検査器具
【課題】 簡便に体液を吸引して検査を行うことが出来、かつ器具内に吸引した体液が外部に漏れ出すことを防ぐことが出来る検査器具を提供する。
【解決手段】 体液を検査器具内に吸入し、器具内のインジケーターと体液とを接触させて体液の検査を行うようにした体液検査器具において、検査器具内への体液の吸入口となる吸入部、インジケーターを内包したインジケーター封入部、該インジケーター封入部内と検査器具本体内との連通を開閉する連通開閉手段、並びに検査器具を体液吸引手段に接続するための吸引手段接続部とを備えてなる体液検査器具。
【解決手段】 体液を検査器具内に吸入し、器具内のインジケーターと体液とを接触させて体液の検査を行うようにした体液検査器具において、検査器具内への体液の吸入口となる吸入部、インジケーターを内包したインジケーター封入部、該インジケーター封入部内と検査器具本体内との連通を開閉する連通開閉手段、並びに検査器具を体液吸引手段に接続するための吸引手段接続部とを備えてなる体液検査器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液を吸引して各種検査を行う検査器具に関する。詳細には、体内に挿入したカテーテルやチューブなどから採取した体液を検査するのに適した体液検査器具に関する。
【背景技術】
【0002】
特に医療の現場において、胃液や血液、膵液、尿などの体液を採取して検査を行う機会は多い。その際、一度採取した体液を別の容器に移し、そこで試験紙や検査試薬(以下、インジケーターと称する)と体液を接触させて反応を観察するという方法が採られている。しかし、この方法では物品の準備や検査の手順に手間がかかる。また、採取した体液に検査を実施する者が触れる、また体液を机や床にこぼすなどして周りを汚染する恐れがあるなどの問題点がある。
【0003】
また、カテーテルやチューブを用いて体液を採取し、採取した液体を検査することも行われているが、この場合も準備や検査に手間がかかるなどの問題がある。このような検査を行う例として、体内に挿入された栄養チューブの先端位置の確認を行うことが挙げられる。
【0004】
経口による栄養の摂取が困難な患者に対する栄養の投与の方法として、経鼻にてチューブを胃内に挿入してこの経鼻栄養チューブを介して栄養の投与を行う方法が行われている。このチューブを挿入する際、本来胃内に到達すべきカテーテルの先端が誤って気管や肺などの呼吸器官に挿入されてしまう危険がある。この状態で患者に栄養剤の投与を行った場合、肺炎や窒息などの異常を引き起こし、最悪の場合は患者の生命に関わる事態になる。このため医療従事者は、経鼻栄養チューブにて栄養の投与を行う際、その先端位置が胃の中にあることを確認することを推奨している(非特許文献参照)。確認の方法としては、カテーテルを介して体液を吸引し、水素イオン濃度(以下、pHともいう)によって変色するインジケーターを用いて吸引した体液のpHが酸性であることを確認するものである。この方法は、体液が胃内容物であることを確認する確実で有効な方法である。しかしこの方法によっても、上記の例と同様物品の準備や検査の手順に手間がかかる、採取した体液に検査者が触れる、体液を机や床にこぼして周りを汚染する、といった問題がある。
【0005】
経鼻栄養チューブの先端の位置を確認するためのシステムが、特許文献1に開示されている。この内容によれば、体液の吸引操作と吸引した体液の確認を同時に行うことが出来るので、物品の準備や検査の手順に手間がかかるという問題は解決できる。しかし、検査器具内に吸引された体液を留めておく機構がなく、体液を吸引した後にカテーテルから検査器具を外した際、検査器具内の体液が外部に漏れ出すおそれがある。そのため、体液を机や床にこぼすおそれがある点や検査を実施する者が体液に触れるという問題は解決されていない。特に体液とインジケーターを接触させた時にインジケーターの色素が体液と混ざり、体液が外部に漏れ出した場合色素も一緒に漏れ出して机や床、検査実施者を汚染してしまうおそれがある。検査器具に逆止弁をとりつける方法も考えられるが、その場合は検査器具の構成が複雑になってしまう上、コスト高につながるため好ましくない。
【0006】
また、体液を採取して検査を行う器具としては、特許文献2に記載された器具が使用されている。特許文献2に記載されている器具は、先端部に判定部分を設けたスティックとそれを収納する容器からなり、スティックで検体を採取し、スティックを容器内に収めることで容器内のインジケーターと検体が接触して反応を起こし、検体の判定を行うことが出来るものである。しかし、この器具を用いて体内に挿入したカテーテルの位置を確認する場合は吸引した体液を別の容器に移した上でスティックと体液を接触させなければならず、物品の準備に手間がかかるという問題は解決できていない。
【0007】
【特許文献1】国際公開WO2006/003960号明細書
【特許文献2】特開平7−63750号明細書
【非特許文献1】2002年社団法人日本看護協会発行「医療・看護安全管理情報No.8」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものである。すなわち、本発明は簡便に体液を吸引して検査を行うことが出来、かつ器具内に吸引した体液が外部に漏れ出すことを防ぐことが出来る検査器具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、本発明は以下の構成を備える。すなわち本発明は、体液を検査器具内に吸入し、器具内のインジケーターと体液とを接触させて体液の検査を行うようにした体液検査器具において、検査器具内への体液の吸入口となる吸入部、インジケーターを内包したインジケーター封入部、該インジケーター封入部内と検査器具本体内との連通を開閉する連通開閉手段、並びに検査器具を体液吸引手段に接続するための吸引手段接続部とを備えてなる体液検査器具を提供するものである。望ましくは、前記体液検査器具本体が回動可能に挿通された内筒と外筒で構成され、外筒側面にはインジケーター封入部が外筒内部と連通可能に設けられ、さらにインジケーター封入部取付位置と合致する内筒側壁位置に開口を設け、内筒と外筒の回動位置を制御することによってインジケーター封入部と体液検査器具本体内の連通を開閉するように構成して連通開閉手段とした体液検査器具である。
【発明の効果】
