成させた。
[実施例13]
【0098】
SnRK2−6トランスジェニックシロイヌナズナ属の分子的特徴づけ
SnRK2−6の転写単位を保有するトランスジェニックシロイヌナズナ属植物体をスクリーニングするため、それぞれ、SnRK2−6のT−DNA左側境界近傍の配列、ならびにSnRK2−6の3’端配列によりデザインしたプライマー対である5’−TGA GGT CTA CAG GCC AAA TTC GCT CTT AGC−3’ および5’−ATC ACA TTG CGT ACA CAA TCT CT−3’により、PCRを実施した。T2トランスジェニック植物体の遺伝的分離は、PATインベーダーアッセイおよび除草剤散布を用いて決定した。3:1の分離に適合するトランスジェニック系統は、単一の挿入を保有する可能性が極めて高いので、これらの系統だけを、生化学的研究および生理学的研究のために選択した。
[実施例14]
【0099】
SnRK2−6hvトランスジェニックトウモロコシの分子的特徴づけ
SnRK2−6hvの転写単位を保有するトランスジェニックトウモロコシ植物体をスクリーニングするため、それぞれ、ZmUbi1プロモーターおよびZmPer5 3’UTRによりデザインしたプライマー対である5’−GTG ACC CGG TCG TGC CCC TCT CTA GA−3’および5’−CCG TGG ATA TAT GCC GTG AAC AAT TG−3’により、PCRを実施した。
[実施例15]
【0100】
ウェスタンブロット解析
ポリクローナル抗体の調製
2つのポリペプチドである「CHRDLKLENTLLDGSPAPRLKICDFGYSKS」(30アミノ酸)および「MNDNTMTTQFDESDQPGQSIEE」(22アミノ酸)のそれぞれに対して、2つの異なる種類のポリクローナル抗体を調製した。第1のポリペプチドは、SnRK2−6タンパク質のキナーゼドメイン内の137〜166のアミノ酸位置にあり、第2のペプチドは、SnRK2−6タンパク質の制御ドメイン内の286〜307のアミノ酸位置にある。これらの2つのポリペプチドを合成し、キャリアタンパク質としてのスカシガイヘモシアニン(KLH)にコンジュゲートさせた。結果として得られる2つの異なるペプチド−KLHコンジュゲートを用いて、ウサギを免疫化し、2つの異なる種類のポリクローナル抗体を生成させた。これらの抗体を精製するため、ペプチドをウシ血清アルブミン(BSA)にコンジュゲートさせ、これらのコンジュゲートを用いて、アフィニティークロマトグラフィーを行った。
【0101】
試料の調製
SNF1キナーゼを形質転換した植物体および対照植物体に由来するトウモロコシの葉を、ドライアイスと共に試料採取し、液体窒素と共に、極微粉へとすりつぶした。抽出緩衝液(pH8.0の50mMトリス、50mM NaCl、5mM EDTA、5mM DTT、0.05% Triton X−100)1mL中に約200mgの葉粉末を添加することにより、SNF1キナーゼを含めたタンパク質を抽出した。Bio−Radタンパク質アッセイにより、抽出物のタンパク質濃度を測定したところ、3.2〜3.8mg/mLまで異なっていた。
【0102】
ウェスタンブロット
タンパク質は、MOPSランニングバッファーと共に、Invitrogen、型番NP0301Box(カリフォルニア州、カールスバード)から市販されているNupage 10%ビス−トリスゲルを用いるSDS−PAGEにより分離した。次いで、それらを、トリス/グリシン緩衝液と共に、ニトロセルロース膜上へと移し、100Vで1時間にわたり泳動させた。3%脱脂粉乳を含有するPBST緩衝液中において、室温(RT)で1時間にわたり膜をブロッキングした。ミルク溶液を捨て、ウサギ抗SnRK2−6ポリクローナル抗体を含有する新鮮な緩衝液を添加した。RTで1時間にわたり膜をインキュベートし、次いで、PBSTにより3回にわたり洗浄した。洗浄後、ヤギ抗ウサギIgG−西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートを含有する、新鮮なPBST/ミルク溶液を、膜へと添加した。既に説明した通り、RTで1時間にわたりインキュベートした後に、膜を洗浄した。現像するために、PBST液から膜を取り出し、調製したばかりのECL検出試薬(PIERCE製;検出試薬1:過酸化物溶液;型番1859701、ならびに検出試薬2:ルミノール増強剤溶液;型番1859698)中に浸漬した。化学発光フィルム(CL−Xposureフィルム;PIERCE製、型番31460)を、処理された膜に曝露し、Konica SR−Xフィルム現像剤により現像した。
[実施例16]
【0103】
SnRK2−6の異種発現は、トウモロコシの乾燥耐性を増大させる
SnRK2−6キナーゼが、異種染色体バックグラウンドにおける生物学的プロセスに影響を及ぼしうるかどうかを調べるため、本発明者らは、トウモロコシにおいてSnRK2−6遺伝子を発現させた。その機能を確定するため、ヘミコットにおけるコドン使用により、遺伝子配列のコドンを最適化し、次いで、トウモロコシUbi1プロモーターの制御下において、これをHi IIトウモロコシへと導入した。トウモロコシのトランスジェニック系統におけるSnRK2−6の発現は、SnRK2−6ペプチドに対するポリクローナル抗体に基づくウェスタンブロットを用いて決定した。発現したタンパク質は、予測されるサイズ(42kD)を有し、大半の系統において、ウェスタンブロットにより容易に検出可能なレベルを示した。対照としての、非形質転換体であるHi II植物体が、検出可能なレベルのタンパク質を42kDで示すことはなかった(データは示さない)。
