説明

検体トレー

【課題】検体トレーへの検体容器の設置が容易であるとともに、検体トレーを傾けた場合にも、検体容器の脱落を防止できる検体トレーを提供することにある。
【解決手段】検体トレー1は、枠体1FRと、枠体の上部に固定されると共に検体容器の直径よりも大きな直径の穴を有する上面部1Uと、枠体の内部中央に固定されると共に検体容器の直径よりも小さな直径の穴を有する中面部1Mとを有する。レバー7からなる検出手段は、検体トレー1の下部の一部が設置面から離れたことを検出する。検出手段により、検体トレーの下部の一部が設置面から離れたことが検出されると、パッド5とバネ9からなる保持手段は、検体容器を保持し、検体トレーの下部が設置面に設置されたことが検出されると、検体容器の保持を解放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体容器を保持し保管する検体トレーに係り、特に、検体処理システムの分類処理モジュールにより分類された検体容器を搭載する好適な検体トレーに関する。
【背景技術】
【0002】
検体処理システムは、血液や尿などの検体サンプルの分析を行う行う自動分析システムと、検体の前処理を行う前処理システムとから構成される。前処理システムには、検査のために採取した血液や尿などの検体を遠心分離や分注処理、ラベリング処理などを行う各モジュールを備えている。前処理システムの各モジュールの間、また、前処理システムと自動分析システムの間では、検体容器はサンプルラックにより保持され、検体搬送ラインにより搬送される。一般に一つのサンプルラックには、複数の検体容器が保持されている(例えば、特許文献1の図4参照)。
【0003】
また、前処理システムの中には、前処理や自動分析が終了し、再検査まで一定期間保管される検体容器を、その保管期間に応じて分類する分類処理モジュールが備えられている。分類処理モジュールでは、サンプルラックにより搬送されてきた複数本の検体容器(例えば、5本の検体容器)を、それぞれ保管期間に応じて、検体トレーに移し替える。保管期間は、例えば、1週間,2週間等何種類が予め決められている。検体トレーに分類された検体容器は、保管期間ごとにまとめて、冷蔵庫に移動され、保管される。そのため、検体トレーは一時保管用なので搬送ラックに比べると搭載できる検体容器の量は多く、一般には、一つの検体トレーには、20本から数十本の検体容器を保持できるようになっている。
【0004】
各検体トレーには、検体トレーIDであるバーコードのラベルが貼り付けられている。また、検体トレーの穴の位置により、検体保持位置の情報が与えられる。再検査が必要になると、検体トレーIDとポジションIDを用いて、再検査の必要な検体容器を取り出され、再検査に回される。なお、再検査が行われる検体は、ごく一部であり、他の多数の検体は、所定の保管期間が経過すると、廃棄される。
【0005】
ここで、従来の検体トレーでは、トレーの上面に設けた複数の穴に、それぞれ検体容器を単に挿入するだけで保持する構造が一般的である。これは、分類処理モジュールで、分類された検体容器を穴に挿入するのが容易であるし、また、まとめて廃棄する際にも便利だからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−20194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このように、単にトレーの上面に設けた複数の穴に検体容器を挿入するだけの構造では、検体トレーを分類処理モジュールから冷蔵庫に移動する際に、誤って検体トレーを傾けると、検体容器が検体トレーから脱落する場合がある。検体容器が検体トレーから脱落すると、検体容器を搭載していた検体トレーの穴の位置が不明となり、検体容器のIDを失うという問題が生じる。この問題を回避する方策として,例えば、検体容器に認識用のラベルを貼る方法も考えられるが、そのためにはラベルを貼り付ける装置が必要となり、システムが大掛かりになる。
【0008】
本発明の目的は、検体トレーへの検体容器の設置が容易であるとともに、検体トレーを傾けた場合にも、検体容器の脱落を防止できる検体トレーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、枠体と、該枠体の上部に固定されると共に検体容器の直径よりも大きな直径の穴を有する上面部と、前記枠体の内部中央に固定されると共に検体容器の直径よりも小さな直径の穴を有する中面部とを有する検体トレーであって、前記検体トレーの下部の一部が設置面から離れたことを検出する検出手段と、該検出手段により、前記検体トレーの下部の一部が設置面から離れたことが検出されると、前記検体容器を保持し、前記検体トレーの下部が設置面に設置されたことが検出されると、前記検体容器の保持を解放する保持手段とを備えるようにしたものである。
