説明

検査方法及び検査装置

【課題】複列軸受の欠陥を高精度に検出でき、また、トルク異常の検出も可能な検査方法及び検査装置を提供する。
【解決手段】外輪3を固定して、内輪6をアキシャル方向に加圧した状態で、内輪6を回転させて、回転中に外輪3の軸方向一端部3a側の転走面1における振動を測定する第1測定工程を行う。外輪3を固定して、内輪7をアキシャル方向に加圧した状態で、内輪7を回転させて、回転中に外輪3の軸方向他端部3b側の転走面2における振動を測定する第2測定工程を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複列軸受の欠陥を検出するための検査方法及び検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
転がり軸受の欠陥を検出するものとして、回転中に生じる振動・音響を測定するものがある(特許文献1)。この特許文献1に記載の装置は、転がり軸受の内輪回転時に生じる振動・音響の測定を行うものであって、転がり軸受にラジアル荷重を加えるものである。
【0003】
すなわち、前記特許文献1に記載の装置は、てこと、このてこの腕の一端に取り付けられたおもりと、このてこの腕の他端に取り付けられる突起(指)とを備えたものである。そして、突起を低剛性の弾性物質にて構成し、前記おもりの荷重によって、外輪に対して突起が径方向の押圧力でもって押圧するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−213771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載のものは、検査対象としては単列軸受であり、複列軸受を想定していない。すなわち、複列軸受では、外輪及び内輪はそれぞれ軸方向に沿って配設される複数の転走面を有する。このため、軸方向一端部と軸方向他端部とで振動が相違する場合があり、前記特許文献1では、両端部におけるそれぞれの振動を検出できない。
【0006】
また、前記特許文献1では、トルク測定を行うものではないので、トルク異常を検出できない。すなわち、振動検出を行っても、このような振動レベルではトルク異常が現れない。このため、前記特許文献1に記載の装置では、良品か不良品かの判断は信頼性に劣ることになる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて、複列軸受の欠陥を高精度に検出でき、また、トルク異常の検出も可能な検査方法及び検査装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の検査方法は、複列の外側転走面を有する外輪と、この外輪の外側転走面に対向する内側転走面を有する内輪と、外側転走面と内側転走面との間に介在される転動体とを備えた複列軸受の欠陥を検査する検査方法であって、外輪を固定して、内輪をアキシャル方向に加圧した状態で、この内輪を回転させて、この回転中に外輪の軸方向一端部側の転走面における振動を測定する第1測定工程と、外輪を固定して、内輪をアキシャル方向に加圧した状態で、この内輪を回転させて、この回転中に外輪の軸方向他端部側の転走面における振動を測定する第2測定工程とを備えたものである。
【0009】
本発明の検査方法によれば、第1測定工程にて、外輪の軸方向一端部側の転走面における振動を測定することができ、第2測定工程にて、外輪の軸方向他端部側の転走面における振動を測定することができる。すなわち、外輪の軸方向両端部側の転走面における振動を測定することができ、測定精度の向上を図ることができる。
【0010】
第1測定工程では外輪の軸方向一端部が上側となるように複列軸受の回転軸心を鉛直方向軸心として振動の測定を行い、第2測定工程では複列軸受を反転させて、外輪の軸方向他端部が上側となるように複列軸受の回転軸心を鉛直方向軸心として振動の測定を行うのが好ましい。このように、固定側が下側となって、振動測定側が上側となるようにすれば、自重等によるワーク(軸受)の測定条件を、反転させても同じになる。
【0011】
第1測定工程及び第2測定工程において、振動測定に加えてその振動測定時にトルク測定を行うのが好ましい。これによって、トルク異常を検出することができる。
【0012】
また、内輪へのアキシャル方向の加圧力を測定中において所定一定値に維持するのが好ましい。
【0013】