【0104】
T0 Hi IIトランスジェニックのトウモロコシ植物体を、近親交配系統である5XH751と逆交配させて、T1種子を生成させた。結果として得られるT1分離集団をPCRによりスクリーニングして、ヌルの分離個体と、導入遺伝子を保有する植物体とを分離した。乾燥耐性について調べる目的でデザインした実験では、同じ集団から分離されたトランスジェニック植物体のゲノムバックグラウンドが、互いに極めて類似するため、ヌルの分離個体を、これらのトランスジェニック植物体の対照として用いた。
【0105】
ゲノムバックグラウンドの差違から生じる効果を取り除くため、8つの個別のトランスジェニック系統を用いて、トウモロコシの乾燥耐性における導入遺伝子の役割を評価した。転写速度との関連で、ヌルの分離個体およびSnRK2−6トランスジェニック植物体の切断葉における水分喪失量を、葉の切断時に測定した。図8および9に示す通り、トランスジェニック植物体は、ヌルの分離個体と比較して、水分喪失速度が低下した。
【0106】
目視観察によれば、トランスジェニックのトウモロコシ植物体は、乾燥ストレスに対する耐性が大きいと考えられた。30日齢のトウモロコシ植物体に、6日間にわたり灌漑を施さずにおいたところ、ヌルの分離個体は、トランスジェニックの植物体より深刻な立ち枯れを示した。加えて、トランスジェニックの植物体は、ヌルの分離個体よりはるかに迅速に水分を再吸収した。表6に示す通り、その前の9日間にわたり植物体に灌漑を施さずにおいた再施水の8日後において、64日齢のトランスジェニックトウモロコシ植物体上部のバイオマスが、ヌルの分離個体の112%〜150%であったことは、このことと符合する。表6では、トランスジェニック植物体のバイオマスを、100として定義するヌルの分離個体に対する百分率として表わす。
【0107】
【表6】
【0108】
テキサス州、ハーフウェイで実施された圃場試験では、登熟期における乾燥条件下、ならびに十分な施水条件下において、3つの個別のトランスジェニックトウモロコシイベントが、SnRK2−6導入遺伝子を有さない(ヌルの)それらの同胞体と比較して、穀粒収量を増大させた(表7)。
【0109】
【表7】
【0110】
まとめると、上記の結果は、SnRK2−6の構成的発現が、トウモロコシの乾燥耐性を増大させうることを裏付ける。SnRK2−6の構成的発現は、トウモロコシ植物体を乾燥に対して十分に保護することが可能であり、これにより、乾燥条件下における収量喪失を軽減しうる。
[実施例16]
【0111】
ストレス耐性遺伝子
植物体にストレス耐性を付与する1または複数の遺伝子と組み合わせて、SnRK2−6を植物体に導入することができる。適切なストレス耐性遺伝子の例を、表8に示す。
【0112】
【表8】
[実施例17]
【0113】
乾燥耐性遺伝子
植物体に乾燥耐性を付与する1または複数の遺伝子と組み合わせて、SnRK2−6を植物体に導入することができる。適切な乾燥耐性遺伝子の例を、表9に示す。
【0114】
【表9−1】
【表9−2】
【0115】
本発明を、特定の実施例の実施形態において説明してきたが、本発明は、本開示の精神および範囲内において、さらに改変することができる。したがって、本出願は、その一般原則を用いる、本発明の任意の変化形、使用、または適応を対象とすることを意図する。さらに、本出願は、本発明が関与し、付属の特許請求の範囲の限度内に収まる、当技術分野における既知または一般的な実践の範囲内に含められる、本開示からの逸脱を対象とすることを意図する。
【0116】
本明細書で引用され、論じられる刊行物、特許、および特許出願を含めたすべての参考文献は、それらが、本特許出願の出願日以前に開示されたことだけのために示される。本明細書におけるいずれの内容も、本発明者らが、先行発明のためにそのような開示に先行する権利を有さないことの承認としては解釈されないものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物体、植物種子、またはその後代を作製するプロセスであって、
Snf1関連タンパク質キナーゼタンパク質をコードする核酸配列により、植物細胞を形質転換するステップと、
植物体が種子をつけるまで、前記植物細胞から植物体を生育させるステップと、
前記植物体から種子を採取するステップと
を含むプロセス。
【請求項2】
Snf1関連タンパク質キナーゼタンパク質をコードする核酸配列が前記植物細胞のゲノム中に組み込まれる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記植物細胞のゲノム中に組み込まれたSnf1関連タンパク質キナーゼタンパク質をコードする核酸配列を有する種子を選択するステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
Snf1関連タンパク質キナーゼタンパク質をコードする核酸配列が、配列番号1または配列番号3の配列を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
Snf1関連タンパク質キナーゼタンパク質が、SnRK2−6を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
Snf1関連タンパク質キナーゼタンパク質をコードする核酸配列が、配列番号2または配列番号4のペプチドをコードする核酸配列を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
請求項1に記載のプロセスにより作製される植物体から採取される種子。
