椎間インプラント
【課題】 椎体同士の間にインプラントを最終的に位置決めするために利用可能であるという可能性を考慮して、構成および用途の点で簡略化された椎間インプラントを提供する。
【解決手段】 第1の椎体を係合させるように構成された上面(2)と、第2の椎体を係合させるように構成された底面(3)と、上面(2)および底面(3)を接続する側壁(4)と、側壁によって規定される中空空間(5)と、側壁(4)を貫通して空間に延びる細長い開口(8)とを有する椎間インプラントであって、細長い開口(8)は周方向にある長さを有し、インプラントはさらに、空間内に設けられた回転可能なインサート(10,10′,100)を備え、インサートは、側壁との摩擦係合によって空間内にインサートを保持するばね部(10a,10b,110a,110b)を備え、インサートは、開口(8)を貫通して延びるツール(50)と係合するように構成された係合部(13,113)を備える、椎間インプラントを提供する。
【解決手段】 第1の椎体を係合させるように構成された上面(2)と、第2の椎体を係合させるように構成された底面(3)と、上面(2)および底面(3)を接続する側壁(4)と、側壁によって規定される中空空間(5)と、側壁(4)を貫通して空間に延びる細長い開口(8)とを有する椎間インプラントであって、細長い開口(8)は周方向にある長さを有し、インプラントはさらに、空間内に設けられた回転可能なインサート(10,10′,100)を備え、インサートは、側壁との摩擦係合によって空間内にインサートを保持するばね部(10a,10b,110a,110b)を備え、インサートは、開口(8)を貫通して延びるツール(50)と係合するように構成された係合部(13,113)を備える、椎間インプラントを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の椎体を係合させるように構成された上面と、第2の椎体を係合させるように構成された底面と、上面および底面を接続する側壁と、側壁によって規定される中空空間と、側壁を貫通して空間に延びる細長い開口とを有する椎間インプラントに関する。インプラントはさらに、ばね力によって空間内に保持される回転可能なインサートを備える。インサートは、開口を貫通するツールと係合するように構成された係合部を有する。
【背景技術】
【0002】
第1の脊椎部材と第2の脊椎部材との間に挿入するための挿入装置と係合するように構成された椎間インプラントがUS7,935,148から公知である。この椎間インプラントは、側壁を貫通して延びる細長い形状を含む開口を有している。受け口を含む接続部材が側壁内に含まれている。挿入装置は、インプラント本体の接続部材と接続するように構成された第1の端部を有している。第1の端部は、接続を行なうために複数の方位の間で選択的に位置決め可能である。
【0003】
別の椎間インプラントがUS2010/0094422 A1から公知である。このインプラントは、支持体と回転可能なインサートとを内部に有している。インプラントに取り外し可能に取付けて、インサートと支持体との間の回転を選択的に可能にするように回転可能なインサートと係合させるための据付機器も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US7,935,148 B2
【特許文献2】US2007/0162129 A1
【特許文献3】US2010/0094422 A1
【特許文献4】US2008/0140085 A1
【特許文献5】US2010/0256760 A1
【特許文献6】US2005/0038431 A1
【特許文献7】DE10 2008 045 174
【特許文献8】US2008/0221694 A1
【特許文献9】US2007/0213826 A1
【特許文献10】WO/2003/026538 A1
【特許文献11】US2010/0144105 A1
【特許文献12】US2008/0027544 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、椎体同士の間にインプラントを最終的に位置決めするために利用可能であるという可能性を考慮して、構成および用途の点で簡略化された椎間インプラントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に係る椎間インプラントによって解決される。従属請求項においてさらなる展開が行なわれている。
【0007】
椎間インプラントはコンパクトな構成を有している。インプラントと挿入ツールとの接続を容易に固定したり緩めたりすることができるので、インプラントの挿入手順は単純かつ安全なものである。ツールとインプラントとの接続を緩めると、インサートを中心にインプラントを回転させることによってインプラントを所望の位置に動かすことができる。回転させている間、椎間インプラントは、挿入装置によって安全に保持され、ツールから外れることが防止される。
【0008】
椎間インプラントの構成によって、インプラントの中空の内部空間の大部分が溶融に利用できるようになる。
【0009】
既存の椎間インプラントは、インサートで変形させることができ、アップグレードできるであろう。
【0010】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】椎間インプラントおよび椎間インプラントを挿入するためのツールの実施例の斜視図である。
【図2】図1の一部の拡大図である。
【図3】図2の拡大部の分解斜視図である。
【図4】椎間インプラントに提供されるインサートの斜視図である。
【図5】図4のインサートの別の斜視図である。
【図6】インサートを挿入する前のステップにおける椎間インプラントの上からの斜視図である。
【図7】インサートが取付けられた椎間インプラントの上からの斜視図である。
【図8a)】第1の止め具によって制限される第1の位置にインサートがある状態のインプラントの断面図である。
【図8b)】第2の止め具によって制限される第2の位置にインサートがある状態の椎間インプラントの断面図である。
【図9a)】ツールを椎間インプラントと係合させてインプラントを回転させるステップの概略断面図である。
【図9b)】ツールを椎間インプラントと係合させてインプラントを回転させるステップの概略断面図である。
【図9c)】ツールを椎間インプラントと係合させてインプラントを回転させるステップの概略断面図である。
【図9d)】ツールを椎間インプラントと係合させてインプラントを回転させるステップの概略断面図である。
【図10a)】2つの椎体間に椎間インプラントを挿入して位置決めするステップを概略的に示す図である。
【図10b)】2つの椎体間に椎間インプラントを挿入して位置決めするステップを概略的に示す図である。
【図10c)】2つの椎体間に椎間インプラントを挿入して位置決めするステップを概略的に示す図である。
【図10d)】2つの椎体間に椎間インプラントを挿入して位置決めするステップを概略的に示す図である。
【図10e)】2つの椎体間に椎間インプラントを挿入して位置決めするステップを概略的に示す図である。
【図10f)】2つの椎体間に椎間インプラントを挿入して位置決めするステップを概略的に示す図である。
【図11】椎間インプラントの第2の実施例に係るインサートの上面斜視図である。
【図12】第1の位置においてツールが椎間インプラントに接続された状態の、第2の実施例に係る椎間インプラントの上面図である。
