説明

椎間板の環状欠損からインプラントを送出する装置および方法

本発明は、椎間板などの所望の組織部位に、インプラントなどの医療装置を送出するための装置および方法に概ね関する。一態様では、侵襲性が最小限であり、所望の部位への正確なアクセスを提供する椎間板の修復および診断装置が、提供される。いくつかの態様では、本装置および方法は、侵襲性が最小限だが、正確で有効な埋め込みのために、最初に方向づけ押し縮めたインプラントを、送出し、位置決めし、展開するように適合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね、椎間板にインプラントを送出するための装置および方法に関する。特に、いくつかの実施形態において、侵襲性を最小限にするように方向付け押し縮めてインプラントを送出し、正確で有効な埋め込みをするための装置および方法が、提供される。
【背景技術】
【0002】
種々のインプラント、外科用メッシュ、パッチ、バリア、組織スキャホールドおよび同種のものが、椎間板を治療するために使用されてもよく、当該技術において知られている。外科用修復メッシュは、膨隆型ヘルニア、脱出型椎間板などの損傷を受けた組織の構造物を治療し修復するために、また他の場所に生じる場合がある医原性の孔および切開を閉じるために、身体全体にわたって使用される。ある生理学的環境では、正確にかつ侵襲性を最小限にして送出を行うことは難しい。
【0003】
椎間板は、高い負荷および圧力がかかる動的環境にある。一般に、この環境のために設計されるインプラントは、一時的な目的に使用しない限り、長期間このような状態に持ちこたえることができなければならない。さらに、脊髄が近接していることから、移植処置自体が難しく危険を伴うことによって、インプラントのサイズが制限され、またインプラントを配置しにくい。円板環境へ医療装置を送出することにつきまとう制限を考慮して、そのような装置は、欠損の位置に対して正確に送出することが好ましい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態では、椎間板にインプラントを送出するための装置および方法が、提供される。好ましい実施形態では、送出方法は、既存の欠損または医原性孔の悪化を妨げるかまたは減少させるように設計されている。椎間板以外の身体の部位にインプラントまたは他の医療装置を送出するために、本発明のいくつかの実施形態を用い得ることを、当業者は理解するだろう。例えば、本発明のいくつかの実施形態は、心臓、膀胱、肝臓、頭蓋、椎骨、大腿骨および他の骨格内へ(インプラントなどの)医療装置を送出するために使用し得る。
【0005】
一実施形態では、椎間板内に(インプラントなどの)医療装置を送出し位置決めする方法が、提供される。一実施形態では、本方法は、カニューレ、前進器、1つまたはそれ以上の展開器およびインプラントを準備するステップを含む。前進器は、カニューレに少なくとも部分的に連結されるか、またはカニューレに滑動可能に係合されるか、あるいはカニューレ内に収容される。前進器は、インプラントに連結されるか、またはインプラントに連結されるように作動し得る。インプラントは、1つまたはそれ以上の軸線に沿って押し縮められた外形になるように操作し得る。本方法は、さらに、第1の軸線に沿ってインプラントを押し縮めるステップと、椎間円板内にカニューレを挿入するステップとを含む。本方法はまた、線維輪の最も内側の面を越えてインプラントが配置されるように椎間円板内にカニューレを位置決めするステップと、カニューレまたは前進器を回転させるステップと、インプラントが最初に展開されるように、カニューレを後退させるステップと、インプラントがさらに展開されるように、1つまたはそれ以上の展開器を前進させるステップと、インプラントが実質的に完全に展開するように、カニューレを前進させるステップと、インプラントを前進器から連結解除するステップと、カニューレおよび前進器を椎間円板から取り外すステップと、を含む。一実施形態では、カニューレまたは前進器は、インプラントを約80度から約120度までの範囲内で回転させ得るように、時計回りまたは反時計回りに回転させる。インプラントは約90度回転させることが好ましい。他の実施形態では、上記のステップは、インプラント以外の医療装置を使用して行なわれる。いくつかの実施形態では、(インプラントなどの)医療装置は、円板以外の部位に送出される。これらの部位には、心臓、頭蓋または大腿骨が含まれるが、それらに限定はしない。一実施形態では、1つまたはそれ以上の深度固定部は、カニューレ、前進器に連結されるか、または個別の構成要素として送出される。一実施形態では、カニューレを円板に挿入する場合、深度固定部は、椎間板の外側の面に隣接した位置に配置され、インプラントは、その位置に関連して送出される。
【0006】
一実施形態では、インプラントを押し縮めるステップは、インプラントを折りたたむステップを含む。他の実施形態では、インプラントを押し縮めるステップは、インプラントを折りたたむ、収縮する、小さくする、押し縮める、閉じる、または圧縮するステップ、あるいはそれらを組み合わせたステップを含む。
【0007】
一実施形態では、インプラント展開ステップは、インプラントを広げるステップを含む。他の実施形態では、インプラント展開ステップは、インプラントを広げる、膨張させる、大きくする、張り出す、または開放するステップ、あるいはそれらを組み合わせたステップを含む。
【0008】
一実施形態では、インプラントは、バリアまたはパッチである。本発明の1つまたはそれ以上の実施形態に係る埋め込みに適するインプラントには、米国特許第6,425,919号、6,482,235号および6,508,839号明細書に記載されたインプラントを含み、すべては、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0009】
別の実施形態では、1つまたはそれ以上のインプラントは、欠損または医原性孔から挿入される。
【0010】
一実施形態では、椎間板内に(インプラントなどの)医療装置を送出する方法が提供される。一実施形態では、本方法は、1つまたはそれ以上の軸線に沿って押し縮められた外形になり得るインプラントを準備するステップと、第1の軸線に沿ってインプラントを押し縮めるステップと、第2の軸線に沿って椎間板内にかつ線維輪の層板の最も内側の層板を越えてインプラントを挿入するステップと、第2の軸線に垂直な軸線周りにインプラントを回転させるステップと、押し縮められた外形から展開された外形にインプラントを変形させ得るステップとを含む。
【0011】