【0010】
このような構成とすることで、体液の吸引操作と同時に吸引した体液をインジケーターと接触させることが出来、簡便に体液の検査を行うことが出来る。また、体液を検査器具内に吸引した後は、連通開閉手段によってインジケーター封入部と検査器具本体内との連通を遮断することで、インジケーター封入部内に流入した体液が検査器具の外部に漏出することを防ぐことが出来る。
【0011】
体液検査器具本体が回動可能に挿通された内筒と外筒で構成される場合、内筒と外筒の回動位置認識手段を設けることが望ましい。このような構成にすることで、インジケーター封入部と体液検査器具内が連通しているか否かを容易に判別できる。
【0012】
本発明の体液検査器具の基端に吸引手段接続部を設け、該吸引手段接続部より先端側の体液検査器具本体内に吸入部から吸引手段接続部へ体液が直接流れることを阻害する阻害部材を設けることが望ましい。この構成により、体液の吸引操作を行った際にインジケーター封入部に体液が流入し易くなる。よって、吸引した体液を効率良くインジケーターと接触させることが可能となり、より確実に検査を行うことが可能となる。また、阻害部材によって、本体部内の流路が吸入部と連通開閉手段とを連通する第一流路および吸引手段接続部と連通開閉手段とを連通する第二流路に分割される構成であれば、上記効果はより顕著なものとなる。
【0013】
インジケーター封入部を体液検査器具本体に対して着脱可能とすることも望ましい。このような構成にすることで、一度体液を吸引してインジケーターと接触させた後に使用済みのインジケーター封入部を取外し、未使用のものと交換することで、もう一度体液の検査を行うことが出来る。また、他の検査を行うインジケーターと交換すれば、複数の検査を連続して行うことが出来る。この構成により、検査を繰り返して行う際、検査のたびに検査器具を丸ごと交換する必要がなく、経済的である。
【0014】
また、内筒と外筒が離脱することを防止機構として、外筒の内腔と内筒の外面のいずれか一方に周方向に形成された溝を設け、他方に該溝と嵌合する形状のリブを設けることも有用である。この構成により、内筒と外筒を嵌合させて溝とリブを嵌合させた時に互いの軸方向の移動を規制する。そのため、内筒が外筒から自然に外れにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に従い本発明の実施例を説明する。
【0016】
図1は本発明の検査器具の斜視図である。この図によれば、本発明の検査器具1は、体液と接触したときに体液の性質によって変化を起こすインジケーターを内包したインジケーター封入部3と、該インジケーター封入部3を側面に設けた本体部2から構成される。本体部2の先端側には体液を検査器具1内に吸入する入口となる吸入部23が設けられている。また、本体部2の基端側にはシリンジやポンプなど体液を吸引する手段(以下、吸引手段とする)が接続可能である吸引手段接続部24が設けられている。
【0017】
図2は本発明の体液検査器具本体を構成する内筒の斜視図であり、図3はその断面図である。この構成によれば、内筒21は先端に吸入部23を備えた中空筒体であり、側面には内筒開口部4が設けられている。
【0018】
図4は本発明の検査器具本体2を構成する外筒の斜視図であり、図5はその断面図である。外筒22は、基端に前記吸引手段を接続可能である吸引手段接続部24を設けており、先端は前記内筒を回動可能に挿入できる構成となっている。また内筒21が挿入される部分の側面には外筒22の内腔とインジケーター封入部3の内部とを連通する外筒開口部5が備えられている。また、外筒22はその側面にインジケーター封入部3を備えることが可能であり、インジケーター封入部3の内部と検査器具本体2の内腔は外筒開口部5を介して連通している。
【0019】
検査器具本体2は、外筒内に内筒を挿入した時、互いの回動位置によって前記内筒開口部4と外筒開口部5の位置が一致することで、内筒21の内腔とインジケーター封入部3が連通する構成となっており、また前記内筒開口部4と外筒開口部の位置をずらす事で内筒21の内腔とインジケーター封入部3の連通状態を閉鎖することが出来る(以下、この機構を連通開閉手段ともいう)。なお、外筒22とインジケーター封入部3は一体であってもよいが、着脱可能な構成とすることがより好ましい。インジケーター部3を着脱可能とすることで、一度内包するインジケーター31と体液が接触した後にもう一度検査を行う際、使用済みのインジケーター部3を本体部2から取外し、新たに未使用のインジケーター封入部3を本体部2に接続するだけで再び検査を行うことが出来る。インジケーター封入部3を着脱可能とした場合、外筒の外方に突出する突出部6を設け、突出部に該外筒開口部5を設けることも有用である。突出部6とインジケーター封入部3を嵌合させることでインジケーター封入部3を本体部2に容易かつ確実に装着することが出来る。
【0020】
図6はこれまでに述べた内筒21と外筒22を嵌合させ、さらに外筒22とインジケーター封入部3を接続した時の断面図である。内筒21は外筒22に回動可能な状態で挿入される。また、内筒21と外筒22を嵌合させたとき、吸入部23と吸引手段接続部24を連通する流路211が形成される。この状態で内筒および/または外筒を周方向に回動させ、内筒開口部4と外筒開口部5の位置が一致した時、図6に示されるように流路211とインジケーター封入部3内が連通する。また、内筒および/または外筒を周方向に回動させて内筒開口部4の位置と外筒開口部5の位置をずらすと、図7に示されるように流路211からインジケーター封入部3内への流路が閉鎖される。そのため、流路211とインジケーター封入部3は連通しない状態となる。
【0021】
本発明の検査器具を用いて体液の検査を行う方法について説明する。まず吸引手段接続部24に吸引手段(図示せず)を接続する。体内に挿入したカテーテルの位置を確認する場合は、検査器具本体の吸入部23を体外に出ているカテーテルの端部に取り付ける。そして、インジケーター封入部3を本体部の下側に位置させた状態で吸引手段によって吸引操作を行い、本体部内の流路211に陰圧をかけて吸入部23から検査器具1内に体液を吸入する。吸引操作を行う際、内筒開口部4と外筒開口部5の位置を前記の方法で一致させ、本体部内の流路211とインジケーター封入部3内を連通させておくことで、図6に示すように吸入された体液は流路211を経てインジケーター封入部3内に流入する。体液と接触したときのインジケーター31の変化を観察することで、体液の検査を行うことができる。インジケーター封入部3内に吸入した体液が達した後、図7に示すように外筒および/または内筒を周方向に回動させて内筒開口部4と外筒開口部5の位置をずらして流路211からインジケーター封入部3内への流路を閉鎖すると、インジケーター封入部3内の体液をインジケーター封入部3内に留めておくことが出来、流路211に逆流することはない。
