椎間スペーサ
【課題】 浸襲性の少ない椎間脊椎融合の外科処置を行うための椎間スペーサを提供する。
【解決手段】 スペーサ125もしくは130には一連の細孔部もしくは空隙部120をその表面に設ける。これら細孔部120(これらは円形、矩形または他の任意の形状である)は、細孔中への骨成長を可能にして脊椎安定性を向上させ、最終的に隣接脊椎間の融合を指令すると共にスペーサを所定位置にする。突出部もしくはスパイク153を設けることもでき、これらは骨表面に侵入すると共にスペーサの固定および安定化を支援する。
【解決手段】 スペーサ125もしくは130には一連の細孔部もしくは空隙部120をその表面に設ける。これら細孔部120(これらは円形、矩形または他の任意の形状である)は、細孔中への骨成長を可能にして脊椎安定性を向上させ、最終的に隣接脊椎間の融合を指令すると共にスペーサを所定位置にする。突出部もしくはスパイク153を設けることもでき、これらは骨表面に侵入すると共にスペーサの固定および安定化を支援する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、髄内骨および脊椎の固定具を含む経皮的骨および脊椎の安定化、固定および修復のためのシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
骨折部を修復するための髄内固定具
骨折部の修復に使用する髄内固定具は当業界にて周知されている。一般に、長く狭いネイルの形態を有するこの種の固定具は骨の髄内キャビティに長手方向に挿入されて、重大な骨折部の2つもしくはそれ以上のセクションを互いに接続すると共に合体ブレースすることにより治癒を促進する。
【0003】
この種類の固定具は、挿入後のその位置を堅固に保持するよう充分大きい半径方向直径を持たねばならない。固定具を所定位置に保持する問題は、最も長い骨の髄内キャビティが均一でなく、寧ろ骨の中央で狭くかつ端部で拡開するという事実により複雑化する。さらに、この問題はこの種のキャナルに挿入されるロッドが回転運動および屈曲運動につき安定化を一般に与えないという事実によっても複雑化する。
【0004】
しばしば、骨髄質は固定具の挿入前に絞り出して、固定具のための余地を作成せねばならない。この種の絞り出しは骨内の組織を破壊し、従って適正な治癒を阻害しうる。従って、各種の髄内ネイルおよび固定具は、挿入に際し狭い形状を有すると共に次いで半径方向外方に拡大して髄内キャビティの形状に適合して内部に堅固に保持されるよう設計されている。
【0005】
たとえばアギンスキーに係る米国特許第4,204,531号(参考のためここに引用する)は、拡大メカニズムを有する髄内ネイルを記載している。このネイルは外側チューブ状シースと、このシース内で長手方向に移動しうるロッド形状の部材と、ネイルの先(内側)端部に2個もしくはそれ以上の拡張しうる長手ブランチを持った拡大性部材とを備える。ネイルは最初に骨先端部の髄質キャビティに挿入され、ネイルの後端部から出して骨の端部から突出させる。次いで、ロッド形状の部材を引き戻して、拡大部材のブランチを半径方向外方に展延させることにより、髄内キャビティの内部にネイルの先端部を固定する。
【0006】
同様に、ラフトプーラス等に係る米国特許第4,854,312号(参考のためここに引用する)は、拡大性髄内ネイルを記載している。このネイルは2個の長形部材で形成される。これら部材のうち第1の部材は交連チャンネルを有し、これは第2部材に摺動係合する。ネイルが髄内キャビティに挿入された後、第2部材を第1部材に対し長手方向に相対摺動させて第2部材の端部を屈曲させ、ネイルがキャビティ内で横方向に延びると共に所定位置に固定されるようにする。
【0007】
セガルに係る米国特許第4,313,434号(参考のためここに引用する)
は、髄内キャビティの内側に可撓性かつ膨脹性のブラダーを用いる長い骨の骨折部の固定方法を記載している。小開口部を骨に穿設し、ブラダーを穴を介して髄内キャビティに挿入する。次いでブラダーを無菌空気で膨脹させると共に封止して骨を固定する。骨折部が治癒した後、ブラダーを縮ませて除去する。
【0008】
両者ともベルガーに係る米国特許第5,423,850号および第5,480,400号(参考のためここに引用する)は、バルーンカテーテルを用いる骨固定の方法および装置を記載しており、遠位端部に収縮したバルーンを有するカーテルを、骨折部位を越えて髄内キャビティに挿入する。第5,423,850号の米国特許において、バルーンはそれをキャビティを通して供給される案内ワイヤに沿って案内した後、カテーテルを導入する。キャビティ中に充分挿入された後、バルーンを膨らませてこれを所定位置に固定し、カテーテルをバルーンに対し密接させて骨折部に圧縮を与える。
【0009】
上記全ての特許公報に記載された髄内固定具およびその移植方法は、拡大性髄内固定具の1部を患者の皮膚を介して突出させて残すことを必要とする。しかしながら、この種の突出部分は術後感染の傾向を増大させると共に骨の運動性を阻害する。従って本発明の目的は、この種の突出部の必要性を排除する方法および装置を提供することにある。
大きい骨の骨折部に加え、長く小さい骨の骨折も極めて一般的に生ずる。しかしながら、骨折部安定化と共に早期の運動性を可能にする簡単な処置は現在可能でない。
【0010】
オルソペディックス、第13(2)巻、第213〜215頁(1990)における「中手および指節骨の骨折の閉鎖髄内ピニング」と題する論文(ここに参考のため引用する)においてバレラおよびカールは、K−ワイヤを用いる指骨折部の1つの固定方法を記載している。骨折した指の骨を固定するため、この種のワイヤの数本を僅かに屈曲させて1本ずつ順次に髄内キャビティ中に挿入する。各ワイヤは、骨の1端部近くに穿設された各穴を介して挿入される。典型的には、骨を固定すべく2〜5本のワイヤが必要とされる。挿入の後、各ワイヤを骨表面と整列して切断し、皮膚を挿入部位の上で閉鎖する。
【0011】
しかしながら、骨折した小さいチューブ状骨につき現在選択される処置は細い金属ロッドの挿入である(髄内ネイリング)。このロッドが移動するのを防止するため、ロッドの端部を骨の外側から突出して残し、これはたとえばロッドの端部が指先端から突出する中足骨折部ネイリングで行われる。しかしながら、この固定は患者が指または骨折肢を用いるのを防止する。さらに良好な回転安定化を可能にしない。さらに、これは骨髄質と人体外部との間の連通に基づく感染をもたらしうる。
【0012】
突出ロッドの使用なしに小さい骨を固定するための幾つかの特許および方法が当業界に現在存在する。その例はたとえばR.C.レビス・ジュニア、M.ノルジケ、K.ダンカン、クリニカル・オルソペディックス・リレーテッド・リサーチ(1987)、第214巻、第85〜92頁;M.D.ノルジケ、R.C.レビス、H.F.ヤンセン、K.H.ダンカン、ジャーナル・オブ・ハンド・サージェリー(1988)、第13/11巻、第128〜134頁;C.D.バレラ、J.B.カール、オルソペディックス(1990)、第13/2巻、第213〜215頁;並びにWO 94/12112号、US 4204531号およびUS 4854312号を包含する。
【0013】
特に1つの方法がロイスC.レビス等、クリニカル・オルソペディックス・アンド・リレーテッド・リサーチ、テクニカル・オルソペディックス(1989)、第1巻、第18〜91頁における「手の骨折部を処置するための拡大性髄内装置」と題する論文に記載されている。この論文において拡大性髄内ネイルは骨折部を開いた後に挿入され、ネイルは骨折部を介して挿入される。ネイルは骨折部を介して挿入されるのであって骨端部からは挿入されない。しかしながら、骨表面の露出を必要としない小さい骨に対する内部固定具の経皮的な最小の外傷の挿入につきニーズがまだ存在する。
【0014】
指先端部を介する髄内ネイリングもC.D.バレラ;J.B.カール、オルソペディックス(1990)、第13/2巻、第213〜215頁の「中手骨折部の閉鎖髄内ピニング」と題する論文に検討されている。しかしながら、このネイリングは拡大性ネイルを含まない。
上記した多くの骨固定に関する特許は異なる金属装置(すなわちニチノール(登録商標)、チタニウムなど)の移植を含む。他の可能性は、拡大性髄内骨固定具として着脱自在な膨脹性バルーンを使用することである。バルーンにより骨固定するための特許が今日存在するが、これらは髄内ネイリングを与えない。これらは一方の骨折部を他の骨折部の方向へ引張る際にしか接合作用を与えない。これらの例は米国特許第5,423,850号および第5,480,400号(上記)を包含する。
【0015】
従って、骨折部安定化の現在の技術には各種の顕著な欠点が存在する。これら問題に対処するため、本発明は下記する各種の本発明の特徴を用いて達成される髄内ネイリングを与える。たとえば骨折部の中心に位置せしめると共に両骨セグメントにわたり延在させる着脱自在な髄内バルーンを使用することにより、従来技術の多くの欠点に対処する改良装置が提供される。この種の装置は患者に迅速な術後の骨折安定化を与えると共に四肢の運動性をもたらし、かつ感染のチャンスを減少させ、さらに必要に応じ骨治癒の後の除去の可能性をもたらす。
椎間板切除およびスペーサ設置
背疼痛は、しばしば円板病理学および脊椎不安定性に起因する広範な病気である。現在、脊椎融合の選択処置は円板除去に続く、ネジを使用し或いは使用しない椎間スペースへのプレートの移植を含む(たとえば米国特許第5520690号、米国特許第5522816号および米国特許第5529899号参照)。さらに、この手順は椎間スペースにおける骨移植体の移植をも含む。
【0016】
人工的椎間板を用いる特許および用途も現在存在するが、これらは各特許(米国特許第4,759,769号;WO 92/14423号;WO 90/00037号;WO 90/37170号)にて成功することがまだ証明されていない。現存する処置は、初期脊椎内板組織の除去および椎間支持体の設置のための初期手術を含む。椎間スペーサおよび安定具を椎間スペース内に設置した後、種々異なるカッターおよび開創器の使用により損傷板を除去すると共に椎間骨表面を清浄する(米国特許第4,904,260号および米国特許第5,645,598号)。次いで骨移植体を移植して脊椎融合を容易化させる。
【0017】
上記方法を用いる手順は全て、背中および/または腹部の実際の開口および切除を必要とし、或いはこの手順を腹腔鏡により行うことを必要とする。従って、現在では経皮的な非腹腔鏡型の最小浸襲性技術により脊椎融合の現在の方法を容易化させると共に改善するニーズが当業界に存在する。
さらに円板切除法は椎間スペースにスペーサを介装して、脊椎融合が骨形成により達成されるまで脊椎を支持することを含む。現存するスペーサは、椎間領域に保持するのに必要とされるスペースに応じ一定の直径にて作成される。ネジを回転させて拡大する或る種のスペーサも開示されているが、これは上方向および下方向にのみ拡大し、従ってまだ大きい挿入プロフィルを有する。これは最小浸襲性技術にて経皮的に装置を挿入することができない。以下一層詳細に検討するように、小直径にて形成されると共に移植されると半径方向に拡大しうるスペーサもしくは人工器具につきニーズが存在する。さらに同じく下記に検討するように、上記各方法で使用すべく同じく経皮的に機能しうるような椎間組織抽出器についてもニーズが存在する。
椎間板人工器具
椎間板人工器具も当業界にて公知である。この種の人工器具は一般に、スペースから円板物質の全部もしくは1部を除去した後に椎間スペースに挿入される。
【0018】
挿入の後、人工器具は互いに離間した2つの隣接脊椎を保持して、脊椎を解剖学上正確な間隔および配向にて維持する。人工器具を移植する手術の後、骨は一般に脊椎から人工器具中および器具周囲に成長することにより、人工器具を所定位置に堅固に保持すると共に相互の脊椎の望ましくない運動を防止する。
レイ等に係る米国特許第4,772,287号および第4,904,260号(参考のためここに引用する)は、一般に円筒形状を有すると共に円板物質の性質と同様な性質を有するゲル物質を含有した人工器具円板カプセルを記載している。円板物質の1部を除去した後、2個のこの種の人工器具カプセルを円板スペースに移植し、1個は脊椎の矢状軸のいずれかの側に移植する。これらカプセルは収縮状態で移植し、次いでゲルにより隣接椎骨を離間保持するのに充分な圧力まで膨脹させることができる。
【0019】
円板スペースに人工器具円板カプセルを移植するには、患者の背中を開口すると共に部分椎弓切除術を行って円板スペースに接近する必要がある。この種の開口椎弓切除術は危険、副作用および長い回復時間を伴う主たる手術法である。たとえば米国特許第3,875,595号、第4,349,921号、第3,867,728号、第4,554,914号、第4,309,777号、第3,426,364号および第4,636,217号(参考のためここに引用する)に記載された他の円板人工器具も同様に、その移植のための主たる手術を必要とする。
【0020】
膨脹もしくはヘルニア円板を処置するための開口手術に伴う危険および長い回復期間に呼応して、経皮円板切除術の最小浸襲性外科技術が開発されている。経皮円板切除術においては、狭いカニューレを患者側における小さい切開部を介して横方向に円板スペースに挿入する。円板への横方向アプローチは、当業界で公知の他の手術法により必要とされる骨および/または相当量の筋肉の切断の必要性を回避する。手術用具をカニューレに通過させて円板物質を切除し、周囲の神経に対する円板の外方向圧力を軽減し、従って膨脹もしくはヘルニア円板により生ずる疼痛を緩和させる。
【0021】
経皮円板切除術は外来患者の手法として行うことができ、成功すれば患者は僅か短い回復期間の後に充分活動すべく帰宅することができる。この手法は病例の約70%もしくはそれ以下で成功しているが、開口背部手術により得られる充分な処置範囲を可能にしない。たとえば、当業界で知られた円板人工器およびこの種の円板器具の移植方法は、経皮的アプローチに使用するには適していない。
【0022】
脊椎は、人体部分が懸垂される骨格の軸である。脊椎の椎骨本体は椎間板により分離され、これら椎間板は軸方向骨格の椎骨セグメント間のクッションとして作用する。これら円板は繊維質の環および核で構成され、後者はゲル状物質であって環内に含有される。核の組織が環から膨出すると円板ヘルニアが生ずる。ヘルニア核は円板に近接した脊椎神経に圧力を及ぼして、疼痛または筋肉調節の喪失をもたらしうる。この種の病例における正常な手法は開口手術にてヘルニア円板組織を除去することであるが、これは長い回復期間および潜在的に重大な副作用を伴う方法である。
【0023】
開口脊椎手術の危険性および複雑性に鑑み、ヘルニア組織を除去するための最小浸襲性手法が開発されている。上記したこの種の手法の一形態は経皮円板切除術であり、円板における核のヘルニア組織を患者の人体から除去する。この種の方法に関する装置がたとえば米国特許第5,131,382号(参考のためここに引用する)に記載されている。核組織は、好ましくは患者側における小さい切開部を通して椎間スペースに挿入されるカニューレを介し除去される。切開部をできるだけ小さくすると共に人体を背側でなく横向にすることにより患者に対する外傷を最小化させる。ヘルニア組織の除去はしかしながら長時間の過程であり、しばしば再切開用具の除去および再挿入を多数回にわたり必要とする。 或る種の円板切除法においては、組織を除去した後に円板人工器具を挿入して核およびできれば環を上記したように置換し、たとえばPCT出願公開WO 96/11643号(その開示を参考のためここに引用する)に見られる。一般に2つの隣接脊椎が互いに人工器具の周囲で融合することが望ましい。人工器具の挿入を容易化させると共にその後の骨融合を促進させるには、円板組織を円板切除術に際し充分清浄すべきである。しかしながら、当業界で知られた経皮円板切除法および装置は一般にこの種の充分な清浄を達成しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、骨折部を髄内固定するための改良装置および方法を提供することある。 本発明の目的は、上腕骨および他の長い骨を固定するための装置および方法を提供することにある。
本発明の目的は、手および足の指節骨または他の小骨の骨折部を固定するための装置および方法を提供することにある。
【0025】
本発明の目的は、最小浸襲性外科手術を用いて髄内骨固定を可能にし、一般に手術外傷を減少させると共に一層迅速な術後回復を可能にする装置および方法を提供することにある。
本発明の目的は、経皮的骨および脊椎の安定化、固定および修復のための装置および方法を提供することにある。
【0026】
さらに本発明の目的は、骨折部を安定化するための経皮挿入される髄内骨固定装置を提供することにある。
本発明による幾つかの特徴の目的は、短時間の固定にて骨の運動性を可能にする髄内固定のための装置および方法を提供することにある。
本発明の他の特徴の目的は、髄内固定の後の術後感染の危険を減少させることにある。
【0027】
さらに本発明の目的は、髄内ネイリングのための膨脹性バルーン固定装置を提供することにある。
さらに本発明の目的は、装置を膨脹および収縮させるための弁を有する固定装置を提供することにある。
さらに本発明の目的は、骨の内表面に装置を固定するための固定具材を有する髄内装置を提供することにある。
【0028】
さらに本発明の目的は、椎間脊椎融合の浸襲性の少ない外科処置を行う方法および装置を提供することにある。
さらに本発明の目的は、椎間組織の剔出および椎間スペーサの設置を含む椎間脊椎融合を処置するための最小浸襲性の方法および装置を提供することにある。
本発明の目的は、椎間板スペースに移植するための改良円板人工器具を提供することにある。
【0029】
さらに本発明による幾つかの特徴の目的は、経皮円板切除術の最小浸襲性方法を用いる移植に適した円板人工器具を提供することにある。これら本発明の特徴の他の目的は、人工器具の経皮移植に使用する装置および方法を提供することにある。
さらに本発明の目的は、第2回目の手術過程を必要とせずに移植後に寸法を長く増大させうる人工器具を提供することにある。
【0030】
本発明により幾つかの特徴の他の目的は、最小浸襲性円板切除術の改良方法を提供する
ことにある。
本発明の他の目的は、以下の説明および図面を参照して明らかとなるであろう。
【0031】
図19は、本発明によりここに提供する骨固定および離間のための方法および装置の種類を要約し、骨固定、離間の装置、並びに人工器具についても簡略のため骨治療具として示す。同様に人工器具、移植体および固定具と言う用語もここでは互換的に用いられる。
【課題を解決するための手段】
【0032】
下記するように本発明によれば、これら装置およびその関連方法は3種の一般的カテゴリーもしくはグループに分類することができる:すなわち(I)自己拡大性移植体;(II)外力により拡大しうる移植体;および(III)固相形成装置。本発明による装置はこれら各グループの具体例に従って作成することができ、髄内もしくは椎間のいずれかの用途に用いることができる。
骨固定装置および方法の種類
グループI:自己拡大性移植体。自己拡大性移植体および関連方法は、移植体材料自身の内部に蓄えられたエネルギーを用いて、保持メカニズムもしくは抑制力が移植体から解放された際に移植体材料がその初期形状および/または直径に復帰するようにする。好適具体例において、材料は移植に際し使用すべく小直径に拘束されると共に、移植後には骨を固定すべく大直径まで移行する。この方法の実施はたとえばニチノールのような応力誘発マルテンサイトの性質を利用する形状記憶を示す材料を用いるのが好適であるが、他の材料も使用することができる。用いる保持メカニズムを装置中へ或いはその周囲に一体化することができる。
【0033】
グループII:外力により拡大しうる移植体。外力により拡大しうる移植体は、装置内には存在せずに外部供給源から生じて移植体の形状を変化させるエネルギーを用いる。多くの異なる種類の外力を本発明により用いることができる。好適具体例において、少なくとも4種の代案外力が考えられる:
(1)熱。各種の材料および/または材料の形状を用いることができ、ここでは移植体に外熱(機械的供給源または体熱自身)を加えて移植体の形状を変化させる。好適具体例において、これは移植体材料の性質から生ずる。特に形状記憶合金を用いて、装置が小直径から大直径まで新たな形状を得るようにすることができる。
【0034】
(2)バルーン拡大性装置。第2シリーズの外力具体例においては、拡大性バルーンを用いて移植体の形状を変化させる。これら具体例において、バルーンの膨脹は移植体材料の可塑変形を生ぜしめて装置の変形をもたらす。
(3)バルーン装置。第3シリーズの外力具体例において、移植体装置はそれ自身バルーンである。このバルーン装置は、バルーン内部に液体を挿入することにより装置直径を拡大させることにより液圧を用いて膨脹させる。これら具体例において、密封バルーン内の流体の圧力はエネルギーを与えてバルーンをその拡大形状に支持する。
【0035】
(4)外力装置。第4シリーズの外力具体例においては、力を移植体に加えるメカニズムを用いる。これら具体例において、システムは力が内方向に移行するよう設計され、移植体内腔から偏心的に作用して移植体直径の増大を生ぜしめる。
グループIII。固相形成装置。これら装置においては、固化する(たとえば重合により)材料をバルーン中へ挿入して新たな形状を有する固体を形成させる。この材料は2−成分セメント特性を有することができ、エポキシもしくはポリマーで形成することができる。この材料をバルーン中に圧入し、温度もしくは湿度の変化により固化させる。
ここに開示するように、これら種類の各装置および方法を髄内もしくは椎間処置に使用することができる。さらに本発明の種々異なる具体例につき以下別々のセクションで検討するが、各セクションの開示は相互に補完すると共に相関することを意味することが了解されよう。従って、ここに示す各具体例の開示は、他の具体例の開示にも該当しかつ補充することができる。本発明の例として、各種の異なる骨治療装置および方法につき以下一層詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
髄内固定具
本発明の髄内固定具の具体例においては、半径方向拡大性の髄内固定具を骨折部に経皮挿入する。固定具は髄質キャナルより直径が小さい骨における穴を介して挿入される。好適具体例において、固定具は好ましくは注射器を用い骨折部の端部を介し髄質中に挿入される。挿入に対し固定具は閉鎖形状、すなわち第1減少直径に維持される。固定具は、これが骨における骨折部位にわたり延在するよう挿入される。固定具を骨内に適正に設置した後、注射器を抜き取る。固定具は骨内に外方突出部なしに全体的に設置するのが極めて好ましい。
【0037】
設置した後、固定具は開放形状(すなわち第2拡大直径)を想定して半径方向外方に拡大すると共に、それ自身で所定位置に固定する。拡大すると半径方向拡大性装置は骨を貫通し、骨折部の両側にわたって延在し、従って髄内骨固定具として機能する。かくして拡大固定具は骨折片を合体保持すると共に、骨に対する軸方向および横方向の両力に補強をもたらす。ここに開示したような固定具は、たとえば大腿骨、頸骨、腓骨、上腕骨、尺骨および橈骨のような長い骨またはたとえば指節骨のような小さい骨につき設けて寸法決定することができる。
【0038】
固定具を挿入した後、注射器により加えられた皮膚の傷は閉鎖すると共に骨の上で治癒させる。汚染された皮膚表面との移植後の全連通を排除する最小浸襲性経皮手法を用い、本発明は骨折部を迅速に固定すると共に患者の四肢の運動性を最小時間でかつ低い感染の危険性にて可能にする。すなわち固定具を局部(たとえば指における指節骨の骨折)にて骨折部を修復すべく用いる場合、患者は局部を挿入後の極めて短時間で運動させ始めることができる。このような急速な運動性は治癒を促進すると共に筋肉萎縮を減少させる。患者はできるだけ迅速に骨折部の使用を再開する。一層重要なことに、典型的には従来技術で知られた髄内ネイルを使用する場合に一般的に遭遇する長期間の運動不能後に必要とされる広範な生理学的療法の必要なしに治癒が進行する。さらに、挿入後に皮膚を介し突出し続ける固定具が存在しないため、術後感染および他の合併症が減少する。
【0039】
好適具体例において移植体はたとえばニチノール、チタニウム、S.S.316のような生物適合性金属または適するポリマーで作成される。好ましくは挿入の後、固定具の半径方向拡大はその直径が実質的に増大するようになる。すなわち、直径は少なくとも20%、40%、50%または所望に応じそれ以上増大することができる。この大きい拡大ファクターは、挿入に際し未拡大の固定具が骨髄質中へ容易に適合するのに充分な細さであるという点にて有利である。これに対し、固定具は設置後に拡大して、その直径が髄内キャビティのほぼ全体を埋め(すなわち固定具は骨のほぼ全幅にわたり延在し)、骨をしっかり固定する。
【0040】
より一般的には、固定具の初期寸法は注射器を介し骨中へ挿入しうるよう注射針を通過するのに充分小さい減少直径を維持し、次いで骨の固定につき問題とする骨の髄内キャビティのほぼ全体を埋めるよう充分大きい拡大直径まで拡大することができる。好ましくは、固定具は実質的に拡大後にロッド形状(すなわちチューブ形状)である。