振動測定を加速度センサーにより行うようにしても、速度センサーにより行うようにしても、レーザー変位センサーにより行うようにしても、渦電流式変位センサーにより行うようにしても、接触式変位センサーにより行うようにしてもよい。すなわち、振動を定量的に捕らえるために、変位(単位:m)、速度(単位:m/s)、及び加速度(単位:m/s2)の3つの物理量が使用される。各物理量は、微分及び積分することによってそれぞれ相互に変換することが可能である。このため、加速度センサーを用いても、速度センサーを用いても、レーザー変位センサー等の変位センサーを用いても振動を検出することができる。なお、振動の検出の感度は、振動周波数が低い範囲において変位が高く、周波数が上がるにつれて速度へ、また加速度へ移っていく。
【0014】
また、内輪への加圧付与にシリンダ機構を用いたり、ばね機構を用いたりすることができる。シリンダ機構としては、電動シリンダであっても、エアシリンダであってもよい。電動シリンダとは、ボールネジ、リニアガイド、ACサーボモータで構成された電気駆動のシリンダである。エアシリンダと同様に使え、ポンプが不要で電源に接続するだけの簡単な配線で使えるほか、オイルミストの飛散がない、ランニングコストが安いなどの利点がある。
【0015】
検査対象である複列軸受として、複列玉軸受であっても、複列ころ軸受であっても、複列テーパ軸受であってもよく、用途としては、例えば鉄道車両用軸受である。
【0016】
本発明の検出装置は、複列の外側転走面を有する外輪と、この外輪の外側転走面に対向する内側転走面を有する内輪と、外側転走面と内側転走面との間に介在される転動体とを備えた複列軸受の欠陥を検査する検査装置であって、前記外輪の軸方向端部側を着脱可能に固定する固定手段と、前記内輪に対してアキシャル方向の加圧力を付与する加圧手段と、この加圧手段にて加圧した状態で前記内輪をその軸心廻りに回転させる回転駆動手段と、内輪の回転中に、固定手段にて固定されていない外輪の軸方向端部側の転走面における振動を測定する振動測定手段とを備えたものである。
【0017】
本発明の検査装置では、固定手段によって外輪の軸方向端部側を固定できるので、軸方向一端部を固定することができ、この固定状態では、加圧手段で内輪に対してアキシャル方向の加圧力を付与することができる。そして、この加圧状態において、回転駆動手段によって、内輪を回転させることができ、この回転中に振動測定手段にて、固定手段にて固定されていない外輪の軸方向他端部側の転走面における振動を測定することができる。また、逆に、軸方向他端部を固定することができ、この固定状態では、加圧手段で内輪に対してアキシャル方向の加圧力を付与することができる。そして、この加圧状態において、回転駆動手段によって、内輪を回転させることができ、この回転中に振動測定手段にて、固定手段にて固定されていない外輪の軸方向一端部側の転走面における振動を測定することができる。
【0018】
このため、本発明の検査装置を用いれば、外輪の軸方向両端部側の転走面における振動を測定することができ、測定精度の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、外輪の軸方向両端部側の転走面における振動を測定することができ、測定精度の向上を図ることができ、良品か否かの判断が安定する。しかも、欠陥箇所の特定も安定する。
【0020】
特に、固定側が下側となって、振動測定側が上側となるようにすれば、自重等によるワーク(軸受)の測定条件を、反転させても同じになる。このため、振動測定が安定して高精度に製品の欠陥を検出することができる。
【0021】
トルク測定を行うようにすれば、トルク異常を検出することができ、製品の欠陥の検出の信頼性が向上する。測定中の加圧力を所定一定値に維持するようにすれば、測定が安定する。
【0022】
加速度センサー、速度センサー、レーザー変位センサー、渦電流式変位センサー、接触式変位センサー等の種々のセンサーを用いて振動測定を測定することができる。このため、この検出方法に用いる振動測定装置(機構)の構成の簡略化を図ることができて、低コスト化を図ることができる。
【0023】
シリンダ機構やばね機構等を用いて内輪への加圧付与を行うことができ、加圧付与が安定する。複列玉軸受、複列ころ軸受、複列テーパ軸受等の種々の複列軸受の欠陥を検出することができ、汎用性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態を示す検査装置を示し、第1測定工程中の簡略断面図である。
