説明

検査装置、及び検査方法

【課題】レビュー機能を簡単に実現することができる検査装置、及び検査方法を提供する。
【解決手段】本発明の一態様にかかる検査装置は、EUVマスクに用いられる検査対象を検査する検査装置であって、凸面鏡15bと凹面鏡15aの2枚のミラーを有するシュバルツシルト拡大光学系15と、検査対象の拡大投影像を撮像するTDIカメラ19と、を備え、シュバルツシルト拡大光学系15による検査対象の拡大像が、単一の凹面鏡18によって、TDIカメラ19上に拡大投影されているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程におけるリソグラフィ工程としてEUVリソグラフィ(Extremely Ultraviolet Lithography)で利用されるEUVマスクに用いられる検査対象を検査する検査装置、及び検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体の微細化を担うリソグラフィ技術に関しては、現在、露光波長193nmのArFエキシマレーザを露光光源としたArFリソグラフィが量産適用されている。また、露光装置の対物レンズとウェハとの間を水で満たして、解像度を高める液浸技術(ArF液浸リソグラフィと呼ばれる。)も量産に利用され始めている。さらに一層の微細化を実現するために、露光波長13.5nmのEUVリソグラフィの実用化に向けて様々な技術開発が行われている。
【0003】
EUVマスクの構造に関して、図7を用いて説明する。図7は、EUVマスクのブランク(ブランクスともいう)の構成を示す断面図である。図7に示したように、低熱膨張性ガラスから成る基板51の上に、EUV光を反射させるための多層膜52が付けられている。多層膜52は、通常、モリブデンとシリコンを交互に数十層積み重ねた構造になっている。これにより、波長13.5nmのEUV光を垂直で約65%も反射させることができる。この多層膜52の上にEUV光を吸収する吸収体54が付けられ、ブランクができる。ただし吸収体54と多層膜52の間には保護膜53(バッファレイヤー、及びキャッピングレイヤーと呼ばれる膜)が付けられる。実際に露光に使うためにレジストでパターン形成させることで、パターン付きEUVマスクが完成する。本明細書では、基板51、ブランク、及びパターン付きEUVマスクの全ての検査装置を対象としたものであるため、これらを特に区別しない場合は、単にEUVマスクと呼ぶものとする。
【0004】
EUVマスクにおける特に基板やブランクにおいて許容できない欠陥の最小の大きさと深さは、従来のArFマスクの場合に比べると極めて小さくなっている。このことから、EUVマスクにおける欠陥の検出が難しくなっている。そこで、検査光源にEUV光、すなわち波長13.5nmの露光光と同じ波長の照明光によって検査することで、波長の1/10程度の微小な凹凸欠陥も検出できるとされている。露光光と同じ波長で検査することをアクティニック(Actinic)検査と呼ばれており、特にEUVマスクでは、アクティニック検査が重要になっている。
【0005】
なお、EUVマスクのブランク(以下、単にブランクと呼ぶ。)を対象としたアクティニック検査装置(Actinic Mask Blank Inspection Systemであり、以下、ABI装置と略す。)に関しては、例えば、下記非特許文献1において示されているように、Selete(株式会社 半導体先端テクノロジーズ)で開発が進められてきた。
【0006】
ここで、SeleteのABI装置900の構成について、図8を用いて簡単に説明する。図8は、ABI装置の構成を示す図である。EUV光源1は、波長13.5nmのEUV光を発生させる。EUV光源1から取り出されたEUV光EUV1を、平面鏡2で折り返す。平面鏡2で折り返されたEUV光EUV2を、ステージ3上のブランク4の検査領域に集光させる。このEUV光EUV2の照射によって、検査領域に存在する欠陥から発生する散乱光を、CCD9が検出する。
【0007】
照明法としては、弱い散乱光を感度良く検出するために暗視野照明が用いられる。欠陥から発生する散乱光S1a、S2aは、拡大率26倍のシュバルツシルト拡大光学系5で拡大される。なお、シュバルツシルト(Schwarzschild)光学系とは、一般に凹面鏡と凸面鏡の2つの球面鏡で構成される光学系であり、平面像の拡大あるいは縮小に用いられる。図8のABI装置900では、平面像を拡大するために用いられるため、ここではシュバルツシルト拡大光学系5と呼ぶ。ただし、凹面鏡としては、球面収差を抑制するために、完全な球面ではなく、僅かに非球面の形状にする場合もある。このシュバルツシルト拡大光学系5によって、ブランク4における検査領域を26倍に拡大して、CCD9に拡大投影している。なお、CCD9における信号処理として、TDI動作させる場合が多いため、TDIカメラと呼ばれることもある。
【0008】
ABI装置900のシュバルツシルト拡大光学系5では、ブランク4から発生する散乱光S1a、S2aは、先ず凹面鏡5aに当たり、次に凸面鏡5bに当たる。このため、ブランク4に近い側に配置されるのが凸面鏡5bである。ただし、その凸面鏡5bとブランク4との間には、平面鏡2を配置する必要があるため、凸面鏡5bとブランク4との間には、100mm前後のワークディスタンスが必要になっている。
【0009】
その際に、100mm前後のワークディスタンスで26倍前後のシュバルツシルト拡大光学系5を構成しようとすると、投影像が形成される位置(つまりCCD9を配置する位置)までの距離としては、ブランク4から1m程度もとる必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Tsuneo Terasawa, et.al., "EUVL Mask Inspection and Metrology Capability," The 2009 Lithography Workshop, June 30, 2009.