【0022】
検査器具本体に連通開閉手段の連通状態を認識できる機構を設けることも有用である。この機構の例としては、例えば図1に示されているように内筒および外筒の外側面にマーカー7を設け、内筒側のマーカーと外筒側のマーカーの位置が一致した時に内筒側面の開口と外筒側面の開口の位置が一致する構成や、図12および図13に示されているように内筒または外筒のいずれかに位置合わせ用の凸部81を設け、他方に該凸部81と対応する凹部82を設け、凹部82の側端と凸部81が接触したときに内筒側面の開口と外筒側面の開口の位置が一致する構成が考えられる。
【0023】
図8および図9に示すように、検査器具本体に、吸引した体液が吸入部から吸引手段接続部へ直接流れることを阻害する阻害部材214を設けることも有用である。阻害部材214を設けることで、体液の吸引操作を行った際吸引した体液が直接吸引手段に流入することなくインジケーター封入部3に流れ易くなり、吸引した体液の量が少ない場合でもより効率良く体液の検査を行うことが出来る。また図10および図11に示すように、阻害部材214によって本体部内の流路が吸入部と連通開閉手段とを連通する第一流路212および吸引手段接続部と連通開閉手段とを連通する第二流路213に分割される構成とすることも好ましい。この構成により、阻害部材によって吸入部から吸引手段接続部への直接の連通が完全に遮断され、インジケーター封入部との連通機構を介してのみ吸入部と吸引手段接続部が連通するようになる。よって、吸引した体液は吸引手段内に直接吸引されることなく、確実にインジケーター封入部内に流入させることが出来る。
【0024】
内筒21と外筒22を嵌合させた際、互いを抜けにくくするために、図14に示すような離脱防止機構を設けてもよい。離脱防止機構の構成としては、内筒または外筒のいずれか一方に図2に示すような離脱防止用のリブ91を設け、他方には図5に示すようなリブ91と嵌合する離脱防止用の溝92を設ける構造が考えられる。このような構成とした上で外筒内に内筒を挿入すると、リブ91と溝92が嵌合する。この嵌合により、内筒と外筒の回動運動は妨げられずに外筒に対する内筒の軸方向への移動を阻害する。そのため、外筒から内筒が抜けにくくなる。
【0025】
図1に示すように、吸入部23の外壁に複数の突起物や環状リブからなる滑り止め10を設けることも好ましい。この構成により、本発明の検査器具をカテーテルやチューブなどの中空接続部に挿入して接続し、カテーテルやチューブを介して体液を検査器具1内に吸入する際、カテーテルやチューブの中空接続部から検査器具1が脱落しにくくなる。
【0026】
これまでに述べた例では、内筒が吸入部を備え外筒が吸引手段接続部を備える例が記載されているが、内筒が吸引手段接続部を備え、外筒が吸入部を備える構成であってもよい。この場合であっても、内筒と外筒が互いに回動可能な状態で嵌合され、内筒側面に設けられた開口部と外筒の側面に設けられた開口部の位置が一致した時に本体部2内の流路とインジケーター封入部3内が連通する構成であればよい。
【0027】
インジケーター封入部3に内包されるインジケーター31としては、体液の性質や種類によって変化を起こし、その結果検査を行うことが出来るものであればよく、pH指示薬や抗体試薬、蛍光試薬などが考えられる。インジケーター31として試薬をそのまま封入してもよいが、担持体に担持させてもよい。このときの担持体が吸水性のものであれば、吸入した体液が少量であってもインジケーター31と接触した瞬間にその大部分を吸収することが出来るので、インジケーター31の変化が観察し易く好ましい。また、インジケーター封入部3内に複数の種類のインジケーター31を封入することで、一度体液とインジケーター31を接触させるだけで複数の検査を行うことが出来る。
【0028】
本発明の検査器具を構成する材料は、一般的に医療用基材として用いられているものでよい。例えば、ポリプロピレンやポリエチレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリウレタンやこれらを混合した材料が考えられる。特にインジケーター封入部3においては、内包されたインジケーター31の変化を外部から視認出来るように透明な部材で構成されていることが望ましい。
【実施例1】
【0029】
本発明の検査器具を用いて、体内、特に胃に挿入されたカテーテルの先端の位置を確認する例について説明する。まず、従来の方法でカテーテルを鼻腔、もしくは口から胃へと挿入する。そしてカテーテルの先端が胃に達したと判断したら、体外にあるカテーテルの端部に本発明の検査器具の吸入部23を嵌合させ、カテーテルと本発明の検査器具1を接続する。そして、シリンジやポンプなどの吸引手段を検査器具の吸引手段接続部24に接続し、インジケーター封入部3を本体部2に接続し、内筒および/または外筒を周方向に回動させて内筒側面の開口と外筒側面の開口の位置を合わせて本体部内の流路211とインジケーター封入部3の内部を連通させる。この状態で吸引手段によって吸引操作を行うと本体部2内の流路およびカテーテル内に陰圧が発生し、カテーテルの先端付近にある体液を吸引することが出来る。この体液を検査器具1内に吸引してインジケーター封入部内のインジケーター31と接触させる。吸引した体液がインジケーター31と接触したときのインジケーターの変化を観察することで、カテーテルの先端が胃の中にあるかそうでないかを判断することが出来る。すなわち、胃内容物は酸性であるため、接触した体液が酸性であるという反応をインジケーターが示せば吸引した体液は胃由来のものであると判断でき、この体液を吸引したカテーテルの先端は胃の中にあるものと特定できる。逆に体液が酸性ではないという反応を示した場合は、その体液を吸引したカテーテルの先端は食道や肺などの胃以外の部位にあると考えられるため、カテーテルを抜いて胃への挿入をやり直す。この場合に用いるインジケーターとしては、接触した体液のpHによって変化を起こすものが望ましい。具体的には、青色リトマスやブロモチモールブルー、ブロモクレゾールパープル、クロロフェノールレッドなどが考えられる。なお、本実施例については検査器具の先端をカテーテルの内腔に挿入し、カテーテルを介して体液を吸引する方法について説明したが、カテーテルを介さずに検査器具の先端から直接体液を吸引して検査を行うことも可能である。また、インジケーターの種類を適宜選択することで、胃内容物以外の体液や体液以外の液体の検査を行うことも可能である。
