説明

検体分析装置及び検体分析方法

【課題】 従来に比して製品コストを低減しつつ、多くの測定項目に対応可能な検体分析装置及び検体分析方法を提供する。
【解決手段】
検体分析装置1は、検体の測定を行う第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3と、検体容器Tを第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3へ搬送する検体搬送ユニット4と、検体容器T内の検体の測定オーダを取得し、測定オーダに第1測定項目及び当該第1測定項目とは異なる第2測定項目が含まれる場合には、当該検体容器Tを第2測定ユニット3へと搬送し、測定オーダに第1測定項目が含まれており、第2測定項目が含まれていない場合には、当該検体容器Tを第1測定ユニット2又は第2測定ユニット3へと搬送するように検体搬送ユニットを制御する情報処理ユニット5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体を測定する測定ユニットを複数備える検体分析装置及び当該検体分析装置によって検体を分析する検体分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の検体を自動的に搬送し、搬送された検体を分析する自動分析システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、同一種類の2台の分析装置と、測定前の検体架台(サンプルラック)を複数台並べてストックし検体架台を順次送り出すスタートヤードと、スタートヤードから送り出された検体架台を移送するコンベアと、検体架台の移送方向を切り換えるラックスライダと、コンベアとラックスライダとによって送られてきた検体架台を受け取り検体架台に保持された試料容器を一検体ずつ分析装置の測定部へ送るサンプラと、測定が終りサンプラから送り出されるラックスライダとコンベアとで移送されてきた検体架台を集積するストックヤードと、上記の各構成要素の動作を制御する制御部とを備える分析システムが開示されている。この分析システムは、空いている分析装置の方へ検体架台を次々と送り、全体の処理速度を向上させる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−217273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような特許文献1に開示された分析システムにあっては、2台の分析装置の両方において、測定が必要となる可能性のある測定項目の全てについて検体の測定を可能とする必要があった。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、従来に比して製品コストを低減しつつ、多くの測定項目に対応可能な検体分析装置及び検体分析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の検体分析装置は、検体の測定を行う第1測定部と、検体の測定を行う第2測定部と、検体が収容された検体容器を前記第1測定部及び前記第2測定部へ搬送する搬送部と、前記検体容器内の検体の測定項目を示す測定項目情報を取得する測定項目情報取得部と、前記測定項目情報取得部によって取得された測定項目情報に示される測定項目に第1測定項目及び前記第1測定項目とは異なる第2測定項目が含まれる場合には、当該測定項目情報に係る検体容器を前記第2測定部へと搬送し、前記測定項目情報取得部によって取得された測定項目情報に示される測定項目に前記第1測定項目が含まれており、前記第2測定項目が含まれていない場合には、当該測定項目情報に係る検体容器を前記第1測定部又は前記第2測定部へと搬送するように前記搬送部を制御する搬送制御部と、を備える。
【0008】
この態様においては、前記第1測定部が、前記第1測定項目について検体の測定を行い、前記第2測定項目については検体の測定を行わず、前記第2測定部は、前記第1測定項目及び前記第2測定項目について検体の測定を行うことが好ましい。
【0009】
また、上記態様においては、前記搬送制御部が、前記測定項目情報取得部によって取得された測定項目情報に示される測定項目に前記第1測定項目が含まれており、前記第2測定項目が含まれていない場合には、前記第1測定部及び前記第2測定部の動作状況に応じて、当該測定項目情報に係る検体容器を前記第1測定部又は前記第2測定部へと搬送するように前記搬送部を制御するように構成されていることが好ましい。
【0010】
また、上記態様においては、前記第1測定部及び前記第2測定部が、前記搬送部によって搬送された検体を取り込み、取り込まれた検体を測定するようにそれぞれ構成されており、前記搬送制御部が、前記第1測定部及び前記第2測定部が検体を取込可能な状態にあるか否かをそれぞれ確認し、それぞれの確認結果及び前記測定項目情報に基づいて、前記搬送部による検体の搬送動作を制御するように構成されていることが好ましい。
【0011】
また、上記態様においては、前記搬送制御部が、前記第1測定部及び前記第2測定部の動作状況により、前記第1測定部に検体を搬送することが可能ではなく、前記第2測定部に検体を搬送することが可能な状態において、前記測定項目情報取得部により測定項目情報が取得された検体として、測定項目情報に示される測定項目に前記第1測定項目が含まれており、前記第2測定項目が含まれていない第1検体と、測定項目情報に示される測定項目に前記第1測定項目及び前記第2測定項目が含まれる第2検体とが存在する場合に、前記第2検体を前記第1検体よりも先に前記第2測定部へ搬送すべく前記搬送部を制御するように構成されていることが好ましい。
【0012】
また、上記態様においては、前記搬送制御部が、前記第1測定部及び前記第2測定部の動作状況により、前記第1測定部及び前記第2測定部のそれぞれに検体を搬送することが可能な状態において、前記測定項目情報取得部により測定項目情報が取得された検体として前記第1検体が存在する場合に、前記第1検体を前記第1測定部へ搬送すべく前記搬送部を制御するように構成されていることが好ましい。
【0013】
また、上記態様においては、前記測定項目情報取得部が、前記搬送部に存在する複数の検体のそれぞれの測定項目情報を取得するように構成されており、前記搬送制御部が、前記測定項目情報取得部により取得された測定項目情報に基づいて、前記複数の検体の搬送の優先順位を決定するように構成されていることが好ましい。
【0014】
また、上記態様においては、前記搬送制御部が、前記搬送部に存在する複数の検体の中で前記第1測定部又は前記第2測定部により測定された検体について、その測定結果に基づいて再測定が必要か否かを判定し、再測定が必要な場合には再測定に係る測定項目を決定し、前記複数の検体の中で前記第1測定部又は前記第2測定部による測定が行われていない検体に係る測定項目と前記再測定に係る測定項目とに基づいて前記複数の検体の搬送の優先順位を決定するように構成されていることが好ましい。
【0015】
また、上記態様においては、前記搬送制御部が、前記測定項目情報取得部により測定項目情報が取得された検体から搬送対象の検体を選択し、前記搬送対象の検体が前記第1検体である場合には、前記第1測定部及び前記第2測定部の動作状況に基づいて、前記搬送対象の検体の搬送の可否を決定し、前記搬送対象の検体が前記第2検体である場合には、前記第2測定部の動作状況に基づいて、前記搬送対象の検体の搬送の可否を決定するように構成されていることが好ましい。
【0016】
また、上記態様においては、前記搬送制御部が、前記搬送対象の検体を搬送しないことを決定した場合に、前記測定項目情報取得部により測定項目情報が取得された検体の中で搬送対象として選択されていない検体を、新たな搬送対象として選択するように構成されていることが好ましい。
【0017】
また、上記態様においては、前記第1測定部が、全血算測定項目、白血球分類測定項目及び有核赤血球測定項目を含む前記第1測定項目について血液検体の測定を行い、網状赤血球測定項目、及び幼若球測定項目の何れについても血液検体の測定を行わないように構成されており、前記第2測定部が、全血算測定項目、白血球分類測定項目及び有核赤血球測定項目を含む前記第1測定項目、並びに網状赤血球測定項目、及び幼若球測定項目の少なくとも1つを含む前記第2測定項目について血液検体の測定を行うように構成されていることが好ましい。
【0018】
また、上記態様においては、前記第1測定部が、第1検出部を用いて前記第1測定項目について検体の測定を行うように構成され、前記第2測定部が、前記第1検出部と同一構成の第2検出部を用いて前記第1測定項目及び前記第2測定項目について検体の測定を行うように構成されていることが好ましい。
【0019】
本発明の他の態様の検体分析装置は、検体が収容された検体容器を搬送する搬送部と、前記搬送部によって搬送された検体を取り込み、取り込まれた検体の測定を行う第1測定部と、前記搬送部によって搬送された検体を取り込み、取り込まれた検体の測定を行う第2測定部と、前記検体容器内の検体の測定項目を示す測定項目情報を取得する測定項目情報取得部と、前記測定項目情報取得部により測定項目情報が取得された検体として、測定項目情報に示される測定項目に第1測定項目が含まれており、前記第1測定項目とは異なる第2測定項目が含まれていない第1検体と、測定項目情報に示される測定項目に前記第1測定項目及び前記第2測定項目が含まれる第2検体とが存在する場合に、前記第1測定部が検体を取込可能な状態になく、前記第2測定部が検体を取込可能な状態にある場合には、前記第2検体を前記第1検体よりも先に前記第2測定部に搬送するように前記搬送部を制御する搬送制御部と、を備える。
【0020】
本発明の他の態様の検体分析方法は、第1測定項目について検体の測定を行い、前記第1測定項目とは異なる第2測定項目については検体の測定を行わない第1測定部と、前記第1測定項目及び前記第2測定項目について検体の測定を行う第2測定部とを備えた検体分析装置における検体分析方法であって、測定対象の検体の測定項目に前記第1測定項目及び前記第2測定項目が含まれている場合には、前記検体が収容された検体容器を前記第2測定部へ搬送し、前記第2測定部により前記検体を測定する工程と、測定対象の検体の測定項目に前記第1測定項目が含まれており、前記第2測定項目が含まれていない場合には、前記検体が収容された検体容器を前記第1測定部又は前記第2測定部へ搬送し、前記検体容器が搬送された前記第1測定部又は前記第2測定部により前記検体を測定する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る検体分析装置及び検体分析方法によれば、従来に比して製品コストを低減しつつ、多くの測定項目に対応可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】実施の形態1に係る検体分析装置の全体構成を示す斜視図。
【図1B】実施の形態1に係る検体分析装置の全体構成を示す斜視図。
【図2】検体容器の外観を示す斜視図。
【図3】サンプルラックの外観を示す斜視図。
【図4】実施の形態1に係る測定ユニットの構成を示すブロック図。
【図5】WBC/DIFF(白血球5分類)検出用の光学検出部の概要構成を示す模式図。
【図6】検体搬送ユニットの構成を示す平面図。
【図7】検体搬送ユニットの第1ベルトの構成を示す正面図。
【図8】検体搬送ユニットの第2ベルトの構成を示す正面図。
【図9】実施の形態に係る情報処理ユニットの構成を示すブロック図。
【図10】実施の形態1に係る検体分析装置の情報処理ユニットのCPUによる検体搬送制御処理の流れを示すフローチャート。
【図11】検体処理テーブルの構造を示す模式図。
【図12】実施の形態1に係る検体分析装置の情報処理ユニットのCPUによる検体搬送先決定処理の手順を示すフローチャート。
【図13】実施の形態1に係る検体分析装置の情報処理ユニットのCPUによる検体測定処理の流れを示すフローチャート。
【図14】実施の形態1に係る検体分析装置の情報処理ユニットのCPUによる検体容器取込処理の手順を示すフローチャート。
【図15】実施の形態1に係る検体分析装置の情報処理ユニットのCPUによる検体容器排出処理の手順を示すフローチャート。
【図16】各種の検体を収容した検体容器を保持するサンプルラックの一例を示す斜視図。
【図17】サンプルラックが検体分析装置に投入されたときの検体分析装置の第1測定ユニット、及び第2測定ユニットの動作を示すタイミングチャート。
【図18A】検体処理テーブルの状態の一例を模式的に示す図。
【図18B】検体処理テーブルの状態の一例を模式的に示す図。
【図18C】検体処理テーブルの状態の一例を模式的に示す図。
【図18D】検体処理テーブルの状態の一例を模式的に示す図。
【図18E】検体処理テーブルの状態の一例を模式的に示す図。
【図18F】検体処理テーブルの状態の一例を模式的に示す図。
【図18G】検体処理テーブルの状態の一例を模式的に示す図。
【図18H】検体処理テーブルの状態の一例を模式的に示す図。
【図18I】検体処理テーブルの状態の一例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0024】
本実施の形態は、第1測定項目について検体の測定が可能であり、第1測定項目とは異なる第2測定項目については検体を測定することができない第1測定ユニットと、第1測定項目及び第2測定項目の両方について検体の測定が可能な第2測定ユニットと、第1測定ユニット及び第2測定ユニットへ検体を搬送する搬送ユニットとを備え、搬送ユニットが、第1測定項目及び第2測定項目の両方を測定すべき検体を第2測定ユニットへ搬送し、第1測定項目のみを測定すべき検体を、前記第1測定ユニット及び前記第2測定ユニットの動作状況に応じて、前記第1測定ユニット及び前記第2測定ユニットの何れか一方へ搬送する検体分析装置である。なお、第1測定項目とは、複数の測定ユニットで共通に測定可能な測定項目を指す。また、第2測定項目とは、複数の測定ユニットのうち所定の測定ユニットで測定可能であるが、他の測定ユニットでは測定できない測定項目を指す。
【0025】
[検体分析装置の構成]
図1A及び図1Bは、本実施の形態に係る検体分析装置の全体構成を示す斜視図である。本実施の形態に係る検体分析装置1は、血液検体に含まれる血球を白血球、赤血球、血小板等を検出し、各血球を計数する多項目血球分析装置である。図1A及び図1Bに示すように、検体分析装置1は、第1測定ユニット2と、第2測定ユニット3と、第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3の前面側に配置された検体搬送ユニット4と、第1測定ユニット2、第2測定ユニット3、及び検体搬送ユニット4を制御可能な情報処理ユニット5とを備えている。