【非特許文献2】A Dual−Mode Actinic EUV Mask Inspection Tool, Proceedings of SPIE Vol. 5751, pp.660−66IX, 2005.
【非特許文献3】EUV Actinic Mask Imaging with the SEMATECH Berkeley Actinic Inspection Tool, RI−P04, 2010 International Symposium on Extreme Ultraviolet Lithography, October 17−20, 2010, Kobe Japan.
【非特許文献4】Actinic Review of EUV Masks, Proceedings of SPIE Vol. 7636, p.76361C, 2010.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上に説明したように、光学系の拡大倍率が26倍と低いため、欠陥を検出したとしても、欠陥座標のみが判る程度である。このため、ABI装置が、欠陥形状が判るレビュー機能を備えていることが望ましい。SeleteのABI装置では、1000×1000画素のCCDを用いており、マスク上の0.5mm角がCCD面に拡大投影されるようになっている。すなわち、CCDの1画素に対応するのは、マスク面で0.5ミクロンのサイズであるため、サブミクロンサイズの欠陥形状を観察することはできない。
【0012】
なお、シュバルツシルト拡大光学系に関して、レビュー機能が利用できるように、もしも数百倍の高倍率を実現しようとするならば、マスク面からCCDまでの距離がさらに長くなる。具体的には図9に示したシュバルツシルト拡大光学系のシミュレーションによる設計例から判るように、もしも200倍の倍率が得られるシュバルツシルト拡大光学系を実現しようとすれば、マスクからCCDまでの距離が10mも必要になる。よって、半導体用の計測装置としては非現実的なサイズになってしまう。
【0013】
そこで、実用的なサイズで500〜1000倍の高倍率が得られるEUV用の拡大光学系に関しては、ゾーンプレートを用いる方法(非特許文献2、非特許文献3)や、非球面鏡を1枚用いた4枚構成の拡大光学系などが提案されている(非特許文献4)。
【0014】
ゾーンプレートを用いる拡大光学系では、素子としてゾーンプレートを用いる単純な構成で実現できる。しかしながら、回折によって拡大させるため、光源には波長幅0.001nm以下という極めて狭いスペクトル幅が要求される。DPP方式やLPP方式の一般的なEUV光源では、スペクトル幅が広すぎる。このため、波長幅0.001nm以下だけを利用すると、パワー的に極めて小さくなってしまう。そこで、一般にSOR(シンクロトロン放射光)が用いられているが、光源自体が極めて巨大になることが問題である。
【0015】
一方、非特許文献4の非球面鏡を用いた4枚構成の拡大光学系に関しては、非球面鏡を用いることから、設計・製作が難しくなるという課題がある。
【0016】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、レビュー機能を簡単に実現することができる検査装置、及び検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の態様に係る検査装置は、EUVマスクに用いられる検査対象を検査する検査装置であって、凸面鏡と凹面鏡の2枚のミラーを有するシュバルツシルト拡大光学系と、前記検査対象の拡大投影像を撮像する光検出器と、を備え、前記シュバルツシルト拡大光学系による前記検査対象の拡大像が、単一の凹面鏡によって、前記光検出器上に拡大投影されているものである。これにより、簡便な構成で、高倍率のレビュー機能を実現することができる。
【0018】