別の実施形態では、椎間板内に(インプラントなどの)医療装置を送出する方法は、長いスリーブ内にまたはそれに沿って通される長いインプラント前進器を有する送出器を準備するステップを含む。一実施形態では、前進器は、インプラントに解放可能に連結され、インプラントは、スリーブの遠位端においてスリーブ内に押し縮められる。本方法は、さらに、第1の軸線に沿って、椎間板内にスリーブの遠位端を前進させるステップと、前進器を回転させるステップと、インプラントが復元されるように、スリーブからインプラントを解放するステップと、前進器からインプラントを解放するステップと、を含む。
【0012】
別の実施形態では、椎間円板の線維輪内に空隙を形成する欠損または医原性孔が椎間円板にある椎間板内に(インプラントなどの)医療装置を送出する方法が、提供される。一実施形態では、本方法は、第1および第2の軸線を有し押し縮め得るインプラントを準備するステップと、第1の軸線に沿ってインプラントを押し縮めるステップと、押し縮められたインプラントの短軸線が、空隙の最大寸法より小さい外形を提供するように、インプラントを方向付けるステップと、欠損または医原性孔を越えてインプラントを挿入するステップと、インプラントを時計回りまたは反時計回りに約90度回転させるステップと、インプラントを展開しまたは広げるステップと、線維輪の内側表面に対してインプラントの少なくとも一部分を後退させるステップとを含む。
【0013】
さらに別の実施形態では、椎間円板の線維輪の最も内側の面に沿って椎間板内に(インプラントなどの)医療装置を送出する方法が、提供される。一実施形態では、本方法は、線維輪の最も内側の面を通ってかつその面を越えてインプラントを挿入するステップと、線維輪の最も内側の面へインプラントを後退させるステップと、線維輪の最も内側の面に沿って横方向にインプラントが前進するように、前記面に対してインプラントの少なくとも一部分を撓ませるステップと、を含む。
【0014】
さらに別の実施形態では、椎間円板の線維輪の最も内側の面に沿って椎間板内に(インプラントなどの)医療装置を送出する方法が提供される。一実施形態では、本方法は、椎間円板内に線維輪の最も内側の面を越えてインプラントを挿入するステップと、線維輪の最も内側の面にインプラントを後退させるステップと、線維輪の最も内側の面に沿ってインプラントが外側に前進するように、線維輪の最も内側の面に対してインプラントの少なくとも一部分を撓ませるステップと、を含む。一実施形態では、インプラントは、展開される。いくつかの実施形態では、本方法は、さらにインプラントを同時に後退させ撓ませるステップを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、さらに、同期式にインプラントを同時に後退させ撓ませるステップを含む。好ましい実施形態では、本方法は、インプラントを回転させるステップを含む。
【0015】
本発明の一実施形態では、椎間板内にインプラントを送出し配置するための装置が提供される。一実施形態では、本装置は、カニューレおよび前進器を備える。一実施形態では、カニューレは、近位端および遠位端を有し、遠位端は、1つまたはそれ以上の展開器を含み、この展開器は、椎間円板の線維輪の最も内側の層板を越えて配置されるインプラントを展開するように作動し得る。一実施形態では、前進器は、近位端および遠位端を有し、前進器は、カニューレ内に少なくとも部分的に配置される。前進器の遠位端は、連結機構を含み、連結機構は、前進器とインプラントとを連結する。別の実施形態では、展開器は、カニューレ上に配置されないが、その代りに、前進器に連結される。一実施形態では、展開器は、別個の器具上に配置される。一実施形態では、本装置は、1つまたはそれ以上の深度固定部を備える。深度固定部は、カニューレまたは前進器のどの部分にも連結し得るか、または別々に送出し得る。一実施形態では、深度固定部は、椎間板内における移動を制限しかつ/またはガイドするように作動し得る。別の実施形態では、深度固定部は、カニューレに回転可能に連結されて、カニューレの深度を維持しながら、カニューレを回転させ得る。
【0016】
一実施形態では、前進器は、シースまたは他の拘束手段を通って前進させ、カニューレは使用しない。別の実施形態では、(線維輪の最も内側の層板を越えて配置される部位などの)所望の部位にインプラントが到達するまで、インプラントを拘束するように作動し得る拘束手段に、前進器の遠位端が連結されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のいくつかの実施形態を、特に椎間板治療に重点をおいて、脊椎内において用いることを通して、本明細書において説明する。身体の他の部位にアクセスまたは治療するために、本発明のいくつかの実施形態を用い得ることを、当業者は確実に理解するだろう。
【0018】
図1Aおよび図1Bは、機能的な脊椎単位の一般的な解剖図を示している。この説明およびその次に続く特許請求の範囲において、「前」および「後」、「上」および「下」という用語は、解剖学において一般的な使用法に従う。例えば、前とは、身体または器官の前側(腹側)の方向であり、後とは、身体または器官の後側(背側)の方向である。上とは、(頭に向かって)上の方向であり、下は、(足に向かって)下の方向である。
【0019】
図1Aは、椎間板315を上に有する椎体の横軸線Mに沿った軸方向の図である。軸線Mは、解剖学的構造物内の機能的な脊椎単位の前方向(A)および後方向(P)を示す。椎間板315には、中央の髄核(NP)320を囲む線維輪(AF)310が含まれている。さらにこの図には、左の横棘突起370および右の横棘突起370’、ならびに後棘突起380を示している。
【0020】
図1Bは、2つの隣接した(上)椎体350および(下)椎体350’の正中線を通る矢状軸線Nに沿った矢状断面図である。椎間板の空間355は、2つの椎体同士の間に形成され、椎間板315を含み、椎間板315は、椎体を支持し緩衝し、相互に、また隣接した他方の機能的な脊椎単位に対して2つの椎体が動くことを可能にする。
【0021】
椎間板315は、外側のAF310を含み、外側のAF310は、全体が椎間板の空間の縁の範囲内になるように、通常NP320を囲み拘束している。軸線Mは、機能的な脊椎単位の前(A)と後(P)との間を延びる。椎骨はまた、椎間関節360と、神経孔395を形成する上椎弓根390および下椎弓根390’を含んでいる。椎間関節および椎間板は、隣接した椎体同士の間において動きを移しかえ負荷を伝達する。このように複雑な生体力学的構成によって、屈曲、伸展、横向きに曲げること、押し縮めることが可能であって、1年当たり約100万回の激しい軸方向荷重および屈曲サイクルに耐え得る。円板の高さは、静止時の値の50%から200%まで変化し得る。
