検査システム、訓練システムおよび視覚情報呈示システム
【課題】半側空間無視等の視空間認知障害や視覚障害等を有する障害者の障害の内容や程度を容易に客観的、定量的かつ詳細に検査することができる検査システムを提供する。
【解決手段】CCD等の撮像素子が装着されたヘッドマウンテッドディスプレイ11とコンピュータ12とにより構成される検査システムにおいて、ヘッドマウンテッドディスプレイ11に表示する画像の座標系を物体中心座標系または身体中心座標系に設定可能に構成する。撮像素子で撮像された画像をコンピュータ12に取り込み、これに所定の処理を施すことで得られる画像をヘッドマウンテッドディスプレイ11に表示する。
【解決手段】CCD等の撮像素子が装着されたヘッドマウンテッドディスプレイ11とコンピュータ12とにより構成される検査システムにおいて、ヘッドマウンテッドディスプレイ11に表示する画像の座標系を物体中心座標系または身体中心座標系に設定可能に構成する。撮像素子で撮像された画像をコンピュータ12に取り込み、これに所定の処理を施すことで得られる画像をヘッドマウンテッドディスプレイ11に表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検査システム、訓練システムおよび視覚情報呈示システムに関し、特に、視空間認知障害や視覚障害等を有する患者の検査、訓練あるいは日常生活活動等の補助・支援に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
世界各国において高齢化で後遺症を伴う脳卒中が深刻な問題になっている。このため、1990年代より欧米では脳卒中対策の総合的見直しが急速に進められている。1995年世界保健機構(WHO)によるヘルシングボリ宣言では、2005年までに到達すべき目標の1つとして、発症から3ヵ月後に70%以上の脳卒中患者が日常生活で自立できるようにするという項目が盛り込まれていた。日本の場合、この目標の到達度は6、7割にすぎず、寝たきり老人の4割、訪問看護利用者の4割を脳卒中患者が占める。厚生省大臣官房統計情報部編(1993年)によると、傷病分類別推計患者総数約140万人のうち最も多いのは脳血管疾患の21万人で入院患者の14.8%、65歳以上では24.9%を占める。また、リハビリテーションに時間を要することから脳血管疾患の平均在院日数は119日で、他の疾患に比べ入院期間が長期にわたる疾患である。この長期間になる1要因として視空間認知障害があり、特に半側空間無視は右脳出血群の58%、左脳出血群の10%に出現しリハビリテーション治療の重大な阻害因子となっている。
【0003】
半側空間無視は、病巣と反対側の刺激に反応しなかったり、そちらを向こうとしない現象であり、しばしば患者の日常生活活動場面で行動異常を来す。すなわち、早期には食事の際に無視側の食べ物を食べ残す、無視側の介助者に気づかない、歩行時に壁や扉に身体をぶつけたり、衣服の片袖に腕を通さない、また全般的に注意障害や発動性の低下を伴う場合が多く入院中に転倒や骨折を合併することも少なくない。その他の中枢神経障害(多発性硬化症、腫瘍、外傷、脳性麻痺等)によっても片側もしくは両側の全盲または半盲等の視野欠損も起こる。この視覚障害、取り分け片側の全盲、半盲や半側空間無視は、歩行困難や車椅子生活を余儀なくし、患者の日常生活活動(Activities of Daily Living, ADL)や生活の質(Quality of Life,QOL)を後退させる原因の一つでもあり、早急に解決すべき重要課題である。しかしながら、このような中枢神経疾患による合併症としての視覚障害に対するリハビリテーション治療およびその機能代償・改善のための福祉機器開発研究は極めて少ない状況にある。
【0004】
このような背景のもと、本発明者らは、これまで、中枢神経疾患に伴う治療困難な視覚障害者(児)に対する福祉機器として、小型3CCDカメラ付き眼鏡式バーチャルリアリティ(VR)システムの開発研究により、視野欠損部分の視覚情報を障害のない片眼もしくは両眼に与え、バランス能力の改善および安全かつ安定した歩行・ADLの自立ひいてはQOLの向上をめざすことを提案してきた(非特許文献1〜3参照。)。具体的には、ヘッドマウンテドディスプレイ(Head Mounted Display, HMD)に設置した小型3CCDカメラを通じて得た景色や物をコンピュータ処理により修正し、HMDを通じて本人に呈示する。例えば視力を補強するため、注視した部分を中心に画像を拡大し、分解能を上げ、コントラストや配色を鮮明にし、明るさを上げるようにする。
【0005】
【非特許文献1】田中敏明:高齢者の視覚と転倒.理学療法18(9):847-851,2001
【非特許文献2】Tanaka T., Kojima S., Shirogane S., Ohyanagi T., Izumi T., Yumoto H.,Ino S.,and Ifukube T., 14th International Congress of the World Confederation for Physical Therapy(Proceedings, RP-PO-0982)2003, Barcelona(Spain)
【非特許文献3】人間工学 Vol.41,No.4('05),213-217
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の小型3CCDカメラ付き眼鏡式VRシステムによる半側空間無視等の視空間認知障害を有する障害者の検査の方法や有効性等についてはまだ明らかではなく、実際の適用には克服すべき課題が多くあった。
そこで、この発明が解決しようとする課題は、半側空間無視等の視空間認知障害や視覚障害等を有する障害者の障害の内容や程度を容易に客観的、定量的、かつ、詳細に検査することができる検査システムを提供することである。
この発明が解決しようとする他の課題は、半側空間無視等の視空間認知障害や視覚障害等を有する障害者の障害の内容や程度に応じた適切な訓練をすることができ、リハビリテーション治療や介助支援等を効果的に行うことが可能となる訓練システムを提供することである。
この発明が解決しようとするさらに他の課題は、半側空間無視等の視空間認知障害や視覚障害等を有する障害者、さらには広く一般健常者の視覚を補助・支援して日常生活活動の向上および生活の質の向上を図ることができる視覚情報呈示システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、半側空間無視患者等の視空間認知障害や視覚障害等を有する患者の障害の内容や程度を検査したり、これらの患者の訓練あるいは日常生活活動や生活の質の向上を図るためには、ヘッドマウンテドディスプレイに設置した小型3CCDカメラ等を通じて得た景色や物をコンピュータ処理により修正し、ヘッドマウンテドディスプレイを通じて単に本人に呈示するのではなく、呈示する際の座標系を物体中心座標系または身体中心座標系に設定することができるように構成することが、より視空間認知障害を詳細に評価する上で有効であることを見出し、この発明を案出するに至った。
【0008】
すなわち、上記課題を解決するために、第1の発明は、
一つまたは複数の撮像素子が装着されたヘッドマウンテッドディスプレイを有し、
上記ヘッドマウンテッドディスプレイに表示する画像の座標系を物体中心座標系または身体中心座標系に設定可能に構成されていることを特徴とする検査システムである。
【0009】
第2の発明は、
一つまたは複数の撮像素子が装着されたヘッドマウンテッドディスプレイを有し、
上記ヘッドマウンテッドディスプレイに表示する画像の座標系を物体中心座標系または身体中心座標系に設定可能に構成されていることを特徴とする訓練システムである。
【0010】
第3の発明は、
一つまたは複数の撮像素子が装着されたヘッドマウンテッドディスプレイを有し、
上記ヘッドマウンテッドディスプレイに表示する画像の座標系を物体中心座標系または身体中心座標系に設定可能に構成されていることを特徴とする視覚情報呈示システムである。
【0011】
第1〜第3の発明において、物体中心座標系とは、個々の空間対象に対して構成される枠組みである。空間対象がある軸に対して対称な場合はその軸に基づいて参照枠を構成することができるが、全ての空間対象が対称という訳ではないので、対称中心参照枠は観察者がどう認識するかによって、また与えられたタスクによっても変化しうる。これに対して、身体中心座標系(頭部・体幹座標系)とは、観察者の身体(あるいは身体の一部)を中心とする空間対称の枠組みである。人間の身体は、眼球、頭部、体幹等の複数の可動部分によって空間対象の位置・方向が異なってコーディングされる。この特徴としては観察者が移動することによって参照枠上の空間対象の方向・位置が変化することである。
【0012】
ヘッドマウンテッドディスプレイに装着する撮像素子としては、好適にはCCD、取り分けカラー画像を得ることができる3CCD(青色、緑色および赤色用の三つのCCDからなるもの)が用いられ、画素数も通常は例えば20万画素以上であれば十分であるが、これに限定されるものではない。この撮像素子としては、CCD以外のもの、具体的にはMOSまたはCMOS型撮像素子、取り分けカラー画像を得ることができるものを用いてもよい。この撮像素子は通常、小型カメラの形でヘッドマウンテッドディスプレイの上部や被験者または使用者が装着したときに目の前に当たる位置等に装着され、被験者または使用者の目の光学的位置と撮像素子の光学的位置とが一致するようにする。ヘッドマウンテッドディスプレイは、必要に応じて、被験者または使用者の頭部の運動を計測することができるように構成され、具体的には頭部の運動の計測装置が装着される。
【0013】
ヘッドマウンテッドディスプレイとしては完全遮蔽型のものを用いてもよいが、ヘッドマウンテッドディスプレイを装着した被験者または使用者の頭部の急激な大きな動きに対するバーチャル酔いを抑えたりするためには、平衡感覚と大きく関係する周辺視野部を利用するために周辺視が可能な開放型のものを用い、さらに視運動刺激を呈示するようにするのが望ましい。視運動刺激の呈示としては、具体的には、例えば、基準となる水平線の呈示および頭部の移動方向と逆方向に移動する水平線の呈示を行う。
【0014】
この検査システム、訓練システムおよび視覚情報呈示システムは、典型的には、撮像素子で撮像された画像を処理してヘッドマウンテッドディスプレイに表示する処理/制御装置をさらに有する。この処理/制御装置としては通常、コンピュータが用いられる。
