説明

検査装置、及び画像形成装置

【課題】1つの温度センサを用いて偏倚時間を特定することで、定着ユニットの無端ベルトの耐久性を検査することができる検査装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着ベルト73を張架する定着ローラ72の周面において、定着ベルト73が位置する箇所は急激に温度が上昇し、位置しない箇所は緩慢に温度が上昇する。定着ベルト73が外れた箇所の温度は、一時的に保たれ、徐々に低下した後に緩慢に上昇する。制御部12は、温度センサ76が検出した温度の温度変化に基づいて偏倚時間を特定する(S17)。制御部12は、偏倚時間が第1閾値未満の場合及び第2閾値以上の場合に、定着ベルト73が所定の耐久性を満たさない旨を表示する(S19,S22)。制御部12は、偏倚時間が第1閾値以上で且つ第2閾値未満の場合に、所定の耐久性を満たす旨を表示する(S21)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、定着ユニットが有する無端ベルトの耐久性を検査する検査装置、及び無端ベルトの耐久性を検査する検査機能を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成処理を行う画像形成装置には、トナー像が転写された用紙を搬送しつつ加熱及び加圧する定着ユニットに、ベルトユニットを用いたものがある。ベルトユニットを用いた定着ユニットは、加熱ローラ、支持加圧ローラ、無端ベルト、外部加圧ローラ、及び当接部材を備えている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
加熱ローラ及び支持加圧ローラは、軸方向を互いに平行にして配置され、無端ベルトを張架する。外部加圧ローラは、無端ベルトを挟んで支持加圧ローラに圧接する。当接部材は、支持加圧ローラの軸方向における一端部に備えられている。無端ベルトは、加熱ローラ、支持加圧ローラ、又は外部加圧ローラの何れかの回転に伴って、循環経路に沿って移動する。
【0004】
加熱ローラ及び支持加圧ローラの軸方向について、無端ベルトの厚さ及び長さや加熱ローラ及び支持加圧ローラの外径等の寸法に誤差を生じ易く、無端ベルトの張力を均一にすることが難しい。無端ベルトは、軸方向における張力の不均一を生じると、循環経路に沿って移動する間に蛇行し、用紙を安定して加熱及び加圧することができない。
【0005】
そこで、従来の定着ユニットでは、循環経路に沿って移動する無端ベルトが軸方向における一端側にのみ偏倚し、無端ベルトの一方の側面が当接部材に当接するように、主に加熱ローラと支持加圧ローラとの位置関係を調整している。無端ベルトは、循環経路に沿って移動する間に、常に一方の側面が当接部材に当接する方向に偏倚し、蛇行を生じない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−84647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、循環経路を移動中の無端ベルトが軸方向の一端側に偏倚する速度は、各部品の寸法や取り付け位置の誤差及び経時変化によって変動する。無端ベルトの偏倚速度が速くなると、無端ベルトの一方の側面が当接部材に当接する際の衝撃が大きくなり、無端ベルトの耐久性の低下や破損を生じる。
【0008】
この発明の目的は、無端ベルトが接触する定着ローラ等の周面の温度変化に基づいて、無端ベルトの耐久性を判断する際の指標となる無端ベルトの偏倚状態を特定することができる検査装置、及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の検査装置は、定着ローラ及び加熱ローラに張架された無端ベルトであって定着ローラと加圧ローラとの間を通過する所定の循環経路に沿って移動する無端ベルトの耐久性を検査する。検査装置は、無端ベルトが循環経路に沿って移動する間の定着ローラ又は加圧ローラの周面における軸方向の第1の端部側又は第2の端部側の何れか一方の温度変化に基づいて、無端ベルトの第1の端部側から第2の端部側への偏倚状態を、耐久性の指標として特定する制御部を備える。
【0010】
定着ローラ又は加圧ローラの周面における軸方向の第1の端部側及び第2の端部側は、加熱ローラによって加熱された無端ベルトが位置する時と位置しない時とで温度変化が異なる。この構成では、制御部は、定着ローラ又は加圧ローラの周面における軸方向の第1の端部側又は第2の端部側の何れか一方の温度変化に基づいて、無端ベルトの第1の端部側から第2の端部側への偏倚状態を、耐久性の指標として特定する。
