説明

検査装置

【課題】被測定物の微小な欠陥を検出することが出来る検査装置を提供すること。
【解決手段】被測定物(半導体ウェハ10上に設けたレジスト膜12)の静電容量を測定する静電容量センサ15と、前記被測定物の底面と前記静電容量センサとの間の距離を測定する測長センサ20(測定光源21,受光部22)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被測定物の静電容量を測定して検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量を測定して被測定物を検査する装置として、例えば、絶縁体に保持された対向電極を被測定物のフィルムに接触させて、その接触時における静電容量からこのフィルムの膜厚を測定して検査する装置が知られている(特許文献1)。
【特許文献1】実開昭58−86507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記測定装置は、被測定物(フィルム)自身の静電容量を測定して検査し、また対向電極と被測定物との間の距離を静電容量の変化で測定して検査するものである。
【0004】
対向電極と被測定物との間の距離を静電容量によって測定して検査する場合には、被測定物の底面と対向電極との間の距離が変わらないことが前提となる。被測定物の表面と対向電極との間の距離のみが変化し、これを静電容量の変化として捉えることによって、被測定物の厚さの均一性や表面の高さ変化などを検査することができる。被測定物自身に反りやうねりがあり、被測定物の底面と対向電極との間の距離が変化する場合、測定した静電容量値からは被測定物の反りなどよるものかあるいは被測定物の厚さの変化によるものかは分からない。例えば、半導体ウェハ上に塗布したレジスト膜の膜厚の均一性を検査する場合において、半導体ウェハ自身に反りやうねりなどがあると、測定した静電容量の変化からは、半導体ウェハの反りなどによるものか、レジスト膜の膜厚の変化によるものかは分からない。通常、膜厚の変化は半導体ウェハ自身の反りやうねりに比して非常に小さく、膜厚の変化による静電容量の変化も、半導体ウェハ自身の反りやうねりによる静電容量の変化に比して非常に小さく、半導体ウェハ自身の反りやうねりによる静電容量の変化中に埋もれてしまう。
【0005】
すなわち、対向電極と被測定物との間の距離を静電容量によって測定して検査する装置では、被測定物の微小な欠陥を検出することが難しい課題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、被測定物の微小な欠陥を検出することが出来る検査装置及び同検査装置を備えた半導体検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明の請求項1に記載の検査装置は、被測定物の静電容量を測定する静電容量センサと、前記被測定物の底面と前記静電容量センサとの間の距離を測定する測長センサと、を具備してなることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2に記載の検査装置は、前記静電容量センサと前記被検査物の底面との間の距離が一定になるように、前記測長センサの測定結果に基づいて、前記静電容量センサ及び/又は前記被測定物を移動させる移動機構を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3に記載の検査装置は、前記静電容量センサを前記被測定物上で走査させる走査機構を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4に記載の検査装置は、前記移動機構が前記測長センサからの測定結果に基づいて前記静電容量センサを移動させる、圧電素子を備えてなることを特徴とする。
【0011】
本発明の半導体検査装置は、半導体ウェハの表面を検査する装置であって、請求項1乃至4の何れか一項に記載の検査装置を備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被測定物の微小な欠陥を検出することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明の検査装置の一実施形態について図1乃至図5を参照して説明する。
【0014】
本発明の検査装置は静電容量により被測定物を検査する装置であり、図1は本発明の検査装置を半導体検査装置に適用した一実施形態を示す概略側面図である。
【0015】
本実施形態の検査装置は、図1に示すように、被測定物である半導体ウェハ10上の測定対象部位の静電容量を測定する静電容量センサ15と半導体ウェハ10と静電容量センサ15との間の距離を測定する測長センサ20とを装備したセンサヘッド25と、測長センサ20の測定結果に基づいて静電容量センサ15と半導体ウェハ10との間の距離が一定になるようにセンサヘッド25を移動させる移動機構30と、センサヘッド25を半導体ウェハ10上で走査させる走査機構35と、検査装置全体の制御を行う制御部40とを備える。