ヘッドマウンテッドディスプレイに表示する画像の座標系を物体中心座標系または身体中心座標系に設定するためには、例えば、撮像素子により撮像された画像をコンピュータに取り込み、これにコンピュータで処理を施すことにより得られる画像をヘッドマウンテッドディスプレイに表示するようにしたり、デジタルカメラ等により撮像された画像を撮像素子により撮像された画像と重ね合わせてヘッドマウンテッドディスプレイに表示するようにしたりすることができる。撮像素子により撮像された画像の処理や制御を行うためのコンピュータとヘッドマウンテッドディスプレイとの間の信号の送受信はケーブルを介して行ってもよいし、無線通信で行ってもよい。
【0015】
撮像素子により撮像された画像の処理の仕方は、半側空間無視等の視空間認知障害者や視覚障害者の検査、訓練、補助・支援等の内容に応じて適宜決められるが、具体的には、撮像素子により撮像された現実空間の画像に対して、辺縁強調(エッジ強調)、縮小、拡大、注意喚起情報の付加、色変換、二値化等である。例えば、半側空間無視患者には、注意喚起情報を現実空間映像に合成することで現実空間での無視側空間を認識することを補助することが可能になり、無視側空間を除いた空間内に視覚情報を再構成することで空間認識を補助することも可能になる。また、視覚障害者には、拡大、辺縁強調、色変換、二値化等の画像処理を行うことで、認識しやすい最適な視覚情報呈示が可能になる。拡大・縮小による視野変換は、好適には、現実空間の中心を変えずに行う。
【0016】
例えば、検査用紙等を用いて検査や訓練等を行う場合、被験者または使用者の肢位(ポジション)に影響を受けることなく、ヘッドマウンテッドディスプレイの撮像素子あるいは小型カメラをこの検査用紙等にフォーカスした状態で検査や訓練等を行うことが可能である。一つの例では、検査や訓練等を行う際に被験者または使用者が座る椅子に固定したデジタルカメラ等により検査用紙等を撮影し、その画像をヘッドマウンテッドディスプレイに表示するように構成する。そして、例えば、こうしてデジタルカメラ等により撮影した検査用紙等の画像を拡大または縮小してヘッドマウンテッドディスプレイにするように構成する。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、ヘッドマウンテッドディスプレイに表示する画像の座標系を物体中心座標系または身体中心座標系に設定可能に構成されていることにより、従来得られなかった次のような多くの利点を得ることができる。
物体中心座標系または身体中心座標系に設定してヘッドマウンテッドディスプレイに画像を表示し、被験者に呈示して呈示情報を被験者に判断させることにより、被験者の状況を定量的に検査することが可能である。例えば、被験者の視空間に関する新しい検査が可能となる。具体的には、被験者の無視領域に座標軸を移動したり、逆に見える部分に座標軸を移動したり、ある物体へ軸を移動したりする等、検査者が自由に座標軸を移動させることが可能となる。また、眼球運動も検出すると被験者の視線軌跡が分かり、かつ、被験者本人には実際どのように見えているかを検査者が認識することができる。例えば、視野欠損がある被験者にはどのように見えているかに関し、検査者は、実際の場面でどのように視野欠損が存在するかを画像としてシミュレートして理解することができる。そして、この検査結果に応じて各被験者に適応した訓練あるいは視覚呈示を行うことができる。
現実世界と境界無しに融合した形でコンピュータグラフィックス(CG)等による様々な視覚情報の付加あるいは改変を行った映像を使用者に呈示することが可能になる。そのため、ある限られた状況下だけではなく、より日常生活に近い環境での検査および訓練を行うことができる。したがって、被験者の疾患の状態を多面的に的確に把握しやすくなり、効率的、有効的な検査および訓練が可能になる。また、検査と訓練とを同一のシステムで構成することができるため、検査と訓練との整合性が非常に取りやすくなる。
特に半側空間無視患者には、注意喚起を与える情報を現実空間映像に合成することで、現実空間での無視側空間を認識することを補助することが可能になる。
【0018】
この発明は、例えば、脳血管障害に伴う半側空間無視患者等の視空間無視患者、パーキンソン病患者、赤緑色盲患者、半盲者、視力低下者、複視者、斜視者、高齢者(健康人、認知障害者)、眼鏡装着者等に適用して好適なものである。例えば、視空間無視患者および糖尿病性網膜症、白内障等を有する者の視野欠損部分以外の部分に視覚情報を視野欠損の度合いに応じて呈示することができる。パーキンソン病患者については、視覚情報を強調することによって歩行等が改善する。例えば、物体や建築物を強調することによって転倒予防、歩行階段昇降等が可能となる。赤緑色盲患者については、赤緑を判別しやすい色等に変化して呈示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1はこの発明の一実施形態による視覚情報呈示システムを示す。この視覚情報呈示システムは検査システムまたは視覚障害者等の障害者の訓練システムとしても使用することができるものである。
図1に示すように、この視覚情報呈示システムは、ヘッドマウンテッドディスプレイ11とコンピュータ12とを有する。
【0020】
ヘッドマウンテッドディスプレイ11の構成を図2に示す。図2に示すように、ヘッドマウンテッドディスプレイ11の前面、すなわち使用者あるいは被験者が装着したときにその両眼e1 、e2 に光学的に対応する位置に二つの3CCDカメラ13a、13bが装着され、同じく両眼e1 、e2 に対応する位置に二つのアイカメラ14a、14bが装着され、液晶ディスプレイ(LCD)やその他の各種のディスプレイからなる二つの表示装置15a、15bが両眼e1 、e2 に光学的に対応する位置に装着されている。
図1に示すように、ヘッドマウンテッドディスプレイ11には、図示省略したGPSアンテナおよび受信機(無線LAN受信機)が内蔵された頭部・体幹運動計測装置16が装着されている。ヘッドマウンテッドディスプレイ11は使用者あるいは被験者が頭部に装着することができるようにバンド11aを有する。
【0021】
図1に示すように、ヘッドマウンテッドディスプレイ11とコンピュータ12とは、ケーブル17を介して相互に信号の送受信を行うことができるようになっている。ただし、ヘッドマウンテッドディスプレイ11とコンピュータ12との間の信号の送受信は無線通信で行うようにしてもよい。ヘッドマウンテッドディスプレイ11の3CCDカメラ13a、13bで撮像された画像をコンピュータ12の本体の処理/制御装置に取り込み、この処理/制御装置で所定の処理を施した後にこの処理後の画像を表示装置15a、15bに表示し、使用者あるいは被験者に呈示することができるようになっている。また、アイカメラ14a、14bで計測された使用者あるいは被験者の両眼e1 、e2 の眼球運動の計測結果を処理/制御装置に取り込み、3CCDカメラ13a、13bで撮像された画像を処理/制御装置に取り込んでこの処理/制御装置で所定の処理を施す際にこの眼球運動の結果を反映させることができるようになっている。
【0022】
コンピュータ12は通常、コンピュータ本体(処理/制御装置)とディスプレイとを有する。コンピュータ12はデスクトップ型であってもノート型であってもよい。処理/制御装置は、プロセッサ、主記憶装置(メインメモリ)、補助記憶装置等を有する。補助記憶装置としては、ハードディスクドライブ等の各種のものを用いることができ、処理/制御装置に内蔵されたものであっても外付けのものであってもよい。この補助記憶装置には所定のプログラミング言語を用いた所定のプログラムが格納されている。このプログラムの実行の際には、補助記憶装置から主記憶装置にこのプログラムが読み込まれ、または無線LAN等でダウンロードし、プロセッサによってそのプログラムが実行され、またはネットワークでつながっているサーバーでプログラムが実行される。図示は省略するが、処理/制御装置には、必要に応じて、キーボードやマウス等の入力装置や他の周辺機器を接続してもよい。
【0023】
この一実施形態においては、所定のプログラミング言語を利用したプログラムの設計により、ヘッドマウンテッドディスプレイ11の表示装置15a、15bの画面に画像を表示する際の座標系を物体中心座標系または身体中心座標系に設定可能に構成されている。この設定は、検査者または使用者が、コンピュータのキーボードやマウス等を操作することにより容易に行うことができるようになっている。
【0024】
処理/制御装置により行う処理には各種のものがあり、必要に応じて選ぶことができるが、具体例を挙げると次のとおりである。
(1)エッジ強調表示
現実空間映像に対してエッジを強調して表示し、見やすくする。例えば、図3Aに示すような階段の現実空間映像に対し、処理/制御装置による処理後の複合現実空間映像(ヘッドマウンテッドディスプレイ11の液晶ディスプレイ15a、15bに表示する映像)においてそのエッジを強調して図3Bに示すように表示する。
【0025】
(2)縮小表示
現実空間映像における認識空間に無視空間の視覚情報も呈示することで無視空間の視覚情報も認識可能とする。例えば、図4Aに示すようにビルの現実空間映像において、半側空間無視患者には無視空間にある左端のビルが認識できない場合に、図4Bに示すように複合現実空間映像において現実空間映像を水平方向に縮小して認識空間に無視空間にあるビルも表示することができるようになり、認識可能となる。この例では縮小率は80%であるが、一般的には例えば70%以上90%以下とすることが望ましい(非特許文献3参照。)。このように縮小による視野変換を行う際には、現実空間の中心を変えずに、周辺視野部から中心部に向かって徐々に視野圧縮を行うことで、認知しやすい空間を呈示することができる。
【0026】
(3)注意喚起情報表示
現実空間映像における認識空間に注意喚起情報を呈示することで無視空間の視覚情報も認識可能とする。例えば、図5Aに示すようにビルの現実空間映像において、半側空間無視患者には無視空間にある左端のビルが認識できない場合に、図5Bに示すように複合現実空間映像において認識空間に無視空間の左端に注意喚起情報を表示することで無視空間の視覚情報も認識可能となる。この例では注意喚起情報として矢印を用いている。実際には、例えば、所定の位置に所定の注意喚起情報を含む仮想空間映像を生成し、この仮想空間映像を現実空間映像と合成して複合現実空間映像とする。
【0027】
(4)拡大表示
