説明

検出装置、電子機器及びロボット

【課題】外力を高い精度で検出する検出装置を提供する事。
【解決手段】外力を検出する検出装置1は、基準点Pの周りに圧力センサー12を複数個配置した第一基板10と、突起22を有する第二基板20と、を備える。第一基板10は可撓性を有する。突起は22、基準点Pと重なる位置に重心Gが位置し、先端部が圧力センサー12に当接する様に配置されている。第一基板10が外力に応じて変形するので、外力の大きさと方向とを高い精度で検出する検出装置1を提供する事ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置、電子機器及びロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
外力を検出する検出装置として、特許文献1及び2に記載の検出装置が知られている。このような検出装置は、タッチパネルやロボットの触覚センサー等への応用が検討されている。特許文献1の検出装置は、裏面に錘状突起が略均一に配置された受圧シートを用い、その突起の変形量から圧力分布を検出する構成となっている。特許文献2の検出装置は、受圧シートの表面に複数の柱状突起を格子状に配置し、これら表面突起の周辺部を等分した箇所の裏面に円錐状の突起を設けた構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−135834号公報
【特許文献2】特開平7−128163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の検出装置では、測定面にかかる外力の面内方向の力(滑り力)を測定できないという課題があった。又、特許文献2の検出装置では、外力を三次元の力ベクトルとして検出する事は可能であるが、突起の変形の度合いで外力の検出限界が制限されていた。以上の様に、特許文献1及び2の検出装置では、いずれも外力の大きさと方向とを高い精度で検出する事ができないという課題があった。
更に、特許文献1の検出装置では錘状突起が壊れ易く、特許文献2の検出装置では柱状突起が壊れ易かった。即ち、従来の検出装置では突起が破壊され易く、検出装置の寿命が短く、耐久性が低いという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決する為になされたものであり、以下の形態又は適用例として実現する事が可能である。
【0006】
(適用例1) 本適用例に係わる検出装置は、外力を検出する検出装置であって、基準点の周りに圧力センサーを複数個配置した第一基板と、突起を有する第二基板と、を備え、第一基板は可撓性を有し、突起は、基準点と重なる位置に重心が位置し、先端部が圧力センサーに当接する様に配置されている事を特徴とする。
この構成によれば、突起に当接する第一基板(複数の圧力センサー)が、外力に応じて変位したり変形したりする事が可能であるので、特許文献1や特許文献2の検出装置に比べて、外力の大きさと方向との検出精度を高める事ができる。具体的には、外力の作用方向に突起が存在する圧力センサーでは、強い圧力値が検出され、外力の作用方向に突起が存在しない圧力センサーでは、弱い圧力値が検出される。この結果、各圧力センサーで異なる値の圧力値が検出され、これらの検出値から滑り力(第一基板に平行に作用する外力の成分)を含む外力の大きさと方向とを高精度に計測する事ができる。
【0007】
(適用例2) 上記適用例に係わる検出装置において、外力が作用する面は、第一基板に設けられている事が好ましい。
この構成によれば、第一基板をなす一面から外力が加えられるので、突起を有する第二基板を固定させ、第一基板の変位や変形から外力を計測する事ができる。
【0008】
(適用例3) 上記適用例に係わる検出装置において、突起は硬質体で形成される事が好ましい。
この構成によれば、突起を丈夫な硬質体としているので、検出装置に外力が加えられても突起の変形や変位は非常に小さく、その為に外力を正確に計測する事ができる。又、検出装置の使用途上で突起が破損される可能性を低くできる。従って、検出装置の耐久性を高め、その寿命を延ばす事ができる。
【0009】
(適用例4) 上記適用例に係わる検出装置において、第一基板と第二基板とは、弾性体を介して接続されている事が好ましい。
この構成によれば、外力の作用に応じて第一基板の変位や変形が容易となるので、検出感度を高める事ができる。
【0010】
(適用例5) 上記適用例に係わる検出装置において、圧力センサーは、基準点に対して点対称に配置されている事が好ましい。
この構成によれば、基準点から各圧力センサーへの距離が、点対称の関係にある圧力センサー同士で等しくなるので、第一基板の変形量と各圧力センサーで検出される圧力値との関係が、点対称の関係にある圧力センサー同士で等しくなる。これがもし、圧力センサーが基準点からそれぞれに異なる距離に配置されていると、突起の変形量が同じであっても、各圧力センサーで検出される圧力値は皆異なった値となる。この為、検出値を用いて各種の演算する際に、各圧力センサーの配置位置に応じた補正係数が必要となる。一方、この構成によれば、第一基板の変形量と各圧力センサーが検出する圧力値との関係が、点対称の関係にある圧力センサー同士で等しくなるので、これらの圧力センサー同士では補正係数が不要となる。従って、各圧力センサーで検出された圧力値から外力の方向と大きさを演算する事が容易となり、外力を効率よく検出する事ができる。
【0011】
(適用例6) 上記適用例に係わる検出装置において、圧力センサーは、互いに直交する二方向に行列状に配置されている事が好ましい。
この構成によれば、外力が作用する第一基板の一面に対して、行方向又は列方向をX軸又はY軸と定義でき、外力のX軸成分とY軸成分とを分離して計測する事が容易にできる。即ち、滑り力を面内の二方向成分に分解する事が容易となる。
【0012】
(適用例7) 上記適用例に係わる検出装置において、圧力センサーは、互いに直交する二方向に少なくとも4行4列に配置されている事が好ましい。
