説明

検査装置

【課題】
スピンドルモータの回転むらを継続的かつ容易に測定することが可能な検査装置を提供する。
【解決手段】
検査装置10は、磁気ディスクを検査する検査装置であって、磁気ディスクを回転させ、1回転する間に所定の数のパルス信号を発生するスピンドルモータ1と、所定の周期を有する基準クロックを生成する発振装置4と、所定の数のパルス信号が発生する間に生成された基準クロックの数を測定する測定装置3と、基準クロックの数に基準クロックの周期を掛けることにより、スピンドルモータ1の回転時間を複数回演算する演算装置5とを有し、演算装置5は、得られた複数の回転時間を比較することにより、スピンドルモータ1の回転むらを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気ディスクの検査に用いられる検査装置に係り、特に、スピンドルモータの回転むらを監視可能な検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ハードディスク等のディスク型情報記録装置に用いられるディスク又はヘッドの検査を行う検査装置がある。このような検査装置は、例えば特許文献1に開示されているように、ディスク又はヘッドの検査を高精度に行う。検査装置に設けられているスピンドルモータは、ディスクを保持し、ディスクを高精度に回転させる。
【0003】
検査対象となるディスク又はヘッドは、検査装置による検査が終了した後、次の検査対象となるディスク又はヘッドに交換される。しかしながら、複数のディスク又はヘッドを検査する間においても、検査装置に設けられているスピンドルモータは、常に一つのスピンドルモータが用いられ、これを交換することは稀である。
【0004】
このため、検査装置中のスピンドルモータは、長期間使用されると、回転むらが生じるようになる。ところが、このような検査装置では、スピンドルモータの回転むらが悪いと、ディスク又はヘッド等の検査の精度に悪影響を与えることになる。そこで、スピンドルモータの回転むらを測定する必要がある。
【0005】
従来、スピンドルモータの回転むらを測定するには、オシロスコープを準備する必要があった。オシロスコープを用いて、スピンドルモータから一周につき一回発生するインデックス信号を観測及び測定する。オシロスコープで測定したスピンドルモータの回転むらに基づいて、使用者は、スピンドルモータの良品又は不良品の判定を行っていた。
【特許文献1】特開2000−99931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、検査装置中のスピンドルモータは、継続的な稼動により複数のディスク又はヘッドを検査する間に劣化していく。
【0007】
従来の手法では、オシロスコープによる測定の際に、良品又は不良品の判断は可能である。しかし、継続的な稼動によりスピンドルモータが劣化していく様子(経時的変化)を知ることは困難であった。このため、検査装置中のスピンドルモータの回転むらを、継続的かつ容易に測定することが求められていた。
【0008】
本発明は、スピンドルモータの回転むらを継続的かつ容易に測定することが可能な検査装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面としての検査装置は、磁気ディスクを検査する検査装置であって、前記磁気ディスクを回転させ、1回転する間に所定の数のパルス信号を発生するスピンドルモータと、所定の周期を有する基準クロックを生成する発振装置と、前記所定の数のパルス信号が発生する間に生成された前記基準クロックの数を測定する測定装置と、前記基準クロックの数に該基準クロックの周期を掛けることにより、前記スピンドルモータの回転時間を複数回演算する演算装置とを有し、前記演算装置は、得られた複数の前記回転時間を比較することにより、前記スピンドルモータの回転むらを算出する。
【0010】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スピンドルモータの回転むらを継続的かつ容易に測定することが可能な検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
本実施例の検査装置は、特に、磁気ディスク又はヘッド等を検査するための検査装置であり、動圧軸受けスピンドルモータ又はボールベアリングスピンドルモータ等のスピンドルモータを備えた検査装置である。
【0014】
まず、本実施例の検査装置の構成について説明する。図1は、本実施例における検査装置10の概略構成図である。
【0015】
