説明

植生基盤材吹付け装置

【課題】 植生基盤材を吹き付ける植生基盤材吹付け装置において、閉塞物を簡易的に除去することにより吹付け施工の効率化を図る。
【解決手段】 植生基盤材を貯留する吹付けガンタンク10と、圧送された植生基盤材を法面に向かって吹き付けるノズル20と、吐出口12からノズル20に向かう配管30と、収容部13にスライド移動自在に収容される閉塞物除去部材40と、等から植生基盤材吹付け装置1を構成する。閉塞物除去部材40には、上下に貫通する2つの断面円状の通過孔41、42が形成される。閉塞物除去部材40をスライド移動させることで閉塞物Pを破砕して除去する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、法面などに植生基盤材を吹き付ける植生基盤材吹付け装置に関する。
【0002】
【従来の技術】盛土・切土等の法面などの緑化を図る法面緑化工法が知られている。法面緑化工法では、例えば、特開平10−191779号公報に示されるように、植生基盤材が、植生基盤材吹付け装置により法面に吹き付けられる。植生基盤材吹付け装置は、例えば、タンクに貯留される植生基盤材を吐出口から圧送して、ノズルから法面に吹き付ける。植生基盤材は、例えば、伐採樹木や根株を粉砕してチップ化し、チップに水分および副資材を添加して堆肥化させ、ポリアクリルアミド等の接合剤と現場発生土と種子とを混ぜた状態で使用される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、植生基盤材にサイズの大きな礫や堆肥材などが含まれると、タンクの吐出口を閉塞する場合があった。閉塞が生じると、植生基盤材吹付け装置を停止させ、吐出口の周辺を分解して閉塞物を取り除くという手間と時間がかかる作業をする必要があり、吹付け施工量を減少させていた。
【0004】本発明の課題は、植生基盤材を吹き付ける植生基盤材吹付け装置において、閉塞物を簡易的に除去することにより吹付け施工の効率化を図ることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】以上の課題を解決するため、請求項1記載の発明は、例えば、図1〜3に示すように、植生基盤材を搬送して吹き付ける植生基盤材吹付け装置1であって、前記植生基盤材の搬送経路と連通する通過孔41、42を有し、前記搬送経路と交差する方向に移動自在に設けられる閉塞物除去部材40が形成されていることを特徴とする。
【0006】請求項1記載の発明によれば、閉塞物除去部材を搬送経路と交差する方向に移動させるに伴って、通過孔が搬送経路と連通する部分が狭められていき、この部分にある閉塞物に剪断力が加えられて破砕される。従って、搬送経路の閉塞した部分を分解することなく、閉塞物を簡易的に除去できるので、植生基盤材の吹付け施工を迅速に再開でき、吹付け施工の効率化が図られる。
【0007】請求項2記載の発明は、請求項1記載の植生基盤材吹付け装置において、前記植生基盤材が排出される吐出口12を有するタンク(例えば、吹付けガンタンク10)と、前記吐出口からノズル20に向かって前記植生基盤材を搬送する配管30とを備え、前記閉塞物除去部材は、前記吐出口の近傍で前記配管と交差する方向に移動自在に設けられていることを特徴とする。
【0008】請求項2記載の発明によれば、請求項1と同様の効果を奏することができるとともに、閉塞物除去部材が吐出口の近傍で配管と交差する方向に移動自在に設けられているので、植生基盤材に含まれるサイズの大きな礫や堆肥材などが閉塞物となり吐出口に詰まった場合でも、閉塞物を簡易的に除去できる。
【0009】請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の植生基盤材吹付け装置において、前記閉塞物除去部材は、複数の前記通過孔が形成されていることを特徴とする。
【0010】請求項3記載の発明によれば、請求項1または2と同様の効果を奏することができるとともに、閉塞物除去部材を移動させて閉塞物を除去したのちに、始めに搬送経路と連通していた通過口とは異なる通過口が搬送経路と連通するように、閉塞物除去部材を位置合わせすることで、吹付け施工を迅速に再開できる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、図1〜3を参照して、本発明の実施の形態の植生基盤材吹付け装置1を詳細に説明する。図1に示すように、本実施の形態の植生基盤材吹付け装置1は、植生基盤材を貯留する吹付けガンタンク10(タンク)と、圧送された植生基盤材を法面に向かって吹き付けるノズル20と、吐出口12からノズル20に向かう配管30と、吐出口12に詰まった閉塞物P(図2参照)を除去するための閉塞物除去部材40と、等から概略構成され、周知のモルタル吹付け機と基本的に同様の構成をもつ。
【0012】配管30はホース31を介してノズル20に接続される。ホース31の伸縮性のためにノズル20を所望の位置に自在に取り付けられる。配管30には、植生基盤材をノズル20へと向かわせるエアがコンプレッサ32より供給される。
【0013】吹付けガンタンク10は、吹付けガンタンク10内部で植生基盤材を攪拌してほぼ均質な状態で貯留させる攪拌翼11と、吹付けガンタンク10の底部に形成される吐出口12と、吐出口12の近傍で閉塞物除去部材40をスライド移動自在に収容する収容部13と、コンプレッサ(図示しない)からエアを供給するためのエア供給口14とを備える。なお、図1中、閉塞物除去部材40は紙面に垂直な方向にスライド移動自在に収容されている。
【0014】図3に示すように、閉塞物除去部材40は、略矩形状の上面をもつ板体であり、上下に貫通する2つの断面円状の通過孔41、42が形成されている。通過孔41、42の内径Rは吐出口12の内径rとほぼ同程度に設けられる(図2参照)。なお、スライド移動する閉塞物除去部材40と収容部13との周辺は、気密性が保たれるように考慮されており、吹付けガンタンク10が植生基盤材を圧送する内圧が確保される。貫通孔41、42の何れか一方が吐出口12と位置合わせされ、吐出口12から圧送される植生基盤材が通過孔41、42を通過し、配管30およびホース31を介してノズル20に向かう。すなわち、本実施の形態では、植生基盤材の搬送経路は、吐出口12から配管30およびホース31を介してノズル20に至る部分となる。