現実空間においてある物体を数秒間注視したとき、その注視した状況を眼球運動により検出し、検出されたときに注視したものを複合現実空間映像において拡大表示することで認識可能とする。例えば、現実空間において図6Aに示すような遠くにあるカレンダーを注視したとき、このカレンダーを図6Bに示すように複合現実空間映像において拡大表示することにより、カレンダーが見やすくなる。あるいは、現実空間において図7Aに示すようにドアのロックボタンを数秒間注視したとき、このドアロックボタンを図7Bに示すように複合現実空間映像において拡大表示することにより、ボタンが押しやすくなる。
【0028】
上記の各処理および表示は、あらかじめこの視覚情報呈示システムにより検査を行った結果や、アイカメラ14a、14bによる眼球運動計測および頭部・体幹運動計測装置16による頭部・体幹運動計測により得られるデータ等に基づいてコンピュータ12の処理/制御装置により、使用者個々人に適した形で自動的に行うことが可能である。
【0029】
この視覚情報呈示システムを検査システムとして用いた検査の実施例として半側空間無視(Unilateral Spatial Neglect, USN)の検査を行う場合について説明する。
1.対象
被験者は同意が得られた8名の脳血管障害患者(平均年齢67.1歳)である。2名の療法士が、これらの患者のADL検査において何らかの無視が認められることを確認した。2名の医師が、CT(computed tomography)またはMRI (magnetic resonance imaging) によりこれらの患者の右半球損傷を確認した。視力障害、痴呆、半盲、失行および左利きの患者は対象外とした。これらの患者は自分で椅子座位が可能である。これらの患者の発症から測定までの期間は4〜27週であった。表1に患者の特性をまとめて示す。
【0030】
【表1】
【0031】
2.機能能力評価
ADL評価としてFunctional Independence Measure (FIM)を行った。脳血管障害に対するリハビリテーション期間を最も的確に予測する能力低下の評価としてFIM運動項目(FIM−M)を用いた。さらに、2名の療法士が、表2に示す特殊なチェックリストを用いてADLにおける無視傾向に関して患者を評価した。このチェックリストはHalliganのチェックリストを改良したものである。
【0032】
【表2】
【0033】
3−1.USNの評価
3−1−1.通常の臨床検査
無視を評価するために、行動性無視検査(Behavioral Inattention Test,BIT)に含まれる線分抹消試験および星印抹消試験を被験者に実施した。ここでは、Wilson等によって考案されたものを、石合等が日本人向けに一部改変し標準化したBIT日本語版を用いた。
【0034】
図8に示すように、線分抹消試験(最小0〜最大36点)については、様々な方位の線分が縦方向に6本、両側にそれぞれ計18本引かれた1枚の用紙を被験者に提示した。被験者に全ての線分を抹消するよう指示した。左側無視は右側よりも左側の線分により多く印を付けることができないことにより示される。無視の程度は線分の総数に対する省略された線分の数の割合により評価した。線分抹消試験の用紙は右側および左側の部分に分割し、まず右側、次いで左側の正答率を分析した。カットオフ値として34点を設定した。図9に示すように、星印抹消試験(最小0〜最大54点)については、A4刺激用紙は、誤った選択肢の項目が擬似的にランダムに散在する56個のターゲット(小さい星)を含み、印を付けた小さい星の合計を記録した。これらのターゲットは実際には6列に分かれており、これに加えて二つのターゲットが6列に属さない中央に位置している。検査者は、用紙の全ての内容を明確に示し、被験者に対して一例として二つの中央のターゲットに印を付けるが、これは採点対象としない。次に、被験者に残りの小さな星を抹消するように依頼した。用紙の横方向の各々の半分における省略されたターゲットの数を計算した。星印抹消試験用紙は六つの領域(左−左の領域、中央−左の領域、右−左の領域、右−右の領域、中央−右の領域、左−右の領域)に分割され、これらの六つの領域に対する正答率を分析した。カットオフ値として51点を設定した。
【0035】
3−2.HMDによる特殊評価
(a)実験装置(図10)
主な実験装置はデジタルカメラ、HMD(GT270、キャノン製)およびデジタルビデオカメラである。HMDは2枚のTFT液晶パネルからなる眼鏡型ディスプレー(27万画素、有効画素数99.99%、質量150g)である。デジタルカメラは机上の検査用紙を撮影し、HMDはデジタルカメラで撮影された画像を被験者の網膜に投影する。さらに、定性的な運動分析として、デジタルビデオカメラにより被験者の頭部の運動を記録した。
(b)HMDを用いたUSNの評価(図11)
被験者の視野の座標系をHMDにより物体中心座標系に設定した時にUSNが変化する程度を求めることを試みた。そこで、視野を変化させるためにデジタルカメラのレンズとして二つのものを用いた。次に、HMDにより被験者に対して試験用紙を次のように二つの特殊な試験として表示した。
1)特殊試験1:HMDとデジタルビデオカメラとを組み合わせて用いて試験用紙だけを表示することができるズームイン(ZI)条件
2)特殊試験2:レンズを変更することにより特殊試験1の場合の0.7倍に縮小して表示することができるズームアウト(ZO)条件
【0036】
3−3.実験手順
被験者は必要であれば車椅子に座らせるか、開始点として真っ直ぐな位置に置かれた背部が直立の椅子に座らせた。机の上の試験用紙は各被験者の体の正中線上に置いた。全ての試験は時間の制限を設けずに行った。
被験者はまず、通常の臨床試験としてHMDを用いずに通常の試験により評価され、次いでHMDを用いて二つの空間試験(ZIおよびZO条件)により評価された。線分抹消試験は正答率を用いて点数化した後、スコアーは右および左の二つの領域に分割した。星印抹消試験は、試験用紙が分割された六つの領域(左−左の領域、中央−左の領域、右−左の領域、右−右の領域、中央−右の領域、左−右の領域)に対して正答率を用いて点数化した。全ての被験者に対して、通常の臨床試験と二つの特殊試験(ZI、ZO)とをランダムな順序で行った。検査者は、デジタルカメラの画像からの表示としてHMDモニターを確認した。さらに、異常な動きを見つけるために、これらの試験中に頭部、胴および上/下肢の動きを定性的に分析した。
【0037】
4.データの分析
全ての統計処理はSPSS統計ソフト(7.5.2J)を用いて行った。通常の臨床試験とHMDを用いた二つの特殊試験との間の比較としてANOVAまたはStudent−tテストを用いた。さらに、線分抹消試験および星印抹消試験のそれぞれにおける比較のためにStudent−tテストまたはANOVAを用いた。各グループ内で多変数ANOVA試験を行い、5%有意レベルにおいて有意差があれば、次に多重比較検定としてシェッフェテストを実施した。
全ての試験の間の頭部、胴および上/下肢の動きの定性的分析をデジタルビデオカメラにより矢状面または前額面において行った。
【0038】
〈結果〉
本実施例では全ての被験者のFIM−Mの平均値は53.0±21.6点(表1参照)であった。被験者はADLのある動作に対して重度または中等度の補助が必要である。
USNの通常の臨床試験として、ADLに対する無視の存在頻度の最初の評価においては、被験者の75%が着衣の動作においてUSN症状を認めた(表3)。例えば、USN患者は左側に着物を容易に着ることができない。さらに、被験者の62.5%はトランスファーおよび移動動作においてUSN症状を認めた(表3)。通常の臨床試験における頭部の運動の運動分析によると、被験者は線分抹消試験および星印抹消試験のいずれにおいても、右側から探し始めた。通常の動作では、頭部は線分抹消試験中の移動にしたがって右側から左側に自然に回旋した。しかしながら、左側への頭部の移動は、両試験において右側からの探索に対しては不十分であった。通常の条件下での線分抹消試験に対しては、試験用紙の左側の領域の平均正答率は94.4%であった。右側の領域の平均正答率は100%であった。カットオフ値より低い被験者はいなかった(表4)。通常の臨床試験での星印抹消試験に対しては、左−左の領域の平均正答率は91.1%であった(表5)。中央−左の領域の平均正答率は89.2%、右−左側の領域の平均正答率は84.4%であった。右−右の領域の平均正答率は92.9%、中央−右の領域の平均正答率は96.4%、左−右の領域の平均正答率は81.8%であった。3名の被験者の平均正答率はカットオフ値より小さく、異常と考えられる。
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
HMDを用いた特殊試験に対して、頭部の運動の運動分析においては、被験者は線分抹消試験および星印抹消試験のいずれにおいても右側から探し始めた。しかしながら、7名の被験者は右側にだけ頭部の回旋を維持した。これらの被験者は左側には頭部を回旋しなかった。HMDを用いた特殊試験におけるZI条件での線分抹消試験に対して、試験用紙の左側の領域の平均正答率は61.8%であった(表6)。右側の領域の平均正答率は92.4%であった。ZO条件に対しては、試験用紙の左側の領域の平均正答率は79.9%であった。右側の領域の平均正答率は91.7%であった。ZI条件およびZO条件のいずれにおいても、左側の点数は右側の点数に比べて有意差をもって高かった(p<0.05)。左側の点数に対しては、通常の臨床試験とHMDを用いた特殊試験のZI条件との間で有意差を示した(p<0.05)。HMDを用いた特殊試験のZI条件での星印抹消試験に対しては、左−左の領域の平均正答率は60.7%であった(表7)。中央−左の領域の平均正答率は69.6%、右−左の領域の平均正答率は77.9%であった。右−右の領域の平均正答率は87.5%、中央−右の領域の平均正答率は92.9%、左−右の領域の平均正答率は87.0%であった。ZO条件に対しては、左−左の領域の平均正答率は69.7%であった。中央−左の領域の平均正答率は70.8%、右−左の領域の平均正答率は77.9%であった。右−右の領域の平均正答率は97.9%、中央−右の領域の平均正答率は87.5%、左−右の領域での平均正答率は92.4%であった。
【0043】
【表6】
【0044】
【表7】
【0045】
〈考察〉
全ての被験者は、HMDがより明るく、明瞭な画像をほとんどリアルタイムであることを確認し、HMDを装着することに関して不快ではなかったと報告した。本実施例では、HMDは、被験者があたかも52インチのディスプレー画面を2m離れて見ているように表示することができる。さらに、間接的な視野の範囲における変化が、コンピュータでHMDを用いる入力方法を操作することにより可能となった。
