説明

検出装置および検出方法

【課題】酵素に対応する基質(好ましくは低分子有機化合物)または酵素を、短時間かつ簡便な操作で高感度に検出するための検出装置および検出方法を提供すること。
【解決手段】検出装置は、基板、前記基板上に配置されたソース電極およびドレイン電極、前記ソース電極とドレイン電極とを電気的に接続する超微細繊維体(例えばカーボンナノチューブ)を含むチャネル、ならびに前記チャネルを流れる電流を制御するゲート電極を有する電界効果トランジスタと、前記電界効果トランジスタに結合された酵素または酵素に対応する基質と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置および検出方法に関し、特に、酵素−基質結合を電気的に検知して所望の被検出物質を検出する検出装置および検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分子間相互作用を解析する装置として「ビアコア(Biacore:登録商標)システム」と称される装置がある。ビアコアシステムは、表面プラズモン共鳴に基づいて生体高分子同士の相互作用を定量的に解析することができる(非特許文献1参照)。ビアコアシステムは、結合に伴う質量変化を表面プラズモン共鳴により検出するので、結合する分子が低分子化合物である場合は一般的に相互作用を検出しにくい。一方、医薬品や農薬の開発においては、特定の酵素に対する低分子化合物の作用を解析することが重要である場合がある。
【0003】
一方、電界効果トランジスタ(以下「FET」と略記する)は、ソース電極、ドレイン電極およびゲート電極の3端子を有し、ソース電極およびドレイン電極に接続されるチャネルに流れる電流がゲート電極に印加される電圧により生じる電界によって制御される半導体素子である。チャネルが超微細繊維体、例えばカーボンナノチューブ(以下「CNT」と略記する)で構成されたカーボンナノチューブ電界効果トランジスタ(以下「CNT−FET」と略記する)なども知られている。
【0004】
CNT−FETの一例として、図23(A)および図23(B)に示されるものが知られている(例えば、非特許文献2参照)。
【0005】
図23(A)に示されるCNT−FETにおいては、基板2の第一の面に形成された絶縁膜1上に、ソース電極3およびドレイン電極4、ならびにこれらの電極を接続するチャネル(CNT)6が配置され、第二の面上にシリコン基板2と電気的に接続されているゲート電極5が配置されている。このようなFETは、ゲート電極の配置に基づいて、バックゲート型電界効果トランジスタ(以下「バックゲート型FET」と略記する)と称されることがある。
【0006】
図23(B)に示されるFETにおいては、基板2の第一の面に形成された絶縁膜1上に、ソース電極3、ドレイン電極4およびゲート電極5が配置されている。このようなFETは、ゲート電極の配置に基づいて、サイドゲート型電界効果トランジスタ(以下「サイドゲート型FET」と略記する)と称されることがある。
【0007】
また、CNT−FETの電気特性を利用したセンサの開発が進められている(例えば、特許文献1参照)。これらのセンサは、チャネルとなるCNTの電気特性がCNTに結合された分子認識部位の状態変化に依存して変化することを利用しており、例えば、その分子認識部位と被検出物質の反応を、反応により誘起されるCNTの電気特性の変化を介してCNT−FETのソース電極とドレイン電極との間の電流(以下「ソース−ドレイン電流」という)または電圧(以下「ソース−ドレイン電圧」という)の変化として検出する。
【特許文献1】国際公開第2004/104568号パンフレット
【非特許文献1】"タンパク質相互作用"、[online]、ビアコア株式会社、[平成18年9月26日検索]、インターネット<URL:http://www.biacore.co.jp/jp/lifesciences/protein_interactions/introduction/index.html>
【非特許文献2】松本和彦, 「カーボンナノチューブSET/FETのセンサー応用」, 電気学会電子材料研究会資料, Vol.EFM-03, No.35-44, 2003.12.19, p.47-50
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の通り、分子間相互作用を解析すること、特に酵素と低分子化合物との相互作用を解析することは、医薬品や農薬などの開発にとって重要である。そこで、本発明者は、この分子間相互作用を光学的変化ではなく、電気的変化に基づいて検出することを検討した。
【0009】
本発明者は、酵素を結合させたFETを用いて、FETの電気特性(ソース−ドレイン電流またはソース−ドレイン電圧)の変化から酵素−基質結合を検出することを検討した。さらに、本発明者は、基質を低分子化合物とすることを試みた。
【0010】
さらに、本発明者は、検出装置のFETを特定の構造とすることにより、検出感度を上げること、およびセンサとしての構造自由度を上げることを検討した。従来のFETでは、ソース−ドレイン電流を制御するため、チャネルの電気特性を制御するゲート電極をチャネルの近傍に配置する必要があった。
【0011】
すなわち、従来のバックゲート型FETにおいては、基板をバックゲート電極として作用させることで、ゲート電極を基板上に形成した絶縁膜のみを隔ててチャネルに近接させていた。そのため、ゲート電極を基板と電気的に接触させる必要があると考えられてきた。すなわち、ゲート電極を、電気伝導性を有する基板に電気的に直接接触させて配置させて、できるだけゲート電極の電位変化によるチャネル近傍の電界変化、すなわちソース−ドレイン電流またはソース−ドレイン電圧への作用を高めることが必要であると考えられていた。
【0012】
また、従来のサイドゲート型FETにおいては、ゲート電極によりソース−ドレイン電流を制御するため、ゲート電極をチャネルに近づけて配置させることが必要であると考えられていた。すなわち、ソース電極、ドレイン電極およびチャネルが配置された基板面と同一の面に配置されたゲート電極を、ナノメートルレベルにまでチャネルに接近させて、できるだけソース−ドレイン電流またはソース−ドレイン電圧への作用を高めることが必要であると考えられていた。
【0013】
本発明者は、支持基板に形成された絶縁膜上に、ソース電極、ドレイン電極およびチャネルが形成されたFETにおいて、支持基板に自由電子の移動による分極が生じるようにゲート電極を配置するという、新しい原理(ソース−ドレイン電流の制御原理)に基づくFETを開発することを検討した。そして本発明者は、FETの性能の向上、およびFETの検出装置への適用を検討するなかで、FETのゲート電極は、ソース電極、ドレイン電極およびチャネルが配置された基板の裏面に配置された場合に、その基板裏面に絶縁膜が形成されていても、ソース−ドレイン電流を制御することができることを見出した。さらに本発明者は、FETのゲート電極は、ソース電極、ドレイン電極およびチャネルが配置された基板表面と同一の表面に配置された場合に、ソース電極、ドレイン電極およびチャネルからある程度離されて配置されても、ソース−ドレイン電流を制御することができることを見出した。さらに本発明者は、ソース電極、ドレイン電極およびチャネルが配置された基板とは分離されるが、電気的に接続されている別個の基板に配置されたゲート電極が、ソース−ドレイン電流を制御することができることを見出した。