【0030】
吸入部23と吸引手段接続部24の間に阻害部材214を設けた構成であれば、吸引された体液は吸入部23から直接吸引手段接続部24に流れることなく、必ずインジケーター封入部3内に達する。そのため、吸引した体液が少量であった場合でも体液とインジケーターを確実に接触させることが出来る。体液を吸引してインジケーターと接触させた後、内筒および/または外筒を周方向に回動させて本体部2内の流路からインジケーター封入部3内への連通を閉鎖すれば、インジケーター封入部3内に達した体液が本体部2内の流路を経て外部に漏出することがなく、周りを汚染することはない。
【0031】
インジケーター封入部3と本体部2が着脱可能な構成であれば、一度体液をインジケーター31と接触させた後、そのまますぐに別の体液を吸引して検査を行いたい時に使用済みのインジケーター封入部3を本体部から取外し、新たに未使用のインジケーター封入部3を接続して上記の吸引操作を行うことで再び検査を行うことが出来る。
【0032】
また本発明の検査器具においては、異なる種類のインジケーターを封入したインジケーター封入部を多種用意することで、複数の検査を簡便に行うことが出来る。例えば尿の検査を行う際、潜血に反応するインジケーターを封入したインジケーター封入部、尿蛋白に反応するインジケーターを封入したインジケーター封入部、糖に反応するインジケーターを封入したインジケーター封入部をそれぞれ準備し、体液を吸引するたびにインジケーター封入部を交換して検査を行えば、多種の検査を簡便に行うことが出来る。また、複数種類のインジケーターを同時にインジケーター封入部内に封入して上記吸引操作を行えば、一度の吸引で複数の検査を行うことが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の検査器具は、体液の検査において有効に使用することが出来る。本発明の検査器具単体でも検査を行うことが出来るが、実施例1のようにカテーテルに接続して、体液の採取と検査を連続して行う用途において特に有効である。また、インジケーターの種類によっては、体液のみならず水質や薬品の検査を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の検査器具の斜視図である。
【図2】検査器具内筒の斜視図である。
【図3】検査器具内筒の断面図である。
【図4】検査器具外筒の斜視図である。
【図5】検査器具外筒の断面図である。
【図6】本発明の検査器具で、本体部内の流路とインジケーター封入部内が連通している状態の断面図である。
【図7】本発明の検査器具で、本体部内の流路とインジケーター封入部内の連通が遮断されている状態の断面図である。
【図8】内筒内に阻害部材を設けた例の断面図である。
【図9】内筒内に阻害部材を設けた例の断面図である。
【図10】本体部内の流路を第一流路および第二流路で構成した例の断面図である。
【図11】本体部内の流路を第一流路および第二流路で構成した例の断面図である。
【図12】本発明に、位置合わせ用の凸部および凹部を設けた例の斜視図である。
【図13】位置合わせ用の凸部および凹部の拡大図である。
【図14】図6のA部分の拡大図であり、離脱防止機構の一例を示した断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 検査器具
2 本体部
21 内筒
211 流路
212 第一流路
213 第二流路
214 阻害部材
22 外筒
23 吸入部
24 吸引手段接続部
3 インジケーター封入部
31 インジケーター
4 内筒開口部
5 外筒開口部
6 突出部
7 マーカー
81 位置合わせ用凸部
82 位置合わせ用凹部
91 離脱防止用リブ
92 離脱防止用溝
10 滑り止め
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液を吸引して各種検査を行う検査器具に関する。詳細には、体内に挿入したカテーテルやチューブなどから採取した体液を検査するのに適した体液検査器具に関する。
【背景技術】
【0002】
特に医療の現場において、胃液や血液、膵液、尿などの体液を採取して検査を行う機会は多い。その際、一度採取した体液を別の容器に移し、そこで試験紙や検査試薬(以下、インジケーターと称する)と体液を接触させて反応を観察するという方法が採られている。しかし、この方法では物品の準備や検査の手順に手間がかかる。また、採取した体液に検査を実施する者が触れる、また体液を机や床にこぼすなどして周りを汚染する恐れがあるなどの問題点がある。
【0003】
また、カテーテルやチューブを用いて体液を採取し、採取した液体を検査することも行われているが、この場合も準備や検査に手間がかかるなどの問題がある。このような検査を行う例として、体内に挿入された栄養チューブの先端位置の確認を行うことが挙げられる。
【0004】
経口による栄養の摂取が困難な患者に対する栄養の投与の方法として、経鼻にてチューブを胃内に挿入してこの経鼻栄養チューブを介して栄養の投与を行う方法が行われている。このチューブを挿入する際、本来胃内に到達すべきカテーテルの先端が誤って気管や肺などの呼吸器官に挿入されてしまう危険がある。この状態で患者に栄養剤の投与を行った場合、肺炎や窒息などの異常を引き起こし、最悪の場合は患者の生命に関わる事態になる。このため医療従事者は、経鼻栄養チューブにて栄養の投与を行う際、その先端位置が胃の中にあることを確認することを推奨している(非特許文献参照)。確認の方法としては、カテーテルを介して体液を吸引し、水素イオン濃度(以下、pHともいう)によって変色するインジケーターを用いて吸引した体液のpHが酸性であることを確認するものである。この方法は、体液が胃内容物であることを確認する確実で有効な方法である。しかしこの方法によっても、上記の例と同様物品の準備や検査の手順に手間がかかる、採取した体液に検査者が触れる、体液を机や床にこぼして周りを汚染する、といった問題がある。