【0046】
試験用紙をHMDの液晶ディスプレイ画面に投影するためにデジタルカメラを用いた。このデジタルカメラは、たとえ試験中に頭部が動いても、HMDの液晶ディスプレー画面に映った試験用紙が動かないようにするために固定した。これは、HMDを用いた特殊試験が、通常の条件での試験が作り出すものより物体中心座標系のより適合した条件を作り出したことを意味する。本実施例では、ZI条件は物体中心座標系のそれと同一であった。
【0047】
HMDを用いた特殊試験中の動作分析に対しては、結果は、被験者は、USNに対する通常の臨床試験と比べて、ZIおよびZOの条件下での試験用紙の右側に主として焦点を合わせる傾向があることを示している。定性的な動作分析としてビデオ撮影をする場合、被験者がHMDを用いて特殊試験を行ったとき、被験者は試験用紙の右側に集中しようとする傾向があった。被験者の無視はHMDにより強められるのかも知れない。HMDを用いた特殊試験は物体中心座標系を作り出すため、被験者は通常の臨床試験と比べて試験用紙により焦点を合わせた状態であった。これは、もし被験者が物体にあまりに多く注意を払いすぎると、被験者は左側を無視するリスクがあり得ることを意味する。さらに、石合等は、アイカメラを用いてUSN患者の目の動きを調べた。健康な人およびUSN症状はないが同名半盲の患者の目の動きは中心の焦点合わせを維持した。しかしながら、USN症状がある同名半盲の患者は右側に向きを変え、彼らの目は左側に動かなかった。HMDは、通常の臨床試験と比べて視野領域を制限することにより患者が物体(試験用紙)に集中することができるため、左の無視領域をより明確にすることができる。
【0048】
ZIおよびZO条件での左空間の正答率は通常の臨床試験におけるそれより著しく低かった。さらに、ZO条件で上がった正答率はZI条件のそれより少し高かった。ZI条件はZO条件よりもより物体に焦点を合わせたと考えられる。これらの結果は、USN患者が物体に集中したとき、USN症状がより悪化することを示している。Halligan等によるチェックリストの被験者の着衣動作、トランスファーおよび移動動作はUSN症状が高い割合で存在することを示した。通常のBITは、左の空間の正答率が80%より高いときUSNを十分に示さなかったが、HMDを用いた特殊試験は左の空間の正答率が約60%であるときUSNを示した。HMD試験は通常の臨床試験では容易に発見することができないUSN症状をより良く発見することができる。
【0049】
本発明者らによる過去の研究では、HMDの使用により、右大脳半球損傷のある全ての被験者の無視症状が改善した。Rossetti等は、被験者の正中線から右側への病理学的変化を含む、無視症状へのプリズム適応の効果を調べた。彼らは、視野の右側への光学的シフトを受けた全ての患者が、彼らの手動の身体−正中線の表示と彼らの古典的な神経心理学の試験で改善したことを報告した。Lee 等ならびにWoo およびMandelmantは、様々な視野欠損を改善するためにスペクタクルレンズの上に置かれたフレネルプリズムの有効性を示唆した。HMDにより得られる改善は、プリズム適応方法と同様にして自然回復過程を刺激する信号が能に与えられることを示している。さらに、HMDシステムは、スペクタクルレンズの上に置かれたフレネルプリズムより左側の無視をより矯正するように働く。広い視野を得るための高性能フレネルプリズム膜は透き通っていないため、プリズムは実像のゆがみを生じ、視力を低下させた。対照的に、HMDは視力を低下させずに様々な視野を得る可能性を有している。
【0050】
HMDシステムは非侵襲で安全であるという利点を有し、視野の大きさを容易に変化させることができる。標準的な臨床試験は主として水平な2次元面上で行われるが、HMDシステムは、他の面、すなわち前額面または矢状面において、ADLにより密接に関係した臨床試験を容易に行うことができる。他方、HMDシステムは、携帯性をより高め、より軽量に、またデータの変換に関するコンピュータとHMDとの間の応答の遅延を少なくする必要がある。このHMDシステムの遅延時間は50ミリ秒である。したがって、このHMDシステムは、リアルタイムまたはそれに近い速さで変化する視野を処理、記録、表示するより高レベルの技術が必要である。
【0051】
HMDシステムの技術は、評価装置として半側空間無視の神経心理学的リハビリテーションにおいて重要な役割を果たすことができる。Bowen 等は、発行された論文の系統的な調査を行った。彼らは、17件の論文で右半球損傷(RBD)、左半球損傷(LBD)を直接比較しており、USNはLBDよりRBDの後により頻繁に起こることが、発表されたデータの系統的な調査により明白に支持されることを報告した。しかしながら、脳血管障害を受けた後の出現および回復の速さの正確な評価は得られていない。彼らは、様々なUSN疾患が存在し、各タイプに特有のリハビリテーション治療方法が必要であることを示唆した。本システムは、HMDが、各患者のUSNの程度に合うように多様な視野入力を変えることができるため、新たな評価のための臨床的な意味を有する。それは、USNのための臨床評価は、HMDの様々な画像をコンピュータにより色の変化、実像の部分的な拡大または縮小のように処理することができ、USNを有する各患者に対してHMDにおける適切な視野情報を作り出すことができるためである。
【0052】
本実施例では、HMD評価は物体中心座標系の条件を作り出すことができた。これは、本システムが、身体中心座標系に比べて、物体中心座標系の評価に、より焦点を合わせることができることを意味する。身体中心座標系の条件を作り出すことも可能である。この場合、HMDディスプレイは頭部または体幹に配置される小型のCCDカメラと同期させなければならない。さらに、目−頭部または目−手の調整の分析のために目および頭部の運動を測定しなければならない。目および頭部の運動はUSN症状と関係していると考えられる。
【0053】
結論として、本実施例の結果は、HMDシステムを用いたUSNの評価が、USNに対する臨床評価では容易に観察することができない左側無視領域を明らかにすることができることを示した。さらに、HMDを用いたUSN試験はより高精度に表示することができ、通常の臨床試験と比べて、USNの出現および程度を評価することができると仮定することができる。HMDは、通常の臨床評価と比べて、人工的な多様な環境を作り出すことができる。
【0054】
以上、この発明の一実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態において用いたヘッドマウンテッドディスプレイ11は一例に過ぎず、これと異なる構成のヘッドマウンテッドディスプレイを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明の一実施形態による視覚情報呈示システムを示す略線図である。
【図2】この発明の一実施形態による視覚情報呈示システムを構成するヘッドマウンテッドディスプレイの構成を示す略線図である。
【図3】この発明の一実施形態による視覚情報呈示システムにおいてヘッドマウンテッドディスプレイに呈示する画像の第1の例を示す略線図である。
【図4】この発明の一実施形態による視覚情報呈示システムにおいてヘッドマウンテッドディスプレイに呈示する画像の第2の例を示す略線図である。
【図5】この発明の一実施形態による視覚情報呈示システムにおいてヘッドマウンテッドディスプレイに呈示する画像の第3の例を示す略線図である。
【図6】この発明の一実施形態による視覚情報呈示システムにおいてヘッドマウンテッドディスプレイに呈示する画像の第4の例を示す略線図である。
【図7】この発明の一実施形態による視覚情報呈示システムにおいてヘッドマウンテッドディスプレイに呈示する画像の第5の例を示す略線図である。
【図8】この発明の一実施形態による視覚情報呈示システムを検査システムとして用いて行った線分抹消試験の結果を示す略線図である。
【図9】この発明の一実施形態による視覚情報呈示システムを検査システムとして用いて行った星印抹消試験の結果を示す略線図である。
【図10】この発明の一実施形態による視覚情報呈示システムを検査システムとして用いてUSNの検査を行う場合の測定系を示す略線図である。
【図11】この発明の一実施形態による視覚情報呈示システムを検査システムとして用いてUSNの検査を行う方法を示す略線図である。
【符号の説明】
【0056】
11…ヘッドマウンテッドディスプレイ、12…コンピュータ、13a、13b…3CCDカメラ、14a、14b…アイカメラ、15a、15b…表示装置、16…頭部・体幹運動計測装置
【技術分野】
【0001】
この発明は、検査システム、訓練システムおよび視覚情報呈示システムに関し、特に、視空間認知障害や視覚障害等を有する患者の検査、訓練あるいは日常生活活動等の補助・支援に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
世界各国において高齢化で後遺症を伴う脳卒中が深刻な問題になっている。このため、1990年代より欧米では脳卒中対策の総合的見直しが急速に進められている。1995年世界保健機構(WHO)によるヘルシングボリ宣言では、2005年までに到達すべき目標の1つとして、発症から3ヵ月後に70%以上の脳卒中患者が日常生活で自立できるようにするという項目が盛り込まれていた。日本の場合、この目標の到達度は6、7割にすぎず、寝たきり老人の4割、訪問看護利用者の4割を脳卒中患者が占める。厚生省大臣官房統計情報部編(1993年)によると、傷病分類別推計患者総数約140万人のうち最も多いのは脳血管疾患の21万人で入院患者の14.8%、65歳以上では24.9%を占める。また、リハビリテーションに時間を要することから脳血管疾患の平均在院日数は119日で、他の疾患に比べ入院期間が長期にわたる疾患である。この長期間になる1要因として視空間認知障害があり、特に半側空間無視は右脳出血群の58%、左脳出血群の10%に出現しリハビリテーション治療の重大な阻害因子となっている。
【0003】