本発明の好適具体例による固定具は、一般にベラおよびカールによる上記論文に記載されたような、この目的につき使用されるK−ワイヤよりもずっと堅固に骨を固定する。本発明の固定具は、K−ワイヤの場合のような複数の穴でなく、髄内挿入のための骨における1個のみの穴の形成しか必要としない。
【0041】
本発明の幾つかの好適具体例において、髄内固定具は上記グループIに記載したような自己拡大性構造体を備える。本発明の意味において、「自己拡大性」または「自己拡大しうる」と言う用語は、固定具の種類およびこの種の固定具を加工する材料を意味すべく使用される。この用語は、ここでは固定具を髄内キャビティに挿入すると固定具自身により発生した機械力に基づき半径方向外方に拡大することを意味すべく使用される。この機械力は、たとえばキャビティ中へ挿入する前に固定具を半径方向に圧縮する結果として固定具に蓄えられた潜在的工ネルギーに基づくことができる。さらに或いは代案として、下記するように固定具は髄内キャビティにおける固定具により吸収された熱に基づき拡大することもできる。下記するように、或る種の好適形状および材料を用いて、この自己拡大作用を与える。これら好適具体例による髄内固定具は、機械力を固定具に外部から加えて髄内キャビティにて固定具を拡大させることを必要とする当業界にて公知の拡大性髄内固定具とは異なる。
【0042】
骨に導入する前、自己拡大性固定具は好ましくは閉鎖減少直径の形状まで半径方向内方に圧縮され、この閉鎖減少直径の形状にて注射器に挿入される。注射器を挿入すると共に固定具を所定位置に入れた後、注射器を抜き取って固定具を骨内に残留させる。次いで固定具は半径方向外方に拡大して、骨に当接すると共に固定する。すなわち下記する構造およびこれを作成する材料は一般に、閉鎖減少直径の形状まで圧縮するのに充分な柔軟性を有すべきであるが、開口拡大形状にて骨を堅固に固定するのに充分な剛性を有すべきである。
【0043】
自己拡大性移植体の好適具体例において、固定具は弾力性もしくは弾性の生物適合性材料で構成される。好ましくは弾性もしくは弾力性材料は超弾性材料または形状記憶材料、たとえばニチノールまたは他の金属、たとえばチタニウム或いはポリマー材料である。当業界で知られたように固定具は、圧縮されると半径方向外方の力を及ぼすよう加工される。
【0044】
この種類の他の好適具体例において、固定具は生物適合性の形状記憶材料、たとえばニチノールなどで構成される。好ましくは当業界で知られたように材料を選択すると共に作成して、その閉鎖減少形状まで固定具を圧縮した後に材料が応力誘発マルテンサイトの状態となるようにし、これは比較的柔軟性かつ弾性である。骨の髄内キャビティにて開放されると、固定具はその所望形状(すなわち開口拡大形状)まで弾撥復帰すると共に、この材料はオーステナイト状態をとり、これは実質的に剛性であって骨を堅固に固定する。
【0045】
固定具自身の構造は、自己拡大性材料(好ましくは上記の超弾性もしくは形状記憶材料)の1枚もしくはそれ以上のシートを緊密に合体巻回して、ほぼ円筒状の螺旋構造体を形成させることにより形成することができる。固定具を髄内キャビティに挿入した後、螺旋は半径方向外方に拡大する際にキャビティを実質的に埋めるよう拡大するまで部分的に巻き戻る。好ましくは材料の1枚もしくはそれ以上の各シートの少なくとも1縁部を屈曲させて、螺旋の外側半径表面から半径方向外方に突出させる。螺旋が拡大すると、これら突出縁部は骨の内表面に係合して髄内キャビティに隣接し、固定具を所定位置に堅固に固定すると共に固定具により固定された骨の部分の摺動もしくは回転を防止する。より好ましくは、縁部の2つもしくはそれ以上を異なる角度で屈曲させて、時計方向または反時計方向における骨の回転を防止する。
【0046】
この種類の他の好適具体例において、固定具は保持装置(たとえばピン)を備え、これを骨中への固定具の挿入前に固定具に嵌合させる。保持装置を固定具に嵌合させる一方、固定具をその圧縮した閉鎖形状にて機械的に保持し、次いで固定具をこの形状に保持し続ける。固定具が挿入されて髄内キャビティに適正に設置された後、保持装置を抜き取ると、固定具は半径方向外方に自己拡大して所定位置に固定されると共に骨を固定する。
【0047】
自己拡大性移植体の代案として、移植体はエネルギーまたは外力の適用により拡大しうるよう作成することもできる。たとえば当業界で知られたように約30℃の臨界温度を有するよう形状記憶材料を選択して作成することができる。すなわち室温にて材料は一般に少なくとも部分的にマルテンサイト状態であって固定具は骨中へ挿入する前に柔軟性かつ弾性を維持する。骨中へ挿入されると移植体は体温に露呈され、この温度にて材料は少なくとも部分的にオーステナイト状態となり、固定具は実質的に剛性となる。
【0048】
熱を移植体に加えてこれを拡大させるこの種の具体例においては、固定具を髄内キャビティに挿入すると共に注射器を抜き取った後に、体温を用いる代わりに或いは体温の使用に加えて外部熱供給源を用いて熱を加えることもできる。これは、たとえば固定具と接触させる加熱プローブを介して行うことができる。熱は固定具を半径方向外方に拡大させると共に実質的に剛性となし、固定具を所定位置に固定すると共に骨折部を固定する。加熱用プローブまたは他の熱源を次いで除去する。
【0049】
本発明の他の好適具体例(グループIもしくはグループIIのいずれであっても)において、固定具は上記したような硬質かつ弾力性材料で作成されると共にその径方向壁部を通過する複数の開口部を有して壁部が実質的にメッシュ構造となるようなチューブで構成される。メッシュ構造は好ましくはほぼ円弧状の外周ストラットにより相互接続された複数の長手リブを備える。固定具を半径方向に圧縮すると、ストラットはチューブの中心軸線の方向へ内方向に屈曲する。保持装置(好ましくはピン)を軸線に沿って挿入し、ストラットをその屈曲形状に保ち、従って固定具が拡大するのを防止する。ピンは固定具を骨の内側にしながら除去するとストラットは実質的に円弧形状をとり、固定具は髄内キャビティに隣接する内側骨表面に係合するまで半径方向外方に自己拡大するか或いはエネルギーの適用により拡大する。
【0050】
髄内キャビティに固定具を挿入した後、経時的に骨組織は開口部を介し固定具のメッシュ状壁部に成長して突入し、骨の全構造体を強化させる傾向を有する。
本発明の他の具体例において固定具は複数のリーフを備え、これらリーフを各リーフの内側端部が一般に固定具の中心長手軸線から半径方向外方に延びるように屈曲させる。リーフは一般に螺旋状で軸線に沿って配置され、各リーフは軸における基準点に対し異なる角度で、軸方向に隣接する1枚もしくはそれ以上の他のリーフから外方向に延びる。好ましくは各リーフの外側端部は半径方向内方に湾曲する。固定具を骨中へ挿入する前、リーフを内方に屈曲させて固定具を圧縮することにより、狭い一般にチューブ形状を形成させる。保持装置(好ましくはピン)を次いでチューブ形状の軸線に沿って挿入し、内方湾曲したリーフの外側端部を係合保持すると共にその半径方向拡大を防止する。固定具が髄内キャビティに挿入された後、ピンを抜き取るとリーフは半径方向外方に弾撥復帰して、内側骨表面に係合すると共に固定具を所定位置に固定する。
【0051】
代案として外部エネルギーを用いる本発明の他の具体例においては、バルーンを固定具の内側に挿入して膨脹させ、固定具を拡大させることができる。固定具が拡大した後、バルーンを好ましくは収縮させて抜き取るが、これを移植状態に残すこともできる。
本発明の他の具体例において、同じ髄内骨固定具は膨脹性バルーンで作成される。
本発明の他の具体例においては、固定具自身をバルーンで構成し、これを髄内キャビティに挿入する。バルーンは柔軟性かつ生物適合性プラスチック、たとえば当業界で知られたダクロン(登録商標)布地のチューブから形成することができ、その遠位端部にて密閉する。
【0052】
さらに、このバルーン固定具は注射器を用いて挿入される。髄内スペースに注射器を設置した後、スリーブを内部に挿入し、これを介しバルーンを挿入する。
バルーンを位置決定すると共にスリーブおよび注射器を抜き取った後、バルーンを膨脹させると共に膨脹装置を脱着させてこれも抜き取る。スリーブなしに案内ワイヤを用いて或いは用いずに、同じ手順を行うこともできる。
【0053】
バルーンが所定位置になった際、これを膨脹させて骨を固定する。これは外部供給源からの圧力下で生物適合性固化流体により行い、バルーンを半径方向外方に拡大させて骨を固定することができる。次いでバルーンを密封すると共に外部流体供給源を遮断する。
好ましくは固化性流体はバルーン内で重合するモノマー材料または代案としてたとえばエポキシのような2−成分セメントで構成する。この種の固化用流体材料は当業界にて公知である。流体固化は好ましくは、骨髄質内の温度および/または湿度の増加により触媒される。
【0054】
代案として非固化性の非圧縮性流体を用いる場合、必要が生ずればバルーンに、これを挿入したと同じ基本技術(その逆も可)を用いて穴を開けると共に除去することもできる。
幾つかの好適具体例において、バルーンは内部構造体(たとえば弾力性長手ワイヤを備えることもできる。これらワイヤは金属から加工することができ、バルーンの内側の下まで長手方向に延ばすことができる。バルーンを収縮させる際、構造体はバルーンを狭い延びた実質的に閉鎖形状に保持して、骨中へのバルーンの挿入を容易化させる。バルーンが挿入されて膨脹した後、構造体は特に剪断力に対し固定具に追加機械強度を付与する。これは、バルーンが髄内スペースにて膨脹されると弾性および骨固定具の強度を付与する。
【0055】
好ましくはバルーンを骨中に挿入した後、バルーンには非圧縮性流体を満たす。好適具体例において、バルーンは流体が逃げるのを防止する弁を備える(これは所望に応じ流体を放出させることをも可能にする)。バルーンを流体で満たすと、これは膨脹して髄内キャビティを実質的に満たす。好ましくはX線画像をバルーンを内側にして骨につき撮影する(好ましくはバルーンがまだ部分的または非拡大の状態にある際)。次いでバルーンの内部構造体を画像にて観察し、バルーンが適正に位置するかどうかを確認した後、バルーンを固化用流体で完全に膨脹させる。特に長手ワイヤがX線画像上に出現して、適正な位置決めを確認することができる。
【0056】
本発明の好適具体例においては、一方向弁を有すると共に高圧流体(たとえば塩水)で膨脹される金属バルーンを用いる。固定具材として作用する長手バーを有するバルーンが作成され、固定具材もしくは固定バーは膨脹すると骨皮質の内表面に対し押圧されて骨の骨折部分間の回転運動を防止すると共に屈曲をも防止する。この具体例は、長手ロッドが回転を防止するという事実に基づき相互固定が必要とされないので標準的髄内ネイルよりも利点を有する。ネイルは内側長手キャナルを有して案内ワイヤに対する挿入手順を実施するのを容易化させる。
【0057】
除去する際、取出装置を移植ネイルの先端に装着して弁を開口させ、ネイル内の高圧を解除すると共に装置直径を減少させる。
本発明のこれら具体例による骨固定のための固定具および方法は、骨折した長い骨もしくは短い骨の固定につき有利である。たとえば本発明の固定具は腕、脚部、手もしくは足の骨の固定につき使用することができる。たとえば、これらは手指もしくは足指の指節骨、大腿骨、上腕部、中手骨、中足骨、頸骨、腓骨などの固定につき使用することができる。本発明による固定具は必要とされる骨折部の必要寸法に当業者により容易に適合させうることが了解されよう。
脊髄融合
脊椎融合の好適具体例においては、中空注射器を画像形成技術により椎間スペース内に背中を介して挿入する。次いで椎間組織侵食部材を注射器内腔を介して挿入する。各具体例には軟質組織をその近傍で侵食する侵食用部材を設ける。この装置は、たとえば切断刃を持ったオルブ(olb)のような侵食用部材を取り付けうるブラシまたは回転ワイヤの設計とすることができる。侵食用部材(ブラシ、回転ワイヤもしくはオルブのいずれであっても)の回転は、侵食用部材の近傍にて軟質組織の侵食をもたらす。軟質組織を侵食すると、椎間組織抽出器が次いで侵食椎間組織を吸引するか或いは除去して、椎間スペーサを骨移植体と共に挿入するスペースを形成する。吸引または除去は、抽出器回転シャフトの長手中心内腔または他の任意の所望の内腔を介する減圧により達成される。さらに吸引もしくは除去は、抽出装置の反対方向にて回転する或いはそのまま留まって残留する組織を採取する同じ内腔内のネジによって行うこともできる。
【0058】
椎間組織抽出器の挿入と同様に椎間スペーサの挿入(ここでは、椎間ケージとも称する)は中空注射器内腔を介して行われ、脊椎をその後の浸襲性手術に露呈する必要性を回避する。
椎間スペースに挿入して挿入注射器を外すと、椎間スペーサはその自己拡大特性に基づき直径拡大し、或いはエキスパンダーにより拡大させて脊椎を固定すると共に支持する。多孔質設計に基づきスペーサはさらに2つの隣接脊椎の骨融合を可能にし、これは骨成長因子を用い或いは用いずに骨移植体の介装により促進される。
椎間板人工器具
本発明の他の具体例においては、生物適合性布地で作成されたバルーンを備える円板人工器具を設ける。バルーンは入口ポートを備え、これを膨脹チューブに接続する。好ましくは布地はたとえばダクロンもしくはゴア−テックス(登録商標)のような不活性合成材料からなっている。代案として或いは追加的に、布地は当業界で知られた生物吸収性材料、或いは不活性材料と生物吸収性材料との組合せで構成することもできる。さらに好ましくは、人工器具は丈夫な弾性補強構造体、たとえば布地を織り込んだステンレス鋼ワイヤを備える。さらに、バルーンは肉薄の金属を有することもでき、挿入して膨脹に際し拡大(上方向もしくは下方向)すると圧縮される。さらに円板人工器具は相互接続された膨脹性部材の複合体で作成することもでき、これは膨脹すると急速に上下に拡大し、各チューブ間に設けられたスペースが骨成長を可能にする。
【0059】
損傷円板の円板物質を患者の椎間板スペースから或る程度または全部除去した後、バルーンを円板スペースに挿入する(本発明の意味でバルーン人工器具はバルーンまたは人工器具のいずれかとして互換的に呼ばれる)。バルーンは少なくとも部分的に収縮した状態、好ましくは完全に細く細長い形状を持った収縮状態にて経皮カニューレを介し挿入される。バルーンが適正に円板スペースに位置した後、生物適合性固化用流体(たとえば骨セメント或いは当業界で知られた重合性モノマー)を膨脹チューブを介し注入してバルーンを膨脹させる。流体が硬化した後、バルーンは円板スペースに隣接する脊椎の間の所定位置に堅固に残留して脊椎を解剖学上適する配向にて永久保持する。さらに高圧の非圧縮性流体を用いて、人工器具をその膨脹しうる状態に保つこともできる。
【0060】
好ましくは人工器具を円板スペースに挿入する前、円板物質を除去すると共に円板スペースに隣接する骨表面を電気灼熱プローブを用いて清浄する。代案として、円板物質を除去すると共に骨表面を当業界で知られた円板切除法および装置を用いて清浄することもできる。
好ましくは、粗面の多孔質表面を有するよう布地を織って、人工器具に隣接する脊椎骨の布地中への成長を促進させる。この種の成長は骨と人工器具との間の緊密結合部を形成する。さらに好ましくは、たとえば患者の骨盤骨から採取された磨砕骨物質を布地の表面に展延して骨成長をさらに促進させる。結局、人工器具の反対側における2つの脊椎が一般に人工器具の周囲かつこれを貫通して成長すると共に互いに融合する。骨成長の期間に際し、人工器具の存在は脊椎を適する間隔および相互の配向に保持する。
【0061】
本発明の幾つかの具体例において、バルーンは人工器具を移植すべき円板スペースの直径にほぼ等しい直径を有する2個の円形ピースで構成される。2個の布地ピースを上下に戴置し、次いで互いにその外側縁部およびその中心で密封することができる。膨脹性チューブを流体ポートに取り付けて密封し、これを2個の布地ピースの間にその外側縁部に沿った箇所にて位置せしめる。
【0062】
バルーンを円板スペースに挿入するにはバルーンを膨脹チューブに平行した軸線の周囲に巻回する。巻回されたバルーンは長くて細い円筒の形状を有する。この形状にてバルーンを円板ディスク中へカニューレに通過させ、好ましくは手術用具を予め通過させて円板物質の円板スペースを清浄した同じカニューレを用いる。円板スペースの内側に存在する際、バルーンを巻き戻させる。
【0063】
次いでバルーンに膨脹チューブを介し固化用流体を満たして、バルーンがほぼトロイド形状を有するようにする。円板スペーサにわたり半径方向に延びるトロイドの主たる直径は好ましくは人工器具が置換されている円板の直径にほぼ等しい。円板スペースに隣接する2つの脊椎間に軸方向に延びる小直径は、バルーン内の流体の膨脹圧力を脊椎が解剖学上正確な相互間隔で安定に保持されるまで増大させることにより調節される。流体が固化し始めた後、膨脹チューブを先ず密封し、次いでカニューレを通して抜き取る。
【0064】
代案として本発明の他の具体例において、人工器具は他の任意適する寸法および/または形状(たとえば楕円形もしくは三ケ月形状)のバルーンで構成することもできる。さらに、円板スペースの直径よりも実質的に小さい直径を有するこの種の2個もしくはそれ以上のバルーンを並列で移植して膨脹させることもできる。この種のより小さいバルーンは、これらが一般に単一の大きいバルーンよりも容易に挿入されると共にカニューレを介し操作しうる点で有利である。
【0065】
本発明の幾つかの具体例においては、人工器具バルーンを円板スペースに挿入した後であるが固化用流体で膨脹させる前に、バルーンをたとえば無菌空気または二酸化炭素のようなガスで膨脹させる。次いで円板スペースにおけるバルーンの位置を可視化させて、これが適正に位置したことを証明すると共に必要に応じその位置決めを修正する。これら段階が完了した後、バルーンのガスを除去し、次いで固化用流体または高圧流体で膨脹させる。
【0066】
バルーンの移植を可視化するには各種の方法を用いることができる。好ましくは経皮脊椎処理の全過程は当業界で知られたように開口磁気共鳴画像形成の下で行われる。代案としてまたは、追加的に当業界で知られたようなエンドスコープを円板スペース中に或いはそれに接近して、好ましくは人工器具の挿入につき用いられると同じカニューレを介し挿入することができる。さらに代案として、バルーンが放射線不透過部材(たとえば上記ステンレス鋼補強ワイヤ)を備える場合、バルーンの位置は放射線不透過部材が見えるX線画像形成を用いて可視化させることができる。
【0067】
円板人工器具は、高圧流体挿入によりその容積を変化させうる金属中空部材として構成することもできる。この金属円板にはその上側および下側表面に突出部を設けて、脊椎骨表面に付着および/または上下侵入させる。これは円板移動を防止すると共に、骨融合が達成されるまで一層良好な安定化を達成する。
1具体例において、円筒形状のチューブを経皮挿入する。他の具体例においては、ドウナッツ形状(すなわちトロイド形状)の円板を挿入し、その内側スペースに骨移植体を満たす。他の具体例においては、三次元の蜂巣形状の構造体を、好ましくはマルチチューブ膨脹により拡大すべく形成させる。この蜂巣形状の構造体は好ましくは連続気泡を有して、構造体に対する骨成長を容易化させる。
【0068】
これら具体例の全てには固化用流体または非圧縮性流体を満たすことができる。非圧縮性流体を用いる場合は弁を設けて流体を使用に際し高圧に留めるのが好適であるが、所望に応じ収縮のため構造体から放出させることもできる。所望ならば、人工器具を除去すべく使用する装置を弁に取り付けて、そこからの流体の除去を可能にすることもできる。
本発明の具体例につき最小浸襲性の経皮脊椎処置に関し説明したが、本発明の原理に従う円板人工器具を当業界で知られた他の手術法を用いて同様に移植しうることも了解されよう。
図面の簡単な説明
図1は本発明の好適具体例に従う自己拡大性髄内固定具の斜視図である。
【0069】
図2Aは本発明の好適具体例に従う第1閉鎖形状における自己拡大性髄内固定具を示す断面図である。
図2Bは本発明の好適具体例に従う第2開口形状における図2Aの固定具を示す断面図である。
図3A〜3Cは本発明の好適具体例に従う骨折部の固定に際し図1の固定具の使用を示す断面図である。
【0070】
図4Aは本発明の好適具体例に従う開口形状における他の自己拡大性髄内固定具の斜視図である。
図4Bは本発明の好適具体例に従う閉鎖形状における図4Aの固定具を示す断面図であり、保持ピンを固定具の中心軸線に沿って挿入する。
図5Aは本発明の好適具体例による開口形状における他の自己拡大性髄内固定具の端面図である。
【0071】
図5Bは本発明の好適具体例による図5Aに示した固定具の加工用材料の作成を示す略図である。
図5Cは本発明の好適具体例による内部保持ピンを有する閉鎖形状における図5Aの固定具の断面図である。
図6は本発明の好適具体例による非膨脹状態にある髄内バルーン固定具の略図である。
【0072】
図7A〜7Dは骨折部の固定における図6の固定具の使用を示す断面図である。これら図面は固定具の挿入、バルーンの膨脹および膨脹メカニズムの除去の各工程を図示する。
図8Aおよび8Bはそれぞれ本発明の好適具体例による収縮形状における膨脹性髄内固定具の側面図および断面図である。
図9Aおよび9Bはそれぞれ本発明の好適具体例による膨脹形状における膨脹性髄内固定具の断面図および斜視図である。
【0073】
図10(a)〜(d)は本発明の好適具体例による開口および閉鎖位置における骨固定のための2つの装置を示す斜視図である。これら装置は熱の移動(たとえば、これらが形状記憶材料で作成される場合)により開口することができ、バルーンの使用により或いは追加の任意適する機械的方法により開口することができる。図10(a)および(b)はそれぞれ圧縮および拡大形状で示した装置の第1具体例の図面である。
【0074】
図10(c)および(d)はそれぞれ圧縮および拡大形状で示した装置の第2具体例の図面である。
図11は本発明の好適具体例による機械的に高さを変化させうる骨固定装置の断面図である。これは閉鎖形状(図11a)および開口形状(図11b)にて示される。この装置はその接合部にヒンジを備え、或いは可塑変形を受けるジョイントを備えることができる。
【0075】
図12は本発明の好適具体例による拡大性椎間スペーサおよび髄内骨固定具の斜視図である。この設計は、固定用フィンガーなしにかつ複数の表面開口部を持って図面に示される。
図13Aは本発明の好適具体例による椎間骨スペーサおよび髄内骨固定具の断面図である。
【0076】
図13Bは挿入のための小型の減少直径状態で示した図13Aの装置の断面図である。
図13Cは複数の固定メカニズムを持って拡大状態で示した図13A〜Bの装置の改変型の断面図である。
図14Aは本発明の好適具体例による椎間板人工器具の平面図である。
図14Bは図14Aに示した人工器具の断面図である。
【0077】
図15は本発明の好適具体例による患者の椎間板スペース中への図14Aおよび14Bの人工器具の挿入を示す斜視図である。
図16は本発明の好適具体例による円板スペースにおける図14Aおよび14Bの人工器具の設置を示す前額面における断面図である。
図17Aは本発明の好適具体例による円板スペース内における図14Aおよび14Bの人工器具の膨脹を示す図16の前額面における断面図である。
【0078】
図17Bは図17Aで示した膨脹人工器具を示す円板スペースを通る軸方向平面の断面図である。
図18A、18Bおよび18Cはそれぞれ本発明の他の好適具体例による円板人工器具(膨脹メカニズムの1部を含む)の断面図、平面図および斜視図である。
図19は本発明の好適具体例による骨固定および椎間離間のための各種の方法および装置を要約する図面である。
【0079】
図20は髄内固定装置の他の好適具体例の図面である。図20Aはこの髄内固定具の斜視図である。図20Bは図20Aの髄内固定具の断面図である。図20Cは図20Aおよび20Bの髄内固定具の部分側面図である。
図21は弁を有する髄内固定装置の他の好適具体例の図面である。図21Aは装置の長手断面図である。図21Bは図21Aの装置の断面図であり、この装置は圧縮形状にて示され、図21AのA−A線断面図である。図21Cは図21Bの装置の拡大形状の断面図であって、これも21AのA−A線断面図である。
【0080】
図21Dは図21A〜Cに示した装置の他の具体例であり、この装置にはさらに骨折部の領域に位置する固定直径セグメントが設けられる。
図22Aは本発明による髄内ネイルの他の具体例の2つの断面図である。収縮形状もしくは拡大形状(もしくは状態)の両断面図を図面に示し、これら収縮形状および拡大形状は比較の目的で重ね合わせる。
【0081】
図22Bは本発明による髄内ネイルの他の具体例の2つの断面図である。図22Aにおけると同様に、収縮形状および拡大形状(もしくは状態)の両断面図を比較目的で重ねて示す。
図23は本発明の追加具体例として設けうる正中長手キャナルを示す。このキャナルは案内ワイヤに固定具を位置せしめて位置決めを容易化させるべく設けられる。図23Aは内部にキャナルを有する固定具の斜視図であり、図23Bは貫通して延びるキャナルを示す固定具の略図である。
発明および好適具体例の詳細な説明
本発明の特徴を図面、以下の説明および請求の範囲を参照してさらに示し、これらは各種の好適具体例における本発明の開示をさらに与える。
【0082】
図1は本発明の好適具体例による自己拡大性髄内固定具20の斜視図である。