【図13】第2の位置においてツールが椎間インプラントに接続された状態の、第2の実施例に係る椎間インプラントの上面図である。
【図14】インサートがまだ取付けられていない状態の、第3の実施例に係る椎間インプラントの上面斜視図である。
【図15】インサートが取付けられ、第1の状況でツールが椎間インプラントに接続された状態の、第3の実施例に係る図14の椎間インプラントの上面図である。
【図16】第2の状況における図15に係るツールを有する椎間インプラントを示す図である。
【図17】第4の実施例に係る椎間インプラントのインサートの上面斜視図である。
【図18】第4の実施例に係る椎間インプラントのインサートの底面斜視図である。
【図19】第1の位置において第4の実施例に係るインサートおよびツールが椎間インプラントに接続された状態の、椎間インプラントの上面図である。
【図20】第2の位置における図19に係るツールを有する椎間インプラントの上面図である。
【図21】第5の実施例に係るインサートを有する椎間インプラントおよび第1の位置においてそこに接続されたツールの上部からの斜視図である。
【図22】第5の実施例に係る椎間インプラントに対応するインサートの斜視図である。
【図23】第5の実施例に係る椎間インプラントに対応するインサートの別の斜視図である。
【図24】第5の実施例に係るインサートなしの椎間インプラントの斜視図である。
【図25】第5の実施例に係るインサートなしの椎間インプラントの別の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、椎間インプラント1および椎間インプラント1を挿入するためのツール50の第1の実施例の斜視図である。特に図1〜図3に示されるように、椎間インプラントは、上面2と、底面3と、上面2および底面3を接続する側壁4とを含む。側壁4は、内部中空セクション5を規定している。上面2および底面3は、中空の内部セクション5が上面2および底面3に及ぶように開口を有している。したがって、上面2および底面3は、側壁4の上部縁および下部縁によって形成されている。さらに、中空の内部セクション5を2つの部分に分ける中央壁6が設けられていてもよい。側壁4の高さは、インプラントを第1の椎体と第2の椎体との間に挿入できるようなものである。インプラントの高さは、中央壁6の周囲で最大であってもよく、外端に向かって小さくなっていてもよい。椎体の端部板を係合させるために、歯7または他の係合部が上面2および底面3から突き出ている。
【0013】
インプラント1は、2つの対向する長い側面4aと、長い側面4aを接続する2つの対向する短い側面4bとを有している。短い側面4bは丸みを帯びている。側壁4の外形は、たとえば弓形であってもよく、腎臓の形状またはバナナの形状を有していてもよい。
【0014】
特に図2および図3からわかるように、完全に側壁4を貫通して内部中空セクション5に延びる開口8が側壁4に設けられている。開口8は、細長い形状を有しており、好ましくは短い側面4bに沿って周方向にある長さにわたって延びている。開口8は、実質的に長方形の外形を有していてもよく、上面2と底面3との間で垂直方向に側壁の実質的に中央に位置している。
【0015】
図6に示されるように、細長い開口8の周囲の側壁4の内壁に案内溝9が設けられている。案内溝9は、細長い開口の両端から側壁の長い側面4aの各々に延びている。垂直方向、すなわち底面3から上面2への方向の案内溝9の高さは、垂直方向の細長い開口8の高さと同じであるか、またはそれよりも大きい。周方向の案内溝9の長さは、図1〜図7に示されるインサート10を溝に収容でき、案内できるように寸法が決められる。インサート10を中空の内部セクション5に挿入し、溝9に設置すると、溝9はインサート10の脱落を防止する。
【0016】
第1の実施例に係るインプラント1のインサート10は、実質的に中空の円筒形部材である。円筒軸Cは回転軸を規定する。中空の円筒の壁を貫通する同軸スロット11は、互いのほうにわずかに圧縮されることによってスロット11を狭めることができる第1および第2の可撓性の実質的に半球のアーム10a,10bを提供する。スロット11とは反対側の位置に、インサート10は、可撓性アーム10aと10bとの間に延びる中実部12、たとえば立方状の部分を備えている。中実部12の大きさは、アーム10a,10bの可撓性を制限しないようなものである。中実部12は、ツール50との係合のための凹部13を有している。凹部13は、たとえばねじが切られた穴であり得る。
【0017】
第1の可撓性アーム10aは、自由端に隣接したその外壁に、第1の突起14aの形態の第1の止め具を有している。第2の可撓性アーム10bは、自由端に隣接したその外壁に、第2の突起14bの形態の第2の止め具を有している。図8aおよび図8bに示されるように、インサート10はその円筒軸Cによってインプラントの回転軸を与える。したがって、インサート10を挿入したとき、第1の突起14aの内壁への当接によって規定される第1の位置(図8a)と、第2の止め具14bの内壁への当接によって規定される第2の位置(図8b)との間でインプラントに対してインサート10を回転させることができる。インサート10が案内溝9内にあり、第1の突起14aがインプラントの側壁の内壁に対して当接するときに凹部13が第1の突起14aとは反対側の開口8の端部に位置するように、第1の突起14aはスロット11から離れた位置にある。突起14bがインプラント1の側壁4の対向する内壁に対して当接するときに凹部13が細長い開口8の他端にあるように、第2の突起14bは第2の可撓性アーム10bの自由端の位置にある。
【0018】
インサート10の外半径は、案内溝の半径に実質的に対応している。インサートの全体的な大きさは、可撓性アーム10a,10bをわずかに圧縮したときにインサート10を挿入でき、インサート10がインプラントの案内溝9に配置されるようなものである。インサート10は、案内溝9によって導かれ、可撓性アーム10a,10bとインプラントの内壁との間の摩擦力によって保持される。
【0019】
ここで、図1〜図8を参照してツール50について説明する。ツール50は、凹部13との係合のための端部部分53を有する駆動軸52に接続されたハンドル51を備えている。示されている実施例では、端部部分53は、ねじが切られた穴を係合させる、ねじが切られた端部部分である。駆動軸52は、反対の保持部55に接続されたスリーブ54内で回転可能である。スリーブの端部部分56は、凹状に湾曲しており、湾曲は側壁4の短い側面4bの外壁の湾曲に適合している。しかしながら、ツールは、示されている具体的な例に限定されるものではない。ツールは異なる構造を有していてもよい。
【0020】
ここで、図9a)〜図9d)を参照して、ツールとインプラントとの接続について説明する。図9a)に示されるようにインサート10をインプラントに挿入すると、凹部13が開口8のほうを向く。凹部13は、駆動軸52の端部部分53と係合する。ねじが切られた穴およびねじが切られた端部部分の場合、端部部分を穴にねじ込むことによって、インサートとツール50のスリーブ54の端部部分56との間にインプラントの短い側面4bが留められることになる。インプラントとツールとの接続が固定される。ねじ切り接続をわずかに緩めることによって、ツールを有するインサートのインプラントに対する回転が可能になる。この回転は、側壁4への突起14a,14bそれぞれの当接によって両方向に制限される。
【0021】
