説明

検体ラック移送装置

【課題】検体ラックを安定的に移送することが可能な検体ラック移送装置を提供する。
【解決手段】この移送ユニット7(検体ラック移送装置)は、10本の検体容器101を列状に並べて保持可能な検体ラック100を移送する移送ユニット7であって、検体ラック100に接触した状態で移動することにより検体ラック100を移送する爪部88および98と、爪部88および98の各々に対応して設けられ、対応する爪部88および98を移動させるための駆動部8aおよび9aと、駆動部8aおよび9aを制御し、爪部88と爪部98との位置関係を調整する位置関係調整処理を行うCPU7aとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体ラック移送装置に関し、特に、検体ラックに接触した状態で検体ラックを移送する複数の接触片を備えた検体ラック移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検体ラックに接触した状態で検体ラックを移送する複数の接触片を備えた検体ラック移送装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、架台(検体ラック)にそれぞれ接触した状態で架台を移送方向に移送することが可能な一対の爪(接触片)と、一対の爪を同時に移動させるための1つのステッピングモータと、ステッピングモータからの駆動力を一対の爪の各々に伝達する回転軸とを備える検体架台の供給装置(検体ラック移送装置)が開示されている。この特許文献1に記載された供給装置では、一対の爪は、架台の移送方向に対して直交する直線上に並んで配置されており、1つのステッピングモータの駆動力により同一方向に同一量だけ移動されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平2−49570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の供給装置では、一対の爪のうちのいずれか一方の爪の移動が障害物などにより阻害された際、架台の移送方向と直交する直線上に並んだ状態から一対の爪の位置関係がずれてしまい、架台を安定的に移動することが困難になる場合がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、本発明の1つの目的は、検体ラックを安定的に移送することが可能な検体ラック移送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による検体ラック移送装置は、複数の検体容器を列状に並べて保持可能な検体ラックを移送する検体ラック移送装置であって、検体ラックに接触した状態で移動することにより検体ラックを移送する複数の接触片と、複数の接触片の各々に対応して設けられ、対応する接触片を移動させるための複数の駆動部と、複数の駆動部を制御し、複数の接触片の位置関係を調整する位置関係調整処理を行う制御部とを備える。
【0008】
この発明の一の局面による検体ラック移送装置では、上記のように、制御部が複数の接触片の位置関係を調整する位置関係調整処理を行うことによって、複数の接触片の位置関係にずれが生じた場合であっても、人手を介することなく自動的に位置関係のずれを修復することができる。これにより、検体ラックを安定的に移送することができる。
【0009】
上記一の局面による検体ラック移送装置において、好ましくは、制御部は、位置関係調整処理を実行することにより、複数の接触片が、検体ラックが移送される方向に対して略直交する方向に並ぶように複数の接触片の位置関係を調整するように構成されている。
【0010】
上記一の局面による検体ラック移送装置において、好ましくは、複数の接触片を検出する検出部をさらに備え、制御部は、検出部による複数の接触片の検出結果に基づいて複数の駆動部を制御することにより、位置関係調整処理を行うように構成されている。このように構成すれば、制御部は、複数の接触片の位置関係を確実に調整することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、検出部は、検体ラックの移送が開始されるときに複数の接触片が配置される原点位置に複数の接触片が位置するか否かを検出するように構成されている。このように構成すれば、検出部において各接触片が検出された状態で移送処理を開始することができる。これにより、複数の接触片の位置関係が調整された状態で検体ラックを移送することができる。
【0012】
上記検出部をさらに備える検体ラック移送装置において、好ましくは、複数の接触片は、第1接触片と第2接触片とを含み、複数の駆動部は、第1接触片に対応する第1駆動部と第2接触片に対応する第2駆動部とを含み、検出部は、第1接触片が第1の位置にあるときに第1接触片を検出する第1検出部と、第2接触片が第1の位置と所定の位置関係にある第2の位置にあるときに第2接触片を検出する第2検出部とを含む。
【0013】
上記複数の駆動部が第1駆動部と第2駆動部とを含む検体ラック移送装置において、好ましくは、制御部は、第1の位置に向かって第1接触片を移動させ、第1接触片が第1検出部により検出された際に、第1接触片の移動を停止させるように第1駆動部を制御する処理と、第2の位置に向かって第2接触片を移動させ、第2接触片が第2検出部により検出された際に、第2接触片の移動を停止させるように第2駆動部を制御する処理とを行うように構成されている。このように構成すれば、各検出部によって対応する接触片が検出されるまでそれぞれの駆動部を駆動させるだけで、複数の接触片の位置関係が調整される。したがって、複数の接触片の位置関係を容易に調整することができる。
【0014】
上記制御部が第1駆動部を制御する処理と第2駆動部を制御する処理とを行う検体ラック移送装置において、好ましくは、制御部は、第1接触片が第1検出部により検出される時点において第2接触片が第2検出部により検出されていない場合に、第2接触片の移動を継続させ、その後、第2接触片が第2検出部により検出されて第2接触片の移動を停止させることによって、第1接触片と第2接触片との位置関係を調整するように構成されている。
【0015】
上記制御部が第1駆動部を制御する処理と第2駆動部を制御する処理とを行う検体ラック移送装置において、好ましくは、制御部は、第1駆動部を制御する処理と第2駆動部を制御する処理とを並行して行うように構成されている。このように構成すれば、第1駆動部を制御する処理と第2駆動部を制御する処理とが同時に行われるので、より迅速に、位置関係調整処理を行うことができる。
【0016】
上記一の局面による検体ラック移送装置において、好ましくは、制御部は、検体ラックを移送する移送処理と、位置関係調整処理とを交互に実行するように構成されている。このように構成すれば、複数の接触片の位置関係がずれた場合であっても、次の移送処理を行う前に位置関係調整処理が必ず行われるので、次の移送処理を行う前に複数の接触片の位置関係のずれの有無を確実に認識することができる。これにより、検体ラックが不安定な状態で移送されるのをより抑制することができる。
【0017】
上記一の局面による検体ラック移送装置において、好ましくは、複数の接触片の各々に対応して設けられ、互いに略平行になるように配置された複数のガイド部をさらに備え、複数の接触片は、対応するガイド部に沿って互いに略平行に移動するように構成されている。このように構成すれば、複数の接触片が対応するガイド部に沿って互いに平行な軌道上を移動するので、検体ラックに加えられる力の作用点が移送方向に沿って変化しないようにすることができる。これにより、検体ラックをより安定的に移送することができる。
【0018】
上記一の局面による検体ラック移送装置において、好ましくは、複数の駆動部の各々は、駆動源と、駆動源からの駆動力により回転するプーリと、駆動部に対応する接触片が固定され、プーリの回転によって駆動されるタイミングベルトとを含む。このように構成すれば、駆動源、プーリおよびタイミングベルトを含む複数組の駆動機構により、容易に複数の接触片を独立して移動させることができる。
【0019】
上記一の局面による検体ラック移送装置において、好ましくは、検体ラックが載置されるテーブルと、テーブルに載置された検体ラックを検知する第1ラック検知部とをさらに備え、制御部は、第1ラック検知部により検体ラックが検知された際に、検体ラックを移送する移送処理を行うように構成されている。このように構成すれば、検体ラックがテーブル上に載置されていない状態では駆動部が駆動されないので、駆動部による不必要な駆動を抑制することができる。
【0020】
この場合、好ましくは、テーブルは、検体ラックが移送される方向に沿って延びるように形成された凹部と、凹部の両側に検体ラックが移送される方向に沿って延びるように形成され、検体ラックの両端部近傍をスライド移動可能に支持する一対のラック支持部とを含む。このように構成すれば、曲げ応力などが加えられることに起因して、テーブルが上方に突出しながら凸状態に撓んだ場合であっても、凹部が設けられている部分では、テーブルと検体ラックとが接触するのが抑制されて凹部の両端の一対のラック支持部において検体ラックを安定して支持することができる。これにより、テーブルが凸状態に撓んだ際に凸部の頂点において検体ラックを支持する場合と異なり、検体ラックを安定的に移送することができる。