【0022】
図1Cは、線維輪に欠損を有する同じ機能的な脊椎単位を示し、この脊椎単位は、線維輪切開(anulotomy)を行っているときに、医原性により生じる場合があり、または自然に生じる場合がある。そのような欠損は、一実施形態において、外科用メッシュまたは治療用メッシュまたは同種のものを使用して修復し得る。一実施形態では、本明細書に説明するように、再生し、あるいは治癒を、すなわち成長または内方成長を促進するように、治療物質または治療薬をメッシュに浸透させるかまたはコーティングし得る。
【0023】
本発明の一実施形態では、侵襲性が最小限の方法で治療用インプラントを送出し得る方法および装置が、提供される。好ましい実施形態では、侵襲性を最小限にしたままで、送出を行うことによって、インプラントを厳密に正確に配置し得る。一実施形態では、インプラントは、組織の表面に沿って、挿入する外形および方向とは異なる、展開されたまたは操作された外形および方向に配置される。
【0024】
いくつかの実施形態では、異常のある脊椎円板または他の構造体内の組織を治療または強化するための外科用メッシュ、バリア、パッチまたは同種のものを送出する方法および装置が、提供される。一実施形態では、狭く限定された環境においてインプラントの再方向づけ、展開、および送出を統合して行い得る、力学的で相乗作用的な送出方法および装置が、提供される。
【0025】
一実施形態によれば、椎間板に一般的な種々の組織内にまたは組織に隣接してインプラントを送出し位置決めすることを支援するように設計された器具が、提供され、当該組織には、椎体およびそれらの末端プレート部、線維輪、髄核、および周囲の靭帯がある。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態の1つの利点は、いくつかの適用では、複雑な外形を有するインプラントまたは他の医療装置を医療従事者が送出する必要があることから、特に有利である。例えば、いくつかのインプラントの寸法は、埋め込まれた状態または展開した状態において、例えば生理学的なサイズまたは幾何学的な拘束のために挿入が難しいかまたは不可能な1つまたはそれ以上の寸法である。そのようなインプラントは、挿入に用い得る許容寸法より大きい第2の寸法にしてもよい。例えば、インプラントの高さは、開口部または線維輪切開部の高さ、または隣接した末端プレート部同士の間の空間の高さより高い場合がある。さらに、いくつかのインプラントの長さもまた、線維輪切開部の幅より長い場合がある。
【0027】
一実施形態では、所望の部位に有効に医療装置を送出し得る器具および方法が、提供される。本方法は、困難を伴う外形を有する医療装置を送出することに特に有利である。一実施形態では、本方法は、まず、外形を小さくするかまたは適合させ得るように、制限された寸法に対してインプラントを回転させて挿入して、次いで最終の位置決め中にインプラントを所望の方向に回転させ展開するステップを含む。好ましい実施形態では、この方法は、単一の器具を使用して行う。他の実施形態は、2つまたはそれ以上の適合させ得る器具を使用するステップを含む。
【0028】
本発明の一実施形態では、カニューレ、近位端および遠位端を含む送出装置が、提供される。一実施形態では、長く延びた中空のカニューレまたはスリーブが、提供され、このカニューレまたはスリーブは、医師が扱う近位端と患者の体内に挿入される遠位端とを有している。カニューレの遠位端の寸法は、外科医が作り出す場合がある小さな線維輪切開部内に、または線維輪に自然に生じた孔または病変部に適合する寸法にし得る。
【0029】
別の実施形態では、インプラントガイドまたは前進器は、カニューレまたはスリーブ内に通される。一実施形態では、ガイドまたは前進器は、インプラントに取り外し可能に連結され、当該インプラントは、1つまたはそれ以上の軸線に沿ってカニューレ内に押し縮めることができる。一実施形態では、ガイドまたは前進器は、カニューレ内を軸方向に移動させることができ、使用するインプラントまたは選択した埋め込み部位によって異なる回転をさせ得る。カニューレは、前進器を軸方向に相互に移動させるためのガイドの役割を果たす。したがって、一実施形態では、カニューレは、前進器を受け入れる中央管腔を有する長く延びた管の形状にして設け得る。あるいは、カニューレは、管状以外の構造体か、あるいはカニューレの上方をまたはそれと並んで前進器が同心に移動する一実施形態では、単にスリーブ、または部分的に抑制する部材を含み得る。
【0030】
一実施形態では、実質的に長方形のインプラントが提供される。いくつかの実施形態では、インプラントは、ニチノール、鋼、またはポリマー、あるいはそれらを組み合わせたものからなるメッシュである。他の実施形態では、インプラントは、コラーゲンまたは小腸下方粘膜または同種のものなどの、播種したまたは播種していない組織スキャフォールドを含む。
【0031】
一実施形態では、インプラントを、その長軸線を横切って折りたたみ、前進器に連結して、送出装置の遠位端からスリーブ内に挿入し得る。短軸線に沿って作り出された折り目が、スリーブの直径より大きい場合、次に、1つまたはそれ以上の溝をスリーブの先端に形成して、インプラントを受け入れるようにし得る。あるいは、インプラントの第2のまたは短軸線に沿ってインプラントを押し縮め、これは、両方の寸法が、スリーブ内に押し縮められたままになるように行い得る。本発明のいくつかの実施形態によって、必要に応じて、任意の軸線に沿ってインプラントを押し縮め得ることを、当業者は理解するだろう。ここに使用されるように、インプラント(あるいは医療装置)を押し縮めることは、通常の意味で行われ、インプラントまたは医療装置を、折りたたみ、収縮させ、小さくし、押し縮め、圧縮することも含む。
【0032】
一実施形態では、使用時に、スリーブの遠位端を、椎間板などの所望の器官または組織の構造体内に挿入する。インプラントは、折りたたんだ部分が、スリーブの遠位端にまたは遠位端の近傍になるようにスリーブ内に装填する。挿入部位の形状(例えば、長方形の線維輪切開部)および方向(垂直または水平)によって、インプラントまたは前進器を、所望の埋め込み方向に拘わらず開口部を通るように回転させ得る。したがって、本発明の1つまたはそれ以上の実施形態に係る装置は、インプラントに、約5度と約150度との間の回転をさせ、好ましくは約60度と約120度との間の回転をさせ得る。一実施形態では、送出装置の少なくとも一部分は、約2度と約170度との間、好ましくは約50度と約140度との間、さらに好ましくは約80度と約120度との間の範囲、時計回りまたは反時計回りに回転し、それにより、インプラントが回転し得る。一実施形態では、装置またはインプラントは、約90度回転する。