【0026】
図2は、検体を収容する検体容器の外観を示す斜視図であり、図3は、複数の検体容器を保持するサンプルラックの外観を示す斜視図である。図2に示すように、検体容器Tは、管状をなしており、上端が開口している。内部には患者から採取された血液検体が収容され、上端の開口は蓋部CPにより密封されている。検体容器Tは、透光性を有するガラス又は合成樹脂により構成されており、内部の血液検体が視認可能となっている。また、検体容器Tの側面には、バーコードラベルBL1が貼付されている。このバーコードラベルBL1には、検体IDを示すバーコードが印刷されている。図3に移り、サンプルラックLは、10本の検体容器Tを並べて保持することが可能である。サンプルラックLでは、各検体容器Tが垂直状態(立位状態)で保持される。また、サンプルラックLの側面には、バーコードラベルBL2が貼付されている。このバーコードラベルBL2には、ラックIDを示すバーコードが印刷されている。
【0027】
<測定ユニットの構成>
第1測定ユニット2は、検体搬送ユニット4の検体の搬送方向(図4に示すX方向)上流側に配置され、第2測定ユニット3は、前記搬送方向下流側に配置されている。図4は、測定ユニットの構成を示すブロック図である。図4に示すように、第1測定ユニット2は、検体である血液を検体容器(採血管)Tから吸引する検体吸引部21と、検体吸引部21により吸引した血液から血球等の血液成分の測定に用いられる測定試料を調製する試料調製部22と、試料調製部22により調製された測定試料から血球を検出(測定)する検出部23とを有している。また、第1測定ユニット2は、検体搬送ユニット4のラック搬送部43によって搬送されたサンプルラックLに収容された検体容器Tを第1測定ユニット2の内部に取り込むための取込口24(図1A及び図1B参照)と、サンプルラックLから検体容器Tを第1測定ユニット2の内部に取り込み、検体吸引部21による吸引位置まで検体容器Tを搬送する検体容器搬送部25とをさらに有している。
【0028】
図4に示すように、検体吸引部21の先端部には、吸引管(図示せず)が設けられている。また、検体吸引部21は、鉛直方向に移動可能であり、下方に移動されることにより、吸引位置まで搬送された検体容器Tの蓋部CPを前記吸引管が貫通し、内部の血液を吸引するように構成されている。
【0029】
試料調製部22は、複数の反応チャンバ(図示せず)を備えている。また、試料調製部22は、図示しない試薬容器に接続されており、染色試薬、溶血剤、及び希釈液等の試薬を反応チャンバに供給することが可能である。試料調製部22は、検体吸引部21の吸引管とも接続されており、吸引管により吸引された血液検体を反応チャンバに供給することが可能である。かかる試料調製部22は、反応チャンバ内で検体と試薬とを混合撹拌し、検出部23による測定用の試料(測定試料)を調製する。
【0030】
検出部23は、RBC(赤血球)検出及びPLT(血小板)検出をシースフローDC検出法により行うことが可能である。このシースフローDC検出法によるRBC及びPLTの検出においては、検体と希釈液とが混合された測定試料の測定が行われ、これにより得られた測定データを情報処理ユニット5が解析処理することによりRBC及びPLTの数値データの取得が行われる。また、検出部23は、HGB(ヘモグロビン)検出をSLS−ヘモグロビン法により行うことが可能であり、WBC(白血球)、NEUT(好中球)、LYMPH(リンパ球)、EO(好酸球)、BASO(好塩基球)、及びMONO(単球)の検出を、半導体レーザを使用したフローサイトメトリー法により行うことが可能であるように構成されている。この検出部23では、白血球の5分類、すなわち、NEUT、LYMPH、EO、BASO、MONOの検出を伴わないWBCの検出と、白血球の5分類を伴うWBCの検出とでは、検出方法が異なっている。白血球5分類を伴わないWBCの検出では、検体と、溶血剤と、希釈液とが混合された測定試料の測定が行われ、これにより得られた測定データを情報処理ユニット5が解析処理することによりWBCの数値データの取得が行われる。一方、白血球5分類を伴うWBCの検出では、検体と、白血球5分類用染色試薬と、溶血剤と、希釈液とが混合された測定試料の測定が行われ、これにより得られた測定データを情報処理ユニット5が解析処理することによりNEUT、LYMPH、EO、BASO、MONO、及びWBCの数値データの取得が行われる。
【0031】
上記のWBC、RBC、PLT、及びHGBは、CBC項目と呼ばれる測定項目に含まれており、WBC、RBC、PLT、HGB、NEUT、LYMPH、EO、BASO、及びMONOは、CBC+DIFF項目と呼ばれる測定項目に含まれている。本実施の形態においては、CBC+DIFF項目が、第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3で共通に測定可能な測定項目であり、全ての検体に対して測定される第1測定項目とされる。そのため、CBC+DIFF項目についての測定用試薬は、第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3の両方に搭載されている。
【0032】
図5は、検出部23に設けられた、WBC/DIFF(白血球5分類)検出用の光学検出部の概要構成を示している。この光学検出部23aは、フローセル231に測定試料を送り込み、フローセル231中に液流を発生させ、フローセル231内を通過する液流に含まれる血球に半導体レーザ光を照射して測定するものであり、シースフロー系232、ビームスポット形成系233、前方散乱光受光系234、側方散乱光受光系235、側方蛍光受光系236を有している。
【0033】
シースフロー系232は、フローセル231内を試料がシース液に包まれた状態で血球が一列に並んだ状態で流れ、血球計数の正確度と再現性を向上させるものとなっている。ビームスポット系233は、半導体レーザ237から照射された光が、コリメータレンズ238とコンデンサレンズ239とを通って、フローセル231に照射されるよう構成されている。また、ビームスポット系233は、ビームストッパ240も備えている。
【0034】
前方散乱光受光系234は、前方への散乱光を前方集光レンズ241によって集光し、ピンホール242を通った光をフォトダイオード(前方散乱光受光部)243で受光するように構成されている。
【0035】
側方散乱光受光系235は、側方への散乱光を側方集光レンズ244にて集光するとともに、一部の光をダイクロイックミラー245で反射させ、フォトダイオード(側方散乱光受光部)246で受光するよう構成されている。
【0036】
光散乱は、血球のような粒子が光の進行方向に障害物として存在し、光がその進行方向を変えることによって生じる現象である。この散乱光を検出することによって、粒子の大きさや材質に関する情報を得ることができる。特に、前方散乱光からは、粒子(血球)の大きさに関する情報を得ることができる。また、側方散乱光からは、粒子内部の情報を得ることができる。血球粒子にレーザ光が照射された場合、側方散乱光強度は細胞内部の複雑さ(核の形状、大きさ、密度や顆粒の量)に依存する。したがって、側方散乱光強度のこの特性を利用することで、白血球の分類の測定その他の測定を行うことができる。
【0037】
側方蛍光受光系236は、ダイクロイックミラー245を透過した光をさらに分光フィルタ247に通し、アバランシェフォトダイオード(蛍光受光部)248で受光するよう構成されている。
【0038】
染色された血球のような蛍光物質に光を照射すると、照射した光の波長より長い波長の光を発する。蛍光の強度はよく染色されていれば強くなり、この蛍光強度を測定することによって血球の染色度合いに関する情報を得ることができる。したがって、(側方)蛍光強度の差によって、白血球の分類の測定その他の測定を行うことができる。
【0039】
図4に戻って、検体容器搬送部25の構成について説明する。検体容器搬送部25は、検体容器Tを把持可能なハンド部25aを備えている。ハンド部25aは、互いに対向して配置された一対の把持部材を備えており、この把持部材を互いに近接及び離反させることが可能である。かかる把持部材を、検体容器Tを挟んだ状態で近接させることにより、検体容器Tを把持することができる。また、検体容器搬送部25は、ハンド部25aを上下方向及び前後方向(Y方向)に移動させることができ、さらに、ハンド部25aを揺動させることができる。これにより、サンプルラックLに収容され、第1検体供給位置43aに位置した検体容器Tをハンド部25aにより把持し、その状態でハンド部25aを上方に移動させることによりサンプルラックLから検体容器Tを抜き出し、ハンド部25aを揺動させることにより、検体容器T内の検体を撹拌することができる。
【0040】
また、検体容器搬送部25は、検体容器Tを挿入可能な穴部を有する検体容器セット部25bを備えている。上述したハンド部25aによって把持された検体容器Tは、撹拌完了後移動され、把持した検体容器Tを検体容器セット部25bの穴部に挿入する。その後、把持部材を離反させることにより、ハンド部25aから検体容器Tが開放され、検体容器セット部25bに検体容器Tがセットされる。かかる検体容器セット部25bは、図示しないステッピングモータの動力によって、Y方向へ水平移動可能である。
【0041】
第1測定ユニット2の内部には、バーコード読取部26が設けられている。検体容器セット部25bは、バーコード読取部26の近傍のバーコード読取位置26a及び検体吸引部21による吸引位置21aへ移動可能である。検体容器セット部25bがバーコード読取位置26aへ移動したときには、セットされた検体容器Tが図示しない回転機構により水平回転され、バーコード読取部26により検体バーコードが読み取られる。これにより、検体容器TのバーコードラベルBL1がバーコード読取部26に対して反対側に位置する場合でも、検体容器Tを回転させることにより、バーコードラベルBL1をバーコード読取部26へ向けることができ、バーコード読取部26に検体バーコードを読み取らせることが可能である。また、検体容器セット部25bが吸引位置へ移動したときには、検体吸引部21により、セットされた検体容器Tから検体が吸引される。
【0042】
次に、第2測定ユニット3の構成について説明する。第2測定ユニット3の構成は、第1測定ユニット2の構成と同一であり、第2測定ユニット3は、検体吸引部31と、検体吸引部31により吸引した血液から血球等の血液成分の測定に用いられる測定試料を調製する試料調製部32と、試料調製部32により調製された測定試料から血球を検出する検出部33とを有している。また、第2測定ユニット3は、検体搬送ユニット4のラック搬送部43によって搬送されたサンプルラックLに収容された検体容器Tを第2測定ユニット3の内部に取り込むための取込口34(図1A及び図1B参照)と、サンプルラックLから検体容器Tを第2測定ユニット3の内部に取り込み、検体吸引部31による吸引位置まで検体容器Tを搬送する検体容器搬送部35とをさらに有している。検体吸引部31、試料調製部32、検出部33、取込口34、検体容器搬送部35、及びバーコード読取部36は、それぞれ検体吸引部21、試料調製部22、検出部23、取込口24、及び検体容器搬送部25と同様のハードウェアから構成されているので、その説明を省略する。
【0043】
かかる第2測定ユニット3には、第1測定ユニット2が測定可能な上記のCBC+DIFF項目であるWBC、RBC、PLT、HGB、NEUT、LYMPH、EO、BASO、及びMONOの各測定項目についての測定用試薬に加えて、網赤血球(RET)及び有核赤血球(NRBC)についての測定用試薬が搭載されている。また、第1測定ユニット2の測定動作が、後述のコンピュータプログラム54aの実行によって起動されるプロセスに含まれるCBC+DIFF項目の測定に対応したスレッドによって制御されるのに対し、第2測定ユニット3の測定動作は、上述のCBC+DIFF項目の測定に対応したスレッドに加えて、RET及びNRBCの測定項目の測定に対応したスレッドにより制御される。これにより、第2測定ユニット3は、第1測定ユニット2が測定可能なCBC+DIFF項目に加えて、RET及びNRBCの測定項目について検体の測定が可能となっている。RET及びNRBCは、一部の検体に対してのみ測定される第2測定項目とされる。第2測定ユニット3においては、RETの測定は、RET測定用の試薬と検体とを混合して測定試料を調製し、検出部33のWBC/DIFF(白血球5分類)検出用の光学検出部に前記測定試料を供給することで行われる。また、NRBCの測定は、NRBC測定用の試薬と検体とを混合して測定試料を調製し、検出部33のWBC/DIFF(白血球5分類)検出用の光学検出部に前記測定試料を供給することで行われる。
【0044】
このような第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3は、1つの検体から調製された測定試料を検出部23,33にて測定している間に、検体吸引部21,31の洗浄を実施し、また、他の検体の検体容器Tを内部に取り込み、検体吸引部21,31によって検体を吸引することが可能である。
【0045】
<検体搬送ユニットの構成>
次に、検体搬送ユニット4の構成について説明する。図1A及び図1Bに示すように、検体分析装置1の第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3の前方には、検体搬送ユニット4が配置されている。かかる検体搬送ユニット4は、第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3へ検体を供給するために、サンプルラックLを搬送することが可能である。
【0046】
図6は、検体搬送ユニット4の構成を示す平面図である。図6に示すように、検体搬送ユニット4は、分析が行われる前の検体を収容する検体容器Tを保持する複数のサンプルラックLを一時的に保持することが可能な分析前ラック保持部41と、第1測定ユニット2又は第2測定ユニット3によって検体が吸引された検体容器Tを保持する複数のサンプルラックLを一時的に保持することが可能な分析後ラック保持部42と、検体を第1測定ユニット2又は第2測定ユニット3に供給するために、サンプルラックLを図中矢印X方向へ水平に直線移動させ、分析前ラック保持部41から受け付けたサンプルラックLを分析後ラック保持部42へ搬送するラック搬送部43と、バーコード読取部44(図4参照)と、検体容器Tの有無を検知する検体容器センサ45a,45b(図4参照)とを備えている。
【0047】