【0011】
この構成において、無端ベルトが循環経路に沿って移動を開始した後の定着ローラ又は加圧ローラの周面における第1の端部側又は第2の端部側の何れか一方の温度変化を記憶する記憶部をさらに備え、制御部は、記憶部が記憶する温度変化に基づいて偏倚状態を特定することが好ましい。制御部は、記憶部を参照することで、定着ローラ又は加圧ローラの周面における第1の端部側又は第2の端部側の何れか一方の温度変化であって、無端ベルトが循環経路に沿って移動を開始してからの温度変化に基づいて、より正確な偏倚状態を特定することができる。
【0012】
また、定着ローラ又は加圧ローラの周面における第1の端部側又は第2の端部側の何れか一方の温度を検出する検出部をさらに備えることが好ましい。制御部は、定着ローラ又は加圧ローラがトナーの定着に適した温度に加熱されているかを調べる検出部を用いて、偏倚状態を特定することができる。
【0013】
この発明の画像形成装置は、定着ユニットとともに上述の制御部を備える。定着ユニットは、無端ベルト及び当接部材を含む。無端ベルトは、定着ローラと加圧ローラとの間を通過する所定の循環経路に沿って移動する間に定着ローラ及び加熱ローラの軸方向における第1の端部側から第2の端部側に向かって偏倚するように、定着ローラ及び加熱ローラによって張架されている。当接部材は、定着ローラ及び加熱ローラの第2の端部側で無端ベルトの一方の側面に当接する。
【0014】
この構成では、無端ベルトの耐久性の検査を画像形成装置が行う。例えば、画像形成装置の組み立て時、無端ベルトの交換時等に、無端ベルトを第1の端部側に配置した状態で検査を開始する。
【0015】
この構成において、第1の端部側に無端ベルトを移動させる移動機構をさらに備え、制御部は検査モードの開始時に移動機構を動作させることが好ましい。制御部は、検査モードの開始を指示するだけで、無端ベルトの第1の端部側から第2の端部側への偏倚状態を、自動で特定することができる。
【0016】
また、定着ローラ及び加熱ローラの軸方向について無端ベルトに作用する軸方向に直交する方向の張力を変化させる調整機構をさらに備え、制御部は特定した偏倚状態に応じて調整機構を動作させることが好ましい。無端ベルトは、偏倚速度が速いと、当接部材との間に生じる衝撃力が大きくなるため破損し易くなる。制御部は、偏倚速度が所定の範囲内となるように無端ベルトの偏倚を調整機構によって調整することで、無端ベルトを第2の端部側へ確実に偏倚させるとともに、無端ベルトの耐久性を所定以上に向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明の検査装置及び画像形成装置は、無端ベルトが接触する定着ローラ又は加圧ローラの周面の温度変化に基づいて、無端ベルトの耐久性を判断する際の指標となる無端ベルトの偏倚状態を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施形態に係る画像形成装置の概略図である。
【図2】(A)は定着ユニットの概略の正面図、(B)及び(C)は平面図である。
【図3】画像形成装置の制御部の機能構成及び検査装置の機能構成を示すブロック図である。
【図4】定着ベルトの耐久性の検査時における検査装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】定着ベルトの耐久性の検査時における画像形成装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】温度センサを定着ローラの外周面のR側に取り付けた場合における、温度センサの計測結果を示すグラフの一例である。
【図7】温度センサを定着ローラの外周面のF側に取り付けた場合における、温度センサの計測結果を示すグラフの一例である。
【図8】他の画像形成装置の一部の機能構成を示すブロック図である。
【図9】定着ベルトの耐久性の検査時における画像形成装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】(A)は移動機構の他の例を示す平面図、(B)及び(C)は正面図である。
【図11】(A)及び(B)は移動機構の他の例を示す背面図である。
【図12】他の画像形成装置の一部の機能構成を示すブロック図である。
【図13】(A)及び(B)は調整機構の一例を示す斜視図である。