【0033】
一実施形態では、押し縮めたインプラントが装填されたスリーブを正中面から椎間円板内に挿入すると、外科医は、埋め込みを行うことが望ましい対応の組織表面を、折りたたんだインプラントの縁が通過すると、挿入を中止し得る。この例において、外科医は、隣接した椎骨末端プレート部の周縁同士の間の線維輪、または外側のより狭い間隙を通過した後に、中止する。その後、インプラントを、所望の挿入方向に対応するように挿入軸線に垂直な軸線周りに回転させ得る。次に、スリーブを前進器に対して後退させて、折りたたまれていた(あるいはもはや抑制が解かれた、または能動的に押し縮められていた)インプラントが姿を現す。(回転ステップの後)スリーブ内においてインプラントを方向づけることによって、インプラントは、末端プレート部に対して上下に、または線維輪に沿って横方向左右に展開する。一実施形態では、インプラントは、本来弾性があるので、連結部材またはカニューレにより付与される力によって、または医師が能動的に操作することにより付与される力によって開かれると、前進器は、インプラントの折りたたまれた部分が、後線維輪の方に後ろに引っ張られ、かつインプラントの側方部または延長部が、線維輪の表面に沿って横方向に前進し移動するように、後退される。前進器の動きによって、インプラントが、組織表面に沿って完全に後退して平坦になるか、あるいは完全に展開した位置になると、外科医は、前進器からインプラントを解放し得る。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態に係る所定の埋め込みに対して同様または同等の結果を得るために、インプラント、スリーブおよび前進器の運動学、順番、相対位置および方向を逆にするかまたは変更し得ることを、当業者は理解するだろう。例えば、一実施形態では、前進器は、スリーブからインプラントを押し出すために使用し得る。別の実施形態では、スリーブを前進器に対して後退させ得る。別の実施形態では、インプラントを後線維輪に沿って後ろに引っ張るように、前進器を後退させるか、あるいは(スリーブまたはカニューレ、および前進器を含めた)装置全体を引っ込めることができる。インプラントを回転させるために、前進器およびスリーブを別々に、あるいは装置自体を使用し得る。一実施形態では、装置の少なくとも一部分は、それらの要素の1つまたはそれ以上の要素が操作されている間、静止したままである。別の実施形態では、送出装置は、インプラントを、前進器の遠位端に押し縮められた状態にしておくために、スリーブの代わりに拘束部材を代用することで簡素化される。例えば、縫合、鉗子、リング、バンド、ピンチ、または接着剤を用いてインプラントを拘束することができ、次に、前進器は、椎間円板内にインプラントを前進させ所定位置へ回転させる役割を果たし得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、装置の部品は、埋め込みステップの間に別の目的に役立つ場合がある。一実施形態では、スリーブは、折りたたまれまたは押し縮められたインプラントを拘束し次に解放することができ、インプラントを解放しやや展開した状態にする(カニューレ開口部または先端の外形を大きくする)場合、カニューレまたはスリーブの先端が、インプラントの折りたたまれていた側方部の内側の面に接触しそれらを開かせるように、カニューレを前進させ得る(または前進器を後退させ得る)。したがって、一実施形態では、後退ステップは、インプラントの中央部の後への動きと、横向きの撓みを生じる線維輪の反対の力により生じる、線維輪の表面に沿ったインプラントの側方部の横への移動とを含むが、不要な場合があり、その理由は、前進器とカニューレ先端とが、反対向きに同期して動きかつ相対的に動くことが、てこと支点のように有効に作用して、インプラントが開かれ、展開されまたは広がるからである。一実施形態では、インプラントの折りたたんだ部分またはヒンジにあるコネクタは、支点のように作用し、また、カニューレの遠位端は、折りたたまれたインプラントを平坦に押し開けるレバーのように作用する。この代替または補完的な開放ステップまたは方法は、線維輪の弱くなった部分の大きな欠損の近くにおいてインプラントを展開するのに、特に有用な場合がある。それは、このような組織は、インプラントの両端部が前進するための剛性のある撓み面になり得ない恐れがあるからである。
【0036】
本発明の一実施形態を図2A〜図2Dに示す。送出装置10は、近位端1および遠位端2を有する長く延びたカニューレを伴って示されている。カニューレ15は、遠位端の先端20または端部20、20’を有し、端部20、20’は、押し縮められるインプラント100を受け入れ拘束するように、遠位端2に切り込まれたスロット21により形成される。さらに、装置の近位端1には、カニューレのフィンガーハンドル5、5’、前進器30、前進器の環状ハンドル25を、装置の遠位端2には、インプラント/前進器連結部材35を示す。
【0037】
一実施形態では、連結部材35を使用する。連結部材35は、インプラントを解放しまたは連結および連結解除し得る種々の装置または機構である。連結部材は、縫合、スナップ、ロック、リンチピンまたは同種のもの、レバーおよび溝、または当該技術において既知であって、外科医が処置の所望の時点でインプラントを係合解除し得る能動的または受動的ないかなるリンク機構も含むがそれらに限定はしない。一実施形態では、1つまたはそれ以上の連結部材を使用する。一実施形態では、2つの連結部材を、インプラントを連結するために使用する。
【0038】
一実施形態では、装置10は、片手で、例えば、親指、人差指および薬指を用いて、装置10を配置し前進器30を前進、後退させる操作を行うように設計されている。しかしながら、前進器30を前進、後退させるために、トリガー、スライダスイッチ、回転させ得る取っ手または他のアクチュエータなどの、様々な近位ハンドピースのどれでも使用し得るが、それらに限定はされないことを、当業者は理解するだろう。
【0039】
一実施形態では、送出装置10は、医療装置の技術において周知の様々な技術のどの技術によっても、製造し得る。一実施形態では、カニューレ10は、ステンレス鋼または他の医療用金属などの金属の管を含む。あるいは、装置10は、高密度ポリエチレン、PTFE、PEEK、PEBAX、または、医療装置の技術において周知の他のものなどの重合体を押出成形したものを含み得る。
【0040】
