説明

検査装置

【課題】吐出装置を備えるにもかかわらず、装置の大型化及びコストの増大化を抑制し、且つ、吐出対象物となる流動物の交換も容易に行え得る、検査装置を提供する。
【解決手段】吐出装置10を備えた検査装置を用いる。吐出装置10によって、吐出口を有する容器14内部の流動物を吐出させる。吐出装置10には、容器14を押圧する押圧部材1と、押圧部材1に対向する位置で、容器14を押圧する押圧部材3とを備えさせる。押圧部材1及び3の少なくとも一方における、容器14との接触面は、容器14を位置決め可能に形成されているのが好ましい。または、容器14との接触面に、凹部2が形成されているのも好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出装置を備える検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、検査装置においては、液状の検体や試薬等の供給を自動化するため、吐出装置が備えられることがある(例えば、特許文献1〜特許文献3参照)。これらの特許文献に開示されている検査装置では、吐出装置は、吐出ノズル、プランジャーポンプ、汲み上げ用ポンプ、タンク、プランジャーポンプ駆動機構、及び制御装置等を備えている。
【0003】
また、上記吐出装置において、液状の検体や試薬等の吐出対象となる液体は、タンクに貯留されている。そして、タンクに貯留されている液体は、汲み上げ用ポンプによって汲み上げられ、プランジャーポンプへと送られる。
【0004】
プランジャーポンプは、筒状の本体、及びプランジャーを備えている。プランジャーポンプ駆動部は、ボールネジ、及びそれを駆動する電動機を備えている。ボールネジは、ネジ軸と、ネジ軸が回転すると移動するナットとを備え、ナットは、シリンジポンプのプランジャーに連結されている。よって、電動機の出力軸が回転し、ボールネジのネジ軸が回転すると、それにより、ナットに連結されたプランジャーが往復運動し、プランジャーポンプが稼動する。
【0005】
プランジャーポンプの稼動により、汲み上げポンプから送られてきた液体は、吐出ノズルへと送られ、外部へと吐出される。また、電動機は、制御装置によって制御され、自動運転される。このように、上記特許文献に開示されている検査装置では、吐出装置により、検査装置の分析部に、液状の検体や試薬等が自動的に供給される。
【特許文献1】特開2008−2897号公報
【特許文献2】特開2008−2899号公報
【特許文献3】特開2008−134159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献に開示されている検査装置においては、吐出装置は、その構造上、大型化してしまうため、検査装置自体も大型化するという問題がある。また、吐出装置の構造を簡略化できないため、検査装置のコストが増大化するという問題もある。
【0007】
更に、吐出させる液体を交換する場合は、吐出装置において、交換又は洗浄しなければならない部品点数が多いため、液体の交換は煩雑である。このことから、上記特許文献に開示されている検査装置を、吐出対象となる液体の交換が必要な検査に用いることは、極めて困難である。
【0008】
本発明の目的は、上記問題を解消し、吐出装置を備えるにもかかわらず、装置の大型化及びコストの増大化を抑制し、且つ、吐出対象となる流動物の交換も容易に行え得る、検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明における検査装置は、吐出口を有する容器内部の流動物を吐出させる吐出装置を備えた、検査装置であって、前記吐出装置は、前記容器を押圧する第1の押圧部材と、前記第1の押圧部材に対向する位置で、前記容器を押圧する第2の押圧部材とを備えている、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の検査装置においては、吐出装置は、従来のように、ポンプ等の複雑な構成を必要とすることなく、流動物の吐出を行うことができ、吐出装置の大型化及び複雑化が抑制されている。このため、本発明の検査装置によれば、検査装置の大型化及びコストの増大化が抑制される。また、吐出対象となる流動物の種類を変える場合は、流動物が入った容器を取り替えるだけで良く、流動物の種類の変更は極めて簡単である。
【0011】
上記本発明の検査装置においては、前記第1の押圧部材及び前記第2の押圧部材のうち少なくとも一方における、前記容器との接触面は、前記容器を位置決め可能に形成されている、のが好ましい。また、上記本発明の検査装置においては、前記第1の押圧部材及び前記第2の押圧部材のうち少なくとも一方における、前記容器との接触面には、凹部が形成されている、のも好ましい。これらの場合は、押圧時における容器の位置ズレが抑制されるので、容器の押圧が確実なものとなる。
【0012】
上記本発明の検査装置において、前記容器の内部の流動物が、固形成分を含む液体であり、前記第1の押圧部材と前記第2の押圧部材とは、前記容器が押圧されている状態のときに、両者の間に隙間が形成されるように配置され、前記隙間は、前記容器において、前記第1の押圧部材により押圧されている部分の内面と、前記第2の押圧部材により押圧されている部分の内面とが、接触しないように設定されている、のが好ましい。この場合は、固形成分を含む流動物、例えば、血球成分を含む検体が容器に貯留されている場合において、押圧による固形成分(血球成分)の破壊が抑制される。
【0013】
また、上記本発明の検査装置は、前記第1の押圧部材が、前記容器を間欠的に押圧可能なカムである、態様であるのが好ましい。この態様とすれば、簡単な構成で確実に容器を押圧することができる。
【0014】
また、上記態様においては、前記第2の押圧部材が、前記容器を間欠的に押圧可能な第2のカムであり、前記第2のカムは、その回転軸が前記カムの回転軸に平行となるように配置され、前記カムの回転に連動して回転する、のが更に好ましい。この場合は、容器は、二つのカムで押圧されるため、カムを大きくすることなく、容器の変形の程度を大きくすることができる。また、容器内部の流動物の殆どを外部に吐出させたい場合に有効となる。
【0015】
更に、上記態様においては、前記吐出装置が、前記吐出口の鉛直方向下方に位置可能なカバー部材を更に備え、前記カバー部材は、前記第1の押圧部材と前記第2の押圧部材との距離が拡大傾向にあるときに、前記吐出口に近づく方向に移動し、前記第1の押圧部材と前記第2の押圧部材との距離が短縮傾向にあるときに、前記吐出口から離れる方向に移動する、のが好ましい。この場合は、余分な流動物が吐出口から垂れてしまうのを抑制できる。よって、検査装置内部が余分な試料や試薬によって汚れてしまうのが抑制される。
【0016】
加えて、前記カバー部材は、クラッチ機構を介して、前記第1の押圧部材又は前記第2の押圧部材となる前記カムの回転軸に取り付けられ、前記クラッチ機構は、前記カムの回転角に応じて、前記カバー部材と前記カムとの連結、又はこれらの連結の解除を行い、前記カバー部材に移動を行わせる、のが好ましい。このように構成した場合は、カバー部材を動作させるために新たな動力源を用意しなくても良いため、カバー部材を備えた場合における、装置の大型化及び装置コストの上昇が抑制される。
【0017】