【0005】
経鼻栄養チューブの先端の位置を確認するためのシステムが、特許文献1に開示されている。この内容によれば、体液の吸引操作と吸引した体液の確認を同時に行うことが出来るので、物品の準備や検査の手順に手間がかかるという問題は解決できる。しかし、検査器具内に吸引された体液を留めておく機構がなく、体液を吸引した後にカテーテルから検査器具を外した際、検査器具内の体液が外部に漏れ出すおそれがある。そのため、体液を机や床にこぼすおそれがある点や検査を実施する者が体液に触れるという問題は解決されていない。特に体液とインジケーターを接触させた時にインジケーターの色素が体液と混ざり、体液が外部に漏れ出した場合色素も一緒に漏れ出して机や床、検査実施者を汚染してしまうおそれがある。検査器具に逆止弁をとりつける方法も考えられるが、その場合は検査器具の構成が複雑になってしまう上、コスト高につながるため好ましくない。
【0006】
また、体液を採取して検査を行う器具としては、特許文献2に記載された器具が使用されている。特許文献2に記載されている器具は、先端部に判定部分を設けたスティックとそれを収納する容器からなり、スティックで検体を採取し、スティックを容器内に収めることで容器内のインジケーターと検体が接触して反応を起こし、検体の判定を行うことが出来るものである。しかし、この器具を用いて体内に挿入したカテーテルの位置を確認する場合は吸引した体液を別の容器に移した上でスティックと体液を接触させなければならず、物品の準備に手間がかかるという問題は解決できていない。
【0007】
【特許文献1】国際公開WO2006/003960号明細書
【特許文献2】特開平7−63750号明細書
【非特許文献1】2002年社団法人日本看護協会発行「医療・看護安全管理情報No.8」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものである。すなわち、本発明は簡便に体液を吸引して検査を行うことが出来、かつ器具内に吸引した体液が外部に漏れ出すことを防ぐことが出来る検査器具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、本発明は以下の構成を備える。すなわち本発明は、体液を検査器具内に吸入し、器具内のインジケーターと体液とを接触させて体液の検査を行うようにした体液検査器具において、検査器具内への体液の吸入口となる吸入部、インジケーターを内包したインジケーター封入部、該インジケーター封入部内と検査器具本体内との連通を開閉する連通開閉手段、並びに検査器具を体液吸引手段に接続するための吸引手段接続部とを備えてなる体液検査器具を提供するものである。望ましくは、前記体液検査器具本体が回動可能に挿通された内筒と外筒で構成され、外筒側面にはインジケーター封入部が外筒内部と連通可能に設けられ、さらにインジケーター封入部取付位置と合致する内筒側壁位置に開口を設け、内筒と外筒の回動位置を制御することによってインジケーター封入部と体液検査器具本体内の連通を開閉するように構成して連通開閉手段とした体液検査器具である。
【発明の効果】
【0010】
このような構成とすることで、体液の吸引操作と同時に吸引した体液をインジケーターと接触させることが出来、簡便に体液の検査を行うことが出来る。また、体液を検査器具内に吸引した後は、連通開閉手段によってインジケーター封入部と検査器具本体内との連通を遮断することで、インジケーター封入部内に流入した体液が検査器具の外部に漏出することを防ぐことが出来る。
【0011】
体液検査器具本体が回動可能に挿通された内筒と外筒で構成される場合、内筒と外筒の回動位置認識手段を設けることが望ましい。このような構成にすることで、インジケーター封入部と体液検査器具内が連通しているか否かを容易に判別できる。
【0012】
本発明の体液検査器具の基端に吸引手段接続部を設け、該吸引手段接続部より先端側の体液検査器具本体内に吸入部から吸引手段接続部へ体液が直接流れることを阻害する阻害部材を設けることが望ましい。この構成により、体液の吸引操作を行った際にインジケーター封入部に体液が流入し易くなる。よって、吸引した体液を効率良くインジケーターと接触させることが可能となり、より確実に検査を行うことが可能となる。また、阻害部材によって、本体部内の流路が吸入部と連通開閉手段とを連通する第一流路および吸引手段接続部と連通開閉手段とを連通する第二流路に分割される構成であれば、上記効果はより顕著なものとなる。
【0013】
インジケーター封入部を体液検査器具本体に対して着脱可能とすることも望ましい。このような構成にすることで、一度体液を吸引してインジケーターと接触させた後に使用済みのインジケーター封入部を取外し、未使用のものと交換することで、もう一度体液の検査を行うことが出来る。また、他の検査を行うインジケーターと交換すれば、複数の検査を連続して行うことが出来る。この構成により、検査を繰り返して行う際、検査のたびに検査器具を丸ごと交換する必要がなく、経済的である。
【0014】
また、内筒と外筒が離脱することを防止機構として、外筒の内腔と内筒の外面のいずれか一方に周方向に形成された溝を設け、他方に該溝と嵌合する形状のリブを設けることも有用である。この構成により、内筒と外筒を嵌合させて溝とリブを嵌合させた時に互いの軸方向の移動を規制する。そのため、内筒が外筒から自然に外れにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に従い本発明の実施例を説明する。
【0016】
図1は本発明の検査器具の斜視図である。この図によれば、本発明の検査器具1は、体液と接触したときに体液の性質によって変化を起こすインジケーターを内包したインジケーター封入部3と、該インジケーター封入部3を側面に設けた本体部2から構成される。本体部2の先端側には体液を検査器具1内に吸入する入口となる吸入部23が設けられている。また、本体部2の基端側にはシリンジやポンプなど体液を吸引する手段(以下、吸引手段とする)が接続可能である吸引手段接続部24が設けられている。
