説明

検出装置

検出システムおよび検出方法を開示する。このシステムは、フィルム上のある箇所に作用した外部因子に応答して信号を自己生成するフィルムを含む。このシステムは、フィルム上の複数の位置において自己生成信号を検出して、外部因子がフィルムに作用した箇所を決定するように構成されたセンサをさらに含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に検出装置に関する。本発明は特にタッチ手段に応答して電気信号を自己生成することが可能な材料を含んでいるような検出装置に適用する。
【背景技術】
【0002】
タッチスクリーンが、キーボード操作の必要性を低減させまたは排除することにより、ユーザは電子ディスプレイシステムに手軽にインターフェースすることができる。例えばユーザは、予めプログラムされているアイコンで認識できる箇所のスクリーンを単にタッチすることで、複雑な順序の命令処理を実行することができる。アプリケーションにより支援ソフトウェアを再プログラムすることで、スクリーン上のメニューを変更することが可能である。他の例としてタッチスクリーンは、ユーザがタッチスクリーン上に直接字を書いたり絵を描いたりして、テキストまたは図を電子ディスプレイ装置に転送することを可能にしてくれる。
【0003】
タッチスクリーンの性能をスクリーンの様々な特性に関して記載する。この特性の一つは光学的透過性である。画像の輝度およびコントラストは、タッチスクリーンの光学的透過性が向上するにつれて増加する。高い光学的透過性は、特に携帯装置において要求されており、寿命に限界があるバッテリから携帯装置のディスプレイに給電されることが多いからである。光学的透過性はインターフェースの数を低減し様々なインターフェースにおける反射を低減することによって、タッチスクリーン内の異なる層の光学的透明度を改善することにより最適化し得る。
【0004】
タッチスクリーンのもう一つの特性はタッチ手段である。いくつかのタッチ技術にはタッチ入力を加えるために用い得るタッチ手段のタイプに制限がある。例えば容量性方式のタッチセンサは、一般にユーザの指などの導電性スタイラスを必要とする。他方、抵抗タイプのタッチセンサは一般に、ユーザの指などの導電性タッチ手段およびユーザの爪などの非導電性のスタイラスの両方により加えられたタッチを検出することができる。スタイラスへの非依存性は、タッチセンサにおいて一般に望ましい特性である。一般にはタッチスクリーンは、採用するタッチ手段のタイプと関係なく、タッチを記録することが望ましい。
【0005】
タッチスクリーンのもう一つの特性は全体のコストである。一般にタッチスクリーン内の層の数が増えるにつれて製造コストが増加する。そのため一般にはタッチスクリーンがわずかな層しか含まないことが望ましい。通例1つのスクリーンの特性が改善されると、1つまたは複数の他の特性が悪化することが多い。例えば製造コストを削減しようとすると、タッチスクリーン内の層の数を減少させることにより、光学透過性、またはスタイラスへの非依存性などのタッチスクリーンの他の特長を損なう恐れがある。その結果所定の用途に対する性能基準に最も合うようにする妥協がなされる。そのため依然として全体性能が向上したタッチスクリーンが必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に本発明は検出装置に関する。また本発明は検出方法にも関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様において、システムはフィルム上のある箇所に作用した外部因子に応答して信号を自己生成するフィルムを含む。このシステムは、フィルム上の複数の位置において自己生成した信号を検出して外部因子がフィルムに作用した箇所を決定するように構成されたセンサをさらに含む。
【0008】
本発明のもう一つの態様において、システムはフィルム上のある箇所に作用した外部因子に応答して信号を自己生成するフィルムを含む。この自己生成した信号が少なくともフィルム上の第1の位置において第1の検出可能信号とフィルム上の第2の位置において第2の検出可能信号とを作成する。システムは、少なくとも第1および第2の検出可能信号を受け取って、外部因子がフィルムに作用した箇所を決定するように構成されたコントローラをさらに含む。
【0009】
本発明のもう一つの態様において、タッチセンサはフィルム上の任意の箇所に作用したタッチ手段に応答して信号を自己生成するフィルムを含む。フィルム上の複数の位置において信号を検出することによりタッチ箇所を決定することができる。
【0010】
本発明のもう一つの態様において、タッチセンサはフィルム上の任意の箇所に作用したタッチ手段に応答して信号を自己生成するフィルムを含む。少なくとも第1のセンサがフィルム上の第1の位置において自己生成した信号により作成される第1の検出可能信号を検出するとともに、第2のセンサがフィルム上の第2の位置において自己生成した信号により作成される第2の検出可能信号を検出することにより、タッチ箇所を決定することができる。
【0011】
本発明のもう一つの態様において、タッチ箇所の決定方法は、作用したタッチ入力に応答して信号を自己生成するフィルムを含むタッチ検出エリアを規定するステップを含む。この方法は自己生成した信号に応答して作成された複数の検出可能信号を検出するステップも含む。この方法は複数の検出可能信号を用いてタッチ箇所を決定するステップをさらに含む。
【0012】
添付図面と共に、本発明の様々な実施形態に係る以下の詳細な説明を考察することによって、本発明をより完全に理解且つ評価できよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は一般に検出装置に適用可能である。本発明は特にタッチスクリーンに適用し、電子ディスプレイシステムと共に用いるタッチスクリーンで、さらに具体的には高い光透過性および低製造コストを有するようなスタイラス非依存のタッチスクリーンに適用するものである。
【0014】
いくつかのタッチスクリーンは、他の状況では開放している電気回路が、タッチが作用した時に閉じるという一般的原理に基づいて動作する。閉回路で生成された信号の性質によりタッチ箇所の検出が可能になる。様々な技術を用いてタッチ箇所を検出し得る。このような技術の1つは抵抗方式である。抵抗方式のタッチでは、作用したタッチが他の状況では物理的に離れている2つの導電性フィルムを互いに直接物理的に接触させる。物理的接触が他の状況では開放している電子回路を閉じることにより、抵抗結合による電気信号が生成される。生成された信号の性質によりタッチ箇所の検出が可能になる。
【0015】