【図14】定着ベルトの耐久性の検査時における画像形成装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すように、画像形成装置100Aは、画像読取部90、画像形成部110、給紙部80及び制御部200を備え、原稿から読み取った画像データを用いて、記録媒体である用紙に電子写真方式による多色又は単色の画像形成処理を行う。なお、画像形成装置100Aは、外部装置から入力される画像データに基づく画像形成処理をも行うものであってもよい。
【0020】
画像読取部90は、上面に原稿台92,93を備えている。画像読取部90の上面には、自動原稿搬送装置120が背面側端部を支点に開閉自在に装着されている。画像読取部90は、自動原稿搬送装置120の搬送によって原稿台93上を通過する原稿、又はオペレータによる自動原稿搬送装置120の開閉操作を伴う手動によって原稿台92上に載置された原稿から画像データを読み取る。
【0021】
画像形成部110は、露光ユニット1、画像形成ユニット10A〜10D、中間転写ユニット60、二次転写ユニット30、定着ユニット70を備えている。
【0022】
画像形成ユニット10Aは、現像器2A、感光体ドラム3A、クリーナユニット4A、帯電器5Aを備え、ブラック(Bk)の画像を形成する。帯電器5Aは、感光体ドラム3Aの表面を所定の電位に均一に帯電させる。現像器2Aは、露光ユニット1の露光によって感光体ドラム3A上に形成された静電潜像を、Bkのトナー像に顕像化する。クリーナユニット4Aは、感光体ドラム3Aの周面に残留したトナーを回収する。画像形成ユニット10B〜10Dは、画像形成ユニット10Aと同様に構成されており、それぞれシアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)のトナー像を感光体ドラム3B〜3Dの表面に形成する。
【0023】
露光ユニット1は、半導体レーザ、ポリゴンミラー、fθレンズ及び反射ミラー等の光学系部品を備えたレーザスキャニングユニットである。露光ユニット1は、Bk、C、M、Yのそれぞれの画像データで変調されたレーザ光のそれぞれで画像形成ユニット10A〜10Dの感光体ドラム3A〜3Dの表面を軸方向に沿って露光走査し、静電潜像を形成する。
【0024】
中間転写ユニット60は、中間転写ベルト61、駆動ローラ62、従動ローラ63、一次転写ローラ64A〜64D、及びクリーニングユニット65を有している。中間転写ベルト61は、駆動ローラ62、及び従動ローラ63に張架された無端ベルトである。中間転写ベルト61は、画像形成ユニット10D,10C,10B,10Aをこの順に通過する循環経路に沿って移動する。一次転写ローラ64A〜64Dのそれぞれは、中間転写ベルト61を挟んで感光体ドラム3A〜3Dに対向して配置されており、感光体ドラム3A〜3Dの周面に形成されたトナー像を中間転写ベルト61の表面に一次転写する。
【0025】
カラー画像形成処理時には、中間転写ベルト61が循環経路に沿って移動する間に、画像形成ユニット10D,10C,10B,10AのそれぞれでY,M,C,Bkのトナー像が中間転写ベルト61の表面に順次重ね合わせて転写される。モノクロ画像形成処理時には、中間転写ベルト61が循環経路に沿って移動する間に、画像形成ユニット10AのみでBkのトナー像が中間転写ベルト61の表面に転写される。
【0026】
二次転写ユニット30は、二次転写ローラ31及び二次転写ベルト32を備えている。二次転写ベルト32は、複数のローラに張架された無端ベルトであり、循環経路に沿って移動する。二次転写ローラ31は、駆動ローラ62との間に二次転写ベルト32及び中間転写ベルト61を挟んで駆動ローラ62に対向する位置に配置されている。二次転写ユニット30は、中間転写ベルト61の表面のトナー像を、中間転写ベルト61と二次転写ベルト32との間に搬送された用紙へ二次転写する。二次転写後の中間転写ベルト61の表面に残留したトナーは、クリーニングユニット65によって回収される。
【0027】
定着ユニット70Aは、中間転写ベルト61と二次転写ベルト32との間を通過してトナー像が転写された用紙を加熱及び加圧する。用紙に転写されたトナー像が、用紙の表面に堅牢に定着する。定着ユニット70Aを通過した用紙は、画像形成部110の上方に配置された排紙トレイ91に排出される。
【0028】
給紙部80は、給紙カセット81及び手差しトレイ82を備えている。給紙カセット81は、印刷処理に使用する複数枚の用紙を収納しており、露光ユニット1の下側に設けられている。手差しトレイ82は、画像形成装置100Aの側面に装備されている。用紙搬送路40は、給紙部80から中間転写ベルト61と二次転写ユニット30との間及び定着ユニット70Aを経由して排紙トレイ91に至る間に形成されている。