【0015】次に、図3を参照して本発明の実施の形態の植生基盤材の吹付け装置1の動作を説明する。先ず、建設現場から伐採・抜根した樹木や根株をチップ状に粉砕する。このチップに水や副資材などを加えて堆肥化させた後、造成などで排出された現場発生土とポリアクリルアミド等の接合剤と種子とを混合して植生基盤材を得る。投入口(図示しない)から吹付けガンタンク10に投入された植生基盤材が、エア供給口14から供給されるエアにより吐出口12から圧送され、配管30およびホース31を介して、ノズル20から法面へと吹き付けられる。
【0016】図3(a)に示すように、吐出口12と通過孔41とが位置合わせされて吹付け施工を行い、図2に示すように、吐出口12に閉塞物Pが詰まったとき、収容部13から突出する閉塞物除去部材40の端部に打撃もしくは押圧を加える。通過孔42が吐出口12に向かうA方向(図3(a)に図示)に、閉塞物除去部材40がスライド移動する。通過孔41の内面41aと吐出口12の内面12aとの間に閉塞物Pが挟まれる状態となり、閉塞物除去部材40がスライド移動していく過程で、閉塞物Pに剪断力が加えられて破砕・除去される。この後、図3(b)に示すように、通過孔42が吐出口12に位置合わせされ、吹付け施工を迅速に再開できる。さらに閉塞物が詰まったときには、通過孔41が吐出口12に向かうB方向(図3(b)に図示)に、閉塞物除去部材40を再びスライド移動させることで、同様にして、閉塞物を破砕・除去できる。
【0017】なお、本実施の形態では、通過孔41、42の内面41a、42aと、閉塞物除去部材40の上面40aと、がほぼ直交するように形成しているが、通過孔41、42を、上面40aから下面40bに向かって拡巾するテーパ形状に形成しても良い。この場合には、通過孔41、42の吐出口12側に尖った部分を形成でき、閉塞物Pがテーパ形状の尖った部分に挟まれてより効率的に破砕できる。さらに、テーパ形状の尖った部分に、閉塞物Pを破砕するための刃部を形成しても良い。
【0018】また、吐出口12からノズル20に至る植生基盤材の搬送経路のうちで閉塞が生じやすい箇所に、閉塞物除去部材40と同様の構成を設けても良い。この場合には、上述と同様にして閉塞物が除去される。
【0019】以上の本発明の実施の形態の吹付け装置1によれば、閉塞物除去部材40をスライド移動させることで、吐出口12の周辺を分解することなく、閉塞物Pを簡易的に除去できる。従って、植生基盤材の吹付け施工を迅速に再開でき、吹付け施工の効率化が図られる。
【0020】なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜に変更可能であることは勿論である。例えば、本実施の形態では、閉塞物除去部材40を矩形状の板体として、スライド移動させることで通過孔41、42が位置合わせされる構成としたが、閉塞物除去部材40を円板として、回転させることで通過孔が位置合わせされる構成としても良い。また、閉塞物除去部材40に形成する通過孔41の数も任意であり、その他、具体的な細部構成についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【0021】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、閉塞物除去部材を移動させることで、搬送経路の閉塞した部分を分解することなく閉塞物を簡易的に除去できるので、植生基盤材の吹付け施工を迅速に再開でき、吹付け施工の効率化が図られる。
【0022】請求項2記載の発明によれば、請求項1と同様の効果を奏することができるとともに、吐出口に詰まった閉塞物を簡易的に除去できる。
【0023】請求項3記載の発明によれば、請求項1または2と同様の効果を奏することができるとともに、閉塞物を除去したのちに、別の通過口が搬送経路と連通するように閉塞物除去部材を位置合わせして、吹付け施工を迅速に再開できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した一実施の形態の植生基盤材吹付け装置1を示す図である。
【図2】図1の閉塞物除去部材40の周辺を示す要部拡大図である。
【図3】図1の閉塞物除去部材40により閉塞物Pを除去する様子を示す図である。
【符号の説明】
1 植生基盤材吹付け装置
10 吹付けガンタンク(タンク)
12 吐出口
20 ノズル
30 配管
40 閉塞物除去部材
41 通過孔
42 通過孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】 植生基盤材を搬送して吹き付ける植生基盤材吹付け装置であって、前記植生基盤材の搬送経路と連通する通過孔を有し、前記搬送経路と交差する方向に移動自在に設けられる閉塞物除去部材が形成されていることを特徴とする植生基盤材吹付け装置。
【請求項2】 請求項1記載の植生基盤材吹付け装置において、前記植生基盤材が排出される吐出口を有するタンクと、前記吐出口からノズルに向かって前記植生基盤材を搬送する配管とを備え、前記閉塞物除去部材は、前記吐出口の近傍で前記配管と交差する方向に移動自在に設けられていることを特徴とする植生基盤材吹付け装置。
【請求項3】 請求項1または2記載の植生基盤材吹付け装置において、前記閉塞物除去部材は、複数の前記通過孔が形成されていることを特徴とする植生基盤材吹付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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