本発明の第2の態様に係る検査装置は、上記の検査装置であって、前記単一の凹面鏡と前記シュバルツシルト拡大光学系の間の光路中に、移動可能に設けられた平面鏡をさらに備えるものである。これにより、簡便な構成で、高倍率と低倍率の切替が可能になる。
【0019】
本発明の第3の態様に係る検査装置は、上記の検査装置であって、前記単一の凹面鏡が球面鏡であることを特徴とするものである。
【0020】
本発明の第4の態様に係る検査装置は、上記の検査装置であって、前記検査対象がパターン付きのEUVマスクであり、EUVマスクのパターン検査において、比較検査を用いることを特徴とするものである。これにより、簡便な構成でパターン検査を行うことができる。
【0021】
本発明の第5の態様に係る検査方法は、EUVマスクに用いられる検査対象を検査する検査方法であって、凸面鏡と凹面鏡の2枚のミラーを有するシュバルツシルト拡大光学系によって、前記検査対象の拡大像を生成するステップと、前記シュバルツシルト拡大光学系による前記検査対象の拡大像を、単一の凹面鏡によって、さらに拡大して、光検出器上に投影するステップと、を備えるものである。これにより、簡便な構成で、高倍率のレビュー機能を実現することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、レビュー機能を簡単に実現することができる検査装置、及び検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施の形態1にかかる検査装置の構成を示す図である。
【図2】検査装置の一部の構成を拡大して示す図である。
【図3】平面鏡の移動方向を説明するための図である。
【図4】シュバルツバルト拡大光学系のシミュレーションを説明するための図である。
【図5】本実施の形態2にかかる検査装置の構成を示す図である。
【図6】パターン付きEUVマスクを検査する検査装置の構成例を示す図である。
【図7】EUVマスクブランクの構造例を示す断面図である。
【図8】シュバルツシルト光学系を用いたABI装置の構成を示す図である。
【図9】高倍率シュバルツシルト光学系の設計例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。
【0025】
以下、本発明の実施の形態に係る検査装置、及び検査方法について図面を参照しながら説明する。ただし、検査対象とするEUVマスクとしては、基板(サブストレートと呼ばれる。)、この基板に上に多層膜やレジストが付けられたブランク、あるいはレジストがパターン形成されたEUVマスクのいずれであってもよい。
【0026】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1にかかる検査装置について、図1を用いて説明する。図1は、ブランクの欠陥を検出することを主目的としたEUVマスク検査装置100の断面構造を示した構成図である。EUVマスク検査装置100は、EUV光源11と、多層膜平面鏡12と、シュバルツシルト拡大光学系15と、平面鏡17、凹面鏡18と、TDIカメラ19と、を備えている。シュバルツシルト拡大光学系15は穴付き凹面鏡15aと凸面鏡15bで構成される。なお、図1では、説明の明確化のため、ブランク14の面と垂直な方向をZ方向として、ブランク14の面と平行な面において、紙面と平行な方向をY方向として示している。Z方向は、シュバルツシルト拡大光学系15の光軸と平行になっている。また、後述するように、ブランク14の面と平行な面のうち、Y方向と垂直な方向と平行な方向をX方向とする。
【0027】
EUV光源11は、例えば、露光波長と同じ13.5nmのEUV光EUV11を発生する。EUV光源11から発生したEUV光EUV11は、絞られながら進んでいる。EUV光EUV11は、多層膜平面鏡12に当たって下方に反射する。多層膜平面鏡12で反射したEUV光EUV12は、ブランク14に入射する。EUV光EUV12は、ステージ13上に載せられているブランク14における微小な検査領域を照明する。この検査領域は約0.5mm角である。この微小領域内に欠陥が存在すると、散乱光が発生する。例えば、ある微小な欠陥から発生する散乱光S11a、S12aは、穴付き凹面鏡15a、及び凸面鏡15bで反射し、それぞれ散乱光S11b、S12bのように進み、TDIカメラ19に到達する。