この構成によれば、配置される圧力センサーの数が多くなるので、多数の圧力センサーで検出される多くの圧力値に基づいて、外力の作用する方向と大きさとを求める事ができる。即ち、外力を高い精度で検出する事ができる。
【0013】
(適用例8) 上記適用例に係わる検出装置において、突起は第二基板に複数個形成されており、突起は、互いに離間して配置されている事が好ましい。
検出装置では、複数の圧力センサーに対して一つの突起を以て単位検出領域としている。従って、この構成によれば、検出装置が複数個の単位検出領域を有している場合に、単位検出領域同士を互いに離間して配置する事ができる。従って、第一基板が弾性変形した際に、第一基板の一面に平行な方向への第一基板の変形量を或る程度許容する事ができる。即ち、第一の突起に対応する圧力センサーが、第一基板の変形の結果、第一の突起の隣に位置する第二の突起に当接して誤動作する事態を抑制できる。この為、複数の突起が互いに接触して配置されている場合に比べて、外力をより正確に検出する事ができる。
【0014】
(適用例9) 上記適用例に係わる検出装置において、圧力センサーで検出された圧力値と、基準点に対する圧力センサーの位置と、を変数とする関数の値を計算すると共に、値を用いて所定の演算を行う演算装置を備える事が好ましい。
この構成によれば、大規模な演算装置を用いずとも、小規模の簡単な演算装置にて比較的正確に外力の大きさと方向とを計測する事ができる。
【0015】
(適用例10) 本適用例に係わる電子機器は、上記適用例に係わる検出装置を備える事を特徴とする。
この構成によれば、上述した検出装置を備えているので、外力の方向と大きさとを高い精度で検出する事が可能な電子機器を提供する事ができる。
【0016】
(適用例11) 上記適用例に係わる電子機器において、筐体を備え、第二基板は筐体の一部をなしている事が好ましい。
この構成によれば、電子機器の製造が容易となると共に、検出装置が故障した際に第一基板を取り替えるだけで、容易に検出装置の故障を修理する事ができる。
【0017】
(適用例12) 本適用例に係わるロボットは、上記適用例に係わる検出装置を備える事を特徴とする。
この構成によれば、上述した検出装置を備えているので、外力の方向と大きさとを高い精度で検出する事が可能なロボットを提供する事ができる。
【0018】
(適用例13) 上記適用例に係わるロボットにおいて、把持部を備え、第二基板は把持部の一部をなしている事が好ましい。
この構成によれば、ロボットの製造が容易となると共に、検出装置が故障した際に第一基板を取り替えるだけで、容易に検出装置の故障を修理する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態1に係わる検出装置の概略構成を示す図。
【図2】実施形態1に係わる第一基板の概略構成を示す図。
【図3】単位検出領域に作用する外力を検出する方法を説明する図。
【図4】実施形態1に係わる単位検出領域Sの座標系を示す図。
【図5】実施形態1に係わる圧力センサーによる垂直方向の圧力分布を示す図。
【図6】実施形態1に係わる圧力センサーによる滑り方向の計算例を示す図。
【図7】実施形態2に係わる検出装置の概略構成を示す図。
【図8】実施形態2に係わる単位検出領域の座標系を示す図。
【図9】変形例1に係わる第一基板の概略構成を示す図。
【図10】携帯電話機の概略構成を示す模式図。
【図11】携帯情報端末の概略構成を示す模式図。
【図12】ロボットハンドの概略構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。かかる実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内にて任意に変更可能である。又、以下の各図においては、各構成を判り易くする為に、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。以下の説明においては、図1中に示されたXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材について説明する。XYZ直交座標系は、外力が作用していない状態で、X軸及びY軸が第一基板10に対して平行な方向に設定され、XY平面(z=0)を検出面(図1(a)の第一基板本体11の表面)と称す。又、Z軸が第一基板10に対して直交する方向(検出面の法線方向)に設定されている。尚、外力が検出面に作用した場合、第一基板10は変位や変形を起こすが、XYZ直交座標系はここに記述した方向と変わらず、不変である。
【0021】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係わる検出装置の概略構成を示す図であり、(a)は断面図で、(b)は平面図である。検出装置1は外力を検出し、図1(a)に示す様に、第一基板10と第二基板20と弾性体30とを備えている。前述の如く、第一基板10の表面が検出面となっており、検出面に作用した外力が、検出装置1に依って検出される。尚、第一基板10も第二基板20も基板の一面を表面と称し、表面に反対の他面を裏面と称している。本明細書では、Z軸の正の方向(図1(a)の上向き)に面する方を表面と称し、Z軸の負の方向(図1(a)の下向き)に面する方を裏面と称する。
【0022】
第一基板10には基準点Pが定められ、基準点Pの周りに圧力センサー12が複数個配置されている。第一基板10は第一基板本体11と圧力センサー12とを含み、圧力センサー12は薄膜状又は薄板状で第一基板本体11の裏面に設けられている。一方、第二基板20は第二基板本体21と突起22とを含み、突起22は第二基板本体21の表面に設けられている。突起22は、第二基板本体21の表面(底部)にてその幅(平面視で突起形状が円形の場合には直径)がもっとも広く、先端部に近づく程幅が狭くなっている。先端部における突起22の接平面は第一基板10にほぼ平行で、突起22の先端部は圧力センサー12に当接している。突起22の重心Gは基準点Pに重なっている。即ち、重心Gの(X、Y)座標と基準点Pの(X、Y)座標とはほぼ等しい。換言すると、基準点Pとは、第一基板10が変形や変位をしていない時に、突起22の中心と一致する場所である。第一基板10と第二基板20とは、両基板の外周部に配置された弾性体30を介して結合されている。