【請求項8】
土壌中に前記種子を植え付けるステップと、
前記種子から第2の植物体を生育させるステップと、
前記第2の植物体から種子を採取するステップと
をさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
Snf1関連タンパク質キナーゼタンパク質をコードする核酸配列により、植物細胞を形質転換するステップが、
Snf1関連タンパク質キナーゼタンパク質をコードする核酸配列により、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)細胞を形質転換するステップと、
前記アグロバクテリウム属細胞により、前記植物細胞を形質転換するステップと
を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
植物細胞のゲノム中に組み込まれたSnf1関連タンパク質キナーゼタンパク質をコードする核酸配列を有する種子を選択するステップが、
種子からゲノム核酸を単離するステップと、
前記種子から単離されたゲノム核酸から、Snf1関連タンパク質キナーゼタンパク質をコードする核酸配列を増幅するステップと
を含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項11】
植物体が、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、ルリジサ(Borago)属種、キャノーラ、トウゴマ(Ricinus)属種、カカオ(Theobroma)属種、トウモロコシ(Zea)属種、ワタ(Gossypium)属種、ハマナ(Crambe)属種、タバコソウ(Cuphea)属種、アマ(Linum)属種、レスケレーラ(Lesquerella)属種、リムナンテス(Limnanthes)属種、リノーラ、ノウゼンハレン(Tropaeolum)属種、マツヨイグサ(Oenothera)属種、オリーブ(Olea)属種、アブラヤシ(Elaeis)属種、ラッカセイ(Arachis)属種、ナタネ、ベニバナ(Carthamus)属種、ダイズ(Glycine)属種、ダイズ(Soja)亜属種、ヒマワリ(Helianthus)属種、タバコ(Nicotiana)属種、ショウジョウハグマ(Vernonia)属種、コムギ(Triticum)属種、オオムギ(Hordeum)属種、イネ(Oryza)属種、カラスムギ(Avena)属種、モロコシ(Sorghum)属種、ライムギ(Secale)属種、アブラナ(Brassicaceae)科、およびイネ科(Gramineae)植物の他のメンバーからなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
採取された種子から油を抽出するステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
そのゲノム中に組み込まれたSnf1関連タンパク質キナーゼタンパク質をコードする核酸配列を有する植物体、植物種子、またはその後代。
【請求項14】
植物体、植物体の貯蔵器官、または植物種子の油含量、糖含量、またはデンプン含量を変化させる方法であって、
センスまたはアンチセンス核酸構築物を植物体形質転換ベクター中に導入して、改変植物体形質転換ベクターを作製するステップであって、前記センスまたはアンチセンス核酸構築物が、シロイヌナズナ属のSnf1関連タンパク質キナーゼ(SnRK)タンパク質をコードする単離核酸配列、精製核酸配列、または組換え核酸配列を含むステップと、
前記改変植物体形質転換ベクターにより、前記植物体、植物体の貯蔵器官、または植物種子のゲノムを形質転換するステップと、
前記植物体、植物体の貯蔵器官、または植物種子を生育させ、前記油または生体高分子を抽出するステップと
を含む方法。
【請求項15】
前記ゲノムが、請求項14に記載のベクターにより形質転換されていることを特徴とする、遺伝子形質転換植物体。
【請求項16】
請求項14に記載のベクターにより形質転換されていることを特徴とする、遺伝子形質転換植物種子。
【請求項17】
同じ遺伝子型の遺伝子改変されていない植物体と比較して、呼吸速度の変化を示すことを特徴とする、請求項15に記載の植物体。
【請求項18】
同じ遺伝子型の遺伝子改変されていない植物体と比較して、種子油含量の変化を示すことを特徴とする、請求項15に記載の植物体。
【請求項19】
同じ遺伝子型の遺伝子改変されていない植物体と比較して、脂肪酸組成の変化を示すことを特徴とする、請求項15に記載の植物体。
【請求項20】
同じ遺伝子型の遺伝子改変されていない植物体と比較して、バイオマスの増大を示すことを特徴とする、請求項15に記載の植物体。
【請求項21】
同じ遺伝子型の遺伝子改変されていない植物体と比較して、生体高分子を蓄積する能力の増強を示すことを特徴とする、請求項15に記載の植物体。
【請求項22】
同じ遺伝子型の遺伝子改変されていない植物体と比較して、炭水化物含量の変化を示すことを特徴とする、請求項15に記載の植物体。
【請求項23】
同じ遺伝子型の遺伝子改変されていない植物体と比較して、スクロース含量およびデンプン含量の変化を示すことを特徴とする、請求項22に記載の植物体。
【請求項24】
同じ遺伝子型の遺伝子改変されていない植物体と比較して、呼吸速度の変化を示すことを特徴とする、請求項16に記載の植物種子。
【請求項25】
同じ遺伝子型の遺伝子改変されていない植物体と比較して、種子油含量の変化を示すことを特徴とする、請求項16に記載の植物種子。
【請求項26】