検査装置10において、1はスピンドルモータである。スピンドルモータ1は、ロータの周囲に360歯のNS対のFGマグネットを着磁させており、MR素子又はホール素子等の磁気センサでロータの位置(回転角度)を検出する。スピンドルモータ1は、検査対象である磁気ディスクを回転させ、1回転する間に所定の数のFG(Frequency Generator)パルスを発生させる。磁気センサ(検出装置)は、スピンドルモータ1の回転に応じて発生するFGパルス(パルス信号)を検出する。
【0016】
具体的には、本実施例のスピンドルモータ1は、1回転あたり360個のFGパルスを出力する。このため、磁気センサは、スピンドルモータ1のロータが1回転すると、360個のFGパルスを検出することになる。ただし、本実施例はこれに限定されるものではなく、ロータの1回転あたり、360個以外のFGパルスを出力するスピンドルモータを用いてもよい。
【0017】
2はドライバICである。ドライバIC2は、スピンドルモータ1を駆動するためのモータドライバである。ドライバIC2は、上位の制御装置(後述の演算装置5)からの目標指令信号と、磁気センサにより検出されたスピンドルモータ1の実際の位置との差に基づいて、適切な駆動信号をスピンドルモータ1に与える。
【0018】
ドライバIC2は、スピンドルモータ1に設けられた磁気センサが検出するFGパルスの周期を測定して、必要な回転数になるようにPWM(パルス幅変調)のデューティーを変化させる。例えば、本実施例のスピンドルモータ1の最大回転数が6000rpm(100rps)であり、1回転あたり360個のFGパルスが出力される場合、FGパルスの周波数は、36kHz(=100×360)となる。
【0019】
ドライバIC2は、FGパルスの周期を監視する。このため、上位の制御装置(演算装置5)から指令された回転数に対するスピンドルモータ1の回転数の差を知ることができる。
【0020】
3は測定装置である。測定装置3は、所定の数のFGパルスが発生する間に生成された基準クロックの数を測定する。測定装置3は、後述のように、演算装置5に記憶されたスピンドルモータ1の回転時間の最大値と最小値との差を計算することにより、回転時間の差(ジッタ)を測定する。
【0021】
4は発振装置である。発振装置4は、水晶振動子を備え、水晶振動子で決定される一定の周期(周波数)を有する基準クロック(発振信号)を生成する。5は演算装置である。演算装置は、前述のように、ドライバIC2に対して目標指令信号を与えることにより、スピンドルモータ1を制御する。
【0022】
スピンドルモータ1のFGマグネットが例えば360歯の場合、スピンドルモータ1が1回転するごとに、FGパルスは360クロック発生する。演算装置5は、FGパルスが360クロック発生するまで、発振装置4から出力された基準クロックの数をカウントする。
【0023】
基準クロックの周期は既知であり、基準クロックの周期は一定である。このため、演算装置5は、スピンドルモータ1が1周するまでに要した基準クロックの数と基準クロックの周期とを掛け合わせることにより、スピンドルモータ1の1周の回転時間を測定することができる。
【0024】
演算装置5は、予め決められた回数になるまで、回転時間の測定を繰り返し測定する。本実施例では、測定回数256回に設定しているが、これに限定されるものではなく、スピンドルモータ1の特性に応じて測定回数は変更可能である。
【0025】
演算装置5は、回転時間の測定を繰り返す間、回転時間が一番長い場合、そのときの回転時間を最大値として記憶する。また同様に、回転時間が一番短い場合、そのときの回転時間を最小値として記憶する。測定装置3は、演算装置5に記憶された回転時間の最大値と最小値との差を計算することにより、回転時間の差(ジッタ)を得ることができる。
【0026】
スピンドルモータ1の回転周期は既知である。このため、演算装置5は、回転時間の差(ジッタ)を回転周期で割ることにより、スピンドルモータ1の回転むらを得ることができる。
【0027】
このように、演算装置5は、基準クロックの数に基準クロックの周期を掛けることにより、スピンドルモータ1の回転時間を複数回演算する。そして、得られた複数の回転時間を比較することにより、スピンドルモータ1の回転むらを算出する。この結果、演算装置5は、補助記憶装置6に記憶されたスピンドルモータ1の回転むらに基づいて、スピンドルモータ1の劣化を検知することができる。
【0028】
なお、本実施例において、測定装置3及び演算装置5はFPJ7により構成されているが、これに限定されるものではない。
【0029】
6は補助記憶装置(フラッシュROM)である。補助記憶装置6は、スピンドルモータ1を起動してからスピンドルモータ1の回転が安定したとき、上記手法により得られたスピンドルモータ1の回転むらを記憶する。
【0030】