【0014】
そして、これらの新しい制御原理に基づくFETに、酵素を結合させることによって、酵素に対応する基質を検出することを検討した。また、これらの知見から、FETに基質を結合させることによって酵素を検出することを検討した。
【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち、本発明の第一は以下に示す検出装置に関する。
[1]基板、前記基板上に配置されたソース電極およびドレイン電極、前記ソース電極とドレイン電極とを電気的に接続する超微細繊維体を含むチャネル、ならびに前記チャネルを流れる電流を制御するゲート電極を有する電界効果トランジスタと;前記電界効果トランジスタに結合された酵素と、を含む酵素に対応する基質の検出装置。
[2]基板、前記基板上に配置されたソース電極およびドレイン電極、前記ソース電極とドレイン電極とを電気的に接続する超微細繊維体を含むチャネル、ならびに前記チャネルを流れる電流を制御するゲート電極を有する電界効果トランジスタと;前記電界効果トランジスタに結合された、酵素に対応する基質と、を含む基質に対応する酵素の検出装置。
[3]前記酵素に対応する基質が低分子化合物である、[1]または[2]に記載の検出装置。
[4]前記酵素に対応する基質が有機リン化合物である、[1]または[2]に記載の検出装置。
[5]前記酵素は、前記電界効果トランジスタの基板、ゲート電極または超微細繊維体に結合されている、[1]に記載の検出装置。
[6]前記酵素は、NTA−Ni錯体を介して前記電界効果トランジスタに結合されている、[1]に記載の検出装置。
[7]前記超微細繊維体はカーボンナノチューブである、[1]〜[6]のいずれかに記載の検出装置。
[8]前記ゲート電極は、前記基板に自由電子の移動による分極を生じさせる、[1]〜[7]のいずれかに記載の検出装置。
[9]前記基板は、半導体または金属からなる支持基板、前記支持基板の第一の面に形成された第一の絶縁膜、および前記支持基板の第二の面に形成された第二の絶縁膜を有し;前記ソース電極、ドレイン電極およびチャネルは、前記第一の絶縁膜上に配置され;前記ゲート電極は、前記第二の絶縁膜上に配置されており;かつ前記酵素は、前記第二の絶縁膜またはゲート電極に結合されている、[1]に記載の検出装置。
[10]前記基板は、半導体または金属からなる支持基板、および前記支持基板の第一の面に形成された第一の絶縁膜を有し;前記ソース電極、ドレイン電極、チャネルおよびゲート電極は、前記第一の絶縁膜上に配置され;かつ前記酵素は、前記第一の絶縁膜またはゲート電極に結合されている、[1]に記載の検出装置。
[11]前記ゲート電極と前記超微細繊維体との間隔が10μm以上である、[10]に記載の検出装置。
[12]前記電界効果トランジスタは、前記基板に電気的に接続されている第二の基板をさらに含み;前記基板は、半導体または金属からなる支持基板、および前記支持基板の第一の面に形成された第一の絶縁膜を有し;前記ソース電極、ドレイン電極およびチャネルは、前記第一の絶縁膜上に配置され;前記ゲート電極は、前記第二の基板の第一の面上に配置されており;かつ前記酵素は、前記第二の基板の第一の面またはゲート電極に結合されている、[1]に記載の検出装置。
[13]前記酵素に対応する基質の濃度を検出するための、[1]に記載の検出装置。
[14]前記酵素に対応する基質をスクリーニングするための、[1]に記載の検出装置。
[15]前記基質に対応する酵素の活性を検出するための、[2]に記載の検出装置。
[16]前記基質に対応する酵素をスクリーニングするための、[2]に記載の検出装置。
【0016】
本発明の第二は、以下に示す検出方法に関する。
[17][1]に記載の検出装置に含まれる酵素に、前記酵素に対応する基質を含むサンプルを接触させるステップと;前記接触後の電界効果トランジスタのソース−ドレイン電流またはソース−ドレイン電圧を測定するステップと、を含む酵素に対応する基質を検出する方法。
[18]前記酵素に対応する基質をスクリーニングするための、[17]に記載の方法。
[19][2]に記載の検出装置に含まれる酵素に対応する基質に、前記酵素を含むサンプルを接触させるステップと;前記接触後の電界効果トランジスタのソース−ドレイン電流またはソース−ドレイン電圧を測定するステップと、を含む酵素を検出する方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の検出装置は、FETの電気特性(ソース−ドレイン電流やソース−ドレイン電圧など)の変化から酵素−基質結合を検出すること、あるいは酵素の触媒反応により生成された基質派生物(生成物)を検出することにより、酵素に対応する基質または基質に対応する酵素を高感度かつ簡便に検出することができる。また、本発明の検出装置は、低分子化合物の基質も検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
1.本発明の検出装置
本発明の検出装置は、電界効果トランジスタ(FET)と、前記FETに結合された酵素または基質とを含む。
【0019】
1−1.電界効果トランジスタについて
検出装置に含まれるFETは、基板と、基板上に配置されたソース電極およびドレイン電極と、ソース電極およびドレイン電極を電気的に接続するチャネルと、チャネルを流れる電流を制御するゲート電極と、を含む。
【0020】
1−1−1.基板について
FETは、基板を有し、基板上にはソース電極およびドレイン電極ならびにチャネルが配置されている。基板の構造および材質は、ゲート電極(後述)に電圧を印加することにより、基板に自由電子の移動による分極(後述)が生じるのであれば特に限定されない。通常、基板は、半導体または金属からなる支持基板と;支持基板と、ソース電極、ドレイン電極およびチャネルとを電気的に絶縁する絶縁膜と;を有する。図1に基板の例が示される。図1(A)は、支持基板200および第一の絶縁膜202を含む基板である。図1(B)は、支持基板200、第一の絶縁膜202および第二の絶縁膜204を含む基板である。
【0021】
支持基板は、半導体または金属であることが好ましい。半導体は、特に限定されないが、例えば、シリコン、ゲルマニウムなどの14族元素、砒化ガリウム、リン化インジウムなどのIII−V化合物、テルル化亜鉛などのII−VI化合物などである。金属は、特に限定されないが、例えばアルミニウムやニッケルなどである。支持基板の厚さは、特に限定されないが、0.1〜1.0mmであることが好ましく、0.3〜0.5mmが特に好ましい。
【0022】
支持基板の第一の面(ソース電極、ドレイン電極およびチャネルが配置された面)に形成された第一の絶縁膜の材質は、特に限定されないが、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウムや酸化チタンなどの無機化合物、およびアクリル樹脂やポリイミドなどの有機化合物が挙げられる。第一の絶縁膜の表面には、水酸基、アミノ基またはカルボキシル基などの官能基が導入されていてもよい。
【0023】