同じ遺伝子型の遺伝子改変されていない植物体と比較して、脂肪酸組成の変化を示す植物体をもたらすことを特徴とする、請求項16に記載の植物種子。
【請求項27】
同じ遺伝子型の遺伝子改変されていない植物体と比較して、バイオマスの増大を示す植物体をもたらすことを特徴とする、請求項16に記載の植物種子。
【請求項28】
同じ遺伝子型の遺伝子改変されていない植物体と比較して、生体高分子を蓄積する能力の増強を示す植物体をもたらすことを特徴とする、請求項16に記載の植物種子。
【請求項29】
植物体におけるSnf1関連タンパク質キナーゼタンパク質レベルを調節する方法であって、
プロモーターに作動可能に連結された、植物体Snf1関連タンパク質キナーゼポリヌクレオチドにより、植物細胞を安定に形質転換するステップであって、前記ポリヌクレオチドが、センス配向またはアンチセンス配向であるステップと、
前記植物細胞を、植物生育条件下において生育させて、植物体におけるSnf1関連タンパク質キナーゼタンパク質を調節するのに十分な時間にわたり前記ポリヌクレオチドを発現することが可能な再生植物体をもたらすステップと
を含む方法。
【請求項30】
植物体のSnf1関連タンパク質キナーゼポリヌクレオチドにより、植物細胞を安定に形質転換するステップが、配列番号1および配列番号3からなる群から選択されるポリヌクレオチドにより、植物細胞を安定に形質転換するステップを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
トランスジェニック種子から油を抽出するプロセスであって、
Snf1関連タンパク質キナーゼタンパク質をコードする手段により、植物細胞を形質転換するステップと、
植物体が種子をつけるまで、前記植物細胞から植物体を生育させるステップと、
前記植物体から種子を採取するステップと、
採取された種子から油を抽出するステップと
を含むプロセス。
【請求項32】
Snf1関連タンパク質キナーゼタンパク質をコードする手段が、配列番号2および配列番号3をコードする核酸配列からなる群から選択される、請求項31に記載のプロセス。
【請求項33】
請求項31に記載のプロセスにより生成される油。
【請求項34】
植物細胞を形質転換するためのベクターであって、配列番号1、もしくは配列番号1の一部、または配列番号1と実質的に相同な配列のデオキシリボ核酸配列を含有することを特徴とするベクター。
【請求項35】
前記配列が、前記ベクター内にセンス配向で存在する、請求項34に記載のベクター。
【請求項36】
植物細胞を形質転換するためのベクターであって、配列番号3、もしくは配列番号3の一部、または配列番号3と実質的に相同な配列のデオキシリボ核酸配列を含有することを特徴とするベクター。
【請求項37】
前記配列が、前記ベクター内にアンチセンス配向で存在する、請求項36に記載のベクター。
【請求項38】
プラスミドpSnRK2−6cDNA。
【請求項39】
プラスミドpSnRK2−6遺伝子。
【請求項40】
配列番号1もしくは配列番号3、または配列番号1もしくは配列番号3の一部、あるいは配列番号1もしくは配列番号3と実質的に相同な配列の導入ヌクレオチド配列を含有することを特徴とするゲノムを有する植物体。
【請求項41】
配列番号1もしくは配列番号3、または配列番号1もしくは配列番号3の一部、あるいは配列番号1もしくは配列番号3と実質的に相同な配列の導入ヌクレオチド配列を含有することを特徴とするゲノムを有する植物種子。
【請求項42】
トランスジェニック植物体のゲノム中にヌクレオチド配列を導入することにより前記植物体を作製する方法であって、前記ゲノム中に導入される前記ヌクレオチド配列が、配列番号1もしくは配列番号3、または配列番号1もしくは配列番号3の一部、あるいは配列番号1もしくは配列番号3、または配列番号1もしくは配列番号3の一部と実質的に相同な配列を包含することを特徴とする方法。
【請求項43】
前記植物体が、シロイヌナズナ、トウモロコシ(Zea mays)、ルリジサ(Borago属種)、キャノーラ、トウゴマ(Ricinus communis)、カカオ豆(Theobroma cacao)、ワタ(Gossypium属種)、ハマナ(Crambe)属種、タバコソウ(Cuphea)属種、アマ(Linum属種)、レスケレーラ(Lesquerella)およびリムナンテス(Limnanthes)属種、リノーラ、ノウゼンハレン(Tropaeolum属種)、マツヨイグサ(Oenothera)属種、オリーブ(Olea属種)、アブラヤシ(Elaeis属種)、ラッカセイ(Arachis属種)、ナタネ、ベニバナ(Carthamus属種)、ダイズ(Glycine属種およびSoja亜属種)、ヒマワリ(Helianthus属種)、タバコ(Nicotiana属種)、ショウジョウハグマ(Vernonia)属種、コムギ(Triticum属種)、オオムギ(Hordeum属種)、イネ(Oryza属種)、カラスムギ(Avena属種)、モロコシ(Sorghum属種)、ライムギ(Secale属種)、ならびにイネ(Gramineae)科の他のメンバーからなる群から選択されることを特徴とする、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
センスまたはアンチセンス核酸構築物を、植物体形質転換ベクター中に導入し、前記ベクターを用いて植物体または植物種子のゲノムを形質転換し、次いで、前記植物体または植物種子を生育させ、前記植物種子から油を抽出することにより、前記植物体の油含量、脂肪酸組成、糖/デンプン/炭水化物レベル、または種子収量を変化させる方法であって、前記核酸配列が、配列番号1もしくは配列番号3、または配列番号1もしくは配列番号3の一部、あるいは配列番号1もしくは配列番号3と実質的に相同な配列であることを特徴とする方法。