【0023】
図1(b)に示す様に、検出装置1には1個以上の突起22が設けられ、各突起22に対応して単位検出領域Sが定められる。一台の検出装置1に設けられる単位検出領域Sの数は1個でも良いが、複数個設けた方が外力の大きさと方向とを検出する感度が向上する。本実施形態では、一台の検出装置1に4個の突起22が設けられており、4個の単位検出領域Sが存在する。尚、一つの単位検出領域Sに一つの突起22が対応していれば良く、一台の検出装置1に設けられる突起22の数と単位検出領域Sの数とは異なっていても良い。即ち、一台の検出装置1に設けられる突起22の数が単位検出領域Sの数よりも多くても良い。
【0024】
単位検出領域Sの中心に重心Gが定められ、外力が加えられない状態でこの重心Gに平面視で一致する様に基準点Pが定められる。基準点Pの回りには圧力センサー12が複数個配置されている。1個の単位検出領域Sに配置される圧力センサー12の数は2個以上が好ましい。圧力センサー12の数が2個で有れば、これら2個の圧力センサー12を結ぶ直線方向の滑り力を検出できる。圧力センサー12の数が3個で有れば、滑り力をX成分とY成分とに分離できる。図1(b)に示される様に、圧力センサー12の数が4個で有れば、滑り力のX成分とY成分との分離が容易となる。これらに関しては後に詳述する。
【0025】
圧力センサー12は、基準点Pに対して点対称になる様に複数個が配置されている。図1(b)では圧力センサー12が、互いに直交する二方向(X方向及びY方向)に行列状に配置されている。具体的には、圧力センサー12は、単位検出領域S当たり縦2行横2列に合計4個配置されて、4個の圧力センサー12の中心(単位検出領域Sの中心)が基準点Pとなっている。これにより、基準点Pから各圧力センサー12への距離が、4個の圧力センサー12で総て等しくなるので、第一基板10の変形量と各圧力センサー12で検出される圧力値との関係が、4個の圧力センサー12で皆等しくなる。従って、各圧力センサー12で検出された圧力値から外力の方向と大きさとを演算する事が容易となり、外力を効率よく検出する事ができる。尚、検出された圧力値を用いた演算方法については後述する。
【0026】
単位検出領域Sの大きさ(平面視のサイズ)は、縦2.8mm×横2.8mm程度になっている。また、4つの圧力センサー12の各面積がほぼ等しくなっている。単位検出領域S内で隣り合う圧力センサー12の間隔は、0.1mm程度になっている。この為、外乱や静電気等の影響により隣り合う位置の圧力センサー12で検出される圧力値にノイズがのらない様になっている。
【0027】
第二基板20は、矩形板状の第二基板本体21と、第二基板本体21に配置された複数の突起22と、を具備して構成されている。第二基板本体21は、検出装置1の全体を支える部分であり、丈夫な硬質体で形成される事が好ましい。又、突起22も丈夫な硬質体で形成される事が好ましい。こうする事で突起22の耐久性を高め、検出装置1の製品寿命を長くできるからである。第二基板本体21や突起22に用いられる硬質体としては、じん性に優れた強固なプラスチックや金属等の材料が用いられ、突起22が高い耐衝撃性と耐久性とを備える様にする。本実施形態では、第二基板本体21及び突起22の形成材料として、ABS樹脂(アクリロニトリルとブタジエン、及びスチレンの共重合合成樹脂)が用いられ、第二基板本体21及び突起22を、金型を用いて一体形成してある。尚、硬質体とは、外力が作用しても、外力の検出に影響する様な変形や変位を殆ど生じない材質で、第一基板本体11よりも硬い物体である。
【0028】
突起22のサイズは任意に設定する事ができるが、複数の突起22は、互いに離間して配置される。この為、第一基板10が変位や変形を生じた時に、XY平面に平行な方向の変形を許容する事ができる。尚、ここでは、突起22の基部の径(突起22が第二基板20に接する部分の直径)は1.8mm程度になっている。突起22の高さ(突起22のZ方向の距離)は2mm程度になっている。隣り合う突起22の離間間隔は1mm程度になっている。
【0029】
更に、検出装置1は、不図示の演算装置を備えている。演算装置は、各圧力センサー12で検出された圧力値と、基準点Pに対するその圧力センサー12の位置と、を変数とする関数の値を計算すると共に、その関数にて計算された値を用いて所定の演算を行って、外力の大きさと方向とを特定する。
【0030】
図2は、実施形態1に係わる第一基板の概略構成を示す図であり、(a)は断面図で、(b)は平面図である。次に図2を参照して、第一基板10を説明する。図2(a)に示す様に、第一基板10は第一基板本体11と対向基板13と感圧材料14とを備える。本実施形態では、感圧材料14は感圧導電性弾性体である。感圧材料14は第一基板本体11の裏面と対向基板13の表面とで挟持され、第一基板本体11の表面が検出面である。検出装置はこの検出面に加えられた力を検出する。又、対向基板13の裏面には突起22が当接する。尚、第一基板10としては、上述の構造を反対にしても良い。即ち、感圧材料14を対向基板13の裏面と第一基板本体11の表面とで挟持し、対向基板13の表面を検出面とし、第一基板本体11の裏面に突起22が当接する様に配置しても良い。
【0031】
