説明

椎間スペーサ

【課題】椎体との固定力を増強させ位置のずれを未然に防ぐことができる椎間スペーサを提供する。
【解決手段】内部に人工骨または自家骨Bを収容し厚さ方向に挟まれて椎間Aに挿入される筒状のケージ2と、該ケージ2の挿入方向の後方側に位置する外側面において挿入方向に沿った回転軸2a線回りに回転可能に支持され、外側面の厚さ方向の長さ以下の短軸3aと、該短軸3aに直交し長さよりも長い長軸3bとを有し、ケージ2を挟む椎体Cに食い込ませるブレード3とを備える椎間スペーサ1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椎間スペーサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
脊髄が圧迫されて発症する頸椎症や椎間板ヘルニアなど、脊髄疾患の治療方法として、圧迫されている箇所の椎間板を除去して脊髄を除圧した後、椎間板が除去された椎間にスペーサを挿入して上下の椎体と固定する方法が用いられている。この際に用いられるスペーサとして、S字形状のブレードが収められたケージを椎間に挿入してブレードを90度回転させ、ブレードの一部を上下の椎体に食い込ませて固定する椎間スペーサが知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、側面に螺旋状の溝が刻まれた円柱状のスペーサで、ネジの要領で椎間に挿入して固定するものが知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】米国特許第6770096号明細書
【非特許文献1】頸椎前方固定用チタン製ケージ、製品情報、[online]、株式会社アムテック、[平成20年8月5日検索]、インターネット<URL: http://www.ammtec.co.jp/seihin/m-cage.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の場合、S字のブレードは幅が広くなりやすいためケージが大きくなり挿入が困難であったり、ブレードの長さ方向はケージの大きさで制限されるため十分な長さを確保できず固定力を増強できないという課題がある。また、非特許文献1の場合、術後に脊椎の運動によりスペーサの位置が徐々に奥行き方向にずれてのめり込んでしまうという問題がある。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、椎体との固定力を増強させ位置のずれを未然に防ぐことができる椎間スペーサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、内部に人工骨または自家骨を収容し厚さ方向に挟まれて椎間に挿入される筒状のケージと、該ケージの挿入方向の後方側に位置する外側面において挿入方向に沿った回転軸線回りに回転可能に支持され、前記外側面の厚さ方向の長さ以下の短軸と、該短軸に直交し前記長さよりも長い長軸とを有し、前記ケージを挟む椎体骨に食い込ませるブレードとを備える椎間スペーサを提供する。
【0007】
本発明によれば、ブレードの短軸がケージの厚さ方向に沿って配置された状態にし、隣接する椎体の隙間を押し広げながら椎間スペーサを椎間に挿入する。そして、ブレードを回転させると、ブレードの短軸方向の両端がケージの端面よりも突出し、ブレードの端部が隣接する椎体の終板に食い込むことにより、椎間スペーサを挿入方向に固定することができる。
【0008】
この場合に、ブレードがケージの外部に配置されているので、ブレードの長軸方向の寸法をケージの寸法に制限されることなく長くできる。これにより、ブレードの長軸方向の長さを十分に確保して椎体への食い込み量を増加させ、椎間スペーサの椎体との挿入方向の固定力を増強することができ、また、術後の椎間スペーサの位置のずれを防ぐことができる。
【0009】
また、ケージ内全体に自家骨または人工骨を充填することが可能になり、椎間に挿入されるこれらの量を増加させることができる。また、ケージ内の自家骨または人工骨と椎体との接触面積が広く確保されるので、これらの骨癒合の早期化を図ることができる。
【0010】
上記発明においては、前記ブレードと同一の回転軸を有し、前記ケージの反対側において一方の端面が前記ブレードに固定される柱状部を備え、該柱状部の外周面に周方向に延びる突起が設けられていてもよい。
【0011】