【0029】
図2に示すように、定着ユニット70Aは、加熱ローラ71、定着ローラ72、定着ベルト(本発明の無端ベルトに相当する。)73、加圧ローラ74、及び当接部材75を備える。図2(A)では、当接部材75の記載を省略している。以下、正面側をF側とし、背面側をR側と称する。
【0030】
加熱ローラ71は、軸710の軸廻りに軸支されており、内蔵するヒータ711によって加熱ローラ71の軸方向の略全域を加熱する。加熱ローラ71には、駆動源(不図示)から回転が供給される。
【0031】
定着ローラ72は、軸720の軸廻りに軸支されている。定着ローラ72のF側の端部(本発明の第2の端部に相当する。)には、当接部材75が配置されている。定着ローラ72の外周面のR側(本発明の第1の端部側に相当する。)には、検査装置10の温度センサ(本発明の検出部に相当する。)16が取り付けられている。温度センサ16は、検出した温度を制御部12に出力する。
【0032】
定着ベルト73は、加熱ローラ71と定着ローラ72とに張架された無端ベルトである。定着ベルト73は、加熱ローラ71によってトナーが溶融可能な温度に加熱される。定着ベルト73は、加熱ローラ71から回転力が伝達されると、循環経路に沿うように移動するとともに、R側からF側に向かって偏倚する。
【0033】
加圧ローラ74は、軸740の軸廻りに軸支されている。加圧ローラ74は、定着ベルト73を挟んで定着ローラ72と対向する位置に配置されており、所定の圧力で定着ローラ72を圧接する。なお、温度センサ16は、定着ローラ72の外周面のR側に配置したが、加圧ローラ74の外周面のR側に配置してもよい。
【0034】
検査装置10は、定着ベルト73がR側(図2(B)参照)からF側(図2(C)参照)へ偏倚する偏倚時間(本発明の偏倚状態に相当する。)を特定し、定着ベルト73の耐久性を検査する。偏倚速度は、定着ベルト73がR側からF側まで偏倚する偏倚距離を偏倚時間で除算することで求まる。検査装置10は、偏倚距離が一定値であることから偏倚時間に応じて偏倚速度が決まるため、偏倚時間を定着ベルト73の耐久性を示す指標として特定する。
【0035】
図3に示すように、検査装置10は、操作部11、制御部12、記憶部13、I/F14、表示部15、温度センサ16、及びタイマ17から構成され、画像形成装置100Aに接続される。操作部11は、検査の開始指示を受け付ける。制御部12は、I/F14を介して画像形成装置100Aの制御部200と接続可能であり、各機能部を制御する。記憶部13は、温度情報131及び検査プログラム132を記憶する。温度情報131は、単位時間(例えば、0.1秒、0.2秒等)当たりの温度を時系列で記憶する。検査プログラム132は、定着ベルト73の耐久性の検査時に制御部12によって実行される。表示部15は、例えば液晶パネルであり、検査結果を表示する。タイマ17は、現在時刻を計時する。なお、検査装置10は、偏倚時間や偏倚速度を表示部15に表示してもよく、表示部15を備えずに検査結果を音で報知してもよい。
【0036】
画像形成装置100Aの制御部200は、CPU201、I/F140、タイマ202、記憶部210を備えている。CPU201は、I/F140、タイマ202、記憶部210に接続されている。I/F140は、各機能部に接続されるとともに、検査装置10のI/F14と接続可能になっている。タイマ202は、現在時刻を計時する。記憶部210は、定着ベルト73の耐久性を検査するための検査プログラム211を記憶する。検査プログラム211は、定着ベルト73の耐久性の検査時に制御部200によって実行される。
【0037】
検査は、定着ユニット70Aにおいて、図2(B)に示すように定着ベルト73の一方の側面をR側の端部に配置し、且つ定着ローラ72の外周面のR側に温度センサ16を取り付けた状態で、実施される。
【0038】
図4に示すように、制御部12は、検査の実行指示の入力を待機する(S11)。制御部12は、検査の実行指示を受け付けると、検査の開始を指示する検査開始信号を制御部200へ出力して(S12)、タイマ17による計測を開始する(S13)。
【0039】
図5に示すように、制御部200は、検査開始信号が入力されると(S31)、タイマ202による計測を開始するとともに(S32)、加熱ローラ71に対して駆動源から回転を供給する(S33)。制御部200は、タイマ202による計測を開始してから所定時間(例えば10秒間、20秒間等)が経過すると(S34)、処理を終了する。
【0040】