半側空間無視は、病巣と反対側の刺激に反応しなかったり、そちらを向こうとしない現象であり、しばしば患者の日常生活活動場面で行動異常を来す。すなわち、早期には食事の際に無視側の食べ物を食べ残す、無視側の介助者に気づかない、歩行時に壁や扉に身体をぶつけたり、衣服の片袖に腕を通さない、また全般的に注意障害や発動性の低下を伴う場合が多く入院中に転倒や骨折を合併することも少なくない。その他の中枢神経障害(多発性硬化症、腫瘍、外傷、脳性麻痺等)によっても片側もしくは両側の全盲または半盲等の視野欠損も起こる。この視覚障害、取り分け片側の全盲、半盲や半側空間無視は、歩行困難や車椅子生活を余儀なくし、患者の日常生活活動(Activities of Daily Living, ADL)や生活の質(Quality of Life,QOL)を後退させる原因の一つでもあり、早急に解決すべき重要課題である。しかしながら、このような中枢神経疾患による合併症としての視覚障害に対するリハビリテーション治療およびその機能代償・改善のための福祉機器開発研究は極めて少ない状況にある。
【0004】
このような背景のもと、本発明者らは、これまで、中枢神経疾患に伴う治療困難な視覚障害者(児)に対する福祉機器として、小型3CCDカメラ付き眼鏡式バーチャルリアリティ(VR)システムの開発研究により、視野欠損部分の視覚情報を障害のない片眼もしくは両眼に与え、バランス能力の改善および安全かつ安定した歩行・ADLの自立ひいてはQOLの向上をめざすことを提案してきた(非特許文献1〜3参照。)。具体的には、ヘッドマウンテドディスプレイ(Head Mounted Display, HMD)に設置した小型3CCDカメラを通じて得た景色や物をコンピュータ処理により修正し、HMDを通じて本人に呈示する。例えば視力を補強するため、注視した部分を中心に画像を拡大し、分解能を上げ、コントラストや配色を鮮明にし、明るさを上げるようにする。
【0005】
【非特許文献1】田中敏明:高齢者の視覚と転倒.理学療法18(9):847-851,2001
【非特許文献2】Tanaka T., Kojima S., Shirogane S., Ohyanagi T., Izumi T., Yumoto H.,Ino S.,and Ifukube T., 14th International Congress of the World Confederation for Physical Therapy(Proceedings, RP-PO-0982)2003, Barcelona(Spain)
【非特許文献3】人間工学 Vol.41,No.4('05),213-217
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の小型3CCDカメラ付き眼鏡式VRシステムによる半側空間無視等の視空間認知障害を有する障害者の検査の方法や有効性等についてはまだ明らかではなく、実際の適用には克服すべき課題が多くあった。
そこで、この発明が解決しようとする課題は、半側空間無視等の視空間認知障害や視覚障害等を有する障害者の障害の内容や程度を容易に客観的、定量的、かつ、詳細に検査することができる検査システムを提供することである。
この発明が解決しようとする他の課題は、半側空間無視等の視空間認知障害や視覚障害等を有する障害者の障害の内容や程度に応じた適切な訓練をすることができ、リハビリテーション治療や介助支援等を効果的に行うことが可能となる訓練システムを提供することである。
この発明が解決しようとするさらに他の課題は、半側空間無視等の視空間認知障害や視覚障害等を有する障害者、さらには広く一般健常者の視覚を補助・支援して日常生活活動の向上および生活の質の向上を図ることができる視覚情報呈示システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、半側空間無視患者等の視空間認知障害や視覚障害等を有する患者の障害の内容や程度を検査したり、これらの患者の訓練あるいは日常生活活動や生活の質の向上を図るためには、ヘッドマウンテドディスプレイに設置した小型3CCDカメラ等を通じて得た景色や物をコンピュータ処理により修正し、ヘッドマウンテドディスプレイを通じて単に本人に呈示するのではなく、呈示する際の座標系を物体中心座標系または身体中心座標系に設定することができるように構成することが、より視空間認知障害を詳細に評価する上で有効であることを見出し、この発明を案出するに至った。
【0008】
すなわち、上記課題を解決するために、第1の発明は、
一つまたは複数の撮像素子が装着されたヘッドマウンテッドディスプレイを有し、
上記ヘッドマウンテッドディスプレイに表示する画像の座標系を物体中心座標系または身体中心座標系に設定可能に構成されていることを特徴とする検査システムである。
【0009】
第2の発明は、
一つまたは複数の撮像素子が装着されたヘッドマウンテッドディスプレイを有し、
上記ヘッドマウンテッドディスプレイに表示する画像の座標系を物体中心座標系または身体中心座標系に設定可能に構成されていることを特徴とする訓練システムである。
【0010】
第3の発明は、
一つまたは複数の撮像素子が装着されたヘッドマウンテッドディスプレイを有し、
上記ヘッドマウンテッドディスプレイに表示する画像の座標系を物体中心座標系または身体中心座標系に設定可能に構成されていることを特徴とする視覚情報呈示システムである。
【0011】
第1〜第3の発明において、物体中心座標系とは、個々の空間対象に対して構成される枠組みである。空間対象がある軸に対して対称な場合はその軸に基づいて参照枠を構成することができるが、全ての空間対象が対称という訳ではないので、対称中心参照枠は観察者がどう認識するかによって、また与えられたタスクによっても変化しうる。これに対して、身体中心座標系(頭部・体幹座標系)とは、観察者の身体(あるいは身体の一部)を中心とする空間対称の枠組みである。人間の身体は、眼球、頭部、体幹等の複数の可動部分によって空間対象の位置・方向が異なってコーディングされる。この特徴としては観察者が移動することによって参照枠上の空間対象の方向・位置が変化することである。
【0012】
ヘッドマウンテッドディスプレイに装着する撮像素子としては、好適にはCCD、取り分けカラー画像を得ることができる3CCD(青色、緑色および赤色用の三つのCCDからなるもの)が用いられ、画素数も通常は例えば20万画素以上であれば十分であるが、これに限定されるものではない。この撮像素子としては、CCD以外のもの、具体的にはMOSまたはCMOS型撮像素子、取り分けカラー画像を得ることができるものを用いてもよい。この撮像素子は通常、小型カメラの形でヘッドマウンテッドディスプレイの上部や被験者または使用者が装着したときに目の前に当たる位置等に装着され、被験者または使用者の目の光学的位置と撮像素子の光学的位置とが一致するようにする。ヘッドマウンテッドディスプレイは、必要に応じて、被験者または使用者の頭部の運動を計測することができるように構成され、具体的には頭部の運動の計測装置が装着される。
【0013】
ヘッドマウンテッドディスプレイとしては完全遮蔽型のものを用いてもよいが、ヘッドマウンテッドディスプレイを装着した被験者または使用者の頭部の急激な大きな動きに対するバーチャル酔いを抑えたりするためには、平衡感覚と大きく関係する周辺視野部を利用するために周辺視が可能な開放型のものを用い、さらに視運動刺激を呈示するようにするのが望ましい。視運動刺激の呈示としては、具体的には、例えば、基準となる水平線の呈示および頭部の移動方向と逆方向に移動する水平線の呈示を行う。
【0014】
この検査システム、訓練システムおよび視覚情報呈示システムは、典型的には、撮像素子で撮像された画像を処理してヘッドマウンテッドディスプレイに表示する処理/制御装置をさらに有する。この処理/制御装置としては通常、コンピュータが用いられる。
ヘッドマウンテッドディスプレイに表示する画像の座標系を物体中心座標系または身体中心座標系に設定するためには、例えば、撮像素子により撮像された画像をコンピュータに取り込み、これにコンピュータで処理を施すことにより得られる画像をヘッドマウンテッドディスプレイに表示するようにしたり、デジタルカメラ等により撮像された画像を撮像素子により撮像された画像と重ね合わせてヘッドマウンテッドディスプレイに表示するようにしたりすることができる。撮像素子により撮像された画像の処理や制御を行うためのコンピュータとヘッドマウンテッドディスプレイとの間の信号の送受信はケーブルを介して行ってもよいし、無線通信で行ってもよい。
【0015】
撮像素子により撮像された画像の処理の仕方は、半側空間無視等の視空間認知障害者や視覚障害者の検査、訓練、補助・支援等の内容に応じて適宜決められるが、具体的には、撮像素子により撮像された現実空間の画像に対して、辺縁強調(エッジ強調)、縮小、拡大、注意喚起情報の付加、色変換、二値化等である。例えば、半側空間無視患者には、注意喚起情報を現実空間映像に合成することで現実空間での無視側空間を認識することを補助することが可能になり、無視側空間を除いた空間内に視覚情報を再構成することで空間認識を補助することも可能になる。また、視覚障害者には、拡大、辺縁強調、色変換、二値化等の画像処理を行うことで、認識しやすい最適な視覚情報呈示が可能になる。拡大・縮小による視野変換は、好適には、現実空間の中心を変えずに行う。
【0016】
例えば、検査用紙等を用いて検査や訓練等を行う場合、被験者または使用者の肢位(ポジション)に影響を受けることなく、ヘッドマウンテッドディスプレイの撮像素子あるいは小型カメラをこの検査用紙等にフォーカスした状態で検査や訓練等を行うことが可能である。一つの例では、検査や訓練等を行う際に被験者または使用者が座る椅子に固定したデジタルカメラ等により検査用紙等を撮影し、その画像をヘッドマウンテッドディスプレイに表示するように構成する。そして、例えば、こうしてデジタルカメラ等により撮影した検査用紙等の画像を拡大または縮小してヘッドマウンテッドディスプレイにするように構成する。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、ヘッドマウンテッドディスプレイに表示する画像の座標系を物体中心座標系または身体中心座標系に設定可能に構成されていることにより、従来得られなかった次のような多くの利点を得ることができる。
物体中心座標系または身体中心座標系に設定してヘッドマウンテッドディスプレイに画像を表示し、被験者に呈示して呈示情報を被験者に判断させることにより、被験者の状況を定量的に検査することが可能である。例えば、被験者の視空間に関する新しい検査が可能となる。具体的には、被験者の無視領域に座標軸を移動したり、逆に見える部分に座標軸を移動したり、ある物体へ軸を移動したりする等、検査者が自由に座標軸を移動させることが可能となる。また、眼球運動も検出すると被験者の視線軌跡が分かり、かつ、被験者本人には実際どのように見えているかを検査者が認識することができる。例えば、視野欠損がある被験者にはどのように見えているかに関し、検査者は、実際の場面でどのように視野欠損が存在するかを画像としてシミュレートして理解することができる。そして、この検査結果に応じて各被験者に適応した訓練あるいは視覚呈示を行うことができる。