第一の絶縁膜の厚さは、特に限定されないが、10〜1000nmが好ましく、20〜500nmが特に好ましい。第一の絶縁膜が薄すぎると、トンネル電流が流れてしまう可能性がある。一方、第一の絶縁膜が厚すぎると、ゲート電極を用いてソース−ドレイン電流を制御することが困難になる可能性がある。
【0024】
支持基板の第二の面(第一の面の裏面)に、第二の絶縁膜が形成されていてもよい。第二の絶縁膜の材質は、第一の絶縁膜の材質の例と同様である。第二の絶縁膜の厚さも、第一の絶縁膜と同様に10nm以上が好ましく、20nm以上が特に好ましいが、特に限定されるわけではない。一方、バックゲート型FET(後述)または分離ゲート型FET(後述)である場合、第二の絶縁膜の厚さは、特に限定されないが、第一の絶縁膜と同様に、1000nm以下が好ましく、500nm以下が特に好ましい。
【0025】
支持基板の絶縁膜に被覆される面(第一の面または第二の面)は、平滑であることが好ましい。すなわち、支持基板と絶縁膜との界面は平滑であることが好ましい。支持基板の表面が平滑であると、その表面を被覆する絶縁膜の信頼性が高まるためである。支持基板の絶縁膜に被覆される面は、特に限定されないが、研磨されている方が好ましい。支持基板の表面の平滑度は、表面粗さ測定機などにより確認することができる。
【0026】
1−1−2.チャネルについて
チャネルは、半導体特性を示す超微細繊維体を含むことが好ましい。超微細繊維体とは、電気伝導性を示す、直径が数nmの繊維体である。超微細繊維体の例には、カーボンナノチューブ(CNT)、DNA、導電性高分子、シリコン繊維、シリコンウイスカー、グラフェンなどが含まれる。この中ではCNTが好ましい。チャネルに含まれる超微細繊維体の数は、1本でも複数本でもよい。超微細繊維体の数は、AFMによって確認されうる。また、超微細繊維体と基板との間には空隙があってもよい。
【0027】
超微細繊維体がCNTである場合、CNTは、単層CNTまたは多層CNTのいずれでもよいが、単層CNTが好ましい。また、CNTには欠陥が導入されていてもよい。「欠陥」とは、CNTを構成する炭素五員環または六員環が開環している状態を意味する。欠陥が導入されたCNTは、かろうじて繋がっているような構造をしていると推測されるが、実際の構造は限定されない。CNTに欠陥を導入する方法は、特に限定されないが、例えばCNTを焼鈍しすればよい。
【0028】
超微細繊維体は、損傷を防ぐために絶縁性保護膜によって保護されていてもよい。絶縁性保護膜で超微細繊維体を被覆することにより、FET全体を超音波洗浄したり、強酸や強塩基を用いて洗浄したりすることが可能となる。さらに、絶縁性保護膜を設けることによって超微細繊維体の損傷が防止されるので、FETの寿命を著しく延ばすことができる。絶縁性保護膜は、例えば、絶縁性接着剤により形成される膜やパッシベーション膜などである。絶縁性保護膜が酸化シリコン膜の場合、絶縁性保護膜に酵素を容易に結合させることができる。
【0029】
1−1−3.ソース電極およびドレイン電極について
ソース電極およびドレイン電極は、基板の第一の絶縁膜上に配置される。ソース電極およびドレイン電極の材質は、例えば、金や白金、チタンなどの金属である。ソース電極およびドレイン電極は、二種以上の金属で多層構造にされていてもよい。例えば、チタンの層に金の層を重ねてもよい。ソース電極およびドレイン電極は、これらの金属を第一の絶縁膜上に蒸着することにより形成される。金属を蒸着するときは、リソグラフィを用いてパターンを転写しておくことが好ましい。
【0030】
ソース電極とドレイン電極との間隔は、特に限定されないが、通常は2〜10μm程度である。この間隔は、超微細繊維体による電極間の接続を容易にするために、さらに縮めてもよい。
【0031】
1−1−4.ゲート電極について
ゲート電極は、電圧を印加されることで、ソース電極およびドレイン電極が配置されている基板に自由電子の移動による分極を生じさせる。「自由電子の移動による分極」とは、自由電子が基板内を移動することにより、プラスの電荷に偏った領域およびマイナスの電荷に偏った領域がそれぞれ基板内に形成されることをいう。半導体または金属から成る支持基板と絶縁膜とから成る基板の場合、自由電子の移動による分極は、電気伝導性を有する支持基板において生じる。基板が分極しているか否かは、基板両面の電位差の測定などによって確認されうる。
【0032】
ゲート電極の大きさは、特に限定されず、超微細繊維体素子(ソース電極、ドレイン電極およびチャネルとなる超微細繊維体からなる)の大きさに応じて決定すればよい。ゲート電極の大きさが超微細繊維体素子に対して小さすぎると、ゲート電極がソース−ドレイン電流を制御することが困難になる場合がある。例えば、ソース電極とドレイン電極との間の距離が2〜10μmである場合、ゲート電極の大きさは、およそ0.1mm×0.1mm以上であればよい。
【0033】
基板を分極させるように配置されたゲート電極は、(A)バックゲート電極、(B)サイドゲート電極、および(C)分離ゲート電極の態様に分類される。
【0034】
(A)バックゲート電極について
バックゲート電極は、基板の第二の絶縁膜上に配置されている。この電極は、ソース電極、ドレイン電極およびチャネルに対して基板の裏面に配置されているので、バックゲート電極と称される。バックゲート電極は、(a)第二の絶縁膜に直接接触して配置されていてもよく、(b)第二の絶縁膜から物理的に離されて配置されていてもよい。(a)の態様の例が図2に示される。
【0035】
図2において、本発明のバックゲート型FET100は、支持基板200、第一の絶縁膜202、第二の絶縁膜204、ソース電極206、ドレイン電極208、超微細繊維体(チャネル)210およびバックゲート電極212を有する。バックゲート電極212は、ソース電極206、ドレイン電極208および超微細繊維体210が配置されている第一の絶縁膜202上ではなく、第二の絶縁膜204上に配置されている。
【0036】
バックゲート電極は、第二の絶縁膜の一部にだけ配置されていても、第二の絶縁膜の全面に配置されていてもよい。基板の第二の面の全面にバックゲート電極が設けられていれば、酵素または酵素に対応する基質を第二の絶縁膜の全面に結合させることができる。
【0037】
従来のバックゲート型FETは、バックゲート電極でソース−ドレイン電流を制御するために、バックゲート電極を支持基板(半導体または金属からなる)に直接接触させて配置することによって、相互作用を得ていた。一方、本発明者は、バックゲート電極と支持基板とを直接接触させる必要は必ずしもないことを見出した。つまり、バックゲート電極と支持基板との間に絶縁膜を設けても、ソース−ドレイン電流を制御することができることがわかった。バックゲート電極に電圧が印加されると、支持基板(半導体または金属からなる)において、支持基板内の自由電子の存在に起因する分極が起こり、その分極によってソース−ドレイン電流が制御されるからであると考えられる。自由電子の移動による分極には、容量結合による要因も含まれるが、他の要因も排除しない。
【0038】
(B)サイドゲート電極について
サイドゲート電極は、基板の第一の絶縁膜上に配置されている。この電極は、ソース電極、ドレイン電極およびチャネルが配置された面と同一の面に配置されているので、サイドゲート電極と称される。サイドゲート電極は、(a)第一の絶縁膜に直接接触して配置されていてもよく、(b)第一の絶縁膜から物理的に離されて配置されていてもよい。(a)の態様の例が図3に示される。