【図2】前記検査装置を用いた第2測定工程中の簡略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下本発明の実施の形態を図1と図2に基づいて説明する。図1と図2に本発明にかかる検査方法に用いる検査装置を示している。この検査装置は複列軸受10の欠陥を検査するものである。複列軸受10は、複列の外側転走面1、2を有する外輪3と、この外輪3の外側転走面1、2に対向する内側転走面4、5を有する内輪6,7と、外側転走面1、2と内側転走面4、5との間に介在される転動体8とを備える。なお、この複列軸受10は、鉄道車両用テーパころ軸受である。
【0026】
この検査装置は、複列軸受10の外輪3の軸方向端部3b(3a)側を着脱可能に固定する固定手段11と、複列軸受10の内輪6,7に対してアキシャル方向の加圧力を付与する加圧手段12と、この加圧手段12にて加圧した状態で内輪6,7をその軸心廻りに回転させる回転駆動手段13と、内輪6,7の回転中に、固定手段11にて固定されていない外輪3の軸方向端部3a(3b)側の転走面1(2)における振動を測定する振動測定手段15とを備える。さらには、トルクを検出するためのトルク検出手段16を備える。
【0027】
この場合、立設される基板壁20の下部に前記固定手段11が設けられている。この固定手段11は、軸受10の外輪3の軸方向端部3b(3a)が嵌合される嵌合部21を有するステージ22を備える。また、嵌合部21に外輪3の軸方向端部3b(3a)が嵌合された状態では、外輪3が回転しないように固定する必要があり、このため、図示省略の支持機構(例えばチャック機構)等にて、嵌合部21に嵌合している外輪3の端部3b(3a)をチャックするようにするのが好ましい。そして、このチャック機構によるチャック状態を解除すれば、外輪3を固定手段11から取外すことができる。すなわち、外輪3はこの固定手段11に着脱自在に固定されることになる。
【0028】
加圧手段12は、下端に内輪6(7)に嵌合する嵌合部25を有するロッド26を備えた電動シリンダ24にて構成できる。電動シリンダ24はボールネジ、リニアガイド、ACサーボモータで構成された電気駆動のシリンダである。嵌合部25は、鍔部27と、この鍔部27から下方へ突出する凸部28とからなり、凸部28が内輪6(7)の孔部6a(7a)の開口部に嵌合されるとともに、鍔部27が内輪6(7)の端面6b(7b)に当接する。このため、ロッド26の上下方向の伸縮量によって、内輪6(7)への下方への加圧力を調節することができる。
【0029】
また、この電動シリンダ24のロッド26は、トルク検出手段16を介して、回転駆動手段13を構成する駆動用モータ30の出力軸30aに連結されている。このため、駆動用モータ30が駆動して出力軸30aが回転すれば、電動シリンダ24のロッド26が回転し、このロッド26の嵌合部25に嵌合している内輪6(7)がその軸心廻りに回転する。なお、この駆動用モータ30は、前記基板壁20の上部に支持部材31を介して支持されている。また、駆動用モータ30としては、汎用モータ、サーボモータ、ステッピングモータ等の種々のものを用いることができる。
【0030】
トルク検出手段16はトルクセンサを使用することができる。トルクセンサは、例えば、励磁コイルと検出コイルとを備える。この場合、励磁コイルには交流電流を通電し、交流磁界を発生させ、トルク伝達軸表面を円周方向に交流磁化させる。そして、検出コイルは、励磁コイルと直交する方向、つまりトルク伝達軸表面の軸方向の交流磁化成分を検出する。トルク伝達軸にトルクが印加されると軸方向に対して45°方向に引張り応力+σ、及び圧縮応力−σが発生する。励磁コイルにより発生させられた円周方向の磁化ベクトルが、磁歪効果により応力発生方向である45°方向に回転させられ、磁化ベクトルの軸方向成分が生じる。この磁化ベクトルの軸方向成分は印加トルクの増加にともなって大きくなる。したがって、磁化ベクトルの軸方向成分を検出する検出コイルからの誘起電圧が、軸に加わるトルクに対応することになる。
【0031】
振動測定手段15としては、加速度を検出する加速度センサー、速度を検出する速度センサー、変位を検出する変位センサー等の種々のセンサーにて構成することができる。このため、この実施形態では加速度ピックアップ35を有する加速度センサーにて、振動測定手段15を構成した。この場合、加速度ピックアップ35を、外輪3の軸方向端部3b(3a)の外周面に接触するように配置する。