ブレードが椎間の深度の浅い位置で椎体に食い込むと、椎体の強度を低下させる可能性があるが、本発明によれば、ブレードの挿入方向後方に柱状部を配置し、椎間スペーサ全体を椎間に挿入することで、ブレードを適切な深度まで容易にかつ確実に挿入させることができる。
また、柱状部の外周面に突起を設けることにより、柱状部が回転させられると突起が椎体の終板に回転方向に食い込み、椎間スペーサの挿入方向の固定力をさらに増強させることができる。
【0012】
また、上記発明においては、椎間に挿入されブレードを回転させた状態で前記ケージまたはブレードに固定され、前記ブレードの回転を固定する回転止め部材を備えてもよい。
このようにすることで、術後にブレードが回転することによる固定力の低下や椎間スペーサの位置のずれを未然に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、自家骨との固定力を強化させ位置のずれを未然に防ぐことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係る椎間スペーサ1について、図1および図2を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る椎間スペーサ1は、図1に示されるように、椎間Aへの挿入方向前方側から後方側へ順にケージ2、ブレード3および柱状部4を備えた椎間スペーサ本体5と、該スペーサ本体5を椎間Aに挿入後にブレード3の回転を固定する回転止め部材6とを備えている。
【0015】
ケージ2は、筒状であり、例えば、金属製や樹脂製である。人体から採取した自家骨またはリン酸カルシウムを主成分とする人工骨が移植骨Bとしてケージ2内部に充填されるようになっている。
ブレード3は、互いに直交する短軸3aと長軸3bを有し、短軸3aはケージ2の厚さ方向の寸法以下の長さであり、長軸3bはケージ2の厚さ方向の寸法よりも長くなっている。
【0016】
柱状部4は、一方の端面がブレード3の中心近傍に固定され、他方の端面には鍵穴7と、該鍵穴7の中心に鍵穴7よりも深いネジ穴8が設けられている。柱状部4も、ブレード3と同様に、ケージ2の厚さ方向の寸法以下の短軸と、前記寸法より長い長軸とを有しており、ブレード3および柱状部4の各短軸が同一の方向に沿って配置されている。また、柱状部4の短軸方向の外周面には、周方向に延びた突起4aが設けられている。
【0017】
ブレード3および柱状部4は、ケージ2の挿入方向後方に位置する外側面に垂直に固定された軸(回転軸)2a周りに回転可能に支持されている。
椎間スペーサ本体5を椎間Aへ挿入するときは、ブレード3および柱状部4の短軸3aがケージ2の厚さ方向に沿う方向に配置され、ケージ2の両端面の間にブレード3および柱状部4が納められるようになっている。
【0018】
また、図2に示されるように、鍵穴7と同一の形状を先端に有する工具9を鍵穴7に挿入して挿入方向の軸線回りに回転させると、柱状部4およびブレード3が一体で軸2a回りに回転させられ、ケージ2の両端面からブレード3および柱状部4の短軸3a方向の側面が突出するようになっている。
【0019】
回転止め部材6は、ケージ2と略同一の厚さ方向の寸法を有する直方体のブロックの側面に、ブレード3の短軸3a方向の長さと略同一の幅を有する厚さ方向の溝6aが設けられ、柱状部4が溝6aにはめられるようになっている。また、溝6aの底面には貫通孔6bが設けられており、ブレード3および柱状部4を椎間Aで回転させた状態で回転止め部材6の溝6aに柱状部4をはめ込み、貫通孔6bからネジ穴8へネジ8aを挿入して締めると、ブレード3の回転が固定されるようになっている。
【0020】
このように構成された椎間スペーサ1の作用について、図3および図4を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る椎間スペーサ1を椎間Aに固定するには、あらかじめ椎間板が除去された椎間Aの隣接する椎体Cを押し広げ、内部に移植骨Bが充填されたケージ2が厚さ方向に椎体Cの終板Dに挟まれる向きで椎間スペーサ本体5を挿入する。
【0021】
そして、工具9を鍵穴7に挿入して柱状部4およびブレード3を回転させると、図3に示されるように、ブレード3および柱状部4の突起4aが終板Dに食い込ませられ、椎間スペーサ本体5が挿入方向に固定される。続いて、図4に示されるように、柱状部4が溝6aにはまるように回転止め部材6を配置し、貫通孔6bからネジ穴8へネジ8aを挿入してネジ8aを締めると、椎間スペーサ1を椎間Aに固定することができる。
【0022】