固定具20は好ましくは弾力性かつ生物適合性の材料、好ましくは超弾性材料もしくは形状記憶材料(当業界にて公知)の2枚のシート22および24で構成される。ニチノールが好適である。代案として固定具は他の生物適合性金属(たとえばチタニウム)またはプラスチックもしくはポリマー材料から作成することもできる。
【0083】
シート22および24は最初に互いに円筒形状まで緊密に巻回される。この緻密形態の各シートを緻密に巻回し(図2Aに一般的に示す)、さらに固定具20をこの緻密形態にて下記するように骨の髄内キャビティに挿入する(図3B)。
次いで固定具を骨の内側で開放し、シート22および24の弾力性によりこれらを拡大状態まで部分的に巻き戻し(図2Bに一般的に示す)、固定具20が半径方向外方に拡大して図2Bに示した増大直径を占めるようにする。
【0084】
好ましくは、それぞれシート22および24の外側縁部26および28を、固定具20が骨の内側で開放された際に縁部が図1に示したように半径方向外方に屈曲するよう形成する。次いで縁部26および28は髄内キャビティを包囲する骨の内表面に係合して、固定具20を所定位置に堅固に保持すると共に固定具に対する骨の相対的摺動もしくは回転を防止する。好ましくは図面に示したように、縁部26を鋭角で屈曲させると共に縁部28を斜角で屈曲させて固定具20がその軸線30を中心として時計方向および反時計方向の両者における回転に抗するようにする。
【0085】
図2Aおよび2Bは固定具20と同様な自己拡大性髄内固定具36の断面図であって、
本発明の好適具体例によるこの種の固定具の半径方向自己拡大の原理を示す。説明を簡単
にするため、固定具36は自己拡大性材料(好ましくは弾性材料)の1枚のみのシート3
8で構成する。固定具20および36により例示されるように本発明の原理に基づく髄内
固定具は1枚、2枚もしくはそれ以上の自己拡大性材料のシートで構成し、図1、2Aお
よび2Bに示したように互いに巻回しうることが了解されよう。
【0086】
図2Aは第1閉鎖形状における固定具36を示し、ここでは固定具が半径方向内方に圧縮されて、下記するように骨折部の髄内キャビティへの挿入を容易化させる。たとえば指の指節骨を固定するため、固定具36は好ましくはこの閉鎖形状にて僅か約2mmの外径を有する。図2Bは第2開口形状における固定具36を示し、この形状は固定具がキャビティ内に位置せしめた後に骨を固定する形状である。好ましくは、図2Bの開口形状における固定具36の直径は、図2Aの閉鎖形状における直径より少なくとも50%大である。より好ましくは、開口形状における直径は閉鎖形状における直径の約2倍である。たとえば指節骨固定の場合、開口形状における直径は好ましくは約4mmである。閉鎖形状と開口形状との間の大きい直径差は、閉鎖形状にて骨中へ固定具36を骨折部の端部またはその近くに作成された最小寸法の穴を介して挿入するのを容易化させる点で有利である。
【0087】
固定具20を参照して上記したようにシート38は好ましくは超弾性材料、好ましくは約0.2mmの厚さを有するニチノールで構成される。シート38の超弾性は固定具36を、シートの外側縁部36が髄内キャビティを包囲する内側骨表面に係合して強力な外方向の半径方向力を骨に加えるまで拡大させる。
シート38はたとえば当業界で知られたように作成されるニチノールのような形状記憶材料で構成して図2Bに示した開口形状を有するようにし、体温にて一般にオーステナイト状態にすることができる。しかしながら、図2Aに示した閉鎖形状にて、巻回シート38にて及ぼされる力は好ましくは材料を応力誘発マルテンサイトの状態にする。この状態にて材料は比較的柔軟性かつ弾力性であって、固定具36を骨中へ容易に挿入させる。固定具が骨の内側で図2Bに示した開口形状まで拡大するとシート38における応力が減少し、材料はその正常な実質的に剛性オーステナイト状態に戻る。この状態における材料の剛性は骨の堅固な固定を容易化させる。
【0088】
さらに或いは代案として、形状記憶材料は室温〜体温の範囲、好ましくは約30℃の臨界温度を有することができる。上記したように形状記憶材料は、そのオーステナイト状態(すなわち臨界温度より高い)にて、これが実質的に図2Bに示した開口拡大形態を有するよう形成される。臨界温度未満、すなわち骨中への固定具36の挿入前、形状記憶材料はマルテンサイト状態にあり、ここでは比較的柔軟性かつ弾力性であって図2Aに示した閉鎖形状まで圧縮される。固定具を骨中へ挿入する際、これを臨界温度より高い温度まで加温(たとえば体熱による)すると、これは開口してその実質的に剛性のオーステナイト状態となる。加熱用部材を、骨の内側に存在する際に(たとえば図3Bに示すと共に下記する)固定具と接触させて、その膨脹および状態変化を加速させることができる。
【0089】
図3A〜3Cは本発明の好適具体例による骨折部42の髄内キャビティ40への固定具20の挿入を示す断面図である。指節骨を参照して説明するが、本発明の原理に従う装置および方法は、当業者には了解されるように骨に必要とされる寸法および機械強度の差に適当に適合させて他の長い骨(たとえば上腕骨)の固定にも適用しうることが了解されよう。
【0090】
図3Aに示したように、スタイレット46をカニューレ48内の内腔部47に挿入する。指節骨の固定のためカニューレ48は好ましくは注射針を備える。次いでスタイレッド46およびカニューレ48を骨42の端部における開口部45を介し骨における骨折部位44を越えて髄内キャビティ40に経皮導入する。
代案として、皮膚および軟質組織を介し小切開部を作成して骨を可視化させることもでき、さらにカニューレを貫通挿入すべく骨に穴を穿設することもできる。この種の穴の穿設は、特にたとえば上腕骨のような大きい骨につき本発明の好適具体例による固定具を挿入するための好適方法である。さらに、固定具を挿入する前の穴の穿設は骨が治癒した後に所望に応じ固定具を一層容易に除去させる。
【0091】
図3Bに示したように、カニューレ48が適正に所定位置となった後、スタイレット46を抜き取り、固定具20をその圧縮した閉鎖形状にてカニューレの内腔部47に移行させる。好ましくはプランジャ43を用いて固定具を針中へ圧入し、これを所定位置に保持する。次いでカニューレ48を完全に抜き取って固定具20をキャビティ40内に残し、固定具を骨折部位44にわたり延在させる。
【0092】
次いで固定具20が拡大し、すなわち図3Cに示したようにキャビティ40を実質的に埋めるよう拡大する。固定具自身はここに開示した自己拡大しうる具体例にて拡大する。代案として下記するような他の具体例においては、固定具を外力もしくはエネルギーを用いて拡大させる。
固定具の自己拡大は、シート22および24の湾曲縁部26および28(固定具36の39)を骨折部位44の両側にわたり骨42の内表面49に対し半径方向外方に押圧する。この力は固定具を所定位置に固定すると共に、骨折部の各セクションの相対移動を防止する。シート22および24が上記形状記憶材料からなる本発明の幾つかの好適具体例において、プランジャ43は必要に応じ固定具20を臨界温度より高く加熱する加熱用部材で構成することができる。
【0093】
固定具20を位置決めすると共に所定位置にしっかり固定した後、プランジャ43を開口部45を介して抜き取ると共に、カニューレ48により或いはそれにつけられた皮膚外傷を閉鎖させる。図面に示した手順が完結した後の短時間内に患者は骨折部42を運動させることができる。固定具20の機械的強度は、骨に及ぼされる軸方向および横方向の力に対し骨を補強する。さらに術後感染の危険性は、手術装置または用具を皮膚を通して突出残存させないので、当業界で知られた拡大性髄内固定具と対比し最小化される。所望ならば、この装置をシースで覆って骨成長を防止すると共にその後の装置除去を容易化させることもできる。
【0094】
図4Aは本発明の他の好適具体例による他の自己拡大性髄内固定具50の斜視図である。固定具50は、複数の外周ストラット54により接続された複数の長手リブ52を備える。リブ52およびストラット54は好ましくは弾力性材料、好ましくは超弾性材料で構成され、或いは上記した形状記憶材料で構成される。
図4Aは実質的に開口した形状にて固定具50を示し、これは骨内に位置して拡大させうる固定具が占める形状である。
【0095】
図4Bは、固定具を骨中に挿入するための閉鎖もしくは収縮形状における固定具50を示す断面図である。固定具をこの閉鎖形状に圧縮するため、長く円筒状の保持ピン56(図4Bに断面図で見られる)を徐々に中心軸線30に沿って挿入する。ピン56が挿入される際、各外周ストラット54は次いで軸線30にわたり内方向に屈曲される。ピン56はこれらが屈曲される際にストラットを通過してストラットを「捕捉」もしくは固定し、すなわちストラットが外方向の外周位置に弾撥復帰するのを防止する。ストラット54が内方向に屈曲してピン56により捕捉される際、リブ52を内方向に図4Bに示したように引き抜く。ピン56を固定具50中に軸線30の全長さに沿って移動させることにより、固定具は閉鎖形状となり、その外径が実質的に減少する。好ましくは図4Bの閉鎖形状における固定具の直径もしくは寸法は図4Aに示した開口形状における直径の半分以下まで減少する。
【0096】
固定具50が骨の髄内キャビティ(図3A〜3Cに示したように、たとえば骨42のキャビティ40に挿入された後、ピン56を除去する。ピンの除去後、ストラット54はその初期の外周位置に弾撥復帰し、固定具は図4Aに示した開口形状となる。
上記したように固定具50は所望に応じ形状記憶材料で作成することができ、この形状記憶材料はその正常なオーステナイト状態にて実質的な剛性を有する開口形状を維持する。ストラット54を屈曲させるとこれらは応力誘発マルテンサイトの状態となり、ピン56が除去される際に応力が除去されてオーステナイト状態に復帰する。上記したように、所望ならばこの装置をシースもしくはスリーブ(たとえば拡大性かつ柔軟性ポリマー)で覆って、骨成長を防止することもできる。
【0097】
上記したような他の具体例として、他の自己拡大性骨固定具を図5に示す。この装置の好適材料はニチノールであるが、装置はポリマー、応力誘発マルテンサイト(SIM)、平滑錫または他の適する材料で作成することもできる。
本発明の好適具体例によれば、図5Aは自己拡大精髄内固定具60の開放形状における端面図である。固定具60は好ましくは上記したような弾力性材料、より好ましくは超弾性材料で形成される。この固定具は、固定具の軸線30を中心とする螺旋パターンにて半径方向外方に延びる複数のリーフ62、66、68、70、72、74、76および78を備え、これらリーフは中心のほぼチューブ状部分63から延在する。図面に示したように、これらリーフのそれぞれは軸線30の周囲に異なる角度で(外周に対しゼロ度)で位置する箇所まで軸線から延びる単一基準線(図示せず)から測定にて外方向に延在する。図5Aの拡大形状において、各リーフは骨折部の髄内キャビティの内表面(たとえば図3A〜3Cに示したキャビティ40の表面49)に係合して、固定具60を所定位置に保持すると共に骨を固定する。各リーフは固定具のチューブ状部分63の1部および内方向に湾曲した端部64を形成する底部67を有する。
【0098】
図5Bは本発明の好適具体例に従い固定具60を加工準備する際に切断する弾性材料65の扁平シートを示す略図である。リーフ62、66、68、70、72、74、76および78を階段状パターンでシート65から切除し、すなわち各リーフは図面に示したようにステップ状延長部を示す。次いで各リーフを順次に巻き上げる。これらリーフを軸線30の周囲に矢印79で示した方向で巻回して、図5Cに示した閉鎖形状にてリーフが図5Aに示した形状まで拡大するようにする。
【0099】
図5Cは、固定具を髄内キャビティに挿入するよう作成する際の閉鎖形状における固定具60を示す断面図である。図4Bを参照して上記した保持ピン56を固定具60の軸線30に沿って挿入する。リーフ62、66、68、70、72、74、76および78の湾曲端部64を内方向に屈曲させると共に、ピン56の周囲に固定する。固定具60は、ピン56が所定位置に存在する限りこの閉鎖形状を保つ。閉鎖形状にて装置は開口形状よりも小さい外径を維持して、骨中への装置の挿入を容易化させる。固定具を髄内キャビティに挿入した後、ピン56を抜き取るとリーフの弾力性はこれらリーフを外方向に弾撥させて固定具が図5Aの大直径の開口形状をとるようにする。この一層大きい直径にて、骨固定および支持が上記したように与えられる。
【0100】
本出願における他の装置と同様に、この装置を材料の形状記憶特性を利用して加熱により拡大させることができる。上記本発明の他の具体例と同様に、これは髄内および椎間の両支持体を処理する際に使用することができる。
図6は他の拡大性髄内固定具80の略図であり、この固定具は収縮状態でここに示した本発明の代案好適具体例によるバルーン80を備える。バルーン82は柔軟性かつ生物適合性プラスチック、たとえば当業界で知られたダクロン布地のスリーブで形成し、その遠位端部で封止遮断することができる。固定具80は好ましくは生物適合性材料(特に好ましくはステンレス鋼)で作成されてバルーン82を強化するための頑丈な弾力性長手ワイヤ84を備える。ワイヤ84は好ましくはたとえばバルーン82のダクロン布地に織り込まれる。バルーン82は入口ポート86を介し膨脹チューブ88に接続される。
【0101】
さらにバルーン82は1端部が封止遮断された金属から構成することもでき、他端部には弁を設ける。金属の具体例において、バルーン82は同様に上記の長手ワイヤもしくはバーを有することができる。この種の具体例において、バルーンは長手ワイヤもしくはバーの間に薄い金属壁を有することができ、この肉薄金属は好ましくは内方向に屈曲されてバルーンプロフィルおよび直径を挿入に対し減寸させる。
【0102】
図7A〜7Dは、骨折部42を固定する際のバルーン固定具80の使用を示す断面図である。図3A〜3Cに関し上記したように、好適具体例にて穴45を最初に骨折部42の端部に設けて、骨の髄質に接近させる。図7Aに示したように、次いで固定具80を穴45を介し髄内キャビティ40にカニューレ48により挿入する。薄い中空スペースを固定具の挿入前に髄質内に形成しうるが、好適具体例ではカニューレ48自身を用いる固定具80の挿入が髄内スペースを形成する。
【0103】
好ましくは膨脹チューブ88をプランジャ43(図3Bに示す)の代わりに使用して、固定具80をカニューレ48中に押し込むと共に固定具キャビティ40内に位置せしめる。固定具には正中長手キャナル(canal)を設けて案内ワイヤにわたり膨脹性ロッドの挿入を可能にすることが好ましい。長手ワイヤ84はバルーン82を狭い長形プロフィルに保持して、キャビティ40中へのバルーンの挿入を容易化させる。カニューレ48を骨から抜き取った後、固定具80はキャビティ40の相当部分にわたり図7Bに示したように骨折部位44の両側にて延在し続ける。
【0104】
非圧縮性流体での膨脹は好ましくは圧力計を有する膨脹器で行われる。圧力計は固定具の膨脹に際し監視される。圧力がスロープ上昇し始めると、これは良好な整列が骨の内表面におけるロッドにつき達成されたことを示す。その後、装置を除去するため固定具取り出しのためのハブを、弁を位置せしめる固定具の近位部位に挿入する。このハブを用いて弁を開口させ、流体を除去して固定具直径の減寸を達成することにより除去を容易化させることができる。
【0105】
図7Cに示したように固定具80をキャビティ40に挿入した後、バルーン82をチューブ88を介して膨脹させる。好ましくは、先ず最初にバルーンを水(たとえば塩水)で膨脹させ、かくして固定具がキャビティ40の実質的に全幅を埋めるよう拡大する。この段階にて、骨42のX線画像を撮影することができる。この画像にてワイヤ84および骨の両者を見ることができ、従って固定具80の適性な位置決めを確認することができる。
【0106】
次いでバルーン82から塩水を除去し、生物適合性の固化用流体を満たし、この流体はバルーン82を満たして骨を固定する。好ましくは固化用流体はバルーン内で重合するモノマー材料、或いはたとえばエポキシのような2−成分セメントで構成される。流体の固化は好ましくは、骨髄質内の温度および/または湿度の上昇により触媒される。
図7Dに示したように、バルーン82が満たされると共に流体が少なくとも部分固化した後、入口ポート86を密封遮断すると共にチューブ88を抜き取る。
【0107】
短時間内に固化流体は完全に硬化して固定具を所定位置に固定すると共に骨42を固定する。ワイヤ84は固定具80に機械的強度をさらに付与し、特に横方向の屈曲力および剪断力に対する耐性を向上させる。他の具体例において、シースまたはカップを挿入後に弁上に位置せしめて、弁内または弁中への骨成長を防止する。
上記の他の好適具体例と同様に、骨42中への固定具80の挿入で形成された皮膚外傷を閉鎖して治癒させる。次いで骨42は骨固定手術の極めて短時間後に運動させることができる。
【0108】
所望ならば、骨42が治癒した後、固定具80を穴45を介し或いは骨42内の骨切除術を介して除去することができる。好ましくは固化流体の少なくとも1部を抜き取り或いは破砕し、次いで固定具を崩壊させて除去する。(代案具体例において液体もしくはゲルを使用する場合、これらは固定具の崩壊および除去のため単に吸引またはポンプ除去される。代案として弁を用いる具体例では、弁を単に開口させて、ロッドを狭いキャナルを介し骨から抜き出す際にロッドを直径減寸させることもできる)。
【0109】
図8〜11に他の好適具体例を示す。図8および9は、極く1部が流体で膨脹されるようバルーンを設計した具体例を例示する。各図面に示したように、陰影部分はバルーンの流体充填領域を示す。
折畳み構造の代案として、拡大性骨固定装置は格子形状に基づいて形成することもできる。代表的具体例を図10に示し、これは小さい収縮直径および大きい拡大直径の両者における2つの形状の具体例に関する一連の斜視図を示す。これら具体例は、上記超弾性または形状記憶合金に固有の自己拡大原理を利用して骨に挿入することができる。
【0110】
図10の好適具体例において、装置はそれぞれメッシュ構造または格子形状にて形成される。図10(A)および10(B)はこの格子形状の第1具体例を例示する一方、図10(C)および10(D)は第2具体例を図示する。図10(A)および10(C)に示したように第1の小プロフィル状態は装置が小直径dまで圧縮された各装置につき例示する。この減少直径は骨中への挿入を容易化させる。図10(B)および10(D)はそれぞれ第1および第2具体例を示し、それぞれ拡大後の増大直径d’を有する。骨中へ挿入した後、超弾性もしくは形状記憶材料の性質は装置をこれら拡大直径まで外方向に拡大させる。
【0111】
同様な構造であるが、これら第1および第2具体例はその各格子の設計により異なる。第1具体例(図10Aおよび10B)は、最初に実質的にダイヤモンド形状である形状を有するが拡大ダイヤモンドまたは正方形の形状まで外方向に拡大する格子として構成される。第2具体例は一連の矩形形状サブユニットを有する減寸格子として構成され、これらは外方向に拡大して一連の相互接続した蜂巣のようなヘキサゴン(六辺多角形)を形成する。
【0112】
図示した2つの具体例の他に、他のメッシュ構造もしくは格子も設けることができる。同様に図示した各具体例は好ましくは自己拡大性設計にて使用するものであるが、これらは拡大性装置として作用する他の材料で構成することもできる。下記するように、この種の拡大性装置は減寸直径から拡大直径の状態まで適するエネルギーもしくは力を加えて拡大する。
【0113】
図11は本発明の他の好適具体例を示す。固定具は丸形もしくは正方形の装置として構成され、これは2つの高さH1およびH2に設定することができる。硬質ロッドもしくはバー85をポイント83にて蝶着する。ヒンジ83に外力81を加えることにより装置の高さを変化させることができ、これによりその拡大および固定特性をその新たな高さH2にて付与することができる(図11Bと図11Aとを比較)。
【0114】
好適具体例を骨折した指節骨および上腕骨の固定に関し説明したが、本発明の原理に従う髄内固定具を実質的に任意の人体の長い骨を固定すべく作成して使用することもできる。この種の固定具は、たとえば手および足の小さい骨(たとえば中手骨および中足骨)および大きい骨(たとえば大腿骨)の両者に使用することができる。
本発明による好適には固定される骨の細胞学的特徴に適する骨固定の固定具および最小浸襲性方法は、軟質組織に対する手術外傷および損傷を最小化させるという利点を有する。さらに皮膚を通して突出する如何なる固定具の部分も残らないため、感染の危険が減少すると共に、患者は従来技術よりも迅速に骨折部を運動させることができる。
脊椎融合による椎間病理学の処置
上記原理を用いて、たとえば脊椎融合法におけるような脊椎と椎骨の問題を処置することができる。本発明によれば、脊椎融合を達成するには最適には次の3つの手順を用いる:
1. 手術用具を用いて椎間スペースにおける脊椎骨膜を核質で完全に抽出する。これは骨成長を増大させる(骨合成)。
【0115】
2. 椎間中空部および相互連通スペーサ(たとえば図12〜13に示す)はその中腔部における骨移植体の介挿を可能にし、これはその多孔質設計と共に骨組織をここに成長させることができ、骨合成および脊椎融合を向上させる。
3. たとえばニチノールスペーサのような弾性型の椎間スペーサは柔軟性の圧縮特性を有して、介挿された骨に重量を付加させると共に骨合成を可能にする。使用しうる1つの材料はニチノール、スポンジ型材料(すなわち多孔質ニチノール)である。
【0116】
この過程における第1工程としては、注射器を損傷円板領域にスタイレットを用い或いは用いずに挿入する。好ましくは外科用具を次いで用いて、脊椎骨膜を含め軟質組織のみを「つかみ取り」もしくは侵食するが骨自身を損傷させない。
組織抽出が完了した後、拡大性椎間スペーサまたは他の拡大性スペーサを中空注射器を介し経皮挿入することができ、これは上記髄内固定装置の具体例と同様である。このスペーサの機能は、脊椎を安定化させると共に椎間スペーサに隣接する2つの脊椎間の骨融合まで骨成長を増進させることである。
【0117】
図12および13に示したように、椎間骨スペーサ125もしくは130の好適具体例を図示する(ただし、この装置は髄内固定にも使用することができる)。椎間スペーサ125もしくは130を先ず最初に注射器を介して圧縮減少直径形態(図13Bに示す)にて挿入する。このスペーサは、髄内固定装置と同様に先ず最初に椎間スペースに挿入すべく減少直径プロフィルに維持される。スペーサを経皮挿入するこの能力は、スペーサの減寸直径プロフィルに基づき上記したような主たる手術を回避させ、従って患者に対する外傷および感染の危険性を減少させる。
【0118】
椎間スペース中に椎間スペーサ125もしくは130を挿入した後、スペーサは巻き戻って図13Cに示した拡大状態にその拡大特性により達する。上記本発明の具体例と同様に、スペーサ125もしくは130は好ましくは生物適合性金属もしくはポリマーで作成され、最初に注射器により図13Bに示した圧縮減寸直径の形態にて挿入される。さらにスペーサはたとえばアニールされた316−Lステンレス鋼、形状記憶合金(たとえばニチノール)またはたとえばポリウレタンのようなポリマーなどの材料で作成することもできる。アニールされた材料を使用する場合、スペーサ125もしくは130は挿入後に直径を拡大するためのエキスパンダーの援助を必要とする。このエキスパンダーは注射器を介して挿入されるバルーンとすることができ、これを膨脹させてスペーサを椎間スペースの直径まで拡張させる。代案としてエキスパンダーは機械的エキスパンダーとすることもでき、これをスペーサ内腔部に挿入すると共にこれを自己拡大させ、或いはこれを外部支援により拡大させる。自己拡大性材料をスペーサにつき用いる場合、このエキスパンダーは必要に応じ単に拡大につき援助すべく用いることもできる。
【0119】
図12もしくは13Cを参照して見られるように、スペーサ125もしくは130には一連の細孔部もしくは空隙部120をその表面に設ける。これら細孔部120(これらは円形、矩形または他の任意の形状である)は、細孔中への骨成長を可能にして脊椎安定性を向上させ、最終的に隣接脊椎間の融合を指令すると共にスペーサを所定位置にする。突出部もしくはスパイク153を設けることもでき、これらは骨表面に侵入すると共にスペーサの固定および安定化を支援する。
【0120】
図13Aおよび13Cにさらに示したように好適具体例においては、スペーサ130にたとえば1個もしくはそれ以上の固定用フィンガー115もしくはティース119のような固定メカニズムを設ける。この固定メカニズムはさらに椎間スペーサ130の拡大直径を維持すると共に、スペーサ130のその減寸直径状態への圧縮復帰を阻止し或いは防止する。図13Aはスペーサ130における1個もしくはそれ以上の固定用フィンガー115の使用を示す。スペーサ130が拡大すると、スペーサの先端部122は固定用フィンガー115もしくはティース119を越えて移動する。固定用フィンガー115もしくはティース119は先端部122の復帰移動に抗し、或いは固定用フィンガー115の「V」状空隙部またはティース119の1つの溝部に先端部122を捕捉することによりスペーサ130の収縮に抗する。その結果、スペーサ130に対し力を加える一方、これが脊椎間に存在するためスペーサは柔軟性圧縮特性を示し、さらに固定メカニズムにより与えられる対向作用に基づき不当な圧縮に抵抗する。
【0121】