【0032】
ここで、加速度センサーとは、加速度、すなわち単位時間当たりの速度の変化を検出するためのものであり、機械式のセンサーや半導体を用いたセンサーがある。半導体式のメリットは小型で、かつ精密な検出が可能である利点がある。半導体を用いた加速度センサーには、静電容量検出方式のほか、ピエゾ抵抗効果を利用したもの、シリコン結晶異方性エッチングを利用したものなどがある。
【0033】
速度センサーには、例えばレーザードップラ振動計を用いることができる。レーザー光を移動するターゲットに照射すると、ターゲットからの反射光の持つ周波数はドップラ効果によって照射光が本来持つ周波数からドップラシフトする。この時のドップラシフト量についてみると、シフトした周波数をfD、ターゲットの持つ速度をV、照射光の波長をλ、照射光を当てる方向とターゲットの移動方向とのなす角度をθとすると、次の式が成立する。ここで、レーザーの照射光の周波数をf0とすると、反射光の持つ周波数はf0+fDとなる。レーザドップラ振動計で使用されるレーザー光の波長λはきわめて安定しているため、ドップラ周波数fDとターゲットの移動速度Vは比例関係にある。また、レーザドップラ振動計ではレーザーを照射する方向とターゲットの移動方向とのなす角度θは通常0度と設定するため(入射光に対する反射光の平行成分のみを検出:面外振動)、ドップラ周波数fDを測定することでターゲットの持つ照射方向の移動速度を求めることができる。ただし、レーザー光そのものの周波数は極めて高く、直接測定することが困難なため、通常ドップラ周波数fDの検出は、照射光(f0)と反射光(f0+fD)とを干渉させて検出することになる。
【0034】
レーザー変位センサーとは、三角測量を応用した方式で、発光素子と光位置検出素子(PSD)の組み合わせで構成される。発光素子には、半導体レーザーが用いられる。半導体レーザーの光は投光レンズを通し集光され、測定対象物に照射される。そして、対象物から拡散反射された光線の一部は受光レンズを通して光位置検出素子上にスポットを結ぶ。その対象物が移動するごとにスポットも移動するので、そのスポットの位置を検出することで対象物までの変位量を検出することができる。
【0035】
渦電流式変位センサーは、高周波磁界を利用したものであり、センサヘッド内部のコイルに高周波電流を流して、高周波磁界を発生させる。この磁界内に測定対象物(金属)があると、電磁誘導作用によって、対象物表面に磁束の通過と垂直方向の渦電流が流れて、センサコイルのインピーダンスが変化する。渦電流式変位センサは、この現象による発振状態の変化により、距離を測定する。
【0036】
接触式変位センサーは、一般的には差動トランスを用いている。差動トランスは3つのコイルと可動鉄心で構成され、1次コイルを交流(一定周波数電圧)で励磁すると被測定物体に連動して動く可動鉄心により2次コイルに誘起電圧が発生する。これを差動結合し、電圧差として取り出し、変位出力としている。可動鉄心が左右対称の位置すなわち中央に位置している時は、左右に誘起される交流電圧は等しくなり、電圧差が0となり出力は0となる。可動鉄心の位置が中央からずれると、左右コイルの誘起電圧に差が生じ、その差に比例した交流電圧が現れる。この交流電圧を1次コイルに流した交流電圧とくらべると可動鉄心が右にある場合と左にある場合とでは波形(位相)が逆になる。この現象を利用して可動鉄心の左右の変位の大きさを正負の直流電圧の大きさに変換し、可動鉄心の変位を測定する。
【0037】
次に前記した検査装置を用いた複列軸受の欠陥検査方法を説明する。この検査方法としては、外輪3の軸方向一端部3a側の転走面1における振動を測定する第1測定工程と、外輪3の軸方向他端部3b側の転走面2における振動を測定する第2測定工程とを備える。
【0038】
第1測定工程は、まず、図1に示すように、軸受10の外輪3を、その一端部3aが上側となるように、その他端部3bを固定手段11の嵌合部21に嵌合して固定する。すなわち、この軸受10の軸心が鉛直軸に一致する。この状態で、電動シリンダ24のロッド26を延ばして、凸部28を内輪6の孔部6aの開口部に嵌合させるとともに、鍔部27を内輪6の端面6bに当接させる。この際、ロッド26の上下方向の伸縮量を調節することによって、内輪6への下方への加圧力を所定一定値とする。
【0039】