制御部12は、温度センサ16が検出した温度を取得して(S14)、取得した温度を温度情報131に記憶する(S15)。制御部12は、タイマ17による計測を開始してから所定時間(例えば10秒間、20秒間等)が経過するまで(S16)、S14,15の処理を行う。例えば、制御部12は、0.1秒毎又は0.2秒毎に温度を取得する。制御部12は、所定時間が経過すると、温度情報131を参照して偏倚時間を特定する(S17)。
【0041】
制御部12は、偏倚時間が第1閾値未満の場合には(S18)、定着ベルト73が所定の耐久性を満たさない旨を表示部15へ表示する(S19)。定着ベルト73の偏倚時間が短くなるほど、R側からF側への偏倚速度がより速くなり、定着ベルト73と当接部材75との間に生じる衝撃力が強くなるため、定着ベルト73が破損し易くなるからである。制御部12は、偏倚時間が第1閾値以上で且つ第2閾値未満の場合には(S20)、定着ベルト73が所定の耐久性を満たす旨を表示部15へ表示する(S21)。制御部12は、偏倚時間が第2閾値以上の場合には、定着ベルト73がF側へ偏倚せずに、加熱ローラ71及び定着ローラ72のR側からはみ出て破損する可能性が高いため、定着ベルト73が所定の耐久性を満たさない旨を表示部15へ表示する(S22)。
【0042】
以上のように、検査装置10は、画像形成装置100Aの組み立て時に定着ベルト73の耐久性を検査することができる。なお、検査装置10は、定着ユニット70Aに既設の温度センサであって、トナーが溶融可能な所定温度を超えたか否かの検査に用いる温度センサを用いて、定着ベルト73の耐久性を検査してもよい。この場合、画像形成装置100Aは、検査開始信号が入力されると、所定時間の間、既設の温度センサで検出した温度を検査装置10に出力する。
【0043】
定着ベルト73が所定の耐久性を満たさない場合は、垂直方向(以下、高さ方向と称する。)に、加熱ローラ71及び定着ローラ72の一端部を変位させて、定着ベルト73の偏倚方向及び定着ベルト73の偏倚時間を調整すればよい。
【0044】
図6を参照して、偏倚時間の特定方法について説明する。一例として示す図6のグラフは、横軸を経過時間とし、縦軸を温度情報131に記憶されている温度としたものである。温度変化Aは、定着ベルト73の一方の側面をR側の端部に配置した状態で、定着ベルト73が循環経路を移動して、F側に偏倚した時の計測値である。
【0045】
定着ベルト73は、加熱ローラ71によって直接加熱され、定着ローラ72は、定着ベルトを介して加熱ローラ71によって間接的に加熱される。定着ベルト73を張架する定着ローラ72の周面において、定着ベルト73が位置する箇所は、急激に温度が上昇し、定着ベルト73が位置しない箇所は、緩慢に温度が上昇する。
【0046】
温度変化Aにおいて、定着ベルト73の一方の側面がR側の端部に位置する時(図2(B)参照)には、定着ベルト73の他方の側面がF側の端部に位置する時(図2(C)参照)よりも、温度センサ76によって検出する温度の上昇率が高くなる。定着ベルト73が外れた箇所の温度は、一時的に保たれ、徐々に低下した後に、緩慢に上昇する。温度センサ16が配置された位置から定着ベルト73が外れた時点、すなわち、定着ベルト73がF側に偏倚した時点は、単位時間当たりの温度の上昇率が低下する時点P1と一致する。
【0047】
また、温度センサ16が配置された位置の上から定着ベルト73が外れると、温度センサ16が検出する温度が一時的に低下する。定着ベルト73がF側に偏倚した時点は、単位時間当たりの温度の上昇率が低下する時点P1に代えて、温度が低下した時点P2に一致するとしてもよい。
【0048】
以上のように、定着ベルト73の偏倚時間は、定着ベルト73がR側からF側への偏倚を開始してから、温度センサ16が配置された位置から外れるまでの経過時間に一致するため、温度センサ16が検出した温度変化に基づいて特定することができる。
【0049】
なお、温度センサ16を定着ローラ72の外周面のR側に配置したが、定着ローラ72の外周面のF側、又は加圧ローラ74の外周面のF側に配置してもよい。この場合、図7に示す温度変化Bとなる。定着ベルト73がF側に偏倚した時点は、単位時間当たりの温度の上昇率が所定上昇率以上になる時点P3に一致する。
【0050】
画像形成装置100Bは、通常の画像形成モード(コピーモード、プリントモード等)、偏倚時間を特定して定着ベルト73の耐久性を検査する検査モードの中から選択された動作モードを実行する点で、画像形成装置100Aと相違する。以下、画像形成装置100Aとの相違点についてのみ説明する。
【0051】