【0021】
上記一の局面による検体ラック移送装置において、好ましくは、検体ラックが移送される移送先に位置する検体ラックを検知する第2ラック検知部をさらに備え、制御部は、第2ラック検知部により検体ラックが検知されなくなった際に、検体ラックを移送する移送処理を行うように構成されている。このように構成すれば、移送先に検体ラックが残された状態で新たな検体ラックが移送されるのを抑制することができるので、移送先に検体ラックが残された状態で新たな検体ラックが移送されることに起因して検体ラック同士が衝突するのを抑制することができる。これにより、検体ラック同士の衝突に起因して複数の接触片の位置関係がずれるのを抑制することができる。
【0022】
さらに、この発明の異なる一の局面による検体ラック移送装置は、複数の検体容器を列状に並べて保持可能な検体ラックを移送する検体ラック移送装置であって、検体ラックに接触した状態で移動することにより検体ラックを移送する複数の接触片と、複数の接触片を移動させる駆動部と、複数の接触片を検出する検出部と、検出部による検出結果に基づいて、複数の接触片が所定の位置関係にあるか否かを判定し、所定の位置関係にないと判定したとき、ユーザへの通知を実行する制御部とを備える。このように構成すれば、複数の接触片の位置関係にずれが生じていることをユーザに通知することができるので、ユーザによる迅速な修復が期待できる。
【0023】
さらに、この発明の異なる一の局面による検体ラック移送装置は、複数の検体容器を列状に並べて保持可能な検体ラックを移送する検体ラック移送装置であって、検体ラックに接触した状態で移動することにより検体ラックを移送する複数の接触片と、複数の接触片の各々に対応して設けられ、対応する接触片を移動させるための複数の駆動部とを備える。このように構成すれば、複数の接触片のそれぞれを別々に駆動させることができるので、複数の接触片の位置関係にずれが生じたときでも容易に位置関係のずれを修復することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態による検体処理システムの全体構成を示した模式図である。
【図2】本発明の一実施形態による検体処理システムの構成を示したブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態による移送ユニットの全体構成を示した斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態による移送ユニットの全体構成を示した平面図である。
【図5】図4の400−400線に沿った検体ラック周辺を示した断面図である。
【図6】本発明の一実施形態による移送ユニットのテーブルを取り除いた状態を示した平面図である。
【図7】本発明の一実施形態による原点位置周辺の収容部を示した斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態による原点位置に位置するY2側の爪部周辺を示した斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態による原点位置に位置するY1側の爪部周辺を示した斜視図である。
【図10】本発明の一実施形態による爪部を示した斜視図である。
【図11】本発明の一実施形態による第1横送り部周辺を示した斜視図である。
【図12】本発明の一実施形態による移送ユニットの移送動作処理を示すフローチャートである。
【図13】本発明の一実施形態による移送動作開始時の状態を示した模式図である。
【図14】本発明の一実施形態による移送動作中に爪部の位置関係がずれた状態を示した模式図である。
【図15】本発明の一実施形態による移送ユニットの原点復帰処理を示すフローチャートである。
【図16】本発明の一実施形態による爪部の一方が原点位置に戻った状態を示した模式図である。
【図17】本発明の一実施形態による爪部が共に原点位置に復帰した状態を示した模式図である。
【図18】本発明の一実施形態の第1変形例による爪部の一方が原点位置に戻った状態を示した模式図である。
【図19】本発明の一実施形態の第1変形例による爪部が共に原点位置に復帰した状態を示した模式図である。
【図20】本発明の一実施形態の第2変形例による爪部の位置関係調整処理を示した模式図である。
【図21】本発明の一実施形態の第2変形例による爪部の位置関係調整処理が終了した状態を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
まず、図1〜図11を参照して、本発明の一実施形態による検体処理システム1の構成について説明する。
【0027】
本発明の一実施形態による検体処理システム1は、検体ラック100に載置された真空採血管からなる検体容器101内の血液などの検体に対する種々の項目測定を行うことが可能なように構成されている。また、種々の項目測定は、4種類の測定装置4a〜4dにおいて順次行われる。検体容器101(図3参照)は、検体ラック100により保持された状態で、検体処理システム1内を移送される。
【0028】
具体的には、検体処理システム1は、図1および図2に示すように、検体ラック100を移送する移送機構2と、移送機構2における検体ラック100の移送を制御する移送コントローラ3と、移送機構2において移送される検体ラック100から検体容器100に対して測定を行う測定装置4a〜4dと、測定装置4a〜4dの各々を制御する分析コントローラ5と、移送コントローラ3および分析コントローラ5に電気的に接続された制御装置6とを備えている。なお、移送コントローラ3、分析コントローラ5および制御装置6は、各々がPC(パーソナルコンピュータ)により構成されている。移送コントローラ3、分析コントローラ5および制御装置6の各々には、CPU3a、5aおよび6a(図2参照)と、表示部3b、5bおよび6bと、入力部3c、5cおよび6cとがそれぞれ設けられている。
【0029】
移送機構2は、図1に示すように、Y1側の端部に配置された収容ユニット20と、収容ユニット20のY2側に隣接し、検体ラック100がユーザによって載置される移送ユニット7(検体ラック移送装置)と、移送ユニット7のY2側に隣接し、移送ユニット7から検体ラック100が移送される移送ユニット21とを備えている。
【0030】
また、移送機構2は、移送ユニット21のY2側に隣接し、測定装置4aに検体ラック100を移送することが可能な移送ユニット22と、移送ユニット22のY2側に隣接し、測定装置4bに検体ラック100を移送することが可能な移送ユニット23とを備えている。また、移送機構2は、移送ユニット23のY2側に隣接し、測定装置4cに検体ラック100を移送することが可能な移送ユニット24と、移送ユニット24のY2側に隣接し、測定装置4dに検体ラック100を移送することが可能な移送ユニット25とを備えている。
【0031】
また、移送機構2では、移送コントローラ3のCPU3aによって、移送ユニット7に載置された検体ラック100は、X1側の端部近傍において移送ユニット21に移送された後、移送ユニット21のX2側において移送ユニット22に移送される。そして、検体ラック100は、制御装置6により指定された測定装置4a〜4dにおいて測定が行われるように、移送ユニット22〜25によって所定の位置に移送されるように構成されている。そして、測定が終了した検体ラック100は、移送ユニット22〜25、移送ユニット21および移送ユニット7の各々のX2側の端部近傍に形成された移送路を通って、収容ユニット20のX2側の端部に移送される。そして最終的に、検体ラック100は、収容ユニット20のX1側に移送される。すなわち、検体ラック100は、図1中に示す矢印の方向に沿って移送される。
【0032】
また、移送ユニット21のX1側の端部近傍で、かつ、移送ユニット7から検体ラック100が移送される横送り領域21aのY2側には、ラック検出センサ21bが設けられている。このラック検出センサ21bは、図2に示すように、横送り領域21aに検体ラック100が存在するか否かを検出して、移送コントローラ3に検出結果を送信するように構成されている。
【0033】
移送ユニット7は、図3および図4に示すように、検体ラック100を移送方向(X1方向)に移送可能なように構成されている。また、移送ユニット7は、検体ラック100が載置されるテーブル70と、検体ラック100をY2側に移送(横送り)することによって、移送ユニット21(図1参照)に検体ラック100を移送する第1横送り部71と、検体ラック100をY1側に移送(横送り)することによって、収容ユニット20(図1参照)に検体ラック100を移送する第2横送り部72(図3参照)とを備えている。
【0034】