従って骨表面の充分な清浄と、柔軟な圧縮特性を伴う特殊なスペーサ多孔質設計と、移植された骨移植体との組合せは、椎間スペースにおける骨融合および骨融合の箇所までの脊椎の安定化を可能にすると共に向上させる。
椎間板人工器具
以下、本発明の好適具体例による患者の椎間板スペースに挿入するためのバルーン人工器具140を示す略図である図14Aおよび14Bを参照する。図14Aは人工器具の平面図である一方、図14Bはバルーンを下記するような膨脹状態で示す断面図である。
【0122】
バルーン人工器具140は、好ましくは椎間板の直径にほぼ等しい直径を有する生物適合性布地もしくはポリマー142の2つの円形片からなっている。好ましくは布地142はたとえばダクロン、ゴア−テックスまたは他の当業界で知られた繊維材料などの丈夫な不活性合成繊維から織られる。代案としてまたは追加的に、布地はそれ自身で或いは不活性繊維を織り込んだ生物吸収性材料で構成することもできる。布地は好ましくは粗い織目を有して、下記するように人工器具140を移植した後に人工器具中への骨成長を増大させる。
【0123】
さらに代案として、2つの布地片142は、円板スペースに挿入すると共に下記するように充分な圧力まで膨脹するのに充分な柔軟性、弾性および強度を有する限り、任意適する生物適合性材料で置換することもできる。
磨砕した骨物質(たとえば患者の頸骨から採取)を布地142の外表面に人工器具140の移植前および/または移植後に設置することが好ましい。さらに、相当量の骨物質を好ましくはバルーンの中心146にて中空部に含有させることもできる。磨砕された物質はさらに所望の骨成長および骨に対する固定を向上させる。
【0124】
さらにバルーンにはその上表面および下表面に突出部153を設けて、骨表面へ付着および/または上下侵入させることも好ましい。これら突出部はバルーン移動を防止すると共に、一層良好なバルーンの安定化を達成する。
好適実施例につき図14Aおよび14Bに示したほぼトロイド状のバルーンを参照して説明したが、本発明の原理はたとえば楕円形状および三ケ月形状のバルーンまたは2本の平行円筒ロッドなど異なる寸法および/または形状のバルーン人工器具を作成すると共に移植するにも適用しうることが了解されよう。
【0125】
布地片142はその外側縁部144および円形中心146にて互いに封止される。1例として熱封止(すなわち当業界で知られた技術)を用いることができる。好ましくは1本もしくはそれ以上の頑丈な弾力性ワイヤ152(好ましくはステンレス鋼ワイヤ)に布地142を織り込んでバルーン142の構造体を補強する。バルーンの外縁部144におけるワイヤ152を図14Aおよび14Bに示し、ワイヤの存在は各布地片142の間の縫目に沿ったバルーンの破裂を防止するのに役立つ。さらにワイヤはバルーンを剛性にして下記するように円板スペース内で一層容易に操作および位置決めするにも有用である。代案としてまたは追加的に、この種のワイヤは布地片142の他の箇所に織り込むこともできる。さらに、これらはX線画像形成と共に使用すればワイヤを積極的に位置決めするにも有用である。
【0126】
流体ポート148を縁部144に沿った箇所にて開口させ続ける。膨脹チューブ158をポート148に取り付けて封止する。加圧流体をチューブ158を介しポート148に注入する場合、流体はバルーン140内のスペース150を埋めて、所定流体圧力まで膨脹させる。
図15は2つの脊椎164および166の中間にある円板スペース162への人工器具140の移植を示す本発明の好適具体例による斜視図である。人工器具140を円板スペース162に移植して、損傷した天然円板(たとえばヘルニア円板)を置換する。人工器具の移植を準備するため、カニューレ160を円板スペース162中へ横方向アプローチにて経皮挿入する。実質的に天然円板物質の全部を人工器具の移植前に円板スペースから除去する。
【0127】
人工器具140をカニューレ160中へ挿入するには、人工器具を図15に示されたように細くて長いほぼ円筒状に巻回する。この人工器具をこの形状にてカニューレを介し浸食された円板スペース162に供給する。好ましくは膨脹チューブ158は、人工器具をカニューレ中に圧入すべく作用しうるのに充分な剛性を有する。或いは、当業界で知られた他の手術プローブをこの目的で使用することもできる。
【0128】
本発明の原理に従う独特な減寸直径構造体および人工器具140の柔軟性は、細いカニューレ40を介し人工器具を移植することを可能にすることが了解されよう。当業界で知られた円板人工器具はこのように小型にしえず、またその後に円板スペース162内で下記するように開口および膨脹させることもできない。
すなわち人工器具140は、実質的な皮膚切開、大きい筋肉部分のラミネクトニーもしくは切除の必要なしに経皮移植することができる。
【0129】
図16は、脊椎間の円板スペース162に位置せしめた人工器具140を有する前額面に沿って見た脊椎164および166を示す断面図である。人工器具140がカニューレ40を通して全体的に円板スペース中へ供給された後、人工器具は開口スペースにて巻き戻り、膨脹するまで一般に扁平形状(図面に示す)をとる。ワイヤ152の弾力性はバルーン布地を巻き戻すのに役立つ。さらに、これは人工器具を、好ましくはチューブ158をカニューレ160中に圧入および引戻して布地を円板スペースに一層容易にセンタリングするよう剛性である。
【0130】
円板スペース162における人工器具140の正確な設置は好ましくは脊椎、円板スペースおよび人工器具の可視化により確認され、特に好ましくは開口磁気共鳴画像形成(MRI)システムにより確認される。代案として、X線画像形成を用いて脊椎164および166に対するワイヤ152の相対位置を観察することもできる。さらに代案として或いは追加的に、当業界で知られた細いエンドスコープを円板スペース162中へ或いはそれに隣接して挿入することにより人工器具を肉眼観察することもできる。
【0131】
本発明の好適具体例において、図16に示したように人工器具140を挿入した後、人工器具を塩水で膨脹させて図14Bに示した形態にする。人工器具の膨脹は、下記するように固化用流体を満たした際に持ちうる形状および位置を実質的に可視化させる。人工器具が不正確な位置で見られれば、これを容易に収縮させ、再位置決めし、次いで再膨脹させることができる。正確な位置決めが確認された後、塩水を除去すると共に人工器具を収縮させる。
【0132】
人工器具140を好適には円板スペース162に位置せしめた後、生物適合性の固化用流体をチューブ158およびポート148を介し注入して人工器具を膨脹させる。好ましくは固化用流体は、当業界で知られたデュプイ・カンパニー、英国により製造されるデュプイ・オルソペディック・ボーン・セメントのような骨エポキシからなっている。代案として固化用流体は重合性モノマーで構成することもできる。
【0133】
人工器具140は、脊椎164と166との間の解剖学上正確な間隔を維持するのに必要な圧力まで膨脹される。バルーンを形成する布地片142の弾力性およびスペース150の全体にかかる流体の圧力均衡(図14に見られる)のため、バルーンは自然にほぼ均一な圧力を円板スペース162に隣接する脊椎164および166の表面に維持すると共に、脊椎を解剖学上正確な相互の配向に保持する傾向を有する。好ましくは、脊椎164および166は人工器具140および周囲の構造体と一緒に、特に好ましくは上記したようなMRIを用いて撮影され、脊椎の間隔および配向が正確であることを確認する。
【0134】
流体が充分固化した後、ポート148を封止すると共にチューブ158を好ましくはチューブ158をカニューレ160に対し捻ると共に引き戻して除去する。
図17Aおよび17Bはそれぞれ、円板スペース162内に挿入および膨脹された人工器具140を示す前額面および軸方向の断面図である。人工器具は固化用流体170で膨脹されており、チューブ158は上記したように脱着除去されている。脊椎165および166はその内腔部172を含め実質的に完全に留まる。
【0135】
図17Aおよび17Bに示したように人工器具140の移植の後、脊椎164および166は人工器具の周囲および人工器具を通して円板スペース162中へ成長する。好ましくは、上記したように磨砕した骨を人工器具140の外側表面(特にその中心146の中空部)に設置して、この骨成長を援助する。最終的に、脊椎164および166の成長はこれらを互いに融合させて、骨が永久的に安定化すると共にさらに損傷しないよう保護する。
【0136】
図14〜17を参照して上記した好適具体例において、天然の椎間板と寸法にて匹敵する単一の人工器具を円板スペース162にて移植したが、本発明の他の好適具体例においては2個もしくはそれ以上の一層小さい人工器具を円板スペース内に並列移植することもできる。
さらに上記好適具体例においては、人工器具140を横アプローチ経皮移植したが、本発明の原理に従う膨脹性円板人工器具は当業界で知られた他の外科技術、たとえば開口および腹腔鏡の外科手術を前側もしくは後側アプローチにより用いて移植することもできる。 本発明のさらに他の好適具体例を図18A〜18Cに示す。これら具体例は扁平環状頂壁部および底壁部(たとえばワッシャ)を図14〜17に示したドーナッツ(トロイド)形状に対比して示す。他の好適具体例についても髄内固定および円板人工器具のための金属バルーンに関し次のセクションにて説明する。
髄内固定および円板人工器具のための金属バルーン
上記したように本発明によれば小開口部は骨の外部から作成されて、骨(長い骨でも短い骨でも)中への装置の経皮挿入を可能にし、或いは円板の代わりに穴を椎間スペースに作成する。本発明の幾つかの好適具体例において、装置は金属バルーンを備える。
【0137】
好適具体例において、バルーンはたとえばチタニウム、タンタル、ステンレス鋼(たとえばS.S.316L)、白金、他の医療級金属などの薄い金属から作成される。好ましくはバルーンは10〜300μmのバルーン肉厚で作成されるが、これら寸法より大もしくは小の肉厚も可能である。
バルーンは数個の金属バネもしくはロッドと共に作成して、バルーンに一層大きい軸方向の屈曲力および回転力に対する強度を付与すると共にバルーンにその操作および患者への挿入を容易化させる大きい剛性を付与することができる。ロッドをバルーンの外表面もしくは内表面に(たとえばハンダ付け、ミリングまたはバルーンの1部として)接続することができる。たとえば金属バルーンおよびロッドを作成するには、これらを全てアニールすることができ、或いは全て低温加工することもできる。代案としてロッドを低温加工する一方、バルーン自身をアニールして骨内に挿入した後に一層容易な拡大を可能にすることもできる。これは、1片の低温加工したロッドを作成すると共にその後に金属バルーンの肉薄部分のみをアニールして行うことができる。バルーンの両端部はハンダ付け、スポット溶接、レーザー溶接または金属コーンを装置の各端部に接続する他の任意適する方法で作成することができる。
【0138】
バルーンの外側表面は侵食性とすることができ、或いは骨表面に係合する突出縁部で粗面化させて固定具を所定位置にしっかり固定すると共に髄内具体例における骨折部分の摺動もしくは回転を防止することができ、或いは同様に椎間の具体例にて非運動性を付与することもできる。このシステムは、髄内ネイルにおける相互固定ネジを必要とせず或いは用いない点で利点を有する。
【0139】
さらに或いは代案として、バルーンは生物適合性ポリマーで構成することもできる。さらにまたは代案として、バルーンは上記した金属の外側の薄い表面と生物適合性プラスチック、ポリマーもしくは布地の内側表面とで構成することもできる。
バルーンが骨内または脊椎に隣接して適正位置に挿入された後、これを次いで生物適合性材料で膨脹させる。好適具体例においては髄内固定における膨脹流体として液体を使用し、円板人工器具としては生物適合性の固化用流体を使用する。髄内固定用の液体としては水、ゲルもしくは空気が好適である。しかしながら他の代案として、固化用流体を所望に応じ使用することもできる。
【0140】
本発明の代案具体例において、膨脹流体(髄内ネイルもしくは円板人工器具のいずれについても)は、それ自身で拡大しうる充填物質である。この充填物質は好ましくはその容積もしくは剛性を外部刺激に呼応して変化することができる。たとえば外部刺激は磁場、電場、放射線および/または温度とすることができる。外部刺激に呼応して容積もしくは剛性を変化する流動学的物質、高分子電解質ゲルまたは他の適する拡大性物質を充填物質として使用することができる。
【0141】
円板人工器具につき、生物適合性の固化用流体または他の非圧縮性流体が好適具体例にて使用される。好ましくは、この固化用流体または非圧縮性流体はバルーン内で重合するモノマー材料からなり、或いはたとえばエポキシのような2−成分セメントである。これは、円板に代替するのに充分な強度を人工器具に付与する。
この膨脹流体をバルーンの内腔と連通位置せしめると共に外部供給源からの圧力下に置いてバルーンを半径方向外方に拡大させることにより骨を固定する。次いでバルーンをたとえば弁を用いて密封すると共に、外部流体供給源を遮断する。弁の具体例においては、弁の上に保護カップを設けて骨成長から弁を遮蔽保護するのが好適である。
【0142】
固化用流体を用いる具体例において、円板人工器具は極めて強力となり、円板の代替とすることができる。このバルーンには1個もしくはそれ以上のトンネルもしくは穴を各表面間に設けて、脊椎骨表面が互いに2つの隣接脊椎間で接触させることにより、これら2つの脊椎を融合させることもできる。さらに、金属バルーンの外側表面を脊椎よりも強力にして、脊椎が侵食しないよう保持する。さらに金属バルーンの外側表面は侵食性または粗面にすることもでき、突出縁部を設けて脊椎に係合させると共に固定具を所定位置にしっかり固定して、摺動もしくは回転を防止することもできる。
【0143】
さらにまたは代案として、バルーンは脊椎よりも強い充分な強度を有する生物適合性プラスチックで構成することもできる。さらにまたは代案として、バルーンは上記した金属の外側表面と生物適合性プラスチックもしくは布地の内側表面とを備える。
髄内装置の場合、骨が治癒した後、バルーンは弁を開口させると共に液体を除去して収縮させることができ、これにより装置の除去を容易化させる。椎間板人工器具の場合、人工器具は永久的に所定位置に残すことができる。
【0144】
図20〜23は本発明の幾つかの好適具体例を示す。これら具体例は髄内ネイルおよびネイルのバルーン具体例に関し特に有用であるが、これら具体例の特徴は自己拡大性もしくは拡大しうる装置と一緒におよび/またはここに開示した他の椎間装置および円板人工器具と一緒に使用することもできる。すなわち、弁固定部材などを本発明で開示した他の特徴と共に使用することができる。図20は本発明の髄内ネイルもしくは固定具の他の好適具体例を示す。図面に示したように、外方向に延びる長手バー300を備えるネイルを作成することが好ましい。
【0145】
図20Bは髄内ネイル310の表面より高い長手バー300の突出部を示す断面図である。これら長手バー300は髄内ネイル310の長さの1部に戴置することもできるが、これらを髄内ネイル装置の長さ全体または実質的に全体に沿って延在させることが好ましい。好適具体例において、図面に示したように4本の長手バーを設け、ネイル外周の周囲に90°間隔にて位置せしめる。代案として、他の個数の長手バーを設けることもできる。
【0146】
長手バー300は固定部材として作用し、装置の機能を向上させると共に骨治癒を促進する。髄内ネイルを膨脹させる際、長手バーもしくは固定部材300を骨皮質の内表面に押圧して、骨の骨折部分間の回転運動を防止すると共に屈曲をも防止する。これら固定部材の付加は、長手ロッドが回転を防止するという事実に基づき相互固定を必要としないので標準的髄内ネイルよりも有利である。これはさらに骨を安定化させると共に治癒過程を促進する。これら長手バーもしくは固定部材300を本発明の各種の具体例に、これらがここに開示した自己拡大性、バルーン拡大性またはバルーン具体例のいずれであっても設けることができる。
【0147】
図21は、ここに開示した髄内固定具の好適具体例の特徴をさらに示す。図面に示したように、本発明の好適具体例において金属バルーンもしくは固定具320はパイプもしくは本体321と遠位端部カバー323とを備えて用いられる。
さらに、金属バルーンもしくは固定具320には固定具の近位先端部330に位置する弁318を設けて、固定具320への流体の出入通過を制御する。弁318は、ヘッドカバー322内に収容されると共にヘッドキャップ328にて終端する換気ピン325、O−リング326およびバネ327を備える。ヘッドカバー322およびヘッドキャップ328は弁318を遮蔽して、弁中への骨成長を防止する。
【0148】
好適具体例においては、高圧流体(たとえば塩水)を先ず最初に弁318を介し髄内固定具に挿入もしくはポンプ輸送する。弁を介するバルーン中への塩水のポンプ輸送は固定具320を直径拡大させ、これは図21Bと図21Cとの比較で示される。弁は流体が髄内固定具から逃げるのを防止し、固定具を必要とする時間の長さにわたり拡大状態に維持する。所望ならば、その後に固定具を弁318を用いて収縮させ、流体もしくは塩水を固定具から放出させることもできる。
【0149】
本発明の他の具体例を図21Dに示す。本発明は骨313内の位置せしめて示す。固定具には骨折部の近傍に位置せしめるチューブ状部材311を設ける。この部材311は、膨脹固定具セグメント315の直径よりも小さい一定直径を有する。部材311の直径は、固定具の半径方向拡大に際し部材311が固定具の拡大を防止もしくは抑制して内側骨表面に接触しえないよう固定される。たとえばセグメント315は骨の内側表面と接続する直径まで拡大するが、部材311はこの部材により包囲された固定具がこの固定具の残部により達成される拡大程度になるのを防止する。たとえば装置には、その領域における拡大を抑制するためのリングを設けることができる。この具体例は、「バタフライ骨折部」(すなわち多重骨断片を持った複雑骨折)を防止するのに特に有用である。
【0150】
本発明の髄内ネイルの具体例を図22Aに示す。図22Aは両者が拡大の前後における固定具実施例の2つの断面図よりなり、これら図面を互いに重ね合わせる(相対的な収縮および拡大直径を理解するため)。本発明のこの具体例において、収縮した髄内ネイルは湾曲もしくは起伏表面を備え、好ましくはそこに位置する長手バー300を備える。髄内固定具は拡大前に内方向に湾曲もしくは折り畳まれる表面を備えて、一連の接続球状セクション336を形成することが好ましい。好適具体例において、球状セクションは圧縮状態にてクローバー状の形状を有し、図22Aに示した4枚のリーフクローバ形状で示される。
【0151】
図22Aに示したように、圧縮された形状もしくは状態332において髄内ネイル330は圧縮直径D1を維持する。圧縮直径D1は小直径であって、髄内ネイルを骨における小穴を介し或いは上記したように注射器を介し骨中へ挿入するのに適するようにする。これに対し拡大形状もしくは状態334においては、髄内ネイル330は拡大直径D2にて骨内に維持される。拡大直径D2は長手バー301の外側表面から対向長手バー302の外側表面まで測定して大型直径であり、この直径は長手バーが所望の骨の内側壁部に押圧されるのに充分である。この図面は尺度を示すものでないが互いに重ね合わせた固定具の圧縮状態と拡大状態との両者を示し、圧縮状態から拡大状態への固定具の膨脹により達成される実質的な直径増大を示す。
【0152】
図22Bは本発明の他の具体例であって、図22Aと同様に示される。この具体例においては、1個もしくはそれ以上のヘアピンループもしくはアーク337を長手バー300の間に設ける。図示した具体例においては、4個の長手バー300をそれぞれ互いに90°にて設け、1個のヘアピンループ337を中心位置せしめると共に長手バーの各隣接対を接続する。所望ならば、1個もしくはそれ以上のアピンループを隣接長手バーの任意または全ての対の間に設けても設けなくてもよい。
【0153】
図23Aおよび23Bに示したように、好適具体例において髄内ネイルには正中長手キャナル、孔部もしくはトンネル344を設けることができる。このキャナル344は骨中へのネイルの挿入を容易化させ、案内ワイヤを用いて挿入手順を行うことを可能にする。正中キャナル344には案内ワイヤにわたりネジを設けて、固定具を骨中への挿入に際し適する位置に容易に案内することを可能にすると共に案内ワイヤを位置決めが完了した後に引抜くことを可能にする。
【0154】
特に弁を有する具体例においては、移植ネイルの先端部に装着して骨からのネイルの引抜きを援助する取出メカニズムを設けることができる。取出除去装置を弁の先端部に装着した後、弁を開口させてネイル内の高圧を解除することにより直径を除去の準備に際し減少させることができる。
要するに本発明の上記記載は、髄内固定および椎間固定装置、椎間骨スペーサおよび支持体、椎間板人工器具の最小浸襲性挿入、並びに処置方法につき説明する。好適具体例につき説明したが、本発明の具体例は自然に或いは骨固定具の経皮挿入を可能にする拡大レベルまで内腔を介し挿入されるエクスパンダにより拡大する拡大性固定装置および人工器具装置に向けられることを了解せねばならない。
【0155】
特定具体例に関し本発明を説明したが、この説明は限定を意味するものでなく、各種の改変をなしうることが当業者には了解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】自己拡大性髄内固定具の斜視図
【図2】固定具を示す断面図
【図3】固定具の使用を示す断面図
【図4】固定具の斜視図及び断面図
【図5】自己拡大性髄内固定具の端面図、固定具の加工用材料の作成を示す略図、閉鎖形状における固定具の断面図
【図6】非膨脹状態にある髄内バルーン固定具の略図
【図7】骨折部の固定における固定具の使用を示す断面図、固定具の挿入、バルーンの膨脹および膨脹メカニズムの除去の各工程
【図8】収縮形状における膨脹性髄内固定具の側面図および断面図
【図9】膨脹形状における膨脹性髄内固定具の断面図および斜視図
【図10】開口および閉鎖位置における骨固定のための2つの装置を示す斜視図
【図11】機械的に高さを変化させうる骨固定装置の断面図
【図12】拡大性椎間スペーサおよび髄内骨固定具の斜視図
【図13】椎間骨スペーサおよび髄内骨固定具を示す図
【図14】椎間板人工器具の平面図及び断面図
【図15】患者の椎間板スペース中への図14Aおよび14Bの人工器具の挿入を示す斜視図
【図16】円板スペースにおける図14Aおよび14Bの人工器具の設置を示す前額面における断面図
【図17】円板スペース内における人工器具の膨脹を示す断面図及び円板スペースを通る軸方向平面の断面図
【図18】円板人工器具の断面図、平面図および斜視図
【図19】骨固定および椎間離間のための各種の方法および装置の要約図
【図20】髄内固定具の斜視図、断面図、部分側面図
【図21】髄内固定装置の断面図、A−A線断面図(収縮形状、膨張形状)
【図22】髄内ネイルの断面図(収縮形状、拡大形状)
【図23】正中長手キャナルの斜視図具の略図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、髄内骨および脊椎の固定具を含む経皮的骨および脊椎の安定化、固定および修復のためのシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
骨折部を修復するための髄内固定具
骨折部の修復に使用する髄内固定具は当業界にて周知されている。一般に、長く狭いネイルの形態を有するこの種の固定具は骨の髄内キャビティに長手方向に挿入されて、重大な骨折部の2つもしくはそれ以上のセクションを互いに接続すると共に合体ブレースすることにより治癒を促進する。
【0003】
この種類の固定具は、挿入後のその位置を堅固に保持するよう充分大きい半径方向直径を持たねばならない。固定具を所定位置に保持する問題は、最も長い骨の髄内キャビティが均一でなく、寧ろ骨の中央で狭くかつ端部で拡開するという事実により複雑化する。さらに、この問題はこの種のキャナルに挿入されるロッドが回転運動および屈曲運動につき安定化を一般に与えないという事実によっても複雑化する。
【0004】
しばしば、骨髄質は固定具の挿入前に絞り出して、固定具のための余地を作成せねばならない。この種の絞り出しは骨内の組織を破壊し、従って適正な治癒を阻害しうる。従って、各種の髄内ネイルおよび固定具は、挿入に際し狭い形状を有すると共に次いで半径方向外方に拡大して髄内キャビティの形状に適合して内部に堅固に保持されるよう設計されている。
【0005】
たとえばアギンスキーに係る米国特許第4,204,531号(参考のためここに引用する)は、拡大メカニズムを有する髄内ネイルを記載している。このネイルは外側チューブ状シースと、このシース内で長手方向に移動しうるロッド形状の部材と、ネイルの先(内側)端部に2個もしくはそれ以上の拡張しうる長手ブランチを持った拡大性部材とを備える。ネイルは最初に骨先端部の髄質キャビティに挿入され、ネイルの後端部から出して骨の端部から突出させる。次いで、ロッド形状の部材を引き戻して、拡大部材のブランチを半径方向外方に展延させることにより、髄内キャビティの内部にネイルの先端部を固定する。
【0006】