第一基板10は更に第一電極配線211と第二電極配線212とを備え、第一電極配線211は第一基板本体11の裏面に形成され、第二電極配線212は対向基板13の表面に形成されている。従って、第一電極配線211と第二電極配線212との間に感圧材料14としての感圧導電性弾性体が備えられている。圧力センサー12は第一電極配線211と第二電極配線212と感圧材料14とを含んで構成され、本実施形態では感圧抵抗方式となっている。一方、平面視においては、図2(b)に示される様に、第一電極配線211と第二電極配線212とは、帯状で、互いに交差される様に配置される。第一電極配線211と第二電極配線212との交点に形成された四角の重なり部が一つの圧力センサー12となる。圧力センサー12は、検出面に外力が作用した時に外力を電気信号に変換する。但し、圧力センサー12の方式については特に限定される事なく、この他に例えば、静電容量方式等を用いる事ができる。
【0032】
第一基板本体11と対向基板13は可撓性物質から成り、感圧材料14も可撓性を有する弾性物質であるので、第一基板10は可撓性を有する。第一基板本体11と対向基板13はポリイミドフィルムやポリエステルフィルムなどの各種プラスチックフィルムが用いられる。感圧材料14は、可撓性を有する誘電体物質でも構わず、この場合、第一電極配線211と第二電極配線212との間に誘電体物質が備えられて、圧力センサー12は静電容量方式となる。
【0033】
検出装置1では電気的な機能素子(圧力センサー12)や回路(圧力センサー12を結ぶ配線や圧力センサー12の選択回路等)が第一基板10に形成されており、第二基板20は硬質な突起22を備えているだけで、機能素子などは設けられていない。通常、検出装置1の故障はこうした機能素子や回路に生ずる。従って、検出装置1が故障した際には、第一基板10の交換で故障を直す事が可能となり、低コストで検出装置1を修理する事ができる。
【0034】
図3は、単位検出領域Sに作用する外力の方向と大きさとを検出する方法を説明する図である。図3(a)は第一基板10の表面に外力が付加される前の状態(外力の作用がない時)を示している。図3(b)は第一基板10の表面に垂直方向(滑り力がない状態)の外力Fが付加された状態を示している。図3(c)は第一基板10の表面に斜め方向(滑り力がある状態)の外力Fが付加された状態を示している。尚、説明を判り易くする為に、4個の圧力センサー12の内で、圧力センサーS1(12)と圧力センサーS2(12)の2個を描いてある。
【0035】
図3(a)に示す様に、第一基板10の表面に外力が付加される前においては、第一基板10は変形しない。これにより、第一基板10と第二基板20との間の距離は一定に保たれる。この時、基準点Pは突起22の重心Gと重なる位置に配置されている。この時の各圧力センサー12の圧力値は図示略のメモリーに記憶されている。メモリーに記憶された各圧力センサー12の圧力値を基準として外力の作用する方向や大きさが求められる。
【0036】
図3(b)に示す様に、第一基板10の表面に垂直方向の外力Fが付加された時には、複数の圧力センサー12は突起22の先端部に等しく押圧され、第一基板10はZ軸の負の方向に撓む。従って、この時の圧力センサー12の圧力値は、外力の作用がない時に比べて大きくなる。但し、その変化量は4個の圧力センサー12で、皆、略同じ値となる。
【0037】
図3(c)に示す様に、第一基板10の表面に斜め方向の外力が付加された時には、第一基板10は変位や変形を起こす。この際に、圧力センサーS1(12)の様に、突起22に強く押圧された圧力センサー12からは大きな圧力値が検出され、反対に圧力センサーS2(12)の様に、突起22に弱く押圧されたり、或いは押圧されなかったりする圧力センサー12からは小さな圧力値が検出される。即ち、第一基板10の変位や変形によって、各圧力センサー12で異なる値の圧力値が検出される。そして、後述する演算方法に基づいて外力の大きさと方向とが求められる。
【0038】
図4は、実施形態1に係わる単位検出領域Sの座標系を示す図である。図5は、実施形態1に係わる圧力センサーによる垂直方向の圧力分布を示す図である。図6は、実施形態1に係わる圧力センサーによる滑り方向の計算例を示す図である。次に各圧力センサー12にて計測された圧力値から外力の大きさと方向とを求める演算方法を説明する。
【0039】
外力Fの大きさと方向とを求めるには、一つの圧力センサー12で検出された圧力値と、基準点Pに対するその圧力センサー12の位置と、を変数とする関数の値を計算すると共に、得られた値を用いて所定の演算を行う。図4に示す様に、複数の圧力センサーS1(12)〜S4(12)は、単位検出領域S当たり縦2行横2列に計4つ配置されている。ここで、各圧力センサーS1(12)〜S4(12)が検出する圧力値(検出値)をそれぞれPS1、PS2、PS3、PS4とし、各圧力センサー12の面積をAとすると、外力のX方向成分Fx(外力の面内方向成分のうちX方向に作用する分力)は以下の式(1)で表される。
【0040】
【数1】

【0041】
また、外力のY方向成分Fy(外力の面内方向成分のうちY方向に作用する分力)は以下の式(2)で表される。
【0042】
【数2】

【0043】
尚、式(1)及び式(2)のfは検出装置1に固有な比例定数で力の単位を有する。また、外力のZ方向成分Fz(外力の垂直方向成分)は以下の式(3)で表される。
【0044】
【数3】

【0045】
本実施形態では、外力の成分を検出する際に法線成分Fzに関しては式(3)を用い、滑り力に関しては式(1)及び式(2)を用いる。滑り力に関しては、次の手順を踏む。まず、検出面上で第一軸(例えばX軸)と第二軸(例えばY軸)とを定める。第一軸に沿った滑り力の成分を検出するには、圧力値と圧力センサー12の位置とを変数とする関数として、基準点Pより第一軸の正の方向に位置する圧力センサー12(例えばS2(12)とS4(12))に関しては、+1を検出された圧力値に乗じ、第一軸の負の方向に位置する圧力センサー12(例えばS1(12)とS3(12))に関しては、−1を検出された圧力値に乗じ、これらの総和を取るものとする。次に、得られた数値(一軸差分と称する)を用いて所定の演算をする事で、第一軸に沿った滑り力の成分を求める。同様に、第二軸に沿った滑り力の成分を検出するには、基準点Pより第二軸の正の方向に位置する圧力センサー12(例えばS1(12)とS2(12))に関しては、+1を検出された圧力値に乗じ、第二軸の負の方向に位置する圧力センサー12(例えばS3(12)とS4(12))に関しては、−1を検出された圧力値に乗じ、これらの総和を取るものとする。次に、得られた数値(二軸差分と称する)を用いて所定の演算をする事で、第二軸に沿った滑り力の成分を求める。所定の演算の一例としては、先の数値(一軸差分や二軸差分)を、総ての圧力センサー12(例えばS1(12)〜S4(12))で検出された圧力値の総和にて除し、検出装置1に固有な比例定数fを乗ずる。