インサートを含むインプラント1は、生体適合性の材料でできている。たとえば、インプラントは、ステンレス鋼もしくはチタンもしくはニッケルチタン合金、たとえばニチノールなどの生体適合性の金属合金で作ることができ、または、たとえばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などの生体適合性のプラスチック材料で作ることができる。
【0022】
ここで、図10a)〜図10f)を参照して、手術中のインプラントの使用について説明する。図10a)〜図10f)は、隣接する椎骨の2つの椎体間の空間に椎間インプラントを挿入して位置決めするためのステップを概略的に示す。まず、ツール50をインプラント1に接続する。インサート10は、凹部13が開口8の長手方向に細長い開口8のおよそ中央に位置決めされるような位置にある。インサートとツールとの接続を締めることによって、インプラント1がツール50に固定される。次いで、図10a)に示されるように、インプラント1を2つの隣り合った椎骨間の椎間空間に導入する。図中、2つの隣り合った椎骨のうちの一方が椎骨200として示されている。ツール50とは反対側のインプラントの狭い側面4bが先頭側である。示されている方法では、椎体間の空間にアクセスするために後方および側方アプローチを用いて、椎間インプラント1を椎体間の空間に導入する。
【0023】
インプラント1およびツール50が抵抗を受けてさらに押すことができなくなるとすぐに、図10b)に示されるように、駆動軸を回すことによってインプラント1とツールとの固定がわずかに緩められる。これによって留めが緩められ、その結果、インプラント1がインサート10の円筒軸Cを中心に回転可能になる。図10c)および図10d)に示されるように、細長い開口8がインサート10の凹部13に沿って動くようにインプラント1はインサート10の円筒軸を中心に回転する。次いで、図10e)に示されるように、インプラントをその最終位置に移動させる。図10f)に示されるように、その後、ねじが切られた凹部13から駆動軸をねじを回して取り外すことによって、ツール50が切り離される。
【0024】
ツールをインプラントに容易に接続でき、インプラントから容易に切り離すことができるので、インプラントの取り扱いが簡略化される。移植中、インプラントは安全にツールに接続され、抜けることはあり得ない。
【0025】
さらに、インサートの構成によって、中空の内部空間の大半が溶融のために利用できるようになる。インサート10はインプラントとともに留まり、内部で占める空間は非常に小さい。
【0026】
図11〜図13は、インプラントの第2の実施例を示す。インプラント1′は、インサートの構成の点で第1の実施例のインプラント1とは異なっている。第2の実施例のインサート10′は、止め具の構造の点で第1の実施例のインサート10とは異なっている。インプラントおよびインサートの他の部分はすべて第1の実施例と同じである。その説明は繰返さない。インサート10′は、可撓性アームにそれぞれに設けられた2つの別個の止め具の代わりに、第1の可撓性アーム10aの肥厚した端部部分によって形成される突起14を1つだけ有している。肥厚した端部部分14は、インサート10′の軸長に沿って延びており、スロット11に隣接して設けられている。肥厚した端部部分14によって、可撓性アーム10aの端部における外径は、可撓性アーム10bにおける外径よりも大きい。肥厚した端部部分の大きさは、図12および図13に示されるように2つの位置の間でのインプラントの回転を制限できるようなものである。インサート10′が第1の位置にあるとき、インサートの凹部13は開口の長手方向に細長い開口8のおよそ中央にある。肥厚した部分14は、側壁4の長い側面4aの一方に対して当接する。ツール50とインプラントとの接続は、図12に示されるように実質的に直線的である。インサート10′をインプラント1′に対しておよそ90°だけ回転させると、肥厚した端部部分14は側壁の反対側の長い側面4aに対して当接し、インサート10′の凹部13は肥厚した部分14とは反対側の細長い開口の一端にくる。ツールとインプラント1′との接続は、図13に示されるように実質的に垂直である。
【0027】
インプラントの第3の実施例が図14〜図16に示されている。インプラント1″は、案内溝の位置の点で第1の実施例に係るインプラントとは異なっている。案内溝90は、長い側面4aの領域における側壁4の内壁に互いに対向して位置する2つの溝部からなっている。案内溝90の溝部は、細長い開口8に対して距離をおいたところに位置している。インサート10を中空の内部セクション5に挿入すると、可撓性アーム10a,10bの一部がそれぞれ案内溝90に受けられる。図15からわかるように、案内溝90の位置は、インサートを挿入したときに凹部13と開口8との間に距離があるようなものである。
【0028】
図15は、ツール50の駆動軸52の端部部分53の、インサート10の凹部13との係合を示す。インサートと開口8との間に距離があるので、接続は固定されず、インサート10を中心にインプラントを回転させることができる。ツールとインサートとのさらなる係合により、可撓性アーム10a,10bをわずかに圧縮することによってインサートが開口に対して引っ張られ、その結果、インプラントとツールとの接続が固定される。インプラント1″は、図11〜図13に係るインサート10′も備え得る。
【0029】
インプラントの第4の実施例が図17〜図20に示されている。第4の実施例に係るインプラント1″′は、インサートの可撓性の部分が細長い開口のほうに向いているように取付けることができるという点で前の実施例のインサート10および10′とは異なるインサート100を備えている。インサート100は、前の実施例と同様に実質的に中空の円筒形部品であり、2つの可撓性アーム110a,110bを提供するスロット111を有している。スロット111とは反対側に、中実部112が可撓性アーム110aと110bとの間の空間に延びている。中実部112は、ねじが切られた貫通穴であり得るツールのための係合部113を有している。スロット111から離れるほうを向いた外側に、インサート100は、ねじが切られた貫通穴113から第1の可撓性アーム110aの側とは非対称に延びる突起114を備えている。突起114は、2方向へのインプラントに対するインサート100の回転を制限するための止め具の役割を果たす。インサート100はさらに、ツール50の端部部分53を導くことができるようにスロットの位置に設けられた円形凹部115を備えている。
【0030】
図19および図20は、インサート100が中に取付けられた状態のインプラント1″′の上面図である。インサート100は、可撓性アーム110a,110bが開口8のほうに向けられるように取付けられる。したがって、ねじが切られた貫通穴113は開口8からある距離を有する。ツール50の駆動軸52の端部部分53は、導かれて細長い開口8を貫通し、ねじが切られた貫通穴113と係合する。円形凹部115の大きさは、端部部分53が通ることができるようなものである。端部部分53と貫通穴113とのねじ切り接続を締めると、可撓性アーム110a,110bがわずかに圧縮され、開口8に対して引っ張られる。それによって、インプラントとツールとの接続が固定される。この接続を緩めることによって、インプラントの回転が可能になる。図19に示されるように、突起114が側壁の長い側面4aのうちの一方に対して当接するときに、ツールに対するインプラントの動きが第1の方向に制限される。この位置では、ねじが切られた貫通穴113は、細長い開口8のおよそ中心を指し示している。ツールに対してインプラントを回転させると、突起114の他方の部分が側壁4の他方の長い側面4aに対して当接して、第2の方向に回転運動を制限する。運動の範囲はおよそ90°である。