第1横送り部71(図3参照)は、図2に示すように、検体ラック100をY2側に移送(横送り)するためのモータ71bを有しているとともに、第2横送り部72(図3参照)は、検体ラック100をY1側に移送(横送り)するためのモータ72aを有している。なお、モータ71bおよび72aは、図2に示すように、移送ユニット7の全体の制御を司るCPU7aに接続されている。
【0035】
また、第1横送り部71は、図3に示すように、テーブル70のX1側の端部近傍に設けられ、載置された検体ラック100をY方向に移送可能なベルトコンベアからなる移送部71aを含んでいる。
【0036】
また、テーブル70は、図3および図4に示すように、平面的に見て、X方向に延びる長辺を有する略長方形形状を有している。また、テーブル70には、テーブル70のX1側の端部からX2側の端部まで延びるように形成された凹部70aと、凹部70aに沿ってX方向に延びるラック支持面70bおよび70cとが設けられている。この凹部70aは、テーブル70のY方向の中央領域に形成されているとともに、ラック支持面70bおよび70cは、それぞれ、凹部70aのY方向のY1側およびY2側に形成されている。
【0037】
また、テーブル70には、図5に示すように、検体ラック100の後述する溝部100dに係合する係合部70dが設けられている。この係合部70dは、ラック支持面70bのY1側に形成されており、鉤状の断面形状を有している。
【0038】
また、テーブル70は、検体ラック100をX方向(図4参照)にスライド移送可能なように、ラック支持面70bおよび70cが検体ラック100の下面を支持するように構成されている。なお、凹部70aでは、検体ラック100の下面は支持されない。また、凹部70aは、後述する一対のテーブル支持部76(図6参照)によって下方から支持されている。
【0039】
また、検体ラック100は、図3および図4に示すように、平面的に見て、Y方向に延びる略長方形形状を有している。また、検体ラック100は、長手方向(Y方向)がテーブル70の短手方向(Y方向)に対応してテーブル70上に載置されるように構成されている。また、図5に示すように、検体ラック100には、検体容器101をそれぞれ保持する10箇所の保持部100aと、後述する2つの爪部88および98に接触する接触面100bと、後述する移送検知部材71c(図6参照)に接触する検出面100c(図4参考)と、Y2側の側面の下部に形成された溝部100dとが設けられている。10箇所の保持部100aは、Y方向に沿って列状に並ぶように形成されているとともに、上方から検体容器101を挿入可能なように構成されている。また、検体ラック100がテーブル70上に載置された際に、溝部100dにはテーブル70の係合部70dが嵌り込むように構成されている。これにより、検体ラック100の移送時に検体ラック100が上方向に外れてしまうのが抑制されている。また、図4に示すように、溝部100dと係合部70dとが係合するように検体ラック100がテーブル70上に載置された際に、接触面100bはX2側を向き、検出面100cはX1側を向く。
【0040】
また、移送ユニット7には、テーブル70上に載置された検体ラック100を検出するラック検出センサ73、74および75が配置されている。ラック検出センサ73、74および75は、それぞれ、発光部73a、74aおよび75aと、受光部73b、74bおよび75bとを有する。また、発光部73aおよび受光部73bは、共に、X2側の端部近傍においてY方向に延びる直線上に配置されている。これにより、ラック検出センサ73は、テーブル70の爪部88の原点位置A(図6参照)および爪部98の原点位置B(図6参照)近傍に載置された検体ラック100を検出することが可能なように構成されている。
【0041】
また、発光部74aは、受光部73bのX1側の近傍に配置されているとともに、受光部74bは、発光部73aのX1側に所定の距離だけ隔てられた位置に配置されている。これにより、ラック検出センサ74は、テーブル70のX1側に載置された検体ラック100を検出することが可能なように構成されている。また、発光部75aは、発光部73aのX1側の近傍に配置されているとともに、受光部75bは、テーブル70のX1側の端部近傍に配置されている。これにより、ラック検出センサ75は、テーブル70のX方向の中央部周辺およびX2側に載置された検体ラック100を検出することが可能なように構成されている。この結果、ラック検出センサ73、74および75によって、テーブル70に配置された検体ラック100が検出されるように構成されている。なお、図2に示すように、ラック検出センサ73、74および75は、CPU7aに接続されている。
【0042】
また、移送ユニット7の収容部7bには、図6に示すように、左側ラック移送機構8と、右側ラック移送機構9と、一対の原点センサ10および11と、テーブル70を保持する一対のテーブル支持部76とが配置されている。この一対のテーブル支持部76は、共に、板状の部材が曲げ加工されて形成されており、長手方向がY方向と略重なるように収容部7bの底面の中央部付近に固定されている。また、一対のテーブル支持部76の支柱76aは、図5に示すように、平坦面状に形成されており、下方からテーブル70の凹部70aを支持するように構成されている。
【0043】
また、図6に示すように、左側ラック移送機構8と右側ラック移送機構9とは、略同様の構成を有している。具体的には、左側ラック移送機構8は、ステッピングモータ80と、駆動プーリ81、伝動ベルト82、従動プーリ83、一対の巻き込みプーリ84、タイミングベルト85および一対の端部プーリ86から構成された駆動部8aと、ガイド軸87と、爪部88とを含んでいる。同様に、右側ラック移送機構9は、ステッピングモータ90、駆動プーリ91、伝動ベルト92、従動プーリ93、一対の巻き込みプーリ94、タイミングベルト95および一対の端部プーリ96から構成された駆動部9aと、ガイド軸97と、爪部98とを含んでいる。
【0044】
ここで、本実施形態では、CPU7aにより駆動部8aと駆動部9aとを互いに独立して駆動させることにより、爪部88と爪部98とは互いに独立して移動可能なように構成されている。また、爪部88は、X1側の原点位置AとX2側の移送部71aの近傍との間をX方向に延びるガイド軸87に沿って移動するとともに、爪部98は、X1側の原点位置BとX2側の移送部71aの近傍との間を爪部88に対して平行な状態を保ったまま、X方向に延びるガイド軸97に沿って移動するように構成されている。
【0045】
また、左側ラック移送機構8のステッピングモータ80、駆動プーリ81、伝動ベルト82、従動プーリ83および一対の巻き込みプーリ84は、共に、収容部7bのX2側に配置されている。また、右側ラック移送機構9のステッピングモータ90、駆動プーリ91、伝動ベルト92、従動プーリ93および一対の巻き込みプーリ94は、共に、収容部7bのX1側に配置されている。
【0046】
また、左側ラック移送機構8のタイミングベルト85およびガイド軸87は、共にX方向に延びた状態で収容部7bのY2側に配置されており、右側ラック移送機構9のタイミングベルト95およびガイド軸97は、共にX方向に延びた状態で収容部7bのY1側に配置されている。また、左側ラック移送機構8の一対の端部プーリ86は、収容部7bのY2側で、かつ、収容部7bのX方向の両端部近傍にそれぞれ配置されている。また、右側ラック移送機構9の一対の端部プーリ96は、収容部7bのY1側で、かつ、収容部7bのX方向の両端部近傍にそれぞれ配置されている。また、爪部88および98は、それぞれ、タイミングベルト85および95に固定されている。
【0047】
また、左側ラック移送機構8と右側ラック移送機構9とは互いに独立しているので、移送ユニット7には左側ラック移送機構8と右側ラック移送機構9とを接続するための部材が存在しない。これにより、一対のテーブル支持部76を収容部7bの底面の中央部付近に容易に配置することが可能である。
【0048】
また、ステッピングモータ80および90は、共にCPU7aから発信される所定のパルス周波数からなるパルス電力に同期するように構成されている。これにより、ステッピングモータ80および90は、駆動プーリ81および91を略同じ速度で回転させることによって、爪部88および98を略同じ速度でX方向に移動させることが可能なように構成されている。また、駆動プーリ81と従動プーリ83の上側プーリ83aとは、伝動ベルト82によって接続されているとともに、駆動プーリ91と従動プーリ93の上側プーリ93aとは、伝動ベルト92によって接続されている。
【0049】
また、図7に示すように、タイミングベルト85は、内側(Y1側)に位置する内側部分85aと、外側(Y2側)に位置する外側部分85bとから構成されている。この内側部分85aは、一対の巻き込みプーリ84によって、一部がX方向に延びる状態からY方向に曲げられるように構成されている。これにより、タイミングベルト85が従動プーリ83の下側プーリ83bによって駆動されるように構成されている。また、図6に示すように、内側部分85aと外側部分85bとは、X方向の両端部にそれぞれ設けられた一対の端部プーリ86を境に移動方向(X1方向およびX2方向)が逆方向になるように構成されている。