【0039】
図3において、本発明のサイドゲート型FET140は、支持基板200、第一の絶縁膜202、第二の絶縁膜204、ソース電極206、ドレイン電極208、超微細繊維体(チャネル)210およびサイドゲート電極214を有する。サイドゲート電極214は、ソース電極206、ドレイン電極208および超微細繊維体210が配置されている第一の絶縁膜202上に配置されている。
【0040】
基板の同一面上に配置されたサイドゲート電極と超微細繊維体との間隔は、特に制限されないが、本発明のサイドゲート型FETでは10μm以上、さらに100μm以上、さらに1mm以上とすることができる。上限も特に制限されないが、数cm以下である。「サイドゲート電極と超微細繊維体との間隔」とは、互いの最短間隔を意味する。
【0041】
従来のサイドゲート型FETは、ゲート電極でソース−ドレイン電流を制御するために、サイドゲート電極とソース電極、ドレイン電極およびチャネルとの間で直接の相互作用を得る必要があると考えられていた。したがって、従来のサイドゲート型FETでは、サイドゲート電極とチャネルとの間隔を、できるだけ短くしていた(長くても1μm程度)。
【0042】
一方、本発明者は、サイドゲート電極を、ソース電極、ドレイン電極およびチャネルに接近させる必要が必ずしもないことを見出した。サイドゲート電極ならびにソース電極、ドレイン電極およびチャネルが同一の絶縁膜上に設けられている場合、サイドゲート電極に電圧が印加されると、その絶縁膜の下の支持基板(半導体または金属からなる)において、支持基板内の自由電子の存在に起因する分極が起こり、その分極によってソース−ドレイン電流が制御されるからであると考えられる。分極には、容量結合による要因も含まれるが、他の要因も排除しない。
【0043】
検出装置において、サイドゲート電極には、酵素または酵素に対応する基質が結合され、さらに試料溶液を滴下されることがある。本発明の検出装置のサイドゲート型FETでは、サイドゲート電極と、ソース電極、ドレイン電極およびチャネルとの間隔を広げることができるので、チャネルに含まれる超微細繊維体が試料溶液によって汚染されるのが防止されうる。
【0044】
(C)分離ゲート電極について
分離ゲート電極は、ソース電極、ドレイン電極およびチャネルが配置された基板とは分離されているが、電気的に接続されている第二の基板上に配置されている。第二の基板は、半導体または金属からなる支持基板と、支持基板の少なくとも一方の面に形成された絶縁膜とを有する基板、または絶縁体からなる基板でありうるが、好ましくは前者の基板である。
【0045】
ゲート電極が配置されている第二の基板は、ソース電極、ドレイン電極およびチャネルが配置されている基板とは分離されている。ソース電極、ドレイン電極およびチャネルが配置されている基板とゲート電極が配置されている第二の基板との間隔は、特に限定されず、3mm以上、さらには10mm以上、さらには15mm以上とすることができ、それ以上にすることもできる。
【0046】
前記の通り、ゲート電極が配置されている第二の基板は、ソース電極、ドレイン電極およびチャネルが配置されている基板と電気的に接続されている。「電気的に接続されている」とは、例えば、(a)基板および第二の基板が、同一の導電性基板に載置されている、または(b)基板および第二の基板が、それぞれ異なる導電性基板に載置され、かつそれぞれの導電性基板が導電性部材により接続されていることを意味する。(a)の態様において、導電性基板は、特に限定されないが、金薄膜を蒸着されたガラス基板や真鍮などの材料からなる基板などである。(b)の態様において、導電性部材は、特に限定されないが、例えば銅線などの導電性ワイヤなどである。(a)の態様の例が図4に示され、(b)の態様の例が図5に示される。
【0047】
図4において、本発明の分離ゲート型FET160は、支持基板200、第一の絶縁膜202、第二の絶縁膜204、ソース電極206、ドレイン電極208、超微細繊維体(チャネル)210、第二の支持基板216、第三の絶縁膜218、第四の絶縁膜220、分離ゲート電極222および導電性基板224を有する。支持基板200、第一の絶縁膜202、第二の絶縁膜204、ソース電極206、ドレイン電極208および超微細繊維体210を有する素子部を超微細繊維体素子部240といい、第二の支持基板216、第三の絶縁膜218、第四の絶縁膜220および分離ゲート電極222を有する素子部をゲート素子部260という。分離ゲート電極222は、ソース電極206、ドレイン電極208および超微細繊維体210が配置されている超微細繊維体素子部240上ではなく、ゲート素子部260上に配置されている。
【0048】
図5において、本発明の分離ゲート型FET162は、支持基板200、第一の絶縁膜202、第二の絶縁膜204、ソース電極206、ドレイン電極208、超微細繊維体(チャネル)210、第二の支持基板216、第三の絶縁膜218、第四の絶縁膜220、分離ゲート電極222、第一の導電性基板226、第二の導電性基板228および導電性部材230を有する。支持基板200、第一の絶縁膜202、第二の絶縁膜204、ソース電極206、ドレイン電極208および超微細繊維体210を有する素子部を超微細繊維体素子部242といい、第二の支持基板216、第三の絶縁膜218、第四の絶縁膜220および分離ゲート電極222を有する素子部をゲート素子部262という。分離ゲート電極222は、ソース電極206、ドレイン電極208および超微細繊維体210が配置されている超微細繊維体素子部242上ではなく、ゲート素子部262上に配置されている。
【0049】
分離ゲート型FETでは、ソース電極、ドレイン電極およびチャネルを配置された基板を、ゲート電極が配置された第二の基板から分離することができるため、構造上の自由度が高い。したがって、分離ゲート型FETを利用する検出装置は、実用性の高い装置となりうる。
【0050】
1−2.酵素、酵素に対応する基質について
前述の通り、本発明の検出装置は、電界効果トランジスタ(FET)に結合された酵素を含みうる。酵素は、検出しようとする基質に応じて選択すればよい。例えば、有機リン系やカーバメート系の残留農薬を検出する場合には、アセチルコリンエステラーゼを選択すればよい。また、特定の酵素を結合させ、その酵素に対応する基質をスクリーニングすることもできる。
【0051】
本発明の検出装置は、酵素に結合する基質が低分子化合物であっても、酵素−基質結合を検出することができる。したがって、FETに結合される酵素は、対応する基質の分子量が5000以下、好ましくは3000以下、より好ましくは1000以下でありうるが、特に限定されない。例えば、アセチルコリンエステラーゼの基質である有機リン系化合物の分子量は、500以下である(アセフェート183.2、フェニトロチオン277.2など)。その他、一般的な医薬および農薬の多くは分子量1000以下である。
【0052】
同様に、本発明の検出装置は、FETに結合された、酵素に対応する基質を含みうる。酵素に対応する基質は、検出しようとする酵素に応じて選択すればよい。例えば、アセチルコリンエステラーゼを検出する場合には、アセチルコリンを選択すればよい。また、糖転移酵素を検出する場合には、対応する単糖、オリゴ糖または多糖を含む化合物を選択すればよい。さらに、酵素に対応する特定の基質を結合させ、その酵素をスクリーニングすることもできる。