現実世界と境界無しに融合した形でコンピュータグラフィックス(CG)等による様々な視覚情報の付加あるいは改変を行った映像を使用者に呈示することが可能になる。そのため、ある限られた状況下だけではなく、より日常生活に近い環境での検査および訓練を行うことができる。したがって、被験者の疾患の状態を多面的に的確に把握しやすくなり、効率的、有効的な検査および訓練が可能になる。また、検査と訓練とを同一のシステムで構成することができるため、検査と訓練との整合性が非常に取りやすくなる。
特に半側空間無視患者には、注意喚起を与える情報を現実空間映像に合成することで、現実空間での無視側空間を認識することを補助することが可能になる。
【0018】
この発明は、例えば、脳血管障害に伴う半側空間無視患者等の視空間無視患者、パーキンソン病患者、赤緑色盲患者、半盲者、視力低下者、複視者、斜視者、高齢者(健康人、認知障害者)、眼鏡装着者等に適用して好適なものである。例えば、視空間無視患者および糖尿病性網膜症、白内障等を有する者の視野欠損部分以外の部分に視覚情報を視野欠損の度合いに応じて呈示することができる。パーキンソン病患者については、視覚情報を強調することによって歩行等が改善する。例えば、物体や建築物を強調することによって転倒予防、歩行階段昇降等が可能となる。赤緑色盲患者については、赤緑を判別しやすい色等に変化して呈示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1はこの発明の一実施形態による視覚情報呈示システムを示す。この視覚情報呈示システムは検査システムまたは視覚障害者等の障害者の訓練システムとしても使用することができるものである。
図1に示すように、この視覚情報呈示システムは、ヘッドマウンテッドディスプレイ11とコンピュータ12とを有する。
【0020】
ヘッドマウンテッドディスプレイ11の構成を図2に示す。図2に示すように、ヘッドマウンテッドディスプレイ11の前面、すなわち使用者あるいは被験者が装着したときにその両眼e1 、e2 に光学的に対応する位置に二つの3CCDカメラ13a、13bが装着され、同じく両眼e1 、e2 に対応する位置に二つのアイカメラ14a、14bが装着され、液晶ディスプレイ(LCD)やその他の各種のディスプレイからなる二つの表示装置15a、15bが両眼e1 、e2 に光学的に対応する位置に装着されている。
図1に示すように、ヘッドマウンテッドディスプレイ11には、図示省略したGPSアンテナおよび受信機(無線LAN受信機)が内蔵された頭部・体幹運動計測装置16が装着されている。ヘッドマウンテッドディスプレイ11は使用者あるいは被験者が頭部に装着することができるようにバンド11aを有する。
【0021】
図1に示すように、ヘッドマウンテッドディスプレイ11とコンピュータ12とは、ケーブル17を介して相互に信号の送受信を行うことができるようになっている。ただし、ヘッドマウンテッドディスプレイ11とコンピュータ12との間の信号の送受信は無線通信で行うようにしてもよい。ヘッドマウンテッドディスプレイ11の3CCDカメラ13a、13bで撮像された画像をコンピュータ12の本体の処理/制御装置に取り込み、この処理/制御装置で所定の処理を施した後にこの処理後の画像を表示装置15a、15bに表示し、使用者あるいは被験者に呈示することができるようになっている。また、アイカメラ14a、14bで計測された使用者あるいは被験者の両眼e1 、e2 の眼球運動の計測結果を処理/制御装置に取り込み、3CCDカメラ13a、13bで撮像された画像を処理/制御装置に取り込んでこの処理/制御装置で所定の処理を施す際にこの眼球運動の結果を反映させることができるようになっている。
【0022】
コンピュータ12は通常、コンピュータ本体(処理/制御装置)とディスプレイとを有する。コンピュータ12はデスクトップ型であってもノート型であってもよい。処理/制御装置は、プロセッサ、主記憶装置(メインメモリ)、補助記憶装置等を有する。補助記憶装置としては、ハードディスクドライブ等の各種のものを用いることができ、処理/制御装置に内蔵されたものであっても外付けのものであってもよい。この補助記憶装置には所定のプログラミング言語を用いた所定のプログラムが格納されている。このプログラムの実行の際には、補助記憶装置から主記憶装置にこのプログラムが読み込まれ、または無線LAN等でダウンロードし、プロセッサによってそのプログラムが実行され、またはネットワークでつながっているサーバーでプログラムが実行される。図示は省略するが、処理/制御装置には、必要に応じて、キーボードやマウス等の入力装置や他の周辺機器を接続してもよい。
【0023】
この一実施形態においては、所定のプログラミング言語を利用したプログラムの設計により、ヘッドマウンテッドディスプレイ11の表示装置15a、15bの画面に画像を表示する際の座標系を物体中心座標系または身体中心座標系に設定可能に構成されている。この設定は、検査者または使用者が、コンピュータのキーボードやマウス等を操作することにより容易に行うことができるようになっている。
【0024】
処理/制御装置により行う処理には各種のものがあり、必要に応じて選ぶことができるが、具体例を挙げると次のとおりである。
(1)エッジ強調表示
現実空間映像に対してエッジを強調して表示し、見やすくする。例えば、図3Aに示すような階段の現実空間映像に対し、処理/制御装置による処理後の複合現実空間映像(ヘッドマウンテッドディスプレイ11の液晶ディスプレイ15a、15bに表示する映像)においてそのエッジを強調して図3Bに示すように表示する。
【0025】
(2)縮小表示
現実空間映像における認識空間に無視空間の視覚情報も呈示することで無視空間の視覚情報も認識可能とする。例えば、図4Aに示すようにビルの現実空間映像において、半側空間無視患者には無視空間にある左端のビルが認識できない場合に、図4Bに示すように複合現実空間映像において現実空間映像を水平方向に縮小して認識空間に無視空間にあるビルも表示することができるようになり、認識可能となる。この例では縮小率は80%であるが、一般的には例えば70%以上90%以下とすることが望ましい(非特許文献3参照。)。このように縮小による視野変換を行う際には、現実空間の中心を変えずに、周辺視野部から中心部に向かって徐々に視野圧縮を行うことで、認知しやすい空間を呈示することができる。
【0026】
(3)注意喚起情報表示
現実空間映像における認識空間に注意喚起情報を呈示することで無視空間の視覚情報も認識可能とする。例えば、図5Aに示すようにビルの現実空間映像において、半側空間無視患者には無視空間にある左端のビルが認識できない場合に、図5Bに示すように複合現実空間映像において認識空間に無視空間の左端に注意喚起情報を表示することで無視空間の視覚情報も認識可能となる。この例では注意喚起情報として矢印を用いている。実際には、例えば、所定の位置に所定の注意喚起情報を含む仮想空間映像を生成し、この仮想空間映像を現実空間映像と合成して複合現実空間映像とする。
【0027】
(4)拡大表示
現実空間においてある物体を数秒間注視したとき、その注視した状況を眼球運動により検出し、検出されたときに注視したものを複合現実空間映像において拡大表示することで認識可能とする。例えば、現実空間において図6Aに示すような遠くにあるカレンダーを注視したとき、このカレンダーを図6Bに示すように複合現実空間映像において拡大表示することにより、カレンダーが見やすくなる。あるいは、現実空間において図7Aに示すようにドアのロックボタンを数秒間注視したとき、このドアロックボタンを図7Bに示すように複合現実空間映像において拡大表示することにより、ボタンが押しやすくなる。
【0028】
上記の各処理および表示は、あらかじめこの視覚情報呈示システムにより検査を行った結果や、アイカメラ14a、14bによる眼球運動計測および頭部・体幹運動計測装置16による頭部・体幹運動計測により得られるデータ等に基づいてコンピュータ12の処理/制御装置により、使用者個々人に適した形で自動的に行うことが可能である。
【0029】
この視覚情報呈示システムを検査システムとして用いた検査の実施例として半側空間無視(Unilateral Spatial Neglect, USN)の検査を行う場合について説明する。
1.対象
被験者は同意が得られた8名の脳血管障害患者(平均年齢67.1歳)である。2名の療法士が、これらの患者のADL検査において何らかの無視が認められることを確認した。2名の医師が、CT(computed tomography)またはMRI (magnetic resonance imaging) によりこれらの患者の右半球損傷を確認した。視力障害、痴呆、半盲、失行および左利きの患者は対象外とした。これらの患者は自分で椅子座位が可能である。これらの患者の発症から測定までの期間は4〜27週であった。表1に患者の特性をまとめて示す。
【0030】
【表1】
【0031】
2.機能能力評価
ADL評価としてFunctional Independence Measure (FIM)を行った。脳血管障害に対するリハビリテーション期間を最も的確に予測する能力低下の評価としてFIM運動項目(FIM−M)を用いた。さらに、2名の療法士が、表2に示す特殊なチェックリストを用いてADLにおける無視傾向に関して患者を評価した。このチェックリストはHalliganのチェックリストを改良したものである。
【0032】
【表2】
【0033】
3−1.USNの評価
3−1−1.通常の臨床検査
無視を評価するために、行動性無視検査(Behavioral Inattention Test,BIT)に含まれる線分抹消試験および星印抹消試験を被験者に実施した。ここでは、Wilson等によって考案されたものを、石合等が日本人向けに一部改変し標準化したBIT日本語版を用いた。
【0034】