【0050】
また、タイミングベルト95は、内側(Y2側)に位置する内側部分95aと、外側(Y1側)に位置する外側部分95bとから構成されている。この内側部分95aは、一対の巻き込みプーリ94によって、一部がX方向に延びる状態からY方向に曲げられるように構成されている。これにより、タイミングベルト95が従動プーリ93の下側プーリ93bによって駆動されるように構成されている。また、内側部分95aと外側部分95bとは、X方向の両端部にそれぞれ設けられた一対の端部プーリ96を境に移動方向が逆方向になるように構成されている。また、タイミングベルト85および95は、略同じ速度で回転するステッピングモータ80および90によって、略同じ速度でX方向に移動可能なように構成されている。
【0051】
また、図8および図10に示すように、爪部88は、押出し爪88aと、押出し爪88aを回動可能に支持する軸部88bと、軸部88bに固定された固定板88cと、バネ部材88dと、Y方向に延びる板部材88eと、下部に設けられた固定部88fとを含む。この押出し爪88aは、X1側の先端部周辺がY方向に沿うように形成されている一方、X2側がY方向に対して傾斜するように設けられている。また、図3および図4に示すように、押出し爪88aは、テーブル70の上方でY1側に水平に突出するように配置されている。
【0052】
また、押出し爪88aは、軸部88bを回転軸として矢印C1方向に回転可能である一方、矢印C2方向には回転しないように構成されている。これにより、図4に示すように、検体ラック100をX1方向に移送する際においては、押出し爪88aはC2方向に回転しないため、押出し爪88aのX1側の先端部周辺が接触面100bに接触した状態でX1方向に検体ラック100を移送することが可能なように構成されている。一方、検体ラック100の移送方向(X1方向)とは逆のX2方向に爪部88が移動する際において、検体ラック100などの障害物が押出し爪88aに接触した場合であっても、押出し爪88aは矢印C1方向に回転することが可能である。これにより、押出し爪88aが障害物に接触して爪部88の移動が阻害されるのを抑制することが可能である。
【0053】
また、バネ部材88dは、固定板88cに一方端が固定されているとともに、板部材88eに他方端が固定されている。これにより、押出し爪88aが矢印C1方向に回転した場合であっても、押出し爪88aは、バネ部材88dの付勢力により元の位置に戻されるように構成されている。
【0054】
また、板部材88eのY1側の端部には、下方に向かって延びる遮光部188eが設けられている。この遮光部188eは、図8に示すように、原点センサ10の後述する検出部10aに位置することが可能なように構成されている。
【0055】
また、固定部88fには、軸孔188fとベルト保持部288fとが設けられている。また、軸孔188fにはガイド軸87が貫通しており、爪部88がガイド軸87に沿ってX方向に移動することが可能なように構成されている。また、ベルト保持部288fは、X方向から見てU字形状に形成されている。このU字形状の部分にタイミングベルト85の外側部分85bを挟み込んだ状態で、ベルト保持部288fの上部がネジ部材388fにより固定されることによって、外側部分85bに爪部88が固定されるように構成されている。
【0056】
また、図9および図10に示すように、爪部98は、押出し爪98aと、軸部98bと、固定板98cと、バネ部材98dと、板部材98eと、固定部98fとを含む。また、押出し爪98aは、軸部98bを回転軸として矢印D1方向に回転する一方、矢印D2方向には回転しないように構成されている。また、板部材98eのY2側の端部には、下方に曲げられるとともに、原点センサ11の後述する検出部11aに位置することが可能な遮光部198eが設けられている。また、固定部98fには、X方向に延びるガイド軸97に貫かれた軸孔198fと、タイミングベルト95の外側部分95bを挟み込むベルト保持部298fと、ベルト保持部298fの上部を固定するネジ部材398fとが設けられている。なお、この爪部98は、爪部88と略同様の構造を有しているので、詳しい説明は省略する。
【0057】
また、本実施形態では、図6および7に示すように、原点センサ10および11は、共に収容部7bのX1側の側面近傍に配置されている。また、原点センサ10は、検体ラック100の移送処理において、爪部88のX1方向への移動が開始される原点位置Aに配置されている。また、原点センサ11は、検体ラック100の移送処理において、爪部98のX1方向への移動が開始される原点位置Bに配置されている。さらに、原点センサ10および11は、移送方向(X1方向)と直交するY方向に延びる直線上に共に位置するように配置されている。
【0058】
また、原点センサ10および11は、それぞれ、検出部10aおよび11aを有している。この検出部10aおよび11aは、X方向から見て凹形状を有しており、Y方向の一方側から他方側に向かって検出光が出射される。これにより、図8および図9に示すように、遮光部188eが検出部10aに位置することにより検出部10aの検出光が遮られることによって、爪部88が原点位置Aに位置することが検出されるように構成されている。同様に、遮光部198eが検出部11aに位置することにより検出部11aの検出光が遮られることによって、爪部98が原点位置Bに位置することが検出されるように構成されている。なお、爪部88の原点位置Aと爪部98の原点位置Bとは、共に、検体ラック100の移送方向(X1方向)と直交するY方向に延びる直線上に位置している。また、爪部88と爪部98とは、互いにY方向に延びる直線上に位置する関係(位置関係)を保った状態で、X方向に移動するように構成されている。
【0059】
また、CPU7aは、検体ラック100の移送部71aへの移送の後、爪部88および98を、それぞれ、原点位置AおよびBに戻るようにX2方向に移動させる処理を行うように構成されている。CPU7aは、この際、爪部88が原点位置Aに位置することが原点センサ10によって検出された際に、駆動部8aの駆動を停止するように構成されているとともに、爪部98が原点位置Bに位置することが原点センサ11によって検出された際に、駆動部9aの駆動を停止するように構成されている。なお、駆動部8aの駆動を停止する処理と、駆動部9aの駆動を停止する処理とは、CPU7aによって独立して行われるように構成されている。
【0060】
また、たとえば、爪部88が原点位置Aに位置することが原点センサ10によって検出されて駆動部8aの駆動が停止された時点において、爪部98が原点位置Bに位置することが原点センサ11によって検出されていない場合には、CPU7aは、所定の時間内に爪部98が原点位置Bに位置することが原点センサ11によって検出されるまで、駆動部9aの駆動を継続し続ける処理を行うように構成されている。そして、CPU7aは、爪部98が原点位置Bに位置することが原点センサ11によって検出された際、駆動部9aの駆動を停止させる処理を行う。これにより、爪部88が原点位置Aに位置するとともに、爪部98が原点位置Bに位置する状態になる。このようにして、爪部88と爪部98との位置関係が調整されるように構成されている。
【0061】
また、移送ユニット7のX1側(図6参照)に設けられた第1横送り部71では、図11に示すように、移送検知部材71cと、遮光部材71dと、ラック検出センサ71eと、固定部材71fと、一対のバネ部材71gとが収容部7bの内部に配置されている。また、第1横送り部71には、図6に示すように、移送部71aに移送された検体ラック100がX2側に移動するのを抑制するための一対の爪部71hがY方向の両側にそれぞれ配置されている。
【0062】
また、移送検知部材71cは、移送部71aのX1側の側面にY方向に延びるように配置されている。そして、移送検知部材71cは、検体ラック100(図4参照)が移送部71aに移送された際に、検体ラック100の検知面100c(図4参照)と接触してX1側に押圧されることによって、X1側に所定の距離移動するように構成されている。また、図11に示すように、移送検知部材71cのY方向の略中央部からX2方向に延びる保持部171cには、遮光部材71dが固定されている。また、遮光部材71dのX2側の端部には、下方に向かって延びる遮光部171dが設けられている。
【0063】
また、ラック検出センサ71eは、X方向から見て凹形状を有する検出部171eを有しており、Y方向の一方側から他方側に向かって検出光が出射される。ここで、検体ラック100が移送部71aに移送されていない状態では、遮光部材71dの遮光部171dは、検出部171eの検出光を遮る位置に位置するように構成されている。一方、検体ラック100が移送部71aに移送された状態では、移送検知部材71cがX1側に移動することによって、移送検知部材71cに固定された遮光部材71dも同様にX1側に移動する。これにより、遮光部171dが検出部171eの検出光を遮らない位置に移動されることによって、検体ラック100が移送部71aに位置していることが検出されるように構成されている。なお、図2に示すように、ラック検出センサ71eは、CPU7aと接続されている。