分析前ラック保持部41は、平面視において四角形をなしており、その幅はサンプルラックLの幅より若干大きくなっている。この分析前ラック保持部41は、周囲の面よりも一段低く形成されており、その上面に分析前のサンプルラックLが載置される。また、分析前ラック保持部41の両側面からは、内側へ向けてラック送込部41bが突出可能に設けられている。このラック送込部41bが突出することによりサンプルラックLと係合し、この状態で後方(ラック搬送部43に近接する方向)へ移動することにより、サンプルラックLが後方へと移送される。かかるラック送込部41bは、分析前ラック保持部41の下方に設けられた図示しないステッピングモータによって駆動可能に構成されている。
【0048】
ラック搬送部43は、図6に示すように、分析前ラック保持部41によって移送されたサンプルラックLを、前記X方向へと移送可能となっている。このラック搬送部43によるサンプルラックLの搬送経路上には、図4に示す第1測定ユニット2へ検体を供給するための第1検体供給位置43a及び第2測定ユニット3へ検体を供給するための第2検体供給位置43bが存在する。図4に戻り、検体搬送ユニット4は、情報処理ユニット5によって制御され、第1検体供給位置43a又は第2検体供給位置43bに検体を搬送した場合には、対応する測定ユニットのハンド部25a又は35aが搬送された検体容器Tを把持し、サンプルラックLから検体容器Tを取り出すことで検体を第1測定ユニット2又は第2測定ユニット3へ供給する。このようにして検体容器Tを把持したハンド部25a又は35aが前述したように第1測定ユニット2又は第2測定ユニット3の筐体内へと進入し、これによって第1測定ユニット2又は第2測定ユニット3内に検体が取り込まれる。ラック搬送部43は、第1測定ユニット2又は第2測定ユニット3に検体が取り込まれている間もサンプルラックLを搬送することが可能である。したがって、第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3の一方が検体を取り込み中の間は、この測定ユニットにはさらに検体を取り込ませることはできないので、他方の測定ユニットへサンプルラックLを搬送し、検体を取り込ませることが可能である。
【0049】
ここで図6〜図8を参照してラック搬送部43の構成を詳細に説明する。図6に示すように、ラック搬送部43は、それぞれ独立して動作可能な第1ベルト431及び第2ベルト432の2つのベルトを有している。また、第1ベルト431及び第2ベルト432の矢印Y方向の幅b1は、それぞれサンプルラックLの矢印Y方向の幅Bの半分以下の大きさである。かかる第1ベルト431及び第2ベルト432は、ラック搬送部43がサンプルラックLを搬送するときにサンプルラックLの幅Bからはみ出ないように並列に配置されている。図7は、第1ベルト431の構成を示す正面図であり、図8は、第2ベルト432の構成を示す正面図である。図7及び図8に示すように、第1ベルト431及び第2ベルト432は、それぞれ環状に形成されており、第1ベルト431はローラ431a〜431cを取り囲むように配置され、第2ベルト432はローラ432a〜432cを取り囲むように配置されている。また、第1ベルト431の外周部には、サンプルラックLのX方向の幅Wよりも若干(例えば、1mm)大きい内幅w1を有するように2つの突起片431dが設けられており、同様に、図8に示すように、第2ベルト432の外周部には、前記内幅w1と同程度の内幅w2を有するように2つの突起片432dが設けられている。第1ベルト431は、2つの突起片431dの内側にサンプルラックLを保持した状態において、ステッピングモータ(図示せず)によりローラ431a〜431cの外周を移動されることによって、サンプルラックLを矢印X方向に移動するように構成されている。第2ベルト432は、2つの突起片432dの内側にサンプルラックLを保持した状態において、ステッピングモータ(図示せず)によりローラ432a〜432cの外周を移動されることによって、サンプルラックLを矢印X方向に移動するように構成されている。また、第1ベルト431及び第2ベルト432は、互いに独立してサンプルラックLを移送可能に構成されている。これにより、ラック搬送部43は、第1検体供給位置43a、第2検体供給位置43b、及び、バーコード読取部44が検体容器TのバーコードラベルBL1に印刷されたバーコードを読み取るための読取位置43dまで検体が搬送されるようにサンプルラックLを搬送することが可能である。
【0050】
図4に戻り、バーコード読取部44は、図2に示した検体容器TのバーコードラベルBL1に印刷されたバーコードを読み取り、またサンプルラックLに貼付されたバーコードラベルBL2に印刷されたバーコードを読み取るように構成されている。また、バーコード読取部44は、図示しない回転装置によって対象の検体容器TをサンプルラックLに収容したまま水平方向に回転させながら検体容器Tのバーコードを読み取るように構成されている。これにより、検体容器Tのバーコードがバーコード読取部44に対して反対側に貼付されている場合にも、検体容器Tを回転させることによって、バーコードをバーコード読取部44側に向けることが可能である。また、サンプルラックLのバーコードラベルBL2に印刷されたバーコードは、各ラックに固有に付されたものであり、検体の分析結果の管理などに使用される。
【0051】
検体容器センサ45a,45bは、接触型のセンサであり、のれん形状の接触片、光を出射する発光素子、及び受光素子(図示せず)を有している。検体容器センサ45a,45bは、接触片が検出対象の被検出物に当接することにより屈曲され、その結果、発光素子から出射された光が接触片により反射されて受光素子に入射するように構成されている。これにより検体容器センサ45a,45bの下方をサンプルラックLに収容された検出対象の検体容器Tが通過する際に、接触片が検体容器Tにより屈曲されて、検体容器Tを検出することが可能である。検体容器センサ45aは、第1検体供給位置43aに設けられており、検体容器センサ45bは、第2検体供給位置43bに設けられている。これにより、第1検体供給位置43aにおける検体容器Tの有無を検体容器センサ45aで検出し、第2検体供給位置43bにおける検体容器Tの有無を検体容器センサ45bで検出することができる。
【0052】
ラック搬送部43の搬送方向下流側端には、後述する分析後ラック保持部42が設けられており、この分析後ラック保持部42の後方にラック送出部45が設けられている。かかるラック送出部45は、図示しないステッピングモータの駆動力により矢印Y方向に水平に直線移動するように構成されている。これにより、分析後ラック保持部42とラック送出部45との間の位置451(以下、「分析後ラック送出位置」という。)にサンプルラックLが搬送された場合に、ラック送出部45を分析後ラック保持部42側に移動することによって、サンプルラックLを押動させて分析後ラック保持部42内に移動することが可能である。
【0053】
分析後ラック保持部42は、平面視において四角形をなしており、その幅はサンプルラックLの幅より若干大きくなっている。この分析後ラック保持部42は、周囲の面よりも一段低く形成されており、その上面に分析が完了したサンプルラックLが載置される。分析後ラック保持部42は、上記のラック搬送部43に連なっており、上述したように、ラック送出部45によって、ラック搬送部43からサンプルラックLが送り込まれるようになっている。
【0054】
上記のような構成とすることにより、検体搬送ユニット4は、分析前ラック保持部41に載置されたサンプルラックLをラック搬送部43へと移送し、さらにラック搬送部43によって搬送することにより、検体を第1測定ユニット2又は第2測定ユニット3へと供給することができる。また、吸引が完了した検体を収容するサンプルラックLは、ラック搬送部43により、分析後ラック送出位置(図示せず)へと移送され、ラック送出部45により分析後ラック保持部42へ送出される。複数のサンプルラックLが分析前ラック保持部41に載置された場合では、分析が完了した検体を収容するサンプルラックLが次々にラック送出部45により分析後ラック保持部42へと送出され、これらの複数のサンプルラックLが分析後ラック保持部42に貯留されることとなる。
【0055】
<情報処理ユニットの構成>
次に、情報処理ユニット5の構成について説明する。情報処理ユニット5は、コンピュータにより構成されている。図9は、情報処理ユニット5の構成を示すブロック図である。情報処理ユニット5は、コンピュータ5aによって実現される。図9に示すように、コンピュータ5aは、本体51と、画像表示部52と、入力部53とを備えている。本体51は、CPU51a、ROM51b、RAM51c、ハードディスク51d、読出装置51e、入出力インタフェース51f、通信インタフェース51g、及び画像出力インタフェース51hを備えており、CPU51a、ROM51b、RAM51c、ハードディスク51d、読出装置51e、入出力インタフェース51f、通信インタフェース51g、及び画像出力インタフェース51hは、バス51jによって接続されている。
【0056】
CPU51aは、RAM51cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述するような検体分析用並びに第1測定ユニット2、第2測定ユニット3及び検体搬送ユニット4の制御用のコンピュータプログラム54aを当該CPU51aが実行することにより、コンピュータ5aが情報処理ユニット5として機能する。
【0057】
ROM51bは、マスクROM、PROM、EPROM、又はEEPROM等によって構成されており、CPU51aに実行されるコンピュータプログラム及びこれに用いるデータ等が記録されている。
【0058】
RAM51cは、SRAMまたはDRAM等によって構成されている。RAM51cは、ハードディスク51dに記録されているコンピュータプログラム54aの読み出しに用いられる。また、CPU51aがコンピュータプログラムを実行するときに、CPU51aの作業領域として利用される。
【0059】
RAM51cには、第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3の状態をそれぞれ示す測定ユニット状態データ領域S1及びS2が設けられている。かかる測定ユニット状態データ領域S1,S2には、「検体取込可」及び「検体取込不可」の何れか一方のデータが保持される。ここで、測定ユニットが検体容器の取込動作、測定試料の調製動作及び測定試料中の血球の検出動作等の測定動作を行っておらず、検体容器の取込を待機しているスタンバイ状態のときには、その測定ユニットの状態は「検体取込可」とされる。また、測定ユニットが検体容器の取込動作、検体容器からの検体の吸引動作、測定ユニットからの検体容器の排出動作を行っているときには、その測定ユニットの状態は「検体取込不可」とされる。さらに、測定ユニットが、測定試料の調製動作、検出部23,33による測定試料中の血球の検出動作及び洗浄動作を行っているときには、その測定ユニットの状態は新たな検体の取込が可能な「検体取込可」とされる。
【0060】
また、RAM51cには、第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3の状態データを蓄積する状態キューQ1及びQ2の領域が設けられている。かかる状態キューQ1及びQ2は、第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3の状態データをリアルタイムに受け付け、状態データを先入れ先出し形式のリスト構造で保持する。
【0061】
ハードディスク51dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU51aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータがインストールされている。後述するコンピュータプログラム54aも、このハードディスク51dにインストールされている。
【0062】
また、ハードディスク51dには、第1測定ユニット2によって測定可能な測定項目を特定する第1測定項目特定情報55a、及び第2測定ユニット3によって測定可能な測定項目を特定する第2測定項目特定情報55bが格納されている。つまり、第1測定項目特定情報55aは、第1測定ユニット2では、WBC、RBC、PLT、HGB、NEUT、LYMPH、EO、BASO、及びMONOを含むCBC+DIFF項目が測定可能であることを示す情報であり、第2測定項目特定情報55bは、第2測定ユニット3では上記CBC+DIFF項目に加えNRBC及びRETが測定可能であることを示す情報である。CPU51aは、後述するように検体を第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3に割り振るときに、第1測定項目特定情報55a及び第2測定項目特定情報55bを使用して検体の割り振りを実行する。例えば、測定オーダに含まれる測定項目がCBC+DIFF項目である検体は、第1測定項目特定情報55aから第1測定ユニット2によって測定可能であり、第2測定項目特定情報55bから第2測定ユニット3によっても測定可能であることが分かる。ここから、当該検体は第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3の何れかに振り分けられる。また、測定オーダに含まれる測定項目がNRBCを含んでいる場合には、第1測定項目特定情報55aから第1測定ユニット2によって測定することはできず、第2測定項目特定情報55bから第2測定ユニット3によって測定可能であることが分かる。ここから、当該検体は第2測定ユニット3に振り分けられる。
【0063】
読出装置51eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体54に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体54には、コンピュータを情報処理ユニット5として機能させるためのコンピュータプログラム54aが格納されており、コンピュータ5aが当該可搬型記録媒体54からコンピュータプログラム54aを読み出し、当該コンピュータプログラム54aをハードディスク51dにインストールすることが可能である。
【0064】
なお、前記コンピュータプログラム54aは、可搬型記録媒体54によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ5aと通信可能に接続された外部の機器から前記電気通信回線を通じて提供することも可能である。例えば、前記コンピュータプログラム54aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ5aがアクセスして、当該コンピュータプログラムをダウンロードし、これをハードディスク51dにインストールすることも可能である。