【請求項45】
植物体、植物種子、または植物体の後代からなる群から選択される植物材料であって、プロモーターと機能的に関連している、植物材料の油含量を改変するためのSnf1関連タンパク質キナーゼ手段を含むベクターによりさらに形質転換されている植物材料。
【請求項46】
Snf1関連タンパク質キナーゼ手段が、核酸配列である、請求項45に記載の植物材料。
【請求項47】
プロモーターが、CsVMVである、請求項45に記載の植物材料。
【請求項48】
前記プロモーターが、天然プロモーターである、請求項45に記載の植物材料。
【請求項49】
前記プロモーターが、Ubi1プロモーターである、請求項45に記載の植物材料。
【請求項50】
前記植物材料が、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、ルリジサ(Borago)属種、キャノーラ、トウゴマ(Ricinus)属種、カカオ(Theobroma)属種、トウモロコシ(Zea)属種、ワタ(Gossypium)属種、ハマナ(Crambe)属種、タバコソウ(Cuphea)属種、アマ(Linum)属種、レスケレーラ(Lesquerella)属種、リムナンテス(Limnanthes)属種、リノーラ、ノウゼンハレン(Tropaeolum)属種、マツヨイグサ(Oenothera)属種、オリーブ(Olea)属種、アブラヤシ(Elaeis)属種、ラッカセイ(Arachis)属種、ナタネ、ベニバナ(Carthamus)属種、ダイズ(Glycine)属種、ダイズ(Soja)亜属種、ヒマワリ(Helianthus)属種、タバコ(Nicotiana)属種、ショウジョウハグマ(Vernonia)属種、コムギ(Triticum)属種、オオムギ(Hordeum)属種、イネ(Oryza)属種、カラスムギ(Avena)属種、モロコシ(Sorghum)属種、ライムギ(Secale)属種、アブラナ(Brassicaceae)科、ならびにイネ科(Gramineae)植物の他のメンバーからなる群から選択される、請求項45に記載の植物材料。
【請求項51】
植物体の乾燥耐性を改変する方法であって、
Snf1関連タンパク質キナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、配列番号1および配列番号3からなる群から選択される核酸配列を含む核酸構築物を、植物体形質転換ベクター中に導入するステップと、
前記植物体形質転換ベクターにより、植物体または植物種子のゲノムを形質転換するステップと、
前記核酸配列を発現させるステップと、
前記植物体または植物種子を生育させるステップと、
同一の条件下で生育させた植物体と同じ遺伝子型であるが前記導入核酸配列を有さない、統計学的に有意な数の植物体の平均乾燥耐性と比較して、乾燥耐性の変化を有する形質転換植物体を選択するステップと
を含む方法。
【請求項52】
植物体の根のバイオマスを改変する方法であって、
Snf1関連タンパク質キナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、配列番号1および配列番号3からなる群から選択される核酸配列を含む核酸構築物を、植物体形質転換ベクター中に導入するステップと、
前記植物体形質転換ベクターにより、植物体または植物種子のゲノムを形質転換するステップと、
前記核酸配列を発現させるステップと、
前記植物体または植物種子を生育させるステップと、
同一の条件下で生育させた植物体と同じ遺伝子型であるが導入核酸配列は有さない、統計学的に有意な数の植物体の根の平均バイオマスと比較して、根のバイオマスの変化を有する形質転換植物体を選択するステップと
を含む方法。
【請求項53】
植物体、植物種子、または後代における水分喪失に対する抵抗性、乾燥耐性、炭素同化量、植物体の生育および成長、脂肪酸バイオアセンブリー、または根の生育を向上させる、1または複数のさらなる異種遺伝子または改変遺伝子を含む、請求項13に記載の植物体、植物種子、またはその後代。
【請求項1】
植物体、植物種子、またはその後代を作製するプロセスであって、
Snf1関連タンパク質キナーゼタンパク質をコードする核酸配列により、植物細胞を形質転換するステップと、
植物体が種子をつけるまで、前記植物細胞から植物体を生育させるステップと、
前記植物体から種子を採取するステップと
を含むプロセス。
【請求項2】
Snf1関連タンパク質キナーゼタンパク質をコードする核酸配列が前記植物細胞のゲノム中に組み込まれる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記植物細胞のゲノム中に組み込まれたSnf1関連タンパク質キナーゼタンパク質をコードする核酸配列を有する種子を選択するステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
Snf1関連タンパク質キナーゼタンパク質をコードする核酸配列が、配列番号1または配列番号3の配列を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
Snf1関連タンパク質キナーゼタンパク質が、SnRK2−6を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
Snf1関連タンパク質キナーゼタンパク質をコードする核酸配列が、配列番号2または配列番号4のペプチドをコードする核酸配列を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