【0064】
また、図11に示すように、一対のバネ部材71gの両端部は、それぞれ、移送検知部材71cと、収容部7bの底面に固定された固定部材71fとに固定されている。これにより、移送検知部材71cがX1側に移動した際に、移送検知部材71cには、一対のバネ部材71gによって、X2方向に付勢力が加えられるように構成されている。これにより、移送部71aに検体ラック100が存在しない状態では、移送検知部材71cおよび遮光部材71dは、遮光部171dが検出部171eの検出光を遮る位置に戻されるように構成されている。
【0065】
次に、図1、図2、図4および図12〜図14を参照して、本発明の一実施形態による移送ユニット7の移送動作処理について説明する。
【0066】
まず、検体処理システム1(図1参照)全体の電源が投入されると、プログラムの初期化、移送機構2(図1参照)の各部の動作チェック等の初期化処理が実行される。なお、CPU7aは、ステップS1において、初期化処理として、爪部88および98をそれぞれ原点位置AおよびBに移動させる制御などを行う。
【0067】
この後、ステップS2において、CPU7aによって、制御装置6の入力部6c(図1参照)からの入力信号に基づいて、テーブル70(図4参照)上に載置された検体ラック100(図4参照)を移送する移送指示が行われたか否かが判断される。移送指示が行われたと判断されるまで、この判断は繰り返される。
【0068】
ステップS2において、移送指示が行われたと判断された場合には、ステップS3において、CPU7aによって、移送ユニット7のY2側に隣接する移送ユニット21の横送り領域21a(図1参照)に検体ラック100が存在するか否かが判断される。なお、CPU7aは、移送ユニット21のラック検出センサ21b(図2参照)の検出結果に基づく移送コントローラ3のCPU3a(図2参照)の指示によって、移送ユニット21の横送り領域21aに検体ラック100が存在するか否かを判断する。ステップS3において、横送り領域21aに検体ラック100が存在すると判断された場合には、検体ラック100を横送りすることができない状態であると判断されて、ステップS6に進む。
【0069】
一方、横送り領域21aに検体ラック100が存在しないと判断された場合には、ステップS4において、CPU7aによって、ラック検出センサ71eの検出結果に基づいて、移送部71a(図4参照)に検体ラック100が存在するか否かが判断される。そして、移送部71aに検体ラック100が存在すると判断された場合には、横送り領域21aに検体ラック100が存在せずに、移送部71aに横送り可能な検体ラック100が存在しているので、移送ユニット21の横送り領域21aに検体ラック100を横送りすることが可能であると判断される。これにより、ステップS5において、CPU7aによって、横送り領域21aに検体ラック100が移動するようにモータ71b(図2参照)が駆動される。その後、ステップS6に進む。
【0070】
一方、ステップS4において、移送部71a(図4参照)に検体ラック100が存在しないと判断された場合には、検体ラック100を横送りする必要がないので、ステップS6に進む。
【0071】
そして、ステップS6において、CPU7aによって、再度、ラック検出センサ71eの検出結果に基づいて、移送部71aに検体ラック100が存在するか否かが判断される。移送部71aに検体ラック100が存在すると判断された場合には、検体ラック100の移送が不可能であると判断されて、検体ラック100の移送は行われない。そして、ステップS14に進む。
【0072】
また、ステップS6において、移送部71aに検体ラック100が存在しないと判断された場合には、ステップS7において、CPU7aによって、ラック検出センサ73、74および75の検出結果に基づいて、テーブル70上に検体ラック100が存在するか否かが判断される。テーブル70上に検体ラック100が存在しないと判断された場合には、検体ラック100の移送は行われない。そして、ステップS12に進む。
【0073】
また、ステップS7において、テーブル70上に検体ラック100が存在すると判断された場合には、移送部71aに検体ラック100が存在しないとともに、テーブル70上に検体ラック100が存在しており、検体ラック100を移送可能な状態であると判断される。したがって、ステップS8において、CPU7aによって、爪部88および98が互いの位置関係(互いにY方向に延びる直線上に位置する関係)を保ったままX1方向に移動するように、駆動部8aおよび9aが駆動される。また、図13に示すように、この爪部88および98がX1方向に移動する際に、爪部88および98と検体ラック100の接触面100bとが接触することによって、検体ラック100が移送方向(X1方向)に移送される。これにより、検体ラック100の移送処理が行われる。
【0074】
そして、ステップS9において、CPU7aによって、ラック検出センサ171eの検出結果に基づいて、移送部71aに検体ラック100が移送されたか否かが判断される。すなわち、移送検知部材71cが検体ラック100にX1側に押圧されることによって、ラック検出センサ71eの検出部171eが遮光されない状態になったか否かが判断される。移送部71aに検体ラック100が移送されたと判断された場合には、ステップS10において、駆動部8aおよび9aの駆動が停止されることによって、爪部88および98のX1方向への移動が停止するとともに、検体ラック100の移送処理が終了する。その後、ステップS11において、CPU7aによって、原点復帰処理が行われる。この原点復帰処理は、CPU7aによって、検体ラック100が移送されたと判断される毎に行われる。そして、ステップS12に進む。なお、原点復帰処理については後述する。
【0075】
また、ステップS9において、移送部71aに検体ラック100が移送されていないと判断された場合には、ステップS13において、CPU7aによって、ステップS8において駆動部8aおよび9aを駆動させてから、所定の時間が経過したか否かが判断される。所定の時間が経過していないと判断された場合には、ステップS9に戻り、再度、移送部71aに検体ラック100が移送されたか否かが判断される。一方、所定の時間が経過していたと判断された場合には、テーブル70上の図示しない障害物などにより検体ラック100を移送部71aに移送できなかったと判断される。この場合、ステップS13に進み、検体ラック100を移送できなかった旨の移送エラー表示が入力部3bなどに表示される。そして、ステップS12に進む。
【0076】
ステップS12では、CPU7aによって、制御装置6の入力部6bからの入力信号に基づいて、シャットダウンの指示が行われたか否かが判断される。シャットダウンの指示が行われていないと判断された場合には、ステップS2に戻り、再度、移送動作処理が行われる。また、シャットダウンの指示が行われたと判断された場合には、一連の処理は終了される。
【0077】
次に、図15〜図17を参照して、図12のステップS11に示した本発明の一実施形態による移送ユニット7の原点復帰処理について詳細に説明する。
【0078】
まず、ステップS20において、CPU7aによって、フラグPおよびQが、共に、「0」にリセットされる。ここで、フラグPは、左側ラック移送機構8における爪部88の原点復帰処理に関するフラグとして設定されているとともに、フラグQは、右側ラック移送機構9における爪部98の原点復帰処理に関するフラグとして設定されている。そして、ステップS21において、CPU7aによって、図16に示すように、爪部88および98を検体ラック100の移送方向とは逆のX2方向に移動させるように、駆動部8aおよび9aが独立して駆動される。なお、駆動部8aおよび9aによって、爪部88および98は略同一の速度でX2方向に移動する。
【0079】
ここで、本実施形態では、CPU7aによって、左側ラック移送機構8に対する以下のステップS22p〜S24pの処理と、右側ラック移送機構9に対する以下のステップS22q〜S24qの処理とが並行して行われる。
【0080】
具体的には、ステップS22p(S22q)において、CPU7aによって、原点センサ10(11)により爪部88(98)が検出されたか否かが判断される。すなわち、CPU7aによって、爪部88(98)が原点位置A(B)に位置するか否かが判断される。そして、原点センサ10(11)により爪部88(98)が検出されたと判断された場合には、ステップS23p(S23q)において、駆動部8a(9a)の駆動が停止されることによって、爪部88(98)が原点位置A(B)で停止される。その後、ステップS24p(S24q)において、フラグP(B)が「0」から「1」にされる。そして、共に、ステップS25に進む。
【0081】
ステップS25において、CPU7aによって、フラグPが「1」であり、かつ、フラグQが「1」であるか否かが判断される。フラグPおよびQが共に「1」である場合には、爪部88および98が原点位置AおよびBにそれぞれ位置することになるため、原点復帰処理が終了されて、図12に示すステップS12に進む。