【0046】
式(1)に示す様に、外力のX方向成分Fxにおいては、4つの圧力センサーS1(12)〜S4(12)で検出された圧力値のうち+X方向に配置された圧力センサーS2(12)及びS4(12)で検出された値が組み合わされると共に、−X方向に配置された圧力センサーS1(12)及びS3(12)で検出された値が組み合わされる。この様に、+X方向に配置された圧力センサーS2(12)及びS4(12)の組み合わせによる圧力値と−X方向に配置された圧力センサーS1(12)及びS3(12)の組み合わせによる圧力値との差分に基づいて外力のX方向成分が求められる。
【0047】
式(2)に示す様に、外力のY方向成分Fyにおいては、4つの圧力センサーS1(12)〜S4(12)で検出された圧力値のうち+Y方向に配置された圧力センサーS1(12)及びS2(12)で検出された値が組み合わされると共に、−Y方向に配置された圧力センサーS3(12)及びS4(12)で検出された値が組み合わされる。この様に、+Y方向に配置された圧力センサーS1(12)及びS2(12)の組み合わせによる圧力値と−Y方向に配置された圧力センサーS3(12)及びS4(12)の組み合わせによる圧力値との差分に基づいて外力のY方向成分が求められる。
【0048】
式(3)に示す様に、外力のZ方向成分Fzにおいては、4つの圧力センサーS1(12)〜S4(12)の圧力値を足し合わせた合力で求められる。但し、外力のZ方向成分Fzは、外力のX方向成分Fx及び外力のY方向成分Fy(分力)に比べて検出値が大きく検出される傾向がある。例えば、第一基板本体11の材質として硬いものを用いたり、或いは突起22の先端部の形状を先鋭にしたりすると、外力のZ方向成分Fzの検出感度が高くなる。具体的には、第一基板10の材質として硬いものを用いると、第一基板10の変位や変形が生じにくくなり、外力の面内方向の検出値が小さくなってしまう。又、突起22の先端部の形状を先鋭にすると接触面を指で触った時のタッチ感に強い感度(違和感)を与える場合がある。この為、外力のZ方向成分Fzの検出値を、外力のX方向成分Fx及び外力のY方向成分Fyの検出値の感度と揃えるには、第一基板10に用いられて居る各構成基材の材質や突起22や形状によって決定される補正係数で検出値を適宜補正する必要がある。実際には、こうした影響を正しく補正する様に検出装置1に固有な比例定数fが定められる。
【0049】
図5は、検出装置1を15行15列の行列状(合計225個)に並べて、タッチパッドとした例で、各検出装置1は、単位検出領域Sに圧力センサーS1(12)〜S4(12)を縦2行横2列の合計4個配置している。図5では、タッチパッドの検出面の中央部より左上寄りの位置を指で斜めに押している。この時、外力の垂直方向の圧力は、外力が作用した部分の中心部が最も大きくなっている(圧力センサー12の出力電圧90〜120mV程度)。また、外力の垂直方向の圧力は、中心部に次いでその周辺部(60〜90mV程度)、最外周部(30〜60mV程度)の順に小さくなっている。また、指で押されていない領域は、圧力センサー12の出力電圧が0〜30mV程度となっている。
【0050】
図5に示すタッチパッドの検出面の中央部より左上寄りの位置を指で斜めに押した場合に外力の面内方向成分(滑り方向)の算出方法を考える。図6は、外力を算出する一例を示している。図6の例では、指の押圧力(外力)は、縦15行×横15列に配置された検出装置1の内の縦3行×横3列に配置された部分に作用している。外力の垂直方向の圧力は、図5と同様に、外力が作用した3行3列の中心部がもっとも大きくなっている(110mV)。各検出装置1は、それぞれ4つの圧力センサーS1(12)〜S4(12)を有しており、4つの圧力センサーS1(12)〜S4(12)からの出力の和が外力の法線成分となる(上述の式(3))。例えば、先の中央部の検出装置1では各圧力センサー12からの和は54mV+28mV+18mV+10mV=110mVとなっている。
【0051】
一方、各圧力センサーS1(12)〜S4(12)で検出された圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサー12で検出された圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外力が加えられた方向(滑り力の方向)が演算される。つまり、各検出装置1にて、上述した式(1)及び式(2)に基づいて外力のX方向成分Fx及び外力のY方向成分Fyが算出される。例えば、中心部の検出装置1ではFx=(28+10−54−18)/110f=−0.31f、Fy=(54+28−18−10)/110f=0.49fとなっている。従ってtanθ=−0.49/0.31=−1.58となり、滑り力の方向はθ=122°である。この様に9個の検出装置1にて検出された滑り力の方向の平均を取ると、+X方向を基準として反時計回りに約123°の方向に外力が作用している事が分かる。尚、外力の作用する方向の算出にあっては、ここで行われた様に複数の検出装置1から算出された結果の平均値で求める方法の他に、例えば、複数の検出装置1から算出された結果の最大値を採用する方法や、所定の閾値よりも大きい検出値を採用する方法等を用いる事ができる。
【0052】