【0053】
1−2−1.酵素などが結合するFETの部位について
本発明の検出装置において、酵素または酵素に対応する基質は、FETに結合されていればよい。その結合部位は特に制限されないが、基板やゲート電極、チャネルに含まれる超微細繊維体(超微細繊維体を保護する膜を含む)などが含まれる。以下、酵素または酵素に対応する基質をFETに結合させる例を、図面を参照して説明する。図6〜図21においては、酵素を結合させた例が示されているが、同様の態様で酵素に対応する基質を結合させてもよい。
【0054】
図6〜図10には、バックゲート型FETに酵素を結合させた例が示される。図6〜図10において、酵素に対応する基質を含みうる試料溶液400を提供される本発明のバックゲート型FET102〜126は、支持基板200、第一の絶縁膜202、第二の絶縁膜204、ソース電極206、ドレイン電極208、超微細繊維体(チャネル)210およびバックゲート電極212を有し、酵素300が結合されている。
【0055】
図6には、超微細繊維体210に酵素300を結合させた例が示される。この例では、酵素300がチャネルである超微細繊維体210に直接結合されているので、検出感度の向上が見込める。
【0056】
図7には、酵素300を、絶縁性保護膜232を介して超微細繊維体210に結合させた例が示される。この例では、試料溶液400がチャネルである超微細繊維体210と接触することがないので、ノイズが低減される。
【0057】
図8には、基板の第二の絶縁膜204に酵素300を結合させた例が示される。この例では、超微細繊維体210を損傷させることなく第二の絶縁膜204を洗浄することができるので、再利用することが容易である。また、第二の絶縁膜204全体に酵素300を結合させることもできるので、比較的多くの酵素300を結合させることができる。図8(A)では酵素300を第二の絶縁膜204の全面に結合しており、バックゲート電極212が第二の絶縁膜204に固定されていない場合に有用である。一方、図8(B)および図8(C)では酵素300が第二の絶縁膜204の一部に結合しており、バックゲート電極212が第二の絶縁膜204に固定されている場合に有用である。図8(D)では、第二の絶縁膜204に、複数のバックゲート電極212a,212bが配置され、かつ複数種の酵素300a,300bが第二の絶縁膜204に結合されている。
【0058】
図9には、基板の第二の面上に凹部を形成し、この凹部の底に位置する第二の絶縁膜204に酵素300を結合させた例が示される。凹部の側壁234の材質は、特に限定されないが、例えば、酸化シリコンである。この例では、凹部の容積を調整することにより、一定量の試料溶液を提供することができる。また、添加された試料溶液が散逸されにくく、酵素が結合された部位に安定して保持されうる。図9(A)および図9(B)は、バックゲート電極212を凹部の蓋として機能させる例を示す図である。図9(C)は、バックゲート電極212を凹部の側壁234上に配置させた例を示す図である。図9(D)は、バックゲート電極212を凹部の側壁234側面に配置させた例を示す図である。図9(E)は、バックゲート電極212を凹部外の第二の絶縁膜204上に配置させた例を示す図である。
【0059】
図10には、酵素300をバックゲート電極212に結合させた例が示される。この例では、超微細繊維体210を損傷させることなくバックゲート電極212を洗浄することができるので、再利用することが容易である。図10(A)は、バックゲート電極212が一つ配置されている場合に、酵素300をバックゲート電極212に結合させた例を示す図である。図10(B)は、バックゲート電極212が複数配置されている場合に、複数種の酵素300a,300bをそれぞれ異なるバックゲート電極212a,212bに結合させた例を示す図である。
【0060】
図11〜図15には、サイドゲート型FETに酵素を結合させた例が示される。図11〜図15において、酵素に対応する基質を含みうる試料溶液400を提供される本発明のサイドゲート型FET142〜154は、支持基板200、第一の絶縁膜202、ソース電極206、ドレイン電極208、超微細繊維体(チャネル)210およびサイドゲート電極214を有し、酵素300が結合されている。
【0061】
図11には、酵素300を超微細繊維体210に結合させた例が示される。この例では、酵素300がチャネルである超微細繊維体210に直接結合しているため、検出感度が向上しうる。
【0062】
図12には、酵素300を絶縁性保護膜232を介して超微細繊維体210に結合させた例が示される。この例では、試料溶液400がチャネルである超微細繊維体210、ソース電極206、ドレイン電極208およびサイドゲート電極214を保護する絶縁性保護膜232と直接接触することがないので、検出感度が向上しうる。図12(A)には、酵素300を、超微細繊維体210を保護する絶縁性保護膜232を介して超微細繊維体210に結合させた例を示す図である。図12(B)には、酵素300を、超微細繊維体210、ソース電極206、ドレイン電極208およびサイドゲート電極214を保護する絶縁性保護膜232を介して超微細繊維体210に結合させた例を示す図である。
【0063】
図13には、サイドゲート電極214が第一の絶縁膜202と接触するように配置されている場合に、酵素300を第一の絶縁膜202に結合させた例が示される。試料溶液400は、サイドゲート電極214に接触しても(図13(A))しなくても(図13(B))よい。
【0064】
図14には、基板の第二の面上に凹部を形成し、この凹部の底に位置する第二の絶縁膜204に酵素300を結合させた例が示される。凹部の側壁234の材質は、特に限定されないが、例えば酸化シリコンである。この例では、酵素300が結合されている部位(すなわち凹部内)に試料溶液400を的確に位置させることができる。
【0065】
図15には酵素300をサイドゲート電極214に結合させた例が示される。
【0066】
図16〜図21には、分離ゲート型FETに酵素を結合させた例が示される。図16〜図21において、酵素に対応する基質を含みうる試料溶液400を提供される本発明の分離ゲート型FET164〜170は、支持基板200、第一の絶縁膜202、第二の絶縁膜204、ソース電極206、ドレイン電極208および超微細繊維体210を有する超微細繊維体素子部244〜250と、第二の支持基板216、第三の絶縁膜218、第四の絶縁膜220および分離ゲート電極222を有するゲート素子部264〜280とを有し、酵素300が結合されている。
【0067】
図16は、分離ゲート電極222が第二の基板の第三の絶縁膜218と接触せずに配置されている場合に、酵素300を第三の絶縁膜218に結合させた例を示す図である。
【0068】
図17は、分離ゲート電極222が第二の基板の第三の絶縁膜218と接触するように配置されている場合に、酵素300を第三の絶縁膜218に結合させた例を示すゲート素子部266〜270の図である。試料溶液400は、分離ゲート電極222に接触していても(図17(A))しなくても(図17(B))よい。図17(C)は、分離ゲート電極222a,222bが複数配置されている場合に、複数種の酵素300a,300bをそれぞれ第三の絶縁膜218に結合させた例を示す図である。