容量方式はタッチの箇所を検出するために一般に用いられるもう一つの技術である。この場合、ユーザの指のような導電性のタッチアプリケータが導電性フィルムに十分接近して、2つの導体間の容量結合を可能にしたときに信号が生成される。2つの導体は、互いに電気的に接続されるが、例えば大地のアースを介して接続される。生成された信号の性質によりタッチ箇所の検出が可能になる。他の多様な技術には表面弾性波(SAW)方式、赤外線(IR)方式および力によるものがある。
【0016】
いくつかの周知のタッチ技術は、タッチが作用した箇所を検出する際に圧電効果を利用している。例えば米国特許第3,806,642号明細書には、電圧によるインパルスを圧電板に印加することで、圧電材料内に圧電により生成される進行性の機械的振動のインパルスを発することが開示されている。そして機械的な波は、圧電板内に圧電による電圧パターンを順々に生じていく。電気的導電性プローブが作用するタッチの箇所は、タッチセンサに電気的に接続するプローブが、タッチ箇所で圧電板の表面と電気的に接触するときに決定される。他の例として欧州特許出願公開第0−753−723−A2号明細書には、圧電板の厚さ方向に分極した圧電板を含むタッチパネルが開示されている。圧電板は、所定の位置に複数の振動センサを有する振動伝播板に密接におかれる。電気的手段により圧電板内に均一な振動が誘発される。圧電板が例えばペンで押圧されると、振動が押圧位置において振動伝送板に伝送されて振動センサにより検出される。タッチの作用した箇所は、振動センサにより検出された信号から決定される。圧電効果を利用するタッチセンサの他の例は、米国特許第4,516,112号明細書、同第4,866,412号明細書、同第4,875,378号明細書、および同第5,673,041号明細書に開示されている。焦電効果を利用するタッチセンサの例が、米国特許第4,307,383号明細書および同第4,363,027号明細書ならびに特開2001−195190号公報に開示されている。
【0017】
本発明は、外部因子に応答して信号を自己生成すなわち自己作成する性質を有するフィルムを提供する。例えば外部の信号発生器のような追加供給源、電流または電圧源などの電源、もしくはこのような信号を生成する際に役立つ任意の他の追加供給源からの寄与なしに、外部因子に応答してフィルムにより信号を生成することが可能である。そうであっても、追加供給源は自己生成信号に関する情報を判断および/または報告するのに必要とされる。本発明によれば、フィルムと外部因子との間の相互作用は、フィルムによる生成信号を生じさせるのに十分である。このことは、電気的導電性フィルムなど通例タッチセンサで用いられる他のフィルム、例えば外部因子への応答だけでは信号を自己生成できず、外部因子に応答してフィルム内で信号が生成できるように、フィルムの外部にある供給源を必要とするインジウムスズ酸化物(ITO)とは対照的である。
【0018】
本発明によれば信号は生成時から電気的であり得る。例えば生成信号は電圧信号であり得る。電圧信号は例えばフィルムの厚さ方向に横断し得る。また電圧信号はフィルムの平面に沿い存在し得る。言い換えれば、電圧信号は部分的にフィルムの厚さ方向に沿って、且つ部分的にフィルムの平面に沿い存在し得る。自己生成信号は電流であり得る。他の例として自己生成信号は例えばフィルム厚さ方向にわたる温度勾配または温度差であり得る。一般には信号はフィルムによって自己生成される任意の情報であり、外部因子がフィルムに加えられた箇所を決定するのに用いることができる。
【0019】
さらに本発明によれば、外部因子がフィルムに作用した箇所でまたはその近傍で信号を生成することができる。また外部因子がフィルムに作用した箇所以外の1つまたは複数の箇所で、自己生成信号を生成することもできる。このような箇所は、フィルム形状に対して、または外部因子がフィルムに作用する箇所に対して予め決めることができる。簡単にまた一般性を損なうことなく言えば、以後自己生成信号の箇所は外部因子が作用した箇所にあるとみなす。これにより、2つの箇所が要求される分解能を満たす範囲で互いに十分に接近できること、および2つの箇所が同一になる必要がないことを意味する。本発明の独自の特徴は外部因子がフィルムに作用する箇所を、フィルム上の2つ以上の位置における自己生成信号を検出することにより決定できることである。
【0020】
さらに本発明によれば自己生成信号を用いることにより、外部因子がフィルムに作用した箇所であり得る自己生成信号の箇所の決定を助けることができる。信号の箇所を決定するために、自己生成信号を単独でまたは他の信号と組み合わせて用いることができる。組み合わせる他の信号は、電圧源または電流源などの外部信号源により生成された信号であり得る。
【0021】
本発明によれば、外部因子は作用したタッチであり得る。タッチはフィルムを押圧して変形を誘発することを含み得る。変形は可逆性があり、作用したタッチが一旦取り除かれるとフィルムは元の形状に戻るということを意味する。タッチはフィルムの直接物理的タッチを含み得る。あるいは、タッチは追加層またはコーティングを介してフィルムに作用させることもできる。また、例えばタッチ手段をフィルムに十分接近して位置させるような近傍により、タッチをフィルムに作用させることができる。代替的には、タッチ手段がフィルムから遠く離れていてもよい。例えばタッチ手段は光源がフィルムから遠く離れたレーザ光源などの光源からの光であってもよい。この例では、光とフィルムとの間の相互作用によりフィルムが信号を自己生成することができる。
【0022】
図1は本発明の1つの特定な実施形態によるシステム100を図示する。システム100は外部因子がフィルムに作用した箇所で信号を自己生成する特徴を有するフィルム110を含んでいる。本発明によればシステム100は、外部因子がフィルムに作用した箇所においてフィルム110により自己生成された信号を増大または増幅させるための1つまたは複数の補助信号源(図1には図示せず)を含み得る。
【0023】
典型的なシステム100において、外部因子130が箇所Zにおいてフィルム110に作用する。外部因子は例えば箇所Zにおいてフィルム110に圧力を作用するスタイラスであり得る。他の例として外部因子は箇所Zでフィルム110に入射する光線であってもよい。一般には外部因子は任意の外部手段を含み、それに応答してフィルム110は外部因子がフィルムに作用した地点で信号を自己作成する。
【0024】