同様に、ラフトプーラス等に係る米国特許第4,854,312号(参考のためここに引用する)は、拡大性髄内ネイルを記載している。このネイルは2個の長形部材で形成される。これら部材のうち第1の部材は交連チャンネルを有し、これは第2部材に摺動係合する。ネイルが髄内キャビティに挿入された後、第2部材を第1部材に対し長手方向に相対摺動させて第2部材の端部を屈曲させ、ネイルがキャビティ内で横方向に延びると共に所定位置に固定されるようにする。
【0007】
セガルに係る米国特許第4,313,434号(参考のためここに引用する)
は、髄内キャビティの内側に可撓性かつ膨脹性のブラダーを用いる長い骨の骨折部の固定方法を記載している。小開口部を骨に穿設し、ブラダーを穴を介して髄内キャビティに挿入する。次いでブラダーを無菌空気で膨脹させると共に封止して骨を固定する。骨折部が治癒した後、ブラダーを縮ませて除去する。
【0008】
両者ともベルガーに係る米国特許第5,423,850号および第5,480,400号(参考のためここに引用する)は、バルーンカテーテルを用いる骨固定の方法および装置を記載しており、遠位端部に収縮したバルーンを有するカーテルを、骨折部位を越えて髄内キャビティに挿入する。第5,423,850号の米国特許において、バルーンはそれをキャビティを通して供給される案内ワイヤに沿って案内した後、カテーテルを導入する。キャビティ中に充分挿入された後、バルーンを膨らませてこれを所定位置に固定し、カテーテルをバルーンに対し密接させて骨折部に圧縮を与える。
【0009】
上記全ての特許公報に記載された髄内固定具およびその移植方法は、拡大性髄内固定具の1部を患者の皮膚を介して突出させて残すことを必要とする。しかしながら、この種の突出部分は術後感染の傾向を増大させると共に骨の運動性を阻害する。従って本発明の目的は、この種の突出部の必要性を排除する方法および装置を提供することにある。
大きい骨の骨折部に加え、長く小さい骨の骨折も極めて一般的に生ずる。しかしながら、骨折部安定化と共に早期の運動性を可能にする簡単な処置は現在可能でない。
【0010】
オルソペディックス、第13(2)巻、第213〜215頁(1990)における「中手および指節骨の骨折の閉鎖髄内ピニング」と題する論文(ここに参考のため引用する)においてバレラおよびカールは、K−ワイヤを用いる指骨折部の1つの固定方法を記載している。骨折した指の骨を固定するため、この種のワイヤの数本を僅かに屈曲させて1本ずつ順次に髄内キャビティ中に挿入する。各ワイヤは、骨の1端部近くに穿設された各穴を介して挿入される。典型的には、骨を固定すべく2〜5本のワイヤが必要とされる。挿入の後、各ワイヤを骨表面と整列して切断し、皮膚を挿入部位の上で閉鎖する。
【0011】
しかしながら、骨折した小さいチューブ状骨につき現在選択される処置は細い金属ロッドの挿入である(髄内ネイリング)。このロッドが移動するのを防止するため、ロッドの端部を骨の外側から突出して残し、これはたとえばロッドの端部が指先端から突出する中足骨折部ネイリングで行われる。しかしながら、この固定は患者が指または骨折肢を用いるのを防止する。さらに良好な回転安定化を可能にしない。さらに、これは骨髄質と人体外部との間の連通に基づく感染をもたらしうる。
【0012】
突出ロッドの使用なしに小さい骨を固定するための幾つかの特許および方法が当業界に現在存在する。その例はたとえばR.C.レビス・ジュニア、M.ノルジケ、K.ダンカン、クリニカル・オルソペディックス・リレーテッド・リサーチ(1987)、第214巻、第85〜92頁;M.D.ノルジケ、R.C.レビス、H.F.ヤンセン、K.H.ダンカン、ジャーナル・オブ・ハンド・サージェリー(1988)、第13/11巻、第128〜134頁;C.D.バレラ、J.B.カール、オルソペディックス(1990)、第13/2巻、第213〜215頁;並びにWO 94/12112号、US 4204531号およびUS 4854312号を包含する。
【0013】
特に1つの方法がロイスC.レビス等、クリニカル・オルソペディックス・アンド・リレーテッド・リサーチ、テクニカル・オルソペディックス(1989)、第1巻、第18〜91頁における「手の骨折部を処置するための拡大性髄内装置」と題する論文に記載されている。この論文において拡大性髄内ネイルは骨折部を開いた後に挿入され、ネイルは骨折部を介して挿入される。ネイルは骨折部を介して挿入されるのであって骨端部からは挿入されない。しかしながら、骨表面の露出を必要としない小さい骨に対する内部固定具の経皮的な最小の外傷の挿入につきニーズがまだ存在する。
【0014】
指先端部を介する髄内ネイリングもC.D.バレラ;J.B.カール、オルソペディックス(1990)、第13/2巻、第213〜215頁の「中手骨折部の閉鎖髄内ピニング」と題する論文に検討されている。しかしながら、このネイリングは拡大性ネイルを含まない。
上記した多くの骨固定に関する特許は異なる金属装置(すなわちニチノール(登録商標)、チタニウムなど)の移植を含む。他の可能性は、拡大性髄内骨固定具として着脱自在な膨脹性バルーンを使用することである。バルーンにより骨固定するための特許が今日存在するが、これらは髄内ネイリングを与えない。これらは一方の骨折部を他の骨折部の方向へ引張る際にしか接合作用を与えない。これらの例は米国特許第5,423,850号および第5,480,400号(上記)を包含する。
【0015】
従って、骨折部安定化の現在の技術には各種の顕著な欠点が存在する。これら問題に対処するため、本発明は下記する各種の本発明の特徴を用いて達成される髄内ネイリングを与える。たとえば骨折部の中心に位置せしめると共に両骨セグメントにわたり延在させる着脱自在な髄内バルーンを使用することにより、従来技術の多くの欠点に対処する改良装置が提供される。この種の装置は患者に迅速な術後の骨折安定化を与えると共に四肢の運動性をもたらし、かつ感染のチャンスを減少させ、さらに必要に応じ骨治癒の後の除去の可能性をもたらす。
椎間板切除およびスペーサ設置
背疼痛は、しばしば円板病理学および脊椎不安定性に起因する広範な病気である。現在、脊椎融合の選択処置は円板除去に続く、ネジを使用し或いは使用しない椎間スペースへのプレートの移植を含む(たとえば米国特許第5520690号、米国特許第5522816号および米国特許第5529899号参照)。さらに、この手順は椎間スペースにおける骨移植体の移植をも含む。
【0016】
人工的椎間板を用いる特許および用途も現在存在するが、これらは各特許(米国特許第4,759,769号;WO 92/14423号;WO 90/00037号;WO 90/37170号)にて成功することがまだ証明されていない。現存する処置は、初期脊椎内板組織の除去および椎間支持体の設置のための初期手術を含む。椎間スペーサおよび安定具を椎間スペース内に設置した後、種々異なるカッターおよび開創器の使用により損傷板を除去すると共に椎間骨表面を清浄する(米国特許第4,904,260号および米国特許第5,645,598号)。次いで骨移植体を移植して脊椎融合を容易化させる。
【0017】
上記方法を用いる手順は全て、背中および/または腹部の実際の開口および切除を必要とし、或いはこの手順を腹腔鏡により行うことを必要とする。従って、現在では経皮的な非腹腔鏡型の最小浸襲性技術により脊椎融合の現在の方法を容易化させると共に改善するニーズが当業界に存在する。
さらに円板切除法は椎間スペースにスペーサを介装して、脊椎融合が骨形成により達成されるまで脊椎を支持することを含む。現存するスペーサは、椎間領域に保持するのに必要とされるスペースに応じ一定の直径にて作成される。ネジを回転させて拡大する或る種のスペーサも開示されているが、これは上方向および下方向にのみ拡大し、従ってまだ大きい挿入プロフィルを有する。これは最小浸襲性技術にて経皮的に装置を挿入することができない。以下一層詳細に検討するように、小直径にて形成されると共に移植されると半径方向に拡大しうるスペーサもしくは人工器具につきニーズが存在する。さらに同じく下記に検討するように、上記各方法で使用すべく同じく経皮的に機能しうるような椎間組織抽出器についてもニーズが存在する。
椎間板人工器具
椎間板人工器具も当業界にて公知である。この種の人工器具は一般に、スペースから円板物質の全部もしくは1部を除去した後に椎間スペースに挿入される。
【0018】
挿入の後、人工器具は互いに離間した2つの隣接脊椎を保持して、脊椎を解剖学上正確な間隔および配向にて維持する。人工器具を移植する手術の後、骨は一般に脊椎から人工器具中および器具周囲に成長することにより、人工器具を所定位置に堅固に保持すると共に相互の脊椎の望ましくない運動を防止する。
レイ等に係る米国特許第4,772,287号および第4,904,260号(参考のためここに引用する)は、一般に円筒形状を有すると共に円板物質の性質と同様な性質を有するゲル物質を含有した人工器具円板カプセルを記載している。円板物質の1部を除去した後、2個のこの種の人工器具カプセルを円板スペースに移植し、1個は脊椎の矢状軸のいずれかの側に移植する。これらカプセルは収縮状態で移植し、次いでゲルにより隣接椎骨を離間保持するのに充分な圧力まで膨脹させることができる。
【0019】
円板スペースに人工器具円板カプセルを移植するには、患者の背中を開口すると共に部分椎弓切除術を行って円板スペースに接近する必要がある。この種の開口椎弓切除術は危険、副作用および長い回復時間を伴う主たる手術法である。たとえば米国特許第3,875,595号、第4,349,921号、第3,867,728号、第4,554,914号、第4,309,777号、第3,426,364号および第4,636,217号(参考のためここに引用する)に記載された他の円板人工器具も同様に、その移植のための主たる手術を必要とする。
【0020】
膨脹もしくはヘルニア円板を処置するための開口手術に伴う危険および長い回復期間に呼応して、経皮円板切除術の最小浸襲性外科技術が開発されている。経皮円板切除術においては、狭いカニューレを患者側における小さい切開部を介して横方向に円板スペースに挿入する。円板への横方向アプローチは、当業界で公知の他の手術法により必要とされる骨および/または相当量の筋肉の切断の必要性を回避する。手術用具をカニューレに通過させて円板物質を切除し、周囲の神経に対する円板の外方向圧力を軽減し、従って膨脹もしくはヘルニア円板により生ずる疼痛を緩和させる。
【0021】
経皮円板切除術は外来患者の手法として行うことができ、成功すれば患者は僅か短い回復期間の後に充分活動すべく帰宅することができる。この手法は病例の約70%もしくはそれ以下で成功しているが、開口背部手術により得られる充分な処置範囲を可能にしない。たとえば、当業界で知られた円板人工器およびこの種の円板器具の移植方法は、経皮的アプローチに使用するには適していない。
【0022】
脊椎は、人体部分が懸垂される骨格の軸である。脊椎の椎骨本体は椎間板により分離され、これら椎間板は軸方向骨格の椎骨セグメント間のクッションとして作用する。これら円板は繊維質の環および核で構成され、後者はゲル状物質であって環内に含有される。核の組織が環から膨出すると円板ヘルニアが生ずる。ヘルニア核は円板に近接した脊椎神経に圧力を及ぼして、疼痛または筋肉調節の喪失をもたらしうる。この種の病例における正常な手法は開口手術にてヘルニア円板組織を除去することであるが、これは長い回復期間および潜在的に重大な副作用を伴う方法である。
【0023】
開口脊椎手術の危険性および複雑性に鑑み、ヘルニア組織を除去するための最小浸襲性手法が開発されている。上記したこの種の手法の一形態は経皮円板切除術であり、円板における核のヘルニア組織を患者の人体から除去する。この種の方法に関する装置がたとえば米国特許第5,131,382号(参考のためここに引用する)に記載されている。核組織は、好ましくは患者側における小さい切開部を通して椎間スペースに挿入されるカニューレを介し除去される。切開部をできるだけ小さくすると共に人体を背側でなく横向にすることにより患者に対する外傷を最小化させる。ヘルニア組織の除去はしかしながら長時間の過程であり、しばしば再切開用具の除去および再挿入を多数回にわたり必要とする。 或る種の円板切除法においては、組織を除去した後に円板人工器具を挿入して核およびできれば環を上記したように置換し、たとえばPCT出願公開WO 96/11643号(その開示を参考のためここに引用する)に見られる。一般に2つの隣接脊椎が互いに人工器具の周囲で融合することが望ましい。人工器具の挿入を容易化させると共にその後の骨融合を促進させるには、円板組織を円板切除術に際し充分清浄すべきである。しかしながら、当業界で知られた経皮円板切除法および装置は一般にこの種の充分な清浄を達成しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、骨折部を髄内固定するための改良装置および方法を提供することある。 本発明の目的は、上腕骨および他の長い骨を固定するための装置および方法を提供することにある。
本発明の目的は、手および足の指節骨または他の小骨の骨折部を固定するための装置および方法を提供することにある。
【0025】
本発明の目的は、最小浸襲性外科手術を用いて髄内骨固定を可能にし、一般に手術外傷を減少させると共に一層迅速な術後回復を可能にする装置および方法を提供することにある。
本発明の目的は、経皮的骨および脊椎の安定化、固定および修復のための装置および方法を提供することにある。
【0026】
さらに本発明の目的は、骨折部を安定化するための経皮挿入される髄内骨固定装置を提供することにある。
本発明による幾つかの特徴の目的は、短時間の固定にて骨の運動性を可能にする髄内固定のための装置および方法を提供することにある。
本発明の他の特徴の目的は、髄内固定の後の術後感染の危険を減少させることにある。
【0027】
さらに本発明の目的は、髄内ネイリングのための膨脹性バルーン固定装置を提供することにある。
さらに本発明の目的は、装置を膨脹および収縮させるための弁を有する固定装置を提供することにある。
さらに本発明の目的は、骨の内表面に装置を固定するための固定具材を有する髄内装置を提供することにある。
【0028】
さらに本発明の目的は、椎間脊椎融合の浸襲性の少ない外科処置を行う方法および装置を提供することにある。
さらに本発明の目的は、椎間組織の剔出および椎間スペーサの設置を含む椎間脊椎融合を処置するための最小浸襲性の方法および装置を提供することにある。
本発明の目的は、椎間板スペースに移植するための改良円板人工器具を提供することにある。
【0029】
さらに本発明による幾つかの特徴の目的は、経皮円板切除術の最小浸襲性方法を用いる移植に適した円板人工器具を提供することにある。これら本発明の特徴の他の目的は、人工器具の経皮移植に使用する装置および方法を提供することにある。
さらに本発明の目的は、第2回目の手術過程を必要とせずに移植後に寸法を長く増大させうる人工器具を提供することにある。
【0030】
本発明により幾つかの特徴の他の目的は、最小浸襲性円板切除術の改良方法を提供する
ことにある。
本発明の他の目的は、以下の説明および図面を参照して明らかとなるであろう。
【0031】
図19は、本発明によりここに提供する骨固定および離間のための方法および装置の種類を要約し、骨固定、離間の装置、並びに人工器具についても簡略のため骨治療具として示す。同様に人工器具、移植体および固定具と言う用語もここでは互換的に用いられる。
【課題を解決するための手段】
【0032】
下記するように本発明によれば、これら装置およびその関連方法は3種の一般的カテゴリーもしくはグループに分類することができる:すなわち(I)自己拡大性移植体;(II)外力により拡大しうる移植体;および(III)固相形成装置。本発明による装置はこれら各グループの具体例に従って作成することができ、髄内もしくは椎間のいずれかの用途に用いることができる。
骨固定装置および方法の種類
グループI:自己拡大性移植体。自己拡大性移植体および関連方法は、移植体材料自身の内部に蓄えられたエネルギーを用いて、保持メカニズムもしくは抑制力が移植体から解放された際に移植体材料がその初期形状および/または直径に復帰するようにする。好適具体例において、材料は移植に際し使用すべく小直径に拘束されると共に、移植後には骨を固定すべく大直径まで移行する。この方法の実施はたとえばニチノールのような応力誘発マルテンサイトの性質を利用する形状記憶を示す材料を用いるのが好適であるが、他の材料も使用することができる。用いる保持メカニズムを装置中へ或いはその周囲に一体化することができる。
【0033】
グループII:外力により拡大しうる移植体。外力により拡大しうる移植体は、装置内には存在せずに外部供給源から生じて移植体の形状を変化させるエネルギーを用いる。多くの異なる種類の外力を本発明により用いることができる。好適具体例において、少なくとも4種の代案外力が考えられる:
(1)熱。各種の材料および/または材料の形状を用いることができ、ここでは移植体に外熱(機械的供給源または体熱自身)を加えて移植体の形状を変化させる。好適具体例において、これは移植体材料の性質から生ずる。特に形状記憶合金を用いて、装置が小直径から大直径まで新たな形状を得るようにすることができる。
【0034】
(2)バルーン拡大性装置。第2シリーズの外力具体例においては、拡大性バルーンを用いて移植体の形状を変化させる。これら具体例において、バルーンの膨脹は移植体材料の可塑変形を生ぜしめて装置の変形をもたらす。
(3)バルーン装置。第3シリーズの外力具体例において、移植体装置はそれ自身バルーンである。このバルーン装置は、バルーン内部に液体を挿入することにより装置直径を拡大させることにより液圧を用いて膨脹させる。これら具体例において、密封バルーン内の流体の圧力はエネルギーを与えてバルーンをその拡大形状に支持する。
【0035】
(4)外力装置。第4シリーズの外力具体例においては、力を移植体に加えるメカニズムを用いる。これら具体例において、システムは力が内方向に移行するよう設計され、移植体内腔から偏心的に作用して移植体直径の増大を生ぜしめる。
グループIII。固相形成装置。これら装置においては、固化する(たとえば重合により)材料をバルーン中へ挿入して新たな形状を有する固体を形成させる。この材料は2−成分セメント特性を有することができ、エポキシもしくはポリマーで形成することができる。この材料をバルーン中に圧入し、温度もしくは湿度の変化により固化させる。
ここに開示するように、これら種類の各装置および方法を髄内もしくは椎間処置に使用することができる。さらに本発明の種々異なる具体例につき以下別々のセクションで検討するが、各セクションの開示は相互に補完すると共に相関することを意味することが了解されよう。従って、ここに示す各具体例の開示は、他の具体例の開示にも該当しかつ補充することができる。本発明の例として、各種の異なる骨治療装置および方法につき以下一層詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
髄内固定具
本発明の髄内固定具の具体例においては、半径方向拡大性の髄内固定具を骨折部に経皮挿入する。固定具は髄質キャナルより直径が小さい骨における穴を介して挿入される。好適具体例において、固定具は好ましくは注射器を用い骨折部の端部を介し髄質中に挿入される。挿入に対し固定具は閉鎖形状、すなわち第1減少直径に維持される。固定具は、これが骨における骨折部位にわたり延在するよう挿入される。固定具を骨内に適正に設置した後、注射器を抜き取る。固定具は骨内に外方突出部なしに全体的に設置するのが極めて好ましい。
【0037】
設置した後、固定具は開放形状(すなわち第2拡大直径)を想定して半径方向外方に拡大すると共に、それ自身で所定位置に固定する。拡大すると半径方向拡大性装置は骨を貫通し、骨折部の両側にわたって延在し、従って髄内骨固定具として機能する。かくして拡大固定具は骨折片を合体保持すると共に、骨に対する軸方向および横方向の両力に補強をもたらす。ここに開示したような固定具は、たとえば大腿骨、頸骨、腓骨、上腕骨、尺骨および橈骨のような長い骨またはたとえば指節骨のような小さい骨につき設けて寸法決定することができる。
【0038】
固定具を挿入した後、注射器により加えられた皮膚の傷は閉鎖すると共に骨の上で治癒させる。汚染された皮膚表面との移植後の全連通を排除する最小浸襲性経皮手法を用い、本発明は骨折部を迅速に固定すると共に患者の四肢の運動性を最小時間でかつ低い感染の危険性にて可能にする。すなわち固定具を局部(たとえば指における指節骨の骨折)にて骨折部を修復すべく用いる場合、患者は局部を挿入後の極めて短時間で運動させ始めることができる。このような急速な運動性は治癒を促進すると共に筋肉萎縮を減少させる。患者はできるだけ迅速に骨折部の使用を再開する。一層重要なことに、典型的には従来技術で知られた髄内ネイルを使用する場合に一般的に遭遇する長期間の運動不能後に必要とされる広範な生理学的療法の必要なしに治癒が進行する。さらに、挿入後に皮膚を介し突出し続ける固定具が存在しないため、術後感染および他の合併症が減少する。
【0039】
好適具体例において移植体はたとえばニチノール、チタニウム、S.S.316のような生物適合性金属または適するポリマーで作成される。好ましくは挿入の後、固定具の半径方向拡大はその直径が実質的に増大するようになる。すなわち、直径は少なくとも20%、40%、50%または所望に応じそれ以上増大することができる。この大きい拡大ファクターは、挿入に際し未拡大の固定具が骨髄質中へ容易に適合するのに充分な細さであるという点にて有利である。これに対し、固定具は設置後に拡大して、その直径が髄内キャビティのほぼ全体を埋め(すなわち固定具は骨のほぼ全幅にわたり延在し)、骨をしっかり固定する。
【0040】
より一般的には、固定具の初期寸法は注射器を介し骨中へ挿入しうるよう注射針を通過するのに充分小さい減少直径を維持し、次いで骨の固定につき問題とする骨の髄内キャビティのほぼ全体を埋めるよう充分大きい拡大直径まで拡大することができる。好ましくは、固定具は実質的に拡大後にロッド形状(すなわちチューブ形状)である。
本発明の好適具体例による固定具は、一般にベラおよびカールによる上記論文に記載されたような、この目的につき使用されるK−ワイヤよりもずっと堅固に骨を固定する。本発明の固定具は、K−ワイヤの場合のような複数の穴でなく、髄内挿入のための骨における1個のみの穴の形成しか必要としない。
【0041】
本発明の幾つかの好適具体例において、髄内固定具は上記グループIに記載したような自己拡大性構造体を備える。本発明の意味において、「自己拡大性」または「自己拡大しうる」と言う用語は、固定具の種類およびこの種の固定具を加工する材料を意味すべく使用される。この用語は、ここでは固定具を髄内キャビティに挿入すると固定具自身により発生した機械力に基づき半径方向外方に拡大することを意味すべく使用される。この機械力は、たとえばキャビティ中へ挿入する前に固定具を半径方向に圧縮する結果として固定具に蓄えられた潜在的工ネルギーに基づくことができる。さらに或いは代案として、下記するように固定具は髄内キャビティにおける固定具により吸収された熱に基づき拡大することもできる。下記するように、或る種の好適形状および材料を用いて、この自己拡大作用を与える。これら好適具体例による髄内固定具は、機械力を固定具に外部から加えて髄内キャビティにて固定具を拡大させることを必要とする当業界にて公知の拡大性髄内固定具とは異なる。
【0042】
骨に導入する前、自己拡大性固定具は好ましくは閉鎖減少直径の形状まで半径方向内方に圧縮され、この閉鎖減少直径の形状にて注射器に挿入される。注射器を挿入すると共に固定具を所定位置に入れた後、注射器を抜き取って固定具を骨内に残留させる。次いで固定具は半径方向外方に拡大して、骨に当接すると共に固定する。すなわち下記する構造およびこれを作成する材料は一般に、閉鎖減少直径の形状まで圧縮するのに充分な柔軟性を有すべきであるが、開口拡大形状にて骨を堅固に固定するのに充分な剛性を有すべきである。
【0043】
自己拡大性移植体の好適具体例において、固定具は弾力性もしくは弾性の生物適合性材料で構成される。好ましくは弾性もしくは弾力性材料は超弾性材料または形状記憶材料、たとえばニチノールまたは他の金属、たとえばチタニウム或いはポリマー材料である。当業界で知られたように固定具は、圧縮されると半径方向外方の力を及ぼすよう加工される。
【0044】
この種類の他の好適具体例において、固定具は生物適合性の形状記憶材料、たとえばニチノールなどで構成される。好ましくは当業界で知られたように材料を選択すると共に作成して、その閉鎖減少形状まで固定具を圧縮した後に材料が応力誘発マルテンサイトの状態となるようにし、これは比較的柔軟性かつ弾性である。骨の髄内キャビティにて開放されると、固定具はその所望形状(すなわち開口拡大形状)まで弾撥復帰すると共に、この材料はオーステナイト状態をとり、これは実質的に剛性であって骨を堅固に固定する。
【0045】
固定具自身の構造は、自己拡大性材料(好ましくは上記の超弾性もしくは形状記憶材料)の1枚もしくはそれ以上のシートを緊密に合体巻回して、ほぼ円筒状の螺旋構造体を形成させることにより形成することができる。固定具を髄内キャビティに挿入した後、螺旋は半径方向外方に拡大する際にキャビティを実質的に埋めるよう拡大するまで部分的に巻き戻る。好ましくは材料の1枚もしくはそれ以上の各シートの少なくとも1縁部を屈曲させて、螺旋の外側半径表面から半径方向外方に突出させる。螺旋が拡大すると、これら突出縁部は骨の内表面に係合して髄内キャビティに隣接し、固定具を所定位置に堅固に固定すると共に固定具により固定された骨の部分の摺動もしくは回転を防止する。より好ましくは、縁部の2つもしくはそれ以上を異なる角度で屈曲させて、時計方向または反時計方向における骨の回転を防止する。