【0065】
また、ハードディスク51dには、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)等のマルチタスクオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施の形態に係るコンピュータプログラム54aは当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0066】
入出力インタフェース51fは、例えばUSB,IEEE1394,又はRS-232C等のシリアルインタフェース、SCSI,IDE,又は IEEE1284等のパラレルインタフェース、及びD/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース51fには、キーボード及びマウスからなる入力部53が接続されており、ユーザが当該入力部53を使用することにより、コンピュータ5aにデータを入力することが可能である。また、入出力インタフェース51fは、第1測定ユニット2、第2測定ユニット3、及び検体搬送ユニット4に接続されている。これにより、情報処理ユニット5は、第1測定ユニット2、第2測定ユニット3、及び検体搬送ユニット4のそれぞれを制御可能となっている。
【0067】
通信インタフェース51gは、Ethernet(登録商標)インタフェースである。通信インタフェース51gはLANを介してホストコンピュータ6に接続されている。コンピュータ5aは、通信インタフェース51gにより、所定の通信プロトコルを使用して当該LANに接続されたホストコンピュータ6との間でデータの送受信が可能である。
【0068】
画像出力インタフェース51hは、LCDまたはCRT等で構成された画像表示部52に接続されており、CPU51aから与えられた画像データに応じた映像信号を画像表示部52に出力するようになっている。画像表示部52は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
【0069】
[検体分析装置1の動作]
以下、本実施の形態に係る検体分析装置1の動作について説明する。
【0070】
<検体搬送制御処理>
図10は、検体分析装置1の情報処理ユニット5による検体搬送制御処理の流れを示すフローチャートである。オペレータは、検体を収容した検体容器Tを複数保持するサンプルラックLを分析前ラック保持部41に載置する。この状態で、オペレータは入力部53を操作し、情報処理ユニット5に検体測定の実行を指示する。情報処理ユニット5のCPU51aは、検体測定の実行指示を受け付けた後、以下の検体搬送制御処理を実行する。まずCPU51aは、図示しないセンサにより分析前ラック保持部41に載置されたサンプルラックLを検出すると(ステップS101)、RAM51cに検体の測定に用いられる検体処理テーブルの領域を確保する(ステップS102)。図11は、検体処理テーブルの構造を示す模式図である。検体処理テーブルPTは、サンプルラックL毎に、各検体のサンプルラックLでの保持位置、測定オーダ、検体の測定状況、検体の測定優先順位を保持するテーブルである。図11に示すように、検体処理テーブルPTには、10個の行が設けられており、各行はサンプルラックLに収容されている検体にそれぞれ対応している。かかる検体処理テーブルPTには、サンプルラックLでの保持位置のフィールド(列)F1と、測定オーダのフィールドF2と、測定状況のフィールドF3と、優先順位のフィールドF4とが設けられている。フィールドF1には、検体のサンプルラックLでの保持位置を示す「1」〜「10」の情報が格納される。フィールドF2には、後述する測定オーダに示される測定項目の情報(CBC+DIFF項目を示す情報、CBC+DIFF項目及びNRBCを示す情報等)が格納される。なお、上述したように、CBC+DIFF項目は、WBC、RBC、PLT、HGB、NEUT、LYMPH、EO、BASO、及びMONOの各測定項目を含んでいるため、これらの測定項目の情報をそれぞれ個別にフィールドF2に格納してもよいし、図11に示すように「CBC+DIFF」を示す情報をフィールドF2に格納してもよい。フィールドF3には、測定状況を示す情報として、「未測定」、「再検待ち」、「測定済」の3種類の情報の何れかが格納される。フィールドF4には、優先順位を示す「1」〜「10」の情報が格納される。ステップS102では、検体処理テーブルPTのフィールドF1を除く各セルは全て空欄(何も情報が格納されていない)状態である。
【0071】
次に、CPU51aは、状態キューQ1,Q2を参照し、その時点における第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3の状態を示すデータを測定ユニット状態データ領域S1,S2に格納する(ステップS103)。ここで、状態キューQ1,Q2には複数の状態データが蓄積されている場合がある。このような場合には、CPU51aは、状態キューQ1,Q2から状態データを順次取り出し、最後に取り出されたデータを測定ユニット状態データ領域S1,S2に格納する。状態キューQ1,Q2から最後に取り出されたデータは、第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3の最新の状態を示すものであり、つまり、その時点における第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3の状態を示している。なお、状態キューQ1,Q2の初期値は「検体取込可」である。
【0072】
次に、CPU51aは、検体処理テーブルPTにおいて全検体の測定状況が「測定済」か否かを判定する(ステップS104)。ステップS104において測定状況が「測定済」ではない検体が存在する場合には(ステップS104においてNO)、CPU51aは、検体処理テーブルPTを参照して要処理検体が存在するか否かを判定する(ステップS105)。この「要処理検体」とは、測定オーダが確定済であり、且つ、未測定又は再検待ちの検体のことを指している。つまり、検体処理テーブルPTにおいて、フィールドF2に測定オーダの情報が格納されており、フィールドF4に「未測定」又は「再検待ち」の情報が格納されている検体が「要処理検体」である。ステップS105において要処理検体が存在しない場合には(ステップS105においてNO)、CPU51aは、検体処理テーブルPTを参照して、測定オーダが未確定の検体、即ち、フィールドF2に測定オーダの情報が格納されていない検体が存在するか否かを判定する(ステップS106)。
【0073】
ステップS106において測定オーダが未確定の検体が存在する場合には(ステップS106においてYES)、CPU51aは、検体搬送ユニット4を制御してサンプルラックLを搬送し、当該サンプルラックLに収容されている検体の内、測定オーダが未確定の検体の検体容器Tの1つを、バーコード読取部44の前側の読取位置43dに位置させる(ステップS107)。ここで、読取位置43dに搬送される検体としては、検体処理テーブルPTにおいてフィールドF2に測定オーダの情報が格納されていない検体の内、最も保持位置の番号が小さい検体(サンプルラックLの搬送方向において最も下流側に位置する検体)が選択される。つまり、測定オーダが確定している検体が全くない場合は、保持位置が「1」の検体が選択される。また、保持位置が「1」の検体以外の全ての検体の測定オーダが未確定の場合は、保持位置が「2」の検体が選択される。このように、保持位置の番号が小さい検体から順に選択されることになる。
【0074】
CPU51aは、選択された検体を読取位置43dに搬送すると、当該検体のバーコードから検体IDをバーコード読取部44により読み取らせて(ステップS108)、当該検体IDに対応する測定オーダをホストコンピュータ6へ問い合わせる(ステップS109)。これは、ネットワークを通じて接続されているホストコンピュータ6へ検体IDを含む測定オーダ要求データを送信することにより行われる。CPU51aは、測定オーダの受信を待機し(ステップS110においてNO)、測定オーダを受信すると(ステップS110においてYES)、その測定オーダを当該検体IDと対応付けて検体処理テーブルPTに格納して検体処理テーブルPTを更新する(ステップS111)。
【0075】
次に、CPU51aは、要処理検体の優先順位を決定する(ステップS112)。この処理では、以下のルールにしたがって、各要処理検体の優先順位が決定される。
ルール1:測定オーダに第2測定項目であるRET又はNRBCが含まれている要処理検体は、測定オーダに第1測定項目であるCBC+DIFF項目のみが含まれる検体よりも優先順位が高い。
ルール2:サンプルラックLの先頭側(搬送方向下流側)にある要処理検体は、サンプルラックLの後尾側(搬送方向上流側)にある要処理検体よりも優先順位が高い。
なお、ステップS112において、1つしか要処理検体が存在していない場合は、その検体の優先順位を1に設定し、その他の検体の優先順位は決定しない。このようにして決定された検体の優先順位は、検体処理テーブルPTに格納される。CPU51aは、かかるステップS112の処理を完了すると、ステップS103へと処理を戻す。
【0076】
一方、上記ステップS105において要処理検体が存在する場合には(ステップS105においてYES)、CPU51aは、検体搬送先決定処理を実行する(ステップS113)。図12は、検体搬送先決定処理の手順を示すフローチャートである。検体搬送先決定処理においては、まずCPU51aは、検体処理テーブルPTを参照して、優先順位が1位の検体を選択する(ステップS201)。次にCPU51aは、選択された検体の測定オーダに第2測定項目であるRET又はNRBC項目が含まれているか否かを判別する(ステップS202)。
【0077】
ステップS202において、選択された検体の測定オーダにRET又はNRBC項目が含まれている場合には(ステップS202においてYES)、CPU51aは、RAM51cの測定ユニット状態データ領域S2を参照し、第2測定ユニット3の状態が「検体取込可」であるか否かを判別する(ステップS203)。ステップS203において、第2測定ユニット3の状態が「検体取込可」である場合には(ステップS203においてYES)、CPU51aは、第2測定ユニット3を搬送先に決定し(ステップS204)、処理を検体搬送先決定処理の呼出アドレスへリターンする。
【0078】
一方、ステップS203において、第2測定ユニット3の状態が「検体取込不可」である場合には(ステップS203においてNO)、CPU51aは、全ての優先順位の検体が選択されたか否か、即ち、要処理検体の全てが選択されたか否かを判別する(ステップS205)。ステップS205において、未選択の要処理検体が存在する場合には(ステップS205においてNO)、CPU51aは、次の優先順位の検体を選択し(ステップS206)、処理をステップS202へと移す。
【0079】
また、ステップS205において、未選択の要処理検体が存在しない場合には(ステップS205においてYES)、CPU51aは、搬送先を「なし」と決定し(ステップS207)、処理を検体搬送先決定処理の呼出アドレスへリターンする。
【0080】
ステップS202において、選択された検体の測定オーダにRET又はNRBC項目が含まれていない場合には(ステップS202においてNO)、CPU51aは、RAM51cの測定ユニット状態データ領域S1を参照し、第1測定ユニット2の状態が「検体取込可」であるか否かを判別する(ステップS208)。ステップS208において、第1測定ユニット2の状態が「検体取込可」である場合には(ステップS208においてYES)、CPU51aは、第1測定ユニット2を搬送先に決定し(ステップS209)、処理を検体搬送先決定処理の呼出アドレスへリターンする。
【0081】
一方、ステップS208において、第1測定ユニット2の状態が「検体取込不可」である場合には(ステップS208においてNO)、CPU51aは、ステップS203へと処理を移し、第2測定ユニット3が検体を取込可能な状態であるか否かを判別する。
【0082】
このように、選択された検体の測定オーダに第1測定項目が含まれており、第2測定項目が含まれていない場合には、第1測定ユニット2の状態が第2測定ユニット3の状態よりも先に確認される。したがって、第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3が何れも検体取込可能な状態であるときには、第1測定ユニット2、つまり、第2測定項目を測定することができない測定ユニットが搬送先として決定される。これにより、次に選択される要処理検体が、測定オーダに第1測定項目と第2測定項目とが含まれている検体及び測定オーダに第1測定項目が含まれているが第2測定項目が含まれていない検体の何れであっても、これらの検体を測定可能な第2測定ユニット3は検体取込可能な状態を維持しているため、第2測定ユニット3を搬送先として決定することができ、効率的に検体の処理を行うことができる。
【0083】
以上のような検体搬送先決定処理の後、CPU51aは、決定された搬送先が第1測定ユニット2又は第2測定ユニット3であるか否かを判定し(ステップS114)、決定された搬送先が第1測定ユニット2又は第2測定ユニット3の場合には(ステップS114においてYES)、検体搬送先決定処理において選択された検体をその搬送先へ搬送する(ステップS115)。なお、この処理においては、CPU51aは、搬送先が第1測定ユニット2の場合には、選択された検体を第1検体供給位置43aに位置させるよう検体搬送ユニット4を制御し、搬送先が第2測定ユニット3の場合には、選択された検体を第2検体供給位置43bに位置させるよう検体搬送ユニット4を制御する。
【0084】
この後、CPU51aは、後述する検体測定処理によって、搬送先として決定された第1測定ユニット2又は第2測定ユニット3を制御して検体の取込及び測定を行う。この検体測定処理が開始されると、後述するように、搬送先が第1測定ユニット2の場合には、測定ユニット状態データ領域S1が「検体取込不可」に書き換えられ、搬送先が第2測定ユニット3の場合には、測定ユニット状態データ領域S2が「検体取込不可」に書き換られる。また選択された検体を要処理検体から除外するために、選択された検体の検体処理テーブルPTにおける測定状況を「測定済」へ変更することにより、検体処理テーブルPTが更新される。CPU51aは、前述したステップS115の処理が終了した後には、ステップS103へ処理を戻す。