また、上記本発明の検査装置は、前記第1の押圧部材及び前記第2の押圧部材それぞれが、対向する方向に移動し、前記容器を挟み込む、態様であっても良い。この態様とした場合も、簡単な構成で、確実に容器を押圧することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明の検査装置によれば、吐出装置を備えるにもかかわらず、装置の大型化及びコストの増大化を抑制できる。また、本発明の検査装置によれば、吐出対象となる流動物の交換も容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における検査装置について、図1〜図4を参照しながら説明する。最初に、図1及び図2に基づいて、本実施の形態1における検査装置を構成する吐出装置10について説明する。図1は、本発明の実施の形態1における検査装置の一部となる吐出装置の構成を示す斜視図である。図2は、図1に示した吐出装置の使用状態を示す図である。
【0020】
本実施の形態1における検査装置(図3参照)は、その内部に、図1及び図2に示す吐出装置10を備えている。吐出装置10は、吐出口を有する容器14内部の流動物を吐出させるために用いられる。また、本実施の形態1において、容器14の内部に貯留される流動物としては、薬液、輸液、液状の試薬、生体試料(血液、血漿、血清、又は尿等)等が挙げられる。
【0021】
図1及び図2に示すように、吐出装置10は、容器14を押圧する押圧部材1と、押圧部材1に対向する位置で、容器14を押圧する押圧部材3とを備えている。本実施の形態1では、押圧部材1は容器14を間欠的に押圧可能なカムである。また、押圧部材3は、押圧部材1によって押圧された容器14を支える支持台である。以下の説明においては、押圧部材1は「カム1」とし、押圧部材3は、「支持台3」とする。
【0022】
カム1は、軸9を回転軸として回転しながら、その外周面で容器14と接触し、これを押圧する。また、カム1の接触面となる外周面には、凹部2が設けられている。具体的には、カム1は、円形の断面を有し、一様双曲面の両端を二つの円板で挟み込んで得られる形状を呈している。そして、一様双曲面によって形成される凹みが凹部2となっている。また、カム1は、軸9に固定され、これを中心軸として回転する。軸9は、偏心軸であり、カム1の円形の断面の中心を貫く軸に対して偏心している。
【0023】
支持台3は、押圧された容器14が動かないよう、容器14を支えている。支持台3は、カム1のように可動しないが、容器14を支えると同時に、それから受ける力の反力によって押出部15を押圧している。支持台3の容器14との接触面にも、凹部4が設けられている。
【0024】
また、吐出装置10は、更に、板状のフレーム5と、歯車6及び7と、電動機11とを備えている。軸9は、フレーム5に回転自在な状態で取り付けられている。そして、軸9において、フレーム5とカム1との間には、歯車6が取り付けられ、歯車6は軸9と共に回転する。
【0025】
また、歯車6と噛み合うように歯車7が配置されている。歯車7は、電動機11の軸8に取り付けられている。電動機11は、フレーム5に設けられた貫通孔(図示せず)に軸8を挿通させた状態で、フレーム5の背面(軸9が取り付けられている面の反対側の面)に固定されている。
【0026】
本実施の形態1では、容器14は、いわゆるスポイトであり、押出部15と、本体チューブ16と、吐出ノズル18とを備えている。吐出ノズル18は、本体チューブ16に設けられ、これと連通している。押出部15は、樹脂材料やゴム材料といった可撓性を有する材料によって袋状に形成され、開口部分は本体チューブ16に連通している。
【0027】
よって、容器14において、押出部15が、カム1と支持台3とによって押圧されて変形すると、本体チューブ16や押出部15に貯留されている流動物は、吐出ノズル18へと押し出され、吐出ノズル18の先端の吐出口(図示せず)から外部に吐出される。
【0028】
また、容器14は、トレイ19に取り付けられ、カム1と支持台3との間に配置される。具体的には、容器14の本体チューブ16には、トレイ19への取り付け用に、本体チューブ16を囲むリング17が設けられている。また、トレイ19の上面には、リング17と整合する凹部19aが形成され、凹部19aの底面には、貫通孔19bが形成されている。容器14のトレイ19への取り付けは、吐出ノズル18を貫通孔19bに挿入し、リング17を凹部19aに嵌め込むことによって行われる。
【0029】
また、トレイ19は、ガイドレール12及び13によって、フレーム5に位置決めされる。具体的には、ガイドレール12及び13は、フレーム5のカム1及び支持台3が取り付けられている面(前面)に、この面の法線に沿って取り付けられている。また、ガイドレール12及び13それぞれには、溝12a及び13aが形成され、両者は互いの溝が対向した状態で配置されている。そして、トレイ19の対向する二つの端部が、溝12a及び13aに嵌め込まれ、トレイ19は、所定の位置に配置される。
【0030】
よって、図2に示すように、容器14が取り付けられたトレイ19をガイドレール12及び13に嵌め込み、そして、電動機11を稼動する。そうすると、電動機11の動力は、歯車7から歯車6へと伝達され、カム1を回転させる。そして、トレイ19に配置された容器14の押出部15は、カム1と支持台3とに挟まれ、これらによって押圧される。この結果、上述したように、吐出ノズル18の吐出口から、容器14の内部に貯留されている流動物が吐出される。
【0031】
このように、本実施の形態1における検査装置においては、吐出装置10は、従来と異なり、種々のポンプや、貯留用タンク、ボールネジといった部品を必要とすることなく、定量の流動物を吐出することができる。よって、吐出装置10を用いて検査装置を構成すれば、装置の大型化及びコストの増加は抑制される。
【0032】
更に、吐出装置10では、カム1の回転角や回転数を調整することによって簡単に吐出量を制御することもできる。また、吐出対象となる流動物の種類の変更が必要な場合は、貯留されている流動物が異なる複数の容器14を用意し、適宜交換すれば良い。本実施の形態1における検査装置によれば、流動物の種類の変更は簡単である。
【0033】
また、本実施の形態1では、凹部2は、上述したように一様双曲面によって形成された凹みである。よって、凹部2は、カム1と支持台3とによる押圧の方向とは別の方向において、容器14の位置を規制できるように形成されている。具体的には、凹部2は、カム1の回転軸(軸9)の軸方向において、容器14の位置を規制している。また、凹部4は、軸9に垂直な溝状に形成されている。凹部4も、軸9の軸方向において、容器14の位置を規制している。
【0034】
このため、本実施の形態1によれば、容器14は、カム1と支持台3とで押圧されると、カム1の凹部2と支持台3の凹部4とによって拘束される。そして、容器14が変形しても、その位置は固定され、位置ズレが抑制されるので、容器14の押圧不良の発生が抑制される。なお、本実施の形態1は、カム1のみに凹部2が設けられた態様、又は支持台3のみに凹部4が設けられた態様であっても良い。これらの態様においても、位置ズレの抑制は図られる。
【0035】
次に、図3及び図4を用いて、本実施の形態1における検査装置50について説明する。図3は、本発明の実施の形態1における検査装置の内部構成を示す斜視図である。図4は、図3に示す検査装置で用いられる分析用具を示す図である。
【0036】