【0017】
図2は本発明の体液検査器具本体を構成する内筒の斜視図であり、図3はその断面図である。この構成によれば、内筒21は先端に吸入部23を備えた中空筒体であり、側面には内筒開口部4が設けられている。
【0018】
図4は本発明の検査器具本体2を構成する外筒の斜視図であり、図5はその断面図である。外筒22は、基端に前記吸引手段を接続可能である吸引手段接続部24を設けており、先端は前記内筒を回動可能に挿入できる構成となっている。また内筒21が挿入される部分の側面には外筒22の内腔とインジケーター封入部3の内部とを連通する外筒開口部5が備えられている。また、外筒22はその側面にインジケーター封入部3を備えることが可能であり、インジケーター封入部3の内部と検査器具本体2の内腔は外筒開口部5を介して連通している。
【0019】
検査器具本体2は、外筒内に内筒を挿入した時、互いの回動位置によって前記内筒開口部4と外筒開口部5の位置が一致することで、内筒21の内腔とインジケーター封入部3が連通する構成となっており、また前記内筒開口部4と外筒開口部の位置をずらす事で内筒21の内腔とインジケーター封入部3の連通状態を閉鎖することが出来る(以下、この機構を連通開閉手段ともいう)。なお、外筒22とインジケーター封入部3は一体であってもよいが、着脱可能な構成とすることがより好ましい。インジケーター部3を着脱可能とすることで、一度内包するインジケーター31と体液が接触した後にもう一度検査を行う際、使用済みのインジケーター部3を本体部2から取外し、新たに未使用のインジケーター封入部3を本体部2に接続するだけで再び検査を行うことが出来る。インジケーター封入部3を着脱可能とした場合、外筒の外方に突出する突出部6を設け、突出部に該外筒開口部5を設けることも有用である。突出部6とインジケーター封入部3を嵌合させることでインジケーター封入部3を本体部2に容易かつ確実に装着することが出来る。
【0020】
図6はこれまでに述べた内筒21と外筒22を嵌合させ、さらに外筒22とインジケーター封入部3を接続した時の断面図である。内筒21は外筒22に回動可能な状態で挿入される。また、内筒21と外筒22を嵌合させたとき、吸入部23と吸引手段接続部24を連通する流路211が形成される。この状態で内筒および/または外筒を周方向に回動させ、内筒開口部4と外筒開口部5の位置が一致した時、図6に示されるように流路211とインジケーター封入部3内が連通する。また、内筒および/または外筒を周方向に回動させて内筒開口部4の位置と外筒開口部5の位置をずらすと、図7に示されるように流路211からインジケーター封入部3内への流路が閉鎖される。そのため、流路211とインジケーター封入部3は連通しない状態となる。
【0021】
本発明の検査器具を用いて体液の検査を行う方法について説明する。まず吸引手段接続部24に吸引手段(図示せず)を接続する。体内に挿入したカテーテルの位置を確認する場合は、検査器具本体の吸入部23を体外に出ているカテーテルの端部に取り付ける。そして、インジケーター封入部3を本体部の下側に位置させた状態で吸引手段によって吸引操作を行い、本体部内の流路211に陰圧をかけて吸入部23から検査器具1内に体液を吸入する。吸引操作を行う際、内筒開口部4と外筒開口部5の位置を前記の方法で一致させ、本体部内の流路211とインジケーター封入部3内を連通させておくことで、図6に示すように吸入された体液は流路211を経てインジケーター封入部3内に流入する。体液と接触したときのインジケーター31の変化を観察することで、体液の検査を行うことができる。インジケーター封入部3内に吸入した体液が達した後、図7に示すように外筒および/または内筒を周方向に回動させて内筒開口部4と外筒開口部5の位置をずらして流路211からインジケーター封入部3内への流路を閉鎖すると、インジケーター封入部3内の体液をインジケーター封入部3内に留めておくことが出来、流路211に逆流することはない。
【0022】
検査器具本体に連通開閉手段の連通状態を認識できる機構を設けることも有用である。この機構の例としては、例えば図1に示されているように内筒および外筒の外側面にマーカー7を設け、内筒側のマーカーと外筒側のマーカーの位置が一致した時に内筒側面の開口と外筒側面の開口の位置が一致する構成や、図12および図13に示されているように内筒または外筒のいずれかに位置合わせ用の凸部81を設け、他方に該凸部81と対応する凹部82を設け、凹部82の側端と凸部81が接触したときに内筒側面の開口と外筒側面の開口の位置が一致する構成が考えられる。
【0023】
図8および図9に示すように、検査器具本体に、吸引した体液が吸入部から吸引手段接続部へ直接流れることを阻害する阻害部材214を設けることも有用である。阻害部材214を設けることで、体液の吸引操作を行った際吸引した体液が直接吸引手段に流入することなくインジケーター封入部3に流れ易くなり、吸引した体液の量が少ない場合でもより効率良く体液の検査を行うことが出来る。また図10および図11に示すように、阻害部材214によって本体部内の流路が吸入部と連通開閉手段とを連通する第一流路212および吸引手段接続部と連通開閉手段とを連通する第二流路213に分割される構成とすることも好ましい。この構成により、阻害部材によって吸入部から吸引手段接続部への直接の連通が完全に遮断され、インジケーター封入部との連通機構を介してのみ吸入部と吸引手段接続部が連通するようになる。よって、吸引した体液は吸引手段内に直接吸引されることなく、確実にインジケーター封入部内に流入させることが出来る。
【0024】
内筒21と外筒22を嵌合させた際、互いを抜けにくくするために、図14に示すような離脱防止機構を設けてもよい。離脱防止機構の構成としては、内筒または外筒のいずれか一方に図2に示すような離脱防止用のリブ91を設け、他方には図5に示すようなリブ91と嵌合する離脱防止用の溝92を設ける構造が考えられる。このような構成とした上で外筒内に内筒を挿入すると、リブ91と溝92が嵌合する。この嵌合により、内筒と外筒の回動運動は妨げられずに外筒に対する内筒の軸方向への移動を阻害する。そのため、外筒から内筒が抜けにくくなる。
【0025】