【0085】
一方、ステップS114において、検体搬送先決定処理によって決定された搬送先が「なし」の場合には(ステップS114においてNO)、CPU51aは、ステップS106へと処理を移し、検体処理テーブルPTを参照して、測定オーダが未確定の検体が存在するか否かを判定する(ステップS106)。
【0086】
また、ステップS106において、測定オーダが未確定の検体が存在しない場合には(ステップS106においてNO)、CPU51aは、処理をステップ103へ移し、状態キューQ1及びQ2を参照し、その時点における第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3の状態を示すデータを測定ユニット状態データ領域S1,S2に格納する(ステップS103)。
【0087】
ステップS104において、検体処理テーブルPTにおいて全ての検体の測定状況が「測定済」である場合には(ステップS104においてYES)、CPU51aは、ラック搬送部43によってサンプルラックLを分析後ラック保持部42へと搬送するよう、検体搬送ユニット4を制御し(ステップS116)、処理を終了する。この後、さらに分析前ラック保持部41にサンプルラックLが載置されており、センサによりこのサンプルラックLが検出された場合には、CPU51aはステップS101以降の処理を再度実行する。これにより、分析前ラック保持部41に載置されている全てのサンプルラックLがなくなるまで、検体の搬送処理が行われる。
【0088】
<検体測定処理>
次に、情報処理ユニット5による検体測定処理について説明する。図13は、検体分析装置1の情報処理ユニット5による検体測定処理の流れを示すフローチャートである。
【0089】
CPU51aは、測定ユニット状態データ領域S1が「検体取込可」であり、且つ、検体容器センサ45aによって第1検体供給位置43aに検体容器Tが検出された場合には、第1測定ユニット2による検体測定処理を実行する。一方、CPU51aは、測定ユニット状態データ領域S2が「検体取込可」であり、且つ、検体容器センサ45bによって第2検体供給位置43bに検体容器Tが検出された場合には、第2測定ユニット3による検体測定処理を実行する。なお、ここでは第1測定ユニット2による検体測定処理について説明する。
【0090】
第1測定ユニット2による測定処理において、まずCPU51aは、RAM51cの状態キューQ1に「検体取込不可」を入力する(ステップS301)。また、CPU51aは、この検体を要処理検体から除外するために、当該検体の検体処理テーブルPTにおける測定状況を「測定済」へ変更することにより、検体処理テーブルPTを更新する(ステップS302)。さらにCPU51aは、当該検体が要処理検体から除外されたため、ステップS112と同様の要処理検体の優先順位決定処理を実行する(ステップS303)。
【0091】
次にCPU51aは、第1検体供給位置43aにある検体容器Tを第1測定ユニット2内に取り込む検体容器取込処理を実行する(ステップS304)。図14は、情報処理ユニット5のCPU51aによる検体容器取込処理の手順を示すフローチャートである。まず、CPU51aは、検体容器搬送部25を制御し、第1検体供給位置43aにある検体容器TをサンプルラックLから抜き出し(ステップS401)、ハンド部25aを制御して検体容器Tを揺動させ、内部の検体を撹拌する(ステップS402)。次に、CPU51aは、ハンド部25aを制御して、検体容器セット部25bに検体容器Tをセットし(ステップS403)、さらに検体容器搬送部25を制御して、検体容器Tを吸引位置21aへ搬送する(ステップS404)。ステップS404の処理を完了した後、CPU51aは、処理を検体容器取込処理の呼出アドレスへリターンする。
【0092】
図13に戻って、検体容器取込処理S304が終了した後、CPU51aは、当該検体の測定オーダを参照し、測定項目から測定に必要な検体量を算出する(ステップS305)。次にCPU51aは、検体吸引部21を制御し、測定に必要な量の検体を検体容器Tから吸引する(ステップS306)。検体の吸引が完了した後には、CPU51aは、取り込んだ検体容器Tを第1検体供給位置43aに戻す検体容器排出処理を実行する(ステップS307)。図15は、情報処理ユニット5のCPU51aによる検体容器排出処理の手順を示すフローチャートである。まず、CPU51aは、検体容器搬送部25を制御し、吸引位置から検体容器セット部25bを移動させ、検体容器Tをハンド25aによって把持可能な位置まで搬送する(ステップS411)。次にCPU51aは、ハンド部25aを制御し、ハンド部25aによって検体容器Tを把持して、検体容器セット部25aから検体容器Tを抜き出す(ステップS412)。さらにCPU51aは、ハンド部25aを制御し、把持した検体容器Tを第1検体供給位置43aのサンプルラックLの保持位置へと挿入する(ステップS413)。ステップS413の処理を完了した後、CPU51aは、処理を検体容器排出処理の呼出アドレスへリターンする。
【0093】
図13に戻って、検体容器排出処理S307が終了した後には、第1測定ユニット2が検体取込可能な状態となるため、CPU51aは、RAM51cの状態キューQ1に「検体取込可」を入力する(ステップS308)。
【0094】
次にCPU51aは、試料調製部22を制御し、測定項目に対応した測定用試料を調製し(ステップS309)、検出部23に測定試料を供給して、検出部23により測定試料中の血球の検出を行う(ステップS310)。これにより、CPU51aは、検出部23から出力される測定データを取得する。その後、CPU51aは、測定に使用した流路又は反応チャンバ等を洗浄する洗浄動作を実行する(ステップS311)。
【0095】
また、CPU51aは、測定データの解析処理を実行し(ステップS312)、RBC、PLT、HGB、WBC、NEUT、LYMPH、EO、BASO、MONOの数値等、測定オーダに含まれる各測定項目についての分析結果を得る。ステップS312の処理を完了した後、CPU51aは、当該検体の再検(再測定)の要否を判定し、再検が必要な場合には再検に係る測定項目(以下、「再検項目」という)を決定する(ステップS313)。この処理は、例えば、CBC+DIFF項目を測定した場合、白血球(WBC)の数が第1の数値範囲内(正常範囲)に入っているときには、再検不要と判断される。また、WBCの数値が第1の数値範囲を越え、且つ、第2の数値範囲内であるときには、再検が必要と判断され、その再検項目は初検と同一のCBC+DIFF項目に決定される。さらに、WBCの数値が第2の数値範囲を越えるときには、再検が必要と判断され、その再検項目はCBC+DIFF項目及びNRBCに決定される。
【0096】
ステップS313の処理を完了した後、CPU51aは、再検が必要と判断されたか否かを判定し(ステップS314)、再検が必要と判断された場合には(ステップS314においてYES)、検体処理テーブルPTを更新する(ステップS315)。ステップS315の処理においては、CPU51aは、当該検体の測定オーダのデータを、ステップS313の処理で決定された再検項目で書き換え、測定状況のデータを「再検待ち」に書き換える。これにより当該検体は再度要処理検体となるため、CPU51aは、ステップS112と同様の要処理検体の優先順位決定処理を実行し(ステップS316)、その後処理を終了する。
【0097】
一方、再検が不要と判断された場合には(ステップS314においてNO)、CPU51aは、処理を終了する。
【0098】
なお、第2測定ユニット3による検体測定処理は、NRBC及びRETの第2測定項目を測定可能な他は、第1測定ユニット2による検体測定処理と同様であるので、その説明を省略する。
【0099】
次に、第1測定項目として、CBC+DIFF項目を測定項目に含み、第2測定項目であるNRBC及びRETの何れも測定項目に含まない検体(以下、「第1検体」という)と、第1測定項目としてCBC+DIFF項目と、第2測定項目としてNRBCとを測定項目に含む検体(以下、「第2検体」という)とが混在している具体的な例を用いて、上記の検体分析装置1の動作を説明する。以下では、図16に示すように、保持位置1、3、4、5、6、7、9、10には第1検体を、保持位置2、8には第2検体を保持しているサンプルラックLが検体分析装置1に投入された場合における検体分析装置1の動作を説明する。
【0100】
図17は、当該サンプルラックLが検体分析装置1に投入されたときの検体分析装置1の第1測定ユニット2、及び第2測定ユニット3の動作を示すタイミングチャートである。なお、図17における「検体取込」は、ステップS301〜S307の処理に相当し、以下の説明では、ステップS301〜S307の処理を「検体取込処理」と呼ぶ。また、図17における「検体測定」は、ステップS308〜S316の処理に相当する。
【0101】
まず、サンプルラックLが分析前ラック保持部41に投入されると、オペレータから情報処理ユニット5に検体測定の実行が指示されると、分析前ラック保持部41に載置されたサンプルラックLが検出され(図10におけるステップS101)、情報処理ユニット5において検体処理テーブルPTの領域が確保される(ステップS102)。図18A〜図18Iは、検体処理テーブルPTの状態を模式的に示す図である。この時点における検体処理テーブルPTの状態を図18Aに示す。この時点では、検体処理テーブルPTは全てのセルにデータが何も登録されていない状態となっている。
【0102】
次に、CPU51aによって状態キューQ1,Q2が参照され、状態キューQ1,Q2のそれぞれに最後に入力されたデータが測定ユニット状態データ領域S1,S2に格納される(ステップS103)。ここでは、状態キューQ1,Q2には初期値の「検体取込可」のみがいずれも入力されているため、測定ユニット状態データ領域S1,S2にはそれぞれ「検体取込可」が格納される。
【0103】
次に、CPU51aによって検体処理テーブルPTにおいて全検体の測定状況が「測定済」か否かが判定されるが(ステップS104)、検体処理テーブルPTの測定状況のフィールドF3に「測定済」のデータが登録されているレコードが1つもないため(ステップS104においてNO)、CPU51aの処理がステップS105へと進む。また、ステップS105において要処理検体が存在するか否かを判定されるが、検体処理テーブルPTには、要処理検体は1つもないため(ステップS105においてNO)、CPU51aの処理がステップS106へと進む。
【0104】
次に、CPU51aによって測定オーダが未確定の検体が存在するか否かが判定される(ステップS106)。ここで、検体処理テーブルPTには、測定オーダのフィールドF2に測定オーダの情報が格納されているレコードが1つも存在しない。つまり、測定オーダが未確定の検体しか存在しない(ステップS106においてNO)。よって、CPU51aは、処理をステップS107へ進める。
【0105】
次に、当該サンプルラックLに収容されている検体の内、測定オーダが未確定の検体の検体容器Tの1つが、バーコード読取部44の前側の読取位置43dまで搬送される(ステップS107)。ここでは、測定オーダが確定している検体が全くないため、保持位置1の検体が読取位置43dまで搬送される。次に、保持位置1の検体のバーコードから検体IDがバーコード読取部44により読み取られ(ステップS108)、保持位置1の検体の測定オーダ、即ち、CBC+DIFF項目を含み、第2測定項目を含まない測定オーダがCPU51aによりホストコンピュータ6から取得される(ステップS109,S110)。そして、検体処理テーブルPTが更新される(ステップS111)。このときの検体処理テーブルPTの状態を図18Bに示す。図に示すように、このときには、検体処理テーブルPTの保持位置1の行における測定オーダのフィールドF2に「CBC+DIFF」を示す情報、測定状況のフィールドF3に「未測定」を示す情報が格納される。
【0106】
次に、CPU51aにより、要処理検体の優先順位が決定される(ステップS112)。ここでは、保持位置1の検体に関する情報しか検体処理テーブルPTに格納されておらず、当該検体しか要処理検体に該当しないため、当該検体の優先順位が1位に決定される。また、検体処理テーブルPTにおいて、保持位置1の検体の優先順位のフィールドF4に「1」を示す情報が格納される。
【0107】
CPU51aによって、再度ステップS103の処理が実行され、CPU51aによって状態キューQ1,Q2が参照され、状態キューQ1,Q2のそれぞれに最後に入力されたデータが測定ユニット状態データ領域S1,S2に格納されるが(ステップS103)、ここでは、状態キューQ1,Q2にはデータが存在しないため、測定ユニット状態データ領域S1,S2のデータは変更されない。つまり、測定ユニット状態データ領域S1,S2にはそれぞれ「検体取込可」が格納されている。
【0108】
次に、ステップS104の処理が実行され、検体処理テーブルPTの測定状況のフィールドF3に「測定済」のデータが登録されているレコードが1つもないため(ステップS104においてNO)、ステップS105において要処理検体が存在するか否かを判定される。ここで、保持位置1の検体は、検体処理テーブルPTにおいて測定オーダの情報が存在し、且つ、測定状況が「未測定」であるため、要処理検体である。したがって、検体搬送先決定処理S113がCPU51aにより実行される。
【0109】
検体搬送先決定処理では、まず、CPU51aにより検体処理テーブルPTにおいて優先順位が1位の検体である保持位置1の検体が選択され(ステップS201)、当該検体の測定オーダに第2測定項目が含まれているか否かが判定される(ステップS202)。ここで、保持位置1の検体は第1検体であり、測定オーダに第2測定項目が含まれていないため(ステップS202においてNO)、RAM51cの測定ユニット状態データ領域S1により第1測定ユニット2が検体取込可能な状態か否かが判定される(ステップS208)。ここで、測定ユニット状態データ領域S1,S2には何れも「検体取込可」の情報が保持されている。したがって、第1測定ユニット2が検体取込可能であると判定され(ステップS208においてYES)、第1測定ユニット2が搬送先として決定され(ステップS209)、処理が検体搬送先決定処理S112の呼出アドレスへリターンされる。
【0110】
次に、CPU51aにより、決定された搬送先が第1測定ユニット2又は第2測定ユニット3であるか否かが判定され(ステップS114)、搬送先が第1測定ユニット2と決定されているため(ステップS114においてYES)、保持位置1の検体が第1検体供給位置43aへ搬送される(ステップS115)。
【0111】