図3に示すように、本実施の形態1における検査装置50は、吐出装置10を備えている。また、検査装置50は、吐出装置10に加え、分析装置55、及び回転テーブル51も備えている。更に、本実施の形態1では、分析装置55による分析は、分析用具60を用いて行われ、吐出装置10は、分析用具60内へと、容器14内部の流動物を吐出させる。なお、図3の例では、容器14には、生体試料が充填されており、分析装置55は生体試料の分析を行っている。
【0037】
回転テーブル51は、生体試料が吐出される前の分析用具60を吐出装置10の下方へと送り、その後、吐出が終了した分析用具60を、分析装置55へと送る。図3は、分析用具60が、回転テーブル51によって、分析装置55に送られた状態を示している。
【0038】
分析用具60は、一般に、バイオチップと呼ばれるものである。図4に示すように、分析用具60は、光透過性の基板(透明基板)61と、その上面を覆う光透過性のカバー(透明カバー)62とを備えている。また、分析用具60は、周縁に円弧が形成された板状を呈している。
【0039】
透明基板61は、生体試料等の分析対象物が一旦貯留される貯留部63と、光学測定の対象となる複数個のセル64と、複数本の流路65とを備えている。具体的には、透明基板91の一方側の主面に凹部や溝が形成され、これらが、貯留部63、セル64又は流路65として機能している。各セル64には、図示されていないが、種々の試薬が予め配置されている。
【0040】
また、複数個のセル64は、円弧状に配置されている。貯留部63は、セル64の配列の中心、即ち、透明基板61の中心部分に一つ配置されている。複数本の流路65は、放射状に配置され、貯留部63と各セル64とを結んでいる。
【0041】
また、透明カバー62は、その中心部分に、供給口66を備えている。供給口66は、貯留部63に連通するように設けられ、生体試料等の分析対象物を貯留部63に導くために用いられる。吐出装置10は、分析用具60がその下に配置されているときに、供給口66に向けて流動物を吐出する。
【0042】
供給口66を介して貯留部63に供給された生体試料は、各流路65を介して、各セル64に送られる。各セル64においては、生体試料中の特定の成分と、予め配置されている試薬とが反応し、発色が生じる。
【0043】
分析装置55は、セル64毎に光学測定を実施する。分析装置55はセル64に配置された生体試料に光を照射する光源部53と、セル64を通過した光を受光する受光部52と、コネクタ54とを備えている。コネクタ54は、分析対象となるセル64(図9参照)が光源部53と受光部52との間に位置するように、分析用具60を回転させる。
【0044】
このような構成の検査装置50によれば、利用者は、分析用具60を回転テーブル51に配置し、更に、生体試料等の分析対象物を充填した容器14を吐出装置10にセットするだけで良い。検査装置50の制御装置(図示せず)は、吐出装置10による生体試料の吐出と、分析装置55による分析とを自動的に実施する。分析結果は、例えば、検査装置50に設けられた表示装置(図示せず)に表示される。また、分析用具60を用いる場合は、分析用具60の取り替えと同時に、吐出させる生体試料も取り替える必要があるが、容器14を取り替えるだけで良い。
【0045】
また、このような自動運転が可能な検査装置50の一部として吐出装置10が用いられる場合は、吐出装置10には、カム1の回転角を検出するセンサが取り付けられているのが好ましい。センサとしては、軸9(図1参照)の回転角を光学的又は機械的に検出するセンサが挙げられる。
【0046】
センサが取り付けられた場合は、検査装置50の制御装置は、センサからの信号に基づいて、電動機11(図1参照)の稼動及び停止を実行する。例えば、容器14がセットされる場合や吐出が終了した場合は、制御装置は、センサからの信号に基づいて、カム1の位置を図2において破線で示した位置(容器14が押圧されていない位置)とする。
【0047】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2における検査装置について、図5〜図11を用いて説明する。最初に、図5〜図7に基づいて、本実施の形態2における検査装置を構成する吐出装置20について説明する。図5は、本発明の実施の形態2における検査装置の一部となる吐出装置の構成を示す分解斜視図である。図6は、図5に示された構成部品を組み立てた状態を示す組立図である。図7は、図5に示されたクラッチ機構を具体的に示す分解斜視図である。
【0048】
本実施の形態2における検査装置(図10参照)は、その内部に、図5〜図7に示す吐出装置20を備えている。吐出装置20も、実施の形態1における吐出装置10と同様に、容器14内部の流動物を吐出させるために用いられる。また、図5及び図6に示すように、吐出装置20も、押圧部材21と押圧部材23との二つの押圧部材を備えている。また、押圧部材21は、カム1と同様のカムであり、容器14との接触面に凹部22を備えている。
【0049】
但し、本実施の形態2では、実施の形態1と異なり、押圧部材23としても、カムが用いられている。また、押圧部材23として機能するカムも、カム1と同様のカムであり、容器14との接触面に凹部24を備えている。以下の説明においては、押圧部材21は「カム21」とし、押圧部材23は、「カム23」とする。
【0050】
本実施の形態2において、カム21及び23も、実施の形態1で示したカム1(図1参照)と同様に、円形の断面を有し、一様双曲面の両端を二つの円板で挟み込んで得られる形状を呈している。そして、それぞれの一様双曲面によって形成される凹みが凹部22又は凹部24となっている。
【0051】
また、カム21は、軸30を中心軸として回転し、カム23は、軸31を中心軸として回転する。軸30及び軸31も、実施の形態1で示した吐出装置10の軸9と同様に、偏心軸である。更に、凹部22は、カム21の軸30の軸方向において容器14の位置を規制し、凹部24は、カム23の軸31の軸方向において容器14の位置を規制する。
【0052】
更に、吐出装置20は、板状のフレーム25と、歯車26〜28と、電動機32とを備えている。軸30及び軸31は、設定された距離を置いて、互いに平行な状態で、フレーム25に回転自在な状態で取り付けられている。歯車27は、実施の形態1の吐出装置10の歯車8と同様に、軸30において、カム21とフレーム25との間に取り付けられる。歯車28は、歯車27に噛み合った状態で、軸31において、カム23とフレーム25との間に取り付けられる。
【0053】
また、歯車27と歯車28との噛み合わせは、カム21のカム線図とカム23のカム線図とが対照となるように行われている。これは、後述するように、容器14内部の流動物を効率良く吐出させるためである。なお、本実施の形態2でいう「カム線図」とは、例えば、横軸を回転角、縦軸を押圧による容器14の変位量とした線図をいう。
【0054】
更に、歯車27は、歯車26とも噛み合っている。歯車26は、実施の形態1の吐出装置10の歯車7と同様に、電動機32の軸29に取り付けられている。電動機32は、実施の形態1の吐出装置10の電動機11と同様のものであり、フレーム25に設けられた貫通孔(図示せず)に軸29を挿通させた状態で、フレーム25に固定されている。
【0055】
また、図5に示すように、本実施の形態2においても、押圧対象は、実施の形態1において図1及び図2にも示した容器14である。容器14は、トレイ19、ガイドレール12及び13により、フレーム25の所定の位置に配置される。