また、加速度ピックアップ35を、外輪3の軸方向一端部の外径面に接触するように配置する。そして、駆動用モータ30を駆動することによって、電動シリンダ24のロッド26を回転して内輪6を回転する。この回転中に、振動測定手段15にて、外輪3の軸方向一端部3a側の転走面1における振動を測定する。また、この振動測定中においては、トルク検出手段16にて回転トルクを検出する。
【0040】
第2測定工程では、前記第1測定工程での軸受10の固定状態を解除し、この軸受10を反転させる。すなわち、軸受10の外輪3を、その他端部3bが上側となるように、その一端部3aを固定手段11の嵌合部21に嵌合して固定する。この軸受10の軸心が鉛直軸に一致する。この状態で、電動シリンダ24のロッド26を延ばして、凸部28を内輪7の孔部7aの開口部に嵌合させるとともに、鍔部27を内輪7の端面7bに当接させる。この際、ロッド26の上下方向の伸縮量を調節することによって、内輪7への下方への加圧力を所定一定値とする。
【0041】
また、加速度ピックアップ35を、外輪3の軸方向一端部の外径面に接触するように配置する。そして、駆動用モータ30を駆動することによって、電動シリンダ24のロッド26を回転して内輪7を回転する。この回転中に、振動測定手段15にて、外輪3の軸方向他端部3b側の転走面2における振動を測定する。また、この振動測定中においては、トルク検出手段16にて回転トルクを検出する。
【0042】
ところで、内輪6(7)への下方への加圧力の所定一定値としては、がたつくことなく内輪6(7)が回転できればよいので、種々変更できる。
【0043】
このように、外輪3の軸方向両端部3a,3b側の転走面1,2における振動を測定することができ、測定精度の向上を図ることができ、この振動値に基づいて、この軸受10が良品か否かの判断が安定する。しかも、欠陥箇所の特定も安定する。
【0044】
特に、固定側が下側となって、振動測定側が上側となるようにすれば、自重等によるワーク(軸受)の測定条件を、反転させても同じになる。このため、振動測定が安定して高精度に製品の欠陥を検出することができる。
【0045】
トルク測定を行うようにすれば、トルク異常を検出することができ、製品の欠陥の検出の信頼性が向上する。測定中の加圧力を所定一定値に維持するようにすれば、測定が安定する。
【0046】
加速度センサー、速度センサー、レーザー変位センサー、渦電流式変位センサー、接触式変位センサー等の種々のセンサーを用いて振動測定を測定することができる。このため、この検出方法に用いる振動測定装置(機構)の構成の簡略化を図ることができて、低コスト化を図ることができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、前記実施形態では、加圧手段として、電動シリンダを用いたが、エアシリンダであってもよい。しかしながら、電動シリンダでは、エアシリンダと同様に使え、ポンプが不要で電源に接続するだけの簡単な配線で使えるほか、オイルミストの飛散がない、ランニングコストが安いなどの利点がある。また、このようなシリンダに代えて、コイルスプリング等を備えたばね機構を用いたものであってもよい。このように、本発明の検査装置では、シリンダ機構やばね機構等を用いて内輪への加圧付与を行うことができ、加圧付与が安定する。
【0048】
検査対象としては、前記実施形態では、鉄道車両用軸受の複列テーパころ軸受であったが、複列玉軸受、複列ころ軸受等の他の複列軸受であってもよい。また、軸受の用途としては、鉄道車両用に限るものではなく、種々の装置や機構のものであってもよい。このように、複列玉軸受、複列ころ軸受、複列テーパ軸受等の種々の複列軸受の欠陥を検出することができ、汎用性に優れる。なお、軸受として前記実施形態では、内輪が一対備えるものであったが、内輪が1つにて構成されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 外側転走面
2 外側転走面
3 外輪
3a 軸方向一端部
3b 軸方向他端部
4,5 内側転走面
6,7 内輪
8 転動体
10 軸受
11 固定手段
12 加圧手段
13 回転駆動手段
15 振動測定手段
16 トルク検出手段
24 電動シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複列の外側転走面を有する外輪と、この外輪の外側転走面に対向する内側転走面を有する内輪と、外側転走面と内側転走面との間に介在される転動体とを備えた複列軸受の欠陥を検査する検査方法であって、