自己生成信号はフィルム110の厚さ方向にわたって生成することができる。あるいは、自己生成信号はフィルム110の平面内にあってもよい。言い換えれば、自己生成信号は少なくとも部分的に厚さ方向にわたり、且つ少なくとも部分的にフィルム110の平面内にあってもよい。システム100は、箇所Zで生成された信号を、フィルム上の所定位置140a、140b、140cおよび140dで検出するようなセンサおよび電子機器120をさらに含む。位置140a、140b、140cおよび140dで検出された信号は、それぞれ伝送器150a、150b、150cおよび150dを介して、検出および処理のためにセンサおよび電子機器120に伝送される。図1ではフィルムから離れているように概略的に示されているが、センサおよび電子機器120の少なくとも一部分は、フィルム110と一体化されていてもよい。
【0025】
センサおよび電子機器120は、位置140a〜140dにおいて自己生成信号を検出して、外部因子130がフィルム110に作用した箇所を決定する。センサおよび電子機器120により生成された情報は、外部因子130がフィルム110に作用した箇所を決定するために、コントローラ160に伝送される。システム100は箇所Zで生成された信号を位置140a〜140dに伝送する手段(図1に図示されない手段)をさらに含む。このような手段はフィルム110に対して外部にあってもよい。例えば、1つまたは複数の信号伝送層は、自己生成信号を伝送するためにフィルム110の一方の側または両側でフィルム110に結合することができる。このような伝送手段はフィルム110に対して内部すなわち内在するものであってもよい。例えばフィルム110は自己生成信号を位置140a〜140dに伝送するというさらなる性質を有してもよい。図1によれば、フィルム内の4つの位置140a〜140dにおいて自己生成信号を検出することにより、箇所Zを決定することができる。一般には、2つ以上の位置またはフィルム110に沿った複数の位置において同等に自己生成信号を検出することにより、上記のような自己生成信号の箇所は決定することができる。
【0026】
フィルム110の上面および/または下面を構造化することができる。構造は例えばランダムでありまたは規則正しいパターンを含み得る。例えば表面はランダム艶消し仕上げを有してもよい。表面は一次元または二次元のマイクロ構造を有してもよい。構造化表面はグレア(glare)を低減することができる。また構造化表面は、外部因子130がフィルムに作用するときに滑る可能性を低減することができる。
【0027】
外部因子130はフィルム110に物理的接触をして、フィルムが接点で外部因子に応答して信号を自己生成するようにし得る。物理的接触はフィルムによる応答を誘発するために、ある種の力または圧力を伴う場合もあり伴わない場合もある。代替的には、外部因子130はフィルムでの応答を誘発するためにフィルム110に近接し得る。他の例では、外部因子はフィルム110内での応答を誘発することができ、ここでの応答は、フィルムと外部因子との間の距離間隔が実質的に無関係であり得る。いくつかの他の構成では、外部因子はフィルムに直接または間接的に圧力または力を作用させてフィルム内の応答を誘発し得る。例えば外部因子は、フィルム110と外部因子との間に位置する1つまたは複数の層と接触し得る。このような層にはコーティング、基板、保護層等がある。
【0028】
フィルムにより自己生成された信号は電圧、電流、温度、波動またはフィルム110が外部因子に応答して自己生成し得る任意の他の信号であってもよい。信号伝送器150a〜150dは、信号を位置140a〜140dからセンサおよび電子機器120に伝送する任意の適切な手段である。例えば自己生成信号が電圧である場合には、伝送器150a〜150dは導電性の電極または配線であり得る。伝送器150a〜150dをフィルム110から離れているように表示しているが、伝送器の少なくとも一部分は適当なパターンでフィルム110上に形成することができる。
【0029】
図1のシステム100は光学的に透過性または不透明であり得る。さらにシステムは剛性または可撓性、平坦または湾曲であり得る。システム100は図1に図示しない他の構成要素を含み得る。例えばシステム100はフィルム110の一方の側または両側に配置された追加層を含んでもよい。図1ではセンサおよび電子機器120ならびにコントローラ160は別体のユニットとして示されているが、用途によってはセンサ、電子機器およびコントローラは単一ユニットを形成することが可能であり、作用した外部因子の箇所を検出する手段がセンサ部品、電子部品およびコントローラ部品として容易に区分し得ないことは理解できよう。図1のシステム100は、タッチの作用した箇所を検出するためにタッチセンサを採用していることは理解できよう。
【0030】
図2は本発明の他の実施形態によるシステム200の概略を図示する。システム200は外部因子がフィルムに作用した箇所で信号を自己生成する特徴を有するフィルム210を含んでいる。外部因子230は、箇所Z1においてフィルム210に作用し、同箇所においてフィルム210内に自己生成される信号を誘発する。フィルム210は上部の信号伝送層270と下部の信号伝送層260との間に配置されている。層260および270は箇所Z1で自己生成された信号を位置240a〜240dに伝送し、そこで伝送された信号が検出可能となる。伝送器250a〜250dは検出可能な信号を対応箇所240a〜240dからセンサおよび電子機器220へ伝送して箇所Z1を決定する。図2によれば、2つの伝送層260および270は、自己生成信号を箇所Z1から位置240a〜240dに伝送するのに用いられる。ある例では単一の信号伝送層、例えば上部の信号伝送層270または下部の信号伝送層260を用い得る。さらに図2は4つの位置240a〜240dを示しており、ここから信号がセンサおよび電子機器220に伝送されるが、一般には少なくとも2つのこのような位置は箇所Z1を決定するのに用いることができる。センサおよび電子機器220により生成された情報は、さらにコントローラ280に送ることができる。コントローラ280はセンサ220に結合されており、受信した情報を用いて外部因子230がフィルム210に作用した箇所を決定する。
【0031】
本発明の1つの特定な態様によれば、システム200はタッチ検出装置であり得る。この場合、外部因子230は箇所Z1において入力タッチをタッチパネル290に作用するタッチ手段であり得る。フィルム210はタッチ手段230に応答して箇所Z1において信号を自己生成する性質を有する。例えばフィルム210は圧電材料であり得る。一般には圧電とは機械的応力に応答して材料内で且つ材料により生じる電気分極を指す。圧電材料は電気分極に応答して機械的応力を自己生成する性質を有する。これらの効果のいずれか1つをシステム200で用い得る。圧電フィルム210の場合、箇所Z1において十分な力または圧力でフィルム210に作用するタッチ手段は、Z1においてフィルム210の厚さ方向にわたってフィルム210により自己生成される電圧信号を誘発させる。本発明のこの特定な態様によれば、フィルム210は電気的導電層260と270との間に配置される。層260および270は、Z1において自己生成された電圧信号を4つの位置240a〜240dに伝送し、ここで伝送された信号が検出可能となる。導電層260は、状況に応じて一定電位、例えばシステム接地に維持し得る。