請求項1に記載のプロセスにより作製される植物体から採取される種子。
【請求項8】
土壌中に前記種子を植え付けるステップと、
前記種子から第2の植物体を生育させるステップと、
前記第2の植物体から種子を採取するステップと
をさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
Snf1関連タンパク質キナーゼタンパク質をコードする核酸配列により、植物細胞を形質転換するステップが、
Snf1関連タンパク質キナーゼタンパク質をコードする核酸配列により、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)細胞を形質転換するステップと、
前記アグロバクテリウム属細胞により、前記植物細胞を形質転換するステップと
を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
植物細胞のゲノム中に組み込まれたSnf1関連タンパク質キナーゼタンパク質をコードする核酸配列を有する種子を選択するステップが、
種子からゲノム核酸を単離するステップと、
前記種子から単離されたゲノム核酸から、Snf1関連タンパク質キナーゼタンパク質をコードする核酸配列を増幅するステップと
を含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項11】
植物体が、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、ルリジサ(Borago)属種、キャノーラ、トウゴマ(Ricinus)属種、カカオ(Theobroma)属種、トウモロコシ(Zea)属種、ワタ(Gossypium)属種、ハマナ(Crambe)属種、タバコソウ(Cuphea)属種、アマ(Linum)属種、レスケレーラ(Lesquerella)属種、リムナンテス(Limnanthes)属種、リノーラ、ノウゼンハレン(Tropaeolum)属種、マツヨイグサ(Oenothera)属種、オリーブ(Olea)属種、アブラヤシ(Elaeis)属種、ラッカセイ(Arachis)属種、ナタネ、ベニバナ(Carthamus)属種、ダイズ(Glycine)属種、ダイズ(Soja)亜属種、ヒマワリ(Helianthus)属種、タバコ(Nicotiana)属種、ショウジョウハグマ(Vernonia)属種、コムギ(Triticum)属種、オオムギ(Hordeum)属種、イネ(Oryza)属種、カラスムギ(Avena)属種、モロコシ(Sorghum)属種、ライムギ(Secale)属種、アブラナ(Brassicaceae)科、およびイネ科(Gramineae)植物の他のメンバーからなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
採取された種子から油を抽出するステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
そのゲノム中に組み込まれたSnf1関連タンパク質キナーゼタンパク質をコードする核酸配列を有する植物体、植物種子、またはその後代。
【請求項14】
植物体、植物体の貯蔵器官、または植物種子の油含量、糖含量、またはデンプン含量を変化させる方法であって、
センスまたはアンチセンス核酸構築物を植物体形質転換ベクター中に導入して、改変植物体形質転換ベクターを作製するステップであって、前記センスまたはアンチセンス核酸構築物が、シロイヌナズナ属のSnf1関連タンパク質キナーゼ(SnRK)タンパク質をコードする単離核酸配列、精製核酸配列、または組換え核酸配列を含むステップと、
前記改変植物体形質転換ベクターにより、前記植物体、植物体の貯蔵器官、または植物種子のゲノムを形質転換するステップと、
前記植物体、植物体の貯蔵器官、または植物種子を生育させ、前記油または生体高分子を抽出するステップと
を含む方法。
【請求項15】
前記ゲノムが、請求項14に記載のベクターにより形質転換されていることを特徴とする、遺伝子形質転換植物体。
【請求項16】
請求項14に記載のベクターにより形質転換されていることを特徴とする、遺伝子形質転換植物種子。
【請求項17】
同じ遺伝子型の遺伝子改変されていない植物体と比較して、呼吸速度の変化を示すことを特徴とする、請求項15に記載の植物体。
【請求項18】
同じ遺伝子型の遺伝子改変されていない植物体と比較して、種子油含量の変化を示すことを特徴とする、請求項15に記載の植物体。
【請求項19】
同じ遺伝子型の遺伝子改変されていない植物体と比較して、脂肪酸組成の変化を示すことを特徴とする、請求項15に記載の植物体。
【請求項20】
同じ遺伝子型の遺伝子改変されていない植物体と比較して、バイオマスの増大を示すことを特徴とする、請求項15に記載の植物体。
【請求項21】
同じ遺伝子型の遺伝子改変されていない植物体と比較して、生体高分子を蓄積する能力の増強を示すことを特徴とする、請求項15に記載の植物体。
【請求項22】
同じ遺伝子型の遺伝子改変されていない植物体と比較して、炭水化物含量の変化を示すことを特徴とする、請求項15に記載の植物体。
【請求項23】
同じ遺伝子型の遺伝子改変されていない植物体と比較して、スクロース含量およびデンプン含量の変化を示すことを特徴とする、請求項22に記載の植物体。
【請求項24】
同じ遺伝子型の遺伝子改変されていない植物体と比較して、呼吸速度の変化を示すことを特徴とする、請求項16に記載の植物種子。
【請求項25】