【0016】
半導体ウェハ10は検査時に回転可能で且つ垂直方向に移動可能な検査ステージ11上に載置される。半導体ウェハ10の表面には被測定物としての例えば透明なレジスト膜12が塗布されており、本検査装置はこのレジスト膜12の膜厚の均一性を静電容量の測定によって検査するものである。検査ステージ11は、駆動装置13により駆動されるもので、この駆動装置13は制御部40により制御され、検査時に検査ステージ11を回転(図1の矢印A参照)させる。また、駆動装置13により検査ステージ11を垂直方向(図1の矢印B参照)に移動させることも出来る。
【0017】
静電容量センサ15は、被測定物のレジスト膜12と対向するように対向電極16(図2参照)を配置しており、この対向電極16と半導体ウェハ10との間に電源17から電圧を加えることによって、対向電極16とこれと対向する半導体ウェハ10の測定箇所10a(図4参照)との間の空間の静電容量、すなわちこの空間内に存在するレジスト膜12の静電容量が測定される。測定された静電容量値は制御部40に送られる。この静電容量値は、対向電極16とこれと対向する半導体ウェハ10の測定箇所10a上にあるレジスト膜12との間の距離に比例するので、測定箇所10aを変えて測定した複数の静電容量値からレジスト膜12の膜厚の均一性(膜厚変動)を検査することが出来る。
【0018】
測長センサ20は、測長センサ20(センサヘッド25)と半導体ウェハ10との間の距離L(図2参照)を測定するもので、例えば図3に示すように、半導体ウェハ10に向けて測定光を照射する測定光源21と、この照射によってレジスト膜12と半導体ウェハ10との界面でありレジスト膜12の底面でもある半導体ウェハ10の表面で反射する反射光を受光する受光部22とを備える。反射光の受光部22での受光位置は、図3の実線22a、二点鎖線22b、二点鎖線22cに示すように、距離Lによって変化するので、この受光位置を求めることによって距離Lを測定することが出来る。二点鎖線22bは距離Lが実線22aで示す場合よりも長くなった場合を示し、二点鎖線22cは距離Lが実線22aで示す場合よりも短くなった場合を示す。受光部22の出力は制御部40に送られる。なお、半導体ウェハ10上のレジスト膜12の箇所に測定光を照射しても、レジスト膜12の底面で反射する反射光を受光すれば、レジスト膜12の底面は半導体ウェハ10の表面と見なせるので、測長センサ20(センサヘッド25)と半導体ウェハ10との間の距離L(図2参照)を測定することが出来る。
【0019】
測長センサ20は静電容量センサ15と共にセンサヘッド25に装備されていることから、測長センサ20の測定値である測長センサ20と半導体ウェハ10との間の距離Lは静電容量センサ15と半導体ウェハ10との間の距離を表すことにもなる。
【0020】
移動機構30は、例えば圧電素子であるピエゾ素子を複数枚積層して構成され、受光部22の出力に基づいた制御部40からの駆動信号を入力してセンサヘッド25を垂直方向(図1、図2の矢印C参照)に移動させ、測長センサ20(静電容量センサ15)と半導体ウェハ10との間の距離Lを一定に維持するものである。移動機構30を構成するピエゾ素子は、応答周波数が例えば3KHzと大きく、半導体ウェハ10の反りやうねりなどによって静電容量センサ15と半導体ウェハ10との間の距離が変化してもこれに直ぐに追従し、センサヘッド25を垂直方向に移動させて静電容量センサ15と半導体ウェハ10との間の距離Lを一定に維持することが出来る。ピエゾ素子自体の変位量(センサヘッド25を垂直方向に移動させる距離)は僅かであるが、ピエゾ素子を複数枚積層することによりこの変位量を拡大することが出来、移動機構30はこれを利用している。なお、ピエゾ素子を複数枚積層する代わりに、ピエゾ素子とこのピエゾ素子の変位を拡大させる拡大機構とを組み合わせて移動機構30を構成するようにしてもよい。
【0021】
走査機構35は、センサヘッド25(静電容量センサ15)を半導体ウェハ10上で走査させるもので、例えばセンサヘッド25を支持する支持部36と、この支持部36を介してセンサヘッド25を半導体ウェハ10の径方向に案内する案内レール37と、制御部40からの駆動信号を入力して支持部36を案内レール37に沿って移動させる駆動部38とを備えてなる。図4に示すように、走査機構35でセンサヘッド25(静電容量センサ15)を半導体ウェハ10の径方向に移動させつつ、検査ステージ11を回転させることによって、センサヘッド25(静電容量センサ15)を半導体ウェハ10の略全面にわたって走査させることができる。具体的には、半導体ウェハ10上のレジスト膜12の全面と、該レジスト膜12が設けられていない半導体ウェハ10の外周部分(ERB(Edge Bead Removal)及び半導体ウェハ10のエッジ部分にセンサヘッド25(静電容量センサ15)を走査させることができる。