本実施形態の検出装置1によれば、突起22に当接する第一基板10が、外力Fに応じて変位したり変形したりする事が可能であるので、特許文献1や特許文献2の検出装置に比べて、外力の大きさと方向との検出精度を高める事ができる。具体的には、外力の作用方向に突起22が存在する圧力センサー12では、強い圧力値が検出され、外力の作用方向に突起22が存在しない圧力センサー12では、弱い圧力値が検出される。この結果、各圧力センサー12で異なる値の圧力値が検出され、これらの検出値から滑り力を含む外力の大きさと方向とを高精度に計測する事ができる。又、第一基板10をなす一面から外力が加えられるので、突起22を有する第二基板20を固定させる事ができる。更に、突起を丈夫な硬質体としているので、計測精度が向上すると共に、検出装置の使用途上で突起が破損される可能性を低くでき、検出装置の耐久性を高め、その寿命を延ばす事ができる。
【0053】
又、複数の圧力センサー12が基準点Pに対して点対称に配置されているので、基準点Pと各圧力センサー12との間の距離が互いに等しくなる。この為、各圧力センサーS1(12)〜S4(12)の位置と圧力値から外力の方向と大きさを演算する事が容易となり、外力を効率よく検出する事ができる。
【0054】
又、複数の圧力センサー12が互いに直交する二方向に行列状に配置されているので、各圧力センサーS1(12)〜S4(12)で検出された圧力値から外力の方向と大きさを演算する事が容易となる。換言すれば、外力を効率よく検出する事ができる。
【0055】
又、複数の突起22が互いに離間して配置されているので、第一基板10が変位や変形した時の検出面に平行な方向の変形を許容する事ができる。この結果、外力の方向と大きさを高い精度で検出する事ができる。
【0056】
(実施形態2)
図7は、実施形態2に係わる検出装置の概略構成を示す図であり、(a)は断面図で、(b)は平面図である。以下、本実施形態に係わる検出装置2について説明する。尚、実施形態1と同一の構成部位については、同一の符号を附し、重複する説明は省略する。
【0057】
本実施形態の検出装置2は、複数の圧力センサー12が互いに直交する二方向に少なくとも縦4行横4列に配置されている点で、上述の実施形態1で説明した検出装置1と異なる。尚、図7においては、便宜上、複数の圧力センサー12が単位検出領域S当たり縦4行横4列に配置されているが、実際には図8に示す様に複数の圧力センサー12が単位検出領域S当たり縦4行横4列以上に配置されていても良い。
【0058】
図7(a)に示す様に、検出装置2は、基準点Pの回りに複数個配置された圧力センサー12を有する第一基板10と、先端部が第一基板10に当接している突起22が形成された第二基板20と、を備えている。又、図7(b)に示す様に、複数の圧力センサー12は、互いに直交する二方向(X方向及びY方向)に縦4行横4列に計16個配置されている。これら16個の圧力センサー12の中心(単位検出領域Sの中心)が基準点Pとなっており、基準点Pの(X、Y)座標は重心Gの(X、Y)座標にほぼ一致している。
【0059】
図8は、図4に対応した、実施形態2に係わる単位検出領域Sの座標系を示す図である。尚、図8において、複数の圧力センサーSi(12)(100個)が行列状に配置されており、このうちの25の圧力センサーSi(12)がそれぞれ−X方向及び+Y方向に区画された領域、+X方向及び+Y方向に区画された領域、−X方向及び−Y方向に区画された領域、+X方向及び−Y方向に区画された領域に配置されている。また、図8においては、便宜上、100個の圧力センサーSi(12)を図示しているが、圧力センサーSi(12)の配置数はこれに限らず任意に変更する事ができる。
【0060】
図8に示す様に、複数の圧力センサーSi(12)は、単位検出領域S当たり縦10行横10列に計100個配置されている。ここで、各圧力センサーSi(12)が検出する圧力値(検出値)をそれぞれPi(i=1〜100)、基準点Pと各圧力センサーSi(12)との間の距離の面内方向成分をri(i=1〜100)とする。また、面内方向成分のうちX方向成分をrxi(i=1〜100)、面内方向成分のうちY方向成分をryi(i=1〜100)とすると、外力のX方向成分Fx(外力の面内方向成分のうちX方向に作用する分力)は以下の式(4)で表される。
【0061】
【数4】

【0062】
また、外力のY方向成分Fy(外力の面内方向成分のうちY方向に作用する分力)は以下の式(5)で表される。
【0063】
【数5】

【0064】
尚、式(4)及び式(5)のgは検出装置2に固有な比例定数で力/長さの単位を有する。また、外力のZ方向成分Fz(外力の垂直方向成分)は以下の式(6)で表される。式(6)のAは、一つの圧力センサー12の面積である。
【0065】
【数6】

【0066】
本実施形態では、外力の成分を検出する際に法線成分Fzに関しては式(6)を用い、滑り力に関しては式(4)及び式(5)を用いる。滑り力の検出に関しては、次の手順を踏む。まず、検出面上で第一軸(例えばX軸)と第二軸(例えばY軸)とを定める。第一軸に沿った滑り力の成分を検出するには、各圧力センサー12で検出された圧力値を距離の第一軸成分で重み付けし、これら重み付けされた圧力値(第一モーメントと称する)の総和を用いて所定の演算をする事で求める。同様に、第二軸に沿った滑り力の成分を検出するには、各圧力センサー12で検出された圧力値を距離の第二軸成分で重み付けし、これら重み付けされた圧力値(第二モーメントと称する)の総和を用いて所定の演算をする事で求める。所定の演算の一例としては、重み付けされた圧力値の総和(第一モーメントの総和や第二モーメントの総和)を、総ての圧力センサー12で検出された圧力値の総和にて除し、検出装置2に固有な比例定数gを乗ずる。
【0067】
式(4)に示す様に、第一軸をX軸とし、外力のX方向成分Fxを求めるには、100個の圧力センサーSi(12)で検出された圧力値を用いて100個の第一モーメントを求めて和を取り、これを総ての圧力センサー12で検出された圧力値の総和にて除し、検出装置2に固有な比例定数gを乗ずる。