また、本実施例において、補助記憶装置6がスピンドルモータ1の回転むらを記憶するとき、演算装置5はインデックス番号を付与する。このため、補助記憶装置6に記憶される回転むらに関する情報は、補助記憶装置6による回転むらの記憶時が判定可能なように、時系列情報として構成されている。
【0031】
インデックス信号は、補助記憶装置6がスピンドルモータ1の回転むらを記憶するごとに増分する。本実施例では、インデックス番号は0から始まるが、これに代えて1から始まるように構成してもよい。
【0032】
また、補助記憶装置6がスピンドルモータ1の回転むらyを記憶するとき、演算装置5は、以前記憶したスピンドルモータ1の回転むら(n個)のデータx(i=1、2、…、n)と比較する。そして、スピンドルモータ1の回転むらがどの程度変化しているかについて、回転むらの変化量を次の式(1)により導出する。
【0033】
【数1】

【0034】
式(1)から導出された結果に基づいて、演算装置5は、例えば0〜40%=1、31〜80%=2、81〜120%=3、120%以上=4というように、ランク付けを行う。ただし、ランク付けはさらに細かい閾値によって行ってもよく、上記のように限定されるものではない。
【0035】
そして、演算装置5は、補助記憶装置6に記憶されている回転むらと新たに記憶しようとする回転むらとを比較して、比較により得られた差が所定の範囲内であるか否かを判断する。この結果、補助記憶装置6は、比較により得られた差が所定の範囲内であるとき、新たに記憶しようとする回転むらを記憶する。一方、この差が所定の範囲外であるとき、新たに記憶しようとする回転むらを記憶しない。
【0036】
この制御は演算装置5により実行される。具体的には、演算装置5は、上記のランク付けに基づいて、スピンドルモータ1の回転むらが突発的に悪い(所定の範囲外)と判断した場合、インデックス番号のみを増分して、スピンドルモータ1の回転むらを補助記憶装置6に記憶させない。このように制御することで、突発的にスピンドルモータ1の回転むらが悪化したことによるスピンドルモータ1の劣化の誤検知を防止することができる。
【0037】
次に、本実施例の検査装置における回転むらの異常検知について説明する。図2は、本実施例の検査装置10におけるスピンドルモータの回転むらの異常検知方法を示すフローチャートである。
【0038】
まず、ステップS1において、検査装置10の測定装置3は、ジッタ(回転時間の差)を計測し、回転むらを算出する。その後、図2中のステップS2〜S7は、演算装置5又は補助記憶装置6のいずれかにより実行される。
【0039】
ステップS2では、回転むらにカウンタ(インデックス信号)を付与する。具体的には、演算装置5は、補助記憶装置6に記憶されているカウンタを読み込み、新たに測定装置3で測定された回転むらに対してカウントを与える。
【0040】
ステップS3において、演算装置5は、新たに測定された回転むらが保存に適するものか否かを判定する。演算装置5は、上述の式(1)を用いることにより、補助記憶装置6に記憶されている過去の回転むらと新たに測定された回転むらとを比較して、新たに測定された回転むらが保存に適するか否かを判定する。
【0041】
スピンドルモータ1は、通常、なだらかに劣化する。一方、測定される回転むらは、使用者の接触や外部からの振動等により突発的に悪化する場合がある。このような突発的な悪化は、スピンドルモータ1の劣化とは無関係である。このため、ステップS3における判定により、この突発的な悪化に起因する回転むらの変化を排除することができる。
【0042】
ステップS3において、演算装置5は、新たに測定された回転むらが保存に適するものであると判定した場合、ステップS4において、補助記憶装置6に回転むらを保存する。一方、演算装置5は、新たに計測された回転むらが保存に適するものでないと判定した場合、この回転むらを保存することなく、ステップS7においてカウンタを増分する。
【0043】
演算装置5は、ステップS4において回転むらを補助記憶装置6に保存した後、ステップS5において、保存した回転むらの値に基づき、スピンドルモータ1が異常な状態か否かを判定する。演算装置5は、スピンドルモータが異常な状態ではないと判定した場合、ステップS7においてカウンタを増分する。一方、演算装置5は、スピンドルモータ1が異常な状態であると判定した場合、ステップS6において、警告信号又は警告音等の方法で、検査装置10の上位アプリケーションに対して異常を通知する。その後、ステップS7においてカウンタを増分する。
【0044】
本実施例の手法によれば、スピンドルモータ1の起動回数とスピンドルモータ1の回転むらの経時変化を定量化することが可能になる。
【0045】