図8に示すように、定着ユニット70Bは、定着ユニット70Aと比較して、温度センサ76及び移動機構50をさらに備えている。なお、図8では、定着ユニット70B以外の各種ユニット及び定着ユニット70Bが備える各種部材について記載を省略している。
【0052】
温度センサ76は、定着ローラ72の外周面のR側に配置されており、検出した温度を制御部200へ出力する。制御部200は、温度センサ76によって検出した温度が、トナーが溶融可能な所定温度を大きく超えると、警告情報を出力する。
【0053】
移動機構50は、所定移動時間(例えば10秒、20秒等)の間、加熱ローラ71に供給する回転を逆方向の回転に切り換えて、定着ベルト73の一方の側面をR側の端部へ移動させる。所定移動時間には、複数の定着ベルト73のそれぞれがF側からR側への偏倚時間を計測しておき、計測した時間の平均時間が設定されている。
【0054】
操作部220は、動作モードの実行指示を受け付ける。表示部230は、例えば液晶パネルであり、検査結果を表示する。なお、画像形成装置100Bは、偏倚時間や偏倚速度を表示部15に表示してもよく、表示部15を備えずに検査結果を音で報知してもよい。
【0055】
記憶部210は、温度情報131及び検査プログラム212を記憶する。検査プログラム212は、定着ベルト73の耐久性の検査時に制御部200によって実行される。
【0056】
図9に示すように、制御部200は、検査モードの実行指示の入力を待機する(S41)。制御部200は、検査モードの実行指示を受け付けると、加熱ローラ71に対して駆動源から回転を供給して(S42)、定着ベルト73をR側の端部へ移動機構50によって移動する(S43)。制御部12は、タイマ202による計測を開始して(S13)、温度センサ76が検出した温度を取得し(S44)、S15以降の処理を行う。
【0057】
以上より、画像形成装置100Bは、定着ユニット70Bに既設の温度センサ76を用いて、定着ベルト73の偏倚時間を特定することで、定着ベルト73の耐久性を検査することができる。
【0058】
なお、画像形成装置100Bは、移動機構50を備えずに、定着ベルト73の一方の側面をR側の端部に配置した状態で、検査を開始してもよい(S41→S42→S13の処理へ進む)。
【0059】
また、画像形成装置100Bは、移動機構50A,50Bによって定着ベルト73の一方の側面をR側の端部へ移動させる構成であってもよい。
【0060】
図10に示すように、移動機構50Aは、加圧ローラ74の軸740のF側の端部近傍に配置されたカム501を備える。移動機構50Aは、軸740のR側の端部を固定し、水平方向における定着ローラ72側へ軸740のF側をカム501によって移動自在にする。移動機構50Aは、加熱ローラ71への回転供給時に、図10(B)に示す位置から図10(C)に示す位置にカム501を回転させて、軸740のF側を定着ローラ72に向かって加圧することで、定着ベルト73のF側の張力を大きくする。定着ベルト73は、張力が小さい側、すなわちR側へ移動する。
【0061】
また、図11に示すように、移動機構50Bは、加熱ローラ71の軸740のR側の端部近傍に配置されたカム502を備える。移動機構50Bは、軸710のF側の端部を固定し、高さ方向における上方向へ軸710のR側をカム502によって移動自在にする。移動機構50Bは、加熱ローラ71への回転供給時に、図11(A)に示す位置から図11(B)に示す位置にカム502を回転させて、軸710のR側を上方向に向かって加圧することで、定着ベルト73のR側の張力を小さくする。定着ベルト73は、張力が小さい側、すなわちR側へ移動する。
【0062】
なお、画像形成装置100Bは、検査モードの実行指示を受け付けた時に図9の各処理を行ったが、自装置の組み立て時、定着ユニット70Bの交換時、及び自装置への電源投入時等に、図9のS42以降の処理を行ってもよい。
【0063】
画像形成装置100Cは、通常の画像形成モード、検査モード、偏倚時間を特定して定着ベルト73の耐久性を調整する自動調整モードの中から選択された動作モードを実行する点で、画像形成装置100Bと相違する。以下、画像形成装置100Bとの相違点についてのみ説明する。
【0064】
図12に示すように、定着ユニット70Cは、定着ユニット70Bと比較して、調整機構51をさらに備えている。なお、図12では、定着ユニット70C以外の各種ユニット及び定着ユニット70Cが備える各種部材について記載を省略している。
【0065】