【0028】
具体的には、ブランク14からの散乱光S11a、S12aは、穴付き凹面鏡15aに入射する。穴付き凹面鏡15aで反射された散乱光は、凸面鏡15bに入射する。凸面鏡15bで反射された散乱光S11b、12bは、穴付き凹面鏡15aの中心に設けられた穴を通過して、TDIカメラ19に入射する。TDIカメラ19は、ブランク4の拡大像を撮像する。これによって、ブランク14の表面に存在する欠陥が検出される。もちろん、TDIカメラ19ではなく、通常のCCDカメラで拡大像を撮像しても良い。
【0029】
照明用の多層膜平面鏡12は、穴付き凹面鏡15aとブランク14の間に配置されている。また、散乱光S11aと散乱光S12aは、穴付き凹面鏡15aの穴を挟んで反対側に入射する散乱光として、示されている。具体的には、穴付き凹面鏡15aに設けられた穴の右側において、穴付き凹面鏡15aに入射する散乱光を散乱光S12aとし、穴付き凹面鏡15aに設けられた穴の左側において、穴付き凹面鏡15aに入射する散乱光を散乱光S12bとしている。
【0030】
本実施例のシュバルツシルト拡大光学系15は倍率26倍になっている。このため、0.5mm角の検査領域は、TDIカメラ19上において、そのセンサー面と同じ、約13mm角に拡大投影される。ただし、TDIカメラ19のセンサー面は、ここでは1000×1000画素のものが用いられている。従って、ブランク14上で0.5ミクロンがTDIカメラ19の1画素に相当する。すなわち、0.5ミクロン以下の大きさの欠陥に関しては、欠陥座標しか判らず、欠陥の形状を把握することはできない。
【0031】
そこで本実施例のEUVマスク検査装置100では、欠陥を観察する際に、平面鏡17を光路中に移動させる。これにより、平面鏡17が、シュバルツシルト拡大光学系15とTDIカメラ19との間に配置される。具体的には、平面鏡17を図1に示す矢印A1のY方向に平行移動する。これにより、平面鏡17が散乱光S11b、S12bの光路内に進む(図1中の点線矩形参照)。平面鏡17は、これらの散乱光S11b、S12bを下方に反射させる。平面鏡17で反射した散乱光はS11c、S12cのように進んで凹面鏡18に入射する。凹面鏡18で反射した散乱光は、S11d、S12dのように進む。そして、凹面鏡18で反射した散乱光S11d、S12dは、上方に進み、TDIカメラ19に当たる。
【0032】
ここで、この凹面鏡18の作用について、図2を用いて説明する。TDIカメラ19の直ぐ下に挿入される平面鏡17によって、散乱光S11b、S12bが反射する。すると、散乱光S11c、S12cの光路が交差して、再び広がる。ここで、散乱光S11c、S12cの光路が交差して、再び広がる位置に凹面鏡18が配置されている。凹面鏡18は、広がって伝播する散乱光S11c、S12cを反射する。凹面鏡18で反射した散乱光S11d、S12dは上方に進んで、TDIカメラ19において再び交差するように当たる。ここで、凹面鏡18から平面鏡17側の交差点までの距離をaとし、凹面鏡18からTDIカメラ19側までの交差点までの距離をbとする。b/aの値に相当する倍率で、最初の交差点(凹面鏡18からaの距離の交差点)における空間像が拡大されて、TDIカメラ19上に結像する。つまり凹面鏡18は拡大率b/aの拡大光学系として利用される。従って、シュバルツシルト拡大光学系15により交差点に投影されたブランク14の拡大像が、凹面鏡18によって、さらに拡大されて、TDIカメラ19上に投影される。
【0033】