【0032】
導電層260および/または270は電気的に連続するものまたは個々の構成要素から作製し得る。電気的に連続する電極は、フィルム210全体すなわちタッチ検出エリア内にあるフィルム210全体、またはタッチ検出エリア内のフィルムの一部分を被覆することができる。伝送器250a〜250dは、箇所Z1を決定するために、位置240a〜240dからセンサおよび電子機器220に信号を伝送する導電性の電極または配線であり得る。センサおよび電子機器220により生成された情報は、箇所Z1を決定することができるようにさらにコントローラ280に伝送される。位置240a〜240dからセンサ220に伝送される検出可能な信号は、電圧、電流または他の検出可能な信号であり得る。
【0033】
センサおよび電子機器220は、複数のセンサを含み得る。例えばセンサ220は、第1の位置240aにおいて検出可能な信号を検出する第1のセンサと、第2の位置240bにおいて検出可能な信号を検出する第2のセンサと、第3の位置240cにおいて検出可能な信号を検出する第3のセンサと、第4の位置240dにおいて検出可能な信号を検出する第4のセンサとを含み得る。タッチ箇所Z1は、4つのセンサによって検出される4つの検出可能な信号により決定される。
【0034】
タッチ手段に応答してフィルム210により自己生成された信号の大きさは、フィルムに作用した圧力または力の関数であり得る。例えば自己生成された信号の強度は、フィルムに作用した力量が増加するにつれて増加し得る。このような性質はz軸制御の手段を提供することが可能であり、システム200の応答はフィルムに作用した力量によって変化し得る。
【0035】
フィルム210は、タッチダウンのときに作用するタッチに応答して、つまりフィルム210に対して正の力すなわち圧力を作用させているときに、電気信号を自己生成することができる。このような自己生成信号を「タッチダウン信号」と呼ぶことができる。またフィルム210は、タッチアップ(またはリフトオフ)のときに作用するタッチに応答して、つまりタッチが除去されたことによりタッチダウン中にフィルム210に予め作用していた力もしくは圧力が低減または除去されたことで電気信号を自己生成することができる。このような自己生成信号を「タッチアップ信号」と呼ぶことができる。タッチダウン信号またはタッチアップ信号のいずれかまたは両方を検出してタッチ箇所を検出することができる。両方の信号を検出することはタッチ箇所の決定精度を向上することができる。さらにタッチアップ信号を検出することは、一回だけのタッチとタッチ・アンド・ドラッグ(touch and drag)とを識別する方法として利用することができる。なお、タッチ・アンド・ドラッグは、例えばスタイラスをタッチセンサに作用させて、タッチセンサ上で線を引くためにセンサ上でドラッグすることを言う。
【0036】
さらに箇所240a〜240dにおいて検出された検出可能信号の大きさは、タッチ箇所においてフィルムに作用した力の大きさに関する情報を提供することができる。このような情報を用いてタッチセンサによる適正な応答を決定または変更することができる。例えばタッチ箇所が音量を制御するように設計されている場合、作用した力量を用いて適正な音量レベルを決定することができる。代替案として、タッチダウンおよびタッチアップ信号が自己生成された時の時間間隔をモニタすることにより、音量レベルを決定することができる。例えば時間間隔が長くなるほどタッチセンサにより設定される音量レベルは高くなり得る。
【0037】
タッチパネルの上面はテキスチャ加工(textured)または構造化し得る。上記したように構造化表面はグレアを低減することができる。さらにテキスチャ加工されたまたは構造化表面はタッチ手段に応答して自己生成信号に追加情報を付加することができる。例えばテキスチャ加工された表面上でスタイラスをドラッグすることは、表面に作用する力または圧力に変化を生じさせることになり、これによって自己生成信号を変化させる結果が得られる。例えばこのような信号変化はタッチ箇所を決定するのに使用することができる。
【0038】
典型的な無機圧電材料には、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、石英、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、チタン酸ランタン鉛(PLT)、チタン酸鉛PT、および、異なる無機圧電材料との化合物または複合物がある。
【0039】
ポリマー圧電材料の例には、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDFまたはPVF2)、P(VDF−TrFE)とP(VDF−TeFE)とを含むPVDFコポリマー、ポリパラキシレン、ポリ−ビスクロロメチルオキセタン(ペントン(Penton))、芳香族ポリイミド類、ポリスルホン、ポリフッ化ビニル、合成ポリペプチド、シアノエチル化セルロース、ポリフッ化ビニリデン/ポリメチルメタクリレート混合物、ポリフッ化ビニリデン/ポリメチルアクリレート混合物、ポリフッ化ビニリデン/ポリエチルメタクリレート混合物、ポリフッ化ビニリデン/ポリビニルアセテート混合物、ポリフッ化ビニリデン/ポリN,N−ジメチルアクリルアミド混合物、シアン化ビニリデン/ビニルアセテートコポリマー、ナイロン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリシアン化ビニリデン、シアン化ビニリデン/アクリロニトリルコポリマー、シアン化ビニリデン/塩化ビニリデンコポリマー、シアン化ビニリデン/スチレンコポリマー、シアン化ビニリデン/メチルメタクリレートコポリマー、シアン化ビニリデン/ビニルベンゾエートコポリマー、シアン化ビニリデン/塩化ビニルコポリマー、シアン化ビニリデン/アクリル酸コポリマーがある。
【0040】
他の圧電材料の例には、ポリマー圧電材料ならびに無機圧電材料もしくはセラミックのいずれかとの複合物、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)とポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)との複合物がある。
【0041】