【0056】
よって、容器14が取り付けられたトレイ19をセットした後、電動機32を稼動すると(図8及び図9参照)、電動機32の動力が、歯車26から歯車27、更に歯車28へと伝達される。そして、カム21及びカム23は、互いに逆方向に回転し、容器14の押出部15はカム21とカム23とによって両側から押圧される。この結果、容器14の内部に貯留されている流動物が、吐出ノズル18の吐出口から外部に吐出される。
【0057】
このように、吐出装置20も、実施の形態1で示した吐出装置10と同様に、簡単な構成で、定量の流動物を吐出することができる。よって、吐出装置20を用いて検査装置を構成した場合も、装置の大型化及びコストの増加は抑制される。また、吐出装置20においても、カム21及び23の回転角や回転数を調整することによって簡単に吐出量を制御することができる。更に、吐出装置20においても、吐出対象となる流動物の種類の変更が必要な場合は、容器14を取り替えることによって対応できる。
【0058】
また、本実施の形態2においても、実施の形態1においてカム1に設けられた凹部2と同様の凹部が、カム21及び23それぞれに形成され、容器14の位置を規制している。このため、容器14の位置ズレによる押圧不良の発生が抑制される。なお、本実施の形態2は、カム21のみに凹部22が設けられた態様、又はカム23のみに凹部24が設けられた態様であっても良い。これらの態様においても、位置ズレの抑制は図られる。
【0059】
また、本実施の形態2における吐出装置20では、カム21とカム23との二つカムが用いられる。よって、一つのカムのみで容器14の押出部15を押圧する場合に比べて、押出部15の変形の程度を大きくすることができる。本実施の形態2によれば、カムを大きくすることなく(カムを大径化することなく)、押出部15の変形の程度を大きくすることができる。本実施の形態2は、押出部15の内部の殆どの流動物を外部に吐出させたい場合に有効である。
【0060】
また、カム21とカム23とは、容器14が押圧されている状態のときに、両カムの間に隙間が形成されるように配置されているのが好ましい。そして、両カムの間の隙間(カム間の距離)は、容器14において、カム21により押圧されている部分の内面と、カム23により押圧されている部分の内面とが、接触しないように設定されているのが好ましい。
【0061】
この場合、カム21とカム23との接近による、押出部15の閉塞が回避される。これにより、流動物が、固形成分を含む液体の場合、例えば、赤血球を含む全血である場合に、固形成分(赤血球)が押圧によって破壊されてしまうのが抑制される。
【0062】
また、本実施の形態2においては、図5及び図6に示すように、吐出装置20は、吐出ノズル18の吐出口の鉛直方向下方に位置でき、流動物の雫を受け止めることができるカバー部材33を備えているのが好ましい。カバー部材33は、吐出装置20が搭載される検査装置(図10参照)の内部が、吐出ノズル18の吐出口から落下する雫によって汚れてしまうのを抑制する。
【0063】
但し、カバー部材33が常に吐出ノズル18の真下に位置していると、必要な吐出が不可能となる。このため、カバー部材33は、カム21とカム23との距離が短縮傾向にあるときは(容器14の押圧が行われている場合は)、吐出ノズル18から離れる方向に移動する。一方、カバー部材33は、カム21とカム23との距離が拡大傾向にあるときは(容器14の押圧が終了する場合は)、吐出ノズル18(吐出口)に近づく方向に移動する。
【0064】
また、カバー部材33による上記の移動を実現するため、カバー部材33は、クラッチ機構39を介して、カム21の回転軸となる軸30に取り付けられている。クラッチ機構39は、カム21の回転角に応じて、カバー部材33とカム21とを連結したり、又はこれらの連結を解除したりしている。
【0065】
具体的には、カバー部材33は、吐出ノズル18から落下する不要な流動物を受け止めるカバー部34と、軸30が挿入される基部35と、基部35とカバー部34とを連結する連結部36とを備えている。このうち、基部35は、クラッチ機構39の一部を構成する。
【0066】
また、吐出装置20は、コイルバネ37を備えている。更に、カム21の中心には、軸30と平行に突起38が設けられている。コイルバネ37及び突起38もクラッチ機構39の一部を構成する。コイルバネ37は、軸30に挿通された状態で、基部35よりも軸30の先端側(フレーム25から離れる側)に配置される。
【0067】
軸30の先端側の端部は、L形のプレート44の貫通孔44aに挿入され、回転自在な状態で保持されている。コイルバネ37は、プレート44とカム21との間に配置されている。また、軸31の先端側の端部も、L形のプレート44の貫通孔44bに挿入され、回転自在な状態で保持されている。
【0068】
図5において、40は、カバー部材33の移動を補助するコイルバネである。コイルバネ40の一端はカバー部材33に接続され、他端はガイドレール12に接続されている。また、図5及び図6には図示されていないが、フレーム25には、カバー部材33の動きを制限するストッパー41(図8及び図9参照)が設けられている。
【0069】
ここで、クラッチ機構39について図7を用いて説明する。図7に示すように、基部35のカム21側の部分には、凹部が形成されている。そして、凹部の底面35aには、貫通孔35cを囲むように傾斜面が形成されている。35bは、底面35aの最も低い部分と最も高い部分との段差を示している。カム21に設けられた突起38は、基部35の底面35aに接触する。突起38と底面35aとの接触位置は、軸30に対するカバー部材33の回転角によって変化する。
【0070】
例えば、カム21が矢印の方向(図7において反時計周り)に回転すると、突起38と底面35aとの接触位置は、底面35aの最も低い部分から高い部分へと変化する。この場合、基部35は、軸30の先端側へと移動する。そして、基部35は、コイルバネ37を圧縮し、反力として、コイルバネ37から基部35をカム21へと押し付ける力を受ける。基部35を押し付ける力は、接触位置の底面35aの高さが高くなるほど大きくなる。そして、この基部35を押し付ける力が一定以上となると、基部35とカム21とが連結され、カバー部材33(基部35)はカム21に追随して回転する。
【0071】
一方、カバー部材33の動きが制限されると、具体的には、後述するストッパー41(図8及び図9参照)に接触すると、突起38は段差35bを越え、底面35aの最も低い部分と接触する。このとき、基部35は、軸30の歯車側へと移動するため、コイルバネ37が基部35をカム21へと押し付ける力は弱くなる。そして、この場合、基部35とカム21との連結は解除され、基部35は、カム21に対して空回りする。
【0072】
このように、クラッチ機構39は、カバー部材33の回転角が設定された範囲にあるときは、カバー部材33をカム21と一緒に回転させ、それ以外の範囲にあるときは、カバー部材33をカム21に対して空回りさせる。このクラッチ機構39の機能により、上述したカバー部材33の移動が可能となる。
【0073】