なお、本実施例では、a=22mm、b=420mmになっている(ただし図1、図2は判りやすいように描いてあり、縮尺は不正確である。)。その結果、凹面鏡18の拡大率は約19倍になる。したがって、シュバルツシルト拡大光学系15の26倍と合わせて、トータルで約500倍の拡大光学系が構成される。よって、シュバルツシルト拡大光学系15の後に単一の凹面鏡18を加えるだけという簡便な構成で、高倍率でのレビューが可能になる。さらに、高倍率のレビューモードの時は、平面鏡17を散乱光S11b、S12bの光路中に挿入し、低倍率の欠陥検出モードの時は、平面鏡17を散乱光S11b、S12bの光路中から取り除く。これにより、高倍率のレビュー機能と低倍率の欠陥検出モードの切替を簡単に実現することができる。これにより、低コスト化を実現することができる。
【0034】
この拡大光学系を利用するレビュー機能を用いるために挿入される平面鏡17の移動法に付いて説明する。図1、図2では、Y方向に移動させている。あるいは図3に示したように、Y方向とは直交するX方向に(すなわち矢印A2の方向に)移動させて光路内に引き込んでも良い。こうすることで、引き込んだ際に平面鏡17が止まる位置が多少不正確であっても、平面鏡17で反射していく光の光路は全く影響しない特長がある。すなわち、平面鏡17の反射面と平行な方向に移動させることが好ましい。これにより、平面鏡17の移動距離が変化した場合、すなわち挿入位置がずれた場合でも、TDIカメラ19上における散乱光の入射位置のずれを防ぐことができる。
【0035】
なお、図1、図2に示されたように、本発明の拡大光学系では、TDIカメラ19上の投影像は斜めに投影されることになり、像の歪が懸念される。しかしながら、光学シミュレーションを用いて、単純な格子状のパターンP1の拡大投影像をシミュレーションした結果、像の歪の影響を無視でできることが確認できた。これについて、図4を用いて説明する。
【0036】
図4(a)は、シミュレーションモデルを示す図であり、図4(b)は、シミュレーションに用いたEUVマスクのパターンP1を示す図であり、図4(b)は、シミュレーションにより求めた、TDIカメラ19上に拡大投影されたパターン像(P2)を示す図である。ここでは、θ=10°、30°、45°でシミュレーションを行った。
【0037】
図4に示したシミュレーション結果から判るように、投影されるパターン像(P2)の歪は、平面鏡17での折り返される開き角度θが45°と比較的大きな場合でも、ほとんど見た目では判らない程度である。したがって、欠陥像の観察には全く支障がない。なお、図4(a)に示したシミュレーションの計算モデルでは、前述したように500倍の拡大投影像が得られる光学系を想定した。
【0038】
しかし、実際には、開き角度が30度を超えていくと、平面鏡17で反射する際に光の偏光方向による反射率に違いが無視できなくなっていく。つまり、波長13.5nmのEUV用多層膜反射鏡において、斜めに入射させる仕様で製作する場合、S波に対しては通常65%前後の反射率が得られるが、それと直交するP波に対しては、ほとんど反射しなくなる。従って、本発明における光学系の構成では、EUV光を折り返す際に、開き角度ができるだけ小さくする(つまり、垂直入射に近い形態にする)必要がある。
【0039】
本実施形態では、シュバルツシルト拡大光学系15で実現できる一般的な20倍程度の拡大像を、さらに1枚の凹面鏡によって容易に10〜50倍に拡大できる。このため、総合的に200〜1000倍程度の拡大像を、計3枚の曲面鏡(凹面鏡15a、凹面鏡18、凸面鏡15b)によって得ることができる。これにより、簡便な構成で、高倍率のレビュー機能を実現することができる。
【0040】
また、これらに1枚の平面鏡17を追加し、この平面鏡17を移動可能にすることが好ましい。こうすることで、20倍程度の従来のシュバルツシルト拡大光学系と、200〜1000倍の拡大光学系とを簡単に切り替えることができる。従って、ブランクの欠陥検出だけでなく、欠陥のレビュー機能との両方を備えた検査装置を単純な光学系で実現できる。
【0041】
実施の形態2.