【0046】
この種類の他の好適具体例において、固定具は保持装置(たとえばピン)を備え、これを骨中への固定具の挿入前に固定具に嵌合させる。保持装置を固定具に嵌合させる一方、固定具をその圧縮した閉鎖形状にて機械的に保持し、次いで固定具をこの形状に保持し続ける。固定具が挿入されて髄内キャビティに適正に設置された後、保持装置を抜き取ると、固定具は半径方向外方に自己拡大して所定位置に固定されると共に骨を固定する。
【0047】
自己拡大性移植体の代案として、移植体はエネルギーまたは外力の適用により拡大しうるよう作成することもできる。たとえば当業界で知られたように約30℃の臨界温度を有するよう形状記憶材料を選択して作成することができる。すなわち室温にて材料は一般に少なくとも部分的にマルテンサイト状態であって固定具は骨中へ挿入する前に柔軟性かつ弾性を維持する。骨中へ挿入されると移植体は体温に露呈され、この温度にて材料は少なくとも部分的にオーステナイト状態となり、固定具は実質的に剛性となる。
【0048】
熱を移植体に加えてこれを拡大させるこの種の具体例においては、固定具を髄内キャビティに挿入すると共に注射器を抜き取った後に、体温を用いる代わりに或いは体温の使用に加えて外部熱供給源を用いて熱を加えることもできる。これは、たとえば固定具と接触させる加熱プローブを介して行うことができる。熱は固定具を半径方向外方に拡大させると共に実質的に剛性となし、固定具を所定位置に固定すると共に骨折部を固定する。加熱用プローブまたは他の熱源を次いで除去する。
【0049】
本発明の他の好適具体例(グループIもしくはグループIIのいずれであっても)において、固定具は上記したような硬質かつ弾力性材料で作成されると共にその径方向壁部を通過する複数の開口部を有して壁部が実質的にメッシュ構造となるようなチューブで構成される。メッシュ構造は好ましくはほぼ円弧状の外周ストラットにより相互接続された複数の長手リブを備える。固定具を半径方向に圧縮すると、ストラットはチューブの中心軸線の方向へ内方向に屈曲する。保持装置(好ましくはピン)を軸線に沿って挿入し、ストラットをその屈曲形状に保ち、従って固定具が拡大するのを防止する。ピンは固定具を骨の内側にしながら除去するとストラットは実質的に円弧形状をとり、固定具は髄内キャビティに隣接する内側骨表面に係合するまで半径方向外方に自己拡大するか或いはエネルギーの適用により拡大する。
【0050】
髄内キャビティに固定具を挿入した後、経時的に骨組織は開口部を介し固定具のメッシュ状壁部に成長して突入し、骨の全構造体を強化させる傾向を有する。
本発明の他の具体例において固定具は複数のリーフを備え、これらリーフを各リーフの内側端部が一般に固定具の中心長手軸線から半径方向外方に延びるように屈曲させる。リーフは一般に螺旋状で軸線に沿って配置され、各リーフは軸における基準点に対し異なる角度で、軸方向に隣接する1枚もしくはそれ以上の他のリーフから外方向に延びる。好ましくは各リーフの外側端部は半径方向内方に湾曲する。固定具を骨中へ挿入する前、リーフを内方に屈曲させて固定具を圧縮することにより、狭い一般にチューブ形状を形成させる。保持装置(好ましくはピン)を次いでチューブ形状の軸線に沿って挿入し、内方湾曲したリーフの外側端部を係合保持すると共にその半径方向拡大を防止する。固定具が髄内キャビティに挿入された後、ピンを抜き取るとリーフは半径方向外方に弾撥復帰して、内側骨表面に係合すると共に固定具を所定位置に固定する。
【0051】
代案として外部エネルギーを用いる本発明の他の具体例においては、バルーンを固定具の内側に挿入して膨脹させ、固定具を拡大させることができる。固定具が拡大した後、バルーンを好ましくは収縮させて抜き取るが、これを移植状態に残すこともできる。
本発明の他の具体例において、同じ髄内骨固定具は膨脹性バルーンで作成される。
本発明の他の具体例においては、固定具自身をバルーンで構成し、これを髄内キャビティに挿入する。バルーンは柔軟性かつ生物適合性プラスチック、たとえば当業界で知られたダクロン(登録商標)布地のチューブから形成することができ、その遠位端部にて密閉する。
【0052】
さらに、このバルーン固定具は注射器を用いて挿入される。髄内スペースに注射器を設置した後、スリーブを内部に挿入し、これを介しバルーンを挿入する。
バルーンを位置決定すると共にスリーブおよび注射器を抜き取った後、バルーンを膨脹させると共に膨脹装置を脱着させてこれも抜き取る。スリーブなしに案内ワイヤを用いて或いは用いずに、同じ手順を行うこともできる。
【0053】
バルーンが所定位置になった際、これを膨脹させて骨を固定する。これは外部供給源からの圧力下で生物適合性固化流体により行い、バルーンを半径方向外方に拡大させて骨を固定することができる。次いでバルーンを密封すると共に外部流体供給源を遮断する。
好ましくは固化性流体はバルーン内で重合するモノマー材料または代案としてたとえばエポキシのような2−成分セメントで構成する。この種の固化用流体材料は当業界にて公知である。流体固化は好ましくは、骨髄質内の温度および/または湿度の増加により触媒される。
【0054】
代案として非固化性の非圧縮性流体を用いる場合、必要が生ずればバルーンに、これを挿入したと同じ基本技術(その逆も可)を用いて穴を開けると共に除去することもできる。
幾つかの好適具体例において、バルーンは内部構造体(たとえば弾力性長手ワイヤを備えることもできる。これらワイヤは金属から加工することができ、バルーンの内側の下まで長手方向に延ばすことができる。バルーンを収縮させる際、構造体はバルーンを狭い延びた実質的に閉鎖形状に保持して、骨中へのバルーンの挿入を容易化させる。バルーンが挿入されて膨脹した後、構造体は特に剪断力に対し固定具に追加機械強度を付与する。これは、バルーンが髄内スペースにて膨脹されると弾性および骨固定具の強度を付与する。
【0055】
好ましくはバルーンを骨中に挿入した後、バルーンには非圧縮性流体を満たす。好適具体例において、バルーンは流体が逃げるのを防止する弁を備える(これは所望に応じ流体を放出させることをも可能にする)。バルーンを流体で満たすと、これは膨脹して髄内キャビティを実質的に満たす。好ましくはX線画像をバルーンを内側にして骨につき撮影する(好ましくはバルーンがまだ部分的または非拡大の状態にある際)。次いでバルーンの内部構造体を画像にて観察し、バルーンが適正に位置するかどうかを確認した後、バルーンを固化用流体で完全に膨脹させる。特に長手ワイヤがX線画像上に出現して、適正な位置決めを確認することができる。
【0056】
本発明の好適具体例においては、一方向弁を有すると共に高圧流体(たとえば塩水)で膨脹される金属バルーンを用いる。固定具材として作用する長手バーを有するバルーンが作成され、固定具材もしくは固定バーは膨脹すると骨皮質の内表面に対し押圧されて骨の骨折部分間の回転運動を防止すると共に屈曲をも防止する。この具体例は、長手ロッドが回転を防止するという事実に基づき相互固定が必要とされないので標準的髄内ネイルよりも利点を有する。ネイルは内側長手キャナルを有して案内ワイヤに対する挿入手順を実施するのを容易化させる。
【0057】
除去する際、取出装置を移植ネイルの先端に装着して弁を開口させ、ネイル内の高圧を解除すると共に装置直径を減少させる。
本発明のこれら具体例による骨固定のための固定具および方法は、骨折した長い骨もしくは短い骨の固定につき有利である。たとえば本発明の固定具は腕、脚部、手もしくは足の骨の固定につき使用することができる。たとえば、これらは手指もしくは足指の指節骨、大腿骨、上腕部、中手骨、中足骨、頸骨、腓骨などの固定につき使用することができる。本発明による固定具は必要とされる骨折部の必要寸法に当業者により容易に適合させうることが了解されよう。
脊髄融合
脊椎融合の好適具体例においては、中空注射器を画像形成技術により椎間スペース内に背中を介して挿入する。次いで椎間組織侵食部材を注射器内腔を介して挿入する。各具体例には軟質組織をその近傍で侵食する侵食用部材を設ける。この装置は、たとえば切断刃を持ったオルブ(olb)のような侵食用部材を取り付けうるブラシまたは回転ワイヤの設計とすることができる。侵食用部材(ブラシ、回転ワイヤもしくはオルブのいずれであっても)の回転は、侵食用部材の近傍にて軟質組織の侵食をもたらす。軟質組織を侵食すると、椎間組織抽出器が次いで侵食椎間組織を吸引するか或いは除去して、椎間スペーサを骨移植体と共に挿入するスペースを形成する。吸引または除去は、抽出器回転シャフトの長手中心内腔または他の任意の所望の内腔を介する減圧により達成される。さらに吸引もしくは除去は、抽出装置の反対方向にて回転する或いはそのまま留まって残留する組織を採取する同じ内腔内のネジによって行うこともできる。
【0058】
椎間組織抽出器の挿入と同様に椎間スペーサの挿入(ここでは、椎間ケージとも称する)は中空注射器内腔を介して行われ、脊椎をその後の浸襲性手術に露呈する必要性を回避する。
椎間スペースに挿入して挿入注射器を外すと、椎間スペーサはその自己拡大特性に基づき直径拡大し、或いはエキスパンダーにより拡大させて脊椎を固定すると共に支持する。多孔質設計に基づきスペーサはさらに2つの隣接脊椎の骨融合を可能にし、これは骨成長因子を用い或いは用いずに骨移植体の介装により促進される。
椎間板人工器具
本発明の他の具体例においては、生物適合性布地で作成されたバルーンを備える円板人工器具を設ける。バルーンは入口ポートを備え、これを膨脹チューブに接続する。好ましくは布地はたとえばダクロンもしくはゴア−テックス(登録商標)のような不活性合成材料からなっている。代案として或いは追加的に、布地は当業界で知られた生物吸収性材料、或いは不活性材料と生物吸収性材料との組合せで構成することもできる。さらに好ましくは、人工器具は丈夫な弾性補強構造体、たとえば布地を織り込んだステンレス鋼ワイヤを備える。さらに、バルーンは肉薄の金属を有することもでき、挿入して膨脹に際し拡大(上方向もしくは下方向)すると圧縮される。さらに円板人工器具は相互接続された膨脹性部材の複合体で作成することもでき、これは膨脹すると急速に上下に拡大し、各チューブ間に設けられたスペースが骨成長を可能にする。
【0059】
損傷円板の円板物質を患者の椎間板スペースから或る程度または全部除去した後、バルーンを円板スペースに挿入する(本発明の意味でバルーン人工器具はバルーンまたは人工器具のいずれかとして互換的に呼ばれる)。バルーンは少なくとも部分的に収縮した状態、好ましくは完全に細く細長い形状を持った収縮状態にて経皮カニューレを介し挿入される。バルーンが適正に円板スペースに位置した後、生物適合性固化用流体(たとえば骨セメント或いは当業界で知られた重合性モノマー)を膨脹チューブを介し注入してバルーンを膨脹させる。流体が硬化した後、バルーンは円板スペースに隣接する脊椎の間の所定位置に堅固に残留して脊椎を解剖学上適する配向にて永久保持する。さらに高圧の非圧縮性流体を用いて、人工器具をその膨脹しうる状態に保つこともできる。
【0060】
好ましくは人工器具を円板スペースに挿入する前、円板物質を除去すると共に円板スペースに隣接する骨表面を電気灼熱プローブを用いて清浄する。代案として、円板物質を除去すると共に骨表面を当業界で知られた円板切除法および装置を用いて清浄することもできる。
好ましくは、粗面の多孔質表面を有するよう布地を織って、人工器具に隣接する脊椎骨の布地中への成長を促進させる。この種の成長は骨と人工器具との間の緊密結合部を形成する。さらに好ましくは、たとえば患者の骨盤骨から採取された磨砕骨物質を布地の表面に展延して骨成長をさらに促進させる。結局、人工器具の反対側における2つの脊椎が一般に人工器具の周囲かつこれを貫通して成長すると共に互いに融合する。骨成長の期間に際し、人工器具の存在は脊椎を適する間隔および相互の配向に保持する。
【0061】
本発明の幾つかの具体例において、バルーンは人工器具を移植すべき円板スペースの直径にほぼ等しい直径を有する2個の円形ピースで構成される。2個の布地ピースを上下に戴置し、次いで互いにその外側縁部およびその中心で密封することができる。膨脹性チューブを流体ポートに取り付けて密封し、これを2個の布地ピースの間にその外側縁部に沿った箇所にて位置せしめる。
【0062】
バルーンを円板スペースに挿入するにはバルーンを膨脹チューブに平行した軸線の周囲に巻回する。巻回されたバルーンは長くて細い円筒の形状を有する。この形状にてバルーンを円板ディスク中へカニューレに通過させ、好ましくは手術用具を予め通過させて円板物質の円板スペースを清浄した同じカニューレを用いる。円板スペースの内側に存在する際、バルーンを巻き戻させる。
【0063】
次いでバルーンに膨脹チューブを介し固化用流体を満たして、バルーンがほぼトロイド形状を有するようにする。円板スペーサにわたり半径方向に延びるトロイドの主たる直径は好ましくは人工器具が置換されている円板の直径にほぼ等しい。円板スペースに隣接する2つの脊椎間に軸方向に延びる小直径は、バルーン内の流体の膨脹圧力を脊椎が解剖学上正確な相互間隔で安定に保持されるまで増大させることにより調節される。流体が固化し始めた後、膨脹チューブを先ず密封し、次いでカニューレを通して抜き取る。
【0064】
代案として本発明の他の具体例において、人工器具は他の任意適する寸法および/または形状(たとえば楕円形もしくは三ケ月形状)のバルーンで構成することもできる。さらに、円板スペースの直径よりも実質的に小さい直径を有するこの種の2個もしくはそれ以上のバルーンを並列で移植して膨脹させることもできる。この種のより小さいバルーンは、これらが一般に単一の大きいバルーンよりも容易に挿入されると共にカニューレを介し操作しうる点で有利である。
【0065】
本発明の幾つかの具体例においては、人工器具バルーンを円板スペースに挿入した後であるが固化用流体で膨脹させる前に、バルーンをたとえば無菌空気または二酸化炭素のようなガスで膨脹させる。次いで円板スペースにおけるバルーンの位置を可視化させて、これが適正に位置したことを証明すると共に必要に応じその位置決めを修正する。これら段階が完了した後、バルーンのガスを除去し、次いで固化用流体または高圧流体で膨脹させる。
【0066】
バルーンの移植を可視化するには各種の方法を用いることができる。好ましくは経皮脊椎処理の全過程は当業界で知られたように開口磁気共鳴画像形成の下で行われる。代案としてまたは、追加的に当業界で知られたようなエンドスコープを円板スペース中に或いはそれに接近して、好ましくは人工器具の挿入につき用いられると同じカニューレを介し挿入することができる。さらに代案として、バルーンが放射線不透過部材(たとえば上記ステンレス鋼補強ワイヤ)を備える場合、バルーンの位置は放射線不透過部材が見えるX線画像形成を用いて可視化させることができる。
【0067】
円板人工器具は、高圧流体挿入によりその容積を変化させうる金属中空部材として構成することもできる。この金属円板にはその上側および下側表面に突出部を設けて、脊椎骨表面に付着および/または上下侵入させる。これは円板移動を防止すると共に、骨融合が達成されるまで一層良好な安定化を達成する。
1具体例において、円筒形状のチューブを経皮挿入する。他の具体例においては、ドウナッツ形状(すなわちトロイド形状)の円板を挿入し、その内側スペースに骨移植体を満たす。他の具体例においては、三次元の蜂巣形状の構造体を、好ましくはマルチチューブ膨脹により拡大すべく形成させる。この蜂巣形状の構造体は好ましくは連続気泡を有して、構造体に対する骨成長を容易化させる。
【0068】
これら具体例の全てには固化用流体または非圧縮性流体を満たすことができる。非圧縮性流体を用いる場合は弁を設けて流体を使用に際し高圧に留めるのが好適であるが、所望に応じ収縮のため構造体から放出させることもできる。所望ならば、人工器具を除去すべく使用する装置を弁に取り付けて、そこからの流体の除去を可能にすることもできる。
本発明の具体例につき最小浸襲性の経皮脊椎処置に関し説明したが、本発明の原理に従う円板人工器具を当業界で知られた他の手術法を用いて同様に移植しうることも了解されよう。
図面の簡単な説明
図1は本発明の好適具体例に従う自己拡大性髄内固定具の斜視図である。
【0069】
図2Aは本発明の好適具体例に従う第1閉鎖形状における自己拡大性髄内固定具を示す断面図である。
図2Bは本発明の好適具体例に従う第2開口形状における図2Aの固定具を示す断面図である。
図3A〜3Cは本発明の好適具体例に従う骨折部の固定に際し図1の固定具の使用を示す断面図である。
【0070】
図4Aは本発明の好適具体例に従う開口形状における他の自己拡大性髄内固定具の斜視図である。
図4Bは本発明の好適具体例に従う閉鎖形状における図4Aの固定具を示す断面図であり、保持ピンを固定具の中心軸線に沿って挿入する。
図5Aは本発明の好適具体例による開口形状における他の自己拡大性髄内固定具の端面図である。
【0071】
図5Bは本発明の好適具体例による図5Aに示した固定具の加工用材料の作成を示す略図である。
図5Cは本発明の好適具体例による内部保持ピンを有する閉鎖形状における図5Aの固定具の断面図である。
図6は本発明の好適具体例による非膨脹状態にある髄内バルーン固定具の略図である。
【0072】
図7A〜7Dは骨折部の固定における図6の固定具の使用を示す断面図である。これら図面は固定具の挿入、バルーンの膨脹および膨脹メカニズムの除去の各工程を図示する。
図8Aおよび8Bはそれぞれ本発明の好適具体例による収縮形状における膨脹性髄内固定具の側面図および断面図である。
図9Aおよび9Bはそれぞれ本発明の好適具体例による膨脹形状における膨脹性髄内固定具の断面図および斜視図である。
【0073】
図10(a)〜(d)は本発明の好適具体例による開口および閉鎖位置における骨固定のための2つの装置を示す斜視図である。これら装置は熱の移動(たとえば、これらが形状記憶材料で作成される場合)により開口することができ、バルーンの使用により或いは追加の任意適する機械的方法により開口することができる。図10(a)および(b)はそれぞれ圧縮および拡大形状で示した装置の第1具体例の図面である。
【0074】
図10(c)および(d)はそれぞれ圧縮および拡大形状で示した装置の第2具体例の図面である。
図11は本発明の好適具体例による機械的に高さを変化させうる骨固定装置の断面図である。これは閉鎖形状(図11a)および開口形状(図11b)にて示される。この装置はその接合部にヒンジを備え、或いは可塑変形を受けるジョイントを備えることができる。
【0075】
図12は本発明の好適具体例による拡大性椎間スペーサおよび髄内骨固定具の斜視図である。この設計は、固定用フィンガーなしにかつ複数の表面開口部を持って図面に示される。
図13Aは本発明の好適具体例による椎間骨スペーサおよび髄内骨固定具の断面図である。
【0076】
図13Bは挿入のための小型の減少直径状態で示した図13Aの装置の断面図である。
図13Cは複数の固定メカニズムを持って拡大状態で示した図13A〜Bの装置の改変型の断面図である。
図14Aは本発明の好適具体例による椎間板人工器具の平面図である。
図14Bは図14Aに示した人工器具の断面図である。
【0077】
図15は本発明の好適具体例による患者の椎間板スペース中への図14Aおよび14Bの人工器具の挿入を示す斜視図である。
図16は本発明の好適具体例による円板スペースにおける図14Aおよび14Bの人工器具の設置を示す前額面における断面図である。
図17Aは本発明の好適具体例による円板スペース内における図14Aおよび14Bの人工器具の膨脹を示す図16の前額面における断面図である。
【0078】
図17Bは図17Aで示した膨脹人工器具を示す円板スペースを通る軸方向平面の断面図である。
図18A、18Bおよび18Cはそれぞれ本発明の他の好適具体例による円板人工器具(膨脹メカニズムの1部を含む)の断面図、平面図および斜視図である。
図19は本発明の好適具体例による骨固定および椎間離間のための各種の方法および装置を要約する図面である。
【0079】
図20は髄内固定装置の他の好適具体例の図面である。図20Aはこの髄内固定具の斜視図である。図20Bは図20Aの髄内固定具の断面図である。図20Cは図20Aおよび20Bの髄内固定具の部分側面図である。
図21は弁を有する髄内固定装置の他の好適具体例の図面である。図21Aは装置の長手断面図である。図21Bは図21Aの装置の断面図であり、この装置は圧縮形状にて示され、図21AのA−A線断面図である。図21Cは図21Bの装置の拡大形状の断面図であって、これも21AのA−A線断面図である。
【0080】
図21Dは図21A〜Cに示した装置の他の具体例であり、この装置にはさらに骨折部の領域に位置する固定直径セグメントが設けられる。
図22Aは本発明による髄内ネイルの他の具体例の2つの断面図である。収縮形状もしくは拡大形状(もしくは状態)の両断面図を図面に示し、これら収縮形状および拡大形状は比較の目的で重ね合わせる。
【0081】
図22Bは本発明による髄内ネイルの他の具体例の2つの断面図である。図22Aにおけると同様に、収縮形状および拡大形状(もしくは状態)の両断面図を比較目的で重ねて示す。
図23は本発明の追加具体例として設けうる正中長手キャナルを示す。このキャナルは案内ワイヤに固定具を位置せしめて位置決めを容易化させるべく設けられる。図23Aは内部にキャナルを有する固定具の斜視図であり、図23Bは貫通して延びるキャナルを示す固定具の略図である。
発明および好適具体例の詳細な説明
本発明の特徴を図面、以下の説明および請求の範囲を参照してさらに示し、これらは各種の好適具体例における本発明の開示をさらに与える。
【0082】
図1は本発明の好適具体例による自己拡大性髄内固定具20の斜視図である。
固定具20は好ましくは弾力性かつ生物適合性の材料、好ましくは超弾性材料もしくは形状記憶材料(当業界にて公知)の2枚のシート22および24で構成される。ニチノールが好適である。代案として固定具は他の生物適合性金属(たとえばチタニウム)またはプラスチックもしくはポリマー材料から作成することもできる。
【0083】
シート22および24は最初に互いに円筒形状まで緊密に巻回される。この緻密形態の各シートを緻密に巻回し(図2Aに一般的に示す)、さらに固定具20をこの緻密形態にて下記するように骨の髄内キャビティに挿入する(図3B)。
次いで固定具を骨の内側で開放し、シート22および24の弾力性によりこれらを拡大状態まで部分的に巻き戻し(図2Bに一般的に示す)、固定具20が半径方向外方に拡大して図2Bに示した増大直径を占めるようにする。
【0084】
好ましくは、それぞれシート22および24の外側縁部26および28を、固定具20が骨の内側で開放された際に縁部が図1に示したように半径方向外方に屈曲するよう形成する。次いで縁部26および28は髄内キャビティを包囲する骨の内表面に係合して、固定具20を所定位置に堅固に保持すると共に固定具に対する骨の相対的摺動もしくは回転を防止する。好ましくは図面に示したように、縁部26を鋭角で屈曲させると共に縁部28を斜角で屈曲させて固定具20がその軸線30を中心として時計方向および反時計方向の両者における回転に抗するようにする。
【0085】
図2Aおよび2Bは固定具20と同様な自己拡大性髄内固定具36の断面図であって、
本発明の好適具体例によるこの種の固定具の半径方向自己拡大の原理を示す。説明を簡単
にするため、固定具36は自己拡大性材料(好ましくは弾性材料)の1枚のみのシート3
8で構成する。固定具20および36により例示されるように本発明の原理に基づく髄内
固定具は1枚、2枚もしくはそれ以上の自己拡大性材料のシートで構成し、図1、2Aお
よび2Bに示したように互いに巻回しうることが了解されよう。
【0086】
図2Aは第1閉鎖形状における固定具36を示し、ここでは固定具が半径方向内方に圧縮されて、下記するように骨折部の髄内キャビティへの挿入を容易化させる。たとえば指の指節骨を固定するため、固定具36は好ましくはこの閉鎖形状にて僅か約2mmの外径を有する。図2Bは第2開口形状における固定具36を示し、この形状は固定具がキャビティ内に位置せしめた後に骨を固定する形状である。好ましくは、図2Bの開口形状における固定具36の直径は、図2Aの閉鎖形状における直径より少なくとも50%大である。より好ましくは、開口形状における直径は閉鎖形状における直径の約2倍である。たとえば指節骨固定の場合、開口形状における直径は好ましくは約4mmである。閉鎖形状と開口形状との間の大きい直径差は、閉鎖形状にて骨中へ固定具36を骨折部の端部またはその近くに作成された最小寸法の穴を介して挿入するのを容易化させる点で有利である。
【0087】
固定具20を参照して上記したようにシート38は好ましくは超弾性材料、好ましくは約0.2mmの厚さを有するニチノールで構成される。シート38の超弾性は固定具36を、シートの外側縁部36が髄内キャビティを包囲する内側骨表面に係合して強力な外方向の半径方向力を骨に加えるまで拡大させる。