代替的にはフィルム210は焦電材料であってもよい。一般に焦電気とは熱吸収に応答して材料内で且つ材料により自己生成された電気分極を指す。焦電フィルム210の場合、タッチ手段はフィルム210内のタッチ箇所Z1において温度勾配または温度差を生成することができる。温度勾配は例えばフィルム厚さ方向にわたって生成することができる。タッチ手段230は例えば赤外線放射スタイラスであり、赤外線ビームがフィルム210により箇所Z1で吸収されることにより、温度勾配または温度差を生じ得る。代替的にはタッチ手段230は1つまたは複数の波長または波長範囲の電磁放射線を放出可能であり、この波長をフィルム210は十分に吸収して温度勾配または温度差の形態の信号を自己生成する。温度勾配は例えばZ1において、フィルム210により自己生成された電圧信号を誘発することができる。上記の説明と同様に、電気的導電層260および270は生成信号を4つの位置240a〜240dに伝送することができる。240a〜240dにおいて検出可能な信号はセンサ220およびコントローラ280により検出される。箇所Z1は、検出された4つの検出可能な信号に基づいて、センサおよび電子機器220ならびにコントローラ280により決定される。
【0042】
導電層260および270は均一な導電性を有することが望ましい。電気的導電層の場合、層のシート抵抗は10%以内で均一であることが好ましく、これは2.5センチメートルの距離全体にわたり平均シート抵抗からの最大変位が10%以下であるということを意味する。シート抵抗が2%以内で均一であることがより好ましく、0.5%以内であることがさらに好ましく、0.2%以内であることがさらにより好ましい。
【0043】
導電層260および270は、金属、半導体、不純物半導体、半金属、金属酸化物、有機導体、導電性ポリマー等であり得る。典型的な金属導体には金、銅、銀等がある。典型的な無機材料には、透明導電性酸化物、例えばインジウムスズ酸化物(ITO)、フッ素ドープスズ酸化物、アンチモンスズ酸化物(ATO)等がある。典型的な有機材料には導電性有機金属複合物、ならびにポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンおよびポリチオフェンなどの導電性ポリマーがあり、これらは欧州特許出願公開第1−172−831−A2号明細書に開示されている。電気的導電層260および270は、フィルム210全体もしくはタッチセンサのタッチ検出エリア内のフィルムに対して、またはタッチ検出エリアの一部分に対して電気的連続性があり得る。さらに電気的導電層260および270は、互いに電気的に絶縁された個々の導電性部分から構成することができる。
【0044】
上記の説明によれば、フィルム210は焦電または圧電材料を含み得る。一般にフィルム210は、タッチの箇所においてタッチ手段に応答して信号を自己生成する任意の材料を含み得る。例えばフィルム210内で用いるのに適した他の材料には、熱電材料および強誘電材料がある。一般にフィルム210は変換器を含み得る。
【0045】
図2のタッチセンサ200は光学的に透過性または不透明であり得る。さらにタッチセンサは剛性または可撓性、平坦または湾曲であり得る。
【0046】
図2は、4箇所において自己生成信号を検出することにより作用したタッチの箇所を決定することを図示している。一般に本発明によれば、2つ以上の位置もしくはフィルム上の複数の位置において同等に自己生成信号を検出することより、作用したタッチの箇所は決定される。2つの位置において自己生成信号を検出することによりタッチの箇所を決定する例を、図3を参照して説明する。
【0047】
図3は、本発明の1つの特定な態様によるタッチセンサ300を図示する。タッチセンサ300はタッチパネル390と、センサ320と、コントローラ380とを含む。タッチパネル390は、箇所Z2においてフィルム310に作用したタッチ手段330からの十分な力または圧力に応答して、Z2において電圧信号を自己生成する圧電フィルム310を含む。図3に示す特定の実施形態は、圧電特性を有するフィルム310を用いて説明するが、本発明は圧電フィルムに限定されるものではない。フィルム310は、上記したような焦電気の他の適切な性質を有する材料を含み得る。
【0048】
また図3を参照すると、圧電フィルム310が上部の電気的導電層370と下部の電気的導電層360との間に配置されており、各層は例えばタッチ検出エリア全体にわたって電気的に連続しているか、または互いに電気的に絶縁された個々の部分で構成されている。本発明のこの態様によれば、タッチパネル390のy軸に沿った寸法「b」は十分に小さいので、例えば要求のおよび/または有効なタッチ分解能または精度があれば、作用したタッチの箇所は、タッチパネルの寸法「a」に沿ったタッチ箇所のx座標を決定することにより適正に決定される。タッチ手段330は、箇所Z2においてタッチパネルに圧力または応力を作用させる。この圧力に応答して、圧電フィルム310は箇所Z2において電圧信号を自己生成する。例えば信号はz軸に沿ったフィルムの厚さ方向にわたって自己生成された信号であり得る。自己生成された電圧は、導電層370および360を介して2つの位置340aおよび340bに伝送される。用途によっては、導電層360または代わりに導電層370を一定の電位、例えばシステム接地の電位に維持することができる。
【0049】
位置340aおよび340bにおいて検出可能な電圧信号は、それぞれ電極350aおよび350bを介してセンサ320により検出される。センサ320は箇所Z2のx座標を決定することができる。センサ320により生成された情報は、さらに処理されてタッチ箇所を決定させるために、コントローラ380に伝送することができる。箇所Z2のx座標は、センサ320およびコントローラ380により検出された検出可能な電圧信号に基づいて決定することができる。例えば箇所Z2は、検出された2つの信号の相対的な大きさを比較することにより決定することができる。上記したように、箇所340aおよび340bにおいて検出された信号は電圧、電流またはタッチ箇所を決定するために用い得る任意の他の適切な信号であり得る。図3は、寸法「b」が十分に小さいためタッチの作用したx座標の決定でタッチ箇所は適正に確定されるという意味で、一次元のタッチセンサを示している。代替案として、タッチセンサ300は図4に図示するように一連の短冊材(strip)を含み得る。
【0050】
図4は、本発明の1つの特定な実施形態によるタッチセンサ400の三次元の概略図である。タッチセンサ400は、図示例として圧電フィルム410を含むが、フィルム410は加えられたタッチに応答して信号を自己生成する性質を有する任意の材料を含み得る。N電極の短冊材470−1から470−Nは、フィルム410上に配置されている。短冊材470−1から470−Nと同様な短冊材を、フィルム410の背面側に配置し得る。代替的には単一の電気用連続電極を、フィルム410の背面側に、例えばタッチセンサのタッチ検出エリアを覆いながら配置することができる。図示の簡略化のために且つ一般性を損なわない程度に、図4は下部の導電性電極を一切表示していない。