実施の形態2にかかる検査装置について、図5を用いて説明する。図5は、EUVマスク検査装置100と同様、ブランクの欠陥検出するEUVマスク検査装置200を示した構成図である。EUVマスク検査装置200では、ほとんどの構成はEUVマスク検査装置100である。よって、実施の形態1と重複する内容については、適宜説明を省略する。
【0042】
本実施の形態では、欠陥からの散乱光を検出するために用いられるTDIカメラ29aの他に、レビュー専用のCCDカメラ29bを備えている。つまり、レビュー時は平面鏡27を矢印A3のように光路内に移動させる(図5中の点線矩形参照)。これにより、シュバルツシルト拡大光学系15からTDIカメラ29aに向かう散乱光を、凹面鏡28の方向に反射させることができる。散乱光S11c、S12cを凹面鏡28に向かわせた結果、凹面鏡28から反射していく散乱光S11d、S12dはCCDカメラ29bに当たるようになる。
【0043】
本実施例の特徴としては、レビュー専用のCCDカメラ29bを備えることで、欠陥検査中でも、レビュー表示させることが容易になる。また、本実施の形態では、平面鏡27を矢印A3の方向にスライドさせている。矢印A3は、平面鏡27の反射面に平行な方向であって、Z方向と垂直な平面から傾いた方向である。この構成によっても、CCDカメラ29bにおける散乱光の入射位置のずれを防ぐことができる。
【0044】
(実施例)
次に、パターン付きEUVマスクのパターン検査を行うためのEUVマスク検査装置300に関して図6を用いて説明する。このEUVマスク検査装置300では、EUV光源31から取り出されたEUV光EUV31は、平面鏡32に当たる。平面鏡32で反射したEUV光EUV32は、斜め下方に進み、パターン付きEUVマスク34の検査領域を照射する。EUV光EUV32がEUVマスク34に当たって反射した光S31a、S32aは、シュバルツシルト拡大光学系35を構成する凹面鏡35aと凸面鏡35bで反射する。そして、シュバルツシルト拡大光学系35からの光S31b、S32bは、上方に進み、凹面鏡38に当たる。シュバルツシルト拡大光学系35から、凹面鏡38に向かう光S31b、S32bはその途中で一度、焦点Fを形成してから、凹面鏡38に当たる。この焦点Fは、倍率約26倍のシュバルツシルト拡大光学系35における拡大像が形成される位置である。本実施形態では、ここにはCCDカメラ等を配置していないため、ここは空間像が形成されるだけである。凹面鏡38で反射した光S31c、S32cはTDIカメラ39のセンサー面で集光する。すなわち、EUVマスク34上のパターンがTDIカメラ39のセンサー面に拡大投影されるようになっている。また、この凹面鏡38によって、焦点Fでの空間拡大像がさらに約19倍に拡大される。これによって、シュバルツシルト拡大光学系35と凹面鏡38との両方によって、EUVマスク34上のパターンが500倍に拡大されて、TDIカメラ39に投影される。
【0045】
本実施例のEUVマスク検査装置300で検査する際に、EUVマスク34は図6でY方向にスキャンするようになっている。その理由としては、凹面鏡38によって光を斜めに反射させることによって歪む画像の歪み方向に合わせているからである。つまりTDIカメラ39におけるTDI動作の方向と、この歪む方向が合うようになる。従って、TDI動作によって取得される合成像においては、その歪みは低減されるようになる。
【0046】
また、EUVマスク検査装置300におけるパターン検査では、比較検査を用いている。比較検査とは、EUVマスク34に形成された様々な形状のパターンの中で、設計的に同じパターンである2つのパターンを比較する手法であり、完全に同じであれば、欠陥なしと判断する手法である。つまり比較検査で利用する画像において、もしも検査用の投影光学系の歪みがあっても、比較する2つのパターンは同じように歪むことから、投影光学系に歪みがあっても全く支障はないからである。
【0047】
本実施例のEUVマスク検査装置300では、500倍の拡大像だけを用いて検査している。これにより、サブミクロンの微細なパターンが鮮明に拡大されるため、パターン検査を行うことができる。なお、本実施の形態では、平面鏡32が凸面鏡35bとパターン付きEUVマスク34の間に設けられていない。このため、照明光であるEUV光EUV32の光軸がZ方向から傾いている。これにより、散乱光だけでなく、正反射光も穴付き凹面鏡35aに入射する。検査領域から進む光S31a、S32aは、EUV光EUV32の正反射光であることから、明視野照明になっている。したがって、鮮明なパターンが観察できることから、パターン内に含まれる欠陥を検出する感度が高いことも、特徴の一つである。
【0048】
なお、図6に示す構成に対して、CCDカメラを追加することで、高倍率のレビューモードと、低倍率の欠陥検出モードを切り替えることができる。具体的には、CCDカメラを焦点Fに位置に移動させる。これにより、低倍率での欠陥検出を行うことができる。一方、CCDカメラを光路中から取り除くと、高倍率でのレビュー観察を行うことができる。このように、実施の形態1、2で示した平面鏡17、18を用いずに、高倍率と低倍率の切替を行うことも可能である。