調整機構51は、定着ベルト73の偏倚方向及び定着ベルト73の偏倚時間を調整する。調整機構51は、図13に示すように、加熱ローラ71を支持するフレーム511,512と、加熱ローラ71の軸710のF側の軸受712を保持する軸受保持部材513から構成される。
【0066】
加熱ローラ71の軸方向を長手方向としてフレーム511を配置した状態で、フレーム511のF側の先端には、フレーム512が取り付けられている。フレーム512には、高さ方向を長径とする略楕円状を呈する開口512A、突起512B,512Cが形成されている。開口512Aは、短径が軸710の直径よりも僅かに長く形成される。
【0067】
加熱ローラ71の軸710の両端には、軸受712が取り付けられている。軸710のR側の軸受712は、フレーム511に支持される。軸710のF側の軸受712は、軸受保持部材513によって保持される。軸710のF側の端部は、フレーム512の開口512Aを貫通する。
【0068】
軸受保持部材513は、軸710の直径より直径が僅かに長い円形状を呈し略中心に形成された開口513Aと、開口513Aの周囲に形成された弓なり状の規制口513B,513Cとが形成されている。軸受保持部材513は、支点514を支軸として、フレーム512に取り付けられている。開口513Aは、軸710のF側の軸受712を保持する。規制口513B,513Cは、それぞれフレーム512に形成された突起512B,512Cによって貫通され、突起512B,512Cの移動範囲を規制する。これにより、軸受保持部材513は、高さ方向の移動が規制され、軸710のF側の高さ方向における移動量を調整することができる。
【0069】
定着ベルト73は、F側に向かって偏倚する場合、F側の張力がR側の張力より小さい。定着ベルト73は、F側とR側における張力の差が大きいほど、定着ベルト73の偏倚時間が短くなる。調整機構51は、図13(A)に示すように、高さ方向における下向きに軸710のF側を軸受保持部材513によって移動させることで、F側とR側の張力の差を小さくする。これにより、調整機構51は、定着ベルト73の偏倚時間が長くなるように調整することができる。
【0070】
また、定着ベルト73は、F側に向かって偏倚しない(R側に向かって偏倚する)場合、F側の張力がR側の張力より大きく、加熱ローラ71及び定着ローラ72のR側からはみ出て破損する可能性が高い。調整機構51は、図14(B)に示すように、高さ方向における上向きに軸710のF側を軸受保持部材513によって移動させることで、定着ベルト73のF側の張力をR側の張力より小さくする。これにより、調整機構51は、定着ベルト73をF側に向かって偏倚するように調整することができる。
【0071】
記憶部210は、温度情報131と検査プログラム213とを記憶する。検査プログラム213は、定着ベルト73の耐久性の検査時及び調整時に制御部200によって実行される。
【0072】
図14に示すように、制御部200は、自動調整モードの実行指示の入力を待機する(S51)。制御部200は、自動調整モードの実行指示を受け付けると、S42〜S17の処理を行う。なお、S43の処理において調整機構51を用いて、定着ベルト73をR側へ移動させてもよい。
【0073】
制御部200は、偏倚時間が第1閾値未満の場合には(S18)、調整機構51によって定着ベルト73の偏倚時間が長くなるように調整する(S52)。偏倚時間が短くなるほど、定着ベルト73の偏倚速度が速くなり、定着ベルト73と当接部材75との間に生じる衝撃力が強くなるため、定着ベルト73が破損し易くなるからである。制御部200は、偏倚時間が第1閾値以上で且つ第2閾値未満の場合には(S20)、処理を終了する。制御部200は、偏倚時間が第2閾値以上の場合には、定着ベルト73がF側へ偏倚せずに、加熱ローラ71及び定着ローラ72のR側からはみ出て破損する可能性が高くなるため、調整機構51によって定着ベルト73がF側へ偏倚するように調整する(S53)。
【0074】
以上より、制御部200は、定着ベルト73の偏倚時間を長くすることで、定着ベルト73と当接部材75との間に生じる衝撃力を弱め、定着ベルト73の破損を防ぐことができる。さらに、制御部200は、定着ベルト73がF側へ偏倚するように調整することで、定着ベルト73が加熱ローラ71及び定着ローラ72からはみ出ることを防ぎ、定着ベルト73の破損を防ぐことができる。
【0075】
なお、制御部200は、偏倚時間が第1閾値以上で且つ第2閾値未満の場合には(S20)、定着ベルト73が所定の耐久性を満たす旨を表示部230へ表示してもよい。また、制御部200は、S52,S53の処理の後、S42の処理へ戻り、偏倚時間が第1閾値以上で且つ第2閾値未満になるまで、上述のS42〜S53の処理を繰り返してもよい。