【0051】
また図4を参照すると、タッチ手段430は例えば短冊材470−2に沿った箇所Z4においてタッチセンサ400にタッチを作用させる。作用したタッチに応答してフィルム410はZ4において電気信号を自己生成する。タッチ箇所Z4は、短冊材470−2に沿った位置450a−2および450b−2において自己生成された信号を検出することにより決定される。一般に短冊材470−1から470−Nの幅、短冊材間の距離、およびタッチ手段のサイズによっては、自己生成信号はy方向に一つの短冊材以上に延び得る。このような場合、例えば補間アルゴリズムは、最大信号を搬送する短冊材を決めることで、タッチ箇所のy座標を決定するのに使用することが可能である。代替的には近視野像(NFI:Near Field Imaging)方式のタッチセンサで用いられるものと同様なものを用いてy方向のタッチ箇所を決定し得る。このようなアルゴリズムの例は、米国特許第5,650,597号明細書に記載されている。通常電子機器を含むセンサ420およびコントローラ480は、2箇所440a−2および440b−2において検出された検出可能信号に基づいてタッチ箇所Z4を決定するとともにさらに適正な応答処理をする。
【0052】
また図2に戻り参照すると、タッチパネル290は追加層を有し得る。この典型的な構造が図5に示されている。図5は本発明の他の態様によるタッチセンサ500の概略の側面図を示す。タッチセンサ500は、タッチ手段に応答して信号を自己生成する性質を有するフィルムを含み、タッチされた箇所において信号を生成することができる。上記したように、フィルム510に含むことができる典型的な材料には、圧電および/または焦電材料がある。フィルム510は上部の電気的導電層570と下部の電気的導電層560との間に配置されている。フィルム510は、条件によって導電層のいずれかまたは両方と接し得る。保護層545は、上部の電極570上に配置されており、タッチ手段または他の要因により生じ得る引っかき傷などの損傷からある程度センサを保護する。接着層535が保護層545と電極570との間に配置されている。基板525は、図5に示した構造を支持する役割をある程度果している。電極570および560は電気的に分離または連続し得る。同様にフィルム510は分離または連続し得る。図示の簡略化のために且つ一般性を損なわない程度に、センサ、コントローラ、信号伝送器およびタッチ箇所を検出するのに必要なまたは要求される他の構成要素は図5に示されていない。
【0053】
接着層535に含まれる典型的な材料にはUV硬化性接着剤、粘着剤、熱活性化接着剤および熱硬化性接着剤がある。
【0054】
基板525は、剛性または可撓性であり得る。基板は、ポリマーまたは任意のタイプのガラス材であってもよい。例えば基板はフロートガラスでもよく、またはポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスルホン等などの有機材料で作製し得る。代替的には、基板525は金属を含み、この場合基板は下部の電極560として用いることもできる。
【0055】
保護層545の表面555は、グレアを低減するような艶消しであり得る。前述したように、図示の簡略化のために且つ一般性を損なわない程度に、図5はセンサ、コントローラおよび電気的接続を始めとするタッチセンサ内の多数の構成要素を示していない。タッチセンサ500内に組み込むことが可能であり且つ図5に明らかに示されていない他の典型的な層には、偏光板、位相差板、カラーフィルタ、反射防止コーティング、画像表示層、電磁障害(EMI)シールド、静電放電(ESD)シールド、指紋防止コーティング、ガスケット(gasket)がある。
【0056】
本発明によるタッチパネルは、タッチ手段に応答して信号を自己生成する性質を各々が有する2つ以上のフィルムを含むことができ、タッチした箇所において信号を生成することができる。典型的な構造が図8に示されているが、この図は、本発明の一態様によるタッチパネル800の概略な側面を示すものである。タッチセンサ800は、基板840、フィルム810と820、電極815と835および電極含有層825とを含む。フィルムは、各々のタッチ手段に応答して信号を自己生成する性質を有し、タッチ箇所において信号を生成することができる。
【0057】
上記したように、フィルム810および/または820をなす典型的な材料には圧電および/または焦電材料がある。例えばフィルム810および820は、両方とも圧電性または両方とも焦電性であってもよい。他の例として、一方のフィルムが圧電性であり他方が焦電性であってもよい。例えばフィルム810が焦電性でありフィルム820が圧電性であってもよい。図示するように、フィルム810および820の各々は2つの電極の間に配置されている。例えばフィルム810は電極815と電極含有層825との間に配置され、フィルム820は電極含有層825と電極835との間に配置されている。層825は、フィルム810および820の両方に接する単一電極となるように構成することが可能であり、またはフィルム810および820の各々に接する別々の電極を含み、別々の電極がそれらの間に電気的絶縁層を有するように構成可能である。状況に応じて、フィルム810は電極815および825のいずれか、または両方と接し得て、また一方でフィルム820は電極825および835のいずれか、または両方と接し得る。
【0058】
図8はタッチ手段に応答して信号を自己生成する性質を有する2つのフィルム810および820を示しているが、タッチパネル800がこのような付加的性質があるフィルムを有し得ることは理解できよう。
【0059】
本発明で用いられる圧電性フィルムは、多数の方法で製造することができる。例えばPVDFフィルムは、PVDFペレットをチル・ロールで押し出すことにより作製し得る。これは非結晶PVDFフィルムを作製するためで、非結晶PVDFフィルムは、時にはアルファ相にあると称される。あるいはPVDFとポリメチルメタクリレート(PMMA)との混合物を溶剤塗布して非結晶コーティングを作製し得る。次に上記非結晶PVDFフィルムは、1方向または2方向に延伸されることにより配向性が得られる。延伸により、時にはベータ結晶相とも称される半結晶フィルムになる。代替的には配向性は、例えば非結晶フィルムを所定の間隙を有するローラを通すようなフィルムの圧縮方法により達成し得る。フィルムの組成によっては、配向性にするステップが必要ない場合もある。
【0060】