外輪を固定して、内輪をアキシャル方向に加圧した状態で、この内輪を回転させて、この回転中に外輪の軸方向一端部側の転走面における振動を測定する第1測定工程と、
外輪を固定して、内輪をアキシャル方向に加圧した状態で、この内輪を回転させて、この回転中に外輪の軸方向他端部側の転走面における振動を測定する第2測定工程とを備えたことを特徴とする検査方法。
【請求項2】
第1測定工程では外輪の軸方向一端部が上側となるように複列軸受の回転軸心を鉛直方向軸心として振動の測定を行い、第2測定工程では複列軸受を反転させて、外輪の軸方向他端部が上側となるように複列軸受の回転軸心を鉛直方向軸心として振動の測定を行うことを特徴とする請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
第1測定工程及び第2測定工程において、振動測定に加えてその振動測定時にトルク測定を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の検査方法。
【請求項4】
内輪へのアキシャル方向の加圧力を測定中において所定一定値に維持することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項5】
振動測定を加速度センサーにより行うことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項6】
振動測定を速度センサーにより行うことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項7】
振動測定をレーザー変位センサーにより行うことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項8】
振動測定を渦電流式変位センサーにより行うことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項9】
振動測定を接触式変位センサーにより行うことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項10】
内輪への加圧付与にシリンダ機構を用いることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項11】
内輪への加圧付与にばね機構を用いることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項12】
検査対象である複列軸受が複列玉軸受であることを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項13】
検査対象である複列軸受が複列ころ軸受であることを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項14】
検査対象である複列軸受が複列テーパ軸受であることを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項15】
検査対象である複列軸受が鉄道車両用軸受であることを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項16】
複列の外側転走面を有する外輪と、この外輪の外側転走面に対向する内側転走面を有する内輪と、外側転走面と内側転走面との間に介在される転動体とを備えた複列軸受の欠陥を検査する検査装置であって、
前記外輪の軸方向端部側を着脱可能に固定する固定手段と、前記内輪に対してアキシャル方向の加圧力を付与する加圧手段と、この加圧手段にて加圧した状態で前記内輪をその軸心廻りに回転させる回転駆動手段と、内輪の回転中に、前記固定手段にて固定されていない外輪の軸方向端部側の転走面における振動を測定する振動測定手段とを備えたことを特徴とする検査装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−175511(P2010−175511A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21638(P2009−21638)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】