説明

検体採取用綿棒及び当該綿棒を内部に備えた検体採取容器

【課題】 軟らかい便等検体でも硬めの普通の便等検体でも採取できるように工夫した検体採取用綿棒及び当該綿棒をキャップの内側に備えた検体採取容器を提供する。
【解決手段】 綿棒は、軸部の先端個所に吸湿性を備えた柔らかい素材を巻着してソフト部が構成されると共に当該ソフト部にプラスチック等硬い素材により構成されたを目の大きい籠状体を被せ着けることによりハード部が構成されたことを特徴とし、また検体採取容器は、上記綿棒をキャップの内側に固定されたことをを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸湿性を備えた柔らかい素材により構成されたソフト部とプラスチック等硬い素材により構成されたハード部とで外表面が形成された綿体部を軸部の先端に備えた綿棒及び当該綿棒をキャップの内側に備えた検体採取容器に関する。具体的には軟らかい便等検体でも硬めの普通の便等検体でも採取できるように工夫した検体採取用綿棒及び当該綿棒をキャップの内側に備えた検体採取容器に関する。
【0002】
本文中では、液状もしくはそれに近い状態の糞便を軟便(ナンベン)と表現し、その他の糞便を普通便(フツウベン)と表現することにする。
【背景技術】
【0003】
綿棒は、耳等人体の細部の清掃、精密機械の清掃、医療等に使用できる簡便な道具として広く利用されている。このように汎用されている綿棒は、吸湿性を備えた柔らかい素材により全体が構成された綿球部が軸部の先端に巻付けられた構成になっているものが多い。
【0004】
そこで、本発明者は、上記汎用の綿棒を使用して軟便の採取及び普通便の採取を試みた。その結果、軟便等検体は綿球部に吸湿付着させて比較的容易に採取できたが、普通便等検体は、綿球部に付着し難いため採取し難いことが判った。このためか、検便業界では軟便の採便、普通便の採便の両方ができるものとしては殆ど採用されていない。
【0005】
このようなことから、軟便の採取、普通便の採取の両方を難なくできる綿棒が待望されている。
【0006】
一方、採便用としてではなく耳清掃や化粧として、綿球部に粘着剤を付着させてから或いは付着させない状態で当該綿球部の所々を縮径するなどして凹凸形状部或いはスクリュー形状部を形成した綿棒(特許文献1)(特許文献2)(特許文献3)が提供されているが、いずれも綿球部の外表面の全体が一種類の柔らかい綿繊維、シリコン等素材のみにより構成されているだけであるので、軟便等検体と普通便等検体の両方を難なく採取するのには、些か不充分で向いていないものであった。なお、このことは、幾種類かを入手して試用することにより確かめることができた。
【0007】
しかして、本発明者は、吸湿性を備えた柔らかい素材により構成されたソフト部とプラスチック等硬い素材により構成されたハード部とで外表面が形成された綿体部を軸部の先端に備えた綿棒が、軟便等検体と普通便等検体の両方を難なく採取するのに極めて有効であることを突き止め、試行錯誤の結果、本発明を提案するに至ったものである。
【特許文献1】特許第3589624号公報
【特許文献2】特開平9−187369号公報
【特許文献2】実登3067719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、軟便等検体と普通便等検体の両方を難なく採取しうるようにした新規の検体採取用綿棒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に係る検体採取用綿棒にあっては、吸湿性を備えた柔らかい素材により構成されたソフト部とプラスチック等硬い素材により構成されたハード部とで外表面が形成された綿体部を軸部の先端部に設けたことを特徴とする。
【0010】
したがって、軟便等検体はソフト部により採取でき、当該採取した軟便等検体はハード部により補助的に保持できる。また普通便等検体はハード部により掻き取るようにしたりあるいは擦り取るようにしたりして採取でき、当該採取した普通便等検体はソフト部により補助的に保持できる。この場合、ソフト部とハード部の境目には軟便等検体、普通便等検体がいわゆる入り込んだ状態になって効率よく採便できる。このように請求項1に係る綿棒によれば軟便等検体でも、普通便等検体でも、その他のスラッジ状検体、ゼリー状検体でも効率よく採取することが可能になり、所期の目的を完全に果たすことができる。
【0011】
請求項2に係る検体採取用綿棒にあっては、請求項1に係る検体採取用綿棒に関し、軸部の先端個所に吸湿性を備えた柔らかい素材を巻着してソフト部を構成すると共に当該ソフト部にプラスチック等硬い素材により構成された目の大きい籠状体を被せ着けることによりハード部を構成したことを特徴とする。
【0012】
したがって、ソフト部及びハード部が共存した構成の綿棒が比較的簡単に効率よくかつ安価に提供できる。