同じ遺伝子型の遺伝子改変されていない植物体と比較して、種子油含量の変化を示すことを特徴とする、請求項16に記載の植物種子。
【請求項26】
同じ遺伝子型の遺伝子改変されていない植物体と比較して、脂肪酸組成の変化を示す植物体をもたらすことを特徴とする、請求項16に記載の植物種子。
【請求項27】
同じ遺伝子型の遺伝子改変されていない植物体と比較して、バイオマスの増大を示す植物体をもたらすことを特徴とする、請求項16に記載の植物種子。
【請求項28】
同じ遺伝子型の遺伝子改変されていない植物体と比較して、生体高分子を蓄積する能力の増強を示す植物体をもたらすことを特徴とする、請求項16に記載の植物種子。
【請求項29】
植物体におけるSnf1関連タンパク質キナーゼタンパク質レベルを調節する方法であって、
プロモーターに作動可能に連結された、植物体Snf1関連タンパク質キナーゼポリヌクレオチドにより、植物細胞を安定に形質転換するステップであって、前記ポリヌクレオチドが、センス配向またはアンチセンス配向であるステップと、
前記植物細胞を、植物生育条件下において生育させて、植物体におけるSnf1関連タンパク質キナーゼタンパク質を調節するのに十分な時間にわたり前記ポリヌクレオチドを発現することが可能な再生植物体をもたらすステップと
を含む方法。
【請求項30】
植物体のSnf1関連タンパク質キナーゼポリヌクレオチドにより、植物細胞を安定に形質転換するステップが、配列番号1および配列番号3からなる群から選択されるポリヌクレオチドにより、植物細胞を安定に形質転換するステップを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
トランスジェニック種子から油を抽出するプロセスであって、
Snf1関連タンパク質キナーゼタンパク質をコードする手段により、植物細胞を形質転換するステップと、
植物体が種子をつけるまで、前記植物細胞から植物体を生育させるステップと、
前記植物体から種子を採取するステップと、
採取された種子から油を抽出するステップと
を含むプロセス。
【請求項32】
Snf1関連タンパク質キナーゼタンパク質をコードする手段が、配列番号2および配列番号3をコードする核酸配列からなる群から選択される、請求項31に記載のプロセス。
【請求項33】
請求項31に記載のプロセスにより生成される油。
【請求項34】
植物細胞を形質転換するためのベクターであって、配列番号1、もしくは配列番号1の一部、または配列番号1と実質的に相同な配列のデオキシリボ核酸配列を含有することを特徴とするベクター。
【請求項35】
前記配列が、前記ベクター内にセンス配向で存在する、請求項34に記載のベクター。
【請求項36】
植物細胞を形質転換するためのベクターであって、配列番号3、もしくは配列番号3の一部、または配列番号3と実質的に相同な配列のデオキシリボ核酸配列を含有することを特徴とするベクター。
【請求項37】
前記配列が、前記ベクター内にアンチセンス配向で存在する、請求項36に記載のベクター。
【請求項38】
プラスミドpSnRK2−6cDNA。
【請求項39】
プラスミドpSnRK2−6遺伝子。
【請求項40】
配列番号1もしくは配列番号3、または配列番号1もしくは配列番号3の一部、あるいは配列番号1もしくは配列番号3と実質的に相同な配列の導入ヌクレオチド配列を含有することを特徴とするゲノムを有する植物体。
【請求項41】
配列番号1もしくは配列番号3、または配列番号1もしくは配列番号3の一部、あるいは配列番号1もしくは配列番号3と実質的に相同な配列の導入ヌクレオチド配列を含有することを特徴とするゲノムを有する植物種子。
【請求項42】
トランスジェニック植物体のゲノム中にヌクレオチド配列を導入することにより前記植物体を作製する方法であって、前記ゲノム中に導入される前記ヌクレオチド配列が、配列番号1もしくは配列番号3、または配列番号1もしくは配列番号3の一部、あるいは配列番号1もしくは配列番号3、または配列番号1もしくは配列番号3の一部と実質的に相同な配列を包含することを特徴とする方法。
【請求項43】
前記植物体が、シロイヌナズナ、トウモロコシ(Zea mays)、ルリジサ(Borago属種)、キャノーラ、トウゴマ(Ricinus communis)、カカオ豆(Theobroma cacao)、ワタ(Gossypium属種)、ハマナ(Crambe)属種、タバコソウ(Cuphea)属種、アマ(Linum属種)、レスケレーラ(Lesquerella)およびリムナンテス(Limnanthes)属種、リノーラ、ノウゼンハレン(Tropaeolum属種)、マツヨイグサ(Oenothera)属種、オリーブ(Olea属種)、アブラヤシ(Elaeis属種)、ラッカセイ(Arachis属種)、ナタネ、ベニバナ(Carthamus属種)、ダイズ(Glycine属種およびSoja亜属種)、ヒマワリ(Helianthus属種)、タバコ(Nicotiana属種)、ショウジョウハグマ(Vernonia)属種、コムギ(Triticum属種)、オオムギ(Hordeum属種)、イネ(Oryza属種)、カラスムギ(Avena属種)、モロコシ(Sorghum属種)、ライムギ(Secale属種)、ならびにイネ(Gramineae)科の他のメンバーからなる群から選択されることを特徴とする、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