好ましい実施形態では、送出装置10の軸方向の長さは、皮膚を通る経皮または小さい切開開口部から所望の治療部位に到達するのに十分な長さである。一実施形態では、送出装置10の長さは、約10センチメートルから約30センチメートルまでの範囲内であり、近位端から遠位端までの長さは、最も後ろの横方向への進入路を考慮して約10センチメートルから約20センチメートルまでの範囲内である。長さは、目的の進入路および患者の体格によって変更し得る。
【0041】
一実施形態では、送出装置10の外径およびカニューレ30の遠位端は、ここに開示した目的の機能を果たす必要以上には大きくない。一実施形態では、約1センチメートル未満の外径が好ましい。本発明の好ましい実施形態では、カニューレ30の外径は、大きくてもおよそ5ミリメートルである。
【0042】
追加の特徴を有する典型的な実施形態を図3A〜図3Eに示す。図3Aは、外科医が操作するための近位端1と患者の体内に挿入する遠位端とを有する、インプラント送出装置200の等角図である。一実施形態では、装置200の近位端1に配置されたハンドル125を有するインプラント前進器またはガイド130と、装置220の遠位端2へ延びるインプラント連結部材135とが、提供される。前進器130は、カニューレ115内を滑動し得るようにその中に収容され、当該カニューレ115は、カニューレを配置し制御するためのカニューレハンドル105を有する。
【0043】
本装置はまた、一実施形態では、遠位の深度固定部150を含み、この遠位の深度固定部150は、インプラントの埋め込み中にまた最終位置決め時に、インプラントの前後の位置決めを制限しガイドをし得るという特徴を有する。深度固定部150および150’は、カニューレ115に通され、深度固定調節部材155を操作し深度固定ハンドル160を保持することにより、その長さのある場所に沿って静止するように調節し得る。深さの相互関係を表示するために、較正された測定面156を、カニューレにエッチングするかまたはスリーブとして別にカニューレに取り付け得る。あるいは、種々の長さの、調節不可能な深度固定部が、キットとして含まれ得、手術前に所与の処置に的確な深度固定部を選択し得る。一実施形態では、深度固定部150は、カニューレに連結することができ、その結果、本装置の遠位先端を所望の深度に維持しながら、カニューレ115と前進器130とを自由に回転させ得る。
【0044】
別の実施形態では、インプラントを開放または展開させることを支援するために、遠位端に楔状面175,175’を有しかつ近位端に展開器ハンドル140が取り付けられたインプラント展開器170が、カニューレ115内に、前進器130の各面の上をまたはそれに沿って通される。1つまたはそれ以上の展開器をカニューレまたは前進器に連結し得る。一実施形態では、遠位端に1つまたはそれ以上の展開器を含む個別の器具をカニューレに貫通させる。
【0045】
図3Bに、本発明の一実施形態に係る送出装置を示し、装置200の遠位端2には押し縮められたインプラント100が装填されている。この図に示すように、一実施形態では、長方形のインプラント100を、長軸線を横切って折りたたんで、カニューレの溝付き端部120および120’により形成されたカニューレの溝内に取り付ける。代替実施形態では、カニューレを、(例えば、溝は形成されていない)直線状にしてもよいし、または第2のまたは短軸線に沿ってインプラントを押し縮めてもよい。図3Cは、展開したまたは広がったインプラント100に連結された装置を示す。
【0046】
図3Dに、装置200の遠位端の拡大等角図を示し、この図では、カニューレ115の溝付き端部の先端または舌状部120、120’の間に、インプラント100が装填されている。深度固定部150、150’の対向する遠位端は、カニューレ115に隣接したフォーク状の突出部として示している。一実施形態では、2つの深度固定部が設けられる。別の実施形態では、1つまたはそれ以上の深度固定部が設けられる。代替実施形態では、全円周方向の固定面を用い得る。
【0047】
図3Eに、装置200の遠位端の断面図を示し、この装置200は、展開器175、175’、およびインプラントまたは前進器連結部材135を含んでいる。一実施形態では、連結部材は、可撓性のある「Tバー」であり、「Tバー」は、前進器130に長手方向に取り付けられ、インプラント表面の溝(図示せず)にはめ込まれる。あるいは、上述の能動的連結手段および受動的連結手段も使用し得る。一実施形態では、カニューレ120の先端、および/または(カニューレまたは挿入部位の開口部と比較して大きいサイズで示した)線維輪表面に対して、展開されるインプラントを後退させる場合、前進器または装置をさらに後退させることによって、連結部材が、インプラント内の溝(図示せず)から滑り出ることになる。X線に不透明なインジケータ150、150’も示しており、インジケータは、深度固定部150、150’に連結されて、X線画像化中に装置の配置を決定することに使用し得る。例えば、装置の部分は、解剖学的構造物と一直線に並べることができ、あるいは装置のハンドルまたは他の突起部は、インプラントの向きに対応するように方向付けることができる。1つまたはそれ以上のX線に不透明なマーカを本発明の一実施形態において使用し得る。他のインジケータまたはマーカを使用してもよいことを、当業者は理解するだろう。図4Aおよび図4Bを参照すると、機能的な脊椎単位の側面図が示されており、当該図面では、この線維輪310に欠損300があり(例えば、椎骨の解剖学的構造物についての図1A〜図1Cを参照)、欠損300内に装置200が挿入されている。一実施形態では、隣接した椎体の後要素の椎弓切除または調節を含み得る後外側からの接近が用いられる。別の実施形態では、前(例えば、腹部または頚部から)、外側(例えば、経腰筋(transpsoas))、または下(例えば、経仙骨(trans−sacral))からの他の接近を用いることができるが、これらに限定はしない。
【0048】
図5Aから図5Gに示す一連の図は、本方法の実施形態に係る一般的な長く延びた長方形のメッシュインプラントを送出する順序を示している。欠損300、あるいは箱状のまたは細長い線維輪切開部は、形状が長方形であり、横(または幅)の寸法が、垂直方向の寸法より大きい。さらに、垂直方向の寸法も、送出し得るインプラントの高さを制限する処置を行う時に、末端プレート部の相対位置により制限される場合がある。一実施形態では、インプラント200は、欠損300を覆い、その最も内側の層板に沿って線維輪310に対して配置されたバリアとして機能するのに十分な大きさである。
【0049】