図1に示すように、吸入部23の外壁に複数の突起物や環状リブからなる滑り止め10を設けることも好ましい。この構成により、本発明の検査器具をカテーテルやチューブなどの中空接続部に挿入して接続し、カテーテルやチューブを介して体液を検査器具1内に吸入する際、カテーテルやチューブの中空接続部から検査器具1が脱落しにくくなる。
【0026】
これまでに述べた例では、内筒が吸入部を備え外筒が吸引手段接続部を備える例が記載されているが、内筒が吸引手段接続部を備え、外筒が吸入部を備える構成であってもよい。この場合であっても、内筒と外筒が互いに回動可能な状態で嵌合され、内筒側面に設けられた開口部と外筒の側面に設けられた開口部の位置が一致した時に本体部2内の流路とインジケーター封入部3内が連通する構成であればよい。
【0027】
インジケーター封入部3に内包されるインジケーター31としては、体液の性質や種類によって変化を起こし、その結果検査を行うことが出来るものであればよく、pH指示薬や抗体試薬、蛍光試薬などが考えられる。インジケーター31として試薬をそのまま封入してもよいが、担持体に担持させてもよい。このときの担持体が吸水性のものであれば、吸入した体液が少量であってもインジケーター31と接触した瞬間にその大部分を吸収することが出来るので、インジケーター31の変化が観察し易く好ましい。また、インジケーター封入部3内に複数の種類のインジケーター31を封入することで、一度体液とインジケーター31を接触させるだけで複数の検査を行うことが出来る。
【0028】
本発明の検査器具を構成する材料は、一般的に医療用基材として用いられているものでよい。例えば、ポリプロピレンやポリエチレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリウレタンやこれらを混合した材料が考えられる。特にインジケーター封入部3においては、内包されたインジケーター31の変化を外部から視認出来るように透明な部材で構成されていることが望ましい。
【実施例1】
【0029】
本発明の検査器具を用いて、体内、特に胃に挿入されたカテーテルの先端の位置を確認する例について説明する。まず、従来の方法でカテーテルを鼻腔、もしくは口から胃へと挿入する。そしてカテーテルの先端が胃に達したと判断したら、体外にあるカテーテルの端部に本発明の検査器具の吸入部23を嵌合させ、カテーテルと本発明の検査器具1を接続する。そして、シリンジやポンプなどの吸引手段を検査器具の吸引手段接続部24に接続し、インジケーター封入部3を本体部2に接続し、内筒および/または外筒を周方向に回動させて内筒側面の開口と外筒側面の開口の位置を合わせて本体部内の流路211とインジケーター封入部3の内部を連通させる。この状態で吸引手段によって吸引操作を行うと本体部2内の流路およびカテーテル内に陰圧が発生し、カテーテルの先端付近にある体液を吸引することが出来る。この体液を検査器具1内に吸引してインジケーター封入部内のインジケーター31と接触させる。吸引した体液がインジケーター31と接触したときのインジケーターの変化を観察することで、カテーテルの先端が胃の中にあるかそうでないかを判断することが出来る。すなわち、胃内容物は酸性であるため、接触した体液が酸性であるという反応をインジケーターが示せば吸引した体液は胃由来のものであると判断でき、この体液を吸引したカテーテルの先端は胃の中にあるものと特定できる。逆に体液が酸性ではないという反応を示した場合は、その体液を吸引したカテーテルの先端は食道や肺などの胃以外の部位にあると考えられるため、カテーテルを抜いて胃への挿入をやり直す。この場合に用いるインジケーターとしては、接触した体液のpHによって変化を起こすものが望ましい。具体的には、青色リトマスやブロモチモールブルー、ブロモクレゾールパープル、クロロフェノールレッドなどが考えられる。なお、本実施例については検査器具の先端をカテーテルの内腔に挿入し、カテーテルを介して体液を吸引する方法について説明したが、カテーテルを介さずに検査器具の先端から直接体液を吸引して検査を行うことも可能である。また、インジケーターの種類を適宜選択することで、胃内容物以外の体液や体液以外の液体の検査を行うことも可能である。
【0030】
吸入部23と吸引手段接続部24の間に阻害部材214を設けた構成であれば、吸引された体液は吸入部23から直接吸引手段接続部24に流れることなく、必ずインジケーター封入部3内に達する。そのため、吸引した体液が少量であった場合でも体液とインジケーターを確実に接触させることが出来る。体液を吸引してインジケーターと接触させた後、内筒および/または外筒を周方向に回動させて本体部2内の流路からインジケーター封入部3内への連通を閉鎖すれば、インジケーター封入部3内に達した体液が本体部2内の流路を経て外部に漏出することがなく、周りを汚染することはない。
【0031】
インジケーター封入部3と本体部2が着脱可能な構成であれば、一度体液をインジケーター31と接触させた後、そのまますぐに別の体液を吸引して検査を行いたい時に使用済みのインジケーター封入部3を本体部から取外し、新たに未使用のインジケーター封入部3を接続して上記の吸引操作を行うことで再び検査を行うことが出来る。
【0032】
また本発明の検査器具においては、異なる種類のインジケーターを封入したインジケーター封入部を多種用意することで、複数の検査を簡便に行うことが出来る。例えば尿の検査を行う際、潜血に反応するインジケーターを封入したインジケーター封入部、尿蛋白に反応するインジケーターを封入したインジケーター封入部、糖に反応するインジケーターを封入したインジケーター封入部をそれぞれ準備し、体液を吸引するたびにインジケーター封入部を交換して検査を行えば、多種の検査を簡便に行うことが出来る。また、複数種類のインジケーターを同時にインジケーター封入部内に封入して上記吸引操作を行えば、一度の吸引で複数の検査を行うことが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の検査器具は、体液の検査において有効に使用することが出来る。本発明の検査器具単体でも検査を行うことが出来るが、実施例1のようにカテーテルに接続して、体液の採取と検査を連続して行う用途において特に有効である。また、インジケーターの種類によっては、体液のみならず水質や薬品の検査を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の検査器具の斜視図である。