ここで、測定ユニット状態データ領域S1が「検体取込可」であり、且つ、検体容器センサ45aによって第1検体供給位置43aに検体容器Tが検出されるため、CPU51aにより、第1測定ユニット2による検体測定処理が実行される。検体測定処理が開始されると、状態キューQ1に「検体取込不可」が入力され(ステップS301)、検体処理テーブルPTにおける保持位置1の検体の測定状況が「測定済」に書き換えられる(ステップS302)。また、保持位置1の検体が要処理検体ではなくなったため、検体処理テーブルPTにおける当該検体の優先順位の情報が削除される(ステップS303)。このときの検体処理テーブルPTの状態を図18Cに示す。
【0112】
次に、検体容器取込処理がCPU51aにより実行され(ステップS304)、サンプルラックLから保持位置1の検体容器Tが引き抜かれ、第1測定ユニット2の内部に取り込まれる(ステップS401〜S404)。
【0113】
保持位置1の検体容器Tが引き抜かれた状態でもサンプルラックLは搬送可能である。そこでCPU51aは、検体取込処理が実行されている間に、ステップS103以降の処理を再度実行する。この時点では、状態キューQ1に最後に入力されたデータが「検体取込不可」であるため、測定ユニット状態データ領域S1には「検体取込不可」の情報が格納される(ステップS103)。また、図18Cに示すように、保持位置1以外の検体の測定状況が「測定済」でなく(ステップS104においてNO)、要処理検体が存在せず(ステップS105においてNO)、しかも測定オーダが未確定の検体が存在するため(ステップS106においてYES)、保持位置2の検体の検体バーコードが読み取られ(ステップS107,S108)、当該検体の測定オーダがCPU51aによって取得される(ステップS109,S110)。ここで、保持位置2の検体は第2検体であり、測定オーダにはCBC+DIFF項目に加え、NRBCが含まれている。そして検体処理テーブルPTの保持位置2の行における測定オーダのフィールドF2に「CBC+DIFF、NRBC」を示す情報、測定状況のフィールドF3に「未測定」を示す情報が格納される(ステップS111)。さらに、保持位置2の検体しか要処理検体に該当しないため、当該検体の優先順位が1位に決定され、検体処理テーブルPTにおいて、保持位置2の検体の優先順位のフィールドF4に「1」を示す情報が格納される(ステップS112)。このときの検体処理テーブルPTの状態を図18Dに示す。
【0114】
CPU51aによって、再度ステップS103の処理が実行されるが、この時点では状態キューQ1,Q2にはデータが存在しないため、測定ユニット状態データ領域S1,S2のデータは変更されない。つまり、測定ユニット状態データ領域S1には「検体取込不可」が格納されており,測定ユニット状態データ領域S2には「検体取込可」が格納されている。
【0115】
また、図18Dに示すように、保持位置1以外の検体の測定状況が「測定済」でないため(ステップS104においてNO)、ステップS105において要処理検体が存在するか否かを判定される。ここで、保持位置2の検体は、検体処理テーブルPTにおいて測定オーダの情報が存在し、且つ、測定状況が「未測定」であるため、要処理検体である。したがって、検体搬送先決定処理S113がCPU51aにより実行される。
【0116】
検体搬送先決定処理において、まず、CPU51aにより検体処理テーブルPTにおいて優先順位が1位の検体である保持位置2の検体が選択され(ステップS201)、当該検体の測定オーダに第2測定項目が含まれているか否かが判定される(ステップS202)。ここで、保持位置2の検体は第2検体であり、測定オーダに第2測定項目が含まれているため(ステップS202においてYES)、RAM51cの測定ユニット状態データ領域S2により第2測定ユニット3が検体取込可能な状態か否かが判定される(ステップS203)。このとき、測定ユニット状態データ領域S2は「検体取込可」の情報が保持されている。したがって、第2測定ユニット3が検体取込可能であると判定され(ステップS203においてYES)、第2測定ユニット3が搬送先として決定され(ステップS204)、処理が検体搬送先決定処理S113の呼出アドレスへリターンされる。
【0117】
次に、CPU51aにより、決定された搬送先が第1測定ユニット2又は第2測定ユニット3であるか否かが判定され(ステップS114)、搬送先が第2測定ユニット3と決定されているため(ステップS114においてYES)、保持位置2の検体が第2検体供給位置43bへ搬送される(ステップS115)。
【0118】
ここで、測定ユニット状態データ領域S2が「検体取込可」であり、且つ、検体容器センサ45bによって第2検体供給位置43bに検体容器Tが検出されるため、CPU51aにより、第2測定ユニット3による検体測定処理が実行される。検体測定処理が開始されると、状態キューQ2に「検体取込不可」が入力され(ステップS301)、検体処理テーブルPTにおける保持位置2の検体の測定状況が「測定済」に書き換えられる(ステップS302)。また、保持位置2の検体が要処理検体ではなくなったため、検体処理テーブルPTにおける当該検体の優先順位の情報が削除される(ステップS303)。このときの検体処理テーブルPTの状態を図18Eに示す。
【0119】
次に、検体容器取込処理がCPU51aにより実行され(ステップS304)、上述した保持位置1の検体容器Tと同様に、サンプルラックLから保持位置2の検体容器Tが引き抜かれ、第2測定ユニット3の内部に取り込まれる(ステップS401〜S404)。なお、図17に示すように、上記の保持位置1の検体容器Tの検体取込処理も平行して実行されている。
【0120】
上記の検体容器Tの取込からこの検体容器Tの排出が完了するまでには、数十秒程度の時間を要する。そこで、保持位置1及び2の検体について、上記の検体取込処理が実行されている間に、CPU51aは、検体搬送制御処理を実行する。
【0121】
CPU51aは、第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3による検体取込処理が実行されている間に、ステップS103以降の処理を再度実行する。この時点では、状態キューQ2に最後に入力されたデータが「検体取込不可」であるため、測定ユニット状態データ領域S2には「検体取込不可」の情報が格納される。一方、状態キューQ1にはデータが入力されていないため、測定ユニット状態データ領域S1に格納されたデータは「検体取込不可」のまま変更されない(ステップS103)。
【0122】
図18Eに示すように、保持位置3〜10の検体の測定状況が「測定済」でなく(ステップS104においてNO)、要処理検体が存在せず(ステップS105においてNO)、保持位置3〜10の検体の測定オーダは未確定であるため(ステップS106においてYES)、保持位置3の検体の検体バーコードが読み取られ(ステップS107,S108)、当該検体の測定オーダがCPU51aによって取得される(ステップS109,S110)。ここで、保持位置3の検体は第1検体であり、測定オーダにはCBC+DIFF項目が含まれ、第2測定項目が含まれていない。よって、検体処理テーブルPTの保持位置3の行における測定オーダのフィールドF2に「CBC+DIFF」を示す情報、測定状況のフィールドF3に「未測定」を示す情報が格納される(ステップS111)。さらに、保持位置3の検体しか要処理検体に該当しないため、当該検体の優先順位が1位に決定され、検体処理テーブルPTにおいて、保持位置3の検体の優先順位のフィールドF4に「1」を示す情報が格納される(ステップS112)。このときの検体処理テーブルPTの状態を図18Fに示す。
【0123】
CPU51aによって、再度ステップS103の処理が実行され、この時点では状態キューQ1,Q2にはデータが存在しないため、測定ユニット状態データ領域S1,S2のデータは変更されない。つまり、測定ユニット状態データ領域S1,S2には「検体取込不可」がそれぞれ格納されている。
【0124】
図18Fに示すように、保持位置3〜10の検体の測定状況が「測定済」でないため(ステップS104においてNO)、ステップS105において要処理検体が存在するか否かを判定される。ここで、保持位置3の検体は、検体処理テーブルPTにおいて測定オーダの情報が存在し、且つ、測定状況が「未測定」であるため、要処理検体である。したがって、検体搬送先決定処理S113がCPU51aにより実行される。
【0125】
検体搬送先決定処理において、まず、CPU51aにより検体処理テーブルPTにおいて優先順位が1位の検体である保持位置3の検体が選択され(ステップS201)、当該検体の測定オーダに第2測定項目が含まれているか否かが判定される(ステップS202)。ここで、保持位置2の検体は第1検体であり、測定オーダに第2測定項目が含まれてないため(ステップS202においてNO)、RAM51cの測定ユニット状態データ領域S1により第1測定ユニット2が検体取込可能な状態か否かが判定される(ステップS208)。このとき、測定ユニット状態データ領域S1は「検体取込不可」の情報が保持されている。したがって、第1測定ユニット2が検体取込可能でないと判定される(ステップS208においてNO)。次に、RAM51cの測定ユニット状態データ領域S2により第2測定ユニット3が検体取込可能な状態か否かが判定される(ステップS203)。このとき、測定ユニット状態データ領域S2は「検体測定不可」の情報が保持されている。したがって、第2測定ユニット3が検体取込可能でないと判定される(ステップS203においてNO)。
【0126】
次に、CPU51aは、全ての優先順位の検体が選択されたか否かを判別する(ステップS205)。図18Fに示すように、優先順位が設定されている検体は保持位置3の検体のみであるため、全ての優先順位の検体が選択されている(ステップS205においてYES)。したがって、CPU51aは、搬送先を「なし」と決定し、処理を検体搬送先決定処理の呼出アドレスへリターンする。
【0127】
次に、CPU51aは、決定された搬送先が第1測定ユニット2又は第2測定ユニット3であるか否かを判定するが(ステップS114)、決定された搬送先は「なし」であるので(ステップS114においてNO)、検体処理テーブルPTを参照して、測定オーダが未確定の検体が存在するか否かを判定する(ステップS106)。ここで保持位置4〜10の検体の測定オーダは未確定であるため(ステップS106においてYES)、保持位置4の検体の検体バーコードが読み取られ(ステップS107,S108)、当該検体の測定オーダがCPU51aによって取得される(ステップS109,S110)。ここで、保持位置4の検体は第1検体であり、測定オーダにはCBC+DIFF項目が含まれ、第2測定項目が含まれていない。よって、検体処理テーブルPTの保持位置3の行における測定オーダのフィールドF2に「CBC+DIFF」を示す情報、測定状況のフィールドF3に「未測定」を示す情報が格納される(ステップS111)。さらに、CPU51aは、要処理検体の優先順位を決定する(ステップS112)。ここでは、保持位置3、4の検体が要処理検体に該当し、これらの検体は何れも測定オーダに第2測定項目が含まれていないため、サンプルラックの先頭側から後尾側へ向けて順番に優先順位が割り当てられる。つまり、保持位置3の検体の優先順位が「1」とされ、保持位置4の検体の優先順位が「2」とされる。さらに、検体処理テーブルPTにおいて、保持位置4の検体の優先順位のフィールドF4に「1」を示す情報が格納される。
【0128】
保持位置5〜7の検体は何れも第1検体であるため(図16参照)、上記の保持位置4の検体と同様の処理が繰り返し実行される(ステップS103〜S112)。これによって更新された検体処理テーブルPTの状態を図18Gに示す。図18Gに示すように、保持位置3の検体から保持位置の番号の小さいものから順に1〜5の優先順位が割り当てられる。
【0129】
保持位置8の検体は第2検体である(図16参照)。この保持位置8の検体についても、ステップS103〜S105については、上記の保持位置4〜7の検体と同様の処理が行われ、ステップS113の検体搬送先決定処理においても、保持位置4〜7の検体と同様に、搬送先が「なし」と決定される。さらに、ステップS106〜S111についても、保持位置4〜7の検体と同様の処理が実行される。
【0130】
ステップS112の優先順位決定処理においては、保持位置8の検体が第2検体であるため、上記のルール1により優先順位が1位に決定される。保持位置3〜7については、保持位置の番号の小さいものから順に2〜6の優先順位が割り当てられる。
【0131】
保持位置9,10の検体は何れも第1検体であるため(図16参照)、上記の保持位置4〜7の検体と同様の処理が繰り返し実行される(ステップS103〜S112)。また、優先順位は、ルール1により保持位置8の検体が1位とされ、保持位置3〜7、9、及び10の検体については、保持位置の番号の小さいものから順に2〜8の順位が割り当てられる。このときの検体処理テーブルPTの状態を図18Hに示す。
【0132】
また、上記の保持位置3〜10の検体についての検体バーコードの読み取り、測定オーダの取得、優先順位の決定の処理の途中に、保持位置1(又は2)の検体容器Tに係る検体容器取込処理が終了すると、即座にCPU51aにより、保持位置1(又は2)の検体について、測定に必要な検体量が算出され(ステップS305)、検体容器Tから検体が吸引され(ステップS306)、検体容器排出処理が実行される(ステップS307)。この際、保持位置3〜10の検体についての検体バーコードの読み取りに優先して、サンプルラックLの保持位置1(又は2)が第1検体供給位置43a(又は第2検体供給位置43b)に位置するように、サンプルラックLが搬送され、上記の検体容器排出処理により、サンプルラックLの保持位置1(又は2)に検体容器Tが戻される。例えば、保持位置5の検体のバーコード読み取りの最中に、保持位置1の検体容器Tに係る検体吸引処理S306が終了した場合には、保持位置5の検体のバーコードの読み取りが完了した後、サンプルラックLの保持位置1が第1検体供給位置43aに位置するようにサンプルラックLが搬送され、当該保持位置1に検体容器Tが戻される。サンプルラックLに検体容器Tが戻された後は、検体バーコード読み取りが再開され、残りの保持位置6〜10の検体に係る検体バーコードが読み取られる。
【0133】
なお、本例においては、保持位置1、2の検体取込処理が完了する前に、保持位置3〜10の検体バーコードの読み取り、測定オーダの取得、及び優先順位の決定が完了したものとする。
【0134】