図8に示すように、線分抹消試験(最小0〜最大36点)については、様々な方位の線分が縦方向に6本、両側にそれぞれ計18本引かれた1枚の用紙を被験者に提示した。被験者に全ての線分を抹消するよう指示した。左側無視は右側よりも左側の線分により多く印を付けることができないことにより示される。無視の程度は線分の総数に対する省略された線分の数の割合により評価した。線分抹消試験の用紙は右側および左側の部分に分割し、まず右側、次いで左側の正答率を分析した。カットオフ値として34点を設定した。図9に示すように、星印抹消試験(最小0〜最大54点)については、A4刺激用紙は、誤った選択肢の項目が擬似的にランダムに散在する56個のターゲット(小さい星)を含み、印を付けた小さい星の合計を記録した。これらのターゲットは実際には6列に分かれており、これに加えて二つのターゲットが6列に属さない中央に位置している。検査者は、用紙の全ての内容を明確に示し、被験者に対して一例として二つの中央のターゲットに印を付けるが、これは採点対象としない。次に、被験者に残りの小さな星を抹消するように依頼した。用紙の横方向の各々の半分における省略されたターゲットの数を計算した。星印抹消試験用紙は六つの領域(左−左の領域、中央−左の領域、右−左の領域、右−右の領域、中央−右の領域、左−右の領域)に分割され、これらの六つの領域に対する正答率を分析した。カットオフ値として51点を設定した。
【0035】
3−2.HMDによる特殊評価
(a)実験装置(図10)
主な実験装置はデジタルカメラ、HMD(GT270、キャノン製)およびデジタルビデオカメラである。HMDは2枚のTFT液晶パネルからなる眼鏡型ディスプレー(27万画素、有効画素数99.99%、質量150g)である。デジタルカメラは机上の検査用紙を撮影し、HMDはデジタルカメラで撮影された画像を被験者の網膜に投影する。さらに、定性的な運動分析として、デジタルビデオカメラにより被験者の頭部の運動を記録した。
(b)HMDを用いたUSNの評価(図11)
被験者の視野の座標系をHMDにより物体中心座標系に設定した時にUSNが変化する程度を求めることを試みた。そこで、視野を変化させるためにデジタルカメラのレンズとして二つのものを用いた。次に、HMDにより被験者に対して試験用紙を次のように二つの特殊な試験として表示した。
1)特殊試験1:HMDとデジタルビデオカメラとを組み合わせて用いて試験用紙だけを表示することができるズームイン(ZI)条件
2)特殊試験2:レンズを変更することにより特殊試験1の場合の0.7倍に縮小して表示することができるズームアウト(ZO)条件
【0036】
3−3.実験手順
被験者は必要であれば車椅子に座らせるか、開始点として真っ直ぐな位置に置かれた背部が直立の椅子に座らせた。机の上の試験用紙は各被験者の体の正中線上に置いた。全ての試験は時間の制限を設けずに行った。
被験者はまず、通常の臨床試験としてHMDを用いずに通常の試験により評価され、次いでHMDを用いて二つの空間試験(ZIおよびZO条件)により評価された。線分抹消試験は正答率を用いて点数化した後、スコアーは右および左の二つの領域に分割した。星印抹消試験は、試験用紙が分割された六つの領域(左−左の領域、中央−左の領域、右−左の領域、右−右の領域、中央−右の領域、左−右の領域)に対して正答率を用いて点数化した。全ての被験者に対して、通常の臨床試験と二つの特殊試験(ZI、ZO)とをランダムな順序で行った。検査者は、デジタルカメラの画像からの表示としてHMDモニターを確認した。さらに、異常な動きを見つけるために、これらの試験中に頭部、胴および上/下肢の動きを定性的に分析した。
【0037】
4.データの分析
全ての統計処理はSPSS統計ソフト(7.5.2J)を用いて行った。通常の臨床試験とHMDを用いた二つの特殊試験との間の比較としてANOVAまたはStudent−tテストを用いた。さらに、線分抹消試験および星印抹消試験のそれぞれにおける比較のためにStudent−tテストまたはANOVAを用いた。各グループ内で多変数ANOVA試験を行い、5%有意レベルにおいて有意差があれば、次に多重比較検定としてシェッフェテストを実施した。
全ての試験の間の頭部、胴および上/下肢の動きの定性的分析をデジタルビデオカメラにより矢状面または前額面において行った。
【0038】
〈結果〉
本実施例では全ての被験者のFIM−Mの平均値は53.0±21.6点(表1参照)であった。被験者はADLのある動作に対して重度または中等度の補助が必要である。
USNの通常の臨床試験として、ADLに対する無視の存在頻度の最初の評価においては、被験者の75%が着衣の動作においてUSN症状を認めた(表3)。例えば、USN患者は左側に着物を容易に着ることができない。さらに、被験者の62.5%はトランスファーおよび移動動作においてUSN症状を認めた(表3)。通常の臨床試験における頭部の運動の運動分析によると、被験者は線分抹消試験および星印抹消試験のいずれにおいても、右側から探し始めた。通常の動作では、頭部は線分抹消試験中の移動にしたがって右側から左側に自然に回旋した。しかしながら、左側への頭部の移動は、両試験において右側からの探索に対しては不十分であった。通常の条件下での線分抹消試験に対しては、試験用紙の左側の領域の平均正答率は94.4%であった。右側の領域の平均正答率は100%であった。カットオフ値より低い被験者はいなかった(表4)。通常の臨床試験での星印抹消試験に対しては、左−左の領域の平均正答率は91.1%であった(表5)。中央−左の領域の平均正答率は89.2%、右−左側の領域の平均正答率は84.4%であった。右−右の領域の平均正答率は92.9%、中央−右の領域の平均正答率は96.4%、左−右の領域の平均正答率は81.8%であった。3名の被験者の平均正答率はカットオフ値より小さく、異常と考えられる。
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
HMDを用いた特殊試験に対して、頭部の運動の運動分析においては、被験者は線分抹消試験および星印抹消試験のいずれにおいても右側から探し始めた。しかしながら、7名の被験者は右側にだけ頭部の回旋を維持した。これらの被験者は左側には頭部を回旋しなかった。HMDを用いた特殊試験におけるZI条件での線分抹消試験に対して、試験用紙の左側の領域の平均正答率は61.8%であった(表6)。右側の領域の平均正答率は92.4%であった。ZO条件に対しては、試験用紙の左側の領域の平均正答率は79.9%であった。右側の領域の平均正答率は91.7%であった。ZI条件およびZO条件のいずれにおいても、左側の点数は右側の点数に比べて有意差をもって高かった(p<0.05)。左側の点数に対しては、通常の臨床試験とHMDを用いた特殊試験のZI条件との間で有意差を示した(p<0.05)。HMDを用いた特殊試験のZI条件での星印抹消試験に対しては、左−左の領域の平均正答率は60.7%であった(表7)。中央−左の領域の平均正答率は69.6%、右−左の領域の平均正答率は77.9%であった。右−右の領域の平均正答率は87.5%、中央−右の領域の平均正答率は92.9%、左−右の領域の平均正答率は87.0%であった。ZO条件に対しては、左−左の領域の平均正答率は69.7%であった。中央−左の領域の平均正答率は70.8%、右−左の領域の平均正答率は77.9%であった。右−右の領域の平均正答率は97.9%、中央−右の領域の平均正答率は87.5%、左−右の領域での平均正答率は92.4%であった。
【0043】
【表6】
【0044】
【表7】
【0045】
〈考察〉
全ての被験者は、HMDがより明るく、明瞭な画像をほとんどリアルタイムであることを確認し、HMDを装着することに関して不快ではなかったと報告した。本実施例では、HMDは、被験者があたかも52インチのディスプレー画面を2m離れて見ているように表示することができる。さらに、間接的な視野の範囲における変化が、コンピュータでHMDを用いる入力方法を操作することにより可能となった。
【0046】
試験用紙をHMDの液晶ディスプレイ画面に投影するためにデジタルカメラを用いた。このデジタルカメラは、たとえ試験中に頭部が動いても、HMDの液晶ディスプレー画面に映った試験用紙が動かないようにするために固定した。これは、HMDを用いた特殊試験が、通常の条件での試験が作り出すものより物体中心座標系のより適合した条件を作り出したことを意味する。本実施例では、ZI条件は物体中心座標系のそれと同一であった。
【0047】
HMDを用いた特殊試験中の動作分析に対しては、結果は、被験者は、USNに対する通常の臨床試験と比べて、ZIおよびZOの条件下での試験用紙の右側に主として焦点を合わせる傾向があることを示している。定性的な動作分析としてビデオ撮影をする場合、被験者がHMDを用いて特殊試験を行ったとき、被験者は試験用紙の右側に集中しようとする傾向があった。被験者の無視はHMDにより強められるのかも知れない。HMDを用いた特殊試験は物体中心座標系を作り出すため、被験者は通常の臨床試験と比べて試験用紙により焦点を合わせた状態であった。これは、もし被験者が物体にあまりに多く注意を払いすぎると、被験者は左側を無視するリスクがあり得ることを意味する。さらに、石合等は、アイカメラを用いてUSN患者の目の動きを調べた。健康な人およびUSN症状はないが同名半盲の患者の目の動きは中心の焦点合わせを維持した。しかしながら、USN症状がある同名半盲の患者は右側に向きを変え、彼らの目は左側に動かなかった。HMDは、通常の臨床試験と比べて視野領域を制限することにより患者が物体(試験用紙)に集中することができるため、左の無視領域をより明確にすることができる。
【0048】
ZIおよびZO条件での左空間の正答率は通常の臨床試験におけるそれより著しく低かった。さらに、ZO条件で上がった正答率はZI条件のそれより少し高かった。ZI条件はZO条件よりもより物体に焦点を合わせたと考えられる。これらの結果は、USN患者が物体に集中したとき、USN症状がより悪化することを示している。Halligan等によるチェックリストの被験者の着衣動作、トランスファーおよび移動動作はUSN症状が高い割合で存在することを示した。通常のBITは、左の空間の正答率が80%より高いときUSNを十分に示さなかったが、HMDを用いた特殊試験は左の空間の正答率が約60%であるときUSNを示した。HMD試験は通常の臨床試験では容易に発見することができないUSN症状をより良く発見することができる。
【0049】