【図2】検査器具内筒の斜視図である。
【図3】検査器具内筒の断面図である。
【図4】検査器具外筒の斜視図である。
【図5】検査器具外筒の断面図である。
【図6】本発明の検査器具で、本体部内の流路とインジケーター封入部内が連通している状態の断面図である。
【図7】本発明の検査器具で、本体部内の流路とインジケーター封入部内の連通が遮断されている状態の断面図である。
【図8】内筒内に阻害部材を設けた例の断面図である。
【図9】内筒内に阻害部材を設けた例の断面図である。
【図10】本体部内の流路を第一流路および第二流路で構成した例の断面図である。
【図11】本体部内の流路を第一流路および第二流路で構成した例の断面図である。
【図12】本発明に、位置合わせ用の凸部および凹部を設けた例の斜視図である。
【図13】位置合わせ用の凸部および凹部の拡大図である。
【図14】図6のA部分の拡大図であり、離脱防止機構の一例を示した断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 検査器具
2 本体部
21 内筒
211 流路
212 第一流路
213 第二流路
214 阻害部材
22 外筒
23 吸入部
24 吸引手段接続部
3 インジケーター封入部
31 インジケーター
4 内筒開口部
5 外筒開口部
6 突出部
7 マーカー
81 位置合わせ用凸部
82 位置合わせ用凹部
91 離脱防止用リブ
92 離脱防止用溝
10 滑り止め
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液を検査器具内に吸入し、器具内のインジケーターと体液とを接触させて体液の検査を行うようにした体液検査器具において、
検査器具内への体液の吸入口となる吸入部、
インジケーターを内包したインジケーター封入部、
該インジケーター封入部内と検査器具本体内との連通を開閉する連通開閉手段、
並びに検査器具を体液吸引手段に接続するための吸引手段接続部とを備えてなる体液検査器具。
【請求項2】
前記体液検査器具本体は回動可能に挿通された内筒と外筒で構成され、
外筒側面にはインジケーター封入部が外筒内部と連通可能に設けられ、
さらにインジケーター封入部取付位置と合致する内筒側壁位置に開口を設けてなり、
内筒と外筒の回動位置を制御することによってインジケーター封入部と体液検査器具本体内の連通を開閉するように構成して連通開閉手段としたことを特徴とする、請求項1に記載の体液検査器具。
【請求項3】
内筒と外筒の回動位置認識手段を設けたことを特徴とする、請求項2に記載の体液検査器具。
【請求項4】
吸引手段接続部が検査器具基端部に設けられており、該吸引手段接続部より先端側の体液検査器具本体内には、吸入部から吸引手段接続部へ体液が直接流れることを阻害する阻害部材が設けられていることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の体液検査器具。
【請求項5】
本体部内の流路は、前記阻害部材によって吸入部と連通開閉手段とを連通する第一流路および吸引手段接続部と連通開閉手段とを連通する第二流路に分割されていることを特徴とする、請求項4に記載の体液検査器具。
【請求項6】
インジケーター封入部が、本体部に対して着脱可能であることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかに記載の体液検査器具。
【請求項7】
外筒の内腔と内筒の外面のいずれか一方に周方向に形成された溝が設けられ、他方には該溝と嵌合する形状のリブが設けられていることを特徴とする、請求項2ないし7に記載の体液検査器具。
【請求項1】
体液を検査器具内に吸入し、器具内のインジケーターと体液とを接触させて体液の検査を行うようにした体液検査器具において、
検査器具内への体液の吸入口となる吸入部、
インジケーターを内包したインジケーター封入部、
該インジケーター封入部内と検査器具本体内との連通を開閉する連通開閉手段、
並びに検査器具を体液吸引手段に接続するための吸引手段接続部とを備えてなる体液検査器具。
【請求項2】
前記体液検査器具本体は回動可能に挿通された内筒と外筒で構成され、
外筒側面にはインジケーター封入部が外筒内部と連通可能に設けられ、
さらにインジケーター封入部取付位置と合致する内筒側壁位置に開口を設けてなり、
内筒と外筒の回動位置を制御することによってインジケーター封入部と体液検査器具本体内の連通を開閉するように構成して連通開閉手段としたことを特徴とする、請求項1に記載の体液検査器具。
【請求項3】
内筒と外筒の回動位置認識手段を設けたことを特徴とする、請求項2に記載の体液検査器具。
【請求項4】
吸引手段接続部が検査器具基端部に設けられており、該吸引手段接続部より先端側の体液検査器具本体内には、吸入部から吸引手段接続部へ体液が直接流れることを阻害する阻害部材が設けられていることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の体液検査器具。
【請求項5】
本体部内の流路は、前記阻害部材によって吸入部と連通開閉手段とを連通する第一流路および吸引手段接続部と連通開閉手段とを連通する第二流路に分割されていることを特徴とする、請求項4に記載の体液検査器具。
【請求項6】
インジケーター封入部が、本体部に対して着脱可能であることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかに記載の体液検査器具。
【請求項7】
外筒の内腔と内筒の外面のいずれか一方に周方向に形成された溝が設けられ、他方には該溝と嵌合する形状のリブが設けられていることを特徴とする、請求項2ないし7に記載の体液検査器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−195436(P2009−195436A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39538(P2008−39538)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【Fターム(参考)】
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