シート38はたとえば当業界で知られたように作成されるニチノールのような形状記憶材料で構成して図2Bに示した開口形状を有するようにし、体温にて一般にオーステナイト状態にすることができる。しかしながら、図2Aに示した閉鎖形状にて、巻回シート38にて及ぼされる力は好ましくは材料を応力誘発マルテンサイトの状態にする。この状態にて材料は比較的柔軟性かつ弾力性であって、固定具36を骨中へ容易に挿入させる。固定具が骨の内側で図2Bに示した開口形状まで拡大するとシート38における応力が減少し、材料はその正常な実質的に剛性オーステナイト状態に戻る。この状態における材料の剛性は骨の堅固な固定を容易化させる。
【0088】
さらに或いは代案として、形状記憶材料は室温〜体温の範囲、好ましくは約30℃の臨界温度を有することができる。上記したように形状記憶材料は、そのオーステナイト状態(すなわち臨界温度より高い)にて、これが実質的に図2Bに示した開口拡大形態を有するよう形成される。臨界温度未満、すなわち骨中への固定具36の挿入前、形状記憶材料はマルテンサイト状態にあり、ここでは比較的柔軟性かつ弾力性であって図2Aに示した閉鎖形状まで圧縮される。固定具を骨中へ挿入する際、これを臨界温度より高い温度まで加温(たとえば体熱による)すると、これは開口してその実質的に剛性のオーステナイト状態となる。加熱用部材を、骨の内側に存在する際に(たとえば図3Bに示すと共に下記する)固定具と接触させて、その膨脹および状態変化を加速させることができる。
【0089】
図3A〜3Cは本発明の好適具体例による骨折部42の髄内キャビティ40への固定具20の挿入を示す断面図である。指節骨を参照して説明するが、本発明の原理に従う装置および方法は、当業者には了解されるように骨に必要とされる寸法および機械強度の差に適当に適合させて他の長い骨(たとえば上腕骨)の固定にも適用しうることが了解されよう。
【0090】
図3Aに示したように、スタイレット46をカニューレ48内の内腔部47に挿入する。指節骨の固定のためカニューレ48は好ましくは注射針を備える。次いでスタイレッド46およびカニューレ48を骨42の端部における開口部45を介し骨における骨折部位44を越えて髄内キャビティ40に経皮導入する。
代案として、皮膚および軟質組織を介し小切開部を作成して骨を可視化させることもでき、さらにカニューレを貫通挿入すべく骨に穴を穿設することもできる。この種の穴の穿設は、特にたとえば上腕骨のような大きい骨につき本発明の好適具体例による固定具を挿入するための好適方法である。さらに、固定具を挿入する前の穴の穿設は骨が治癒した後に所望に応じ固定具を一層容易に除去させる。
【0091】
図3Bに示したように、カニューレ48が適正に所定位置となった後、スタイレット46を抜き取り、固定具20をその圧縮した閉鎖形状にてカニューレの内腔部47に移行させる。好ましくはプランジャ43を用いて固定具を針中へ圧入し、これを所定位置に保持する。次いでカニューレ48を完全に抜き取って固定具20をキャビティ40内に残し、固定具を骨折部位44にわたり延在させる。
【0092】
次いで固定具20が拡大し、すなわち図3Cに示したようにキャビティ40を実質的に埋めるよう拡大する。固定具自身はここに開示した自己拡大しうる具体例にて拡大する。代案として下記するような他の具体例においては、固定具を外力もしくはエネルギーを用いて拡大させる。
固定具の自己拡大は、シート22および24の湾曲縁部26および28(固定具36の39)を骨折部位44の両側にわたり骨42の内表面49に対し半径方向外方に押圧する。この力は固定具を所定位置に固定すると共に、骨折部の各セクションの相対移動を防止する。シート22および24が上記形状記憶材料からなる本発明の幾つかの好適具体例において、プランジャ43は必要に応じ固定具20を臨界温度より高く加熱する加熱用部材で構成することができる。
【0093】
固定具20を位置決めすると共に所定位置にしっかり固定した後、プランジャ43を開口部45を介して抜き取ると共に、カニューレ48により或いはそれにつけられた皮膚外傷を閉鎖させる。図面に示した手順が完結した後の短時間内に患者は骨折部42を運動させることができる。固定具20の機械的強度は、骨に及ぼされる軸方向および横方向の力に対し骨を補強する。さらに術後感染の危険性は、手術装置または用具を皮膚を通して突出残存させないので、当業界で知られた拡大性髄内固定具と対比し最小化される。所望ならば、この装置をシースで覆って骨成長を防止すると共にその後の装置除去を容易化させることもできる。
【0094】
図4Aは本発明の他の好適具体例による他の自己拡大性髄内固定具50の斜視図である。固定具50は、複数の外周ストラット54により接続された複数の長手リブ52を備える。リブ52およびストラット54は好ましくは弾力性材料、好ましくは超弾性材料で構成され、或いは上記した形状記憶材料で構成される。
図4Aは実質的に開口した形状にて固定具50を示し、これは骨内に位置して拡大させうる固定具が占める形状である。
【0095】
図4Bは、固定具を骨中に挿入するための閉鎖もしくは収縮形状における固定具50を示す断面図である。固定具をこの閉鎖形状に圧縮するため、長く円筒状の保持ピン56(図4Bに断面図で見られる)を徐々に中心軸線30に沿って挿入する。ピン56が挿入される際、各外周ストラット54は次いで軸線30にわたり内方向に屈曲される。ピン56はこれらが屈曲される際にストラットを通過してストラットを「捕捉」もしくは固定し、すなわちストラットが外方向の外周位置に弾撥復帰するのを防止する。ストラット54が内方向に屈曲してピン56により捕捉される際、リブ52を内方向に図4Bに示したように引き抜く。ピン56を固定具50中に軸線30の全長さに沿って移動させることにより、固定具は閉鎖形状となり、その外径が実質的に減少する。好ましくは図4Bの閉鎖形状における固定具の直径もしくは寸法は図4Aに示した開口形状における直径の半分以下まで減少する。
【0096】
固定具50が骨の髄内キャビティ(図3A〜3Cに示したように、たとえば骨42のキャビティ40に挿入された後、ピン56を除去する。ピンの除去後、ストラット54はその初期の外周位置に弾撥復帰し、固定具は図4Aに示した開口形状となる。
上記したように固定具50は所望に応じ形状記憶材料で作成することができ、この形状記憶材料はその正常なオーステナイト状態にて実質的な剛性を有する開口形状を維持する。ストラット54を屈曲させるとこれらは応力誘発マルテンサイトの状態となり、ピン56が除去される際に応力が除去されてオーステナイト状態に復帰する。上記したように、所望ならばこの装置をシースもしくはスリーブ(たとえば拡大性かつ柔軟性ポリマー)で覆って、骨成長を防止することもできる。
【0097】
上記したような他の具体例として、他の自己拡大性骨固定具を図5に示す。この装置の好適材料はニチノールであるが、装置はポリマー、応力誘発マルテンサイト(SIM)、平滑錫または他の適する材料で作成することもできる。
本発明の好適具体例によれば、図5Aは自己拡大精髄内固定具60の開放形状における端面図である。固定具60は好ましくは上記したような弾力性材料、より好ましくは超弾性材料で形成される。この固定具は、固定具の軸線30を中心とする螺旋パターンにて半径方向外方に延びる複数のリーフ62、66、68、70、72、74、76および78を備え、これらリーフは中心のほぼチューブ状部分63から延在する。図面に示したように、これらリーフのそれぞれは軸線30の周囲に異なる角度で(外周に対しゼロ度)で位置する箇所まで軸線から延びる単一基準線(図示せず)から測定にて外方向に延在する。図5Aの拡大形状において、各リーフは骨折部の髄内キャビティの内表面(たとえば図3A〜3Cに示したキャビティ40の表面49)に係合して、固定具60を所定位置に保持すると共に骨を固定する。各リーフは固定具のチューブ状部分63の1部および内方向に湾曲した端部64を形成する底部67を有する。
【0098】
図5Bは本発明の好適具体例に従い固定具60を加工準備する際に切断する弾性材料65の扁平シートを示す略図である。リーフ62、66、68、70、72、74、76および78を階段状パターンでシート65から切除し、すなわち各リーフは図面に示したようにステップ状延長部を示す。次いで各リーフを順次に巻き上げる。これらリーフを軸線30の周囲に矢印79で示した方向で巻回して、図5Cに示した閉鎖形状にてリーフが図5Aに示した形状まで拡大するようにする。
【0099】
図5Cは、固定具を髄内キャビティに挿入するよう作成する際の閉鎖形状における固定具60を示す断面図である。図4Bを参照して上記した保持ピン56を固定具60の軸線30に沿って挿入する。リーフ62、66、68、70、72、74、76および78の湾曲端部64を内方向に屈曲させると共に、ピン56の周囲に固定する。固定具60は、ピン56が所定位置に存在する限りこの閉鎖形状を保つ。閉鎖形状にて装置は開口形状よりも小さい外径を維持して、骨中への装置の挿入を容易化させる。固定具を髄内キャビティに挿入した後、ピン56を抜き取るとリーフの弾力性はこれらリーフを外方向に弾撥させて固定具が図5Aの大直径の開口形状をとるようにする。この一層大きい直径にて、骨固定および支持が上記したように与えられる。
【0100】
本出願における他の装置と同様に、この装置を材料の形状記憶特性を利用して加熱により拡大させることができる。上記本発明の他の具体例と同様に、これは髄内および椎間の両支持体を処理する際に使用することができる。
図6は他の拡大性髄内固定具80の略図であり、この固定具は収縮状態でここに示した本発明の代案好適具体例によるバルーン80を備える。バルーン82は柔軟性かつ生物適合性プラスチック、たとえば当業界で知られたダクロン布地のスリーブで形成し、その遠位端部で封止遮断することができる。固定具80は好ましくは生物適合性材料(特に好ましくはステンレス鋼)で作成されてバルーン82を強化するための頑丈な弾力性長手ワイヤ84を備える。ワイヤ84は好ましくはたとえばバルーン82のダクロン布地に織り込まれる。バルーン82は入口ポート86を介し膨脹チューブ88に接続される。
【0101】
さらにバルーン82は1端部が封止遮断された金属から構成することもでき、他端部には弁を設ける。金属の具体例において、バルーン82は同様に上記の長手ワイヤもしくはバーを有することができる。この種の具体例において、バルーンは長手ワイヤもしくはバーの間に薄い金属壁を有することができ、この肉薄金属は好ましくは内方向に屈曲されてバルーンプロフィルおよび直径を挿入に対し減寸させる。
【0102】
図7A〜7Dは、骨折部42を固定する際のバルーン固定具80の使用を示す断面図である。図3A〜3Cに関し上記したように、好適具体例にて穴45を最初に骨折部42の端部に設けて、骨の髄質に接近させる。図7Aに示したように、次いで固定具80を穴45を介し髄内キャビティ40にカニューレ48により挿入する。薄い中空スペースを固定具の挿入前に髄質内に形成しうるが、好適具体例ではカニューレ48自身を用いる固定具80の挿入が髄内スペースを形成する。
【0103】
好ましくは膨脹チューブ88をプランジャ43(図3Bに示す)の代わりに使用して、固定具80をカニューレ48中に押し込むと共に固定具キャビティ40内に位置せしめる。固定具には正中長手キャナル(canal)を設けて案内ワイヤにわたり膨脹性ロッドの挿入を可能にすることが好ましい。長手ワイヤ84はバルーン82を狭い長形プロフィルに保持して、キャビティ40中へのバルーンの挿入を容易化させる。カニューレ48を骨から抜き取った後、固定具80はキャビティ40の相当部分にわたり図7Bに示したように骨折部位44の両側にて延在し続ける。
【0104】
非圧縮性流体での膨脹は好ましくは圧力計を有する膨脹器で行われる。圧力計は固定具の膨脹に際し監視される。圧力がスロープ上昇し始めると、これは良好な整列が骨の内表面におけるロッドにつき達成されたことを示す。その後、装置を除去するため固定具取り出しのためのハブを、弁を位置せしめる固定具の近位部位に挿入する。このハブを用いて弁を開口させ、流体を除去して固定具直径の減寸を達成することにより除去を容易化させることができる。
【0105】
図7Cに示したように固定具80をキャビティ40に挿入した後、バルーン82をチューブ88を介して膨脹させる。好ましくは、先ず最初にバルーンを水(たとえば塩水)で膨脹させ、かくして固定具がキャビティ40の実質的に全幅を埋めるよう拡大する。この段階にて、骨42のX線画像を撮影することができる。この画像にてワイヤ84および骨の両者を見ることができ、従って固定具80の適性な位置決めを確認することができる。
【0106】
次いでバルーン82から塩水を除去し、生物適合性の固化用流体を満たし、この流体はバルーン82を満たして骨を固定する。好ましくは固化用流体はバルーン内で重合するモノマー材料、或いはたとえばエポキシのような2−成分セメントで構成される。流体の固化は好ましくは、骨髄質内の温度および/または湿度の上昇により触媒される。
図7Dに示したように、バルーン82が満たされると共に流体が少なくとも部分固化した後、入口ポート86を密封遮断すると共にチューブ88を抜き取る。
【0107】
短時間内に固化流体は完全に硬化して固定具を所定位置に固定すると共に骨42を固定する。ワイヤ84は固定具80に機械的強度をさらに付与し、特に横方向の屈曲力および剪断力に対する耐性を向上させる。他の具体例において、シースまたはカップを挿入後に弁上に位置せしめて、弁内または弁中への骨成長を防止する。
上記の他の好適具体例と同様に、骨42中への固定具80の挿入で形成された皮膚外傷を閉鎖して治癒させる。次いで骨42は骨固定手術の極めて短時間後に運動させることができる。
【0108】
所望ならば、骨42が治癒した後、固定具80を穴45を介し或いは骨42内の骨切除術を介して除去することができる。好ましくは固化流体の少なくとも1部を抜き取り或いは破砕し、次いで固定具を崩壊させて除去する。(代案具体例において液体もしくはゲルを使用する場合、これらは固定具の崩壊および除去のため単に吸引またはポンプ除去される。代案として弁を用いる具体例では、弁を単に開口させて、ロッドを狭いキャナルを介し骨から抜き出す際にロッドを直径減寸させることもできる)。
【0109】
図8〜11に他の好適具体例を示す。図8および9は、極く1部が流体で膨脹されるようバルーンを設計した具体例を例示する。各図面に示したように、陰影部分はバルーンの流体充填領域を示す。
折畳み構造の代案として、拡大性骨固定装置は格子形状に基づいて形成することもできる。代表的具体例を図10に示し、これは小さい収縮直径および大きい拡大直径の両者における2つの形状の具体例に関する一連の斜視図を示す。これら具体例は、上記超弾性または形状記憶合金に固有の自己拡大原理を利用して骨に挿入することができる。
【0110】
図10の好適具体例において、装置はそれぞれメッシュ構造または格子形状にて形成される。図10(A)および10(B)はこの格子形状の第1具体例を例示する一方、図10(C)および10(D)は第2具体例を図示する。図10(A)および10(C)に示したように第1の小プロフィル状態は装置が小直径dまで圧縮された各装置につき例示する。この減少直径は骨中への挿入を容易化させる。図10(B)および10(D)はそれぞれ第1および第2具体例を示し、それぞれ拡大後の増大直径d’を有する。骨中へ挿入した後、超弾性もしくは形状記憶材料の性質は装置をこれら拡大直径まで外方向に拡大させる。
【0111】
同様な構造であるが、これら第1および第2具体例はその各格子の設計により異なる。第1具体例(図10Aおよび10B)は、最初に実質的にダイヤモンド形状である形状を有するが拡大ダイヤモンドまたは正方形の形状まで外方向に拡大する格子として構成される。第2具体例は一連の矩形形状サブユニットを有する減寸格子として構成され、これらは外方向に拡大して一連の相互接続した蜂巣のようなヘキサゴン(六辺多角形)を形成する。
【0112】
図示した2つの具体例の他に、他のメッシュ構造もしくは格子も設けることができる。同様に図示した各具体例は好ましくは自己拡大性設計にて使用するものであるが、これらは拡大性装置として作用する他の材料で構成することもできる。下記するように、この種の拡大性装置は減寸直径から拡大直径の状態まで適するエネルギーもしくは力を加えて拡大する。
【0113】
図11は本発明の他の好適具体例を示す。固定具は丸形もしくは正方形の装置として構成され、これは2つの高さH1およびH2に設定することができる。硬質ロッドもしくはバー85をポイント83にて蝶着する。ヒンジ83に外力81を加えることにより装置の高さを変化させることができ、これによりその拡大および固定特性をその新たな高さH2にて付与することができる(図11Bと図11Aとを比較)。
【0114】
好適具体例を骨折した指節骨および上腕骨の固定に関し説明したが、本発明の原理に従う髄内固定具を実質的に任意の人体の長い骨を固定すべく作成して使用することもできる。この種の固定具は、たとえば手および足の小さい骨(たとえば中手骨および中足骨)および大きい骨(たとえば大腿骨)の両者に使用することができる。
本発明による好適には固定される骨の細胞学的特徴に適する骨固定の固定具および最小浸襲性方法は、軟質組織に対する手術外傷および損傷を最小化させるという利点を有する。さらに皮膚を通して突出する如何なる固定具の部分も残らないため、感染の危険が減少すると共に、患者は従来技術よりも迅速に骨折部を運動させることができる。
脊椎融合による椎間病理学の処置
上記原理を用いて、たとえば脊椎融合法におけるような脊椎と椎骨の問題を処置することができる。本発明によれば、脊椎融合を達成するには最適には次の3つの手順を用いる:
1. 手術用具を用いて椎間スペースにおける脊椎骨膜を核質で完全に抽出する。これは骨成長を増大させる(骨合成)。
【0115】
2. 椎間中空部および相互連通スペーサ(たとえば図12〜13に示す)はその中腔部における骨移植体の介挿を可能にし、これはその多孔質設計と共に骨組織をここに成長させることができ、骨合成および脊椎融合を向上させる。
3. たとえばニチノールスペーサのような弾性型の椎間スペーサは柔軟性の圧縮特性を有して、介挿された骨に重量を付加させると共に骨合成を可能にする。使用しうる1つの材料はニチノール、スポンジ型材料(すなわち多孔質ニチノール)である。
【0116】
この過程における第1工程としては、注射器を損傷円板領域にスタイレットを用い或いは用いずに挿入する。好ましくは外科用具を次いで用いて、脊椎骨膜を含め軟質組織のみを「つかみ取り」もしくは侵食するが骨自身を損傷させない。
組織抽出が完了した後、拡大性椎間スペーサまたは他の拡大性スペーサを中空注射器を介し経皮挿入することができ、これは上記髄内固定装置の具体例と同様である。このスペーサの機能は、脊椎を安定化させると共に椎間スペーサに隣接する2つの脊椎間の骨融合まで骨成長を増進させることである。
【0117】
図12および13に示したように、椎間骨スペーサ125もしくは130の好適具体例を図示する(ただし、この装置は髄内固定にも使用することができる)。椎間スペーサ125もしくは130を先ず最初に注射器を介して圧縮減少直径形態(図13Bに示す)にて挿入する。このスペーサは、髄内固定装置と同様に先ず最初に椎間スペースに挿入すべく減少直径プロフィルに維持される。スペーサを経皮挿入するこの能力は、スペーサの減寸直径プロフィルに基づき上記したような主たる手術を回避させ、従って患者に対する外傷および感染の危険性を減少させる。
【0118】
椎間スペース中に椎間スペーサ125もしくは130を挿入した後、スペーサは巻き戻って図13Cに示した拡大状態にその拡大特性により達する。上記本発明の具体例と同様に、スペーサ125もしくは130は好ましくは生物適合性金属もしくはポリマーで作成され、最初に注射器により図13Bに示した圧縮減寸直径の形態にて挿入される。さらにスペーサはたとえばアニールされた316−Lステンレス鋼、形状記憶合金(たとえばニチノール)またはたとえばポリウレタンのようなポリマーなどの材料で作成することもできる。アニールされた材料を使用する場合、スペーサ125もしくは130は挿入後に直径を拡大するためのエキスパンダーの援助を必要とする。このエキスパンダーは注射器を介して挿入されるバルーンとすることができ、これを膨脹させてスペーサを椎間スペースの直径まで拡張させる。代案としてエキスパンダーは機械的エキスパンダーとすることもでき、これをスペーサ内腔部に挿入すると共にこれを自己拡大させ、或いはこれを外部支援により拡大させる。自己拡大性材料をスペーサにつき用いる場合、このエキスパンダーは必要に応じ単に拡大につき援助すべく用いることもできる。
【0119】
図12もしくは13Cを参照して見られるように、スペーサ125もしくは130には一連の細孔部もしくは空隙部120をその表面に設ける。これら細孔部120(これらは円形、矩形または他の任意の形状である)は、細孔中への骨成長を可能にして脊椎安定性を向上させ、最終的に隣接脊椎間の融合を指令すると共にスペーサを所定位置にする。突出部もしくはスパイク153を設けることもでき、これらは骨表面に侵入すると共にスペーサの固定および安定化を支援する。
【0120】
図13Aおよび13Cにさらに示したように好適具体例においては、スペーサ130にたとえば1個もしくはそれ以上の固定用フィンガー115もしくはティース119のような固定メカニズムを設ける。この固定メカニズムはさらに椎間スペーサ130の拡大直径を維持すると共に、スペーサ130のその減寸直径状態への圧縮復帰を阻止し或いは防止する。図13Aはスペーサ130における1個もしくはそれ以上の固定用フィンガー115の使用を示す。スペーサ130が拡大すると、スペーサの先端部122は固定用フィンガー115もしくはティース119を越えて移動する。固定用フィンガー115もしくはティース119は先端部122の復帰移動に抗し、或いは固定用フィンガー115の「V」状空隙部またはティース119の1つの溝部に先端部122を捕捉することによりスペーサ130の収縮に抗する。その結果、スペーサ130に対し力を加える一方、これが脊椎間に存在するためスペーサは柔軟性圧縮特性を示し、さらに固定メカニズムにより与えられる対向作用に基づき不当な圧縮に抵抗する。
【0121】
従って骨表面の充分な清浄と、柔軟な圧縮特性を伴う特殊なスペーサ多孔質設計と、移植された骨移植体との組合せは、椎間スペースにおける骨融合および骨融合の箇所までの脊椎の安定化を可能にすると共に向上させる。
椎間板人工器具
以下、本発明の好適具体例による患者の椎間板スペースに挿入するためのバルーン人工器具140を示す略図である図14Aおよび14Bを参照する。図14Aは人工器具の平面図である一方、図14Bはバルーンを下記するような膨脹状態で示す断面図である。
【0122】
バルーン人工器具140は、好ましくは椎間板の直径にほぼ等しい直径を有する生物適合性布地もしくはポリマー142の2つの円形片からなっている。好ましくは布地142はたとえばダクロン、ゴア−テックスまたは他の当業界で知られた繊維材料などの丈夫な不活性合成繊維から織られる。代案としてまたは追加的に、布地はそれ自身で或いは不活性繊維を織り込んだ生物吸収性材料で構成することもできる。布地は好ましくは粗い織目を有して、下記するように人工器具140を移植した後に人工器具中への骨成長を増大させる。
【0123】
さらに代案として、2つの布地片142は、円板スペースに挿入すると共に下記するように充分な圧力まで膨脹するのに充分な柔軟性、弾性および強度を有する限り、任意適する生物適合性材料で置換することもできる。
磨砕した骨物質(たとえば患者の頸骨から採取)を布地142の外表面に人工器具140の移植前および/または移植後に設置することが好ましい。さらに、相当量の骨物質を好ましくはバルーンの中心146にて中空部に含有させることもできる。磨砕された物質はさらに所望の骨成長および骨に対する固定を向上させる。
【0124】
さらにバルーンにはその上表面および下表面に突出部153を設けて、骨表面へ付着および/または上下侵入させることも好ましい。これら突出部はバルーン移動を防止すると共に、一層良好なバルーンの安定化を達成する。
好適実施例につき図14Aおよび14Bに示したほぼトロイド状のバルーンを参照して説明したが、本発明の原理はたとえば楕円形状および三ケ月形状のバルーンまたは2本の平行円筒ロッドなど異なる寸法および/または形状のバルーン人工器具を作成すると共に移植するにも適用しうることが了解されよう。
【0125】
布地片142はその外側縁部144および円形中心146にて互いに封止される。1例として熱封止(すなわち当業界で知られた技術)を用いることができる。好ましくは1本もしくはそれ以上の頑丈な弾力性ワイヤ152(好ましくはステンレス鋼ワイヤ)に布地142を織り込んでバルーン142の構造体を補強する。バルーンの外縁部144におけるワイヤ152を図14Aおよび14Bに示し、ワイヤの存在は各布地片142の間の縫目に沿ったバルーンの破裂を防止するのに役立つ。さらにワイヤはバルーンを剛性にして下記するように円板スペース内で一層容易に操作および位置決めするにも有用である。代案としてまたは追加的に、この種のワイヤは布地片142の他の箇所に織り込むこともできる。さらに、これらはX線画像形成と共に使用すればワイヤを積極的に位置決めするにも有用である。
【0126】
流体ポート148を縁部144に沿った箇所にて開口させ続ける。膨脹チューブ158をポート148に取り付けて封止する。加圧流体をチューブ158を介しポート148に注入する場合、流体はバルーン140内のスペース150を埋めて、所定流体圧力まで膨脹させる。