【0013】
請求項3に係る検体採取用綿棒にあっては、請求項2に係る検体採取用綿棒に関し、籠状体の目が縦桟及び横桟により構成されたことを特徴とする。
【0014】
したがって、検体の採取の際には軸方向に動かしても回転させても容易に効率よく採取することができる。
【0015】
請求項4に係る検体採取用綿棒にあっては、請求項1に係る検体採取用綿棒に関し、軸部がプラスチック等硬い素材により構成され、ハード部が当該軸部の先端個所から一体に突設されたことを特徴とする。
【0016】
したがって、ハード部と軸部は、一体に構成することが可能であり、量産化、低コスト化に好都合であるのみならず画一的なハード部及びソフト部の構成が容易に可能になり、不揃いではない良品を提供し易い。
【0017】
請求項5に係る検体採取用綿棒にあっては、請求項4に係る検体採取用綿棒に関し、ハード部に溝状部を設け、この溝状部に吸湿性を備えた柔らかい素材を嵌め込んだ状態で巻着することによりソフト部が設けられたことを特徴とする。
【0018】
したがって、吸湿性を備えた柔らかい素材の巻着作業が簡単且つ容易にでき、良品の提供に好適であり、量産化、低コスト化に好都合である。また、ソフト部はハード部の溝状部内に納まりガードされた状態なっているために崩形を起しにくい利点があるのみならずハード部は、上記したような擦り取り等を行う場合には、ソフト部の後ろ当て部材として機能して採便を容易にし、素早い採便を可能にする。
【0019】
請求項6に係る検体採取用綿棒にあっては、請求項5に係る検体採取用綿棒に関し、溝状部がスクリュー形状であることを特徴とする。
【0020】
したがって、吸湿性を備えた柔らかい素材の巻き付け作業が不慣れな製造作業者でも不揃いのない良品を容易にできる。また上記したような擦り取り等を行う場合、回転操作を加えて効率よく検体の採取できる。
【0021】
請求項7に係る検体採取容器にあっては、上記請求項1乃至6のいずれか一つの請求項に係る検体採取用綿棒を採取体としてキャップの内側に固着されたことを特徴とする。
【0022】
したがって、上記請求項1乃至6に係る検体採取用綿棒において述べたような上記の諸効果を有する検体採取容器を提供できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、軟便等検体でも、普通便等検体でも効率よく採取することができる検体採取用綿棒及び当該綿棒をキャップの内側に備えた検体採取容器を提供するという所期の目的を完全に達成するができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1乃至図3は、本発明の第1実施の形態に係る検体採取用綿棒を示し、図1は全体の斜視図であり、図2はその断面図であり、図3はハード部構成部材及び軸部を示す斜視図である。
【0025】
この第1実施の形態に係る検体採取用綿棒1は、吸湿性を備えた柔らかい素材により構成されたソフト部2とプラスチック等硬い素材により構成されたハード部3とで外表面が形成された綿体部4が紙製軸部5の先端部に設けられたものである。軸部5はプラスチックにすることができる。
【0026】
上記ソフト部2は、軸部5の先端個所に吸湿性を備えた柔らかい素材を巻着して長円球体形状に構成され、またハード部3は、上記ソフト部2にプラスチック製の硬い素材により構成された目の大きい籠状体6を被せ着けることにより構成されている。なお、上記柔らかい素材は、滅菌したポリエステル脱脂綿であり、滅菌した綿花脱脂綿、レーヨン脱脂綿等で実施することができる。
【0027】
上記籠状体6は、図に示すように半割り球体の形状を呈し、頂部には軸穴部7が設けられ、周壁には周縁部8と縦桟部9と横桟部10により長方形の目11が他数個まで形成されているものであって、図3に示すように、軸穴部7に軸部5を通した状態で綿体部4の方向にスライドさせて押し込む要領により綿体部4に被せ止めるようにされたものである。なお、図には示していないが、上記押し込み止め状態を維持するための逆戻り防止部が設けられている。この逆戻り防止部を設けずに接着手段、カシメ手段、その他の止め手段により止めることでも実施できる。なお、周縁部8、縦桟部9及び横桟部10のエッジは検体を擦り取り或いは掻き取り易い角度、形にすることが望ましい。
【0028】
図4は、本発明の第2実施の形態に係る検体採取用綿棒13を示し、図4は要部の展開斜視図である。この第2実施の形態に係る検体採取用綿棒13は、籠状体6の構成が第1実施の形態に係る検体採取用綿棒1の籠状体6と異なっているが、その他は略同じ構成にしてあるものである。すなわち、籠状体6は、図4に示されているように一方端で相互に連結された二つ割体14、15から構成され、この二つ割体14、15を綿体部4の所定の個所に被せ閉じる要領で当該綿体部4に被せ止めるようにしてあるものである。なお、二つ割体14、15を被せ閉じ状態に維持する構成は、図に示していないが、掛部及び受部からなる係合手段や溶着・接着等接合手段を採用して実施することができる。