【0049】
本発明に係るEUVマスク検査装置は、以上に説明したように、欠陥レビュー機能が備わったABI装置を低コストで実現できるため、ABI装置を用いたEUVマスクブランクの欠陥を詳細に観察することに利用できる。また、パターン付きEUVマスクのパターン形状も鮮明に観察できるため、パターン検査装置としても利用できる。もちろん、照明光の波長は、露光波長と厳密に一致する波長ではなくてもよいため、本発明は、Actinic検査以外の検査装置に適用可能である。
【0050】
従来のシュバルツシルト拡大光学系をそのまま用いて、これに単純な球面の凹面鏡を1枚追加するだけで、数百倍の高倍率の拡大光学系が構成できる。このことから、欠陥形状を観察できる高倍率のレビュー機能を低コストで備えることができる。さらにまた、パターン付きEUVマスクを対象とした欠陥検査装置も低コストで実現できる。
【0051】
また、実施の形態1、2を適宜組み合わせても良い。さらに、検査対象は、EUVマスクに用いられるものであればよい。例えば、EUVマスクに用いられるマスクサブストレート、マスクサブストレートに多層膜やレジストが設けられたブランク(マスクブランク)、又はレジストでパターン形成されたパターン付きEUVマスクを検査対象とすることができる。上記の検査装置での検査で良品と判定されたマスクサブスレートやブランクを用いることで、パターン付きEUVマスクを生産性よく製造することができる。さらに、このEUVマスクや検査で良品と判定されたパターン付きEUVマスクを用いて、ウェハ上のレジストを露光する。そして、レジストを現像し、エッチング工程を経ることで、ウェハ上にパターンを形成することができる。このようにすることで、高い生産性で、パターン付きウェハを製造することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 EUV光源
2 多層膜平面鏡
3 ステージ
4 ブランク
5 シュバルツシルト拡大光学系
5a 穴付き凹面鏡
5b 凸面鏡
9 CCD
11 EUV光源
12 多層膜平面鏡
13 ステージ
14 ブランク
15 シュバルツシルト拡大光学系
15a 穴付き凹面鏡
15b 凸面鏡
17 平面鏡
18 凹面鏡
19 TDIカメラ
21 EUV光源
22 多層膜平面鏡
23 ステージ
24 ブランク
25 シュバルツシルト拡大光学系
25a 穴付き凹面鏡
25b 凸面鏡
27 平面鏡
28 凹面鏡
29a TDIカメラ
29b CCDカメラ
31 EUV光源
32 多層膜平面鏡
33 ステージ
34 パターン付きEUVマスク
35 シュバルツシルト拡大光学系
35a 穴付き凹面鏡
35b 凸面鏡
38 凹面鏡
39 TDIカメラ
51 基板
52 多層膜
53 保護膜
54 吸収体
100 検査装置
200 検査装置
300 検査装置
900 検査装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
EUVマスクに用いられる検査対象を検査する検査装置であって、
凸面鏡と凹面鏡の2枚のミラーを有するシュバルツシルト拡大光学系と、
前記検査対象の拡大投影像を撮像する光検出器と、を備え、
前記シュバルツシルト拡大光学系による前記検査対象の拡大像が、単一の凹面鏡によって、前記光検出器上に拡大投影されている検査装置。
【請求項2】
前記単一の凹面鏡と前記シュバルツシルト拡大光学系の間の光路中に、移動可能に設けられた平面鏡をさらに備える請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記単一の凹面鏡が球面鏡であることを特徴とする請求項1、又は2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記検査対象がパターン付きのEUVマスクであり、
EUVマスクのパターン検査において、比較検査を用いることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の検査装置。
【請求項5】
EUVマスクに用いられる検査対象を検査する検査方法であって、
凸面鏡と凹面鏡の2枚のミラーを有するシュバルツシルト拡大光学系によって、前記検査対象の拡大像を生成するステップと、
前記シュバルツシルト拡大光学系による前記検査対象の拡大像を、単一の凹面鏡によって、さらに拡大して、光検出器上に投影するステップと、を備える検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図4】
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【図9】
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