【0068】
同様に、式(5)に示す様に、第二軸をY軸とし、外力のY方向成分Fyを求めるには、100個の圧力センサーSi(12)の圧力値を用いて100個の第二モーメントを求めて和を取り、これを総ての圧力センサー12で検出された圧力値の総和にて除し、検出装置2に固有な比例定数gを乗ずる。
【0069】
式(6)に示す様に、外力のZ方向成分Fzを求めるには、100個の圧力センサーSi(12)で検出された圧力値を足し合わせ、これに一つの圧力センサー12の面積Aを乗ずる。但し、外力のZ方向成分Fzは、外力のX方向成分Fx及び外力のY方向成分Fyに比べて検出値が大きく検出される傾向がある。この為、外力のZ方向成分Fzの検出値を、外力のX方向成分Fx及び外力のY方向成分Fyの検出値の感度と揃えるには、第一基板10の材質や突起22や形状によって決定される補正係数で検出値を適宜補正する必要がある。具体的には、こうした影響を正しく補正する様に検出装置2に固有な比例定数gが定められる。
【0070】
本実施形態の検出装置2によれば、複数の圧力センサー12が互いに直交する二方向に少なくとも縦4行横4列に配置されているので、配置される圧力センサー12の数が多くなる。この為、多数の圧力センサー12で検出された圧力値に基づいて、外力の作用する方向と大きさとをより正確に求める事ができる。
【0071】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加える事が可能である。変形例を以下に述べる。
【0072】
(変形例1)
図9は、変形例1に係わる第一基板の概略構成を示す図であり、(a)は断面図で、(b)は平面図である。次に図9を参照して、変形例1に係わる第一基板10を説明する。図2に示す実施形態1では、対向基板13が設けられていたが、これは必須ではなく、本変形例では対向基板13を省いている。図9(a)に示す様に、第一基板10は第一基板本体11と感圧材料14とを備える。感圧材料14は第一基板本体11の裏面に接着され、第一基板本体11の表面が検出面である。突起22は直に感圧材料14に当接する。実施形態1と同様に、第一基板本体11と感圧材料14とは可撓性を有する物質であるので、第一基板10は可撓性を有する。尚、第一基板10としては、上述の構造を反対にしても良い。即ち、感圧材料14を第一基板本体11の表面に接着し、感圧材料14の表面を検出面とし、第一基板本体11の裏面に突起22が当接する様に配置しても良い。
【0073】
第一基板10は第一電極配線211と第二電極配線212とを備え、第一電極配線211も第二電極配線212も第一基板本体11の裏面に形成される。従って、第一基板10の水平方向(XY平面に平行な方向)に関する感圧材料14の電気特性が検出される。一方、平面視においては、図9(b)に示される様に、第一電極配線211と第二電極配線212とは、帯状で、ほぼ平行となる様に配置される。第一電極配線211と第二電極配線212とに挟まれた四角形が一つの圧力センサー12となる。本変形例では感圧材料14として、感圧導電性弾性体が用いられているので、圧力センサー12は、水平方向の電気抵抗Rを計測する。但し、圧力センサー12の方式については特に限定される事なく、この他に例えば、静電容量方式等を用いる事ができる。検出感度を高めるには、隣り合う圧力センサー12で、同極性となる電極配線が隣接するように配置するのが好ましい。即ち、第一電極配線211も第二電極配線212もY軸に平行なので、圧力センサーS1(12)とS3(12)では、圧力センサー12の内で第一電極配線211が右側(X軸の正の側)に設けられ、第二電極配線212が左側(X軸の負の側)に設けられている。これに対して、圧力センサーS2(12)とS4(12)では、圧力センサー12の内で第一電極配線211が左側(X軸の負の側)に設けられ、第二電極配線212が右側(X軸の正の側)に設けられている。尚、圧力センサー12の数が増えた際には、第一電極配線211や第二電極配線212と、外部の演算装置とを結ぶ配線を圧力センサー12間の隙間や第一基板本体11の外周部に設ける事ができる。
【0074】
本変形例に示す様に、対向基板13は省略できるので、容易に第一基板10を製造することが出来る。
【0075】
(電子機器)
検出装置1乃至2は、検出面に加えられた外力の大きさと方向とを検出するタッチパッド等に使用され、例えば、ノートパソコン等の電子機器においてマウスの代わりのポインティングデバイスとして用いられる。この際に、電子機器は筐体を備え、第二基板20は筐体の一部をなしている事が好ましい。即ち、筐体が第二基板本体21を兼用しており、筐体に直に突起22が設けられていても良い。こうする事で検出装置1乃至2が故障した際に、第一基板10を交換する事で、容易に修理が完了するからである。
【0076】
図10は、上記実施形態に係わる検出装置1乃至2、又は、上記変形例に記述された第一基板10を用いた検出装置1乃至2、を適用した携帯電話機の概略構成を示す模式図である。携帯電話機1000は、複数の操作ボタン1003及びスクロール装置1002、並びに表示部としての液晶パネル1001、を備えている。検出装置1は平面状のスクロール装置1002に用いられ、スクロール装置1002を操作する事によって、液晶パネル1001に表示される画面がスクロールされる。液晶パネル1001にはメニューアイコン(図示略)が表示される。例えば、スクロール装置1002を操作して、電話帳のメニューアイコンを選択すると、液晶パネル1001に電話帳が表示されたりする。
【0077】