図5Aは、椎間板の軸方向の断面図であり、この椎間板では、インプラント100が、長軸線に沿って折りたたまれ、前進器130(図示せず)に連結され、カニューレ115の遠位端の先端または舌状部120内に挿入されている。ここで、対向した先端120(120’は図示せず)により形成されたカニューレ115の先端に、溝が形成された結果、短軸線に沿って作り出された折り目は、カニューレ115の直径より大きくなっている。この構成によって、インプラントが装填された装置2の遠位端が、図5Bに示すように、欠損300および線維輪310内を、次にそれを越えて前進し得る。ここでは、深度固定部150、150’、150”は、3つの突起部として示されているが、3つ未満または4つ以上の突起部を使用してもよい。この送出の応用では、深度固定部150の部分は、線維輪、または隣接した椎体の両方または一方に接して配置し得る。他の実施形態では、深度固定部150は、心臓などの器官、頭蓋、大腿骨または椎体などの骨の外側に配置するか、または当接させるか、あるいは係合させ得る。一実施形態では、インプラントは、欠損の前における、円板の前後方向(前は、患者の前部の方向と定義し、後は、患者の後部の方向と定義する)への位置決めに関して、好ましい最終的な配置部分を有するように設計されている。外科医は、さらに、前線維輪への損傷、または大動脈などの、解剖学的に円板の前の部位への損傷を妨げるように、インプラントを配置し、円板前部への距離に対する制限部またはガイドとして送出装置を使用することも必要とする場合がある。同様に、外科医は、円板内の後ろ過ぎない位置にインプラントを配置して、後線維輪への損傷、あるいは脊髄およびその硬膜、または後縦靱帯などの、円板後部の解剖学的構造物への損傷を妨げることを必要とする場合がある。
【0050】
図5Cに、(無用な線維輪を取り除いた後)カニューレ115を90度回動させる、前述の方法の次のステップを示す。図5Dに、すでに展開中、または横断方向の外形が変化中であるインプラントを示す。一実施形態では、ここに示すように、インプラントまたは前進器連結部材135に折り曲げ角度が生じるにつれて、インプラント100の両端の間の間隙は、増していく。前述のように、インプラント100または連結部材135に本来備わる弾性を含めた種々の要因によって、最初の展開が、このように行われる。
【0051】
図5Eは、上述した最初の展開ステップを支援するかまたはそれと置き換え得る、先端が楔形の展開器175を前進させるステップを示す。展開器175は、一実施形態では、先端が楔形である。他の実施形態では、展開器は、インプラントを開くかまたは再配置するために、インプラントと十分に接触し得る任意の形状にし得る。この任意の形状には、平坦な形状または丸い形状があるが、それらの形状に限定はしない。さらに、他の実施形態には、インプラントを展開または再配置するように適合させたバルーン、ばね、弾性部材、または機械的リンクを備える展開器が含まれ得る。
【0052】
図5Fは、展開器がインプラント100を開くのを支援するために、カニューレ先端120、120’を前進させるステップを示す。一実施形態では、前進器130、展開器175およびインプラント100は、カニューレ遠位端120およびインプラント100に対して後退させ得る。カニューレ先端120とインプラント100との間の力は、インプラント100と環状壁との間の力を最小限にしながら、インプラント100を展開するように作用する。インプラント100、前進器130および展開器175は、カニューレ120の後退に対して、異なる速度でまたはそれと同期して、あるいは異なる程度このように後退させることができ、インプラント100を後退させている間に、この力が生じかつ/または実質的にインプラント100が開かれる。一実施形態では、この開放ステップは、インプラントが配置される組織表面が弱っている、または表面の歪みを悪化させてしまう例において特に好ましい。すなわち、欠損が大きくて、代わりにインプラントが欠損から引き戻される恐れがあるなどの場合に特に好ましい。
【0053】
図5Gに、一実施形態における最終の送出ステップを示し、この実施形態では、インプラント100の端部が、内側の面に沿って外側に撓み前進すると、インプラント100は、線維輪310の後方へ引っ張られる。前進器130、カニューレ120および展開器175を一斉に後退させると、この後方への動きが起こり得る。この時点で、連結部材135をインプラント100から係合解除し、本装置を患者から取り外す。一実施形態では、線維輪表面に沿って本装置が配置されたことを外科医が確信するように、実質的に処置の間中、深度固定部150が相対位置を維持していることに留意する。周りの組織への力を最小限にし、または欠損300に対するインプラント100の展開または配置を最適化するように、本機械装置の種々の要素の後退を、深度固定部150に対して調整し得る。図6に、完全に埋め込まれた装置100(このインプラントは、後線維輪全体を覆うような大きさである)と、塞がれた欠損300とを示す。
【0054】
いくつかの実施形態では、埋め込み用に、比較的単純な長方形のメッシュまたはパッチを提供する。他の実施形態では、より複雑な装置を使用することができ、このような複雑な装置には、ステント、グラフト、心房中隔欠損閉鎖装置およびその他同種のものがあるが、それらに限定しない。図7Aに、本発明の種々の実施形態の教示によって方向付け、折りたたみ、展開させ得る2つの延長部202、204が垂直に延びたインプラント200を示す。図7Bに、側方に延長部204、204’を有し、線維輪の後・側壁を覆うように使用する場合があるインプラントを示す。図7Cに、送出外形を押し縮めるように長軸線に沿って複数の折りたたんだ部分があるインプラント200を示す。最後に、図7Dに、凹状で長く延びた部材を示し、この部材は、側方延長部204、204’および正中側方部材206、206’を有している。このように設計することによって、本明細書における教示によって、1つまたはそれ以上の長手方向軸線に沿って折りたたみ押し縮め、送出し得る。
【0055】
本発明の一実施形態に係る埋込処置の一部として、送出部位の準備、またはインプラントの操作を支援するために、能動および受動的方法を送出装置またはインプラントに取り入れ得る。例えば、一実施形態では、インプラントの形状を再修正するかまたはサイズを調節するために、位置決め中にまたは位置決め後に、ガス、液体および/または固体成分をインプラントに追加し得る。いくつかの実施形態では、インプラントは、1つまたはそれ以上の医薬品を含んでいる。医薬品は、痛みの軽減または瘢痕の抑制を促進することができ、遺伝学的に活発な成長または治癒因子を含み得る。別の実施形態では、インプラントが送出装置から出るときに摩擦を減少させるように、潤滑剤を供給する。1つまたはそれ以上の医薬品を、カニューレまたは前進器によりまたはその中を通って供給し得る。さらに、別の実施形態では、インプラントの視認を支援する材料を供給し、その材料には、X線写真によるX線に不透明な場所に適する材料が含まれるが、それに限定はしない。視認マーカーをインプラントおよび/または送出装置上に配置し得る。
