説明

検査装置

【課題】異物や液体を飛散させることなく簡単な機構で異物や液体を除去し、マイクロポンプと連通するチップ接続部と検査チップとを十分に密着可能な状態にすることができる検査装置を提供する。
【解決手段】チップ搬送トレイの移動する方向に対して直交するようにチップ搬送トレイに回転軸を取り付けた清掃ローラにより、チップ搬送トレイが移動するときにチップ接続部に接触し回転しながらチップ接続部に付着した異物もしくは液体を除去することを特徴とする検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロマシン技術および超微細加工技術を駆使することにより、従来の試料調製、化学分析、化学合成などを行うための装置、手段(例えばポンプ、バルブ、流路、センサーなど)を微細化して1チップ上に集積化したシステムが開発されている(例えば、特許文献1参照)。これは、μ−TAS(Micro total Analysis System:マイクロ総合分析システム)、バイオリアクタ、ラブ・オン・チップ(Lab−on−chips)、バイオチップとも呼ばれ、医療検査・診断分野、環境測定分野、農産製造分野でその応用が期待されている。現実には遺伝子検査に見られるように、煩雑な工程、熟練した手技、機器類の操作が必要とされる場合には、自動化、高速化および簡便化されたμ−TASは、コスト、必要試料量、所要時間のみならず、時間および場所を選ばない分析を可能とすることによる恩恵は多大と言える。
【0003】
上記のようなμ−TASでは、マイクロポンプによって検査チップの微細流路内における試薬等の送液を行っている。
【0004】
具体的には、特許文献2、3に開示された構成を有するピエゾ素子を用いたポンプなどをチップに複数設けたマイクロポンプユニットと、検査チップとを、例えば互いの流路開口が合致するようにマイクロポンプユニットのチップ面と検査チップのチップ面とを密着させることによって、ポンプ側の流路と検査チップ側の流路とを連通させている。
【0005】
しかしながら、マイクロポンプユニットと検査チップとの接続部において、接続前に接触面が濡れていると、使用時にマイクロポンプ側から検査チップ側へ、この接続部を通過する駆動液などの液体が、これらの接触面の間から漏れ出す可能性がある。
【0006】
また、マイクロポンプユニットと検査チップとの接続部において、接続前に接触面に微細な異物が付着していると、異物によってマイクロポンプユニットと検査チップとの密着が不充分となり、使用時にマイクロポンプ側から検査チップ側へこの接続部を通過する駆動液などの液体が、これらの接触面の間から漏れ出す可能性がある。
【0007】
また、このようにマイクロポンプユニットと検査チップとの接続部において液密性が充分でない場合、外部から流路内へコンタミネーションが浸入する可能性もある。
【0008】
このような課題を解決するため、本発明者らは、検査チップのポンプ接続部および/またはマイクロポンプユニットのチップ接続部を清掃するための清掃機構を設け、検査チップとマイクロポンプユニットとの接続部を清掃する方法を提案している(例えば、特許文献4参照)。特許文献4では、検査チップ出入り口に払拭装置を設け、検査チップを載置したチップ搬送トレイを挿入すると、検査チップの上面が払拭装置と接触することにより検査チップに付着した液体や異物を除去するように構成した清掃機構を開示している。また、昇降装置により払拭シートを降下させてポンプ接続部に付着した液体や異物を除去するように構成した清掃機構も開示している。さらに、異物もしくは液体を送風により除去する送風装置を設ける清掃機構も開示している。
【特許文献1】特開2004−28589号公報
【特許文献2】特開2001−322099号公報
【特許文献3】特開2004−108285号公報
【特許文献4】特開2006−266926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献4に開示されているようなへら状の払拭装置を用いる方法ではスポンジなどを用いても吸水できる量が限られており液体を検査装置内の各部に飛散させるおそれがある。また、昇降装置を設ける方法では、複雑な機構が必要になり検査装置が大型になるという問題がある。送風装置を設ける方法では、検査装置が大型になるとともに異物や液体を検査装置内の各部に飛散させるおそれがある、という問題がある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、異物や液体を飛散させることなく簡単な機構で異物や液体を除去しマイクロポンプと連通するチップ接続部と検査チップとを十分に密着可能な状態にすることができる検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、下記構成により達成することができる。
【0012】
1.