かかる構成により、検体トレーへの検体容器の設置が容易であるとともに、検体トレーを傾けた場合にも、検体容器の脱落を防止できるものとなる。
【0010】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記検出手段は、前記検体トレーの下部の一部が設置面から離れた状態において、前記検体トレーの枠体の下部から突出するように配置されたレバーからなり、前記保持手段は、前記検体トレーに載置された検体容器の側面に押し付けられるパッドと、該パッドを前記検体容器に押し付ける方向に付勢力を有するバネとからなり、前記レバーと、前記パッドとがリンク式のアームにより接続されているものである。
【0011】
(3)上記(1)において、好ましくは、該検出手段による検出結果に応じて、前記保持手段は、前記検体トレーに保持された複数の前記検体容器に対して、一括して、保持の実行及び保持の解放を行うようにしたものである。
【0012】
(4)上記(3)において、好ましくは、前記検出手段は、手動操作により、前記検体トレーの下部の一部が設置面から離れたことが検出される状態に移行できるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、検体トレーへの検体容器の設置が容易であるとともに、検体トレーを傾けた場合にも、検体容器の脱落を防止できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態による検体トレーの構成を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態による検体トレーの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1及び図2を用いて、本発明の一実施形態による検体トレーの構成及び動作について説明する。
図1及び図2は、本発明の一実施形態による検体トレーの構成を示す断面図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の検体トレー1は、互いに固定された右側面部1Rと、左側面部1Lと、正面側面部と、背面側面部とからなる枠体1FRと、枠体1FRに固定された上面部1Uと中面部1Mとを備えている。これらを構成する各部材は、例えば、アクリル樹脂製の厚さ数mmの長方形の板材である。
【0017】
正面側面部は、右側面部1Rと左側面部1Lとの手前側に位置している。背面側面部は、右側面部1Rと左側面部1Lとの奥側に位置している。これらの4つの側面部の各辺を接着剤により固定することで、平面断面形状は長方形で、筒状の枠体1FRが構成される。
【0018】
上面部1Uは、枠体1FRの上面に接着剤により固定されており、箱状体を構成する。なお、枠体1FRの底部には、板材は固定されておらず、開放されている。中面部1Mは、枠体1FRの内部に接着剤により固定されている。
【0019】
上面部1Uは、穴1U−Hを備えている。穴1U−Hの直径は、検体トレー1により保持される検体容器4の直径よりも大きくなっている。また、中面部1Mは、穴1M−Hを備えている。穴1M−Hは、穴1U−Hに対応する位置に設けられている。穴1M−Hの直径は、検体トレー1により保持される検体容器4の直径よりも小さくなっている。
【0020】
検体容器4は、円筒状で、底部が半球状となっている。検体容器4としては、例えば、ガラス製の試験管等である。検体容器4は、上面部1Uの穴1U−Hから検体トレー1の内部に挿入され、その下端は、中面部1Mの穴1M−Hにより位置決めされ、支持される。
【0021】
なお、図示の状態では、検体容器4は1個のみを図示しているが、実際には、検体トレー1には複数の検体容器が保持可能である。そのために、上面部1Uには、図示の奥方向に複数の穴1U−H(例えば、20個の穴)が形成され、また、中面部1Mには、図示の奥方向に複数の穴1M−H(例えば、20個の穴)が形成されている。これにより、一つの検体トレー1により、例えば、20個の検体容器を保持する事が可能である。また、図示の左右方向には1個の検体容器のみを図示しているが、図示の左右方向に複数列の検体容器を保持することもできる。そのためには、上面部1Uには、図示の左右方向に複数の穴1U−H(例えば、2個の穴,3個の穴,4個の穴)が形成され、また、中面部1Mには、図示の左右方向に複数の穴1M−H(例えば、2個の穴,3個の穴,4個の穴)が形成されている。これにより、検体トレー1には、20個或いは、40個或いは、60個或いは、80個の検体容器を保持可能である。