【0031】
インプラントの第5の実施例が図21〜図25に示されている。前の実施例と同一または類似の部品および部分は同じ参照数字で表わされているため、その説明は繰返さない。この実施例では、インサート1000の突起14b’がアーム10b上で周方向にスロット11から離れた位置に位置決めされている。突起14b’の位置は、インサート1000がインプラントに対して図8bに示されるものと類似の端部位置に回転させられたときに突起14b’が溝9にはまるように選択される。これは、外科医または他の医師に対して、このような端部位置に到達したというフィードバックを与え得る。
【0032】
さらに、可撓性アーム10a,10bの内壁と対向する中実部12’の側壁は各々、インプラント1″″の内壁同士の間へのインサート1000の挿入を容易にするために、湾曲した凹部12aを有している。
【0033】
インプラント1″″はさらに、側壁4に細長い開口80を有していてもよく、さらなる溝90a,90bを有していてもよい。特に、長い側面4aに、骨材料および血管の内方成長を可能にするようにたとえばさらなる細長い開口80が存在していてもよい。一方、長い側面4aの溝90a,90bは、内部中空セクション5へのインサート1000のより容易な挿入に役立ち得る。このような実施例では、一旦インサート1000が溝90a,90bの位置で内部中空セクション5に挿入されると、インサート1000はインプラント1″″の残りの部分に対してずらされて溝9にはまることができる。
【0034】
これらの実施例の変形例が可能である。インプラントの外形および形状は、示されている例とは異なっていてもよい。たとえば、外形はその他の形状を有していてもよく、円形、長方形または楕円形などであってもよい。側壁4の高さは、インプラント全体を通じて一定であってもよい。中央壁は省略可能である。上述のように細長い開口と案内溝とインサート部品とを備えることによって、このような開口を持たない既存の椎間インプラントを適合させることも可能である。
【0035】
インサートは止め具を有している必要はない。ツール50をインプラントに接続したとき、細長い開口8の端部へのツールの端部部分53の当接によって、相対的な動きが制限される。しかしながら、止め具は、ツールがまだ接続されていないときにインサートをインプラントに挿入する場合にインサートの動きを制限するのに有用である。さまざまな実施例の構造は置き換えることができる。たとえば、示されている実施例のいずれにおいても2つの溝部90を備えた構成を有することが可能である。止め具の役割を果たす突起の位置および形状はさまざまであり得る。特に形状は異なり得る。細長い開口8を別の位置に設けることができ、および/または、いくつかの開口を設けることができる。
【0036】
インサートとツールとの接続は、ねじ切り接続である必要はない。インサートとツールとの接続は、容易に固定でき緩めることができるその他の接続、たとえばスナップ留め接続であり得る。
【符号の説明】
【0037】
2 上面、3 底面、4 側壁、5 中空空間、8 細長い開口、10,10′,100 インサート、10a,10b,110a,110b ばね部、13,113 係合部、50 ツール
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の椎体を係合させるように構成された上面と、第2の椎体を係合させるように構成された底面と、上面および底面を接続する側壁と、側壁によって規定される中空空間と、側壁を貫通して空間に延びる細長い開口とを有する椎間インプラントに関する。インプラントはさらに、ばね力によって空間内に保持される回転可能なインサートを備える。インサートは、開口を貫通するツールと係合するように構成された係合部を有する。
【背景技術】
【0002】
第1の脊椎部材と第2の脊椎部材との間に挿入するための挿入装置と係合するように構成された椎間インプラントがUS7,935,148から公知である。この椎間インプラントは、側壁を貫通して延びる細長い形状を含む開口を有している。受け口を含む接続部材が側壁内に含まれている。挿入装置は、インプラント本体の接続部材と接続するように構成された第1の端部を有している。第1の端部は、接続を行なうために複数の方位の間で選択的に位置決め可能である。
【0003】
別の椎間インプラントがUS2010/0094422 A1から公知である。このインプラントは、支持体と回転可能なインサートとを内部に有している。インプラントに取り外し可能に取付けて、インサートと支持体との間の回転を選択的に可能にするように回転可能なインサートと係合させるための据付機器も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US7,935,148 B2
【特許文献2】US2007/0162129 A1
【特許文献3】US2010/0094422 A1
【特許文献4】US2008/0140085 A1
【特許文献5】US2010/0256760 A1
【特許文献6】US2005/0038431 A1
【特許文献7】DE10 2008 045 174
【特許文献8】US2008/0221694 A1
【特許文献9】US2007/0213826 A1
【特許文献10】WO/2003/026538 A1
【特許文献11】US2010/0144105 A1
【特許文献12】US2008/0027544 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、椎体同士の間にインプラントを最終的に位置決めするために利用可能であるという可能性を考慮して、構成および用途の点で簡略化された椎間インプラントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に係る椎間インプラントによって解決される。従属請求項においてさらなる展開が行なわれている。
【0007】
椎間インプラントはコンパクトな構成を有している。インプラントと挿入ツールとの接続を容易に固定したり緩めたりすることができるので、インプラントの挿入手順は単純かつ安全なものである。ツールとインプラントとの接続を緩めると、インサートを中心にインプラントを回転させることによってインプラントを所望の位置に動かすことができる。回転させている間、椎間インプラントは、挿入装置によって安全に保持され、ツールから外れることが防止される。
【0008】
椎間インプラントの構成によって、インプラントの中空の内部空間の大部分が溶融に利用できるようになる。
【0009】
既存の椎間インプラントは、インサートで変形させることができ、アップグレードできるであろう。
【0010】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】椎間インプラントおよび椎間インプラントを挿入するためのツールの実施例の斜視図である。
【図2】図1の一部の拡大図である。
【図3】図2の拡大部の分解斜視図である。
【図4】椎間インプラントに提供されるインサートの斜視図である。
【図5】図4のインサートの別の斜視図である。
【図6】インサートを挿入する前のステップにおける椎間インプラントの上からの斜視図である。