マイクロポンプを用いて駆動液を検査チップの駆動液注入口に注入して試薬と検体を反応させ反応結果を測定する検査装置において、
前記マイクロポンプの吐出口と前記駆動液注入口とを連通させる流路の流路開口を有するチップ接続部と、
前記検査チップを載置可能な位置と、載置した前記検査チップの前記駆動液注入口と前記チップ接続部とを密着させて連通する位置と、を前記検査チップを載置して移動するチップ搬送トレイと、
前記チップ搬送トレイの移動する方向に対して直交するように前記チップ搬送トレイに回転軸を取り付けた清掃ローラと、
を有し、
前記清掃ローラは、前記チップ搬送トレイが移動するときに前記チップ接続部に接触し回転しながら前記チップ接続部に付着した異物もしくは液体を除去することを特徴とする検査装置。
【0013】
2.
前記チップ接続部は複数の前記流路開口を有し、
複数の前記流路開口は前記清掃ローラの幅方向に対して所定以上の間隔を空けて配設されていることを特徴とする1に記載の検査装置。
【0014】
3.
前記清掃ローラは、
前記駆動液注入口と前記チップ接続部が連通する前に前記チップ接続部を清掃するように前記チップ搬送トレイに取り付けられていることを特徴とする1または2に記載の検査装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、チップ搬送トレイに清掃ローラを設けたので、簡単な機構で異物や液体を飛散させることなくマイクロポンプと連通するチップ接続部に付着した異物や液体を除去し、検査チップと十分に密着可能な状態にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態における検査装置80の外観図である。
【0018】
検査装置80は検査チップ1に予め注入された検体と、試薬との反応を自動的に検出し、表示部84に結果を表示する装置である。検査チップ1をチップ搬送トレイ2に載置した後チップ搬送トレイ2を挿入口83にローディングし、筐体82の内部にセットするようになっている。85はメモリカードスロット、86はプリント出力口、87は操作パネル、88は入出力端子、89はトレイ蓋、91は排出ボタンである。
【0019】
図1(a)はチップ搬送トレイ2が検査チップ1を載置可能な位置に排出された状態の外観図、図1(b)はチップ搬送トレイ2が検査可能な位置にローディングされた状態の外観図である。
【0020】
検査担当者は検査チップ1をチップ搬送トレイ2に載置し、排出ボタン91を押してチップ搬送トレイ2を図1(a)の矢印の方向に移動させる。チップ搬送トレイ2が図1(b)のように検査可能な位置まで移動すると、検査担当者は操作パネル87を操作して検査を開始させる。
【0021】
筐体82の内部では、制御手段の指令により図1には図示せぬマイクロポンプユニット75が検査チップ1に駆動液等の液体を注入し、検査チップ1内の反応の検査が自動的に行われる。検査が終了すると液晶パネルなどで構成される表示部84に結果が表示される。検査結果は操作パネル87の操作により、プリント出力口86よりプリントを出力したり、メモリカードスロット85に挿入されたメモリカードに記憶することができる。また、外部入出力端子88から例えばLANケーブルを使って、パソコンなどにデータを保存することができる。
【0022】
検査担当者は、検査終了後、排出ボタン91を押してチップ搬送トレイ2を図1(a)のように検査チップ1を取り出し可能な位置まで移動させる。検査担当者は、検査チップ1をチップ搬送トレイ2から取り出す。
【0023】
なお、本実施形態ではモータ等の駆動手段によりチップ搬送トレイ2を移動させる例を説明するが、特に本発明の適用を限定されるものではなく手動でチップ搬送トレイ2を移動させても良い。
【0024】
次に、検査チップ1の一例について、図2を用いて説明する。
【0025】
図2(a)、図2(b)は検査チップ1の外観図である。図2(a)において矢印は、筐体82に検査チップ1を挿入する挿入方向であり、図2(a)は挿入時に検査チップ1の下面となる面を図示している。図2(b)は検査チップ1の側面図である。
【0026】