【0022】
また、検体トレー1の例えば手前側面部には、バーコードの印刷されたラベルが貼り付けられている。このラベルのバーコードが、個々の検体容器を特定する検体トレーIDとなる。また、上面部1U及び中面部1Mに、それぞれ、4行20列の穴が形成されている場合には、それぞれの穴の位置を示す行列が、検体容器を保持するポジションIDとなる。
【0023】
さらに、検体トレー1の枠体1FRの内部には、パッド5と、リンク式のアーム6と、レバー7と、バネ9が備えられている。
【0024】
リンク式のアーム6は、L字形状である。アーム6は、L字の角部を支点8として、矢印R1,R2方向に回動可能である。アーム6の一方の端部には、パッド5が取り付けられている。アーム6の他方の端部には、レバー7が取り付けられている。アーム6の支点と、パッド5の取り付け部の間には、バネ9の一方の端部が取り付けられている。バネ9の他方の端部は、検体トレー1の左側面部1Lに取り付けられている。バネ7は、図2に示すように、矢印F2方向に付勢力を与える。
【0025】
図1に示す状態では、検体トレー1の枠体1FRの下部は、設置面10の上に設置されている。ここで、設置面10とは、分類処理モジュールの内部の検体トレー1の保持面や、冷蔵庫の検体トレー1の保持面である。図1に示す状態では、レバー7の端部は、設置面10に当接している。すなわち、検体トレー1が分類処理モジュールの内部に保持されていたり、冷蔵庫に保持されている状態では、レバー7の端部は、設置面10に接触している。この状態では、レバー7は、設置面10からの力F1を受けて、バネ9の付勢力に抗して、アーム6を矢印R1方向に回動する。その結果、図1に示すように、パッド5は、検体容器4の側面から離れた位置に移動する。
【0026】
前述したように、図1に示す状態は、検体トレー1が分類処理モジュールの内部に保持されている状態であるので、この状態で、分類処理モジュールが分類した検体容器を検体トレー1に載置しようとすると、検体トレー1の上面部1Uの穴いU−Hから挿入された検体容器は、パッド5に邪魔されることなく、中面部1Mの穴1M−Hの位置まで挿入可能であり、検体トレー1への検体容器の設置は容易である。
【0027】
次に、図2に示す状態は、例えば、検体トレー1を分類処理モジュールから冷蔵庫に移動する場合等であり、検体トレー1の下面が設置面10から離れた状態である。この状態では、レバー7は設置面10との係合が解かれている。前述のように、アーム6はバネ9により、矢印F2方向の付勢力が与えられているため、アーム6は矢印R2方向に回動する。その結果、レバー7は、検体トレー1の下部から突出するとともに、パッド5も矢印R2方向に回動し、検体容器6の側面の中程に押し付けられる。そのため、検体トレー1を分類処理モジュールから冷蔵庫に移動する途中で、検体トレー1を傾けたとしても、検体容器4は、パッド5により保持されており、検体容器の脱落を防止できるものである。
【0028】
なお、以上の説明は、検体トレー1を持ち上げた後、傾けた場合である、例えば、図1に示す状態で、地震等により傾けた場合であっても、検体トレー1の下部の一部が設置面10から離れ、レバー7と設置面10との係合が解かれると、同様に、パッド5が検体容器4の側面に押し付けられ、検体容器の脱落を防止できる。
【0029】
ここで、パッド5の材料としては、例えば、ゴム材を用いる。検体容器4が試験管のようにガラス製の場合、ゴム製のパッド5を用いることで、検体容器4とパッド5との間の摩擦力を大きくでき、検体容器の脱落をより効果的に防止できる。
【0030】
また、前述したように、一つの検体トレー1により、例えば、図示の奥行き方向に20個の検体容器を保持する事が可能である場合、パッド5と、リンク式のアーム6と、レバー7と、バネ9とはそれぞれ一つずつでよいものである。この場合、パッド5としては、図示の奥行き方向に延在する棒状のパッドを用いる。これにより、一つのパッドで、複数個の検体容器を同時に保持できる。バネ9は、1個のみで十分であるが、複数個の検体容器を同時に保持する場合、パッド5による検体容器4に対する押圧力にばらつきが生じる。もし、押圧力が最大の箇所と最小の箇所との押圧力の差が大きく、最小の押圧力の箇所での検体容器4の保持力が十分でない場合には、2つや3つのバネを用いるようにすることもできる。