【0022】
制御部40は、上述したように、静電容量センサ15が測定した静電容量値を入力、また測長センサ20の受光部22の出力(距離Lの測定値)を入力し、距離Lが一定になるように移動機構30に駆動信号を出力し、また走査機構35の駆動部38と検査ステージ11の駆動装置13にそれぞれ駆動信号を出力するものである。制御部40は、また静電容量15が測定した静電容量値に基づいてレジスト膜12の膜厚の均一性求め、膜厚が予め設定した閾値を越えた場合に膜厚不良箇所を指摘したメッセージを不図示の表示装置に出力して表示させるものである。
【0023】
図5は制御部40の制御内容の一例を示すフローチャートである。
【0024】
検査対象の半導体ウェハ10を検査ステージ11上に載置する。そしてステップS1で半導体ウェハ10の測定箇所10a(図4参照)を制御部40に入力すると、制御部40は走査機構35の駆動部38と検査ステージ11の駆動装置13にそれぞれ駆動信号を出力し、検査ステージ11により半導体ウェハ10を回転させる一方、走査機構35によりセンサヘッド25を半導体ウェハ10の測定箇所10a上に移動させて、センサヘッド25を測定箇所10a上に位置決めする。
【0025】
ステップS2では、静電容量センサ15によって測定箇所10a上のレジスト膜12の静電容量を測定する。静電容量センサ15よって静電容量を測定する際には、測長センサ20によって測長センサ20と半導体ウェハ10との間の距離Lを測定しており、半導体ウェハ10の反りなどによって距離Lが変わったときは、直ちに移動機構30によりセンサヘッド25を移動させて距離Lを一定に維持している。したがって、静電容量センサ15は、半導体ウェハ10との距離が一定に維持され、測定した静電容量値は測定箇所10a上のレジスト膜12の膜厚に対応した値である。この静電容量値は、静電容量センサ15から制御部40に入力され、ステップS3で予め設定した閾値と比較され、閾値から外れた場合にはステップS4に移行し、閾値内の場合にはステップ5に移行する。
【0026】
ステップS4では、レジスト膜12の欠陥箇所を不図示の表示装置に表示させる。表示内容としては、例えば、半導体ウェハ10上の箇所と膜厚が閾値よりも厚いかあるいは薄いかを表示する。欠陥箇所が存在する半導体ウェハ10については、検査ステージ11から取り外し、レジスト膜12を除去する工程に送り、レジスト膜12の除去後、再度レジスト膜12を塗布してステップS1から再度検査するか、あるいは他の箇所についても検査を続行する場合にはステップS5に移行する。
【0027】
ステップS5では測定を続行するか否かが判断され、続行する場合にはステップS1に戻り、別の測定箇所10aにセンサヘッド25を位置決めして再度レジスト膜12の膜厚測定を行う。続行しない場合には測定を終了する。
【0028】
本実施形態の検査装置によれば、静電容量センサ15による静電容量の測定時には、測長センサ20で測長センサ20と半導体ウェハ10との間の距離を測定しており、半導体ウェハ10に反りやうねりがあっても移動機構30によって測長センサ20と半導体ウェハ10との間の距離Lを一定に維持している。このため、測長センサ20と共にセンサヘッド25に配置された静電容量センサ15と半導体ウェハ10との間の距離も一定に維持され、この結果、静電容量センサ15の出力である静電容量値はレジスト膜12の膜厚変動にのみに応じて変化し、半導体ウェハ10の反りなどに影響を受けることがない。したがって、レジスト膜12の膜厚の均一性を精度良く検査することが可能となる。
【0029】
また、上述したように、センサヘッド25に測長センサ20と静電容量センサ15とが一緒に固定配置されているので、測長センサ20の測定結果に基づいて移動機構30によってセンサヘッド25を移動して測長センサ20と半導体ウェハ10との間の距離Lを一定に維持すれば、同時に静電容量センサ15と半導体ウェハ10との間の距離も一定に維持される。
【0030】
また、移動機構30をピエゾ素子によって構成しているので、応答性に優れており、測長センサ20の距離Lの測定結果に基づいて直ちにセンサヘッド25(静電容量センサ15)を移動させることが出来る。
【0031】
本発明の検査装置は上記実施形態に示したものに限定されるものではない。例えば測長センサ20と半導体ウェハ10との間の距離Lを一定に維持するのに移動機構30のみを駆動させてセンサヘッド25を移動させた場合を示したが、これに限定されず、半導体ウェハ10が載置されている検査ステージ11を駆動装置13によって垂直方向に移動させるか、あるいは移動機構30でセンサヘッド25を移動させると共に駆動装置13によって検査ステージ11を垂直方向に移動させて、測長センサ20と半導体ウェハ10との間の距離Lを一定に維持するようにしてもよい。