本発明者らによる過去の研究では、HMDの使用により、右大脳半球損傷のある全ての被験者の無視症状が改善した。Rossetti等は、被験者の正中線から右側への病理学的変化を含む、無視症状へのプリズム適応の効果を調べた。彼らは、視野の右側への光学的シフトを受けた全ての患者が、彼らの手動の身体−正中線の表示と彼らの古典的な神経心理学の試験で改善したことを報告した。Lee 等ならびにWoo およびMandelmantは、様々な視野欠損を改善するためにスペクタクルレンズの上に置かれたフレネルプリズムの有効性を示唆した。HMDにより得られる改善は、プリズム適応方法と同様にして自然回復過程を刺激する信号が能に与えられることを示している。さらに、HMDシステムは、スペクタクルレンズの上に置かれたフレネルプリズムより左側の無視をより矯正するように働く。広い視野を得るための高性能フレネルプリズム膜は透き通っていないため、プリズムは実像のゆがみを生じ、視力を低下させた。対照的に、HMDは視力を低下させずに様々な視野を得る可能性を有している。
【0050】
HMDシステムは非侵襲で安全であるという利点を有し、視野の大きさを容易に変化させることができる。標準的な臨床試験は主として水平な2次元面上で行われるが、HMDシステムは、他の面、すなわち前額面または矢状面において、ADLにより密接に関係した臨床試験を容易に行うことができる。他方、HMDシステムは、携帯性をより高め、より軽量に、またデータの変換に関するコンピュータとHMDとの間の応答の遅延を少なくする必要がある。このHMDシステムの遅延時間は50ミリ秒である。したがって、このHMDシステムは、リアルタイムまたはそれに近い速さで変化する視野を処理、記録、表示するより高レベルの技術が必要である。
【0051】
HMDシステムの技術は、評価装置として半側空間無視の神経心理学的リハビリテーションにおいて重要な役割を果たすことができる。Bowen 等は、発行された論文の系統的な調査を行った。彼らは、17件の論文で右半球損傷(RBD)、左半球損傷(LBD)を直接比較しており、USNはLBDよりRBDの後により頻繁に起こることが、発表されたデータの系統的な調査により明白に支持されることを報告した。しかしながら、脳血管障害を受けた後の出現および回復の速さの正確な評価は得られていない。彼らは、様々なUSN疾患が存在し、各タイプに特有のリハビリテーション治療方法が必要であることを示唆した。本システムは、HMDが、各患者のUSNの程度に合うように多様な視野入力を変えることができるため、新たな評価のための臨床的な意味を有する。それは、USNのための臨床評価は、HMDの様々な画像をコンピュータにより色の変化、実像の部分的な拡大または縮小のように処理することができ、USNを有する各患者に対してHMDにおける適切な視野情報を作り出すことができるためである。
【0052】
本実施例では、HMD評価は物体中心座標系の条件を作り出すことができた。これは、本システムが、身体中心座標系に比べて、物体中心座標系の評価に、より焦点を合わせることができることを意味する。身体中心座標系の条件を作り出すことも可能である。この場合、HMDディスプレイは頭部または体幹に配置される小型のCCDカメラと同期させなければならない。さらに、目−頭部または目−手の調整の分析のために目および頭部の運動を測定しなければならない。目および頭部の運動はUSN症状と関係していると考えられる。
【0053】
結論として、本実施例の結果は、HMDシステムを用いたUSNの評価が、USNに対する臨床評価では容易に観察することができない左側無視領域を明らかにすることができることを示した。さらに、HMDを用いたUSN試験はより高精度に表示することができ、通常の臨床試験と比べて、USNの出現および程度を評価することができると仮定することができる。HMDは、通常の臨床評価と比べて、人工的な多様な環境を作り出すことができる。
【0054】
以上、この発明の一実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態において用いたヘッドマウンテッドディスプレイ11は一例に過ぎず、これと異なる構成のヘッドマウンテッドディスプレイを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明の一実施形態による視覚情報呈示システムを示す略線図である。
【図2】この発明の一実施形態による視覚情報呈示システムを構成するヘッドマウンテッドディスプレイの構成を示す略線図である。
【図3】この発明の一実施形態による視覚情報呈示システムにおいてヘッドマウンテッドディスプレイに呈示する画像の第1の例を示す略線図である。
【図4】この発明の一実施形態による視覚情報呈示システムにおいてヘッドマウンテッドディスプレイに呈示する画像の第2の例を示す略線図である。
【図5】この発明の一実施形態による視覚情報呈示システムにおいてヘッドマウンテッドディスプレイに呈示する画像の第3の例を示す略線図である。
【図6】この発明の一実施形態による視覚情報呈示システムにおいてヘッドマウンテッドディスプレイに呈示する画像の第4の例を示す略線図である。
【図7】この発明の一実施形態による視覚情報呈示システムにおいてヘッドマウンテッドディスプレイに呈示する画像の第5の例を示す略線図である。
【図8】この発明の一実施形態による視覚情報呈示システムを検査システムとして用いて行った線分抹消試験の結果を示す略線図である。
【図9】この発明の一実施形態による視覚情報呈示システムを検査システムとして用いて行った星印抹消試験の結果を示す略線図である。
【図10】この発明の一実施形態による視覚情報呈示システムを検査システムとして用いてUSNの検査を行う場合の測定系を示す略線図である。
【図11】この発明の一実施形態による視覚情報呈示システムを検査システムとして用いてUSNの検査を行う方法を示す略線図である。
【符号の説明】
【0056】
11…ヘッドマウンテッドディスプレイ、12…コンピュータ、13a、13b…3CCDカメラ、14a、14b…アイカメラ、15a、15b…表示装置、16…頭部・体幹運動計測装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つまたは複数の撮像素子が装着されたヘッドマウンテッドディスプレイを有し、
上記ヘッドマウンテッドディスプレイに表示する画像の座標系を物体中心座標系または身体中心座標系に設定可能に構成されていることを特徴とする検査システム。
【請求項2】
上記撮像素子が3CCDであることを特徴とする請求項1記載の検査システム。
【請求項3】
検査を行う際に被験者が座る椅子に固定したデジタルカメラにより検査用紙を撮影し、その画像を上記ヘッドマウンテッドディスプレイに表示するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の検査システム。
【請求項4】
上記デジタルカメラにより撮影した検査用紙の画像を拡大または縮小して上記ヘッドマウンテッドディスプレイに表示するように構成されていることを特徴とする請求項3記載の検査システム。
【請求項5】
検査を行う際に被験者の頭部の運動を計測することができるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の検査システム。
【請求項6】
上記撮像素子で撮像された画像を処理して上記ヘッドマウンテッドディスプレイに表示する処理/制御装置をさらに有することを特徴とする請求項1記載の検査システム。
【請求項7】
一つまたは複数の撮像素子が装着されたヘッドマウンテッドディスプレイを有し、
上記ヘッドマウンテッドディスプレイに表示する画像の座標系を物体中心座標系または身体中心座標系に設定可能に構成されていることを特徴とする訓練システム。
【請求項8】
一つまたは複数の撮像素子が装着されたヘッドマウンテッドディスプレイを有し、
上記ヘッドマウンテッドディスプレイに表示する画像の座標系を物体中心座標系または身体中心座標系に設定可能に構成されていることを特徴とする視覚情報呈示システム。
【請求項1】
一つまたは複数の撮像素子が装着されたヘッドマウンテッドディスプレイを有し、
上記ヘッドマウンテッドディスプレイに表示する画像の座標系を物体中心座標系または身体中心座標系に設定可能に構成されていることを特徴とする検査システム。
【請求項2】
上記撮像素子が3CCDであることを特徴とする請求項1記載の検査システム。
【請求項3】
検査を行う際に被験者が座る椅子に固定したデジタルカメラにより検査用紙を撮影し、その画像を上記ヘッドマウンテッドディスプレイに表示するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の検査システム。
【請求項4】
上記デジタルカメラにより撮影した検査用紙の画像を拡大または縮小して上記ヘッドマウンテッドディスプレイに表示するように構成されていることを特徴とする請求項3記載の検査システム。
【請求項5】
検査を行う際に被験者の頭部の運動を計測することができるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の検査システム。
【請求項6】
上記撮像素子で撮像された画像を処理して上記ヘッドマウンテッドディスプレイに表示する処理/制御装置をさらに有することを特徴とする請求項1記載の検査システム。
【請求項7】
一つまたは複数の撮像素子が装着されたヘッドマウンテッドディスプレイを有し、
上記ヘッドマウンテッドディスプレイに表示する画像の座標系を物体中心座標系または身体中心座標系に設定可能に構成されていることを特徴とする訓練システム。
【請求項8】
一つまたは複数の撮像素子が装着されたヘッドマウンテッドディスプレイを有し、
上記ヘッドマウンテッドディスプレイに表示する画像の座標系を物体中心座標系または身体中心座標系に設定可能に構成されていることを特徴とする視覚情報呈示システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−267802(P2007−267802A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−94479(P2006−94479)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年10月5日 インターネットアドレス「http://www.jneuroengrehab.com/content/2/1/31」に発表
【出願人】(591190955)北海道 (121)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年10月5日 インターネットアドレス「http://www.jneuroengrehab.com/content/2/1/31」に発表
【出願人】(591190955)北海道 (121)
【Fターム(参考)】
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