次に、図8及び図9を用いて、本実施の形態2の検査装置を構成する吐出装置20の動作について説明する。図8及び図9は、本発明の実施の形態における吐出装置の動作を示す図である。図8(a)及び図8(b)は、それぞれ一連の主要な動作状態を示している。図9(a)及び図9(b)は、図8(b)に示された動作状態の後における、一連の主要な動作状態を示している。なお、以下の説明においては、適宜、図5〜図7を参照する。
【0074】
図8(a)は、カム21とカム23との距離が最も離れた場合を示している。この場合、クラッチ機構39においては、突起38は底面35aの最も低い部分と接触し、カバー部材33とカム21との連結は解除されている(図7参照)。従って、カバー部材33は、コイルバネ40に引っ張られ、カバー部34が吐出ノズル18の鉛直方向下方(真下)となる位置に配置される。
【0075】
続いて、図8(b)に示すように、歯車27が時計回りに回転し、歯車28が反時計回りに回転すると、カム21とカム22との距離は短縮傾向となり、これらによって押出部15の押圧が開始される。このとき、突起38は、底面35aの最も低い部分から高い部分へと移動する(図7参照)。これにより、カバー部材33とカム21とは徐々に連結され、この連結力がコイルバネ40の弾性力よりも強くなると、カバー部材33はカム21と共に時計回りに回転し始め、吐出ノズル18から離れて行く。カバー部材33の回転は、ストッパー41に接触するまで行われる。
【0076】
次に、図9(a)に示すように、更に、歯車27が時計回りに回転し、歯車28が反時計回りに回転すると、カム21とカム22とは更に接近し、容器14の押出部15を押圧する。そして、吐出ノズル18から流動物42が吐出される。カム21とカム22とが最も接近したとき、押出部15の変位も最大となる。
【0077】
その後、図9(b)に示すように、歯車27の時計回りが継続されると、今度はカム21とカム23との距離は拡大傾向となり、押出部15への押圧は徐々に解除される。そして、クラッチ機構39においては、突起38が段差35bを越え、カバー部材33とカム21との連結は解除される(図7参照)。
【0078】
そして、カバー部材33とカム21との連結が解除されると、カバー部材33は、コイルバネ40によって引っ張られ、カバー部34が吐出ノズル18の真下に位置するように移動する。よって、吐出ノズル18の先端に残っている流動物の雫43が落下した場合は、カバー部34がこれをキャッチする。
【0079】
このように、本実施の形態2では、カバー部材33は、容器14からの流動物の吐出の邪魔にならない時だけ、吐出ノズル18に近づき、そこからの余分な雫43の落下を防いでいる。本実施の形態2における吐出装置10によれば、容器14からの流動物42の吐出が妨げられることなく、検査装置(図10参照)の内部における雫43による汚れも抑制される。
【0080】
次に、図10を用いて、本実施の形態2における検査装置56について説明する。図10は、本発明の実施の形態2における検査装置の内部構成を示す斜視図である。図10に示すように、本実施の形態2における検査装置56においても、分析用具60が用いられる。
【0081】
図10に示すように、本実施の形態2における検査装置56は、図3に示した実施の形態1における検査装置50と異なり、吐出装置20を備えている。それ以外の点では、検査装置56の構成は、検査装置50と同様である。図10の例でも、吐出装置20は、分析用具60内へと生体試料を吐出させる。また、図10も、図3と同様に、分析用具60が、回転テーブル51によって、分析装置55に送られた状態を示している。
【0082】
検査装置56も、実施の形態1における検査装置50と同様に、自動運転が可能である。このため、吐出装置20には、カム21及びカム23の回転角を検出するセンサを取り付けておくのが好ましい。センサとしては、軸30又は軸31(図3参照)の回転角を光学的又は機械的に検出するセンサが挙げられる。センサが取り付けられた場合は、検査装置56の制御装置は、実施形態1の場合と同様に、センサからの信号に基づいて、電動機32(図5参照)の稼動及び停止を実行する。例えば、容器14がセットされる場合や吐出が終了した場合は、制御装置は、センサからの信号に基づいて、カム21とカム22との位置を図8(a)に示された位置とする。
【0083】
以上説明した実施の形態1及び2において、容器14を押圧するカムの形状は特に限定されるものではない。カムは、断面が円形以外の形状となったカム、一般に接線カム、きのこ形カム、三角カムと呼ばれるカムであっても良い。
【0084】
また、実施の形態1及び2においては、二つの押圧部材として、又は一方の押圧部材として、カム以外に、クランク状の部材を用いることもできる。この場合、押圧部材は、回転軸に回転自在に取り付けられる軸受と、接触用のローラと、軸受から突き出し、且つ、ローラを回転軸に平行な状態で保持するステーとによって構成される。また、ローラは、回転自在となるようにステーに取り付けられ、容器に接触するとこれとの摩擦によって回転する。ローラの接触面には、凹部が設けられる。
【0085】
更に、実施の形態1及び2において、押圧部材に形成される凹部の断面形状は、図1及び図5に示された形状に限定されず、例えば、矩形や三角形等であっても良い。また、凹部は、押圧部材の接触面に設けられた二つの凸部によって形成されていても良い。例えば、図1において、カム1の接触面に、外周に沿って二本のリング状の凸部が平行に設けられている場合は、二本のリング状の凸部の間が凹部2となる。
【0086】
更に、押圧部材の接触面は、凹部が形成されている態様には限定されず、容器14を位置決め可能に形成されていれば良い。例えば、押圧部材の接触面には、複数の突起や、粘着材層が形成されていても良い。
【0087】
また、実施の形態1及び2において、押圧の対象となる容器の形成材料は、特に限定されるものではない。形成材料としては、例えば、樹脂材料やゴム材料といった可撓性を有する材料が挙げられる。更に、可撓性を有する材料の他に、金属箔のように押圧によって塑性変形する材料も挙げられる。また、容器に充填される流動物の粘度は限定されるものではない。
【0088】
更に、実施の形態1及び2においては、押圧部材が直接、容器14を押圧していたが、例えば、図11に示すように、容器14と押圧部材(カム21及び23)との間に、別の部材が配置された態様とすることもできる。図11は、本発明の実施の形態1及び2において用いることができる吐出装置の他の例を示す図である。
【0089】
図11に示す例では、カム21とカム22との間に、一対のアーム部材71及び72が配置される。アーム部材71及び72の一端は、フレーム25に設けられた軸73に回転自在な状態で取り付けられている。軸73は、フレーム25の法線に沿って、フレーム25に取り付けられている。また、アーム部材71とアーム部材72との間には、コイルバネ74が配置されている。
【0090】
図11に示す構成とすれば、押圧対象となる容器14において、押圧されている部分の面積を、図5に示した例に比べて大きくすることができるので、効率良く容器14を押圧することができる。また、図11に示す構成では、容器14の大きさや形状に合わせて、適宜、アーム部材71及び72の形状を設定できるので、この点からも効率的な押圧が達成できる。
【0091】
更に、図11に示す構成によれば、図5に示した例と異なり、カム21及び23が容器14の押出部15の上を摺り動くことはなく、押出部15において押圧点の移動は抑制されている。このため、図11に示す構成は、図5に示した例に比べ、押出部15の押圧による変形、例えば、押出部15の形状が吐出時の形状から元の形状に復元しなくなったりすることや、押出部15の表面が波打ったりすることを抑制できる。