【0032】
また、測長センサ20の測定結果に基づいて移動機構30により測長センサ20(静電容量センサ15)と半導体ウェハ10との間の距離Lを一定に維持するようにしたが、必ずしも移動機構30により距離Lを一定に維持する必要はなく、例えば測長センサ20の測定結果で静電容量センサ15の静電容量値を補正するようにしてもよい。この場合、移動機構30は必要がなく、装置の簡素化を図ることが可能である。
【0033】
また、測長センサ20として、受光部22での反射光の受光位置に基づいて測長センサ20と半導体ウェハ10との間の距離Lを測定するタイプのものを使用した場合を示したが、これに限定されるものではなく、例えば半導体ウェハ10の適宜箇所に位置測定用マークを設け、このマークを撮影する撮影装置のマーク結像位置(焦点位置)から距離Lを測定するようにしてもよい。
【0034】
また、静電容量センサ15と測長センサ20を別体で構成してセンサヘッド25に取り付けた場合を示しが、静電容量センサ15と測長センサ20を一体に構成してもよい。
【0035】
また、走査機構35としてセンサヘッド25を半導体ウェハ10の径方向(一軸方向)に移動させるように構成した場合を示したが、これに限定されず、例えばセンサヘッド25を一軸方向とこれと交差(直交)する他の軸方向とに移動させるように構成して、センサヘッド25を半導体ウェハ10上で蛇行するように走査させてもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、本発明の検査装置を半導体ウェハ10上に設けたレジスト膜12の膜厚の均一性を検査する半導体検査装置に適用した場合を示したが、これに限定されず、例えば半導体ウェハ10のレジスト膜12の外側の外周部でリンスされている部分である、EBR(Edge Bead Removal)の箇所や、半導体ウェハ10のアペックス(???)やベベル部分を検査する半導体検査装置に適用することも出来る。また、半導体ウェハ10上に形成された回路パターンの検査装置にも適用することも出来る。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の検査装置を半導体検査装置に適用した一実施形態を示す概略側面図である。
【図2】図1の半導体検査装置に装備されたセンサヘッドの部分を拡大した概略側面図である。
【図3】図2のセンサヘッド中の測長センサ部分の拡大説明図である。
【図4】図2のセンサヘッドを半導体ウェハ上で走査させる状態の説明図である。
【図5】図1の半導体検査装置に装備された制御部の制御内容の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0038】
10 半導体ウェハ
11 検査ステージ
12 レジスト膜
13 駆動装置
15 静電容量センサ
16 対向電極
20 測長センサ
21 測定光源
22 受光部
25 センサヘッド
30 移動機構
35 走査機構
36 支持部
37 案内レール
38 駆動部
40 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物の静電容量を測定する静電容量センサと、
前記被測定物の底面と前記静電容量センサとの間の距離を測定する測長センサと、
を具備してなることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置において、
前記静電容量センサと前記被測定物の底面との間の距離が一定になるように、前記測長センサの測定結果に基づいて、前記静電容量センサ及び/又は前記被測定物を移動させる移動機構を備えることを特徴とする検査装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の検査装置において、
前記静電容量センサを前記被測定物上で走査させる走査機構を備えることを特徴とする検査装置。
【請求項4】
請求項2に記載の検査装置において、
前記移動機構は、前記測長センサからの測定結果に基づいて前記静電容量センサを移動させる、圧電素子を備えてなることを特徴とする検査装置。
【請求項5】
半導体ウェハの表面を検査する装置であって、
請求項1乃至4の何れか一項に記載の検査装置を備えてなることを特徴とする半導体検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−63334(P2009−63334A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229616(P2007−229616)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】