【図7】インサートが取付けられた椎間インプラントの上からの斜視図である。
【図8a)】第1の止め具によって制限される第1の位置にインサートがある状態のインプラントの断面図である。
【図8b)】第2の止め具によって制限される第2の位置にインサートがある状態の椎間インプラントの断面図である。
【図9a)】ツールを椎間インプラントと係合させてインプラントを回転させるステップの概略断面図である。
【図9b)】ツールを椎間インプラントと係合させてインプラントを回転させるステップの概略断面図である。
【図9c)】ツールを椎間インプラントと係合させてインプラントを回転させるステップの概略断面図である。
【図9d)】ツールを椎間インプラントと係合させてインプラントを回転させるステップの概略断面図である。
【図10a)】2つの椎体間に椎間インプラントを挿入して位置決めするステップを概略的に示す図である。
【図10b)】2つの椎体間に椎間インプラントを挿入して位置決めするステップを概略的に示す図である。
【図10c)】2つの椎体間に椎間インプラントを挿入して位置決めするステップを概略的に示す図である。
【図10d)】2つの椎体間に椎間インプラントを挿入して位置決めするステップを概略的に示す図である。
【図10e)】2つの椎体間に椎間インプラントを挿入して位置決めするステップを概略的に示す図である。
【図10f)】2つの椎体間に椎間インプラントを挿入して位置決めするステップを概略的に示す図である。
【図11】椎間インプラントの第2の実施例に係るインサートの上面斜視図である。
【図12】第1の位置においてツールが椎間インプラントに接続された状態の、第2の実施例に係る椎間インプラントの上面図である。
【図13】第2の位置においてツールが椎間インプラントに接続された状態の、第2の実施例に係る椎間インプラントの上面図である。
【図14】インサートがまだ取付けられていない状態の、第3の実施例に係る椎間インプラントの上面斜視図である。
【図15】インサートが取付けられ、第1の状況でツールが椎間インプラントに接続された状態の、第3の実施例に係る図14の椎間インプラントの上面図である。
【図16】第2の状況における図15に係るツールを有する椎間インプラントを示す図である。
【図17】第4の実施例に係る椎間インプラントのインサートの上面斜視図である。
【図18】第4の実施例に係る椎間インプラントのインサートの底面斜視図である。
【図19】第1の位置において第4の実施例に係るインサートおよびツールが椎間インプラントに接続された状態の、椎間インプラントの上面図である。
【図20】第2の位置における図19に係るツールを有する椎間インプラントの上面図である。
【図21】第5の実施例に係るインサートを有する椎間インプラントおよび第1の位置においてそこに接続されたツールの上部からの斜視図である。
【図22】第5の実施例に係る椎間インプラントに対応するインサートの斜視図である。
【図23】第5の実施例に係る椎間インプラントに対応するインサートの別の斜視図である。
【図24】第5の実施例に係るインサートなしの椎間インプラントの斜視図である。
【図25】第5の実施例に係るインサートなしの椎間インプラントの別の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、椎間インプラント1および椎間インプラント1を挿入するためのツール50の第1の実施例の斜視図である。特に図1〜図3に示されるように、椎間インプラントは、上面2と、底面3と、上面2および底面3を接続する側壁4とを含む。側壁4は、内部中空セクション5を規定している。上面2および底面3は、中空の内部セクション5が上面2および底面3に及ぶように開口を有している。したがって、上面2および底面3は、側壁4の上部縁および下部縁によって形成されている。さらに、中空の内部セクション5を2つの部分に分ける中央壁6が設けられていてもよい。側壁4の高さは、インプラントを第1の椎体と第2の椎体との間に挿入できるようなものである。インプラントの高さは、中央壁6の周囲で最大であってもよく、外端に向かって小さくなっていてもよい。椎体の端部板を係合させるために、歯7または他の係合部が上面2および底面3から突き出ている。
【0013】
インプラント1は、2つの対向する長い側面4aと、長い側面4aを接続する2つの対向する短い側面4bとを有している。短い側面4bは丸みを帯びている。側壁4の外形は、たとえば弓形であってもよく、腎臓の形状またはバナナの形状を有していてもよい。
【0014】
特に図2および図3からわかるように、完全に側壁4を貫通して内部中空セクション5に延びる開口8が側壁4に設けられている。開口8は、細長い形状を有しており、好ましくは短い側面4bに沿って周方向にある長さにわたって延びている。開口8は、実質的に長方形の外形を有していてもよく、上面2と底面3との間で垂直方向に側壁の実質的に中央に位置している。
【0015】
図6に示されるように、細長い開口8の周囲の側壁4の内壁に案内溝9が設けられている。案内溝9は、細長い開口の両端から側壁の長い側面4aの各々に延びている。垂直方向、すなわち底面3から上面2への方向の案内溝9の高さは、垂直方向の細長い開口8の高さと同じであるか、またはそれよりも大きい。周方向の案内溝9の長さは、図1〜図7に示されるインサート10を溝に収容でき、案内できるように寸法が決められる。インサート10を中空の内部セクション5に挿入し、溝9に設置すると、溝9はインサート10の脱落を防止する。
【0016】
第1の実施例に係るインプラント1のインサート10は、実質的に中空の円筒形部材である。円筒軸Cは回転軸を規定する。中空の円筒の壁を貫通する同軸スロット11は、互いのほうにわずかに圧縮されることによってスロット11を狭めることができる第1および第2の可撓性の実質的に半球のアーム10a,10bを提供する。スロット11とは反対側の位置に、インサート10は、可撓性アーム10aと10bとの間に延びる中実部12、たとえば立方状の部分を備えている。中実部12の大きさは、アーム10a,10bの可撓性を制限しないようなものである。中実部12は、ツール50との係合のための凹部13を有している。凹部13は、たとえばねじが切られた穴であり得る。
【0017】
第1の可撓性アーム10aは、自由端に隣接したその外壁に、第1の突起14aの形態の第1の止め具を有している。第2の可撓性アーム10bは、自由端に隣接したその外壁に、第2の突起14bの形態の第2の止め具を有している。図8aおよび図8bに示されるように、インサート10はその円筒軸Cによってインプラントの回転軸を与える。したがって、インサート10を挿入したとき、第1の突起14aの内壁への当接によって規定される第1の位置(図8a)と、第2の止め具14bの内壁への当接によって規定される第2の位置(図8b)との間でインプラントに対してインサート10を回転させることができる。インサート10が案内溝9内にあり、第1の突起14aがインプラントの側壁の内壁に対して当接するときに凹部13が第1の突起14aとは反対側の開口8の端部に位置するように、第1の突起14aはスロット11から離れた位置にある。突起14bがインプラント1の側壁4の対向する内壁に対して当接するときに凹部13が細長い開口8の他端にあるように、第2の突起14bは第2の可撓性アーム10bの自由端の位置にある。
【0018】