【0082】
一方、ステップS25において、フラグPが「1」でない、または、フラグQが「1」でないと判断された場合(フラグPが「1」でフラグQが「0」である場合、フラグPが「0」でフラグQが「1」である場合およびフラグPおよびQが共に「0」である場合)には、爪部88および89の少なくともいずれか一方が、原点位置AおよびBに到達していない。この場合には、CPU7aは、爪部88および89の両方が原点位置AおよびBにそれぞれ到達するまで爪部88および89の移動を継続すべく、ステップS26に処理を進める。ステップS26では、CPU7aによって、ステップS21で駆動部8aおよび9aが駆動されてから所定の時間経過したか否かが判断される。
【0083】
ステップS26において、所定の時間経過していないと判断された場合には、ステップS22p(22b)に戻り、再度、ステップS22p(22b)〜S24p(24b)の判断が行われた後、ステップS25において、再度、CPU7aによって、フラグPが「1」であり、かつ、フラグQが「1」であるか否かが判断される。この際、CPU7aによって、フラグPが「1」であり、かつ、フラグQが「1」であると判断された場合には、図17に示すように、爪部88および98が原点位置AおよびBにそれぞれ位置することになるため、爪部88および98が互いにY方向に延びる直線上に位置する関係(位置関係)に調整されたことになる。このようにして、爪部88および98が原点位置AおよびBにそれぞれ位置するように原点復帰処理を行うことにより、爪部88と爪部98とが、ラック移送方向に直交する方向に並ぶように位置調整される。
【0084】
一方、ステップS26において、ステップS21で駆動部8aおよび9aが駆動されてから所定の時間経過したと判断された場合には、テーブル70上の図示しない障害物などにより、爪部88が原点位置Aに復帰できなかったか、または、爪部98が原点位置Bに復帰できなかったと判断されて、ステップS27に進み、爪部88または98が原点復帰できなかった旨の原点復帰エラー表示が入力部3bなどに表示される。そして、図12に示すステップS12に進む。
【0085】
このような構成により、爪部88と98とに位置関係のずれが発生した場合に、次のような効果が実現される。
【0086】
図13のステップS8の検体ラック100の移送処理の際、図14に示すように、爪部98がX1方向への移動の最中においてテーブル70上の図示しない障害物などに接触することにより、爪部88と爪部98との位置関係がずれて、爪部98が爪部88よりもX2側に位置する場合がある。この場合、爪部88と爪部98との位置関係がずれた状態で検体ラック100を移送することが可能であれば、検体ラック100は、爪部88および98によって、X1側の移送部71aに移送される。
【0087】
図14に示すように爪部88と爪部98の位置関係がずれた状態から、図15の原点復帰処理が行われると、爪部98が、爪部88よりも先に原点位置Bに到達する(図16参照)。この場合、爪部98と爪部88との位置関係はずれたままである。
【0088】
このとき、右側ラック移送機構9の駆動部9aの駆動は停止され(ステップS23q)、フラグQが0から1に設定される(ステップS24q)が、左側ラック移送機構8の駆動部8aの駆動は停止されず(ステップS23p)、フラグPも0から1に設定されずに0のままで維持される。
【0089】
ついで、ステップS25では、フラグPおよびQの両方が1であるか否かが判断される。このとき、フラグPは0のままであるため、ステップS25の判断ではCPU7aによってNoと判断され、ステップS26を経て、再びステップS22p〜S24pおよびステップS22q〜24qの処理に戻る。この時点で右側ラック移送機構9の駆動部9aの駆動は既に停止されているが、左側ラック移送機構8の駆動部8aは停止されていないため、左側ラック移送機構8の駆動のみが継続され、爪部88のみが原点位置Aに向かって移動する。最終的に、図17に示すように、爪部88が原点位置Aに到達すると、左側ラック移送機構8の駆動が停止し(ステップS23p)、爪部88と爪部98とが移送方向(X方向)に直交する方向に並んだ状態になる。その後、フラグPが0から1に設定され(ステップS24p)、ステップS25の判断ではCPU7aによってYesと判断され、原点復帰処理が完了する。
【0090】
本実施形態では、上記のように、CPU7aによって、爪部88および98が、それぞれ、原点位置AおよびBに位置すると判断されるまで、爪部88の原点復帰と爪部98の原点復帰とを別々に行うように構成した。これにより、爪部88と爪部98との位置関係にずれが発生した場合に、位置関係のずれを自動的に解消するように調整する処理を行うことができる。これにより、爪部88と爪部98との位置関係のずれが発生した場合であっても、ユーザが位置関係のずれを修復する作業を行う必要がない。これにより、検体ラック100を安定的に移送することができる。
【0091】
また、本実施形態では、上記のように、CPU7aが駆動部8aおよび9aを互いに独立して駆動させることにより、爪部88および98を互いに独立して移動可能なように構成することによって、爪部88と爪部98との位置関係がずれた場合であっても、駆動部8aおよび9aの各々を独立して駆動することによって、爪部88と爪部98との位置関係のずれを容易に解消することができる。
【0092】
また、本実施形態では、上記のように、CPU7aが、爪部88の原点位置Aおよび爪部98の原点位置Bにそれぞれ配置されている原点センサ10および11によって、爪部88および98が原点位置AおよびBに位置するか否かを判断することによって、移送処理が開始される直前に、爪部88と爪部98の位置関係を調整し、位置関係が調整された状態で検体ラック100の移送を行うことができる。
【0093】
また、本実施形態では、上記のように、CPU7aによって、爪部88および98が検体ラック100の移送方向とは逆のX2方向に移動するように、駆動部8aおよび9aをそれぞれ独立して駆動させるとともに、原点センサ10および11により爪部88および98が検出されたと判断された際に、駆動部8aおよび9aの駆動が停止されるように構成することによって、検体ラック100を移送方向に移送した後に位置関係の調整を行うことができ、無駄な動きを少なくすることができる。
【0094】
また、本実施形態では、上記のように、爪部88が原点位置Aに位置することが原点センサ10によって検出されて駆動部8aの駆動が停止された時点において、爪部98が原点位置Bに位置することが原点センサ11によって検出されていない場合には、CPU7aは、所定の時間内に爪部98が原点位置Bに位置することが原点センサ11によって検出されるまで、駆動部9aの駆動を継続し続ける。そして、CPU7aが、爪部98が原点位置Bに位置することが原点センサ11によって検出された際に、駆動部9aの駆動を停止させることにより、爪部88と爪部98との位置関係を容易に調整することができる。
【0095】
また、本実施形態では、上記のように、CPU7aが、左側ラック移送機構8に対するステップS22p〜S24pの処理と、右側ラック移送機構9に対するステップS22q〜S24qの処理とを並行して行うことによって、左側ラック移送機構8を制御する処理と右側ラック移送機構9を制御する処理とが同時に行われるので、より迅速に、位置関係を調整することができる。
【0096】
また、本実施形態では、上記のように、CPU7aが、検体ラック100の移送と位置関係の調整とを交互に行う。これにより、常に位置関係が調整された状態で検体ラック100を移送することができ、検体ラック100が不安定な状態で移送されるのをより抑制することができる。
【0097】
また、本実施形態では、上記のように、爪部88および98が、X方向に延びるガイド軸87および97に沿って、X1側の原点位置AとX2側の移送部71aの近傍との間を互いに平行に移動することによって、検体ラック100に加えられる力の作用点が移送方向(X1方向)に沿って変化しないようにすることができる。これにより、検体ラック100をより安定的に移送することができる。
【0098】
また、本実施形態では、上記のように、駆動部8aおよび9aが、それぞれ、ステッピングモータ80および90と、駆動プーリ81および91と、従動プーリ83および93と、一対の巻き込みプーリ84および94と、タイミングベルト85および95と、一対の端部プーリ86および96とを備えることによって、ステッピングモータ80および90と複数のプーリとタイミングベルト85および95とをそれぞれ含む駆動部8aおよび9aにより、容易に爪部88および98を独立して移動させることができる。
【0099】