このように、本実施形態によれば、ブレード3がケージ2の外部に配置された構造になっている。これにより、ブレード3の長軸3b方向の長さがケージ2の内寸に制限されないので、ブレード3の長軸3b方向の長さを十分に確保し、椎体Cの終板Dから深い位置までブレード3を食い込ませて食い込み量を増加させ、椎間スペーサ本体5と椎体Cとの固定力を増強させることができるという利点がある。
【0023】
また、ケージ2内部全体に移植骨Bを充填することができるので、移植骨Bを保有する空間が十分に確保され、椎間Aに挿入される移植骨Bの量を増加させることができる。さらに、ケージ2内の充填された移植骨Bと椎体Cとの接触面積が広く確保されるので、移植骨Bの骨癒合の早期化を図ることができる。
【0024】
また、ブレード3の挿入方向後方側に柱状部4を設けることにより、椎間スペーサ本体5全体を椎間Aに挿入するとブレード3が適切な深度まで挿入される。これにより、ブレード3が椎体Cの端面近傍に食い込んで椎体Cの強度を低下させることなく、椎体Cの適切な挿入方向位置においてブレード3を食い込ませることができる。
【0025】
また、柱状部4のみの構造の椎間スペーサの場合、挿入方向に徐々にずれていくという不都合があるが、本実施形態に係る椎間スペーサ1の場合、ブレード3により挿入方向の固定力が増強され、さらに回転止め部材6によりブレード3の回転を固定することにより、術後の椎間スペーサ1の位置のずれや固定力の低下を未然に防ぐことができる。
【0026】
上記実施形態においては、ブレード3の形状を平板形状としたが、これに代えて、例えば、図5に示されるようなS字形状、または、図6に示されるような挿入方向に湾曲した湾曲板形状であってもよい。
このようにすることで、椎間スペーサ1を、椎体Cが離れる方向にも椎体Cと固定することができる。
【0027】
また、上記実施形態においては、柱状部4の内部に空間が設けられ、該空間に移植骨を充填してもよい。
このようにすることで、椎間Aの前方においても骨癒合を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る椎間スペーサを示す平面図である。
【図2】図1の椎間スペーサのブレード、柱状部および回転止め部材の動作を示す図である。
【図3】図1の椎間スペーサ本体を椎体と固定した状態を示す図である。
【図4】椎体と固定された椎間スペーサ本体に回転止め部材を固定する動作を示す図である。
【図5】図1の椎間スペーサのブレードの変形例を示す図である。
【図6】図1の椎間スペーサのブレードの変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
1 椎間スペーサ
2 ケージ
2a 軸(回転軸)
3 ブレード
3a 短軸
3b 長軸
4 柱状部
4a 突起
5 椎間スペーサ本体
6 回転止め部材
6a 溝
6b 貫通孔
7 鍵穴
8 ネジ穴
8a ネジ
9 工具
A 椎間
B 移植骨(人工骨または自家骨)
C 椎体
D 終板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に人工骨または自家骨を収容し厚さ方向に挟まれて椎間に挿入される筒状のケージと、
該ケージの挿入方向の後方側に位置する外側面において挿入方向に沿った回転軸線回りに回転可能に支持され、前記外側面の厚さ方向の長さ以下の短軸と、該短軸に直交し前記長さよりも長い長軸とを有し、前記ケージを挟む椎体に食い込ませるブレードとを備える椎間スペーサ。
【請求項2】
前記ブレードと同一の回転軸を有し、前記ケージの反対側において一方の端面が前記ブレードに固定される柱状部を備え、該柱状部の外周面に周方向に延びる突起が設けられている請求項1に記載の椎間スペーサ。
【請求項3】
椎間に挿入されブレードを回転させた状態で前記ケージまたはブレードに固定され、前記ブレードの回転を固定する回転止め部材を備える請求項1または請求項2に記載の椎間スペーサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−51651(P2010−51651A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221203(P2008−221203)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(304050912)オリンパステルモバイオマテリアル株式会社 (99)
【Fターム(参考)】