【0069】
図18は、酵素300を分離ゲート電極222に結合させた例を示すゲート素子部272,274の図である。図18(A)は、分離ゲート電極222が一つ配置されている場合に、酵素300を分離ゲート電極222に結合させた例を示す図である。図18(B)は、分離ゲート電極222a,222bが複数配置されている場合に、複数種の酵素300a,300bをそれぞれ異なる分離ゲート電極222a,222bに結合させた例を示す図である。
【0070】
図19は、ゲート素子部276a,276bが複数ある場合に、複数種の酵素300a,300bをそれぞれ異なる分離ゲート電極222a,222bに結合させた例を示す図である。
【0071】
図20は、超微細繊維体素子部248およびゲート素子部278が、導電性基板224を挟むように配置され、かつゲート素子部278上に分離ゲート電極222a,222bが複数配置されている場合に、複数種の酵素300a,300bをそれぞれ第三の絶縁膜218に結合させた例を示す図である。この例では、ゲート素子部278を超微細繊維体素子部248から取り外すことを容易に行うことができる。したがって、一の超微細繊維体素子部248に対して、複数のゲート素子部278を付け替えることが可能である。
【0072】
図21は、超微細繊維体素子部250およびゲート素子部280が、導電性部材230によって電気的に接続され、かつゲート素子部280上に分離ゲート電極222a,222bが複数配置されている場合に、複数種の酵素300a,300bをそれぞれ第三の絶縁膜218に結合させた例を示す図である。
【0073】
1−2−2.酵素などを結合させる方法について
酵素または酵素に対応する基質をFETに結合させる方法は、特に限定されないが、例えばNTA−Ni錯体を介して結合させる方法がある。
【0074】
例えば、NTA−Ni錯体を介して酵素を絶縁膜に結合する場合は、以下の手順で行えばよい。まず、遺伝子組換え技術を用いてヒスタグを有する酵素を作製する。次に、基板の絶縁膜をシラン化カップリング剤で処理し、処理した絶縁膜にNTAを結合させ、さらにNiイオンを含む溶液を絶縁膜上に滴下して、NTAと錯体を形成させる。最後に、絶縁膜上のNTA−Ni錯体と、前記ヒスタグを有する酵素とを反応させて酵素を結合させる。
【0075】
酵素または酵素に対応する基質を結合させる方法は、錯体を介する方法に限定されるわけではなく、例えばアルキル鎖やポリアクリルアミド、ポリエチレングリコールなどを有する二価性架橋試薬なども用いられる。
【0076】
1−2−3.酵素などの結合濃度について
FETに酵素または酵素に対応する基質を結合させるときに用いる酵素溶液または基質溶液の濃度は、適切な結果を得られる範囲内であれば特に限定されない。例えば、A(濃い)〜E(薄い)の5段階の濃度の酵素溶液または基質溶液を用いて酵素または基質をFETに結合し、得られた各FETについて酵素−基質反応を検出する予備実験を行った結果、A〜Cの濃度の溶液により酵素または基質を結合したFETはほぼ同様に酵素−基質反応を検出できた場合、酵素または基質をFETに結合させる際に用いる溶液の濃度はA〜Cのいずれかであればよいが、経費削減の観点からCの濃度の溶液を用いることが好ましい。
【0077】
1−3.電気特性を測定する部材について
本発明の検出装置は、酵素−基質反応により引き起こされるFETの電気特性の変化を観察することにより、酵素に対する基質または基質に対する酵素の検出または濃度の測定をすることができる。FETの電気特性の例には、ソース−ドレイン電流とゲート電圧の関係;およびソース−ドレイン電流とソース−ドレイン電圧の関係が含まれる。したがって本発明の検出装置は、FETの電気信号を測定する部材、好ましくはFETのソース−ドレイン電流またはソースドレイン電圧を測定する部材を有することが好ましい。FETのソース−ドレイン電流を測定する部材には、通常の半導体パラメータアナライザを適宜に適用することができる。これらの部材により、電気的特性の変化を観察すればよい。
【0078】
2.本発明の検出方法
本発明の検出装置は、酵素に対応する基質または酵素を検出することができる。本明細書において「酵素に対応する基質」とは、酵素の作用を受けて反応を起こす物質だけではなく、酵素と複合体を形成することで阻害剤として機能しうる物質(自殺基質)も含む。また、「基質を検出する」とは、サンプルに含まれる基質の濃度を測定すること、およびサンプルに含まれる基質の酵素に対する相互作用(親和性など)を測定することを含む。同様に、「酵素を検出する」とは、サンプルに含まれる酵素の活性あるいは濃度を測定すること、およびサンプルに含まれる酵素の基質に対する相互作用(親和性など)を測定することを含む。本発明の検出装置は、酵素と基質とが酵素−基質反応(結合を含む)することにより生じるソース−ドレイン電流またはソース−ドレイン電圧の変化を観察することにより、基質または酵素を検出する。
【0079】
本発明の検出方法の第一は、上記の検出装置を用いて検出装置に結合された酵素に対応する基質を検出する方法であって、上記の検出装置に結合された酵素に、この酵素に対応する基質を含むサンプルを接触させるステップと、電界効果トランジスタ(FET)の電気信号(ソース−ドレイン電流やソース−ドレイン電圧を含む)を測定するステップと、を含むことを特徴とする。
【0080】
本発明の検出方法の第二は、上記の検出装置を用いて酵素を検出する方法であって、上記の検出装置に結合された、酵素に対応する基質に、この酵素を含むサンプルを接触させるステップと、電界効果トランジスタ(FET)の電気信号(ソース−ドレイン電流やソース−ドレイン電圧を含む)を測定するステップと、を含むことを特徴とする。
【0081】
以下に、検出手順の概略例を示す。この概略例では、基質が水やアセトンなどの適当な溶媒に溶解している溶液をサンプルとする場合について説明する。
【0082】
(1)検出装置に含まれるFETの酵素または基質が結合された部位に、サンプルを提供する。例えば、酵素がFETの基板の第二の面に結合されている場合、サンプルをマイクロピペットなどを用いて基板の第二の面に滴下すればよい。サンプルに酵素に対応する基質が含まれていれば、酵素−基質反応が生じる。同様に、酵素に対応する基質がFETの基板の第二の面に結合されている場合、サンプルをマイクロピペットなどを用いて基板の第二の面に滴下すればよい。サンプルにこの酵素が含まれていれば、酵素−基質反応が生じる。
【0083】
(2)提供されたサンプルに含まれる溶媒は、ソース−ドレイン電流に影響を与えるため、検出時にノイズを発生させることがある。このノイズを低減させるために、必要に応じてサンプルを蒸散させる、またはサンプルを冷却する。
【0084】
(3)ソース電極およびドレイン電極ならびにゲート電極に電圧を印加し、ソース−ドレイン電流やソース−ドレイン電圧などを測定して、I−V特性(ソース−ドレイン電流とソース−ドレイン電圧との関係)またはI−Vg特性(ソース−ドレイン電流とゲート電圧との関係)を求める。
【0085】
以上の手順により、本発明の検出装置は、酵素−基質反応により生じるソース−ドレイン電流またはソース−ドレイン電圧の変化を測定して、基質または酵素を検出することができる。あらかじめ基質または酵素の濃度と電気信号との関係を求めて検量線を取得していれば、サンプル内の基質または酵素の濃度または活性を測定することもできる。