【0031】
また、図示の左右方向に複数列の検体容器を保持する構成の場合、パッド5は複数列に対応した個数とするが、リンク式のアーム6と、レバー7と、バネ9とはそれぞれ一つでよいものである。
【0032】
次に、保管期間の過ぎた複数の検体容器4を同時に廃棄したい場合には、検体トレー1を持ち上げ、廃棄容器の上で傾けた後、レバー7を指で操作して、図1に示した矢印F1方向の力を加えることで、パッド5と検体容器4との当接が解かれ、検体容器を容易に廃棄することができる。
【0033】
以上説明したレバー7は、検体トレー1が設置面10から持ち上げられたり、設置面10から傾いた状態では、すなわち、検体トレー1の下部の一部が設置面から離れた状態では、検体トレー1の下部から突出するように配置されている。そして、検体トレー1が設置面10に載置されると、レバー7が設置面10に接触して、設置面10に載置されたことを検出する。また、検体トレー1が設置面から持ち上げられたり、設置面10から傾くと、レバー7と設置面10の係合が解かれて、それらの状態を検出する。すなわち、レバー7は、設置面10と検体トレー1の下部との接触・非接触を機械的に検出する検出手段として用いられている。そして、この検出手段による設置面10と検体トレー1の下部との接触が検出されると、パッド5及びバネ9により構成される検体容器の保持手段による検体容器の保持が開放され、また、非接触が検出されると、パッド5及びバネ9により構成される検体容器の保持手段による検体容器の保持が実行される。
【0034】
また、レバー7は、保管期間の経過した検体容器を同時に廃棄する場合の、廃棄を容易にするためにも用いられる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によれば、検体トレーを分類処理モジュールにセットして、搬送ラックから検体容器を移し替える時は、保持が解放され、検体容器の挿入が容易となる。また、分類処理モジュールから冷蔵庫へ検体トレーを移す時や、誤って検体トレーを転倒させてしまった時は、保持が実行され、検体容器のIDを失う事が避けられる。検体容器を廃棄する時は、指でレバーを押して保持を解放にすることで、検体トレーから容易に検体容器をリリースすることができる。
【符号の説明】
【0036】
1…検体トレー
1U−H…上部穴
1M−H…下部穴
4…検体容器
5…パッド
6…アーム
7…レバー
8…支点
9…バネ
10…設置面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、該枠体の上部に固定されると共に検体容器の直径よりも大きな直径の穴を有する上面部と、前記枠体の内部中央に固定されると共に検体容器の直径よりも小さな直径の穴を有する中面部とを有する検体トレーであって、
前記検体トレーの下部の一部が設置面から離れたことを検出する検出手段と、
該検出手段により、前記検体トレーの下部の一部が設置面から離れたことが検出されると、前記検体容器を保持し、前記検体トレーの下部が設置面に設置されたことが検出されると、前記検体容器の保持を解放する保持手段とを備えることを特徴とする検体トレー。
【請求項2】
請求項1記載の検体トレーにおいて、
前記検出手段は、前記検体トレーの下部の一部が設置面から離れた状態において、前記検体トレーの枠体の下部から突出するように配置されたレバーからなり、
前記保持手段は、前記検体トレーに載置された検体容器の側面に押し付けられるパッドと、該パッドを前記検体容器に押し付ける方向に付勢力を有するバネとからなり、
前記レバーと、前記パッドとがリンク式のアームにより接続されていることを特徴とする検体トレー。
【請求項3】
請求項1記載の検体トレーにおいて、
該検出手段による検出結果に応じて、前記保持手段は、前記検体トレーに保持された複数の前記検体容器に対して、一括して、保持の実行及び保持の解放を行うことを特徴とする検体トレー。
【請求項4】
請求項3記載の検体トレーにおいて、
前記検出手段は、手動操作により、前記検体トレーの下部の一部が設置面から離れたことが検出される状態に移行できることを特徴とする検体トレー。

【図1】
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【図2】
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