図2(a)の検出部の窓111aと検出部の流路111bは検体と試薬の反応を光学的に検出するために設けられており、ガラスや樹脂などの透明な部材で構成されている。110a、110b、110c、110d、110eは内部の微細流路に連通する駆動液注入口であり、各駆動液注入口110から駆動液を注入し内部の試薬等を駆動する。213は検査チップ1に検体を注入するための検体注入部である。
【0027】
図2(b)に示すように、検査チップ1は溝形成基板108と、溝形成基板108を覆う被覆基板109から構成されている。次に、検査チップ1を構成する溝形成基板108と被覆基板109に用いる材料について説明する。
【0028】
検査チップ1は、加工成形性、非吸水性、耐薬品性、耐候性、コストなどに優れていることが望まれており、検査チップ1の構造、用途、検出方法などを考慮して、検査チップ1の材料を選択する。その材料としては従来公知の様々なものが使用可能であり、個々の材料特性に応じて通常は1以上の材料を適宜組み合わせて、基板および流路エレメントが成形される。
【0029】
特に、多数の測定検体、とりわけ汚染、感染のリスクのある臨床検体を対象とするチップは、ディスポーサブルタイプであることが望ましい。そのため、量産可能であり、軽量で衝撃に強く、焼却廃棄が容易なプラステック樹脂、例えば、透明性、機械的特性および成型性に優れて微細加工がしやすいポリスチレンが好ましい。また、例えば分析においてチップを100℃近くまで加熱する必要がある場合には、耐熱性に優れる樹脂(例えばポリカーボネートなど)を用いることが好ましい。また、タンパク質の吸着が問題となる場合にはポリプロピレンを用いることが好ましい。樹脂やガラスなどは熱伝導率が小さく、マイクロチップの局所的に加熱される領域に、これらの材料を用いることにより、面方向への熱伝導が抑制され、加熱領域のみ選択的に加熱することができる。
【0030】
検出部111において、呈色反応の生成物や蛍光物質などの検出を光学的に行う場合は、少なくともこの部位の基板は光透過性の材料(例えばアルカリガラス、石英ガラス、透明プラスチック類)を用い、光が透過するようにする必要がある。本実施形態においては、検出部の窓111aと、少なくとも検出部の流路111bを形成する溝形成基板は、光透過性の材料が用いられていて、検出部111を光が透過するようになっている。
【0031】
検査チップ1には、検査、試料の処理などを行うための、微小な溝状の流路(微細流路)および機能部品(流路エレメント)が、用途に応じた適当な態様で配設されている。ここでは、これらの微細流路および流路エレメントによって検査チップ1内で行われる特定の遺伝子の増幅およびその検出を行う処理の一例を図2(c)を用いて説明する。
【0032】
図2(c)は検査チップ1内部の微細流路および流路エレメントの機能を説明するための説明図である。
【0033】
微細流路には、例えば検体液を収容する検体収容部221、試薬類を収容する試薬収容部220などが設けられており、場所や時間を問わず迅速に検査ができるよう、試薬収容部220には必要とされる試薬類、洗浄液、変性処理液などがあらかじめ収容されている。図2(c)において、試薬収容部220、検体収容部221および流路エレメントは四角形で表し、その間の微細流路は実線と矢印で表す。
【0034】
検査チップ1は、微細流路を形成した溝形成基板108と溝状の流路を覆う被覆基板109から構成されている。微細流路はマイクロメーターオーダーで形成されており、例えば幅は数μm〜数百μm、好ましくは10〜200μmで、深さは25〜500μm程度、好ましくは25〜250μmである。
【0035】
少なくとも検査チップ1の溝形成基板108には、上記の微細流路が形成されている。被覆基板109は、少なくとも溝形成基板の微細流路を密着して覆う必要があり、溝形成基板の全面を覆っていても良い。なお、検査チップ1の微細流路には、例えば、図示せぬ送液制御部、逆流防止部(逆止弁、能動弁など)などの送液を制御するための部位が設けられ、逆流を防止し、所定の手順で送液が行われるようになっている。
【0036】
検体注入部213は検査チップ1に検体を注入するための注入部、駆動液注入口110は検査チップ1に駆動液を注入するための注入部である。検査チップ1による検査を行うに先立って、検査担当者は検体を検体注入部213から注射器などを用いて注入する。図2(c)に示すように、検体注入部213から注入された検体は、連通する微細流路を通って検体収容部221に収容される。
【0037】