また、本実施形態では、上記のように、CPU7aによって、ラック検出センサ71eの検出結果に基づいて、移送部71aに検体ラック100が存在しないと判断され、かつ、ラック検出センサ73、74および75の検出結果に基づいて、テーブル70上に検体ラック100が存在すると判断された場合に、検体ラック100が移送方向(X1方向)に移送されるように構成することによって、検体ラック100がテーブル70上に載置されていない状態では駆動部8aおよび9aが不必要に駆動されないので、駆動部8aおよび9aによる不必要な駆動を抑制することができる。また、移送部71aに検体ラック100が存在する状態で新たな検体ラック100が移送されるのを抑制することができるので、移送部71aに検体ラック100が残された状態で新たな検体ラック100が移送されることに起因して検体ラック100同士が衝突するのを抑制することができる。これにより、検体ラック100同士の衝突に起因して爪部88と爪部98との位置関係がずれるのを抑制することができる。
【0100】
また、本実施形態では、上記のように、テーブル70に、テーブル70のX1側の端部からX2側の端部までX方向に延びるように形成された凹部70aと、凹部70aに沿うようにX1側の端部からX2側の端部までX方向に延びるとともに、検体ラック100がX方向にスライド移送可能なように検体ラック100の下面を支持するラック支持面70bおよび70cとを設けることによって、曲げ応力などが加えられることに起因して、テーブル70が上方に突出しながら凸形状に撓んだ場合であっても、凹部70aが設けられている部分では、テーブル70と検体ラック100とが接触するのが抑制されて凹部70aの両端のラック支持面70bおよび70cにおいて検体ラック100を安定して支持することができる。これにより、テーブル70が凸状態に撓んだ際に凸部の頂点において検体ラック100を支持する場合と異なり、検体ラック100を安定的に移送することができる。
【0101】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0102】
たとえば、上記実施形態では、本発明の検体ラック移送装置(移送ユニット7)を検体処理システム1の一部に設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明は、検体処理システム以外のその他のシステムの一部に本発明の検体ラック移送装置を適用してもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、原点センサ10および11によって、爪部88および98が、それぞれ、原点位置AおよびBに位置することが検出されるように構成するとともに、原点センサ10および11の検出結果に基づいて、爪部88および98の位置調整(原点復帰処理)を行った例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、上記実施形態の第1変形例として、図18および図19に示すように、上記実施形態の原点センサ10および11の代わりに、爪部88および98の両方に当接可能な共通の原点センサ210を設けてもよい。この第1変形例における移送ユニット207では、原点センサ210に爪部88および98のいずれか一方が当接した状態では、図18に示すように、駆動部8aおよび9aの駆動を継続させるように構成されている。一方、図19に示すように、原点センサ210に爪部88および98の両方が当接した状態においては、CPU7aは駆動部8aおよび9aの駆動を共に停止させるように構成されている。これにより、爪部88と爪部98との位置関係を、爪部88および98が共に原点センサ210に当接する位置に容易に調整することが可能である。
【0104】
さらに、上記実施形態の第2変形例として、図20および図21に示すように、上記実施形態の原点センサ10および11の代わりに、爪部388に発光部を設けるとともに爪部398に受光部を設けることによって、爪部388および398が検出部を兼ねるように構成してもよい。この爪部388は、Y方向に沿った光を発するように構成されており、爪部388と爪部398との位置関係を調整する際に、図20に示すように、駆動部8aの駆動を停止させて爪部388を固定した状態で、駆動部9aを駆動させて爪部398をX方向に移動させるように構成されている。そして、図21に示すように、爪部398が光を受光した際に、駆動部9aの駆動を停止させて爪部398を固定させるように構成されている。これにより、爪部388および398の位置関係を、爪部388と爪部398とがY方向に延びる直線上に共に位置する状態に容易に調整することが可能である。
【0105】
また、上記実施形態では、CPU7aは、爪部88と爪部98との位置関係にずれが発生した場合に、位置関係のずれを自動的に解消するように調整した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、CPUは、爪部同士の位置関係のずれを自動的に解消するように調整しなくてもよく、たとえば、爪部同士の位置関係のずれをユーザに通知するように構成してもよい。このような例として、検体ラックに接触した状態で移動することにより検体ラックを移送する複数の接触片と、複数の接触片を移動させる駆動部と、複数の接触片を検出する検出部と、制御部とを設け、この制御部を、検出部による検出結果に基づいて、複数の接触片が所定の位置関係にあるか否かを判定し、所定の位置関係にないと判定したとき、ユーザへの通知を実行する制御部とを備えるように構成することができる。このように構成することにより、複数の接触片の位置関係にずれが生じた場合であっても、位置関係のずれが生じていることを通知によってユーザが迅速に知ることができるので、ユーザによる迅速な修復が期待できる。
【0106】
また、本発明は、上記の実施形態に限られず、複数の検体容器を列状に並べて保持可能な検体ラックを移送する検体ラック移送装置であって、検体ラックに接触した状態で移動することにより検体ラックを移送する複数の接触片と、複数の接触片の各々に対応して設けられ、対応する接触片を移動させるための複数の駆動部とを備える検体ラック移送装置とすることもできる。このように、複数の接触片に対応する複数の駆動部を設けることにより、複数の接触片の位置関係にずれが生じた場合であっても、接触片を各別に移動させることで位置関係のずれを調整することができる。このように複数の駆動部を設けることは、さらに次の点でも有利である。
【0107】
接触片の位置関係のずれが生じないようにするには、例えば特許3426721号公報に記載の技術を適用することも考えられる。この技術では、ラックの左右端を押し出す二つの爪を一つの押出棹の両端に配置し、この押出棹に駆動力を付与して二つの爪を移動させる。このように構成すれば、二つの爪は必ず一つの押出棹とともに移動することになるから、二つの爪の位置関係がずれることは確実に防止できる。しかしながら、このような構成では、検体ラック移送装置のテーブルの下に、検体ラックの移送方向に沿って押出棹が移動するのに十分なスペースを確保しなければならない。押出棹が移動するためのスペースを確保しようとすれば、テーブルを下から支持するための支柱の配置に制約が伴い、十分な強度をもってテーブルを支持することができなくなる。
【0108】
このようなテーブルの支持強度は、特許3426721号公報に開示されているような移送路の短い小型のラック移送装置であれば特に問題とならないが、上記実施形態で説明したような大型の分析システムに組み込まれる移送路の長いラック移送装置では、移送方向中央でテーブルが自重によって落ち込むことで撓みが発生するおそれがあるため、テーブルを下方から支持することが重要になる。このように、移送路の長い検体ラック移送装置において複数の爪を位置関係のずれが生じることなく移動させることは、構造的な制約を伴うものであった。
【0109】
この点、上記実施形態では、複数の接触片に対応する複数の駆動部を設け、各駆動部によって対応する接触片を移動させることにしたため、接触片の位置関係のずれが発生しても、容易に位置関係のずれを修復することができる。ゆえに特許3426721号公報に開示されている押出棹のような構成が不要である。これにより、上記実施形態に示すように、接触片を移動させるためのタイミングベルト85、95やガイド軸87、97といった機構を収容部7bの両端に配置するとともに、テーブル70を下方から支持する支柱76aを移送方向の中央部に配置することができ、テーブル70の支持強度を向上させることができる。
【0110】
また、上記実施形態では、1つの駆動部8aおよび爪部88を有する左側ラック移送機構8と、1つの駆動部9aおよび爪部98を有する右側ラック移送機構9との2つのラック移送機構によって検体ラック100を移送した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、1つの駆動部および爪部を有するラック移送機構を3つ以上設けてもよい。
【0111】
また、上記実施形態では、爪部88の原点位置Aと爪部98の原点位置Bとにおいて、爪部88と爪部98との位置関係の調整を行うように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、爪部の原点位置以外の位置において、爪部の位置関係の調整を行うように構成してもよい。たとえば、検体ラックの移送部において爪部の位置関係の調整を行うように構成してもよい。