【0056】
一実施形態では、インプラントは、隣接したまたは近傍の組織に固定し、ステープラーなどの固定機構を送出装置に組み込み得る。別の実施形態では、固定機構を起動するための機構は、インプラント自体の中に含ませ得る。インプラント展開の前、その後、またはその最中に、電磁スペクトルからの熱エネルギーの送出、または加熱(冷却または冷凍)を使用して、インプラント機能の位置決めを支援し、あるいは不要な組織の蒸散、疼痛受容体の鈍化、および骨または瘢痕組織の除去などの、関連する椎間円板または脊椎の治療を支援し得る。一実施形態では、周りの組織の温度を調節する手段を送出装置に連結するかまたは送出装置と一体化させる。別の実施形態では、温度調節手段は、送出装置とは別の器具である。
【0057】
いくつかの実施形態では、送出装置は、種々の目的のうちどの目的のためにも、装置の近位端を遠位端と流体連通させて配置するための、軸方向に延びる1つまたはそれ以上の管腔を備える。例えば、1つまたはそれ以上の管腔は、前進器130を延び得る。あるいはまたはその上、カテーテルの技術においてはよく理解されるように、前進器の外径は、環状の空間を作り出すために、送出カニューレ115の内径よりも小さい寸法にし得る。第1の管腔は、処置中におけるインプラント100の、または装置200の遠位端2の前進の視覚化を促進するように、放射線不透過性色素を導入するために利用し得る。第1の管腔または第2の管腔は、種々の媒質のどの媒質を導入するためにも利用し得る。一実施形態では、1つまたはそれ以上の管腔は、食塩水を送出するために使用される。別の実施形態では、1つまたはそれ以上の管腔は、医薬品を送出するために使用され、これらの医薬品には、抗炎症薬、ステロイド、(TNf−α拮抗薬などの)成長因子、抗生物質、血管拡張薬、血管収縮薬、ならびに機能蛋白質および(キモパパインなどの)酵素があるが、これらに限定はしない。一実施形態では、1つまたはそれ以上の管腔は、生物学的流体または髄核などの材料を吸引するために使用される。別の実施形態では、1つまたはそれ以上の管腔は、処置前に、処置中に、または処置の最後に、髄核強化材料、あるいは他の生物学的または生体適合性のある材料を導入するために使用される。いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上の管腔は、ある部位の組織を加熱または冷却することを支援するために、その部位に流体または他の材料を送出するために使用される。
【0058】
好ましい実施形態に関連して本発明を特に図示し説明してきたが、添付の特許請求の範囲が含んでいる本発明の範囲を逸脱せずに、形態と詳細とを様々に変更してもよいことを、当業者は理解するだろう。さらに、いくつかの実施形態において説明したステップを連続してまたは開示した順番で行なわなくもよいことを、当業者は理解するだろう。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1A〜図1Cは、円板の解剖学的構造を示す。図1Aおよび図1Bは、機能的な脊椎単位の一般的な解剖学的構造を示す。図1Aは、機能的な脊椎単位の横断面図である。図1Bは、矢状断面図である。図1Cは、線維輪に欠損がある同じ機能的な脊椎単位の図であって、線維輪の欠損は、線維輪切開の実施の際におけるように医原性によって生じる場合があるか、または自然に生じる場合がある。
【図2】図2A〜図2Dは、本発明の一実施形態に係る送出装置および要素の正面図である。
【図3】図3A〜図3Eは、送出装置の実施形態の図である。図3Aは、本発明の一実施形態に係る別の送出装置の等角図である。図3Bは、溝が形成されたカニューレ遠位端において所定位置で折りたたまれたインプラントを装填した上記の送出装置の等角図である。図3Cは、広げた形態のインプラントを装填した上記の送出装置の等角図である。図3Dは、折りたたんだインプラントを装填した送出装置の遠位端の部分等角図である。図3Eは、インプラント連結部材を示す、装填解除した送出装置の遠位端の部分断面図である。
【図4】図4A〜図4Bは、円板の複数の状態を示す図である。図4Aは、椎間円板の後線維輪の欠損を示す機能的な脊椎単位の側面図である。図4Bは、送出装置を円板内に挿入したところを示す、機能的な脊椎単位の側面図である。
【図5】図5A〜図5Gは、本発明の一実施形態に係るインプラントを送出する1つの方法を示している。図5Aは、円板内に送出装置を挿入した、椎間板の断面の軸方向の図である。
【図6】線維輪の後方に沿って配置され欠損に対して埋め込まれたインプラントを示す椎間板の断面の軸方向の図である。
【図7】図7A〜図7Dは、インプラントの複数の状態を示している。図7Aは、本発明の種々の実施形態と共に使用し得る、2つの軸線に沿って押し縮め得るインプラントを示す。図7Bは、インプラント、および横方向の延長部または安定化部の(埋め込んだ方向において脊椎の上方−下方の軸線に沿って見えるような)平面図である。図7Cは、カニューレ内へ装填しやすくするために、アコーディオン式に折りたたむかまたは押し縮められる同じインプラントを示す。図7Dは、その長さに沿った陥凹部および延長部を有する、本発明のいくつかの実施形態とともに使用するのに適する別のインプラントの等角図である。





















【特許請求の範囲】
【請求項1】
椎間円板内にインプラントを送出し位置決めする方法であって、
カニューレを深度固定部に連結するステップであって、前記カニューレは、インプラントに連結された前進器に滑動可能に係合され、前記インプラントは、1つまたはそれ以上の軸線に沿って押し縮められた外形になるように作動し得る、前記準備ステップと、
第1の軸線に沿って前記インプラントを押し縮めるステップと、
前記カニューレを椎間円板内に挿入するステップと、
椎間円板の外側の面に隣接した位置に前記深度固定部を配置し、前記位置に対して前記インプラントを送出するステップと、
線維輪の最も内側の面を越えて前記インプラントが配置されるように、前記カニューレを位置決めするステップと、
約80度から約120度の範囲でインプラントが回転するように、前記カニューレを回転させるステップと、
前記インプラントが最初に展開するように、前記カニューレを後退させるステップと、