【0086】
本発明によれば、酵素に対応する基質または酵素のサンプル中における濃度または活性を測定することができ、かつサンプル中に含まれる基質の酵素に対する親和性、またはサンプル中に含まれる酵素の基質に対する親和性を検知することができる。
【実施例】
【0087】
以下、本発明を実施例を参照してさらに説明する。なお、本発明の範囲は、本実施例により限定して解釈されない。
【0088】
本実施例では、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)を結合した本発明の検出装置を用いて、有機リン化合物である有機リン系農薬「アセフェート」および「フェニトロチオン」を検出した例を示す。有機リン系農薬は、アセチルコリンエステラーゼの阻害剤(自殺基質)であり、残留農薬としてヒトに健康被害を与えることが知られている。
【0089】
(1)アセチルコリンエステラーゼの調製
ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)成体由来のポリ(A)RNAから、RT−PCR法によりAChE遺伝子の部分cDNAを取得した。取得したcDNAをクローニングベクターpBAD/gIII(インビトロジェン社)にサブクローニングして、カルボキシル末端にヒスチジンタグを有する組換えAChEcDNAとした。得られた組換えAChEcDNAをベクターpFastBac(インビトロジェン社)に再クローニングしてバキュロウイルス発現ベクターを構築し、構築したベクターをSf9細胞に導入した。ベクターを導入した細胞を28℃で培養し、培養上清を回収した。回収した培養上清からNTA−Niカラムを用いてアセチルコリンエステラーゼを精製した。
【0090】
(2)サンプルの調製
本実施例では、有機リン系農薬の「アセフェート」および「フェニトロチオン」を検出対象とした(下記構造式参照)。また、対照として、非有機リン系農薬「プレチラクロール」の検出も行った(下記構造式参照)。各農薬の100ppmアセトン溶液を原液として、PBSで希釈系列を作製して、各種濃度のサンプルを得た。
【0091】
【化1】

【0092】
(3)検出装置
本実施例では、(1)で調製したアセチルコリンエステラーゼを図8(A)に示されるバックゲート型のCNT−FETに結合させた。バックゲート型のCNT−FETは、支持基板は厚さ550μmのシリコン基板、第一の絶縁膜および第二の絶縁膜は厚さ300nmの酸化シリコン膜、基板の面積は1cm(1cm×1cm)、超微細繊維体は単層CNT、ソース電極とドレイン電極の間隔は5μmとし、ゲート電極は第二の絶縁膜に接触させた。
【0093】
まず、CNT−FETの基板の第二の面(チャネルがない側の面)をシランカップリング剤およびマレイミドNTAで修飾した。修飾した面にNiイオンを添加した後、(1)で得たアセチルコリンエステラーゼをヒスチジンタグとNTA−Niとの錯体形成を介して結合させた。予備実験として0.7μg/ml,7μg/ml,70μg/ml,700μg/mlの濃度の溶液でアセチルコリンエステラーゼを結合させたところ、7〜700μg/mlの溶液を用いた検出装置では、ダイナミックレンジおよび感度はほぼ同様であったが、0.7μg/mlの溶液を用いた検出装置では、7〜700μg/mlの溶液を用いた検出装置に比べてダイナミックレンジおよび感度が低下していた。したがって、本実施例では、7μg/ml(約100pM)のアセチルコリンエステラーゼ溶液を50μl使用してアセチルコリンエステラーゼを結合させた。PBSで基板の第二の面を洗浄して、本実施例で使用する検出装置とした。
【0094】
(4)検出
(2)で得られた各サンプル(50μl)を、アセチルコリンエステラーゼを結合させた基板の第二の面に滴下して、室温で10分間反応させた。その後、基板の第二の面をPBSで3回洗浄し、窒素ガスで水分を除去した。乾燥後、I−Vg特性(ソース−ドレイン電流とゲート電圧との関係)を測定して、有機リン系農薬の検出を行った。測定時のゲート電圧は5.08Vとした。
【0095】
(5)結果
図22は、各サンプルにおけるI−Vg特性の測定結果を示すグラフである。図22(A)は、アセフェートの濃度(横軸:対数表示)とソース−ドレイン電流(縦軸)との関係を示すグラフであり、図22(B)はフェニトロチオンの濃度(横軸:対数表示)とソース−ドレイン電流(縦軸)との関係を示すグラフであり、図22(C)はプレチラクロールの濃度(横軸:対数表示)とソース−ドレイン電流(縦軸)との関係を示すグラフである。
【0096】
有機リン系農薬(アセフェートおよびフェニトロチオン)では、10−15〜10−12mg/mlの領域で直線性のある検量線が得られた。また、より高濃度領域では、プロゾーン現象が観察された(図22(A)および図22(B))。一方、非有機リン系農薬(プレチラクロール)では、濃度依存的な変化は観察されなかった(図22(C))。なお、アセチルコリンエステラーゼの代わりにカルモジュリンをバックゲート面に結合した検出装置では、有機リン系農薬を含むサンプルに対してもI−Vg特性の変化は観察されなかった(データを示さず)。
【0097】
これらの結果から、本実施例の検出装置は、有機リン化合物を特定的に検出できることが示唆された。また、本実施例の検出装置は、検出レンジが約0.1〜10ppbであるELISAを用いた従来の残留農薬測定キットに比べて、約10万倍高感度であることも示された。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の検出装置は、酵素−基質反応を用いて酵素または基質の濃度を測定することができるので、残留農薬の検出などに有用である。また、本発明の検出装置は、スクリーニング装置としても用いられうるので、医農薬品の開発などにも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の検出装置に含まれるCNT−FETの基板の構造を示す図であり、(A)は片面が絶縁膜で覆われた基板の断面図、(B)は両面が絶縁膜で覆われた基板の断面図である。
【図2】本発明の検出装置に含まれるバックゲート型FETの一例を示す模式図である。
【図3】本発明の検出装置に含まれるサイドゲート型FETの一例を示す模式図である。
【図4】本発明の検出装置に含まれる分離ゲート型FETの一例を示す模式図である。
【図5】本発明の検出装置に含まれる分離ゲート型FETの一例を示す模式図である。
【図6】本発明の検出装置に含まれるバックゲート型FETおいて、酵素を超微細繊維体に結合させた例を示す模式図である。
【図7】本発明の検出装置に含まれるバックゲート型FETおいて、酵素を絶縁性保護膜に結合させた例を示す模式図である。
【図8】本発明の検出装置に含まれるバックゲート型FETおいて、酵素を第二の絶縁膜に結合させた例を示す模式図である。
【図9】本発明の検出装置に含まれるバックゲート型FETおいて、酵素を第二の絶縁膜に結合させた例を示す模式図である。
【図10】本発明の検出装置に含まれるバックゲート型FETおいて、酵素をゲート電極に結合させた例を示す模式図である。