次に、駆動液注入口110aから駆動液を注入すると、駆動液は連通する微細流路を通って検体収容部221に収容されている検体を押し出し、増幅部222に検体を送り込む。
【0038】
一方、駆動液注入口110bから注入された駆動液は、連通する微細流路を通って試薬収容部220aに収容されている試薬aを押し出す。試薬収容部220aから押し出された試薬aは増幅部222に駆動液によって送り込まれる。このときの反応条件によっては、増幅部222の部分を所定の温度にする必要があり、後で説明するように筐体82の内部で加熱または吸熱して所定の温度で反応させる。
【0039】
所定の反応時間の後、さらに駆動液により増幅部222から送り出された反応後の検体を含む溶液は、検出部111に注入される。注入された溶液は検出部111の流路壁に担持されている反応物質と反応し流路壁に固定化する。
【0040】
次に、駆動液注入口110cから駆動液を注入すると、駆動液は連通する微細流路を通って試薬収容部220bに収容されている試薬bを押し出し、微細流路から検出部111に注入する。
【0041】
同様に、駆動液注入口110dから駆動液を注入すると、駆動液は連通する微細流路を通って試薬収容部220cに収容されている試薬を押し出し、微細流路から検出部111に注入する。
【0042】
最後に、駆動液注入口110eから駆動液を注入して、洗浄液収容部223から洗浄液を押しだし、検出部111に注入する。洗浄液によって検出部111内に残留している未反応の溶液41を洗浄する。
【0043】
洗浄後、検出部111の流路壁に吸着した反応物の濃度を光学的に測定することによって、増幅した遺伝子など被検出物を検出する。このように、駆動液注入口110から駆動液を順次注入することにより、検査チップ1の内部で所定の処理が行われる。
【0044】
図3は、実施形態の検査装置80の内部構成の一例を示す断面図である。検査装置80は温度調節ユニット152、光検出部150、中間流路部180、マイクロポンプユニット75、パッキン90a、90b、チップ接続部8、駆動液タンク91などから構成される。以下、これまでに説明した構成要素と同一の構成要素には同番号を付し、説明を省略する。
【0045】
図3は、検査チップ1の下面をチップ接続部8に密着させ、駆動液注入口110とチップ接続部8の流路開口185とを連通している状態である。検査チップ1は、図3には図示せぬチップ搬送トレイ2に載置されており、チップ搬送トレイ2の移動に伴って紙面左右方向に移動する。駆動液注入口110と流路開口185が連通可能な位置にチップ搬送トレイ2が移動すると、図3には図示せぬ押圧板3が紙面下方向に下降し、検査チップ1の上面を押圧して駆動液注入口110と流路開口185を密着させる。また、温度調節ユニット152は、図3には図示せぬ押圧板3に取り付けられており、押圧板3が下降すると検査チップ1の上面に密着する。チップ搬送トレイ2、押圧板3については図4で詳しく説明する。
【0046】
温度調節ユニット152は、ペルチェ素子、電源装置、温度制御装置などを内蔵し、発熱または吸熱を行って検査チップ1の上面を所定の温度に調整するユニットである。
【0047】
所定の位置にチップ搬送トレイ2によって検査チップ1が搬送されると、検知部95はチップ搬送トレイ2を検知し、オンになる。
【0048】
検査チップ1の駆動液注入口110は、検査チップ1とチップ接続部8を密着させたときに、チップ接続部8に設けられた対応する流路開口185とそれぞれ連通する位置に設けられている。中間流路部180は、中間流路182の溝を設けた透明な第1基板184と、第1基板184を覆う透明な第2基板183から構成され、中間流路182の一端は流路開口185と連通し、他端はパッキン90bの流路開口186と連通している。中間流路182は流路開口186を介してマイクロポンプユニット75の入出力口146と連通している。
【0049】
マイクロポンプユニット75の吸込側には、パッキン90aを介して駆動液タンク91が接続され、駆動液タンク91に充填された駆動液をパッキン90aを介して吸い込むようになっている。一方、マイクロポンプユニット75の吐出側の端面に設けられた入出力口146は中間流路182を介して検査チップ1の駆動液注入口110と連通しているので、マイクロポンプユニット75から送り出された駆動液は、検査チップ1の駆動液注入口110から検査チップ1内に形成された流路250に注入される。このようにして、マイクロポンプユニット75から駆動液注入口110に駆動液を注入する。