図15は2つの脊椎164および166の中間にある円板スペース162への人工器具140の移植を示す本発明の好適具体例による斜視図である。人工器具140を円板スペース162に移植して、損傷した天然円板(たとえばヘルニア円板)を置換する。人工器具の移植を準備するため、カニューレ160を円板スペース162中へ横方向アプローチにて経皮挿入する。実質的に天然円板物質の全部を人工器具の移植前に円板スペースから除去する。
【0127】
人工器具140をカニューレ160中へ挿入するには、人工器具を図15に示されたように細くて長いほぼ円筒状に巻回する。この人工器具をこの形状にてカニューレを介し浸食された円板スペース162に供給する。好ましくは膨脹チューブ158は、人工器具をカニューレ中に圧入すべく作用しうるのに充分な剛性を有する。或いは、当業界で知られた他の手術プローブをこの目的で使用することもできる。
【0128】
本発明の原理に従う独特な減寸直径構造体および人工器具140の柔軟性は、細いカニューレ40を介し人工器具を移植することを可能にすることが了解されよう。当業界で知られた円板人工器具はこのように小型にしえず、またその後に円板スペース162内で下記するように開口および膨脹させることもできない。
すなわち人工器具140は、実質的な皮膚切開、大きい筋肉部分のラミネクトニーもしくは切除の必要なしに経皮移植することができる。
【0129】
図16は、脊椎間の円板スペース162に位置せしめた人工器具140を有する前額面に沿って見た脊椎164および166を示す断面図である。人工器具140がカニューレ40を通して全体的に円板スペース中へ供給された後、人工器具は開口スペースにて巻き戻り、膨脹するまで一般に扁平形状(図面に示す)をとる。ワイヤ152の弾力性はバルーン布地を巻き戻すのに役立つ。さらに、これは人工器具を、好ましくはチューブ158をカニューレ160中に圧入および引戻して布地を円板スペースに一層容易にセンタリングするよう剛性である。
【0130】
円板スペース162における人工器具140の正確な設置は好ましくは脊椎、円板スペースおよび人工器具の可視化により確認され、特に好ましくは開口磁気共鳴画像形成(MRI)システムにより確認される。代案として、X線画像形成を用いて脊椎164および166に対するワイヤ152の相対位置を観察することもできる。さらに代案として或いは追加的に、当業界で知られた細いエンドスコープを円板スペース162中へ或いはそれに隣接して挿入することにより人工器具を肉眼観察することもできる。
【0131】
本発明の好適具体例において、図16に示したように人工器具140を挿入した後、人工器具を塩水で膨脹させて図14Bに示した形態にする。人工器具の膨脹は、下記するように固化用流体を満たした際に持ちうる形状および位置を実質的に可視化させる。人工器具が不正確な位置で見られれば、これを容易に収縮させ、再位置決めし、次いで再膨脹させることができる。正確な位置決めが確認された後、塩水を除去すると共に人工器具を収縮させる。
【0132】
人工器具140を好適には円板スペース162に位置せしめた後、生物適合性の固化用流体をチューブ158およびポート148を介し注入して人工器具を膨脹させる。好ましくは固化用流体は、当業界で知られたデュプイ・カンパニー、英国により製造されるデュプイ・オルソペディック・ボーン・セメントのような骨エポキシからなっている。代案として固化用流体は重合性モノマーで構成することもできる。
【0133】
人工器具140は、脊椎164と166との間の解剖学上正確な間隔を維持するのに必要な圧力まで膨脹される。バルーンを形成する布地片142の弾力性およびスペース150の全体にかかる流体の圧力均衡(図14に見られる)のため、バルーンは自然にほぼ均一な圧力を円板スペース162に隣接する脊椎164および166の表面に維持すると共に、脊椎を解剖学上正確な相互の配向に保持する傾向を有する。好ましくは、脊椎164および166は人工器具140および周囲の構造体と一緒に、特に好ましくは上記したようなMRIを用いて撮影され、脊椎の間隔および配向が正確であることを確認する。
【0134】
流体が充分固化した後、ポート148を封止すると共にチューブ158を好ましくはチューブ158をカニューレ160に対し捻ると共に引き戻して除去する。
図17Aおよび17Bはそれぞれ、円板スペース162内に挿入および膨脹された人工器具140を示す前額面および軸方向の断面図である。人工器具は固化用流体170で膨脹されており、チューブ158は上記したように脱着除去されている。脊椎165および166はその内腔部172を含め実質的に完全に留まる。
【0135】
図17Aおよび17Bに示したように人工器具140の移植の後、脊椎164および166は人工器具の周囲および人工器具を通して円板スペース162中へ成長する。好ましくは、上記したように磨砕した骨を人工器具140の外側表面(特にその中心146の中空部)に設置して、この骨成長を援助する。最終的に、脊椎164および166の成長はこれらを互いに融合させて、骨が永久的に安定化すると共にさらに損傷しないよう保護する。
【0136】
図14〜17を参照して上記した好適具体例において、天然の椎間板と寸法にて匹敵する単一の人工器具を円板スペース162にて移植したが、本発明の他の好適具体例においては2個もしくはそれ以上の一層小さい人工器具を円板スペース内に並列移植することもできる。
さらに上記好適具体例においては、人工器具140を横アプローチ経皮移植したが、本発明の原理に従う膨脹性円板人工器具は当業界で知られた他の外科技術、たとえば開口および腹腔鏡の外科手術を前側もしくは後側アプローチにより用いて移植することもできる。 本発明のさらに他の好適具体例を図18A〜18Cに示す。これら具体例は扁平環状頂壁部および底壁部(たとえばワッシャ)を図14〜17に示したドーナッツ(トロイド)形状に対比して示す。他の好適具体例についても髄内固定および円板人工器具のための金属バルーンに関し次のセクションにて説明する。
髄内固定および円板人工器具のための金属バルーン
上記したように本発明によれば小開口部は骨の外部から作成されて、骨(長い骨でも短い骨でも)中への装置の経皮挿入を可能にし、或いは円板の代わりに穴を椎間スペースに作成する。本発明の幾つかの好適具体例において、装置は金属バルーンを備える。
【0137】
好適具体例において、バルーンはたとえばチタニウム、タンタル、ステンレス鋼(たとえばS.S.316L)、白金、他の医療級金属などの薄い金属から作成される。好ましくはバルーンは10〜300μmのバルーン肉厚で作成されるが、これら寸法より大もしくは小の肉厚も可能である。
バルーンは数個の金属バネもしくはロッドと共に作成して、バルーンに一層大きい軸方向の屈曲力および回転力に対する強度を付与すると共にバルーンにその操作および患者への挿入を容易化させる大きい剛性を付与することができる。ロッドをバルーンの外表面もしくは内表面に(たとえばハンダ付け、ミリングまたはバルーンの1部として)接続することができる。たとえば金属バルーンおよびロッドを作成するには、これらを全てアニールすることができ、或いは全て低温加工することもできる。代案としてロッドを低温加工する一方、バルーン自身をアニールして骨内に挿入した後に一層容易な拡大を可能にすることもできる。これは、1片の低温加工したロッドを作成すると共にその後に金属バルーンの肉薄部分のみをアニールして行うことができる。バルーンの両端部はハンダ付け、スポット溶接、レーザー溶接または金属コーンを装置の各端部に接続する他の任意適する方法で作成することができる。
【0138】
バルーンの外側表面は侵食性とすることができ、或いは骨表面に係合する突出縁部で粗面化させて固定具を所定位置にしっかり固定すると共に髄内具体例における骨折部分の摺動もしくは回転を防止することができ、或いは同様に椎間の具体例にて非運動性を付与することもできる。このシステムは、髄内ネイルにおける相互固定ネジを必要とせず或いは用いない点で利点を有する。
【0139】
さらに或いは代案として、バルーンは生物適合性ポリマーで構成することもできる。さらにまたは代案として、バルーンは上記した金属の外側の薄い表面と生物適合性プラスチック、ポリマーもしくは布地の内側表面とで構成することもできる。
バルーンが骨内または脊椎に隣接して適正位置に挿入された後、これを次いで生物適合性材料で膨脹させる。好適具体例においては髄内固定における膨脹流体として液体を使用し、円板人工器具としては生物適合性の固化用流体を使用する。髄内固定用の液体としては水、ゲルもしくは空気が好適である。しかしながら他の代案として、固化用流体を所望に応じ使用することもできる。
【0140】
本発明の代案具体例において、膨脹流体(髄内ネイルもしくは円板人工器具のいずれについても)は、それ自身で拡大しうる充填物質である。この充填物質は好ましくはその容積もしくは剛性を外部刺激に呼応して変化することができる。たとえば外部刺激は磁場、電場、放射線および/または温度とすることができる。外部刺激に呼応して容積もしくは剛性を変化する流動学的物質、高分子電解質ゲルまたは他の適する拡大性物質を充填物質として使用することができる。
【0141】
円板人工器具につき、生物適合性の固化用流体または他の非圧縮性流体が好適具体例にて使用される。好ましくは、この固化用流体または非圧縮性流体はバルーン内で重合するモノマー材料からなり、或いはたとえばエポキシのような2−成分セメントである。これは、円板に代替するのに充分な強度を人工器具に付与する。
この膨脹流体をバルーンの内腔と連通位置せしめると共に外部供給源からの圧力下に置いてバルーンを半径方向外方に拡大させることにより骨を固定する。次いでバルーンをたとえば弁を用いて密封すると共に、外部流体供給源を遮断する。弁の具体例においては、弁の上に保護カップを設けて骨成長から弁を遮蔽保護するのが好適である。
【0142】
固化用流体を用いる具体例において、円板人工器具は極めて強力となり、円板の代替とすることができる。このバルーンには1個もしくはそれ以上のトンネルもしくは穴を各表面間に設けて、脊椎骨表面が互いに2つの隣接脊椎間で接触させることにより、これら2つの脊椎を融合させることもできる。さらに、金属バルーンの外側表面を脊椎よりも強力にして、脊椎が侵食しないよう保持する。さらに金属バルーンの外側表面は侵食性または粗面にすることもでき、突出縁部を設けて脊椎に係合させると共に固定具を所定位置にしっかり固定して、摺動もしくは回転を防止することもできる。
【0143】
さらにまたは代案として、バルーンは脊椎よりも強い充分な強度を有する生物適合性プラスチックで構成することもできる。さらにまたは代案として、バルーンは上記した金属の外側表面と生物適合性プラスチックもしくは布地の内側表面とを備える。
髄内装置の場合、骨が治癒した後、バルーンは弁を開口させると共に液体を除去して収縮させることができ、これにより装置の除去を容易化させる。椎間板人工器具の場合、人工器具は永久的に所定位置に残すことができる。
【0144】
図20〜23は本発明の幾つかの好適具体例を示す。これら具体例は髄内ネイルおよびネイルのバルーン具体例に関し特に有用であるが、これら具体例の特徴は自己拡大性もしくは拡大しうる装置と一緒におよび/またはここに開示した他の椎間装置および円板人工器具と一緒に使用することもできる。すなわち、弁固定部材などを本発明で開示した他の特徴と共に使用することができる。図20は本発明の髄内ネイルもしくは固定具の他の好適具体例を示す。図面に示したように、外方向に延びる長手バー300を備えるネイルを作成することが好ましい。
【0145】
図20Bは髄内ネイル310の表面より高い長手バー300の突出部を示す断面図である。これら長手バー300は髄内ネイル310の長さの1部に戴置することもできるが、これらを髄内ネイル装置の長さ全体または実質的に全体に沿って延在させることが好ましい。好適具体例において、図面に示したように4本の長手バーを設け、ネイル外周の周囲に90°間隔にて位置せしめる。代案として、他の個数の長手バーを設けることもできる。
【0146】
長手バー300は固定部材として作用し、装置の機能を向上させると共に骨治癒を促進する。髄内ネイルを膨脹させる際、長手バーもしくは固定部材300を骨皮質の内表面に押圧して、骨の骨折部分間の回転運動を防止すると共に屈曲をも防止する。これら固定部材の付加は、長手ロッドが回転を防止するという事実に基づき相互固定を必要としないので標準的髄内ネイルよりも有利である。これはさらに骨を安定化させると共に治癒過程を促進する。これら長手バーもしくは固定部材300を本発明の各種の具体例に、これらがここに開示した自己拡大性、バルーン拡大性またはバルーン具体例のいずれであっても設けることができる。
【0147】
図21は、ここに開示した髄内固定具の好適具体例の特徴をさらに示す。図面に示したように、本発明の好適具体例において金属バルーンもしくは固定具320はパイプもしくは本体321と遠位端部カバー323とを備えて用いられる。
さらに、金属バルーンもしくは固定具320には固定具の近位先端部330に位置する弁318を設けて、固定具320への流体の出入通過を制御する。弁318は、ヘッドカバー322内に収容されると共にヘッドキャップ328にて終端する換気ピン325、O−リング326およびバネ327を備える。ヘッドカバー322およびヘッドキャップ328は弁318を遮蔽して、弁中への骨成長を防止する。
【0148】
好適具体例においては、高圧流体(たとえば塩水)を先ず最初に弁318を介し髄内固定具に挿入もしくはポンプ輸送する。弁を介するバルーン中への塩水のポンプ輸送は固定具320を直径拡大させ、これは図21Bと図21Cとの比較で示される。弁は流体が髄内固定具から逃げるのを防止し、固定具を必要とする時間の長さにわたり拡大状態に維持する。所望ならば、その後に固定具を弁318を用いて収縮させ、流体もしくは塩水を固定具から放出させることもできる。
【0149】
本発明の他の具体例を図21Dに示す。本発明は骨313内の位置せしめて示す。固定具には骨折部の近傍に位置せしめるチューブ状部材311を設ける。この部材311は、膨脹固定具セグメント315の直径よりも小さい一定直径を有する。部材311の直径は、固定具の半径方向拡大に際し部材311が固定具の拡大を防止もしくは抑制して内側骨表面に接触しえないよう固定される。たとえばセグメント315は骨の内側表面と接続する直径まで拡大するが、部材311はこの部材により包囲された固定具がこの固定具の残部により達成される拡大程度になるのを防止する。たとえば装置には、その領域における拡大を抑制するためのリングを設けることができる。この具体例は、「バタフライ骨折部」(すなわち多重骨断片を持った複雑骨折)を防止するのに特に有用である。
【0150】
本発明の髄内ネイルの具体例を図22Aに示す。図22Aは両者が拡大の前後における固定具実施例の2つの断面図よりなり、これら図面を互いに重ね合わせる(相対的な収縮および拡大直径を理解するため)。本発明のこの具体例において、収縮した髄内ネイルは湾曲もしくは起伏表面を備え、好ましくはそこに位置する長手バー300を備える。髄内固定具は拡大前に内方向に湾曲もしくは折り畳まれる表面を備えて、一連の接続球状セクション336を形成することが好ましい。好適具体例において、球状セクションは圧縮状態にてクローバー状の形状を有し、図22Aに示した4枚のリーフクローバ形状で示される。
【0151】
図22Aに示したように、圧縮された形状もしくは状態332において髄内ネイル330は圧縮直径D1を維持する。圧縮直径D1は小直径であって、髄内ネイルを骨における小穴を介し或いは上記したように注射器を介し骨中へ挿入するのに適するようにする。これに対し拡大形状もしくは状態334においては、髄内ネイル330は拡大直径D2にて骨内に維持される。拡大直径D2は長手バー301の外側表面から対向長手バー302の外側表面まで測定して大型直径であり、この直径は長手バーが所望の骨の内側壁部に押圧されるのに充分である。この図面は尺度を示すものでないが互いに重ね合わせた固定具の圧縮状態と拡大状態との両者を示し、圧縮状態から拡大状態への固定具の膨脹により達成される実質的な直径増大を示す。
【0152】
図22Bは本発明の他の具体例であって、図22Aと同様に示される。この具体例においては、1個もしくはそれ以上のヘアピンループもしくはアーク337を長手バー300の間に設ける。図示した具体例においては、4個の長手バー300をそれぞれ互いに90°にて設け、1個のヘアピンループ337を中心位置せしめると共に長手バーの各隣接対を接続する。所望ならば、1個もしくはそれ以上のアピンループを隣接長手バーの任意または全ての対の間に設けても設けなくてもよい。
【0153】
図23Aおよび23Bに示したように、好適具体例において髄内ネイルには正中長手キャナル、孔部もしくはトンネル344を設けることができる。このキャナル344は骨中へのネイルの挿入を容易化させ、案内ワイヤを用いて挿入手順を行うことを可能にする。正中キャナル344には案内ワイヤにわたりネジを設けて、固定具を骨中への挿入に際し適する位置に容易に案内することを可能にすると共に案内ワイヤを位置決めが完了した後に引抜くことを可能にする。
【0154】
特に弁を有する具体例においては、移植ネイルの先端部に装着して骨からのネイルの引抜きを援助する取出メカニズムを設けることができる。取出除去装置を弁の先端部に装着した後、弁を開口させてネイル内の高圧を解除することにより直径を除去の準備に際し減少させることができる。
要するに本発明の上記記載は、髄内固定および椎間固定装置、椎間骨スペーサおよび支持体、椎間板人工器具の最小浸襲性挿入、並びに処置方法につき説明する。好適具体例につき説明したが、本発明の具体例は自然に或いは骨固定具の経皮挿入を可能にする拡大レベルまで内腔を介し挿入されるエクスパンダにより拡大する拡大性固定装置および人工器具装置に向けられることを了解せねばならない。
【0155】
特定具体例に関し本発明を説明したが、この説明は限定を意味するものでなく、各種の改変をなしうることが当業者には了解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】自己拡大性髄内固定具の斜視図
【図2】固定具を示す断面図
【図3】固定具の使用を示す断面図
【図4】固定具の斜視図及び断面図
【図5】自己拡大性髄内固定具の端面図、固定具の加工用材料の作成を示す略図、閉鎖形状における固定具の断面図
【図6】非膨脹状態にある髄内バルーン固定具の略図
【図7】骨折部の固定における固定具の使用を示す断面図、固定具の挿入、バルーンの膨脹および膨脹メカニズムの除去の各工程
【図8】収縮形状における膨脹性髄内固定具の側面図および断面図
【図9】膨脹形状における膨脹性髄内固定具の断面図および斜視図
【図10】開口および閉鎖位置における骨固定のための2つの装置を示す斜視図
【図11】機械的に高さを変化させうる骨固定装置の断面図
【図12】拡大性椎間スペーサおよび髄内骨固定具の斜視図
【図13】椎間骨スペーサおよび髄内骨固定具を示す図
【図14】椎間板人工器具の平面図及び断面図
【図15】患者の椎間板スペース中への図14Aおよび14Bの人工器具の挿入を示す斜視図
【図16】円板スペースにおける図14Aおよび14Bの人工器具の設置を示す前額面における断面図
【図17】円板スペース内における人工器具の膨脹を示す断面図及び円板スペースを通る軸方向平面の断面図
【図18】円板人工器具の断面図、平面図および斜視図
【図19】骨固定および椎間離間のための各種の方法および装置の要約図
【図20】髄内固定具の斜視図、断面図、部分側面図
【図21】髄内固定装置の断面図、A−A線断面図(収縮形状、膨張形状)
【図22】髄内ネイルの断面図(収縮形状、拡大形状)
【図23】正中長手キャナルの斜視図具の略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塑性変形による直径増大によって形成される塑性変形可能な表面と、前記表面に形成される複数の突出部とを備え、前記複数の突出部は椎間スペーサが放射状に拡大する際に前記椎間スペーサーが骨に対して安定するように調整されたことを特徴とする、脊椎の安定に用いられる椎間スペーサ。
【請求項2】
請求項1において、前記椎間スペーサはガイドワイヤーに沿って挿入されることを特徴とする椎間スペーサ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、前記椎間スペーサは弾性材のシートを切り出して形成されることを特徴とする椎間スペーサ。
【請求項4】
請求項1から請求項3に記載のいずれか1項において、前記椎間スペーサーは軸方向に広がってふたつの椎骨の間の大きさとなることを特徴とする椎間スペーサ。
【請求項5】
請求項1から請求項4に記載のいずれか1項において、前記椎間スペーサの一部は該椎間スペーサが放射状に広がった際に、前記椎間スペーサの直径よりも小さな固定直径を有することを特徴とする椎間スペーサ。
【請求項6】
請求項1から請求項5に記載のいずれか1項において、椎間スペーサの放射状拡張は、前記椎間スペーサの直径を50%以上増大させるものであることを特徴とする椎間スペーサ。
【請求項7】
請求項1から請求項6に記載のいずれか1項において、2つ又はそれ以上の椎間スペーサは1つの椎間空間において並んで注入された大きさと等しいことを特徴とする椎間スペーサ。
【請求項8】
請求項1から請求項7に記載のいずれか1項において、さらに拡大直径を維持するための固定機構を備えたことを特徴とする椎間スペーサ。
【請求項9】
請求項1から請求項8に記載のいずれか1項において、前記表面に対して四方それぞれに少なくともひとつの突出部を垂直に有することを特徴とする椎間スペーサ。
【請求項10】
請求項1から請求項9に記載のいずれか1項において、前記椎間スペーサはチタンにより構成されることを特徴とする椎間スペーサ。
【請求項11】
請求項1から請求項10に記載のいずれか1項において、2つの放射状拡張部の間に放射状でない拡張部を含むことを特徴とする椎間スペーサ。
【請求項1】
塑性変形による直径増大によって形成される塑性変形可能な表面と、前記表面に形成される複数の突出部とを備え、前記複数の突出部は椎間スペーサが放射状に拡大する際に前記椎間スペーサーが骨に対して安定するように調整されたことを特徴とする、脊椎の安定に用いられる椎間スペーサ。
【請求項2】
請求項1において、前記椎間スペーサはガイドワイヤーに沿って挿入されることを特徴とする椎間スペーサ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、前記椎間スペーサは弾性材のシートを切り出して形成されることを特徴とする椎間スペーサ。
【請求項4】
請求項1から請求項3に記載のいずれか1項において、前記椎間スペーサーは軸方向に広がってふたつの椎骨の間の大きさとなることを特徴とする椎間スペーサ。
【請求項5】
請求項1から請求項4に記載のいずれか1項において、前記椎間スペーサの一部は該椎間スペーサが放射状に広がった際に、前記椎間スペーサの直径よりも小さな固定直径を有することを特徴とする椎間スペーサ。
【請求項6】
請求項1から請求項5に記載のいずれか1項において、椎間スペーサの放射状拡張は、前記椎間スペーサの直径を50%以上増大させるものであることを特徴とする椎間スペーサ。
【請求項7】
請求項1から請求項6に記載のいずれか1項において、2つ又はそれ以上の椎間スペーサは1つの椎間空間において並んで注入された大きさと等しいことを特徴とする椎間スペーサ。
【請求項8】
請求項1から請求項7に記載のいずれか1項において、さらに拡大直径を維持するための固定機構を備えたことを特徴とする椎間スペーサ。
【請求項9】
請求項1から請求項8に記載のいずれか1項において、前記表面に対して四方それぞれに少なくともひとつの突出部を垂直に有することを特徴とする椎間スペーサ。
【請求項10】
請求項1から請求項9に記載のいずれか1項において、前記椎間スペーサはチタンにより構成されることを特徴とする椎間スペーサ。
【請求項11】
請求項1から請求項10に記載のいずれか1項において、2つの放射状拡張部の間に放射状でない拡張部を含むことを特徴とする椎間スペーサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2008−237902(P2008−237902A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63189(P2008−63189)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【分割の表示】特願平10−538320の分割
【原出願日】平成10年3月6日(1998.3.6)
【出願人】(508043914)
【出願人】(508043936)
【出願人】(508043947)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【分割の表示】特願平10−538320の分割
【原出願日】平成10年3月6日(1998.3.6)
【出願人】(508043914)
【出願人】(508043936)
【出願人】(508043947)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]