【0076】
なお、画像形成装置100Cは、自動調整モードの実行指示を受け付けた時に図14の各処理を行ったが、自装置の組み立て時、定着ユニット70Bの交換時、及び自装置への電源投入時等に、図14のS42以降の処理を行ってもよい。
【0077】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0078】
10…検査装置
12…制御部
13…記憶部
15…表示部
16,76…温度センサ
71…加熱ローラ
72…定着ローラ
73…定着ベルト
74…加圧ローラ
75…当接部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着ローラ及び加熱ローラに張架された無端ベルトであって前記定着ローラと加圧ローラとの間を通過する所定の循環経路に沿って移動する無端ベルトの耐久性を検査する検査装置であって、
前記無端ベルトが前記循環経路に沿って移動する間の前記定着ローラ又は前記加圧ローラの周面における軸方向の第1の端部側又は第2の端部側の何れか一方の温度変化に基づいて、前記無端ベルトの前記第1の端部側から前記第2の端部側への偏倚状態を、前記耐久性の指標として特定する制御部を備えた検査装置。
【請求項2】
前記無端ベルトが前記循環経路に沿って移動を開始した後の前記定着ローラ又は前記加圧ローラの周面における前記第1の端部側又は前記第2の端部側の何れか一方の温度変化を記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記記憶部が記憶する温度変化に基づいて前記偏倚状態を特定する請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記定着ローラ又は前記加圧ローラの周面における前記第1の端部側又は前記第2の端部側の何れか一方の温度を検出する検出部をさらに備えた請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
定着ローラ及び加熱ローラに張架された無端ベルトであって前記定着ローラと加圧ローラとの間を通過する所定の循環経路に沿って移動する間に前記定着ローラ及び前記加熱ローラの軸方向における第1の端部側から第2の端部側に偏倚する無端ベルト、及び前記定着ローラ及び前記加熱ローラの前記第2の端部側で前記無端ベルトの一方の側面に当接する当接部材を含む定着ユニットと、
前記無端ベルトの耐久性を検査する検査モード時に、前記定着ローラ又は前記加圧ローラの周面における前記第1の端部側又は前記第2の端部側の温度変化に基づいて、前記無端ベルトの前記第1の端部側から前記第2の端部側への偏倚状態を前記耐久性の指標として特定する制御部と、を備えた画像形成装置。
【請求項5】
前記無端ベルトが前記循環経路に沿って移動を開始した後の前記定着ローラ又は前記加圧ローラの周面における前記第1の端部側又は前記第2の端部側の何れか一方の温度変化を記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記記憶部が記憶する温度変化に基づいて前記偏倚状態を特定する請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記定着ローラ又は前記加圧ローラの周面における前記第1の端部側又は前記第2の端部側の何れか一方の温度を検出する検出部をさらに備えた請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記無端ベルトを前記第1の端部に移動させる移動機構をさらに備え、
前記制御部は、前記検査モードの開始時に、前記移動機構を動作させる請求項4〜6の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記定着ローラ及び前記加熱ローラの軸方向について前記無端ベルトに作用する前記軸方向に直交する方向の張力を変化させる調整機構をさらに備え、
前記制御部は、前記特定した偏倚状態に応じて前記調整機構を動作させる請求項4〜7の何れかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−247612(P2012−247612A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119067(P2011−119067)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】