インサート10の外半径は、案内溝の半径に実質的に対応している。インサートの全体的な大きさは、可撓性アーム10a,10bをわずかに圧縮したときにインサート10を挿入でき、インサート10がインプラントの案内溝9に配置されるようなものである。インサート10は、案内溝9によって導かれ、可撓性アーム10a,10bとインプラントの内壁との間の摩擦力によって保持される。
【0019】
ここで、図1〜図8を参照してツール50について説明する。ツール50は、凹部13との係合のための端部部分53を有する駆動軸52に接続されたハンドル51を備えている。示されている実施例では、端部部分53は、ねじが切られた穴を係合させる、ねじが切られた端部部分である。駆動軸52は、反対の保持部55に接続されたスリーブ54内で回転可能である。スリーブの端部部分56は、凹状に湾曲しており、湾曲は側壁4の短い側面4bの外壁の湾曲に適合している。しかしながら、ツールは、示されている具体的な例に限定されるものではない。ツールは異なる構造を有していてもよい。
【0020】
ここで、図9a)〜図9d)を参照して、ツールとインプラントとの接続について説明する。図9a)に示されるようにインサート10をインプラントに挿入すると、凹部13が開口8のほうを向く。凹部13は、駆動軸52の端部部分53と係合する。ねじが切られた穴およびねじが切られた端部部分の場合、端部部分を穴にねじ込むことによって、インサートとツール50のスリーブ54の端部部分56との間にインプラントの短い側面4bが留められることになる。インプラントとツールとの接続が固定される。ねじ切り接続をわずかに緩めることによって、ツールを有するインサートのインプラントに対する回転が可能になる。この回転は、側壁4への突起14a,14bそれぞれの当接によって両方向に制限される。
【0021】
インサートを含むインプラント1は、生体適合性の材料でできている。たとえば、インプラントは、ステンレス鋼もしくはチタンもしくはニッケルチタン合金、たとえばニチノールなどの生体適合性の金属合金で作ることができ、または、たとえばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などの生体適合性のプラスチック材料で作ることができる。
【0022】
ここで、図10a)〜図10f)を参照して、手術中のインプラントの使用について説明する。図10a)〜図10f)は、隣接する椎骨の2つの椎体間の空間に椎間インプラントを挿入して位置決めするためのステップを概略的に示す。まず、ツール50をインプラント1に接続する。インサート10は、凹部13が開口8の長手方向に細長い開口8のおよそ中央に位置決めされるような位置にある。インサートとツールとの接続を締めることによって、インプラント1がツール50に固定される。次いで、図10a)に示されるように、インプラント1を2つの隣り合った椎骨間の椎間空間に導入する。図中、2つの隣り合った椎骨のうちの一方が椎骨200として示されている。ツール50とは反対側のインプラントの狭い側面4bが先頭側である。示されている方法では、椎体間の空間にアクセスするために後方および側方アプローチを用いて、椎間インプラント1を椎体間の空間に導入する。
【0023】
インプラント1およびツール50が抵抗を受けてさらに押すことができなくなるとすぐに、図10b)に示されるように、駆動軸を回すことによってインプラント1とツールとの固定がわずかに緩められる。これによって留めが緩められ、その結果、インプラント1がインサート10の円筒軸Cを中心に回転可能になる。図10c)および図10d)に示されるように、細長い開口8がインサート10の凹部13に沿って動くようにインプラント1はインサート10の円筒軸を中心に回転する。次いで、図10e)に示されるように、インプラントをその最終位置に移動させる。図10f)に示されるように、その後、ねじが切られた凹部13から駆動軸をねじを回して取り外すことによって、ツール50が切り離される。
【0024】
ツールをインプラントに容易に接続でき、インプラントから容易に切り離すことができるので、インプラントの取り扱いが簡略化される。移植中、インプラントは安全にツールに接続され、抜けることはあり得ない。
【0025】
さらに、インサートの構成によって、中空の内部空間の大半が溶融のために利用できるようになる。インサート10はインプラントとともに留まり、内部で占める空間は非常に小さい。
【0026】
図11〜図13は、インプラントの第2の実施例を示す。インプラント1′は、インサートの構成の点で第1の実施例のインプラント1とは異なっている。第2の実施例のインサート10′は、止め具の構造の点で第1の実施例のインサート10とは異なっている。インプラントおよびインサートの他の部分はすべて第1の実施例と同じである。その説明は繰返さない。インサート10′は、可撓性アームにそれぞれに設けられた2つの別個の止め具の代わりに、第1の可撓性アーム10aの肥厚した端部部分によって形成される突起14を1つだけ有している。肥厚した端部部分14は、インサート10′の軸長に沿って延びており、スロット11に隣接して設けられている。肥厚した端部部分14によって、可撓性アーム10aの端部における外径は、可撓性アーム10bにおける外径よりも大きい。肥厚した端部部分の大きさは、図12および図13に示されるように2つの位置の間でのインプラントの回転を制限できるようなものである。インサート10′が第1の位置にあるとき、インサートの凹部13は開口の長手方向に細長い開口8のおよそ中央にある。肥厚した部分14は、側壁4の長い側面4aの一方に対して当接する。ツール50とインプラントとの接続は、図12に示されるように実質的に直線的である。インサート10′をインプラント1′に対しておよそ90°だけ回転させると、肥厚した端部部分14は側壁の反対側の長い側面4aに対して当接し、インサート10′の凹部13は肥厚した部分14とは反対側の細長い開口の一端にくる。ツールとインプラント1′との接続は、図13に示されるように実質的に垂直である。
【0027】
インプラントの第3の実施例が図14〜図16に示されている。インプラント1″は、案内溝の位置の点で第1の実施例に係るインプラントとは異なっている。案内溝90は、長い側面4aの領域における側壁4の内壁に互いに対向して位置する2つの溝部からなっている。案内溝90の溝部は、細長い開口8に対して距離をおいたところに位置している。インサート10を中空の内部セクション5に挿入すると、可撓性アーム10a,10bの一部がそれぞれ案内溝90に受けられる。図15からわかるように、案内溝90の位置は、インサートを挿入したときに凹部13と開口8との間に距離があるようなものである。
【0028】
図15は、ツール50の駆動軸52の端部部分53の、インサート10の凹部13との係合を示す。インサートと開口8との間に距離があるので、接続は固定されず、インサート10を中心にインプラントを回転させることができる。ツールとインサートとのさらなる係合により、可撓性アーム10a,10bをわずかに圧縮することによってインサートが開口に対して引っ張られ、その結果、インプラントとツールとの接続が固定される。インプラント1″は、図11〜図13に係るインサート10′も備え得る。
【0029】