その後、保持位置1の検体容器Tに係る検体容器取込処理が終了すると、CPU51aにより、当該検体について、測定に必要な検体量が算出され(ステップS305)、検体容器Tから検体が吸引され(ステップS306)、検体容器排出処理が実行される(ステップS307)。この際、サンプルラックLの保持位置1が第1検体供給位置43aに位置するように、サンプルラックLが搬送されている。したがって、上記の検体容器排出処理により、サンプルラックLの保持位置1に検体容器Tが戻される。
【0135】
またCPU51aにより、状態キューQ1に「検体取込可」が入力される(ステップS308)。そして、測定試料の調製(ステップS309)、血球の検出(ステップS310)、流路及び反応チャンバ等の洗浄(ステップS311)、測定データの解析処理(ステップS312)、再検の要否判定及び再検項目の決定(ステップS313〜S316)が実行される。なお、本例においては、ステップS313において保持位置1の検体の再検は不要と判断されたものとする。
【0136】
上述のように保持位置1の検体の第1測定ユニット2による検体容器排出処理が完了すると、CPU51aは、検体搬送先決定処理S113において、優先順位が1位の保持位置8の検体を最初に選択し(ステップS201)、この検体の測定オーダには第2測定項目が含まれているため(ステップS202においてYES)、ステップS203において第2測定ユニット3が検体取込可能か否かを判定する。この時点では、第2測定ユニット3は検体取込不可であり(ステップS203においてNO)、CPU51aは、優先順位が2位の保持位置3の検体を選択する(ステップS205、S206)。そして、保持位置3の検体は第1検体であるため(ステップS202においてNO)、CPU51aは第1測定ユニット2が検体取込可能か否かを判定する(ステップS208)。第1測定ユニット2は検体取込可能な状態であるため(ステップS208においてYES)、CPU51aは、第1測定ユニット2を搬送先に決定する(ステップS209)。そして、保持位置3の検体が第1測定ユニット2に取り込まれ、当該検体が測定される(図17参照)。
【0137】
なお、測定ユニットにおいて、測定試料の調製(ステップS309)、血球の検出(ステップS310)、流路及び反応チャンバ等の洗浄(ステップS311)、測定データの解析処理(ステップS312)、再検の要否判定及び再検項目の決定(ステップS313〜S316)が実行されている間に、当該測定ユニットにおいて検体容器取込処理の実行が可能であるため、第1測定ユニット2は、保持位置1の検体の測定処理と、保持位置3の検体の取込処理とを重複して実行する。
【0138】
また、保持位置2の検体容器Tに係る検体容器取込処理が終了すると、上記の保持位置1の検体と同様に、ステップS305、306、S307の処理が行われ、サンプルラックLの保持位置2に検体容器Tが戻される。そして、ステップS308〜S316の検体測定等の処理が実行される。
【0139】
保持位置3の検体についての第1測定ユニット2による検体容器排出処理が完了する前に、保持位置2の検体についての第2測定ユニット3による検体容器排出処理が完了する。CPU51aは、検体搬送先決定処理S113において、優先順位が1位の保持位置8の検体を最初に選択し(ステップS201)、この検体の測定オーダには第2測定項目が含まれているため(ステップS202においてYES)、ステップS203において第2測定ユニット3が検体取込可能か否かを判定する。第2測定ユニット3は検体取込可能な状態であるため(ステップS203においてYES)、CPU51aは、第2測定ユニット3を搬送先に決定する(ステップS204)。そして、保持位置8の検体が第2測定ユニット3に取り込まれ、当該検体が測定される(図17参照)。
【0140】
この時点における検体処理テーブルPTでは、保持位置1〜3、8の検体の測定状況が「測定済」となっている。このため、保持位置4の検体の優先順位が1位となっている。したがって、第1測定ユニット2による保持位置3の検体についての検体容器排出処理が完了すると、保持位置4の検体の搬送先が第1検体測定ユニット2に決定され、当該検体の第1測定ユニット2による検体取込処理が開始される(図17参照)。
【0141】
次に、保持位置8の検体についての第2測定ユニット3による検体容器排出処理が完了する。この時点における検体処理テーブルPTでは、保持位置1〜4、8の検体の測定状況が「測定済」となっている。このため、保持位置5の検体の優先順位が1位となっている。また、第1測定ユニット2は検体取込可能な状態になく、第2測定ユニット3は検体取込可能な状態にある。したがって、第2測定ユニット3による保持位置8の検体についての検体容器排出処理が完了すると、保持位置5の検体の搬送先が第2検体測定ユニット3に決定され、当該検体の第2測定ユニット3による検体取込処理が開始される(図17参照)。
【0142】
ここで、保持位置3の検体のWBCの数値が第1の数値範囲を越え、且つ、第2の数値範囲内である場合には、ステップS313において再検が必要と判断され、再検項目がCBC+DIFF項目及びNRBCに決定される。また、ステップS315において、検体処理テーブルPTの保持位置3の検体の測定オーダのデータがCBC+DIFF、NRBCに書き換えられ、測定状況のデータが「再検待ち」に書き換えられる。さらに、ステップS316において、優先順位が決定され、第2測定項目が測定オーダに含まれている保持位置3の検体の優先順位が1位となり、保持位置6、7、9、10の検体の優先順位が順に2、3、4、5となる。このときの検体処理テーブルPTの状態を図18Iに示す。
【0143】
そして、保持位置4の検体についての第1測定ユニット2による検体容器排出処理が完了する。この時点では、第1測定ユニット2は検体取込可能な状態にあるが、第2測定ユニット3は検体取込可能な状態にない。したがって、優先順位が1位の保持位置3の検体ではなく、優先順位が2位の保持位置6の検体の搬送先が第1検体測定ユニット2に決定され、当該検体の第1測定ユニット2による検体取込処理が開始される(図17参照)。
【0144】
次に、保持位置5の検体についての第2測定ユニット3による検体容器排出処理が完了する。ここで、第2測定ユニット3は検体取込可能な状態である。したがって、この時点で優先順位が1位の保持位置3の検体の搬送先が第2検体測定ユニット3に決定され、当該検体の第2測定ユニット3による2回目の検体取込処理が開始され、保持位置3の検体の再検が行われる(図17参照)。
【0145】
次に、保持位置6の検体についての第1測定ユニット2による検体容器排出処理が完了する。この時点における検体処理テーブルPTでは、保持位置1〜6、8の検体の測定状況が「測定済」であり、何れも第1検体である保持位置7、9、10の検体の測定状況が「未測定」である。このため、保持位置7の検体の優先順位が1位となっている。また、第1測定ユニット2は検体取込可能な状態である。したがって、第1測定ユニット2による保持位置6の検体についての検体容器排出処理が完了すると、保持位置7の検体の搬送先が第1検体測定ユニット2に決定され、当該検体の第1測定ユニット2による検体取込処理が開始される(図17参照)。
【0146】
次に、保持位置4の検体についての第2測定ユニット3による検体容器排出処理が完了する。この時点における検体処理テーブルPTでは、保持位置1〜8の検体の測定状況が「測定済」となっている。このため、保持位置9の検体の優先順位が1位となっている。また、第1測定ユニット2は検体取込可能な状態になく、第2測定ユニット3は検体取込可能な状態である。したがって、第2測定ユニット3による保持位置4の検体についての検体容器排出処理が完了すると、保持位置9の検体の搬送先が第2検体測定ユニット3に決定され、当該検体の第2測定ユニット3による検体取込処理が開始される(図17参照)。
【0147】
次に、保持位置7の検体についての第1測定ユニット2による検体容器排出処理が完了する。この時点における検体処理テーブルPTでは、保持位置1〜9の検体の測定状況が「測定済」であり、第1検体である保持位置10の検体の測定状況が「未測定」である。このため、保持位置10の検体の優先順位が1位となっている。また、第1測定ユニット2は検体取込可能な状態である。したがって、第1測定ユニット2による保持位置7の検体についての検体容器排出処理が完了すると、保持位置10の検体の搬送先が第1検体測定ユニット2に決定され、当該検体の第1測定ユニット2による検体取込処理が開始される(図17参照)。
【0148】
保持位置9、10の検体についての検体容器排出処理が完了すると、検体処理テーブルPTにおいて全ての検体の測定状況が「測定済」となる(ステップS103においてYES)。したがって、CPU51aは、保持位置9,10の検体についての検体測定処理が完了した後には、検体搬送ユニット4を制御し、サンプルラックLを分析後ラック保持部42へ搬送する。以上で、当該サンプルラックLに収容された全検体の分析が完了する。
【0149】
上記のような構成とすることにより、検体分析装置1をNRBC又はRETのような一部の検体に対してのみ測定される第2測定項目に対応させるために、第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3の両方において前記第2測定項目を測定可能な構成とする必要がなく、一方(本実施の形態においては第2測定ユニット3)のみを第2測定項目に対応させれば、検体分析装置1全体として第2測定項目に対応可能となる。また、図17に示すように、第1測定ユニット2が保持位置1の検体の取り込みを開始した後、保持位置10の検体の測定を終了するまでの間、第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3共に、検体の取り込み又は測定をしていない時間は殆んどなく、効率的に検体の測定を行えていることが分かる。
【0150】
(その他の実施の形態)
なお、上述した実施の形態においては、検体分析装置1が第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3の2つの測定ユニットを備える構成としたが、これに限定されるものではない。検体分析装置が第1測定項目について測定可能な3つ以上の測定ユニットを備え、その中の一部の測定ユニットが第2測定項目も測定可能な構成であってもよい。例えば、検体分析装置1が第1測定ユニット、第2測定ユニット及び第3測定ユニットの3つの測定ユニットを備えており、第1測定ユニットがCBC+DIFF項目に対応し、第2測定ユニットがCBC+DIFF項目及びNRBCに対応し、第3測定ユニットがCBC+DIFF項目及びRETに対応する構成が可能である。
【0151】
また、上述した実施の形態においては、サンプルラックLに収容されている複数の検体のうち、第1測定ユニット2により保持位置1の検体が取り込まれた後、残りの検体の検体バーコードを順番に読み取る構成について述べたが、これに限定されるものではない。オペレータから検体測定実行の指示を受け付け、且つ、分析前ラック保持部41に載置されたサンプルラックLを検出した後、最初の検体の取り込みが開始される前に、当該サンプルラックに保持された全ての検体の検体バーコードを一括して読み取り、これらの検体の測定オーダを全て情報処理ユニット5により取得し、全ての検体の優先順位を決定し、この優先順位並びに第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3の動作状態に基づいて検体の搬送を行う構成としてもよい。
【0152】
また、上述した実施の形態においては、単一のコンピュータ5aによりコンピュータプログラム54aの全ての処理を実行する構成について述べたが、これに限定されるものではなく、上述したコンピュータプログラム54aと同様の処理を、複数の装置(コンピュータ)により分散して実行する分散システムとすることも可能である。
【0153】
また、上述した実施の形態においては、第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3の両方がCBC項目及びDIFF項目について測定可能に構成されているが、これに限定されるものではなく、第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3の両方はCBC項目のみを測定可能に構成され、第2測定ユニット3のみがDIFF項目を測定可能に構成されてもよい。
【0154】
また、上述した実施の形態においては、CBC項目及びDIFF項目を第1測定項目とし、RET項目及びNRBC項目を第2測定項目とする構成について述べたが、これに限定されるものではない。複数の測定ユニットにおいて共通に測定可能な測定項目であれば、CBC項目及びDIFF項目以外の測定項目を第1測定項目としてもよく、複数の測定ユニットのうち一部の測定ユニットでのみ測定可能な測定項目であれば、RET項目及びNRBC項目以外の測定項目を第2測定項目としてもよい。即ち、第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3の両方がCBC項目、DIFF項目及びNRBC項目について測定可能に構成され、第2測定ユニット3のみがCBC項目、DIFF項目、NRBC項目及びRET項目について測定可能に構成されてもよい。この場合、CBC項目、DIFF項目及びNRBC項目が、複数の測定ユニットで共通に測定可能な測定項目である第1測定項目とされ、RET項目が、複数の測定ユニットのうち一部の測定ユニットでのみ測定可能な測定項目である第2測定項目とされる。
【0155】
また、上述した実施の形態においては、ラック搬送部43によって所定位置に搬送されたサンプルラックLからハンド部25aによって検体容器Tを抜き出し、抜き出された検体容器Tを取込口24を介して第1測定ユニット2の内部の吸引位置まで搬送し、吸引位置に搬送された検体容器T内の検体を吸引管で吸引することにより、第1測定ユニット2が検体の取り込みを行っているが、これに限定されるものではない。ラック搬送部43によって所定位置に搬送された検体容器T内の検体を、ラック搬送部43上において吸引管で第1測定ユニット2内に吸引することにより、第1測定ユニット2が検体の取り込みを行ってもよい。
【0156】
また、上述した実施の形態においては、単一の検体分析装置1内に設けられた2つの測定ユニット2,3に、検体搬送ユニット4により検体を搬送する構成について述べたが、これに限定されるものではなく、それぞれに検体搬送ユニットが設けられた2つの独立した測定装置を搬送ラインで接続し、搬送ラインで各測定装置に搬送された検体を検体搬送ユニットが受け取り、受け取った検体を測定装置内の測定ユニットに搬送する構成であってもよい。
【0157】