次にPVDFフィルムは電界内に置かれ分極化される、例えば該フィルムを2つの帯電平行板の間に配置することにより分極させることができる。分極電界は、通例1ミクロン当り50〜100ボルトで約摂氏80〜120度の温度であるが、分極は他の温度でも達成し得る。分極プロセスは通常約30分かかり、この分極プロセスの後、フィルムは分極電界の存在下で室温まで冷却される。代替的にはフィルムはコロナ放電により分極し得て、同様な温度範囲であるが、通常はより短い時間で分極し得る。場合によっては、分極はすでにフィルム上に配置された電極で行い得る。通例コロナプロセスにおいて、コロナは通例フィルムの表面上に電荷分布を生じるため、フィルムは電極と密着している必要はない。ある材料組成の場合、非結晶フィルムを第1の配向することなくフィルムを分極させることが可能であり得る。代替的にはある組成の場合またはある一定条件で、フィルムを配向および分極するステップを同時に行い得る。米国特許第4,606,871号明細書、同第4,615,848号明細書、および同第4,820,586号明細書は、圧電性フィルムを分極するプロセスをさらに記載している。本発明によれば、フィルムを連続的に圧電性にまたは所定の領域内のみで圧電性に作製することができることは理解できよう。これは例えば図7に図示したような所定のエリアでフィルムを分極することにより達成することができる。
【0061】
図7は、本発明の一態様による圧電フィルム700の概略の側面図を示す。本発明の一態様によるフィルム700は、タッチ手段のような外部因子が作用した箇所で信号を検出することにより決定するシステムに用いられる。例えばこの信号は、電気信号でフィルム上の複数の位置において外部因子に対応してフィルム700で自己生成された信号である。フィルム700は、エリア701、702および703では圧電特性を有するが、エリア704および705では有さないように加工される。矢印は、フィルムが分極化されていて、矢印の位置する領域において圧電性があるということを象徴的に示している。この分極の方向は、圧電性があるフィルムの様々な箇所で異なり得る。例えば図7ではエリア703における分極の方向は、エリア701および702における分極の方向とは反対方向である。分極の方向は、箇所の情報を含む自己生成信号に、さらなる情報を付加することができる。タッチ検出用フィルムが所定のエリアにおいてのみ圧電性であるタッチセンサの利点は、圧電性がないフィルムのエリアでは信号が自己生成されないためタッチを検出しないということである。従って不許可の箇所に作用するタッチを拒絶するためのソフトウェアおよび電子機器の必要性が、低減するかまたは削除することができる。典型的な用途として、タッチセンサ内のベゼル(bezel)の下に位置するフィルムのエリアは、不注意によるベゼルへの応力が有効なタッチとして記録されないように、非圧電性にすることができる。
【0062】
また図8を参照すると、フィルム810および820が両方とも圧電性である場合、フィルムは同一方向または反対方向に分極することができる。一般にタッチパネル800が複数の圧電性フィルムを含む場合、フィルムをすべて同一方向または異なる方向に分極することができる。例えば圧電性フィルムを交互に反対方向に分極することができる。
【0063】
図6は本発明の一態様によるディスプレイシステム600の概略の断面図を示している。ディスプレイシステム600は、タッチセンサ601とディスプレイ602とを含む。タッチセンサ601は、本発明の任意の実施形態によるタッチセンサであってもよい。ディスプレイ602は、常設または交換可能なグラフィクス(例えば絵、地図、アイコン等)、および液晶ディスプレイ(LCD)、陰極線管(CRT)、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネセント・ディスプレイ、有機エレクトロルミネセント・ディスプレイ、有機発光ダイオード(OLED)、電気泳動ディスプレイ等などの電子ディスプレイを含めることができる。図6ではディスプレイ602およびタッチセンサ601が2つの別体の構成要素として示されているが、この2つは単一のユニットに一体化して形成できることは理解できよう。例えばタッチセンサ601は、ディスプレイ602の上に積層することができる。代替的にはタッチセンサ601は、ディスプレイ602との一体部分であってもよい。
【0064】
本発明で開示した実施形態は、フィルム上のある箇所に作用した外部因子に応答して信号を自己生成する性質を有する単一層のフィルムを示しているが、説明した各の実施形態は、各層が外部因子に応答して信号を自己生成する性質を有する2つ以上の層を含み得ることは理解できよう。さらに本発明によるタッチセンサなどのシステムが高い光学透過性を有し、スタイラス非依存であり、可動部分を有さないように設計し得ることは理解できよう。さらにまた本発明によるタッチセンサなどのシステムは、ディスプレイシステムなどの他のシステムと一体化して形成化することができる。また本発明によれば、タッチ手段および信号を自己生成するようなフィルムとの間の物理的な接触が、必ずしもタッチを記録させる必要はないことも理解できよう。
【0065】
上記に引用した特許、特許出願および他の刊行物はすべて完全に再現するように本明細書に引用して援用する。本発明の特定な例を上記に詳細に説明して本発明の様々な態様の説明を容易にしたが、本発明をこれらの例の細部に限定しようとするものではないことを理解されたい。むしろ添付の特許請求の範囲により規定されるような本発明の要旨および範囲内にある変更例、実施形態および代替例を、すべて網羅しようとするものである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態によるシステムを示す三次元の概略図である。
【図2】本発明の他の実施形態によるシステムを示す三次元の概略図である。
【図3】本発明のさらに他の実施形態によるタッチセンサを示す三次元の概略図である。
【図4】本発明の他の実施形態によるタッチセンサを示す三次元の概略図である。
【図5】本発明の他の実施形態によるタッチセンサの側面を示す概略図である。
【図6】本発明の他の実施形態によるディスプレイシステムの側面を示す概略図である。
【図7】本発明の他の実施形態による圧電性フィルムの側面を示す概略図である。
【図8】本発明の一実施形態によるタッチセンサの側面を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム上の任意の箇所に作用した外部因子に応答して、電気信号を自己生成するフィルムと、
前記フィルム上の複数の位置において前記電気信号を検出して、前記外部因子が前記フィルムに作用した前記箇所を決定するように構成されたセンサとを備えるシステム。