インプラントの第4の実施例が図17〜図20に示されている。第4の実施例に係るインプラント1″′は、インサートの可撓性の部分が細長い開口のほうに向いているように取付けることができるという点で前の実施例のインサート10および10′とは異なるインサート100を備えている。インサート100は、前の実施例と同様に実質的に中空の円筒形部品であり、2つの可撓性アーム110a,110bを提供するスロット111を有している。スロット111とは反対側に、中実部112が可撓性アーム110aと110bとの間の空間に延びている。中実部112は、ねじが切られた貫通穴であり得るツールのための係合部113を有している。スロット111から離れるほうを向いた外側に、インサート100は、ねじが切られた貫通穴113から第1の可撓性アーム110aの側とは非対称に延びる突起114を備えている。突起114は、2方向へのインプラントに対するインサート100の回転を制限するための止め具の役割を果たす。インサート100はさらに、ツール50の端部部分53を導くことができるようにスロットの位置に設けられた円形凹部115を備えている。
【0030】
図19および図20は、インサート100が中に取付けられた状態のインプラント1″′の上面図である。インサート100は、可撓性アーム110a,110bが開口8のほうに向けられるように取付けられる。したがって、ねじが切られた貫通穴113は開口8からある距離を有する。ツール50の駆動軸52の端部部分53は、導かれて細長い開口8を貫通し、ねじが切られた貫通穴113と係合する。円形凹部115の大きさは、端部部分53が通ることができるようなものである。端部部分53と貫通穴113とのねじ切り接続を締めると、可撓性アーム110a,110bがわずかに圧縮され、開口8に対して引っ張られる。それによって、インプラントとツールとの接続が固定される。この接続を緩めることによって、インプラントの回転が可能になる。図19に示されるように、突起114が側壁の長い側面4aのうちの一方に対して当接するときに、ツールに対するインプラントの動きが第1の方向に制限される。この位置では、ねじが切られた貫通穴113は、細長い開口8のおよそ中心を指し示している。ツールに対してインプラントを回転させると、突起114の他方の部分が側壁4の他方の長い側面4aに対して当接して、第2の方向に回転運動を制限する。運動の範囲はおよそ90°である。
【0031】
インプラントの第5の実施例が図21〜図25に示されている。前の実施例と同一または類似の部品および部分は同じ参照数字で表わされているため、その説明は繰返さない。この実施例では、インサート1000の突起14b’がアーム10b上で周方向にスロット11から離れた位置に位置決めされている。突起14b’の位置は、インサート1000がインプラントに対して図8bに示されるものと類似の端部位置に回転させられたときに突起14b’が溝9にはまるように選択される。これは、外科医または他の医師に対して、このような端部位置に到達したというフィードバックを与え得る。
【0032】
さらに、可撓性アーム10a,10bの内壁と対向する中実部12’の側壁は各々、インプラント1″″の内壁同士の間へのインサート1000の挿入を容易にするために、湾曲した凹部12aを有している。
【0033】
インプラント1″″はさらに、側壁4に細長い開口80を有していてもよく、さらなる溝90a,90bを有していてもよい。特に、長い側面4aに、骨材料および血管の内方成長を可能にするようにたとえばさらなる細長い開口80が存在していてもよい。一方、長い側面4aの溝90a,90bは、内部中空セクション5へのインサート1000のより容易な挿入に役立ち得る。このような実施例では、一旦インサート1000が溝90a,90bの位置で内部中空セクション5に挿入されると、インサート1000はインプラント1″″の残りの部分に対してずらされて溝9にはまることができる。
【0034】
これらの実施例の変形例が可能である。インプラントの外形および形状は、示されている例とは異なっていてもよい。たとえば、外形はその他の形状を有していてもよく、円形、長方形または楕円形などであってもよい。側壁4の高さは、インプラント全体を通じて一定であってもよい。中央壁は省略可能である。上述のように細長い開口と案内溝とインサート部品とを備えることによって、このような開口を持たない既存の椎間インプラントを適合させることも可能である。
【0035】
インサートは止め具を有している必要はない。ツール50をインプラントに接続したとき、細長い開口8の端部へのツールの端部部分53の当接によって、相対的な動きが制限される。しかしながら、止め具は、ツールがまだ接続されていないときにインサートをインプラントに挿入する場合にインサートの動きを制限するのに有用である。さまざまな実施例の構造は置き換えることができる。たとえば、示されている実施例のいずれにおいても2つの溝部90を備えた構成を有することが可能である。止め具の役割を果たす突起の位置および形状はさまざまであり得る。特に形状は異なり得る。細長い開口8を別の位置に設けることができ、および/または、いくつかの開口を設けることができる。
【0036】
インサートとツールとの接続は、ねじ切り接続である必要はない。インサートとツールとの接続は、容易に固定でき緩めることができるその他の接続、たとえばスナップ留め接続であり得る。
【符号の説明】
【0037】
2 上面、3 底面、4 側壁、5 中空空間、8 細長い開口、10,10′,100 インサート、10a,10b,110a,110b ばね部、13,113 係合部、50 ツール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の椎体を係合させるように構成された上面(2)と、第2の椎体を係合させるように構成された底面(3)と、前記上面(2)および前記底面(3)を接続する側壁(4)と、前記側壁によって規定される中空空間(5)と、前記側壁(4)を貫通して前記空間に延びる細長い開口(8)とを有する椎間インプラントであって、前記細長い開口(8)は周方向にある長さを有し、
前記インプラントはさらに、
前記空間内に設けられた回転可能なインサート(10,10′,100)を備え、前記インサート(10,10′,100)は、前記側壁(4)との摩擦係合によって前記空間内に前記インサートを保持するばね部(10a,10b,110a,110b)を備え、前記インサートは、前記開口を貫通するツール(50)と係合するように構成された係合部(13,113)を備える、椎間インプラント。
【請求項2】
前記ばね部は、前記側壁(4)の対向する内壁部を係合させる2つの可撓性アーム(10a,10b,110a,110b)を備える、請求項1に記載の椎間インプラント。
【請求項3】
前記インサート(10,10′,100)は前記椎間インプラントに回転軸(C)を与え、前記回転軸は前記上面(2)および前記底面(3)を貫通して延びている、請求項1または2に記載の椎間インプラント。
【請求項4】
前記インサート(10,10′,100)は案内溝(9,90)に導かれる、請求項1から3のいずれかに記載の椎間インプラント。
【請求項5】
前記案内溝(9,90)は、前記側壁(4)の内壁部に設けられる、請求項4に記載の椎間インプラント。
【請求項6】
前記案内溝(9)は前記開口の周囲に設けられる、請求項4または5に記載の椎間インプラント。
【請求項7】
前記案内溝(90)は、互いに実質的に対向して配置された2つの案内溝部を備える、請求項4から6のいずれかに記載の椎間インプラント。
【請求項8】
前記インサート(10,10′,100)は実質的に円筒形をしており、前記壁を貫通して軸方向に延びるスロット(11,111)を有する、請求項1から7のいずれかに記載の椎間インプラント。
【請求項9】
前記係合部は、前記ツールのための係合構造を有する開口(13)であり、前記開口は前記スロット(11)から離れるほうを向いている、請求項8に記載の椎間インプラント。