また、上述した実施の形態においては、情報処理ユニット5が、検体の測定オーダの取得処理と検体処理ユニット4の検体搬送制御処理とを実行しているが、これに限定されるものではなく、検体の測定オーダの取得処理と検体処理ユニット4の検体搬送制御処理とを別々の制御部によって実行してもよい。
【0158】
また、上述した実施の形態においては、第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3の動作状況に応じて上述の第1検体(第1測定項目のみを測定項目に含む検体)の搬送先の測定ユニットを決定している、すなわち、第1測定ユニット2が検体を取込可能な状態にあるか否かを確認し、第1測定ユニット2が検体を取込可能な状態にある場合には第1検体の搬送先を第1測定ユニット2に決定し、第1測定ユニット2が検体を取込可能な状態にない場合には第2測定ユニット3が検体を取込可能な状態にあるか否かを確認し、第2測定ユニット3が検体を取込可能な状態にある場合には第1検体の搬送先を第2測定ユニット3に決定しているが、これに限定されるものではない。例えば、サンプルラックLに複数の上記第1検体が保持されている場合には、これら複数の第1検体のうち6割の第1検体の搬送先を第1測定ユニット2に予め決定し、残り4割の第1検体の搬送先を第2測定ユニット3に予め決定しておくとともに、これら複数の第1検体の搬送順序を無作為に決定しておく構成であってもよい。このような構成であっても、従来に比して製品コストを低減しつつ、多くの測定項目に対応可能となる。
【0159】
また、上述した実施の形態においては、CPU51aがサンプルラックLに保持された要処理検体の優先順位を決定し、決定された優先順位に応じて検体搬送処理ユニット4による検体搬送動作を制御しているが、これに限定されるものではない。要処理検体の優先順位を決定せず、サンプルラックLの先頭側(搬送方向下流側)にある要処理検体から順番に測定ユニットに搬送するように検体搬送処理ユニット4を制御する構成であってもよい。このような構成であっても、従来に比して製品コストを低減しつつ、多くの測定項目に対応可能となる。
【0160】
また、上述した実施の形態においては、第1測定ユニット2の検出部23と第2測定ユニット3の検出部33とを同一のハードウェア構成にするとともに、第1測定項目用の測定用試薬を第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3の両方に搭載し、第2測定項目用の測定用試薬を第2測定ユニット3のみに搭載している。そして、第1測定ユニット2の測定動作をコンピュータプログラム54aに含まれる第1測定項目の測定に対応したスレッド(以下、「第1測定項目用スレッド」)を実行することによって制御し、第2測定ユニット3の測定動作を、第1測定項目用スレッド、及び、第2測定項目の測定に対応したスレッド(以下、「第2測定項目用スレッド」)を実行することによって制御している。これにより、第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3を第1測定項目について測定可能に構成し、第2測定ユニット3を、第1測定項目に加えて第2測定項目について測定可能に構成している。しかしながら、本発明はこれに限られない。
【0161】
例えば、第1測定ユニット2の検出部23を第1測定項目について測定可能なハードウェア構成とし、第2測定ユニット3の検出部33を、第1測定項目及び第2測定項目について測定可能なハードウェア構成、すなわち、第1測定ユニット2の検出部23とは異なるハードウェア構成とすることにより、第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3を第1測定項目について測定可能に構成し、第2測定ユニット3を、第1測定項目に加えて第2測定項目について測定可能に構成してもよい。なお、この場合には、第1測定ユニット2の測定動作は、上述の第1測定項目用スレッドを実行することによって制御され、第2測定ユニット3の測定動作は、第1測定項目用スレッド及び上述の第2測定項目用スレッドを実行することによって制御される。
【0162】
他にも、第1測定ユニット2の検出部23及び第2測定ユニット3の検出部33の両方を第1測定項目及び第2測定項目について測定可能なハードウェア構成にするとともに、測定ユニットに搭載されている試薬に応じて第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3の測定可能な測定項目が変更するようにしてもよい。例えば、第1測定項目用の測定用試薬及び第2測定項目用の測定用試薬が第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3の両方に搭載されていることがセンサなどにより検出された場合には、第1測定ユニット2及び第2測定ユニット3のそれぞれの測定動作を、第1測定項目用スレッド及び第2測定項目用スレッドを実行することによって制御してもよい。また、例えば、第1測定ユニット2に第1測定項目用の測定用試薬のみが搭載され、第2測定項目用の測定用試薬が搭載されていないことがセンサなどにより検出された場合には、第1測定ユニット2に関しては、第2測定項目用スレッドを実行せずに第1測定項目用スレッドを実行することによって測定動作を制御するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明の検体分析装置及び検体分析方法は、検体を測定する測定ユニットを複数備える検体分析装置及び当該検体分析装置によって検体を分析する検体分析方法として有用である。
【符号の説明】
【0164】
1 検体分析装置
2 第1測定ユニット
21 検体吸引部
22 試料調製部
23 検出部
3 第2測定ユニット
31 検体吸引部
32 試料調製部
33 検出部
4 検体搬送ユニット
41 分析前ラック保持部
42 分析後ラック保持部
43 ラック搬送部
5 情報処理ユニット
5a コンピュータ
51a CPU
51b ROM
51c RAM
51d ハードディスク
51e 読出装置
52 画像表示部
53 入力部
54 可搬型記録媒体
54a コンピュータプログラム
T 検体容器
L サンプルラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体の測定を行う第1測定部と、
検体の測定を行う第2測定部と、
検体が収容された検体容器を前記第1測定部及び前記第2測定部へ搬送する搬送部と、
前記検体容器内の検体の測定項目を示す測定項目情報を取得する測定項目情報取得部と、
前記測定項目情報取得部によって取得された測定項目情報に示される測定項目に第1測定項目及び前記第1測定項目とは異なる第2測定項目が含まれる場合には、当該測定項目情報に係る検体容器を前記第2測定部へと搬送し、前記測定項目情報取得部によって取得された測定項目情報に示される測定項目に前記第1測定項目が含まれており、前記第2測定項目が含まれていない場合には、当該測定項目情報に係る検体容器を前記第1測定部又は前記第2測定部へと搬送するように前記搬送部を制御する搬送制御部と、
を備える、検体分析装置。
【請求項2】
前記第1測定部は、前記第1測定項目について検体の測定を行い、前記第2測定項目については検体の測定を行わず、
前記第2測定部は、前記第1測定項目及び前記第2測定項目について検体の測定を行う、請求項1に記載の検体分析装置。
【請求項3】
前記搬送制御部は、前記測定項目情報取得部によって取得された測定項目情報に示される測定項目に前記第1測定項目が含まれており、前記第2測定項目が含まれていない場合には、前記第1測定部及び前記第2測定部の動作状況に応じて、当該測定項目情報に係る検体容器を前記第1測定部又は前記第2測定部へと搬送するように前記搬送部を制御するように構成されている、請求項1又は2に記載の検体分析装置。
【請求項4】
前記第1測定部及び前記第2測定部は、前記搬送部によって搬送された検体を取り込み、取り込まれた検体を測定するようにそれぞれ構成されており、
前記搬送制御部は、前記第1測定部及び前記第2測定部が検体を取込可能な状態にあるか否かをそれぞれ確認し、それぞれの確認結果及び前記測定項目情報に基づいて、前記搬送部による検体の搬送動作を制御するように構成されている、請求項1乃至3の何れかに記載の検体分析装置。
【請求項5】
前記搬送制御部は、前記第1測定部及び前記第2測定部の動作状況により、前記第1測定部に検体を搬送することが可能ではなく、前記第2測定部に検体を搬送することが可能な状態において、前記測定項目情報取得部により測定項目情報が取得された検体として、測定項目情報に示される測定項目に前記第1測定項目が含まれており、前記第2測定項目が含まれていない第1検体と、測定項目情報に示される測定項目に前記第1測定項目及び前記第2測定項目が含まれる第2検体とが存在する場合に、前記第2検体を前記第1検体よりも先に前記第2測定部へ搬送すべく前記搬送部を制御するように構成されている、請求項1乃至4の何れかに記載の検体分析装置。
【請求項6】
前記搬送制御部は、前記第1測定部及び前記第2測定部の動作状況により、前記第1測定部及び前記第2測定部のそれぞれに検体を搬送することが可能な状態において、前記測定項目情報取得部により測定項目情報が取得された検体として前記第1検体が存在する場合に、前記第1検体を前記第1測定部へ搬送すべく前記搬送部を制御するように構成されている、請求項5に記載の検体分析装置。
【請求項7】
前記測定項目情報取得部は、前記搬送部に存在する複数の検体のそれぞれの測定項目情報を取得するように構成され、
前記搬送制御部は、前記測定項目情報取得部により取得された測定項目情報に基づいて、前記複数の検体の搬送の優先順位を決定するように構成されている、請求項1乃至6の何れかに記載の検体分析装置。
【請求項8】
前記搬送制御部は、前記搬送部に存在する複数の検体の中で前記第1測定部又は前記第2測定部により測定された検体について、その測定結果に基づいて再測定が必要か否かを判定し、再測定が必要な場合には再測定に係る測定項目を決定し、前記複数の検体の中で前記第1測定部又は前記第2測定部による測定が行われていない検体に係る測定項目と前記再測定に係る測定項目とに基づいて前記複数の検体の搬送の優先順位を決定するように構成されている、請求項7に記載の検体分析装置。
【請求項9】
前記搬送制御部は、
前記測定項目情報取得部により測定項目情報が取得された検体から搬送対象の検体を選択し、
前記搬送対象の検体が前記第1検体である場合には、前記第1測定部及び前記第2測定部の動作状況に基づいて、前記搬送対象の検体の搬送の可否を決定し、
前記搬送対象の検体が前記第2検体である場合には、前記第2測定部の動作状況に基づいて、前記搬送対象の検体の搬送の可否を決定するように構成されている、請求項5又は6に記載の検体分析装置。
【請求項10】
前記搬送制御部は、前記搬送対象の検体を搬送しないことを決定した場合に、前記測定項目情報取得部により測定項目情報が取得された検体の中で搬送対象として選択されていない検体を、新たな搬送対象として選択するように構成されている、請求項9に記載の検体分析装置。
【請求項11】
前記第1測定部は、全血算測定項目、白血球分類測定項目及び有核赤血球測定項目を含む前記第1測定項目について血液検体の測定を行い、網状赤血球測定項目、及び幼若球測定項目の何れについても血液検体の測定を行わないように構成されており、
前記第2測定部は、全血算測定項目、白血球分類測定項目及び有核赤血球測定項目を含む前記第1測定項目、並びに網状赤血球測定項目、及び幼若球測定項目の少なくとも1つを含む前記第2測定項目について血液検体の測定を行うように構成されている、請求項2に記載の検体分析装置。
【請求項12】
前記第1測定部は、第1検出部を用いて前記第1測定項目について検体の測定を行うように構成され、
前記第2測定部は、前記第1検出部と同一構成の第2検出部を用いて前記第1測定項目及び前記第2測定項目について検体の測定を行うように構成されている、請求項2に記載の検体分析装置。
【請求項13】
検体が収容された検体容器を搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送された検体を取り込み、取り込まれた検体の測定を行う第1測定部と、
前記搬送部によって搬送された検体を取り込み、取り込まれた検体の測定を行う第2測定部と、
前記検体容器内の検体の測定項目を示す測定項目情報を取得する測定項目情報取得部と、
前記測定項目情報取得部により測定項目情報が取得された検体として、測定項目情報に示される測定項目に第1測定項目が含まれており、前記第1測定項目とは異なる第2測定項目が含まれていない第1検体と、測定項目情報に示される測定項目に前記第1測定項目及び前記第2測定項目が含まれる第2検体とが存在する場合に、前記第1測定部が検体を取込可能な状態になく、前記第2測定部が検体を取込可能な状態にある場合には、前記第2検体を前記第1検体よりも先に前記第2測定部に搬送するように前記搬送部を制御する搬送制御部と、
を備える、検体分析装置。
【請求項14】
第1測定項目について検体の測定を行い、前記第1測定項目とは異なる第2測定項目については検体の測定を行わない第1測定部と、前記第1測定項目及び前記第2測定項目について検体の測定を行う第2測定部とを備えた検体分析装置における検体分析方法であって、
測定対象の検体の測定項目に前記第1測定項目及び前記第2測定項目が含まれている場合には、前記検体が収容された検体容器を前記第2測定部へ搬送し、前記第2測定部により前記検体を測定する工程と、
測定対象の検体の測定項目に前記第1測定項目が含まれており、前記第2測定項目が含まれていない場合には、前記検体が収容された検体容器を前記第1測定部又は前記第2測定部へ搬送し、前記検体容器が搬送された前記第1測定部又は前記第2測定部により前記検体を測定する工程と、
を備える、検体分析方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図18D】
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【図18E】
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【図18F】
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【図18G】
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【図18H】
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【図18I】
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