【0112】
また、上記実施形態では、原点センサ10および11を、それぞれ、原点位置AおよびBに配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、原点センサを原点位置以外の位置に配置した状態で、原点位置に位置する爪部の検出を行うように構成してもよい。この際、原点センサを原点位置の近傍に配置するのが好ましい。
【0113】
また、上記実施形態では、CPU7aが、検体ラック100の移送処理と原点復帰処理とを交互に行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、検体ラックが移送される毎に原点復帰処理を行わなくてもよい。たとえば、検体ラックが5回移送される毎に原点復帰処理を行うように構成してもよいし、ラック検出センサなどによって何らかの異常を検知した場合にのみ原点復帰処理を行うように構成してもよい。
【0114】
また、上記実施形態では、本発明の「接触片」として、水平に突出する押出し爪88aおよび98aを備え、この押出し爪88aおよび98aを検体ラック100の接触面100bに接触させる形態を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、特開2006−208286号公報に開示されているように、検体ラックが載置されるテーブルの移送方向に沿って、スリットと、スリットから垂直に突出する接触片とを設けた形態であってもよい。
【符号の説明】
【0115】
7、207、307 移送ユニット
7a CPU
8a 駆動部
9a 駆動部
10 原点センサ
11 原点センサ
70 テーブル
70a 凹部
70b、70c ラック支持面
71a 移送部
71e ラック検出センサ
73、74、75 ラック検出センサ
80、90 ステッピングモータ
81、91 駆動プーリ
83、93 従動プーリ
84、94 巻き込みプーリ
85、95 タイミングベルト
86、96 端部プーリ
87、97 ガイド軸
88、388 爪部
98、398 爪部
100 検体ラック
101 検体容器
210 原点センサ
A、B 原点位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の検体容器を列状に並べて保持可能な検体ラックを移送する検体ラック移送装置であって、
前記検体ラックに接触した状態で移動することにより前記検体ラックを移送する複数の接触片と、
前記複数の接触片の各々に対応して設けられ、対応する前記接触片を移動させるための複数の駆動部と、
前記複数の駆動部を制御し、前記複数の接触片の位置関係を調整する位置関係調整処理を行う制御部とを備える、検体ラック移送装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記位置関係調整処理を実行することにより、前記複数の接触片が、前記検体ラックが移送される方向に対して略直交する方向に並ぶように前記複数の接触片の位置関係を調整するように構成されている、請求項1に記載の検体ラック移送装置。
【請求項3】
前記複数の接触片を検出する検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記検出部による前記複数の接触片の検出結果に基づいて前記複数の駆動部を制御することにより、前記位置関係調整処理を行うように構成されている、請求項1または2に記載の検体ラック移送装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記検体ラックの移送が開始されるときに前記複数の接触片が配置される原点位置に前記複数の接触片が位置するか否かを検出するように構成されている、請求項3に記載の検体ラック移送装置。
【請求項5】
前記複数の接触片は、第1接触片と第2接触片とを含み、
前記複数の駆動部は、前記第1接触片に対応する第1駆動部と前記第2接触片に対応する第2駆動部とを含み、
前記検出部は、前記第1接触片が第1の位置にあるときに前記第1接触片を検出する第1検出部と、前記第2接触片が前記第1の位置と所定の位置関係にある第2の位置にあるときに前記第2接触片を検出する第2検出部とを含む、請求項3または4に記載の検体ラック移送装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記第1の位置に向かって前記第1接触片を移動させ、前記第1接触片が前記第1検出部により検出された際に、前記第1接触片の移動を停止させるように前記第1駆動部を制御する処理と、
前記第2の位置に向かって前記第2接触片を移動させ、前記第2接触片が前記第2検出部により検出された際に、前記第2接触片の移動を停止させるように前記第2駆動部を制御する処理とを行うように構成されている、請求項5に記載の検体ラック移送装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1接触片が前記第1検出部により検出される時点において前記第2接触片が前記第2検出部により検出されていない場合に、前記第2接触片の移動を継続させ、その後、前記第2接触片が前記第2検出部により検出されて前記第2接触片の移動を停止させることによって、前記第1接触片と前記第2接触片との位置関係を調整するように構成されている、請求項6に記載の検体ラック移送装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1駆動部を制御する処理と前記第2駆動部を制御する処理とを並行して行うように構成されている、請求項6または7に記載の検体ラック移送装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記検体ラックを移送する移送処理と、前記位置関係調整処理とを交互に実行するように構成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の検体ラック移送装置。
【請求項10】
前記複数の接触片の各々に対応して設けられ、互いに略平行になるように配置された複数のガイド部をさらに備え、
前記複数の接触片は、対応する前記ガイド部に沿って互いに略平行に移動するように構成されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の検体ラック移送装置。
【請求項11】
前記複数の駆動部の各々は、駆動源と、前記駆動源からの駆動力により回転するプーリと、前記駆動部に対応する前記接触片が固定され、前記プーリの回転によって駆動されるタイミングベルトとを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の検体ラック移送装置。
【請求項12】
前記検体ラックが載置されるテーブルと、
前記テーブルに載置された前記検体ラックを検知する第1ラック検知部とをさらに備え、
前記制御部は、前記第1ラック検知部により前記検体ラックが検知された際に、前記検体ラックを移送する移送処理を行うように構成されている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の検体ラック移送装置。
【請求項13】
前記テーブルは、前記検体ラックが移送される方向に沿って延びるように形成された凹部と、前記凹部の両側に前記検体ラックが移送される方向に沿って延びるように形成され、前記検体ラックの両端部近傍をスライド移動可能に支持する一対のラック支持部とを含む、請求項12に記載の検体ラック移送装置。
【請求項14】
前記検体ラックが移送される移送先に位置する前記検体ラックを検知する第2ラック検知部をさらに備え、
前記制御部は、前記第2ラック検知部により前記検体ラックが検知されなくなった際に、前記検体ラックを移送する移送処理を行うように構成されている、請求項1〜13のいずれか1項に記載の検体ラック移送装置。
【請求項15】
複数の検体容器を列状に並べて保持可能な検体ラックを移送する検体ラック移送装置であって、
前記検体ラックに接触した状態で移動することにより前記検体ラックを移送する複数の接触片と、
前記複数の接触片を移動させる駆動部と、
前記複数の接触片を検出する検出部と、
前記検出部による検出結果に基づいて、前記複数の接触片が所定の位置関係にあるか否かを判定し、前記所定の位置関係にないと判定したとき、ユーザへの通知を実行する制御部とを備える、検体ラック移送装置。
【請求項16】
複数の検体容器を列状に並べて保持可能な検体ラックを移送する検体ラック移送装置であって、
前記検体ラックに接触した状態で移動することにより前記検体ラックを移送する複数の接触片と、
前記複数の接触片の各々に対応して設けられ、対応する前記接触片を移動させるための複数の駆動部とを備える、検体ラック移送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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