【0092】
実施の形態1及び2において、コイルバネ27、40、及び74といった弾性部材が利用されている。本発明においては、弾性部材として、コイルバネ以外のバネ、例えば、板バネを用いることもできる。
【0093】
更に、実施の形態1及び2においては、図12に示すカム80を用いることもできる。図12は、本発明の吐出装置で利用可能なカムの一例を示す図であり、図12(a)はカムの正面を示し、図12(b)は、図12(a)中の切断線A−A´に沿ってカムを切断して得られる断面を示している。
【0094】
図12に示すように、カム80は、コア部材81と、ベアリング82及び83と、カバー部材85とを備えている。コア部材81は、円柱状に形成され、ベアリング82及び83の内輪に嵌め込まれている。84は、ベアリング82及び83の位置を調整するためのリング状のスペーサである。コア部材81の中心軸から離れた位置には、軸穴87が設けられている。軸穴87には、カム80の回転中心となる軸が嵌入され、カム80はこの軸と共に回転する。
【0095】
また、ベアリング82及び83の外輪及びスペーサ84の外周面は、筒状のカバー部材85によって覆われている。カバー部材85の側面には、凹部86が形成されている。凹部86は、図1に示した凹部2や、図5に示した凹部22及び凹部24と同様に機能する。
【0096】
このような構成によれば、カム80が容器又はチューブ上を摺り動くことによって発生する摩擦力が、ベアリング82及び83によって低減される。そして、摩擦力によって容器14の押出部15が必要以上に変形してしまう事態の発生が、抑制される。具体的には、カム80を用いることで、例えば、押出部15の形状が吐出時の形状から元の形状に復元しなくなったりすることや、押出部15の表面が波打ったりすることが抑制される。また、摩擦力の低減により、カム80が容器14に接触したときの雑音の発生も抑制される。
【0097】
また、ベアリングを備えたカム80を用いる代わりに、ポリオレフィン等の摩擦係数の低い材料によって接触面が形成されたカムを用いても、同様の効果を得ることができる。更に、上述したカム80のカバー部材85が、上記の摩擦係数の低い材料によって形成されているならば、よりいっそうの摩擦力の低減効果が得られる。
【0098】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3における検査装置について、図13を用いて説明する。但し、本実施の形態3における検査装置は、吐出装置90の構成を除き、実施の形態1における検査装置50と同様に構成されている。よって、以下、吐出装置90の構成を中心に説明する。
【0099】
図13は、本発明の実施の形態3における検査装置の一部となる吐出装置の構成を示す斜視図である。図13に示す吐出装置90も、実施の形態1に示された吐出装置10と同様に、容器14内部の流動物を吐出させるために用いられる。また、容器14は、実施の形態1において図1及び図2に示した例と同様に、トレイ19に取り付けられる。トレイ19は、ガイドレール12及び13によって保持される。このように、吐出装置90は、実施の形態1に示した吐出装置10と同様に、図1及び図2にも示した容器14を押圧対象としている。但し、以下の点で、吐出装置10と異なっている。
【0100】
図13に示すように、本実施の形態3においては、押圧部材91及び押圧部材92は、カムではなく、ブロック状の部材である。押圧部材91と押圧部材92とは、対向する方向に移動して、容器14を挟み込む。また、押圧部材91及び押圧部材92の移動は、リンク機構によって行われている。
【0101】
リンク機構は、ロングアーム93及び94と、ショートアーム95及び96と、円板97と、コネクティグアーム98とを備えている。押圧部材91は、ロングアーム93の先端に固定され、押圧部材92は、ロングアーム94の先端に固定されている。ロングアーム93とロングアーム94とは、それぞれの中央部分において、軸100によって回転自在な状態で連結されている。
【0102】
また、ロングアーム93とロングアーム94とを連結する軸100は、フレーム105の天板部106に設けられた軸受部108によって、天板部106の法線に沿って固定されている。このため、押圧部材91及び押圧部材92は、天板部106に平行な状態で、軸100を中心とする円軌道上を移動する。
【0103】
更に、フレーム105は、天板部106に対して垂直に設けられた側板部107を備えている。そして、ガイドレール12及び13は、容器14の押出部15が、押圧部材91及び押圧部材92の円軌道上に位置するように、側板部107に取り付けられている。よって、ロングアーム93及び94が回転動作すれば、押圧部材91及び92が容器14を押圧する。
【0104】
また、ロングアーム93の後端は、ショートアーム95の先端に、軸101を介して、回転自在な状態で連結されている。ロングアーム94の後端は、ショートアーム96の先端に、軸102を介して、回転自在な状態で連結されている。そして、ショートアーム95の後端とショートアーム96の後端とは、共に、コネクティングアーム98の後端に、軸103を介して、回転自在な状態で連結されている。更に、軸101、軸102、及び軸103も、軸100と同様に、天板部106の法線に沿って設けられている。
【0105】
また、円板97は、天板部106に回転自在に取り付けられ、電動機99の動力を受けて回転する。更に、コネクティングアーム98の先端は、軸104によって、円板97に、回転自在な状態で連結されている。但し、円板97とコネクティングアーム98との連結箇所は、円板97の回転中心から離れた箇所であり、円板97は、クランクとして機能する。また、軸104も、天板部106の法線に沿って設けられている。
【0106】
このような構成により、電動機99が円板97を回転させると、コネクティングアーム98が押し出され(又は引っ張られ)、ショートアーム95、ショートアーム96及びコネクティングアーム98の後端が、直線上を移動する。そして、ロングアーム93及び94に回転運動が与えられる。
【0107】
特に、ショートアーム95、ショートアーム96及びコネクティングアーム98の後端が、容器14から離れる方向に移動すると、押圧部材91と押圧部材92とは対向する方向に移動し、容器14を押圧する。本実施の形態3では、リンク機構を用いて、容器14の押圧が行われる。
【0108】
このように、吐出装置90も、実施の形態1で示した吐出装置10と同様に、簡単な構成で、定量の流動物を吐出することができる。よって、吐出装置90を用いて検査装置を構成した場合も、装置の大型化及びコストの増加は抑制される。また、吐出装置90においては、円板97の回転角や回転数を調整することによって簡単に吐出量を制御することができる。更に、吐出装置90においても、吐出対象となる流動物の種類の変更が必要な場合は、容器14を取り替えることによって対応できる。
【0109】
また、本実施の形態3においても、実施の形態1及び2の場合と同様に、押圧部材91の接触面には凹部91aが設けられ、押圧部材92の接触面には凹部92aが設けられている。更に、凹部91a及び凹部92aは、上下方向に伸びる溝状に形成され、押圧部材91及び押圧部材92の押圧方向に垂直な方向、具体的には、これら押圧部材が描く円軌道の半径方向において、容器14の位置を規制している。よって、本実施の形態3による場合も、容器14の位置ズレによる押圧不良の発生が抑制される。