図11は、上記実施形態に係わる検出装置1乃至2、又は、上記変形例に記述された第一基板10を用いた検出装置1乃至2、を適用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)の概略構成を示す模式図である。携帯情報端末2000は、複数の操作ボタン2002及びタッチパッド2003、並びに表示部として液晶パネル2001を備えている。検出装置1はタッチパッド2003に用いられ、タッチパッド2003を操作する事によって、液晶パネル1001に表示されるポインターが移動されたり、或いはメニューが選択されたりする。例えば、タッチパッド2003を介してポインターを住所録メニューアイコン(図示略)に移動させ、そこで選択動作を施す事に依り、住所録が表示される。
【0078】
このような電子機器によれば、上述した検出装置1乃至2を備えているので、外力の方向と大きさを高い精度で検出する電子機器を提供する事ができる。又、検出装置1乃至2が故障した際には、容易に修理を施す事ができる。
【0079】
尚、電子機器としては、この他にも、例えばパーソナルコンピューター、ビデオカメラのモニター、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、デジタルスチルカメラ、タッチパネルを備えた機器等が挙げられる。これらの電子機器に対しても、本発明に係わる検出装置1乃至2を適用させる事ができる。
【0080】
(ロボット)
図12は、上記実施形態に係わる検出装置1乃至2、又は、上記変形例に記述された第一基板10を用いた検出装置1乃至2、を適用したロボットの概略構成を示す模式図である。図12(a)に示す様に、ロボット3000は、本体部3003及び一対のアーム部3002、並びに検出装置1乃至2を適用した把持部3001を備えている。例えば、リモコン等の制御装置によりアーム部3002に駆動信号を送信すると、一対のアーム部3002が開閉動作する。ここで、第二基板20が把持部3001の一部をなしていても良い。即ち、把持部3001が第二基板本体21を兼用しており、把持部3001に直に突起22が設けられていても良い。こうする事で検出装置1乃至2が故障した際に、第一基板10を交換する事で、容易に修理が完了するからである。
【0081】
図12(b)に示す様に、ロボット3000でコップ等の対象物3010を把持する場合を考える。この時、対象物3010に作用する把持力は把持部3001で圧力として検出される。ロボット3000は、把持部3001として上述した検出装置1乃至2を備えているので、対象物3010の表面(接触面)に垂直な方向の力と併せて重力Mgですべる方向の力(滑り力)を検出する事が可能である。例えば、柔らかい物体を変形させたり滑り易い物体を落としたりしない様に、対象物3010の質感に応じて力を加減しながら把持する事ができる。
【0082】
このロボットによれば、上述した検出装置1乃至2を備えているので、把持力の方向と大きさを高い精度で検出する事が可能なロボットを提供する事ができる。
【符号の説明】
【0083】
1…検出装置、2…検出装置、10…第一基板、11…第一基板本体、12…圧力センサー、13…対向基板、14…感圧材料、20…第二基板、21…第二基板本体、22…突起、30…弾性体、211…第一電極配線、212…第二電極配線、1000…携帯電話機、1002…スクロール装置、2000…携帯情報端末、2003…タッチバッド、3000…ロボット、3001…把持部、3010…対象物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外力を検出する検出装置であって、
基準点の周りに圧力センサーを複数個配置した第一基板と、
突起を有する第二基板と、を備え、
前記第一基板は可撓性を有し、
前記突起は、前記基準点と重なる位置に重心が位置し、先端部が前記圧力センサーに当接する様に配置されている事を特徴とする検出装置。
【請求項2】
前記外力が作用する面は、前記第一基板に設けられている事を特徴とする請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記突起は、硬質体で形成されている事を特徴とする請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記第一基板と前記第二基板とは、弾性体を介して接続されている事を特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項5】
前記圧力センサーは、前記基準点に対して点対称に配置されている事を特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項6】
前記圧力センサーは、互いに直交する二方向に行列状に配置されている事を特徴とする請求項5に記載の検出装置。
【請求項7】
前記圧力センサーは、互いに直交する二方向に少なくとも4行4列に配置されている事を特徴とする請求項6に記載の検出装置。
【請求項8】
前記突起は前記第二基板に複数個形成されており、
前記突起は、互いに離間して配置されている事を特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項9】
前記圧力センサーで検出された圧力値と、前記基準点に対する前記圧力センサーの位置と、を変数とする関数の値を計算すると共に、
前記値を用いて所定の演算を行う演算装置を備える事を特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の検出装置を備える事を特徴とする電子機器。
【請求項11】
筐体を備え、前記第二基板は前記筐体の一部をなしている事を特徴とする請求項10に記載の電子機器。
【請求項12】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の検出装置を備える事を特徴とするロボット。
【請求項13】
把持部を備え、前記第二基板は前記把持部の一部をなしている事を特徴とする請求項12に記載のロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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