センスまたはアンチセンス核酸構築物を、植物体形質転換ベクター中に導入し、前記ベクターを用いて植物体または植物種子のゲノムを形質転換し、次いで、前記植物体または植物種子を生育させ、前記植物種子から油を抽出することにより、前記植物体の油含量、脂肪酸組成、糖/デンプン/炭水化物レベル、または種子収量を変化させる方法であって、前記核酸配列が、配列番号1もしくは配列番号3、または配列番号1もしくは配列番号3の一部、あるいは配列番号1もしくは配列番号3と実質的に相同な配列であることを特徴とする方法。
【請求項45】
植物体、植物種子、または植物体の後代からなる群から選択される植物材料であって、プロモーターと機能的に関連している、植物材料の油含量を改変するためのSnf1関連タンパク質キナーゼ手段を含むベクターによりさらに形質転換されている植物材料。
【請求項46】
Snf1関連タンパク質キナーゼ手段が、核酸配列である、請求項45に記載の植物材料。
【請求項47】
プロモーターが、CsVMVである、請求項45に記載の植物材料。
【請求項48】
前記プロモーターが、天然プロモーターである、請求項45に記載の植物材料。
【請求項49】
前記プロモーターが、Ubi1プロモーターである、請求項45に記載の植物材料。
【請求項50】
前記植物材料が、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、ルリジサ(Borago)属種、キャノーラ、トウゴマ(Ricinus)属種、カカオ(Theobroma)属種、トウモロコシ(Zea)属種、ワタ(Gossypium)属種、ハマナ(Crambe)属種、タバコソウ(Cuphea)属種、アマ(Linum)属種、レスケレーラ(Lesquerella)属種、リムナンテス(Limnanthes)属種、リノーラ、ノウゼンハレン(Tropaeolum)属種、マツヨイグサ(Oenothera)属種、オリーブ(Olea)属種、アブラヤシ(Elaeis)属種、ラッカセイ(Arachis)属種、ナタネ、ベニバナ(Carthamus)属種、ダイズ(Glycine)属種、ダイズ(Soja)亜属種、ヒマワリ(Helianthus)属種、タバコ(Nicotiana)属種、ショウジョウハグマ(Vernonia)属種、コムギ(Triticum)属種、オオムギ(Hordeum)属種、イネ(Oryza)属種、カラスムギ(Avena)属種、モロコシ(Sorghum)属種、ライムギ(Secale)属種、アブラナ(Brassicaceae)科、ならびにイネ科(Gramineae)植物の他のメンバーからなる群から選択される、請求項45に記載の植物材料。
【請求項51】
植物体の乾燥耐性を改変する方法であって、
Snf1関連タンパク質キナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、配列番号1および配列番号3からなる群から選択される核酸配列を含む核酸構築物を、植物体形質転換ベクター中に導入するステップと、
前記植物体形質転換ベクターにより、植物体または植物種子のゲノムを形質転換するステップと、
前記核酸配列を発現させるステップと、
前記植物体または植物種子を生育させるステップと、
同一の条件下で生育させた植物体と同じ遺伝子型であるが前記導入核酸配列を有さない、統計学的に有意な数の植物体の平均乾燥耐性と比較して、乾燥耐性の変化を有する形質転換植物体を選択するステップと
を含む方法。
【請求項52】
植物体の根のバイオマスを改変する方法であって、
Snf1関連タンパク質キナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、配列番号1および配列番号3からなる群から選択される核酸配列を含む核酸構築物を、植物体形質転換ベクター中に導入するステップと、
前記植物体形質転換ベクターにより、植物体または植物種子のゲノムを形質転換するステップと、
前記核酸配列を発現させるステップと、
前記植物体または植物種子を生育させるステップと、
同一の条件下で生育させた植物体と同じ遺伝子型であるが導入核酸配列は有さない、統計学的に有意な数の植物体の根の平均バイオマスと比較して、根のバイオマスの変化を有する形質転換植物体を選択するステップと
を含む方法。
【請求項53】
植物体、植物種子、または後代における水分喪失に対する抵抗性、乾燥耐性、炭素同化量、植物体の生育および成長、脂肪酸バイオアセンブリー、または根の生育を向上させる、1または複数のさらなる異種遺伝子または改変遺伝子を含む、請求項13に記載の植物体、植物種子、またはその後代。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2012−523237(P2012−523237A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504892(P2012−504892)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/030563
【国際公開番号】WO2010/118338
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(501035309)ダウ アグロサイエンシィズ エルエルシー (197)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/030563
【国際公開番号】WO2010/118338
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(501035309)ダウ アグロサイエンシィズ エルエルシー (197)
【Fターム(参考)】
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