【請求項10】
前記係合部は、前記ツールのための係合構造を有する開口(113)であり、前記開口は前記スロット(111)のほうを向いている、請求項8に記載の椎間インプラント。
【請求項11】
前記空間内で前記インサートの回転を制限する少なくとも1つの止め具(14a,14b,14,114)が設けられる、請求項1から10のいずれかに記載の椎間インプラント。
【請求項12】
前記少なくとも1つの止め具は、前記インサートに対する前記インプラントの回転をおよそ90°に制限する、請求項11に記載の椎間インプラント。
【請求項13】
前記側壁(4)は前記インプラントの高さを規定し、垂直方向の前記インサート(10,10′,100)の大きさは前記インプラントの高さよりも小さい、請求項1から11のいずれかに記載の椎間インプラント。
【請求項14】
前記側壁(4)は、前記細長い開口に沿って湾曲を有し、前記回転可能なインサート(10,10′,100)は、前記側壁の前記湾曲に対応する湾曲を備えた外壁を有する、請求項1から12のいずれかに記載の椎間インプラント。
【請求項15】
少なくとも第2の細長い開口は、前記側壁を貫通して前記空間に延びている、請求項1から14のいずれかに記載の椎間インプラント。
【請求項16】
前記側壁の内壁は、前記空間への前記インサートの挿入を容易にするために少なくとも1つの溝を含む、請求項1から15のいずれかに記載の椎間インプラント。
【請求項17】
前記少なくとも1つの止め具のうちの1つは前記スロットから間隔が空いている、請求項11から16のいずれかに記載の椎間インプラント。
【請求項1】
第1の椎体を係合させるように構成された上面(2)と、第2の椎体を係合させるように構成された底面(3)と、前記上面(2)および前記底面(3)を接続する側壁(4)と、前記側壁によって規定される中空空間(5)と、前記側壁(4)を貫通して前記空間に延びる細長い開口(8)とを有する椎間インプラントであって、前記細長い開口(8)は周方向にある長さを有し、
前記インプラントはさらに、
前記空間内に設けられた回転可能なインサート(10,10′,100)を備え、前記インサート(10,10′,100)は、前記側壁(4)との摩擦係合によって前記空間内に前記インサートを保持するばね部(10a,10b,110a,110b)を備え、前記インサートは、前記開口を貫通するツール(50)と係合するように構成された係合部(13,113)を備える、椎間インプラント。
【請求項2】
前記ばね部は、前記側壁(4)の対向する内壁部を係合させる2つの可撓性アーム(10a,10b,110a,110b)を備える、請求項1に記載の椎間インプラント。
【請求項3】
前記インサート(10,10′,100)は前記椎間インプラントに回転軸(C)を与え、前記回転軸は前記上面(2)および前記底面(3)を貫通して延びている、請求項1または2に記載の椎間インプラント。
【請求項4】
前記インサート(10,10′,100)は案内溝(9,90)に導かれる、請求項1から3のいずれかに記載の椎間インプラント。
【請求項5】
前記案内溝(9,90)は、前記側壁(4)の内壁部に設けられる、請求項4に記載の椎間インプラント。
【請求項6】
前記案内溝(9)は前記開口の周囲に設けられる、請求項4または5に記載の椎間インプラント。
【請求項7】
前記案内溝(90)は、互いに実質的に対向して配置された2つの案内溝部を備える、請求項4から6のいずれかに記載の椎間インプラント。
【請求項8】
前記インサート(10,10′,100)は実質的に円筒形をしており、前記壁を貫通して軸方向に延びるスロット(11,111)を有する、請求項1から7のいずれかに記載の椎間インプラント。
【請求項9】
前記係合部は、前記ツールのための係合構造を有する開口(13)であり、前記開口は前記スロット(11)から離れるほうを向いている、請求項8に記載の椎間インプラント。
【請求項10】
前記係合部は、前記ツールのための係合構造を有する開口(113)であり、前記開口は前記スロット(111)のほうを向いている、請求項8に記載の椎間インプラント。
【請求項11】
前記空間内で前記インサートの回転を制限する少なくとも1つの止め具(14a,14b,14,114)が設けられる、請求項1から10のいずれかに記載の椎間インプラント。
【請求項12】
前記少なくとも1つの止め具は、前記インサートに対する前記インプラントの回転をおよそ90°に制限する、請求項11に記載の椎間インプラント。
【請求項13】
前記側壁(4)は前記インプラントの高さを規定し、垂直方向の前記インサート(10,10′,100)の大きさは前記インプラントの高さよりも小さい、請求項1から11のいずれかに記載の椎間インプラント。
【請求項14】
前記側壁(4)は、前記細長い開口に沿って湾曲を有し、前記回転可能なインサート(10,10′,100)は、前記側壁の前記湾曲に対応する湾曲を備えた外壁を有する、請求項1から12のいずれかに記載の椎間インプラント。
【請求項15】
少なくとも第2の細長い開口は、前記側壁を貫通して前記空間に延びている、請求項1から14のいずれかに記載の椎間インプラント。
【請求項16】
前記側壁の内壁は、前記空間への前記インサートの挿入を容易にするために少なくとも1つの溝を含む、請求項1から15のいずれかに記載の椎間インプラント。
【請求項17】
前記少なくとも1つの止め具のうちの1つは前記スロットから間隔が空いている、請求項11から16のいずれかに記載の椎間インプラント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a)】
【図8b)】
【図9a)】
【図9b)】
【図9c)】
【図9d)】
【図10a)】
【図10b)】
【図10c)】
【図10d)】
【図10e)】
【図10f)】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a)】
【図8b)】
【図9a)】
【図9b)】
【図9c)】
【図9d)】
【図10a)】
【図10b)】
【図10c)】
【図10d)】
【図10e)】
【図10f)】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2013−595(P2013−595A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−133872(P2012−133872)
【出願日】平成24年6月13日(2012.6.13)
【出願人】(511211737)ビーダーマン・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディートゲゼルシャフト (30)
【氏名又は名称原語表記】BIEDERMANN TECHNOLOGIES GMBH & CO. KG
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月13日(2012.6.13)
【出願人】(511211737)ビーダーマン・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディートゲゼルシャフト (30)
【氏名又は名称原語表記】BIEDERMANN TECHNOLOGIES GMBH & CO. KG
【Fターム(参考)】
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