前記インプラントがさらに展開するように、1つまたはそれ以上の展開器を前進させるステップと、
前記インプラントが実質的に完全に展開するように、前記カニューレを前進させるステップと、
前記前進器から前記インプラントを連結解除するステップと、
椎間円板から前記カニューレおよび前記前進器を取り外すステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記インプラントを押し縮めるステップは、前記インプラントを折りたたむステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インプラントを展開するステップは、前記インプラントを広げるステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記インプラントは、バリアまたはパッチである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
欠損または医原性の孔から前記インプラントを挿入するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
椎間円板内にインプラントを送出する方法であって、
1つまたはそれ以上の軸線に沿って押し縮められた外形になり得るインプラントを準備するステップと、
第1の軸線に沿って前記インプラントを押し縮めるステップと、
第2の軸線に沿って、線維輪の層板のうち最も内側の層板を越えて前記インプラントを椎間円板内に挿入するステップと、
前記第2の軸線に垂直な軸線周りに前記インプラントを回転させるステップと、
前記インプラントを押し縮められた外形から展開した外形へ変形させ得るステップと、
を含む方法。
【請求項7】
椎間円板内にインプラントを送出する方法であって、
長いインプラント前進器が長いスリーブ内にまたはスリーブに沿って通される送出装置を準備するステップであって、前記前進器は、解放可能にインプラントに連結され、前記インプラントは、前記スリーブの遠位端において前記スリーブ内に押し縮められる準備ステップと、
第1の軸線に沿って椎間円板内に前記スリーブの前記遠位端を前進させるステップと、
前記前進器を回転させるステップと、
前記インプラントが復元するように、前記スリーブから前記インプラントを解放するステップと、
前記前進器から前記インプラントを取り外すステップと、
を含む方法。
【請求項8】
椎間円板の線維輪に空隙を形成する欠損または医原性の孔を有する椎間円板内にインプラントを送出する方法であって、
第1および第2の軸線を有し押し縮め可能なインプラントを第1の軸線に沿って押し縮めるステップと、
押し縮めたインプラントの短軸線が、前記空隙の最大寸法より小さい外形を提供するように前記インプラントを方向付けるステップと、
前記欠損または医原性の孔を越えて前記インプラントを挿入するステップと、
前記インプラントを時計回りまたは反時計回りに約90度回転させるステップと、
前記インプラントを展開しまたは広げ得るステップと、
線維輪の内側の面に対して前記インプラントの少なくとも一部分を後退させるステップと、
を含む方法。
【請求項9】
椎間円板の線維輪の最も内側の面に沿って椎間円板内にインプラントを送出する方法であって、
線維輪の最も内側の面を越えて椎間円板内に前記インプラントを挿入するステップと、
線維輪の最も内側の面へ前記インプラントを後退させるステップと、
前記インプラントが線維輪の最も内側の面に沿って外側に前進するように、前記面に対して前記インプラントの少なくとも一部分を撓ませるステップと、
を含む方法。
【請求項10】
前記インプラントを展開するステップをさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記インプラントを同時に後退させ撓ませるステップをさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項12】
同期式に、前記インプラントを同時に後退させ撓ませるステップをさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記インプラントを回転させるステップをさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項14】
インプラントを椎間円板内に送出し位置決めする装置であって、
近位端および遠位端を有するカニューレであって、前記遠位端が、1つまたはそれ以上の展開器を含み、当該展開器は、椎間円板の線維輪の最も内側の層板を越えて配置されたインプラントを展開するように作動し得る前記カニューレと、
近位端および遠位端を有し、前記カニューレ内に少なくとも部分的に配置される前進器と、
前記前進器の遠位端は、連結機構を備え、前記連結機構の少なくとも一部分は、前記前進器に連結され、前記連結機構の少なくとも一部分は、前記インプラントに連結される装置。
【請求項15】
椎間円板内における移動を制限しガイドする深度固定部をさらに備える請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記深度固定部は、前記カニューレの深度を維持しながら回転し得るように、前記カニューレに回転可能に連結される請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記インプラントは、バリアまたはパッチである請求項14に記載の装置。
【請求項18】
前記インプラントは、最初に折り曲げた形態にされる請求項14に記載の装置。
【請求項19】
前記1つまたはそれ以上の展開器は、前記インプラントを広げるように作動し得る請求項14に記載の装置。


【図6】
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【公表番号】特表2007−515988(P2007−515988A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517487(P2006−517487)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/019811
【国際公開番号】WO2004/112584
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(502057511)イントリンジック セラピューティックス インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】