また、本実施例では、補助記憶装置6に保存したスピンドルモータ1の回転むらに基づいて、スピンドルモータ1の回転むらを時系列情報として参照することが可能である。例えば、演算装置5は、スピンドルモータ1の回転むらをインデックス番号の0から順番に10回の最大値と最小値の差PP1と、最後に保存してから過去10回の最大値と最小値の差PP2を計算する。演算装置5は、PP1とPP2の差が予め設定された閾値よりも大きい場合、スピンドルモータ1が劣化していると判定する。このように、演算装置5はスピンドルモータ1の経時的劣化を判定するための判定手段として用いられることができる。
【0046】
また、本実施例によれば、補助記憶装置6に時系列に記憶された回転むらを参照することにより、スピンドルモータ1の回転むらの経時的変化を知ることができる。
【0047】
このため、本実施例の検査装置に、さらに、回転むらの経時的変化から将来的な回転むらを予測する予測装置を設けることも可能である。この場合、スピンドルモータ1が交換すべき状態となるときの回転むら(閾値)を予め設定する。そして、予測装置がこの閾値を超える時期を予測し、スピンドルモータ1の交換時期(使用可能期間)を事前に知らせる。この交換時期は、予測装置が新たな予測を実行した場合に適宜更新される。
【0048】
スピンドルモータ1の交換時期は、回転むらが将来的にどのように変化するかを予測することにより算出される。具体的には、過去から現在までの回転むら、回転むらの変化率により算出可能である。このとき、回転むらの変化率がどのように増減するかという、経時的な変化率の増減に関する情報をさらに用いることにより、スピンドルモータ1の交換時期をより正確に求めることが可能となる。
【0049】
以上、本実施例によれば、スピンドルモータの回転むらを継続的かつ容易に測定することが可能な検査装置を提供することができる。また、スピンドルモータの継続的な稼動によるスピンドルモータの劣化を監視することにより、検査精度の悪化を検知する検査装置を提供することが可能になる。
【0050】
以上、本発明の実施例について具体的に説明した。ただし、本発明は上記実施例として記載された事項に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本実施例における検査装置の概略構成図である。
【図2】本実施例の検査装置におけるスピンドルモータの回転むらの異常検知方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
1:スピンドルモータ
2:ドライバIC
3:測定装置
4:発振装置
5:演算装置
6:補助記憶装置
7:FPJ
10:検査装置




【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ディスクを検査する検査装置であって、
前記磁気ディスクを回転させ、1回転する間に所定の数のパルス信号を発生するスピンドルモータと、
一定の周期を有する基準クロックを生成する発振装置と、
前記所定の数のパルス信号が発生する間に生成された前記基準クロックの数を測定する測定装置と、
前記基準クロックの数に該基準クロックの周期を掛けることにより、前記スピンドルモータの回転時間を複数回演算する演算装置と、を有し、
前記演算装置は、得られた複数の前記回転時間を比較することにより、前記スピンドルモータの回転むらを算出することを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記検査装置は、さらに、前記スピンドルモータの前記回転むらを記憶する補助記憶装置を有し、
前記回転むらは、前記補助記憶装置による記憶時にインデックス番号が付与されることにより、該記憶時が判定可能な時系列情報として構成され、
前記演算装置は、前記補助記憶装置に記憶されている回転むらと新たに記憶しようとする回転むらとを比較して、比較により得られた差が所定の範囲内であるか否かを判断し、
前記補助記憶装置は、前記差が前記所定の範囲内であるとき、前記新たに記憶しようとする回転むらを記憶し、該差が該所定の範囲外であるとき、該新たに記憶しようとする回転むらを記憶しないことを特徴とする請求項1記載の検査装置。
【請求項3】
前記演算装置は、前記補助記憶装置に記憶された前記スピンドルモータの前記回転むらに基づいて、該スピンドルモータの劣化を検知することを特徴とする請求項2記載の検査装置。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−48586(P2010−48586A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211252(P2008−211252)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】