【0029】
また、図5及び図6は、本発明の第3実施の形態に係る検体採取用綿棒17を示し、図5は全体の一部切断側面図であり、図6は軸部及びハード部を示す側面図である。
【0030】
この第3実施の形態に係る検体採取用綿棒17は、その軸部18がプラスチック製の硬い素材により構成され、当該軸部18の先端個所から一体にハード部19が突設されている。このハード部19はスクリュー形状の溝状部20を有し、当該スクリュー形状溝状部20には吸湿性を備えた柔らかい素材を嵌め込んだ状態で巻着することによりソフト部21が設けられているものである。
【0031】
また、図7及び図8は、本発明の第4実施の形態に係る検体採取用綿棒23を示し、図7は全体の一部切断側面図であり、図6は軸部及びハード部を示す側面図である。
【0032】
この第4実施の形態に係る検体採取用綿棒23は、上記スクリュー形状の溝状部20をリング形状の溝状部24にした点が、上記第3実施の形態に係る検体採取用綿棒17と異なっているものである。したがって、他の同部位には同じ符号を付してその詳細説明は省略する。
【0033】
また、図9は、本発明の第5実施の形態に係る検体採取容器26を示すものであり、この図9は全体の断面図である。
【0034】
この第5実施の形態に係る検体採取容器26は、上記第1実施例に係る検体採取用綿棒1を採取体としてキャップ27の内側に固着して構成されたものであり、キャップ27を外し、これをツマミして上記検体採取用綿棒1により検体を採取するようにされたものである。
【0035】
本発明は、前記実施の形態1〜5に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1実施の形態を示す全体の斜視図である。
【図2】同じく要部の断面図である。
【図3】同じくハード部構成部材及び軸部を示す斜視図である。
【図4】本発明の第2実施の形態を示す要部の展開斜視図である。
【図5】本発明の第3実施の形態を示す全体の一部切断側面図である。
【図6】同じく軸部及びハード部を示す側面図である。
【図7】本発明の第4実施の形態を示す全体の一部切断側面図である。
【図8】同じく軸部及びハード部を示す側面図である。
【図9】本発明の第5実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 第1実施の形態に係る検体採取用綿棒
2 ソフト部
3 ハード部
4 綿体部
5 軸部
6 籠状体
7 軸穴部
8 周縁部
9 縦桟部
10 横桟部
11 目
13 第2実施の形態に係る検体採取用綿棒
14 二つ割体
15 二つ割体
17 第3実施の形態に係る検体採取用綿棒
18 軸部
19 ハード部
20 溝状部
21 ソフト部
23 第4実施の形態に係る検体採取用綿棒
24 溝状部
26 第5実施の形態に係る検体採取容器
27 キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸湿性を備えた柔らかい素材により構成されたソフト部とプラスチック等硬い素材により構成されたハード部とで外表面が形成された綿体部が軸部の先端部に設けられたことを特徴とする検体採取用綿棒。
【請求項2】
軸部の先端個所に吸湿性を備えた柔らかい素材を巻着してソフト部が構成されると共に当該ソフト部にプラスチック等硬い素材により構成された目の大きい籠状体を被せ着けることによりハード部が構成されたことを特徴とする請求項1記載の検体採取用綿棒。
【請求項3】
籠状体の目が、縦桟及び横桟により構成されたことを特徴とする請求項2記載の検体採取用綿棒。
【請求項4】
軸部がプラスチック等硬い素材により構成され、ハード部が当該軸部の先端個所から一体に突設されたことを特徴とする請求項1記載の綿棒。
【請求項5】
ハード部に溝状部を設け、この溝状部に吸湿性を備えた柔らかい素材を嵌め込んだ状態で巻着することによりソフト部が設けられたことを特徴とする請求項4記載の検体採取用綿棒。
【請求項6】
溝状部がスクリュー形状であることを特徴とする請求項5記載の検体採取用綿棒。
【請求項7】
上記請求項1乃至6いずれか一つの請求項に係る綿棒を採取体としてキャップの内側に固着されたことを特徴とする検体採取容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−242928(P2006−242928A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−96030(P2005−96030)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000248428)有限会社佐藤化成工業所 (5)
【Fターム(参考)】