【図11】本発明の検出装置に含まれるサイドゲート型FETおいて、酵素を超微細繊維体に結合させた例を示す模式図である。
【図12】本発明の検出装置に含まれるサイドゲート型FETおいて、酵素を絶縁性保護膜に結合させた例を示す模式図である。
【図13】本発明の検出装置に含まれるサイドゲート型FETおいて、酵素を第一の絶縁膜に結合させた例を示す模式図である。
【図14】本発明の検出装置に含まれるサイドゲート型FETおいて、酵素を第二の絶縁膜に結合させた例を示す模式図である。
【図15】本発明の検出装置に含まれるサイドゲート型FETおいて、酵素をゲート電極に結合させた例を示す模式図である。
【図16】本発明の検出装置に含まれる分離ゲート型FETおいて、酵素をゲート素子部の第三の絶縁膜に結合させた例を示す模式図である。
【図17】本発明の検出装置に含まれる分離ゲート型FETおいて、酵素をゲート素子部の第三の絶縁膜に結合させた例を示す模式図である。
【図18】本発明の検出装置に含まれる分離ゲート型FETおいて、酵素をゲート素子部のゲート電極に結合させた例を示す模式図である。
【図19】本発明の検出装置に含まれる分離ゲート型FETおいて、酵素をゲート素子部のゲート電極に結合させた例を示す模式図である。
【図20】本発明の検出装置に含まれる分離ゲート型FETおいて、酵素をゲート素子部の第三の絶縁膜に結合させた例を示す模式図である。
【図21】本発明の検出装置に含まれる分離ゲート型FETおいて、酵素をゲート素子部の第三の絶縁膜に結合させた例を示す模式図である。
【図22】本発明の検出装置を用いて有機リン化合物を検出した時のサンプル濃度(横軸)とソース−ドレイン電流(縦軸)との関係を示すグラフであり、(A)はアセフェートをサンプルとしたときの結果を示すグラフ、(B)はフェニトロチオンをサンプルとしたときの結果を示すグラフ、(C)はプレチラクロールをサンプルとしたときの結果を示すグラフである。
【図23】従来のCNT−FETを示す模式図であり、(A)は従来のバックゲート型FETを示す模式図、(B)は従来のサイドゲート型FETを示す模式図である。
【符号の説明】
【0100】
1 絶縁膜
2 基板
3 ソース電極
4 ドレイン電極
5 ゲート電極
6 CNT
100〜126 本発明のバックゲート型FET
140〜154 本発明のサイドゲート型FET
160〜170 本発明の分離ゲート型FET
200 支持基板
202 第一の絶縁膜
204 第二の絶縁膜
206 ソース電極
208 ドレイン電極
210 超微細繊維体
212 バックゲート電極
214 サイドゲート電極
216 第二の支持基板
218 第三の絶縁膜
220 第四の絶縁膜
222 分離ゲート電極
224 導電性基板
226 第一の導電性基板
228 第二の導電性基板
230 導電性部材
232 絶縁性保護膜
234 凹部側壁
240〜250 超微細繊維体素子部
260〜280 ゲート素子部
300 酵素
400 試料溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、前記基板上に配置されたソース電極およびドレイン電極、前記ソース電極とドレイン電極とを電気的に接続する超微細繊維体を含むチャネル、ならびに前記チャネルを流れる電流を制御するゲート電極を有する電界効果トランジスタと、
前記電界効果トランジスタに結合された酵素と、
を含む、酵素に対応する基質の検出装置。
【請求項2】
基板、前記基板上に配置されたソース電極およびドレイン電極、前記ソース電極とドレイン電極とを電気的に接続する超微細繊維体を含むチャネル、ならびに前記チャネルを流れる電流を制御するゲート電極を有する電界効果トランジスタと、
前記電界効果トランジスタに結合された、酵素に対応する基質と、
を含む、酵素の検出装置。
【請求項3】
前記酵素に対応する基質が低分子化合物である、請求項1または請求項2記載の検出装置。
【請求項4】
前記酵素に対応する基質が有機リン化合物である、請求項1または請求項2記載の検出装置。
【請求項5】
前記酵素は、前記電界効果トランジスタの基板、ゲート電極または超微細繊維体に結合されている、請求項1記載の検出装置。
【請求項6】
前記酵素は、NTA−Ni錯体を介して前記電界効果トランジスタに結合されている、請求項1記載の検出装置。
【請求項7】
前記超微細繊維体はカーボンナノチューブである、請求項1または請求項2記載の検出装置。
【請求項8】
前記ゲート電極は、前記基板に自由電子の移動による分極を生じさせる、請求項1または請求項2記載の検出装置。
【請求項9】
前記基板は、半導体または金属からなる支持基板、前記支持基板の第一の面に形成された第一の絶縁膜、および前記支持基板の第二の面に形成された第二の絶縁膜を有し、
前記ソース電極、ドレイン電極およびチャネルは、前記第一の絶縁膜上に配置され、
前記ゲート電極は、前記第二の絶縁膜上に配置されており、かつ
前記酵素は、前記第二の絶縁膜またはゲート電極に結合されている、請求項1記載の検出装置。
【請求項10】
前記基板は、半導体または金属からなる支持基板、および前記支持基板の第一の面に形成された第一の絶縁膜を有し、
前記ソース電極、ドレイン電極、チャネルおよびゲート電極は、前記第一の絶縁膜上に配置され、かつ
前記酵素は、前記第一の絶縁膜またはゲート電極に結合されている、請求項1記載の検出装置。
【請求項11】
前記ゲート電極と前記超微繊維体との間隔が10μm以上である、請求項10記載の検出装置。
【請求項12】
前記電界効果トランジスタは、前記基板に電気的に接続されている第二の基板をさらに含み、
前記基板は、半導体または金属からなる支持基板、および前記支持基板の第一の面に形成された第一の絶縁膜を有し、
前記ソース電極、ドレイン電極およびチャネルは、前記第一の絶縁膜上に配置され、
前記ゲート電極は、前記第二の基板の第一の面上に配置されており、かつ
前記酵素は、前記第二の基板の第一の面またはゲート電極に結合されている、請求項1記載の検出装置。
【請求項13】
前記酵素に対応する基質の濃度を検出するための、請求項1記載の検出装置。
【請求項14】
前記酵素に対応する基質をスクリーニングするための、請求項1記載の検出装置。
【請求項15】
請求項1に記載の検出装置に含まれる酵素に、前記酵素に対応する基質を含むサンプルを接触させるステップと、
前記接触後の電界効果トランジスタのソース−ドレイン電流またはソース−ドレイン電圧を測定するステップと、
を含む、酵素に対応する基質を検出する方法。
【請求項16】
前記酵素に対応する基質をスクリーニングするための、請求項15記載の酵素に対応する基質を検出する方法。
【請求項17】
請求項2に記載の検出装置に含まれる酵素に対応する基質に、前記酵素を含むサンプルを接触させるステップと、
前記接触後の電界効果トランジスタのソース−ドレイン電流またはソース−ドレイン電圧を測定するステップと、
を含む、酵素を検出する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2008−82985(P2008−82985A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266124(P2006−266124)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】