【0110】
本実施の形態3は、上述の図12に示した例に限定されるものではない。例えば、本実施の形態3は、ショートアーム95及び96の後端の移動が、コネクティングアーム98と円板97とではなく、油圧シリンダやエアシリンダによって行われる態様であっても良い。
【0111】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4における検査装置について、図14を用いて説明する。但し、本実施の形態4における検査装置は、吐出装置110の構成を除き、実施の形態1における検査装置50と同様に構成されている。よって、以下、吐出装置110の構成を中心に説明する。
【0112】
図14は、本発明の実施の形態4における検査装置の一部となる吐出装置の構成を示す斜視図である。図14に示す本実施の形態4における吐出装置110も、実施の形態1における吐出装置10と同様に、容器14内部の流動物を吐出させるために用いられる。また、容器14は、実施の形態1において図1及び図2に示した例と同様に、トレイ19に取り付けられる。トレイ19は、ガイドレール12及び13によって保持される。このように、吐出装置110は、実施の形態1に示した吐出装置10と同様に、図1及び図2にも示した容器14を押圧対象としている。但し、以下の点で、吐出装置10と異なっている。
【0113】
図14に示すように、本実施の形態4においては、押圧部材111及び押圧部材112は、実施の形態3と同様に、カムではなく、ブロック状の部材である。また、押圧部材111と押圧部材112とは、実施の形態3と同様に、対向する方向に移動して、容器14を挟み込む。なお、押圧部材111及び押圧部材112の移動は、実施の形態3において図13に示したリンク機構ではなく、ラックアンドピニオン機構によって行われている。
【0114】
ラックアンドピニオン機構は、水平方向に移動可能なラック113及び114と、歯車115とを備え、板状のフレーム119に取り付けられている。ラック113とラック114とは、共に歯車115に噛み合っている。また、ラック113の背面には、その歯の配列方向に沿って、リブ113aが設けられている。同様に、ラック114の背面にも、その歯の配列方向に沿って、リブ114aが設けられている。
【0115】
そして、フレーム119には、水平方向に延びるガイド溝117と、同じく水平方向に延びるガイド溝118とが設けられている。このうち、ガイド溝117は、歯車115の上方の位置に設けられ、これに、ラック113のリブ113aが挿入される。ラック113は、歯車115の上方で水平方向に移動することができる。また、ガイド溝118は、歯車115の下方の位置に設けられ、これに、ラック114のリブ114aが挿入される。ラック114は、歯車115の下方で水平方向に移動することができる。
【0116】
また、歯車115は、フレーム119の背面に取り付けられた電動機120の軸116に固定されている。更に、ラック113の歯とラック114の歯とは、互いに対向した状態で、歯車115に噛み合っている。押圧部材111は、ラック113の図中左端に固定され、押圧部材112は、ラック114の図中右端に固定されている。
【0117】
よって、電動機120によって、歯車115を回転駆動すると、ラック113とラック114とは、相対する方向に直線運動する。更に、押圧部材111と押圧部材112とは、直線軌道上を移動する。また、トレイ19を保持するガイドレール12及び13は、容器14の押出部15が、押圧部材111及び押圧部材112の直線軌道上に位置するように、フレーム119に取り付けられている。
【0118】
従って、本実施の形態4では、電動機120が歯車115を時計回り(図中矢印方向)に回転させると、押圧部材111と押圧部材112とは、互いに接近する方向に移動し、容器14を押圧する。本実施の形態4では、ラックアンドピニオン機構を用いて、容器14の押圧が行われる。
【0119】
このように、吐出装置110も、実施の形態1で示した吐出装置10と同様に、簡単な構成で、定量の流動物を吐出することができる。よって、吐出装置110を用いて検査装置を構成した場合も、装置の大型化及びコストの増加は抑制される。また、吐出装置110においては、歯車115の回転数を調整することによって簡単に吐出量を制御することができる。更に、吐出装置110においても、吐出対象となる流動物の種類の変更が必要な場合は、容器14を取り替えることによって対応できる。
【0120】
また、本実施の形態4においても、実施の形態1及び2の場合と同様に、押圧部材111の接触面には凹部111aが設けられ、押圧部材112の接触面には凹部112aが設けられている。更に、凹部111a及び凹部112aは、上下方向に伸びる溝状に形成され、押圧部材111及び押圧部材112の押圧方向に垂直な方向、具体的にはフレーム119の法線方向において、容器14の位置を規制している。よって、本実施の形態4による場合も、容器14の位置ズレによる押圧不良の発生が抑制される。
【0121】
本実施の形態4は、上述の図13に示した例に限定されるものではない。例えば、本実施の形態4は、ラックアンドピニオン機構ではなく、クランク機構や、油圧シリンダ又はエアシリンダによって、押圧部材111及び112が直線軌道上を移動する態様であっても良い。
【0122】
上記実施の形態1〜実施の形態4においては、検査装置は、吐出装置に分析用具60への吐出を行わせていたが、本発明において、吐出装置の吐出対象は、特に限定されるものではない。本発明の検査装置では、それを構成する吐出装置は、図4に示した分析用具60以外のものに対しても吐出を行うことができる。
【0123】
図4に示した分析用具60以外の分析用具としては、例えば、イムノクロマトグラフ法で用いられる試験片、尿試験紙、各種バイオセンサ、乾式の多層分析フィルム、反応容器、反応セル等が挙げられる。なお、上記の乾式の多層分析フィルムとは、血液、血漿、血清、又は尿等の生体試料中の生化学成分について、定量分析又は定性分析を実行するための分析用具である。乾式の多層分析フィルムを用いれば、上記生態試料中の生化学成分の含有量、活性値、又は有形成分の含有量を求めることができる。また、上記の反応容器及び反応セルでは、液状試薬が使用される。
【0124】
また、上記実施の形態1〜実施の形態4においては、容器の内部に貯留される流動物として、薬液、輸液、液状の試薬、生体試料等が挙げられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明においては、流動物としては、その他に、飲料、食品、各種排水、土壌、雨水、河川水等を用いることもできる。更に、本発明の検査装置は、飲料、食品、各種排水、土壌、雨水、河川水等を検査する装置であっても良い。また、本発明でいう「検査装置」は、広く解釈でき、「検査装置」には、各種分析装置も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