【0050】
マイクロポンプユニット75には少なくとも一つのマイクロポンプが設けられている。図2に図示した検査チップ1を駆動する場合は、5つの駆動液注入口110a、110b、110c、110d、110eに対応する5つのマイクロポンプMPが必要である。また、5つのマイクロポンプMPが5つの駆動液注入口110a、110b、110c、110d、110eにそれぞれ連通するように対応する5つの流路開口186、中間流路182、流路開口185が必要である。
【0051】
検査チップ1の検出部111では、検体と検査チップ1内に貯蔵された試薬が反応して、例えば呈色、発光、蛍光、混濁などをおこす。本実施形態では図2で説明したように、検出部111でおこる試薬の反応結果を光学的に検出する。光検出部150は発光部150aと受光部150bから成り、検査チップ1の検出部111を透過する光を検出できるように配置されている。
【0052】
次に、図4、図5を用いて本発明の清掃機構について説明する。
【0053】
図4は清掃ローラ12を設けたチップ搬送トレイ2の平面図、図5は清掃ローラ12を設けたチップ搬送トレイ2の側面図である。図5(a)はチップ搬送トレイ2が検査チップ1を載置可能な位置に移動した状態、図5(b)はチップ搬送トレイ2が移動中の状態である。図5(c)はチップ搬送トレイ2が載置した検査チップ1の駆動液注入口110とチップ接続部8とを密着させて連通する位置に移動した状態を示す。
【0054】
図4はチップ搬送トレイ2に検査チップ1を載置した状態であり、側面図は図5(a)が対応する。図4に示す清掃ローラ12の回転軸13は、チップ搬送トレイ2に取り付けられた支持台14に支持され、矢印で示すチップ搬送トレイ2の移動する方向に対して直交している。7は検査チップ位置決めベースであり、中間流路180やチップ接続部8が取り付けられている。
【0055】
チップ搬送トレイ2が図4の矢印で示す方向に移動すると、清掃ローラ12がチップ接続部8に接触し回転しながらチップ接続部8に付着した異物もしくは液体を除去する。
【0056】
清掃ローラ12の材質は特に限定されるものではないが、吸水性樹脂やスポンジを用いることができる。
【0057】
このような吸水性樹脂としては、好ましくはポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル、ポリエチレングリコールを用いることができる。さらに好ましくはポリビニルアルコール/ポリアクリル酸系の高吸収性ポリマー、デンプン/ポリアクリル酸グラフト系の高吸収性ポリマーなどの吸水性樹脂を使用することができる。
【0058】
また、スポンジの材質としては、特に限定されるものではないが、好ましくはポリウレタン、不織布、ナイロンなどから成るスポンジを用いると良い。
【0059】
本発明では、清掃ローラ12が回転しながらチップ接続部8を清掃するので、多数回清掃を行っても高い吸水能力を維持できる。
【0060】
異物や液体はチップ接続部8の流路開口185に付着しやすく、チップ接続部8を通過した清掃ローラ12の流路開口185に対応する部分に多くの異物や液体が吸着される。そのため、複数の流路開口185を有する場合は、流路開口185を清掃ローラ12の幅方向に対して所定以上の間隔を空けて流路開口185を配設するようにすると、清掃ローラ12の吸水能力を十分に発揮することができる。
【0061】
図4に図示する例では5つの流路開口185a、185b、185c、185d、185eが清掃ローラ12と平行に等間隔dで配設されている。流路開口185a、185b、185c、185d、185eの間隔は必ずしも等間隔である必要はないが、清掃ローラ12の吸水能力を考慮して清掃ローラ12の幅方向に対して所定以上の間隔を空ける必要がある。清掃ローラ12の幅方向に対して所定以上の間隔を空ければ、流路開口185a、185b、185c、185d、185eを必ずしも清掃ローラ12と平行に配設する必要はない。
【0062】
次に、図5を用いてチップ搬送トレイ2などを駆動する駆動機構について説明する。
【0063】