【請求項2】
前記センサに結合されるとともに、前記外部因子が前記フィルムに作用した前記箇所を決定するように構成されたコントローラをさらに備える請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記外部因子がタッチ手段を備える請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記自己生成電気信号が、前記外部因子が前記フィルムに作用した前記箇所において生成される請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記フィルムが圧電性である請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記フィルムが焦電性である請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
タッチの作用した箇所を検出するようにタッチセンサにおいて用いられる請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
光学的に透過性である請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
光学的に不透明である請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記自己生成信号が電流である請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記自己生成信号が電圧である請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記フィルムの少なくとも一方の側に配置されるような1つ以上の電気的連続電極をさらに備える請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
フィルム上の任意の箇所に作用した外部因子に応答して電気信号を自己生成し、前記自己生成電気信号が少なくとも前記フィルム上の第1の位置において第1の検出可能信号と前記フィルム上の第2の位置において第2の検出可能信号とを作成するフィルムと、
少なくとも前記第1および第2の検出可能信号を受け取って前記外部因子が前記フィルムに作用した前記箇所を決定するように構成されたコントローラとを備えるシステム。
【請求項14】
前記フィルムと前記コントローラとに結合されるとともに、少なくとも前記第1および第2の検出可能信号を検出して前記検出した信号を前記コントローラに伝送するように構成されたセンサをさらに備える請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
フィルム上の任意の箇所に作用したタッチ手段に応答して電気信号を自己生成するフィルムを備え、前記フィルム上の複数の位置において前記電気信号を検出することにより前記タッチ手段により検出される箇所が決定されるフィルムを備えるタッチセンサ。
【請求項16】
前記フィルムが圧電性である請求項15に記載のタッチセンサ。
【請求項17】
前記フィルムが焦電性である請求項15に記載のタッチセンサ。
【請求項18】
前記フィルムが所定の領域内においてのみ圧電性である請求項15に記載のタッチセンサ。
【請求項19】
前記フィルムが所定の領域内においてのみ焦電性である請求項15に記載のタッチセンサ。
【請求項20】
光学的に透過性である請求項15に記載のタッチセンサ。
【請求項21】
前記フィルム上の2箇所において前記電気信号を検出することにより、前記タッチ箇所が決定される請求項15に記載のタッチセンサ。
【請求項22】
前記フィルム上の4箇所において前記電気信号を検出することにより、前記タッチ箇所が決定される請求項15に記載のタッチセンサ。
【請求項23】
剛性である請求項15に記載のタッチセンサ。
【請求項24】
可撓性である請求項15に記載のタッチセンサ。
【請求項25】
ディスプレイと組み合わされた請求項15に記載のタッチセンサ。
【請求項26】
前記フィルムの少なくとも一方の側に配置されるような1つ以上の電気的連続電極をさらに備える請求項15に記載のタッチセンサ。
【請求項27】
前記電気的連続電極が10%以内で均一である請求項26に記載のタッチセンサ。
【請求項28】
前記電気的連続電極が2%以内で均一である請求項26に記載のタッチセンサ。
【請求項29】
前記電気的連続電極が0.5%以内で均一である請求項26に記載のタッチセンサ。
【請求項30】
各々の追加フィルムが前記タッチ手段に応答して信号を自己生成する特性を有し、各々の追加フィルムで生成される前記信号を前記タッチ手段が作用した箇所において生成することができるような少なくとも1つの追加フィルムをさらに備える請求項15に記載のタッチセンサ。
【請求項31】
前記連続電極が光学的に透過性である請求項26に記載のタッチセンサ。
【請求項32】
前記連続電極がインジウムスズ酸化物を備える請求項26に記載のタッチセンサ。
【請求項33】
前記連続電極が光学的に透過性導電性ポリマーを備える請求項26に記載のタッチセンサ。
【請求項34】
フィルム上の任意の箇所に作用したタッチ手段に応答して電気信号を自己生成するフィルムを備え、少なくとも第1のセンサが前記フィルム上の第1の位置において前記自己生成の電気信号により作成される第1の検出可能信号を検出するとともに、第2のセンサが前記フィルム上の第2の位置において前記自己生成の電気信号により作成される第2の検出可能信号を検出することにより、前記タッチ手段により検出される箇所が決定されるフィルムを備えるタッチセンサ。
【請求項35】
作用したタッチ入力に応答して電気信号を自己生成するフィルムを備えるタッチ検出エリアを規定するステップと、
前記自己生成電気信号に応答して作成された複数の検出可能信号を検出するステップと、および
タッチ箇所を決定するために前記複数の検出可能信号を用いるステップとを含むタッチ箇所の決定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−521569(P2007−521569A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517191(P2006−517191)
【出願日】平成16年6月7日(2004.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/017973
【国際公開番号】WO2005/006164
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】