以上のように、本発明は、容器内部の流動物(例えば、薬液や液状の試料)を吐出させる場合に有用となる。本発明の吐出装置、及びこれを用いた検査装置は、産業上の利用可能性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1における検査装置の一部となる吐出装置の構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示した吐出装置の使用状態を示す図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態1における検査装置の内部構成を示す斜視図である。
【図4】図4は、図3に示す検査装置で用いられる分析用具を示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態2における検査装置の一部となる吐出装置の構成を示す分解斜視図である。
【図6】図6は、図5に示された構成部品を組み立てた状態を示す組立図である。
【図7】図7は、図5に示されたクラッチ機構を具体的に示す分解斜視図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態における吐出装置の動作を示す図である。図8(a)及び図8(b)は、それぞれ一連の主要な動作状態を示している。
【図9】図9は、本発明の実施の形態における吐出装置の動作を示す図である。図9(a)及び図9(b)は、図8(b)に示された動作状態の後における、一連の主要な動作状態を示している。
【図10】図10は、本発明の実施の形態2における検査装置の内部構成を示す斜視図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態1及び2において用いることができる吐出装置の他の例を示す図である。
【図12】図12は、本発明の吐出装置で利用可能なカムの一例を示す図であり、図12(a)はカムの正面を示し、図12(b)は、図12(a)中の切断線A−A´に沿ってカムを切断して得られる断面を示している。
【図13】図13は、本発明の実施の形態3における検査装置の一部となる吐出装置の構成を示す斜視図である。
【図14】図14は、本発明の実施の形態4における検査装置の一部となる吐出装置の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0127】
1 押圧部材(カム)
2 カムに設けられた凹部
3 押圧部材(支持部材)
4 支持部材に設けられた凹部
5 フレーム
6、7 歯車
8 電動機の軸
9 カムの軸
10 吐出装置(実施の形態1)
11 電動機
12、13 ガイドレール
12a、13a ガイドレールに設けられた溝
14 容器
15 押出部
16 本体チューブ
17 リング
18 吐出ノズル
19 トレイ
19a トレイに設けられた凹部
19b トレイに設けられた貫通孔
20 吐出装置(実施の形態2)
21、23 押圧部材(カム)
22、24 カムに設けられた凹部
25 フレーム
26、27、28 歯車
29 電動機の軸
30、31 カムの軸
32 電動機
33 カバー部材
34 カバー部
35 基部
35a 底面
35b 段差
36 連結部
37 コイルバネ
38 カムに設けられた突起
39 クラッチ機構
40 コイルバネ
41 ストッパー
42 流動物
43 雫
44 L形のプレート
44a、44b L形のプレートの貫通孔
50 検査装置(実施の形態1)
51 回転テーブル
52 受光部
53 光源部
54 コネクタ
55 分析装置
56 検査装置(実施の形態2)
60 分析用具
61 透明基板
62 透明カバー
63 貯留部
64 セル
65 流路
66 供給口
71、72 アーム部材
73 軸
74 コイルバネ
80 カム
81 コア部材
82、83 ベアリング
84 スペーサ
85 カバー部材
86 凹部
87 軸穴
90 吐出装置(実施の形態3)
91、92 押圧部材
93、94 ロングアーム
95、96 ショートアーム
97 円板
98 コネクティングアーム
99 電動機
100、101、102、103、104 軸
105 フレーム
106 天板部
107 側板部
108 軸受部
110 吐出装置(実施の形態4)
111、112 押圧部材
113、114 ラック
113a、114a ラックの背面に設けられたリブ
115 歯車
116 電動機の軸
117、118 ガイド溝
119 フレーム
120 電動機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出口を有する容器内部の流動物を吐出させる吐出装置を備えた、検査装置であって、
前記吐出装置は、前記容器を押圧する第1の押圧部材と、前記第1の押圧部材に対向する位置で、前記容器を押圧する第2の押圧部材とを備えている、ことを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記第1の押圧部材及び前記第2の押圧部材のうち少なくとも一方における、前記容器との接触面は、前記容器を位置決め可能に形成されている、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記第1の押圧部材及び前記第2の押圧部材のうち少なくとも一方における、前記容器との接触面には、凹部が形成されている、請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
前記容器の内部の流動物が、固形成分を含む液体であり、
前記第1の押圧部材と前記第2の押圧部材とは、前記容器が押圧されている状態のときに、両者の間に隙間が形成されるように配置され、
前記隙間は、前記容器において、前記第1の押圧部材により押圧されている部分の内面と、前記第2の押圧部材により押圧されている部分の内面とが、接触しないように設定されている、請求項1〜3のいずれかに記載の検査装置。
【請求項5】
前記第1の押圧部材が、前記容器を間欠的に押圧可能なカムである、請求項1〜4のいずれかに記載の検査装置。
【請求項6】
前記第2の押圧部材が、前記容器を間欠的に押圧可能な第2のカムであり、
前記第2のカムは、その回転軸が前記カムの回転軸に平行となるように配置され、前記カムの回転に連動して回転する、請求項5に記載の検査装置。
【請求項7】
前記吐出装置が、前記吐出口の鉛直方向下方に位置可能なカバー部材を更に備え、
前記カバー部材は、前記第1の押圧部材と前記第2の押圧部材との距離が拡大傾向にあるときに、前記吐出口に近づく方向に移動し、前記第1の押圧部材と前記第2の押圧部材との距離が短縮傾向にあるときに、前記吐出口から離れる方向に移動する、請求項5または6に記載の検査装置。
【請求項8】
前記カバー部材は、クラッチ機構を介して、前記第1の押圧部材又は前記第2の押圧部材となる前記カムの回転軸に取り付けられ、
前記クラッチ機構は、前記カムの回転角に応じて、前記カバー部材と前記カムとの連結、又はこれらの連結の解除を行い、前記カバー部材に移動を行わせる、請求項7に記載の検査装置。
【請求項9】
前記第1の押圧部材及び前記第2の押圧部材それぞれが、対向する方向に移動し、前記容器を挟み込む、請求項1〜4のいずれかに記載の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−32333(P2010−32333A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194153(P2008−194153)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】