全ての駆動機構は台板5に取り付けられている。図5(a)、(b)では、押圧板3は押圧板3に設けられた押圧カム3aに連通する回転カムフォロア4aによって紙面上方向に持ち上げられ、押圧板3とチップ搬送トレイ2との間に隙間がある状態を示している。チップ搬送トレイ2はローディングピニオンギア9と噛み合うギア部を有し、モータ6によってローディングピニオンギア9を駆動すると紙面左右方向に移動可能である。
【0064】
ここではローディング時の動作を説明する。モータ6を所定の方向に回転させると図5(b)のようにチップ搬送トレイ2が紙面左方向に移動する。図5(b)では清掃ローラ12がチップ接続部8に接触した状態を示している。この後、清掃ローラ12はチップ搬送トレイ2の移動に伴って、回転しながらチップ接続部8を乗り越え紙面左方向に移動する。
【0065】
図5(c)の状態は検知部95がオンになった状態であり、チップ搬送トレイ2は検査時の位置まで移動している。また、ローディングピニオンギア9と連動して回転する押圧板駆動ギアA 10、押圧板駆動ギアB 11は回転カム4を反時計方向に回転させる。回転カムフォロア4aは係合する押圧カム3aを紙面下方向に押し下げ、図5(c)のように押圧板3によって検査チップ1を押圧する。検査チップ1はチップ接続部8と突起部7aに密着し、検査チップ位置決めベース7に平行に支持される。駆動液注入口110a、110b、110c、110d、110eと対応する流路開口185a、185b、185c、185d、185eはそれぞれ連通する。
【0066】
排出時はローディング時と逆方向にモータ6を回転させ、今まで説明したローディング時と逆の動作を行う。
【0067】
すなわち、図5(c)の状態から押圧板3が上昇し、チップ搬送トレイ2が紙面右方向に移動する。清掃ローラ12はチップ搬送トレイ2の移動に伴って、回転しながらチップ接続部8を乗り越え紙面右方向に移動する。このように、排出時にもチップ搬送トレイ2の移動に伴ってチップ接続部8を清掃することができる。
【0068】
駆動機構の説明は以上である。
【0069】
図6は、本発明の実施形態における反応検出装置80の回路ブロック図である。
【0070】
制御部99は、CPU98(中央処理装置)とRAM97(Random Access Memory),ROM96(Read Only Memory)等から構成され、不揮発性の記憶部であるROM96に記憶されているプログラムをRAM97に読み出し、当該プログラムに従って反応検出装置80の各部を集中制御する。
【0071】
以下、いままでに説明した機能と同一機能を有する機能ブロックには同番号を付し、説明を省略する。
【0072】
機構制御部411はモータ6を制御し、チップ搬送トレイ2を移動させる。検知部95は、チップ搬送トレイ2が検知部95に当接すると検知信号をCPU98に送信する。機構制御部411は検知信号を受信すると、モータ6を停止する。
【0073】
ポンプ駆動部500は各マイクロポンプMPの圧電素子112を駆動する駆動部である。ポンプ駆動制御部412はプログラムに基づいて、所定量の駆動液を注入または吸入するようにポンプ駆動部500を制御する。ポンプ駆動部500はポンプ駆動制御部412の指令を受けて、駆動電圧を発生して圧電素子112を駆動する。
【0074】
CPU98は所定のシーケンスで検査を行い、検査結果をRAM97に記憶する。検査結果は、操作部87の操作によりメモリカード501に記憶したり、プリンタ503によってプリントすることができる。
【0075】
図7はチップ搬送トレイ2の駆動制御を説明するためのフローチャートである。
【0076】
機構制御部411は、排出ボタン91の状態を一定周期で監視しているものとする。
【0077】
S101:排出ボタン91の状態を判定するステップである。
【0078】
機構制御部411は、排出ボタン91が押されたとき、現在のチップ搬送トレイ2の状態から指令内容を判定する。例えば、図5(a)の状態のときはローディングを指令されたと判定する。
【0079】
排出の場合、(ステップS101;排出)、ステップS102に進む。
【0080】
ローディングの場合、(ステップS101;ローディング)、ステップS110に進む。
【0081】
排出ボタン91が押されていない場合、(ステップS101;No)、処理を終了する。
【0082】
S102:チップ搬送トレイ2を排出するステップである。
【0083】
機構制御部411は、モータ6をチップ搬送トレイ2を排出する方向に回転させる。
【0084】
S103:チップ接続部を清掃するステップである。
【0085】
清掃ローラ12はチップ搬送トレイ2の移動に伴って、回転しながらチップ接続部8を乗り越え排出する方向に移動する。
【0086】
S104:チップ搬送トレイ2を停止するステップである。
【0087】
機構制御部411は、図示せぬ位置検出スイッチがオンになったことを検知し、モータ6を停止する。
【0088】
排出時の処理は以上である。
【0089】
S110:チップ搬送トレイ2をローディングするステップである。
【0090】
機構制御部411は、モータ6をチップ搬送トレイ2をローディングする方向に回転させる。
【0091】
S111:チップ接続部8を清掃するステップである。
【0092】
清掃ローラ12はチップ搬送トレイ2の移動に伴って、回転しながらチップ接続部8を乗り越えローディングする方向に移動する。
【0093】
S112:チップ搬送トレイ2を停止するステップである。
【0094】
機構制御部411は、検知部95の検知信号を受信するとモータ6を停止する。
【0095】
ローディング時の処理は以上である。
【0096】
以上このように、本発明によれば、異物や液体を飛散させることなく簡単な機構で異物や液体を除去し、マイクロポンプと連通するチップ接続部と検査チップとを十分に密着可能な状態にすることができる検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の実施形態における検査装置80の外観図である。
【図2】検査チップ1の一例を説明するための説明図である。
【図3】実施形態の検査装置80の内部構成の一例を示す断面図である。
【図4】清掃ローラ12を設けたチップ搬送トレイ2の平面図である。
【図5】清掃ローラ12を設けたチップ搬送トレイ2の側面図である。
【図6】本発明の実施形態における反応検出装置80の回路ブロック図である。
【図7】チップ搬送トレイ2の駆動制御を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0098】
1 マイクロチップ
2 チップ搬送トレイ
3 押圧板
4 回転カム
5 台板
6 モータ
7 検査チップ位置決めベース
8 チップ接続部
9 ローディングオピニオンギア
12 清掃ローラ
80 検査装置
82 筐体
83 挿入口
84 表示部
90 パッキン
91 駆動液タンク
110 駆動液注入口
111 検出部
150 光検出部
152 液温調節ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロポンプを用いて駆動液を検査チップの駆動液注入口に注入して試薬と検体を反応させ反応結果を測定する検査装置において、
前記マイクロポンプの吐出口と前記駆動液注入口とを連通させる流路の流路開口を有するチップ接続部と、
前記検査チップを載置可能な位置と、載置した前記検査チップの前記駆動液注入口と前記チップ接続部とを密着させて連通する位置と、を前記検査チップを載置して移動するチップ搬送トレイと、
前記チップ搬送トレイの移動する方向に対して直交するように前記チップ搬送トレイに回転軸を取り付けた清掃ローラと、
を有し、
前記清掃ローラは、前記チップ搬送トレイが移動するときに前記チップ接続部に接触し回転しながら前記チップ接続部に付着した異物もしくは液体を除去することを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記チップ接続部は複数の前記流路開口を有し、
複数の前記流路開口は前記清掃ローラの幅方向に対して所定以上の間隔を空けて配設されていることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記清掃ローラは、
前記駆動液注入口と前記チップ接続部が連通する前に前記チップ接続部を清掃するように前記チップ搬送トレイに取り付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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